説明

ポイント・オブ・ケア分析器用マイクロ流体ベースのラボオンテストカード

マイクロ流体ベースのラボオンテストカードが記載されている。テストカードは、ポイント・オブ・ケア(POC)分析器で使用される。テストカードは、サンプルを受けとり、次いでPOC分析器を用いてサンプル中の特定の物質を定量化又はカウントするように設計されている。テストカードは、複数の層を具えてもよい。一実施例では、テストカードは、濾過表面、捕捉チャネル、及び粒子検出器を具える第一分離チャンバを具えている。テストカードは、ナノワイヤーセンサを具えていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2008年12月5日出願、発明の名称「半導体集積−ナノセンサ分析システム」、シリアル番号61/120,253の米国暫定特許出願の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
血液、尿、及びその他の体液などの生体サンプル中の抗体、タンパク質、ペプチド、核酸、アプタマー、及び特定の細胞型又は物質の細胞受容体の検出は、病気の診断、治療効果の評価、及びその他の多くの目的で用いられる。現在の診断分析は、患者が医師を訪ねるか、研究所に赴く必要があるが、ポイント・オブ・ケア分析は診療室にいるかかりつけ医によって、又は自宅にいる患者によって、さらには遠隔地又は寝たきりの患者用の病院にいる医療提供者によっても実施することができる。
【0003】
マイクロ流体技術は、従来の実験技術のいくつかの欠点に取り組むために適用されてきた。例えば、マイクロ流体技術は非常に少量の試薬を必要とする。しかしながら、マイクロ流体技術は、非常に少量の生体サンプルを処理することができるが、このことが検出するべき特定の細胞又は物質の量が非常に少ないときに感度を制限することになる。
【0004】
安価で労働集約的でない生体サンプル中の特定の物質を検出するシステム及び方法が求められている。
【0005】
ポイント・オブ・ケアで迅速に結果を出すことができる生体サンプル中の特定物質を検出するシステム及び方法が求められている。
【0006】
非常に感度のよい生体サンプル中の特定物質を検出するシステム及び方法が求められている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1A】図1Aは、テストカードと共に使用するのに適したポイント・オブ・ケア(POC)分析器の一実施例を示している。
【図1B】図1Bは、テストカードと共に使用するのに適したポイント・オブ・ケア(POC)分析器の一実施例を示している。
【図2A】図2Aは、テストカードの一実施例の組み立て図と分解図を示している。
【図2B】図2Bは、テストカードの一実施例の組み立て図と分解図を示している。
【図3A】図3Aは、第一分離チャンバの拡大図を示している。
【図3B】図3Bは、孔の拡大図を示している。
【図4A】図4Aは、捕捉チャネル238の一実施例の斜視図と断面図を示している。
【図4B】図4Bは、捕捉チャネル238の一実施例の斜視図と断面図を示している。
【図5A】図5Aは、粒子検出器の一実施例の拡大図を示している。
【図5B】図5Bは、粒子検出器の一実施例の拡大図を示している。
【図5C】図5Cは、粒子検出器の別の実施例の拡大図を示している。
【図6A】図6Aは、テストカードの別の実施例の組み立て図と分解図を示している。
【図6B】図6Bは、テストカードの別の実施例の組み立て図と分解図を示している。
【図7A】図7Aは、テストカードの別の実施例の組み立て図と分解図を示している。
【図7B】図7Bは、テストカードの別の実施例の組み立て図と分解図を示している。
【図8A】図8Aは、それぞれ第二分離層の平面と底面の拡大図を示している。
【図8B】図8Bは、それぞれ第二分離層の平面と底面の拡大図を示している。
【図9A】図9Aは、ナノワイヤセンサの一実施例の拡大図を示している。
【図9B】図9Bは、ナノワイヤセンサの応答の概略図を示している。
【図9C】図9Cは、ペプチド核酸(PNA)とメルカプトエタノールの混合自己組織化単分子膜(SAM)の概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1A−1Bは、テストカード200と共に使用するのに適したポイント・オブ・ケア(POC)分析器100の一実施例を示している。POC分析器100は、カード差し込み口112、ディスプレイ114、及び制御手段116を具えている。カード差し込み口112は、テストカード200を受けるように構成されている。ディスプレイ114は、POC分析器100の状態と検査結果を示すものである。制御手段116は、POC分析器100の電源を入れたり切ったり、検査を開始したり終了したり、及びディスプレイ114を変更したりする。
【0009】
POC分析器100は、テストカード200を加圧するための、シリンジポンプ、蠕動ポンプ、又はその他の適切なポンプなどの加圧器具を具えている。POC分析器100はまた、テストカード200上の対応する電気接点と結合するように構成された電気接点を具えている。
【0010】
テストカード200は、サンプルを受けとり、次いでPOC分析器100を用いてサンプル中の特定の物質を定量化又はカウントするように設計されている。サンプルは、全血、血漿、血清、細針吸引物、骨髄サンプル、髄液、嚢胞液、関節液若しくは髄液、子宮内膜吸引サンプル、胃サンプル、眼液、卵巣液、組織培養媒体、尿素、又はその他の生体サンプル又は非生体サンプルでもよい。
【0011】
一の実施例では、テストカード200は、全血サンプルを受けて、サンプル中の循環腫瘍細胞(CTCs)のおおよその数をカウントするように構成されている。同じ実施例又はその他の実施例では、テストカード200を用いて、CD45、CD14、CD33、CD16、CD24、CD64、又はCD15細胞表面マーカーのいずれかを欠くサンプル中の白血球のおおよその数のカウントすることができる。同じ実施例又はさらに別の実施例では、テストカード200を用いて癌細胞の上皮成長因子受容体(EGFR)増幅、癌幹細胞のCD133、又は抗原特異性のT細胞受容体といった特異的表面マーカーを有する細胞のおおよその数をカウントすることができる。
【0012】
テストカード200は、プラスチック、ガラス、又はその他の適切な材料で作られている。テストカード200は、一又はそれ以上の層から構成されてもよい。エポキシ樹脂、熱接合、又はその他の適切な方法及び/又は材料を用いて、該層を互いに結合してもよい。テストカード200は、約70mm×55mm×5mmの寸法を有してもよい。テストカード200は、バッファ電源が付いており、アクセスが容易になるように配置された電気接点を有していてもよい。
【0013】
図2A−2Bは、テストカード200の一実施例の組み立て図と分解図を示している。テストカード200は、全血サンプルを受けて、CTCsのおおよその数を提供するのに適している。テストカード200は、最上層210、粒子検出層220、第一分離層230、及び廃棄物回収層260を具える層の束で構成されている。これらの層の機能性は、製造及び経費検討に応じて、組み合わせても、より少ない層又はより多い層に分けてもよい。
【0014】
第一分離層230は、サンプル入口231を具える。サンプル入口231は、約0.01mlから10mlの大量のサンプルを受けることができる。サンプル入口231は、目詰まりの可能性を最小限にする大きさである。サンプル入口231は、約0.5mmから10mm、好ましくは5mmの直径を有していてもよい。サンプル入口231は、最上層210と粒子検出層220を通って第一分離層230に到達している。
【0015】
第一分離層230はまた、サンプル入口231と流体連通する第一分離チャンバ235を具えている。第一分離層230はまた、第一分離チャンバ235と流体連通する捕捉チャネル238を具える。
【0016】
図3Aは、第一分離チャンバ235の拡大図を示している。第一分離チャンバ235は、濾過表面236を具えている。濾過表面236は、適切なサイズの複数の孔237を具えている。全血中のCTCsを検出するために、孔237は、小型の白血球、赤血球、血小板、血漿、及びその他の血液成分は通過させるが、CTCsと大型白血球は通過させないサイズ、又は約1μmから30μm、好ましくは約16μmの直径を有する。癌細胞の抗原、核酸、抗体、免疫グロブリン、その他のバイオマーカー、及び微生物の検出といった他の適用に、孔237は、約1μmの直径を有していてもよい。濾過表面236は、多孔率が50%を超えてもよい。多孔率とは、濾過表面236の孔237で構成される部分又はパーセンテージのことを言う。図3Bは、孔237の拡大図を示している。孔237は、六角形、矩形、その他の適切な形状で配置することができる。孔237は、円形、六角形、又はその他の適切な形状でもよい。孔237は、均一のサイズ又はさまざまなサイズであってもよい。濾過表面236は、約縦6mm×幅6mmで、約100,000の孔を具えている。
【0017】
サンプル入口231は、濾過表面236上方に位置している。サンプル入口231は、上記濾過表面236から第一分離チャンバ235に全血サンプルを誘導し、濾過表面236に対して実質的に垂直方向にサンプルが流れるようにしている。これが流速を増加させ、試験時間を減少させる効果をもたらしている。
【0018】
第一分離層230はまた、第一分離チャンバ235と流体連通するバッファ入口232を具える。バッファ入口232は、最上層210と粒子検出層220を貫通して第一分離層230に達している。バッファ入口232は、POC分析器100中の加圧器に流体連通することができる。バッファ入口232は、濾過表面236に実質的に平行方向において第一分離チャンバ235にバッファを誘導して、濾過表面236を横切って、捕捉チャネル238に向かって「一掃する」動作を生じさせる。バッファ入口232は、まず、実質的に濾過表面236の全側部に広がっているバッファトラフ233にバッファを導入する。バッファトラフ233がバッファでいっぱいになると、バッファが濾過表面236にあふれ出る。バッファトラフ233は、濾過表面236とおおよそ同じレベルに位置する頂部を有する。代替として、バッファ入口232が、実質的に濾過表面236の全側面にバッファを広げるバッファ拡散器を具えていてもよい。バッファ入口232は、バッファを濾過表面236を超えて移動させて、バッファ入口232から捕捉チャネル238へバッファが流れるときに濾過表面236を一掃する。
