説明

ホウ素含有シルセスキオキサン誘導体、その重合体、及び該誘導体の製造方法

【課題】機能性材料として期待される新規なシルセスキオキサン誘導体を提供する。
【解決手段】ケイ素数が8のかご型シルセスキオキサンにおける対向する二対の酸素に代えて、特定の置換基を有するボロン酸残基が導入された構造を有するシルセスキオキサン誘導体を提供し、前記置換基に重合性を有する基を用いることによって前記誘導体を構成単位とする重合体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホウ素を分子構造に含む新規なホウ素含有シルセスキオキサン誘導体、これを構成単位とする重合体、及び該誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シルセスキオキサンは、(RSiO1.5nの構造を有するケイ素化合物である。このようなシルセスキオキサンの誘導体としては、例えば下記一般式(1−A)又は(1−B)で表されるシルセスキオキサン誘導体、及び下記一般式(1−C)で表されるシルセスキオキサン誘導体が知られている。このようなシルセスキオキサン誘導体は、特定の割合でケイ素と有機基Rとを有し、さらにケイ素を含む種々の置換基を有することから、電気、光学、材料等の種々の分野において、興味深い材料として注目されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0003】
【化1】

【0004】
前記一般式(1−A)〜(1−C)中、例えば、Rはそれぞれ独立して水素、炭素数1〜45のアルキル、置換又は非置換のアリール、又は、置換又は非置換のアリールアルキルを表し、Xは独立して水素、ハロゲン、水酸基又は1価の有機基を表し、Yは−O−、
−CH2−又は単結合を表し、Zは官能基又は官能基を有していてもよい前記Rを表して
いる。
【0005】
前記シルセスキオキサン誘導体は、有機重合体との相溶性の観点から改善がなされているが、シルセスキオキサン誘導体を広い用途において効果的に活用するためのさらなる特性の発現や向上、及び製造のさらなる容易さがさらに求められている。
【特許文献1】国際公開第03/024870号パンフレット
【特許文献2】国際公開第04/024741号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、機能性材料として期待される新規なシルセスキオキサン誘導体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ケイ素の数が8であるかご型のシルセスキオキサンにおける二つの環を結合する二対の酸素のうちの一対が、それぞれ二価のホウ素含有有機基で置き換えられた構造を有するシルセスキオキサン誘導体を提供する。すなわち本発明は、下記の[1]〜[26]の構成を有する。
【0008】
[1] 下記一般式(I)で表されるホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【0009】
【化2】

【0010】
一般式(I)中、
1は、独立して、水素、炭素数1〜45のアルキル(A)、炭素数6〜45のアリール(B)、又は、炭素数7〜45のアリールアルキル(C)を表し、
2は、独立して、水素、機能性置換基、炭素数1〜45のアルキル(D)、炭素数6〜
45のアリール(E)、又は、炭素数7〜45のアリールアルキル(F)を表し、
3は、独立して、アンモニア、ルイス塩基性基を含む炭素数1〜45の非芳香族化合
物(G)、又は、ルイス塩基性基を含む炭素数4〜45の芳香族化合物(H)を表し、
nは独立して0又は1を表し、
1のアルキル(A)において、任意の水素はフッ素で置き換えられていてもよく、任意
の−CH2−は独立して−O−、−CH=CH−、炭素数3〜20のシクロアルキレン、
又は炭素数4〜20のシクロアルケニレンで置き換えられていてもよく、
1のアリール(B)は、置換基を有していてもよく、
1のアリールアルキル(C)中のアリールは置換基を有していてもよく、R1のアリールアルキル(C)中のアルキレンにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられていてもよく、任意の−CH2−は独立して−O−、−CH=CH−、又は、炭素数3〜20のシクロ
アルキレンで置き換えられていてもよく、
2の機能性置換基は、−F、−Cl、−Br、−OH、−CF3、炭素数1〜20のパーフルオロアルキル、炭素数1〜20のアルコキシ、−COOH、2−オキサプロパン−
1,3−ジオイル、炭素数1〜20のポリアルキレンオキシ、エステル、エポキシ、−NH2、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、−CN、−NCO、炭素数1〜20のア
ルケニル、炭素数3〜20のシクロアルケニル、−SH、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸残基、及び1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸残基から選択され、
2のアルキル(D)は、鎖状でも環状でもよく、R2のアルキル(D)において、任意の水素は独立して前記機能性置換基で置き換えられていてもよく、任意の−CH2−は独立し
て−O−、−CH=CH−、炭素数3〜20のシクロアルキレン、又は炭素数4〜20のシクロアルケニレンで置き換えられていてもよく、
2のアリール(E)は、任意の水素が独立して前記機能性置換基で置き換えられていて
もよく、
2のアリールアルキル(F)は、任意の水素が独立して前記機能性置換基で置き換えら
れていてもよく、R2のアリールアルキル(F)中のアルキレンにおいて、任意の−CH2−は独立して−O−、−CH=CH−、フェニレン、−CO−、又は、炭素数3〜20のシクロアルキレンで置き換えられていてもよく、
3の非芳香族化合物(G)は、一般式(I)中のホウ素に前記ルイス塩基性基によって
配位しており、鎖状でも環状でもよく、R3の非芳香族化合物(G)において、任意の水素
は独立して前記機能性置換基で置き換えられていてもよく、任意の炭素はケイ素で置き換えられていてもよく、任意の−CH2−は独立して−O−、−CH=CH−、炭素数3〜
20のシクロアルキレン、又は炭素数4〜20のシクロアルケニレンで置き換えられていてもよく、
3の芳香族化合物(H)は、一般式(I)中のホウ素に前記ルイス塩基性基によって配
位しており、R3の芳香族化合物(H)において、芳香族環の任意の水素が独立して炭素数
1〜18のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数1〜18のアルキルにおいて、任意の炭素はケイ素で置き換えられていてもよく、任意の−CH2−は独立して−O−、
−CH=CH−、炭素数3〜20のシクロアルキレン、又はフェニレンで置き換えられてもよい。
【0011】
[2] R1のアルキル(A)の炭素数が1〜30であることを特徴とする[1]に記載の
ホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【0012】
[3] R1のアルキル(A)の炭素数が1〜20であり、アルキル(A)において任意の−
CH2−が独立して炭素数4〜20のシクロアルケニレンで置き換えられていることを特
徴とする[1]又は[2]に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【0013】
[4] R1のアルキル(A)の炭素数が1〜20であり、アルキル(A)において任意の−
CH2−が独立して−CH=CH−で置き換えられていることを特徴とする[1]又は[
2]に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【0014】
[5] R1のアルキル(A)の炭素数が1〜8であることを特徴とする[2]に記載のホ
ウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【0015】
[6] R1のアリール(B)が、置換又は非置換のフェニル、又は、置換又は非置換のナ
フチルであることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【0016】
[7] R1のアリール(B)が、ベンゼン環の任意の水素が独立してハロゲン又は炭素数
1〜18のアルキルで置き換えられてもよいフェニルであり、炭素数1〜18のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は独立して−
O−、−CH=CH−、又はフェニレンで置き換えられてもよいことを特徴とする[6]
に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【0017】
[8] R1のアリール(B)が非置換のフェニルであることを特徴とする[7]に記載の
ホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【0018】
[9] R1のアリールアルキル(C)が、炭素数7〜20の置換又は非置換のフェニルア
ルキルであることを特徴とする[1]〜[8]のいずれか一項に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【0019】
[10] R1のアリールアルキル(C)が、アルキレンの任意の−CH2−が独立して−CH=CH−で置き換えられている炭素数8〜20の置換又は非置換のフェニルアルキルであることを特徴とする[9]に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【0020】
[11] R1が全て同じであることを特徴とする[1]〜[10]のいずれか一項に記
載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【0021】
[12] R2のアルキル(D)の炭素数が1〜6であることを特徴とする[1]〜[11
]のいずれか一項に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【0022】
[13] R2のアリール(E)が、置換又は非置換のフェニル、又は、置換又は非置換の
ナフチルであることを特徴とする[1]〜[12]のいずれか一項に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【0023】
[14] R2のアリール(E)が、非置換のフェニル、又は、前記機能性置換基を有する
フェニルであることを特徴とする[13]に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【0024】
[15] R2のアリールアルキル(F)が、そのアルキレンにおいて、任意の−CH2−が独立して−O−、フェニレン、又は−CO−で置き換えられていることを特徴とする[1]〜[14]のいずれか一項に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【0025】
[16] R3の芳香族化合物(H)の芳香族環が、六員環又はその双環式縮合環であるこ
とを特徴とする[1]〜[15]のいずれか一項に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【0026】
[17] R3が、窒素、リン、酸素、又はセレンを含むことを特徴とする[1]〜[1
6]のいずれか一項に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【0027】
[18] R3がピリジン、アンモニア、第一アミン、第二アミン、第三アミン、ニトリ
ル又はその誘導体であることを特徴とする[17]に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【0028】
[19] nが0であることを特徴とする[1]〜[18]のいずれか一項に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【0029】
[20] nが1であることを特徴とする[1]〜[18]のいずれか一項に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【0030】
[21] R2及びR3の一方又は両方が重合性を有する基を含むことを特徴とする[1]〜[20]のいずれか一項に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【0031】
[22] 前記重合性を有する基が、重合性の二重結合及びエポキシの一方又は両方であることを特徴とする[21]に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【0032】
[23] 前記重合性を有する基が2−オキサプロパン−1,3−ジオイルであることを特徴とする[22]に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【0033】
[24] [21]〜[23]のいずれか一項に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体を、前記重合性を有する基において重合させてなる重合体。
【0034】
[25] [1]〜[23]のいずれか一項に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体を製造する方法であって、
下記一般式(II)で表されるシルセスキオキサン誘導体と、下記一般式(III)で表される有機ボロン酸又は下記一般式(IV)で表される有機ボランとを反応させる工程を含む方法。
【0035】
【化3】

