説明

ホイールアーチ部のシール構造

【課題】シール部材の圧接面によって形成される圧接部への水滴等の浸入を防止すると共にドア端部がチッピングから保護されるホイールアーチ部のシール構造を提供する。
【解決手段】ホイールアーチ部12をリヤサイドドア20の後端部21によって覆う車両であって、ホイールアーチ部12に装着するグリップ32と、中空状でリヤサイドドア20の押圧面21aが圧接する圧接面33c及びリヤサイドドア20の後端部21を被覆するドア保護部33dを備えたリップ部33とを備えたシール部材31をホイールアーチ部12に配設する。走行等によって車輪Wによって巻き上げられる雪、泥、小石等がドア保護部33dよって受け止められてリヤサイドドア20の後端部21が保護されると共に、圧接面33cと押圧面21aとが圧接する圧接部Aへの水滴の浸入及び凍結が防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールアーチ部のシール構造に関し、特にホイールアーチ部をドアの端部で覆う車両におけるホイールアーチ部のシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体側部に形成されるドア開口部の後方下部がタイヤハウスの周縁を形成するフェンダパネルのホイールアーチ部によって形成され、このホイールアーチ部をドアの後端部で覆う車両がある。この種の車両にあってはホールアーチ部をドアの後端部で覆うことによりドアとホイールアーチ部との分割線がドアによって覆われて外観が向上する。
【0003】
しかし、ドア閉時におけるホイールアーチ部とドアの後端部とが対向する隙間が車輪、特にタイヤのトレッド面と対向することから、走行に伴って車輪によって巻き上げられて飛散した水や泥がホイールアーチ部とドアの後端部との隙間から侵入するおそれがあり、この水や泥等の侵入を防止するためにドア後端部とホイールアーチ部との間を液密的にシールするシール部材が必要である。
【0004】
この種のシール部材をドアの後端部に設けたホイールアーチ部のシール構造に関して特許文献1がある。この特許文献1によるドアのシール構造について図を参照して説明する。
【0005】
図4に車体側部の要部断面図を示すように、タイヤハウスの周縁を形成するホイールエプロン101の端部102をフェンダパネル103のホイールアーチ部104によって車幅方向外側から覆うと共に互いに結合し、更にホイールアーチ部104を覆うアーチカバー105をクリップ106によってホイールアーチ部104に固定する。
【0006】
一方、インナパネル112及びアウタパネル113によって形成されるドア111の後端部によってフェンダパネル103のホイールアーチ部104を車幅方向外側から覆うと共に、インナパネル112から突出するアウタパネル113の後端縁、即ちドアエッジ部114をホイールアーチ部104側に向けて直角に折曲してフランジ部115を形成する。また、インナパネル112の内側面にフェンダパネル103に当接可能なウエザーストリップ116を配設して雨水等が車室内に浸入するのを防止する。
【0007】
更に、アウタパネル113に折曲形成されたフランジ部115の先端部に嵌合するドア装着部118及びアーチカバー105の外表面105aに圧接する圧接面119aを備えたリップ部119が一体形成されたシール部材117をクリップ120によってインナパネル112に固定する。このシール部材117によってドア111とアーチカバー105との隙間を閉鎖してアーチカバー105の外表面105aに雨水や泥水等が付着するのを防止する。
【0008】
また、フェンダパネルのホイールアーチ部に配設されたシール部材をドアの後端部に圧接するホイールアーチ部のシール構造がある。このシール構造の一例を車体側部の要部断面図を示す図5を参照して説明する。
【0009】
ホイールエプロン121の端部122をフェンダパネル123のホイールアーチ部124によって覆うと共に互いに結合する。この互いに結合されたホイールエプロン121の端部122とホイールアーチ部124によって形成されフランジ部125に、フランジ部125に装着される断面U字状のグリップ部127及びグリップ部127の外側面に中空状でかつ圧接面128aを備えたリップ部128が形成されたシール部材126を装着する。
【0010】
