説明

ボール弁

【課題】ボール状弁体の回転の際の摺動抵抗を軽減して、より小さい出力のモータでボールを回転させることを可能にし、互いの摩耗も少なくすることで弁閉時の漏れを減らし、製造コストを低減することができるボール弁を提供する。
【解決手段】弁ケース20には、内部に弁室21が形成され、流入口22と流出口23,24とが設けられている。内部に流路11,12が形成されているボール状弁体10が弁室21内に回転可能に収納されていて、対称軸が回転軸に対して偏心している。ボール状弁体10が押し付けられる弁座31,32は、ボール状弁体10の回転に応じて、レール41〜44によって、案内されて移動可能となっているので、ボール状弁体10の偏心に起因して膨らんだ部分10aが接触して回転するときに移動して、強い押し付けが回避される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボール弁に関し、特に、球状(ボール状)の弁体が弁室内で回転可能に収納されて、流路を切り換える切換弁としても使用可能なボール弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、切換弁として用いられるボール弁であって、例えばユニットバス用のものとして四方切換弁が知られている。
【0003】
図7は、特許文献1に開示されているユニットバスの一例を、概略的に図示したものであり、該ユニットバスは、通常、給湯ユニットA、浴槽B、四方切換弁V及びフィルタC等の機器を備え、該各機器を管路で接続した構造を有している。また、ユニットバスの運転においては、浴槽Bの湯水を、給湯ユニットA、フィルタC、四方切換弁Vを順次通じて浴槽Bに戻るメイン循環路(湯水の流れを太い一点鎖線矢印(I)で示す)を用いて循環させ、給湯ユニットAで湯温を調節して浴槽B内の湯温を入浴適温に保持している。
【0004】
フィルタCは、該メイン循環路(I)を循環する湯水を洗浄するためのものであるが、湯水を循環しているとフィルタCに湯垢や塵挨等が付着してしまい、不衛生になるおそれがある。このため定期的にフィルタCを洗浄する必要があり、その場合は、四方切換弁Vを切換えて、湯水を浴槽Bに戻すことなく、四方切換弁Vから給湯ユニットAに導き、該給湯ユニットAで湯水を昇温させながらフィルタCを介して四方切換弁Vに導くように循環させる。これにより、フィルタCは、高温の湯水を所要時間循環させることで洗浄される。洗浄が終了すると、四方切換弁Vを切換えて、フィルタCからの洗浄湯水を四方切換弁Vを介して外部に排出する。
【0005】
四方切換弁Vは、ユニットバスの湯水をメイン循環路、洗浄用循環路及び外部排出の三ルートに切換・変更できるように構成されており、一つの流入口101と三つの流出口、即ち、洗浄用流出口102、戻り用流出口103及び排出用流出口104を備えている。
【0006】
図8は、四方切換弁Vの一例を縦断面図で示したものであり、該四方切換弁Vは、弁ケース112と、当該弁ケース112の上部に配置されたギャードモーター120、弁ケース112の弁室115内に配置されたボール状弁体130と、該ボール状弁体130を弁室115内に保持するために、弁ケース112の左側面開口部115aにその螺合部136aで螺入される押さえシート136と、左側面開口部115aに取り付けられた弁カバー113を備えている。弁ケース112は、下部に一つの流入口101と側部に二つの流出口104,102を形成しており、洗浄用流出口としての流出口102(図8には図示なし)と、排出用流出口104とは90度位相を異にして配置されている。更に、弁カバー113にも、一つの流出口(戻り用流出口)103が形成されている。
【0007】
ボール状弁体130は、その中心部付近で合流する断面円形の流入路131と流出路132とが穿設されており、流入路131は、常時、流入口101に接続していると共に、流出路132は、ボール状弁体130の回転位置に応じて、三つの流出口102,103,104に択一的に接続するように配置されている。
【0008】
ボール状弁体130は、ギャードモーター120により弁軸125を介して回転駆動され、弁ケース112の流入口101から流入した湯水は、ボール状弁体130の流入路131から流出路132へと導かれ、ボール状弁体130を回転して切換変更した所定の位置により、三つの流出口102,103,104に択一的に接続されて、メイン循環路(I)、洗浄用循環路(II)、若しくは、外部排出(III)の三ルートのいずれかのルートに流れる。このように、四方切換弁Vは、ユニットバスの各循環路の切換手段として機能する。更に、四方切換弁Vにおいては、弁室115内のボール状弁体130と、弁ケース112及び押さえシート136との接触部分に、複数のパッキン141,142が介在されており、当該接触部分で弁室115から三つの流出口102,103,104の各々、あるいは該三つの流出口102,103,104の各々から弁室115への湯水の漏洩を防止している。なお、符号114は流出口103の管ホルダの取付ボルトである。
