説明

ボトル缶の製造方法及び該方法により製造されたボトル缶

【課題】 ネッキング加工及びネジ加工中において該ボトル缶ネジ加工部分の外面塗膜の割れを防止するとともに、キャップの開栓性及び開栓後の再開閉栓性を向上させた、特にレトルト処理を含む殺菌条件下及びホット販売などの状況下でもキャップを開閉しやすくしたボトル缶の製造方法及びその方法により製造されたボトル缶の提供。
【解決手段】 飲料用アルミニウム合金製ボトル缶製造工程において、成形された有底円筒成形体をサイズコート・焼き付けした後、ネジ部を除いて印刷し、次いで平均粒径が3〜10μmのシリカ系あるいはフッ素系の耐ブロッキング剤を、外面塗料の樹脂分に対して0.01重量%〜5重量%配合した塗料を用いて塗装し、該外面塗膜をゲル分率が80〜96%の硬化状態に調整してネッキング加工及びネジ加工を施すとともに、ネジ加工後の段階で、ボトル缶の少なくともキャップ取付け部分をアフターベークすることを特徴とするボトル缶の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジキャップによって密封する形式のビールなどのアルコール飲料やソフトドリンク類の飲料用アルミニウム合金製ボトル缶に関するもので、加工中において該ボトル缶ネジ加工部分の外面塗膜の割れを防止するとともに、キャップの開栓性及び開栓後の再開閉栓性を向上させた、特にレトルト処理を含む殺菌条件下及びホット販売などの状況下でもキャップを開閉しやすくしたボトル缶の製造方法及びその方法により製造されたボトル缶に関する。
【背景技術】
【0002】
ビールなどのアルコール飲料やソフトドリンク類の容器として使用されているアルミニウム合金製ボトル缶は、アルミニウム合金板のドローイング・アイアニング成形(DI成形)により有底円筒に成形し、次いで順序に若干の前後があるも、外面に塗膜との密着性を向上させるためのサイズコート処理及びその焼付工程、印刷・クリアーニスによるオーバーコート処理及びその焼付工程、さらに内面塗装及びその焼付工程を順次行った後に、有底円筒(缶胴)の開口部側を縮径すると共に、キャップ取付け部を形成するネッキング加工工程及び該キャップ取付け部にキャップを螺合するためのネジ部を形成するネジ加工工程の順で行われるのが普通である。
【0003】
上記ボトル缶の製造工程において、ネッキング加工及びネジ加工を行うに先立ち、缶胴外面のオーバーコート塗料及び内面塗料はガスオーブン等で焼付け硬化されており、特に外面塗膜は2度の焼付けにより過度に硬化が進むため、この状態においてネッキング加工及びネジ加工を行った場合には、塗膜の硬化が進み過ぎ割れてしまうという不具合が発生し、更にはその後に行う洗浄工程により塗膜の割れ部分がより拡大するという問題があった。このような状態で内容物を充填し、キャップを螺合した場合、特に、高温レトルト処理やホット販売といった加熱を受けると顕著となり、塗膜割れ部に水分が浸入することで、割れが更に拡大し、最終的には外面塗膜が剥離する恐れがある。塗膜が剥離した場合には、外観的不良となるばかりでなく、ボトル缶の耐腐食性が低下するとともに、キャップの開閉時のトルクが高くなることが懸念される。
【0004】
一方、塗膜の割れを防ぐために塗膜を完全に硬化させず、柔軟な状態、例えばゲル分率で90%程度の状態でネッキング加工等を実施した場合には、割れの発生は防止できるが、キャップ内面側の塗膜と缶ネジ部外面とのブロッキングが生じ、またはネジ加工後に行う洗浄工程で表面にブリードされている外面塗膜中のワックス類が洗い流されてしまい、同様なブロッキングが発生し、キャップとネジ部とのスムースな滑り性が得られ無い事により、キャップ開栓時のトルクが高くなる不具合や、リシールトルクと呼ばれる一度開栓した後に再閉栓する時のトルクが高くなる不具合が発生していた。
