説明

ホイール

【課題】 タイヤの内部に組み込まれている、作動のために電力の供給を必要とする電気装置に、バッテリや乾電池を用いることなく、電力を供給することができるホイールを提供する。
【解決手段】 このホイールに装備されている電気装置(100)は、加圧下でタイヤ内に閉じ込められている気体と、タイヤの外部に存在している大気との間の圧力差を、この電気装置(100)への電力供給のために用いられる電気エネルギーに変換するための変換システム(200、2)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールに関する。
【0002】
ホイールは、自動車などの車両に使用される。
【背景技術】
【0003】
従来のホイールには、タイヤ、および作動のために電力の供給を必要とする電気装置が設けられている。
【0004】
通常、この電気装置は、加圧下でタイヤ内に閉じ込められている気体と、タイヤの外部の大気との間の圧力差のセンサである。このセンサは、タイヤへの気体の注入量の不足や、タイヤのパンクを運転者に知らせるために用いられる。
【0005】
一般に、この電気装置は、保護のために、タイヤの内部に収容されている。したがって、この電気装置を、電力を供給するために、自動車のバッテリに電気的に接続することは困難である。また、この装置に、電池から電力を供給することも困難である。電池から電力を供給する場合には、その電池はタイヤの内部に配置されることになるから、電池の交換が困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6392313号公報
【特許文献2】国際公開第WO03/056691号公報
【特許文献3】国際公開第WO06/095039号公報
【特許文献4】国際公開第WO07/082894号公報
【特許文献5】フランス国特許公開第2897486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、この電気装置に電力を供給するための別の手段が求められている。例えば、タイヤの内部で電気エネルギーを発生させて、その電力を電気装置に供給するために、例えば衝撃または振動によって引き起こされる、ホイールの加速度を利用することが提案されている。この解決方法は、電気装置に電力を供給するという問題の解決には、大いに寄与している。しかし、自動車が、長期間にわたって使用されていない場合には、バッテリは、ホイールの加速度から電気エネルギーへの変換を起こさせるためのトリガーとして用いられて、完全に放電してしまう。したがって、電気装置に電力を供給することは、もはや不可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、この問題を解決することを目的としており、この目的を達成するために、本発明は、電気装置が、加圧下でタイヤ内に閉じ込められている気体と、タイヤの外部に存在している大気との間の圧力差を、電気装置への電力供給のために用いられる電気エネルギーに変換するための変換システムを備えているホイールを提供するものである。
【0009】
このホイールにおいて、電気エネルギーの生成に用いられるものは、タイヤ内に閉じ込められている気体と、大気との間の圧力差である。したがって、ホイールが停止しているときでさえ、したがって、自動車が長期間使用されていなかった後でさえ、電気エネルギーを生成することができる。
【0010】
このホイールの実施形態では、次の特性のうちの1つまたは複数を備えている場合がある。
− 変換システムは、次のものを備えている。
・ 加圧下でタイヤ内に閉じ込められている気体に流体的に連絡している入口ノズル。
タイヤの外部に存在している大気に流体的に連絡している出口ノズル。
・ 入口ノズルから出口ノズルまで流れる際に膨張する気体の作用によって変位することができる少なくとも1つのアーム。
・ アームの変位によって生じる機械エネルギーを、センサへの電力供給のために用いられる電気エネルギーに変換することができる電気機械トランスデューサ。
− ホイールは、入口ノズルから出口ノズルまで流れる気体の流量を、10-53/sec未満または10-63/sec未満に制限することができるボトルネック状部を有している。
− 出口ノズルは、外部に漏れ出る気体の流量を、10-83/sec未満に制限することができる孔を介して、タイヤの外部の大気に流体的に連絡されている。
− 電気装置は、加圧下でタイヤ内に閉じ込められている気体と、タイヤの外部に存在している大気との間の圧力差のセンサである。
− 電気機械トランスデューサは、アームの変位によって生じる機械エネルギーを、圧力差を表わす物理量として、さらに用いることができる電気エネルギーに変換することができる。
− センサは、圧力差を表わす測定値を、無線リンクを介して、遠隔の受信器に送信することができる無線送信器を備えており、この無線送信器には、変換システムによって生成される電気エネルギーだけによって、電力が供給される。
