説明

ポジ型感光性樹脂組成物及びそれを用いたフレキシブルプリント配線板

【課題】ラミネート性、金属箔との密着性や強伸度に優れ、且つ高感度であるポジ型感光性樹脂組成物及びそれを用いたフレキシブルプリント配線板を提供すること。
【解決手段】(A)成分としてシロキサン骨格を有する可溶性ポリイミドと、(B)成分として下記式(1)で表される化合物と、を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。


(Xに結合しているn個のQは1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル基もしくは水素であり、少なくとも1つは1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル基である。nは、正の実数であり、Xに結合しているQの平均の個数を表す。Xは、分子量300以上の直鎖、分枝鎖、環状鎖又は芳香族炭化水素鎖である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント配線板のカバーレイに好適な感光性樹脂組成物及びそれを用いたフレキシブルプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、伸長著しいフレキシブルプリント配線板(以下、FPCと省略する)においては、柔軟性、屈曲性等に優れる素材が基材、カバーレイとして求められている。FPCのカバーレイには、プロセスの優位性からラミネート可能なドライフィルム化が望まれている。さらに、ドライフィルムには、感光性を持つことが望まれている。感光性を持たないドライフィルムを用いてFPCを製造する場合には、ドライフィルムを所定の外形パターンに機械的に打ち抜き、回路基板との間で位置合わせを行った後、回路基板に打ち抜いたドライフィルムを貼り合わせていた。ドライフィルムの感光化が実現すると、回路基板とドライフィルムとを貼り合わせた後に、フォトリソグラフィーによって所望パターンにドライフィルムをパターニングできるため、機械的なパターン打ち抜き、回路基板との位置合わせなどの工程が不要となる。
【0003】
一方、カバーレイの材料としては、柔軟性、屈曲性に優れるポリイミドが用いられている。このポリイミドとしては、カプトン(登録商標)などが公知であるが、カプトンフィルムは溶媒に不溶であるため、ポリイミドワニスよりフィルムを製膜することができない(例えば、非特許文献1)。そのため、カプトンを用いる場合には、ポリアミド酸の状態で製膜した後、高温に加熱することによりイミド化してフィルム化している。このようにして得られたカプトンフィルムは、柔軟性、屈曲性に優れる反面、ガラス転移点が400℃以上と高温であるため(例えば、非特許文献2)、可塑性がなく、ドライフィルムとして用いること、すなわち回路基板上にラミネートするのは困難である。
【0004】
また、ポジ型の感光性樹脂組成物として、ポリイミドにキノンジアジド化合物を添加する組成物も提案されている(例えば、特許文献1)。この感光性樹脂組成物もドライフィルム化が可能であるが、回路基板上にラミネートすることは困難であり、ラミネート性、感光性、金属箔との密着性、強伸度を同時に付与することは困難であった。
【0005】
ポジ型感光性樹脂組成物として、ポリイミド前駆体又はポリベンゾオキサゾール前駆体にキノンジアジド化合物を添加したポジ型感光性樹脂組成物が開示されている(特許文献2、3)。前記前駆体タイプは、最終的な膜物性に優れているものの、前駆体の状態で組成物とするため、保存安定性が悪いものもあり、加工上で不都合を生じる場合があった。
【0006】
一方、シロキサン骨格を有するポジ型感光性樹脂組成物が開示されている(特許文献4)。この文献における技術のように、ポリイミドはシロキサン骨格を導入することにより、優れたラミネート性が得られると期待できるが、感光性を与える化合物の分子量やQの導入量に関する記述はなく、ラミネート性、感光性、金属箔との密着性、強伸度、残膜率を同時に付与するものではなかった。
【非特許文献1】最新ポリイミド〜基礎と応用〜 (エヌ・ティー・エス)p.4
【非特許文献2】エレクトロニクス実装技術 2003.2(Vol.19 No.2) p.66
【特許文献1】特許第2906637号公報
【特許文献2】特開2005−292160号公報
【特許文献3】特許3078175号公報
【特許文献4】国際公開第2003/060010号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、ラミネート性、金属箔との密着性や強伸度に優れ、且つ高感度であるポジ型感光性樹脂組成物及びそれを用いたフレキシブルプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、シロキサン骨格を有する可溶性ポリイミドに着目し、これに式(1)で表される化合物を配合することで、ラミネート性、金属箔との密着性や強伸度、高感度すべてを満足するポジ型感光性ドライフィルムを実現することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)成分としてシロキサン骨格を有する可溶性ポリイミドと、(B)成分として下記式(1)で表される化合物と、を含有することを特徴とする。
【化1】

