説明

ボディにおける収容室を閉鎖するフード

【課題】折畳み可能なルーフを備えた乗用車用の、基本位置とルーフ運搬位置と積み荷位置との間において機能適正に移動可能であるフードを提供する。
【解決手段】乗用車のボディにおける収容室を閉鎖するフードであって、収容室内に折畳み可能なルーフ及び/又は積み荷が収容可能であり、フードが、走行方向で見て前方をルーフ運搬位置にかつ後方を積み荷位置に持上げ可能であり、ボディとフードとの間にリンク機構が設けられている形式のものにおいて、ボディ3に支承されたリンク機構12が第1のリンク装置13と第2のリンク装置14とを有しており、両リンク装置のうちの少なくとも1つのリンク装置が、第1の錠止装置15と共働し、該第1の錠止装置が係合位置Estと解離位置Astとに移動可能であり、解離位置もしくは係合位置の制御に応じてフード8がルーフ運搬位置Dst又は積み荷位置Lstに移動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、特に乗用車のボディにおける収容室を閉鎖するフードであって、収容室内に折畳み可能なルーフ及び/又は積み荷が収容可能であり、フードが、走行方向で見て前方をルーフ運搬位置にかつ後方を積み荷位置に持上げ可能であり、ボディとフードとの間にリンク機構が設けられている形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
閉鎖位置と開放位置との間において移動させることができる折畳み可能なルーフを備えた自動車が、EP0949104A1に基づいて公知である。この公知の構成では開放位置においてルーフはトランクルームに収容され、このトランクルームはフードを用いて覆われる。ルーフが取り外されると、フードは、自動車のリヤ領域に配置された旋回軸を中心にして旋回し、そして前方を持ち上げられる。荷物の積み卸しのためには、フードは後方を持ち上げられ、閉鎖されたルーフの背側に隣接して延在する旋回軸を用いて移動させられる。
【0003】
DE69900921T2に基づいて公知のカブリオレは、ボディの収容室に収納可能な折畳み式ルーフを有している。収容室はカバーを用いて閉鎖可能であり、このカバーは装置を用いて閉鎖位置と開放位置との間において移動可能である。この装置は、カバーが次のような位置、つまり折畳み式ルーフの収納を可能にする位置と、車両リヤ側から収容室への接近を可能にする位置とに移動可能であるように、構成されている。
【0004】
またDE4445944C1に開示されたハードトップは、ルーフ部分とリヤウインド部分とを有するルーフ構造を備えている。ルーフ部分及びリヤウインド部分は、折り畳まれたポジションへともたらすことができ、このポジションにおいて収容室内に収容される。収容室はトランクリッドによって取り囲まれており、このトランクリッドは、前方でルーフ部分及びリヤウインド部分を移動させるために持上げ可能であり、かつ後方で荷物の積み卸しのために持上げ可能であるように、枢着されている。
【特許文献1】EP0949104A1
【特許文献2】DE69900921T2
【特許文献3】DE4445944C1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、折畳み可能なルーフを備えた乗用車用のフードを改良して、基本位置とルーフ運搬位置と積み荷位置との間において機能適正に移動可能であるフードを提供することである。さらにまた、そのために使用される処置が代替可能な費用によって実現可能であり、かつ経済的に有利に製造可能であることも、保証されていることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために本発明の構成では、冒頭に述べた形式のフードにおいて、ボディに支承されたリンク機構が第1のリンク装置と第2のリンク装置とを有しており、両リンク装置のうちの少なくとも1つのリンク装置が、第1の錠止装置と共働し、該第1の錠止装置が係合位置と解離位置とに移動可能であり、解離位置もしくは係合位置の制御に応じてフードがルーフ運搬位置又は積み荷位置に移動可能であるようにした。
【0007】
本発明の別の有利な構成は、請求項2以下に記載されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明のように構成されたフードには主として次のような利点がある。すなわち本発明によるフードでは、第1及び第2のリンク装置並びに第1の錠止装置を介して、フードは機能良好にルーフ運搬位置及び積み荷位置に移動可能である。そして両リンク装置及び錠止装置は、乗用車の開発時にリーズナブルな費用でかつ構造的な自由度をもって実現することができるマルチリンク系として構成されている。錠止装置は、簡単に製造可能な部材であるロックレバーによって運転確実である。ロックレバーと制御レバーとの間における操作装置は、明瞭な手段の使用によって組込み可能であり、かつ機能の点で効果的である。このことはまた、制御ブラケットとして形成された制御機構に対しても、受容部及び係止ピンを備えた第2の錠止装置に対しても言えることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
