説明

ホトクロミック成形組成物及びそれから製造される物品

【課題】改良されたホトクロミック材料及び該材料で構成された少なくとも1つの領域又は1つの層を有する透明な、曇りのない物品を提供する。
【解決手段】50〜99質量%の比率の少なくとも1種の透明ホモポリアミド及び/又はコポリアミドと、ガラス転移温度が80℃未満である1〜50質量%の比率の少なくとも1種のさらなるポリマーとを含み、かつ0.001〜2.0質量%の比率の少なくとも1種のホトクロミック染料を含むポリアミド成形組成物からなるホトクロミック材料及び該材料で構成された少なくとも1つの領域又は1つの層を有する透明な、曇りのない物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホトクロミック成形組成物及びそれから製造される物品、例えば、眼用レンズ、並びに該物品の製造方法に関する。これらは、好ましくはバルク着色成形組成物であるが、浸漬コーティング浴内での着色、又はホトクロミック染料を導入/ドーピングする別の方法経由でも同様に可能である。
【背景技術】
【0002】
ホトクロミック成形組成物は、ホトクロミック物品、例えば光にさらされると可逆的な着色を受けるサングラスのレンズ、又は同様の物品の製造で使用される出発原料である。
ホトクロミックは、光(UV又は短波VIS)にさらされることによって染料が励起状態に変換されることを意味し、ここで、熱力学的に励起していない状態と励起した状態は異なる吸収スペクトルを有する(ホトクロミック[ホトクロミック性]の定義は、非特許文献1参照)。励起状態は、一般的に明暗の強い色を有するが、初期形態は無色である。励起した染料分子は、熱又は照射誘導可逆反応によって非励起状態に戻る。
これら染料を用いて、例えば、染料をプラスチックマトリックス中に導入することによって(バルク着色)、或いはガラス又はプラスチック上に染料のコーティングを施すことによって、その可変性が光誘導される光学フィルターを製造できる(例えば、このような染料のポリマーマトリックスへの組み入れについては非特許文献2参照)。
【0003】
眼用レンズ、例えば、日光にさらされると自発的に暗くなるサングラスのレンズによって重要な用途が提供される。これらレンズに色の所望の陰を与えるため、複数のホトクロミック染料及び/又はホトクロミック染料と共に1種以上の不活性な染料を使用する。不活性な染料を使用する場合、レンズは、未照射状態でさえ、内在する色合い又は色を有し、これが透過率を減じる。
このような用途の重要な局面は、可逆的なホトクロミックプロセスの可能な繰返し数が最大化されること、及び環境的な作用(例えば、酸素)又は副反応(例えば、ポリマーマトリックス若しくは添加剤との)によって染料がこの周期から不可逆的に排除されないことである。さらなる前提条件は、“スイッチングプロセス”(励起)及び/又は熱的可逆反応が、許容しうる時間内で実際の完了まで進行することである。この前提条件がない場合、光にさらされてもレンズの着色は起こらず(透過率の減少なし)、及び/又はレンズは露光後長時間その色合いを保持する。両方とも望ましくない。
【0004】
最初のホトクロミックプラスチックレンズの市販は1980年代の初期に始まった。しかし、ホトクロミック系が十分な寿命と満足なスペクトル性能を達成する前に、染料及び/又はポリマーマトリックスに多くの改良を成し遂げなければならなかった。まず、このようなプラスチックレンズは、実用的には完全にキャスティング系、例えばビスアリルカーボネートの重合によって得られるアリルジグリコールカーボネートCR39に基づいていた。後に、(メタ)アクリレート及びポリカーボネートに基づいたレンズも入手可能となり、最近では、益々多数のレンズが熱可塑的に製造され、現在、多く使用されている原料は熱可塑性ポリウレタン(TPU)である。
【0005】
ホトクロミック的にドープされたプラスチックの一般的内容の特許文献のいくつかの開示について以下に述べる。キャスティング法で架橋によって処理加工してレンズを与えるCR39のような系の種々多様な記述については、本発明は該系を包含しないので意図的に詳細を示さない。
特許文献1は、可塑剤が混ざった(2〜15質量%)PET(ポリエチレンテレフタレート)プラスチックマトリックスをホトクロミック染料でドープしたホトクロミック系を開示している。このマトリックスの選択の意図は、光及び熱に対する一定の暴露下で、このような層の長期安定性が改良され、かつこの層は、例えば、ナイロンフィルムに適用できることである。
同様に、特許文献2は、耐熱性かつ耐候性を意図したホトクロミック材料を開示している。この材料は、透明プラスチックと、ヒドロキシル基を有する規定比率のモノマーを有するポリマー、例えば、PVB(ポリビニルブチラール)又はポリビニルアセテートである添加剤とで構成されるプラスチックマトリックスで構成される。透明プラスチックとして種々多様の可能な系、例えばPMMA、PC、透明ナイロン等が言及されている。
特許文献3は、上記2つの明細書と同様に、着色した自動車のフロントガラス部門についてであり、ホトクロミック材料を含む中間層と2つのガラス層で構成される多層構造を開示している。この中間層の透明材料として多数の可能性が述べられており、とりわけ、ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリアミド樹脂が言及されている。染料として、とりわけスピロオキサジンが言及され、この染料の特有の分布が利点として強調されている。
特許文献4は、PC基材と、熱可塑性ポリウレタン(TPU)で構成されるホトクロミック的にドープしたコーティングとで構成されるホトクロミックレンズを開示している。このコーティングをインモールドコーティング(in-mold-coating)法でPCプレフォームに適用する。
【0006】
【特許文献1】特開昭63−027837号公報
【特許文献2】特開平01−180536号公報
【特許文献3】特開平01−024740号公報
【特許文献4】WO 01/49478号公報
【非特許文献1】Rompp Lexikon Chemie [Rompp's Chemical Encyclopedia], 10th edition, page 3303, Georg Thieme Verlag, Stuttgart
【非特許文献2】J.F. Rabek, Mechanisms of Photophysical Processes and Photochemical Reactions in Polymers, chapter 10, pages 377-391
