説明

ボンディング装置用撮像装置

【課題】ボンディング装置用撮像装置において、簡便な構造によって熱膨張による光学特性の変化を低減する。
【解決手段】金属材料でできたプリズムフレーム25、レンズフレーム27,撮像素子フレーム29を炭素繊維強化プラスチックの平板22に光軸方向に並んでそれぞれ独立して固定する。遮光板30,31はレンズフレーム27に固定され両端に向かって伸び、両端の重ね合わせ部33において熱膨張が吸収される。各平板22,23の膨張量は略ゼロであり、熱影響によってプリズム24、レンズ26、撮像素子28の各光学部品の光軸方向に沿った位置はほとんど変化せず光学特性もほとんど変化しない。また、熱膨張を逃がす重ね合わせ部33によって熱膨張を逃がすのでも撮像装置21に熱応力が発生しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンディング装置用撮像装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程において、半導体ダイを回路基板に取り付けるダイボンディングや、ダイボンディングによって回路基板に取り付けられた半導体ダイの電極と回路基板の電極とをワイヤで接続するワイヤボンディング等の工程が行われる。これらのダイボンディングやワイヤボンディングにはそれぞれダイボンディング装置、ワイヤボンディング装置が用いられ、各装置には、半導体ダイを回路基板に押し付けて圧着するコレットや挿通されている接続ワイヤを各電極に押し付けて圧着するキャピラリ等のボンディングツールが取付けられている。
【0003】
ボンディング装置によって半導体ダイを取付けたり、ワイヤによって各電極を接続したりする場合には、半導体ダイの各電極の座標と回路基板の各電極の座標をボンディング装置に入力することが必要である。座標の位置入力の際には、カメラなどの撮像装置によって半導体ダイの電極或いは回路基板の電極の画像から座標を取得し、その座標を用いて座標入力が行われる。
【0004】
例えば、特許文献1には、作業者がテンキー又はチェスマン等の手動入力手段を手動操作して半導体ダイ又は回路基板の各電極の画像をテレビモニタに映し出し、回路基板の各電極の位置をテレビモニタ中心に描かれたクロスラインマークに合わせ、その座標位置を取得する方法が記載されている。特許文献2には、CCDカメラで半導体ダイ又は回路基板の電極の画像を取り込んで、画像のパターンマッチングや明暗比率の分布から各電極の位置を求める方法が記載されている。特許文献3には、ダイボンディング装置においてカメラで撮像した画像によって半導体ダイの回転方向の位置ずれを検出し、検出結果に応じ回転台を駆動して半導体ダイの姿勢を正しい姿勢に修正する方法が記載されている。
【0005】
ボンディング装置においては、上記のような撮像装置はXY方向に自由に移動可能で、ボンディングツールを上下方向に駆動する駆動モータ等が収納されているボンディングヘッドに取付けられ、キャピラリと共にXY方向に高速移動するよう構成されている(例えば、特許文献1の図7、特許文献3の図1、特許文献4の図1参照)。
【0006】
また、回路基板や半導体ダイ等のワークの種類によってはボンディングの際にワークを加熱する必要があるため、回路基板が真空吸引固定されるボンディングステージは電気ヒータなどの加熱手段を備えている。このため、ボンディングの際にヒータによって加熱された回路基板からの輻射熱が超音波ホーンに伝わり、超音波ホーンの温度変化によって位置変動が生じる場合がある(例えば、特許文献4参照)。このため、特許文献4ではボンディングステージのヒータからの熱輻射を防ぐために遮蔽板と空冷ノズルを取り付けることが提案されている。
【0007】
特許文献5には、人工衛星に搭載される光学センサの軌道上の熱変形による焦点移動を低減し高解像度とする方法として、レンズと光電変換部とが固定された鏡筒を光軸方向及び光軸直交方向が0膨張となる炭素繊維強化プラスチックにより構成することが提案されている。
【0008】
【特許文献1】特開平7−297223号公報
【特許文献2】特開平10−318711号公報
【特許文献3】特開2002−350118号公報