【0019】
濾過表面236は、第一分離層230の一部として形成してもよく、又別個に製造したあとに第一分離層230に結合するようにしてもよい。濾過表面236は、射出形成、マイクロリソグラフィー、光画像形成などのマイクロマシニング技術、ウェット及びドライエッチング、放射線「解凍」などの放射線ベースの処理、及びレーザー切断により製造することができる。「ウェットエッチング」とは、一般に液体成分に接触させてエッチングすることをいう。「ドライエッチング」とは、一般にガス又はプラズマに接触させてエッチングすることをいう。レーザー切断では、レーザー光の各パルスが、高分子材料のごく一部を取り除く。シンクトロンは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のようなアクリル樹脂材料でできた高分子骨格を非結合又は「解凍」させるために用いることができる指向性の高いX線照射を行う。この概念を用いて、所望のパターンを規定する吸収及び送出セクションを有するX線マスクにより定義される高分子膜の露出部分を、電離放射線によって「解凍」し、続いて溶媒浴よって発現させることができる。
【0020】
CTCsの計算に関して、体積あたりのCTCsの数が非常に少ないため、感度はサンプルの体積に対応する。テストカード200は、最大10ml又はそれより多い体積の血液サンプルを濾過することができる。このサンプルサイズは、通常、マイクロ流体装置にみられるサンプルサイズより10倍大きくてもよい。この結果、この大きいサンプルサイズが10倍より大きい感度をもたらす。
【0021】
図4A−4Bは、捕捉チャネル238の一実施例の斜視図と断面図を示している。捕捉チャネル238は、サンプル中の特異的にターゲットされた成分に選択的に結合する結合剤で処理された壁を具える。一実施例では、捕捉チャネル238は、白血球細胞に結合するCD45抗体で処理された壁を具える。他の実施例では、捕捉チャネル238は、不要成分に選択的に結合できる抗体、アプタマー、ペプチド、及び/又は小型分子で処理された壁を具える。捕捉チャネル238は、白血球細胞又はその他の血液成分239が壁に結合するときに、詰まらないように充分な幅を有する。捕捉チャネル238は、約20μmから1000μmまでの幅を有し、約400μmが好ましい。捕捉チャネル238はまた、白血球細胞又はその他の血液成分の捕捉を強化するのに充分な長さを有する。捕捉チャネル238の、総経路長は、約0.1cmから10cmであり、約5cmが好ましい。捕捉チャネル238は、白血球細胞又はその他の血液成分の捕捉を強化する蛇行経路を描いている。一実施例では、捕捉チャネル238は、白血球細胞又はその他の血液成分を壁に接触させる、約90度のターンをいくつか有する螺旋状の経路を描いている。これらのターンはまた、粒子が直進経路の流れから壁に衝突し他の粒子と衝突するときに乱流を作り、壁への接触する頻度上げる。捕捉チャネル238は、正方形、矩形、三角形、又はその他の適当な断面形状をとることができる。
【0022】
粒子検出層220は、捕捉チャネル238と流体連通する粒子検出器300を具える。粒子検出器300は、特定の物資の量を定量化又はサンプル中の細胞の数をカウントすることができる。粒子検出器300は、寒天ベースの塩橋インピーダンスセンサ、DADMAC塩橋インピーダンスセンサ、又はその他の適切なセンサでもよい。
【0023】
図5A−5Bは、粒子検出器300の一実施例の拡大図を示している。粒子検出器300は、塩橋インピーダンスセンサ、具体的には寒天ベースの塩橋インピーダンスセンサである。粒子検出器300は、捕捉チャネル238からサンプルを受けとり、それを主フローチャネル302に向けるセンサ入口301を具えている。主フローチャネル302は、約0.05mmから0.5mmの幅を有し、約0.1mmが好ましい。粒子検出器300はまた、バッファ槽303と、主フローチャネル302の両側にバッファを導入するバッファ導入チャネル304と305を具えている。バッファ導入チャネル304と305は、流体力学的に、主フローチャネル302の中央にサンプルを集中させる。これは、サンプル中の細胞又は粒子を実質的に一列に並べるものである。代替として、単一のバッファ導入チャネルを用いて、主フローチャネル302の片側に、流体力学的にサンプルを集中させることができる。
【0024】
粒子検出器300はまた、寒天を含有し、連結チャネル313と314を介して主フローチャネル302に連結されている塩橋チャンバ311と312を具えている。連結チャネル313と314は、約0.001mmから0.05mmの幅と約0.01mmから0.2mmの長さを有し、約0.01mmの幅と0.1mmの長さが好ましい。電解質入口315と316は、電解質を含有し、塩橋チャンバ311と312と流体連通いている。電解質入口315と316は、電極325と326に接続されている。電極325と326は、最上層210を通って、POC分析器100に電気的に接続されていてもよい。電極325と326は、Ag/AgClその他の適切な材料で作ることができる。主フローチャネル302と流体連通する回収チャンバ319が、最後にサンプルを回収する。
【0025】
粒子検出器300は、塩橋チャンバ311と312の製造を促進する寒天入口317と318を具えている。塩橋チャンバ311と312は、寒天入口317と318を約2−10%の寒天と1MのKCl(重量×体積)の混合物で充填することによって製造される。寒天が完全に溶解するまで、この寒天混合物は加熱される。寒天混合物は、準備が整うと透明になり、準備が整ったらすぐに寒天入口317と318に導入される。寒天混合物は、毛細管力又は陽圧により寒天入口317と318に導入される。最初に寒天入口317と318及び塩橋チャンバ311と312を寒天混合物で充填する。連結チャネル313と314は狭く、大きな流れ抵抗が寒天混合物が主フローチャネル302に流れ込むのを阻む。使用される量が少ないので、連結チャネル313と314のサイズによって、チャネル内に寒天又は別のポリマーをより一貫して充填できる。これにより、より大きな連結チャネルであればそうなるように、より多くのポリマーが充填されると特異的に重合化された塩橋を持ちにくくなる。これは、再現性がより高い検査結果をもたらす。一旦塩橋チャンバ311と312が寒天混合物で充填されると、流れを止めることができる。粒子検出器300は、寒天混合物が冷えて、固化するまで室温で保管してもよい。粒子検出器300は、1MのKCl溶液を電解質入口315と316に導入した後の時点で使用することができる。寒天ベースの塩橋センサの製造は、フォトリソグラフィを必要としない。寒天ベースの塩橋センサは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)のような軟質材料を含む広い範囲の材料と互換性がある。寒天ベースの塩橋センサの製造は、光開始剤としてのUVや架橋剤を必要としない。
【0026】
図5Cは、粒子検出器300の別の実施例の拡大図を示している。検出器300は、塩橋インピーダンスセンサ、特にジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)塩橋センサである。粒子検出器300は、捕捉チャネル238からサンプルを受けとり、主フローチャネル302にそれを向けるセンサ入口301を具える。主フローチャネル302は、幅が約0.05mmから0.5mmであり、約0.1mmが好ましい。粒子検出器300はまた、バッファ槽303と主フローチャネル302の両側にバッファを導入するバッファ導入チャネル304と305を具える。バッファ導入チャネル304と305は、流体力学的に、主フローチャネル302の中央にサンプルを集中させる。これは、サンプル中の細胞を実質的に一列に並べるものである。代替として、単一のバッファ導入チャネルを用いて、主フローチャネル302の片側に、流体力学的にサンプルを集中させることができる。
【0027】
粒子検出器300はまた、DADMACを含んでおり、主フローチャネル302と流体連通する、塩橋チャンバ321と322を具える。電解質入口315と316は、電解質を含み、塩橋チャンバ311と312と流体連通している。電解質入口315と316は、電極325と326に連結している。電極325と326は、最上層210を通って、POC分析器100に電気的に接続されている。電極325と326は、Ag/AgCl又はその他の適切な材料で作られている。主フローチャネル302と流体連通している回収チャンバ319は、最後にサンプルを回収する。
【0028】
粒子検出器300は、一般的なソフトリソグラフィー工程で製造することができる。SU−8又はシリコンベースの鋳型を、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いたフォトリソグラフィーにより製造する。粒子検出器300は、光開始剤及びモノマーのプレポリマーの混合物で塩橋チャンバ321と322を充填し、UVでそれを露出することにより製造される。プレポリマー混合物は、65%のジアリルジメチルアンモニウムクロリド水溶液、2%の2−dydroxy−4’−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルプロピオフェノン(光開始剤)、及び2%のN,N’−メチレンビスアクリルアミド(架橋剤)で構成されている。重合後、残りのプレポリマー混合物を、バッファ溶液(1M KCl)で洗い流す。電気的測定用に、KCl溶液を塩橋チャンバ321と322に連結されている電解質入口315と316に充填し、KCl溶液の中の電極325と326の間に直流バイアスを印加することにより、陰イオン、この場合はClイオンを塩橋チャンバ321と322を通過させる。これが塩橋チャンバ321と322の間の電流を駆動し、塩橋チャンバ321と322の間にあって電極325と326にかかるインピーダンスを変化させる主フローチャネル302を細胞が通過するときに、塩橋チャンバ321と322の間のインピーダンスがモニタされる。励起シグナルは、約0.01Vから10Vの交流又は直流の電圧をもっており、交流が使用されるときは50Hzから10kHzの周波数を有する。
