ポイント・オブ・ケア検査のための改善された品質保証システムおよび方法
ポイント・オブ・ケア検査のための改善された品質保証システムおよび方法を開示する。本発明は、分析システムに液体ベースの品質制御材料を流す必要なしにポイント・オブ・ケアで血液分析システムなどにより行う試験室品質検査のための品質保証を提供する。定量的生物学的サンプル検査システムの品質保証は、品質制御サンプルを用いずに、検査システムで用いる構成要素の熱および時間ストレスを監視することにより行う。熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えるときは構成要素が品質保証に失敗したことを示す警報情報を生成する。または本発明は、分析システムに液体ベースの品質制御材料を流す必要を最小にすることにより、ポイント・オブ・ケアで血液分析システムなどにより行う試験室品質検査のための品質保証を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生理的サンプル検査器具に適用される品質保証方法に関する。より特定すると、本発明はポイント・オブ・ケア検査のための改善された品質保証システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生理的サンプル検査器具に適用される従来の品質保証方法はいくつかある。かかる器具を人体に用いる場合は、品質保証プロセスが一般に政府(米国内では例えば食品医薬品局(FDA))により規制されている。患者への店頭販売で現在承認されている検査および器具では、品質保証は使用可能な時間(すなわち、有効期限)を決める工場検査により与えられる。米国では、これは臨床試験室改善修正条項放棄検査(Clinical Laboratory Improvements Amendments(CLIA)waived tests)と呼ばれている。かかるタイプの器具は、家庭の妊娠検査の場合のような定性的結果、または家庭用の血糖検査器具の場合のような定量的結果を与える。しかし、後者のグループに要求される正確さおよび精度は、規制された臨床血液検査試験室が提供する質と同じレベルとは見なされない。
【0003】
臨床試験室で用いることが承認されている検査および器具は、一般に異なる一連の規制でカバーされている。かかるシステムは主として優れた質の定量的結果を与えるよう設計されており、報告されている正確さは通常10%以上である。検査システムは熟練したユーザ(例えば、臨床試験室の技術者)が運転することが要求されており、また一般にシステムは中程度の複雑さであると規制当局により分類されている。当業者が認識するように、豊富な背景情報がFDAウエブサイトで利用できる。かかるシステムに関して、システムが正常に動作することを保証するため、現在は液体ベースの品質制御材料(quality control materials)を一定間隔で流すことが要求されている。
【0004】
かかる液体制御(liquid controls)は、所定の検査について期待される範囲の値を持つものが供給されている。したがって、或るシステムを液体制御材料で検査するとき、システムが報告する値はその所定の範囲内にあるはずである。システムが報告する結果が範囲外にあるときは、システムを修理する必要がある。品質を検査して計器を保全するというこのプロセスは訓練された試験室の技術者が行う。全ての分析システムが常にその仕様内で動作することが望ましいが、この設備は複雑なのでその要望に反することが多い。注目すべきであるが、試験室用機器メーカーが設計するシステムがこれまで前提としてきたのは、かかるシステムは液体品質制御検査を行うとときどき仕様外になることと、仕様内に戻せるように技術者を特別に訓練してシステムを修理することである。
【0005】
数年前から、ポイント・オブ・ケア検査またはベッドサイド検査と呼ばれる血液検査の新しい方法が行われている。かかる検査は、一般に病院内(例えば、緊急治療室や手術室)ではあるが、臨床試験室の外で行われる。かかる検査は、医者の診察室や一時的なまたは移動する場所(例えば、陸軍移動外科病院(MASHユニット)、救急車、観光船などの場所)でも行ってよい。ポイント・オブ・ケア検査用のいくつかの技術が開発されており、試験室並みの品質検査結果を出す能力を有するものもある(例えば、East Windsor,NJのi−STAT社製のシステム)。言い換えると、かかるポイント・オブ・ケア検査システムは試験室検査と同等または実質的に同等のレベルの正確さおよび精度を有する。かかる新しいシステムは一般に、読取機と、1回使用の使い捨て検査器具すなわちカートリッジに基づいている。
【0006】
ポイント・オブ・ケア血液検査システムの主な特徴の1つは、患者の血液サンプルを検査のために中央の試験室に送るという時間のかかる作業がなくなったことである。かかるシステムは操作が非常に簡単なので、看護師はベッドサイドで試験室と同等の質の、信頼性の高い定量的分析結果を得ることができる。例えば、看護師は検査の必要なパネルを付けたカートリッジを選び、血液サンプルを採取し、カートリッジ内に入れ、カートリッジを密封し、読取装置内に挿入する。読取装置は検査サイクル(すなわち、検査を行うのに必要なすべての他の分析ステップ)を実行する。このように簡単なので、医者は患者の生理的状態を迅速に洞察することができる。また、評価のための時間が短くなるので、かかるポイント・オブ・ケア・システムにより医者は適当な処置を迅速に決定して、患者を治療できる可能性を高めることができる。
【0007】
病院内の緊急治療室または他の救急処置の現場では、個々の患者に必要な血液検査のタイプが異なる。このように、ポイント・オブ・ケア・システムは一般に血液検査の種々のメニューの一連の使い捨てカートリッジを提供する。検査対象はナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、酸素分圧(pO2)、二酸化炭素分圧(pCO2)、pH、グルコース、ヘマトクリット、乳酸塩、血中尿素窒素(BUN)およびクレアチニンであるが、更に他の検査対象として含まれる(が限定されない)のは、プロトロンビン時間(PT)、活性化凝固時間(ACT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、トロポニンI、トロポニンT、クレアチンキナーゼMB(CKMB)、脳ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、NTproBNPおよびC反応性蛋白(CRP)などである。当業者に周知のように、これらの検査結果から複数の他のパラメータ(例えば、塩基過剰(BE)や百分率酸素飽和度(%O2飽和))を計算することができる。これらの検査は、1回使用の器具(例えば、使い捨てカートリッジ)として複数の組合せでユーザに提供してよい。例えばI−STATシステムは、1つから8つの範囲の血液検査のメニューを持つ10種類以上のカートリッジを病院に提供する。
【0008】
或る場合には、i−STAT社などが供給するカートリッジは、冷蔵状態では約6ヶ月から約9ヶ月の品質保証期限を有するが、例えば室温では約2週間(すなわち、より特定すると最高約30℃では約2週間)というように品質保証期限は限定される。そのため、病院は一般にカートリッジを中央の冷蔵場所に保管し、要求に応じてカートリッジを特定の部局に届ける。これらの部局は冷蔵設備を有することも有しないこともあり、これは保有する在庫に影響する。或る部局では一般的な保管設備が限られており、かかる状態は保有する在庫のレベルに影響する。病院などのユーザは複数のタイプのカートリッジを用いることがあり、各ポイント・オブ・ケア検査の場所で検査結果の品質を保証したいというニーズがある。かかる場所は、例えば、緊急治療室(ER)、重症管理室(CCU)、小児集中治療室(PICU)、集中治療室(ICU)、腎臓透析室(RDU)、手術室(OR)、心臓血管手術室(CVOR)、および一般病棟(GW)を含んでよい。または、ユーザは医者の診察室や訪問看護師サービスでよい。しかし品質を保証したいというニーズは同じである。
【0009】
病院では、ポイント・オブ・ケア血液検査機能を最近導入したために品質保証の新しい要求が生まれた。かかる要求は、所定の病院内の複数の場所で複数のタイプの使い捨て血液検査カートリッジが用いられることから起こる。しかし、病院の目的は各使用現場でカートリッジのタイプ毎に高いレベルの品質保証を与えることである。
【0010】
従来は、試験室品質結果を提供するシステムではユーザが或る形の液体品質制御を流すよう規制されていた。例えば、ハンドヘルド読取機と1回使用のカートリッジとに基づくi−STATシステムでは、顧客は受領したときに、カートリッジの出荷品から統計的サンプルを取って検査する必要がある。かかるカートリッジが仕様内であることが分かると、顧客は全ての出荷品をポイント・オブ・ケア検査に用いてよい。例えば、i−STATシステムは特定のカートリッジタイプでヘマトクリットおよび複数の血液化学品の結果を報告するが、このシステムに適用された1つの方法では、4個のカートリッジを用いる(2個は異なるヘマトクリット制御流体を、更に2個は2つの異なる化学品制御流体を用いる)必要があった。
【0011】
より特定すると、カートリッジは一般に所定数のユニット(例えば、1つのタイプの25個のカートリッジ)を箱に入れてメーカからユーザに提供する。従来の品質保証方法では、これらのカートリッジの統計的なサンプルを制御流体で検査して合格した後に、残りを患者用として出すことが必要である。かかる方法の起こりは、定量的血液検査システムが発展した歴史にある。従来は、フローセルまたはキュベットなどの分析用の構成要素を異なるサンプルで何度も再使用していた。システムを制御流体で検査して分かったことであるが、このように再使用すると分析出力がドリフトすることがある。システムが仕様外で動作していることが分かると修理する必要がある。かかるシステムは一般に中央の病院試験室にあるので、このために特に訓練された熟練した技術者が修理した。
【0012】
かかる一般的なタイプの液体制御検査は、測定を行うときに光キュベットチャンバや電極などの同じ検出器を何度も再使用する多くの試験室ベースのシステムに適している。例えば、電極のアレイ(例えば、pH、pCO2、pO2など)を有する従来の血液ガス分析器は、較正流体(calibrant fluid)または気体を流し、次にサンプルを流し、最後に洗浄流体を流すという多くの反復検査サイクルを行う。サンプルを流す度に自動洗浄工程を行っても、かかる電極は残留サンプル成分(例えば、蛋白質など)により時間と共に汚れる。この場合は、液体制御をときどき用いれば、反復使用した構成要素(例えば、電極)が仕様からドリフトしたことを見つけて数時間以内に修正してシステムを保証することができる。対照的に、i−STATシステムなどのように、1度だけ使用して廃棄する電極またはその他の検出器具に基づくシステムでは、再使用する検出器具に共通して起こる使用中のドリフトのようなものは生じない。
【0013】
当業者が認識するように、性能特性は検査システムの開発中に決定される。精度のデータは一般に複数の検査現場で収集し、市場で確立された1つ以上のシステムに対して方法比較を行う。一般に、デミング(または一般デミング)回帰分析を用いて、新しい方法と古い方法との間の不正確さの推定を行って、推定値の標準誤差(Sy.x)と相関係数(r)とを与える。これは例えば、P.J.CornbleetおよびN.Gochman著、「方法比較分析における不正確な最小二乗回帰係数(Incorrect Least Squares Regression Coefficients in Method−Comparison Analysis)」、Clinical Chemistry 25:3,432(1979年)、およびR.F.Martin著、「方法比較研究における系統的バイアスおよびその信頼間隔の推定のための一般デミング回帰(General Deming Regression for Estimating Systematic Bias and Its Confidence Interval in Method−Comparison Studies)」、Clinical Chemistry 46:100−104(2000年1月)に記述されている。
【0014】
また制御流体の精度データは、平均(M)、標準偏差(SD)、および百分率変動係数(%CV)を得るためにも決定される。例として、次の表は制御流体を異なるレベルで用いた種々の検査における上述のi−STATシステムの精度データの概要を示す。これらの値は約10%以上の精度の定量的結果を与える試験室品質のシステムを示す。
【0015】
【表1−1】
【表1−2】
【0016】
例えば、血液化学品およびヘマトクリットの検査を含む、カートリッジのための品質保証を行う従来の方法(i−STATシステムが用いているような)は次の通りである。カートリッジを断熱箱内にアイスパックと共に納めてメーカから出荷し、2営業日以内に顧客に届ける。箱の中には、或る期間にわたって高温を経験すると変色する赤いワックスを含む温度片がある。変色が起こった場合は、ユーザは、出荷品を返却するかまたは供給者に連絡して指示を待つよう指示される。カートリッジが安全に到着しかつ温度片が変色していない場合は、カートリッジを冷蔵場所に移す。この時点で4個のカートリッジを取り出して、4つの異なる制御流体でチェックする。かかるチェックは、異なる化学値を表す2つの制御流体と2つの異なるヘマトクリット・レベルを表す2つの制御流体とで行う。4個のカートリッジの報告結果がその制御流体の期待値と一致する場合は、残りのカートリッジを冷蔵場所から取り出して1つ以上のポイント・オブ・ケアの場所に送ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第4,098,652号明細書
【特許文献2】米国特許第4,933,048号明細書
【特許文献3】米国特許第5,096,669号明細書
【特許文献4】米国特許第5,112,455号明細書
【特許文献5】米国特許第5,124,661号明細書
【特許文献6】米国特許第5,200,051号明細書
【特許文献7】米国特許第5,212,050号明細書
【特許文献8】米国特許第5,447,440号明細書
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】P.J.CornbleetおよびN.Gochman著、「方法比較分析における不正確最小二乗回帰係数」、Clinical Chemistry 25:3,432(1979年)
【非特許文献2】R.F.Martinの「方法比較研究における系統的バイアスおよびその信頼間隔の推定のための一般デミング回帰」、Clinical Chemistry 46:100−104(2000年1月)
【非特許文献3】「ワクチン・コールドチェーンの維持および管理のためのガイドライン」、MMWR、2003年10月
【非特許文献4】権利放棄のためのFDAドラフトガイダンス(2005年9月)
【非特許文献5】米国FDA臨床試験室改善修正案(CLIA)
【非特許文献6】R.L.Magin著、「大きな単層リポソームからの温度依存の薬物の放出」、Cancer Drug Deliv.,1、109-17、1984年
【非特許文献7】S.B.Tiwari著、「温度に敏感なイソマツのリポソーム」、J.Drug Targeting 10、585−91、2002年
【非特許文献8】P.Chandaroy著、「リポソーム封入プルロニックF127からの温度制御した内容の放出」J.Controlled Release、76、27−37、2001年
【非特許文献9】H.Hayashi著、「Nイソプロピルアクリルアミドの共重合体を用いる温度に敏感なリポソーム」、Bioconj.Chem.10、412-8、1999年。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
かかる運営方法は、例えば、毎年かなりの数のカートリッジを使う病院などの大きな施設の中のポイント・オブ・ケアの場所では一般に受け入れられるが、医者の診察室などの他のポイント・オブ・ケアの場所にはあまり適していない。詳しく述べると、医者は病院に比べて一般に注文するカートリッジの数が少なく、また使う頻度も小さい。したがって、ポイント・オブ・ケアで試験室品質結果を与えようとして1回使用の検査器具に液体制御を流すことは顧客によっては面倒であり、また場合によってはこの技術を用いる意欲を減退させる。したがって、医者の診察室やその他の頻度の小さいポイント・オブ・ケア・ユーザ(例えば、介護ホーム)用の、管理が簡単な品質検査方法が必要である。また、1回使用の分析器具に基づく新たな検査システムの開発とポイント・オブ・ケアの現場で検査サービスを提供するという要望とが重なって、ポイント・オブ・ケア検査のニーズにより良く合致する品質制御方法に対するニーズが生まれた。そのため、好ましくは顧客が液体品質制御を用いることを必要とせずに品質保証を提供するための改善された手段ニーズが存在する。更に、顧客が用いる液体品質制御の数を大幅に減らす、品質保証を提供するための改善された手段に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
ポイント・オブ・ケア検査のための改善された品質保証システムおよび方法のためのシステムおよび方法を開示する。本発明の例示の実施の形態に関して、本発明の第1の態様では、品質制御サンプルを用いずに定量的生理的サンプル検査システムの品質保証を行うためのシステムは熱および時間ストレス(thermal and temporal stress)監視モジュールを含む。熱および時間ストレス監視モジュールは検査システムで用いる構成要素の熱および時間ストレスを監視する。システムは熱および時間ストレス監視モジュールと通信する品質保証失敗警報モジュールを含む。品質保証失敗警報モジュールは、熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えるときは構成要素が品質保証に失敗したことを示す警報情報を生成する。
【0021】
第1の態様では、生理的サンプルは、血液、血漿、血清、唾液、尿、脳脊髄液、およびその修正された形の1つを含んでよい。品質制御サンプルは液体制御などを含んでよい。熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えないときは構成要素を検査システムで用いてよい。熱および時間ストレス監視モジュールは検査システムから分離してよく、また検査システムと実質的に同じ熱環境内にあってよい。または、熱および時間ストレス監視モジュールは検査システムと統合してよい。熱および時間ストレス監視モジュールは構成要素に関連する温度・時間指標を監視してよい。例えば、熱および時間ストレス監視モジュールは、導電ワックス、温度依存の液晶、電位差測定センサのベースライン較正電位のシフト、酵素阻害剤のリポソーム放出、導電液体のリポソーム放出、高イオン濃度のリポソーム放出、電気化学的検出可能な分子またはイオンのリポソーム放出、サーミスタ、熱電対、熱インク、温度依存の化学反応、温度依存の変色パッチ、および材料の温度依存の相変化の少なくとも1つを含んでよい。
【0022】
第1の態様では、構成要素はサンプル検査カートリッジなどを含んでよい。検査システムは血液分析システムなどを含んでよい。血液分析システムは携帯用構成要素読取機などを含んでよい。例えば、構成要素は1回使用の血液検査カートリッジなどの血液検査カートリッジを含んでよい。血液検査カートリッジは少なくとも1個の電気化学センサを含んでよい。構成要素はセンサなどを含んでよい。例えばセンサは、電気化学センサ、光センサ、発光センサ、蛍光センサ、電流測定センサ、電位差測定センサ、電気伝導度測定センサ、導波管、消失センサ、バイオセンサ、表面プラズモン共鳴センサ、音波センサ、反射率センサの1つを含んでよい。
【0023】
構成要素は所定の温度より低い冷蔵容器内に保管してよい。構成要素は検査システムで用いる前に冷蔵容器から取り出してよい。構成要素は検査システムで用いる前に周囲温度に達するようにしてよい。検査システムは検体(analyte)を決定するための検査を行ってよい。例えば検体は、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、グルコース、乳酸塩、クレアチニン、尿素、ヘマトクリット、プロトロンビン時間、活性化凝固時間、活性化部分トロンボプラスチン時間、トロポニンI、トロポニンT、クレアチンキナーゼMB、脳ナトリウム利尿ペプチド、NTproBNP、C反応性蛋白、pO2、pCO2、およびpHの1つを含んでよい。
【0024】
第1の態様では、構成要素は1バッチの実質的に同じ構成要素に関連してよい。品質保証失敗警報モジュールは、構成要素の熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えるときはそのバッチが品質保証に失敗したことを示す警報情報を生成してよい。検査システムは構成要素を用いる前にフェールセイフチェックを少なくとも1回行ってよい。例えば、フェールセイフチェックは、周囲温度が所定の範囲内にあることの確認、構成要素が故障でないことの確認、および検査システムが故障でないことの確認の少なくとも1つを含んでよい。検査システムが故障でないことの確認は、検査システムに関連する電気コネクタの電気的完全性の検査と、検査システムに関連する演算増幅器の動作の完全性の検査の少なくとも1つを含んでよい。
【0025】
第1の態様では、検査システムは電子シミュレータを含んでよい。電子シミュレータは構成要素が生成する信号をシミュレートしてよい。電子シミュレータは、検査システムに関連する電気コネクタの電気的完全性と検査システムに関連する演算増幅器の動作の完全性の少なくとも1つを検査するためのシミュレーション信号を生成してよい。検査システムはディスプレイモジュールを含んでよい。ディスプレイモジュールは警報情報に従って警報を表示してよい。検査システムは、構成要素が品質保証に失敗したときは検査結果の表示をやめてよい。
【0026】
システムは品質保証失敗警報モジュールと通信するログモジュールを含んでよい。ログモジュールは複数の構成要素の熱および時間ストレスのログを保持してよい。所定の熱・時間ストレスしきい値は検査システムの全許容誤差に従って生成してよい。所定の熱・時間ストレスしきい値は熱ストレスと時間ストレスの複数の組合せを含んでよい。所定の熱・時間ストレスしきい値は所定の温度・時間プロフィールを含んでよい。
【0027】
本発明の第2の態様では、定量的電気化学的生理的サンプル検査システムの熱および時間ストレス品質保証を評価するためのシステムは第1の電気化学センサおよび第2の電気化学センサを含む。第1および第2の電気化学センサは較正流体に接触する。第1の電気化学センサは較正流体内の第1の検体の濃度に関連する第1の較正電圧を第1のチェックしきい値に従って決定する。第2の電気化学センサは較正流体内の第2の検体の濃度に関連する第2の較正電圧を第2のチェックしきい値に従って決定する。第1および第2のチェックしきい値を共に超えるときは検査システムは生理的サンプル検査を行う資格を失う。第2の態様では、第1の電気化学センサはナトリウムイオン選択電極を含んでよい。第2の電気化学センサはカルシウムイオン選択電極を含んでよい。
【0028】
本発明の第3の態様では、定量的電気化学的生理的サンプル検査システムの熱および時間ストレス品質保証のためのシステムは複数の電気化学センサを含む。複数の電気化学センサは較正流体に接触する。システムは複数の電気化学センサと通信する較正回路を含む。較正回路は、複数の電気化学センサの部分集合の電気化学センサ毎に較正流体内の検体の濃度に関連する較正パラメータを所定のチェックしきい値に従って決定する。部分集合の電気化学センサ毎に所定のチェックしきい値を超えるときは、較正回路は生理的サンプル検査を行う資格を検査システムから奪う。
【0029】
第3の態様では、電気化学センサの部分集合はカルシウムイオン選択電極およびBUN電極を含んでよい。または、電気化学センサの部分集合はナトリウムイオン選択電極、カルシウムイオン選択電極、およびBUN電極を含んでよい。較正パラメータは較正電圧を含んでよい。代替的に、較正パラメータは較正電圧ドリフト率を含んでよい。または、較正パラメータは較正電圧と較正電圧ドリフト率の組合せを含んでよい。複数の電気化学センサはそれぞれ、ナトリウムセンサ、カリウムセンサ、塩化物センサ、pHセンサ、pO2センサ、pCO2センサ、乳酸塩センサ、グルコースセンサ、クレアチニンセンサ、BUN電極、カルシウムセンサ、マグネシウムセンサ、およびヘマトクリットセンサの1つを含んでよい。
【0030】
本発明の第4の態様では、品質制御サンプルを流さずに行う定量的生理的サンプル検査システムの品質保証の方法は、検査システムで用いる構成要素の熱および時間ストレスを監視するステップと、熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えるときはその構成要素が品質保証に失敗したことを示す警報情報を生成するステップとを含む。
【0031】
第4の態様では、所定の熱・時間ストレスしきい値は検査システムの全許容誤差に従って生成してよい。所定の熱・時間ストレスしきい値は温度と時間の複数の組合せを含んでよい。熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えないときは構成要素を検査システムに用いてよい。監視するステップは、導電ワックス、温度依存の液晶、電位差測定センサのベースライン較正電位のシフト、酵素阻害剤のリポソーム放出、導電液体のリポソーム放出、高イオン濃度のリポソーム放出、電気化学的検出可能な分子またはイオンのリポソーム放出、サーミスタ、熱電対、熱インク、温度依存の化学反応、温度依存の変色パッチ、および材料の温度依存の相変化の少なくとも1つを用いて行ってよい。
【0032】
監視および生成するステップは、病院の中央試験室、衛星試験室、ポイント・オブ・ケアの場所、患者のベッドサイド、移動車両、および試験室サービス提供者の1つで行ってよい。検査システムは血液分析システムなどを含んでよい。血液分析システムは携帯用構成要素読取機などを含んでよい。構成要素は、1回使用の血液検査カートリッジなどの血液検査カートリッジを含んでよい。血液検査カートリッジは少なくとも1個の電気化学センサを含んでよい。生理的サンプルは、血液、血漿、血清、唾液、尿、脳脊髄液、およびその修正された形の1つを含んでよい。
【0033】
第4の態様では、この方法は以下のステップの1つ以上でよい。すなわち、構成要素を所定の温度より低い冷蔵容器内に保管するステップと、構成要素を所定の温度より低い冷蔵庫内に保管するステップと、検査システムで用いる前に構成要素を冷蔵庫から取り出すステップと、検査の実行に用いる前に構成要素を室温に達するようにするステップとである。品質制御サンプルは液体制御などを含んでよい。構成要素はセンサなどを含んでよい。例えば、センサは電気化学センサ、光センサ、発光センサ、蛍光センサ、電流測定センサ、電位差測定センサ、電気伝導度測定センサ、導波管、消失センサ、バイオセンサ、表面プラズモン共鳴センサ、音波センサ、および反射率センサの1つを含んでよい。検査システムは検体を決定するための検査を行ってよい。例えば検体は、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、グルコース、乳酸塩、クレアチニン、尿素、ヘマトクリット、プロトロンビン時間、活性化凝固時間、活性化部分トロンボプラスチン時間、トロポニンI、トロポニンT、クレアチンキナーゼMB、脳ナトリウム利尿ペプチド、NTproBNP、C反応性蛋白、pO2、pCO2、およびpHの1つを含んでよい。
【0034】
第4の態様では、構成要素は1バッチの実質的に同じ構成要素に関連してよい。この方法は、構成要素の熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えるときはそのバッチが品質保証に失敗したことを示す警報情報を生成するステップを含んでよい。検査システムは構成要素を用いる前にフェールセイフチェックを少なくとも1回行ってよい。例えば、検査システムはフェールセイフチェックとして次のステップの少なくとも1つを行ってよい。すなわち、(i)周囲温度が所定の範囲内にあることを確認するステップと、(ii)構成要素が故障でないことを確認するステップと、(iii)検査システムが故障でないことを確認するステップとである。ステップ(iii)では、検査システムは次のステップの少なくとも1つを行ってよい。すなわち、(1)検査システムに関連する電気コネクタの電気的完全性を検査するステップと、(2)検査システムに関連する演算増幅器の動作の完全性を検査するステップとである。
【0035】
この方法は構成要素が生成する信号をシミュレートするステップを含んでよい。シミュレートするステップは次のステップの1つ以上を含んでよい。すなわち、検査システムに関連する電気コネクタの電気的完全性を検査するためのシミュレーション信号を生成するステップと、検査システムに関連する演算増幅器の動作の完全性を検査するためのシミュレーション信号を生成するステップとである。この方法は次のステップの1つ以上を含んでよい。すなわち、警報情報に従って警報を表示するステップと、構成要素が品質保証に失敗したときは検査結果の表示をやめるステップと、複数の構成要素の熱および時間ストレスのログを保存するステップとである。
【0036】
本発明の第5の態様では、1つ以上の液体品質制御サンプルを流す必要のない定量的血液サンプル検査システムの品質保証の方法であって、検査システムはポイント・オブ・ケア検査読取機と1つ以上の検査を行うための複数の1回使用の検査器具とを含み、また各検査は約10%以上の精度で行うものであり、この方法は、複数の1回使用の検査器具の少なくとも1個を熱および時間ストレスと所定の熱・時間ストレスしきい値とに従って監視するステップと、ポイント・オブ・ケア検査読取機で血液サンプルを検査するために、関連する熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えなかった1回使用の検査器具を選択するステップとを含む。
【0037】
本発明の第6の態様では、液体品質制御サンプルまたは一組の品質制御サンプルを流す必要のない定量的血液サンプル検査システムの品質保証の方法であって、検査システムは1つ以上の検査の選択されたメニューを行うための再使用可能な携帯用読取機および複数の1回使用の検査器具を含み、また各検査は約10%以上の精度で行うものであり、この方法は、各1回使用の検査器具に関連する時間・温度指標を調べることにより、各1回使用の検査機器が時間および熱ストレスに曝されたかどうかを所定の時間・温度ストレスしきい値に従って判定するステップと、時間・温度ストレスしきい値を超えなかった1回使用の検査器具について血液検査結果を報告するステップとを含む。
【0038】
本発明の第7の態様では、ポイント・オブ・ケア検査に用いる定量的血液サンプル検査システムの品質保証の方法であって、検査システムは血液サンプル内の検体の1回以上の検査を行うための再使用可能な携帯用読取機および1回使用の検査器具を含み、また各検体検査は約10%以上の精度で行うものであり、この方法は、サンプル内の所定の濃度の少なくとも1つの検体を含む単一の制御流体でバッチからの単一の検査器具を検査することにより、1バッチの1回使用の検査器具が熱および時間ストレスに曝されたかどうかを判定し、ただしこの検体は熱および時間ストレスが検査の全許容誤差の所定のしきい値より大きいことを示す検査結果を与えるように選択する、ステップと、検査結果が所定のしきい値より大きいときはこのバッチの検査器具が血液サンプル検査に用いるのに適さないことを示すステップとを含む。
【0039】
本発明の第8の態様では、定量的電気化学的生物的サンプル検査システムの熱ストレス品質保証の方法は、第1および第2の電気化学センサを較正流体に接触させるステップと、較正流体内の第1の検体の濃度に関連する第1の較正電圧を第1の熱チェックしきい値に従って決定するステップと、較正流体内の第2の検体の濃度に関連する第2の較正電圧を第2の熱チェックしきい値に従って決定するステップと、第1および第2の熱チェックしきい値を共に超えるときは生理的サンプル検査を行う資格を検査システムから奪うステップとを含む。例えば、第1の電気化学センサはナトリウムイオン選択電極を含んでよく、第2の電気化学センサはカルシウムイオン選択電極を含んでよい。
【0040】
本発明の第9の態様では、定量的電気化学的生物的サンプル検査システムの熱ストレス品質保証の方法は、複数の電気化学センサを較正流体に接触させるステップと、複数の電気化学センサの部分集合の電気化学センサ毎に較正流体内の検体の濃度に関連する較正パラメータを所定の熱チェックしきい値に従って決定するステップと、部分集合の電気化学センサ毎に所定の熱チェックしきい値を超えるときは生理的サンプル検査を行う資格を検査システムから奪うステップとを含む。
【0041】
本発明の第9の態様では、電気化学センサの部分集合はカルシウムイオン選択電極およびBUN電極を含んでよい。または、電気化学センサの部分集合はナトリウムイオン選択電極、カルシウムイオン選択電極、およびBUN電極を含んでよい。較正パラメータは較正電圧を含んでよい。代替的に、較正パラメータは較正電圧ドリフト率を含んでよい。または、較正パラメータは較正電圧と較正電圧ドリフト率の組合せを含んでよい。複数の電気化学センサはそれぞれ、ナトリウムセンサ、カリウムセンサ、塩化物センサ、pHセンサ、pO2センサ、pCO2センサ、乳酸塩センサ、グルコースセンサ、クレアチニンセンサ、BUN電極、カルシウムセンサ、マグネシウムセンサ、およびヘマトクリットセンサの1つを含んでよい。
【0042】
本発明の第10の態様では、品質制御サンプルを流さずに行う定量的生物的サンプル検査システムの品質保証の方法は、検査システムの構成要素の熱および時間ストレスを監視するステップと、構成要素を検査システムで用いて生理的サンプル検査を行うことが適切かどうかを構成要素の熱および時間ストレスと所定の熱・時間ストレスしきい値とに従って判定するステップとを含む。
【0043】
本発明の第11の態様では、品質制御サンプルを用いずに定量的生物的サンプル検査システムの品質保証を行うためのシステムは熱および時間ストレス監視モジュールを含む。熱および時間ストレス監視モジュールは検査システムで用いる構成要素の熱および時間ストレスを監視する。構成要素は1バッチの実質的に同じ構成要素に関連する。システムは熱および時間ストレス監視モジュールと通信する品質保証失敗警報モジュールを含む。品質保証失敗警報モジュールは、構成要素の熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えるときはバッチが品質保証に失敗したことを示す警報情報を生成する。
【0044】