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は、とりわけ、先行技術の材料と比較して改良されたホトクロミック材料を提供するという目的に基づいている。特定の目的は、ポリアミドに基づいたこのような材料の改良である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、特に、50〜99質量%の比率の少なくとも1種の透明ホモポリアミド及び/又はコポリアミドと、ガラス転移温度が80℃未満である1〜50質量%の比率の少なくとも1種のさらなるポリマーと、0.001〜2.0質量%の比率の少なくとも1種のホトクロミック染料とを含むホトクロミックポリアミド成形組成物を提供することによって達成される。この材料は、任意に、とりわけ、さらなる染料及び/又は添加剤を含むことができる。ホトクロミック染料をこの材料と予め混ぜておく必要はなく、また、初期装填としてポリアミドと、ガラス転移温度について言及した特性を有する他のポリマーとで構成される混合物を用い、かつ、例えば浸漬コーティング浴内で物品の製造後又は製造中に、その物品に染料を導入することも可能である(例えば、射出成形法におけるレンズの製造)。
さらなるポリマーは、好ましくは、ガラス転移温度が高くて80℃である少なくとも1つの非晶質相を有する。さらなるポリマーが、ソフトセグメントを有するブロックポリマーの場合、該ソフトセグメントはのガラス転移温度は、40℃未満、好ましくは25℃未満であるべきだ。
【0009】
この明細書で使用する用語“透明ポリアミド”は、(コ)ポリアミド(純粋形態で、すなわち本発明の成形組成物の上述したさらなる構成成分がない)が、厚さ2mmの薄いプラーク(プレート)の形態を取るとき、その光透過率が少なくとも70%である、ポリアミド若しくはコポリアミド又はそれから形成される成形組成物を意味するものとする。ここで、光透過率は、Perkin Elmer UV/VIS分光計で、200〜800nmの範囲にて70×2mmの寸法の円プラークを用いて測定する。透過率の値は、500〜700nmの範囲の波長について述べる。この目的のため、例えば研磨型内のArburg射出成形機で、70×2mmの寸法の円プラークを作製する。ここで、シリンダー温度は200〜340℃で、型温度は20〜140℃である。
【0010】
この目的のため使用可能な透明ポリアミドの例は、DE-A-102 24 947、又はDE-A-101 22 188、CH-A-688 624若しくはEP-A-0 725 100に記載されているようなポリアミド及び/又はコポリアミド、或いはその混合物である。透明ポリアミドに関し、これら文献の開示及びこれら文献で言及しているポリアミド系及びコポリアミド系をこの明細書に明白に取り込む。
主原料としてポリアミドを使用する利点の1つは、これまで眼用レンズの製造で使用されていたCR39又はアクリレートのような原料(これらは重合(架橋)を含む伝統的なキャスティングプロセスを必要とする)と異なり、透明ポリアミド(非晶質又は微結晶性)は、低サイクル時間の簡単な射出成形法で、すなわち低コスト大量生産で処理加工することができる。従って、本発明のポリアミド成形組成物は、好ましくは架橋性でもない。
【0011】
混合物は、70〜99質量%、特に80〜98質量%の比率の透明ホモポリアミド及び/又はコポリアミドと、1〜30質量%、特に2〜20質量%の比率の少なくとも1種のさらなるポリマー(そのガラス転移温度が80℃又は40℃未満)とで構成され(すなわち染料なし)、かつ前記混合物は、同時にさらに、好ましくは上記意味で本質的に透明であり、或いは上記意味で透明性が10%しか低減せず、好ましくは5%しか低減しない。光学的規格があまり厳しくない構成要素、又はホトクロミックプロセスが反射でのみ関連する構成要素(例えば、装飾品)では、低い透明性でも可能であり、わずかに曇っていてさえよい。厳しい光学的規格の構成要素では、500〜700nmの波長範囲で(2mmの層厚で測定)70%を超える透過率、好ましくは80%を超える透過率が好ましく、及び/又は5未満、又は3未満好ましくは2未満の曇り度が好ましい(ASTM 1003、層厚2mm)。
【0012】
ポリアミド-12(ポリアミド-12とも呼ばれる)、特に低粘度PA12(溶液粘度又は相対粘度ηrel−DIN EN ISO 307に準拠(20℃でm-クレゾール中0.5質量%溶液中)−1.5〜2、好ましくは1.6〜1.9)の添加は、曇り度及びホトクロミック効果を改善することができる。
ポリアミド-12及び/又はポリアミドオリゴマーの添加は、さらにホトクロミックポリアミド成形組成物をより穏やかな条件下で処理加工することを可能にし、かつより穏やかな条件下で該熱可塑性成形組成物中にホトクロミック染料を組み入れることを可能にし、ひいては、押出し成形及び/又は射出成形プロセス中に、不安定なホトクロミック染料の実質的にいずれの分解をも阻止することができる。好適なポリアミドオリゴマーの例は、ポリアミド-12オリゴマー、好ましくは1500〜2500g/molの平均モル質量を有し、特に好ましくは主に非縮合性アルキル末端基を有するポリアミド-12オリゴマーである。
【0013】
種々の手段を用いてゲートマークを回避することができる。10質量%以上の低粘度ポリアミド-12の添加は、ゲートマーク形成の阻止に有効でありうる。同様に、透明ポリアミドの溶液粘度と、ガラス転移温度が80℃未満のポリマー成分の溶液粘度の比が1.2未満、特に1.1未満の場合、ゲートマークを回避できる。同一の化学構成では、前記2つのポリマー成分の溶液粘度の比が低減するにつれて、曇り度も減少する。ポリアミド-12オリゴマーの添加は、低い溶融粘度と長い流路のため、処理加工を全体的に容易にする。
数年間で、光学用途に必要な純度でも非晶質ポリアミドを調製できたが(その例は、DE-A-196 42 885に記載されているようなMACM12タイプのポリアミドであり、これらは、商標名Grilamid TR 90でスイス国のEMS CHEMIEから入手可能である)、ホトクロミック染料の単純な添加では、これら純粋な系から生成されるレンズに満足できるホトクロミック効果を与えることができない。
ここで、MACMは、そのISO名がビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタンである化合物(商標名3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタンでLarominのC260グレードとして市販されている(CAS No. 6864-37-5))を意味する。数字12は、脂肪族線形C12ジカルボン酸(DDA,ドデカン二酸)を意味し、これとジアミンMACMが重合している。