− 変換システムは、少なくとも2つの変位可能なアームを備えており、これらのアームの間を、これらのアーム同士の相対的な変位を伴いながら、上述の気体は、入口ノズルから出口ノズルまで通過して流れる。これらのアームは、それらの変位中に、体積を増しながら、入口ノズルから遠ざかって、出口ノズルに到達する、上述の気体のための少なくとも1つのポケットを画定するようになっており、互いに相対的に変位することができる。
− これらのアームは、互いの間に入り込み合った渦巻状に形成されている。
− 電気装置は、加圧下でタイヤ内に閉じ込められている気体と、タイヤの外部に存在している大気との間の圧力差のセンサであり、変換システムは、2つの変位可能なアームであって、それらのアームの間を、流体が、入口ノズルから出口ノズルまで通過して流れることによって、互いに相対的に変位し、その変位中、体積を増しながら、入口ノズルから遠ざかって、出口ノズルに到達する、気体のための少なくとも1つのポケットを画定するように渦巻状に作られており、互いに対して相対的に変位することができる2つの変位可能なアームを備えているマイクロシステムとは異なっている。
【0011】
ホイールの、これらの特性を備えている実施形態は、さらに、次の長所を有している。
− 気体の流量を10-53/sec未満に制限するボトルネック状部を用いることによって、あまりにも急速に、ホイールから空気が漏れ出ることが防止される。
− 気体の流量を10-83/sec未満に制限することによって、圧力の低下を無視できるほどにしながら、6か月間以上に亘って、電気エネルギーを連続的に生成することができる。
− 生成された電気エネルギー量を、タイヤ中に閉じ込められている気体と大気との間の圧力差を表わす物理量として、さらに用いることにより、この圧力差のセンサを容易に作ることができる。
− 圧力差から生成される電気エネルギーで、無線送信器に電力を供給することによって、自立的な圧力差センサが得られる。
− 変位中に、入口ノズルから遠ざかって出口ノズルに到達する、気体流のための少なくとも1つのポケットを画定するようになっており、互いに相対的に変位可能である複数のアームを用いることによって、非常に低い気体流量においてさえ、極めて高いエネルギー効率で、圧力差を機械的運動に変換することができる。また、入口ノズルに逆止弁を設ける必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】電気装置を組み込んだホイールの一部を切欠した斜視図である。
【図2】図1の電気装置の詳細なブロック図である。
【図3】図1の電気装置の、圧力差のセンサである場合の略図である。
【図4】図1のホイールのバルブの断面図である。
【図5】流体内の圧力差を機械的運動に変換するためのマイクロシステムの原理を示す図である。
【図6】図5のマイクロシステムのアームの変位を、時間の関数として示すグラフである。
【図7】図5のマイクロシステムの動作を説明する図である。
【図8】図5のマイクロシステムの具体的な一実施形態の平面図である。
【図9】図5のマイクロシステムの製造方法のフローチャートである。
【図10】図5のマイクロシステムの製造方法の1ステップを示す断面図である。
【図11】図5のマイクロシステムの製造方法の、図10のステップに続くステップを示す断面図である。
【図12】図5のマイクロシステムの製造方法の、図11のステップに続くステップを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面を参照して、単に非限定的な例として示す以下の説明を読むことによって、本発明を、より明瞭に理解することができると思う。
【0014】
図面において、同一の要素には、同一の符号を付してある。
【0015】
以下の記述において、当業者に公知の特性および機能については、詳細には説明しない。
【0016】
図1は、次のものを備えるホイール110を示している。
− 内部に圧縮気体が閉じ込められているタイヤ112。
− 作動のために電気エネルギーの供給を必要とする電気装置100。
【0017】
以下の説明において、圧縮気体は、タイヤに注入するために用いられる圧縮空気であるとする。しかしながら、タイヤ112への注入のために、窒素などの他の気体を用いることもできる。
【0018】
ホイール2は、例えば乗用車などの自動車用のホイールである。
【0019】
タイヤ112は、リム114に取り付けられている。電気装置100は、この装置のための保護ケーシングとして働くタイヤ112の内部に配置されている。
【0020】
図2は、電気装置100の全体構造の、より詳細なブロック図である。電気装置100は、加圧してタイヤ112内に閉じ込められている空気と、このタイヤの外部に存在している大気との間の圧力差を電気エネルギーに変換するための変換システム200を有している。タイヤの外部の大気の気圧は、大気圧である。この電気エネルギーは、電気装置100の電気部品セット202に電力を供給するために用いられる。
【0021】