本発明の第12の態様では、品質制御サンプルを流さずに行う定量的生物的サンプル検査システムの品質保証の方法は、検査システムで用いる構成要素の熱および時間ストレスを監視し、ただし、構成要素は1バッチの実質的に同じ構成要素に関連する、ステップと、構成要素の熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えるときはそのバッチが品質保証に失敗したことを示す警報情報を生成するステップとを含む。
【0045】
本発明の第13の態様では、品質制御サンプルを用いずに定量的生物的サンプル検査システムの品質保証を行うためのシステムは熱ストレス監視モジュールを含む。熱ストレス監視モジュールは検査システムで用いる構成要素の熱ストレスを監視する。システムは熱ストレス監視モジュールと通信する時間ストレス監視モジュールを含む。時間ストレス監視モジュールは検査システムで用いる構成要素の時間ストレスを監視する。システムは熱ストレス監視モジュールおよび時間ストレス監視モジュールと通信する品質保証失敗警報モジュールを含む。品質保証失敗警報モジュールは、熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えるときは構成要素が品質保証に失敗したという警報情報を生成する。
【0046】
本発明の第14の態様では、品質制御サンプルを用いずに定量的生物的サンプル検査システムの品質保証を行うためのシステムは熱および時間ストレスを監視するための手段を含む。熱および時間ストレス監視手段は検査システムで用いる構成要素の熱および時間ストレスを監視する。システムは熱および時間ストレス監視手段と通信する品質保証失敗を警報するための手段を含む。品質保証失敗警報手段は、熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えるときは構成要素が品質保証に失敗したことを示す警報情報を生成する。
【0047】
第14の態様では、生理的サンプルは、血液、血漿、血清、唾液、尿、脳脊髄液、およびその修正された形の1つを含んでよい。品質制御サンプルは液体制御などを含んでよい。熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えないときは構成要素を検査システムで用いてよい。熱および時間ストレス監視手段は検査システムから分離してよく、また検査システムと実質的に同じ熱的環境内にあってよい。または、熱および時間ストレス監視手段は検査システムと統合してよい。熱および時間ストレス監視手段は構成要素に関連する温度・時間指標を監視してよい。例えば、熱および時間ストレス監視手段は、導電ワックス、温度依存の液晶、電位差測定センサのベースライン較正電位のシフト、酵素阻害剤のリポソーム放出、導電液体のリポソーム放出、高イオン濃度のリポソーム放出、電気化学的検出可能な分子またはイオンのリポソーム放出、サーミスタ、熱電対、熱インク、温度依存の化学反応、温度依存の変色パッチ、および材料の温度依存の相変化の少なくとも1つを含んでよい。
【0048】
第14の態様では、構成要素はサンプル検査カートリッジなどを含んでよい。検査システムは血液分析システムなどを含んでよい。血液分析システムは携帯用構成要素読取機などを含んでよい。構成要素は、例えば1回使用の血液検査カートリッジなどの血液検査カートリッジを含んでよい。血液検査カートリッジは少なくとも1個の電気化学センサを含んでよい。構成要素はセンサなどを含んでよい。例えばセンサは、電気化学センサ、光センサ、発光センサ、蛍光センサ、電流測定センサ、電位差測定センサ、電気伝導度測定センサ、導波管、消失センサ、バイオセンサ、表面プラズモン共鳴センサ、音波センサ、反射率センサの1つを含んでよい。
【0049】
構成要素は所定の温度より低い冷蔵容器内に保管してよい。構成要素は検査システムで用いる前に冷蔵容器から取り出してよい。構成要素は検査システムで用いる前に周囲温度に達するようにしてよい。検査システムは検体を決定するための検査を行ってよい。例えば検体は、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、グルコース、乳酸塩、クレアチニン、尿素、ヘマトクリット、プロトロンビン時間、活性化凝固時間、活性化部分トロンボプラスチン時間、トロポニンI、トロポニンT、クレアチンキナーゼMB、脳ナトリウム利尿ペプチド、NTproBNP、C反応性蛋白、pO2、pCO2、およびpHの1つを含んでよい。
【0050】
第14の態様では、構成要素は1バッチの実質的に同じ構成要素に関連してよい。品質保証失敗警報手段は、構成要素の熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えるときはそのバッチが品質保証に失敗したことを示す警報情報を生成してよい。検査システムは構成要素を用いる前にフェールセイフチェックを少なくとも1回行ってよい。例えば、フェールセイフチェックは、周囲温度が所定の範囲内にあることの確認、構成要素が故障でないことの確認、および検査システムが故障でないことの確認の少なくとも1つを含んでよい。検査システムが故障でないことの確認は、検査システムに関連する電気コネクタの電気的完全性の検査と、検査システムに関連する演算増幅器の動作の完全性の検査の少なくとも1つを含んでよい。
【0051】
第14の態様では、検査システムは電子的にシミュレートするための手段を含んでよい。電子的にシミュレートするための手段は構成要素が生成する信号をシミュレートしてよい。電子的にシミュレートするための手段は、検査システムに関連する電気コネクタの電気的完全性と検査システムに関連する演算増幅器の動作の完全性の少なくとも1つを検査するためのシミュレーション信号を生成してよい。検査システムは表示するための手段を含んでよい。表示手段は警報情報に従って警報を表示してよい。検査システムは、構成要素が品質保証に失敗したときは検査結果の表示をやめてよい。
【0052】
システムは品質保証失敗警報手段と通信するロギングのための手段を含んでよい。ロギング手段は複数の構成要素の熱および時間ストレスのログを保持してよい。所定の熱・時間ストレスしきい値は検査システムの全許容誤差に従って生成してよい。所定の熱・時間ストレスしきい値は熱ストレスと時間ストレスの複数の組合せを含んでよい。所定の熱・時間ストレスしきい値は所定の温度・時間プロフィールを含んでよい。
【0053】
本発明の第15の態様では、定量的電気化学的生理的サンプル検査システムの熱および時間ストレス品質保証を評価するためのシステムは第1の電気化学的検出手段および第2の電気化学的検出手段を含む。第1および第2の電気化学的検出手段は較正流体に接触する。第1の電気化学的検出手段は較正流体内の第1の検体の濃度に関連する第1の較正電圧を第1のチェックしきい値に従って決定する。第2の電気化学的検出手段は較正流体内の第2の検体の濃度に関連する第2の較正電圧を第2のチェックしきい値に従って決定する。第1および第2のチェックしきい値を共に超えるときは検査システムは生理的サンプル検査を行う資格を失う。例えば、第1の電気化学的検出手段はナトリウムイオン選択電極を含んでよく、第2の電気化学的検出手段はカルシウムイオン選択電極を含んでよい。
【0054】
本発明の第16の態様では、定量的電気化学的生理的サンプル検査システムの熱および時間ストレス品質保証のためのシステムは複数の電気化学的検出のための手段を含む。複数の電気化学的検出手段は較正流体に接触する。システムは複数の電気化学的検出手段と通信する較正のための手段を含む。較正手段は、複数の電気化学的検出手段の部分集合の電気化学的検出手段毎に較正流体内の検体の濃度に関連する較正パラメータを所定のチェックしきい値に従って決定する。部分集合の電気化学的検出手段毎に所定のチェックしきい値を超えるときは、較正手段は生理的サンプル検査を行う資格を検査システムから奪う。
【0055】
第16の態様では、電気化学的検出手段の部分集合はカルシウムイオン選択電極およびBUN電極を含んでよい。または、電気化学的検出手段の部分集合はナトリウムイオン選択電極、カルシウムイオン選択電極、およびBUN電極を含んでよい。較正パラメータは較正電圧を含んでよい。代替的に、較正パラメータは較正電圧ドリフト率を含んでよい。または、較正パラメータは較正電圧と較正電圧ドリフト率の組合せを含んでよい。複数の電気化学的検出手段はそれぞれ、例えば、ナトリウムセンサ、カリウムセンサ、塩化物センサ、pHセンサ、pO2センサ、pCO2センサ、乳酸塩センサ、グルコースセンサ、クレアチニンセンサ、BUN電極、カルシウムセンサ、マグネシウムセンサ、およびヘマトクリットセンサの1つを含んでよい。
【0056】
本発明の第17の態様では、品質制御サンプルを用いずに定量的生理的サンプル検査のシステムの品質保証を行うためのシステムは熱ストレスを監視するための手段を含む。熱ストレス監視手段は検査システムで用いる構成要素の熱ストレスを監視する。システムは熱ストレス監視手段と通信する時間ストレスを監視するための手段を含む。時間ストレス監視手段は検査システムで用いる構成要素の時間ストレスを監視する。システムは熱ストレス監視手段および時間ストレス監視手段と通信する、品質保証失敗を警報するための手段を含む。品質保証失敗警報手段は、熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えるときは構成要素が品質保証に失敗したという警報情報を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
本発明の他の目的および利点は、添付の図面を参照して、好ましい実施の形態の以下の詳細な説明を読めば当業者に明らかになる。図面中、同じ番号は同じ要素を指すのに用いた。
【図1】本発明の例示の実施の形態に係る、品質制御サンプルを用いずに定量的生理的サンプル検査システムの品質保証を行うためのシステム100を示すブロック図である。
【図2】本発明の例示の実施の形態に係る、ナトリウムの較正電圧(cal−volt)データ(x軸)に対する較正ドリフト(cal−drift)(y軸)をシステムの較正電圧および較正ドリフトのしきい値限界と共に示すグラフである。
【図3】本発明の例示の実施の形態に係る、血中尿素窒素の較正電圧データ(x軸)に対する較正ドリフト(y軸)をシステムの較正電圧および較正ドリフトのしきい値限界と共に示すグラフ表示である。
【図4】本発明の例示の実施の形態に係る、カルシウムの較正電圧データ(x軸)に対する較正ドリフト(y軸)をシステム較正電圧および較正ドリフトのしきい値限界と共に示すグラフである。
【図5】本発明の例示の実施の形態に係る、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、グルコース、全二酸化炭素、血中尿素窒素、クレアチニン、およびヘマトクリット用のセンサを含むi−STAT CHEM8+カートリッジの、ラベルに示された条件を超えた(印刷された有効期限を1ヶ月超えた)安定性を示すグラフ表示である。制御条件の許容全誤差(ATE)に対する誘発されたバイアスの変化を検査毎にプロットした。
【図6】本発明の例示の実施の形態に係る、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、グルコース、全二酸化炭素、血中尿素窒素、クレアチニン、およびヘマトクリット用のセンサを含むi−STAT CHEM8+カートリッジの、ラベルに示された条件を超えた(印刷された有効期限を25℃で8週間超えた)安定性を示すグラフ表示である。制御条件のATEに対する誘発されたバイアスの変化を検査毎にプロットした。
【図7】本発明の例示の実施の形態に係る、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、グルコース、全二酸化炭素、血中尿素窒素、クレアチニン、およびヘマトクリット用のセンサを含むi−STAT CHEM8+カートリッジの、ラベルに示された条件を超えた(印刷された有効期限を30℃で3週間超えた)安定性を示すグラフ表示である。制御条件のATEに対する誘発されたバイアスの変化を検査毎にプロットした。
【図8−1】本発明の例示の実施の形態に係る、ATE受入れ基準表(A)、および電解質、グルコース、およびヘマトクリット検査用のLER(誤り結果の限界)受入れ基準表(B)を示す。
【図8−2】本発明の例示の実施の形態に係る、血中尿素窒素およびクレアチニン検査のLER受入れ基準表(C)を示す。
【図9(A)】本発明の例示の実施の形態に係る、血液検査を行うi−STAT CHEM8+カートリッジで用いたナトリウム、カリウム、カルシウム、全CO2、グルコース、クレアチニン、塩化物、および尿素の制御レベル1の期待平均値および範囲を示す。
【図9(B)】本発明の例示の実施の形態に係る、血液検査を行うi−STAT CHEM8+カートリッジで用いたナトリウム、カリウム、カルシウム、全CO2、グルコース、クレアチニン、塩化物、および尿素の制御レベル3の期待平均値および範囲を示す。
【図10(A)】本発明の例示の実施の形態に係る、多数の他の血液検査の中のヘマトクリットについて検査するi−STAT CHEM8+カートリッジで用いたヘマトクリットの制御レベル1の期待平均値および範囲を示す。
【図10(B)】本発明の例示の実施の形態に係る、多数の他の血液検査の中のヘマトクリットについて検査するi−STAT CHEM8+カートリッジで用いたヘマトクリットの制御レベル3の期待平均値および範囲を示す。
【図11】本発明の例示の実施の形態に係る、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、グルコース、全二酸化炭素、血中尿素窒素、クレアチニン、およびヘマトクリット用のセンサを含むi−STAT CHEM8+カートリッジの、ラベルに示された条件を超えた(印刷された有効期限を35℃で2週間超えた)安定性を示す。制御条件のATEに対して誘発されたバイアスの変化を検査毎にプロットした。
【図12】本発明の例示の実施の形態に係る、種々の計器メーカおよびi−STATについて行った、ATEに対する臨床範囲の血中尿素窒素検査の標準偏差についてのアメリカ病理学会(College of American Pathologists)の調査を示すグラフ表示である。
【図13】本発明の例示の実施の形態に係る、種々の計器メーカおよびi−STATについて行った、ATEに対する臨床範囲の塩化物検査の標準偏差についてのアメリカ病理学会の調査を示すグラフ表示である。
【図14】本発明の例示の実施の形態に係る、種々の計器メーカおよびi−STATについて行った、ATEに対する臨床範囲のクレアチニン検査の標準偏差についてのアメリカ病理学会の調査を示すグラフ表示である。
【図15】本発明の例示の実施の形態に係る、種々の計器メーカおよびi−STATについて行った、ATEに対する臨床範囲のグルコース検査の標準偏差についてのアメリカ病理学会の調査を示すグラフ表示である。
【図16】本発明の例示の実施の形態に係る、種々の計器メーカおよびi−STATについて行った、ATEに対する臨床範囲のヘマトクリット検査の標準偏差についてのアメリカ病理学会の調査を示すグラフ表示である。
【図17】本発明の例示の実施の形態に係る、種々の計器メーカおよびi−STATについて行った、ATEに対する臨床範囲のイオン化カルシウム検査の標準偏差についてのアメリカ病理学会の調査を示すグラフ表示である。
【図18】本発明の例示の実施の形態に係る、種々の計器メーカおよびi−STATについて行った、ATEに対する臨床範囲のカリウム検査の標準偏差についてのアメリカ病理学会の調査を示すグラフ表示である。
【図19】本発明の例示の実施の形態に係る、種々の計器メーカおよびi−STATについて行った、ATEに対する臨床範囲のナトリウム検査の標準偏差についてのアメリカ病理学会の調査を示すグラフ表示である。
【図20】本発明の例示の実施の形態に係る、種々の計器メーカおよびi−STATについて行った、ATEに対する臨床範囲の二酸化炭素分圧(pCO2)検査の標準偏差についてのアメリカ病理学会の調査を示すグラフ表示である。
【図21】本発明の例示の実施の形態に係る、種々の計器メーカおよびi−STATについて行った、ATEに対する臨床範囲のpH検査の標準偏差についてのアメリカ病理学会調査を示すグラフ表示である。
【図22】本発明の例示の実施の形態に係る、品質制御サンプルを流さずに行う定量的生理的サンプル検査システムの品質保証のためのステップを示す流れ図である。
【図23】本発明の例示の実施の形態に係る、制御流体を用いない自動的な熱および時間監視に基づく品質制御の方法を示す流れ図である。
【図24】本発明の別の例示の実施の形態に係る、定量的電気化学的生理的サンプル検査システムの熱および時間ストレス品質保証のためのシステムを示すブロック図である。
【図25(A)】本発明の例示の実施の形態に係る、熱ストレス(T=30℃および40℃で3週間)の下でのCHEM8+ヘマトクリットセンサの挙動と、T=5℃で同じ期間保管したカートリッジの性能との比較を示すグラフ表示で、用いた検査流体はRNA Medicalのヘマトクリット・レベルL1である。
【図25(B)】本発明の例示の実施の形態に係る、熱ストレス(T=30℃および40℃で3週間)の下でのCHEM8+ヘマトクリットセンサの挙動と、T=5℃で同じ期間保管したカートリッジの性能との比較を示すグラフ表示で、用いた検査流体はRNA Medicalのヘマトクリット・レベルL3である。
【図26】本発明の例示の実施の形態に係る、5℃、25℃、30℃、および35℃での種々の保管期間の後にレベル1化学制御流体で検査したi−STAT CHEM8+カートリッジ内のイオン化カルシウムセンサのプロットを示すグラフ表示である。
【図27】本発明の例示の実施の形態に係る、イオン化カルシウムの図26からのデータをアレニウス(Arrhenius)プロットとして示すグラフ表示である。
【図28】本発明の例示の実施の形態に係る、5℃、25℃、30℃、および35℃での種々の保管期間の後にレベル1化学制御流体で検査したi−STAT CHEM8+カートリッジ内の血中尿素窒素(BUN)センサのプロットを示すグラフ表示である。
【図29】本発明の例示の実施の形態に係る、BUNの図28からのデータをアレニウス・プロットとして示すグラフ表示である。
【図30】本発明の例示の実施の形態に係る、5℃、25℃、30℃、および35℃での種々の保管期間の後にレベル1化学制御流体で検査したi−STAT CHEM8+カートリッジ内のクレアチニンセンサのプロットを示すグラフ表示である。
【図31】本発明の例示の実施の形態に係る、クレアチニンの図30からのデータをアレニウス・プロットとして示すグラフ表示である。
【図32】本発明の例示の実施の形態に係る、制御流体レベル1および3のATEの要約データを示す表である。
【図33】本発明の例示の実施の形態に係る、Na、K、Cl、iCa、グルコース、クレアチニン、BUN、およびTCO2のL1流体から利用可能な全ての検体目標を示す添付文書のレイアウトを示す。
【図34】本発明の例示の実施の形態に係る、単一制御流体またはその制限された組合せを用いる熱および時間の監視に基づく品質制御の方法の流れ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本発明の例示の実施の形態はポイント・オブ・ケア検査のための改善された品質保証システムおよび方法に関するものである。例示の実施の形態では、本発明は液体ベースの品質制御材料を分析システムに流すことを必要とせずに、ポイント・オブ・ケアで血液分析システムなどにより行う試験室品質検査の品質を保証することができる。詳しく述べると、定量的生理的サンプル検査システムの品質保証は、品質制御サンプルを用いずに、検査システムで用いる構成要素の熱および時間ストレスを監視することにより行うことができる。熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えるときは構成要素が品質保証に失敗したことを示す警報情報を生成してよい。別の例示の実施の形態では、本発明は液体ベースの品質制御材料を分析システムに流す必要を最小にして、ポイント・オブ・ケアで血液分析システムなどにより行う試験室品質検査の品質を保証することができる。
【0059】
例示のためであって制限するものではないが、この説明は、例示の実施の形態に適用できるハンドヘルド読取機および1回使用のカートリッジをベースにする、例えばi−STAT社(East Windsor,NJ)製のi−STAT1ハンドヘルドシステムなどのi−STATシステムと関連して述べる。しかし当業者が認識するように、本発明は使い捨て要素と同じ機能を提供するポイント・オブ・ケア検査やベッドサイド検査などの他のシステムに広く適用することができる。詳しく述べると、本発明の例示の実施の形態は、この技術で周知の1回使用の検査器具すなわちカートリッジ内に検出手段を含む他の分析システムにも適用できる。
【0060】
かかる他の分析システムは、電気化学的原理(例えば、電位差測定、電流測定、および伝導度測定など)に基づくものや、検査システム(電極、修正電極、イオン選択電極、酵素電極、免疫電極、片電極、バイオセンサ、免疫センサ、などと一般に呼ばれる)を含む。これらの代替システムおよび器具は、例えば、濁度、または1つ以上の選択された波長での吸光度、消失、蛍光、発光、導波管、反射率などを検出する光学的方法に基づくものも含む。これらの器具は少なくとも、検査サンプルを各器具内の検査領域に送ること、および器具を再使用可能な読取機と共に用いることにおいて、i−STATシステムと同じ流体工学を用いてよい。このように、本発明の例示の実施の形態は、ポイント・オブ・ケア(例えば、手術室、緊急治療室、医者の診察室、または他の同様な場所)で用いることができる他の同様なシステムにも適用できる。
【0061】
好ましい実施の形態では、読取機は携帯用または小さなベンチトップ面積を有するハンドヘルド機器でよい。かかる読取機は好ましくは独立で(例えば、電池駆動で)よいので、必要な場合はベッドサイドに容易に移動できる。しかし、かかる機器は主電源に、または主電源に取り付けた電池充電器に断続的に、取り付けてよい。より特定すると、例示のポイント・オブ・ケア血液分析システムは使い捨てカートリッジを用いて血液検査を行う再使用可能な読取機に基づいてよい。カートリッジは、(1)分析要素(例えば、pH、酸素、およびグルコースなどの検体を検出するための、例えば電極)、(2)流体要素(例えば、血液サンプルを受けて電極に送るための導管)、および(3)較正要素(例えば、既知の濃度の各検体を持つ、電極を標準化するための液体)を含む。
【0062】
読取機は電極を動作させる(例えば、測定を行いまた計算を行う)ための電子回路およびアルゴリズムを含んでよい。読取機は結果を表示する機能、および随意であるがコンピュータ・ワークステーションを介してこの結果を試験室情報システム(LIS)および病院情報システム(HIS)に送る機能も有する。読取機とワークステーションとの間の通信は種々の適当な通信手段(例えば、赤外線(IR)または無線周波数(RF)リンクなど)を用いて行ってよい。ワークステーションと試験室情報システムとの間の通信は、有線または無線接続の任意の適当な形を用いて行ってよい。検出電極、測定方法、1回使用のカートリッジ、および読取機(分析器や計器などとも呼ぶ)の一般的な領域内のいくつかの技術は、例えば次の共に譲渡された特許である米国特許番号第5,096,669号、第5,112,455号、第5,200,051号、第5,212,050号、および第5,447,440号に開示されている。
【0063】
更に、本発明は生理的サンプルが血液、血漿、または血清であるシステムについて主として述べるが、例示の実施の形態は、例えば、唾液、尿、脳脊髄液などの他の生物的材料の分析にも適用できる。
【0064】
本発明のかかる態様および実施の形態について以下に詳細に説明する。図1は、本発明の例示の実施の形態に係る、品質制御サンプルを用いずに定量的生理的サンプル検査システムの品質保証を行うためのシステム100を示すブロック図である。生理的サンプルは、例えば、血液、血漿、血清、唾液、尿、脳脊髄液、およびその修正された形を含んでよい。しかし、当業者が認識するように、例示の実施の形態では任意の適当な生理的サンプルを用いてよい。単に例示の目的であるが、品質制御サンプルは、例えば、液体制御などを含んでよい。しかし、システム100は任意のかかる品質制御サンプルを全く用いずに品質保証を行うことができる。
【0065】
システム100は熱および時間ストレス監視モジュール105を含む。熱および時間ストレス監視モジュール105は、検査システム115で用いる構成要素110の熱および時間ストレスを監視などする。図1に示す例示の実施の形態では、熱および時間ストレス監視モジュール105は検査システム115から分離してよいが、検査システム115と同じまたは実質的に同じ熱的環境内に置いてよい。しかし別の例示の実施の形態では、熱および時間ストレス監視モジュール105は検査システム115と統合してよい。熱および時間ストレス監視モジュール105は、構成要素110を監視することができるそれぞれのまたは任意の構成要素110に関連する一部またはその他の部分でよい。例えば、熱および時間ストレス監視モジュール105は構成要素110に関連する温度・時間指標などを監視してよい。
【0066】
説明を簡単にするために図1には単一の構成要素110を示しているが、システム100は任意の適当な数の構成要素110を用いてよい。例示のためであって制限するものではないが、構成要素110はサンプル検査カートリッジなどを含んでよい。例えば、検査システム115は血液分析システムなどを含んでよい。したがって、構成要素110は、例えば、1回使用の血液検査カートリッジなどの血液検査カートリッジ、または他の適当なタイプの使い捨て構成要素を含んでよい。かかる血液検査カートリッジは、例えば少なくとも1個の電気化学センサを含んでよい。例えば、血液検査システムは上に述べた読取機などの携帯用構成要素読取機または他の同様の器具を含んでよい。
【0067】
別の例示の実施の形態では、構成要素110はセンサを含んでよい。例えば、センサは以下の1つを含んでよい。すなわち、電気化学センサ、光センサ、発光センサ、蛍光センサ、電流測定センサ、電位差測定センサ、電気伝導度測定センサ、導波管、消失センサ、バイオセンサ、表面プラズマ共鳴センサ、音波センサ、および反射率センサである。検査システム115は検体を決定する検査を行ってよい。例えば、検体は、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、グルコース、乳酸塩、クレアチニン、尿素、ヘマトクリット、プロトロンビン時間、活性化凝固時間、活性化部分トロンボプラスチン時間、トロポニンI、トロポニンT、クレアチンキナーゼMB、脳ナトリウム利尿ペプチド、NTproBNP、C反応性蛋白、pO2、pCO2、およびpHを含んでよい。
【0068】
システム100は熱および時間ストレス監視モジュール105と通信する品質保証失敗警報モジュール120も含む。品質保証失敗警報モジュール120は、熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えるときは構成要素110が品質保証に失敗したことを示す警報情報を生成する。例えば、構成要素110が(使い捨てすなわち1回使用の)カートリッジを含むと仮定すると、構成要素110を検査システム115に挿入または他の適当な方法で連結することにより、構成要素110に関連する熱および時間ストレス情報を熱および時間ストレス監視モジュール105から品質保証失敗警報モジュール120に送ることができる。例えば、品質保証失敗警報モジュール120は熱および時間ストレス情報と所定の熱・時間ストレスしきい値との比較を行ってよい。熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えないときは、構成要素110を検査システム115で用いてよい。
【0069】
検査システム115はディスプレイモジュール125を含んでよい。ディスプレイモジュール125は図形および/または文のインターフェースを提供してよく、ユーザはこれを通して検査システム115からの情報を見たり検査システム115と対話したりすることができる。例えば、ディスプレイモジュール125は図形および/または文の情報を表示できる適当なコンピュータモニタまたはスクリーンまたは他の適当なディスプレイ装置を含んでよい。ディスプレイモジュール125は品質保証失敗警報モジュール120からの警報情報に従って警報を表示してよい。
【0070】
言い換えると、構成要素110の熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えた場合は、ディスプレイモジュール125を介して該当する警報を表示してよい。例えば、かかる警報は、構成要素110の品質保証失敗をユーザに知らせ、構成要素110を廃棄しおよび/または構成要素110からの検査結果を無視するようユーザに指示し、または他の適当な命令、通知、および警報を与えてよい。追加的にまたは代替的に、構成要素110が品質保証に失敗したときは、品質保証失敗警報モジュール120は構成要素110からの検査結果の表示をやめてよい。
【0071】
例示の実施の形態では、所定の熱・時間ストレスしきい値は任意の適当な手段を用いて生成してよく、また実際のしきい値は種々の要因により決まる。種々の要因は、例えば、用いる構成要素110および検査システム115の性質およびタイプ、構成要素110および検査システム115を用いている環境、および他の同様な要因を含む。例えば、所定の熱・時間ストレスしきい値は検査システム115の全許容誤差に従って生成してよい。または、所定の熱・時間ストレスしきい値は複数の熱ストレスおよび時間ストレスの組合せを含んでよい。別の例示の実施の形態では、所定の熱・時間ストレスしきい値は、構成要素110の品質保証を維持することができる温度および時間条件の範囲を与える所定の温度・時間プロフィールを含んでよい。
【0072】
熱および時間ストレス監視モジュール105および品質保証失敗警報モジュール120はそれぞれ、それぞれの要素に関連する機能を実行することができる任意の適当なタイプの電気的または電子的構成要素または装置で構成してよい。かかる例示の実施の形態では、各構成要素または装置は、(例えば、電気的な)情報を運ぶことができる任意の適当なタイプの電気接続を用いて他の構成要素または機器と通信してよい。または、これらのモジュールはそれぞれ、それぞれのモジュールに関連する機能を実行することができるハードウエア、ファームウエア、およびソフトウエアの任意の組合せで構成してよい。
【0073】
または、システム100は、1個以上のマイクロプロセッサと、システム100の任意のまたは全てのモジュールの機能を実行するコンピュータプログラムのステップを記憶する関連するメモリとで構成してよい。マイクロプロセッサは任意の適当なタイプのプロセッサでよい。例えば、任意のタイプの汎用マイクロプロセッサまたはマイクロコントローラ、ディジタル信号処理(DPS)プロセッサ、専用集積回路(ASIC)、プログラマブル・リードオンリーメモリ(PROM)、消去可能プログラマブル・リードオンリーメモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラマブル・リードオンリーメモリ(EEPROM)、コンピュータ読取り可能媒体などでよい。
【0074】
メモリは任意のタイプのコンピュータメモリまたは任意の他のタイプの電子的記憶媒体でよい。例えば、リードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、キャッシュメモリ、コンパクトディスク・リードオンリーメモリ(CDROM)、電気光学メモリ、磁気光学メモリなどでよい。この記述により認識されるように、メモリは、システム100の任意のまたは全てのモジュールの機能を実行する、コンピュータプログラミングの当業者に周知の従来の技術を用いてプログラムしてよい。例えば、コンピュータプログラムの実際のソースコードまたはオブジェクトコードはメモリ内に記憶してよい。
【0075】
別の例示の実施の形態では、熱および時間ストレス監視モジュール105は以下の1つ以上を監視することを含みまた構成してよい。すなわち、導電ワックス、温度依存の液晶、電位差測定センサのベースライン較正電位のシフト、酵素阻害剤のリポソーム放出、導電液体のリポソーム放出、高イオン濃度のリポソーム放出、電気化学的検出可能な分子またはイオンのリポソーム放出、サーミスタ、熱電対、熱インク、温度依存の化学反応、温度依存の変色パッチ、および材料の温度依存の相変化である。
【0076】
例示の実施の形態では、系統的な分析誤差を防ぐための品質制御システムおよび方法は、実質的に2つの異なる動作領域内にある3つの部分を含んでよい。第1に、病院などの施設は構成要素110(例えば、検査器具すなわちカートリッジ)に関連する全ての熱ストレスを監視して管理する責任がある。かかる監視は熱および時間ストレス監視モジュール105が行ってよい。第2に、検査システム115は一組の組込み監視および管理機能を含んでよい。かかる機能は、例えば、各構成要素110の検査サイクル中に自動的に働くフェールセイフ機構(「顧客のための品質チェック」とも呼ばれる)を含んでよい。更に、検査システム115は構成要素110が作る信号をシミュレートする電子シミュレータ130を含んでよい。電子シミュレータ130は、例えば品質保証失敗警報モジュール120と通信してよい。電子シミュレータ130は検査システム115の追加の検査を行ってもよい。上述の部分のそれぞれについて、以下に詳細に説明する。
【0077】
構成要素110の熱ストレスを管理する施設またはユーザのために、メーカは、所定の限界を超えて構成要素110を熱ストレスに曝さないように施設に要求する品質制御運用規則を提供してよい。単に例示のためであって制限するものではないが、次の一連の規則を提供してよい。すなわち、(1)受領したときに各出荷品に含まれる温度片を調べて出荷温度を確認しなければならない、(2)長期保管ではカートリッジを常に8℃より低い温度で冷蔵しなければならない、(3)使用前にカートリッジを14日より長く室温に置いてはならない、(4)30℃より高い温度にカートリッジを曝してはならない。
【0078】
かかる規則は熱および時間ストレス監視モジュール105内に(例えば、適当なコンピュータ記憶媒体内に記憶された適当なルックアップテーブル内に)プログラムしまたは他の方法で記憶してよい。構成要素110のためのこれらの規則で指定された熱および時間ストレスを超えた場合は、熱および時間ストレス監視モジュール105は品質保証失敗警報モジュール120に信号または他の適当な指示または情報を与えて、構成要素110が品質保証に失敗したことをユーザに適切に警報してよい。
【0079】
構成要素110が所定の限界を超えて熱および時間ストレスに曝されることのないようにするために、追加のまたは代替の規則を用いてよい。例えば、当業者に明らかなように、異なるタイプの構成要素110には指定された温度の値および継続時間を変えて適用してよい。所定の限界を超えて熱および時間ストレスに曝された構成要素110は廃棄するかまたは返却するという指示は、例えば、製品マニュアル、製品早見ガイド、電子メール、ウエブサイトリンクおよびデータページなどにより施設に与えてよい。例えば、かかる情報を用いて、熱および時間ストレス監視モジュール105が保持する品質制御規則および命令を更新してよい。