一方、インナパネル132の後端133を覆うようにアウタパネル134の後端135をヘミング加工によって結合して後端部136を形成したドア131を有し、ドア閉時状態においてドア131の後端部136の内面に形成された押圧面136aをシール部材126のリップ部128に形成された圧接面128aに圧接してドア131の後端部136とホイールアーチ部124との間を液密的にシールする。
【0011】
【特許文献1】特許第3624579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献1のホイールアーチ部のシール構造によると、ドア閉時においてドア111に装着されたシール部材117のリップ部119に形成された圧接面119aがホイールアーチ部104に装着されたアーチカバー105の外表面105aに圧接してアーチカバー105の外表面105aへの雨水や泥水等の付着が防止できる。また、フランジ部115の先端部がシール部材117のドア装着部118によって被覆されることから該部は、走行に伴い車輪Wによって巻き上げられて飛散した小石等によるチッピングが防止できる。
【0013】
しかし、シール部材117のリップ部118に形成された圧接面118aとアーチカバー105の外表面105aとの圧接部Aが車輪W、特にタイヤTのトレッド面Trと対向することから、走行に伴って車輪Wが巻き上げて飛散した泥や雪等がリップ部118の圧接面118aとアーチカバー105の外表面105aとの圧接部Aの付近に付着、或いは仮想線aで示すように堆積し、シール部材117のリップ部119とアーチカバー105との圧接部Aに浸入し凍結することが懸念される。更に接合面Aに浸入した水滴等の凍結によりドア111の開扉性に影響することが懸念される。
【0014】
また、アウタパネル113のフランジ部115の基端部分、即ちドアエッジ部114が車輪W側に対峙して露出することから、走行に伴い車輪Wによって巻き上げられて飛散した小石等によるチッピングが懸念され、更にチッピングによりドアエッジ部114の塗膜が破損して発錆を誘発する。この対策として仮想線114aで示すようにドアエッジ部114を被覆するテープ等のチッピングガード取り付けるとコストの増大を招くことになる。更に、繰り返されるシール部材117のリップ部119の当接及び圧接からホイールアーチ部114を保護するアーチカバー105が必要になり、更に構成部品点数の増加に伴うコストの増大が懸念される。
【0015】
また、図5に示すホイールアーチ部のシール構造にあっても、ホイールアーチ部124に装着されたシール部材126のリップ部128の圧接面128aとドア131の後端部136との圧接部Aが車輪W、特にタイヤTのトレッド面Trと対向することから、走行に伴って車輪Wによって巻き上げられて飛散した泥や雪等がシール部材126のリップ部128とドア131の後端部136との圧接部Aの付近に付着、或いは仮想線aで示すように堆積すると共に圧接部Aに浸入した水滴等が凍結することが懸念される。更に圧接部Aに浸入した水滴等の凍結によりドアの開扉性に影響することが懸念される。
【0016】
また、ドア131の後端部136が車輪Wと対峙して露出することから、走行に伴い車輪Wによって飛散した小石等によるチッピングが懸念され、かつチッピングによりドア131の後端部136の塗膜が破損して発錆を招く要因となる。この対策として仮想線で示すようにドア131の後端部136を被覆するテープ等のチッピングガード130を取り付けるとコストの増大を招くことになる。
【0017】
従って、かかる点に鑑みなされた本発明の目的は、コストの増大を招くことなくドア閉鎖状態においてシール部材の圧接面によって形成される圧接部への水滴等の浸入を防止すると共にドア端部がチッピングから保護されるホイールアーチ部のシール構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成する請求項1に記載のホイールアーチ部のシール構造の発明は、車輪を収容するタイヤハウスの周縁を形成するホイールアーチ部を、ドア閉時のドア端部によって車幅方向外側から覆う車両におけるホイールアーチ部のシール構造において、上記ホイールアーチ部に装着する取付部と、ドアの端部内面が圧接する圧接面及び該圧接面に沿ってドアの端部を被覆するドア保護部が形成されたリップ部とを有する中空状のシール部材を、備えたことを特徴とする。
【0019】