【特許文献4】特開2000−322050号公報
【特許文献5】特開2002−202187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献4に記載された超音波ホーンと同様に、撮像装置はボンディングステージの上方に位置するように取付けられているのでヒータによって加熱された回路基板からの輻射熱の影響を受け、熱膨張により視野位置、フォーカス位置、収差等の光学特性が変化し、検出する座標位置などに誤差が生じる場合がある。また、特許文献1又は3に記載されているように、撮像装置はキャピラリ先端を上下に駆動する駆動モータ等が収納されているボンディングヘッドに取付けられていることから、高速駆動によるモータ等の発熱による熱膨張でも、視野位置、フォーカス位置、収差等の光学特性が変化し、検出する座標位置などに誤差が生じる場合がある。
【0010】
撮像装置が取付けられているボンディングヘッドはボンディング中に高速でXY方向に移動し、撮像装置はボンディングヘッドに片持ちで固定されていることから、高速移動の際には撮像装置の慣性モーメントによってかかる慣性力によって振動が発生し、その振動によってXYテーブルの制御に誤差が生じ、ボンディング品質が低下してしまう場合がある。
【0011】
熱影響による光学特性の変化を低減する方法として特許文献5に提案されている鏡筒を光軸方向及び光軸直交方向が0膨張となるような特殊な炭素繊維強化プラスチックにより構成する方法は、炭素繊維プラスチックの機械加工が難しいことから、炭素繊維プラスチックを成形する型が必要になりボンディング装置の撮像装置などの一般的な機械部品に適用することは難しいという問題がある。
【0012】
一方、レンズ等の調製機構を金属材料の機械加工で形成し、炭素繊維強化プラスチックと組み合わせて撮像装置を構成する方法では、線膨張係数が非常に小さい炭素繊維強化プラスチックと軽量合金等の一般材料との間に温度変化による伸び差で反りが生じ、光学系の光軸が狂ったり収差が変化したりして、光学系の特性が変化してしまうという問題がある。
【0013】
本発明は、簡便な構造によって熱膨張による光学特性の変化を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のボンディング装置用撮像装置は、ボンディング装置に取り付けられ、対象物の像を像面上に形成するレンズと像面上に形成された像を電気信号に変換する撮像素子とを備えるボンディング装置用撮像装置であって、レンズが取り付けられるレンズフレームと、撮像素子が取り付けられる撮像素子フレームと、レンズフレーム及び撮像素子フレームよりも線膨張率の小さい材料によって構成され、レンズと撮像素子との光軸方向に延びて、レンズフレームと撮像素子フレームとが固定された基体部と、を有することを特徴とする。
【0015】
本発明のボンディング装置用撮像装置において、ボンディング装置用撮像装置は、対象物からの光路を変更してレンズに導く光路変更器を備え、光路変更器が取り付けられ、基体部に固定される光路変更器フレームを有し、基体部はレンズフレーム及び撮像素子フレーム及び光路変更器フレームよりも線膨張率の小さい材料によって構成されること、としても好適である。
【0016】
本発明のボンディング装置用撮像装置において、光路変更器フレーム又はレンズフレーム又は撮像素子フレームのいずれか1つのフレームに固定され、他の2つのフレームに重ね合わされ、光路変更器と撮像素子との間に光軸方向に延びて光路変更器から撮像素子まで間の光路を外部から遮光する遮光部材を備え、基体部はレンズフレーム及び撮像素子フレーム及び光路変更器フレーム及び遮光部材よりも線膨張率の小さい材料によって構成されること、としても好適であるし、光路変更器フレームとレンズフレームとの間及びレンズフレームと撮像素子フレームとの間の基体部にそれぞれ固定され、各フレームに重ね合わされて各フレーム間の光路を外部から遮光する遮光部材を備え、基体部はレンズフレーム及び撮像素子フレーム及び光路変更器フレーム及び遮光部材よりも線膨張率の小さい材料によって構成されること、としても好適である。
【0017】