【0029】
図6A−6Bは、テストカード200の別の実施例の組み立て図と分解図を示す。テストカード200は、最上層210、結合層225、及び廃棄物層260を具える。結合層225は、粒子検出層220と第一分離層230に見られる要素を結合層225に結合させている。結合層225は、第一分離チャンバ235、捕捉チャンバ238、及び粒子検出器300を具える。サンプル入口231によって、サンプルが第一分離チャンバ235に導入される。バッファ入口232によって、第一分離チャンバ235だけでなく、主フローチャネル302にもサンプルを導入することができる。
【実施例1】
【0030】
[循環腫瘍細胞(CTCs)]
テストカード200は、全血中の循環腫瘍細胞(CTCs)を検出に用いることができる。血漿、血小板、赤血球、白血球、及びCTCsを含む全血のサンプルは、抗凝血剤を用いて採取され、サンプル入口231に投入する。次いで、テストカード200を、POC分析器100に挿入する。サンプルが、第一分離チャンバ235に達して、サンプル入口231を経由して濾過表面236に実質上垂直に導入される。血漿、血小板、赤血球、及び小型の白血球は、孔237を通って廃棄物チャンバ260に入る。孔237は、直径約14−18μm、好ましくは約16μmである。大型の白血球とCTCsは、大き過ぎて孔237を通過できず、第一分離チャンバ235内にとどまる。POC分析器100は、1−3分間サンプル入口231に約0−50psiの圧力を加えて、濾過工程を容易にすることができる。
【0031】
バッファは、濾過表面236に実質的に平行な方向に、第一分離チャンバ235に導入される。サンプル入口231を閉じて、バッファの逆流を防止することができる。バッファはバッファ入口232から濾過表面236に実質的に平行に入り、濾過表面236を横切って捕捉チャネル238に向う「一掃する」動きを作り出す。第一分離チャンバ235入口地点でのバッファ入口232の高さを低くする一方で、バッファはバッファ入口232から流入し捕捉チャネル238に向かって移動するので、バッファ入口の長さを拡げてバッファを分散させて濾過表面236を完全に一掃できるようにする。正常な細胞の機能と容量を維持するために、キログラムあたり約275−299ミリ−オスモルのオスモル濃度を有するリン酸緩衝食塩水又はその他のpH緩衝バッファを用いることができる。これは、濾過表面236上の白血球とCTCs、特に孔237中に部分的に「詰まった」又は配置された白血球とCTCsを、捕捉チャネル238に「一掃する」又は取り除く効果がある。さらに、POC分析器100は、一掃する工程を容易にするためにバッファ入口232に圧力を加えることができる。
【0032】
バッファは、濾過されずに残留した白血球とCTCsを捕捉チャネル238を通って運ぶ。捕捉チャネル238の蛇行経路は、白血球が捕捉チャネル238の壁に接触し、白血球と特異的に結合するCD45抗体又はその他の捕捉剤で処理されている壁に結合する可能性を高める。CTCsは、壁に結合せず、捕捉チャネル238を通過する。
【0033】
バッファは、CTCsを粒子検出器300に運ぶ。CTCsは、センサ入口301を通って主フローチャネル302に入る。バッファ槽303から追加のバッファが、バッファ導入チャネル304と305を通って主フローチャネル302に導入されており、CTCsを流体力学的に主フローチャネル302の中央に集中させる。流体力学的に集中したCTCsは、連結チャネル313と314の間を通過し、カウントされる。電極325と326に約5mVから500mVの電圧が印加され、インピーダンスをPOC分析器100により測定する。
【0034】
CTCsは、回収チャンバ319内にたまり、必要に応じてさらなる分析のためにテストカード200から取り出される。
【実施例2】
【0035】
[移植組織適合検査]
移植に先立ち、ドナーとレシピエントの候補者の組織の適合性を検査する組織検査に、テストカード200を用いることができる。胚、移植胚は、病気の兄弟のための臍帯血の幹細胞のドナーに確実になり得るタイプの組織である。
【0036】
この適用は、直径約5μmの孔237を有する濾過表面236を使用する。サンプルからの少量の白血球は、第一分離チャンバ235に残り、既知の抗−HLA(ヒト白血球抗原)抗体で特別に処理された壁を有する捕捉チャネル238に移動する。抗体が主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)上のエピトープを認識すると、白血球が捕捉チャネル238の壁に結合するので、粒子検出器300によってカウントされない。これにより、捕捉チャネル238に存在する既知の抗体の特異性に基づく、間接的な細胞のMHCの同定が可能となる。
【実施例3】
【0037】
[疾病関連性のヒト白血球抗原(HLA)適合検査]
ヒトのある病状に関連して有用であるHLA A、B、Cの検出に、テストカード200を用いることができる。
【0038】
この適用は、直径約5μmの孔237を有する濾過表面236を使用する。サンプル中の白血球は、第一分離チャンバ235内に残り、特定の抗−HLA(ヒト白血球抗原)抗体で処理された壁を有する捕捉チャネル238に移動する。抗体が白血球上のHLA抗原を認識すると、白血球は捕捉チャネル238の壁に結合し、粒子検出器300によって測定されない。これにより、捕捉チャネル238に存在する既知の抗体の特異性に基づく、間接的な細胞のHLAの同定が可能となる。
【実施例4】
【0039】
[後天性造血幹細胞疾患]
血液細胞がある細胞表面マーカーが欠如しており、溶血と呼ばれる工程により体の一部又は全部の赤血球(RBCs)が破壊される後天性造血幹細胞疾患である、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の同定に、テストカード200を用いることができる。、表面マーカーCD45、CD14、CD33、CD16、CD24、CD64、及びCD15が結合していない血液細胞を検出するためにテストカード200を用いることができる。
【0040】
この適用は、直径約5μmの孔237を有する濾過表面236を使用する。捕捉チャネル238は、CD45、CD14、及び/又はCD33抗体で処理された壁を有する。PNHに感染した白血球は壁に結合せず、捕捉チャネル238を通過して粒子検出器300でカウントされる。
【0041】
図7A−7Bは、テストカード200の別の実施例の組み立て図と分解図を示す。テストカード200は、最上層210、第一分離層230、第二分離層240、ナノワイヤセンサ層250、及び廃棄物回収層260を具える。
【0042】
図8A−8Bは、第二分離層240の拡大図を示す。第二分離層240は、孔237を通って第一分離チャンバ235と流体連通する第二分離チャンバ245を具える。第二分離チャンバ245は、血漿、赤血球、血小板、及びその他の孔237のサイズより小さい血液成分を回収する。第二分離チャンバ245は、内壁241と外壁242を有する。 内壁241は、幅約400μmのオープンスペースを有し、第二分離チャンバ245から第二分離チャンバ245の内壁241と外壁242の間のチャネル248へ粒子を移動させる。チャネル248の壁は、第二分離チャンバ245内に回収した粒子に特異的に結合する捕捉剤で処理してもよい。サンプルは、ナノワイヤセンサ350に到達する前に、第二分離層240の上部と底部に沿って走るチャネル249を通過する。
【0043】
ナノワイヤセンサ層250は、ナノワイヤセンサ350を具える。ナノワイヤセンサ350は、血漿又はその他のサンプル中の特定の物質の量の定量化できる。
【0044】
図9Aは、ナノワイヤセンサ350の一実施例の拡大図を示す。ナノワイヤセンサ350は、シリコンナノワイヤの電界効果トランジスタ(FET)である。ナノワイヤセンサ350は、ベース352を具える。ナノワイヤセンサ350は、ソース電極353とドレイン電極354を具え、両者はベース352上に配置されている。ソース電極353とドレイン電極354は、絶縁層で覆われている。ナノワイヤセンサ350は、ソース電極353とドレイン電極354に接続されたナノワイヤ355を具える。ナノワイヤ355は、半導体であり、ケイ素、ゲルマニウム、インジウムヒ素、酸化亜鉛、シリコンゲルマニウム、又はその他の適切な材料でつくることができる。ナノワイヤ355は、約1nmから500nmの厚さを有し、約20nmが好ましい。ナノワイヤ355は、約1016/cmから1020/cmにドープされており、1018/cmが好ましい。ナノワイヤセンサ350はまた、ベース352上に配置されている制御電極356を具える。
【0045】
ナノワイヤセンサ350も、制御電極356を具える。制御電極356は、ナノワイヤ355から約0.01mmから1mmのところに位置しており、約0.1mmが好ましい。一実施例では、制御電極356は金で作られているが、銀、銅、亜鉛、カドミウム、鉄、ニッケル、コバルト、又はその他の適切な材料で作ってもよい。一実施例では、制御電極356は、例えばアミン、カルボン酸、アルデヒド、又はチオール結合を介して制御電極356に結合するターゲット分子に特異的なペプチド核酸(PNA)で機能化されている。ターゲット分子は、例えば事前に選択されたヌクレオチド配列を含んだ核酸分子でもよい。PNAは、例えばアミノ酸リンカー、又はモノマーあるいは例えば8−アミノ−3,6,−dioxaoctanoic酸などのマルチマー、又制御電極356に結合するとPNAに適応性を提供するその他の適切なスペーサの、スペーサ単位を具える。シグナルの変化は、ゲートとのFETの応答を測定することにより検出することができる。制御電極356に印加される電圧、コレクタエミッタ間電圧(VCE)は、FETのゲート入力を提供する。ターゲット分子が、制御電極356に結合すると、制御電極356とナノワイヤ355の間の電気容量が変化し、同じコレクタエミッタ間電圧(VCE)に対するゲート応答が異なることになる。制御電極356は、例えば5μm×5μmから500μm×500μmと大きくてよく、制御電極356に結合するターゲット分子の数を増やして、これによって検出感度を上げるには約50μm×50μm(長さ×幅)の大きさが好ましい。制御電極356は、例えば約10nmから200nmの適切な厚さを有する。制御電極356の大きなサイズとナノワイヤ355ではなく、制御電極356の機能化がナノワイヤセンサ350の感度と特異性の増大に寄与する。