【0036】
一般式(II)中、R1は、独立して、水素、炭素数1〜45のアルキル(A)、炭素数
6〜45のアリール(B)、又は、炭素数7〜45のアリールアルキル(C)を表し、
1のアルキル(A)において、任意の水素はフッ素で置き換えられていてもよく、任意
の−CH2−は独立して−O−、−CH=CH−、炭素数3〜20のシクロアルキレン、
又は炭素数4〜20のシクロアルケニレンで置き換えられていてもよく、
1のアリール(B)は、置換基を有していてもよく、
1のアリールアルキル(C)中のアリールは置換基を有していてもよく、アルキレンR1のアリールアルキル(C)中のアルキレンにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられていてもよく、任意の−CH2−は独立して−O−、−CH=CH−、又は、炭素数3〜2
0のシクロアルキレンで置き換えられていてもよい。
【0037】
【化4】

【0038】
一般式(III)及び(IV)中、R2は、独立して、水素、機能性置換基、炭素数1
〜45のアルキル(D)、炭素数6〜45のアリール(E)、又は、炭素数7〜45のアリールアルキル(F)を表し、
2の機能性置換基は、−F、−Cl、−Br、−OH、−CF3、炭素数1〜20のパーフルオロアルキル、炭素数1〜20のアルコキシ、−COOH、2−オキサプロパン−1,3−ジオイル、炭素数1〜20のポリアルキレンオキシ、エステル、エポキシ、−NH2、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、−CN、−NCO、炭素数1〜20のア
ルケニル、炭素数3〜20のシクロアルケニル、−SH、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸残基、及び1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸残基から選択され、
2のアルキル(D)は、鎖状でも環状でもよく、R2のアルキル(D)において、任意の水素は独立して前記機能性置換基で置き換えられていてもよく、任意の−CH2−は独立し
て−O−、−CH=CH−、炭素数3〜20のシクロアルキレン、又は炭素数4〜20のシクロアルケニレンで置き換えられていてもよく、
2のアリール(E)は、任意の水素が独立して前記機能性置換基で置き換えられていて
もよく、
2のアリールアルキル(F)は、任意の水素が独立して前記機能性置換基で置き換えら
れていてもよく、R2のアリールアルキル(F)中のアルキレンにおいて、任意の−CH2−は独立して−O−、−CH=CH−、フェニレン、−CO−、又は、炭素数3〜20のシクロアルキレンで置き換えられていてもよい。
【0039】
[26] 一般式(II)で表される前記シルセスキオキサン誘導体と前記有機ボロン酸又は前記有機ボランとの反応生成物にルイス塩基性化合物を配位させる工程をさらに含み、
前記ルイス塩基性化合物は、アンモニア、ルイス塩基性基を含む炭素数1〜45の非芳香族化合物(G)、及び、ルイス塩基性基を含む炭素数4〜45の芳香族化合物(H)からなる群から選ばれる一以上であり、
3の非芳香族化合物(G)は、鎖状でも環状でもよく、R3の非芳香族化合物(G)において、任意の水素は独立して前記機能性置換基で置き換えられていてもよく、任意の炭素はケイ素で置き換えられていてもよく、任意の−CH2−は独立して−O−、−CH=CH
−、炭素数3〜20のシクロアルキレン、又は炭素数4〜20のシクロアルケニレンで置き換えられていてもよく、
3の芳香族化合物(H)において、芳香族環の任意の水素が独立して炭素数1〜18の
アルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数1〜18のアルキルにおいて、任意の炭素はケイ素で置き換えられていてもよく、任意の−CH2−は独立して−O−、−CH=C
H−、炭素数3〜20のシクロアルキレン、又はフェニレンで置き換えられてもよいことを特徴とする[25]に記載の方法。
【発明の効果】
【0040】
本発明は、シルセスキオキサン誘導体に諸特性を発現させる有機基が容易に導入され、かつ従来のシルセスキオキサン誘導体と同等以上の高い融点を有する新規なシルセスキオキサン誘導体、及びこの誘導体に由来する重合体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体(以下「B−PSQ誘導体」とも言う)は、下記一般式(I)で表される。
【0042】
【化5】