この発明によると、ドアの押圧面とリップの圧接面との圧接によって形成される接合部及びドアの端部がドア保護部によって覆われることから、走行等によって車輪によって巻き上げられて飛散する雪、泥、小石等は、ドア保護部によって受け止められて、接合部付近のへの雪や泥等の付着が抑制できる。これにより、ドア閉時においてシール部材のリップ部に形成された圧接面とドアの押圧面とが圧接する圧接部への水滴の浸入及び凍結が防止できる。また、走行により車輪によって巻き上げられて飛散した小石等によるドア端部のチッピングが防止でき、ドア端部の塗膜が保護されて発錆が抑制できる。
【0020】
従って、従来のようにホイールアーチ部にシール部材のリップ部等が繰り返し当接するホイールアーチカバーや、ドアの後端部をチッピングから保護するためのチッピングガード等が不要になりコストの低減が期待できる。
【0021】
請求項2に記載の発明は、請求項1のホイールアーチ部のシール構造において、上記取付部から上記タイヤハウス内に収容された車輪側に向かって突出形成された突起を備えたことを特徴とする。
【0022】
この発明によると走行等により車輪によって巻き上げられて飛散する雪、泥、或いはタイヤハウス内に付着して堆積する雪、泥等が突起の先端と車輪との間から排出されて、シール部材のリップ部側に付着或いは堆積することが回避でき、より確実にシール部材のリップ部に形成した圧接部とドアの押圧面とが圧接する圧接部への水滴の浸入及び凍結が防止できる。また、走行等によって車輪によって巻き上げられて飛散する雪、泥、小石等が、突起によって受け止められてシール部材のリップ部側へ飛散が抑制される。
【0023】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2のホイールアーチ部のシール構造において、上記リップ部のドア保護部は、上記圧接面に沿って車幅方向外方に膨出して上記タイヤハウス内の車輪側からドアの端部を覆うことを特徴とする。
【0024】
この発明によると、ドアの押圧面とリップ部の圧接面との圧接によって形成される接合部及びドアの端部が圧接面に沿って車幅方向外方に膨出するドア保護部によって覆われ、走行等によって車輪によって巻き上げられて飛散する雪、泥、小石等がドア保護部よって受け止められて、接合部付近のへの雪や泥等の付着が抑制できる。従って、ドア閉時においてシール部材のリップ部に形成された圧接面とドアの押圧面とが圧接する圧接部への水滴の浸入及び凍結が防止できる。また、走行により車輪によって巻き上げられて飛散した小石等によるドア端部のチッピングが防止でき、ドア端部の塗膜が保護されて発錆が抑制できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、ドアの押圧面とリップ部の圧接面との圧接によって形成される接合部及びドアの端部がドア保護部によって覆われ、接合部付近への雪や泥等の付着が抑制でき、ドア閉時においてシール部材のリップ部に形成された圧接面とドアの押圧面とが圧接する圧接部への水滴の浸入及び凍結が防止できる。また、走行により車輪によって巻き上げられて飛散した小石等によるドア端部のチッピングが防止でき、ドア端部の塗膜が保護されて発錆が抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明によるホイールアーチ部のシール構造の実施の形態を、ドアがリヤサイドドアの場合を例に図を参照して説明する。
【0027】
(第1実施の形態)
本発明の第1実施の形態を図1及び図2を参照して説明する。図1は本実施の形態によるホイールアーチ部のシール構造が適用される車両1の側面図であり、図2は図1のI−I線断面図である。なお、矢印Fは車体前方方向を示し、矢印OUTは車幅方向外方向を示す。
【0028】
図1に示すように車両1の側面には車室下部に沿って前後方向に延在するサイドシル2と、車室上部に沿って前後方向に延在するサイドレール3と、上下に延在してサイドシル2の前端とサイドレール3の前端とを連結するフロントピラー4と、上下に延在してサイドシル2の後端とサイドレール3の後端とを連結するリヤピラー5とを有している。これらフロントピラー4とリヤピラー5との間において上下方向に延在してサイドシル2とサイドレール3と連結するセンタピラー6を備えている。このフロントピラー4とセンタピラー6との間及びセンタピラー6とリヤピラー5との間にそれぞれ車体側部に開口するフロントサイドドア用のドア開口部及びリヤサイドドア用のドア開口部が形成される。
【0029】
