説明

ボールブッシュ

【課題】従来のボールブッシュの潤滑は、グリース潤滑方式が多く、グリースを塗布する作業が比較的頻繁に必要であるという問題があった。また、潤滑剤による潤滑方式では、別部材を外付けするものであったため、装置全体が大型化されているという問題があった。
【解決手段】複数のループ溝8が設けられ且つ軸部材が挿通される筒状の保持器4と、各ループ溝に転動自在に収容された多数のボール5と、保持器が嵌合されると共にその保持器との間で多数のボールをループ溝に沿って移動可能に保持する筒体3と、を備えている。ループ溝8は、保持器4の外面側に全周に亘って開口されると共にその保持器の内面側において軸方向に直線状に延在された内側開口部17を有し、筒体の保持器の軸方向外側に、潤滑剤を保持した潤滑部材を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸状部材を軸方向へ摺動自在に支持するために用いられるボールブッシュに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ボールブッシュは、多数のボールと、その多数のボールを転動自在に保持する保持器と、その保持器が装着される筒体と、を備えて構成されている。保持器には、軸方向に延在された直線部を有するトラック状に形成されたループ溝が複数設けられており、各ループ溝に、それぞれ多数のボールが転動自在に収容されている。このような構成を有するボールブッシュは、多数のボールを保持した保持器にシャフトを挿通することによって使用され、多数のボールを介してシャフトを保持することにより、シャフトとの間に発生する摩擦抵抗を軽減させてシャフトのスムースな移動を行うことができる。
【0003】
ボールブッシュの使用に際しては、ボールに対して適切な潤滑を行うことにより、シャフトの焼き付き、磨耗、温度上昇を防止して、円滑な運動を確保することができる。ボールブッシュの潤滑には、グリースによる潤滑と、潤滑油による潤滑とが用いられている。一般に、グリース潤滑は、ボールブッシュの内部にグリースを手塗りすることによって行なわれている。また、潤滑油潤滑は、滴下給油方式でシャフトに潤滑油を滴下することによって行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−10821号公報
【特許文献2】特開2001−116043号公報
【0005】
従来の、ボールブッシュの第1の例としては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。特許文献1は、この出願人が先に実用新案登録出願したもので、加工容易で高精度のボールブッシュに関するものが記載されている。この特許文献1に係るボールブッシュは、多数のボールと、そのボールを案内する複数のループ溝を有する中空円筒状ボール保持器とを有している。ループ溝の一部がボール保持器の内周及び外周に開口する直線溝として形成され、その直線溝の外周開口の長さ方向の少なくとも一部を覆うように2つのニードルが並列配置され、そのニードルがボールの軌道を形成している、ことを特徴としている。
【0006】
このような構成を有するボールブッシュ(以下「第1の従来例」という。)によれば、ボールがボールブッシュの外周面側において、ニードルに2点で接するため、寿命を大幅に延ばすことができる、等の効果を得ることができる。
【0007】
また、従来のボールブッシュの第2の例としては、特許文献2に記載されているようなものもある。特許文献2には、往復運動及び回転運動する機械要素を支持するために用いられるボールブッシュに関するものが記載されている。この特許文献2に係るボールブッシュは、ロッドが挿入される円筒体の内周壁にそのロッドの外面が接する複数のボールが転動可能に配設されている。円筒体の外周壁の両端部はテーパ状に形成されており、その円筒体の外周壁において、その両端部を除く全部又は部分に凹部が形成された、ことを特徴としている。
【0008】
このような構成を有するボールブッシュ(以下「第2の従来例」という。)によれば、ボールブッシュをブッシュ孔に嵌入する際、テーパ部に案内されてボールブッシュはブッシュ孔に容易かつ確実に嵌入され、作業性及び歩留まりを向上することができる、等の効果が期待される。
【0009】
しかしながら、前述した第1及び第2の従来例の何れにおいても、その潤滑方式は、グリース潤滑によるものが一般的であった。このグリース潤滑では、グリースを過剰に充填するとボール循環の妨げとなる。そのため、適切な潤滑を維持するには、比較的頻繁にグリースを塗布する作業が必要になっているという問題があった。