(Xに結合しているn個のQは下記式(2)で表される有機基もしくは水素であり、少なくとも1つは下記式(2)で表される有機基である。nは、正の実数であり、Xに結合しているQの平均の個数を表す。Xは、分子量300以上の直鎖、分枝鎖、環状鎖又は芳香族炭化水素鎖である。)
【化2】

【0010】
本発明の樹脂組成物においては、前記(A)成分が、カルボキシル基及び/又は水酸基を有するポリイミド樹脂であることが好ましい。
【0011】
本発明の樹脂組成物においては、前記(B)成分のQの導入量が2.0×10−4〜7.0×10−4(mol/g)であることが好ましい。
【0012】
本発明のフィルムは、上記感光性樹脂組成物で構成されたことを特徴とする。
【0013】
本発明の積層フィルムは、キャリアフィルムと、前記キャリアフィルム上に設けられた上記フィルムと、を具備することを特徴とする。
【0014】
本発明の積層フィルムにおいては、前記フィルム上に形成されたカバーフィルムを具備することが好ましい。
【0015】
本発明のフレキシブルプリント配線板は、配線を有する基材と、前記配線を覆うように前記基材上に形成され、上記フィルムもしくは積層フィルムを用い構成されたカバーレイと、を具備することを特徴とする。
【0016】
本発明のプリント配線板は、上記感光性樹脂組成物を用いて配線を有する基材上に塗布することにより得られるカバーレイを具備することを特徴とする。
【0017】
本発明のプリント配線板の製造方法は、前記塗布工程が、スクリーン印刷法によって行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ラミネート性、金属箔との密着性、強伸度、残膜率に優れ、且つ高感度であるポジ型感光性組成物、及びそれを用いたフレキシブルプリント配線板を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
まず、(A)成分について説明する。本発明の感光性樹脂組成物における(A)成分は、シロキサン骨格を有した可溶性ポリイミドである。
【0020】
可溶性ポリイミドとは、有機溶剤に可溶なポリイミドを意味する。有機溶剤としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチスルホキシド、γ−ブチロラクトン、などが挙げられる。本発明において、可溶性とは、具体的にはN−メチル−2−ピロリドン若しくはγ−ブチロラクトンに少なくとも5重量%以上、好ましくは10重量%以上溶解することを意味する。
【0021】
可溶性ポリイミドの構造は、ラミネート性の観点から、シロキサン骨格を有することが必須である。
【0022】
また、感光性の観点から、アルカリ可溶な樹脂を用いることが好ましい。可溶性ポリイミドにアルカリ可溶性を付与する目的で、可溶性ポリイミドにエステル基又はカルボキシル基及び/又は水酸基を導入することが好ましい。中でもカルボキシル基及び/又は水酸基を導入することが好ましい。
【0023】
本発明の可溶性ポリイミドは、例えば、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物を原料にして得ることができる。
【0024】
ジアミンとしては、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミンを用いることができる。また、カルボキシル基及び/又は水酸基を導入する目的で、カルボキシル基を有するジアミンや芳香族性水酸基を有するジアミンを用いることができる。また、シロキサン骨格を導入する目的で、ジアミノシロキサンを用いることができる。
【0025】
芳香族性水酸基とは、水酸基が直接芳香環に結合している化合物に由来する官能基である。具体的には、フェノール、カテコール、レソルシノール、ヒドロキノン、1−ナフトール、2−ナフトールなどベンゼン環に水酸基が直接結合した化合物に由来する官能基などが挙げられる。
【0026】
芳香族ジアミンとしては、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−(3,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(3,4’−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、3,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ブタン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘプタンが挙げられる。
【0027】
脂肪族ジアミンとしては、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカンが挙げられる。
【0028】
脂環式ジアミンとしては、式(3)で示される化合物が挙げられる。
【化3】