一般のボール型三方弁は、弁にシートを押し付けて固定し、閉弁側の漏れを防止している。
【0009】
上記の一般的な切換弁としてのボール弁は、ボール状弁体の回りからの漏れを低減させるために、フッ素樹脂から形成される弁シートをゴムやバネなどで弁体に押し付ける構造となっている。そのため、組立時に強い力で弁体を弁シートに押え付ける必要がある。こうしたボール弁において流路を切り換えるには、弁シート面に強く押し付けられているボールをモータで回転させている。強い押付け力に基づく摩擦力に抗してボールを回転させる必要があるので、モータには高い出力トルクが求められ、駆動毎にモータへ負荷となっていた。
【0010】
また、こうしたボール弁においては、弁シートに強く押し付けられているボールを回転させるので、弁体回転の際の摺動抵抗が大きく、ボールや弁シートの摺動面に摩耗を生じ易いという問題がある。耐摩耗性の材料、例えばフッ素樹脂は高価であり、ボール弁の生産コストを上昇させる。また、モータとしては出力の大きいものを用いる必要があり、必然的にボール弁が大型化する、という問題がある。
【0011】
このように、従来のボール弁においては、ボールと弁シートとが強い力で押しつけられたままの状態でボールを回動することによって、ボールと弁シートとの押し付け面を擦っていることが、出力の大きなモータを必要とし且つ押付け面の摩耗の原因になっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第4286561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この発明の目的は、ボール状弁体の回転の際の摺動抵抗を軽減することができるボール弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題(目的)を解決(達成)するため、この発明によるボール弁は、流入口と流出口とが設けられており且つ内部に弁室が形成されている弁ケースと、前記弁室内に回転可能に収納されていて内部に流路が形成されているボール状弁体と、前記流入口と流出口とに関連して配置されており前記ボール状弁体が押し付けられる弁座とを備えており、前記ボール状弁体の回転に応じて、前記流入口と前記流出口とが、前記ボール状弁体の前記流路を通じて連通される状態と前記弁座に押し付けられて遮断される状態とに切り換えられるボール弁であって、前記ボール状弁体は、その中心がその回転軸に対して偏心しており、前記弁座は、前記弁室に対して、前記ボール状弁体の偏心に起因して膨らんだ部分が接触して回転するときの接線方向に移動可能に案内されていることを特徴としている。
【0015】
このボール弁によれば、ボール状弁体の中心と、ボール状弁体を回転させる弁軸の回転軸(すなわちボール状弁体の回転軸)は偏心した構造であるから、弁体が所定の流出口を閉鎖した状態では該弁体は弁座を適度な押し付け力で押し付けて弁漏れが防止される。
一方、上記閉鎖状態からの弁体の回転開始時(流路切換開始時)は、弁座は弁体の回転と共にレールのような案内構造によって案内移動され、その後、弁体から離脱する。そして他の流出口を閉鎖する段階においては、弁体は当該他の流出口の弁座に徐々に接近し、これと接触した後、弁座は弁体と共に前記案内構造によって案内移動され、最終的には該弁座は弁体により適度な力で押し付けられて当該他の流出口が閉鎖される。
【0016】
このように、流路の切換時においては、弁体は弁座を強く押し付けた状態で該弁座と摺動することがなく、弁がロックしない。またこの結果、当該弁体の回転に要するトルクが抑えられ、モータに負荷が掛かりにくくなる。また、常時、弁座面で摺動しないので、傷が付きにくい構造となる。更に、回転トルクが小さくて良いので、弁体のアクチュエータとしてステッピングモータを用いることができ、当該弁体の回転位置検出手段等を設けることなく高精度な弁位置制御が可能となり、またボール状弁体と弁軸と樹脂等により一体形成した構造を用いることも可能となる。
【発明の効果】
【0017】
この発明は、上記のように構成されているので、流路切換時にボール状弁体を弁座に対して必要以上の強い力で押し付けることが無い。また、より小さい出力のモータでボールを回転させることを可能にして、弁体及び弁座間の摩耗も少なくし、製造コストを低減することができるボール弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るボール弁の第1実施例を示す縦断面図である。