また、潤滑剤による潤滑も可能であるが、その潤滑剤を保持するための部材が別途必要となり、外付け装置としてオプション的に使用されていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
解決しようとする問題点は、従来のボールブッシュの潤滑は、ボール部分にグリースを塗布するグリース潤滑方式が多く、軸部材のスムースな潤滑性を確保するためには、比較的頻繁にグリースを塗布する作業が必要になっていた。また、潤滑油による潤滑方式はオプション的に用いられており、別部材を外付けするものであったため、装置全体が大型化されているという点である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願のボールブッシュは、複数の無端状に連続したループ溝が設けられ且つ軸部材が挿通される筒状の保持器と、複数のループ溝にそれぞれ転動自在に収容された多数のボールと、保持器が嵌合されると共にその保持器との間で多数のボールをループ溝に沿って移動可能に保持する筒体と、を備えている。ループ溝は、保持器の外面側に全周に亘って開口されると共にその保持器の内面側において軸方向に直線状に延在された内側開口部を有し、筒体の保持器の軸方向外側に、潤滑剤を保持した潤滑部材を設けたことを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本出願のボールブッシュによれば、多数のボールを保持する保持器の軸方向外側に、潤滑剤を保持した潤滑部材を設ける構成とした。そのため、軸部材との間に生じる摺動摩擦抵抗を長期間に亘って軽減させることができ、軸部材を長期間に亘ってスムースに摺動させることができると共に、摺動面に付着されたゴミやホコリ等を払拭して、摺動面から内部にゴミ等が入り込むのを防止し又は抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のボールブッシュの第1の実施例を示すもので、上半分を断面した説明図である。
【図2】図1の上半分を断面した説明図である。
【図3】本発明のボールブッシュに係る筒体の第1の実施例を示す中央部を断面した説明図である。
【図4】本発明のボールブッシュに係る保持器の第1の実施例を示すもので、図4Aは正面図、図4Bは図4AのX−X線断面図である。
【図5】本発明のボールブッシュに係る封止部材の第1の実施例を示すもので、図5Aは中央部縦断面図、図5Bは正面図、図5Cは図5Aの要部を拡大した断面図である。
【図6】本発明のボールブッシュの第2の実施例を示すもので、上半分を断面した説明図である。
【図7】本発明のボールブッシュの使用状態の第1の実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
筒体の内周側で保持器の軸方向外側に、潤滑剤を保持する潤滑部材を配置する。これにより、潤滑剤保持部材に保持された潤滑剤を軸部材に塗布して摺動面を潤滑し、軸部材との間に生じる摺動摩擦抵抗を低減できると共に、ゴミやホコリ等がボールブッシュ内に入り込むのを防止し、軸部材のスムースで軽快な摺動を長期間に亘って確保できるようにする。
【実施例1】
【0015】
図1に示す本発明の第1の実施例に係るボールブッシュ1は、筒体3と、保持器4と、多数のボール5と、潤滑部材6等によって構成されている。筒体3は円筒状をなしており、この筒体3の中心部に貫通穴7が軸方向へ貫通するように設けられている。この貫通穴7に保持器4が所定の隙間をあけて嵌合されている。保持器4は、略円筒状をなしており、この保持器4に複数のループ溝8が設けられている。保持器4のループ溝8には多数のボール5が転動自在に収容されている。この保持器4には軸部材9が摺動自在に挿通され、筒体3に装着される潤滑部材6によって軸部材9の潤滑がなされる。
【0016】
図3に示すように、筒体3は、薄肉の円筒体からなる筒体部3aと、この筒体部3aの軸方向の一端に設けたフランジ部3bとを有している。フランジ部3bは、筒体部3aの貫通穴7の中心を通る中心線に対して垂直をなす半径方向外側へ突出するように形成されている。このフランジ部3bの平面形状は、四角形として形成できるが、円形であってもよく、また、六角形や八角形その他の形状とすることもできる。フランジ部3bには、このボールブッシュ1を他の装置等に取り付けるための取付穴11が設けられている。この実施例の取付穴11は、丸形の頭部が付いた取付ネジに対応した座付き穴として形成されている。しかしながら、取付穴11は、取付座のない普通の通し穴であってもよいことは勿論である。
【0017】
