説明

ポリアセタールと熱可塑性加硫エラストマーから製造された複合体

本発明は、少なくとも一つのポリアセタールと少なくとも一つの改質熱可塑性加硫物(TPV)エラストマーから製造された複合体に関する。該複合体は、一部又は完全に該改質TPVで被覆されているか又はその上に該改質TPVから製造された一つ以上の成形品が直接成形されている、ポリアセタール成形品から形成されている。該改質TPVエラストマーは、硬度30〜90ショアAを有し、成分:a)0.05〜10重量%の安定剤及び/又は架橋補助剤を添加された1〜50重量%のポリオレフィンマトリックス中の、2〜75重量%の完全又は一部架橋エチレン/プロピレン/ジエンゴム(EPDM);b)少なくとも1〜30重量%の相溶化剤;及びc)10〜70重量%の非オレフィン性熱可塑性材料;を含む複合物である。本発明はさらに、多成分射出成形による上記の複合体の製造法並びにシール特性及び制動特性を有する機能性部品としてのそれらの使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアセタールと少なくとも一つの熱可塑性加硫物(TPV)エラストマー(=TPV)とで構成される複合体、及びその製造法に関する。ここにおいて、TPVエラストマーを非オレフィン性熱可塑性材料で改質することによって、接着接合又は粘着接合(adhesive or cohesive bonding)を前記ポリアセタールと前記TPV間に得ることが可能になった。特定の架橋剤系の使用によりポリアセタールの分解が回避できる。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール、すなわちポリオキシメチレン(POM)は優れた機械的性質を有するエンジニアリング材料であるだけでなく、一般にあらゆる通常溶剤及びエンジン燃料に対する耐性もある。優れた反発弾性を伴う良好な強度及び硬度を有するということは、ポリアセタールで構成される成形品が日常生活のあらゆる分野でスナップ式接続、特にクリップに極めて多用されていることを意味する。その優れた滑り摩擦性能は、POMが多くの可動性部品、例えばトランスミッションパーツ、デフレクタロール、歯車、又はシフトレバーに使用される所以である。POMで構成される成形品は自動車建造にも非常によく使用されている。非常に良好な機械的強度及び耐薬品性はPOMが多種多様なハウジング及びキーボードの製造にも使用されることを意味する。
【0003】
しかしながら、POMは室温における機械的制動要素(mechanical damping factor)が低く、用途によっては軟質の制動エレメント(damping elements)の使用が必要になることもある。POMで構成される成形品を取り付ける場合、接続部位にはシールが必要になることも多い。POMで構成される成形品の高い表面硬度やPOMの低い滑り摩擦係数は、その上に置かれた物品の滑りを起こしかねず、例えばPOMで構成されるスイッチングエレメントやコントロールエレメントの運転に危険を生ずることもある。一方、硬質及び軟質材料の特有の性質の相互組合せを達成するために、これらの材料で構成される組合せがますます頻繁に使用されるようになっているのも事実である。この場合、硬質材料はコンポーネントにそれらの強度を付与することを意図して使用され、また、軟質材料は弾性を有するので、シール又は制振及び防音関連の機能を担い、又は表面の感触に変化をもたらすために使用される。こうした応用例においては、硬質及び軟質成分間の適切な接着が重要となる。
【0004】
これまでに使用されている方法の一つは、ガスケット及び制動エレメントを別途提供して、それらの機械的固定又は接着接合のために追加の操作を用いるというものである。従って、追加作業及び場合によってはかなりの追加費用が発生することになる。
【0005】
それより近代的で費用効果的な方法は多成分射出成形である。この場合、例えば、第二の成分を予備成形された第一の成分上に射出成形する。この方法においては二つの成分間に達成されうる接着が非常に重要となる。多成分射出成形におけるこの接着は、互いにかみ合う連結部分に切欠き(刻み目)を導入することによってさらに改良できることが多いが、選択された成分間の化学的親和性による良好な接着が土台にあることが、しばしばそれらを使用するための前提条件となる。
【0006】
多成分射出成形によって製造される周知組合せの例は、ポリプロピレンとポリオレフィンエラストマー又はスチレン−オレフィンエラストマー、ポリブチレンテレフタレートとポリエステルエラストマー又はスチレン−オレフィンエラストマーで構成される。ポリアミドも非常に多くの軟質成分に接着する。
【0007】
ポリアセタールで構成され、その上に機能性エレメントが直接成形された成形品も知られている。これらは非架橋ゴムを用いて製造されている(DE−C 44 39 766)。しかしながら、そのような複合体の接着強さはまだ満足のいくものではない。
【0008】
更なる公報はまさにこのタイプの複合体に関するもので、とりわけ、ポリアセタール、ゴムコポリマー、補強フィラー、架橋剤、そして適切な場合、更なる慣用の添加剤で構成されている(DE−A 196 41 904)。これは、架橋剤を何ら使用せずに製造したゴム成分を、架橋剤の添加後、予備製造されているポリアセタール成形品に射出成形によって130〜170℃で接着させ、次いで更なるステップでゴムコポリマーの加硫により140〜180℃でポリアセタール−ゴム複合体を形成するというものである。ゴム含有分を加硫するまではポリマー成分の特に良好な接着は達成されない。しかしながら、この追加のステップは高い加硫温度と時間のために有益でないと考えられている。
【0009】
DE−C 19845235に、ポリアセタールとスチレン−オレフィンエラストマーで構成される複合体が開示されている。これらは非オレフィン性熱可塑性材料の添加によって改質されている。しかしながら、様々な範囲の適用温度で圧縮永久歪値が比較的高く、そして芳香族及び脂肪族炭化水素、油脂類に対する耐薬品性が十分でないといった難点がある。一方で、多成分射出成形技術によって製造でき、自動車のエンジンルームに使用でき、様々な範囲の適用温度で比較的低い圧縮永久歪値を提供するだけでなく、改良された耐薬品性と共に比較的高い耐熱性(比較的低いクリープ)も提供する硬質/軟質成分が求められている。