図2に示すようにリヤサイドドア用のドア開口部の後方下部は車輪Wを収容するタイヤハウス10の周縁を形成するフェンダパネル11のホイールアーチ部12によって形成される。このホイールアーチ部12は車体前後方向に延在する面状であって車輪WのタイヤTの外側面、即ちタイヤTのトレッド面Trの車幅方向外方端とほぼ同じ車幅方向位置に設定され、ドア閉時のリヤサイドドア20の後端部21によって車幅方向外側から覆われる。
【0030】
ホイールアーチ部12の内面に沿ってホイールエプロン13の端部14が結合する。この互いに結合されるホイールアーチ部12とホイールエプロン13の端部14によって内側面15a及び外側面15bを有する取付フランジ部15が形成される。
【0031】
一方、リヤサイドドア20は、車室側となるインナパネル22と車体外側となるアウタパネル24とが対向配置され、インナパネル22には図示しないドアロック機構、ウインドレギュレータ等の各種艤装部品が取り付けられ前端がアウタパネル24の前端に結合される。リヤサイドドア20の後端部21は、インナパネル22の後端23を覆うようにアウタパネル24の後端25を折り返すヘミング加工によってインナパネル22とアウタパネル24が結合して形成される。また、この後端部21の内側面によってドア閉時に後述するシール部材31のリップ部33の外側面に形成され圧接面33cに圧接する押圧面21aが形成される。
【0032】
このリヤサイドドア20は、センタピラー6との間に架設された図示しない上下2個のヒンジによって開閉自在に支持され、後端近傍に設けられたドアロック機構によってリヤピラー5に閉鎖状態に保持される。
【0033】
ホイールアーチ部12とホイールエプロン13の端部14によって形成される取付フランジ部15にシール部材31が装着される。
【0034】
シール部材31は、取付フランジ部15の内側面15a及び外側面15bにそれぞれ当接する内側グリップ32a、外側グリップ32b及び内側グリップ32aと外側グリップ32bの基端側を連結する連結部32cを有して取付フランジ部15を、その端縁を覆うように挟持して取り付けられる断面U字状の取付部であるグリップ部32と、グリップ部32の外側グリップ32の外側面に沿って連続する中空状のリップ部33と、グリップ部32の連結部32cから車体後方、即ち車輪W方向に突出して車幅方向内側及び外側の内側面34a及び外側面34bを有する突起34が一体形成される。
【0035】
リップ部33は、一方の基端33aが内側グリップ32の先端近傍に連続し他方の基端33bが連結部32cの外方端、即ち内側グリップ32aの基端と連続する中空状であって、車幅方向外側にドア閉時のリヤサイドドア20の後端部21の内側面によって形成された押圧面21aが圧接する圧接面33cが形成される。更に、ドア閉時においてリヤサイドドア20の後端部21の内側に形成され押圧面21aが圧接面33cに圧接してリップ部33に変形が付与された状態において圧接面33cの後方、即ち車輪W側に沿って連続する圧接面33cから車幅方向外方に膨出してリヤサイドドア20の後端部21を後方となる車輪W側から覆うドア保護部33dが形成される。
【0036】
グリップ部32の連結部32cから車輪W方向に向けて突出する突起34は、基端から先端となる車輪W側に移行するに従って内側面34aと外側面34bが互いに接近する断面略三角形であって、内側面34aは、基端が連結部32cの内方端に連続すると共に先端の車輪W側に移行するに従って漸次車体外方に移行する滑らかな断面凹面状に形成され、その先端が車輪WのタイヤTの外側面、即ちタイヤTのトレッド面Trの車幅方向外方端より車幅方向外方に位置している。一方、外側面34bは前端が連結部32cの外方端、即ち中空状のリップ部33の基端32bに連続にすると共に前後方向に延在するほぼ平面状であり、内側面34aの先端と外側面34bの先端は車幅方向に延在する端面34cによって連結される。
【0037】
このように形成されたシール部材31を備えた車両は、リヤサイドドア20が閉鎖状態においてリヤサイドドア20の後端部21に形成された押圧面21aがシール部材31のリップ部33に形成され圧接面33cに圧接される。
【0038】
このリヤサイドドア20の押圧面21aとリップ部33の圧接面33cとの圧接によってリップ部33が弾性変形し、リヤサイドドア20の押圧面21aとシール部材31の圧接面33cとが密接し、押圧面21aとシール部材31の圧接面33cとによって接合部Aが形成される。更に、リップ部33の弾性変形に伴ってリップ部33の圧接面33cの端部から車体幅方向外方に膨出するドア保護部33dによってリヤサイドドア20の後端部21が車輪W側から覆われる。