【0043】
一般式(I)中、R1は、独立して、水素、炭素数1〜45のアルキル(A)、炭素数6
〜45のアリール(B)、又は、炭素数7〜45のアリールアルキル(C)を表し、R2は、
独立して、水素、機能性置換基、炭素数1〜45のアルキル(D)、炭素数6〜45のアリール(E)、又は、炭素数7〜45のアリールアルキル(F)を表し、R3は、独立して、ア
ンモニア、ルイス塩基性基を含む炭素数1〜45の非芳香族化合物(G)、又は、ルイス塩基性基を含む炭素数4〜45の芳香族化合物(H)を表し、nは独立して0又は1を表す。
以下、R1〜R3のそれぞれについて説明する。
【0044】
まずR1について説明する。
アルキル(A)は、炭素数が1〜45のアルキルである。アルキル(A)は、任意の水素がフッ素で置き換えられていてもよく、任意の−CH2−が独立して−O−、−CH=CH
−、炭素数3〜20のシクロアルキレン、又は炭素数4〜20のシクロアルケニレンで置き換えられていてもよい。またアルキル(A)は置換基を有していてもよい。アルキル(A)の炭素数は、本発明のB−PSQ誘導体の合成における容易さの観点から、1〜30であることが好ましく、1〜8であることがより好ましい。
【0045】
非置換のアルキル(A)としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、ヘキシル、1,1,2−トリメチルプロピル、ヘプチル、オクチル、2,4,4−トリメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシル、ドコシル、及びトリアコンチルが挙げられる。
【0046】
任意の水素がフッ素で置き換えられているアルキル(A)としては、例えば、3,3,3−トリフルオロプロピル、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナデカフルオロヘキシル、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル、パーフルオロ−1H,1H,2H,2H−ドデシル、及びパーフルオロ−1H,1H,2H,2H−テトラデシルが挙げられる。
【0047】
任意の−CH2−が独立して−O−に置き換えられているアルキル(A)としては、例え
ば、3−メトキシプロピル、メトキシエトキシウンデシル、及び3−ヘプタフルオロイソプロポキシプロピルが挙げられる。
【0048】
任意の−CH2−が独立して−CH=CH−に置き換えられているアルキル(A)として
は、例えば、エテニル、2−プロペニル、3−ブテニル、5−ヘキセニル、7−オクテニル、10−ウンデセニル、及び21−ドコセニルが挙げられる。この−CH=CH−を含むアルキル(A)の炭素数は、1〜20であることが好ましい。
【0049】
任意の−CH2−が独立して炭素数3〜20のシクロアルキレンに置き換えられている
アルキル(A)としては、例えば、シクロヘキシルメチル、アダマンタンエチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、2−ビシクロヘプチル、及びシクロオクチルが挙げられる。
【0050】
任意の−CH2−が独立して炭素数4〜20のシクロアルケニレンに置き換えられてい
るアルキル(A)としては、例えば、2−(3−シクロヘキセニル)エチル、5−(ビシクロヘプテニル)エチル、2−シクロペンテニル、3−シクロヘキセニル、5−ノルボルネン−2−イル、及び4−シクロオクテニルが挙げられる。このシクロアルケニレンを含むアルキル(A)の炭素数は、1〜20であることが好ましい。
【0051】
アリール(B)は、炭素数が6〜45のアリールである。アリール(B)は置換基を有していてもよい。好ましいアリール(B)としては、例えばベンゼン環の任意の水素が独立してハロゲン又は炭素数1〜18のアルキルで置き換えられてもよいフェニル、非置換のフェニル、及びナフチルが挙げられる。前記炭素数1〜18のアルキルは、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−が独立して−O−、−CH=CH−、又は
フェニレンで置き換えられてもよい。
【0052】
ベンゼン環の任意の水素が独立してハロゲンで置き換えられているフェニルとしては、例えば、ペンタフルオロフェニル、4−クロロフェニル、及び4−ブロモフェニルが挙げられる。
【0053】
ベンゼン環の任意の水素が独立して前記の炭素数1〜18のアルキルで置き換えられているフェニルとしては、例えば、4−メチルフェニル、4−エチルフェニル、4−プロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−ペンチルフェニル、4−ヘプチルフェニル、4−オクチルフェニル、4−ノニルフェニル、4−デシルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、2,4,6−トリエチルフェニル、4−(1−メチルエチル)フェニル、4−(1,1−ジメチルエチル)フェニル、4−(2−エチルヘキシル)フェニル、2,4,6−トリス(1−メチルエチル)フェニル、4−メトキシフェニル、4−エトキシフェニル、4−プロポキシフェニル、4−ブトキシフェニル、4−ペンチルオキシフェニル、4−ヘプチルオキシフェニル、4−デシルオキシフェニル、4−オクタデシルオキシフェニル、4−(1−メチルエトキシ)フェニル、4−(2−メチルプロポキシ)フェニル、4−(1,1−ジメチルエトキシ)フェニル、4−エテニルフェニル、4−(1−メチルエテニル)フェニル、4−(3−ブテニル)フェニル、4−(2−フェニルエテニル)フェニル、4−フェニルオキシフェニル、3−フェニルメチルフェニル、ビフェニル、及びターフェニルが挙げられる。
【0054】
ベンゼン環の任意の水素がハロゲン及び炭素数1〜18のアルキルで置き換えられているフェニルとしては、例えば、3−クロロ−4−メチルフェニル、2,5−ジクロロ−4−メチルフェニル、3,5−ジクロロ−4−メチルフェニル、2,3,5−トリクロロ−4−メチルフェニル、2,3,6−トリクロロ−4−メチルフェニル、3−ブロモ−4−メチルフェニル、2,5−ジブロモ−4−メチルフェニル、3,5−ジブロモ−4−メチルフェニル、2,3−ジフルオロ−4−メチルフェニル、3−クロロ−4−メトキシフェニル、3−ブロモ−4−メトキシフェニル、3,5−ジブロモ−4−メトキシフェニル、2,3−ジフルオロ−4−メトキシフェニル、2,3−ジフルオロ−4−エトキシフェニル、2,3−ジフルオロ−4−プロポキシフェニル、及び4−エテニル−2,3,5,6−テトラフルオロフェニルが挙げられる。
【0055】
アリールアルキル(C)は、炭素数が7〜45のアリールアルキルである。アリールアルキル(C)は置換基を有していてもよい。アリールアルキル(C)中のアルキレンにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられていてもよく、任意の−CH2−は独立して−O−、
−CH=CH−、又は、炭素数3〜20のシクロアルキレンで置き換えられていてもよい。アリールアルキル(C)は、炭素数7〜45の置換又は非置換のフェニルアルキルであることが好ましく、アルキレンの任意の−CH2−が独立して−CH=CH−で置き換えら
れている炭素数8〜45の置換又は非置換のフェニルアルキルであることがより好ましい。
【0056】
非置換のアリールアルキル(C)としては、例えば、フェニルメチル、2−フェニルエチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、5−フェニルペンチル、6−フェニルヘキシル、11−フェニルウンデシル、1−フェニルエチル、2−フェニルプロピル、1−メチル−2−フェニルエチル、1−フェニルプロピル、3−フェニルブチル、1−メチル−3−フェニルプロピル、2−フェニルブチル、2−メチル−2−フェニルプロピル、及び1−フェニルヘキシルが挙げられる。
【0057】
アリールアルキル(C)中のアルキレンの任意の−CH2−が独立して−O−、−CH=
CH−、又は、炭素数3〜20のシクロアルキレンで置き換えられているアリールアルキル(C)としては、例えば、3−フェノキシプロピル、1−フェニルエテニル、2−フェニルエテニル、3−フェニル−2−プロペニル、4−フェニル−4−ペンテニル、13−フェニル−12−トリデセニル、フェニルシクロヘキシル、及びフェノキシシクロヘキシルが挙げられる。
【0058】
1は、独立して任意に選ばれるが、B−PSQ誘導体の合成における容易さの観点、
及びR1によるB−PSQ誘導体の機能を十分に発現させる観点から、R1が全て同じであることが好ましい。
【0059】
次にR2について説明する。
前記機能性置換基は、本発明のB−PSQ誘導体を機能性材料として用いる際に機能性を発現させるための基である。機能性置換基は一種でも二種以上でもよい。機能性置換基は、B−PSQ誘導体の材料としての用途に応じて適宜選ばれる。機能性置換基としては、−F、−Cl、−Br、−OH、−CF3、炭素数1〜20のパーフルオロアルキル、
炭素数1〜20のアルコキシ、−COOH、2−オキサプロパン−1,3−ジオイル、炭素数1〜20のポリアルキレンオキシ、エステル、エポキシ、−NH2、モノアルキルア
ミノ、ジアルキルアミノ、−CN、−NCO、炭素数2〜20のアルケニル、炭素数3〜20のシクロアルケニル、−SH、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸残基、−B(OH)2、及び1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸残基
が挙げられる。本明細書において、エポキシは、炭素鎖によって結合されている2原子の炭素とそれに結合する−O−とを含む基を意味し、このようなエポキシとしては、例えばオキシラン及びオキセタンが挙げられる。
【0060】
アルキル(D)は、炭素数1〜45のアルキルであり、鎖状でも環状でもよい。またアルキル(D)において、任意の水素は独立して前記機能性置換基で置き換えられていてもよい。また、アルキル(D)において、任意の−CH2−は独立して−O−、−CH=CH−、
炭素数が3〜20のシクロアルキレン、又は炭素数が4〜20のシクロアルケニレンで置き換えられていてもよい。さらにアルキル(D)は、置換基を有していてもよい。アルキル(D)の炭素数は、本発明のB−PSQ誘導体の合成を容易に行う観点から、1〜6であることが好ましい。
【0061】
アリール(E)は、炭素数が6〜45のアリールであり、任意の水素が独立して前記機能性置換基で置き換えられていてもよい。またアリール(E)は置換基を有していてもよい。R2のアリール(E)は、置換又は非置換のフェニル、又は、置換又は非置換のナフチルで
あることが好ましく、非置換のフェニル、又は、前記機能性置換基を有するフェニルであ
ることがより好ましい。
【0062】
アリールアルキル(F)は、炭素数が7〜45のアリールアルキルであり、任意の水素が独立して前記機能性置換基で置き換えられていてもよい。アリールアルキル(F)中のアルキレンにおいて、任意の−CH2−は独立して−O−、−CH=CH−、フェニレン、−
CO−、又は、炭素数3〜20のシクロアルキレンで置き換えられていてもよい。またアリールアルキル(F)は置換基を有していてもよい。アリールアルキル(F)は、そのアルキレンにおいて、任意の−CH2−が独立して−O−、フェニレン、又は−CO−で置き換
えられていることが好ましい。
【0063】
アルキル(D)、アリール(E)、及びアリールアルキル(F)は、それぞれ前述したアルキル(A)、アリール(B)、及びアリールアルキル(C)と同じ構造、及び任意の水素が前記機能性置換基で置き換えられた構造を含む。R2はこれらのアルキル(D)、アリール(E)、
及びアリールアルキル(F)と、前記機能性置換基とを含む。前記機能性置換基、又は前記機能性置換基を有するアルキル(D)、アリール(E)、及びアリールアルキル(F)としては、例えば以下の式で表される基が挙げられる。
【0064】
【化6】