【0010】
複合体の製造における別の可能性は、接着性中間副層の使用によって提供される。例えば、EP 0 921 153 A1には、官能化ポリマーとポリアミドで構成される相溶化剤として特定のブロックポリマーを使用することにより極性及び非極性ポリマーを混合できることが開示されている。得られるポリマー混合物は、極性及び非極性熱可塑性ポリマーで構成される複合体を製造するための接着剤中間副層として使用できる。EP 0 837 097 A1によれば、極性及び非極性熱可塑性ポリマーで構成される複合体の製造は、化学的に改質されたポリオレフィンと熱可塑性ポリウレタン、コポリエステル、又はポリアミドを含有するブロックコポリマーの助けを借りてもうまくいく。しかしながら、ポリアセタールと熱可塑性エラストマーで構成される複合体の製造に、複雑なブロックコポリマーの使用を省略できれば望ましいであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明の目的は、前述した難点及び制約なしにポリアセタールと熱可塑性エラストマーで構成される複合体を提供することである。
新規な硬質/軟質の組合せを探求するこれまでの経験から、ポリアセタールとTPVの直接的組合せは不可能であることが示されている(Advanced Elastomer Systems,Rev.06/2001 p.1;Santoprene(登録商標)熱可塑性ゴム 8211−55B100 TPV)。なぜならば、TPVに従来から使用されている架橋剤、例えばフェノール樹脂又は過酸化物は、ポリアセタールの分解をもたらすからである。
【0012】
驚くべきことに今回、ポリアセタールと非オレフィン性熱可塑性材料によって改質されたTPVから、所望の性質と極めて良好な接着を有する接着接合が達成できることが分かった。これに対し、オレフィン性熱可塑性材料で改質されたTPVはポリアセタールに接着しない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、本発明は、少なくとも一つのポリアセタールと少なくとも一つの改質TPVエラストマーとで構成される複合体及びその製造法を提供する。前記改質TPVエラストマーは、改質TPVエラストマーの重量を基に10〜70重量%の非オレフィン性熱可塑性材料と少なくとも1〜30%の相溶化剤を含む。前記製造法は、ポリアセタールで構成される成形品をまず成形し、次いでその上に改質TPVエラストマーで構成されるコーティング若しくは少なくとも一つの成形品を射出成形によって適用するか、又は改質TPVエラストマーをまず予備射出成形し、次いでポリアセタールで構成されるコーティング若しくは少なくとも一つの成形品を射出成形によって施用するか、のいずれかであり、ポリアセタールは改質TPVエラストマーに接着接合又は粘着接合される(bonded adhesively or cohesively)。本発明の複合体の剥離抵抗は少なくとも0.5N/mmである。本発明によれば、改質TPVエラストマーの好適な圧縮永久歪値は、DIN ISO 815に従って、70℃で24時間後に<65%になるようにすべきである。
【0014】
本発明の複合体は、ここに、一部又は完全に改質TPVエラストマーで被覆されているか又はその上に改質TPVで構成される一つ以上の成形品(機能性部品とも呼ぶ)が直接成形されているポリアセタール成形品から形成される。例えば、これは、片側にTPVエラストマーで構成される層を持つ平面的なポリアセタール成形品であり得る。これらの例は、滑り止めの下層、グリップのくぼみ、操作ユニット及びスイッチングユニット、ガスケット又は制動エレメントを備えた機能性部品、さらには二輪車、その他の自動車、航空機、鉄道車両、及び船舶の内装及び外装である。これらは、ポリアセタールのおかげで必要な寸法安定性を有し、エラストマー層のおかげで所望の摩擦特性、シール機能、感触、又は外観を有する。
【0015】
しかしながら、複合体は、任意の所望形状の一つ以上のポリアセタール成形品で構成され、その上に改質TPVエラストマーで構成される任意の所望形状の一つ以上の成形品が直接成形されているものであってもよい。“直接成形”という表現は、本発明の目的のために、機能性エレメントが、ポリアセタールで構成される成形品上に、それらが接着接合することを意図して、特に多成分射出成形法で直接射出成形されることを意味するものとする。
【0016】
非オレフィン性熱可塑性材料で改質されたTPVエラストマーを使用すると、例えば、エラストマーで構成されるシールエレメント又は制動エレメントを、ポリアセタールで構成される成形品上に、更なる組立ステップを何ら必要とせずに直接成形することが可能になる。機能性エレメントの組立のために以前は必要だった加工ステップが省略されるために、本発明の複合体の製造においてはかなりのコスト削減が達成できる。
【0017】
複合体は周知の方法及びプロセスによって製造される。多成分射出成形法を使用するのが好都合である。射出成形用金型でまずポリアセタールを成形し(すなわち予備射出成形し)、次いで改質TPVエラストマーで構成されるコーティング又は成形品をポリアセタール成形品上に射出成形する。
【0018】
成形品の形状寸法(geometry)がそれを許すならば、複合体は逆の順序の多成分プロセスで製造することもできる。すなわち、TPVエラストマーで構成される成形品を最初に予備射出成形し、次いでポリアセタールで構成されるコーティング又はポリアセタールで構成される少なくとも一つの成形品を射出成形によって適用する。
【0019】
ポリアセタール成形品の製造時の溶融温度はここでは通常範囲内である。すなわち、下記のポリアセタールの場合、約180〜240℃、好ましくは190〜230℃の範囲である。金型自体の温度は20〜140℃の範囲の温度に制御される。上の方の温度範囲にある金型温度が、半結晶材料であるポリアセタールで構成される硬質体の成分の寸法精度及び寸法安定性のために好都合である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