電気部品セット202は、変換システム200の動作に必要な電気部品、および電気装置100が行わなければならない各機能を実行するために必要な他の電気部品を備えている。電気部品セット202は、例えば無線通信用の送受信器、および電子制御ユニットを備えている。
【0022】
変換システム200は、次のものを備えている。
− タイヤ内に閉じ込められている空気と大気との間の圧力差を、機械エネルギーに変換することができるトランスデューサ204と、
− この機械エネルギーを、電気部品セット202への電力供給に用いられる電気エネルギーに変換することができるトランスデューサ206。
【0023】
トランスデューサ204は、タイヤ112の内部に閉じ込められている空気に流体的に連通している入口ノズル208、および大気に流体的に連通している出口ノズル210を有している。
【0024】
入口ノズル208と出口ノズル210とのうちの少なくとも一方には、トランスデューサ204を通過する空気の流量を制限することができるボトルネック状部212が形成されている。
【0025】
このボトルネック状部212は、空気の流量が非常に少なくなるような形状、すなわち100ml/sec、10ml/secまたは1ml/sec未満になるような形状に作られている。この例においては、ボトルネック状部212は、例えば100μl/sec未満、好ましくは10μl/sec以下の空気の流量しか生じないような形状に作られている。
【0026】
このような100μl/secの流量では、トランスデューサ204を介する、タイヤ112からの漏洩によって、3.94×10-23の空気の容積を有するタイヤにおいては、6か月間に8mBarの圧力降下を生じるだけであり、無視できる量である。したがって、電気装置100は、車両の所有者が、タイヤ112に空気を再注入する必要なく、6か月間を超過して作動し続けることができる。
【0027】
トランスデューサ204は、入口ノズル208と出口ノズル210との間に、入口ノズル208から出口ノズル210に流れていくときに膨張する空気の作用によって変位することができる少なくとも1つのアームを有している。
【0028】
図2に示す特定の例においては、膨張する空気の作用によって変位する部品は、中心部218と、そのまわりのいくつかのブレード220によって形成されているタービン216である。各ブレード220は、変位可能なアームに相当する。このタービンは、入口ノズル208から出口ノズル210へと流れる空気によって回転駆動される。
【0029】
電気装置100によって必要とされる空間を制限するために、変換システム200は、マイクロシステムで構成されている。
【0030】
マイクロシステムは、例えばMEMS(微小電気機械システム)である。このようなマイクロシステムは、それらの製造方法からも、巨視的機械システムto
は異なっている。このようなマイクロシステムは、マイクロ電子チップの製造におけると同様に、バッチ製造方法によって製造される。マイクロシステムは、例えば単結晶シリコンから成るウエハまたはガラスに対する、フォトリソグラフィおよびエッチング(例えばDRIE、すなわち深堀り反応性イオンエッチング)による加工、および/またはエピタキシャル成長および金属材料の被着による多層化によって製造される。
【0031】
このような製造方法のために、マイクロシステムは小さく、一般に、寸法の少なくとも1つがマイクロメートルの範囲にある加工部分または加工部分の一部を有する。マイクロメートルの範囲のこの寸法は、一般に200μmより小さく、例えば1〜200μmである。
【0032】
マイクロシステムの形態のトランスデューサ204および206のいくつかの例が公知である。
【0033】
この点に関して、例えば圧縮気体を膨張させることができるマイクロタービン、およびこのマイクロタービンの回転運動から電気エネルギーへの変換のために、マイクロタービンと組み合わされるトランスデューサの一例として、特許文献1を参照することができる。例えばマイクロシステムである変換システム200は、加圧気体が、可燃混合気体の燃焼によるものではなく、加圧下でタイヤ112の内部に閉じ込められている空気であるという点を除いて、特許文献1に記載されているマイクロシステムと同じである。したがって、特許文献1に記載されている、気体の圧縮のために用いられるマイクロモータの一連の素子を省略することができる。例えば特許文献1の図1に関して述べると、マイクロコンプレッサ(ディスク18、ブレード20など)、燃料噴射器24、燃焼マイクロチェンバ30などを省略することができる。
【0034】
本発明の例におけるタービン216は、特許文献1において図1を参照して説明されているタービン(バルブ34、ディスク36、ブレード38、シャフト40など)と同じである。
【0035】
トランスデューサ206の一実施例が、例えば特許文献1の図6に記載されている。
【0036】
トランスデューサ204および206の他の多くの例が可能である。特に、単一の振動アームを備える例が、例えば特許文献2および特許文献3に記載されている。