【0029】
カルボキシル基を有するジアミンとしては、式(4)で示される化合物や1,3−ジアミノ−4,6−ジヒドロキシベンゼンなどが挙げられる。
【化4】

中でも、アルカリ溶解性及び反応の容易さなどから3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジアミノ安息香酸、1,3−ジアミノ−4,6−ジヒドロキシベンゼンが好ましい。
【0030】
水酸基を有するジアミンとしては、1,2−ジアミノ−4−ヒドロキシベンゼン、1,3−ジアミノ−5−ヒドロキシベンゼン、1,3−ジアミノ−4−ヒドロキシベンゼン、1,4−ジアミノ−6−ヒドロキシベンゼン、1,5−ジアミノ−6−ヒドロキシベンゼン、1,3−ジアミノ−4,6−ジヒドロキシベンゼン、1,2−ジアミノ−3,5−ジヒドロキシベンゼン、4−(3,5−ジアミノフェノキシ)フェノール、3−(3,5−ジアミノフェノキシ)フェノール、2−(3,5−ジアミノフェノキシ)フェノール、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)スルフィド、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)エーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)スルホン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)メタン、4−[(2,4−ジアミノ−5−ピリミジニル)メチル]フェノール、p−(3,6−ジアミノ−s−トリアジン−2−イル)フェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)ジフルオロメタン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルフィド、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)エーテル、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ジフルオロメタンが挙げられる。
【0031】
ジアミノシロキサンとしては、式(5)で示される化合物が挙げられる。
【化5】

(式(5)において、Rは2価の有機基であり、kは1〜10の整数である。)
で示される2価の有機基としては、炭化水素基、芳香族基が挙げられる。炭化水素基は、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などである。芳香族基は、フェニレン基などである。
【0032】
なお、これらのジアミン成分は、単独又は組み合わせて用いることができる。
【0033】
テトラカルボン酸二無水物としては、エステル基を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0034】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロルナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、4,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物が挙げられる。
【0035】
また、エステル基を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリテート無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリテート無水物)、1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,3−(トリメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,4−(テトラメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,5−(ペンタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,6−(ヘキサメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,7−(ヘプタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,8−(オクタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,9−(ノナメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,12−(ドデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,16−(ヘキサデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,18−(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)が挙げられる。エステル基を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物は、可溶性ポリイミド中にエステル基を導入する際に用いることができる。
【0036】
脂環式テトラカルボン酸二無水物、脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,5−シクロオクタジエン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、5−カルボキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,6−トリカルボン酸−2,3:5,6−二無水物、1−カルボキシメチル−2,3,5−シクロペンタントリカルボン酸−2,6:3,5−二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物)スルホンが挙げられる。
【0037】
これらの中で、ポリイミドの溶媒溶解性、基材などへの密着性の観点から、オキシジフタル酸二無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物が好ましい。
【0038】
これらのテトラカルボン酸二無水物成分は、単独又は組み合わせて用いることができる。
【0039】
可溶性ポリイミドは、例えば上記ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを適当な溶媒中で混合してポリイミド前駆体であるポリアミド酸を合成した後、その反応液を加熱してイミド化することにより得ることができる。なお、本発明では、可溶性ポリイミドは、ラミネート性の観点からシロキサン骨格を有することが必須である。
【0040】
合成に用いる溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサンメチルリン酸トリアミド、γ−ブチロラクトンなどの極性溶媒が挙げられる。
【0041】
これらの溶媒の他、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、蓚酸ジエチル、炭酸ジメチル、マロン酸ジエチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類;ジクロロメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルム、1,4−ジクロルブタン、トリクロルエタン、クロルベンゼン、o−ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0042】
可溶性ポリイミドは、前記溶媒中で得たポリアミド酸をイミド化することにより得られる。イミド化は、加熱のみによって行っても良く、触媒を添加し加熱を行っても良い。
【0043】
触媒としては、例えば、酸無水物やラクトン、及び塩基を使用することができる。酸無水物としては、例えば、無水酢酸などが挙げられる。ラクトンとしては、γ−バレロラクトンが好ましく、塩基としては、ピリジン及び/又はメチルモルフォリンが好ましい。
【0044】
イミド化を加熱により行う、又は触媒添加して加熱による行う場合、加熱温度としては150℃〜200℃が好ましく、160℃〜180℃がより好ましい。
【0045】
イミド化反応に伴い生成する水は、水と共沸する溶剤、例えばトルエンやキシレンと共に反応系外に取り除くことができる。得られた反応液はそのままポリイミドワニスとして用いることができる。
【0046】
次に(B)成分について説明する。
本発明における感光性とは、光照射により構造が変化し、溶媒に対する溶解性が変化するなどが挙げられる。本発明に係る組成物においては、(B)成分の化合物により感光性を発現する。
【0047】
式(1)で表される化合物は、フェノール性水酸基を有する化合物を原料として用い、スルホン酸でエステル化して得ることができる。このとき得られた化合物から式(2)で表される有機基を除いた部分がXに相当する。例えば、フェノール性水酸基の官能基数1モルに対して1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸もしくはその酸塩化物もしくはそのスルホン酸塩を、アセトンなど適当な溶剤中で混合することによって得ることができる。このとき、トリエチルアミンなど塩基性の触媒を用いても良い。他に1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸もしくはその酸塩化物もしくはそのスルホン酸塩を使用することもできる。
【0048】
式(1)におけるnはQがXに結合している平均の個数を表し、例えば、3個のフェノール性水酸基を有する化合物にエステル化度80%でQが結合している場合、nは3×0.8=2.4になる。
【0049】
Xの分子量は300以上が好ましい。パターン形成及び残膜率の観点からさらに好ましくは400以上1000未満である。分子量300以上のXとして、例えば式(6)で表される化合物が挙げられる。
【化6】