金型のキャビティが完全に充填され、保持圧力の効果がもはや無くなったら(ゲートシーリングポイント)直ちに、ポリアセタール成形品は完全かつ最終的に冷却に委ねられ、そして複合品の第一の部分として取り出す(離型する)ことができる(予備成形)。その次の第二の別の射出成形ステップで、例えば、この予備成形品を次に別の金型(この金型のキャビティは追加のスペースを持つ)に挿入(インサート)又は移し替えて(トランスファー)、より低硬度の材料すなわち改質TPVエラストマーを金型に射出する。こうして改質TPVエラストマーがポリアセタール成形品上に射出成形される。このプロセスはインサートプロセス又はトランスファープロセスとして知られている。その後に達成されうる接着に関し、最初に射出成形されるポリアセタール成形品を80℃〜融点直下の範囲の温度に予熱するのが特に好都合である。これにより、材料上に射出成形されたTPVエラストマーによる表面の初期溶融とこのエラストマーの界面層への浸透が促進される。
【0021】
しかしながら、別の可能な方法では、最初に射出成形されるポリアセタール成形品を一部だけ取り出し、元の金型の一部(例えば、供給プレート(feed plate)、エジェクターハーフ (ejector half)、又は一つだけの割出しプレート(just one indexing plate))と一緒に別のより大きいキャビティに移すこともできる。
【0022】
別の可能な方法は、装置を中間で開けたりポリアセタールで構成される予備成形品を前方移送したりせずに、改質TPVエラストマーを同じ金型に射出することにある。この場合、エラストマー成分用の複数の金型キャビティは、ポリアセタール成分の射出中は可動式の複数のインサート又はコアでまず封をしておき、エラストマー成分を射出するまで開けない(スライド技術)。この方式のプロセスも良好な接着を達成するために特に有益である。なぜならば、TPVエラストマーの溶融物が、短い冷却時間しか経過していないまだ熱い予備成形品に遭遇することになるからである。
【0023】
適切な場合、ポリアセタール及び改質TPVエラストマーで構成される更なる成形品を、同時射出成形によって又は多成分射出成形法による順次ステップで適用することもできる。
【0024】
改質TPVエラストマーを射出成形によって適用する場合、良好な接着のために、溶融温度並びに射出成形圧力及び保持圧力も最大限可能な設定を選択することが有益である。TPVエラストマーの溶融温度は一般的に170〜270℃の範囲であり、上限はその分解によって決定される。射出率並びに射出成形圧力及び保持圧力の値は、機械依存性及び成形品依存性であるので、特定の状況に適合するようにする。
【0025】
いずれの方式のプロセスにおいても、予備成形品を離型するかしないかに関わらず、金型は第二のステップで20℃〜140℃の範囲の温度に温度制御される。部品の設計に応じて、金型温度を多少低くすることが離型性とサイクル時間の最適化のために勧められる。部品が冷えたら複合品を取り出す。金型の設計に関連してここで重要な因子は、材料の接合部への荷重を最小限にする適切な部位にエジェクターを取り付けることである。接合領域におけるキャビティの十分なガス抜きも金型の設計に設備して、包含空気による二成分間の接着の阻害を最小限にする。金型壁の粗さの性質からも同様の効果が得られる。良好な接着に発展させるために、接合部位の表面は平滑であるのが、空気が表面にあまり包含されないため好都合である。
【0026】
本発明に従って使用されるポリアセタールは公知のポリオキシメチレン(POM)のグループ由来のものである。これらは例えばDE−A 29 47 490に記載されている。上記の複合体の製造はこれまでこれらのポリオキシメチレンでは特に成功を収めていなかった。ポリオキシメチレンは一般的に枝分かれしていない直鎖ポリマーで、一般的に少なくとも80mol%、好ましくは少なくとも90mol%のオキシメチレン単位(−CH2O−)を含有している。ポリオキシメチレンという用語は、ここではホルムアルデヒド又はその環状オリゴマー、例えばトリオキサン又はテトラオキサンのホモポリマーだけでなく対応するコポリマーも包含する。
【0027】
ホルムアルデヒド又はトリオキサンのホモポリマーは、そのヒドロキシ末端基が、例えばエステル化又はエーテル化によって、分解に関して公知の方法で化学的に安定化されているポリマーである。
【0028】
コポリマーは、ホルムアルデヒド又はその環状オリゴマー、特にトリオキサンと、環状エーテル、環状アセタール、及び/又は直鎖ポリアセタールとで構成されるポリマーである。
【0029】
使用できるコモノマーは、第一に3、4、又は5個、しかし好ましくは3個の環メンバーを有する環状エーテルであり、第二にトリオキサン以外の5〜11個、好ましくは5、6、7、又は8個の環メンバーを有する環状アセタール、そしてまた直鎖ポリアセタールである。各場合で使用される量は0.1〜20mol%、好ましくは0.5〜10mol%である。
【0030】
使用されるポリアセタールポリマーのメルトインデックス(MFR値、190/2.16)は一般的に0.5〜75g/10分(ISO 1133)である。
改質型のPOMを使用することも可能である。これらの改質型の中から例を挙げると、POMと、TPEU(熱可塑性ポリウレタンエラストマー)、MBS(メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン コア−シェルエラストマー)、メチルメタクリレート−アクリレート コア−シェルエラストマー、PC(ポリカーボネート)、SAN(スチレン−アクリロニトリルコポリマー)、又はASA(アクリレート−スチレン−アクリロニトリルコポリマー配合材料)とで構成されるブレンドである。
【0031】
本発明に従って使用される改質TPVエラストマーは、30〜90ショアAの硬度(ISO868に対応するDIN 53505に従って測定)を有し、以下の成分を含む配合材料である:
a)2〜75重量%、好ましくは5〜75重量%、特に好ましくは20〜50重量%の完全又は一部架橋エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)であって、
このEPDMは、1〜50重量%、好ましくは3〜50重量%、特に好ましくは10〜30重量%のポリオレフィンマトリックス、例えば適切な場合には官能化されたポリエチレン(PE)、又は適切な場合には官能化されたポリプロピレン(PP)、及び/又はこれらのコポリマーで構成されるポリオレフィンマトリックス、好ましくはポリプロピレン中にあり、