【0037】
トランスデューサ204および206の特定の一実施形態を、図5〜図8を参照して、後に説明する。
【0038】
図3は、加圧下でタイヤ112内に閉じ込められている空気と、このタイヤの外部の大気との間の圧力差のセンサである特定の場合として、電気装置100を示している。
【0039】
圧力差のセンサとして動作するために、電気装置100は、トランスデューサ204のアームの変位によって生み出される機械エネルギーが、入口ノズル208と出口ノズル210との間の圧力差の関数である(例えば比例する)という事実を利用している。さらに、トランスデューサ206によって生み出される電気エネルギーが、トランスデューサ206によって受け取られる機械エネルギーの関数であるから、この電気エネルギーも、入口ノズル208と出口ノズル210との間の圧力差の関数である。変換システム200のこの特性を用いることによって、圧力差のセンサを作ることができる。
【0040】
図3において、電気部品セット202は、次のものを有している。
− 電気装置100によって生成された電気エネルギーを蓄えるための、キャパシタなどの蓄電装置26と、
− 変換システム200を制御するための制御ユニット28と、
− 蓄電装置26の充電および放電を管理するための管理回路102と、
− 入口ノズル208と出口ノズル210との間の圧力差を表わす情報を、遠隔の無線受信器に通信することができる無線送信器104。
【0041】
電気装置100は、例えば蓄電装置26の充電量があらかじめ定められた閾値F1を超過するとすぐに、無線送信器104を通じて、特性信号を送出する。したがって、測定される圧力差は、2つの送信間の経過時間の関数である(例えば比例する)。したがって、受け取ったデータから、入口ノズル208と出口ノズル210との間の圧力差を推定することが可能である。
【0042】
閾値F1は、電気部品セット202への電力供給、特に特性パルスの送信のために、無線送信器104への電力供給を可能にするように定められている。したがって、この実施形態においては、電気装置100は、その動作のために、何らの外部電源も必要としない。実際、電気装置100は、そのエネルギー源として、入口ノズル208と出口ノズル210との間の圧力差しか用いない。したがって、電気装置100は、圧力差から取り出されるエネルギー以外のエネルギーの源を必要とせず、エネルギー的に自立していると言うことができる。
【0043】
図4は、タイヤ112内への電気装置100の実装の一例を示している。より具体的には、タイヤ112は、ホイール110に空気を注入することができるバルブステム116を有している。従来通りに、このバルブステム116は、何らの自由度なしにタイヤ112に固定されているスリーブ118、および可動のチェックバルブ120から成っている。このチェックバルブ120は、タイヤ112を気密にシールしている静止位置と、タイヤ112内に圧縮空気を取り込むことができる動作位置との間で変位可能である。
【0044】
この例においては、出口ノズル210の通路が、このチェックバルブ120内を通り、それによって、出口ノズル210が外部の大気に連絡するように、孔124が、チェックバルブ120の側面を貫いて形成されている。
【0045】
この実施形態においては、電気装置100は、何らの自由度なしにチェックバルブ120に固定されている。
【0046】
したがって、チェックバルブ120が静止位置にあるときに、圧縮空気は、電気装置100および孔124を介して漏洩する。この空気の漏洩の流量は非常に小さい、すなわち1ml/sec未満である。この例においては、孔124は、例えば空気の漏洩をわずかに100μl/sec未満、好ましくは10μl/sec以下にすることができるサイズである。
【0047】
図5は、流体内の圧力差を機械的運動に変換するためのマイクロシステム2の特定の一例を示している。このマイクロシステム2は、図1〜図4を参照して説明した実施形態における変換システム200として用いることができる。
【0048】
マイクロシステム2は、入口ノズル6を介して、圧縮流体に流体的に連絡されており、かつ出口ノズル8を介して、膨張流体に流体的に連絡されている、閉じたチャンバ4を有している。チャンバ4は、このチャンバ内の膨張流体が、出口ノズル8を通る以外に漏れ出ることができないように、気密にシールされている。
【0049】
チャンバ4の内部で、入口ノズル6は、渦巻体を用いた膨張機10に流体的に連絡されている。この渦巻体を用いた膨張機は、「スクロール」膨張機としても知られている。
【0050】
