説明

ホオノキ抽出物、その製造方法、およびそれを含む美肌組成物

【課題】水やアルコールなどによる従来のホオノキ抽出物よりも優れた美肌効果を有するホオノキ抽出物を提供すること。
【解決手段】ホオノキを超臨界二酸化炭素により抽出して得られるホオノキ抽出物により、上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホオノキを超臨界二酸化炭素により抽出して得られるホオノキ抽出物、その製造方法、および該抽出物を含む美肌組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、表皮、真皮および皮下組織の三層からなり、これらのうち真皮には、皮膚の弾力性や保湿性などの皮膚の機能維持に重要なヒアルロン酸が多く含まれている。このヒアルロン酸は、真皮中に存在する線維芽細胞により産生される。
一方、加齢や紫外線などのストレスにより線維芽細胞の機能が衰えると、真皮におけるヒアルロン酸の産生減少が起こる。その結果、皮膚のしわ、たるみの発生、保湿性や弾力性などの皮膚機能の低下などのような、皮膚の老化現象が現れる。
【0003】
さらに、太陽光線、特に紫外線に曝露された皮膚においては、その表皮に存在するメラノサイト(色素細胞)のメラノソームと呼ばれるメラニン生成小胞内でメラニンが産生される。そして、産生されたメラニンが表皮細胞に受け渡されることにより、シミ、ソバカス、肝斑などの皮膚の色素沈着が生じると考えられている。また、これらの色素沈着は、加齢に伴って発生し、増加するとともに消失しにくくなる。
【0004】
したがって、このような色素沈着や皮膚の老化を予防および/または改善する効果、すなわち美肌効果を有する物質や組成物の開発が強く望まれている。
これまでにも、例えば皮膚の老化の予防および/または改善を目的として、糖、アミノ酸、有機酸、ピロリドンカルボン酸などを配合した組成物や、失われたヒアルロン酸を補うためにヒアルロン酸を配合した組成物などが開発されてきた。
しかしながら、これらの組成物は、皮膚の保湿性を高めて表皮の角質の状態を改善するものであり、皮膚の老化を根本的に予防または改善するものではないため、いずれも満足できるものではなかった。
【0005】
また、いわゆる美白効果を有する物質として、メラニンを還元してその色を薄くする作用(作用1)、メラニン生成に関与するチロシナーゼ酵素の活性を抑制する作用(作用2)および/またはメラノサイトを活性化する因子を抑制する作用(作用3)を有する物質も開発されてきた。
そのような物質としては、例えば、上記の作用1を有するビタミンC(L−アスコルビン酸)およびその誘導体、上記の作用2を有するアルブチンなどのハイドロキノン誘導体、エラグ酸、コウジ酸、ならびに上記の作用3を有するトラネキサム酸などが挙げられる。しかしながら、いずれの物質によっても満足できる美白効果は得られなかった。
【0006】
また、整腸作用や健胃作用のある生薬として用いられるコウボク(ホウノキの樹皮)を水や有機溶媒で抽出した抽出物と他の植物抽出物との混合組成物にも美肌効果のあることが知られているが(特許文献1)、その作用メカニズムは十分に解明されておらず、しかもコウボク抽出物単独では十分な美肌効果が得られ難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−328048号公報
【特許文献2】特開2005−104873号公報
【特許文献3】特開2005−179226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、上記のような事情に鑑みて、美肌効果のより高いホオノキ抽出物を得るために、水やアルコールなどの従来の抽出溶媒とは異なる溶媒によりホオノキを抽出することを検討し、超臨界二酸化炭素を用いる抽出法に着目した。
これまでに、超臨界二酸化炭素を用いて植物体からその抽出物を効率よく得られることは知られている(特許文献2および3)。しかしながら、超臨界二酸化炭素により得られるホオノキ抽出物、および該抽出物が優れた美肌効果を有することは知られていなかった。