そして、0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の安定剤、好ましくはフェノール系抗酸化剤、及び/又は架橋補助剤、好ましくはアゾ化合物、マレイミド、セレン、テルル、硫黄、硫黄化合物、特にチオ化合物、そして特に好ましくは過酸化物、特にアルキル又はアリールペルオキシド、例えばジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン又はジ−tert−ブチルペルオキシド、が添加されているものである。成分a)は適切な場合、更なる添加剤、特に可塑剤及びフィラーを含んでいてもよい;
b)1〜30重量%の少なくとも一つの相溶化剤、例えば、適切な場合には官能化された、スチレン−オレフィンブロックコポリマー、メタクリレート−ブタジエン−スチレン(MBS)、MABS(メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、官能化EPDM、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、及び/又は官能化ポリオレフィン;及び
c)10〜70重量%の非オレフィン性熱可塑性材料。
【0032】
TPVエラストマーは、さらに、下記のものを、一般に使用されている量で含むこともできる:
d)適切な場合、50重量%までの可塑剤油(例えば、パラフィン系鉱油、合成油、エステル可塑剤、ナフテン油、半合成油、シリコーン油など、好ましくはパラフィン系鉱油)、及び/又は50重量%までの有機及び/又は無機フィラーと、それぞれに補強剤(例えば、白亜、タルク、ガラスビーズ、ガラス繊維、シリカ、ナノ粒子、例えばフィロケイ酸塩など、カオリン、ウォラストナイト、ベントナイト、水酸化マグネシウム及び/又は水酸化アルミニウム、など、好ましくは白亜);及び/又は
e)添加剤、例えば、抗酸化剤、光安定剤、成核剤、離型剤、内部又は外部潤滑剤、顔料、カーボンブラック、ハロゲン除去及び/又はハロゲン化難燃剤、蛍光増白剤、炭化水素樹脂及び/又はエポキシ樹脂、帯電防止剤、殺微生物剤、殺カビ剤、など;よく知られた架橋剤、例えば過酸化物、フェノール樹脂、及び硫黄など、好ましくは過酸化物;そしてまたよく知られた架橋促進剤、例えばシラン、グアニジン、硫黄化合物、例えばカドミウム−、銅−、鉛−、亜鉛−、及びテルル−セレン−硫黄化合物、特に対応するジチオカルバメート、対応するチウラム、又はキサンテート、チオ尿素、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アルファ−メチルスチレンなど、である。
【0033】
与えられた重量%のデータはTPVエラストマー(配合材料)の総重量に基づく。
a)及びb)に記載されているポリオレフィン及びコポリマーは、適切な場合、基又は化合物によって官能化されている。そのような基又は化合物は、カルボニル基及び/又はカルボキシ基を含有する化合物、例えばマレイン酸、その誘導体、例えばマレイミド及び/又は無水マレイン酸(MAH)、アクリル酸、アクリレート及び/又はそれらの誘導体、特にGMA(グリシジルメタクリレート);エポキシ基を含有する化合物、例えばグリシジルメタクリレート又はグリシジルエタクリレート;アミノ基又はイミノ基、アミド基、金属カルボキシレート基、カーボネート基、ニトリル基、エーテル基、エステル基、ウレタン基、シアネート基、イソシアネート基、シアヌレート基、イソシアヌレート基、及び/又はヒドロキシ基の群から選ぶことができる。官能化ポリオレフィンは、他の極性物質との混合物、例えばPP/ABSブレンド、PP/PAブレンド又はPE/PMMAブレンド(ABS=アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、PMMA=ポリメチルメタクリレート)も意味する。
【0034】
a)に記載されているEPDMゴムについて、原則的にはあらゆる所望のジエンを使用することが可能である。主に使用されるジエンモノマーは、シス、シス−1,5−シクロオクタジエン、エキソ−ジシクロペンタジエン、エンド−ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、及び5−エチリデン−2−ノルボルネンである。5−エチリデン−2−ノルボルネンが好適である。
【0035】
使用される成分a)は、好ましくは架橋された、特に過酸化物的に架橋されたEPDM/ポリオレフィンを含む。ここで、成分a)自体は好ましくは未反応架橋剤の残留物を含まない又は少なくとも架橋剤は殆ど存在しない。すなわち、残留架橋剤の含有量が0.1重量%未満、好ましくは0.05重量%未満、特に好ましくは0.01重量%未満であることを意味する。これを達成するための方法の一例は、TPVエラストマーの配合中に架橋剤を消費するか分解することである。このためには、TPVエラストマーの重量に基づいて0.01〜5重量%、特に好ましくは0.1〜2重量%の少量の架橋剤を使用するのが好ましい。
【0036】
c)に記載されている非オレフィン性熱可塑性材料は、熱可塑性ポリエステルウレタンエラストマー、熱可塑性ポリエーテルウレタンエラストマー、熱可塑性ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート及び/又はポリブチレンテレフタレート、熱可塑性ポリエステルエステルエラストマー、熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマー、熱可塑性ポリエーテルアミドエラストマー、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性ポリカーボネート、熱可塑性ポリアクリレート、アクリレートゴム、スチレン−アクリロニトリル−アクリレートゴム(ASA)の群から選ばれる。前述の材料の混合物を使用することも可能である。
【0037】
成分a)はTPVマスターバッチの形態でも使用される。これは、一般的に、TPVマスターバッチ(プレコンパウンド)を基に、
10〜75重量%、好ましくは20〜40重量%のエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、