(Rは直鎖、分枝鎖、環状鎖又は芳香族炭化水素鎖である有機基または水素であり、l,mはそれぞれ0〜5の整数であり、l+m=5である。またl〜l、m〜mはそれぞれ異なる数値でもよい。iは0以上の整数である。r、sは0〜4の整数であり、r+s=4である。)
【0050】
Qの導入量とは、ポリマー重量あたりのQのモル数で定義する。例えば、式(1)で表される化合物の分子量が958、n=2.3(エステル化度約77%)であり、ポリマー10gに対して、式(1)が2g入っている場合、Qの導入量は2/958×3×0.77/10=4.8×10−4(mol/g)となる。パターン形成に必要となってくる露光量の観点から、Qの導入量は2.0×10−4〜7.0×10−4(mol/g)が好ましく、さらに好ましくは2.0×10−4〜6.0×10−4(mol/g)である。
【0051】
本発明の感光性樹脂組成物には、本発明の効果を逸脱しない量的、質的範囲内で、既に公知である添加剤を必要に応じて添加することができる。具体的に添加剤としては、密着性向上剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、可塑剤、ワックス類、充填剤、顔料、染料、発泡剤、消泡剤、脱水剤、帯電防止剤、抗菌剤、防カビ剤、レベリング剤、分散剤、エチレン性不飽和化合物などが挙げられる。
【0052】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)成分と(B)成分とを任意の溶剤中にて混合して得られる。混合により得られた溶液は、塗工液として用いることができる。また、本発明の感光性樹脂組成物を溶剤中にて混合した後、混合液を所定の基材に塗布し、任意の方法で溶剤を乾燥させることによりドライフィルムを得ることができる。
【0053】
本発明の感光性樹脂組成物を用いて、回路基板を製造することが可能である。回路基板を製造する場合においては、少なくとも配線を有する基材上に感光性樹脂組成物層を積層し、前記感光性樹脂組成物層にパターン露光を行い、前記パターン露光後の樹脂組成物層に対してアルカリ水溶液を用いて現像処理を行う。配線を有する基材とは、例えば、ガラスエポキシ基板、ガラスマレイミド基板などの硬質な基材、あるいはポリイミドフィルムなどの可撓性のある基材などの任意の基材上に配線を有するものをいう。
【0054】
中でも特に、本発明の感光性樹脂組成物は、ポリイミドフィルムなどのフレキシブルな基材上に配線を有するフレキシブルプリント配線板のカバーレイとして好適に用いることができる。本発明の感光性樹脂組成物をフレキシブルプリント配線板のカバーレイとする場合は、例えば、ドライフィルムの状態にして、配線を有する基材上に貼付する。
【0055】
本発明の感光性樹脂組成物で構成されたドライフィルムを用いる場合は、感光性樹脂組成物の溶液を任意の方法でポリエチレンテレフタレートフィルムや金属フィルムなどの任意のキャリアフィルム上に塗布した後に乾燥し、ドライフィルム化して、キャリアフィルムとドライフィルムとを有する積層フィルムとする。また、ドライフィルム上に、低密度ポリエチレンフィルムなど任意の防汚用のフィルムや保護用のフィルムを少なくとも一層設けて積層フィルムとしても良い。このドライフィルムを、熱ラミネート法、熱プレス法、熱真空ラミネート法、熱真空プレス法など任意の方法で配線を有する基材上にラミネートする。このようにして、配線を有する基材と、この配線を覆うように前記基材上に形成され、本発明の感光性樹脂組成物を露光・現像してなる物質で構成されたカバーレイと、を具備するフレキシブルプリント配線板を作製することができる。
【0056】
これらの方法によって形成されたカバーレイの膜厚には特に制限はないが、回路特性などの点から、4μm〜50μmであることが好ましく、6μm〜40μmであることがより好ましく、10μm〜30μmであることが特に好ましい。
【0057】
本発明の感光性樹脂組成物は、光照射後、光照射部位をアルカリ現像にて溶解することができるので、ポジ型のフォトリソグラフィーによるパターニング材料に用いることができる。
【0058】
光照射に用いる光源は、特に制限はないが、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、蛍光灯、タングステンランプ、アルゴンレーザ、ヘリウムカドミウムレーザなどが挙げられる。
【0059】
現像に用いるアルカリ水溶液としては、特に制限はないが、例えば炭酸ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液などが挙げられる。現像方法としては特に制限はないが、例えば浸漬現像、パドル現像、スプレー現像などが挙げられる。
【0060】
これらの方法により基材上に得られたフィルムあるいはポジ型のパターンには、必要に応じて加熱処理を施すことができる。加熱温度は100℃以上300℃以下が好ましい。さらに好ましくは150℃以上250℃以下である。特に好ましくは160℃以上200℃以下である。この範囲の加熱処理により、本発明の感光性樹脂組成物は高い金属箔密着性や優れた強伸度を得る。加熱は空気雰囲気下、窒素雰囲気下のいずれで行っても良い。また、加熱方法としては特に制限はないが、オーブン、焼成炉、ホットプレートなどを用いて行うことができる。