驚くべきことに、ホトクロミック染料の透明ポリアミドへの添加が満足なホトクロミック挙動を与えないという効果に対する以前の経験に反し、本発明の材料は、ホトクロミック物品を与えるために処理加工すると、予想外に長生きする、すなわち頻繁に繰り返し可能な可逆性のホトクロミック挙動を与えることが分かった。さらに、その好ましい染料は、最も安定したホトクロミック系の1つである。さらにスイッチングプロセス(励起)が迅速に進み、同様に熱的可逆反応が数秒からせいぜい数分の合理的時間内でほぼ完全に進行する。
【0014】
標準的に、ガラス転移温度が100℃未満の純粋なポリアミド材料、すなわち混合物の形で存在するものでない材料だけが顕著なホトクロミック挙動を示し、一例は、MACM36又はPACM36(PACMは、そのISO名がビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンである化合物で、商標名4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタンでDicykanグレード(CAS No. 1761-71-3)として入手可能)である。しかし、一般的に、これら材料は機械的又は熱的特性が不完全なため、眼用レンズ用途の例としては不向きである。透明な(コ)ポリアミドに染料と共にさらなるポリマーを添加することができる。しかし、これらポリマー及びその結果混合物(ブレンド)は、特に眼用レンズ用途では厳格な要求を受け、かつ混合は通常ブレンドを曇らせることになる。しかし、混合物(ブレンド)の光学特性(透過率、曇り度、Abbe数)は、実質的に純粋なポリアミドのレベル未満のはずはない。ホトクロミックプロセスは、良いキネティクスを有し(秒から数分の時間内、好ましくは20〜60秒以内で減色及び退色)、かつ長い寿命にわたって続くはずである。これは、提案材料の場合であり、かつ該材料から作製される物品の場合である。前述したように、染料のない前記ブレンドから物品を製造し、該物品の最初の成形後に染料を例えば浸漬コーティング浴内で導入すると、バルク着色物品のこれら良い特性も生じる。透明ポリアミドと共に低いガラス転移温度の他のポリマーの存在は、ホトクロミック染料にコンフィギュレーション及び/又はコンホメーションの可逆的変化(一般に染料の励起中に起こり、かつ通常色の変化に必要とされる)を許容する環境を与える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
第1の好ましい実施形態では、本ポリアミド成形組成物は、さらなるポリマーのガラス転移温度が30℃未満、好ましくは25℃未満である、ポリアミド成形組成物である。これは理想的なホトクロミックのキネティクスを与えうる。特に、さらなるポリマーのガラス転移温度が0℃未満、好ましくは-60〜-20℃の範囲の場合、良い値が得られる。
優れたキネティクスの別の好ましい実施形態は、さらなるポリマーが脂環式ジアミンと、6〜40個の炭素原子を有する、特に好ましくは20〜36個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸とに基づいたポリアミドであるポリアミド形成組成物であり、前記脂環式ジアミンが好ましくはMACM及び/又はPACMであり、かつ全体的なポリアミドが特に好ましくはMACM36及び/又はPACM36であり、及び/又はさらなるポリマーがソフトセグメントを有するブロックコポリマーであり、該ソフトセグメントのガラス転移温度は好ましくは25℃未満である。さらなるポリマーは、例えば、ソフトセグメントを有するポリアミドブロックコポリマー、好ましくはポリアミド-12ブロックコポリマーであり、ここで、ソフトセグメントは、好ましくはポリエーテルソフトセグメント及び/又はポリエステルソフトセグメント及び/又はポリシロキサンソフトセグメント及び/又はポリオレフィンソフトセグメント及び/又はポリアクリレートソフトセグメントである。好ましいポリエーテルセグメントは、モノマーエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド及び/又はテトラヒドロフランに基づいた当該セグメントである。
【0016】
可能な他のさらなるポリマーは、ソフトセグメントを有するポリエステルエラストマー及びソフトセグメントを有するTPUエラストマーであり、これらは両方とも以前にポリアミドブロックポリマーに関連して上記初期段階で記載されているとおりである。他のさらなるポリマーを用いることも、それらが上述したガラス転移温度の条件を満たす限り可能であり、例えば、アクリレートポリマー、メタクリレートポリマー(特に好ましくは長いペンダント基を有する)、ポリカーボネートコポリマー、スチレンコポリマー(好ましくはアクリロニトリル、ブタジエン、アクリレート、メタクリレートに基づいた)、ポリオレフィン(特にグラフト化された)、エチレンコポリマー(プロペン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、デセン、ウンデセン、ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、イソプレン、イソブチレンに基づき、或いは(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロペン及び2-クロロブタジエンの誘導体である)、ポリイソブチレン、ポリブチルアクリレート等である。
【0017】
好ましい一実施形態では、透明ホモポリアミド及び/又はコポリアミドは、脂環式ジアミン及び6〜36個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸に基づいたポリアミドであり、或いはこのようなホモポリアミド及び/又はコポリアミドの混合物である。良いホトクロミック性を有する優れた透明度値は、脂環式ジアミンがMACM及び/又はPACMである場合及び/又は脂肪族ジカルボン酸が10、12、若しくは18個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸である場合の例によって得られる。例えば、透明ポリアミドは、MACM12(例えば、Grilamid TR 90, さらに後述するテキスト参照)、MACM18の群から選択されるホモポリアミドであり、及び/又はMACM12/PACM12、MACM18/PACM18の群から選択されるコポリアミドである。このような系の屈折率が1.50以上、Abbe数が40以上かつ密度が1.1g/cm3以下であることが好ましい。