5〜50重量%、好ましくは5〜20重量%のポリオレフィン、好ましくはポリプロピレン(PP)、
0〜70重量%、好ましくは35〜60重量%の可塑剤油、特にパラフィン系鉱油、
0〜50重量%の有機及び/又は無機フィラー、好ましくは白亜又は硫酸バリウム、
0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%の安定剤、特にフェノール系抗酸化剤、及び/又は架橋補助剤、好ましくは過酸化物、
を含む、動的に架橋されたプレコンパウンド材料を意味する。
【0038】
TPVエラストマーに導入されるTPVマスターバッチ(成分a)の重量割合は、TPVエラストマーの総重量に基づいて、好ましくは20〜89重量%、特に好ましくは30〜70重量%である。
【0039】
実施例では過酸化物的に架橋された配合EPDM/PP材料で構成されるTPVマスターバッチを使用した。
TPVマスターバッチのための適切な可塑剤油、無機フィラー、安定剤、及び架橋補助剤は前述のものである。
【0040】
配合材料は、共回転二軸スクリュー押出機(ZSK)による、よく知られた配合プロセスによって製造される。
TPVマスターバッチの構成の変更、そしてまた成分a)〜e)の割合を変更することによって異なる性質を有する改質TPVエラストマーを製造することも可能である。
【0041】
本発明の改質配合TPV材料の硬度は30〜90ショアA、好ましくは40〜80ショアAの範囲である。この硬度は必要に応じて可塑剤及び熱可塑性成分の割合によって調整できる。
【0042】
TPVエラストマー中の熱可塑性含有物としてオレフィン性熱可塑性プラスチックを使用することも一般的に可能である。例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリオレフィンエラストマー、所望によりタルク補強又はガラス繊維充填されていてもよい。しかしながら、オレフィン性熱可塑性材料で改質されたこのタイプのTPVエラストマーの例で示したように(PTS−UNIPRENE−7100−55*9000の比較例参照)、これらの配合TPVエラストマー材料はポリアセタールに接着しない。
【0043】
従って、本発明によれば、TPVエラストマーは非オレフィン性熱可塑性材料との配合によって改質されている。
ポリアセタールだけでなく改質配合TPVエラストマー材料も一般的に前述のような安定剤、成核剤、離型剤、潤滑剤、フィラー、及び補強材料、顔料、カーボンブラック、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、可塑剤、又は蛍光増白剤のような従来の添加剤を含むことができる。添加剤の存在量は一般的に使用されている量である。
【0044】
本発明による複合体は、序文で述べた自動車のエンジンルームの用途分野だけでなく、フィッティング、カップリング、ローラ、及びベアリングの形態の接続エレメントとして、及び一体化されたシール特性及び/又は一体化された制動特性を有する機能性部品として、さらにまた滑り止めエレメント及びイージーグリップエレメントとしても使用される。これらの中には、自動車建造におけるハウジング、例えばドア閉鎖ハウジング、ウィンドウリフトハウジング、又はスライディングルーフシールエレメントなど、及びまた一体化されたシール付き締め具エレメント、例えばシールリング又はシールディスク付きクリップ、一体化されたシールリップ付き装飾ストリップ、伸縮継手のためのシールエレメント、良好な制動特性を有する締め具エレメント、例えば振動又は騒音を制動するためのコア付きクリップ、トランスミッションパーツ、例えば制動エレメント付き歯車、一体化されたフレキシブルカップリング付きギアボックス、ノンスリップエレメント、イージーグリップエレメント、例えばコントロールレバー又はコントロールノブ、電気装置又は筆記用具のグリップ面、また弾性表面を有するひし形の編み目の金網(チェーンリンク)もある。
【実施例】
【0045】
記載のTHERMOPRENEグレード(改質TPV)、UNIPRENE、及びTHERMOFLEX(比較例)は、PTS−Plastic Technologie Service GmbH(ドイツ連邦共和国アデルショーフェン)からの市販品である。掲載のHOSTAFORMグレード(ポリアセタール)はTicona GmbH(ドイツ連邦共和国ケルステルバッハ)からの市販品である。
【0046】
使用したポリアセタール
HOSTAFORM(登録商標)C9021
トリオキサンと約2重量%のエチレンオキシドで構成されるポリオキシメチレンコポリマー
メルトインデックス MFR 190/2.16(ISO 1133):9g/10分
改質:なし
HOSTAFORM(登録商標)S9064
トリオキサンと約2重量%のエチレンオキシドで構成されるポリオキシメチレンコポリマー
メルトインデックス MFR 190/2.16(ISO 1133):9g/10分
改質:20重量%の半芳香族ポリエステル−TPEU
HOSTAFORM(登録商標)S9244
トリオキサンと約2重量%のエチレンオキシドで構成されるポリオキシメチレンコポリマー
メルトインデックス MFR 190/2.16(ISO 1133):9g/10分
改質:25重量%のMBSコア−シェル改質剤
【0047】
使用した改質TPVエラストマー
PTS−THERMOPRENE−85A10*9007:硬度85ショアA、密度1.09g/cm3
TPVマスターバッチ(EPDM−X+/PP)(製造には上記参照)、含有率40%の熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマー(TPEE)、硬度40ショアD、例えばARNITEL(DSM)又はHYTREL(DuPONT)と呼ばれる市販品、10%のMBS(メタクリレート−ブタジエン−スチレン)コア−シェル改質剤、15%の無機フィラー(CaCO3)、それに添加剤で構成される配合材料。
PTS−THERMOPRENE−75A10*9007:硬度75ショアA、密度1.08g/cm3