【0065】
これらの式において、kは0又は1であり、mは2〜4の整数であり、nは0〜15の整数であり、Lはハロゲンであり、pは1〜5の整数であり、qは2又は3の整数であり、rは2〜200の整数であり、tは1〜3の整数であり、Eは水素又は炭素数1〜4のアルキルである。上記の例において、ベンゼン環への−L、−CH2−L、−OH、−C
OOH、−CF3及びOCF3の結合位置はそれぞれ任意である。好ましいハロゲンはF及
びClである。rの好ましい範囲は2〜100であり、より好ましい範囲は2〜20である。
【0066】
次にR3について説明する。
3は、独立してアンモニア又はルイス塩基性基を含む化合物である。アンモニア及び
ルイス塩基性基を含む化合物のような、化合物それ自体又はルイス性塩基性基を有することによってルイス塩基性を示すルイス塩基性化合物は、一般式(I)中のホウ素と配位結合する。配位結合の表記方法はいろいろあるが、本明細書中では、共有結合と同じ「−」のみで表すものとする。R3は一種でも二種以上でもよい。このようなR3のうち、ルイス塩基性化合物としては、例えばアンモニア、及び、以下の非芳香族化合物(G)及び芳香族化合物(H)が挙げられる。
【0067】
非芳香族化合物(G)は、ルイス塩基性基を含む炭素数1〜45の化合物であり、鎖状でも環状でもよい。非芳香族化合物(G)において、任意の水素は独立して前記機能性置換基で置き換えられていてもよい。また非芳香族化合物(G)において、任意の炭素はケイ素で置き換えられていてもよく、任意の−CH2−は独立して−O−、−CH=CH−、シク
ロアルキレン、又はシクロアルケニレンで置き換えられていてもよい。さらに非芳香族化合物(G)は置換基を有していてもよい。非芳香族化合物(G)において、ルイス塩基性基は、一般式(I)中のホウ素に配位する基であれば、非芳香族化合物(G)中の水素と置き換えられている基であってもよいし、非芳香族化合物(G)中の炭素と置き換えられている基であってもよい。ルイス塩基性基が水素と置換することによって非芳香族化合物(G)を形成する化合物(水素をルイス塩基性基に置換することにより形成されるときの非芳香族化合物(G)の前駆体)としては、例えばアルカン、シクロアルカン、エーテル、アルケン、シロキサン、及びシランが挙げられる。
【0068】
芳香族化合物(H)は、ルイス塩基性基を含む炭素数4〜45の芳香族化合物である。芳香族化合物(H)において、芳香族環の任意の水素が独立して炭素数1〜18のアルキルで置き換えられてもよい。また、前記炭素数1〜18のアルキルにおいて、任意の炭素はケイ素で置き換えられていてもよく、任意の−CH2−は独立して−O−、−CH=CH−
、シクロアルキレン、又はフェニレンで置き換えられてもよい。また芳香族化合物(H)において、任意の水素が独立して前記機能性置換基で置き換えられていてもよい。さらには芳香族化合物(H)は置換基を有していてもよい。このような炭素数4〜45の芳香族化合物としては、例えば、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、シロキシ、及びシリル等の置換基を有していてもよい芳香族化合物が挙げられる。
【0069】
芳香族化合物(H)において、ルイス塩基性基は、一般式(I)中のホウ素に配位する基であれば、芳香族化合物(H)中の水素と置き換えられている基であってもよいし、芳香族化合物(H)中の炭素と置き換えられている基であってもよい。
【0070】
芳香族化合物(H)の芳香族環は、フェニル等の六員環、又はナフチル等の前記六員環の双環式縮合環であることが好ましい。前記芳香族環は、ルイス塩基性基を含んでいてもよい。
【0071】
3は、それ自体、又は前記ルイス塩基性基に、ホウ素に配位する不対電子を有する。
このようなR3又はルイス塩基性基としては、例えば窒素、リン、酸素、又はセレンを含
む化合物又は基が挙げられる。
【0072】
窒素を含むR3としては、例えば、ピリジン、アンモニア、第一アミン、第二アミン、
第三アミン、ニトリル、及びその誘導体が挙げられる。
【0073】
リンを含むR3としては、例えば、トリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン
、トリアルキルホスファイト、トリアリールホスファイト等の3価のリン化合物、及びその誘導体が挙げられる。
【0074】
酸素を含むR3としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アニソー
ル等のエーテル類、アセトン、シクロヘキサン、ベンゾフェノン等のケトン類、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、安息香酸メチル等のエステル類、及びその誘導体が挙げられる。
【0075】
セレンを含むR3としては、例えば、ジフェニルセレニド等のセレニド類、ジフェニル
ジセレニド等のジセレニド類、セレノ尿素、及びその誘導体が挙げられる。
【0076】
1〜R3が有していてもよい置換基としては、シルセスキオキサン誘導体の特性が損なわれない範囲で独立して選ばれる前記機能性置換基以外の基があげられる。このような置換基としては、例えば、モノ、ジ、トリアルコキシシリル基、−NH2、−NHR、及び
−NR2が挙げられ、これらの「R」としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル
、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、及びtert−ブチルが挙げられる。
【0077】
本発明のB−PSQ誘導体は、R2とR3のうち、二つのR2のみを有するB−PSQ誘
導体と、二つのR2と一つのR3とを有するB−PSQ誘導体と、R2及びR3を二つずつ有するB−PSQ誘導体とを含む。nが1であり、R2及びR3がそれぞれ同一の基である場合では、本発明のB−PSQ誘導体は、シス体とトランス体との両方を含み、シス体及びトランス体の一方のみであってもよいし両方であってもよい。
【0078】
二つのR2のみを有する前記B−PSQ誘導体は、下記一般式(II)で表されるシル
セスキオキサン誘導体と、下記一般式(III)で表される有機ボロン酸又は一般式(IV)で表される有機ボランとを反応させることによって得られる。さらには、下記一般式(II)で表されるシルセスキオキサン誘導体と、ボランジメチルスルフィド錯体又はボランテトラヒドロフラン錯体とを反応させた後アルケンと反応させることによっても得ることができる。下記一般式(II)中のR1は、前述した一般式(I)におけるR1と同じである。また下記一般式(III)及び(IV)中のR2は、前述した一般式(I)にお
けるR2と同じである。
【0079】
【化7】