本発明のボンディング装置用撮像装置において、複数のレンズフレームを備え、複数のレンズフレーム又は撮像素子フレームのいずれか1つのフレームに固定され、他のフレームに重ね合わされ、レンズと撮像素子との間に光軸方向に延びてレンズから撮像素子まで間の光路を外部から遮光する遮光部材を備え、基体部はレンズフレーム及び撮像素子フレーム及び遮光部材よりも線膨張率の小さい材料によって構成されること、としても好適である。
【0018】
本発明のボンディング装置用撮像装置において、各フレームと遮光部材との重ね合わせ部分は弾性接着剤によって接続されていること、としても好適であるし、基体部は、光軸方向に延びて、各フレームを挟み込んで固定する2枚の平板であること、としても好適であるし、遮光部材は、各平板間の各光路を外部から遮光するように各平板の間に設けられていること、としても好適であるし、基体部は光軸方向の繊維の数が光軸と直交する方向の繊維の数よりも多い繊維強化プラスチックによって構成されること、としても好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、簡便な構造によって熱膨張による光学特性の変化を低減することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態として本発明をワイヤボンディング装置に適用した場合について説明する。図1に示すように、ワイヤボンディング装置10はXYテーブル12の上に取り付けられてXY方向に自在に移動することができるボンディングへッド11の中に取付けられたZ方向駆動機構18を備えている。Z方向駆動機構18には超音波ホーン13とクランパ15とが取付けられ、超音波ホーン13の先端にはキャピラリ14が取付けられている。キャピラリ14にはワイヤ16が挿通され、ワイヤ16はスプール17から供給されるように構成されている。ボンディングヘッド11には撮像装置21が片持ちで固定されている。撮像装置21はボンディングステージ53の上にある対象物からの光路を変更してレンズに導く光路変更器であるプリズムと対象物の像を像面上に形成するレンズと像面上に形成された像を電気信号に変換する撮像素子とを内部に備えている。
【0021】
ワイヤボンディング装置10の図示しないフレームには、半導体ダイ63が取り付けられた回路基板61をガイドするレール51a,51bと、回路基板61を真空吸着するボンディングステージ53とボンディングステージ53を加熱するヒータ55とが取り付けられている。
【0022】
ワイヤボンディング装置10は、撮像装置21によって取得した画像によってボンディングヘッド11の位置を検出し、XYテーブル12によってキャピラリ14の位置が半導体ダイ63の電極の位置に合うように移動させた後、Z方向駆動機構18を動作させて超音波ホーン13の先端に取り付けられたキャピラリ14をZ方向に駆動し、キャピラリ14に挿通したワイヤ16によって半導体ダイ63の電極と回路基板61の電極とをボンディングしていく。また、ボンディングの際にはボンディングステージ53に真空吸着されている回路基板61はボンディングステージ下部に配置されたヒータ55によって加熱されている。
【0023】
ワイヤボンディング装置10は、1つの半導体ダイ63の電極と回路基板61の電極とのボンディングが終了したら、XYテーブル12によってキャピラリ14を次の電極の上に移動させ、上記と同様に各電極間をワイヤ16によって接続する。そして、1つの半導体ダイ63の全ての電極を回路基板61の各電極とワイヤ16によって接続したら、次のダイがボンディング位置に搬送される。撮像装置21はこのダイの画像を取得し、取得した画像を元に位置決めを行い、ボンディングを行う。
【0024】
図2及び図3に示すように、撮像装置21は、ボンディングステージ53の上にある回路基板61からの光路を変更してレンズ26に導く光路変更器であるプリズム24と対象物の像を像面上に形成するレンズ26と像面上に形成された像を電気信号に変換する撮像素子28とを備えている。プリズム24は光路変更器フレームであるプリズムフレーム25に取り付けられ、レンズ26はレンズフレーム27に取り付けられ、撮像素子28は撮像素子フレーム29に取り付けられている。各光学部品が取り付けられている各フレーム25,27,29は各光学部品の保持、調整が可能な複雑な形状で、加工性の良いマグネシウム合金、アルミニウム合金、ステンレス、チタン合金等の金属材料を機械加工して形成されている。
