説明

ポリイソブテンホスホン酸及びその誘導体

本発明は、ポリイソブテンホスホン酸及びその誘導体、その製法並びにその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソブテンホスホン酸及びその誘導体、その製法並びにその使用に関する。
【0002】
表面特性又は界面挙動を変性するために例えば腐蝕防止剤、摩擦減少剤、乳化剤又は分散剤として使用する、両親媒性ポリアルケニル誘導体は公知である。
【0003】
例えば、国際特許PCT/EP02/09608には、一方ではポリイソブテン含有成分及び他方ではそれとは異なるポリマーを含有するポリマー組成物が記載されている。ポリイソブテン含有成分は、誘導されたポリイソブテンから選択することができる。この誘導体には、例えばエポキシド化、ヒドロホルミル化、ヒドロキシル化、ハロゲン化、シリル化されたか又はチオ基又はスルホン酸基で官能性にされたポリイソブテンが該当する。この組成物は良好な機械特性及び/又は良好な界面特性を有すると言われている。
【0004】
US4578178には、石油又は石油化学製品中の沈殿の生成を抑制するためにポリアルケニルチオホスホン酸又はそのエステルを使用することが記載されている。
【0005】
US4031017には、ポリイソブテン基がホスホスルフリル化されているポリイソブテン−置換マンニッヒ付加生成物が記載されている。この化合物は酸化防止剤及び洗浄剤として滑剤中に使用される。
【0006】
US4778480には、ディーゼル機関燃料中で色安定化するために使用するポリアルケニル置換されたチオホスホン酸が記載されている。チオホスホン酸は、ポリアルケンを五硫化燐と反応させ、次いで加水分解し、エトキシル化することによって得られる。確かにチオホスホン酸は加水分解で場合によりホスホン酸に加水分解することもできると示唆されるが、しかしこの文書の技術指導によれば専ら硫黄含有生成物が望ましい。更にこのような加水分解生成物は、常に無視できない量の硫黄を含有し、通常これを除去することは非常に難しい。
【0007】
US4244828には、ポリアルケニルチオホスホン酸又はポリアルケニルホスホン酸チオエステルが中間生成物として記載されている。その反応生成物は滑剤組成物中に使用される。
【0008】
四番目に記載したUS文書の硫黄含有ホスホン酸の欠点はその臭い及び色であり、それにより特定の用途には不適当になる。更にこのような化合物の貯蔵安定性及び効力は不十分である。特に燃料油組成物、例えばディーゼル機関−、オットー型動力燃料及び暖房用油中のこのような硫黄含有生成物の使用は、含有される硫黄、特に二酸化硫黄の燃焼生成物に鑑みて、環境汚染の理由で考慮外である。
【0009】
本発明の課題は、良好な使用技術特性を有する新規両親媒性ポリアルケニル誘導体を提供することであった。この誘導体は、特に無臭であり、十分な貯蔵安定性を有しかつ/又は良好な界面活性特性を有すべきである。
【0010】
この課題は、一般式I
【0011】
【化1】

[式中、R及びRは相互に無関係にハロゲン、OR、SR又はNRを表し;R及びRは相互に無関係にH、O、S及びNR11から選択した原子団少なくとも1個により中断されているC〜C20−アルキル又はC〜C4000−アルキルを表し、その際、R及びRはそれが結合している窒素原子と一緒になって環を形成することもでき、R及びRは更にアリール、アラルキル又はシクロアルキルを表し;かつR11はR及びRで定義したものを表す]のホスホン酸基を有するポリイソブテンホスホン酸及びその塩によって解決される。
【0012】
有利なポリイソブテンホスホン酸はチオエステル基を含有しない、即ち、式I中でR及びRは相互に無関係に有利にはハロゲン、OR又はNRを表し、その際、R及びRは前記で定義したものを表す。その際、特に有利にはR及びRは相互に無関係に有利にはH、O及びNR11から選択した原子団少なくとも1個により中断されているC〜C20−アルキル又はC〜C4000−アルキルを表し、その際、R及びRはそれらが結合している窒素原子と一緒になって環を形成することができ;R及びRは更にアリール、アラルキル又はシクロアルキルを表す。その際、R11はR及びRと同じものを表す。特に基R及びRは硫黄含有基を有さない。その塩も有利である。
【0013】
本発明で概念“ポリイソブテンホスホン酸”とは、ホスホン酸自体並びにその誘導体である。
【0014】
本発明によるポリイソブテンホスホン酸中でホスホン酸基Iは、有利にはポリイソブテン基の1個以上の鎖末端と結合している。本発明で鎖末端とは、各々ポリマー鎖の各末端のポリマー骨格の3個の外側の炭素原子のことである。相応してホスホン酸基Iは有利にはポリマー骨格の3個の外側の炭素原子の1個と、特に有利にはポリマー骨格の最後の炭素原子と結合している。ホスホン酸基Iを有する鎖末端は飽和又は不飽和であってよい。有利にはホスホン酸基は、炭素−炭素−二重結合の一部である炭素原子、特に有利にはメチリデン基の外側炭素原子と結合している。しかし、ホスホン酸基Iは飽和炭素原子と結合していることも可能である。
【0015】
本発明によるポリイソブテンホスホン酸は、例えば下記の非限定的構造式II
【0016】
【化2】