【0046】
ナノワイヤ355と制御電極356は、互いに流体連通している。一実施例において、ナノワイヤ355と制御電極356はマイクロ流体チャネル357内に配置されている。代替として、ナノワイヤ355と制御電極356を、サンプルが固定又は撹拌されるサンプルチャンバに配置してもよい。制御電極356は、実質的にマイクロ流体チャネル357と同じか、又はその他の適切なサイズ又は幅である。
【0047】
制御電極356は、多くの癌抗原のうちのいずれかで機能化できる。タンパク質53(p53)核酸(腫瘍抑制)又はヒト表皮成長因子受容体2又はHER2/neu核酸、又はその他に相補的なペプチド核酸(PNA)で、制御電極356は機能化される。CA27.29、癌胎児性抗原(CEA)、CA15−3、前立腺特異抗原(PSA)、又はその他の癌抗原に対する抗体で、制御電極356は機能化してもよい。
【0048】
制御電極356を機能化して、多くのタンパク質バイオマーカーのうちのいずれかを検出することができる。C反応性タンパク(CRP)に対する抗体、心臓病や脳卒中の危険因子、鬱血性心不全(CHF)を診断するためのB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の抗体、急性心筋梗塞や骨格筋損傷の検査をするクレアチニンキナーゼの抗体、栄養状態又は肝機能を検査するトランスフェリンに対する抗体、心臓病と脳卒中の危険がある患者を選別するホモシステインの抗体、糖尿病検査用グルコースのような小型血液分子に対する抗体、又は急性感染症の存在を検査するB型肝炎表面抗原(HBsAG)の抗体で、制御電極356を機能化することができる。
【0049】
制御電極356を多くの抗体のうちのいずれかで機能化して、ある種のタイプの癌、疾患、感染症、又は免疫状態を検出する免疫グロブリンと抗体を検出することができる。特異的免疫グロブリン(IgA、IgG、及びIgM)の抗体で、制御電極356は機能化して骨肉腫、ワルデンシュトレームのマクログロブリン血症を診断し、単クローン性免疫グロブリン血症とアミロイド症を評価することができる。制御電極356は、臨床的回復の及びその後のB型肝炎ウイルスに対する免疫の指標として使用される抗B型肝炎ウイルスの抗体、全身性紅斑性狼瘡(SLE)に関係する抗体を検出する抗2本鎖DNA(抗dsDNA)の抗体、又はアトピー性皮膚炎、湿疹、寄生虫感染症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、及び免疫欠損を診断するアレルゲン特異的な免疫グロブリンE(IgE)の抗体で機能化することができる。
【0050】
制御電極356は、様々な感染症の検出に用いられる多くの相補的ペプチド核酸(PNAs)のうちいずれかで機能化できる。制御電極356は、HSV核酸、C型肝炎核酸、HIV−1核酸、ニューモシスティス・カリニ肺炎(PCP)核酸、バクテリア核酸、ラジオネラ・ニューモフィラ核酸、又は連鎖球菌B核酸に相補的なPNAで機能化することができる。
【0051】
上記の例は、サンプルとして全血を用いているが、尿素などの他のサンプルもテストカード200に使用できる。例えば、制御電極356をアルブミンの抗体で機能化して糖尿病の初期兆候である尿素中のアルブミンを検出できる。
【0052】
テストカード200は、その他のナノスケールの器具と比較して検出感度と特異性を強化するように設計されている。テストカード200は、サンプル中の成分をサイズによって、又電荷によって分離するマイクロ流体デバイスと、分子の生化学的及び物理的特性に基づいてターゲット生体分子を検出するナノワイヤセンサ350を具える。サンプル中の1又はそれ以上の生体分子の有無を検出する方法や、被験者のサンプル中の生体分子の存在に基づいて被験者の病状を診断する方法も記載されている。ここに記載されている方法は、核酸のピコモル及びフェムトモル量を検出するため、及びサンプル中の生体分子を検出するために、感度を改良するよう設計されている。
【0053】
テストカード200は、マイクロ流体デバイスとナノワイヤセンサ350を具える。マイクロ流体デバイスは、少なくともサイズ、構造及び電荷のうちの1又はそれ以上に基づきサンプル中の分子を分離するサイズ排除メカニズムを具える。ナノワイヤセンサ350は、ベース352と、所定の電流−電圧特性を有し生物学的センサとしての使用に適するゲートナノワイヤ電界効果トランジスタ(NW−FET)を具える。ナノワイヤセンサ350はまた、入口を有するマイクロ流体チャネル357を具える。ナノワイヤセンサ350は、ソース電極353、ドレイン電極354、ソース電極353とドレイン電極354間に接続、配置されたナノワイヤ355、及び所定の電流−電圧特性を有するFETを形成するターゲット分子に特異的な結合部位で機能化された制御電極356を具える。NW−FETは、ベース352上に配置され、ベース352とマイクロ流体チャネル357間にある。制御電極356上のターゲット分子と結合部位間に生じる結合事象は、NW−FETの電流−電圧特性に検出可能な変化を生じさせる。好ましい実施例では、ナノワイヤ355は、シリコンベースのナノワイヤであるが、ゲルマニウム、インジウムヒ素、酸化亜鉛、及びシリコンゲルマニウム、又はその他の半導体材料でもよい。制御電極356は、金、銀、銅、亜鉛、カドミウム、鉄、ニッケル、コバルト、又はその他の適切な元素又は化合物といった金属制御電極であってもよい。好ましい制御電極356は金である。この結合部位は例えばペプチド核酸(PNA)、抗体、アプタマー、ペプチド、又はその他の物質など、アミン、カルボン酸、アルデヒド、又はチオール結合などを介して制御電極356に付着させたターゲット分子に特異的な結合部位である(図9C参照)。ターゲット分子は、例えば予め選択されたヌクレオチド配列を含む核酸分子であってもよい。PNAは、例えばアミノ酸リンカー、又はモノマーあるいは例えば8−アミノ−3,6,−dioxaoctanoic酸などのマルチマー、又は制御電極356に結合するとPNAに適応性を提供するその他の適切なスペーサの、スペーサ単位を具える。シグナルの変化は、ゲートとのNW−FETの応答を測定することにより検出することができる。制御電極356に印加される電圧、コレクタエミッタ間電圧(VCE)は、NW−FETのゲート入力を提供する。ターゲット分子が、制御電極356に結合すると、制御電極356とナノワイヤ355の間の電気容量が変化し、同じコレクタエミッタ間電圧(VCE)に対するゲート応答が異なることになる。制御電極356は、例えば5μm×5μmから500μm×500μmと大きくてよく、制御電極356に結合するターゲット分子の数を増やして、これによって検出感度を上げるには約50μm×50μm(長さ×幅)の大きさが好ましい。制御電極356は、例えば約10μmから200μmの適切な厚さを有する。制御電極356の大きなサイズとナノワイヤ355ではなく制御電極356の機能化が、ナノワイヤセンサ350の感度と特異性の増大に寄与する。
【0054】
本発明の別の実施例は、サンプルをナノワイヤセンサ350に塗布し、ナノワイヤセンサ350のシグナル変化を検出することにより、サンプル、特に生体サンプル中のターゲット核酸分子の有無を検出する方法であり、ここでシグナル変化はサンプル中のターゲット分子がナノワイヤセンサ350内の制御電極356上の結合部位に結合することにより誘発される。サンプルは、血液又は血漿サンプルのような生体サンプルでもよい。ターゲット分子は、例えば腫瘍の存在の特徴を示す腫瘍由来のDNA配列など予め選択された配列を含むDNA分子が好ましい。腫瘍由来のDNAは、腫瘍の存在の診断および予後指標、腫瘍の進行及び予測の指標、又は治療に対する反応として機能するマーカー又は潜在的なマーカーとなりうる。このDNAは、例えば変異K−rasであり、腫瘍は、膵臓癌特に膵臓腺癌である。
【0055】
この方法はまた、生体サンプル中のターゲットDNAの濃度と癌の状態の相関関係を確立するのに有用である。この方法はまた、ターゲットDNAの由来である腫瘍の早期検出用又は腫瘍の進行分析用のスクリーニング方法として用いることができる。例えばこの方法を用いて、被験者からのサンプル中の追加の変異K−rasの存在について膵臓病変を有する被験者からのサンプルを分析することによって、又は臨床的に有意なK−rasDNAレベルを超える変異K−rasDNAの上昇レベルの存在について被験者からのサンプルを分析することによって、非癌性膵臓病変から癌性膵臓病変への変化を検出することができる。被験者のサンプル中の追加の変異K−rasDNAの存在又は変異K−rasDNAの上昇は、膵臓病変が癌性である又はこれから癌性になることの指標となる。さらにこの方法は、治療に対する反応の予測又は特定の療法で最も適切に治療されるであろう患者を選択するのに有用である。例えば、2008年に米国臨床腫瘍学会及び欧州臨床腫瘍学会で発表されたように、転移性結腸大腸癌におけるK−ras突然変異の存在は、一般にセツキシマブ(エルビタックス、イムクローン社)及びパニツムマブ(ベクチビクス、アムジェン社)などの上皮成長因子受容体(EGFR)キナーゼに対する抗体への低い反応が関係している。
【0056】
本発明のさらなる実施例は、組織サンプルから分離されたゲノムDNA中で予め選択されたDNA配列を検出する方法である。ゲノムDNAサンプルは、ナノワイヤセンサ350内の制御電極356に接触し、ここで制御電極356は予め選択されたDNAに特異的な結合部位で機能化されており、電導度又は電流に変化が検出される。予め選択されたDNA配列は、例えばB型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、又はサイトメガロウイルスなどのウイルスに特異的なDNA配列である。
【0057】