【0009】
本発明は、水やアルコールなどの従来の抽出溶媒によるホオノキ抽出物よりも優れた美肌効果を有するホオノキ抽出物、その製造方法および該抽出物を含む美肌組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究の結果、ホオノキを超臨界二酸化炭素で抽出することにより、水やアルコールなどの従来の抽出溶媒によるホオノキ抽出物よりも優れた美肌効果、特にチロシナーゼおよびヒアルロニダーゼの酵素活性の抑制作用を有するホオノキ抽出物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
したがって、本発明は、ホオノキを超臨界二酸化炭素により抽出して得られるホオノキ抽出物、その製造方法、および該抽出物を含む美肌組成物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
超臨界二酸化炭素により抽出した本発明のホオノキ抽出物によれば、水やアルコールなどの従来の抽出溶媒によるホオノキ抽出物を含む組成物よりも優れた美肌効果、特にチロシナーゼおよびヒアルロニダーゼの酵素活性の抑制作用を有する美肌組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明で用いられるホオノキとしては、ホオノキ(Magnolia obovata Thunberg)、センボク(Magnolia officinalis Rehder et Wilson)、オンボク(Magnolia officinalis Rehder et Wilson var. biloba Rehder et Wilson)などのモクレン科(Magnoliaceae)の植物の花、花穂、果皮、果実、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根茎、根皮、根、種子などが挙げられるが、中でもこれらの植物の樹皮を用いるのが好ましい。
【0014】
上記の植物の樹皮は、コウボク(厚朴)とも呼ばれ、整腸作用や健胃作用のある生薬として知られており、市場で入手することができる。
原料として用いられるコウボクなどのホオノキは、そのままの形態で用いてもよいが、乾燥および/または粉砕したものを用いるのが好ましい。
【0015】
本明細書において、「美肌効果」とは、シミやソバカスなどの皮膚の色素沈着を予防および/または改善し、正常な肌の色に回復する美白効果、ならびに皮膚の老化を予防および/または改善する効果を意味する。したがって、本発明の美肌組成物は、そのような美肌効果を有する組成物を意味する。
【0016】
本明細書において、「皮膚の老化」とは、加齢や紫外線などの影響により引き起こされる皮膚のしわ、たるみの発生、保湿性や弾力性などの皮膚機能の低下を意味する。
【0017】
「チロシナーゼ」とは、メラノサイト内でメラニンの前駆体であるチロシンおよびドーパを基質として反応し、メラニンの生成を促進する酵素である。
【0018】
「ヒアルロニダーゼ」とは、皮膚、血管、関節などに存在するヒアルロン酸を分解する酵素である。該酵素の活性を阻害することにより、生体内でのヒアルロン酸の分解が抑制され、皮膚のヒアルロン酸の量が一定に保たれる結果、皮膚の老化を予防および/または改善し得る。
【0019】
超臨界二酸化炭素における「超臨界」とは、ある物質の気体と液体とが共存できる臨界の温度および圧力(以下、「臨界点」という)を超えた状態を意味する。
二酸化炭素の臨界点は、温度31.1℃および圧力7.38MPaである。したがって、超臨界二酸化炭素とは、臨界点以上の温度で、かつ臨界点以上の圧力の下にある流体状の二酸化炭素を意味する。
【0020】
本発明で抽出に用いられる超臨界二酸化炭素の温度および圧力は、当業者が適宜設定することができるが、温度は一般に31.1〜120℃、好ましくは40〜100℃、より好ましくは50〜90℃、さらに好ましくは60〜85℃であり、且つ圧力は一般に7.38〜100MPa、好ましくは10〜80MPa、より好ましくは15〜60MPa、さらに好ましくは20〜50MPaである。