[式中、Aは重合開始剤から誘導される基を表し、Mは式
【0017】
【化3】

の反復単位を含有するポリマー鎖を表し、Bは式Iのホスホン酸基を共有結合して有する鎖末端を表し、nは1〜6の数を表す]により表すことができる。
【0018】
末端Bの構造は特に、それから本発明によるポリイソブテンホスホン酸が得られるポリイソブテンの構造、特にその鎖末端に左右される。鎖末端の構造はまた、このポリイソブテンを製造する重合反応の種類、条件及び停止に左右される。更に末端Bの構造は、ポリイソブテンから本発明によるポリイソブテンホスホン酸が得られる反応によっても決まる。
【0019】
従ってBは、これらの構造式は限定的な列を意味するものではないが、例えば基aからe:
【0020】
【化4】

[式中、R及びRは前記に定義したものを表し、Halはハロゲンを表す]を表す。
【0021】
鎖発端Aの構造も、本発明によるポリイソブテンホスホン酸の元となるポリイソブテンを製造する重合の種類に左右される。陽イオン重合を加水分解により終了させる場合には、Aは重合の経過中に生成される鎖発端基の加水分解生成物、例えばt−ブチル基を表してよい。ポリイソブテンが例えば開始剤分子(“Inifer”)の存在でリビング陽イオン重合の条件下で製造される場合には、Aは開始剤分子から誘導される基を表してもよい。更に、鎖発端Aはホスホン酸基Iを共有結合して含有してもよい。
【0022】
ポリイソブテンを、少なくとも二官能性である、即ちこれから少なくとも2個のポリマー鎖を生じることができる開始剤分子の存在で、リビング陽イオン重合の条件下で製造する場合には、nは、例えば1より大きい数を表す。
【0023】
本発明でC〜C20−アルキルは、線状又は枝分れアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル又はエイコシル並びにその位置異性体を表す。C〜C24−アルキルは更に、ヘンエイコシル、ドコシル、トリコシル及びテトラコシル並びにその位置異性体を表す。アルキル基は場合により、シクロアルキル、ハロゲン、OR、SR及びNR(その際、R及びRは相互に無関係にH又はC〜C−アルキルを表す)から選択した少なくとも1個の基により置換されている。アルキル基は有利には基SRにより置換されてはいない。これは特に、本発明によるポリイソブテンホスホン酸を動力燃料−及び滑剤組成物中に使用する場合に言える。
【0024】
少なくとも1個の原子団O、S及び/又はNR11により中断されているC〜C4000−アルキルも、シクロアルキル、ハロゲン、OR、SR及びNRから選択した少なくとも1個の基により置換されていてよいが、その際、R及びRは相互に無関係にH又はC〜C−アルキルを表す。C〜C4000−アルキルは有利には原子団Sによって中断されていない。更にこれは有利には基SRによって置換されてはいない。これは特に、本発明によるポリイソブテンホスホン酸を燃料−及び滑剤組成物中に使用する場合に言える。
【0025】
〜C4000−アルキルは、有利には式IV
【0026】
【化5】