【図2】図1に示すボール弁のD−D断面図である。
【図3】図1に示すボール弁の動作説明図であり、該ボール弁の横断面図である。
【図4】本発明に係るボール弁の第2実施例を示す縦断面図である。
【図5】本発明に係るボール弁の第3実施例を示す縦断面図である。
【図6】図5に示すボール弁の動作説明図であり、該ボール弁の横断面図である。
【図7】切換弁が適用されているユニットバスの一例を示す概略図である。
【図8】従来の四方切換弁の一例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付した図面に基づいて、この発明によるボール弁の実施例を説明する。図1は本発明に係るボール弁の第1実施例を示す縦断面図、図2は図1に示すボール弁のD−D断面図、図3は図1に示すボール弁の動作説明図である。
【0020】
図1及び図2に示すボール弁1は、三方切換弁を構成しており、内部に弁室21を形成している弁ケース20と、弁室21内に回転可能に配置されている球体状の弁体(ボール)10と、弁体10を回転駆動するために弁ケース20の上部に取り付けられているアクチュエータとしてのステッピングモータ25とを有している。弁体10は、その弁軸13が弁ケース20に設けられているシール機能を備えた軸受26によって回転可能に支持されている。弁体10には流入路11と流出路12とからなるL形の流路が形成されている。弁ケース20は、上側ケース20aと下側ケース20bとが互いに結合されて一体のケース20に構成されており、下側ケース20bには流入口22が形成されると共に、上側ケース20aには第1流出口23と第2流出口24の管部が互いに対向して形成されている。流入口22と第1流出口23又は第2流出口24とは、弁体10を弁軸13によって回転させることによって、流路11,12を通じて選択的に連通可能に構成されている。
【0021】
ボール弁1においては、球体状の弁体10の中心(球の中心)Oは、弁軸13の回転軸P(すなわち弁体10の回転軸でありD−D線上にある)からオフセット(偏心)している。換言すれば、弁体10の対称軸はその回転軸Pからオフセットしている。したがって、弁体10の弁軸13の回転軸Pから遠い部分10aが弁軸13の回転軸Pの回りに振れ回り、この部分10aが後述する弁座と当接してシールする。
【0022】
弁室21には、第1流出口23と第2流出口24とに対応して、それぞれの流出口23,24が開く弁ケース20の環状段部20cと環状段部20dの位置において、円環状の第1弁座31と第2弁座32とが配設されている。第1弁座31と第2弁座32との環状内部のスペースがそれぞれ第1流出口23と第2流出口24とに通じている。弁体10の振れ回り部分10aが第1弁座31又は第2弁座32に当接するときに、それぞれ第1流出口23と第2流出口24とに通じる流路を遮断する。
【0023】
第1弁座31と第2弁座32には、弁体10に向かう側に、弁体10と接触可能な環状のテーパ面(凹状の球面の一部)33,34が形成されており、また、弁体10に向かう側とは反対側に環状の凸部35,36が形成されている。環状の凸部35,36は、第1流出口23又は第2流出口24が弁室21に開く開口の周りを余裕を持って取り囲んでおり、即ち該開口の直径よりも大きな直径を有しており、環状段部20cと環状段部20dとに接触又は接触可能である。
【0024】
第1弁座31と第2弁座32とには、上側ケース20aの上底面に対向する部位に弦状に溝37,38が形成されており、下側ケース20bの下底面に対向する部位に弦状に溝39,40が形成されている。また、上側ケース20aの上底壁には、溝37,38に対応して上側レール41,42が設けられており、下側ケース20bの下底壁には、溝39,40に対応して下側レール43,44が設けられている。したがって、上下の各側のレール41,43と、レール42,44とは、互いに平行で且つ対向して位置されていて、第1弁座31と第2弁座32とを環状段部20cと環状段部20dとにおいて、所定の姿勢に保持している。
【0025】
第1弁座31は、弁室21内において、溝37,39にそれぞれレール41,43が嵌入していることにより、レール41,43に沿って移動可能である。図2に示すように、第1弁座31は、レール41,43に沿った左右方向に、隙間L1,L2だけ移動可能となっている。第2弁座32の場合も同様であり、溝38,40にそれぞれレール42,44が嵌入していて、左右方向に、隙間L1,L2だけ移動可能となっている。第1弁座31と第2弁座32の環状の凸部35,36は、第1弁座31(第2弁座32)がレール41,43(レール42,44)に沿ってスライドしたときにも、第1流出口23又は第2流出口24の開口を取り囲むことができる。