【0039】
一方、走行等によって車輪W、主にタイヤTの接地面となるトレッド面Trによって巻き上げられて飛散する雪、泥、小石等は、シール部材31に突出形成された突起34によって受け止められて、突起34の先端より車幅方向外方でかつ車体前方に配設されたリップ部33側へ飛散が抑制される。特にリップ部33のドア保護部33dによって車輪W側が覆われたリヤサイドドア20の押圧面21aとリップ部33の圧接面33cとが圧接する圧接部A付近への雪や泥等の付着が抑制できる。
【0040】
また、リヤサイドドア20の後端部21の車輪W側がドア保護部33dによって覆われて飛散する小石等から保護されてチッピングが防止されて、塗膜の破損が回避されて発錆が防止できる。
【0041】
一方、走行等によって車輪W、主にタイヤTの接地面となるトレッド面Trによって巻き上げられて飛散する雪、泥は、タイヤハウス10を形成するホイールエプロン13等に付着し、仮想線aで示すように堆積するが、該部に付着及び堆積する雪や泥は、図2の矢印Dで示すようにシール部材31に形成された突起34の内側面34aに沿って後方に誘導されて、突起34の先端と車輪Wとの間から車両1の後方に排出されて、シール部材31のリップ部32側における雪や泥の付着及び堆積が防止できる。
【0042】
従って、ドア閉時においてシール部材31のリップ部32に形成された圧接面33cとリヤサイドドア20の押圧面21aとが圧接する圧接部Aへの水滴の浸入及び凍結が防止でき、リヤサイドドア2の良好な開扉性が確保できる。
【0043】
また、シール部材31が、内側グリップ32a、外側グリップ32b及び内側グリップ32aと外側グリップ32bの基端側を連結する連結部32cを有して取付フランジ部15を、その端縁を覆うように挟持して取り付けられる断面U字状のグリップ部32を備えることから、シール部材31が安定した状態でホイールアーチ部12に取り付けられると共に、グリップ部32によってホイールアーチ部12を含む取付フランジ部15が被覆され、走行等によって車輪Wによって巻き上げられて飛散する雪、泥、小石等からホールアーチ部12が保護される。
【0044】
更に、ホイールアーチ部12にシール部材31を取り付けると共にシール部材31によりリヤサイドドア20の後端部21をチッピングから保護することから、従来のようにホイールアーチ部にシール部材のリップ部等が繰り返し当接することがなくホイールアーチカラーやドアの後端部をチッピングから保護するためのチッピングガード等が不要になるコストの低減が期待できる。
【0045】
(第2実施の形態)
本発明の第2実施の形態を図3を参照して説明する。なお、図3において図1及び図2と対応する部位に同一符号を付することで該部の詳細な説明は省略する。
【0046】
図3は第1実施の形態の図2に対応する要部断面図であり、図3(a)はリヤサイドドア20の閉鎖前の状態を示し、図3(b)は閉鎖状態を示す。
【0047】
本実施の形態と第1実施の形態は、シール部材が異なる、他の構成は第1実施の形態と同様であり、シール部材を主に説明する。
【0048】
図3(a)に示すように本実施の形態におけるシール部材41は、ホイールアーチ部12とホイールエプロン13の端部14によって形成される取付フランジ部15を挟持して取り付けられる内側グリップ32a、外側グリップ32b及び連結部32cを有する断面U字状の取付部であるグリップ部32と、グリップ部32の外側グリップ32bの外側面に沿って連続する中空状のリップ部43と、グリップ部32の連結部32cから車体後方、即ち車輪W方向に突出する突起34が一体形成される。グリップ部32及び突起34は第1実施の形態と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0049】
リップ部43は、一方の基端43aが内側グリップ32の先端近傍に連続し他方の基端43bが連結部32cの外方端に連続する中空状であって、車幅方向外側にドア閉状態でリヤサイドドア20の後端部21に形成された押圧面21aが圧接する圧接面43cが形成される。更に、圧接面43cに隣接して断面フック状のドア保護部43dが突出形成される。
【0050】
そして、図3(b)のようにリヤサイドドア20を閉鎖すると、リヤサイドドア20の後端部21に形成された押圧面21がシール部材41のリップ部43に形成され圧接面43cに圧接する。
【0051】