筒体3の貫通穴7は、軸方向の内側に位置するボール接触部7aと、このボール接触部7aの軸方向両側に設けた潤滑剤保持部7b,7bとからなっている。ボール接触部7aと各潤滑剤保持部7bとの間には、周方向に連続する第1の環状溝12がそれぞれ設けられている。また、潤滑剤保持部7bの開口端の近傍には、周方向に連続する第2の環状溝13がそれぞれ設けられている。ボール接触部7aには、4つの突条部15が周方向へ等間隔に設けられている。各突条部15は、貫通穴7の中心線と平行をなすように軸方向へ直線状に延在されており、その長手方向の両端部には、端部側の直径を徐々に大きくしたテーパ部15aがそれぞれ設けられている。このような構成を有する筒体3の材質としては、例えば、ベアリング鋼(SUJ2)が好適であるが、その他の材料を用いることができることは勿論である。
【0018】
図4A,4Bに示すように、保持器4は、肉厚が周方向において変化している略円筒状をなす筒状部材として形成されており、その中心部を中央穴16が貫通している。この保持器4には、無端状に連続したループ溝8が、周方向に等間隔隔てて4箇所に設けられている。このループ溝8は、3箇所以下に設定してもよく、また、5箇所以上に設ける構成とすることもできる。各ループ溝8は、保持器4の軸方向に延在され且つ周方向へ所定の間隔をあけて平行に設けられた2つの直線部17a、17aと、その2つの直線部17a、17aの両端間を円弧状に連通する2つの曲線部17b、17bとからなるトラック形状に形成されている。
【0019】
各ループ溝8は、保持器4の外面側には、その全周に亘って開口されている。このループ溝8の一部には、内面に開口される内側開口部17が設けられている。内側開口部17は、ループ溝8の一方の直線部8aをその直線方向に貫通すると共に、その両端部は曲線部8bにまで到達しており、ループ溝8の略半分を占めている。この内側開口部17を通過する間だけボール5の一部は、保持器4の内面から中央穴16内へ突出するように構成されている。また、保持器4の外周面には、筒体3に対する保持器4の回り止めの役割りを果たす突条18a,18bが、ループ溝8と同数の4箇所に設けられている。保持器4の材質としては、例えば、POM(ポリアセタール)が好適であるが、その他のエンジニアリングプラスチックを用いることができることは勿論である。
【0020】
このような構成を有する保持器4が、4つのループ溝8にそれぞれ所定数のボール5を収容した状態で、筒体3の筒体部3aに挿入されている。この保持器4は、筒体部3aの内面に設けた2つの第1の環状溝12に、仕切り部材の一具体例を示す止め輪21をそれぞれ装着することにより、筒体3からの軸方向への抜け出しの防止が図られている。この2つの止め輪21によって保持器4の位置決めがなされ、保持器4に保持されている多数のボール5が、ボール接触部7aの所定位置に配置される。止め輪21としては、例えば、リング穴用の丸R形止め輪を用いることができる。
【0021】
筒体3の貫通穴7の各潤滑剤保持部7bに、潤滑部材6がそれぞれ装着されている。潤滑部材6としては、例えば、フェルトリングを適用することができる。フェルトリング6は、リング状に形成したフェルト材6aを、これより少し大きく形成した金属製リング6bに接合して一体に構成したものである。フェルト材6aの内周面を軸部材9の外周面に接触させることにより、そのフェルト材6aに含浸させた潤滑剤を軸部材9の外周面に塗布する。このフェルト材6aに含浸させる潤滑剤としては、例えば、タービン油、スピンドル油、摺動面油等を用いることができる。また、フェルト材等の保持部材に含浸させることができる場合には、グリース(例えば、リチウム系グリース、ウレア系グリース等)を用いることもできる。
【0022】
潤滑部材6は、この実施例では、1箇所の潤滑剤保持部7bに対して2個のフェルトリング6を配置する構成とした。しかしながら、フェルトリング6は、1箇所に1個だけ設けてもよく、また、3個以上を直列に並べて配置する構成とすることもできる。図1に示すように、フェルトリング6の外側に封止部材22を配置し、フェルトリング6が潤滑剤保持部7bから抜け出すのを防止する。
【0023】
封止部材22は、図5A〜5Cに示すような構成を有している。即ち、封止部材22は、C字状に形成されたベースリング22aと、このベースリング22aの一方の端面側を覆うシール材22bとを有している。シール材22bは、ベースリング22aの全体を覆うように無端状に連続して形成されており、ベースリング22aに切欠き部23を設けることによって第2の環状溝13に対する着脱操作を容易にしている。シール材22bの外周縁には、筒体3に係合するための掛け止め用のリング状をなす環状係合部24が設けられている。また、シール材22bの内周縁には、軸部材9に付着した油やゴミ等を払拭するためのリング状をなす環状払拭部25が設けられている。
【0024】