【0026】
前記第1弁座31には弦状の溝37及び39が形成され、また前記第2弁座32には弦状の溝38及び40が形成されるものとしたが、本発明はこれのみに限定されることはなく、弦状の溝37及び39、並びに38及び40を形成する代わりに、該弦状の溝37及び39、並びに38及び40を含むように、第1弁座31及び第2弁座32に、それぞれ1つの環状の溝を形成しても良い。すなわち、この環状の溝に上側レール及び下側レールを嵌入させることにより、第1弁座31及び第2弁座32を弁室21内に取り付けても良い。
このように各弁座31、32に対して、それぞれ1つの環状の溝を形成すれば、該第1弁座31及び第2弁座32を上側レール及び下側レールに取り付ける際、該弁座31及び32の取付方向を意識することになく該取り付けを行うことが出来るので、その作業が容易である。
【0027】
また、図3に関して後述するように、弁体10の回動に応じて各弁座31、32が上側レール及び下側レールに沿って移動するが、その移動の際、各弁座31、32自身も回転が可能となる。したがって、上側レール及び下側レールに対する環状溝の接触部も弁体10の回転毎に変わり、該環状溝の偏摩耗が防止され、当該ボール弁の高耐久性を得ることができる。
さらに、第1弁座31及び第2弁座32は、円環状であるものとしたが、本発明はこれのみに限定されることはなく、その外側の輪郭形状は矩形であっても良い。
【0028】
図3に、ボール弁1の動作が説明されている。図3には、図1及び図2の主要な要素等についてのみ符号を付している。また図3においては、第1弁座31及び第2弁座32には、前述したように弦状の溝37及び39、並びに弦状の溝38及び40の代わりにそれぞれ1つの環状の溝が形成された様子が示されている。
ボール弁1は、図3において(1)→(2)→(3)の順に動作する。流体は、下側の流入口22から流入する。(1)の状態では、弁体10の回転軸Pから遠い部分10aが第1弁座31側に向いている。弁体10は、球の中心O(対称軸)が弁体10を回転させる回転軸Pに対して偏心している。したがって、弁体10を回転させると、該弁体10の表面は、同心球面上で回らないで、カム状に膨らんで回ることになる。そして弁座に当たる面が弁体10の回転に伴って動く。即ち、弁体10の回転に伴って、弁座31、32の座面(テーパ面33,34)に弁体10の球面が接近又は離間する。
【0029】
図3(1)に示された状態(第1流出口23の閉鎖状態)では、該弁体10の流路(流入路11及び流出路12)が形成されていない部分が第1弁座31のテーパ面33に強く押し付けられるので、確実なシールが形成され、第1流出口23側の遮断された流路には流体が流れることはない。したがって、流体は、流入口22から第2流出口24へと流れる。弁体10は、第2流出口24側では、第2弁座32の座面であるテーパ面34からは離間しているので、流体は弁体10の裏側へと回り込むことができる。しかしながら、第1流出口23側では第1弁座31が環状段部20cと弁体10との間をシールしているので、回り込んだ流体が第1流出口23側に漏れることはない。
【0030】
図3(1)の状態から弁体10が矢印の方向に回転され始めると、第1弁座31が弁体10の回転に引きずられてレール41,43(図3においては図示せず)の案内によって、図の上側に向かって移動する。この移動は弁室21の内壁との隙間以上に移動することはない。その後、弁体10は第1弁座31から離れると共に第2弁座32に徐々に接近していく。図3(2)は弁体10の中間開度の状態を示す図であり、該弁体10は、第1弁座31に対しても、第2弁座32に対してもフリーな状態にある。
【0031】
図3(2)に示す状態から弁体10がさらに回転すると、該弁体10は第1弁座31からはさらに離れると共に、第2弁座32にさらに接近する。そして弁体10が第2弁座32に接触すると、該第2弁座32は、弁体10の回動に引きずられてレール42、44(図3においては図示せず)の案内によって図の下側に移動(弁体10の回転方向に倣った接線方向にスライド)し、図3(3)に示す状態(第2流出口24の閉鎖状態)に移行する。
すなわち、弁体10の回動によって球面の部分10aが膨らんで回ることにより、当該部分10aが第2弁座32のテーパ面34で定められる座の中心に入り込み、この動作によって流入口22と第2流出口24との連通をシール(遮断)する。
【0032】