乗用車1は、ホイール2によって支えられたボディ3を有しており、このボディ3は折畳み可能なルーフ4を備えていて、このルーフ4は、閉鎖位置Schstと開放位置Ostとの間において移動可能であり、ドア6及びウインドシールドガラス7を有するボディ3の収容室5内に収納可能である。収容室5は、基本位置Gst(図1〜図3)から可動のフード8を用いて、覆われており、このフード8は走行方向Aで見て車室9の後ろに配置されている。フード8は、前方の10のところで、ルーフ運搬位置Dstに持上げ可能であり、ルーフ4は閉鎖位置Schstと開放位置Ostとの間において移動可能である。付加的にフード8は後方の11のところで持上げ可能であり、つまり、荷物のような物品の荷積み及び荷下ろしのために収容室5が相応に開放されている積み荷位置Lst(図5)へと、持上げ可能である。
【0011】
ボディ3とフード8との間においてはリンク機構12が働き、このリンク機構12を介してフード8はルーフ運搬位置Dstもしくは積み荷位置Lstに運動可能である。リンク機構12は第1のリンク装置13と第2のリンク装置14とを有しており、この場合両リンク装置13,14のうちの少なくとも1つのリンク装置、有利には第2のリンク装置14は、第1の錠止装置15と共働する。第1の錠止装置15は係合位置Estlと解離位置Astlとに制御可能である。係合位置Estl(図2及び図5)もしくは解離位置Astl(図3及び図4)の制御に応じて、フード8はルーフ運搬位置Dstもしくは積み荷位置Lstに運動可能である。第1のリンク装置13と第2のリンク装置14とは互いに連結されていて、マルチリンク系Msl,Msllとして形成されており、この場合リンク装置13,14は第1の4リンク装置16及び第2の4リンク装置17として示されている。第1のリンク装置13と第2のリンク装置14との間においては、第1の結合リンク18と第2の結合リンク19(図5)とが有効であり、両結合リンク18,19は共通の回転軸20において枢着している。第1の結合リンク18は、この第1の結合リンク18が第1のリンク区分21で第1の4リンク装置16の1つのリンク部分を形成し、かつ第2のリンク区分22で第2の4リンク装置17の1つのリンク部分を形成するように、構成されている。これに対して第2の結合リンク19は第1のリンク区分23で第1の4リンク装置16を補い、かつ第2のリンク区分24で第2の4リンク装置17を補っている。
【0012】
第2の4リンク装置17のリンク25には、互いに間隔をおいて配置された第1及び第2の2つの制御リンク28,29の第1及び第2の端部26,27が係合しており、第1及び第2の制御リンク28,29の第3及び第4の端部30,31は制御機構32に支承されている。この制御機構32は、旋回軸34を用いてボディ3に枢着されている制御ブラケット33として形成されている。第1の制御リンク28は第2の4リンク装置17のリンク36の延長部35であり、この第1の制御リンク28は第3の端部30で旋回軸34に枢着されている。
【0013】
係合位置Estと解離位置Astとの間において可動である第1の錠止装置15は、回転軸受37を介してボディ3に旋回可能に支承されたロックレバー38を有している。このロックレバー38は、ほぼ水平に方向付けられた真っ直ぐな保持区分39を備えており、この保持区分39の端部区分40,41には、保持区分と共にそれぞれ角度を成すレバー区分42,43が設けられており、両レバー区分42,43は互いに逆方向に延びている。例えばレバー区分42は第2の4リンク装置17に向かって延びており、それに対してレバー区分43は、4リンク装置17とは反対の側に延びている。第1の錠止装置15のロックレバー38は自由な側44に、ロックフック45を有しており、このロックフック45はジョイント軸受46と共働する。このジョイント軸受46はリンク25とリンク36との連結のために働く。
【0014】
ロックレバー38は操作装置47を用いて操作することができ、この操作装置47は、ピストンロッド49とハウジング50とを有する操作シリンダ48によって形成される。操作シリンダ48はジョイント51,52を用いて一方ではロックレバー38にかつ他方では第1の制御リンク28に配置されている。さらに操作シリンダ48は、図2に示された休止位置Rstから第1の運転位置Bstl及び第2の運転位置Bstllに移動可能である。運転位置Bstlのためのロックレバー38の運動は、固定のストッパ53によって制限され、この固定のストッパ53はロックレバー38のレバー区分42と共働し、かつ操作シリンダ48とは反対の側に設けられている。