【0025】
プリズムフレーム25は三角柱形状のプリズム24を光路以外の面で保持することができるような溝型の枠形状となっており、光軸方向に延びた基体部である炭素繊維強化プラスチックの平板22の一端側に取り付けられている。撮像素子フレーム29は溝型の枠形状で、外面側に撮像素子28が固定され、平板22の他端側に固定されている。レンズフレーム27はレンズ26の周囲を保持し、光路部分に孔があり、その幅はプリズムフレーム25と撮像素子フレーム29の枠の内幅寸法よりも小さい箱型形状でプリズムフレーム25と撮像素子フレーム29との間で平板22に固定されている。
【0026】
レンズフレーム27の両側面には遮光板30,31が固定されている。各遮光板30,31はレンズフレーム27からプリズムフレーム25及び撮像素子フレーム29に向かって延びて、各フレーム25,29の枠の内側面に隙間をもって重ね合わされた重ね合わせ部33が形成されている。重ね合わせ部33の隙間は外部からの光が直接光路に入り込まないような微小隙間となっている。遮光板30,31は各フレーム25,27,29と同様の金属製であってもよいし、遮光性の樹脂によって形成されていてもよい。
【0027】
各フレーム25,27,29の上面には基体部であるもう1枚の炭素繊維強化プラスチックの平板23が取り付けられ、各フレーム25,27,29は2枚の平板22,23によって挟み込まれてねじ又は接着剤あるいは両方で固定されている。各フレーム25,27,29と平板22,23と各遮光板30,31は箱状に組み立てられて、撮像装置21の光路を外部から遮光する鏡筒を形成している。金属材料によって構成された各フレーム25,27,29と炭素繊維強化プラスチックで構成された平板22,23との組立は冶具によって各フレーム25,27,29の位置を固定しておき、平板22,23を両面から取付けるようにしてもよい。
【0028】
図4に示すように、対象物である回路基板61からの光は光路35のように進み平板22の孔34を通ってプリズム24に進入する。プリズム24によって光路35は90度進路を変更され、レンズ26と撮像素子28との光軸36に沿って進み、レンズ26によって集光されて撮像素子28の像面37に結像する。像面37に結像された像は撮像素子28の内部に備えられているCCD等により電気信号に変換されて外部に画像信号として出力される。プリズム24から撮像素子28までは外部からの光が遮光される鏡筒となっており、外部の光が撮像素子28に進入しないよう構成されている。
【0029】
各フレーム25,27,29の両面に固定されている平板22,23を構成している炭素繊維強化プラスチックは、いろいろな方向に炭素繊維を織り合わせた強化繊維を樹脂に入れたものであり、強化繊維の方向によって異方性の強度特性を持つようにすることができる材料である。本実施形態では、各平板22,23を構成する炭素繊維強化プラスチックは長手方向の強化繊維の数が幅方向の強化繊維の数よりも多くなるよう構成されているので長手方向の強度は金属材料の数倍となっている。また、比重はマグネシウム合金、アルミニウム合金、ステンレス、チタン合金等の金属材料よりも小さく、炭素繊維強化プラスチックを使用することによって軽量、高剛性構造とすることができる。炭素繊維強化プラスチックは金属材料が1〜3×10-5程度の熱膨張率を有するのに対して、その線膨張係数を略ゼロとすることができる材料であり、熱膨張の影響を受けることが少ない材料である。
【0030】