また、抽出時の超臨界二酸化炭素の流速および抽出時間は、特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。
【0021】
本発明における超臨界二酸化炭素による抽出では、抽出効率を向上させる目的で、共溶媒(エントレーナ)を用いてもよい。エントレーナとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、アセトン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエンなどの有機溶媒および水が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができるが、安全性の観点から、エタノール、水またはそれらの混液が好ましい。
エントレーナの量は特に限定されないが、好ましくは超臨界二酸化炭素の量の約10重
量%以下、より好ましくは約5重量%以下である。
【0022】
本発明におけるホオノキ抽出物の製造は、例えば次のようにして行うことができる。
まず、所定量のホオノキを超臨界流体抽出装置の加圧容器(抽出槽)中に入れ、その容器中に超臨界二酸化炭素を連続的に供給することによって抽出する。次いで、ホオノキ抽出物を含有する超臨界二酸化炭素を分離槽へ輸送し、一般的に行われている方法、例えば、圧力および/または温度を下げる方法などにより二酸化炭素とホオノキ抽出物とを分離することにより、本発明のホオノキ抽出物が得られる。
【0023】
上記の分離槽には、ホオノキ抽出物を吸着できる吸着剤、該抽出物を溶解または分散できる溶剤もしくは基剤などを充填しておいてもよい。また、分離された二酸化炭素は、液化槽に輸送して再利用することができる。
【0024】
上記のようにして得られるホオノキ抽出物は、必要に応じて、濃縮、希釈、濾過、脱臭、脱色、乾燥などの処理に付してもよい。また、該抽出物に含まれる特定の成分をカラム精製などにより、単離および/または濃縮してもよい。
【0025】
本発明のホオノキ抽出物は、シミやソバカスの原因であるメラニンの生成に深く関与する酵素であるチロシナーゼ、およびヒアルロン酸を分解する酵素であるヒアルロニダーゼの活性を阻害する作用を有する。そのため、本発明のホオノキ抽出物は、優れた美肌効果を有する。
【0026】
本発明のホオノキ抽出物はそのまま使用してもよいが、該抽出物の美肌効果を損なわない範囲で、化粧品、医薬部外品、医薬品または食品などの技術分野において通常用いられる他の成分を本発明のホオノキ抽出物に適宜配合して、本発明の美肌組成物として使用してもよい。
上記の他の成分としては、例えば、油脂類(カカオ脂、ヤシ油、パーム核油など)、ロウ類(ミツロウ、カルナバロウなど)、炭化水素類(固形パラフィン、流動パラフィン、ワセリンなど)、脂肪酸類(オレイン酸、リノール酸、イソステアリン酸、ウンデシレン酸など)、アルコール類(エタノール、セチルアルコール、イソステアリルアルコールなど)、エステル類(ミリスチン酸ミリスチル、モノステアリン酸グリセリン、オレイン酸デシルなど)、界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ソルビタン、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウムなど)、香料(合成香料、天然香料など)、甘味料(ショ糖、ステビアなど)、pH調整剤(炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなど)、保存剤(安息香酸ナトリウム、ソルビン酸など)、保湿剤(グリセリン、コラーゲン、ヒアルロン酸など)、粉体(顔料、色素、樹脂など)、紫外線吸収剤(パラメトキシケイ皮酸2エチルヘキシルなど)、紫外線散乱剤(酸化チタン、酸化亜鉛など)、増粘剤(アラビアゴム、メチルセルロースなど)、酸化防止剤(ビタミンC、ビタミンEなど)、キレート剤(エデト酸二ナトリウム、クエン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウムなど)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコールなど)、崩壊剤(デンプン類、結晶セルロースなど)などが挙げられる。