【0015】
制御ブラケット33とロックレバー38との間においては、第2の錠止装置54が有効であり、この場合ロックレバー38に制御ブラケット33が固定可能である。この場合には、錠止装置54を係合位置Estll及び解離位置Astllに移動させることができる。図示の実施例では制御ブラケット33はフォーク形の受容部55を備え、レバー区分43は自由端部56に係止ピン57を備えている。
【0016】
ルーフ運搬位置Dst又は積み荷位置Lstへのフード8の移動が望まれている場合には、この運動は次のステップで行われる:
ルーフ運搬位置Dst:
基本位置Gstにおいてフード8は閉鎖されていて、第1の錠止装置15は係合位置Estlを占めており、この場合第2の錠止装置54は解離位置Astllを占めている。操作装置47への圧力供給によってレバー区分42はストッパ54に向かって移動させられ、第2の錠止装置54は係合位置Estllに移動させられる。このような条件下においてフード8は操作装置47を用いてルーフ運搬位置Dstに移動させられる。
【0017】
積み荷位置Lst:
基本位置Gstにおいてフード8は、フード8もしくはボディ3の背壁59の領域における略示された錠58を用いて閉鎖されており、第1の錠止装置15は係合位置Estlを占めていて、この場合錠止装置54は解離位置Astllを占めている。錠58を手又はモータによって開放した後で、フードは11のところで、フードが積み荷位置Lstを占めるまで、モータ及び/又は手によって持ち上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】乗用車を概略的に示す側面図である。
【図2】本発明によるフード及びリンク機構を拡大して示す図である。
【図3】図2に相当する図であって、中間位置におけるリンク機構を拡大して示す図である。
【図4】ルーフ運搬位置におけるフードを示す側面図である。
【図5】図4に相当する図であって、積み荷位置におけるフードを示す側面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 乗用車、 2 ホイール、 3 ボディ、 4 ルーフ、 5 収容室、 6 ドア、 7 ウインドシールドガラス、 8 フード、 9 車室、 12 リンク機構、 13,14 リンク装置、 15 錠止装置、 16,17 4リンク装置、 18,19 結合リンク、 20 回転軸、 21,22,23,24 リンク区分、 25 リンク、 26,27 端部、 28,29 制御リンク、 30,31 端部、 32 制御機構、 33 制御ブラケット、 34 旋回軸、 35 延長部、 36 リンク、 37 回転軸受、 38 ロックレバー、 39 保持区分、 40,41 端部区分、 42,43 レバー区分、 44 自由な側、 45 ロックフック、 46 ジョイント軸受、 47 操作装置、 48 操作シリンダ、 49 ピストンロッド、 50 ハウジング、 51,52 ジョイント、 53 ストッパ、 54 錠止装置、 55 フォーク形の受容部、 56 端部、 57 係止ピン、 58 錠、 59 背壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車、特に乗用車のボディにおける収容室を閉鎖するフードであって、収容室内に折畳み可能なルーフ及び/又は積み荷が収容可能であり、フードが、走行方向で見て前方をルーフ運搬位置にかつ後方を積み荷位置に持上げ可能であり、ボディとフードとの間にリンク機構が設けられている形式のものにおいて、ボディ(3)に支承されたリンク機構(12)が第1のリンク装置(13)と第2のリンク装置(14)とを有しており、両リンク装置(13,14)のうちの少なくとも1つのリンク装置が、第1の錠止装置(15)と共働し、該第1の錠止装置(15)が係合位置(Est)と解離位置(Ast)とに移動可能であり、解離位置(Ast)もしくは係合位置(Est)の制御に応じてフード(8)がルーフ運搬位置(Dst)又は積み荷位置(Lst)に移動可能であることを特徴とする、ボディにおける収容室を閉鎖するフード。
【請求項2】
第1のリンク装置(13)と第2のリンク装置(14)とがマルチリンク系(Msl,Msll)によって形成され、かつ互いに連結されている、請求項1記載のフード。
【請求項3】
第1のリンク装置(13)及び第2のリンク装置(14)が、連結された第1及び第2の4リンク装置(16,17)によって形成されている、請求項1又は2記載のフード。
【請求項4】
第1のリンク装置(13)と第2のリンク装置(14)との間において、第1の結合リンク(18)及び第2の結合リンク(19)が有効であり、両結合リンク(18,19)が1つの共通の回転軸(20)において支承されている、請求項3記載のフード。
【請求項5】