上記のように構成された撮像装置21を用いて構成されたワイヤボンディング装置10によってボンディングを行う場合、ボンディングステージ53上の回路基板61がヒータ55によって加熱され、その輻射熱が撮像装置21のボンディングステージ側にある平板22を加熱する。また、ヒータ55によって加熱された空気からも撮像装置21は熱の影響を受ける。更に、撮像装置21はZ方向駆動機構18が搭載されているボンディングへッド11に固定されていることからZ方向駆動機構18のモータの発熱による熱影響を受ける。しかし、炭素繊維プラスチックの熱膨張係数は略ゼロであることから、その熱膨張量も略ゼロとなる。また、撮像装置21の上面側に取付けられた平板23も同様に熱膨張量が略ゼロとなっている。一方、金属材料によって構成された各フレーム25,27,29は、ボンディングステージ53上の回路基板61からの輻射熱によって加熱されるが、各フレーム25,27,29は平板22,23の間に光軸方向に並んでそれぞれ独立して固定されていることから、各フレーム25,27,29に固定されているプリズム24、レンズ26、撮像素子28の光軸方向に沿った位置は各フレーム25,27,29が固定されている平板22,23によって規定されることとなる。各平板22,23は炭素繊維強化プラスチックによって構成されていることからその膨張量は略ゼロであり、熱影響によってプリズム24、レンズ26、撮像素子28の各光学部品の光軸方向に沿った位置はほとんど変化せず、視野位置、フォーカス位置、収差等の光学特性もほとんど変化しないという効果を奏する。
【0031】
また、外部からの光を遮光する遮光板30,31も、回路基板61のヒータ55によって加熱された空気から熱の影響を受ける。更に、輻射熱や取り付け部からの熱伝導によっても加熱される。遮光板30,31は金属材料又は樹脂材料によって構成されており、撮像装置21の一端側にあるプリズムフレーム25から他端側にある撮像素子フレーム29まで延びているため、その長さが撮像装置21の全長に近い長さとなっており、熱膨張量が略ゼロの平板22,23との間に熱膨張差が発生する。しかし、遮光板30,31は撮像装置21の略中央に固定されたレンズフレーム27に取り付けられ、各平板22,23には取り付けられていないことから、平板22,23に対しては自在に熱膨張することができる。そして、図5(a)(b)に示すように、遮光板30,31の両端は枠状のプリズムフレーム25と撮像素子フレーム29の内面側に滑動自在に重ね合わされた重ね合わせわせ部33が設けられ、重ね合わせ部33には外部からの光が侵入しない程度の微小な隙間40が設けられている。この構成によって、遮光板30,31のプリズムフレーム25の側及び撮像素子フレーム29の側に向かって熱膨張しても、その熱膨張が制限されることがないため、撮像装置21の反りを抑制し、光学特性が変化することを低減することができるという効果を奏する。
【0032】
本実施形態では、遮光板30,31とプリズムフレーム25、撮像素子フレーム29との重ね合わせ部33に微小な隙間40を設けて熱膨張を吸収する構造とすることで説明したが、熱膨張を吸収することができる構造であれば、隙間40を設ける構造に限らず、図5(c)に示すように、重ね合わせ部33の遮光板30,31とプリズムフレーム25、撮像素子フレーム29との間にゴム系接着剤のような弾性接着剤38を充填して熱膨張の吸収ができるような構造としてもよい。また、遮光板30,31とプリズムフレーム25、撮像素子フレーム29との重ね合わせ部33は、図5(d)に示すように、当て板30a,31a,25a,29aを用いて接続し、その各隙間40に弾性接着剤38を充填してもよいし、図5(e)に示すように、遮光板30,31とプリズムフレーム25、撮像素子フレーム29とを重ねずに熱膨張を吸収することのできる長手方向の隙間40を持たせて配置し、当て板39によって重ね合わせ部33を形成して遮光すると共に隙間40に弾性接着剤38を充填するような構造としてもよい。
【0033】
また、本実施形態では、遮光板30,31はレンズフレーム27の両側面に固定することとして説明したが、遮光板30,31はプリズムフレーム25、レンズフレーム27、撮像素子フレーム29のいずれか1つに固定して他フレームとは重ね合わせ部33を持つような構造としてもよい。例えば、プリズムフレーム25に遮光板30,31を固定して、撮像素子フレーム29に向かって熱膨張させ、熱膨張による遮光板30,31と平板22,23との伸び差は全て撮像素子フレーム29の枠の内面の重ね合わせ部33で吸収するように構成してもよいし、逆に撮像素子フレーム29に遮光板30,31を固定して、プリズムフレーム25との重ね合わせ部33によって熱伸び差を吸収することができるように構成してもよい。