【0018】
別の有利な可能性は、透明ホモポリアミド及び/又はコポリアミドが8〜18個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸に基づいたポリアミドであり、或いは好ましくはラクタム及び/又はアミノカルボン酸(前記芳香族ジカルボン酸は、例えばTPA(テレフタル酸)及び/又はIPA(イソフタル酸)である)に基づいた該ホモポリアミド及び/又はコポリアミドの混合物であることである。透明ホモポリアミド及び/又はコポリアミドは、有利には以下の群から選択されるポリアミドでよい:6I6T、TMDT、6I/MACMI/MACMT、6I/6T/MACMI、MACMI/MACM36、6I、ラクタム含有ポリアミド、例えば、12/PACMI、12/MACMI、12MACMT、6/PACMT、6/6I、6/IPDT、又はその混合物。ポリアミドはISO 1874-1に準拠して命名される。ここで、各Iはイソフタル酸を表し、各Tはテレフタル酸を表し、TMDはトリメチルヘキサメチレンジアミンを表し、IPDはイソホロンジアミンを表す。
【0019】
透明ホモポリアミド及び/又はコポリアミドが少なくとも1種のジカルボン酸と、芳香族環を有する少なくとも1種のジアミン(好ましくはMXD(メタ-キシレンジアミン)に基づく)に基づいたポリアミドであることが有利かつ可能であり、ここで、前記ジカルボン酸は芳香族及び/又は脂肪族でよく、該材料は好ましくは6I/MXDIである。
このような系、一般的に透明ホモポリアミド及び/又はコポリアミドの屈折率が1.59以上で、Abbe数が25以上で、かつ密度が1.3g/cm3以下であると好ましい。溶液粘度又は相対粘度ηrel(DIN EN ISO 1628-1又はDIN EN ISO 307に準拠)が1.3〜2.0、特に1.40〜1.85であると好ましい。さらに、透明ホモポリアミド及び/又はコポリアミドのガラス転移温度Tgは通常約90℃より高く、好ましくは110℃より高く、特に好ましくは130℃より高い。
【0020】
別の好ましい実施形態は、ホトクロミック染料が、UV又は短波VISで可逆的に励起しうる染料、好ましくはスピロオキサジンに基づいた染料である実施形態である。励起しうるとは、染料がポリマーで構成されるマトリックス、すなわち透明ポリアミドと、上述したガラス転移温度を有する他のポリマーとで構成される本発明のブレンドに埋め込まれたとき、可視光の吸収が起こるようにその吸収スペクトルが変化する状態に励起できることを意味する。ホトクロミック染料の選択及び濃度の調整によって、スペクトルの可視領域内で広範に達成しうるフィルター効果を調整することができる。従って、元の透過率の40%又は10%にまでさえ完全に可逆的な減少を達成することができる(通常80〜92%)(各場合平行面を有する厚さ1又は2mmのプラークについて測定した)。
ホトクロミック系として組み入れうる他の可能な染料は、例えば、Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology vol. 6, “Chromogenic Materials, Photochromie”, pages 587-605, John Wiley and Sons, Inc., or else in: Heinz Durr, Henri Bouas-Laurent (eds.), Photochromism: Molecules and Systems, Elsevier 2003に記載されている。これら染料は、本発明のブレンド中に組み入れるため、本発明の開示内容に明白に取り込まれ、これら刊行物に記載されているスピロオキサジンが好ましい。他の可能な系は、特にDE-A-36 22 871に記載され、又はWO 2005/030856に記載され、又はEP-A-0 313 941に記載されている当該系である。これら染料も、参考として本明細書に明白に取り込まれる。
【0021】
任意に存在してよい上記添加剤は、とりわけ、安定剤、例えばUV安定剤、熱安定剤、及びフリーラジカルスカベンジャーでよく、及び/又は加工助剤、可塑剤、さらなるポリマー、又はその組合せ若しくは混合物でよい。本成形組成物は、さらにナノスケールのフィラー及び/又はナノスケールの機能性物質、例えば層状鉱物又は眼用レンズの屈折率を高める金属酸化物を含みうる。
本発明は、さらに、上述したポリアミド成形組成物で構成される少なくとも1つの領域又は1つの層を有する、曇のない物品を提供する。これはホイル、インサート、プロフィル、チューブ、中空体、若しくは光学的に可変性のフィルター、特に好ましくは光学レンズ、特に好ましくは眼用レンズであることが好ましい。
物品、すなわち特に眼用レンズは、好ましくは色勾配を有し、及び/又はホトクロミックコーティング、反射防止コーティング、耐引っかき性コーティング、光学フィルターコーティング、偏光コーティング、酸素-バリヤーコーティング、又はこのようなコーティングの組合せを有する。
特に、高規格光学用途のため、例えば眼用レンズの形態では、該ポリアミド成形組成物で構成される物品のガラス転移温度が90℃又は100℃より高く、好ましくは130℃より高く、特に好ましくは150℃より高い。
さらに、本発明は、押出し成形法、射出成形法、又はインモールドコーティング法で上記ポリアミド成形組成物を成形する工程を含む、上記物品、特に好ましくは眼用レンズの製造方法であって、透明ポリアミドとさらなるポリマーで構成される混合物中に、前記ホトクロミック染料を前もって導入することができ、及び/又は妥当な場合、下流の浸漬浴コーティング法及び/又は熱伝達法(又はいずれかの他の浸漬法)で導入することができる。ホトクロミック物品は、基材、好ましくはホトクロミック的に改変されていない通常のレンズに、ラミネーション又は接着によって適用できるホトクロミックホイルでもよい。
【0022】
このようなバルク着色物品の製造方法は、例えば、ホトクロミック染料を、透明ホモポリアミド及び/又はコポリアミド及びさらなるポリマーと一緒にコンパウンドする工程を含むことができ、このとき前記染料は、例えば、液体濃縮物の形態で、定量ポンプを用いて、透明ホモポリアミド及び/又はコポリアミドと、さらなるポリマーとで構成されるポリマー融成物に添加され、及び/又は固体形態の染料が混合ドラム内で他方の成分に適用され、妥当な場合、施工助剤を利用することもできる。別の考えられる方法では、染料とさらなるポリマーを処理加工して、好ましくは30%までの高い色濃度のマスターバッチを得、かつこのマスターバッチの必要量を透明ポリアミド及び/又はコポリアミドと押出機内で処理加工してペレットを得、或いは射出成形機内で直接完成成形品に変換する。