【0080】
例示の実施の形態では、品質制御運営規則は、施設が冷蔵庫および室温を共に監視して、監査のときに確認できるように関連する記録を保持することを要求してもよい。かかる監視は、ワクチンや薬剤などの他の医薬用品の保管のためにすでに確立されている監視システムを用いて行ってよい。これは、例えば、「ワクチン・コールドチェーンの維持および管理のためのガイドライン(Guidelines for Maintaining and Managing the Vaccine Cold Chain)」、MMWR、2003年10月、に記述されている。
【0081】
例えば、システム100は品質保証失敗警報モジュール120と通信するログモジュール135を含んでよい。ログモジュール135は複数の構成要素110の熱および時間ストレスのログを保持してよい。ログモジュール135は、検査システム115から分離していてこれと通信するデータベースまたは他のコンピュータ記憶媒体を含んでよい。しかし、別の例示の実施の形態では、ログモジュール135は検査システム115と統合してよい。熱および時間ストレス情報は、熱および時間ストレス監視モジュール105、品質保証失敗警報モジュール120、および/またはシステム100に関して用いられている任意の他の監視システムからログモジュール135に送りまたは他の方法で通信してよい。
【0082】
ユーザのために、構成要素110を過度の温度ストレスから保護するための一連の勧告も提供してよい。例示のためであって制限するものではないが、出荷中に構成要素110を過度の温度ストレスから保護するため、次の一連のユーザ規則を適用してよい。すなわち、(1)各構成要素110の出荷品に含まれている温度指示片を調べる、(2)出荷品が過度の温度に曝されなかったことを温度指示片が示した場合は、コピーを品質制御記録として保存する、(3)出荷品が過度の温度に曝されたことを温度指示片が示した場合は、出荷品の中の構成要素110にレベル1の品質制御溶液の検査を行い、その結果を品質制御記録として保存する、(4)受け入れ不可の結果を検査が示した場合はその出荷品を廃棄する、逆に、(5)受け入れ可の結果を検査が示した場合はその構成要素110を受け入れる。
【0083】
かかる構成要素110の現場での保管が不適切だったために構成要素110が過度の温度ストレスを受けることがないように保護するため、施設は複数の方法の1つを用いてよい。例として2つの方法をここに示す。第1の方法では、施設は冷蔵庫のためとシステムを使用する部屋のための自動化温度ログを保存してよい(1日24時間、1週7日)。すなわち、(1)温度ログを品質制御記録として保管する、(2)冷蔵庫が8℃を超えたことを冷蔵庫温度ログが示した場合は、その冷蔵庫からの構成要素110にレベル1の品質制御溶液の検査を行い、その結果を品質制御記録として保存する、(3)受け入れ不可の結果を検査が示した場合は構成要素110を廃棄する、(4)室温が30℃を超えたことを室温ログが示した場合は、室温で保管した全ての構成要素110にレベル1の品質制御溶液の検査を行い、その結果を品質制御記録として保管する、(5)受け入れ不可の結果を検査が示した場合は構成要素110を廃棄する。
【0084】
自動化温度ログの機能は、例えばログモジュール135で行ってよい。または、別の自動化温度ログからの情報をログモジュール135に送って、記録し、記憶し、また後で検索してよい。第2の方法では、施設は自動化温度ログを保存しない。したがって、(1)月次ベースで、現在使用しているロットからの構成要素110にレベル1の液体品質制御の検査を行い、その結果を品質制御記録として保存する、(2)受け入れ不可の結果を検査が示した場合は構成要素110を廃棄する。
【0085】
例示の実施の形態では、検査システム115は構成要素110を用いる前にフェールセイフチェックを少なくとも1回行う。より特定すると、顧客のためのフェールセイフ機構または他の適当な品質チェックを各構成要素110検査中に自動的に行ってよい。例えばフェールセイフチェックがトリガされた場合は、検査システム115(例えば、ハンドヘルドのポイント・オブ・ケア検査計器)内の該当するソフトウェアアルゴリズムは検査結果を自動的に抑えてよい。検査システム115はディスプレイモジュール125を介して、エラーの源および適切な処置をユーザに表示してよい。単に例示のためであって制限するものではないが、フェールセイフおよび必要なその後の処置の表示例は以下のものを含んでよいが、限定はしない。すなわち、「置かれたサンプルにはフィルマークがありません:別のカートリッジを使ってください」、「カートリッジエラー:別のカートリッジを使ってください」、「電池切れ:電池を交換してください」、および「分析器エラー:マニュアルを参照してください/電子シミュレータを使用してください」などである。他の同様の表示メッセージは臨床サンプル分析の当業者に明らかである。
【0086】
このように、フェールセイフチェックは、例えば、周囲温度が所定の範囲内にあることの確認、構成要素110が故障でないことの確認、および/または検査システム115が故障でないことの確認を含んでよい。例えば、検査システム115が故障でないことの確認は、検査システム115に関連する電気コネクタの電気的完全性を検査すること、および/または検査システム115に関連する演算増幅器の動作の完全性を検査することを含んでよい。各構成要素110が(1回使用または使い捨て)のカートリッジを含むと仮定したとき、自動化されたフェールセイフ品質チェックを行うパラメータの限定的なリストは表2に示す通りである。
【0087】
【表2−1】
【表2−2】
【0088】
検査システム115が行ってよい3つの追加のフェールセイフ検査の詳細を以下の例に示す。以下の例でも、各構成要素110は(1回使用または使い捨ての)カートリッジを含むと仮定する。
【0089】
例1:較正流体が存在することを確認する。カートリッジの取扱い中にカートリッジ内の較正流体パッケージが壊れた場合は較正流体が存在しないことがある。これを確認するにはカートリッジのセンサ領域の両端の電気抵抗を測定する。かかるフェールセイフ検査で所期の抵抗が得られない場合は、分析結果を抑えて、エラーメッセージをユーザに表示する(例えば、ディスプレイモジュール125を介して)。
【0090】
例2:サンプルがサンプル室内に正しく置かれていることを確認する。カートリッジ内に挿入されたサンプルの容量が大きすぎるかまたは小さすぎる場合は、センサの間の電気信号の所期の特性は得られない。かかるフェールセイフ検査で所期の結果が得られない場合は、分析結果を抑えて、エラーメッセージをユーザに表示する(例えば、ディスプレイモジュール125を介して)。
【0091】
例3:周囲温度が範囲内であることを確認する。検査システム115内の電子温度計が周囲温度を記録する。周囲温度が仕様外の場合は、エラーメッセージをユーザに示して(例えば、ディスプレイモジュール125を介して)、検査サイクルを開始しない。かかるフェールセイフ検査が適用可能かどうかの実験的支援はカートリッジを熱ストレスに故意に曝すことにより得られた。ナトリウム、血中尿素窒素、およびカルシウムについてのかかる現象のグラフ表示を図2、3、および4にそれぞれ示す。これは較正電圧データ(x軸)に対する較正ドリフト(y軸)のx−yプロットである。これらのプロットはこのシステムの較正電圧および較正ドリフトのしきい値を含む。
【0092】
例示の実施の形態では、作業者のエラーまたは構成要素110の故障によりフェールセイフがトリガされた場合は、別の構成要素110を用いるようユーザはディスプレイを介して通知または指示を受ける。かかるフェールセイフは、ユーザの技術または構成要素110のバッチ、グループ、または集合の損傷により生じる系統的なエラーに対して保護する。更に、フェールセイフが検査システム115内の故障によりトリガされた場合は、原因となる状態(例えば、低バッテリ、温度が範囲外、ソフトウエアの期限切れなど)を修正するようユーザはディスプレイモジュール125から指示を受ける。原因となる状態をユーザが修正できないときは、ディスプレイモジュール125はユーザに、メーカの技術サービス部門に連絡して、例えば代わりの検査システム115を得るよう指示してよい。またかかる情報は、検査システム115の機能および動作を説明する、メーカが作成した該当するユーザマニュアルによりユーザに提供してよい。
【0093】
前に述べたように、検査システム115は内部電子シミュレータ130の自動的動作を含んでよい。例えば、電子シミュレータ130は、構成要素110が作る信号をシミュレートする検査システム115内の別個の回路または装置でよい。このシミュレート信号を検査システム115の測定回路に送って較正を独立に確認してよい。これは例えば、共に譲渡された米国特許第5,124,661号、「携帯用血液分析計器の品質保証のための電気化学センサ信号をシミュレートする再使用可能な検査ユニット(Reusable Test Unit for Simulating Electrochemical Sensor Signals for Quality Assurance of Portable Blood Analyzer Instruments)」に記述されている。好ましい実施の形態では、電子シミュレータ130によるチェックは24時間毎に自動的に行ってよい。しかし、任意の適当な時間周期を用いてよい。
【0094】
電子シミュレータ130は、各構成要素110に接触する内部コネクタが、浮遊導電路を作る(すなわち、コネクタの完全性を損なう)可能性のある材料を含まないこと、およびセンサからの電気化学信号を増幅する演算増幅器が仕様内であることをチェックするのに用いてよい。言い換えると、電子シミュレータ130は検査システム115に関連する電気コネクタの電気的完全性、および/または検査システム115に関連する演算増幅器の動作の完全性を検査するためのシミュレーション信号を生成してよい。電子シミュレータ130のチェックに不合格の場合は、その後検査システム115は構成要素110を処理せず、ディスプレイモジュール125を通して不合格の理由をユーザに警報する。増幅器検査の原因となる条件をユーザは修正できないので、ディスプレイモジュール125またはマニュアルは、メーカの技術サービス部門に連絡して代わりの検査システム115を得るようユーザに指示する。原因となる状態がコネクタ上のほこりである場合は、ほこりを除くための清掃手順をユーザに指示してよい。
【0095】
このように、品質制御のために外部の液体制御材料を検査システム115(例えば、カートリッジと読取機の組合せ)で用いる従来の方法とは異なり、本発明の例示の実施の形態はかかる外部の液体制御材料を必要としない。なぜなら、これまで述べた品質制御手段の組合せは十分信頼して使用できるからである。しかし注目すべきであるが、やはり外部の液体制御材料を検査システム115で用いることがある。なぜなら、かかる材料は、例えば訓練や一般的なシステムのトラブルシューティング用の代替血液として有用であるからである。
【0096】
更に、約10%以上の精度の検査結果を与える体外診断システムにおける従来の方法とは異なり、本発明の例示の実施の形態は誤り結果の率を最小にするためにかかる外部制御を必要としない。その論拠を或る好ましい実施の形態で、特に、i−STAT1ハンドヘルド分析器とCHEM8+カートリッジと(全てi−STAT社製)を組み合わせて用いるi−STAT血液検査システムで示す。CHEM8+カートリッジは、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、グルコース、全二酸化炭素、血中尿素窒素、クレアチニンおよびヘマトクリット用の電気化学センサで血液検査を行い、いくつかの他のパラメータの計算値を与える。
【0097】
カートリッジ(例えば、CHEM8+)の熱ストレス以外に、i−STATシステムの設計はこれまで外部の液体品質制御で検出する必要があった系統的エラー(例えば、上に述べたような作業者に起因する影響)の源を取り除く。かかる系統的エラーは、フェールセイフ機構および電子シミュレータ130により管理することができる上述のような作業者に起因する影響を含む。更に本発明の例示の実施の形態は、複数回使用と比較すると1回使用の分析システムの固有の利点を有する。より特定すると、CHEM8+カートリッジ内のセンサおよび流路は乾いたまま保管するので、センサおよび流路は流体に繰り返し曝されることによる系統的エラーの潜在的な源(例えば、複数回使用の検査システムで周知の、センサ活性化材料およびタンパク質の汚染の浸出など)に曝されることがない。
【0098】
本発明の別の有利な機能は、ユーザに出荷する前に構成要素110の測定値の正確さを工場で確認するという、工場確認較正の方式である。較正は工場で行い、またユーザはどんな方法でも較正を変更または修正できないように明確に検査システム115が設計されているので、ユーザが検査システム115の較正を誤って調整するような機構はない。その結果、較正による系統的なエラーは、完全ではないにしても、実質的に取り除くことができる。本発明の別の有利な機能は環境の管理である。例示の実施の形態では構成要素110はカートリッジを含み、各検査カートリッジは例えば箔または箔・バターカップの組合せなどの密封された袋の中に個別に包んで保管中の湿度を制御してよい。
【0099】
本発明の例示の実施の形態では、上に述べた品質制御方法は系統的エラーに対する保護が優れていることが分かった。なぜなら、選択された保管制限がポイント・オブ・ケア血液検査または他の同様の検査に適用するのに十分保守的だからである。かかる結果を、時間と温度の組合せである選択された熱ストレスしきい値に関して監視を行った図5、6、および7に示す。各図は表示した限界の1つを超えて熱ストレスを与えたことにより誘発された系統的な分析バイアスの大きさを示す。詳しく述べると、図5は、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、グルコース、全二酸化炭素、血中尿素窒素、クレアチニンおよびヘマトクリット用のセンサを含むi−STAT CHEM8+カートリッジの、ラベルに示された条件を超えた(印刷された有効期限を1ヶ月超えた)安定性を示すグラフ表示である。制御条件の許容全誤差(ATE)に対する誘発されたバイアスの変化を検査毎にプロットした。
【0100】
図6は、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、グルコース、全二酸化炭素、血中尿素窒素、クレアチニンおよびヘマトクリット用のセンサを含むi−STAT CHEM8+カートリッジの、ラベルに示された条件を超えた(印刷された有効期限を25℃で8週間超えた)安定性を示すグラフ表示である。制御条件のATEに対して誘発されたバイアスの変化を検査毎にプロットした。詳しく述べると、図6は、室温で8週間放置したカートリッジを、冷蔵庫内に同じ8週間保管したカートリッジと比較して観察した分析バイアスを示す。図6に示す例では、これらのカートリッジについてメーカが示した冷蔵しないときの品質保持期間は2週間である。
【0101】
図7は、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、グルコース、全二酸化炭素、血中尿素窒素、クレアチニンおよびヘマトクリット用のセンサを含むi−STAT CHEM8+カートリッジの、ラベルに示された条件を超えた(印刷された有効期限を30℃で3週間超えた)安定性を示すグラフ表示である。制御条件のATEに対して誘発されたバイアスの変化を検査毎にプロットした。
【0102】
図5−図7の各棒グラフの高さは、特定の検体毎に確立されたATE(図8−1、図8−2に示す)のバイアスを百分率で表す。図8−1、図8−2は本発明の例示の実施の形態に係る、ATE受入れ基準表(A)、電解質、グルコース、およびヘマトクリット検査用のLER(誤り結果の限界)受入れ基準表(B)、血中尿素窒素およびクレアチニン検査のLER受入れ基準表(C)を示す。図5−図7のデータは、FDAから要求された、検査毎のLERを用いて与えられる(図8−1表(B)、図8−2表(C)参照)。ATEという用語は臨床化学の当業者に周知である。ATE限界は2つの分析方法の間の一致の期待値を示す。ATE限界は各検査の正確さの指標であって、例えば権利放棄のためのFDAドラフトガイダンス(FDA Draft Guidance for Waiver)(2005年9月)に述べられている。各図のATE値は米国FDA臨床試験室改善修正案(CLIA)熟錬度検査限界(FDA Clinical Laboratory Improvements Amendments(CLIA)proficiency testing limit)から直接得られるもので、かかる固定の限界が示されている。
【0103】
図5−図7にそれぞれ示す棒グラフについて述べると、偶数の棒グラフはレベル1の制御流体を用いた測定値を表し、奇数の棒グラフはレベル3の制御流体を用いた測定値を表す。両制御流体はi−STAT社が供給したもので、検査する検体毎に濃度値の割当てを有する。図9および図10は、i−STAT CHEM8+カートリッジで流すときのこれらの制御流体の報告された検査値の期待平均値および範囲を示す。詳しく述べると、図9は、これらの血液検査を行うi−STAT CHEM8+カートリッジで用いたナトリウム、カリウム、カルシウム、全CO2、グルコース、クレアチニン、塩化物、および尿の制御((A)レベル1、(B)レベル3)の期待平均値および範囲を示す。図10は、多数の他の血液検査の中のヘマトクリットについて検査するi−STAT CHEM8+カートリッジで用いたヘマトクリットの制御((A)レベル1、(B)レベル3)の期待平均値および範囲を示す。
【0104】
注目すべきであるが、図5は8週間後でも全ての観察されたバイアスが、関連するATEの半分よりかなり小さかったことを示す。更に注目すべきであるが、これらの保守的なATE限界は、自動化温度監視を用いていない施設で時折起こる検出されない誤差、すなわち系統的な「盲点」を吸収する重要なクッションにもなる。かかる盲点は、例えば夜間の停電に気が付かなかったので、冷蔵されたカートリッジが室温に達したために起こることがある。
【0105】
当業者が理解するように、熱および時間ストレスの組合せの値はシステムのしきい値を決定するときの2つの影響の一体的な組合せ(すなわち、所定の熱・時間ストレスしきい値)に基づいてよい。例えば図11に示すように、温度が短期間大幅に上昇したためにしきい値を超えることがある。より特定すると、図11は、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、グルコース、全二酸化炭素、血中尿素窒素、クレアチニンおよびヘマトクリット用のセンサを含むi−STAT CHEM8+カートリッジの、ラベルに示された条件を超えた(印刷された有効期限を35℃で2週間超えた)安定性を示す。制御条件のATEに対して誘発されたバイアスの変化を検査毎にプロットした。
【0106】
やはり、偶数の棒グラフはレベル1の制御流体を用いた測定値を表し、奇数の棒グラフはレベル3の制御流体を用いた測定値を表す。同様に、図7に示すように、長期間の比較的小さい温度上昇によりしきい値を超えることもある。別の例では、図5および図6に示すように、温度は指定された保管温度を超えなかったが、その温度での許容時間すなわち品質保証期限は超えたかも知れない。このように、熱・時間ストレスしきい値を超えることがある。構成要素110について検査システム115が用いる実際の所定の熱・時間ストレスしきい値は多くの要因により決まる。この開示で述べた一般的なタイプのガイドラインにより、メーカは製品特有のしきい値をどのように設定するかを決めることができる。
【0107】
ポイント・オブ・ケア血液検査システムを用いる定量的測定について、保管条件をかかる保守的な限界に制御することと、他の設計要素および上に述べたフェールセイフ機構を用いることにより、品質制御の従来の方法に用いられているような、複数のカートリッジに制御溶液を流すことにより確かめられるレベルより高いレベルで性能の正確さを保証できると分かったことは驚きであった。特定して述べると、確立された従来の方法により作業するユーザは、メーカから供給されたときに液体品質制御溶液でカートリッジを検査する。また従来の方法では、特定の規則または施設特有の要求に対処するために、ユーザによってはその後も週間または月間ベースで再検査しなければならないことが知られている。本発明の例示の実施の形態により、便利さにおいて従来の方法より勝る実質的な改善がユーザに提供され、また正確さおよび精度において試験室並みの結果を出すポイント・オブ・ケア検査システムを広く採用できるようになる。
【0108】
図12−図21に示すアメリカ病理学会(CAP)の熟練度調査データは本発明の例示の実施の形態の固有の頑強性を示す。熟練度検査は臨床試験室が自分の計器の分析性能を示すことができる方法である。個々の試験室の分析結果を、何百何千という同等の試験室で決定された同じサンプルの分析性能と比べて評価する。同等のグループと一致する期待値は一般に3標準偏差(3sd)である。図12−図21に示すデータは、千以上のユーザから得た同等の計器の結果より優れた精度を示している。かかる精度データは、何百というロットにわたるロット毎の変動と種々のカートリッジ年齢および保管条件とを含む全ての変動源を含む。例示の実施の形態では、1回使用の使い捨て血液検査カートリッジのユーザは検査の較正を調整するための機構や手段を有しないので、外部の液体品質制御溶液が示す性能の問題に対して取り得る唯一の行動はそのカートリッジの使用をやめることであろう。
【0109】
本発明の例示の実施の形態は、1回使用の検査器具の製造ロットのエンドユーザ品質保証を特徴付ける機構および方法も提供してよい(器具は約10%以上の精度で1回以上の検査を行うことになっている)。この方法は、検査毎に熱および時間ストレスのない製造ロットの第1の部分の性能の許容全誤差を決定し、その後でそのロットの1つ以上の他の部分に熱および時間ストレスを与えて、検査毎に各部分の性能の許容全誤差を決定することに基づいている。次に、第1の部分と他の部分の性能の差を決定してよい。かかる一連のステップは、構成要素110のロットを用いる検査システム115用の熱・時間ストレスしきい値を得るための方法を与える。したがって、例えば検査システム115はポイント・オブ・ケアの場所で、そのロットからの構成要素110が、検査で用いるのを拒否されまたは他の方法で禁止されまたは妨げられるほど多くの熱および時間ストレスに曝されたかどうかを決定することができる。
【0110】
このように、例示の実施の形態では、構成要素110は製造ロット内の1バッチの実質的に同じ構成要素110に関連する。品質保証失敗警報モジュール120は、そのロットの構成要素110の熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えるときはそのバッチが品質保証に失敗したことを示す警報情報を生成する。言い換えると、検査システム115を用いて多くの構成要素110の製造ロットからの1個または少数個の構成要素110を検査してよい。1個または少数個の構成要素110の熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えたと品質保証失敗警報モジュール120が判定した場合は、その製造ロット全体を拒絶しなければならないことと検査の実施に用いてはならないことを、ユーザに警報しまたはその他の方法で通知してよい(例えば、ディスプレイモジュール125を介して)。ユーザがこれらの拒絶された構成要素110から検査結果を得ないようにするため、拒絶されたバッチ内の構成要素110のいずれかを検査システム115で用いたときは、検査システム115は検査結果の表示をやめてよい。
【0111】
前に述べたように、各構成要素110は例えばセンサなどを含んでよい。別の例示の実施の形態では、製造されたセンサの固有の特性(センサ性能が劣化することも劣化しないこともあるが、或る期間高温になると変化する)を、カートリッジの熱管理不良の品質制御指標として用いてよい。例えば、pH、ナトリウム、およびカリウムなどの電位差測定では、較正流体およびサンプルに接触したときの電極のネルンスト応答は以前の温度上昇に影響されない。しかし、較正電位は数ミリボルトほどシフトすることがある。したがって、検査システム115は予想範囲内の値から範囲外の値へのベースライン較正電位のかかる変化を記録してよい。
【0112】
かかる情報は、システムが後で検索して用いることができるように、ログモジュール135を用いて、またはメモリまたは検査システム115に関連する他のコンピュータ記憶媒体内に記憶してよい。例えば、予想範囲内の値はルックアップテーブルまたは他の適当な形で記憶してよい。測定した較正電位とかかるルックアップテーブル内に記憶された値とを比較して、測定した較正電位が予想範囲外かどうか判定してよい。予想範囲外の場合は、品質保証失敗警報モジュール120はかかる変化の検出結果を用いて、構成要素110を患者サンプルに用いてはならないという信号を送る(例えば、ディスプレイモジュール125を介して)。
【0113】
本発明の追加の例示の実施の形態では、構成要素110の過度の熱および時間ストレスの組合せを検出するのに内部較正流体を用いてよい。当業者が理解するように、或る化学センサは他の化学センサより熱ストレス(例えば、酵素などの生化学的実体を含むもの)に敏感である。例をあげると、酵素ウレアーゼを含むセンサは、生物的実体を含まないヘマトクリットセンサより熱ストレスにはるかに敏感であることが分かった。この追加の例示の実施の形態では、多数のかかる敏感なセンサを用いて、熱および時間ストレスの組合せの検出の特異性を高めてよい。かかる方法は、熱・時間しきい値を超えたかどうかを判定する検査の有効性を高めることができる。例示のためであって制限するものではないが、図2−図4に示すように、尿素およびイオン化カルシウムセンサから得られる信号の所定の限界を適用すると、熱および温度的ストレスに曝されるセンサの90%以上を抑えられることが分かった。
【0114】
また、複数のセンサを組合わせて用いることにより、熱および時間ストレスの検出の選択性を高めることができる。このように選択性が高まると、構成要素110のユーザ(例えば、看護師)が熱および時間ストレスの組合せに曝されないセンサを誤って捨てたために感じる重荷は減少する。かかる方法により、多くの熱および時間ストレスに曝されたために使用を拒絶すべき構成要素110を正しく識別することができる。しかし、かかる方法は高い偽陽性率(false positive rate)(すなわち、受入れ可の構成要素110を誤って拒絶する率)を有してはならない。尿素およびカルシウムセンサを含む上記の例では、表3に示すように、幸いなことに、誤って廃棄されたのは正しく処理されたセンサの結果の1%以下であったことが分かった。
【0115】
【表3】
【0116】
一例として、検査システム115としてi−STATシステムを用い、また構成要素110に(1回使用の使い捨ての)カートリッジを用い、使用前にセンサを乾燥状態で保管した場合の、本発明の例示の実施の形態の応用について以下に説明する。これらのセンサは、血液検査を行う直前に較正流体で濡らして平衡させなければならない。これらのセンサの過渡出力信号を熱および時間ストレスの指標として用いてよいことが分かった。この方法は次のように一般化してよい。定量的電気化学的生理的サンプル検査システム115の熱ストレス品質保証を与えるには、まず多数の電気化学センサを較正流体に接触させる。較正流体は既知の濃度の種々の検体を有し、各センサは各検体に特有である。
【0117】
このように接触させた後、選択された組のセンサ毎に、較正流体内の検体の濃度に関連する較正パラメータを熱チェックしきい値に従って決定する。注目すべきであるが、較正パラメータは較正電圧(センサと基準電極との間のミリボルト(mV)で表した電位差)でよく、また熱チェックしきい値は予め選択した電圧レベルでよい。または、較正パラメータはミリボルト毎秒(mV/s)で表した較正電圧ドリフト率(濡らすプロセスに関連する)でよい。別の実施の形態では、熱チェックしきい値はこの2つの組合せ(例えば、予め選択した較正電圧レベルに達した後のドリフト率)でよい。
【0118】
最後のステップとして、選択した組において各熱チェックしきい値を超えるときは、この方法は生理的なサンプル検査を行う資格を検査システム115から奪う。例示のためであって制限するものではないが、選択した組のセンサはナトリウムイオン選択電極とカルシウムイオン選択電極とを含んでよく、またオプションでBUN電極を含んでよい。例えば、カートリッジが複数のセンサを含む場合は、選択したセンサだけが器具全体の熱および時間ストレスを決定するための機構として働いてよい。注目すべきであるが、ソフトウエア技術の当業者に明らかなように、コンピュータアルゴリズムは、この方法を具体化して書いてよく(例えば、品質保証失敗警報モジュール120の一部として)また検査システム115を自動的に動作させるのに用いる他のソフトウエアに組み込んでよい。
【0119】
表3に関して上に述べた方法は、意図的に時間的に(異なる期間)熱ストレスに曝したセンサを含むカートリッジの加速寿命研究に基づいている。較正電圧ドリフト率および較正電圧の分析は、変化(これは熱および時間ストレスを識別するアルゴリズムを開発するのに用いることができる)を提示するために示した。この現象のグラフ表示は図2−図4に示した。これは、ナトリウム、血中尿素窒素、およびカルシウムのそれぞれについて、較正電圧データ(x軸)に対する較正ドリフト(y軸)のx−yプロットである。
【0120】
例示の実施の形態では、かかるアルゴリズムの或るバージョンは次の通りである。
ステップ1: 熱チェック(TC1)しきい値より低いナトリウム較正電圧(Na VLTc)を識別する。
ステップ2: 熱チェック(TC2)しきい値より低いカルシウム較正電圧(Ca VLTc)を識別する。
ステップ3: Na VLTcおよびCa VLTcがしきい値TC1およびTC2を超えると結果を示さない。
例えば、内部の銀・銀塩化物の基準電極に対して、Na VLTcの下限は約2mVでよく、Ca VLTcの下限は約30mVでよい。例えば、共に譲渡された米国特許第4,933,048号に記述されているように、電気化学技術では種々の適当な基準電極が知られている。
【0121】
例示の実施の形態では、検査の部分集合の選択(例えば、ナトリウムおよびカルシウム)は複数の他の検査の範囲の欠格基準になってよい。このように、定量的電気化学的生物的サンプル検査システム115の品質保証を行うには、まず複数の電気化学センサを較正流体に接触させてよい。次に、較正流体内の検体の濃度に関連する較正パラメータを、複数のセンサの選択した部分集合の少なくともそれぞれについて熱チェックしきい値に従って決定してよい。部分集合において各熱チェックしきい値を超えるときは、検査システム115は生理的サンプル検査を行う資格を失ってよい。熱チェックしきい値を超えないときは、検査システム115は確立された方法で検査結果を報告してよい。
【0122】
これまで本発明の好ましい実施の形態について説明したが、品質を保証するための他の関係する方法について以下に説明する。例えば、本発明の別の例示の実施の形態では、各構成要素110は、所定の時間・温度しきい値を超えたことを示すことができる時間・温度指標を含んでよい。例えば、時間・温度指標は、構成要素110に取り付けた接着パッチの表面にかぶせた化学的組成物でよい。温度依存の化学反応または相変化により、ユーザにはっきり分かる変色(例えば、緑から赤)が起こる。
【0123】
温度の変動に応じて時間と共に変色する顔料の化学的性質に依存する指標手段としては、OnVuTM(Ciba Specialty Chemicals社およびFreshPoint社(共にスイス国内にある)が提供する)などが市販されている。例えば品質保証失敗警報モジュール120は、構成要素110を検査システム115内に挿入またはその他の方法で結合させた後の、時間・温度指標の変色を見分けることができる適当な光機構および/または映像処理アルゴリズムを含みまたはこれと通信してよい。次にユーザは、適宜、検査に失敗した構成要素110を患者サンプルで用いるのをやめる。
【0124】
本発明の別の例示に実施の形態では、各個別の構成要素110は、メーカが設定した所定の限界を超える温度・時間プロフィールを構成要素110が経験したかどうかを判定するための機構を含む。かかる方法では、検査システム115はかかる事象が起こったことを自動的に検出して、カートリッジに適用した患者サンプルの結果を報告するのをやめる。検査システム115は好ましくは原因を表示し(例えば、ディスプレイモジュール125を介して)、このサンプルを別の構成要素110で再検査するよう指示する。例えば、この判定は上に述べた色パッチ法を用いて自動的に行ってよい。したがって、検査システム115は、検査前または検査中に、構成要素110上の時間・温度パッチを調べることができる光検出器などを含んでよい。変色が起こって検出された場合は、検査システム115は患者の検査結果を表示せずにユーザに警報してよい。
【0125】
本発明の別の例示の実施の形態では、時間依存のリポソーム指標試薬放出ステップを用いてよい。リポソームを用いて、温度に依存して分子をリポソームの中からバルク流体の中に放出するという考えはこの技術で周知である。これは例えば次の文献に述べられている。すなわち、R.L.Magin著、「大きな単層リポソームからの温度依存の薬物の放出(Temperature−Dependent Drug Release from Large Unilamellar Liposomes)」、Cancer Drug Deliv.,1、109-17、1984年、S.B.Tiwari著、「温度に敏感なイソマツのリポソーム(Temperature Sensitive Liposomes of Plumbagin)」、J.Drug Targeting 10、585−91、2002年、P.Chandaroy著、「リポソーム封入プルロニックF127からの温度制御した内容の放出(Temperature Controlled Content Release from Liposomes Encapsulating Pluronic F127)」、J.Controlled Release、76、27−37、2001年、およびH.Hayashi著、「Nイソプロピルアクリルアミドの共重合体を用いる温度に敏感なリポソーム(「Temperature Sensitive Liposomes Using Copolymers of N−isopropylacrylamide)」、Bioconj.Chem.10、412−8、1999年である。
【0126】