【0080】
一般式(II)で表されるシルセスキオキサン誘導体は、下記一般式(V)で表される塩を酸性条件下でナトリウムと水素を交換させることにより得ることができる。一般式(V)の塩は、特許文献1に記載されているように、R1を有するトリアルコキシシランを
加水分解して得ることができる。なお、一般式(V)中のR1は、前述した一般式(I)
におけるR1と同じである。
【0081】
【化8】

【0082】
一般式(III)で表される有機ボロン酸は、その多くを市販品として購入することができる。又は一般式(III)で表される有機ボロン酸は、対応するグリニヤール試薬またはリチウム試薬とホウ酸トリメチルまたはホウ酸トリイソプロピルとを反応させ、最後に塩酸で加水分解することによって得ることができる。また一般式(IV)で表される有機ボランは、市販品として購入することができる。又は一般式(IV)で表される有機ボランは、対応するアルケンとボラン−ジメチルスルフィド錯体またはボラン−テトラヒドロフラン錯体との反応によって得ることができる。
【0083】
また、一般式(II)で表されるシルセスキオキサン誘導体と一般式(III)で表される有機ボロン酸との反応は、前記シルセスキオキサン誘導体と前記有機ボロン酸との加熱による脱水縮合によって行うことができる。さらに、一般式(II)で表されるシルセ
スキオキサン誘導体と一般式(IV)で表される有機ボランとの反応は、テトラヒドロフランやジクロロメタンを溶媒として室温以下で両者を混合することによって行うことができる。さらに、一般式(II)で表されるシルセスキオキサン誘導体と一般式(IV)で表される有機ボランとの反応は、一般式(II)で表されるシルセスキオキサン誘導体とボランジメチルスルフィド錯体又はボランテトラヒドロフラン錯体との反応はテトラヒドロフランやジクロロメタンを溶媒として室温以下で両者を混合することによって行うことができる。続いてアルケンと反応させる場合には、該反応液にアルケンを加えて室温又は加熱条件下で行うことができる。
【0084】
二つのR2と一つ又は二つのR3とを有する前記B−PSQ誘導体は、一般式(II)で表される前記シルセスキオキサン誘導体と前記有機ボロン酸又は前記有機ボランとの反応生成物にルイス塩基性化合物を配位させることによって得ることができる。ルイス塩基性化合物は、例えば前述した本発明のB−PSQ誘導体におけるR3である。
【0085】
前記反応生成物へのルイス塩基性化合物の配位は、前記反応生成物の溶液と前記ルイス塩基性化合物の溶液との室温での混合によって行うことができる。前記反応生成物は、粗生成物のまま配位工程に用いてもよいし、精製して用いてもよい。
【0086】
本発明のB−PSQ誘導体の構造は、1H NMR、13C NMR、及び29Si NM
Rの三種の核磁気共鳴から求めることができる。また本発明のB−PSQ誘導体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)から求めることができる。さらに本発明のB−PSQ誘導体の構造は、必要に応じて赤外吸収分析を用いて解析することができる。
【0087】
本発明では、R2及びR3の一方又は両方が重合性を有する基を含むことにより、本発明のB−PSQ誘導体を構成単位とする重合体を得ることができる。
【0088】
前記重合性を有する基としては、例えば重合性の二重結合、エポキシ、及び2−オキサプロパン−1,3−ジオイルが挙げられる。重合性の二重結合を有するB−PSQ誘導体は、単独で重合させることが可能であり、また他のビニル系モノマーと共重合させることも可能である。オキシランやオキセタンで代表されるエポキシを有するB−PSQ誘導体も、重合体の原料として用いることができる。2−オキサプロパン−1,3−ジオイルを有する基を有するB−PSQ誘導体は、縮重合体の原料として用いることができる。このようなB−PSQ誘導体の重合には、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のような過酸化物によるラジカル重合、金属アルキルによるアニオン重合、ルイス酸によるカチオン重合等の公知の重合法を適用することができる。
【0089】
前記B−PSQ誘導体を構成単位とする重合体の重合度は2〜1,000であることが好ましく、10〜100であることがより好ましい。この重合体の重合度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって求めることができる。
【実施例】
【0090】
以下、本発明を実施例によってより具体的に説明する。以下の実施例において、核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、ブルカー社製DRX500(500MHz)を用い、テトラメチルシランを内部標準(0ppm)にして測定した。また、融点は、ヤナコ社製微量融点測定装置MP−J3で測定した。また、構造式(1a)の化合物(以下、化合物(1a)という)は、特許文献2に記載の方法(実施例1)にしたがい、合成した。
【0091】
[実施例1]
【0092】
【化9】

【0093】
窒素気流下23.15g(20mmol)の化合物(1a)を230mLの酢酸ブチルに懸濁させ氷冷し、得られた懸濁液を攪拌しながら、この懸濁液に、液温10℃以下を保ったまま6.73g(112mmol)の氷酢酸を滴下した。得られた懸濁液を2時間攪拌した後、この液に46mLの水を加えて10分間攪拌し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液46mLを加えて更に10分間攪拌した。得られた懸濁液を分液後、有機層を100mLの飽和食塩水で2回、純水で2回洗浄して無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥後の有機層から乾燥剤を濾別し、得られた濾液を45℃以下で減圧濃縮して19.8gの粗生成物を得た。粗収率は93%であった。これにアセトン5.6mLを加えてよく攪拌した後吸引濾過して得られたケーキを室温で真空乾燥させて18.6gの、構造式(1b)の化合物(以下、化合物(1b)という)を得た。収率は87%であった。化合物(1b)のNMRスペクトルを以下に示す。
1H NMR(アセトン−d6)δ(ppm)=2.85(OH,bs,4H),7.00〜8.00(Ph,m,40H)
13C NMR(アセトン−d6)δ(ppm)=128.2〜134.9(Ph)
29Si NMR(アセトン−d6)δ(ppm)=−79.2 and −69.0
【0094】
【化10】

【0095】
42.8g(40mmol)の化合物(1b)及び14.1g(80mmol)の3,4,5−トリフルオロフェニルボロン酸を200mLのトルエン中還流温度で5時間共沸脱水させた。反応液をそのまま熱時濾過して不溶物を取り除き、濾液を徐々に冷却して5℃で一晩静置し、濾液から結晶を析出させた。析出した結晶を濾別して80℃で5時間真空乾燥させ、39.0gの構造式(1)の化合物(以下、化合物(1)という)を得た。収率は72%であり、融点は267〜268℃であった。化合物(1)のNMRスペクトルを以下に示す。
1H NMR(CDCl3)δ(ppm)=7.03〜7.60(芳香環,m,44H)
13C NMR(CDCl3)δ(ppm)=118.8〜133.9(芳香環)
29Si NMR(CDCl3)δ(ppm)=−79.9 and −78.5
【0096】
[実施例2]
【0097】
【化11】

【0098】
窒素雰囲気下、0.327g(0.25mmol)の化合物(1)を3mLのジクロロメタンに溶解し、得られた溶液に、室温で0.0895g(0.6mmol)の4−アリルオキシメチルピリジンのジクロロメタン(1mL)溶液を加え、そのまま16時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣をn−ヘキサンで洗って濾過して得られた固体を室温で一晩減圧乾燥して0.382gの構造式(2)の化合物(以下、化合物(2)という)を得た。収率は93%であり、融点は275〜280℃であった。化合物(2)のNMRスペクトルを以下に示す。
1H NMR(CDCl3)δ(ppm)=4.00(アリル位,dt,J=5.36,1.50Hz,4H),4.47(ピリジン環の4−位に結合したメチレン,s,4H),5.22(アリルに対してトランスの末端オレフィン,dt,J=10.01,1.50Hz,2H),5.27(アリルに対してシスの末端オレフィン,dt,J=17.44,1.50Hz,2H),5.87(内部オレフィン,ddt,J=17.44,10.01,1.50Hz,2H),6.97−7.52(ピリジンの2,6−位を除く芳香環,m,48H),9.09(ピリジン環の2,5−位,dd,J=5.16,1.30Hz,4H)
13C NMR(CDCl3)δ(ppm)=69.25(アリル位),71.90(ピリ
ジン環の4−位に結合したメチレン),118.03(末端オレフィン),122.53(ピリジン環3,5−位),134.05(内部オレフィン),134.05(内部オレフィン),144.13(ピリジン環2,6−位),153.41(ピリジン環4−位),115.19〜133.96(その他の芳香環)
29Si NMR(CDCl3)δ(ppm)=−80.16 and −79.75
【0099】
[実施例3]
【0100】
【化12】