【0027】
本発明の美肌組成物は、本発明のホオノキ抽出物に加えて、他の美白剤または美白効果を有する他の生薬抽出物をさらに含んでいてもよい。そのような美白剤としては、メラニン生成抑制作用を有するものであれば特に限定されず、例えば、ビタミンC(L−アスコルビン酸)およびその誘導体、アルブチン(ハイドロキノンβ−D−グルコース)などのハイドロキノン誘導体、エラグ酸、コウジ酸、トラネキサム酸などが挙げられる。
【0028】
本発明の美肌組成物は、肌の美白のために用いられる組成物、あるいは皮膚の老化の予防および/または改善のために用いられる組成物として提供され得る。
【0029】
本発明のホオノキ抽出物および美肌組成物は、化粧品、医薬部外品、医薬品または食品(特定保健用食品、栄養機能食品を含む)のいずれにも配合することができ、その形態としては、例えば、化粧水、クリーム、乳液、ファンデーション、エッセンス(エキス)、パック、マスク、口紅、打粉、クレンジングローション、シャンプー、リンス、コンディショナー、石鹸、ボディーシャンプー、浴用剤、日焼け止めローション、軟膏剤、パップ剤、散剤、錠剤、乳剤、トローチ剤、内用液剤、シロップ剤、ゲル剤、エアロゾル剤、飲料、菓子類などが挙げられる。
【0030】
上記の化粧品、医薬部外品、医薬品または食品(特定保健用食品、栄養機能食品を含む)における本発明のホオノキ抽出物の含量は、特に制限されず、それぞれの形態に応じて適宜設定することができる。一例を挙げれば、該含量は、化粧品、医薬部外品、医薬品または食品(特定保健用食品、栄養機能食品を含む)の全重量に対して、ホオノキ抽出物を乾燥重量として0.0001〜50重量%、好ましくは0.0005〜40重量%、より好ましくは0.001〜30重量%である。
【0031】
本発明のホオノキ抽出物を含む美肌組成物が皮膚外用剤である場合、通常、該皮膚外用剤の全重量に対して、ホオノキ抽出物を乾燥重量として0.001〜10重量%配合すればよいが、0.001重量%未満では十分な美肌効果を期待できず、逆に、10重量%を超えて配合しても超過分に見合った美肌効果の増強は期待できず、不経済である。
【0032】
また、本発明のホオノキ抽出物または美肌組成物を内服する場合の摂取量は、投与形態、年齢、体重などによって異なるが、ホオノキ抽出物を乾燥重量として0.01〜10g/日、好ましくは0.1〜3g/日である。
【実施例】
【0033】
本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
【0034】
1.ホオノキ(コウボク)抽出物の調製
(実施例1〜4)
コウボク乾燥品(日本産、三星製薬株式会社)の粉砕物45gを超臨界流体抽出装置の抽出槽(容量200ml;株式会社アイテック製)に投入し、これに表1に示した温度および圧力の超臨界二酸化炭素を2.7kg/時間の流速で供給して2時間抽出した。同装置の分離槽において、減圧分離することによりコウボク抽出物を二酸化炭素から分離して回収した。得られた各コウボク抽出物の重量を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
(比較例1)
コウボク乾燥品の粉砕物100gに水を1000ml加え、55℃で1時間抽出した。次いで、抽出液を濾過し、濾液を30mlまで減圧濃縮した後、凍結乾燥してコウボクの水抽出物を8.7g得た。
(比較例2)
コウボク乾燥品の粉砕物100gに50%含水エタノールを1000ml加え、55℃で1時間抽出した。次いで、抽出液を濾過し、濾液を30mlまで減圧濃縮した後、凍結乾燥してコウボクのエタノール抽出物を8.8g得た。
【0037】
2.チロシナーゼ活性阻害作用試験
上記の実施例1〜4ならびに比較例1および2で得られた各コウボク抽出物の美白効果を検討するため、メラニン生成抑制作用の1つであるチロシナーゼ活性阻害作用についての試験を次のとおり行った。
(1)試料溶液の調製