本発明では、較正流体を検査システム115の検査室に送ってセンサを較正するのに、各構成要素110内の密封された較正流体袋(例えば、共に譲渡された米国特許第5,096,669号に記述されているもの)を用いてよい。或る例示の実施の形態では、流体袋は流体内に温度依存のリポソームを含んでよい。1つの例示の実施の形態では、例えば流体のバルクが4mM(または任意の適当な量)のカリウムイオン濃度を有するのに比べて、リポソームは高いレベルの濃度(例えば、50mM(または任意の適当な量)を含んでよい。構成要素110が高い温度を経験しなかった場合は、リポソームは完全に残り、バルクの濃度は4mMカリウムを保つ。しかし、もし高温が起こったときは、リポソームはカリウムを放出して、バルクのカリウム濃度は実質的に上昇する。
【0127】
検査室内のカリウムセンサは濃度はせいぜい4mM程度と予想しているので、較正流体内のカリウムの測定値が高いということは温度が高いことを示す。かかる指標を用いて、品質制御検査に失敗したかどうか判定してよい。カリウムが予想レベルにある場合は、構成要素110は検査を続けてよく、またその結果を報告してよい。注目すべきであるが、電気化学的測定の当業者が認識するように、分析を行うには検査システム115内に含まれるソフトウエアアルゴリズムを用いてよい。例えば、共に譲渡された米国特許第5,200,051号および第5,112,455号は、カリウム、グルコース、および血中尿素窒素(BUN)を含む種々のセンサの製造および使用を記述している。
【0128】
本発明のリポソームを用いる別の例示の実施の形態は、リポソームから放出されるカリウムイオンを伝導率センサで検出することを含んでよい。注目すべきであるが、i−STATカートリッジ内のヘマトクリットセンサは導電率センサである。カリウムイオン濃度が上昇すると、検査システム115はこれを較正流体のイオン強さの上昇に関連する伝導率の異常な上昇として、したがって品質制御検査の失敗を示すものとして記録する。更に、リポソームは酵素の化学的抑制剤を含んでよい。かかる抑制剤は酵素学で周知である。
【0129】
酵素グルコースオキシダーゼおよびウレアーゼを用いてグルコースおよびBUNをそれぞれ測定するi−STATカートリッジ内のセンサは、グルコースおよび尿素の既知の濃度を含む較正流体が存在するとき予想信号出力を与える。しかし、適当な酵素抑止剤と共にリポソームを含む較正流体袋の中にリポソームを入れた場合は、温度が上昇すると抑止剤を放出し、酵素センサからの信号がないかまたは小さいため、検査システム115は温度が上昇したと検出することがある。かかる状態はやはり時間・温度品質チェックの失敗を、すなわち、熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値レベルを超えたことを示す。グルコースオキシダーゼの周知の抑止剤は銅、銀、および水銀イオンを含み、ウレアーゼの場合は種々の重金属イオンを含む。
【0130】
別の例示の実施の形態では、構成要素110は1対の近接する電気接点を含み、導電ワックスを2つの接点の間の空隙に詰めてよい。所定の期間ワックスを高温に曝すと、ワックスは溶けて隣接する室内に流れ出る。このプロセスにより、ワックスは接点から部分的にまたは完全に除かれる。その後に検査システム115で構成要素110を検査すると、検査システム115は2つの接点の間に導電路が存在するかどうかを検出することができる。導電路が存在しない場合は、検査システム115は構成要素110が保管温度品質保証検査に失敗したという信号を送ってよい。
【0131】
導電ワックスはこの技術で周知であり、例えば、米国特許第4,098,652号に記述されている。この場合、導電はワックスの中に混ぜて所望の電気特性を与える金属被覆粒子に基づく。温度・時間上昇の指標として働く他の材料は、例えば液晶を含む。例えば、HemoTempII(Elk Grove,ILのBiosynergy社製)は不可逆の液晶時間・温度積分器である。別の例示の実施の形態では、監視は熱検出器(例えば、サーミスタ、熱電対、熱インク、温度依存の化学反応、材料の温度依存の相変化など)により熱ストレスに関して行ってよい。かかる器具および材料はこの技術で周知である。
【0132】
別の例示の実施の形態では、構成要素110は冷蔵庫内に所定のしきい値温度より低い温度で保管する。約5℃より低い温度が好ましいが、約2℃から約8℃の範囲内であれば許容できる。言い換えると、構成要素110は所定の温度以下で冷蔵容器内に保管してよい。冷蔵庫を置く場所また検査を行う場所は種々の適当な場所でよい。例えば、制限するものではないが、病院の中央試験室、衛星試験室、ポイント・オブ・ケアの場所、患者のベッドサイド、移動車両、試験室サービス提供者、または他の同様の場所でよい。
【0133】
好ましくは、構成要素110は検査システム115で用いる前に冷蔵庫から取り出して、検査に用いる前に周囲温度(例えば、室温の範囲)にする。構成要素110は箱(例えば、約25個のカートリッジまたは他の適当な数のカートリッジが入る段ボール箱)の中に納めてよく、箱は付属する熱ストレス検出器(変色するワックスまたは同様の温度・時間指標など)を1個含んでよい。かかる例示の実施の形態では、監視は熱ストレスしきい値に関して行いまた自動的に行う。熱ストレス検出器は個々の構成要素110から分離してよいが、構成要素110と実質的に同じ熱的環境内に(すなわち、まず冷蔵庫内に、次に周囲の室温に)置いてよい。
【0134】
図22は、本発明の例示の実施の形態に係る、品質制御サンプルを流さずに行う定量的生理的サンプル検査システムの品質保証のためのステップを示す流れ図である。ステップ2205で、検査システムで用いる構成要素の熱および時間ストレスを監視する。構成要素および検査システムを用いて検査を行うことを望む場合は、ステップ2210で、例えば冷蔵庫または他の該当する保管場所から構成要素を得てよい。ステップ2215で、構成要素の熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えたかどうか判定する。超えなかった場合は、ステップ2220で、構成要素を検査システムで用いてよい。この方法はステップ2210に戻って、別の構成要素を保管場所から得て、別の検査を行ってよい。
【0135】
しかし、ステップ2215で所定の熱・時間ストレスしきい値を超えたと判定した場合は、ステップ2225で、構成要素が品質保証に失敗したので廃棄しなければならないことを示す警報情報を生成する。更に、構成要素が品質保証に失敗したときは検査結果の表示をやめてよい。構成要素が1バッチまたはグループの実質的に同じ構成要素に関連する場合は、ステップ2230で、そのバッチの実質的に同じ構成要素も品質保証に失敗したので廃棄しなければならないことを示す警報情報を生成してよい
【0136】
本発明の例示の実施の形態の更なる説明を与えるプロセス流れ図を図23に示す。図23は本発明の例示の実施の形態に係る、制御流体を用いない自動的な熱および時間監視に基づく品質制御の方法を示す流れ図である。例示のためであって制限するものではないが、検査システム115は適当な読取機/分析器を含んでよく、また構成要素110は(1回使用の使い捨て)カートリッジを含んでよい。ステップ2305で、読取機を工場で製造する。更に、ステップ2310で、カートリッジを工場で製造する。
【0137】
ステップ2315で、読取機の工場での較正を行ってカートリッジの測定値の正確さを確認する。前に説明したように、かかる工場確認較正により、ユーザに出荷する前にカートリッジの測定値の正確さを工場で確認することができる。較正は工場で行い、またユーザはどんな方法でも較正を変更または修正できないように明確に読取機が設計されているので、ユーザが読取機の較正を誤って調整するような機構はない。その結果、較正による系統的なエラーは、完全ではないにしても、実質的に除くことができる。
【0138】
ステップ2320で、読取機を工場から目的の施設(例えば、病院、医者の診察室など)に出荷する。ステップ2325で、カートリッジもその施設に出荷する。ステップ2330で、施設に到着した後でユーザは読取機の資格付与および確認を行い、読取機が正しく機能することを保証する。更に、施設に到着すると、ステップ2335で、カートリッジを後で使用できるように適切な冷蔵環境内に保管する。ユーザがカートリッジを使用したいときは(例えば、所望の検査を行うために)、ステップ2340で、ユーザはカートリッジを冷蔵保管場所から取り出してよい。
【0139】
ステップ2345で、カートリッジの熱ストレスを超えたかどうかの判定を行う。超えた場合は、ステップ2350で、そのカートリッジおよびカートリッジのロットを拒絶する。しかし、カートリッジの熱ストレスを超えなかった場合は、ステップ2355で、カートリッジの時間ストレスを超えたかどうかの判定を行う。超えた場合は、ステップ2350で、そのカートリッジおよびカートリッジのロットを拒絶する(ステップ2350で)。さもなければ、カートリッジ(およびそのロット)の品質が保証されたので、カートリッジ(および読取機)を用いて患者サンプルを流して、所望の検査を実行してよい。
【0140】
システム100は、システム100の任意のまたは全てのモジュールの機能性を支援または増強するために、必要に応じて適当な追加のモジュールを含んでよい。例えば、システム100は、例えば品質保証失敗警報モジュール120と通信するデータベースモジュール(ログモジュール135に加えて)を含んでよい。かかるデータベースモジュールはシステム100が生成しまたは用いる任意の適当なタイプの情報(例えば、熱/時間ストレスの記録やその他の同様な情報)を記憶してよい。かかるデータベースモジュールは、電気的または電子的に情報を記憶することができる任意の適当なタイプのコンピュータ読取可能なまたはその他のコンピュータ記憶の媒体を含んでよい。
【0141】
別の機構または構造を用いて、ここに述べたシステムの種々の機能を実現してよい。例えば、2個以上のモジュールの機能を単一のモジュール内に実現してよく、または1個のモジュールの機能を複数の異なるモジュールの間に分散してよい。
【0142】
詳しく述べると、図24は、本発明の別の例示の実施の形態に係る、定量的電気化学的生物的サンプル検査システムの熱および時間ストレス品質保証のためのシステム2400を示すブロック図である。システム2400は複数の電気化学センサ2405(電気化学センサ1、電気化学センサ2、...、電気化学センサN(Nは任意の適当な数))を含む。例えば、構成要素110は電気化学センサ2405の1個以上を含んでよい。複数の電気化学センサはそれぞれ、任意の適当なタイプのセンサまたは電極を含んでよい。例えば、ナトリウムセンサ、カリウムセンサ、塩化物センサ、pHセンサ、pO2センサ、pCO2センサ、乳酸塩センサ、グルコースセンサ、クレアチニンセンサ、BUN電極、カルシウムセンサ、マグネシウムセンサ、ヘマトクリットセンサなどでよい。本発明の例示の実施の形態では、複数の電気化学センサは適当な較正流体に接触する。
【0143】
システム2400は複数の電気化学センサ2405と通信する較正回路2410を含む。例えば検査システム115は較正回路2410(例えば、品質保証失敗警報モジュール120の一部としてまたはこれと通信する)を含んでよい。較正回路2410は、複数の電気化学センサ2405の部分集合の各電気化学センサ2405毎に較正流体内の検体の濃度に関連する較正パラメータを所定のチェックしきい値に従って決定する。例示の実施の形態では、電気化学センサ2405の部分集合は、例えば、カルシウムイオン選択電極およびBUN電極を含んでよい。別の例示の実施の形態では、電気化学センサ2405の部分集合はナトリウムイオン選択電極、カルシウムイオン選択電極、およびBUN電極を含む。
【0144】
しかし、部分集合は任意の適当な数およびタイプの電気化学センサ2405を含んでよい。較正パラメータは、例えば、較正電圧または較正電圧ドリフト率を含んでよい。別の例示の実施の形態では、較正パラメータは較正電圧と較正電圧ドリフト率の適当な組合せを含んでよい。しかし、熱および時間ストレス品質保証の目的では、任意の適当な較正パラメータを用いてよい。部分集合の電気化学センサ2405毎に所定のチェックしきい値を超えるときは、較正回路2410は生理的サンプル検査を行う資格を検査システムから奪う。
【0145】
単に例示のためであって制限するものではないが、システム2400は第1の電気化学センサ2405および第2の電気化学センサ2405を含んでよい。第1および第2の電気化学センサ2405はそれぞれ較正流体に接触する。較正回路2410は、較正流体内の第1の検体の濃度に関連する第1の電気化学センサ2405の第1の較正電圧を第1のチェックしきい値に従って決定してよい。また較正回路2410は、較正流体内の第2の検体の濃度に関連する第2の電気化学センサ2405の第2の較正電圧を第2のチェックしきい値に従って決定してよい。第1および第2のチェックしきい値を共に超えると、較正回路2410は生理的サンプル検査を行う資格を検査システムから奪ってよい。該当するチェックしきい値はここに述べた方法に従って決定しまた確立してよい。
【0146】
これまでの説明では、好ましい例示の実施の形態は品質制御流体を用いる必要を全くなくす方法に焦点を当てた。以下の説明では、本発明の別の例示の実施の形態は、ポイント・オブ・ケア検査およびベッドサイド検査の品質保証のための品質制御流体の必要性を実質的に小さくする方法に焦点を当てる。この場合も、例示のi−STATシステムの動作に関して好ましい実施の形態を示す。しかし、当業者が認識するように、ここに説明する原理は他の同様の臨床サンプル検査システムにも適用する。
【0147】
種々のセンサを含む血液検査カートリッジ(構成要素110)は単一の制御流体に基づく熱および時間ストレスの品質保証検査に適していることが分かった。ここでは、かかる構成要素110をその一部として含む検査システム115は、やはりセンサベースの検査のタイプ毎に約10%以上の性能精度を与えることができる。
【0148】
上に述べたように、ユーザは正確で精度の高い分析測定値を得たいと望んでいる。かかるニーズがあるので、時間および温度のいずれかまたは両方についてラベルに示された保管勧告から外れた方法で構成要素110を保管したために性能が問題になる可能性のある構成要素110のための、品質チェックまたは失敗警報機構が必要になった。説明のために、正しくない保管条件をカートリッジの熱的な管理不良と呼ぶことにする。
【0149】
この別の例示の実施の形態は、特定の例と従来の方法とを対比させて説明するのが最もよい。所定の特定の例は、一組の化学検査と単一の血液サンプルに対するヘマトクリット測定とを行う上にのべたi−STAT CHEM8+カートリッジである。熱ストレスを決定するための従来の品質保証法では4個の別々のカートリッジを、次の品質制御流体について1個ずつ用いる。すなわち、化学レベル1、化学レベル3、RNAヘマトクリットレベル1、およびRNAヘマトクリットレベル3である(図9および10参照)。上に述べたように、4個の別々のカートリッジを用いるのはポイント・オブ・ケア・ユーザには面倒であろう。しかし、かかる従来の品質保証法は、温度および時間の関数として製品の性能(例えば、正確さおよび精度)のメーカの知識を反映しており、望ましくない製品性能を与えるような時間および温度条件から境界条件を遠く離して確立されている。
【0150】
総合的な製品性能は熱で誘発される構成要素110の変化から生じ、これは各センサの正確さおよび精度で示される、と考えるのは妥当である。単一の流体だけを用いる方法では、CHEM8+カートリッジ内の個々のセンサの性能を熱および時間ストレスの関数として評価して、受入れ可の品質保証を得やすい最良の単一の制御流体成分を見つける必要がある。化学検査に関して図5−図7および図11は、BUN、クレアチニン、およびイオン化カルシウムのセンサが化学レベル1および3の時間および熱ストレスに最も敏感であることと、これらの3個のセンサはレベル3よりレベル1に対して一層敏感であることを示す。実験結果によると、各センサは熱および時間ストレスに同じようには反応せず、或るセンサは他のセンサより熱および時間ストレスに対して一層敏感である。図5−図7および図11から明らかなように、感度の劣るセンサは、ナトリウム、カリウム、塩化物、全二酸化炭素(TCO2)、およびグルコースを含む。
【0151】
図25(A)および図25(B)にそれぞれ示すように、ヘマトクリットセンサはRNA Medical Hct制御流体レベルL1およびL3の熱および時間ストレスに敏感でないことが分かった。図25(A)および図25(B)のグラフは、熱ストレス(T=35℃で4週間)の下でのCHEM8+ヘマトクリットセンサの挙動を示し、またT=5℃で1ヶ月間保管したカートリッジとT=5℃で7ヶ月間保管したカートリッジの性能を比較する。図25(A)および図25(B)では、用いた検査流体はそれぞれRNA Medicalのヘマトクリット・レベルL1およびL3(7 Jackson Road,Devens,MA 01434のRNA Medical製)である。
【0152】
3つの一層敏感な検査(BUN、クレアチニン、およびイオン化カルシウム(iCa))に戻ると、L1(化学レベル1制御)濃度の変化率は温度の関数である。かかる結果はアレニウス・プロットで定量化できる熱活性化機構と一致する。図26は、5℃、25℃、30℃、および35℃での種々の保管時間の後にレベル1化学制御流体で検査したi−STAT CHEM8+カートリッジ内のイオン化カルシウムセンサのプロットを示す。図27は図26からのデータをアレニウス・プロットとして示すグラフ表示である。図28は、5℃、25℃、30℃、および35℃での種々の保管時間の後にレベル1化学制御流体で検査したi−STAT CHEM8+カートリッジ内の血中尿素窒素(BUN)センサのプロットを示す。図29は、図28からのデータをアレニウス・プロットとして示す。
【0153】
図30は、5℃、25℃、30℃、および35℃での種々の保管時間の後にレベル1化学制御流体で検査したi−STAT CHEM8+カートリッジ内のクレアチニンセンサのプロットのグラフ表示である。図31は、図30からのデータをアレニウス・プロットとして示す。注目すべきであるが、アレニウス・プロットは温度の逆数に対するln(−Δ濃度/Δ時間)のグラフである。全ての温度での時間的な濃度の変化率は、短期間の高温の実験と長期間の低温の実験との相関を考慮して、アレニウスの式から予測することができる。
【0154】
図26−図31からのデータ(および図32の結合された要約形式)によると、CHEM8+カートリッジの熱管理不良品質チェックはL1制御流体を用いて確立することができる。これらのデータを用いると、iCa、クレアチニン、およびBUNのセンサの種々の保管温度での時間に従う濃度測定値を予測することができる。不正確な結果はATE(例えば、L1流体では、iCaが5%、クレアチニンが15%、BUNが9%)より大きいと定義される結果である。所定の温度では、失敗までの予想時間(predicted time−to−failure)は、平均測定値>=(目標+ATE)に基づいて作ってよい。
【0155】
濃度測定値の正規分布が与えられると、失敗までの予想月数は結果の50%が不正確(すなわち、目標+−ATEの外)になる時間である。次に、精度および標準偏差の知識を用いて制御限界を調整して、不正確な結果の百分率を低く定義してよい。例えば、不正確な結果のしきい値は5%が望ましいであろう。3つの検体の失敗までの予想月数は保管温度が高くなるに従って収束することが分かった。このように、L1流体内のiCa、BUN、またはクレアチニンの結果は、いずれもCHEM8+カートリッジの熱管理不良を十分示す。
【0156】
かかる方法では、ユーザは熱品質制御不良または失敗の警報機構を、検査毎に単一のカートリッジおよび単一の制御流体を用いる検査手続きにより実現することができる。これにより、L1流体でのiCa、BUN、およびクレアチニンの検体の結果について、ユーザは所定の単一のカートリッジの結果を受入れ可の検査範囲(カートリッジのメーカから与えられる)と比較してよい。3つの検査毎に指定範囲内の結果が得られない場合は、熱管理不良に関連する失敗であることをユーザに警告する。特定すると、検体のいずれかが指定目標範囲外の場合は、失敗警報がトリガされる(例えば、品質保証失敗警報モジュール120により)。
【0157】
前に説明したが、当業者が理解するように、熱および時間ストレスの組合せの値はシステムしきい値を決定する2つの影響の一体的な組合せに基づいてよい。例えば、温度が短期間大幅に上昇したためにしきい値を超えることがある。同様に、長期間の比較的小さい温度上昇によりしきい値を超えることがある。別の例では、温度は指定された保管温度を超えなかったが、その温度での許容時間すなわち品質保持期限は超えたかも知れない。その結果、所定の熱・時間ストレスしきい値を超えることがある。この開示で述べた一般的なタイプの実験により、メーカは製品特有のしきい値をどのように設定するかを決めることができる。
【0158】
提示を容易にするため、構成要素110の各箱内の添付文書内に、Na、K、Cl、iCa、グルコース、クレアチニン、BUN、およびTCO2について、L1流体から利用可能な全ての検体目標を示してよい。例として、図33は1つのかかる添付文書のレイアウトを示す。図33に見られるように、重要でない検査の目標および範囲のデータは省略されている。次の品質制御規則を適用してよい。
・ CHEM8+カートリッジの有効期限が今日の日付より前の場合は、カートリッジは期限切れなのでそのロットからのカートリッジを使用してはならない。
・ iCa、BUN、またはクレアチニンのいずれかが望ましい範囲内の結果を与えない場合は、カートリッジのロットは熱的に管理不良なので使用してはならない。
【0159】
当業者が認識するように、化学レベル1の制御流体組成はCHEM8+カートリッジの熱ストレスを決定するのに最も適しているが、異なる検査の組合せでの他のカートリッジおよび構成要素110は、検体濃度の異なる組合せを持つ単一の制御流体を用いまた1つ以上の異なる検査を用いて、熱管理不良を判定してよい。また当業者が認識するように、CHEM8+カートリッジについて上に述べた実験的検査プロセスの一般的原理を用いることにより、当業者は不適切な実験を行わずに、異なる検査での異なる構成要素110の適当な組成に到着することができる。
【0160】
本発明の別の例示の実施の形態の追加の説明を行うためのプロセス流れ図を図34に示す。図34は、本発明の例示の実施の形態に係る、単一の制御流体またはその制限された組合せを用いる熱および時間の監視に基づく品質制御の方法を示すフローチャートである。
【0161】
単に例示のためであって制限するものではないが、図34に示す方法は読取機/分析器および(1回使用の使い捨ての)カートリッジに関して述べる。ただし、他の適当なタイプの検査システムおよび構成要素を用いてもよい。ステップ3405で、読取機を製造する。ステップ3410で、カートリッジも製造する。ステップ3415で、読取機の工場での較正を行ってカートリッジの測定値の正確さを確認する。ステップ3420で、読取機を工場から施設に出荷する。ステップ3425で、施設に到着した後でユーザは読取機の資格付与および確認を行い、読取機が正しく機能することを保証する。ステップ3430で、カートリッジを工場から施設に出荷する。到着するとステップ3435で、カートリッジに関連する温度片または他の適当な温度・時間標識を検査または他の方法で調べて、輸送中にカートリッジの熱・時間ストレスを超えたかどうか判定する。超えた場合は、ステップ3440で、カートリッジの全バッチまたはロットを拒絶し、また使用してはならない。
【0162】
読取機の資格付与/確認とカートリッジの温度・時間のチェックに共に合格した場合は、ステップ3445で、液体品質制御手段を流してよい。ステップ3450で、液体品質制御検査の結果を記録する。ステップ3455で、これらの結果を検査システムおよびカートリッジの(メーカが決定した)目標結果と比較する。液体品質制御検査の結果が目標結果に比べて実質的に良くない場合は、ステップ3460で、ユーザはメーカの技術支援部門または他の適切な援助部門と相談して問題を解決する(例えば、読取機および/またはカートリッジを交換する)よう指示を受ける。そうでない場合は、ステップ3465で、カートリッジを適切な冷蔵環境で保管する。
【0163】
ユーザが読取機およびカートリッジを用いて検査を実行することを望むときは、ステップ3470で、カートリッジの(冷蔵)保管状態を確認する。カートリッジの熱ストレスを超えた(可能性がある)場合は、この方法はステップ3445に戻って液体品質制御手段を再び流して、カートリッジを使用してよいかどうか判定する。そうでない場合は、ステップ3475で、カートリッジの時間ストレスを超えたかどうか(例えば、カートリッジの有効期限を超えたかどうか)について判定する。超えた場合は、ステップ3440で、そのロットのカートリッジを拒絶する。超えていない場合は、ステップ3480で、そのカートリッジを用いて患者サンプルを流してよい。検査が終わった後、別のカートリッジを(冷蔵)保管場所から取り出してよい。これに応じて、この方法はステップ3470に戻り、カートリッジの熱および時間ストレスを超えていないことを確認する。
【0164】
定量的生物的サンプル検査システムの品質保証のための、図22、図23、および図34に示しまたここに説明したコンピュータプログラムのステップのそれぞれ、全て、または任意の組合せは、命令実行システム、機器、または器具(命令実行システム、機器、または器具から命令を取り出して命令を実行するコンピュータベースのシステム、プロセッサを含むシステム、または他のシステムなど)によりまたはこれらに関して用いられる任意のコンピュータ読取可能な媒体内で実現してよい。ここで用いる「コンピュータ読取可能な媒体」は、命令実行システム、機器、または器具が用いまたはこれらと共に用いるプログラムを含み、記憶し、通信し、伝播し、または輸送することができる任意の手段でよい。
【0165】
コンピュータ読取可能な媒体は、例であって制限するものではないが、電子的、磁気的、光学的、電磁的、赤外線、または半導体のシステム、機器、または伝播媒体でよい。コンピュータ読取可能な媒体のより特定の例(限定的なリスト)は次のものを含んでよい。すなわち、1本以上のワイヤを有する電気接続、携帯用コンピュータ・ディスケット、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、消去可能なリードオンリーメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、光ファイバ、および携帯用コンパクトディスク・リードオンリーメモリ(CDROM)である。
【0166】
当業者が認識するように、本発明はその精神または本質的な特徴から逸れずに種々の特定の形で実現してよい。ここに開示した実施の形態は全ての点において例示であって制限するものではない。本発明の範囲は上述の説明ではなく添付のクレームにより示されるものであり、その同等物の意味および範囲内に含まれる全ての変更を含むものとする。
上に述べた全ての米国特許および特許出願、外国特許および特許出願、および刊行物は、各個別の特許、特許出願、または刊行物を特定しておよび個別にその全体を援用すると示したのと同程度に、その全体をここに援用する。
【技術分野】
【0001】
本発明は生理的サンプル検査器具に適用される品質保証方法に関する。より特定すると、本発明はポイント・オブ・ケア検査のための改善された品質保証システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生理的サンプル検査器具に適用される従来の品質保証方法はいくつかある。かかる器具を人体に用いる場合は、品質保証プロセスが一般に政府(米国内では例えば食品医薬品局(FDA))により規制されている。患者への店頭販売で現在承認されている検査および器具では、品質保証は使用可能な時間(すなわち、有効期限)を決める工場検査により与えられる。米国では、これは臨床試験室改善修正条項放棄検査(Clinical Laboratory Improvements Amendments(CLIA)waived tests)と呼ばれている。かかるタイプの器具は、家庭の妊娠検査の場合のような定性的結果、または家庭用の血糖検査器具の場合のような定量的結果を与える。しかし、後者のグループに要求される正確さおよび精度は、規制された臨床血液検査試験室が提供する質と同じレベルとは見なされない。
【0003】
臨床試験室で用いることが承認されている検査および器具は、一般に異なる一連の規制でカバーされている。かかるシステムは主として優れた質の定量的結果を与えるよう設計されており、報告されている正確さは通常10%以上である。検査システムは熟練したユーザ(例えば、臨床試験室の技術者)が運転することが要求されており、また一般にシステムは中程度の複雑さであると規制当局により分類されている。当業者が認識するように、豊富な背景情報がFDAウエブサイトで利用できる。かかるシステムに関して、システムが正常に動作することを保証するため、現在は液体ベースの品質制御材料(quality control materials)を一定間隔で流すことが要求されている。
【0004】
かかる液体制御(liquid controls)は、所定の検査について期待される範囲の値を持つものが供給されている。したがって、或るシステムを液体制御材料で検査するとき、システムが報告する値はその所定の範囲内にあるはずである。システムが報告する結果が範囲外にあるときは、システムを修理する必要がある。品質を検査して計器を保全するというこのプロセスは訓練された試験室の技術者が行う。全ての分析システムが常にその仕様内で動作することが望ましいが、この設備は複雑なのでその要望に反することが多い。注目すべきであるが、試験室用機器メーカーが設計するシステムがこれまで前提としてきたのは、かかるシステムは液体品質制御検査を行うとときどき仕様外になることと、仕様内に戻せるように技術者を特別に訓練してシステムを修理することである。
【0005】
数年前から、ポイント・オブ・ケア検査またはベッドサイド検査と呼ばれる血液検査の新しい方法が行われている。かかる検査は、一般に病院内(例えば、緊急治療室や手術室)ではあるが、臨床試験室の外で行われる。かかる検査は、医者の診察室や一時的なまたは移動する場所(例えば、陸軍移動外科病院(MASHユニット)、救急車、観光船などの場所)でも行ってよい。ポイント・オブ・ケア検査用のいくつかの技術が開発されており、試験室並みの品質検査結果を出す能力を有するものもある(例えば、East Windsor,NJのi−STAT社製のシステム)。言い換えると、かかるポイント・オブ・ケア検査システムは試験室検査と同等または実質的に同等のレベルの正確さおよび精度を有する。かかる新しいシステムは一般に、読取機と、1回使用の使い捨て検査器具すなわちカートリッジに基づいている。
【0006】
ポイント・オブ・ケア血液検査システムの主な特徴の1つは、患者の血液サンプルを検査のために中央の試験室に送るという時間のかかる作業がなくなったことである。かかるシステムは操作が非常に簡単なので、看護師はベッドサイドで試験室と同等の質の、信頼性の高い定量的分析結果を得ることができる。例えば、看護師は検査の必要なパネルを付けたカートリッジを選び、血液サンプルを採取し、カートリッジ内に入れ、カートリッジを密封し、読取装置内に挿入する。読取装置は検査サイクル(すなわち、検査を行うのに必要なすべての他の分析ステップ)を実行する。このように簡単なので、医者は患者の生理的状態を迅速に洞察することができる。また、評価のための時間が短くなるので、かかるポイント・オブ・ケア・システムにより医者は適当な処置を迅速に決定して、患者を治療できる可能性を高めることができる。
【0007】
病院内の緊急治療室または他の救急処置の現場では、個々の患者に必要な血液検査のタイプが異なる。このように、ポイント・オブ・ケア・システムは一般に血液検査の種々のメニューの一連の使い捨てカートリッジを提供する。検査対象はナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、酸素分圧(pO2)、二酸化炭素分圧(pCO2)、pH、グルコース、ヘマトクリット、乳酸塩、血中尿素窒素(BUN)およびクレアチニンであるが、更に他の検査対象として含まれる(が限定されない)のは、プロトロンビン時間(PT)、活性化凝固時間(ACT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、トロポニンI、トロポニンT、クレアチンキナーゼMB(CKMB)、脳ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、NTproBNPおよびC反応性蛋白(CRP)などである。当業者に周知のように、これらの検査結果から複数の他のパラメータ(例えば、塩基過剰(BE)や百分率酸素飽和度(%O2飽和))を計算することができる。これらの検査は、1回使用の器具(例えば、使い捨てカートリッジ)として複数の組合せでユーザに提供してよい。例えばI−STATシステムは、1つから8つの範囲の血液検査のメニューを持つ10種類以上のカートリッジを病院に提供する。
【0008】
或る場合には、i−STAT社などが供給するカートリッジは、冷蔵状態では約6ヶ月から約9ヶ月の品質保証期限を有するが、例えば室温では約2週間(すなわち、より特定すると最高約30℃では約2週間)というように品質保証期限は限定される。そのため、病院は一般にカートリッジを中央の冷蔵場所に保管し、要求に応じてカートリッジを特定の部局に届ける。これらの部局は冷蔵設備を有することも有しないこともあり、これは保有する在庫に影響する。或る部局では一般的な保管設備が限られており、かかる状態は保有する在庫のレベルに影響する。病院などのユーザは複数のタイプのカートリッジを用いることがあり、各ポイント・オブ・ケア検査の場所で検査結果の品質を保証したいというニーズがある。かかる場所は、例えば、緊急治療室(ER)、重症管理室(CCU)、小児集中治療室(PICU)、集中治療室(ICU)、腎臓透析室(RDU)、手術室(OR)、心臓血管手術室(CVOR)、および一般病棟(GW)を含んでよい。または、ユーザは医者の診察室や訪問看護師サービスでよい。しかし品質を保証したいというニーズは同じである。
【0009】
病院では、ポイント・オブ・ケア血液検査機能を最近導入したために品質保証の新しい要求が生まれた。かかる要求は、所定の病院内の複数の場所で複数のタイプの使い捨て血液検査カートリッジが用いられることから起こる。しかし、病院の目的は各使用現場でカートリッジのタイプ毎に高いレベルの品質保証を与えることである。
【0010】