【0061】
また、本発明の感光性樹脂組成物を用いて、直接、配線を有する基材上に塗布し、乾燥し、得られた感光性樹脂組成物層にパターン露光を行い、前記パターン露光後の樹脂組成物層に対してアルカリ水溶液を用いて現像処理を行うことも好ましい。この場合において、塗布方法は、例えば、スクリーン印刷法、カーテンコート法、スプレーコート法、ロールコート法、スピンコート等が好ましく、中でもスクリーン印刷法がより好ましい。
【0062】
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。
[可溶性ポリイミド合成例1]
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコに、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(30.0mmol)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)ポリシロキサン(KF−8010、45.0mmol)、γ−ブチロラクトン(100mL)を入れ、続いてオキシジフタル酸二無水物(60.0mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。続いて、トルエン(30mL)、ピリジン(34.13mmol)、γ−バレロラクトン(22.47mmol)を加え、ディーンシュタルク装置及び還流器をつけ、180℃で2時間加熱撹拌した。120℃まで冷却した後に、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(15.0mmol)を加え、10分間撹拌した後に、オキシジフタル酸二無水物(30.0mmol)を加え、120℃で2時間加熱撹拌した。続いて、トルエン(10mL)を加え、180℃で2時間加熱撹拌した。140℃まで冷却し、ポリマー固形分濃度25重量%となるようにγ−ブチロラクトンを加え、室温まで冷却することにより、ポリイミド溶液(ア)を得た。
【0063】
[可溶性ポリイミド合成例2]
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコに、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(30.0mmol)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(45.0mmol)、γ−ブチロラクトン(100mL)を入れ、続いてオキシジフタル酸二無水物(60.0mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。続いて、トルエン(30mL)、ピリジン(34.13mmol)、γ−バレロラクトン(22.47mmol)を加え、ディーンシュタルク装置及び還流器をつけ、180℃で2時間加熱撹拌した。120℃まで冷却した後に、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(15.0mmol)を加え、10分間撹拌した後に、オキシジフタル酸二無水物(30.0mmol)を加え、120℃で2時間加熱撹拌した。続いて、トルエン(10mL)を加え、180℃で2時間加熱撹拌した。140℃まで冷却し、ポリマー固形分濃度25重量%となるようにγ−ブチロラクトンを加え、室温まで冷却することにより、ポリイミド溶液(イ)を得た。
【0064】
[可溶性ポリイミド合成例3]
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコに、シリコーンジアミン(15.0mmol)、γ−ブチロラクトン(100mL)を入れ、続いてオキシジフタル酸二無水物(20.0mmol)を加え、23℃で2時間撹拌した。続いて、トルエン(15mL)、ピリジン(11.38mmol)、γ−バレロラクトン(7.49mmol)を加え、ディーンシュタルク装置及び還流器をつけ、180℃で2時間加熱撹拌した。120℃まで冷却した後に、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(10.0mmol)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(3.0mmol)を加え、10分間撹拌した後に、エチレンビス(トリメリテ−ト)二無水物(8.6mmol)を加え、120℃で2時間加熱撹拌した。続いて、トルエン(5mL)を加え、180℃で2時間加熱撹拌した。140℃まで冷却し、ポリマー固形分濃度25重量%となるようにγ―ブチロラクトンを加え、室温まで冷却することにより、ポリイミド溶液(ウ)を得た。
【0065】
[配合例1]
下記表1に示す組成の成分を表1に示す割合で配合して実施例1,2,3及び比較例1,2の樹脂組成物を得た。なお、(A)成分には上記合成例1,2,3で合成したポリイミド溶液(ア),(イ)もしくは(ウ)を用い、(B)成分には下記式(7)で表される化合物を用いた。
【表1】