TPVマスターバッチ(EPDM−X+/PP)、含有率40%の熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマー、硬度25ショアD、例えばARNITEL(DSM)又はHYTREL(DuPONT)と呼ばれる市販品、10%のMBS(メタクリレート−ブタジエン−スチレン)コア−シェル改質剤、15%の無機フィラー(CaCO3)、それに添加剤で構成される配合材料。
PTS−THERMOPRENE−70A10*9000:硬度70ショアA、密度1.05g/cm3
TPVマスターバッチ(EPDM−X+/PP)、含有率35%の熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマー、硬度25ショアD、例えばARNITEL(DSM)又はHYTREL(DuPONT)と呼ばれる市販品、約10%のMBS(メタクリレート−ブタジエン−スチレン)コア−シェル改質剤、3%の部分官能化HSBC(水素化スチレン−オレフィンブロックコポリマー)、5%の可塑剤油、10%の無機フィラー(CaCO3)、それに添加剤で構成される配合材料。
【0048】
PTS−THERMOPRENE−60A10*9000:硬度60ショアA、密度1.04g/cm3
TPVマスターバッチ(EPDM−X+/PP)、含有率25%の熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマー、硬度25ショアD、例えばARNITEL(DSM)又はHYTREL(DuPONT)と呼ばれる市販品、5%のMBS(メタクリレート−ブタジエン−スチレン)コア−シェル改質剤、10%の部分官能化HSBC(水素化スチレン−オレフィンブロックコポリマー)、20%の可塑剤油、10%の無機フィラー(CaCO3)、それに添加剤で構成される配合材料。
PTS−THERMOPRENE−55A10*9000:硬度55ショアA、密度1.05g/cm3
TPVマスターバッチ(EPDM−X+/PP)、含有率25%の熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマー、硬度25ショアD、例えばARNITEL(DSM)又はHYTREL(DuPONT)と呼ばれる市販品、約10%のMBS(メタクリレート−ブタジエン−スチレン)コア−シェル改質剤、10%の部分官能化HSBC(水素化スチレン−オレフィンブロックコポリマー)、20%の可塑剤油、10%の無機フィラー(CaCO3)、それに添加剤で構成される配合材料。
PTS−THERMOPRENE−40A10*9007:硬度40ショアA、密度1.00g/cm3
TPVマスターバッチ(EPDM−X+/PP)、含有率20%の熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマー、硬度25ショアD、例えばARNITEL(DSM)又はHYTREL(DuPONT)と呼ばれる市販品、15%の部分官能化HSBC(水素化スチレン−オレフィンブロックコポリマー)、30%の可塑剤油、10%の無機フィラー(CaCO3)、それに添加剤で構成される配合材料。
【0049】
PTS−THERMOPRENE−75A66*800:硬度75ショアA、密度1.14g/cm3
TPVマスターバッチ(EPDM−X+/PP)、含有率10%のナイロン−6、15%の部分官能化HSBC(水素化スチレン−オレフィンブロックコポリマー)、25%の無機フィラー(CaCO3)、それに添加剤で構成される配合材料。
PTS−THERMOPRENE−65A22*807:硬度63ショアA、密度1.05g/cm3
TPVマスターバッチ(EPDM−X+/PP)、含有率40%の熱可塑性ポリエステルウレタン(TPU)、硬度85ショアA、例えばDESMOPAN(Bayer)又はELASTOLLAN(Elastogran)と呼ばれる市販品、10%のMBS(メタクリレート−ブタジエン−スチレン)コア−シェル改質剤、10%の無機フィラー(CaCO3)、それに添加剤で構成される配合材料。
PTS−THERMOPRENE−75A20*9000:硬度73ショアA、密度1.08g/cm3
TPVマスターバッチ(EPDM−X+/PP)、含有率40%の熱可塑性ポリエーテルウレタン(TPU)、硬度85ショアA、例えばDESMOPAN(Bayer)又はELASTOLLAN(Elastogran)と呼ばれる市販品、10%のMBS(メタクリレート−ブタジエン−スチレン)コア−シェル改質剤、10%の無機フィラー(CaCO3)、それに添加剤で構成される配合材料。
PTS−THERMOPRENE−65A60*807:硬度67ショアA、密度1.03g/cm3
TPVマスターバッチ(EPDM−X+/PP)、含有率40%の熱可塑性ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、硬度25ショアD、例えばPEBAX(Atofina)と呼ばれる市販品、10%のMBS(メタクリレート−ブタジエン−スチレン)コア−シェル改質剤、10%の無機フィラー(CaCO3)、それに添加剤で構成される配合材料。
【0050】
(比較例)
PTS−UNIPRENE−7100−55*9000:硬度61ショアA、密度0.93g/cm3
TPVマスターバッチ、含有率7%の熱可塑性ポリオレフィン(PP)、それに添加剤で構成される配合材料。
PTS−THERMOFLEX−VP/S3005/121*9007(=DE19845235C2の混合物):硬度70ショアA、密度1.17g/cm3
高分子量官能化及び非官能化SEBSブロックコポリマー、15%の可塑剤油、含有率40%の熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマー(TPEE)、20%の無機フィラー(CaCO3)、それに添加剤で構成される配合材料。
【0051】
複合体は表1に記載の条件下で製造された。
【0052】
【表1】

【0053】
硬質成分と軟質成分間の接着強さを測定するための試験法
剥離試験の試験片を用いて接着を評価した。これらの試験片は、締付力1000kNの多成分射出成形機(Arburg Allrounder、420V 1000−350/150、製造業者Arburg、D72290 ロスブルグ)で製造した。