封止部材22のベースリング22aの材質としては、例えば、炭素工具鋼(SK3等)等が好適であるが、その他の材料を用いることもできる。また、シール材22bとしては、例えば、ニトリルゴム(NBR)が好適であるが、その他のゴム或いはプラスチックを用いることもできる。
【0025】
このような構成を有するボールブッシュ1は、例えば、次のようにして組み立てることができる。まず、保持器4に設けた4つのループ溝8に、そのループ溝8を埋め尽くすように所定数のボール5を収容する。この際、各ループ溝8にグリースを塗布しておくことにより、そのループ溝8からボール5が抜け出すのを防止することができる。次に、各ループ溝8にボール5を保持した保持器4を、筒体3の貫通穴7内に挿入し、ボール接触部7aに位置させる。そして、保持器4の軸方向外側に位置している2つの第1の環状溝12に、止め輪21をそれぞれ装着する。これにより、保持器4を筒体3に対して所定位置に位置決めして保持することができる。
【0026】
次に、筒体3の軸方向両側に設けた潤滑剤保持部7bに、それぞれ所定数のフェルトリング6を装着する。この際、フェルトリング6のフェルト材6aには、予め所定の潤滑剤を含浸させておくようにする。その後、フェルトリング6の軸方向外側に位置している2つの第2の環状溝13に、潤滑剤保持部材22をそれぞれ装着する。このとき、潤滑剤保持部材22は、ベースリング22a側から挿入してシール材22bを外側に向ける。これにより、潤滑剤保持部材22によってフェルトリング6が所定位置に保持され、ボールブッシュ1の組み立てが完了する。
【0027】
このようにして組み立てられるボールブッシュ1は、例えば、図7に示すような装置に用いることができる。図7には、搬送対象物30の通過を制御する搬送制御装置31の概略構成を示している。この搬送制御装置31は、搬送対象物30を載置して水平方向に移動させるコンベア機構部32と、そのコンベア機構部32を保持するフレーム等を有する装置本体部33と、その装置本体部33に取り付けられた搬送制御部34等によって構成されている。
【0028】
搬送制御部34は、装置本体部33のフレームに固定されている断面形状がコ字状をなす固定フレーム35と、この固定フレーム35に固定されている流体圧シリンダ36及び2つのボールブッシュ1,1と、搬送対象物30の通過を阻止するストッパ板37等を備えている。固定フレーム35は、コンベア機構部32の上側に掛け渡すように形成された門形の部分からなっており、その上面部35aを搬送面から所定の高さに設定することにより、その内側に搬送対象物30が通過可能な大きさの空間部38が設けられている。流体圧シリンダ36は、空気等の気体を動力伝達媒体とする空気圧シリンダであってもよく、また、潤滑油等の液体を動力伝達媒体とする液圧シリンダであってもよい。
【0029】
固定フレーム35の上面部35aの長手方向の略中央部の上面に、流体圧シリンダ36が固定されていて、その作動軸41が上面部35aを貫通して搬送面側に突出されている。2つのボールブッシュ1,1は、流体圧シリンダ36を挟んで両側に配置されており、上面部35aの上面に複数の固定ねじ42によって固定されている。各ボールブッシュ1に保持されている軸部材であるロッド9は、同じく上面部35aを貫通して搬送面側に突出され、作動軸41と平行に延在されている。これら作動軸41及び2本のロッド9,9の先端部にストッパ板37が固定されている。
【0030】
ストッパ板37には、作動軸41の先端に設けたねじ部41aが挿通される穴と、各ロッド9,9の先端に設けたねじ部9aが挿通される穴とが設けられている。これらの穴に各ねじ部9a,41aが挿通されていて、各ねじ部9a,41aに螺合されたナット44により締め付けられて、ストッパ板37が作動軸41及びロッド9と一体的に固定されている。
【0031】
このような構成を有する搬送制御装置31の作動は、例えば、次のようなものである。この搬送制御装置31は、搬送される搬送対象物30を、その搬送の途中で停止させて搬送経路外に取り出すためのものであり、その際には、ストッパ板37を搬送経路上に突出させて搬送対象物30の移動を阻止する。
【0032】
搬送されてきた搬送対象物30の搬送を阻止する場合には、まず、流体圧シリンダ36を作動し、その作動軸41を載置面側に突出させてストッパ板37を搬送対象物30の移動軌跡上に突出させる。このとき、ストッパ板37の長手方向の両側にはボールブッシュ1のロッド9がそれぞれ固定されており、それらのロッド9が作動軸41と平行をなして一体的に平行移動される。そのボールブッシュ1は、ロッド9との間の摩擦抵抗を軽減させ、ロッド9の滑らかでスムース動作を確保するため、流体圧シリンダ36の動作を確実なものとすることができる。
【実施例2】