【化7】

(式(1)でのnが2.3のもの(エステル化度77%)を用いた。また、Qは式(2)で表されるものを用いた。)
【0066】
[ラミネート性]
実施例1,2,3及び比較例1,2の樹脂組成物を、25μm厚のPETフィルム(T100−H25/三菱化学ポリエステルフィルム株式会社製)にブレードコーターでそれぞれ塗工した後、95℃/30分間オーブンで乾燥し膜厚20μmの実施例1,2,3及び比較例1,2の感光性ドライフィルムを得た。
【0067】
12μm厚の銅箔(F3−WS/光沢面)にバフロール整面(#200)及びジェットスクラブ整面を行い、得られた感光性ドライフィルムをAL−700(旭化成株式会社製)を用い、基板余熱60℃、ラミネート温度、140℃にて0.34MPa、0.5m/minの条件でラミネートをし、PETフィルムを剥離し、ラミネート性を評価した。その結果を下記表2に示す。なお、評価基準においては、PETフィルムのみ剥離の場合を○とし、PETフィルムと感光性フィルムが剥離の場合を×とした。
【0068】
[反り]
反りの評価は、A4サイズの感光性ドライフィルムを製造した際に、エッジ部分において5mmを上回って持ち上がる部分が無い場合を○とし、上回る部分が発生した場合を×とした。
【表2】