膨張機10は、互いに対して相対的に変位可能な2つのアーム12および14によって形成されている。アーム12および14は、それらが入口ノズル6からの流体の作用下で変位するときに、体積を増しながら、入口ノズル6から遠ざかって、出口ノズル8に近づいていく流体のための少なくとも1つのポケットを画定するように、変位可能となっている。例えばアーム12および14は、渦巻状に形作られており、互いに入り込み合っている。各渦巻は、入口ノズル6から出口ノズル8に向かって同時に移動していく、流体のためのいくつかのポケットを画定するために、少なくとも1つ、またはそれ以上のターンを有している。アーム12および14は、それぞれの接続部16および18を介して、固定平面20に機械的に接続されている(図8)。図5を単純化するために、図5においては、固定平面20への固着点21だけが示されている。固定平面20は、直交する2つの方向XおよびYに平行に配置されている。接続部16および18は、弾性的であることが好ましい。
【0051】
接続部16および18は、それぞれ方向YおよびXを向くアーム12および14の並進運動のみを可能にしている。
【0052】
各アーム12、14は、さらに、それぞれの電気機械トランスデューサ22、24に機械的に接続されている。各電気機械トランスデューサは、アームの機械的運動を電気エネルギーに変換することができる。
【0053】
例えば電気機械トランスデューサ22、24は、その出力を、蓄電装置26(図3)などの電気エネルギー蓄積装置に接続されている。
【0054】
電気機械トランスデューサ22および24は、電気エネルギーに変換される機械エネルギーの量を調整するように制御可能な電気機械トランスデューサである。したがって、電気機械トランスデューサ22および24は、さらに、制御可能な制動装置の機能を満たしている。
【0055】
電気機械トランスデューサ22および24は、制御ユニット28(図3)によって制御される。制御ユニット28は、電気機械トランスデューサ24および22によって生成されたそれぞれの電力を表わす物理値のセンサ30および32に接続されている。センサ30および32は、生成される電力の位相を測定するために用いることもできる。
【0056】
機械的移相器36が、アーム12と14との間に機械的に接続されている。この機械的移相器36は、アーム12と14との振動(往復)運動間のπ/2ラジアンの位相ずれの発生を機械的に補助する機能を有している。さらに、この機械的移相器36は、アーム12および14に機械的に接続されたばね38によって形成されている。このばね38は、例えば板ばねである。このばね38は、2つのアーム12および14、およびばね38によって形成されている系を、共振周波数で共振する系にする。アーム12と14との振動運動間の位相ずれが、π/2ラジアンのずれになったときに、共振周波数に到達する。共振周波数においては、マイクロシステムのエネルギー効率は最大になる。
【0057】
制御ユニット28は、共振周波数で動作するように、電気機械トランスデューサ22および24を制御することができる。例えばセンサ30および32によって測定された情報に基づいて、制御ユニット28は、アーム12と14との振動運動間の位相ずれを計算し、この位相ずれが値π/2になるように自動制御する。
【0058】
この動作中に、マイクロシステム2によって消費されるエネルギーを制限するために、制御ユニット28は、電気機械トランスデューサ22および24によって生成される電気エネルギーを供給される。このために、制御ユニット28は、例えば電気エネルギー蓄積装置に電気的に接続されている。
【0059】
図6は、アーム12および14の、それぞれ方向YおよびXに沿った変位の時間経過を示している。より具体的には、曲線44および46は、それぞれアーム12および14の変位を示している。これらの変位は正弦波状であり、かつ互いにπ/2ラジアンだけ位相ずれしている。
【0060】
定常モードにおいては、各アームは、2つの極限位置(図2において、アーム14に対してはXmaxおよびXmin、アーム12に対してはYmaxおよびYminと記されている)間の振動運動すなわち往復運動を行う。
【0061】
アーム12および14の変位によって、体積を増しながら、入口ノズル6から出口ノズル8に向かって渦巻を描くように移動していく、流体のためのいくつかのポケットが画定される。より具体的には、流体のための各ポケットは、入口ノズル6のまわりに回転しながら、入口ノズル6から遠ざかるように移動する。
【0062】
図7は、入口ノズル6から出口ノズル8に向かう、流体のためのポケット50の移動を示す、より詳細な図である。
【0063】
初期状態(状態I)において、ポケット50は、入口ノズル6と流体的に連絡している。したがって、このポケット50は、圧縮流体で満たされている。次の状態(状態II)において、アーム12および14は、このポケット50を入口ノズル6から流体的に分離するように、互いに対して相対的に変位する。
【0064】
その後、一連の状態(状態III〜VI)で示されているように、ポケット50は、入口ノズル6のまわりに渦巻運動をしながら、入口ノズル6から出口ノズル8まで移動する。より具体的には、アーム12および14の各々が、完全な1往復運動を行うと、ポケット50は、状態Iに示されているポケット50の位置から、状態Iに示されている位置52に移動する。したがって、入口ノズル6のまわりの完全な1回転が行われる。
【0065】