【0101】
21.4g(20mmol)の化合物(1b)及び2.46g(40mmol)のメチルボロン酸を100mLのトルエン中還流温度で5時間共沸脱水させた。反応液をそのまま熱時濾過して不溶物を取り除き、濾液を徐々に冷却して5℃で一晩静置し、濾液から結晶を析出させた。析出した結晶を濾別して80℃で5時間真空乾燥させ、18.7gの構造式(3)の化合物(以下、化合物(3)という)を得た。収率は84%であり、融点は
252〜255℃であった。化合物(3)のNMRスペクトルを以下に示す。
1H NMR(CDCl3)δ(ppm)=0.16(メチル,s,6H),7.16〜7.61(芳香環,m,40H)
13C NMR(CDCl3)δ(ppm)=0.78(メチル),25.29〜134.
46(芳香環)
29Si NMR(CDCl3)δ(ppm)=−79.19 and −78.30
【0102】
[実施例4]
【0103】
【化13】

【0104】
窒素雰囲気下、0.140g(0.125mmol)の化合物(3)を2mLのジクロロメタンに溶解し、得られた溶液に、室温で0.0475g(0.6mmol)のピリジンのジクロロメタン(1mL)溶液を加え、そのまま16時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣をn−ヘキサンで洗って濾過して得られた固体を室温で一晩減圧乾燥して0.134gの構造式(4)の化合物(以下、化合物(4)という)を得た。収率は84%であり、融点は259〜260℃であった。化合物(4)のNMRスペクトルを以下に示す。
1H NMR(CDCl3)δ(ppm)=0.17(メチル,s,6H),7.20〜7.71(ピリジンの2,6−位を除く芳香環,m,46H),8.62(ピリジン環の2,6−位,dd,J=5.16,1.30Hz,4H)
13C NMR(CDCl3)δ(ppm)=3.71(メチル),124.14(ピリジ
ン環3,5−位),147.71(ピリジン環2,6−位),137.33(ピリジン環4−位),127.58〜134.20(ベンゼン環)
29Si NMR(CDCl3)δ(ppm)=−80.10 and −78.74
【0105】
[実施例5]
【0106】
【化14】

【0107】
窒素雰囲気下、0.559g(0.5mmol)の化合物(3)を4mLのジクロロメタンに溶解し、得られた溶液に、室温で0.170g(2.0mmol)のピぺリジンのジクロロメタン(1mL)溶液を加え、そのまま16時間攪拌した。反応液を減圧濃縮しによって溶媒および過剰のピペリジンを除去して0.644gの構造式(5)の化合物(
以下、化合物(5)という)を得た。収率は100%であり、融点は259〜265℃であった。化合物(5)のNMRスペクトルを以下に示す。
1H NMR(CDCl3)δ(ppm)=−0.30(メチル,s,6H),1.4〜1.6(ピペリジンの3,4−位,br−s,12H),2.7〜3.0(ピペリジンの2−位,br−s,8H),3.0〜3.5(NH,br−s,2H),7.2〜7.7(芳香環,m,40H)
13C NMR(CDCl3)δ(ppm)=23.31(ピペリジン4−位),25.1
6(ピペリジン3−位),45.48(ピペリジン2−位),127.36〜135.05(芳香環)
29Si NMR(CDCl3)δ(ppm)=−80.52,−79.96,−79.6
8,−79.51,and −78.39
【0108】
[実施例6]
【0109】
【化15】

【0110】
5.35g(5mmol)の化合物(1b)及び1.28g(10mmol)のシクロヘキシルボロン酸を50mLのトルエン中還流温度で5時間共沸脱水させた。反応液をそのまま熱時濾過して不溶物を取り除き、濾液を徐々に冷却して5℃で一晩静置し、濾液から結晶を析出させた。析出した結晶を濾別して80℃で5時間真空乾燥させ、4.65gの構造式(6)の化合物(以下、化合物(6)という)を得た。収率は74%であり、融点は300℃超であった。化合物(6)のNMRスペクトルを以下に示す。
1H NMR(CDCl3)δ(ppm)=0.75〜2.00(シクロヘキサン,m,2
0H),7.02〜7.79(芳香環,m,40H)
13C NMR(CDCl3)δ(ppm)=23.61〜33.96(シクロヘキサン)
,127.73〜134.11(芳香環)
29Si NMR(CDCl3)δ(ppm)=−79.54,−79.18,−78.3
0,−77.92
【0111】
[実施例7]
【0112】
【化16】

【0113】
5.35g(5mmol)の化合物(1b)及び1.47g(10mmol)の4−シアノフェニルボロン酸を50mLのトルエン中還流温度で5時間共沸脱水させた。反応液をそのまま熱時濾過して不溶物を取り除き、濾液を徐々に冷却して5℃で一晩静置し、濾液から結晶を析出させた。析出した結晶を濾別して80℃で5時間真空乾燥させ、4.21gの構造式(7)の化合物(以下、化合物(7)という)を得た。収率は65%であり、融点は290〜294℃であった。化合物(7)のNMRスペクトルを以下に示す。
1H NMR(THF−d8)δ(ppm)=7.10〜7.92(芳香環,m,48H)13C NMR(THF−d8)δ(ppm)=119.00(CN),128.32〜1
36.19(芳香環)
29Si NMR(THF−d8)δ(ppm)=−79.85 and −78.40
【0114】
[実施例8]
【0115】
【化17】

【0116】
10.7g(10mmol)の化合物(1b)及び2.44g(20mmol)のフェニルボロン酸を80mLのトルエン中還流温度で5時間共沸脱水させた。反応液をそのまま熱時濾過して不溶物を取り除き、濾液を徐々に冷却して5℃で一晩静置し、濾液から結晶を析出させた。析出した結晶を濾別して80℃で5時間真空乾燥させ、8.45gの構造式(8)の化合物(以下、化合物(8)という)を得た。収率は73%であり、融点は284〜286℃であった。化合物(8)のNMRスペクトルを以下に示す。
1H NMR(CDCl3)δ(ppm)=7.16〜7.69(芳香環,m,50H)
13C NMR(CDCl3)δ(ppm)=127.53〜135.77(芳香環)
29Si NMR(CDCl3)δ(ppm)=−80.21 and −78.50
【0117】
[実施例9]
【0118】
【化18】

【0119】
18.2g(17mmol)の化合物(1b)及び5.03g(34mmol)の4−ビニルフェニルボロン酸を85mLのトルエン中還流温度で5時間共沸脱水させた。反応
液をそのまま熱時濾過して不溶物を取り除き、濾液を徐々に冷却して5℃で一晩静置し、濾液から結晶を析出させた。析出した結晶を濾別して80℃で5時間真空乾燥させ、17.9gの構造式(9)の化合物(以下、化合物(9)という)を得た。収率は81%であり、融点は249〜251℃であった。化合物(9)のNMRスペクトルを以下に示す。1H NMR(CDCl3)δ(ppm)=5.21(ビニル基メチレンの一方,d,J=10.96Hz,2H),5.71(ビニル基メチレンの他方,d,J=17.65Hz,2H),6.64(ビニル基メチン,dd,J=17.65 and 10.96Hz,2H),7.16〜7.68(芳香環,m,48H)
13C NMR(CDCl3)δ(ppm)=114.88(ビニル基メチレン),125
.39〜140.49(ビニル基メチン及び芳香環)
29Si NMR(CDCl3)δ(ppm)=−80.19 and −78.50
【0120】
[実施例10]
【0121】
【化19】