従来は、試験室品質結果を提供するシステムではユーザが或る形の液体品質制御を流すよう規制されていた。例えば、ハンドヘルド読取機と1回使用のカートリッジとに基づくi−STATシステムでは、顧客は受領したときに、カートリッジの出荷品から統計的サンプルを取って検査する必要がある。かかるカートリッジが仕様内であることが分かると、顧客は全ての出荷品をポイント・オブ・ケア検査に用いてよい。例えば、i−STATシステムは特定のカートリッジタイプでヘマトクリットおよび複数の血液化学品の結果を報告するが、このシステムに適用された1つの方法では、4個のカートリッジを用いる(2個は異なるヘマトクリット制御流体を、更に2個は2つの異なる化学品制御流体を用いる)必要があった。
【0011】
より特定すると、カートリッジは一般に所定数のユニット(例えば、1つのタイプの25個のカートリッジ)を箱に入れてメーカからユーザに提供する。従来の品質保証方法では、これらのカートリッジの統計的なサンプルを制御流体で検査して合格した後に、残りを患者用として出すことが必要である。かかる方法の起こりは、定量的血液検査システムが発展した歴史にある。従来は、フローセルまたはキュベットなどの分析用の構成要素を異なるサンプルで何度も再使用していた。システムを制御流体で検査して分かったことであるが、このように再使用すると分析出力がドリフトすることがある。システムが仕様外で動作していることが分かると修理する必要がある。かかるシステムは一般に中央の病院試験室にあるので、このために特に訓練された熟練した技術者が修理した。
【0012】
かかる一般的なタイプの液体制御検査は、測定を行うときに光キュベットチャンバや電極などの同じ検出器を何度も再使用する多くの試験室ベースのシステムに適している。例えば、電極のアレイ(例えば、pH、pCO2、pO2など)を有する従来の血液ガス分析器は、較正流体(calibrant fluid)または気体を流し、次にサンプルを流し、最後に洗浄流体を流すという多くの反復検査サイクルを行う。サンプルを流す度に自動洗浄工程を行っても、かかる電極は残留サンプル成分(例えば、蛋白質など)により時間と共に汚れる。この場合は、液体制御をときどき用いれば、反復使用した構成要素(例えば、電極)が仕様からドリフトしたことを見つけて数時間以内に修正してシステムを保証することができる。対照的に、i−STATシステムなどのように、1度だけ使用して廃棄する電極またはその他の検出器具に基づくシステムでは、再使用する検出器具に共通して起こる使用中のドリフトのようなものは生じない。
【0013】
当業者が認識するように、性能特性は検査システムの開発中に決定される。精度のデータは一般に複数の検査現場で収集し、市場で確立された1つ以上のシステムに対して方法比較を行う。一般に、デミング(または一般デミング)回帰分析を用いて、新しい方法と古い方法との間の不正確さの推定を行って、推定値の標準誤差(Sy.x)と相関係数(r)とを与える。これは例えば、P.J.CornbleetおよびN.Gochman著、「方法比較分析における不正確な最小二乗回帰係数(Incorrect Least Squares Regression Coefficients in Method−Comparison Analysis)」、Clinical Chemistry 25:3,432(1979年)、およびR.F.Martin著、「方法比較研究における系統的バイアスおよびその信頼間隔の推定のための一般デミング回帰(General Deming Regression for Estimating Systematic Bias and Its Confidence Interval in Method−Comparison Studies)」、Clinical Chemistry 46:100−104(2000年1月)に記述されている。
【0014】
また制御流体の精度データは、平均(M)、標準偏差(SD)、および百分率変動係数(%CV)を得るためにも決定される。例として、次の表は制御流体を異なるレベルで用いた種々の検査における上述のi−STATシステムの精度データの概要を示す。これらの値は約10%以上の精度の定量的結果を与える試験室品質のシステムを示す。
【0015】
【表1−1】
【表1−2】
【0016】
例えば、血液化学品およびヘマトクリットの検査を含む、カートリッジのための品質保証を行う従来の方法(i−STATシステムが用いているような)は次の通りである。カートリッジを断熱箱内にアイスパックと共に納めてメーカから出荷し、2営業日以内に顧客に届ける。箱の中には、或る期間にわたって高温を経験すると変色する赤いワックスを含む温度片がある。変色が起こった場合は、ユーザは、出荷品を返却するかまたは供給者に連絡して指示を待つよう指示される。カートリッジが安全に到着しかつ温度片が変色していない場合は、カートリッジを冷蔵場所に移す。この時点で4個のカートリッジを取り出して、4つの異なる制御流体でチェックする。かかるチェックは、異なる化学値を表す2つの制御流体と2つの異なるヘマトクリット・レベルを表す2つの制御流体とで行う。4個のカートリッジの報告結果がその制御流体の期待値と一致する場合は、残りのカートリッジを冷蔵場所から取り出して1つ以上のポイント・オブ・ケアの場所に送ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第4,098,652号明細書
【特許文献2】米国特許第4,933,048号明細書
【特許文献3】米国特許第5,096,669号明細書
【特許文献4】米国特許第5,112,455号明細書
【特許文献5】米国特許第5,124,661号明細書
【特許文献6】米国特許第5,200,051号明細書
【特許文献7】米国特許第5,212,050号明細書
【特許文献8】米国特許第5,447,440号明細書
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】P.J.CornbleetおよびN.Gochman著、「方法比較分析における不正確最小二乗回帰係数」、Clinical Chemistry 25:3,432(1979年)
【非特許文献2】R.F.Martinの「方法比較研究における系統的バイアスおよびその信頼間隔の推定のための一般デミング回帰」、Clinical Chemistry 46:100−104(2000年1月)
【非特許文献3】「ワクチン・コールドチェーンの維持および管理のためのガイドライン」、MMWR、2003年10月
【非特許文献4】権利放棄のためのFDAドラフトガイダンス(2005年9月)
【非特許文献5】米国FDA臨床試験室改善修正案(CLIA)
【非特許文献6】R.L.Magin著、「大きな単層リポソームからの温度依存の薬物の放出」、Cancer Drug Deliv.,1、109-17、1984年
【非特許文献7】S.B.Tiwari著、「温度に敏感なイソマツのリポソーム」、J.Drug Targeting 10、585−91、2002年
【非特許文献8】P.Chandaroy著、「リポソーム封入プルロニックF127からの温度制御した内容の放出」J.Controlled Release、76、27−37、2001年
【非特許文献9】H.Hayashi著、「Nイソプロピルアクリルアミドの共重合体を用いる温度に敏感なリポソーム」、Bioconj.Chem.10、412-8、1999年。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
かかる運営方法は、例えば、毎年かなりの数のカートリッジを使う病院などの大きな施設の中のポイント・オブ・ケアの場所では一般に受け入れられるが、医者の診察室などの他のポイント・オブ・ケアの場所にはあまり適していない。詳しく述べると、医者は病院に比べて一般に注文するカートリッジの数が少なく、また使う頻度も小さい。したがって、ポイント・オブ・ケアで試験室品質結果を与えようとして1回使用の検査器具に液体制御を流すことは顧客によっては面倒であり、また場合によってはこの技術を用いる意欲を減退させる。したがって、医者の診察室やその他の頻度の小さいポイント・オブ・ケア・ユーザ(例えば、介護ホーム)用の、管理が簡単な品質検査方法が必要である。また、1回使用の分析器具に基づく新たな検査システムの開発とポイント・オブ・ケアの現場で検査サービスを提供するという要望とが重なって、ポイント・オブ・ケア検査のニーズにより良く合致する品質制御方法に対するニーズが生まれた。そのため、好ましくは顧客が液体品質制御を用いることを必要とせずに品質保証を提供するための改善された手段ニーズが存在する。更に、顧客が用いる液体品質制御の数を大幅に減らす、品質保証を提供するための改善された手段に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
ポイント・オブ・ケア検査のための改善された品質保証システムおよび方法のためのシステムおよび方法を開示する。本発明の例示の実施の形態に関して、本発明の第1の態様では、品質制御サンプルを用いずに定量的生理的サンプル検査システムの品質保証を行うためのシステムは熱および時間ストレス(thermal and temporal stress)監視モジュールを含む。熱および時間ストレス監視モジュールは検査システムで用いる構成要素の熱および時間ストレスを監視する。システムは熱および時間ストレス監視モジュールと通信する品質保証失敗警報モジュールを含む。品質保証失敗警報モジュールは、熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えるときは構成要素が品質保証に失敗したことを示す警報情報を生成する。
【0021】
第1の態様では、生理的サンプルは、血液、血漿、血清、唾液、尿、脳脊髄液、およびその修正された形の1つを含んでよい。品質制御サンプルは液体制御などを含んでよい。熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えないときは構成要素を検査システムで用いてよい。熱および時間ストレス監視モジュールは検査システムから分離してよく、また検査システムと実質的に同じ熱環境内にあってよい。または、熱および時間ストレス監視モジュールは検査システムと統合してよい。熱および時間ストレス監視モジュールは構成要素に関連する温度・時間指標を監視してよい。例えば、熱および時間ストレス監視モジュールは、導電ワックス、温度依存の液晶、電位差測定センサのベースライン較正電位のシフト、酵素阻害剤のリポソーム放出、導電液体のリポソーム放出、高イオン濃度のリポソーム放出、電気化学的検出可能な分子またはイオンのリポソーム放出、サーミスタ、熱電対、熱インク、温度依存の化学反応、温度依存の変色パッチ、および材料の温度依存の相変化の少なくとも1つを含んでよい。
【0022】
第1の態様では、構成要素はサンプル検査カートリッジなどを含んでよい。検査システムは血液分析システムなどを含んでよい。血液分析システムは携帯用構成要素読取機などを含んでよい。例えば、構成要素は1回使用の血液検査カートリッジなどの血液検査カートリッジを含んでよい。血液検査カートリッジは少なくとも1個の電気化学センサを含んでよい。構成要素はセンサなどを含んでよい。例えばセンサは、電気化学センサ、光センサ、発光センサ、蛍光センサ、電流測定センサ、電位差測定センサ、電気伝導度測定センサ、導波管、消失センサ、バイオセンサ、表面プラズモン共鳴センサ、音波センサ、反射率センサの1つを含んでよい。
【0023】
構成要素は所定の温度より低い冷蔵容器内に保管してよい。構成要素は検査システムで用いる前に冷蔵容器から取り出してよい。構成要素は検査システムで用いる前に周囲温度に達するようにしてよい。検査システムは検体(analyte)を決定するための検査を行ってよい。例えば検体は、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、グルコース、乳酸塩、クレアチニン、尿素、ヘマトクリット、プロトロンビン時間、活性化凝固時間、活性化部分トロンボプラスチン時間、トロポニンI、トロポニンT、クレアチンキナーゼMB、脳ナトリウム利尿ペプチド、NTproBNP、C反応性蛋白、pO2、pCO2、およびpHの1つを含んでよい。
【0024】
第1の態様では、構成要素は1バッチの実質的に同じ構成要素に関連してよい。品質保証失敗警報モジュールは、構成要素の熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えるときはそのバッチが品質保証に失敗したことを示す警報情報を生成してよい。検査システムは構成要素を用いる前にフェールセイフチェックを少なくとも1回行ってよい。例えば、フェールセイフチェックは、周囲温度が所定の範囲内にあることの確認、構成要素が故障でないことの確認、および検査システムが故障でないことの確認の少なくとも1つを含んでよい。検査システムが故障でないことの確認は、検査システムに関連する電気コネクタの電気的完全性の検査と、検査システムに関連する演算増幅器の動作の完全性の検査の少なくとも1つを含んでよい。
【0025】
第1の態様では、検査システムは電子シミュレータを含んでよい。電子シミュレータは構成要素が生成する信号をシミュレートしてよい。電子シミュレータは、検査システムに関連する電気コネクタの電気的完全性と検査システムに関連する演算増幅器の動作の完全性の少なくとも1つを検査するためのシミュレーション信号を生成してよい。検査システムはディスプレイモジュールを含んでよい。ディスプレイモジュールは警報情報に従って警報を表示してよい。検査システムは、構成要素が品質保証に失敗したときは検査結果の表示をやめてよい。
【0026】
システムは品質保証失敗警報モジュールと通信するログモジュールを含んでよい。ログモジュールは複数の構成要素の熱および時間ストレスのログを保持してよい。所定の熱・時間ストレスしきい値は検査システムの全許容誤差に従って生成してよい。所定の熱・時間ストレスしきい値は熱ストレスと時間ストレスの複数の組合せを含んでよい。所定の熱・時間ストレスしきい値は所定の温度・時間プロフィールを含んでよい。
【0027】
本発明の第2の態様では、定量的電気化学的生理的サンプル検査システムの熱および時間ストレス品質保証を評価するためのシステムは第1の電気化学センサおよび第2の電気化学センサを含む。第1および第2の電気化学センサは較正流体に接触する。第1の電気化学センサは較正流体内の第1の検体の濃度に関連する第1の較正電圧を第1のチェックしきい値に従って決定する。第2の電気化学センサは較正流体内の第2の検体の濃度に関連する第2の較正電圧を第2のチェックしきい値に従って決定する。第1および第2のチェックしきい値を共に超えるときは検査システムは生理的サンプル検査を行う資格を失う。第2の態様では、第1の電気化学センサはナトリウムイオン選択電極を含んでよい。第2の電気化学センサはカルシウムイオン選択電極を含んでよい。
【0028】
本発明の第3の態様では、定量的電気化学的生理的サンプル検査システムの熱および時間ストレス品質保証のためのシステムは複数の電気化学センサを含む。複数の電気化学センサは較正流体に接触する。システムは複数の電気化学センサと通信する較正回路を含む。較正回路は、複数の電気化学センサの部分集合の電気化学センサ毎に較正流体内の検体の濃度に関連する較正パラメータを所定のチェックしきい値に従って決定する。部分集合の電気化学センサ毎に所定のチェックしきい値を超えるときは、較正回路は生理的サンプル検査を行う資格を検査システムから奪う。
【0029】
第3の態様では、電気化学センサの部分集合はカルシウムイオン選択電極およびBUN電極を含んでよい。または、電気化学センサの部分集合はナトリウムイオン選択電極、カルシウムイオン選択電極、およびBUN電極を含んでよい。較正パラメータは較正電圧を含んでよい。代替的に、較正パラメータは較正電圧ドリフト率を含んでよい。または、較正パラメータは較正電圧と較正電圧ドリフト率の組合せを含んでよい。複数の電気化学センサはそれぞれ、ナトリウムセンサ、カリウムセンサ、塩化物センサ、pHセンサ、pO2センサ、pCO2センサ、乳酸塩センサ、グルコースセンサ、クレアチニンセンサ、BUN電極、カルシウムセンサ、マグネシウムセンサ、およびヘマトクリットセンサの1つを含んでよい。
【0030】
本発明の第4の態様では、品質制御サンプルを流さずに行う定量的生理的サンプル検査システムの品質保証の方法は、検査システムで用いる構成要素の熱および時間ストレスを監視するステップと、熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えるときはその構成要素が品質保証に失敗したことを示す警報情報を生成するステップとを含む。
【0031】
第4の態様では、所定の熱・時間ストレスしきい値は検査システムの全許容誤差に従って生成してよい。所定の熱・時間ストレスしきい値は温度と時間の複数の組合せを含んでよい。熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えないときは構成要素を検査システムに用いてよい。監視するステップは、導電ワックス、温度依存の液晶、電位差測定センサのベースライン較正電位のシフト、酵素阻害剤のリポソーム放出、導電液体のリポソーム放出、高イオン濃度のリポソーム放出、電気化学的検出可能な分子またはイオンのリポソーム放出、サーミスタ、熱電対、熱インク、温度依存の化学反応、温度依存の変色パッチ、および材料の温度依存の相変化の少なくとも1つを用いて行ってよい。
【0032】
監視および生成するステップは、病院の中央試験室、衛星試験室、ポイント・オブ・ケアの場所、患者のベッドサイド、移動車両、および試験室サービス提供者の1つで行ってよい。検査システムは血液分析システムなどを含んでよい。血液分析システムは携帯用構成要素読取機などを含んでよい。構成要素は、1回使用の血液検査カートリッジなどの血液検査カートリッジを含んでよい。血液検査カートリッジは少なくとも1個の電気化学センサを含んでよい。生理的サンプルは、血液、血漿、血清、唾液、尿、脳脊髄液、およびその修正された形の1つを含んでよい。
【0033】
第4の態様では、この方法は以下のステップの1つ以上でよい。すなわち、構成要素を所定の温度より低い冷蔵容器内に保管するステップと、構成要素を所定の温度より低い冷蔵庫内に保管するステップと、検査システムで用いる前に構成要素を冷蔵庫から取り出すステップと、検査の実行に用いる前に構成要素を室温に達するようにするステップとである。品質制御サンプルは液体制御などを含んでよい。構成要素はセンサなどを含んでよい。例えば、センサは電気化学センサ、光センサ、発光センサ、蛍光センサ、電流測定センサ、電位差測定センサ、電気伝導度測定センサ、導波管、消失センサ、バイオセンサ、表面プラズモン共鳴センサ、音波センサ、および反射率センサの1つを含んでよい。検査システムは検体を決定するための検査を行ってよい。例えば検体は、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、グルコース、乳酸塩、クレアチニン、尿素、ヘマトクリット、プロトロンビン時間、活性化凝固時間、活性化部分トロンボプラスチン時間、トロポニンI、トロポニンT、クレアチンキナーゼMB、脳ナトリウム利尿ペプチド、NTproBNP、C反応性蛋白、pO2、pCO2、およびpHの1つを含んでよい。
【0034】
第4の態様では、構成要素は1バッチの実質的に同じ構成要素に関連してよい。この方法は、構成要素の熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えるときはそのバッチが品質保証に失敗したことを示す警報情報を生成するステップを含んでよい。検査システムは構成要素を用いる前にフェールセイフチェックを少なくとも1回行ってよい。例えば、検査システムはフェールセイフチェックとして次のステップの少なくとも1つを行ってよい。すなわち、(i)周囲温度が所定の範囲内にあることを確認するステップと、(ii)構成要素が故障でないことを確認するステップと、(iii)検査システムが故障でないことを確認するステップとである。ステップ(iii)では、検査システムは次のステップの少なくとも1つを行ってよい。すなわち、(1)検査システムに関連する電気コネクタの電気的完全性を検査するステップと、(2)検査システムに関連する演算増幅器の動作の完全性を検査するステップとである。
【0035】
この方法は構成要素が生成する信号をシミュレートするステップを含んでよい。シミュレートするステップは次のステップの1つ以上を含んでよい。すなわち、検査システムに関連する電気コネクタの電気的完全性を検査するためのシミュレーション信号を生成するステップと、検査システムに関連する演算増幅器の動作の完全性を検査するためのシミュレーション信号を生成するステップとである。この方法は次のステップの1つ以上を含んでよい。すなわち、警報情報に従って警報を表示するステップと、構成要素が品質保証に失敗したときは検査結果の表示をやめるステップと、複数の構成要素の熱および時間ストレスのログを保存するステップとである。
【0036】
本発明の第5の態様では、1つ以上の液体品質制御サンプルを流す必要のない定量的血液サンプル検査システムの品質保証の方法であって、検査システムはポイント・オブ・ケア検査読取機と1つ以上の検査を行うための複数の1回使用の検査器具とを含み、また各検査は約10%以上の精度で行うものであり、この方法は、複数の1回使用の検査器具の少なくとも1個を熱および時間ストレスと所定の熱・時間ストレスしきい値とに従って監視するステップと、ポイント・オブ・ケア検査読取機で血液サンプルを検査するために、関連する熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えなかった1回使用の検査器具を選択するステップとを含む。
【0037】
本発明の第6の態様では、液体品質制御サンプルまたは一組の品質制御サンプルを流す必要のない定量的血液サンプル検査システムの品質保証の方法であって、検査システムは1つ以上の検査の選択されたメニューを行うための再使用可能な携帯用読取機および複数の1回使用の検査器具を含み、また各検査は約10%以上の精度で行うものであり、この方法は、各1回使用の検査器具に関連する時間・温度指標を調べることにより、各1回使用の検査機器が時間および熱ストレスに曝されたかどうかを所定の時間・温度ストレスしきい値に従って判定するステップと、時間・温度ストレスしきい値を超えなかった1回使用の検査器具について血液検査結果を報告するステップとを含む。
【0038】
本発明の第7の態様では、ポイント・オブ・ケア検査に用いる定量的血液サンプル検査システムの品質保証の方法であって、検査システムは血液サンプル内の検体の1回以上の検査を行うための再使用可能な携帯用読取機および1回使用の検査器具を含み、また各検体検査は約10%以上の精度で行うものであり、この方法は、サンプル内の所定の濃度の少なくとも1つの検体を含む単一の制御流体でバッチからの単一の検査器具を検査することにより、1バッチの1回使用の検査器具が熱および時間ストレスに曝されたかどうかを判定し、ただしこの検体は熱および時間ストレスが検査の全許容誤差の所定のしきい値より大きいことを示す検査結果を与えるように選択する、ステップと、検査結果が所定のしきい値より大きいときはこのバッチの検査器具が血液サンプル検査に用いるのに適さないことを示すステップとを含む。
【0039】
本発明の第8の態様では、定量的電気化学的生物的サンプル検査システムの熱ストレス品質保証の方法は、第1および第2の電気化学センサを較正流体に接触させるステップと、較正流体内の第1の検体の濃度に関連する第1の較正電圧を第1の熱チェックしきい値に従って決定するステップと、較正流体内の第2の検体の濃度に関連する第2の較正電圧を第2の熱チェックしきい値に従って決定するステップと、第1および第2の熱チェックしきい値を共に超えるときは生理的サンプル検査を行う資格を検査システムから奪うステップとを含む。例えば、第1の電気化学センサはナトリウムイオン選択電極を含んでよく、第2の電気化学センサはカルシウムイオン選択電極を含んでよい。
【0040】
本発明の第9の態様では、定量的電気化学的生物的サンプル検査システムの熱ストレス品質保証の方法は、複数の電気化学センサを較正流体に接触させるステップと、複数の電気化学センサの部分集合の電気化学センサ毎に較正流体内の検体の濃度に関連する較正パラメータを所定の熱チェックしきい値に従って決定するステップと、部分集合の電気化学センサ毎に所定の熱チェックしきい値を超えるときは生理的サンプル検査を行う資格を検査システムから奪うステップとを含む。
【0041】
本発明の第9の態様では、電気化学センサの部分集合はカルシウムイオン選択電極およびBUN電極を含んでよい。または、電気化学センサの部分集合はナトリウムイオン選択電極、カルシウムイオン選択電極、およびBUN電極を含んでよい。較正パラメータは較正電圧を含んでよい。代替的に、較正パラメータは較正電圧ドリフト率を含んでよい。または、較正パラメータは較正電圧と較正電圧ドリフト率の組合せを含んでよい。複数の電気化学センサはそれぞれ、ナトリウムセンサ、カリウムセンサ、塩化物センサ、pHセンサ、pO2センサ、pCO2センサ、乳酸塩センサ、グルコースセンサ、クレアチニンセンサ、BUN電極、カルシウムセンサ、マグネシウムセンサ、およびヘマトクリットセンサの1つを含んでよい。
【0042】
本発明の第10の態様では、品質制御サンプルを流さずに行う定量的生物的サンプル検査システムの品質保証の方法は、検査システムの構成要素の熱および時間ストレスを監視するステップと、構成要素を検査システムで用いて生理的サンプル検査を行うことが適切かどうかを構成要素の熱および時間ストレスと所定の熱・時間ストレスしきい値とに従って判定するステップとを含む。
【0043】
本発明の第11の態様では、品質制御サンプルを用いずに定量的生物的サンプル検査システムの品質保証を行うためのシステムは熱および時間ストレス監視モジュールを含む。熱および時間ストレス監視モジュールは検査システムで用いる構成要素の熱および時間ストレスを監視する。構成要素は1バッチの実質的に同じ構成要素に関連する。システムは熱および時間ストレス監視モジュールと通信する品質保証失敗警報モジュールを含む。品質保証失敗警報モジュールは、構成要素の熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えるときはバッチが品質保証に失敗したことを示す警報情報を生成する。
【0044】
本発明の第12の態様では、品質制御サンプルを流さずに行う定量的生物的サンプル検査システムの品質保証の方法は、検査システムで用いる構成要素の熱および時間ストレスを監視し、ただし、構成要素は1バッチの実質的に同じ構成要素に関連する、ステップと、構成要素の熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えるときはそのバッチが品質保証に失敗したことを示す警報情報を生成するステップとを含む。
【0045】
本発明の第13の態様では、品質制御サンプルを用いずに定量的生物的サンプル検査システムの品質保証を行うためのシステムは熱ストレス監視モジュールを含む。熱ストレス監視モジュールは検査システムで用いる構成要素の熱ストレスを監視する。システムは熱ストレス監視モジュールと通信する時間ストレス監視モジュールを含む。時間ストレス監視モジュールは検査システムで用いる構成要素の時間ストレスを監視する。システムは熱ストレス監視モジュールおよび時間ストレス監視モジュールと通信する品質保証失敗警報モジュールを含む。品質保証失敗警報モジュールは、熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えるときは構成要素が品質保証に失敗したという警報情報を生成する。
【0046】
本発明の第14の態様では、品質制御サンプルを用いずに定量的生物的サンプル検査システムの品質保証を行うためのシステムは熱および時間ストレスを監視するための手段を含む。熱および時間ストレス監視手段は検査システムで用いる構成要素の熱および時間ストレスを監視する。システムは熱および時間ストレス監視手段と通信する品質保証失敗を警報するための手段を含む。品質保証失敗警報手段は、熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えるときは構成要素が品質保証に失敗したことを示す警報情報を生成する。
【0047】
第14の態様では、生理的サンプルは、血液、血漿、血清、唾液、尿、脳脊髄液、およびその修正された形の1つを含んでよい。品質制御サンプルは液体制御などを含んでよい。熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えないときは構成要素を検査システムで用いてよい。熱および時間ストレス監視手段は検査システムから分離してよく、また検査システムと実質的に同じ熱的環境内にあってよい。または、熱および時間ストレス監視手段は検査システムと統合してよい。熱および時間ストレス監視手段は構成要素に関連する温度・時間指標を監視してよい。例えば、熱および時間ストレス監視手段は、導電ワックス、温度依存の液晶、電位差測定センサのベースライン較正電位のシフト、酵素阻害剤のリポソーム放出、導電液体のリポソーム放出、高イオン濃度のリポソーム放出、電気化学的検出可能な分子またはイオンのリポソーム放出、サーミスタ、熱電対、熱インク、温度依存の化学反応、温度依存の変色パッチ、および材料の温度依存の相変化の少なくとも1つを含んでよい。
【0048】
第14の態様では、構成要素はサンプル検査カートリッジなどを含んでよい。検査システムは血液分析システムなどを含んでよい。血液分析システムは携帯用構成要素読取機などを含んでよい。構成要素は、例えば1回使用の血液検査カートリッジなどの血液検査カートリッジを含んでよい。血液検査カートリッジは少なくとも1個の電気化学センサを含んでよい。構成要素はセンサなどを含んでよい。例えばセンサは、電気化学センサ、光センサ、発光センサ、蛍光センサ、電流測定センサ、電位差測定センサ、電気伝導度測定センサ、導波管、消失センサ、バイオセンサ、表面プラズモン共鳴センサ、音波センサ、反射率センサの1つを含んでよい。
【0049】
構成要素は所定の温度より低い冷蔵容器内に保管してよい。構成要素は検査システムで用いる前に冷蔵容器から取り出してよい。構成要素は検査システムで用いる前に周囲温度に達するようにしてよい。検査システムは検体を決定するための検査を行ってよい。例えば検体は、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、グルコース、乳酸塩、クレアチニン、尿素、ヘマトクリット、プロトロンビン時間、活性化凝固時間、活性化部分トロンボプラスチン時間、トロポニンI、トロポニンT、クレアチンキナーゼMB、脳ナトリウム利尿ペプチド、NTproBNP、C反応性蛋白、pO2、pCO2、およびpHの1つを含んでよい。
【0050】
第14の態様では、構成要素は1バッチの実質的に同じ構成要素に関連してよい。品質保証失敗警報手段は、構成要素の熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えるときはそのバッチが品質保証に失敗したことを示す警報情報を生成してよい。検査システムは構成要素を用いる前にフェールセイフチェックを少なくとも1回行ってよい。例えば、フェールセイフチェックは、周囲温度が所定の範囲内にあることの確認、構成要素が故障でないことの確認、および検査システムが故障でないことの確認の少なくとも1つを含んでよい。検査システムが故障でないことの確認は、検査システムに関連する電気コネクタの電気的完全性の検査と、検査システムに関連する演算増幅器の動作の完全性の検査の少なくとも1つを含んでよい。
【0051】
第14の態様では、検査システムは電子的にシミュレートするための手段を含んでよい。電子的にシミュレートするための手段は構成要素が生成する信号をシミュレートしてよい。電子的にシミュレートするための手段は、検査システムに関連する電気コネクタの電気的完全性と検査システムに関連する演算増幅器の動作の完全性の少なくとも1つを検査するためのシミュレーション信号を生成してよい。検査システムは表示するための手段を含んでよい。表示手段は警報情報に従って警報を表示してよい。検査システムは、構成要素が品質保証に失敗したときは検査結果の表示をやめてよい。
【0052】
システムは品質保証失敗警報手段と通信するロギングのための手段を含んでよい。ロギング手段は複数の構成要素の熱および時間ストレスのログを保持してよい。所定の熱・時間ストレスしきい値は検査システムの全許容誤差に従って生成してよい。所定の熱・時間ストレスしきい値は熱ストレスと時間ストレスの複数の組合せを含んでよい。所定の熱・時間ストレスしきい値は所定の温度・時間プロフィールを含んでよい。
【0053】
本発明の第15の態様では、定量的電気化学的生理的サンプル検査システムの熱および時間ストレス品質保証を評価するためのシステムは第1の電気化学的検出手段および第2の電気化学的検出手段を含む。第1および第2の電気化学的検出手段は較正流体に接触する。第1の電気化学的検出手段は較正流体内の第1の検体の濃度に関連する第1の較正電圧を第1のチェックしきい値に従って決定する。第2の電気化学的検出手段は較正流体内の第2の検体の濃度に関連する第2の較正電圧を第2のチェックしきい値に従って決定する。第1および第2のチェックしきい値を共に超えるときは検査システムは生理的サンプル検査を行う資格を失う。例えば、第1の電気化学的検出手段はナトリウムイオン選択電極を含んでよく、第2の電気化学的検出手段はカルシウムイオン選択電極を含んでよい。
【0054】
本発明の第16の態様では、定量的電気化学的生理的サンプル検査システムの熱および時間ストレス品質保証のためのシステムは複数の電気化学的検出のための手段を含む。複数の電気化学的検出手段は較正流体に接触する。システムは複数の電気化学的検出手段と通信する較正のための手段を含む。較正手段は、複数の電気化学的検出手段の部分集合の電気化学的検出手段毎に較正流体内の検体の濃度に関連する較正パラメータを所定のチェックしきい値に従って決定する。部分集合の電気化学的検出手段毎に所定のチェックしきい値を超えるときは、較正手段は生理的サンプル検査を行う資格を検査システムから奪う。
【0055】
第16の態様では、電気化学的検出手段の部分集合はカルシウムイオン選択電極およびBUN電極を含んでよい。または、電気化学的検出手段の部分集合はナトリウムイオン選択電極、カルシウムイオン選択電極、およびBUN電極を含んでよい。較正パラメータは較正電圧を含んでよい。代替的に、較正パラメータは較正電圧ドリフト率を含んでよい。または、較正パラメータは較正電圧と較正電圧ドリフト率の組合せを含んでよい。複数の電気化学的検出手段はそれぞれ、例えば、ナトリウムセンサ、カリウムセンサ、塩化物センサ、pHセンサ、pO2センサ、pCO2センサ、乳酸塩センサ、グルコースセンサ、クレアチニンセンサ、BUN電極、カルシウムセンサ、マグネシウムセンサ、およびヘマトクリットセンサの1つを含んでよい。
【0056】