特に、塗膜割れ防止のために塗膜焼付条件の調整等によって塗膜の硬化度を調整すると、潤滑剤として添加されていた塗料中のワックス類がネジ加工後に洗い流されることと相まって、内容物充填後に行われる殺菌のための高温レトルト処理や長時間加熱が行われるホット販売などの高温処理等が、ボトル缶のネジ外面の硬化状態が調整されている塗料(不完全な硬化状態)と、キャップ内面塗料の相互融合によるブロッキングを促進するため、キャップ開閉時のトルクが極めて高いものの発生を完全に避けることが出来なかった。
【0005】
従来ボトル缶等のネッキング加工及びネジ加工において、外面塗膜の割れを防止するために、ネジ部を形成する表面に予めメジウム層等を形成しておくという提案(例えば、特許文献1参照)や内面塗膜の割れ等を補修するために口部の天面または/及び口部の内面に補正内面塗料を塗装するという提案(例えば、特許文献2参照)、あるいはボトル缶の缶基体の表面に形成された缶基体の表面に対し前記ネジ部及びそれより下に形成された第1層の塗膜と、ネジ部より下の所定範囲に形成された第2層及び第3層の複数層の塗膜からなり、第1層の塗膜のヤング率を第3層のそれより低くして塗膜の割れを防止する提案(例えば特許文献3参照)がなされているが、いずれの提案もキャップ開閉時のトルクを改善するということまでは考慮されていない。
【0006】
【特許文献1】特開2003−181577号公報
【特許文献2】特開2003−011979号公報
【特許文献3】特開2003−205945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、アルミニウム合金製ボトル缶の製造において、ネッキング加工及びネジ加工に先立ち、外面塗膜の硬化状態を調整することにより、ネッキング加工及びネジ加工において外面塗膜の塗膜割れの発生を防止すると共に、外面塗膜に耐ブロッキング剤を添加することで、硬化状態が調整された外面塗膜とキャップ内面側の塗膜とのブロッキングを防止し、滑り性を向上させ、キャップが開閉しやすい飲料用アルミニウム合金製ボトル缶の製造方法並びに該方法により製造されたボトル缶の開発を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
[1] 飲料用アルミニウム合金製ボトル缶製造工程において、成形された有底円筒成形体をサイズコート・焼き付けした後、ネジ部を除いて印刷し、次いで耐ブロッキング剤を添加した塗料を用いて塗装し、該外面塗膜をゲル分率が80〜96%の硬化状態に調整してネッキング加工及びネジ加工を施すとともに、ネジ加工後の段階で、ボトル缶の少なくともキャップ取付け部分をアフターベークすることを特徴とするボトル缶の製造方法、
【0009】
[2] 耐ブロッキング剤として、平均粒径が3〜10μmのシリカ系あるいはフッ素系の耐ブロッキング剤を、外面塗料の樹脂分に対して0.01重量%〜5重量%配合した塗料を用いる用いる上記[1]に記載のボトル缶の製造方法、
【0010】
[3] 上記[1]または[2]に記載のボトル缶の製造方法において、上記アフターベークをネジ加工後に行われる洗浄工程終了後の段階で行うことを特徴とするボトル缶の製造方法、
[4] 上記[1]〜[3]のいずれかに記載のボトル缶の製造方法において、上記アフターベークをボトル缶のキャップ取付け部分の局部のみに施すことを特徴とするボトル缶の製造方法、
[5] 上記[1]ないし[4]のいずれかに記載のボトル缶の製造方法において、上記アフターベークを近赤外線ランプを用いて行うことを特徴とするボトル缶の製造方法、
【0011】
[6] アフターベークしたことにより、キャップ取付部分の耐ブロッキング剤を添加した外面塗料が、ゲル分率で97%以上の硬化状態であるボトル缶、
[7] 耐ブロッキング剤が少なくともネジ部の外面塗膜中に均一に分散しており、且つ外面塗料中のワックス等の潤滑成分がキャップ取付け部分の表面にブリードされている上記[6]に記載のボトル缶、