【0023】
本提案のポリアミド成形組成物は、例えば、スペクトルフィルター効果を有するエレメントの構成成分又はコーティングとして、例えば、メガネレンズ、サンレンズ、矯正レンズ、又は光学フィルターの形態で、或いはスイッチングアセンブリー又は光学シグナルプロセシング、スキーゴーグル、バイザー、安全メガネ、ホトレコーディング、ディスプレイ、光学データ保存の形態で、或いは建築物及び乗物の窓などとして使用しうる。第二に、本ポリアミド成形組成物は、例えば、装飾エレメント又は構造エレメントと共に使用することもでき、例えば、メガネフレーム、玩具、又はカバー、特に携帯電話ケース、電子装置一部、コーティング(特にパッケージング、装飾品、スポーツ用具、若しくは特に自動車部門の被覆金属板(cladding)のコーティング)の形態で使用することができる。最後の用途の場合、透過ではフォトクロミック性がないが、反射でフォトクロミック性であれば十分なこともある。
さらなる実施形態は、特許請求の範囲に記載され、かつ本明細書に包含される。
【実施例】
【0024】
〔発明を実施する方法〕
以下の実施例を用いて本発明を説明する。実施例は、ポリアミド成形組成物をどうやって調製できるか、例えば、どうやって処理加工して成形品を得るかを示すことを意図するが、添付の特許請求の範囲で定義した保護される主題を制限するものと解釈することを意図しない。
【0025】
実施例1〜13及び比較例(CE)1〜5:
まず、透明ポリアミドと、さらなるポリマーとしてブロックコポリマーとで構成されるポリマー混合物をCollin Teach-Line ZK25T L/D=18二軸スクリュー押出機で調製した。バレル温度は、供給ゾーン以外200〜280℃で、スクリュー回転速度は120〜250rpmだった。
混合ドラム内で、透明ポリアミドのペレット又は透明ポリアミドに基づいたポリマー混合物に、Tween 20(0.05質量%)を用いてスピロオキサジン染料(OP 14 BLUE, OP 19 RED)を適用した。次に、これら混合物をArburg Allrounder 350-90-220D射出成形機で処理加工して寸法30×30×1mmのプラークを得た。シリンダー温度は200〜260℃で、型温度は20〜60℃だった。スクリュー回転速度は150〜400rpmだった。
本発明の各実施例で用いたホトクロミックポリアミド成形組成物の構成を表1及び2に整理し、比較例の構成を表3に整理する。
【0026】
表1:本発明の実施例1〜9のホトクロミックポリアミド成形組成物(構成(質量%))



*) 照射時間:30秒
【0027】
表2:本発明の実施例10〜13のホトクロミックポリアミド成形組成物(構成(質量%))



*) 照射時間:30秒
【0028】
記号--、-、o、+、及び++を用いてホトクロミック挙動について表で用いた評価は、定性的な視覚的判定に基づき、これは、着色の速度と退色の速度に基づいており(キネティクス)、照射後に達成しうる色の深さにも基づく。
メガネレンズの光学的フィルタリングは2つの機能を有する。まず第1に、目に到達する光の強度を減じ、第2に危険な紫外線を目から遠ざける。大部分のホトクロミック染料はUV-A及びUV-B領域内に強い吸収帯を有するので、低濃度のさらなるUV吸収材(UVブロッカー)、例えば、Tinuvin 326でさえ、メガネレンズの十分なUV-領域吸収を達成するのに十分である(本発明の実施例12)。従って、本発明の実施例12では0.05質量%のTinuvin 326でさえ、390nmで顕著なUVカットオフを達成するのに十分である。
【0029】
表3:比較例CE1〜CE5(構成(質量%))



*) 照射時間:30秒
n.d.:測定せず
【0030】
表3から、比較例CE3、CE4、及びCE5もホトクロミック特性について正の結果を示すが、これら物質の機械的特性は本発明の用途に適さないと推論できる。CE3〜CE5に相当する成形組成物から作られる物品又は層は、このような用途には軟らかすぎるか、又は耐熱性が小さすぎる。
光学的測定は、Datacolor SF 600Plus色測定装置で行った。染料の励起には、0.05アンペアの電流で27Vの電圧を加えて約415nmで発光最大値を有する(半値幅約50nm)LEDパネル(10×8ダイオード)を用いた。ホトクロミック効果について、この照射で達成される効果が、出願人の所在地で空が曇りのとき自然の日射により1月に生じる効果と同じなので、この方法を選択した。20℃の温度でスペクトル研究を行ない、減光(darkening)のキネティクス及び退色(fading)のキネティクスが温度に依存することが分かった。
【0031】
次に、プラークをフラッシュランプ(透過率測定モード)の光路内に置き、照射せずに400〜700nmで吸収スペクトルを測定した。30秒間、LEDパネルを用いてプラークに照射し、照射源の除去直後に吸収スペクトルを記録した。このように測定した吸収スペクトルは、本発明で考慮すべき事項の目的で達成しうる最大の減光(色飽和)を与える。しかし、染料の無色形態を与えるための染料の可逆反応が非常に速いことがあるので(実際のスペクトル測定が行われる前に2秒まで進みうるので)、このように測定した最大の減光は、照射下で達成される本当の飽和より顕著に低い。可逆反応は最大減光の状態(最高濃度の励起染料分子が存在する)で最も迅速に特異的に起こることは明白である。
【0032】
退色速度を測定するため、照射源の除去後種々の時間で吸収スペクトルを記録した。本発明の実施例3〜9について波長600nmで種々の接合点にて測定した透過率の値を表4及び5に整理する。仏国のESSILOR製のAirwear(登録商標)T5Gレンズは比較として役立つ。このレンズは、ポリカーボネートで構成されるプラスチックレンズ(厚さ2mm)である。このレンズは、浸漬浴コーティングで着色され、又はホトクロミックラッカーでコーティングされている。吸収帯の特徴的な位置決めのため、このレンズの透過率を580nmで測定した。
LEDパネルによる顕著に長い照射は、表1〜3の値で示されるより著しい減光(飽和)を与えた。例えば、本発明の実施例3の透過率は、照射時間が30〜120秒持続すると、60%〜55%に低減する。
【0033】
表4:時間(退色)の関数として30×30×1mmプラークについて600nmで測定した透過率(%);プラークを予め30秒間LEDパネルで照射した;従って“0秒”は照射終了後最初の測定を表す。