本発明の第17の態様では、品質制御サンプルを用いずに定量的生理的サンプル検査のシステムの品質保証を行うためのシステムは熱ストレスを監視するための手段を含む。熱ストレス監視手段は検査システムで用いる構成要素の熱ストレスを監視する。システムは熱ストレス監視手段と通信する時間ストレスを監視するための手段を含む。時間ストレス監視手段は検査システムで用いる構成要素の時間ストレスを監視する。システムは熱ストレス監視手段および時間ストレス監視手段と通信する、品質保証失敗を警報するための手段を含む。品質保証失敗警報手段は、熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えるときは構成要素が品質保証に失敗したという警報情報を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
本発明の他の目的および利点は、添付の図面を参照して、好ましい実施の形態の以下の詳細な説明を読めば当業者に明らかになる。図面中、同じ番号は同じ要素を指すのに用いた。
【図1】本発明の例示の実施の形態に係る、品質制御サンプルを用いずに定量的生理的サンプル検査システムの品質保証を行うためのシステム100を示すブロック図である。
【図2】本発明の例示の実施の形態に係る、ナトリウムの較正電圧(cal−volt)データ(x軸)に対する較正ドリフト(cal−drift)(y軸)をシステムの較正電圧および較正ドリフトのしきい値限界と共に示すグラフである。
【図3】本発明の例示の実施の形態に係る、血中尿素窒素の較正電圧データ(x軸)に対する較正ドリフト(y軸)をシステムの較正電圧および較正ドリフトのしきい値限界と共に示すグラフ表示である。
【図4】本発明の例示の実施の形態に係る、カルシウムの較正電圧データ(x軸)に対する較正ドリフト(y軸)をシステム較正電圧および較正ドリフトのしきい値限界と共に示すグラフである。
【図5】本発明の例示の実施の形態に係る、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、グルコース、全二酸化炭素、血中尿素窒素、クレアチニン、およびヘマトクリット用のセンサを含むi−STAT CHEM8+カートリッジの、ラベルに示された条件を超えた(印刷された有効期限を1ヶ月超えた)安定性を示すグラフ表示である。制御条件の許容全誤差(ATE)に対する誘発されたバイアスの変化を検査毎にプロットした。
【図6】本発明の例示の実施の形態に係る、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、グルコース、全二酸化炭素、血中尿素窒素、クレアチニン、およびヘマトクリット用のセンサを含むi−STAT CHEM8+カートリッジの、ラベルに示された条件を超えた(印刷された有効期限を25℃で8週間超えた)安定性を示すグラフ表示である。制御条件のATEに対する誘発されたバイアスの変化を検査毎にプロットした。
【図7】本発明の例示の実施の形態に係る、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、グルコース、全二酸化炭素、血中尿素窒素、クレアチニン、およびヘマトクリット用のセンサを含むi−STAT CHEM8+カートリッジの、ラベルに示された条件を超えた(印刷された有効期限を30℃で3週間超えた)安定性を示すグラフ表示である。制御条件のATEに対する誘発されたバイアスの変化を検査毎にプロットした。
【図8−1】本発明の例示の実施の形態に係る、ATE受入れ基準表(A)、および電解質、グルコース、およびヘマトクリット検査用のLER(誤り結果の限界)受入れ基準表(B)を示す。
【図8−2】本発明の例示の実施の形態に係る、血中尿素窒素およびクレアチニン検査のLER受入れ基準表(C)を示す。
【図9(A)】本発明の例示の実施の形態に係る、血液検査を行うi−STAT CHEM8+カートリッジで用いたナトリウム、カリウム、カルシウム、全CO2、グルコース、クレアチニン、塩化物、および尿素の制御レベル1の期待平均値および範囲を示す。
【図9(B)】本発明の例示の実施の形態に係る、血液検査を行うi−STAT CHEM8+カートリッジで用いたナトリウム、カリウム、カルシウム、全CO2、グルコース、クレアチニン、塩化物、および尿素の制御レベル3の期待平均値および範囲を示す。
【図10(A)】本発明の例示の実施の形態に係る、多数の他の血液検査の中のヘマトクリットについて検査するi−STAT CHEM8+カートリッジで用いたヘマトクリットの制御レベル1の期待平均値および範囲を示す。
【図10(B)】本発明の例示の実施の形態に係る、多数の他の血液検査の中のヘマトクリットについて検査するi−STAT CHEM8+カートリッジで用いたヘマトクリットの制御レベル3の期待平均値および範囲を示す。
【図11】本発明の例示の実施の形態に係る、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、グルコース、全二酸化炭素、血中尿素窒素、クレアチニン、およびヘマトクリット用のセンサを含むi−STAT CHEM8+カートリッジの、ラベルに示された条件を超えた(印刷された有効期限を35℃で2週間超えた)安定性を示す。制御条件のATEに対して誘発されたバイアスの変化を検査毎にプロットした。
【図12】本発明の例示の実施の形態に係る、種々の計器メーカおよびi−STATについて行った、ATEに対する臨床範囲の血中尿素窒素検査の標準偏差についてのアメリカ病理学会(College of American Pathologists)の調査を示すグラフ表示である。
【図13】本発明の例示の実施の形態に係る、種々の計器メーカおよびi−STATについて行った、ATEに対する臨床範囲の塩化物検査の標準偏差についてのアメリカ病理学会の調査を示すグラフ表示である。
【図14】本発明の例示の実施の形態に係る、種々の計器メーカおよびi−STATについて行った、ATEに対する臨床範囲のクレアチニン検査の標準偏差についてのアメリカ病理学会の調査を示すグラフ表示である。
【図15】本発明の例示の実施の形態に係る、種々の計器メーカおよびi−STATについて行った、ATEに対する臨床範囲のグルコース検査の標準偏差についてのアメリカ病理学会の調査を示すグラフ表示である。
【図16】本発明の例示の実施の形態に係る、種々の計器メーカおよびi−STATについて行った、ATEに対する臨床範囲のヘマトクリット検査の標準偏差についてのアメリカ病理学会の調査を示すグラフ表示である。
【図17】本発明の例示の実施の形態に係る、種々の計器メーカおよびi−STATについて行った、ATEに対する臨床範囲のイオン化カルシウム検査の標準偏差についてのアメリカ病理学会の調査を示すグラフ表示である。
【図18】本発明の例示の実施の形態に係る、種々の計器メーカおよびi−STATについて行った、ATEに対する臨床範囲のカリウム検査の標準偏差についてのアメリカ病理学会の調査を示すグラフ表示である。
【図19】本発明の例示の実施の形態に係る、種々の計器メーカおよびi−STATについて行った、ATEに対する臨床範囲のナトリウム検査の標準偏差についてのアメリカ病理学会の調査を示すグラフ表示である。
【図20】本発明の例示の実施の形態に係る、種々の計器メーカおよびi−STATについて行った、ATEに対する臨床範囲の二酸化炭素分圧(pCO2)検査の標準偏差についてのアメリカ病理学会の調査を示すグラフ表示である。
【図21】本発明の例示の実施の形態に係る、種々の計器メーカおよびi−STATについて行った、ATEに対する臨床範囲のpH検査の標準偏差についてのアメリカ病理学会調査を示すグラフ表示である。
【図22】本発明の例示の実施の形態に係る、品質制御サンプルを流さずに行う定量的生理的サンプル検査システムの品質保証のためのステップを示す流れ図である。
【図23】本発明の例示の実施の形態に係る、制御流体を用いない自動的な熱および時間監視に基づく品質制御の方法を示す流れ図である。
【図24】本発明の別の例示の実施の形態に係る、定量的電気化学的生理的サンプル検査システムの熱および時間ストレス品質保証のためのシステムを示すブロック図である。
【図25(A)】本発明の例示の実施の形態に係る、熱ストレス(T=30℃および40℃で3週間)の下でのCHEM8+ヘマトクリットセンサの挙動と、T=5℃で同じ期間保管したカートリッジの性能との比較を示すグラフ表示で、用いた検査流体はRNA Medicalのヘマトクリット・レベルL1である。
【図25(B)】本発明の例示の実施の形態に係る、熱ストレス(T=30℃および40℃で3週間)の下でのCHEM8+ヘマトクリットセンサの挙動と、T=5℃で同じ期間保管したカートリッジの性能との比較を示すグラフ表示で、用いた検査流体はRNA Medicalのヘマトクリット・レベルL3である。
【図26】本発明の例示の実施の形態に係る、5℃、25℃、30℃、および35℃での種々の保管期間の後にレベル1化学制御流体で検査したi−STAT CHEM8+カートリッジ内のイオン化カルシウムセンサのプロットを示すグラフ表示である。
【図27】本発明の例示の実施の形態に係る、イオン化カルシウムの図26からのデータをアレニウス(Arrhenius)プロットとして示すグラフ表示である。
【図28】本発明の例示の実施の形態に係る、5℃、25℃、30℃、および35℃での種々の保管期間の後にレベル1化学制御流体で検査したi−STAT CHEM8+カートリッジ内の血中尿素窒素(BUN)センサのプロットを示すグラフ表示である。
【図29】本発明の例示の実施の形態に係る、BUNの図28からのデータをアレニウス・プロットとして示すグラフ表示である。
【図30】本発明の例示の実施の形態に係る、5℃、25℃、30℃、および35℃での種々の保管期間の後にレベル1化学制御流体で検査したi−STAT CHEM8+カートリッジ内のクレアチニンセンサのプロットを示すグラフ表示である。
【図31】本発明の例示の実施の形態に係る、クレアチニンの図30からのデータをアレニウス・プロットとして示すグラフ表示である。
【図32】本発明の例示の実施の形態に係る、制御流体レベル1および3のATEの要約データを示す表である。
【図33】本発明の例示の実施の形態に係る、Na、K、Cl、iCa、グルコース、クレアチニン、BUN、およびTCO2のL1流体から利用可能な全ての検体目標を示す添付文書のレイアウトを示す。
【図34】本発明の例示の実施の形態に係る、単一制御流体またはその制限された組合せを用いる熱および時間の監視に基づく品質制御の方法の流れ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本発明の例示の実施の形態はポイント・オブ・ケア検査のための改善された品質保証システムおよび方法に関するものである。例示の実施の形態では、本発明は液体ベースの品質制御材料を分析システムに流すことを必要とせずに、ポイント・オブ・ケアで血液分析システムなどにより行う試験室品質検査の品質を保証することができる。詳しく述べると、定量的生理的サンプル検査システムの品質保証は、品質制御サンプルを用いずに、検査システムで用いる構成要素の熱および時間ストレスを監視することにより行うことができる。熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えるときは構成要素が品質保証に失敗したことを示す警報情報を生成してよい。別の例示の実施の形態では、本発明は液体ベースの品質制御材料を分析システムに流す必要を最小にして、ポイント・オブ・ケアで血液分析システムなどにより行う試験室品質検査の品質を保証することができる。
【0059】
例示のためであって制限するものではないが、この説明は、例示の実施の形態に適用できるハンドヘルド読取機および1回使用のカートリッジをベースにする、例えばi−STAT社(East Windsor,NJ)製のi−STAT1ハンドヘルドシステムなどのi−STATシステムと関連して述べる。しかし当業者が認識するように、本発明は使い捨て要素と同じ機能を提供するポイント・オブ・ケア検査やベッドサイド検査などの他のシステムに広く適用することができる。詳しく述べると、本発明の例示の実施の形態は、この技術で周知の1回使用の検査器具すなわちカートリッジ内に検出手段を含む他の分析システムにも適用できる。
【0060】
かかる他の分析システムは、電気化学的原理(例えば、電位差測定、電流測定、および伝導度測定など)に基づくものや、検査システム(電極、修正電極、イオン選択電極、酵素電極、免疫電極、片電極、バイオセンサ、免疫センサ、などと一般に呼ばれる)を含む。これらの代替システムおよび器具は、例えば、濁度、または1つ以上の選択された波長での吸光度、消失、蛍光、発光、導波管、反射率などを検出する光学的方法に基づくものも含む。これらの器具は少なくとも、検査サンプルを各器具内の検査領域に送ること、および器具を再使用可能な読取機と共に用いることにおいて、i−STATシステムと同じ流体工学を用いてよい。このように、本発明の例示の実施の形態は、ポイント・オブ・ケア(例えば、手術室、緊急治療室、医者の診察室、または他の同様な場所)で用いることができる他の同様なシステムにも適用できる。
【0061】
好ましい実施の形態では、読取機は携帯用または小さなベンチトップ面積を有するハンドヘルド機器でよい。かかる読取機は好ましくは独立で(例えば、電池駆動で)よいので、必要な場合はベッドサイドに容易に移動できる。しかし、かかる機器は主電源に、または主電源に取り付けた電池充電器に断続的に、取り付けてよい。より特定すると、例示のポイント・オブ・ケア血液分析システムは使い捨てカートリッジを用いて血液検査を行う再使用可能な読取機に基づいてよい。カートリッジは、(1)分析要素(例えば、pH、酸素、およびグルコースなどの検体を検出するための、例えば電極)、(2)流体要素(例えば、血液サンプルを受けて電極に送るための導管)、および(3)較正要素(例えば、既知の濃度の各検体を持つ、電極を標準化するための液体)を含む。
【0062】
読取機は電極を動作させる(例えば、測定を行いまた計算を行う)ための電子回路およびアルゴリズムを含んでよい。読取機は結果を表示する機能、および随意であるがコンピュータ・ワークステーションを介してこの結果を試験室情報システム(LIS)および病院情報システム(HIS)に送る機能も有する。読取機とワークステーションとの間の通信は種々の適当な通信手段(例えば、赤外線(IR)または無線周波数(RF)リンクなど)を用いて行ってよい。ワークステーションと試験室情報システムとの間の通信は、有線または無線接続の任意の適当な形を用いて行ってよい。検出電極、測定方法、1回使用のカートリッジ、および読取機(分析器や計器などとも呼ぶ)の一般的な領域内のいくつかの技術は、例えば次の共に譲渡された特許である米国特許番号第5,096,669号、第5,112,455号、第5,200,051号、第5,212,050号、および第5,447,440号に開示されている。
【0063】
更に、本発明は生理的サンプルが血液、血漿、または血清であるシステムについて主として述べるが、例示の実施の形態は、例えば、唾液、尿、脳脊髄液などの他の生物的材料の分析にも適用できる。
【0064】
本発明のかかる態様および実施の形態について以下に詳細に説明する。図1は、本発明の例示の実施の形態に係る、品質制御サンプルを用いずに定量的生理的サンプル検査システムの品質保証を行うためのシステム100を示すブロック図である。生理的サンプルは、例えば、血液、血漿、血清、唾液、尿、脳脊髄液、およびその修正された形を含んでよい。しかし、当業者が認識するように、例示の実施の形態では任意の適当な生理的サンプルを用いてよい。単に例示の目的であるが、品質制御サンプルは、例えば、液体制御などを含んでよい。しかし、システム100は任意のかかる品質制御サンプルを全く用いずに品質保証を行うことができる。
【0065】
システム100は熱および時間ストレス監視モジュール105を含む。熱および時間ストレス監視モジュール105は、検査システム115で用いる構成要素110の熱および時間ストレスを監視などする。図1に示す例示の実施の形態では、熱および時間ストレス監視モジュール105は検査システム115から分離してよいが、検査システム115と同じまたは実質的に同じ熱的環境内に置いてよい。しかし別の例示の実施の形態では、熱および時間ストレス監視モジュール105は検査システム115と統合してよい。熱および時間ストレス監視モジュール105は、構成要素110を監視することができるそれぞれのまたは任意の構成要素110に関連する一部またはその他の部分でよい。例えば、熱および時間ストレス監視モジュール105は構成要素110に関連する温度・時間指標などを監視してよい。
【0066】
説明を簡単にするために図1には単一の構成要素110を示しているが、システム100は任意の適当な数の構成要素110を用いてよい。例示のためであって制限するものではないが、構成要素110はサンプル検査カートリッジなどを含んでよい。例えば、検査システム115は血液分析システムなどを含んでよい。したがって、構成要素110は、例えば、1回使用の血液検査カートリッジなどの血液検査カートリッジ、または他の適当なタイプの使い捨て構成要素を含んでよい。かかる血液検査カートリッジは、例えば少なくとも1個の電気化学センサを含んでよい。例えば、血液検査システムは上に述べた読取機などの携帯用構成要素読取機または他の同様の器具を含んでよい。
【0067】
別の例示の実施の形態では、構成要素110はセンサを含んでよい。例えば、センサは以下の1つを含んでよい。すなわち、電気化学センサ、光センサ、発光センサ、蛍光センサ、電流測定センサ、電位差測定センサ、電気伝導度測定センサ、導波管、消失センサ、バイオセンサ、表面プラズマ共鳴センサ、音波センサ、および反射率センサである。検査システム115は検体を決定する検査を行ってよい。例えば、検体は、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、グルコース、乳酸塩、クレアチニン、尿素、ヘマトクリット、プロトロンビン時間、活性化凝固時間、活性化部分トロンボプラスチン時間、トロポニンI、トロポニンT、クレアチンキナーゼMB、脳ナトリウム利尿ペプチド、NTproBNP、C反応性蛋白、pO2、pCO2、およびpHを含んでよい。
【0068】
システム100は熱および時間ストレス監視モジュール105と通信する品質保証失敗警報モジュール120も含む。品質保証失敗警報モジュール120は、熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えるときは構成要素110が品質保証に失敗したことを示す警報情報を生成する。例えば、構成要素110が(使い捨てすなわち1回使用の)カートリッジを含むと仮定すると、構成要素110を検査システム115に挿入または他の適当な方法で連結することにより、構成要素110に関連する熱および時間ストレス情報を熱および時間ストレス監視モジュール105から品質保証失敗警報モジュール120に送ることができる。例えば、品質保証失敗警報モジュール120は熱および時間ストレス情報と所定の熱・時間ストレスしきい値との比較を行ってよい。熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えないときは、構成要素110を検査システム115で用いてよい。
【0069】
検査システム115はディスプレイモジュール125を含んでよい。ディスプレイモジュール125は図形および/または文のインターフェースを提供してよく、ユーザはこれを通して検査システム115からの情報を見たり検査システム115と対話したりすることができる。例えば、ディスプレイモジュール125は図形および/または文の情報を表示できる適当なコンピュータモニタまたはスクリーンまたは他の適当なディスプレイ装置を含んでよい。ディスプレイモジュール125は品質保証失敗警報モジュール120からの警報情報に従って警報を表示してよい。
【0070】
言い換えると、構成要素110の熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えた場合は、ディスプレイモジュール125を介して該当する警報を表示してよい。例えば、かかる警報は、構成要素110の品質保証失敗をユーザに知らせ、構成要素110を廃棄しおよび/または構成要素110からの検査結果を無視するようユーザに指示し、または他の適当な命令、通知、および警報を与えてよい。追加的にまたは代替的に、構成要素110が品質保証に失敗したときは、品質保証失敗警報モジュール120は構成要素110からの検査結果の表示をやめてよい。
【0071】
例示の実施の形態では、所定の熱・時間ストレスしきい値は任意の適当な手段を用いて生成してよく、また実際のしきい値は種々の要因により決まる。種々の要因は、例えば、用いる構成要素110および検査システム115の性質およびタイプ、構成要素110および検査システム115を用いている環境、および他の同様な要因を含む。例えば、所定の熱・時間ストレスしきい値は検査システム115の全許容誤差に従って生成してよい。または、所定の熱・時間ストレスしきい値は複数の熱ストレスおよび時間ストレスの組合せを含んでよい。別の例示の実施の形態では、所定の熱・時間ストレスしきい値は、構成要素110の品質保証を維持することができる温度および時間条件の範囲を与える所定の温度・時間プロフィールを含んでよい。
【0072】
熱および時間ストレス監視モジュール105および品質保証失敗警報モジュール120はそれぞれ、それぞれの要素に関連する機能を実行することができる任意の適当なタイプの電気的または電子的構成要素または装置で構成してよい。かかる例示の実施の形態では、各構成要素または装置は、(例えば、電気的な)情報を運ぶことができる任意の適当なタイプの電気接続を用いて他の構成要素または機器と通信してよい。または、これらのモジュールはそれぞれ、それぞれのモジュールに関連する機能を実行することができるハードウエア、ファームウエア、およびソフトウエアの任意の組合せで構成してよい。
【0073】
または、システム100は、1個以上のマイクロプロセッサと、システム100の任意のまたは全てのモジュールの機能を実行するコンピュータプログラムのステップを記憶する関連するメモリとで構成してよい。マイクロプロセッサは任意の適当なタイプのプロセッサでよい。例えば、任意のタイプの汎用マイクロプロセッサまたはマイクロコントローラ、ディジタル信号処理(DPS)プロセッサ、専用集積回路(ASIC)、プログラマブル・リードオンリーメモリ(PROM)、消去可能プログラマブル・リードオンリーメモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラマブル・リードオンリーメモリ(EEPROM)、コンピュータ読取り可能媒体などでよい。
【0074】
メモリは任意のタイプのコンピュータメモリまたは任意の他のタイプの電子的記憶媒体でよい。例えば、リードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、キャッシュメモリ、コンパクトディスク・リードオンリーメモリ(CDROM)、電気光学メモリ、磁気光学メモリなどでよい。この記述により認識されるように、メモリは、システム100の任意のまたは全てのモジュールの機能を実行する、コンピュータプログラミングの当業者に周知の従来の技術を用いてプログラムしてよい。例えば、コンピュータプログラムの実際のソースコードまたはオブジェクトコードはメモリ内に記憶してよい。
【0075】
別の例示の実施の形態では、熱および時間ストレス監視モジュール105は以下の1つ以上を監視することを含みまた構成してよい。すなわち、導電ワックス、温度依存の液晶、電位差測定センサのベースライン較正電位のシフト、酵素阻害剤のリポソーム放出、導電液体のリポソーム放出、高イオン濃度のリポソーム放出、電気化学的検出可能な分子またはイオンのリポソーム放出、サーミスタ、熱電対、熱インク、温度依存の化学反応、温度依存の変色パッチ、および材料の温度依存の相変化である。
【0076】
例示の実施の形態では、系統的な分析誤差を防ぐための品質制御システムおよび方法は、実質的に2つの異なる動作領域内にある3つの部分を含んでよい。第1に、病院などの施設は構成要素110(例えば、検査器具すなわちカートリッジ)に関連する全ての熱ストレスを監視して管理する責任がある。かかる監視は熱および時間ストレス監視モジュール105が行ってよい。第2に、検査システム115は一組の組込み監視および管理機能を含んでよい。かかる機能は、例えば、各構成要素110の検査サイクル中に自動的に働くフェールセイフ機構(「顧客のための品質チェック」とも呼ばれる)を含んでよい。更に、検査システム115は構成要素110が作る信号をシミュレートする電子シミュレータ130を含んでよい。電子シミュレータ130は、例えば品質保証失敗警報モジュール120と通信してよい。電子シミュレータ130は検査システム115の追加の検査を行ってもよい。上述の部分のそれぞれについて、以下に詳細に説明する。
【0077】
構成要素110の熱ストレスを管理する施設またはユーザのために、メーカは、所定の限界を超えて構成要素110を熱ストレスに曝さないように施設に要求する品質制御運用規則を提供してよい。単に例示のためであって制限するものではないが、次の一連の規則を提供してよい。すなわち、(1)受領したときに各出荷品に含まれる温度片を調べて出荷温度を確認しなければならない、(2)長期保管ではカートリッジを常に8℃より低い温度で冷蔵しなければならない、(3)使用前にカートリッジを14日より長く室温に置いてはならない、(4)30℃より高い温度にカートリッジを曝してはならない。
【0078】
かかる規則は熱および時間ストレス監視モジュール105内に(例えば、適当なコンピュータ記憶媒体内に記憶された適当なルックアップテーブル内に)プログラムしまたは他の方法で記憶してよい。構成要素110のためのこれらの規則で指定された熱および時間ストレスを超えた場合は、熱および時間ストレス監視モジュール105は品質保証失敗警報モジュール120に信号または他の適当な指示または情報を与えて、構成要素110が品質保証に失敗したことをユーザに適切に警報してよい。
【0079】
構成要素110が所定の限界を超えて熱および時間ストレスに曝されることのないようにするために、追加のまたは代替の規則を用いてよい。例えば、当業者に明らかなように、異なるタイプの構成要素110には指定された温度の値および継続時間を変えて適用してよい。所定の限界を超えて熱および時間ストレスに曝された構成要素110は廃棄するかまたは返却するという指示は、例えば、製品マニュアル、製品早見ガイド、電子メール、ウエブサイトリンクおよびデータページなどにより施設に与えてよい。例えば、かかる情報を用いて、熱および時間ストレス監視モジュール105が保持する品質制御規則および命令を更新してよい。
【0080】
例示の実施の形態では、品質制御運営規則は、施設が冷蔵庫および室温を共に監視して、監査のときに確認できるように関連する記録を保持することを要求してもよい。かかる監視は、ワクチンや薬剤などの他の医薬用品の保管のためにすでに確立されている監視システムを用いて行ってよい。これは、例えば、「ワクチン・コールドチェーンの維持および管理のためのガイドライン(Guidelines for Maintaining and Managing the Vaccine Cold Chain)」、MMWR、2003年10月、に記述されている。
【0081】
例えば、システム100は品質保証失敗警報モジュール120と通信するログモジュール135を含んでよい。ログモジュール135は複数の構成要素110の熱および時間ストレスのログを保持してよい。ログモジュール135は、検査システム115から分離していてこれと通信するデータベースまたは他のコンピュータ記憶媒体を含んでよい。しかし、別の例示の実施の形態では、ログモジュール135は検査システム115と統合してよい。熱および時間ストレス情報は、熱および時間ストレス監視モジュール105、品質保証失敗警報モジュール120、および/またはシステム100に関して用いられている任意の他の監視システムからログモジュール135に送りまたは他の方法で通信してよい。
【0082】
ユーザのために、構成要素110を過度の温度ストレスから保護するための一連の勧告も提供してよい。例示のためであって制限するものではないが、出荷中に構成要素110を過度の温度ストレスから保護するため、次の一連のユーザ規則を適用してよい。すなわち、(1)各構成要素110の出荷品に含まれている温度指示片を調べる、(2)出荷品が過度の温度に曝されなかったことを温度指示片が示した場合は、コピーを品質制御記録として保存する、(3)出荷品が過度の温度に曝されたことを温度指示片が示した場合は、出荷品の中の構成要素110にレベル1の品質制御溶液の検査を行い、その結果を品質制御記録として保存する、(4)受け入れ不可の結果を検査が示した場合はその出荷品を廃棄する、逆に、(5)受け入れ可の結果を検査が示した場合はその構成要素110を受け入れる。
【0083】
かかる構成要素110の現場での保管が不適切だったために構成要素110が過度の温度ストレスを受けることがないように保護するため、施設は複数の方法の1つを用いてよい。例として2つの方法をここに示す。第1の方法では、施設は冷蔵庫のためとシステムを使用する部屋のための自動化温度ログを保存してよい(1日24時間、1週7日)。すなわち、(1)温度ログを品質制御記録として保管する、(2)冷蔵庫が8℃を超えたことを冷蔵庫温度ログが示した場合は、その冷蔵庫からの構成要素110にレベル1の品質制御溶液の検査を行い、その結果を品質制御記録として保存する、(3)受け入れ不可の結果を検査が示した場合は構成要素110を廃棄する、(4)室温が30℃を超えたことを室温ログが示した場合は、室温で保管した全ての構成要素110にレベル1の品質制御溶液の検査を行い、その結果を品質制御記録として保管する、(5)受け入れ不可の結果を検査が示した場合は構成要素110を廃棄する。
【0084】
自動化温度ログの機能は、例えばログモジュール135で行ってよい。または、別の自動化温度ログからの情報をログモジュール135に送って、記録し、記憶し、また後で検索してよい。第2の方法では、施設は自動化温度ログを保存しない。したがって、(1)月次ベースで、現在使用しているロットからの構成要素110にレベル1の液体品質制御の検査を行い、その結果を品質制御記録として保存する、(2)受け入れ不可の結果を検査が示した場合は構成要素110を廃棄する。
【0085】
例示の実施の形態では、検査システム115は構成要素110を用いる前にフェールセイフチェックを少なくとも1回行う。より特定すると、顧客のためのフェールセイフ機構または他の適当な品質チェックを各構成要素110検査中に自動的に行ってよい。例えばフェールセイフチェックがトリガされた場合は、検査システム115(例えば、ハンドヘルドのポイント・オブ・ケア検査計器)内の該当するソフトウェアアルゴリズムは検査結果を自動的に抑えてよい。検査システム115はディスプレイモジュール125を介して、エラーの源および適切な処置をユーザに表示してよい。単に例示のためであって制限するものではないが、フェールセイフおよび必要なその後の処置の表示例は以下のものを含んでよいが、限定はしない。すなわち、「置かれたサンプルにはフィルマークがありません:別のカートリッジを使ってください」、「カートリッジエラー:別のカートリッジを使ってください」、「電池切れ:電池を交換してください」、および「分析器エラー:マニュアルを参照してください/電子シミュレータを使用してください」などである。他の同様の表示メッセージは臨床サンプル分析の当業者に明らかである。
【0086】
このように、フェールセイフチェックは、例えば、周囲温度が所定の範囲内にあることの確認、構成要素110が故障でないことの確認、および/または検査システム115が故障でないことの確認を含んでよい。例えば、検査システム115が故障でないことの確認は、検査システム115に関連する電気コネクタの電気的完全性を検査すること、および/または検査システム115に関連する演算増幅器の動作の完全性を検査することを含んでよい。各構成要素110が(1回使用または使い捨て)のカートリッジを含むと仮定したとき、自動化されたフェールセイフ品質チェックを行うパラメータの限定的なリストは表2に示す通りである。
【0087】
【表2−1】
【表2−2】
【0088】
検査システム115が行ってよい3つの追加のフェールセイフ検査の詳細を以下の例に示す。以下の例でも、各構成要素110は(1回使用または使い捨ての)カートリッジを含むと仮定する。
【0089】
例1:較正流体が存在することを確認する。カートリッジの取扱い中にカートリッジ内の較正流体パッケージが壊れた場合は較正流体が存在しないことがある。これを確認するにはカートリッジのセンサ領域の両端の電気抵抗を測定する。かかるフェールセイフ検査で所期の抵抗が得られない場合は、分析結果を抑えて、エラーメッセージをユーザに表示する(例えば、ディスプレイモジュール125を介して)。
【0090】
例2:サンプルがサンプル室内に正しく置かれていることを確認する。カートリッジ内に挿入されたサンプルの容量が大きすぎるかまたは小さすぎる場合は、センサの間の電気信号の所期の特性は得られない。かかるフェールセイフ検査で所期の結果が得られない場合は、分析結果を抑えて、エラーメッセージをユーザに表示する(例えば、ディスプレイモジュール125を介して)。
【0091】
例3:周囲温度が範囲内であることを確認する。検査システム115内の電子温度計が周囲温度を記録する。周囲温度が仕様外の場合は、エラーメッセージをユーザに示して(例えば、ディスプレイモジュール125を介して)、検査サイクルを開始しない。かかるフェールセイフ検査が適用可能かどうかの実験的支援はカートリッジを熱ストレスに故意に曝すことにより得られた。ナトリウム、血中尿素窒素、およびカルシウムについてのかかる現象のグラフ表示を図2、3、および4にそれぞれ示す。これは較正電圧データ(x軸)に対する較正ドリフト(y軸)のx−yプロットである。これらのプロットはこのシステムの較正電圧および較正ドリフトのしきい値を含む。
【0092】
例示の実施の形態では、作業者のエラーまたは構成要素110の故障によりフェールセイフがトリガされた場合は、別の構成要素110を用いるようユーザはディスプレイを介して通知または指示を受ける。かかるフェールセイフは、ユーザの技術または構成要素110のバッチ、グループ、または集合の損傷により生じる系統的なエラーに対して保護する。更に、フェールセイフが検査システム115内の故障によりトリガされた場合は、原因となる状態(例えば、低バッテリ、温度が範囲外、ソフトウエアの期限切れなど)を修正するようユーザはディスプレイモジュール125から指示を受ける。原因となる状態をユーザが修正できないときは、ディスプレイモジュール125はユーザに、メーカの技術サービス部門に連絡して、例えば代わりの検査システム115を得るよう指示してよい。またかかる情報は、検査システム115の機能および動作を説明する、メーカが作成した該当するユーザマニュアルによりユーザに提供してよい。
【0093】