このリヤサイドドア20の押圧面21aがリップ部43の圧接面43cに圧接すると、圧接によってリップ部43が弾性変形し、リヤサイドドア20の押圧面21aとシール部材41の圧接面43cとが密接して接合部Aが形成されると共に、リップ部43の弾性変形に伴ってリップ部43にフック状に突出形成されたドア保護部43dが揺動してリヤサイドドア20の後端部21を車輪W側から巻き込み被覆する。
【0052】
また、リヤサイドドア20の開放に伴ってリヤサイドドア20の押圧面21aがリップ部43の圧接面43cから離れ、押圧面21aによる押圧が解除されたシール材41のリップ部43は弾性復元して図3(a)に示すようにドア保護部43dが揺動してリヤサイドドア20の後端部21の被覆を解除する。
【0053】
従って、リヤサイドドア20の閉鎖に伴い確実にリップ部43にフック状に突出形成されたドア保護部43dが揺動してリヤサイドドア20の後端部21を車輪W側から巻き込み被覆する。
【0054】
本実施の形態によると、第1実施の形態に加え、シール部材41の中空状のリップ部43の圧接面43cに隣接してフック状のドア保護部43dを突出形成する簡単な構成によってより確実にリヤサイドドア20の後端部21をチッピングから保護することができる。
【0055】
また、フック状のドア保護部43dはリップ部43の必要な部位にのみ設置することもできる。必要な部位にのみドア保護部43dを設置することによって、ドア保護部43dの突出量が抑制されて外観性の向上が得られる。
【0056】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記各実施の形態では、ドアがリヤサイドドアの場合を例に説明したが、フロントサイドドア等他のドアの端部によりホイールアーチ部が覆われるホイールアーチ部のシール構造に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1実施の形態によるホイールアーチ部のシール構造が適用される車両1の側面図である。
【図2】図1のI−I線断面図である。
【図3】本発明の第2実施の形態によるホイールアーチ部のシール構造の概要を示す図2に対応する断面図であり、(a)はドア開放状態を示し、(b)はドア閉鎖状態を示す。
【図4】従来のホイールアーチ部のシール構造の概要を示す断面図である。
【図5】従来のホイールアーチ部のシール構造の概要を示す断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 車両
10 タイヤハウス
11 フェンダパネル
12 ホイールアーチ部
14 端部
15 取付フランジ部
20 リヤサイドドア
21 後端部(端部)
21a 押圧面
31 シール部材
33 リップ部
33c 圧接面
32 グリップ部(取付部)
32a 内側グリップ
32b 外側グリップ
32c 連結部
33 リップ部
33c 圧接面
33d ドア保護部
34 突起
41 シール部材
43 リップ部
43c 圧接面
43d ドア保護部
W 車輪
T タイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を収容するタイヤハウスの周縁を形成するホイールアーチ部を、ドア閉時のドア端部によって車幅方向外側から覆う車両におけるホイールアーチ部のシール構造において、
上記ホイールアーチ部に装着する取付部と、
ドアの端部内面が圧接する圧接面及び該圧接面に沿ってドアの端部を被覆するドア保護部が形成されたリップ部とを有する中空状のシール部材を、備えたことを特徴とするホイールアーチ部のシール構造。
【請求項2】
上記取付部から上記タイヤハウス内に収容された車輪側に向かって突出形成された突起を備えたことを特徴とする請求項1に記載のホイールアーチ部のシール構造。
【請求項3】
上記リップ部のドア保護部は、
上記圧接面に沿って車幅方向外方に膨出して上記タイヤハウス内の車輪側からドアの端部を覆うことを特徴とする請求項1または2に記載のホイールアーチ部のシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−29273(P2009−29273A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−195675(P2007−195675)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】