渦巻形状のアーム12および14は、入口ノズル6のまわりに数回巻き付けられているから、アーム12および14の次の振動サイクルにおいて、ポケット50は、入口ノズル6のまわりのさらなる1回転を行うが、まだ、入口ノズル6から少し遠ざかるだけである。より具体的には、この完全な1回転の後に、ポケット50は、位置54(状態I)を占める。最終的に、ポケット50の最後の回転の後に、ポケット50は、位置56(状態I)を占める。この位置56において、ポケット50は、出口ノズル8に流体的に連絡し、したがって、膨張した流体は、ポケット50から漏れ出ることができる。
【0066】
アーム12および14は、入口ノズル6から出口ノズル8まで、ともに体積を増しながら移動する少なくとも2つのポケットを同時に画定するような形状に作られている。図7に示す特定の例においては、アーム12および14は、入口ノズル6から出口ノズル8まで同時に移動する、流体のための6つのポケットを画定するような形状に作られている。
【0067】
したがって、流体が膨張機10内で膨張するときに、この膨張のエネルギーが、アーム12および14の機械的運動に変換されることは容易に理解しうることである。図5に示す特定の例においては、この機械的運動は、電気機械トランスデューサ22および24によって、電気エネルギーに変換される。
【0068】
図8は、マイクロシステム2の一実装例を示している。
【0069】
例えば接続部16および電気機械トランスデューサ22は、配置されている位置を除いて、接続部18および電気機械トランスデューサ24と同一である。したがって、以後において、接続部16および電気機械トランスデューサ22だけを、より詳細に説明する。
【0070】
接続部16は、何らの自由度なしにアーム12に固定された平行四辺形板60を有している。したがって、この平行四辺形板60は、固定平面20に平行に、方向Yに沿って並進変位する。平行四辺形板60は、ビーム62を介して、固定平面20に機械的に接続されている。各ビーム62の一端は、何らの自由度なしに平行四辺形板60に固定されており、同じく他端は、何らの自由度なしに固定平面20に固定されている固着点21に固定されている。ビーム62は、固定平面20に、直接的には固定されていない。各ビーム62は、方向Xに平行に延在していることが好ましい。さらに、各ビーム62は、流体がアーム12と14との間に画定されたポケット中で膨張するときに撓むことができるほどに十分に薄い。このような構成によって、アーム12は、もっぱら方向Yに沿って変位することができる。
【0071】
電気機械トランスデューサ22は、アーム12の変位によって生成される機械エネルギーを電気エネルギーに変換するために、例えば可変容量キャパシタを用いる。可変容量キャパシタを介する、機械エネルギーから電気エネルギーへの変換は公知である。このような変換は、例えば特許文献4および特許文献5において説明されている。したがって、この変換メカニズムについては、詳細に説明しない。本明細書においては、可変容量キャパシタは、交差櫛状に作られている。より具体的には、可変容量キャパシタの一方の電極板66は、何らの自由度なしに、平行四辺形板60に固定されている。この可変容量キャパシタの他方の電極板68は、何らの自由度なしに、固定平面20に固定されている。したがって、平行四辺形板60が変位すると、それによって、可変容量キャパシタの容量が変化する。この容量の変化が、機械エネルギーから電気エネルギーへの変換に用いられる。可変容量キャパシタの電極板の少なくとも一方は、エレクトレットを有していることが好ましい。実際、エレクトレットを有している場合には、電気機械トランスデューサ22は、外部電気エネルギー源からの、予備的な電気エネルギーの付加入力を要することなく、電気エネルギーの生成を開始することができる。
【0072】
次に、マイクロシステム2の製造方法の一例を、図9に示す方法、および図10〜図12に示す実例を参照して説明する。
【0073】
最初に、ステップ80において、中間に犠牲層82を有するプレートをエッチングする。通常、このプレートはSOI(シリコンオンインシュレータ)プレートである。したがって、このプレートは、犠牲層82を挟んで、一方にはシリコン層84、他方には絶縁体層86を有している。ステップ80において、渦巻状のアーム、接続部、および可変容量キャパシタが、エッチングによって、シリコン層84内に同時に形成される。図10において、このようにエッチングによって形成されたマイクロシステムが、ブロック90で示されている。ブロック90は、犠牲層82上にある。
【0074】
次に、ステップ92において、犠牲層82のうちの、ブロック90の下に位置している部分が除去される。この犠牲層を除去するために、例えば化学エッチングが用いられる。この時点から、渦巻状のアーム12および14、接続部の平行四辺形板、および可変容量キャパシタの電極板66は、絶縁体層86の上面によって構成されている固定平面20に相対的に並進変位することができる(図11を参照)。
【0075】