電界効果トランジスタ(FET)は、ゲート電極、ソース電極、及びドレイン電極を具える三電極装置である。FETは、「Art of Electronics」第二版、ポールホロウィッツ、ウィンフィールドヒル著、ケンブリッジ大学出版局、1989年、113−174頁により詳細に記載されており、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。電荷担体の使用可能性は、ゲート電極としても知られる第三の「制御電極」に印加される電圧によって制御される。チャネル中の伝導は、チャネルを横切って電界を作り出すゲート電極に印加される電圧により制御される。
【0058】
検知デバイスは、(a)ソース電極353とドレイン電極354間に接続され、配置されるナノワイヤ355と、(b)ゲート電極又は制御電極356と、(c)選択的に流体入口と出口を有するマイクロ流体チャネル357と、を具える。ソース電極353、ドレイン電極354、ナノワイヤ355、及び制御電極356がナノワイヤセンサ350を形成している。ナノワイヤ355と制御電極356は物理的に離れており、制御電極356はマイクロ流体チャネル357の流れの中にある。ナノワイヤセンサ350とマイクロ流体チャネル357は、支持ベース352上に配置されている。ナノワイヤセンサ350は、支持ベース352とマイクロ流体チャネル357間に位置する。制御電極356は、予め選択されたターゲット分子の結合部位で機能化される。制御電極356上の結合部位に結合しているターゲット分子は、ナノワイヤ355の担体配分を変える電界を生じさせるゲートで電圧を与える。ナノワイヤ355内の担体配分の変化は、ナノワイヤ355を通過する電流の流れに影響を与え、ナノワイヤ355は例えば電圧計付電流−電圧スキャンのような検出器により検出される。
【0059】
測定は液相内で行われるため、ナノワイヤ355に接続されたソース電極353とドレイン電極354は、ソース電極353とドレイン電極354を絶縁材でコーティングすることにより、マイクロ流体チャネル357内のサンプルへの露出から保護される。例えば、窒化ケイ素、酸化ケイ素及びその他の適当な材料など色々な絶縁材を用いることができる。窒化ケイ素又は酸化ケイ素をプラズマ化学気相成長法(PECVD)によりソース電極353とドレイン電極354上に蒸着して、絶縁を提供できる。PECVDを用いて窒化ケイ素又は酸化ケイ素を薄層蒸着させる条件は、さらに最適化することができる。
【0060】
ナノワイヤセンサ350はまた、制御電極356の電気容量又はその特性の変化を測定する器具を具えることもできる。ナノワイヤセンサ350は簡単電子機器、好ましくはナノワイヤ355と、例えば電源、増幅器、及び電圧計などの電子部品に接続されたフォトリソグラフィーによって規定したミクロンサイズのソース電極353で操作される。マイクロ流体チャネル357中のサンプルを含む電解質を流れる寄生電流を最小にするために、ソース電極353とドレイン電極354は窒化ケイ素又は二酸化ケイ素のような絶縁材で分離されている。制御電極356はマイクロ流体チャネル357の流れの中にある。マイクロ流体チャネル357のサイズが小さいので、少量のサンプル(一般には1マイクロリットル未満)しか必要としない。サンプル溶液は、重力あるいはマイクロ流体チャネル357を通るポンピングにより一定流速でマイクロ流体チャネル357を流れる。サンプルは、シリンジポンプ、蠕動ポンプ、又はその他の適切な器具により送圧される。サンプルはまた、圧縮空気又は窒素レギュレータを用いてマイクロ流体チャネル357を強制的に流れるようにしてもよい。サンプルは、およそ1から100μl/分の割合で送圧される。
【0061】
ここで使用される用語「ナノワイヤ」は、その全体が本明細書に組み込まれている米国特許第7,385,267号に記載されており、この特許は、ナノワイヤを、長さに沿った任意の点における細長いナノスケール半導体と定義しており、少なくとも一の断面の寸法を有し、いくつかの実施例においては、直交する二つの断面の寸法が500nmより小さく、好ましくは200nmより小さく、より好ましくは150nmより小さく、さらにより好ましくは100nmより小さく、さらにより好ましくは70nmより小さく、さらにより好ましくは50nmより小さく、さらにより好ましくは20nmより小さく、さらにより好ましくは10nmより小さく、5nmより小さくてもよい。別の実施例において、断面寸法は2nm又は1nmより小さくてもよい。いくつかの実施例において、ナノワイヤの少なくとも一の断面の寸法は0.5nmから200nmの範囲である。ナノワイヤがコア及び外側領域を有する場合には、上記寸法はコア領域に関する寸法である。細長い半導体の断面は任意の形状を有しており、円形、正方形、矩形、楕円、及び管状を含むがこれらに限定されるものではない。規則的な又は不規則的な形状も含まれる。本発明のナノワイヤを作ることのできる材料の非限定的なリストを以下に表記する。ナノチューブは、本発明で用いるクラスのナノワイヤであり、一実施例では、本発明の器具はナノチューブに見合ったスケールのワイヤを具える。ここで使用する「ナノチューブ」は、空洞のコアを有するナノワイヤであり、当業者に知られているナノチューブを含む。「非ナノチューブナノワイヤ」は、ナノチューブではないナノワイヤである。本発明のいくつかの実施例では、非改質表面(ナノワイヤが置かれている環境でナノチューブに本来備わっていない補助反応の実体は含まない)を有する非ナノチューブナノワイヤが、ナノワイヤ又はナノチューブを使用できるここに記載された本発明の構成において使用されている。「ワイヤ」とは、少なくとも半導体又は金属が有する導電性を持つ材料をいう。「導電性」ワイヤ又はナノワイヤに関連して用いられる「導電性の」、「導体」、又は「導電体」の用語は、それ自身を電荷が通過するワイヤの能力を意味する。導電性材料は、約10−3より低い抵抗を有し、約10−4より低い抵抗がより好ましく、約10−6又は10−7Ωmより低い抵抗が最も好ましい。
【0062】
ナノワイヤ355は、特に規定がない限り、カーボンナノチューブ、ナノロッド、ナノワイヤ、有機と無機の導電性又は半導体ポリマー、その他を含む。分子ワイヤではないが、様々なナノスケール寸法を有するその他の導電性又は半導体要素も、例えば主属及び金属原子ベースのワイヤ状シリコン、遷移金属含有ワイヤ、ガリウムヒ素、窒化ガリウム、リン化インジウム、ゲルマニウム、セレン化カドニウム構造、又はその他の適切な組成物などの、無機構造の場合に使用することができる。これらの多種多様なナノワイヤやその他のナノワイヤは、過度な実験をすることなしにナノワイヤを含むここに記載した技術に類似する方法で、電子デバイスに有用なパターンで表面上に成長させる及び/又は塗布することができる。ナノワイヤ355の長さは、少なくとも1μm、好ましくは少なくとも3μm、より好ましくは少なくとも5μm、さらに好ましくは10又は20μm、厚さ(高さと幅)は、約100nmより小さいことが好ましく、より好ましくは約75nmより小さく、より好ましいのは約50nmより小さく、さらに好ましいのは約25nmより小さい。ナノワイヤ355のアスペクト比(厚さに対する長さ)は、少なくとも約2:1であるべきで、好ましくは約10:1より大きく、より好ましくは約1000:1より大きい。
【0063】
ナノワイヤ355は、シリコンナノワイヤ(SiNW)であるのが好ましく、シリコン非ナノチューブ(中実)ナノワイヤであるのが好ましい。しかし、任意の適切な材料を使うことができる。
【0064】
ナノワイヤ355を製造する技術には、多くの方法が利用可能であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている米国特許第7,301,199号及び米国特許第7,410,904号などを参照されたい。気相−液相−固相(VLS)方によるバルク材料としてナノワイヤを成長させる「ボトムアップ」法のような方法が利用可能である。この方法は、高品質なナノワイヤを製造するが、長さと直径が均質なナノワイヤを製造することが困難である。また、所望のスポット上にナノワイヤを配置し、電極を具える、ナノワイヤセンサ350の他の部品と整列させることが困難であり、それがデバイス間の均一性の低下を引き起こす(ガオら著、「分析化学」、2007年発行、79号、3291−7頁)。使用できるその他の方法は、電子ビームリソグラフィー及びウエット/ドライエッチングに基づく「トップダウン」法である。ナノワイヤのサイズと配置がより制御しやすく、従って製造に関して高スループット及び自動化が可能であるため、後者の方法がより好ましい。
【0065】
様々な実施例において、以下の例及び組み合わせを含む様々な方法を用いて制御電極356を製造している:インプリンティング、リソグラフィー、化学蒸着(CVD)、エッチング、レーザー切断、アーク放電、及び/又は電気化学的方法。制御電極356は、5μm×5μmから500μm×500μmの範囲の大きさを有しており、約50μm×50μm(長さ×幅)、又はその他の適切な大きさが好ましい。制御電極356は、例えば約10μmから約200μmの適切な厚さを有する。
【0066】
制御電極356を「機能性物質」でコーティングする工程を、ここでは「機能化」と呼び、コーティングされた制御電極を「機能化された」という。機能性物質は、例えばチオール基、例えばデオキシリボ核酸即ち「DNA」、ペプチド核酸即ち「PNA」、リボ核酸即ち「RNA」などの核酸、アプタマー、ホルモン、炭水化物、タンパク質、抗体、抗原、分子受容体、及び/又は細胞表面結合部位といった対象となる化学的又は生化学的スピーシーズと結合していくつかの生化学的例を提供する。本発明では、結合部位を形成するために制御電極356に結合された機能性物質は、サンプル中のターゲット分子に特異的又は相補的である。例えば第一の電着した金でできた機能性物質は、チオール末端PNA機能性物質であるか又はこれに結合しており、次に分析中のサンプル内の相補的DNAターゲット分子に結合する。制御電極356は、約0.1μmから約100μmのPNA、好ましくは約1μmから約10μmのPNAに結合させることができる。
【0067】
SiNWと非金属制御電極356は、p型又はn型のドーパントでドープすることができる。制御電極356の表面は、捕捉剤、例えばK−ras突然変異ssDNAなど予め選択されたDNA配列に相補的な配列を含むPNAで改質することができる。
【0068】