【0034】
表5:時間(退色)の関数として30×30×1mmプラークについて600nmで測定した透過率(%);プラークを予め30秒間LEDパネルで照射した;従って“0秒”は照射終了後最初の測定を表す。

【0035】
種々の試験片が無色状態に戻る速度の結果は、表4及び5に示される、減光(非励起状態の透過率マイナス色飽和時の透過率)が80%の復帰を示す間隔によって与えられる。添加ポリマーの選択によって、ホトクロミックポリアミド組成物の色の深さの減少についてこの間隔を広範に制御できることは興味深い。本発明の実施例では20〜650秒の値が認められる。
Byk-Gardener製のHaze-Gard Plusを用い、ASTM D1003(光源C)に準拠して23℃で曇り度を測定した。
【0036】
上表で示されるような厚さ1mmのプラークの製造方法は、用いる型がこのような高レベル用途の要求を満たさないので、特に高規格の光学用途の典型ではない。比較のため、上記発明の実施例3、すなわち本発明の実施例3の成形組成物を基礎とし、高規格の光学目的に適した(研磨加工され、かつ理想的な射出成形条件下の)型を用いて再び処理加工を行ってフラットな2mmのプラークを得た。ここで、非照射状態で以下の値を得た:透過率=89%、曇り度=1.1。換言すれば、成形品の理想的な製造は、さらに高い透過及びさらに小さい曇り値を与える(非照射状態で)。
【0037】
その他いろいろあるが、本発明の実施例3で用いた透明ポリアミドのガラス転移温度は155℃である。10%のFE 7334とのブレンドのガラス転移温度は151℃である。従って、ホトクロミック効果は混合物によっては4℃までしか減じなかったので、ガラス転移温度の巨視的な大きさだけでは、潜在的に明白な方法でホトクロミック効果の顕著な改善を説明できない。その代わりに、所望効果を達成するためには、染料分子の位置における動きの局所的セグメントの自由が有意に増やさなければならない。より高い局所的動きの自由又は局所的粘度の低減は、前記さらなるポリマーのフレキシブルな主鎖セクション又はフレキシブルな側鎖によってもたらされる。
【0038】
表6は、純粋なGrilamid TR 90と本発明の実施例3の混合物の特性を整理する。
表6:純粋形態のGrilamid TR 90と本発明の実施例3の機械的特性の比較、条件付状態のすべての値:

n.f.:破壊せず
【0039】
キー:
FE7334は、EP 0955326 B1に開示されているポリアミド-12とダイマージオールに基づいたポリエステルアミドである(ガラス転移温度Tg=-30℃)。FE7334は、ダイマー酸とダイマージオールに基づいたポリエステルセグメントを含む。
GRILAMID TR 90は、脂肪族単位と脂環式単位に基づいた透明な熱可塑的に加工しうるポリアミドである。これは、EP 0 837 087で提案されている系に相当し、具体的には、本質的にMACM12型のホモポリアミドである(数字12は、ドデカン二酸を意味する)。
GRILAMID ELY 60は、スイス国のEMS-CHEMIE AG製のポリエーテルアミド、GRILAMID ELY 2475及び2694は、ポリエーテルエステルアミドである(Tg=-30〜-50℃)。
Tween 20は、ソルビタンの脂肪酸エステルのポリオキシエチレン誘導体で、Polysorbat 20とも呼ばれ、種々の染料でしばしば使用される施工助剤(application aid)である。
PEBAX 5533及び7033は、仏国ARKEMA製の、エーテルセグメントを有するポリアミド-12ブロックコポリマーである(Tg=約-40℃)。
台湾国のNew Prismatic Enterprise株式会社製のNCC(登録商標)染料OP 14 BLUE及びOP 19 REDをホトクロミック染料として使用した。
Polyshine Blue Iもホトクロミック染料として使用し、Polychrom株式会社(韓国)から入手可能である。
スイス国のCIBA SC AGから入手可能なTinuvin 326もUV吸収剤として用いた。
【0040】
【化1】

Tinuvin 326
【0041】
相対粘度(ηrel)は、20℃の温度でm-クレゾール中の0.5質量%溶液でDIN EN ISO 307に準拠して測定した。
ガラス転移温度(Tg)は、ISO 11357-1/2に準拠して測定し;
示差走査熱量分析(DSC)は20K/分の加熱速度で行った。オンセットについて値を得る。
【0042】
さらなる実施例14〜21については以下の追加表7でそれらについて決定した特性と共に示す。

*) 照射時間:30秒
【0043】
キー:
FE7313、FE7314:ポリアミド-12とダイマージオールに基づいたポリエステル;FE7314は、ダイマー酸とダイマージオールに基づいたポリエステルセグメントも含む。
XE3680は、ポリアミド-12に基づいた熱/UVマスターバッチである。
XE2828は、ポリアミド-12オリゴマー(その数平均モル質量は約2000g/mol)であり、主に非縮合性アルキル末端基を有する。
GRILAMID L16は、低粘度ポリアミド-12である。
【0044】
結果:
低粘度ポリアミド-12の添加によって曇り及びホトクロミック効果が改善される(本発明の実施例14及び本発明の実施例15参照)。
さらに、ポリアミド-12及びポリアミドオリゴマーの添加は、より穏やかな条件下でホトクロミックポリアミド成形組成物の加工又はより穏やかな条件下でホトクロミック染料の熱可塑性成形組成物中への組み込みを可能にし、ひいては押出し成形及び/又は射出成形プロセス中の不安定なホトクロミック染料の分解を実質的に阻害することができる。
【0045】
本発明の実施例17で顕著に見えるゲートマーク(円プラーク、70×2mm)は、種々の手段で回避しうる。10質量%以上の低粘度ポリアミドの添加は、ゲートマーク形成の阻止に有効である。
同様に、透明ポリアミド/コポリアミドの溶液粘度と、ガラス転移温度が80℃未満のポリマー成分の溶液粘度の比が1.2未満、特に1.1未満の場合にゲートマークを回避できる(本発明の実施例19と比較した本発明の実施例20及び本発明の実施例17と比較した本発明の実施例18、及び本発明の実施例21も参照されたい)。
同じ化学構成のポリマー成分では、2つのポリマー成分の溶液粘度の比が小さくなるにつれて曇り度も減少する。溶液粘度の比が1.22である本発明の実施例19では、観察される曇り度は3.9であり、溶液粘度の比がより低い1.04であるIE20では、結果は、1.8という顕著に低い曇り度である。