次に、ステップ94において、カバー層96が形成される。このカバー層96は、ブロック90を除くシリコン層84の上面に接するように作られる。カバー層96は、例えばガラスから成っている。このカバー層96に、入口ノズル6および出口ノズル8が形成される。図12においては、入口ノズル6だけが示されている。
【0076】
さらに、電気機械トランスデューサ22および24と、制御ユニット28および蓄電装置26とを電気的に接続するために、シリコン層84への通路を形成する孔が、カバー層96内に設けられる。図12においては、シリコン層84への1つの通路孔98だけが示されている。
【0077】
図10〜図12において、犠牲層82の厚さ、およびカバー層96とブロック90との間のスペースは、誇張されていることに注意されたい。実際には、犠牲層82の厚さ、およびカバー層96とブロック90との間のスペースは、膨張機10内で膨張した流体を、アーム12と14との間に閉じ込め続けることができるほどに十分に薄い。
【0078】
他の多くの実施形態が可能である。例えば電気装置100は、必ずしも自立的である必要はない。例えばホイールの外部の機器によって、非接触で再充電可能な電池などの他のエネルギー源によって生成される電気エネルギーを用いることもできる。別の一実施形態においては、変換システム200は、ホイールが受ける加速度を、電気エネルギーに変換することができるシステムなどの、電気エネルギーを生成するための別のシステムと組み合わされている。
【0079】
変換システム200は、必ずしもマイクロシステムである必要はない。一変形例として、変換システム200は、巨視的なシステムである場合がある。
【0080】
電気装置100は、必ずしも圧力差のセンサである必要はない。電気装置100は、例えば道路に対するタイヤ112の密着性のセンサ、または温度センサである場合がある。さらには、電気装置100は、必ずしもセンサである必要はない。例えば電気部品セット202は、指示灯、またはこの指示灯に、タイヤの内部に閉じ込められている空気と大気との間の圧力差から電力を供給することができる他のものを備えている場合がある。
【0081】
アーム12および14の位置に関わらず、0でない伸長力を備えていて、すなわち静止位置にない、少なくとも1つの弾性的な接点が、アーム12と14との間に常に存在するように、アーム12および14に、あらかじめ機械的に圧縮応力を加えることができる。
【0082】
アーム12および14に対して、種々の渦巻形状が可能である。この渦巻形状は、例えば一般的な渦巻の形状、またはアルキメデス渦巻の形状である場合がある。各アームは、1つ以上の渦巻形状を有している場合がある。
【0083】
アーム12と14とは、必ずしも、直交し合う2つの軸のそれぞれに沿って並進運動するように取り付けられている必要はない。実際には、アーム12と14とが変位する軸が互いに平行でないというだけで十分である。これらの2つの軸の間の角度が、π/2ラジアンでない場合には、アーム12と14との振動運動間の位相ずれを、その角度に適合させればよい。
【0084】
さらに、アーム12と14とは、必ずしも共振周波数で動作する必要はない。
【0085】
単純化された一実施形態において、機械的移相器36を省略することができる。この場合には、2つのアームの変位間のあらかじめ定められた位相ずれを、電気アクチュエータ、例えば電気機械トランスデューサによって確保することができる。
【0086】
さらに、ばねを用いずに、機械的な位相ずれを発生させることができる。例えばロッドとクランクを用いるメカニズムによって、機械的な位相ずれを発生させることができる。
【0087】
圧力差から機械的運動への変換にとって、そのようにして生成された機械エネルギーから電気エネルギーへの変換は任意選択的である。実際、マイクロシステム2が動作するためには、適切な位相ずれを維持するように、アーム12と14との変位を自動制御することができる、制御可能な制動装置が存在するだけで十分である。
【0088】
マイクロシステム2の他の多くの製造方法が可能である。特に、エッチングプロセスを、被着プロセスに替えることが可能である。
【符号の説明】
【0089】
2 マイクロシステム
4 チャンバ
6、208 入口ノズル
8、210 出口ノズル
10 膨張機
12、14 アーム
16、18 接続部
20 固定平面
21 固着点
22、24 電気機械トランスデューサ
26 蓄電装置
28 制御ユニット
30、32 センサ
36 機械的移相器
38 ばね
44、46 曲線
50 ポケット
52、54、56 位置
60 平行四辺形板
62 ビーム
66、68 電極板
82 犠牲層
84 シリコン層
86 絶縁体層
90 ブロック
96 カバー層
98 通路孔
100 電気装置
102 管理回路
104 無線送信器
110 ホイール
112 タイヤ
114 リム
116 バルブステム
118 スリーブ
120 チェックバルブ
124 孔
200 変換システム
202 電気部品セット
204、206 トランスデューサ