ナノワイヤ355又は制御電極356は又はその両方をドープすることができる。スピン−オンドーパントに基づくドーピングとイオン注入の二の方法でナノワイヤ355及び/又は制御電極356をドープしてさらなる最適化を行うことができる。スピン−オンドーパント法は、基板をp型またはn型スピン−オンドーパント溶液でスピンコートし、高温で拡散工程を行う。最終ドーピングレベルは、熱工程の温度と時間によって決まる。イオン注入の場合は、ホウ素、リン、ヒ素のような高エネルギーイオンを、加速器内の様々なガス源からつくって、基板に向ける。イオンは、基板の表面近傍の領域に注入される。どちらの方法でも良い結果が与えることが報告されている(ガオら著、「分析化学」2007年、79号:3291−7頁及び「ナノ文学」、2006年、6(6):1096−1100頁)。最適ドーピングレベルは、四点深針測定に基づいて選択することができる(参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、ロバートF.ピエレら著、「半導体デバイスの基礎」、Addison Wesley社、3章、85−89頁及びセクション3.1.4と佐藤ら著、「表面分析ジャーナル」、2004年、11(2)58−61を参照されたい)。約1018ホール又はドナーatoms/cmのドーピングレベルを、最適化の開始点として用いることができる。ドーピングレベルは、必要に応じて増やす又は減らすことができる。
【0069】
合成ペプチド核酸オリゴマー(PNAs)は、色々なソースから商業的に入手することができる。本発明においては、PNAsを制御電極356に結合させて結合部位を形成することができる。PNAsは、例えばDNA又はRNA、好ましくはssDNAといったサンプルのターゲット分子中の予め選択されたヌクレオチド配列に特異的/相補的である。本発明で用いられるPNAsは、サンプル中に存在するターゲットDNAに特異的に結合するのに適した長さと配列、例えば約5から約75、好ましくは約20から約50ヌクレオチド、を有し、ターゲットDNA中の予め選択された配列に80%、85%、90%、95%、99%又は100%の相補性を有するのが好ましい。予め選択された配列と100%の相補性を有するPNAsの配列が好ましい。PNAは配列番号:2、3、4、5、又は6の相補体又はいずれか一つ有する配列を具えることができる。ターゲットDNAの予め選択された配列と制御電極356に付着したPNAとの間の1塩基のミスマッチを検出するのに適した条件下で、ターゲットDNAを制御電極356に付着させたPNAとハイブリダイズするのが好ましい。この条件は、例えば10mM Tris HCl、pH8.0、のような低塩ハイブリダイゼーション条件又は同等の条件であることが好ましい。
【0070】
複数のナノワイヤセンサ350を用いることができ、各センサはサンプル中の色々なターゲット分子を検出するよう設計されている。検知デバイスはまた、複数のNW−FETを具えており、各NW−FETは色々なターゲット分子を検出するよう設計されている。例えば、本明細書に記載されているように検知デバイスは複数のNW−FETを具えており、各NW−FETは配列番号:2−6のうちの一の配列を含むターゲット分子用の結合部位で機能化された制御電極356を含んでいる。
【0071】
用語「サンプル」は、参照によりその全体が本明細書に取り込まれる米国特許第7,385,267号に記載されており、任意の細胞、細胞培養培地、組織、又は生体起源の流体(「生体サンプル」)、又はその他の媒体、例えば血漿、血清、又は水のように本発明に従って診断されうる生物学的又は非生物学的な媒体をいう。サンプルは、これに限定するものではないが、有機体由来の生体サンプル(例えば、ヒト、非ヒトほ乳類、無脊椎動物、植物、菌類、藻類、バクテリア、ウイルスなど)、ヒトが消費するために作られた食品由来のサンプル、家畜の餌などの動物が消費するために作られた食料由来のサンプル、ミルク、臓器提供サンプル、輸血用の血液サンプル、水道水サンプル、又は同様のものを含む。サンプルの一例は、特別な核酸配列の有無を判断するためにヒト又は動物から採取したサンプルである。
【0072】
サンプルは、血液、血漿、又は血清サンプルが好ましく、膵臓腫瘍のような腫瘍を有する又は疑いのある被験者由来の血液、血漿、又は血清サンプルがより好ましい。サンプルは、均質化され、溶液中に入れた組織サンプルであってもよい。
【0073】
ナノワイヤセンサ350は、以下のように製造することができる。
【0074】
電極上のPNAの固定化:固定化は、X線光電子分光法(XPS)により特徴付けられる。XPSは、化学物質だけでなく薄層の構造特性を評価するex−situ法である。HS−ssPNA固定化の後、表面上で定量分析を行うこともできる。表面の被覆率の変化をモニタして、HS−ssPNA単分子層と遮断剤(メルカプトエタノール)を含む混合自己組織化PNA単分子層を監視することで見出される。フーリエ変換赤外線(FTIR)分光法は、分子のフィンガープリント配向について追加の情報を提供する。これらの二つの方法に基づいて、表面の状態をPNA配向性だけでなく被覆率の観点から決定することができる。
【0075】
絶縁層の形成:測定は溶液相で行われるので、金属電極は液体にさらされることから保護される。窒化シリコンと酸化シリコンは、この目的のための最も一般的な材料である。薄層蒸着は、例えばPECVDを用いたものが最適である。2層リフト−オフ法は、パターン化した絶縁層を形成するのに用いられる。下層は、スピンコートされ、フォトレジストが続いて行われる。同じ露出条件と現像条件では、下層は、フォトレジストよりも容易で速く発現する。浮遊フォトレジストパターンは、金属蒸着ステップの間はマスクとして機能し、金属蒸着の後は基板上に新しく形成された金属パターンの周りにスペースを提供する。薄層を異方的に形成し、続いてリフト−オフされるPECVD工程の後、金属電極パターンは窒化シリコン又は酸化シリコンで覆われる。
【0076】
ドーピング工程:少なくとも二の異なるドーピング法:スピンオンドーパント法とイオン注入法が適している。ドーピングの後、四点深針測定によりおよそのドーピングレベルを計算する。層のシート抵抗psを測定する。四本の深針は直線状に配置される。外側の二つの深針へ定電流を印加しながら内側の二つの深針で定電流を維持する電圧を測定する。電流値と電圧値の関係から、シート抵抗を計算する。ドーピングレベルは、抵抗率対ドーパント濃度曲線から計算する。ドーピングレベルの初期目標は、1018/cmとなる。目的のドーピングレベルは、バックゲート測定からNW−FETのゲート性能に基づいて調整する。
【0077】
ナノワイヤFETデバイス:電子ビームリソグラフィーと様々なエッチング法を用いて、ナノワイヤをつくることができる。ナノワイヤを製造した後、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影してナノワイヤを特徴付ける。次いで金属電極を例えば、電子ビームリソグラフィー、フォトリソグラフィー、及びリフトオフ法によって規定する。ここでもパターンサイズと質を例えばSEMを用いてモニタする。電気的性能は、電流−電圧測定及びバックゲート測定によりテストする。ドーピングレベルは、ゲート性能に基づいて変化する。
【0078】
絶縁層:金属電極の全体被覆率を、例えばSEM画像により確認することができる。同様に電気的絶縁も例えば液体中の電流−電圧測定によりチェックすることができる。
【実施例5】
【0079】
[ターゲット分子]
膵臓癌に関連する4つの重要なK−ras点突然変異(以下#1−4という)がある。追加の点突然変異(以下#5という)は、膵臓癌中に生じる頻度が極端に低い。ターゲットオリゴヌクレオチドは、K−rasの核酸配列を少なくとも約20−50ヌクレオチド含み、4つの突然変異(#1−4)の少なくとも1つを含んでいる。K−rasの核酸配列を少なくとも約20−50ヌクレオチド含み、#5突然変異を含むターゲットヌクレオチドは、膵臓癌検出の特異性を高めるネガティブコントロールとして機能する。
【0080】
以下に記載され、約20−50ヌクレオチドを含む各突然変異#1−5に対する相補的PNAsも合成される。すべての合成オリゴヌクレオチドは、市販されている。
【0081】

【0082】
ペプチド核酸(PNA)固定化戦略
PNAがDNAを一塩基の感度で検出できること(ワングら著、「米国化学会誌」1996年、118(33)、7667−7670頁)、及び金表面上の一本鎖PNAの秩序自己組織化単分子層(SAMs)が、相補的ssDNAの特異的認識を表していること(ブリオネスら著、「米国物理学会速報誌」2004年、93(20):208103)が示されている。PNAは、DNAに対して高い結合親和性を有するので、ここでは結合部位として使用されている。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるブリオネスら著、米国物理学会速報誌、93、208103(2004)に基本的に記載されているように、単分子層を形成するチオールベースの固定化を使用して、PNAは制御電極356の表面に固定化されている。単分子層を形成するための条件は、PNA濃度、スペーサの長さ、及びPNA固定化の後に制御電極の表面を遮断するために用いられるチオール溶液に基づいて最適化される。
【0083】
PNA濃度は、例えば約0.1μmから約10μmに適度にパックされた単分子層を形成するように最適化される。PNA濃度が高すぎると金表面が完全に覆われるので、立体効果により結合効率が低下する。
【0084】
スペーサ効果:ナノ表面上の結合の特徴は、バルク溶液内の特徴とは、非常に異なっている。結合に対するウォール効果を減少させ、PNAsにさらなる適応性を与える8−アミノ−3,6,−dioxaoctanoic酸のスペーサは、PNAに含まれており、8−アミノ−3,6,−dioxaoctanoic酸の二量体及び三量体などマルチマーは、結合分析用のスペーサの長さを最適化するために使用される。
【0085】
チオール溶液阻害効果:その後のDNAハイブリダイゼーションを成功させるべくチオールPNAを固定化した後、制御電極の金表面を遮断するために、メルカプトエタノール溶液を遮断剤として使用する。図9Cは、混合したPNAのSAMとメルカプトエタノールを示す略図である。
【0086】
マイクロ流体デバイスの設計とプロセス