ポリアミド-12オリゴマーの添加は、必ずしも常にゲートマークの形成を阻止するわけではないが、より低い溶融粘度とより長い流路のため、ポリアミド-12オリゴマーの添加は、処理を全体的に容易にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
50〜99質量%の比率の少なくとも1種の透明ホモポリアミド及び/又はコポリアミド; ガラス転移温度が80℃未満である1〜50質量%の比率の少なくとも1種のさらなるポリマー;
0.001〜2.0質量%の比率の少なくとも1種のホトクロミック染料を含み;
かつ任意に、さらなる染料及び/又は添加剤を含んでもよい、ポリアミド成形組成物。
【請求項2】
前記さらなるポリマーのガラス転移温度が、40℃未満、好ましくは25℃未満である、請求項1記載のポリアミド成形組成物。
【請求項3】
前記さらなるポリマーのガラス転移温度が、0℃未満、好ましくは-60℃〜-20℃の範囲である、請求項1又は2記載のポリアミド成形組成物。
【請求項4】
前記さらなるポリマーが、脂環式ジアミンと、6〜40個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸とに基づいたポリアミドであり、前記脂環式ジアミンが、好ましくはMACM及び/又はPACMであり、かつ全体的なポリアミドが、特に好ましくはMACM36及び/又はPACM36であり、及び/又は前記さらなるポリマーが、ソフトセグメントを有するブロックコポリマーであり、前記ソフトセグメントのガラス転移温度が、好ましくは40℃未満、好ましくは25℃未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項5】
前記さらなるポリマーが、ソフトセグメントを有するポリアミドブロックコポリマーであり、好ましくはポリアミド-12ブロックコポリマーであり、前記ソフトセグメントが、好ましくはポリエーテルソフトセグメント及び/又はポリエステルソフトセグメント及び/又はポリシロキサンソフトセグメント及び/又はポリオレフィンソフトセグメント及び/又はポリアクリレートソフトセグメントであり、好ましいポリエーテルセグメントは、モノマーエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド及び/又はテトラヒドロフランに基づいた当該ポリエーテルセグメントである、請求項4記載のポリアミド成形組成物。
【請求項6】
前記さらなるポリマーが、以下の群:ソフトセグメントを有するポリエステル;ソフトセグメントを有するTPUエラストマー;アクリレートポリマー;メタクリレートポリマー(特に好ましくは長いペンダント基を有する);ポリカーボネートコポリマー;スチレンコポリマー(好ましくはアクリロニトリル、ブタジエン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルに基づいた);ポリオレフィン(特にグラフト化された);エチレンコポリマー(特にプロペン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、デセン、ウンデセン、ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、イソプレン、イソブチレン、(メタ)アクリル酸の誘導体、酢酸ビニル、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロペン、及び2-クロロブタジエンに基づいた);ポリイソブチレン;ポリブチルアクリレート、並びに及びこれらの組合せ及び混合物から選択されるポリマーである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項7】
前記透明ホモポリアミド及び/又はコポリアミドの質量%の比率が、70〜99質量%、特に好ましくは80〜98質量%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項8】
前記さらなるポリマーの質量%の比率が、1〜30質量%、特に好ましくは2〜20質量%である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項9】
前記透明ホモポリアミド及び/又はコポリアミドが、脂環式ジアミン及び6〜36個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸に基づいたポリアミドであり、或いはこのようなホモポリアミド及び/又はコポリアミドの混合物である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項10】
前記脂環式ジアミンが、MACM及び/又はPACMである、請求項8記載のポリアミド成形組成物。
【請求項11】
前記脂肪族ジカルボン酸が、10、12、14又は18個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸である、請求項9又は10記載のポリアミド成形組成物。
【請求項12】
前記透明ポリアミドが、MACM12、MACM14、MACM18の群から選択されるホモポリアミドであり、及び/又はMACM12/PACM12、MACM14/PACM14、MACM18/PACM18の群から選択されるコポリアミドである、請求項9〜11のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項13】
前記透明ホモポリアミド及び/又はコポリアミドが、8〜18個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸に基づいたポリアミドであり、或いはこのようなホモポリアミド及び/又はコポリアミドの混合物(好ましくはラクタム及び/又はアミノカルボン酸に基づいた)であり、前記芳香族ジカルボン酸が、好ましくはTPA及び/又はIPAである、請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項14】
前記透明ホモポリアミド及び/又はコポリアミドが、以下の群:6I6T、TMDT、6I/MACMI/MACMT、6I/6T/MACMI、MACMI/MACM36、6I、12/PACMI、12/MACMI、12MACMT、6/PACMT、6/6I、6/IPDT、又はこれらの混合物から選択されるポリアミドである、請求項13記載のポリアミド成形組成物。
【請求項15】