このように、第1流出口23又は第2流出口24の閉鎖時においては、弁体10は第1弁座31又は第2弁座32を強く押し付けた状態になるが、流路切換の際には弁体10は第1弁座31及び第2弁座32から離れた状態で回転するので、その摺動抵抗を軽減することができ、シール面の摩耗を回避することができる。
【0033】
弁体10の回転開始時及び回転終了時には、第1弁座31及び第2弁座32は、前記環状の溝(あるいは弦状の溝37及び39、並びに38及び40)でレール41及び43、並びに42及び44と摺動することになるが、当たり面積を大きく取るなどの面圧を設計にて調整できるので、この部分で摩耗が進むこともあまりない。さらに前述のように、弦状の溝の代わりに環状の溝とすれば前記摩耗はさらに抑えられる。
【0034】
このように、このボール弁1では弁体10と弁座31,32との間に摺動部分が少ないので、長期に渡って使用しているときにも、ボール弁が摺動部分の摩耗によって漏れが生じるのを回避することができる。
【0035】
弁体10を回転させるアクチュエータとして、ステッピングモータ(パルスモータ)25が用いられている。このボール弁1では、弁体10の回転の際に該弁体と弁座とが相対摺動をすることが少なく、したがって、モータの負荷が小さいので、弁体10の駆動用としてステッピングモータ25を用いることができる。ステッピングモータ25は、そのモータ特性として、出力軸の回転位置を確実に出すことができるモータであり、回転位置を正確に出すことによって、最も押し付け力が大きくなりシール効果の高い位置(膨れ回る部分10aの位置)を、各弁座31,32のテーパ面33,34に向けて停止させることができる。例えば、DCモータの場合にはモータ運転時間(秒数)で位置制御しているので、位置の制御が曖昧であり、また場合によっては弁体の回転位置検出手段が必要だったが、ステッピングモータ25を使用することで該検出手段を用いることなく位置制御を高精度に行うことができる。更に、このボール弁1においては、大きな摩擦力に抗して回転させる必要がないので、小さい出力トルクのステッピングモータ25で作動可能である。大きいトルクで作動する従来のものは、例えば、軸が折れる等の、強度がもたないという不具合があるので、別体に製作したものを結合させる構造とする必要があった。このボール弁1では、構造的にも、金属製の弁軸13と弁体10(例えばPPS樹脂)とを例えばインサート成形で一体化することができるという利点がある。なお、弁座31,32には、例えばフッ素系の樹脂が用いられる。
【0036】
次に、図4を参照して、本発明によるボール弁の第2実施例について説明する。図4は本発明に係るボール弁の第2実施例を示す縦断面図である。図4に示すボール弁は、図1〜図3に示す第1実施例のボール弁1と同じく三方弁構造であるが、第1弁座31及び第2弁座32の支持構造が異なる以外、第1実施例と同じであるので、同等の要素等には同じ符号を用いることにより、再度の詳細な説明を省略する。
【0037】
図4に示すボール弁50においては、第1弁座31及び第2弁座32をレールによってスライド可能に案内するために、第1実施例では第1弁座31及び第2弁座32に溝を形成していたのに代えて、第1弁座31及び第2弁座32の端面を利用している。即ち、第1弁座31及び第2弁座32においては、環状の凸部35,36が形成されている端面とは反対側の端面51,52が、レール41〜44に沿わせて配置されている。レール41〜44は第1実施例の場合と同様に、紙面に垂直な方向に延びている。こうした構造によれば、第1弁座31及び第2弁座32に溝37〜40(あるいは環状の溝)を形成する必要がなく、また、第1弁座31及び第2弁座32の弁室21内への組付け作業性も簡素化されるので、第1弁座31及び第2弁座32の製造コスト、延いてはボール弁の製造コストの低減を図ることができる。
【0038】
次に、図5及び図6を参照して、本発明によるボール弁の第3実施例について説明する。図5は本発明に係るボール弁の第3実施例を示す縦断面図であり、図6は図5に示すボール弁の動作説明図である。第3実施例は、本発明によるボール弁を二方弁として適用した例である。第3実施例は、第1実施例と比較して、流入口及び流出口の構造と、それに伴う弁の機能が異なる以外、第1実施例と同じであるので、同等の要素等には同じ符号を用いることにより、再度の詳細な説明を省略する。
【0039】