を開発することにより上記の課題を解決した。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、飲料用アルミニウム合金製ボトル缶製造工程において、塗装、焼付け後に行われるネッキング加工及びネジ加工に先立ち、耐ブロッキング剤を添加した外面塗料の塗膜の硬化の状態を調整し、外面塗膜のゲル分率が80〜96%の硬化状態でネッキング加工及びネジ加工を施して、縮径加工時における外面塗膜の割れを防止すると共に、高温レトルト処理や長時間加熱が行われるホット販売等においても、硬化状態を調整した外面塗膜とキャップ内面塗膜とのブロッキングを防止することが出来る。
【0013】
更にネジ加工後の段階で、ボトル缶の少なくともキャップ取付け部分をアフターベークすることにより外面塗膜をほぼ完全な硬化状態(ゲル分率で97%以上)にすることができ、これによりキャップ開栓トルクが低下してキャップの開栓性をも向上させることができる。
この場合、アフターベークによる加熱をボトル缶全体ではなく、キャップ取付け部分の局部のみに施すことにより、過度の加熱による内面塗料の劣化を防止するとともにアルミ材料の熱劣化を防止し、ボトル缶本体の強度劣化を防止することができる。特に、アフターベークを近赤外線ランプを用いて行った場合には、キャップ取付け部分を局部的に加熱する手段として有効である。これにより印刷後の外面塗装によるキャップ開栓性及び再開閉栓性も向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下図1を参照して本発明に係るボトル缶の製缶工程の1例を説明するが、他の製缶工程であっても本発明方法を適用することができる。
ボトル缶は、コイル状に巻かれた潤滑油を塗布したアルミニウム合金板から円形のブランクを打ち抜き、これをプレスなどでカップを成形し、さらにドローイング・アイアニング加工(DI加工)により有底円筒成形体とする。この円筒の口部をトリミングした後、脱脂洗浄により缶胴内外面の潤滑油を除去し、化成皮膜処理を施した後、乾燥する。
【0015】
その後サイズコート(10〜30mg/dm)及びその焼付工程、印刷・オーバーコート(45〜100mg/dm)及びその焼付工程、内面塗装及びその焼付工程、ネッキング加工工程(トリミング加工、スカート成形を含む)、ネジ加工工程(カール・スロット成形を含む)を経て洗浄・乾燥を行い、通常はボトル缶製品となるところである。本発明においては、上記製缶工程において外面塗膜(オーバーコート)に使用する塗料に耐ブロッキング剤を添加すること及びその焼付け工程を調整することにより外面塗膜の硬化状態をゲル分率として80〜96%とし、ネジ加工後の段階においてアフターベークして外面塗膜をゲル分率97%に硬化することが特徴である。好ましくはネジ加工後に行われる洗浄・乾燥後においてアフターベークすることである。
【0016】
ボトル缶の外面塗料には、ポリエステル樹脂、エポキシアクリレート樹脂(或いはビニルエステル樹脂ともいう。)、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂、アミノ系樹脂、フェノール系樹脂などで構成されている熱硬化性樹脂が使用される。
これらの外面塗料には、例えばラノリンやカルナウバ・ワックスといった動・植物系、例えばパラフィンといった鉱物系、例えばポリエチレンワックスといった合成系ワックス又はシリコーン樹脂等の潤滑剤が添加されている塗料が使用されており、硬化させる熱履歴によって塗膜硬度、滑り性、柔軟性が変化する。本発明では、これらの潤滑剤と共に、更に粒子状あるいは粉状の、例えばシリカ系、フッ素系といった耐ブロッキング剤を添加することが特徴である。
【0017】
外面塗膜に割れを発生させないためには、塗装・焼付け後に行われるネッキング加工及びネジ加工時における外面塗膜の硬化状態が重要であり、外面塗膜のゲル分率が80〜96%、特に、85〜92%程度が好ましく、この範囲内の硬化状態で加工を行うべきである。