【0122】
9.94g(9.3mmol)の化合物(1b)及び4.76g(18.6mmol)の4−(ベンジルオキシカルボニル)フェニルボロン酸を50mLのトルエン中還流温度で5時間共沸脱水させた。反応液をそのまま熱時濾過して不溶物を取り除き、濾液を徐々に冷却して5℃で一晩静置し、濾液から結晶を析出させた。析出した結晶を濾別して80℃で5時間真空乾燥させ、10.6gの構造式(10)の化合物(以下、化合物(10)という)を得た。収率は75%であり、融点は257〜259℃であった。化合物(10)のNMRスペクトルを以下に示す。
1H NMR(CDCl3)δ(ppm)=5.31(ベンジル位,s,4H),7.15〜7.87(芳香環,m,58H)
13C NMR(CDCl3)δ(ppm)=66.71(ベンジル位),127.80〜
136.05(芳香環),166.47(カルボニル)
29Si NMR(CDCl3)δ(ppm)=−80.04 and −78.48
【0123】
[実施例11]
【0124】
【化20】

【0125】
2.34g(2.19mmol)の化合物(1b)及び1.00g(4.38mmol)の4−ベンジルオキシフェニルボロン酸を50mLのトルエン中還流温度で5時間共沸脱水させた。反応液をそのまま熱時濾過して不溶物を取り除き、濾液を徐々に冷却して5℃で一晩静置し、濾液から結晶を析出させた。析出した結晶を濾別して80℃で5時間真空乾燥させ、2.76gの構造式(11)の化合物(以下、化合物(11)という)を得た。収率は87%であり、融点は246〜247℃であった。化合物(11)のNMRスペクトルを以下に示す。
1H NMR(CDCl3)δ(ppm)=5.01(ベンジル位,s,4H),6.77〜7.65(芳香環,m,58H)
13C NMR(CDCl3)δ(ppm)=69.60(ベンジル位),113.91(
芳香環),127.40〜137.71(芳香環)
29Si NMR(CDCl3)δ(ppm)=−80.41 and −78.67
【0126】
実施例1〜11の化合物(1)〜(11)の置換基の種類と融点を以下の表1に示す。表1から明らかなように、R2を有しR3を有さないホウ素含有シルセスキオキサン誘導体は、約250〜300℃の融点を有している。またR2とR3の両方を有するホウ素含有シルセスキオキサン誘導体は、R2を有しR3を有さないホウ素含有シルセスキオキサン誘導体に比べて約5〜10℃高い融点を有している。
【0127】
【表1】

【0128】
一方、特許文献1の記載に従って作製した、下記一般式(1−D)で表される化合物D1〜D8の置換基の種類と融点を以下の表2に示す。表2から明らかなように、末端のケイ素にメチルと、Rとしての水素とが結合したシルセスキオキサン誘導体は、約280℃の融点を有している。また、末端のケイ素にメチルと、Rとしての種々の有機基とが結合したシルセスキオキサン誘導体は、常温以下から約290℃までの融点を有しており、主に150〜200℃の融点を有している。
【0129】
【化21】

【0130】
【表2】

【0131】
以上から明らかなように、本発明のB−PSQ誘導体では、末端のそれぞれのホウ素に二種の異なる有機基を容易に導入することができる。特に、R3を有するB−PSQ誘導
体は、R2のみを有するB−PSQ誘導体とルイス塩基性化合物とを混合するだけで容易
に得ることができる。
【0132】
また、このようなR3の導入を利用すると、B−PSQ誘導体に新たな特性を容易に付
与し又は向上させることができる。例えば化合物(10)にn−C817NH2を混合して導入することによって、B−PSQ誘導体のジエチレングリコールメチルエチルエーテル
に対する溶解性を高めることができる。このように、本発明によれば、シルセスキオキサン誘導体において、末端に導入される基による該誘導体の特性(例えば溶剤に対する可溶性等)を容易に発現させ、また調整することが可能である。
【0133】
さらに本発明のB−PSQ誘導体は、末端のそれぞれのホウ素に二つの有機基を導入したときに、末端のそれぞれのホウ素に一つの有機基を導入した該誘導体に比べて同等かそれ以上高い融点を有する。したがって、本発明によれば、有機基の導入による機能性と優れた耐熱性とを有するシルセスキオキサン誘導体を得ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明によれば、有機基の導入による機能性と高耐熱性とが両立するシルセスキオキサン誘導体を容易に得ることができる。したがって、種々の技術分野における機能性材料としてのシルセスキオキサン誘導体の利用が期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【化1】