212 ボトルネック状部
216 タービン
218 中心部
220 ブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ(112)、および作動のために電力の供給を必要とする電気装置(100)を装備しているホイールであって、前記電気装置(100)は、加圧下で前記タイヤ内に閉じ込められている気体と、前記タイヤの外部に存在している大気との間の圧力差を、前記電気装置(100)への電力供給のために用いられる電気エネルギーに変換するための変換システム(200、2)を備えていることを特徴とするホイール。
【請求項2】
前記変換システム(200、2)は、
− 加圧下で前記タイヤ内に閉じ込められている前記気体に流体的に連絡している入口ノズル(208、6)と、前記タイヤの外部に存在している大気に流体的に連絡している出口ノズル(210、8)と、
− 前記入口ノズルから前記出口ノズルまで流れる際に膨張する前記気体の作用によって変位することができる少なくとも1つのアーム(220、12、14)と、
− 前記アームの変位によって生じる機械エネルギーを、前記センサへの電力供給のために用いられる電気エネルギーに変換することができる電気機械トランスデューサ(206、22、24)
とを備えている、請求項1に記載のホイール。
【請求項3】
前記入口ノズルから前記出口ノズルまで流れる前記気体の流量を、10-53/sec未満、または10-63/sec未満に制限することができるボトルネック状部を有している、請求項2に記載のホイール。
【請求項4】
前記出口ノズル(210、8)は、前記気体の、外部に漏れ出る流量を10-83/sec未満に制限することができる孔(124)を介して、前記タイヤの外部の大気に流体的に連絡している、請求項3に記載のホイール。
【請求項5】
前記電気装置(100)は、加圧下で前記タイヤ内に閉じ込められている前記気体と、前記タイヤの外部に存在している大気との間の圧力差のセンサである、請求項1〜4のいずれか1つに記載のホイール。
【請求項6】
前記電気機械トランスデューサ(206、22、24)は、前記アームの変位によって生じる機械エネルギーを、前記圧力差を表わす物理量として、さらに用いることができる電気エネルギーに変換することができる、請求項5に記載のホイール。
【請求項7】
前記センサは、前記圧力差を表わす測定値を、無線リンクを介して、遠隔の受信器に送信することができる無線送信器(104)を備えており、この無線送信器は、前記変換システム(2)によって生成される電気エネルギーだけによって電力を供給される、請求項5または6に記載のホイール。
【請求項8】
前記変換システムは、少なくとも2つの変位可能なアームであって、該少なくとも2つのアームの間を、この少なくとも2つのアーム同士の相対的な変位を伴いながら、前記気体が、前記入口ノズルから前記出口ノズルまで通過して流れる、少なくとも2つのアームを備えており、この少なくとも2つのアームは、それらの変位中に、体積を増しながら、前記入口ノズルから遠ざかって、前記出口ノズルに到達する、前記気体のための少なくとも1つのポケットを画定するように作られており、互いに対して相対的に変位することができるようになっている、請求項1〜7のいずれか1つに記載のホイール。
【請求項9】
前記少なくとも2つのアーム(12、14)は、互いの間に入り込み合った渦巻状に形成されている、請求項8に記載のホイール。
【請求項10】
前記電気装置(100)は、加圧下で前記タイヤ内に閉じ込められている前記気体と、前記タイヤの外部に存在している大気との間の圧力差のセンサであり、前記変換システムは、2つの変位可能なアーム(12、14)であって、それらのアームの間を、前記気体が、前記入口ノズルから前記出口ノズルまで通過して流れることによって、互いに相対的に変位し、その変位中、体積を増しながら、前記入口ノズルから遠ざかって、前記出口ノズルに到達する、前記気体のための少なくとも1つのポケットを画定するように渦巻状に作られており、互いに対して相対的に変位することができる2つの変位可能なアーム(12、14)を備えているマイクロシステムとは異なる、請求項1〜7のいずれか1つに記載のホイール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2012−528559(P2012−528559A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512345(P2012−512345)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057188
【国際公開番号】WO2010/136470
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(510132347)コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ (51)
【Fターム(参考)】