開始サンプルとサンプル処理
サンプルを、マイクロ流体デバイスに加えて、約1μmのサイズの孔237により血漿を血液細胞と血小板から分離して、第二分離チャンバ245に入れる。
【0087】
サンプルは、チャネル248の壁にシリコン又はガラスが結合しているチャネル248に流入するか、送圧される。充分に飽和したカオトロピック試薬(例えばヨウ化ナトリウムと塩化グアニジウム試薬)をサンプルと混合させて、DNAをガラス表面に結合させるために充分な時間と温度である、約5分間、25℃でサンプルをチャネル248に接触させる。結合条件と時間は、さらに最適化することができる。カオトロピック塩の存在下でのガラスまたはシリカ表面へのDNAの吸着は、フォーゲルとガレスピー(フォーゲルら著、「米国科学アカデミー紀要」1979年、76(2)615−619頁)による、ガラス粉を用いてアガロ−スからDNAフラグメントを精製する彼らの研究に最初に記載されている。
【0088】
結合したDNAを有するマイクロ流体チャネルを、50%のエタノールと50%のバッファ(20mM Tris−HCl、pH7.2、0.2M NaCl、2mM EDTA)の混合液で洗浄してヨウ化ナトリウムを取り除く。次いで脱イオン水又は低塩溶出バッファでシリコン又はガラスからDNAを溶出する。ターゲットDNAを検知デバイスに運ぶ溶出バッファの塩とpHは、制御電極に結合されてるPNAにターゲットDNAがハイブリダイゼーションするのに適切な、例えば10mM Tris−HCl、pH8.0に調整される。溶出されたDNAを運ぶ塩とpHを調整したハイブリダイゼーション溶液は、マイクロ流体チャネル357を通ってナノワイヤセンサ350に流れ、又は送圧され、そこで予め選択されたターゲット分子に特異的なペプチド核酸分子で機能化された制御電極356に接触して、ターゲットDNAがPNAにハイブリダイズする。
【0089】
シリコンナノワイヤベースのセンサ設計/開発
本発明の検知デバイスのターゲット分子を結合するナノワイヤ355と制御電極356は、物理的に分離されている。ナノワイヤセンサ350の実施例の概略図を図9Aに示す。図示したように、ナノワイヤセンサ350は、二つの構成要素:ソース電極353とドレイン電極354の間に配置されたナノワイヤ355と、制御電極356によって作動する。ターゲット分子は、適切なハイブリダイズ条件下で制御電極356の表面に結合されてるPNAsにハイブリダイズする。SiNW−FETは、制御電極356と、変化したゲート応答によるナノワイヤ355表面の電気容量の変化を検出する。コレクタエミッタ間電圧(VCE)が制御電極356に印加されて、ナノワイヤ355上にイオン二重層がイオンの移動によって形成される。この現象はゲート電圧として機能し、ナノワイヤ355内の電荷密度の変化を誘発する。DNAターゲット分子が制御電極356の結合部位に結合すると、制御電極356とナノワイヤ355間の容量が変化し、コレクタエミッタ間電圧(VCE)に対するナノワイヤ355からのゲート応答も変化する。例えば電圧計で電流を監視して、ナノワイヤ355を通過する導電性を測定することにより、この変化が検出される。
【0090】
図9Bは、ナノワイヤセンサ350の応答である伝導度対制御電極電圧の概略図を示す。閾値、Vthは、伝導度の線形領域がゼロになるまで線形外挿に基づいて設定されている。制御電極356の表面にターゲット分子(ssDNAs)が結合すると、制御電極356とナノワイヤ355表面間の容量が変化する。この容量変化は、ナノワイヤセンサ350の出力信号であるナノワイヤ355の閾値電圧をシフトする。
【0091】
分別検出方法
K−ras遺伝子の点突然変異を検出するため、血液サンプルを分析して単一塩基突然変異を含むDNAを求める。
【0092】
多くの生体成分から成るヒトの血液サンプルを採取して、抗凝固剤(例えば、EDTA、クエン酸、ヘパリン)に結合させる。EDTAで抗凝固された血液が好ましい。抗凝固血液サンプルを採取して、マイクロ流体デバイスのサイズ排除メカニズムを通過させ、DNAをマイクロ流体チャネルに結合させて、次いで上記のとおり結合されたDNAを溶出することによって、DNAをサンプル中の非DNA分子から分離する。溶出されたDNAを含むサンプルは、二つのナノワイヤセンサ350:ターゲット核酸分子に特異的に結合したPNAを伴う第一ナノワイヤセンサ350(サンプルナノワイヤセンサ350)と、ターゲット核酸分子に結合したPNAを具えていない第二ナノワイヤセンサ350(サンプルナノワイヤセンサ350)に、サンプル中のターゲット分子がPNAとハイブリダイズする条件下で、適用される。両方の検知デバイスに同様に影響を与える血液サンプル中のターゲットDNA以外のシグナルは、ナノスケールで二つのナノワイヤセンサ350からの反応差を用いて取り除かれる(サンプルナノワイヤセンサ350の信号から制御ナノワイヤセンサ350のシグナルを引く)。
【0093】
一のナノワイヤセンサ内での分別検出と二つのNW−FET
少なくとも二セットのSiNW−FETと制御電極356:第一SiNW−FETと捕捉PNAsで機能化した第一制御電極356から成る一セットと第二SiNW FETと捕捉PNAsを有さない第二制御電極356を含む使い捨ての単回使用テストカードカートリッジ器具を用意する。追加のセットは、追加のSiNW−FETと様々な捕捉PNAsで機能化した制御電極356である。SiNW−FETは、両方のセットで同じものである(電流−電圧特性とゲート応答に関して同様の性能を有している)。この器具は、同じ入口を共有する少なくとも二つのマイクロ流体チャネルを具える。各チャネルは一のSiNW−FETを具える。溶出されたDNAサンプルはマイクロ流体チャネルに流れ込み、各チャネル内に配置されたSiNW−FETからのシグナルを、検出手段で検出して比較する。
【0094】
本発明のその他の態様は、当業者には明らかであり、ここに繰り返し記載する必要はない。使用されている用語や表現は、説明の用語として使用され用語を限定するものではなく、それらの用語と表現の使用において、ここに記載された特徴の同等物又はこれらの一部を排除することを意図するものではなく、発明の範囲内において様々な修正は可能であると認識される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の成分を分離する器具であって、
複数の孔を規定している濾過表面を有する第一分離チャンバと;
前記第一分離チャンバと流体連通するサンプル入口であって、前記濾過表面に対し実質的に垂直な方向に前記サンプルを前記第一分離チャンバに導入するよう構成されたサンプル入口と;
前記第一分離チャンバと流体連通する捕捉チャネルであって、特にターゲットとされている前記孔より大きい成分の少なくとも一つを選択的に結合させるために捕捉剤で処理された壁を有する捕捉チャネルと;
前記第一分離チャンバと流体連通するバッファ入口であって、前記濾過表面に実質的に平行な方向に前記第一分離チャンバにバッファを導入して前記孔より大きい成分を前記捕捉チャネルに押し出すように構成した前記バッファ入口と;を具え、
前記濾過表面が、前記孔より小さい成分を通過させ、前記孔より大きい成分を前記第一分離チャンバに保持しており;
前記孔より大きい成分が前記捕捉チャネルを通過するときに、前記捕捉チャネルの壁が前記孔より大きい成分の少なくとも一つに選択的に結合することを特徴とする器具。
【請求項2】
前記濾過表面が、約0.01mlから10mlのサンプルを受けることができることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記濾過表面が、約1mm×1mmから100mm×100mmのサイズを有することを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項4】
前記濾過表面が、少なくとも50%の多孔率を有することを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項5】
前記サンプルが、全血であることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項6】
前記孔が、約1μmの直径を有することを特徴とする請求項5に記載の器具。
【請求項7】
前記孔より小さい成分が、血漿を含むことを特徴とする請求項6に記載の器具。
【請求項8】
前記孔が、約5μmの直径を有することを特徴とする請求項5に記載の器具。
【請求項9】
前記孔より大きい成分が、白血球を含むことを特徴とする請求項8に記載の器具。
【請求項10】
前記孔が、約16μmの直径を有することを特徴とする請求項5に記載の器具。
【請求項11】
前記孔より大きい成分が、大型白血球及び循環腫瘍細胞(CTCs)を含むことを特徴とする請求項10に記載の器具。
【請求項12】
前記サンプ入口が、約0.5mmから10mmの直径を有することを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項13】
前記捕捉チャネルが、蛇行経路を有することを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項14】
前記捕捉チャネルが、約20μmから1000μmの幅を有することを特徴とする請求項1の器具。
【請求項15】
前記捕捉チャネルが、約0.1cmから10cmの長さを有することを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項16】
前記捕捉チャネルが、角度を有する複数のターンを構成することを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項17】
前記捕捉剤が、抗体、ペプチド、小分子、又はアプタマーであることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項18】
前記バッファ入口が、バッファトラフを具え、該バッファトラフが、実質的に前記濾過表面の全側部に渡って延びており、前記バッファ入口が、バッファを前記バッファトラフに導入するように構成され、前記バッファトラフが、バッファを前記濾過表面にあふれさせるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項19】