上記の各コウボク抽出物をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解して、それぞれ4段階の濃度(125、250、500および1000mg/ml)の試料溶液を調製し、各濃度の試料溶液を反応系に100倍希釈となるように添加した。
(2)チロシナーゼ酵素溶液の調製
チロシナーゼ(マッシュルーム由来;シグマ社)を1/15Mリン酸緩衝液(pH6.8)に溶解して、チロシナーゼ酵素溶液(300units/ml)を調製した。
(3)基質溶液の調製
L−チロシン(シグマ社)またはL−ドーパ(シグマ社)を1/15Mリン酸緩衝液(pH6.8)に溶解して、0.03%基質溶液(0.3mg/ml)を調製した。
【0038】
(4)被験反応液および被験ブランク液の調製
96ウェルプレート(マイクロプレート;アズワン株式会社)に、各試料溶液を1ウェルにつき3μl添加し、次いで各ウェルに1/15Mリン酸緩衝液(pH6.8)を80μl、基質溶液を150μl加えた。また、ブランク対照として、基質溶液に代えて滅菌水150μlを各試料溶液が添加されたウェルに加えた。その後、該プレートを37℃で10分間プレインキュベーションした。
そして、チロシナーゼ酵素溶液を各ウェルに70μl加えて、37℃で30分間インキュベーションし、被験反応液および被験ブランク液を得た。
(5)対照反応液および対照ブランク液の調製
上記の工程(4)において、各試料溶液に代えてDMSOを96ウェルプレートの1ウェルにつき3μl添加し、以後の操作を上記の工程(4)と同様にして、対照反応液および対照ブランク液を得た。
【0039】
(6)吸光度の測定およびチロシナーゼ活性の阻害率の算出
上記の工程(4)および(5)のインキュベーション終了後、各ウェルの反応液の吸光度(490nm)をマイクロプレートリーダー(モデル680;バイオラッド社製)によって測定した。なお、測定される吸光度は、反応生成物であるドーパクロムに由来する。
次いで、下記の式を用いて、得られた各測定値からチロシナーゼ活性の阻害率を算出した。
チロシナーゼ活性阻害率(%)=[1−(A−B)/(C−D)]×100
(A:被験反応液の測定値、B:被験ブランク液の測定値、C:対照反応液の測定値、
D:対照ブランク液の測定値)
【0040】
また、陽性対照としてアルブチン(β型)を選択した。アルブチンのチロシナーゼ活性阻害率の算出は、アルブチン(東京化成工業株式会社)を上記の工程(1)のコウボク抽出物に代えて、アルブチンの試料溶液を同様に調製し、上記の工程(2)〜(5)と同様にして行った。
【0041】
上記で算出した阻害率を表2に示す。また、チロシナーゼ活性阻害率50%を示す有効濃度(IC50)を表3に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
表2に示されるように、実施例1〜4のコウボク抽出物は、対応する各濃度において、比較例1および2のコウボク抽出物ならびに陽性対照(アルブチン)よりも顕著に高いチロシナーゼ活性阻害率を示した。
また、表3に示されるように、実施例1〜4のコウボク抽出物のIC50は、比較例1および2のコウボク抽出物のIC50よりも顕著に低い値を示した。
これらの結果より、超臨界二酸化炭素により抽出されたコウボク抽出物は、水またはアルコールによる従来のコウボク抽出物よりも優れたチロシナーゼ活性阻害作用を有することが確認された。
【0045】
3.ヒアルロニダーゼ活性阻害作用試験
上記の実施例1〜4ならびに比較例1および2で得られた各コウボク抽出物の皮膚の老化の防止および/または改善効果を検討するため、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用についての試験を次のとおり行った。
(1)試料溶液の調製
上記の各コウボク抽出物をDMSOに溶解して、それぞれ4段階の濃度(31.3、62.5、125および250mg/ml)の試料溶液を調製し、各濃度の試料溶液を反応系に100倍希釈となるように添加した。
(2)ヒアルロニダーゼ酵素溶液の調製