【0069】
表2から明らかなように、シロキサン骨格を有するポリマーを使用したもの(実施例1,2,3)の場合、反り、ラミネート性が良好であるが、シロキサン骨格を有さないもの(比較例1,2)は反り、ラミネート性共に悪かった。
【0070】
[配合例2]
下記表3に示す組成の成分を表3に示す割合で配合して実施例4〜11及び比較例3〜6の樹脂組成物を得た。なお、(A)成分には上記合成例1で合成したポリイミド溶液(ア),もしくは上記合成例3で合成したポリイミド溶液(ウ)を用い、(B)成分には式(7),(8)で表される化合物を用いた(それぞれa,bとする)。また、比較例には式(9)で表される化合物や式(10)で表される化合物を用いた。(それぞれc,dとする)
【表3】

【化8】

(エステル化度80%を用いた。Qは式(2)で表されるものを用いた。)
【化9】

(エステル化度70%を用いた。Qは式(2)で表されるものを用いた。)
【化10】

【化11】

(エステル化度77%のものを用いた。Qは式(11)で表されるものを用いた。)
【0071】
[感光性]
ラミネート性評価で得た、感光性フィルムがラミネートされた銅箔を用いて、実施例4〜11及び比較例3〜6の樹脂組成物を用いた感光性フィルムについて、以下の評価を行った。
【0072】
ポジ型のマスクを用い超高圧水銀灯(HMW−201KB/オーク株式会社製)でコンタクト露光を行った。露光量は1,000mJ/cmであった。また現像については、実施例4〜7は、3%の水酸化ナトリウム水溶液で、実施例8〜11は、1%の水酸化ナトリウム水溶液で、現像温度40℃、スプレー圧0.2MPa、現像時間120秒にてスプレー現像を行った。蒸留水で室温にてスプレー水洗を行い得られたパターンを光学顕微鏡で観察した。その結果を下記表4に示す。評価基準としては、100μmの円孔パターン形成の場合を○とし、100μmの円孔パターン形成不可の場合を×とした。
【0073】
[最低露光量]
ラミネート性評価で得た、感光性フィルムがラミネートされた銅箔を用いて、実施例4〜11及び比較例3〜6の樹脂組成物を用いた感光性フィルムについて、以下の評価を行った。
【0074】
ポジ型のマスクを用い超高圧水銀灯(HMW−201KB/オーク株式会社製)でコン
タクト露光を行った。露光量を変化させたサンプルを作成し、現像については、実施例4〜7は、3%の水酸化ナトリウム水溶液で、実施例8〜11は、1%の水酸化ナトリウム水溶液で、現像温度40℃、スプレー圧0.2MPa、現像時間120秒にてスプレー現像を行った。蒸留水で室温にてスプレー水洗を行い得られたパターンを光学顕微鏡で観察した。100μmの円孔パターン形成した露光量をそのサンプルの最低露光量とした。その結果を下記表4に併記する。評価基準としては、最低露光量が10〜500mJ/cm未満の場合を◎、500〜1000mJ/cm未満の場合を○、1000〜1300mJ/cm未満の場合を△、1300mJ/cm以上の場合を×とした。
【0075】
[残膜率]
実施例4〜11及び比較例3〜6の樹脂組成物を用いた感光性フィルムについて、最低露光量評価で得た現像後の未露光部の厚みを露光前のカバーレイフィルムの厚みで除したものを残膜率として求めた。なお、膜厚はDak Tak 6M(ULVAC社製)を用いて測定した。その結果を下記表4に併記する。評価基準については、80%〜100%の場合を○、80%未満の場合を×とした。
【0076】
[弾性率・伸度]
実施例4〜11及び比較例3〜6の樹脂組成物を用いた感光性フィルムがラミネートされた銅箔を、120℃で1時間、実施例4〜7は、200℃で1時間熱処理し、実施例8〜11は、180℃で1時間熱処理し、その後FeCl溶液で銅箔部分を溶解させ、水道水で水洗後、室温で1日乾燥させてフィルムを得た。得られたフィルムを5mm×100mmに切り出し、試験片とした。得られた試験片を引っ張り試験機(RTG−1210/エー・アンド・デイ株式会社製)にて測定した。その結果を下記表4に併記する。評価基準としては、伸度は0〜20%未満の場合を×、20%以上の場合を○とし、弾性率は0〜700MPa未満の場合を○、700MPa以上の場合を×とした。
【0077】
[剥離強度]
実施例4〜11及び比較例3〜6の樹脂組成物を用いた感光性フィルムがラミネートされた銅箔を、120℃で1時間、実施例3〜6は、200℃で1時間熱処理し、実施例8〜11は、180℃で1時間熱処理を行った。熱処理後のサンプルを5mm×130mmに切り出し、ガラスエポキシ基盤に両面テープで貼り付け、試験片を得た。銅箔部分のみを引っ張り試験機(RTG−1210/エー・アンド・デイ株式会社製)を用いて引っ張り、感光性フィルムと銅箔の剥離強度を測定した。その結果を下記表4に併記する。評価基準としては、0〜0.2N/mm未満の場合を×、0.2N以上の場合を○とした。
【0078】
【表4】