(一般式(I)中、
1は、独立して、水素、炭素数1〜45のアルキル(A)、炭素数6〜45のアリール(B)、又は、炭素数7〜45のアリールアルキル(C)を表し、
2は、独立して、水素、機能性置換基、炭素数1〜45のアルキル(D)、炭素数6〜
45のアリール(E)、又は、炭素数7〜45のアリールアルキル(F)を表し、
3は、独立して、アンモニア、ルイス塩基性基を含む炭素数1〜45の非芳香族化合
物(G)、又は、ルイス塩基性基を含む炭素数4〜45の芳香族化合物(H)を表し、
nは独立して0又は1を表し、
1のアルキル(A)において、任意の水素はフッ素で置き換えられていてもよく、任意
の−CH2−は独立して−O−、−CH=CH−、炭素数3〜20のシクロアルキレン、
又は炭素数4〜20のシクロアルケニレンで置き換えられていてもよく、
1のアリール(B)は、置換基を有していてもよく、
1のアリールアルキル(C)中のアリールは置換基を有していてもよく、R1のアリールアルキル(C)中のアルキレンにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられていてもよく、任意の−CH2−は独立して−O−、−CH=CH−、又は、炭素数3〜20のシクロ
アルキレンで置き換えられていてもよく、
2の機能性置換基は、−F、−Cl、−Br、−OH、−CF3、炭素数1〜20のパーフルオロアルキル、炭素数1〜20のアルコキシ、−COOH、2−オキサプロパン−1,3−ジオイル、炭素数1〜20のポリアルキレンオキシ、エステル、エポキシ、−NH2、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、−CN、−NCO、炭素数1〜20のア
ルケニル、炭素数3〜20のシクロアルケニル、−SH、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸残基、及び1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸残基から選択され、
2のアルキル(D)は、鎖状でも環状でもよく、R2のアルキル(D)において、任意の水素は独立して前記機能性置換基で置き換えられていてもよく、任意の−CH2−は独立し
て−O−、−CH=CH−、炭素数3〜20のシクロアルキレン、又は炭素数4〜20のシクロアルケニレンで置き換えられていてもよく、
2のアリール(E)は、任意の水素が独立して前記機能性置換基で置き換えられていて
もよく、
2のアリールアルキル(F)は、任意の水素が独立して前記機能性置換基で置き換えら
れていてもよく、R2のアリールアルキル(F)中のアルキレンにおいて、任意の−CH2−は独立して−O−、−CH=CH−、フェニレン、−CO−、又は、炭素数3〜20のシクロアルキレンで置き換えられていてもよく、
3の非芳香族化合物(G)は、一般式(I)中のホウ素に前記ルイス塩基性基によって
配位しており、鎖状でも環状でもよく、R3の非芳香族化合物(G)において、任意の水素
は独立して前記機能性置換基で置き換えられていてもよく、任意の炭素はケイ素で置き換
えられていてもよく、任意の−CH2−は独立して−O−、−CH=CH−、炭素数3〜
20のシクロアルキレン、又は炭素数4〜20のシクロアルケニレンで置き換えられていてもよく、
3の芳香族化合物(H)は、一般式(I)中のホウ素に前記ルイス塩基性基によって配
位しており、R3の芳香族化合物(H)において、任意の水素は独立して前記機能性置換基
で置き換えられていてもよく、芳香族環の任意の水素が独立して炭素数1〜18のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数1〜18のアルキルにおいて、任意の炭素はケイ素で置き換えられていてもよく、任意の−CH2−は独立して−O−、−CH=CH−、
炭素数3〜20のシクロアルキレン、又はフェニレンで置き換えられてもよい。)
【請求項2】
1のアルキル(A)の炭素数が1〜30であることを特徴とする請求項1に記載のホウ
素含有シルセスキオキサン誘導体。
【請求項3】
1のアルキル(A)の炭素数が1〜20であり、アルキル(A)において任意の−CH2−が独立して炭素数4〜20のシクロアルケニレンで置き換えられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【請求項4】
1のアルキル(A)の炭素数が1〜20であり、アルキル(A)において任意の−CH2−が独立して−CH=CH−で置き換えられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【請求項5】
1のアルキル(A)の炭素数が1〜8であることを特徴とする請求項2に記載のホウ素
含有シルセスキオキサン誘導体。
【請求項6】
1のアリール(B)が、置換又は非置換のフェニル、又は、置換又は非置換のナフチル
であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【請求項7】
1のアリール(B)が、ベンゼン環の任意の水素が独立してハロゲン又は炭素数1〜1
8のアルキルで置き換えられてもよいフェニルであり、炭素数1〜18のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は独立して−O−、
−CH=CH−、又はフェニレンで置き換えられてもよいことを特徴とする請求項6に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【請求項8】
1のアリール(B)が非置換のフェニルであることを特徴とする請求項7に記載のホウ
素含有シルセスキオキサン誘導体。
【請求項9】
1のアリールアルキル(C)が、炭素数7〜20の置換又は非置換のフェニルアルキル
であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【請求項10】
1のアリールアルキル(C)が、アルキレンの任意の−CH2−が独立して−CH=CH−で置き換えられている炭素数8〜20の置換又は非置換のフェニルアルキルであることを特徴とする請求項9に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【請求項11】
1が全て同じであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のホウ素
含有シルセスキオキサン誘導体。
【請求項12】
2のアルキル(D)の炭素数が1〜6であることを特徴とする請求項1〜11のいずれ
か一項に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【請求項13】
2のアリール(E)が、置換又は非置換のフェニル、又は、置換又は非置換のナフチル
であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【請求項14】
2のアリール(E)が、非置換のフェニル、又は、前記機能性置換基を有するフェニル
であることを特徴とする請求項13に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【請求項15】
2のアリールアルキル(F)が、そのアルキレンにおいて、任意の−CH2−が独立して−O−、フェニレン、又は−CO−で置き換えられていることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【請求項16】
3の芳香族化合物(H)の芳香族環が、六員環又はその双環式縮合環であることを特徴
とする請求項15に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【請求項17】
3が、窒素、リン、酸素、又はセレンを含むことを特徴とする請求項1〜16のいず
れか一項に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【請求項18】
3がピリジン、アンモニア、第一アミン、第二アミン、第三アミン、ニトリル又はそ
の誘導体であることを特徴とする請求項17に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【請求項19】
nが0であることを特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【請求項20】
nが1であることを特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【請求項21】
2及びR3の一方又は両方が重合性を有する基を含むことを特徴とする請求項1〜20のいずれか一項に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【請求項22】
前記重合性を有する基が、重合性の二重結合及びエポキシの一方又は両方であることを特徴とする請求項21に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【請求項23】
前記重合性を有する基が2−オキサプロパン−1,3−ジオイルであることを特徴とする請求項22に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体。
【請求項24】
請求項21〜23のいずれか一項に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体を、前記重合性を有する基において重合させてなる重合体。
【請求項25】
請求項1〜23のいずれか一項に記載のホウ素含有シルセスキオキサン誘導体を製造する方法であって、
下記一般式(II)で表されるシルセスキオキサン誘導体と、下記一般式(III)で表される有機ボロン酸又は下記一般式(IV)で表される有機ボランとを反応させる工程を含む方法。
【化2】

(一般式(II)中、R1は、独立して、水素、炭素数1〜45のアルキル(A)、炭素数
6〜45のアリール(B)、又は、炭素数7〜45のアリールアルキル(C)を表し、
1のアルキル(A)において、任意の水素はフッ素で置き換えられていてもよく、任意
の−CH2−は独立して−O−、−CH=CH−、炭素数3〜20のシクロアルキレン、
又は炭素数4〜20のシクロアルケニレンで置き換えられていてもよく、
1のアリール(B)は、置換基を有していてもよく、
1のアリールアルキル(C)中のアリールは置換基を有していてもよく、アルキレンR1のアリールアルキル(C)中のアルキレンにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられていてもよく、任意の−CH2−は独立して−O−、−CH=CH−、又は、炭素数3〜2
0のシクロアルキレンで置き換えられていてもよい。)
【化3】

(一般式(III)及び(IV)中、R2は、独立して、水素、機能性置換基、炭素数1
〜45のアルキル(D)、炭素数6〜45のアリール(E)、又は、炭素数7〜45のアリールアルキル(F)を表し、
2の機能性置換基は、−F、−Cl、−Br、−OH、−CF3、炭素数1〜20のパーフルオロアルキル、炭素数1〜20のアルコキシ、−COOH、2−オキサプロパン−1,3−ジオイル、炭素数1〜20のポリアルキレンオキシ、エステル、エポキシ、−NH2、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、−CN、−NCO、炭素数1〜20のア
ルケニル、炭素数3〜20のシクロアルケニル、−SH、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸残基、及び1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸残基から選択され、
2のアルキル(D)は、鎖状でも環状でもよく、R2のアルキル(D)において、任意の水素は独立して前記機能性置換基で置き換えられていてもよく、任意の−CH2−は独立し
て−O−、−CH=CH−、炭素数3〜20のシクロアルキレン、又は炭素数4〜20のシクロアルケニレンで置き換えられていてもよく、
2のアリール(E)は、任意の水素が独立して前記機能性置換基で置き換えられていて
もよく、
2のアリールアルキル(F)は、任意の水素が独立して前記機能性置換基で置き換えら
れていてもよく、R2のアリールアルキル(F)中のアルキレンにおいて、任意の−CH2−は独立して−O−、−CH=CH−、フェニレン、−CO−、又は、炭素数3〜20のシクロアルキレンで置き換えられていてもよい。)
【請求項26】
一般式(II)で表される前記シルセスキオキサン誘導体と前記有機ボロン酸又は前記有機ボランとの反応生成物にルイス塩基性化合物を配位させる工程をさらに含み、
前記ルイス塩基性化合物は、アンモニア、ルイス塩基性基を含む炭素数1〜45の非芳香族化合物(G)、及び、ルイス塩基性基を含む炭素数4〜45の芳香族化合物(H)からなる群から選ばれる一以上であり、
3の非芳香族化合物(G)は、鎖状でも環状でもよく、R3の非芳香族化合物(G)において、任意の水素は独立して前記機能性置換基で置き換えられていてもよく、任意の炭素はケイ素で置き換えられていてもよく、任意の−CH2−は独立して−O−、−CH=CH
−、炭素数3〜20のシクロアルキレン、又は炭素数4〜20のシクロアルケニレンで置き換えられていてもよく、
3の芳香族化合物(H)において、芳香族環の任意の水素が独立して炭素数1〜18の
アルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数1〜18のアルキルにおいて、任意の炭素はケイ素で置き換えられていてもよく、任意の−CH2−は独立して−O−、−CH=C
H−、炭素数3〜20のシクロアルキレン、又はフェニレンで置き換えられてもよいことを特徴とする請求項25に記載の方法。

【公開番号】特開2010−13358(P2010−13358A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172132(P2008−172132)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】