ヒアルロニダーゼ(ウシ精巣由来;シグマ社)を100mM酢酸緩衝液(pH4.0)に溶解して、ヒアルロニダーゼ酵素溶液(400units/ml)を調製した。
(3)酵素活性化剤の調製
Compound48/80(シグマ社)を100mM酢酸緩衝液(pH4.0)に溶解して、酵素活性化剤(0.1mg/ml)を調製した。
(4)基質溶液の調製
ヒアルロン酸カリウム(ヒトへその緒由来;和光純薬工業株式会社)を100mM酢酸緩衝液(pH4.0)に溶解して、0.4mg/ml基質溶液を調製した。
【0046】
(5)被験反応液および被験ブランク液の調製
96ディープウェルプレート(アズワン株式会社)に、各試料溶液を1ウェルにつき1μl添加し、次いで各ウェルにヒアルロニダーゼ酵素溶液を29μl加えた。また、ブランク対照として、酵素溶液に代えて100mM酢酸緩衝液(pH4.0)29μlを各試料溶液が添加されたウェルに加えた。その後、該プレートを37℃で20分間プレインキュベーションした。次に、酵素活性化剤を1ウェルにつき20μl加えて37℃で20分間インキュベーションし、その後、基質溶液を50μl加えて37℃で80分間インキュベーションした。次いで、0.4N水酸化ナトリウム溶液を20μl加えて氷冷し、反応を停止し、5%ホウ酸溶液(pH9.1)を20μl加え、沸騰浴中で5分間加熱後、氷冷した。その後、1%p−DAB(p−ジメチルアミノベンズアルデヒド)溶液(和光純薬工業株式会社)10gを10N塩酸12.5ml、酢酸87.5mlに溶解したものを使用直前に酢酸で10倍希釈した溶液)を300μl加えて、37℃で20分間インキュベートして発色させ、被験反応液および被験ブランク液を得た。
【0047】
(6)対照反応液および対照ブランク液の調製
上記の工程(5)において、各試料溶液に代えてDMSOを96ディープウェルプレートの1ウェルにつき1μl添加し、以後の操作を上記の工程(5)と同様にして、対照反応液および対照ブランク液を得た。
【0048】
(7)吸光度の測定およびヒアルロニダーゼ活性の阻害率の算出
上記の工程(5)および(6)のインキュベーション終了後、1ウェル当たり300μlの反応液を96ウェルプレート(アズワン株式会社)に移し、各ウェルの反応液の吸光度(585nm)をマイクロプレートリーダー(モデル680;バイオラッド社製)によって測定した。なお、測定される吸光度は、ヒアルロン酸の加水分解によって生成するN−アセチルヘキソサミンを還元末端とする四糖の還元力の増加に由来する。
次いで、下記の式を用いて、得られた各測定値からヒアルロニダーゼ活性の阻害率を算出した。
ヒアルロニダーゼ活性阻害率(%)=[1−(A−B)/(C−D)]×100
(A:被験反応液の測定値、B:被験ブランク液の測定値、C:対照反応液の測定値、D:対照ブランク液の測定値)
また、陽性対照としてクロモグリク酸ナトリウム(日本薬局方に記載のもの)を選択した。クロモグリク酸ナトリウムのヒアルロニダーゼ活性阻害率の算出は、クロモグリク酸ナトリウムを上記の工程(1)のコウボク抽出物に代えて用いて、クロモグリク酸ナトリウムの試料溶液を同様に調製し、上記の工程(2)〜(7)と同様にして行った。
上記で算出した阻害率を表4に示す。また、ヒアルロニダーゼ活性阻害率50%を示す有効濃度(IC50)を表5に示す。
【0049】
【表4】

【0050】
【表5】

【0051】
表4に示されるように、実施例1〜4のコウボク抽出物は、対応する各濃度において、比較例1および2のコウボク抽出物よりも高いヒアルロニダーゼ活性阻害率を示した。
また、表5に示されるように、実施例1〜4のコウボク抽出物のIC50は、比較例1および2のコウボク抽出物のIC50よりも顕著に低い値を示した。
これらの結果より、超臨界二酸化炭素により抽出されたコウボク抽出物は、水またはアルコールによる従来のコウボク抽出物よりも優れたヒアルロニダーゼ活性阻害作用を有することが確認された。
【0052】
4.処方
以下に、本発明の美肌組成物の処方例を示す。なお、ホオノキ抽出物は、上記の1.に記載の超臨界二酸化炭素により抽出して得られたものを用いた。また、各成分の配合割合を重量%で示した。
(処方例1)