ゲル分率が80%未満の場合には、塗膜が軟らか過ぎ、ネッキング加工及びネジ加工に際し塗膜に傷が付く恐れがある。逆に96%を超える場合には加工時に塗膜に割れや剥離が生じる恐れがある。外面塗膜を上記ゲル分率の範囲に調整する方法としては、外面塗装後及び内面塗装後のガスオーブン等による焼付け条件(温度及び時間)を調整する方法が挙げられる。一般的には、外面塗料の焼付け条件は190℃以上×20秒程度、内面塗料の焼付け条件は200℃以上×60秒程度であるが、これらの焼付け条件より若干低めの条件で行う必要はある。又、ゲル分率の他の調整方法としては、外面塗料に含まれているアミノ樹脂等の硬化剤の添加量を少なめに配合する方法が挙げられる。
【0018】
ただし、この条件で製造されたボトル缶は、塗膜硬度が十分ではないため、内容物充填後のレトルト殺菌工程で、ボトル缶外面の外面塗料とキャップ内面の塗料がブロッキングし、キャップ開栓時のトルクが高くなる不具合をおこす懸念がある。しかし、外面塗料に予めシリカ系あるいはフッ素系等の耐ブロッキング剤を添加することにより、外面塗料表面の滑り性が向上し、レトルト処理を含む殺菌条件を施した後でも、キャップ開栓時のトルク及び再開閉栓時のトルクを大幅に低下させることが出来、ブロッキングの問題は解消出来る。
【0019】
耐ブロッキング剤について、好ましくはシリカ系あるいはフッ素系耐ブロッキング剤を、外面塗料の樹脂分に対して0.01〜5重量%、好ましくは0.05重量%〜0.5重量%添加することである。上記耐ブロッキング剤は、平均粒径3〜10μm、特に4〜5μmが好ましい。添加量が0.01重量%を下回る場合には、耐ブロッキング性の効果が薄れ、又、添加量が5重量%を上回る場合には、塗膜自体に濁りが発生する懸念がある。更に、平均粒径が3μmを下回る場合には、耐ブロッキング性の効果が薄れ、又、平均粒径が10μmを上回る場合には、塗膜から粒子が頭を出しすぎ、塗膜表面の平滑性がなくなると共に、ボトル缶製造ラインの搬送系のガイド等に塗膜屑が付着する恐れがある。
【0020】
次に、ネッキング加工、ネジ加工のために外面塗膜が不完全な硬化状態であるキャップ取付部を、ネジ加工以降の工程でアフターベークすることにより、塗料の性能を充分に発揮できるようにした。このアフターベーク処理により、塗膜硬度はゲル分率で97%以上の硬化状態(鉛筆硬度で4H程度)に上昇すると共に、塗膜中に含まれているワックスなどの潤滑剤が表面にブリーディングして、キャップ開栓時のトルクが高くなる不具合を大幅に解消することが分かった。特に、ネジ加工後に行う洗浄工程の後にアフターベーク処理をした場合には、ベーキングにより塗膜表面にブリーディングした潤滑剤がそのまま残るので特に好ましい。またアフターベークはボトル缶のキャップ取付け部分のみに施した場合には、ボトル缶の座屈強度の低下などの副作用が生じないので好ましいが、ボトル缶全体をアフターベークすることも可能である。
【0021】
アフターベークに際しては、図2(キャップ取付部のみの加熱を示す。)に示すように、ボトル缶1を缶の円周方向に回転機2により回転させながら加熱する方法が好ましいが、全体加熱する方法でも可能である。加熱手段として近赤外線ランプ3(ピーク波長0.8〜2.5μm程度)を使用するときは、ガスオーブンと違い、近赤外線による焼付けは、近赤外線が、ピンポイントで回転しているキャップ取り付け部分に照射されるので均一に加熱可能であり、缶全体に熱がかからない事で缶胴部の加熱が抑えられ、側壁部の座屈強度の低下を抑える利点もある。しかしながら、加熱手段としては、近赤外線に限定されるものではなく、他の加熱手段、例えば遠赤外線加熱や一般的なガスオーブン加熱でも可能である。
【実施例】
【0022】
[測定方法]
(トルクの測定法)
1stトルク:ボトル缶にキャップを締め、123℃で23分処理後、60℃において開栓したとき、キャップの回し初めからトルクが上がり、下がるところまでのトルク。
2ndトルク:1stトルクの後から、スカートのブリッジが切れるまでのトルク。