【0033】
図6に示す本発明の第2の実施例に係るボールブッシュ2は、前記実施例における筒体3からフランジ部3bを取り除き、フランジの無いタイプのボールブッシュとして構成したものである。この図6に示すボールブッシュ2が前記実施例で示したボールブッシュ1と異なる点は、筒体の形状のみであり、その他の構成は同一である。そのため、同一部分には同一の符号を付して、重複した説明を省略する。
【0034】
ボールブッシュ2の筒体50は、前記実施例で示したボールブッシュ1の筒体3からフランジ部3bを取り除いたものであり、その他の形状及び構成は筒体3と同様である。即ち、筒体50は、薄肉の円筒体からなる筒体部のみを有しており、その内側の貫通穴7に、軸方向の内側に位置するボール接触部7aと、そのボール接触部7aの軸方向両側に位置する潤滑剤保持部7b,7bとを設けている。その他の構成、及び作用・効果は前記実施例と同様であり、かかる構成とすることによっても前記実施例と同様の効果を得ることができる。
【0035】
以上説明したように、本発明によれば、多数のボールを保持する保持器の軸方向外側に、潤滑剤を保持した潤滑部材を設け、その潤滑部材で軸部材を潤滑する構成とした。そのため、潤滑部材で潤滑剤の保持力を増加させ、軸部材との間に生じる摺動摩擦抵抗を長期間に亘って軽減させることができ、軸部材を長期間に亘ってスムースに摺動させることができる。しかも、軸部材に付着したゴミやホコリ等を払拭して、摺動面からボールブッシュの内部にゴミ等が入り込むのを防止し又は抑制することができる。
【0036】
また、潤滑部材の外側に封止部材を配置する構成としたことにより、潤滑部材が筒体から抜け出すのを確実に防止することができる。更に、保持器と潤滑部材との間を仕切り部材で仕切る構成としたことにより、潤滑部材の摩耗粉等が保持器側に侵入するのを防止することができ、その摩耗粉等によってボールの移動が害されるという不具合の発生を効果的に防止することができる。
【0037】
本発明は、前述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、前記実施例では、搬送制御装置に適用した例について説明したが、軸部材のガイドに使用して軸部材による軸方向への移動をスムースにするためにボールブッシュを使用する各種の装置に適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0038】
1,2…ボールブッシュ、 3,50…筒体、 3a…筒体部、 3b…フランジ部、 4…保持器、 5…ボール、 6…潤滑部材、 6a…フェルト材、 7…貫通穴、 7a…ボール接触部、 7b…潤滑剤保持部、 8…ループ溝、 8a…直線部、 8b…曲線部、 9…軸部材、 12…第1の環状溝、 13…第2の環状溝、 17…内側開口部、 21…止め輪(仕切り部材)、 22…封止部材、 22b…シール材、 30…搬送対象物、 31…搬送制御装置、 34…搬送制御部、 36…流体圧シリンダ、 37…ストッパ板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無端状に連続したループ溝が設けられ且つ軸部材が挿通される筒状の保持器と、
前記複数のループ溝にそれぞれ転動自在に収容された多数のボールと、
前記保持器が嵌合されると共に当該保持器との間で前記多数のボールを前記ループ溝に沿って移動可能に保持する筒体と、を備え、
前記ループ溝は、前記保持器の外面側に全周に亘って開口されると共に当該保持器の内面側において軸方向に直線状に延在された内側開口部を有し、
前記筒体の前記保持器の軸方向外側に、潤滑剤を保持した潤滑部材を設けた
ことを特徴とするボールブッシュ。
【請求項2】
前記潤滑部材は、リング状に形成したフェルト材を有するフェルトリングである
ことを特徴とする請求項1記載のボールブッシュ。
【請求項3】
前記筒体に、前記潤滑部材の軸方向外側に配置され且つ当該潤滑部材を当該筒体内に保持する封止部材を設けた
ことを特徴とする請求項1記載のボールブッシュ。
【請求項4】
前記筒体に、前記保持器と前記潤滑部材との間を仕切る仕切り部材を設けた
ことを特徴とする請求項1記載のボールブッシュ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−21724(P2011−21724A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169280(P2009−169280)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(591024269)株式会社エイエスケイ (2)
【Fターム(参考)】