前に述べたように、検査システム115は内部電子シミュレータ130の自動的動作を含んでよい。例えば、電子シミュレータ130は、構成要素110が作る信号をシミュレートする検査システム115内の別個の回路または装置でよい。このシミュレート信号を検査システム115の測定回路に送って較正を独立に確認してよい。これは例えば、共に譲渡された米国特許第5,124,661号、「携帯用血液分析計器の品質保証のための電気化学センサ信号をシミュレートする再使用可能な検査ユニット(Reusable Test Unit for Simulating Electrochemical Sensor Signals for Quality Assurance of Portable Blood Analyzer Instruments)」に記述されている。好ましい実施の形態では、電子シミュレータ130によるチェックは24時間毎に自動的に行ってよい。しかし、任意の適当な時間周期を用いてよい。
【0094】
電子シミュレータ130は、各構成要素110に接触する内部コネクタが、浮遊導電路を作る(すなわち、コネクタの完全性を損なう)可能性のある材料を含まないこと、およびセンサからの電気化学信号を増幅する演算増幅器が仕様内であることをチェックするのに用いてよい。言い換えると、電子シミュレータ130は検査システム115に関連する電気コネクタの電気的完全性、および/または検査システム115に関連する演算増幅器の動作の完全性を検査するためのシミュレーション信号を生成してよい。電子シミュレータ130のチェックに不合格の場合は、その後検査システム115は構成要素110を処理せず、ディスプレイモジュール125を通して不合格の理由をユーザに警報する。増幅器検査の原因となる条件をユーザは修正できないので、ディスプレイモジュール125またはマニュアルは、メーカの技術サービス部門に連絡して代わりの検査システム115を得るようユーザに指示する。原因となる状態がコネクタ上のほこりである場合は、ほこりを除くための清掃手順をユーザに指示してよい。
【0095】
このように、品質制御のために外部の液体制御材料を検査システム115(例えば、カートリッジと読取機の組合せ)で用いる従来の方法とは異なり、本発明の例示の実施の形態はかかる外部の液体制御材料を必要としない。なぜなら、これまで述べた品質制御手段の組合せは十分信頼して使用できるからである。しかし注目すべきであるが、やはり外部の液体制御材料を検査システム115で用いることがある。なぜなら、かかる材料は、例えば訓練や一般的なシステムのトラブルシューティング用の代替血液として有用であるからである。
【0096】
更に、約10%以上の精度の検査結果を与える体外診断システムにおける従来の方法とは異なり、本発明の例示の実施の形態は誤り結果の率を最小にするためにかかる外部制御を必要としない。その論拠を或る好ましい実施の形態で、特に、i−STAT1ハンドヘルド分析器とCHEM8+カートリッジと(全てi−STAT社製)を組み合わせて用いるi−STAT血液検査システムで示す。CHEM8+カートリッジは、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、グルコース、全二酸化炭素、血中尿素窒素、クレアチニンおよびヘマトクリット用の電気化学センサで血液検査を行い、いくつかの他のパラメータの計算値を与える。
【0097】
カートリッジ(例えば、CHEM8+)の熱ストレス以外に、i−STATシステムの設計はこれまで外部の液体品質制御で検出する必要があった系統的エラー(例えば、上に述べたような作業者に起因する影響)の源を取り除く。かかる系統的エラーは、フェールセイフ機構および電子シミュレータ130により管理することができる上述のような作業者に起因する影響を含む。更に本発明の例示の実施の形態は、複数回使用と比較すると1回使用の分析システムの固有の利点を有する。より特定すると、CHEM8+カートリッジ内のセンサおよび流路は乾いたまま保管するので、センサおよび流路は流体に繰り返し曝されることによる系統的エラーの潜在的な源(例えば、複数回使用の検査システムで周知の、センサ活性化材料およびタンパク質の汚染の浸出など)に曝されることがない。
【0098】
本発明の別の有利な機能は、ユーザに出荷する前に構成要素110の測定値の正確さを工場で確認するという、工場確認較正の方式である。較正は工場で行い、またユーザはどんな方法でも較正を変更または修正できないように明確に検査システム115が設計されているので、ユーザが検査システム115の較正を誤って調整するような機構はない。その結果、較正による系統的なエラーは、完全ではないにしても、実質的に取り除くことができる。本発明の別の有利な機能は環境の管理である。例示の実施の形態では構成要素110はカートリッジを含み、各検査カートリッジは例えば箔または箔・バターカップの組合せなどの密封された袋の中に個別に包んで保管中の湿度を制御してよい。
【0099】
本発明の例示の実施の形態では、上に述べた品質制御方法は系統的エラーに対する保護が優れていることが分かった。なぜなら、選択された保管制限がポイント・オブ・ケア血液検査または他の同様の検査に適用するのに十分保守的だからである。かかる結果を、時間と温度の組合せである選択された熱ストレスしきい値に関して監視を行った図5、6、および7に示す。各図は表示した限界の1つを超えて熱ストレスを与えたことにより誘発された系統的な分析バイアスの大きさを示す。詳しく述べると、図5は、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、グルコース、全二酸化炭素、血中尿素窒素、クレアチニンおよびヘマトクリット用のセンサを含むi−STAT CHEM8+カートリッジの、ラベルに示された条件を超えた(印刷された有効期限を1ヶ月超えた)安定性を示すグラフ表示である。制御条件の許容全誤差(ATE)に対する誘発されたバイアスの変化を検査毎にプロットした。
【0100】
図6は、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、グルコース、全二酸化炭素、血中尿素窒素、クレアチニンおよびヘマトクリット用のセンサを含むi−STAT CHEM8+カートリッジの、ラベルに示された条件を超えた(印刷された有効期限を25℃で8週間超えた)安定性を示すグラフ表示である。制御条件のATEに対して誘発されたバイアスの変化を検査毎にプロットした。詳しく述べると、図6は、室温で8週間放置したカートリッジを、冷蔵庫内に同じ8週間保管したカートリッジと比較して観察した分析バイアスを示す。図6に示す例では、これらのカートリッジについてメーカが示した冷蔵しないときの品質保持期間は2週間である。
【0101】
図7は、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、グルコース、全二酸化炭素、血中尿素窒素、クレアチニンおよびヘマトクリット用のセンサを含むi−STAT CHEM8+カートリッジの、ラベルに示された条件を超えた(印刷された有効期限を30℃で3週間超えた)安定性を示すグラフ表示である。制御条件のATEに対して誘発されたバイアスの変化を検査毎にプロットした。
【0102】
図5−図7の各棒グラフの高さは、特定の検体毎に確立されたATE(図8−1、図8−2に示す)のバイアスを百分率で表す。図8−1、図8−2は本発明の例示の実施の形態に係る、ATE受入れ基準表(A)、電解質、グルコース、およびヘマトクリット検査用のLER(誤り結果の限界)受入れ基準表(B)、血中尿素窒素およびクレアチニン検査のLER受入れ基準表(C)を示す。図5−図7のデータは、FDAから要求された、検査毎のLERを用いて与えられる(図8−1表(B)、図8−2表(C)参照)。ATEという用語は臨床化学の当業者に周知である。ATE限界は2つの分析方法の間の一致の期待値を示す。ATE限界は各検査の正確さの指標であって、例えば権利放棄のためのFDAドラフトガイダンス(FDA Draft Guidance for Waiver)(2005年9月)に述べられている。各図のATE値は米国FDA臨床試験室改善修正案(CLIA)熟錬度検査限界(FDA Clinical Laboratory Improvements Amendments(CLIA)proficiency testing limit)から直接得られるもので、かかる固定の限界が示されている。
【0103】
図5−図7にそれぞれ示す棒グラフについて述べると、偶数の棒グラフはレベル1の制御流体を用いた測定値を表し、奇数の棒グラフはレベル3の制御流体を用いた測定値を表す。両制御流体はi−STAT社が供給したもので、検査する検体毎に濃度値の割当てを有する。図9および図10は、i−STAT CHEM8+カートリッジで流すときのこれらの制御流体の報告された検査値の期待平均値および範囲を示す。詳しく述べると、図9は、これらの血液検査を行うi−STAT CHEM8+カートリッジで用いたナトリウム、カリウム、カルシウム、全CO2、グルコース、クレアチニン、塩化物、および尿の制御((A)レベル1、(B)レベル3)の期待平均値および範囲を示す。図10は、多数の他の血液検査の中のヘマトクリットについて検査するi−STAT CHEM8+カートリッジで用いたヘマトクリットの制御((A)レベル1、(B)レベル3)の期待平均値および範囲を示す。
【0104】
注目すべきであるが、図5は8週間後でも全ての観察されたバイアスが、関連するATEの半分よりかなり小さかったことを示す。更に注目すべきであるが、これらの保守的なATE限界は、自動化温度監視を用いていない施設で時折起こる検出されない誤差、すなわち系統的な「盲点」を吸収する重要なクッションにもなる。かかる盲点は、例えば夜間の停電に気が付かなかったので、冷蔵されたカートリッジが室温に達したために起こることがある。
【0105】
当業者が理解するように、熱および時間ストレスの組合せの値はシステムのしきい値を決定するときの2つの影響の一体的な組合せ(すなわち、所定の熱・時間ストレスしきい値)に基づいてよい。例えば図11に示すように、温度が短期間大幅に上昇したためにしきい値を超えることがある。より特定すると、図11は、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、グルコース、全二酸化炭素、血中尿素窒素、クレアチニンおよびヘマトクリット用のセンサを含むi−STAT CHEM8+カートリッジの、ラベルに示された条件を超えた(印刷された有効期限を35℃で2週間超えた)安定性を示す。制御条件のATEに対して誘発されたバイアスの変化を検査毎にプロットした。
【0106】
やはり、偶数の棒グラフはレベル1の制御流体を用いた測定値を表し、奇数の棒グラフはレベル3の制御流体を用いた測定値を表す。同様に、図7に示すように、長期間の比較的小さい温度上昇によりしきい値を超えることもある。別の例では、図5および図6に示すように、温度は指定された保管温度を超えなかったが、その温度での許容時間すなわち品質保証期限は超えたかも知れない。このように、熱・時間ストレスしきい値を超えることがある。構成要素110について検査システム115が用いる実際の所定の熱・時間ストレスしきい値は多くの要因により決まる。この開示で述べた一般的なタイプのガイドラインにより、メーカは製品特有のしきい値をどのように設定するかを決めることができる。
【0107】
ポイント・オブ・ケア血液検査システムを用いる定量的測定について、保管条件をかかる保守的な限界に制御することと、他の設計要素および上に述べたフェールセイフ機構を用いることにより、品質制御の従来の方法に用いられているような、複数のカートリッジに制御溶液を流すことにより確かめられるレベルより高いレベルで性能の正確さを保証できると分かったことは驚きであった。特定して述べると、確立された従来の方法により作業するユーザは、メーカから供給されたときに液体品質制御溶液でカートリッジを検査する。また従来の方法では、特定の規則または施設特有の要求に対処するために、ユーザによってはその後も週間または月間ベースで再検査しなければならないことが知られている。本発明の例示の実施の形態により、便利さにおいて従来の方法より勝る実質的な改善がユーザに提供され、また正確さおよび精度において試験室並みの結果を出すポイント・オブ・ケア検査システムを広く採用できるようになる。
【0108】
図12−図21に示すアメリカ病理学会(CAP)の熟練度調査データは本発明の例示の実施の形態の固有の頑強性を示す。熟練度検査は臨床試験室が自分の計器の分析性能を示すことができる方法である。個々の試験室の分析結果を、何百何千という同等の試験室で決定された同じサンプルの分析性能と比べて評価する。同等のグループと一致する期待値は一般に3標準偏差(3sd)である。図12−図21に示すデータは、千以上のユーザから得た同等の計器の結果より優れた精度を示している。かかる精度データは、何百というロットにわたるロット毎の変動と種々のカートリッジ年齢および保管条件とを含む全ての変動源を含む。例示の実施の形態では、1回使用の使い捨て血液検査カートリッジのユーザは検査の較正を調整するための機構や手段を有しないので、外部の液体品質制御溶液が示す性能の問題に対して取り得る唯一の行動はそのカートリッジの使用をやめることであろう。
【0109】
本発明の例示の実施の形態は、1回使用の検査器具の製造ロットのエンドユーザ品質保証を特徴付ける機構および方法も提供してよい(器具は約10%以上の精度で1回以上の検査を行うことになっている)。この方法は、検査毎に熱および時間ストレスのない製造ロットの第1の部分の性能の許容全誤差を決定し、その後でそのロットの1つ以上の他の部分に熱および時間ストレスを与えて、検査毎に各部分の性能の許容全誤差を決定することに基づいている。次に、第1の部分と他の部分の性能の差を決定してよい。かかる一連のステップは、構成要素110のロットを用いる検査システム115用の熱・時間ストレスしきい値を得るための方法を与える。したがって、例えば検査システム115はポイント・オブ・ケアの場所で、そのロットからの構成要素110が、検査で用いるのを拒否されまたは他の方法で禁止されまたは妨げられるほど多くの熱および時間ストレスに曝されたかどうかを決定することができる。
【0110】
このように、例示の実施の形態では、構成要素110は製造ロット内の1バッチの実質的に同じ構成要素110に関連する。品質保証失敗警報モジュール120は、そのロットの構成要素110の熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えるときはそのバッチが品質保証に失敗したことを示す警報情報を生成する。言い換えると、検査システム115を用いて多くの構成要素110の製造ロットからの1個または少数個の構成要素110を検査してよい。1個または少数個の構成要素110の熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えたと品質保証失敗警報モジュール120が判定した場合は、その製造ロット全体を拒絶しなければならないことと検査の実施に用いてはならないことを、ユーザに警報しまたはその他の方法で通知してよい(例えば、ディスプレイモジュール125を介して)。ユーザがこれらの拒絶された構成要素110から検査結果を得ないようにするため、拒絶されたバッチ内の構成要素110のいずれかを検査システム115で用いたときは、検査システム115は検査結果の表示をやめてよい。
【0111】
前に述べたように、各構成要素110は例えばセンサなどを含んでよい。別の例示の実施の形態では、製造されたセンサの固有の特性(センサ性能が劣化することも劣化しないこともあるが、或る期間高温になると変化する)を、カートリッジの熱管理不良の品質制御指標として用いてよい。例えば、pH、ナトリウム、およびカリウムなどの電位差測定では、較正流体およびサンプルに接触したときの電極のネルンスト応答は以前の温度上昇に影響されない。しかし、較正電位は数ミリボルトほどシフトすることがある。したがって、検査システム115は予想範囲内の値から範囲外の値へのベースライン較正電位のかかる変化を記録してよい。
【0112】
かかる情報は、システムが後で検索して用いることができるように、ログモジュール135を用いて、またはメモリまたは検査システム115に関連する他のコンピュータ記憶媒体内に記憶してよい。例えば、予想範囲内の値はルックアップテーブルまたは他の適当な形で記憶してよい。測定した較正電位とかかるルックアップテーブル内に記憶された値とを比較して、測定した較正電位が予想範囲外かどうか判定してよい。予想範囲外の場合は、品質保証失敗警報モジュール120はかかる変化の検出結果を用いて、構成要素110を患者サンプルに用いてはならないという信号を送る(例えば、ディスプレイモジュール125を介して)。
【0113】
本発明の追加の例示の実施の形態では、構成要素110の過度の熱および時間ストレスの組合せを検出するのに内部較正流体を用いてよい。当業者が理解するように、或る化学センサは他の化学センサより熱ストレス(例えば、酵素などの生化学的実体を含むもの)に敏感である。例をあげると、酵素ウレアーゼを含むセンサは、生物的実体を含まないヘマトクリットセンサより熱ストレスにはるかに敏感であることが分かった。この追加の例示の実施の形態では、多数のかかる敏感なセンサを用いて、熱および時間ストレスの組合せの検出の特異性を高めてよい。かかる方法は、熱・時間しきい値を超えたかどうかを判定する検査の有効性を高めることができる。例示のためであって制限するものではないが、図2−図4に示すように、尿素およびイオン化カルシウムセンサから得られる信号の所定の限界を適用すると、熱および温度的ストレスに曝されるセンサの90%以上を抑えられることが分かった。
【0114】
また、複数のセンサを組合わせて用いることにより、熱および時間ストレスの検出の選択性を高めることができる。このように選択性が高まると、構成要素110のユーザ(例えば、看護師)が熱および時間ストレスの組合せに曝されないセンサを誤って捨てたために感じる重荷は減少する。かかる方法により、多くの熱および時間ストレスに曝されたために使用を拒絶すべき構成要素110を正しく識別することができる。しかし、かかる方法は高い偽陽性率(false positive rate)(すなわち、受入れ可の構成要素110を誤って拒絶する率)を有してはならない。尿素およびカルシウムセンサを含む上記の例では、表3に示すように、幸いなことに、誤って廃棄されたのは正しく処理されたセンサの結果の1%以下であったことが分かった。
【0115】
【表3】
【0116】
一例として、検査システム115としてi−STATシステムを用い、また構成要素110に(1回使用の使い捨ての)カートリッジを用い、使用前にセンサを乾燥状態で保管した場合の、本発明の例示の実施の形態の応用について以下に説明する。これらのセンサは、血液検査を行う直前に較正流体で濡らして平衡させなければならない。これらのセンサの過渡出力信号を熱および時間ストレスの指標として用いてよいことが分かった。この方法は次のように一般化してよい。定量的電気化学的生理的サンプル検査システム115の熱ストレス品質保証を与えるには、まず多数の電気化学センサを較正流体に接触させる。較正流体は既知の濃度の種々の検体を有し、各センサは各検体に特有である。
【0117】
このように接触させた後、選択された組のセンサ毎に、較正流体内の検体の濃度に関連する較正パラメータを熱チェックしきい値に従って決定する。注目すべきであるが、較正パラメータは較正電圧(センサと基準電極との間のミリボルト(mV)で表した電位差)でよく、また熱チェックしきい値は予め選択した電圧レベルでよい。または、較正パラメータはミリボルト毎秒(mV/s)で表した較正電圧ドリフト率(濡らすプロセスに関連する)でよい。別の実施の形態では、熱チェックしきい値はこの2つの組合せ(例えば、予め選択した較正電圧レベルに達した後のドリフト率)でよい。
【0118】
最後のステップとして、選択した組において各熱チェックしきい値を超えるときは、この方法は生理的なサンプル検査を行う資格を検査システム115から奪う。例示のためであって制限するものではないが、選択した組のセンサはナトリウムイオン選択電極とカルシウムイオン選択電極とを含んでよく、またオプションでBUN電極を含んでよい。例えば、カートリッジが複数のセンサを含む場合は、選択したセンサだけが器具全体の熱および時間ストレスを決定するための機構として働いてよい。注目すべきであるが、ソフトウエア技術の当業者に明らかなように、コンピュータアルゴリズムは、この方法を具体化して書いてよく(例えば、品質保証失敗警報モジュール120の一部として)また検査システム115を自動的に動作させるのに用いる他のソフトウエアに組み込んでよい。
【0119】
表3に関して上に述べた方法は、意図的に時間的に(異なる期間)熱ストレスに曝したセンサを含むカートリッジの加速寿命研究に基づいている。較正電圧ドリフト率および較正電圧の分析は、変化(これは熱および時間ストレスを識別するアルゴリズムを開発するのに用いることができる)を提示するために示した。この現象のグラフ表示は図2−図4に示した。これは、ナトリウム、血中尿素窒素、およびカルシウムのそれぞれについて、較正電圧データ(x軸)に対する較正ドリフト(y軸)のx−yプロットである。
【0120】
例示の実施の形態では、かかるアルゴリズムの或るバージョンは次の通りである。
ステップ1: 熱チェック(TC1)しきい値より低いナトリウム較正電圧(Na VLTc)を識別する。
ステップ2: 熱チェック(TC2)しきい値より低いカルシウム較正電圧(Ca VLTc)を識別する。
ステップ3: Na VLTcおよびCa VLTcがしきい値TC1およびTC2を超えると結果を示さない。
例えば、内部の銀・銀塩化物の基準電極に対して、Na VLTcの下限は約2mVでよく、Ca VLTcの下限は約30mVでよい。例えば、共に譲渡された米国特許第4,933,048号に記述されているように、電気化学技術では種々の適当な基準電極が知られている。
【0121】
例示の実施の形態では、検査の部分集合の選択(例えば、ナトリウムおよびカルシウム)は複数の他の検査の範囲の欠格基準になってよい。このように、定量的電気化学的生物的サンプル検査システム115の品質保証を行うには、まず複数の電気化学センサを較正流体に接触させてよい。次に、較正流体内の検体の濃度に関連する較正パラメータを、複数のセンサの選択した部分集合の少なくともそれぞれについて熱チェックしきい値に従って決定してよい。部分集合において各熱チェックしきい値を超えるときは、検査システム115は生理的サンプル検査を行う資格を失ってよい。熱チェックしきい値を超えないときは、検査システム115は確立された方法で検査結果を報告してよい。
【0122】
これまで本発明の好ましい実施の形態について説明したが、品質を保証するための他の関係する方法について以下に説明する。例えば、本発明の別の例示の実施の形態では、各構成要素110は、所定の時間・温度しきい値を超えたことを示すことができる時間・温度指標を含んでよい。例えば、時間・温度指標は、構成要素110に取り付けた接着パッチの表面にかぶせた化学的組成物でよい。温度依存の化学反応または相変化により、ユーザにはっきり分かる変色(例えば、緑から赤)が起こる。
【0123】
温度の変動に応じて時間と共に変色する顔料の化学的性質に依存する指標手段としては、OnVuTM(Ciba Specialty Chemicals社およびFreshPoint社(共にスイス国内にある)が提供する)などが市販されている。例えば品質保証失敗警報モジュール120は、構成要素110を検査システム115内に挿入またはその他の方法で結合させた後の、時間・温度指標の変色を見分けることができる適当な光機構および/または映像処理アルゴリズムを含みまたはこれと通信してよい。次にユーザは、適宜、検査に失敗した構成要素110を患者サンプルで用いるのをやめる。
【0124】
本発明の別の例示に実施の形態では、各個別の構成要素110は、メーカが設定した所定の限界を超える温度・時間プロフィールを構成要素110が経験したかどうかを判定するための機構を含む。かかる方法では、検査システム115はかかる事象が起こったことを自動的に検出して、カートリッジに適用した患者サンプルの結果を報告するのをやめる。検査システム115は好ましくは原因を表示し(例えば、ディスプレイモジュール125を介して)、このサンプルを別の構成要素110で再検査するよう指示する。例えば、この判定は上に述べた色パッチ法を用いて自動的に行ってよい。したがって、検査システム115は、検査前または検査中に、構成要素110上の時間・温度パッチを調べることができる光検出器などを含んでよい。変色が起こって検出された場合は、検査システム115は患者の検査結果を表示せずにユーザに警報してよい。
【0125】
本発明の別の例示の実施の形態では、時間依存のリポソーム指標試薬放出ステップを用いてよい。リポソームを用いて、温度に依存して分子をリポソームの中からバルク流体の中に放出するという考えはこの技術で周知である。これは例えば次の文献に述べられている。すなわち、R.L.Magin著、「大きな単層リポソームからの温度依存の薬物の放出(Temperature−Dependent Drug Release from Large Unilamellar Liposomes)」、Cancer Drug Deliv.,1、109-17、1984年、S.B.Tiwari著、「温度に敏感なイソマツのリポソーム(Temperature Sensitive Liposomes of Plumbagin)」、J.Drug Targeting 10、585−91、2002年、P.Chandaroy著、「リポソーム封入プルロニックF127からの温度制御した内容の放出(Temperature Controlled Content Release from Liposomes Encapsulating Pluronic F127)」、J.Controlled Release、76、27−37、2001年、およびH.Hayashi著、「Nイソプロピルアクリルアミドの共重合体を用いる温度に敏感なリポソーム(「Temperature Sensitive Liposomes Using Copolymers of N−isopropylacrylamide)」、Bioconj.Chem.10、412−8、1999年である。
【0126】
本発明では、較正流体を検査システム115の検査室に送ってセンサを較正するのに、各構成要素110内の密封された較正流体袋(例えば、共に譲渡された米国特許第5,096,669号に記述されているもの)を用いてよい。或る例示の実施の形態では、流体袋は流体内に温度依存のリポソームを含んでよい。1つの例示の実施の形態では、例えば流体のバルクが4mM(または任意の適当な量)のカリウムイオン濃度を有するのに比べて、リポソームは高いレベルの濃度(例えば、50mM(または任意の適当な量)を含んでよい。構成要素110が高い温度を経験しなかった場合は、リポソームは完全に残り、バルクの濃度は4mMカリウムを保つ。しかし、もし高温が起こったときは、リポソームはカリウムを放出して、バルクのカリウム濃度は実質的に上昇する。
【0127】
検査室内のカリウムセンサは濃度はせいぜい4mM程度と予想しているので、較正流体内のカリウムの測定値が高いということは温度が高いことを示す。かかる指標を用いて、品質制御検査に失敗したかどうか判定してよい。カリウムが予想レベルにある場合は、構成要素110は検査を続けてよく、またその結果を報告してよい。注目すべきであるが、電気化学的測定の当業者が認識するように、分析を行うには検査システム115内に含まれるソフトウエアアルゴリズムを用いてよい。例えば、共に譲渡された米国特許第5,200,051号および第5,112,455号は、カリウム、グルコース、および血中尿素窒素(BUN)を含む種々のセンサの製造および使用を記述している。
【0128】
本発明のリポソームを用いる別の例示の実施の形態は、リポソームから放出されるカリウムイオンを伝導率センサで検出することを含んでよい。注目すべきであるが、i−STATカートリッジ内のヘマトクリットセンサは導電率センサである。カリウムイオン濃度が上昇すると、検査システム115はこれを較正流体のイオン強さの上昇に関連する伝導率の異常な上昇として、したがって品質制御検査の失敗を示すものとして記録する。更に、リポソームは酵素の化学的抑制剤を含んでよい。かかる抑制剤は酵素学で周知である。
【0129】
酵素グルコースオキシダーゼおよびウレアーゼを用いてグルコースおよびBUNをそれぞれ測定するi−STATカートリッジ内のセンサは、グルコースおよび尿素の既知の濃度を含む較正流体が存在するとき予想信号出力を与える。しかし、適当な酵素抑止剤と共にリポソームを含む較正流体袋の中にリポソームを入れた場合は、温度が上昇すると抑止剤を放出し、酵素センサからの信号がないかまたは小さいため、検査システム115は温度が上昇したと検出することがある。かかる状態はやはり時間・温度品質チェックの失敗を、すなわち、熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値レベルを超えたことを示す。グルコースオキシダーゼの周知の抑止剤は銅、銀、および水銀イオンを含み、ウレアーゼの場合は種々の重金属イオンを含む。
【0130】
別の例示の実施の形態では、構成要素110は1対の近接する電気接点を含み、導電ワックスを2つの接点の間の空隙に詰めてよい。所定の期間ワックスを高温に曝すと、ワックスは溶けて隣接する室内に流れ出る。このプロセスにより、ワックスは接点から部分的にまたは完全に除かれる。その後に検査システム115で構成要素110を検査すると、検査システム115は2つの接点の間に導電路が存在するかどうかを検出することができる。導電路が存在しない場合は、検査システム115は構成要素110が保管温度品質保証検査に失敗したという信号を送ってよい。
【0131】
導電ワックスはこの技術で周知であり、例えば、米国特許第4,098,652号に記述されている。この場合、導電はワックスの中に混ぜて所望の電気特性を与える金属被覆粒子に基づく。温度・時間上昇の指標として働く他の材料は、例えば液晶を含む。例えば、HemoTempII(Elk Grove,ILのBiosynergy社製)は不可逆の液晶時間・温度積分器である。別の例示の実施の形態では、監視は熱検出器(例えば、サーミスタ、熱電対、熱インク、温度依存の化学反応、材料の温度依存の相変化など)により熱ストレスに関して行ってよい。かかる器具および材料はこの技術で周知である。
【0132】
別の例示の実施の形態では、構成要素110は冷蔵庫内に所定のしきい値温度より低い温度で保管する。約5℃より低い温度が好ましいが、約2℃から約8℃の範囲内であれば許容できる。言い換えると、構成要素110は所定の温度以下で冷蔵容器内に保管してよい。冷蔵庫を置く場所また検査を行う場所は種々の適当な場所でよい。例えば、制限するものではないが、病院の中央試験室、衛星試験室、ポイント・オブ・ケアの場所、患者のベッドサイド、移動車両、試験室サービス提供者、または他の同様の場所でよい。
【0133】
好ましくは、構成要素110は検査システム115で用いる前に冷蔵庫から取り出して、検査に用いる前に周囲温度(例えば、室温の範囲)にする。構成要素110は箱(例えば、約25個のカートリッジまたは他の適当な数のカートリッジが入る段ボール箱)の中に納めてよく、箱は付属する熱ストレス検出器(変色するワックスまたは同様の温度・時間指標など)を1個含んでよい。かかる例示の実施の形態では、監視は熱ストレスしきい値に関して行いまた自動的に行う。熱ストレス検出器は個々の構成要素110から分離してよいが、構成要素110と実質的に同じ熱的環境内に(すなわち、まず冷蔵庫内に、次に周囲の室温に)置いてよい。
【0134】
図22は、本発明の例示の実施の形態に係る、品質制御サンプルを流さずに行う定量的生理的サンプル検査システムの品質保証のためのステップを示す流れ図である。ステップ2205で、検査システムで用いる構成要素の熱および時間ストレスを監視する。構成要素および検査システムを用いて検査を行うことを望む場合は、ステップ2210で、例えば冷蔵庫または他の該当する保管場所から構成要素を得てよい。ステップ2215で、構成要素の熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えたかどうか判定する。超えなかった場合は、ステップ2220で、構成要素を検査システムで用いてよい。この方法はステップ2210に戻って、別の構成要素を保管場所から得て、別の検査を行ってよい。
【0135】
しかし、ステップ2215で所定の熱・時間ストレスしきい値を超えたと判定した場合は、ステップ2225で、構成要素が品質保証に失敗したので廃棄しなければならないことを示す警報情報を生成する。更に、構成要素が品質保証に失敗したときは検査結果の表示をやめてよい。構成要素が1バッチまたはグループの実質的に同じ構成要素に関連する場合は、ステップ2230で、そのバッチの実質的に同じ構成要素も品質保証に失敗したので廃棄しなければならないことを示す警報情報を生成してよい
【0136】
本発明の例示の実施の形態の更なる説明を与えるプロセス流れ図を図23に示す。図23は本発明の例示の実施の形態に係る、制御流体を用いない自動的な熱および時間監視に基づく品質制御の方法を示す流れ図である。例示のためであって制限するものではないが、検査システム115は適当な読取機/分析器を含んでよく、また構成要素110は(1回使用の使い捨て)カートリッジを含んでよい。ステップ2305で、読取機を工場で製造する。更に、ステップ2310で、カートリッジを工場で製造する。
【0137】
ステップ2315で、読取機の工場での較正を行ってカートリッジの測定値の正確さを確認する。前に説明したように、かかる工場確認較正により、ユーザに出荷する前にカートリッジの測定値の正確さを工場で確認することができる。較正は工場で行い、またユーザはどんな方法でも較正を変更または修正できないように明確に読取機が設計されているので、ユーザが読取機の較正を誤って調整するような機構はない。その結果、較正による系統的なエラーは、完全ではないにしても、実質的に除くことができる。
【0138】
ステップ2320で、読取機を工場から目的の施設(例えば、病院、医者の診察室など)に出荷する。ステップ2325で、カートリッジもその施設に出荷する。ステップ2330で、施設に到着した後でユーザは読取機の資格付与および確認を行い、読取機が正しく機能することを保証する。更に、施設に到着すると、ステップ2335で、カートリッジを後で使用できるように適切な冷蔵環境内に保管する。ユーザがカートリッジを使用したいときは(例えば、所望の検査を行うために)、ステップ2340で、ユーザはカートリッジを冷蔵保管場所から取り出してよい。
【0139】
ステップ2345で、カートリッジの熱ストレスを超えたかどうかの判定を行う。超えた場合は、ステップ2350で、そのカートリッジおよびカートリッジのロットを拒絶する。しかし、カートリッジの熱ストレスを超えなかった場合は、ステップ2355で、カートリッジの時間ストレスを超えたかどうかの判定を行う。超えた場合は、ステップ2350で、そのカートリッジおよびカートリッジのロットを拒絶する(ステップ2350で)。さもなければ、カートリッジ(およびそのロット)の品質が保証されたので、カートリッジ(および読取機)を用いて患者サンプルを流して、所望の検査を実行してよい。