【0034】
撮像装置21はボンディングへッド11に片持ち固定されており、ボンディング動作の際には、ボンディングへッド11の動作によって撮像装置21にも振動が発生する。振動は、上下方向への曲げ振動と、左右方向の横振動と、ねじり振動が主に発生する。本実施形態は、炭素繊維強化プラスチックの平板22,23によって各フレーム25,27,29を挟み込んで固定して高い剛性を持つ構造としているので、これらの振動を小さくすることができるという効果を奏する。また、振動の減衰率が大きい炭素繊維強化プラスチックを基体部である平板22,23の主材料として用いていることから、撮像装置21全体の振動減衰率が大きく、共振が発生しにくく安定した画像信号を出力することができる。このため共振などによる位置検出精度の低下を防止することができるという効果を奏する。
【0035】
本実施形態では炭素強化繊維プラスチックの平板22,23を用いて撮像装置21の基体部を形成していることから、型を用いず、成形された平板を切断、取付けするという簡便な方法によって撮像装置21を構成することができ、効率的に生産することができるという効果を奏する。
【0036】
以上述べたように、本実施形態は、簡便な構造によって熱膨張による光学特性の変化を低減することができるという効果を奏する。
【0037】
本実施形態では、平板22,23は炭素繊維強化プラスチックによって構成することとして説明したが、繊維強化プラスチックであれば強化繊維は炭素繊維に限らず、ガラス繊維など他の強化繊維によって構成することとしてもよい。
【0038】
本実施形態では、各フレーム25,27,29は金属材料で遮光板30,31は金属材料又は樹脂材料で構成し、基体部である平板22,23は炭素繊維強化プラスチックとして説明したが、本発明は、平板22,23が各フレームあるいは遮光板30,31の材料よりも線膨張率が小さい材料で、単純に組み合わせた場合に大きな熱応力が発生してしまうような場合にも適用することができる。
【0039】
本実施形態は、上下2枚の平板22,23によって基体部が構成され、遮光板30,31によって箱状の鏡筒となるような構造として説明したが、遮光板30,31がなくてもよい。また、炭素繊維強化プラスチック等で構成される基体部は各フレーム25,27,29が固定されている1枚のみで、その上に、例えばレンズフレームに固定され、光路全体を覆う蓋状の遮光部材を取り付けるようにし、遮光部材とレンズフレーム27、撮像素子フレーム29との間に重ね合わせ部33を設けて熱膨張差を吸収させるような構成としてもよい。また、遮光部材はプリズムフレーム25とレンズフレーム27との間とレンズフレーム27と撮像素子フレーム29との間に分割して設けるようにしてもよい。いずれの構造としても、本実施形態と同様の効果を奏する。
【0040】
図6、7を参照しながら他の実施形態について説明する。図1から図5で説明した先の実施形態と同様の部分には同様の符号を付して説明は省略する。
【0041】
図6及び図7示すように、本実施形態の撮像装置21は、基体部である2枚の炭素繊維強化プラスチックの平板22,23とプリズムフレーム25、レンズフレーム27、撮像素子フレーム29、及び矩形断面を持つ筒状の遮光部材41,44とを備えている。各フレーム25,27,29はそれぞれ独立して平板22と23に挟みこまれて固定されており、各遮光部材41,44も平板22と23とに独立して挟みこまれて固定されている。各遮光部材41,44の光軸に沿って両側に延びた遮光リブ43,45は、各フレーム25,27,29の枠形状の内側に重ね合わされて重ね合わせ部33を形成し、熱膨張を吸収しつつ、遮光を行うことかできるよう構成されている。各重ね合わせ部33には光が侵入しない程度の微小な隙間が設けられている。このように各フレーム25,27,29及び各遮光部材41,44が光軸方向に沿って重ね合わせ部33を持って分割され平板22,23に固定されていることから、撮像装置21が熱影響を受けた場合でも各フレーム25,27,29と各遮光部材41,44と各平板22,23との間の熱膨張差は各重ね合わせ部33によって吸収される。このため、熱影響によってプリズム24、レンズ26、撮像素子28の各光学部品の光軸方向に沿った位置はほとんど変化せず、視野位置、フォーカス位置、収差等の光学特性もほとんど変化しないという効果を奏する。また、熱影響によって撮像装置21に反りが出ることもなく位置検出精度が低下することもないという効果を奏する。