クリーム
本発明の皮膚外用剤である、化粧料(クリーム)を製造した。すなわち、(A)の各成分を混合し、80℃に加熱した。一方、(B)の各成分をそれぞれ混合し80℃に加熱した。(A)の混合物に、(B)の混合物を撹拌しながら徐々に加えて乳化させ、その後35℃に冷却して、クリームを得た。
(A)
スクワラン 15.00(重量%)
ミリスチン酸オクチルドデシル 4.00
水素添加大豆リン脂質 0.20
ブチルアルコール 2.40
硬化油 1.50
ステアリン酸 1.50
親油型モノステアリン酸グリセリン 1.50
モノステアリン酸ポリグリセリル 0.50
ベヘニルアルコール 0.80
モノミリスチン酸ポリグリセリル 0.70
サラシミツロウ 0.30
d−δ−トコフェロール 0.05
メチルパラベン 0.30
ホオノキ抽出物 1.00
(B)
C10〜30アルキル変性カルボキシビニルポリマー 0.20
カルボキシビニルポリマー 0.10
1,3−ブタンジオール 18.00
水酸化ナトリウム 0.10
精製水 51.85
(計 100.00)
【0053】
(処方例2)
化粧水
本発明の皮膚外用剤である、化粧料(化粧水)を製造した。すなわち、(A)の各成分を混合し、80℃に加熱して混合均一化した後、冷却する。これに35℃で(B)の各成分を順次添加し、混合、均一化して、ローションを得た。
(A)
スクワラン 0.40(重量%)
モノラウリン酸ポリグリセリル 0.10
長鎖α−ヒドロキシ脂肪酸 0.01
グリセリン 3.00
1,3−ブチレングリコール 8.00
ホオノキ抽出物 1.00
(B)
フェノキシエタノール 0.20
1,3−ブチレングリコール 10.00
アラントイン 0.10
クエン酸 0.01
ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム液 0.05
サクシニルコラーゲン液 0.01
精製水 77.12
(計 100.00)
【産業上の利用可能性】
【0054】
超臨界二酸化炭素により抽出された本発明のホオノキ抽出物は、優れたチロシナーゼ活性抑制作用およびヒアルロニダーゼ活性抑制作用を有するため、優れた美肌効果、すなわち美白効果ならびに皮膚の老化の予防および/または改善効果を有し、化粧品、医薬部外品、医薬品または食品における活性成分として利用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホオノキを超臨界二酸化炭素により抽出して得られるホオノキ抽出物。
【請求項2】
ホオノキがコウボクである請求項1に記載のホオノキ抽出物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のホオノキ抽出物を含む美肌組成物。
【請求項4】
組成物が、肌の美白用組成物である請求項3に記載の美肌組成物。
【請求項5】
組成物が、皮膚の老化の予防および/または改善用組成物である請求項3に記載の美肌組成物。
【請求項6】
組成物が化粧品、医薬部外品、医薬品または食品である、請求項3〜5のいずれか1項に記載の美肌組成物。
【請求項7】
化粧品が化粧水、クリーム、乳液、ファンデーション、エッセンス、パック、マスク、口紅、打粉またはクレンジングローションの形態にある、請求項6に記載の美肌組成物。
【請求項8】
ホオノキを超臨界二酸化炭素により抽出してホオノキ抽出物を得ることを特徴とする、請求項1に記載のホオノキ抽出物の製造方法。
【請求項9】
ホオノキがコウボクである、請求項8に記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−20990(P2011−20990A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202643(P2009−202643)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(592156482)大峰堂薬品工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】