軟質成分は硬質成分中の穴から射出成形によって中央に適用される。これによって対称的な流路が得られる。試験片は、接着強さにとって理想的条件を作り出すために、二成分金型を用い、コア−バック法(core-back process)によって製造する。
試験片の形状寸法(geometry)は、ポリアセタール(硬質成分)で構成される130×100×3mmの寸法を有するフレームのそれである。この試験片の表面に改質TPV軟質成分が重ね成形(オーバーモールド)されている。軟質成分は厚さ2mm、長さ115mm、幅35mmのリップ(lip)である。
【0054】
硬質成分と軟質成分間の接着強さに関する基本的試験は、標準化試験法DIN EN 1464ローラ剥離試験に基づいている。この試験法は、“高強度接着接合の剥離抵抗の測定”を述べたもので、金属が関与する接着接合に関連している。使用した試験片のジオメトリはDIN EN 1464のものとは異なっていた。試験片の寸法のため、DIN EN 1464に記載されているローラ剥離試験装置(引張試験機に搭載されている)のローラ長をわずかに変更して、試験片の位置取りができるようにした。
【0055】
高接着強さでの剥離プロセス中の硬質成分の曲げの影響を小さく保つために、この成分の肉厚を3mmに設計した。軟質成分の肉厚は2mmである。これは工業界で表面オーバーモールドによく見られる寸法である。その結果、硬質成分のオーバーモールド時に比較的高い接触温度が確保される。軟質成分の剥離プロセスはDIN EN 1464に基づく方法によって接着面に対して90°の角度で実施される。
90°ローラ剥離試験に由来する接着強さの変数は、[N/mm]の単位の剥離抵抗として表される。
【0056】
剥離抵抗[N/mm]=剥離力[N]/試験片の幅[mm]
引張試験機の評価ソフトウェアによって最小剥離力Fmin、最大剥離力Fmax及び平均剥離力Faverageが計算される。
平均剥離力が接着強さを評価する測定値とみなされる。
平均剥離抵抗は、平均剥離力の値を試験片の幅すなわち35mmで割ることによって算出される。
【0057】
エラストマー成分の圧縮永久歪値は、DIN ISO 815に従って70及び100℃で測定した。タイプBの試験片を直径13±0.5mm、厚さ6.3±0.3mmで用いた。
【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
接着の評価に剥離抵抗だけを取り上げるのは一般的に不可能である。破断の型も同じくらい重要である。
特に、比較的柔らかいタイプのTPVの場合、又は極限引張強さが比較的低いタイプの場合、これに伴って剥離抵抗も比較的硬いタイプのTPV(一般的に比較的高い極限引張強さを有する)より低くなる。試験には、極限引張強さが低く、従って低い“剥離力”しか達成しないTPV材料も含まれている。これらの“剥離力”は、剥離力というより極限引張力であることが多い。接着ファクタ5はこうしたケースを示すのに使用されている。表2には、引用した例の剥離抵抗及び接着ファクタの結果を示す。
一般的に、本発明の材料で、良好ないし非常に良好な接着強さが試験した全タイプのポリアセタールに対して達成された。
多くの場合、粘着破壊(cohesive fracture)が達成されるか、又は接着強さの方が軟質TPV成分の材料の強度よりも高い。これに加えて、比較的低い圧縮永久歪及び油脂に対する改良された耐薬品性といった前述の性質もあり、これらは先行技術のSEBSを用いた公知の複合体にはない性質である(PTS−THERMOFLEX 比較例参照)。従って、本発明の材料群は、特に自動車のエンジンルームにおける新規応用分野を開拓する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】a、bは試験片Pの正面図及び側面図を示す。フレームを形成する硬質成分をHで示し、軟質成分で構成されるリップをWで示した。
【図2】背面図を示す。これにも硬質成分Hの中央の穴Bが見えている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接着接合又は粘着接合された少なくとも一つのポリアセタールと少なくとも一つの改質熱可塑性加硫物(TPV)エラストマーとを含む複合体であって、
一部又は完全に改質TPVエラストマーで被覆されているか又はその上に改質TPVで構成される一つ以上の成形品が直接成形されているポリアセタール成形品から形成され、
前記改質TPVエラストマーは、その硬度が30〜90ショアAであり、TPVエラストマーの総重量に基づく重量%で、以下の成分:
a)0.05〜10重量%の安定剤及び/又は架橋補助剤を添加された1〜50重量%のポリオレフィンマトリックス中の、2〜75重量%の完全又は一部架橋エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM);
b)1〜30重量%の少なくとも一つの相溶化剤;及び
c)10〜70重量%の非オレフィン性熱可塑性材料;
を含む配合材料である、前記複合体。
【請求項2】
改質TPVエラストマーの圧縮永久歪値が70℃で24時間後に<65%である、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
剥離抵抗が少なくとも0.5N/mmである、請求項1又は2に記載の複合体。
【請求項4】
ポリオキシメチレンコポリマーがポリアセタールとして使用される、請求項1、2、及び3のいずれかに記載の複合体。
【請求項5】
改質TPVエラストマーが、50重量%までの可塑剤油及び/又は50重量%までの有機及び/又は無機フィラーと、それぞれに補強剤も含む、請求項1〜4のいずれかに記載の複合体。
【請求項6】
非オレフィン性熱可塑性材料が、熱可塑性ポリエステルウレタンエラストマー、熱可塑性ポリエーテルウレタンエラストマー、熱可塑性ポリエステル、熱可塑性ポリエステルエステルエラストマー、熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマー、熱可塑性ポリエーテルアミドエラストマー、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性ポリカーボネート、熱可塑性ポリアクリレート、アクリレートゴム、スチレン−アクリロニトリル−アクリレートゴム(ASA)の群から選ばれる、請求項1〜5のいずれかに記載の複合体。
【請求項7】