第1の結合リンク(18)が第1のリンク区分(21)で第1の4リンク装置(16)の1つのリンク部分を形成し、かつ第2のリンク区分(22)で第2の4リンク装置(17)の1つのリンク部分を形成している、請求項4記載のフード。
【請求項6】
第2の結合リンク(19)が第1のリンク区分(23)で第1の4リンク装置(16)の1つのリンク部分を形成し、かつ第2のリンク区分(24)で第2の4リンク装置(17)の1つのリンク部分を形成している、請求項4記載のフード。
【請求項7】
第2の4リンク装置(17)の1つのリンク(25)に、互いに間隔をおいて配置された第1及び第2の2つの制御リンク(28,29)の第1及び第2の端部(26,27)が係合していて、第1及び第2の制御リンク(28,29)の第3及び第4の端部(30,31)が制御機構(32)に枢着されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のフード。
【請求項8】
制御機構(32)が制御ブラケット(34)によって形成されている、請求項7記載のフード。
【請求項9】
第1の制御リンク(28)が、第2の4リンク装置(17)の1つのリンク(36)の延長部(35)を形成している、請求項7記載のフード。
【請求項10】
制御ブラケット(33)がボディ(3)において旋回軸(34)に旋回可能に枢着されている、請求項1又は8記載のフード。
【請求項11】
第1の錠止装置(15)が、回転軸受(37)を介してボディ(3)に旋回可能に取り付けられたロックレバー(38)を有している、請求項1から10までのいずれか1項記載のフード。
【請求項12】
制御ブラケット(33)が第2の錠止装置(54)を用いてロックレバー(38)と固定可能である、請求項10又は11記載のフード。
【請求項13】
第2の錠止装置(54)がフォーク形の受容部(55)と係止ピン(57)とを有しており、該受容部及び係止ピンを用いて制御ブラケット(33)が係合位置(Estll)においてロックされ、かつ解離位置(Astll)においてロック解除される、請求項12記載のフード。
【請求項14】
ロックレバー(38)が操作装置(47)と共働する、請求項11記載のフード。
【請求項15】
操作装置(47)が操作シリンダ(48)によって形成されている、請求項14記載のフード。
【請求項16】
操作シリンダ(48)がロックレバー(38)と制御リンク(28)との間において有効である、請求項15記載のフード。
【請求項17】
ロックレバー(38)が、第2の4リンク装置(17)のジョイント軸受(46)に係合する、請求項1記載のフード。
【請求項18】
ロックレバー(38)が、ジョイント軸受(46)と共働するロックフック(45)を有している、請求項17記載のフード。
【請求項19】
第1の操作位置(Bstl)への操作装置(47)の運動時に、ロックレバー(38)がストッパ(53)に支持される、請求項15又は16記載のフード。
【請求項20】
請求項1から19までのいずれか1項記載のフードを操作する方法であって、ルーフ運搬位置(Dst)へのフード(8)の移動のために下記のステップ、すなわち、
(イ)第1の錠止装置(15)をロック解除し、ロックレバー(38)を、操作位置(Bst)に移動させられた操作シリンダ(48)を用いてストッパ(53)に当接させ、
(ロ)操作シリンダ(48)を第2の操作位置(Bstll)に移動させ、
(ハ)第2の錠止装置(54)を係合位置(Estll)に移動させ、かつフード(8)が、第2の錠止装置(54)のロックされた状態においてルーフ運搬位置(Dst)を占める
というステップを行うことを特徴とする、フードを操作する方法。
【請求項21】
請求項1から19までのいずれか1項記載のフードを操作する方法であって、積み荷位置(Lst)へのフード(8)の移動のために下記のステップ、すなわち、
(イ)フード(8)の錠(58)を開放し、
(ロ)第1の錠止装置(15)を閉鎖し、
(ハ)第2の錠止装置(54)をロック解除し、
(ニ)フード(8)を積み荷位置(Lst)にもたらす
というステップを行うことを特徴とする、フードを操作する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−213829(P2008−213829A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47125(P2008−47125)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(506292985)マグナ カー トップ システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (31)
【氏名又は名称原語表記】Magna Car Top Systems GmbH
【住所又は居所原語表記】Stuttgarter Strasse 59, D−74321 Bietigheim−Bissingen, Germany
【Fターム(参考)】