【0140】
システム100は、システム100の任意のまたは全てのモジュールの機能性を支援または増強するために、必要に応じて適当な追加のモジュールを含んでよい。例えば、システム100は、例えば品質保証失敗警報モジュール120と通信するデータベースモジュール(ログモジュール135に加えて)を含んでよい。かかるデータベースモジュールはシステム100が生成しまたは用いる任意の適当なタイプの情報(例えば、熱/時間ストレスの記録やその他の同様な情報)を記憶してよい。かかるデータベースモジュールは、電気的または電子的に情報を記憶することができる任意の適当なタイプのコンピュータ読取可能なまたはその他のコンピュータ記憶の媒体を含んでよい。
【0141】
別の機構または構造を用いて、ここに述べたシステムの種々の機能を実現してよい。例えば、2個以上のモジュールの機能を単一のモジュール内に実現してよく、または1個のモジュールの機能を複数の異なるモジュールの間に分散してよい。
【0142】
詳しく述べると、図24は、本発明の別の例示の実施の形態に係る、定量的電気化学的生物的サンプル検査システムの熱および時間ストレス品質保証のためのシステム2400を示すブロック図である。システム2400は複数の電気化学センサ2405(電気化学センサ1、電気化学センサ2、...、電気化学センサN(Nは任意の適当な数))を含む。例えば、構成要素110は電気化学センサ2405の1個以上を含んでよい。複数の電気化学センサはそれぞれ、任意の適当なタイプのセンサまたは電極を含んでよい。例えば、ナトリウムセンサ、カリウムセンサ、塩化物センサ、pHセンサ、pO2センサ、pCO2センサ、乳酸塩センサ、グルコースセンサ、クレアチニンセンサ、BUN電極、カルシウムセンサ、マグネシウムセンサ、ヘマトクリットセンサなどでよい。本発明の例示の実施の形態では、複数の電気化学センサは適当な較正流体に接触する。
【0143】
システム2400は複数の電気化学センサ2405と通信する較正回路2410を含む。例えば検査システム115は較正回路2410(例えば、品質保証失敗警報モジュール120の一部としてまたはこれと通信する)を含んでよい。較正回路2410は、複数の電気化学センサ2405の部分集合の各電気化学センサ2405毎に較正流体内の検体の濃度に関連する較正パラメータを所定のチェックしきい値に従って決定する。例示の実施の形態では、電気化学センサ2405の部分集合は、例えば、カルシウムイオン選択電極およびBUN電極を含んでよい。別の例示の実施の形態では、電気化学センサ2405の部分集合はナトリウムイオン選択電極、カルシウムイオン選択電極、およびBUN電極を含む。
【0144】
しかし、部分集合は任意の適当な数およびタイプの電気化学センサ2405を含んでよい。較正パラメータは、例えば、較正電圧または較正電圧ドリフト率を含んでよい。別の例示の実施の形態では、較正パラメータは較正電圧と較正電圧ドリフト率の適当な組合せを含んでよい。しかし、熱および時間ストレス品質保証の目的では、任意の適当な較正パラメータを用いてよい。部分集合の電気化学センサ2405毎に所定のチェックしきい値を超えるときは、較正回路2410は生理的サンプル検査を行う資格を検査システムから奪う。
【0145】
単に例示のためであって制限するものではないが、システム2400は第1の電気化学センサ2405および第2の電気化学センサ2405を含んでよい。第1および第2の電気化学センサ2405はそれぞれ較正流体に接触する。較正回路2410は、較正流体内の第1の検体の濃度に関連する第1の電気化学センサ2405の第1の較正電圧を第1のチェックしきい値に従って決定してよい。また較正回路2410は、較正流体内の第2の検体の濃度に関連する第2の電気化学センサ2405の第2の較正電圧を第2のチェックしきい値に従って決定してよい。第1および第2のチェックしきい値を共に超えると、較正回路2410は生理的サンプル検査を行う資格を検査システムから奪ってよい。該当するチェックしきい値はここに述べた方法に従って決定しまた確立してよい。
【0146】
これまでの説明では、好ましい例示の実施の形態は品質制御流体を用いる必要を全くなくす方法に焦点を当てた。以下の説明では、本発明の別の例示の実施の形態は、ポイント・オブ・ケア検査およびベッドサイド検査の品質保証のための品質制御流体の必要性を実質的に小さくする方法に焦点を当てる。この場合も、例示のi−STATシステムの動作に関して好ましい実施の形態を示す。しかし、当業者が認識するように、ここに説明する原理は他の同様の臨床サンプル検査システムにも適用する。
【0147】
種々のセンサを含む血液検査カートリッジ(構成要素110)は単一の制御流体に基づく熱および時間ストレスの品質保証検査に適していることが分かった。ここでは、かかる構成要素110をその一部として含む検査システム115は、やはりセンサベースの検査のタイプ毎に約10%以上の性能精度を与えることができる。
【0148】
上に述べたように、ユーザは正確で精度の高い分析測定値を得たいと望んでいる。かかるニーズがあるので、時間および温度のいずれかまたは両方についてラベルに示された保管勧告から外れた方法で構成要素110を保管したために性能が問題になる可能性のある構成要素110のための、品質チェックまたは失敗警報機構が必要になった。説明のために、正しくない保管条件をカートリッジの熱的な管理不良と呼ぶことにする。
【0149】
この別の例示の実施の形態は、特定の例と従来の方法とを対比させて説明するのが最もよい。所定の特定の例は、一組の化学検査と単一の血液サンプルに対するヘマトクリット測定とを行う上にのべたi−STAT CHEM8+カートリッジである。熱ストレスを決定するための従来の品質保証法では4個の別々のカートリッジを、次の品質制御流体について1個ずつ用いる。すなわち、化学レベル1、化学レベル3、RNAヘマトクリットレベル1、およびRNAヘマトクリットレベル3である(図9および10参照)。上に述べたように、4個の別々のカートリッジを用いるのはポイント・オブ・ケア・ユーザには面倒であろう。しかし、かかる従来の品質保証法は、温度および時間の関数として製品の性能(例えば、正確さおよび精度)のメーカの知識を反映しており、望ましくない製品性能を与えるような時間および温度条件から境界条件を遠く離して確立されている。
【0150】
総合的な製品性能は熱で誘発される構成要素110の変化から生じ、これは各センサの正確さおよび精度で示される、と考えるのは妥当である。単一の流体だけを用いる方法では、CHEM8+カートリッジ内の個々のセンサの性能を熱および時間ストレスの関数として評価して、受入れ可の品質保証を得やすい最良の単一の制御流体成分を見つける必要がある。化学検査に関して図5−図7および図11は、BUN、クレアチニン、およびイオン化カルシウムのセンサが化学レベル1および3の時間および熱ストレスに最も敏感であることと、これらの3個のセンサはレベル3よりレベル1に対して一層敏感であることを示す。実験結果によると、各センサは熱および時間ストレスに同じようには反応せず、或るセンサは他のセンサより熱および時間ストレスに対して一層敏感である。図5−図7および図11から明らかなように、感度の劣るセンサは、ナトリウム、カリウム、塩化物、全二酸化炭素(TCO2)、およびグルコースを含む。
【0151】
図25(A)および図25(B)にそれぞれ示すように、ヘマトクリットセンサはRNA Medical Hct制御流体レベルL1およびL3の熱および時間ストレスに敏感でないことが分かった。図25(A)および図25(B)のグラフは、熱ストレス(T=35℃で4週間)の下でのCHEM8+ヘマトクリットセンサの挙動を示し、またT=5℃で1ヶ月間保管したカートリッジとT=5℃で7ヶ月間保管したカートリッジの性能を比較する。図25(A)および図25(B)では、用いた検査流体はそれぞれRNA Medicalのヘマトクリット・レベルL1およびL3(7 Jackson Road,Devens,MA 01434のRNA Medical製)である。
【0152】
3つの一層敏感な検査(BUN、クレアチニン、およびイオン化カルシウム(iCa))に戻ると、L1(化学レベル1制御)濃度の変化率は温度の関数である。かかる結果はアレニウス・プロットで定量化できる熱活性化機構と一致する。図26は、5℃、25℃、30℃、および35℃での種々の保管時間の後にレベル1化学制御流体で検査したi−STAT CHEM8+カートリッジ内のイオン化カルシウムセンサのプロットを示す。図27は図26からのデータをアレニウス・プロットとして示すグラフ表示である。図28は、5℃、25℃、30℃、および35℃での種々の保管時間の後にレベル1化学制御流体で検査したi−STAT CHEM8+カートリッジ内の血中尿素窒素(BUN)センサのプロットを示す。図29は、図28からのデータをアレニウス・プロットとして示す。
【0153】
図30は、5℃、25℃、30℃、および35℃での種々の保管時間の後にレベル1化学制御流体で検査したi−STAT CHEM8+カートリッジ内のクレアチニンセンサのプロットのグラフ表示である。図31は、図30からのデータをアレニウス・プロットとして示す。注目すべきであるが、アレニウス・プロットは温度の逆数に対するln(−Δ濃度/Δ時間)のグラフである。全ての温度での時間的な濃度の変化率は、短期間の高温の実験と長期間の低温の実験との相関を考慮して、アレニウスの式から予測することができる。
【0154】
図26−図31からのデータ(および図32の結合された要約形式)によると、CHEM8+カートリッジの熱管理不良品質チェックはL1制御流体を用いて確立することができる。これらのデータを用いると、iCa、クレアチニン、およびBUNのセンサの種々の保管温度での時間に従う濃度測定値を予測することができる。不正確な結果はATE(例えば、L1流体では、iCaが5%、クレアチニンが15%、BUNが9%)より大きいと定義される結果である。所定の温度では、失敗までの予想時間(predicted time−to−failure)は、平均測定値>=(目標+ATE)に基づいて作ってよい。
【0155】
濃度測定値の正規分布が与えられると、失敗までの予想月数は結果の50%が不正確(すなわち、目標+−ATEの外)になる時間である。次に、精度および標準偏差の知識を用いて制御限界を調整して、不正確な結果の百分率を低く定義してよい。例えば、不正確な結果のしきい値は5%が望ましいであろう。3つの検体の失敗までの予想月数は保管温度が高くなるに従って収束することが分かった。このように、L1流体内のiCa、BUN、またはクレアチニンの結果は、いずれもCHEM8+カートリッジの熱管理不良を十分示す。
【0156】
かかる方法では、ユーザは熱品質制御不良または失敗の警報機構を、検査毎に単一のカートリッジおよび単一の制御流体を用いる検査手続きにより実現することができる。これにより、L1流体でのiCa、BUN、およびクレアチニンの検体の結果について、ユーザは所定の単一のカートリッジの結果を受入れ可の検査範囲(カートリッジのメーカから与えられる)と比較してよい。3つの検査毎に指定範囲内の結果が得られない場合は、熱管理不良に関連する失敗であることをユーザに警告する。特定すると、検体のいずれかが指定目標範囲外の場合は、失敗警報がトリガされる(例えば、品質保証失敗警報モジュール120により)。
【0157】
前に説明したが、当業者が理解するように、熱および時間ストレスの組合せの値はシステムしきい値を決定する2つの影響の一体的な組合せに基づいてよい。例えば、温度が短期間大幅に上昇したためにしきい値を超えることがある。同様に、長期間の比較的小さい温度上昇によりしきい値を超えることがある。別の例では、温度は指定された保管温度を超えなかったが、その温度での許容時間すなわち品質保持期限は超えたかも知れない。その結果、所定の熱・時間ストレスしきい値を超えることがある。この開示で述べた一般的なタイプの実験により、メーカは製品特有のしきい値をどのように設定するかを決めることができる。
【0158】
提示を容易にするため、構成要素110の各箱内の添付文書内に、Na、K、Cl、iCa、グルコース、クレアチニン、BUN、およびTCO2について、L1流体から利用可能な全ての検体目標を示してよい。例として、図33は1つのかかる添付文書のレイアウトを示す。図33に見られるように、重要でない検査の目標および範囲のデータは省略されている。次の品質制御規則を適用してよい。
・ CHEM8+カートリッジの有効期限が今日の日付より前の場合は、カートリッジは期限切れなのでそのロットからのカートリッジを使用してはならない。
・ iCa、BUN、またはクレアチニンのいずれかが望ましい範囲内の結果を与えない場合は、カートリッジのロットは熱的に管理不良なので使用してはならない。
【0159】
当業者が認識するように、化学レベル1の制御流体組成はCHEM8+カートリッジの熱ストレスを決定するのに最も適しているが、異なる検査の組合せでの他のカートリッジおよび構成要素110は、検体濃度の異なる組合せを持つ単一の制御流体を用いまた1つ以上の異なる検査を用いて、熱管理不良を判定してよい。また当業者が認識するように、CHEM8+カートリッジについて上に述べた実験的検査プロセスの一般的原理を用いることにより、当業者は不適切な実験を行わずに、異なる検査での異なる構成要素110の適当な組成に到着することができる。
【0160】
本発明の別の例示の実施の形態の追加の説明を行うためのプロセス流れ図を図34に示す。図34は、本発明の例示の実施の形態に係る、単一の制御流体またはその制限された組合せを用いる熱および時間の監視に基づく品質制御の方法を示すフローチャートである。
【0161】
単に例示のためであって制限するものではないが、図34に示す方法は読取機/分析器および(1回使用の使い捨ての)カートリッジに関して述べる。ただし、他の適当なタイプの検査システムおよび構成要素を用いてもよい。ステップ3405で、読取機を製造する。ステップ3410で、カートリッジも製造する。ステップ3415で、読取機の工場での較正を行ってカートリッジの測定値の正確さを確認する。ステップ3420で、読取機を工場から施設に出荷する。ステップ3425で、施設に到着した後でユーザは読取機の資格付与および確認を行い、読取機が正しく機能することを保証する。ステップ3430で、カートリッジを工場から施設に出荷する。到着するとステップ3435で、カートリッジに関連する温度片または他の適当な温度・時間標識を検査または他の方法で調べて、輸送中にカートリッジの熱・時間ストレスを超えたかどうか判定する。超えた場合は、ステップ3440で、カートリッジの全バッチまたはロットを拒絶し、また使用してはならない。
【0162】
読取機の資格付与/確認とカートリッジの温度・時間のチェックに共に合格した場合は、ステップ3445で、液体品質制御手段を流してよい。ステップ3450で、液体品質制御検査の結果を記録する。ステップ3455で、これらの結果を検査システムおよびカートリッジの(メーカが決定した)目標結果と比較する。液体品質制御検査の結果が目標結果に比べて実質的に良くない場合は、ステップ3460で、ユーザはメーカの技術支援部門または他の適切な援助部門と相談して問題を解決する(例えば、読取機および/またはカートリッジを交換する)よう指示を受ける。そうでない場合は、ステップ3465で、カートリッジを適切な冷蔵環境で保管する。
【0163】
ユーザが読取機およびカートリッジを用いて検査を実行することを望むときは、ステップ3470で、カートリッジの(冷蔵)保管状態を確認する。カートリッジの熱ストレスを超えた(可能性がある)場合は、この方法はステップ3445に戻って液体品質制御手段を再び流して、カートリッジを使用してよいかどうか判定する。そうでない場合は、ステップ3475で、カートリッジの時間ストレスを超えたかどうか(例えば、カートリッジの有効期限を超えたかどうか)について判定する。超えた場合は、ステップ3440で、そのロットのカートリッジを拒絶する。超えていない場合は、ステップ3480で、そのカートリッジを用いて患者サンプルを流してよい。検査が終わった後、別のカートリッジを(冷蔵)保管場所から取り出してよい。これに応じて、この方法はステップ3470に戻り、カートリッジの熱および時間ストレスを超えていないことを確認する。
【0164】
定量的生物的サンプル検査システムの品質保証のための、図22、図23、および図34に示しまたここに説明したコンピュータプログラムのステップのそれぞれ、全て、または任意の組合せは、命令実行システム、機器、または器具(命令実行システム、機器、または器具から命令を取り出して命令を実行するコンピュータベースのシステム、プロセッサを含むシステム、または他のシステムなど)によりまたはこれらに関して用いられる任意のコンピュータ読取可能な媒体内で実現してよい。ここで用いる「コンピュータ読取可能な媒体」は、命令実行システム、機器、または器具が用いまたはこれらと共に用いるプログラムを含み、記憶し、通信し、伝播し、または輸送することができる任意の手段でよい。
【0165】
コンピュータ読取可能な媒体は、例であって制限するものではないが、電子的、磁気的、光学的、電磁的、赤外線、または半導体のシステム、機器、または伝播媒体でよい。コンピュータ読取可能な媒体のより特定の例(限定的なリスト)は次のものを含んでよい。すなわち、1本以上のワイヤを有する電気接続、携帯用コンピュータ・ディスケット、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、消去可能なリードオンリーメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、光ファイバ、および携帯用コンパクトディスク・リードオンリーメモリ(CDROM)である。
【0166】
当業者が認識するように、本発明はその精神または本質的な特徴から逸れずに種々の特定の形で実現してよい。ここに開示した実施の形態は全ての点において例示であって制限するものではない。本発明の範囲は上述の説明ではなく添付のクレームにより示されるものであり、その同等物の意味および範囲内に含まれる全ての変更を含むものとする。
上に述べた全ての米国特許および特許出願、外国特許および特許出願、および刊行物は、各個別の特許、特許出願、または刊行物を特定しておよび個別にその全体を援用すると示したのと同程度に、その全体をここに援用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
品質制御サンプルを用いずに定量的生理的サンプル検査システムの品質保証を行うためのシステムであって、
熱および時間ストレス監視モジュールであって、
前記検査システムで用いる構成要素の熱および時間ストレスを監視する熱および時間ストレス監視モジュールと、
前記熱および時間ストレス監視モジュールと通信する品質保証失敗警報モジュールであって、
前記熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えるときは前記構成要素が品質保証に失敗したことを示す警報情報を生成する品質保証失敗警報モジュールと、
を含む品質保証を行うためのシステム。
【請求項2】
前記生理的サンプルは、血液、血漿、血清、唾液、尿、脳脊髄液、およびその修正された形の1つを含む、請求項1記載の品質保証を行うためのシステム。
【請求項3】
前記品質制御サンプルは液体制御を含む、請求項1記載の品質保証を行うためのシステム。
【請求項4】
前記熱および時間ストレスが前記所定の熱・時間ストレスしきい値を超えないときは前記構成要素を前記検査システムで用いる、請求項1記載の品質保証を行うためのシステム。
【請求項5】
前記熱および時間ストレス監視モジュールは前記構成要素に関連する温度・時間指標を監視する、請求項1記載の品質保証を行うためのシステム。
【請求項6】
前記熱および時間ストレス監視モジュールは、導電ワックス、温度依存の液晶、電位差測定センサのベースライン較正電位のシフト、酵素阻害剤のリポソーム放出、導電液体のリポソーム放出、高イオン濃度のリポソーム放出、電気化学的検出可能な分子またはイオンのリポソーム放出、サーミスタ、熱電対、熱インク、温度依存の化学反応、温度依存の変色パッチ、および材料の温度依存の相変化の少なくとも1つを含む、請求項1記載の品質保証を行うためのシステム。
【請求項7】
前記構成要素は血液検査カートリッジを含む、請求項1記載の品質保証を行うためのシステム。
【請求項8】
前記血液検査カートリッジは1回使用の血液検査カートリッジを含む、請求項7記載の品質保証を行うためのシステム。
【請求項9】
前記血液検査カートリッジは少なくとも1個の電気化学センサを含む、請求項7記載の品質保証を行うためのシステム。
【請求項10】
前記構成要素は所定の温度より低い冷蔵容器内に保管する、請求項1記載の品質保証を行うためのシステム。
【請求項11】
定量的電気化学的生理的サンプル検査システムの熱および時間ストレス品質保証を評価するためのシステムであって、
第1の電気化学センサと、
第2の電気化学センサと、
を含み、
前記第1および第2の電気化学センサは較正流体に接触し、
前記第1の電気化学センサは前記較正流体内の第1の検体の濃度に関連する第1の較正電圧を第1のチェックしきい値に従って決定し、
前記第2の電気化学センサは前記較正流体内の第2の検体の濃度に関連する第2の較正電圧を第2のチェックしきい値に従って決定し、
前記第1および第2のチェックしきい値を共に超えるときは前記検査システムは生理的サンプル検査を行う資格を失う、
品質保証を評価するためのシステム。
【請求項12】
前記第1の電気化学センサはナトリウムイオン選択電極を含み、また
前記第2の電気化学センサはカルシウムイオン選択電極を含む、
請求項11記載の品質保証を評価するためのシステム。
【請求項13】
定量的電気化学的生理的サンプル検査システムの熱および時間ストレス品質保証のためのシステムであって、
複数の電気化学センサであって、
較正流体に接触する複数の電気化学センサと、
前記複数の電気化学センサと通信する較正回路であって、
前記複数の電気化学センサの部分集合の電気化学センサ毎に前記較正流体内の検体の濃度に関連する較正パラメータを所定のチェックしきい値に従って決定し、
前記部分集合の電気化学センサ毎に前記所定のチェックしきい値を超えるときは生理的サンプル検査を行う資格を検査システムから奪う、
較正回路と、
を含む品質保証のためのシステム。
【請求項14】
電気化学センサの前記部分集合はカルシウムイオン選択電極およびBUN電極を含む、請求項13記載の品質保証のためのシステム。
【請求項15】
電気化学センサの前記部分集合はナトリウムイオン選択電極、カルシウムイオン選択電極、およびBUN電極を含む、請求項13記載の品質保証のためのシステム。
【請求項16】
定量的サンプル検査システムの品質保証の方法であって、前記サンプル検査システムは再使用可能な読取機および1回使用の検査器具を含み、各検査は約10%以上の精度で行うものであり、前記方法は、
a)1バッチの1回使用の検査器具が熱および時間ストレスに曝された可能性を自動的に判定するステップであって、
前記バッチからの単一の器具を、所定の濃度の少なくとも1つの検体を前記サンプル内に含む単一の制御流体で検査し、
前記検体は熱および時間ストレスが前記検査の全許容誤差の所定のしきい値を超えたことを示す検査結果を与えるよう選択する、ステップと、
b)前記検査結果が前記所定のしきい値を超えるときは前記バッチの検査器具が血液サンプル検査に用いるのに適さないことを報告するステップと、
を含む品質保証の方法。
【請求項17】
定量的電気化学的生物的サンプル検査システムの熱ストレス品質保証の方法であって、
a)第1および第2の電気化学センサを較正流体に接触させるステップと、
b)前記較正流体内の第1の検体の濃度に関連する第1の較正電圧を第1の熱チェックしきい値に従って決定するステップと、
c)前記較正流体内の第2の検体の濃度に関連する第2の較正電圧を第2の熱チェックしきい値に従って決定するステップと、
d)前記第1および第2の熱チェックしきい値を共に超えるときは生理的サンプル検査を行う資格を検査システムから奪うステップと、
を含む品質保証の方法。
【請求項18】
前記第1の電気化学センサはナトリウムイオン選択電極を含み、また
前記第2の電気化学センサはカルシウムイオン選択電極を含む、
請求項17記載の品質保証の方法。
【請求項19】
品質制御サンプルを流さずに行う定量的生物的サンプル検査システムの品質保証の方法であって、
a)前記検査システムの構成要素の熱および時間ストレスを監視するステップと、
b)前記構成要素を前記検査システムで用いて前記生理的サンプル検査を行うことが適切かどうかを前記構成要素の前記熱および時間ストレスと所定の熱・時間ストレスしきい値とに従って判定するステップと、
を含む品質保証の方法。
【請求項20】
品質制御サンプルを用いずに定量的生物的サンプル検査システムの品質保証を行うためのシステムであって、
熱および時間ストレス監視モジュールであって、
前記検査システムで用いる構成要素の熱および時間ストレスを監視し、また
前記構成要素は1バッチの実質的に同じ構成要素に関連する、
熱および時間ストレス監視モジュールと、
前記熱および時間ストレス監視モジュールと通信する品質保証失敗警報モジュールであって、
前記構成要素の前記熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えるときは前記バッチが品質保証に失敗したことを示す警報情報を生成する品質保証失敗警報モジュールと、
を含む品質保証を行うシステム。
【請求項1】
品質制御サンプルを用いずに定量的生理的サンプル検査システムの品質保証を行うためのシステムであって、
熱および時間ストレス監視モジュールであって、
前記検査システムで用いる構成要素の熱および時間ストレスを監視する熱および時間ストレス監視モジュールと、
前記熱および時間ストレス監視モジュールと通信する品質保証失敗警報モジュールであって、
前記熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えるときは前記構成要素が品質保証に失敗したことを示す警報情報を生成する品質保証失敗警報モジュールと、
を含む品質保証を行うためのシステム。
【請求項2】
前記生理的サンプルは、血液、血漿、血清、唾液、尿、脳脊髄液、およびその修正された形の1つを含む、請求項1記載の品質保証を行うためのシステム。
【請求項3】
前記品質制御サンプルは液体制御を含む、請求項1記載の品質保証を行うためのシステム。
【請求項4】
前記熱および時間ストレスが前記所定の熱・時間ストレスしきい値を超えないときは前記構成要素を前記検査システムで用いる、請求項1記載の品質保証を行うためのシステム。
【請求項5】
前記熱および時間ストレス監視モジュールは前記構成要素に関連する温度・時間指標を監視する、請求項1記載の品質保証を行うためのシステム。
【請求項6】
前記熱および時間ストレス監視モジュールは、導電ワックス、温度依存の液晶、電位差測定センサのベースライン較正電位のシフト、酵素阻害剤のリポソーム放出、導電液体のリポソーム放出、高イオン濃度のリポソーム放出、電気化学的検出可能な分子またはイオンのリポソーム放出、サーミスタ、熱電対、熱インク、温度依存の化学反応、温度依存の変色パッチ、および材料の温度依存の相変化の少なくとも1つを含む、請求項1記載の品質保証を行うためのシステム。
【請求項7】
前記構成要素は血液検査カートリッジを含む、請求項1記載の品質保証を行うためのシステム。
【請求項8】
前記血液検査カートリッジは1回使用の血液検査カートリッジを含む、請求項7記載の品質保証を行うためのシステム。
【請求項9】
前記血液検査カートリッジは少なくとも1個の電気化学センサを含む、請求項7記載の品質保証を行うためのシステム。
【請求項10】
前記構成要素は所定の温度より低い冷蔵容器内に保管する、請求項1記載の品質保証を行うためのシステム。
【請求項11】
定量的電気化学的生理的サンプル検査システムの熱および時間ストレス品質保証を評価するためのシステムであって、
第1の電気化学センサと、
第2の電気化学センサと、
を含み、
前記第1および第2の電気化学センサは較正流体に接触し、
前記第1の電気化学センサは前記較正流体内の第1の検体の濃度に関連する第1の較正電圧を第1のチェックしきい値に従って決定し、
前記第2の電気化学センサは前記較正流体内の第2の検体の濃度に関連する第2の較正電圧を第2のチェックしきい値に従って決定し、
前記第1および第2のチェックしきい値を共に超えるときは前記検査システムは生理的サンプル検査を行う資格を失う、
品質保証を評価するためのシステム。
【請求項12】
前記第1の電気化学センサはナトリウムイオン選択電極を含み、また
前記第2の電気化学センサはカルシウムイオン選択電極を含む、
請求項11記載の品質保証を評価するためのシステム。
【請求項13】
定量的電気化学的生理的サンプル検査システムの熱および時間ストレス品質保証のためのシステムであって、
複数の電気化学センサであって、
較正流体に接触する複数の電気化学センサと、
前記複数の電気化学センサと通信する較正回路であって、
前記複数の電気化学センサの部分集合の電気化学センサ毎に前記較正流体内の検体の濃度に関連する較正パラメータを所定のチェックしきい値に従って決定し、
前記部分集合の電気化学センサ毎に前記所定のチェックしきい値を超えるときは生理的サンプル検査を行う資格を検査システムから奪う、
較正回路と、
を含む品質保証のためのシステム。
【請求項14】
電気化学センサの前記部分集合はカルシウムイオン選択電極およびBUN電極を含む、請求項13記載の品質保証のためのシステム。
【請求項15】
電気化学センサの前記部分集合はナトリウムイオン選択電極、カルシウムイオン選択電極、およびBUN電極を含む、請求項13記載の品質保証のためのシステム。
【請求項16】
定量的サンプル検査システムの品質保証の方法であって、前記サンプル検査システムは再使用可能な読取機および1回使用の検査器具を含み、各検査は約10%以上の精度で行うものであり、前記方法は、
a)1バッチの1回使用の検査器具が熱および時間ストレスに曝された可能性を自動的に判定するステップであって、
前記バッチからの単一の器具を、所定の濃度の少なくとも1つの検体を前記サンプル内に含む単一の制御流体で検査し、
前記検体は熱および時間ストレスが前記検査の全許容誤差の所定のしきい値を超えたことを示す検査結果を与えるよう選択する、ステップと、
b)前記検査結果が前記所定のしきい値を超えるときは前記バッチの検査器具が血液サンプル検査に用いるのに適さないことを報告するステップと、
を含む品質保証の方法。
【請求項17】
定量的電気化学的生物的サンプル検査システムの熱ストレス品質保証の方法であって、
a)第1および第2の電気化学センサを較正流体に接触させるステップと、
b)前記較正流体内の第1の検体の濃度に関連する第1の較正電圧を第1の熱チェックしきい値に従って決定するステップと、
c)前記較正流体内の第2の検体の濃度に関連する第2の較正電圧を第2の熱チェックしきい値に従って決定するステップと、
d)前記第1および第2の熱チェックしきい値を共に超えるときは生理的サンプル検査を行う資格を検査システムから奪うステップと、
を含む品質保証の方法。
【請求項18】
前記第1の電気化学センサはナトリウムイオン選択電極を含み、また
前記第2の電気化学センサはカルシウムイオン選択電極を含む、
請求項17記載の品質保証の方法。
【請求項19】
品質制御サンプルを流さずに行う定量的生物的サンプル検査システムの品質保証の方法であって、
a)前記検査システムの構成要素の熱および時間ストレスを監視するステップと、
b)前記構成要素を前記検査システムで用いて前記生理的サンプル検査を行うことが適切かどうかを前記構成要素の前記熱および時間ストレスと所定の熱・時間ストレスしきい値とに従って判定するステップと、
を含む品質保証の方法。
【請求項20】
品質制御サンプルを用いずに定量的生物的サンプル検査システムの品質保証を行うためのシステムであって、
熱および時間ストレス監視モジュールであって、
前記検査システムで用いる構成要素の熱および時間ストレスを監視し、また
前記構成要素は1バッチの実質的に同じ構成要素に関連する、
熱および時間ストレス監視モジュールと、
前記熱および時間ストレス監視モジュールと通信する品質保証失敗警報モジュールであって、
前記構成要素の前記熱および時間ストレスが所定の熱・時間ストレスしきい値を超えるときは前記バッチが品質保証に失敗したことを示す警報情報を生成する品質保証失敗警報モジュールと、
を含む品質保証を行うシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8−1】
【図8−2】
【図9(A)】
【図9(B)】
【図10(A)】
【図10(B)】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25(A)】
【図25(B)】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8−1】
【図8−2】
【図9(A)】
【図9(B)】
【図10(A)】
【図10(B)】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25(A)】
【図25(B)】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【公表番号】特表2010−539492(P2010−539492A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525067(P2010−525067)
【出願日】平成20年9月15日(2008.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/076409
【国際公開番号】WO2009/036429
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(508012840)アボット ポイント オブ ケア インコーポレイテッド (16)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月15日(2008.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/076409
【国際公開番号】WO2009/036429
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(508012840)アボット ポイント オブ ケア インコーポレイテッド (16)
【Fターム(参考)】
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