リシールトルク:開栓後のキャップを再栓していく時の最大トルク(ただし、開栓原点手前までのキャップを閉栓方向に回していく間でのトルクであり、開栓原点近傍でのトルクとは異なる)
【0023】
(塗膜のゲル分率)
試料を5cm×5cmに切断し、トルエン溶液(100℃)30分抽出した後デシケータ中で1時間放置したものを測定する。
抽出前の塗装板重量(=A)、抽出乾燥後の塗装板の重量(=B)とし、その差(A−B=C)とする。
抽出、乾燥後の塗装板から塗膜をはがして(角砂糖にアセトンをしみこませたもので掻き取る。)、板の重量を計測(=D)する。ゲル分率は次の式により求める。
ゲル分率(%)=100−[100×C/(A−D)]
【0024】
(実施例1〜3)
通常の製缶工程により製造された有底円筒体の外面に、サイズコート処理・焼付けし(190℃×20秒)、その上に所定の印刷を施し、外面塗料にシリカ系あるいはフッ素系の耐ブロッキング剤を表1に示す割合で添加したポリエステル系樹脂を含む塗料によるオーバーコート(外面塗装)を行い、ガスオーブンにて190℃×15秒焼付けした。次に、エポキシ−アクリル系樹脂による内面塗装を行い、ガスオーブンにて200℃×50秒の加熱焼付けを行った。
ネッキング加工を行うに当たり外面塗膜のゲル分率を測定したところ、表2に示すような硬化度を示した。
この塗装・焼付け処理を行った円筒体に対し、ネッキング加工及びネジ加工を行い、洗浄・乾燥を行った。
【0025】
その後、ボトル缶体のキャップ取り付け部のみを近赤外線(ピーク波長1.2μm)を用いて230℃以上×20秒のアフターベーク処理を行った。アフターベーク処理については、近赤外線照射条件として近赤外線ランプ(ハイベック社製、型式:HYP100−28、1960ワット)との距離50mm、缶の回転40rpm、ランプ光に対し缶の角度90°とした。
これらのボトル缶のキャップ取付部分の外面塗膜の表面状態を目視にて観察したところ、塗膜の割れ等の欠陥は見られなかった。
これらのボトル缶に対して、試験的に水を充填後キャッピングし、123℃で23分のレトルト処理を施した後、60℃にて開栓及び再栓した時の開栓トルク及び再栓トルクの変化を測定し、結果を表2に示した。
【0026】
(比較例1〜3)
実施例と同様にして製造された有底円筒体の外面に、実施例と同様にサイズコート処理・焼付けし、その上に所定の印刷を施し、シリカ系あるいはフッ素系の耐ブロッキング剤を表1に示す割合で添加した外面塗料にて外面塗装・焼付けし、実施例と同様に内面塗装・焼付けを行った。ネッキング加工を行うに当たり外面塗膜のゲル分率を測定したところ、表2に示すような硬化度を示した。
この塗装・焼付け処理を行った円筒体に対し、ネッキング加工・ネジ加工及び洗浄・乾燥を行い、アフターベークは行わなかった。
このボトル缶のキャップ取付部分の外面塗膜の表面状態を目視にて観察したところ、塗膜の割れ等の欠陥は見られなかった。
これらのボトル缶に対して実施例と同様に充填試験を行い、開栓トルク及び再栓トルクの変化を測定し、結果を表2に示した。
【0027】
(比較例4)
外面塗料に耐ブロッキング剤を添加しない以外は、比較例1と同様にしてサイズコート処理・焼付けし、その上に所定の印刷を施し、外面塗装・焼付けし、内面塗装・焼付けを行った。ネッキング加工を行うに当たり外面塗膜のゲル分率を測定したところ、表2に示すような硬化度を示した。
この塗装・焼付け処理を行った円筒体に対し、ネッキング加工・ネジ加工及び洗浄・乾燥を行い、実施例と同様にアフターベークを行った。
このボトル缶のキャップ取付部分の外面塗膜の表面状態を目視にて観察したところ、塗膜の割れ等の欠陥は見られなかった。
これらのボトル缶に対して実施例と同様に充填試験を行い、開栓トルク及び再栓トルクの変化を測定し、結果を表2に示した。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