【0042】
図8及び図9を参照しながら他の実施形態について説明する。本実施形態は、円筒形の撮像装置21の中心に炭素繊維プラスチックによって形成された基体部である円筒46と、レンズが4つずつ取り付けられた2組円板状のレンズフレーム27と4つの撮像素子28が取り付けられた円筒状の撮像素子フレーム29とを備え、各フレーム27,29の外面に遮光カバー47,48,49を取り付けたものである。各カバー47,48,49の間には重ね合わせ部33が設けられている。
【0043】
各光学系は中心の炭素繊維強化プラスチックの円筒46に光軸方向に固定されて取り付けられていることから、熱影響を受けても、各フレーム27,29の光軸方向位置はほとんど変化せず、視野位置、フォーカス位置、収差等の光学特性もほとんど変化しないという効果を奏する。また、熱影響によって撮像装置21に反りが出ることもなく位置検出精度が低下することもないという効果を奏する。
【0044】
また、各遮光カバー47,48,49は各カバー47,48,49の間に設けられた重ね合わせ部33によって熱膨張を吸収することができるよう構成されていることから、熱影響によって撮像装置21に反りが出ることもなく位置検出精度が低下することもないという効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上説明した実施形態は、ワイヤボンディング装置10の撮像装置21について説明したが、本発明の撮像装置21はワイヤボンディング装置10に限らず、ダイボンディング装置などの他の装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態における撮像装置を備えるワイヤボンディング装置の構造を示す説明図である。
【図2】本発明の実施形態における撮像装置の斜視図である。
【図3】本発明の実施形態における撮像装置の内部構造を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態における撮像装置の断面図である。
【図5】本発明の実施形態における撮像装置の遮光板とフレームとの重ね合わせ構造を示す説明図である。
【図6】本発明の他の実施形態における撮像装置の斜視図である。
【図7】本発明の他の実施形態における撮像装置の内部構造を示す斜視図である。
【図8】本発明の他の実施形態における撮像装置の斜視図である。
【図9】本発明の他の実施形態における撮像装置の内部構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
10 ワイヤボンディング装置、11 ボンディングヘッド、12 XYテーブル、13 超音波ホーン、14 キャピラリ、15 クランパ、16 ワイヤ、17 スプール、18 Z方向駆動機構、21 撮像装置、22,23 平板、24 プリズム、25 プリズムフレーム、26 レンズ、27 レンズフレーム、28 撮像素子、29 撮像素子フレーム、30,31 遮光板、30a,31a,25a,29a,39 当て板、33 重ね合わせ部、34 孔、35 光路、36 光軸、37 像面、38 弾性接着剤、40 隙間、41,44 遮光部材、43,45 遮光リブ、46 円筒 47,48,49 遮光カバー、51a,51b レール、53 ボンディングステージ、55 ヒータ、61 回路基板、63 半導体ダイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンディング装置に取り付けられ、対象物の像を像面上に形成するレンズと像面上に形成された像を電気信号に変換する撮像素子とを備えるボンディング装置用撮像装置であって、