表4から明らかなように、実施例4〜11については感光性、弾性率などすべての項目について良好であった。一方、比較例3,4は感光性、最低露光量、残膜率が悪く、比較例5,6は弾性率、伸度、剥離強度が悪かった。
【0079】
[実施例12〜14、比較例7、8]
フレキシブルプリント基板上に直接塗布する場合、塗布、乾燥した時点で反っていないことが重要であり、フレキシブルプリント基板の代わりにポリイミドフィルムを用いて反りを評価した。実施例1,2,3及び比較例1,2の樹脂組成物を用いて、スクリ−ン印刷(300メッシュの金属スクリ−ン使用)にて、ポリイミドフィルム(カプトン(登録商標)EN−100(東レ・デュポン株式会社製)、膜厚25ミクロン)上に直接全面印刷を行った後、得られた塗布膜を95℃で30分の乾燥を行い、約25ミクロン膜厚の感光性フィルム層を成膜した。得られた積層フィルムをA4サイズにカットした際に、エッジ部分において5mmを上回って持ち上がる部分が無い場合を○とし、上回る部分が発生した場合を×とした。実施例12〜14では、いずれも○であり、比較例7、8は、×であった。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明における感光性樹脂組成物は、基盤などへのラミネート性、感光性、金属箔との密着性、強伸度に優れることから、エレクトロニクス分野で各種電子機器の操作パネル等に使用されるフレキシブル配線板や回路基板の保護層形成、積層基板の絶縁層形成、半導体装置に使用されるシリコンウエハ、半導体チップ、半導体装置周辺の部材、半導体搭載用基板、放熱板、リードピン、半導体自身などの保護や絶縁及び接着に使用するための電子部品への膜形成用途に利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分としてシロキサン骨格を有する可溶性ポリイミドと、(B)成分として下記式(1)で表される化合物と、を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【化1】

(Xに結合しているn個のQは下記式(2)で表される有機基もしくは水素であり、少なくとも1つは下記式(2)で表される有機基である。nは、正の実数であり、Xに結合しているQの平均の個数を表す。Xは、分子量300以上の直鎖、分枝鎖、環状鎖又は芳香族炭化水素鎖である。)
【化2】

【請求項2】
前記(A)成分が、カルボキシル基及び/又は水酸基を有するポリイミド樹脂であることを特徴とする請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)成分のQの導入量が2.0×10−4〜7.0×10−4(mol/g)であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物で構成されたことを特徴とするフィルム。
【請求項5】
キャリアフィルムと、前記キャリアフィルム上に設けられた請求項4記載のフィルムと、を具備することを特徴とする積層フィルム。
【請求項6】
前記フィルム上に形成されたカバーフィルムを具備することを特徴とする請求項5記載の積層フィルム。
【請求項7】
配線を有する基材と、前記配線を覆うように前記基材上に形成され、請求項5又は請求項6記載のフィルムもしくは積層フィルムを用い構成されたカバーレイと、を具備することを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【請求項8】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を用いて配線を有する基材上に塗布することにより得られるカバーレイを具備することを特徴とするプリント配線板。
【請求項9】
塗布工程が、スクリーン印刷法によって行われることを特徴とする請求項8記載のプリント配線板の製造方法。

【公開番号】特開2009−145857(P2009−145857A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98479(P2008−98479)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【出願人】(397025417)株式会社ピーアイ技術研究所 (50)
【Fターム(参考)】