前記透明ホモポリアミド及び/又はコポリアミドが、少なくとも1種のジカルボン酸と、芳香族環を有する少なくとも1種のジアミン(好ましくはMXDに基づいた)に基づいたポリアミドであり、前記ジカルボン酸は芳香族及び/又は脂肪族でよく、前記ポリアミドが、好ましくは6I/MXDIである、請求項1〜14のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項16】
前記透明ホモポリアミド及び/又はコポリアミドの溶液粘度(ηrel)が、1.3〜2.0、特に好ましくは1.40〜1.85であり、及び/又はそのガラス転移温度Tgが、90℃より高い、好ましくは110℃より高い、特に好ましくは130℃より高い、請求項1〜15のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項17】
前記ホトクロミック染料が、UV又は短波VISで可逆的に励起される染料であり、好ましくはスピロオキサジンに基づいた染料である、請求項1〜16のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項18】
前記添加剤が、安定剤、例えばUV安定剤、熱安定剤、若しくはフリーラジカルスカベンジャーであり、及び/又は加工助剤、可塑剤、若しくはさらなるポリマーであり、及び/又は機能性添加剤、好ましくは光学特性、例えば特に屈折率に影響を与えるための添加剤であり、又はこれらの組合せ若しくは混合物である、請求項1〜17のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項19】
ポリアミド-12、好ましくは低粘度ポリアミド-12を含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項20】
前記低粘度ポリアミド-12の溶液粘度(ηrel)が、1.5〜2、好ましくは1.6〜1.9である、請求項19記載のポリアミド成形組成物。
【請求項21】
ポリアミドオリゴマー、特に好ましくはポリアミド-12オリゴマーを含む、請求項1〜20のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項22】
前記ポリアミドオリゴマーが、平均モル質量が1500〜2500g/molのポリアミド-12オリゴマーであり、好ましくは主に非縮合性アルキル末端基を有する、請求項21記載のポリアミド成形組成物。
【請求項23】
前記透明ホモポリアミド及び/又はコポリアミドの溶液粘度(ηrel)と、ガラス転移温度が80℃未満の前記さらなるポリマーの溶液粘度(ηrel)との比が、1.2未満、特に1.1未満である、請求項1〜22のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物で構成された少なくとも1つの領域又は1つの層を有する透明な、好ましくは曇りのない物品。
【請求項25】
高規格光学用途用の請求項24記載の物品であって、500〜700nmの波長でその透過率が70%より高く、好ましくは80%より高く、及び/又は前記ポリアミド成形組成物で構成された層の厚さ2mmに対して、その曇り度が5未満、好ましくは3未満である、前記物品。
【請求項26】
ホイル、プロフィル、チューブ、中空体、又は光学的に可変性のフィルター若しくは光学レンズであり、好ましくは眼用レンズであり、特に好ましくはスペクトルフィルター作用を有するエレメント(例えば、メガネレンズ、サンレンズ、矯正レンズ、若しくは光学フィルターの形態、又はスイッチングアセンブリー若しくは光学シグナルプロセシング、スキーゴーグル、バイザー、安全メガネ、ホトレコーディング、ディスプレイ、光学データ保存、又は建築物及び乗物の窓の形態)であり、又は装飾エレメント若しくは構造エレメント(例えば、メガネフレーム、玩具、又はカバーの形態、特に携帯電話ケース、電子装置の一部、コーティング、特にパッケージング、装飾品、スポーツ用具、若しくは特に自動車部門の被覆金属板のコーティングの形態)である、請求項24又は25記載の物品。
【請求項27】
色勾配を有し、及び/又はホトクロミックコーティング、反射防止コーティング、耐引っ掻き性コーティング、光学フィルターコーティング、偏光コーティング、酸素-バリヤーコーティング、若しくはこのようなコーティングの組合せを有する、請求項24〜26のいずれか1項に記載の物品。
【請求項28】
前記ポリアミド成形組成物で構成された領域又は層のガラス転移温度が、90℃より高い、好ましくは100℃より高い、特に好ましくは130℃より高い、請求項24〜27のいずれか1項に記載の物品。
【請求項29】
押出し成形法、射出成形法、又はインモールドコーティング法で、請求項1〜23のいずれか1項に記載のポリアミド成形組成物を成形して、請求項24〜28のいずれか1項に記載の物品を得る前記物品の製造方法であって、妥当な場合、下流の浸漬浴プロセス及び/又は熱伝達プロセスで、透明ポリアミドとさらなるポリマーで構成された混合物中に前記ホトクロミック染料を導入してよく、かつ前記ホトクロミック物品が、ラミネーション又は接着によって基材、好ましくは光学レンズに適用できるホイルでもよい、前記製造方法。
【請求項30】
請求項28記載のバルク着色成形品の製造方法であって、前記ホトクロミック染料を、前記透明ホモポリアミド及び/又はコポリアミド及び前記さらなるポリマーと一緒にコンパウンドする工程を含み、透明ホモポリアミド及び/又はコポリアミドとさらなるポリマーとで構成された前記ポリマー融成物に、定量ポンプを用いて前記染料を液体濃縮物の形態で添加してよく、及び/又はドラムミキサー内で前記染料を固体の形態で前記他の成分に適用してよく、かつ妥当な場合、施工助剤を利用してもよい、前記製造方法。
【請求項31】
請求項29記載のバルク着色成形品の製造方法であって、前記染料と前記さらなるポリマーを処理加工して、高い色濃度(好ましくは30%まで)を有するマスターバッチを得、このマスターバッチの必要量を押出機内で前記透明ポリアミド及び/又はコポリアミドと処理加工してペレットを得、或いは前記マスターバッチの必要量を射出成形機内で直接完成成形品に変換する、前記製造方法。

【公開番号】特開2007−254734(P2007−254734A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−44582(P2007−44582)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(504236983)エムス−ヒェミー アクチェンゲゼルシャフト (3)
【Fターム(参考)】