レンズが取り付けられるレンズフレームと、
撮像素子が取り付けられる撮像素子フレームと、
レンズフレーム及び撮像素子フレームよりも線膨張率の小さい材料によって構成され、レンズと撮像素子との光軸方向に延びて、レンズフレームと撮像素子フレームとが固定された基体部と、
を有することを特徴とするボンディング装置用撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載のボンディング装置用撮像装置であって、
ボンディング装置用撮像装置は、対象物からの光路を変更してレンズに導く光路変更器を備え、
光路変更器が取り付けられ、基体部に固定される光路変更器フレームを有し、
基体部はレンズフレーム及び撮像素子フレーム及び光路変更器フレームよりも線膨張率の小さい材料によって構成されること、
を特徴とするボンディング装置用撮像装置。
【請求項3】
請求項2に記載のボンディング装置用撮像装置であって、
光路変更器フレーム又はレンズフレーム又は撮像素子フレームのいずれか1つのフレームに固定され、他の2つのフレームに重ね合わされ、光路変更器と撮像素子との間に光軸方向に延びて光路変更器から撮像素子まで間の光路を外部から遮光する遮光部材を備え、
基体部はレンズフレーム及び撮像素子フレーム及び光路変更器フレーム及び遮光部材よりも線膨張率の小さい材料によって構成されること、
を特徴とするボンディング装置用撮像装置。
【請求項4】
請求項2に記載のボンディング装置用撮像装置であって、
光路変更器フレームとレンズフレームとの間及びレンズフレームと撮像素子フレームとの間の基体部にそれぞれ固定され、各フレームに重ね合わされて各フレーム間の光路を外部から遮光する遮光部材を備え、
基体部はレンズフレーム及び撮像素子フレーム及び光路変更器フレーム及び遮光部材よりも線膨張率の小さい材料によって構成されること、
を特徴とするボンディング装置用撮像装置。
【請求項5】
請求項1に記載のボンディング装置用撮像装置であって、
複数のレンズフレームを備え、
複数のレンズフレーム又は撮像素子フレームのいずれか1つのフレームに固定され、他のフレームに重ね合わされ、レンズと撮像素子との間に光軸方向に延びてレンズから撮像素子まで間の光路を外部から遮光する遮光部材を備え、
基体部はレンズフレーム及び撮像素子フレーム及び遮光部材よりも線膨張率の小さい材料によって構成されること、
を特徴とするボンディング装置用撮像装置。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか1項に記載のボンディング装置用撮像装置であって、
各フレームと遮光部材との重ね合わせ部分は弾性接着剤によって接続されていること、
を特徴とするボンディング装置用撮像装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のボンディング装置用撮像装置であって、
基体部は、
光軸方向に延びて、各フレームを挟み込んで固定する2枚の平板であること、
を特徴とするボンディング装置用撮像装置。
【請求項8】
請求項7に記載のボンディング装置用撮像装置であって、
遮光部材は、各平板間の各光路を外部から遮光するように各平板の間に設けられていること、
を特徴とするボンディング装置用撮像装置。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載のボンディング装置用撮像装置であって、
基体部は光軸方向の繊維の数が光軸と直交する方向の繊維の数よりも多い繊維強化プラスチックによって構成されること
を特徴とするボンディング装置用撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−235463(P2008−235463A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−71084(P2007−71084)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000146722)株式会社新川 (128)
【Fターム(参考)】