前記バッファトラフが、実質的に前記濾過表面と同じレベルに配置した頂部を有することを特徴とする請求項18に記載の器具。
【請求項20】
前記バッファ入口が、バッファ拡散器を具え、該バッファ拡散器が、実質的に前記濾過表面の全面にわたってバッファを拡げるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載に器具。
【請求項21】
サンプル中の成分を分離する方法であって、
複数の孔を規定している濾過表面を有する第一分離チャンバを提供するステップと;
前記濾過表面に対して実質的に垂直方向に前記第一分離チャンバにサンプルを導入するステップであって、前記濾過表面が、前記孔より小さい成分を通過させ、前記孔より大きい成分を前記第一分離チャンバに保持するステップと;
前記第一分離チャンバと流体連通する捕捉チャネルを提供するステップであって、前記捕捉チャネルが、前記孔より大きい成分の少なくとも一つを選択的に結合させるために捕捉剤で処理された壁を有するステップと;
前記孔より大きい成分を前記捕捉チャネルに押し出すためにバッファを前記濾過表面に対して実質的に平行方向に導入するステップであって、前記孔より大きい成分が前記捕捉チャネルを通過するとき、前記捕捉チャネルの壁が前記孔より大きい成分の少なくとも一つと選択的に結合するステップと;を具えることを特徴とする方法。
【請求項22】
サンプル中の成分を分離する器具であって、
複数の孔を規定している濾過表面を有する第一分離チャンバと;
前記第一分離チャンバと流体連通するサンプル入口であって、前記濾過表面に対して実質的に垂直方向に前記第一分離チャンバにサンプルを導入するよう構成されたサンプル入口と;
前記第一分離チャンバと流体連通するバッファ入口であって、前記孔より大きい成分を前記濾過表面から押し出すために実質的に前記濾過表面に平行方向に前記第一分離チャンバにバッファを導入するように構成されたバッファ入口と;を具え、
前記濾過表面が、前記孔より小さい成分を通過させ、前記孔より大きい成分を第一分離チャンバに保持していることを特徴とする器具。
【請求項23】
請求項22に記載の器具がさらに、
前記第一分離チャンバと流体連通する捕捉チャネルであって、前記濾過表面から前記孔より大きい成分を受けるように構成され、前記孔より大きい成分の少なくとも一つを選択的に結合するよう捕捉剤で処理された壁を有する捕捉チャネルであって、当該捕捉チャネルの壁が、前記孔より大きい成分が前記捕捉チャネルを通過するときに、前記孔より大きい成分の少なくとも一つを選択的に結合させる、捕捉チャネルを具えることを特徴とする器具。
【請求項24】
サンプル中の特定の物質の量を定量化する器具であって、
ベースと;
前記ベースに接続されたソース電極と;
前記ベースに接続されたドレイン電極であって、前記ソース電極より低い電位を有するドレイン電極と;
前記ソース電極及び前記ドレイン電極に接続された半導体ナノワイヤと;及び
前記ベースに接続された制御電極と;を具え、
前記制御電極の表面の少なくとも一部が前記物質に選択的に結合する捕捉剤で処理されており、
前記ナノワイヤを流れる電流の量が、前記制御電極に印加された電圧に対応し、前記制御電極に結合された前記物質の量に影響されることを特徴とする器具。
【請求項25】
前記ナノワイヤが、約1nmから0.99μmの幅を有することを特徴とする請求項24に記載の器具。
【請求項26】
前記ナノワイヤが、約1016から1020のホール又はドナーatoms/cmのレベルまでドープされることを特徴とする請求項24に記載の器具。
【請求項27】
前記制御電極が、約5μm×5μmから約500μm×500μmの長さと幅を有することを特徴とする請求項24に記載の器具。
【請求項28】
前記制御電極が、約10nmから200nmの厚さを有することを特徴とする請求項24に記載の器具。
【請求項29】
前記捕捉剤が、生体分子に結合するペプチド核酸(PNA)、抗体、アプタマー、又は小ペプチドであることを特徴とする請求項24に記載の器具。
【請求項30】
前記制御電極上の前記捕捉剤が、約0.1nmから100nmの厚さを有する層を形成していることを特徴とする請求項24に記載の器具。
【請求項31】
サンプル中の特定の物質の量を定量化する器具であって、
サンプルを含有するよう構成されたテストチャンバと;
ソース電極と;
ドレイン電極であって、前記ソース電極より低い電位を有する前記ドレイン電極と;
前記テストチャンバ内に少なくとも部分的に配置された半導体ナノワイヤであって、前記ソース電極及び前記ドレイン電極に接続された半導体ナノワイヤと;
前記ナノワイヤを流れる電流の量を測定する検出器と;及び
前記テストチャンバ内に少なくとも部分的に配置された制御電極と;を具え、
前記制御電極の表面の少なくとも一部が、前記物質に選択的に結合する捕捉剤で処理されており、
前記ナノワイヤを通過する電流の量は、前記制御電極に印加された電圧に対応し、前記制御電極に結合する前記物質の量に影響されることを特徴とする器具。
【請求項32】
前記ナノワイヤが、約1nmから0.99μmの幅を有することを特徴とする請求項31に記載の器具。
【請求項33】
前記ナノワイヤが、約1016から1020のホール又はドナーatoms/cmのレベルまでドープされることを特徴とする請求項31に記載の器具。
【請求項34】
前記制御電極が、約5μm×5μmから約500μm×500μmの長さと幅を有することを特徴とする請求項31に記載の器具。
【請求項35】
前記制御電極が、約10nmから200nmの厚さを有することを特徴とする請求項31に記載の器具。
【請求項36】
前記捕捉剤が、生体分子に結合するペプチド核酸(PNA)、抗体、アプタマー、又は小ペプチドであることを特徴とする請求項31に記載の器具。
【請求項37】
前記制御電極上の前記捕捉剤が、約0.1nmから100nmの厚さを有する層を形成することを特徴とする請求項31に記載の器具。
【請求項38】
サンプル中の粒子を検出する器具であって、
主フローチャネルと;
前記主フローチャネルに流体連通するバッファ導入チャネルであって、前記主フローチャネル内のサンプル中の粒子を流体力学的に集中させるようにバッファを主フローチャネルに導入することができるバッファ導入チャネルと;
主フローチャネルの第一と第二の対向する側にそれぞれ流体連通する第一と第二塩橋チャンバであって、少なくとも部分的に寒天が充填されている第一と第二塩橋チャンバと;
前記第一と第二塩橋チャンバにそれぞれ流体連通する第一と第二電解質チャンバであって、少なくとも部分的に電解質が充填されている第一と第二電解質チャンバと;
前記第一と第二電解質チャンバ内にそれぞれ配置された第一と第二電極であって、励起シグナルを前記第一と第二電解質チャンバ及び記第一と第二塩橋チャンバにそれぞれ適用することができる第一と第二電極と;
前記第一と第二塩橋チャンバ間のインピーダンスを測定するために前記第一と第二電極に接続されたインピーダンス分析器と;を具え、
前記主フローチャネルと前記第一と第二塩橋チャンバを通過する粒子が、前記励起シグナルが適用される間に前記第一と第二塩橋チャンバ間のインピーダンスに検出可能な変化を生じさせることを特徴する器具。
【請求項39】
前記第一と第二塩橋チャンバが、前記第一と第二の連結チャネルを通って前記主フローチャネルの第一と第二の対向する側に各々流体連通していることを特徴とする請求項38に記載の器具。
【請求項40】
前記第一と第二の連結チャネルが、約0.001mmから0.05mmの幅を有することを特徴とする請求項38に記載の器具。
【請求項41】
前記第一と第二の連結チャネルが、約0.01mmから0.2mmの長さを有することを特徴請求項38に記載の器具。
【請求項42】
請求項38に記載の器具がさらに、
前記第一と第二塩橋チャンバにそれぞれ連結された第一と第二寒天入口であって、前記第一と第二塩橋チャンバを容易に寒天で充填するように構成された第一と第二寒天入口を具えることを特徴とする器具。
【請求項43】
前記主フローチャネルが、約0.05mmから0.5mmの幅を有することを特徴とする請求項38に記載の器具。
【請求項44】
前記寒天が、約2−10%の寒天と1M KCl重量/容量の混合物であることを特徴とする請求項38に記載の器具。
【請求項45】
前記励起シグナルが、約0.01Vから10Vの電圧と約50Hzから10kHzの周波数を有することを特徴とする請求項38に記載の器具。
【請求項46】
サンプル中の粒子の数を計算する方法であって、
前記粒子を主フローチャネルに流体力学的に集中させるステップと;
前記主フローチャネルの第一と第二の対向する側にそれぞれ流体連通する第一と第二塩橋チャンバに励起シグナルを適用するステップであって、前記第一と第二塩橋チャンバが寒天で充填されているステップと;
前記第一と第二塩橋チャンバ間に前記粒子を通過させるステップと;
前記粒子が前記第一と第二塩橋チャンバ間を通過するとき、前記第一と第二塩橋チャンバ間のインピーダンスの変化を検出することにより前記粒子の数を計算するステップと;を具えることを特徴とする方法。
【請求項47】
前記粒子が、前記主フローチャネルの中央に集まることを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記粒子が、前記主フローチャネルの片側に集まることを特徴とする請求項46に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【公表番号】特表2012−511156(P2012−511156A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539779(P2011−539779)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/067025
【国際公開番号】WO2010/065967
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(511130667)ナノアイヴイディー,インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】NANOIVD,INC.
【Fターム(参考)】