図5に示す二方弁としてのボール弁60においては、流入口61(例えば図で左側とする)と流出口62とが対向して配置されている。ボール弁60には、紙面に垂直な方向に貫通して流路63が形成されている。流入口61と流出口62とは逆の配置であっても構わない。第1弁座31及び第2弁座32とそれらのスライド構造については、第1実施例の場合と同等である。図5に示す状態では、弁体10の流路63が形成されていない部分が第1弁座31に押し付けられていて流入口61は閉塞されているが、第2弁座32に対しては、当接していない。この状態においては、弁体10は流入口61を閉塞しているので、流体はボール弁60を流れることができない。
【0040】
図6の(1)は、図5に示す状態の横断面図である。弁体10の流路63は、流入口61と流出口62に対して直交する方向を向いており、弁体10が第1弁座31に押し付けられているので、弁体10は流路を遮断している。図6の(2)は、図6の(1)に示す状態から弁体10を時計方向に90度回転させた状態を示しており、弁体10は、第1弁座31と第2弁座32とに対して押し付けられておらず、テーパ面33,34から離れており、弁体10の流路63は、流入口61と流出口62とを連通して、流体がボール弁60を流れることができる。
【0041】
この場合、弁体10が図6(1)の状態と同図(2)の状態との間の90度の範囲でのみ、正逆転される場合には、第2弁座32は不要である。図6に示す例は、(2)の状態から更に弁体10を時計方向に90度回転させて、第2弁座32を閉塞させる場合のものであり、弁体10は180度の範囲で正逆転される。
さて本発明のボール弁は、ユニットバスの湯水切り換え用として用いられるのみでなく、いかなる用途に用いられても良いことは当然である。
また本発明のボール弁は、4方弁以上の多方弁に適用されても良いことは当然である。
【符号の説明】
【0042】
1 ボール弁 10 弁体(ボール)
10a 部分
11 流入路 12 流出路
13 弁軸
20 弁ケース
20a 上側ケース 20b 下側ケース
20c 環状段部 20d 環状段部
21 弁室 22 流入口
23 第1流出口 24 第2流出口
25 ステッピングモータ 26 軸受
31 第1弁座 32 第2弁座
33,34 テーパ面(凹状の球面の一部)
35,36 環状の凸部35,36
37,38,39,40 溝
41,42 上側レール 43,44 下側レール
50 ボール弁 51,52 端面
60 ボール弁 61 流入口
62 流出口 63 流路
O 球の中心 P 弁軸(弁体)の回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口と流出口とが設けられており且つ内部に弁室が形成されている弁ケースと、前記弁室内に回転可能に収納されていて内部に流路が形成されているボール状弁体と、前記流入口と流出口とに関連して配置されており前記ボール状弁体が押し付けられる弁座とを備えており、前記ボール状弁体の回転に応じて、前記流入口と前記流出口とが、前記ボール状弁体の前記流路を通じて連通される状態と前記弁座に押し付けられて遮断される状態とに切り換えられるボール弁において、
前記ボール状弁体は、その中心がその回転軸に対して偏心しており、
前記弁座は、前記弁室に対して、前記ボール状弁体の偏心に起因して膨らんだ部分が接触して回転するときの接線方向に移動可能に案内されていること
を特徴とするボール弁。
【請求項2】
前記弁座は、前記弁室の壁面に設けられたレールによって案内されることを特徴とする請求項1に記載のボール弁。
【請求項3】
前記レールは、前記弁座に形成された溝に嵌入していることを特徴とする請求項2に記載のボール弁。
【請求項4】
前記レールは、前記弁座の端面に当接していることを特徴とする請求項2に記載のボール弁。
【請求項5】
前記ボール状弁体は、ステッピングモータによって回転駆動されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のボール弁。
【請求項6】
二つの前記流出口が、前記ボール状弁体の回転方向に隔置して配置されており、三方弁として適用されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のボール弁。
【請求項7】
前記流入口と前記流出口が、前記ボール状弁体の回転方向に隔置して配置されており、二方弁として適用されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のボール弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−29168(P2013−29168A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165944(P2011−165944)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】