上記結果より、ゲル分率を調整することで外面塗膜の割れを防止でき、また、表2では外面塗料に耐ブロッキング剤を添加し、アフターベークする事で、比較例に較べ1stトルク・2ndトルク及びリシールトルク共に下がっていた。
この事から、ゲル分率の調整が外面塗膜の割れの防止に有効であると共に、耐ブロッキング剤の添加及びアフターベークが開栓トルク及び再栓トルクを下げるのに有効である結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、飲料用アルミニウム製ボトル缶の製造において、ネッキング加工及びネジ加工の際、外面塗膜の塗膜割れや剥離等の発生を防止し同時に、ネジ部の外面塗膜とキャップ内面側の塗膜との滑り性を向上させ、ブロッキングを防止し、ワックス等潤滑剤のブリーディングにより潤滑性が良く、滑り性を向上させ、キャップを開閉しやすくすると共に、レトルト処理を含む殺菌処理及びホット販売などの状況下でも、キャップを開閉しやすくした、飲料用アルミニウム合金製ボトル缶の製造方法並びに該方法により製造されたボトル缶が提供できた。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】ボトル缶の製缶工程の1例
【図2】ボトル缶ネジ部の加熱方法
【符号の説明】
【0033】
1 ボトル缶
2 回転機
3 赤外線ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料用アルミニウム合金製ボトル缶製造工程において、成形された有底円筒成形体をサイズコート・焼き付けした後、ネジ部を除いて印刷し、次いで耐ブロッキング剤を添加した塗料を用いて塗装し、該外面塗膜をゲル分率が80〜96%の硬化状態に調整してネッキング加工及びネジ加工を施すとともに、ネジ加工後の段階で、ボトル缶の少なくともキャップ取付け部分をアフターベークすることを特徴とするボトル缶の製造方法。
【請求項2】
耐ブロッキング剤として、平均粒径が3〜10μmのシリカ系あるいはフッ素系の耐ブロッキング剤を、外面塗料の樹脂分に対して0.01重量%〜5重量%配合した塗料を用いる用いる請求項1に記載のボトル缶の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のボトル缶の製造方法において、上記アフターベークをネジ加工後に行われる洗浄工程終了後の段階で行うことを特徴とするボトル缶の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のボトル缶の製造方法において、上記アフターベークをボトル缶のキャップ取付け部分の局部のみに施すことを特徴とするボトル缶の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のボトル缶の製造方法において、上記アフターベークを近赤外線ランプを用いて行うことを特徴とするボトル缶の製造方法。
【請求項6】
アフターベークしたことにより、キャップ取付部分の耐ブロッキング剤を添加した外面塗料が、ゲル分率で97%以上の硬化状態であるボトル缶。
【請求項7】
耐ブロッキング剤が少なくともネジ部の外面塗膜中に均一に分散しており、且つ外面塗料中のワックス等の潤滑成分がキャップ取付け部分の表面にブリードされている請求項6に記載のボトル缶。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−7154(P2006−7154A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−190749(P2004−190749)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000186854)昭和アルミニウム缶株式会社 (155)
【復代理人】
【識別番号】100094178
【弁理士】
【氏名又は名称】寺田 實
【Fターム(参考)】