EPDMゴムのマトリックスがポリプロピレンである、請求項1〜6のいずれかに記載の複合体。
【請求項8】
成分a)が、未反応架橋剤の残留物を含まないか、又は未反応架橋剤の残留含有量がTPVエラストマーの総重量に基づき0.1重量%未満である、請求項1〜7のいずれかに記載の複合体。
【請求項9】
使用される相溶化剤b)が、官能化スチレン−オレフィンブロックコポリマー、メタクリレート−ブタジエン−スチレン(MBS)、MABS(メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、官能化EPDM、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、及び/又は官能化ポリオレフィンを含む、請求項1〜8のいずれかに記載の複合体。
【請求項10】
ポリアセタールで構成される成形品の形態であって、それが改質TPVエラストマーで完全に又は一部被覆されている、請求項1〜9のいずれかに記載の複合体。
【請求項11】
ポリアセタールで構成される成形品の形態であって、その上に改質TPVエラストマーで構成される少なくとも一つの更なる成形品が成形されている、請求項1〜10のいずれかに記載の複合体。
【請求項12】
ポリアセタール成形品及び射出成形によって施用された改質TPVエラストマーで構成されている、請求項1〜11のいずれかに記載の複合体。
【請求項13】
改質TPVエラストマー及び射出成形によって施用された少なくとも一つのポリアセタール成形品で構成されている、請求項1〜11のいずれかに記載の複合体。
【請求項14】
ポリアセタール及び少なくとも一つの改質TPVエラストマーで構成される請求項1〜11のいずれかに記載の複合体の製造法であって、
まずポリアセタールで構成される成形品を成形し、次いでこの上に改質TPVエラストマーで構成されるコーティング又は少なくとも一つの成形品を射出成形によって施用し、
使用される改質TPVエラストマーは、その硬度が30〜90ショアAで、TPVエラストマーの総重量に基づく重量%で、0.05〜10重量%の安定剤及び/又は架橋補助剤を添加された1〜50重量%のポリオレフィンマトリックス中の、2〜75重量%の完全又は一部架橋エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM);1〜30重量%の少なくとも一つの相溶化剤;及び10〜70重量%の非オレフィン性熱可塑性材料;を含む配合材料であり、
こうしてポリアセタールが改質TPVに接着接合又は粘着接合されている、前記複合体の製造法。
【請求項15】
ポリアセタール及び少なくとも一つの改質TPVエラストマーで構成される請求項1〜11のいずれかに記載の複合体の製造法であって、
まず改質TPVで構成される成形品を成形し、ここで使用される改質TPVエラストマーは、その硬度が30〜90ショアAで、TPVエラストマーの総重量に基づく重量%で、0.05〜10重量%の安定剤及び/又は架橋補助剤を添加された1〜50重量%のポリオレフィンマトリックス中の、2〜75重量%の完全又は一部架橋エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM);1〜30重量%の少なくとも一つの相溶化剤;及び10〜70重量%の非オレフィン性熱可塑性材料;を含む配合材料であり、
次いでこの上にポリアセタールで構成されるコーティング又は少なくとも一つの成形品を射出成形によって施用し、こうしてポリアセタールが改質TPVに接着接合又は粘着接合されている複合体の製造法。
【請求項16】
多成分射出成形法である、請求項14又は15に記載の製造法。
【請求項17】
金型での多成分射出成形法であって、ポリアセタールで構成される成形品を80℃〜その融点直下の範囲の温度に予熱した後、改質TPVエラストマーを射出成形によって施用し、ポリアセタールで構成される成形品への射出成形による施用時の改質TPVの溶融温度が170〜270℃であり、そして、金型の温度が20〜140℃の範囲の温度に制御されている、請求項14に記載の製造法。
【請求項18】
金型での多成分射出成形法であって、改質TPVで構成される成形品を20〜80℃の範囲の温度に予熱した後、ポリアセタールを射出成形によって施用し、改質TPVで構成される成形品への射出成形による施用時のポリアセタールの溶融温度が170〜270℃であり、金型の温度が20〜140℃の範囲の温度に制御されている、請求項15に記載の製造法。
【請求項19】
一体化されたシール特性及び一体化された制動特性を有する機能性部品としての請求項1〜13のいずれかに記載の複合体の使用。
【請求項20】
自動車のエンジンルームにおける機能性部品としての請求項1〜13のいずれかに記載の複合体の使用。
【請求項21】
請求項1〜13のいずれかに記載の複合体の製造のための、TPVエラストマーの使用であって、TPVエラストマーの総重量に基づく重量%で、以下の成分:
a)0.05〜10重量%の安定剤及び/又は架橋補助剤を添加された1〜50重量%のポリオレフィンマトリックス中の、2〜75重量%の完全又は一部架橋エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM);
b)1〜30重量%の少なくとも一つの相溶化剤;及び
c)10〜70重量%の非オレフィン性熱可塑性材料;
を含む、前記TPVエラストマーの使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−514461(P2008−514461A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−533942(P2007−533942)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010504
【国際公開番号】WO2006/034860
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(598029656)ティコナ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (32)
【氏名又は名称原語表記】Ticona GmbH
【Fターム(参考)】