[式中、R、R、R及びR10は相互に無関係にH又はC〜C−アルキルを表し、XはO、S又はNR11を表し、YはH、OR12、SR12又はNR1213を表し、R11はH又はC〜C−アルキルを表し、R12及びR13は相互に無関係にH又はC〜C−アルキルを表し、kは1〜6の数を表し、mは0〜5の数を表すが、その際k及びmの合計は1〜6でありかつlは1〜1000の数を表す]の基を表す。
【0027】
アルキレン基(CR(CR10は、例えば1,2−エチレン、1,2−プロピレン、1,3−プロピレン、1,2−ブチレン、2,3−ブチレン又は1,4−ブチレンを表す。有利には1,2−エチレン又は1,2−プロピレン、特に1,2−エチレンを表す。
【0028】
k及びmは有利には1〜3の数、特に1を表す。
【0029】
k及びmの合計は、有利には2〜4の数、特に有利には2を表す。
【0030】
lは有利には1〜300、特に有利には1〜40の数、特に1〜4の数を表す。
【0031】
本発明でC〜C−アルキルは、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソブチル又はt−ブチルを表し、C〜C−アルキルは更に、ペンチル、ヘキシル及びその位置異性体を表す。
【0032】
2個のアルキル基R及びRがそれらが結合している窒素原子と一緒になって環を形成する場合には、例えばピロリジン、ピペリジン−、ピペラジン−又はモルホリン環を表す。
【0033】
アリールは有利には、場合により置換されたフェニル基又はナフチル基を表す。好適な置換基は例えばハロゲン、C〜C−アルキル及びC〜C−アルコキシである。
【0034】
アラルキルは、有利にはベンジル又は2−フェニルエチルを表す。
【0035】
シクロアルキルは有利には、C〜C10−シクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル又はシクロデシル、特に有利にはC〜C−シクロアルキルを表す。シクロアルキル基は、O、S及び/又はNR11から選択した少なくとも1個の原子団により中断されておりかつ/又はC〜C20−アルキル、ハロゲン、OR、SR及びNRから選択した少なくとも1個の基により置換されていてよい。少なくとも1個の原子団O、S及び/又はNR11により中断されたシクロアルキルは、例えばピロリジル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、オキサゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル又はモルホリニルを表し、その際、シクロアルキル基はもちろん環ヘテロ原子を介して基R又はRの酸素−、硫黄−又は窒素原子と結合していてはならない。有利にはシクロアルキル基は原子団Sにより中断されてはいない。更にこの基は有利には基SRにより置換されていない。これは特に、本発明によるポリイソブテンホスホン酸を動力燃料−及び滑剤組成物中に使用する場合に言える。
【0036】
ハロゲンは有利にはCl又はBr、特に有利にはClを表す。
【0037】
本発明によるポリイソブテンホスホン酸の塩中で、R及び/又はRは基On+1/n又はSn+1/nを表し、その際、Mはカチオンを表し、nは荷電数を表す。
【0038】
好適なカチオンは、アルカリ金属、例えばリチウム、ナトリウム又はカリウム、アルカリ土類金属、例えばマグネシウム又はカルシウム及び重金属、例えば鉄、亜鉛又は銀のカチオンであり、更にアンモニウムカチオン[NR[式中、RからRは相互に無関係にC〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ又はアリールを表す]である。有利なカチオンはアルカリ−及びアルカリ土類金属カチオン並びにアンモニウムカチオンである。
【0039】
本発明によるポリイソブテンホスホン酸中でR及びRは有利にはHを表す。更にR及びRは有利には場合により置換されたC〜C10−アルキルを表す。更にR及びRは、式中、XがOを表しかつYがOR12を表すか又は式中XがNR11を表しかつYがNR1213を表す式IVの基、即ちポリエーテル−又はポリアミン基を表す。特に有利な基IV中で、R及びRはHを表し、R及びR10はH又はC〜C−アルキル、特にH又はメチル、特にはHを表す。k及びmは有利には1〜3の数、特に1を表す。k及びmの合計は有利には2〜4の数である。lは有利には1〜300、特に有利には1〜40、特には1〜10及び特別には1〜4の数を表す。
【0040】
有利なポリエーテル基は、式IVa
【0041】
【化6】

[式中、lは1〜1000、有利には1〜300、特に有利には1〜40、特には1〜10及び更に特には1〜4の数を表し、R12は、H又はC〜C−アルキル、特にH、メチル又はエチルを表す]のようなものである。
【0042】
有利な基IVaは相応してジ−、トリ−、テトラ−又はペンタエチレングリコール基並びに1000個までの反復単位を有するポリエチレングリコール基である。このような高ポリエチレングリコール基の例は、BASF−AGのPluronic−、Pluriol−及びLutensol−商標から誘導される基である。
【0043】
更にC〜C4000−アルキル基として、モノマーとしてアルキレンオキシド及びアルケンのブロックコポリマーから誘導されるポリエーテル含有基が好適である。好適なアルキレンオキシドは例えばエチレンオキシド及びプロピレンオキシドである。好適なアルケンは例えばエチレン、プロピレン及びイソブテンである。
【0044】
有利なポリアミン基は、式IV.b
【0045】
【化7】

[式中、lは1〜1000、有利には1〜300、特に有利には1〜40及び特別には1〜4の数を表し、R11はH又はC〜C−アルキル、有利にはH又はメチル、特にHを表しかつR12及びR13は相互に無関係にH又はC〜C−アルキル、特にHを表す]のようなものである。
【0046】
12及びR13が同じ基を表すのが特に有利である。
【0047】
有利な基NR中で、R及びRは同じ基を表すか又は基R及びRの一つがHを表し、もう一つの基がHとは異なる基を表す。Hとは異なる有利な基は置換されていないか又は基OR又はNRにより置換されたC〜C10−アルキル又は式IV.bの基である。
【0048】
特に有利なポリイソブテンホスホン酸中で、基R及びRは相互に無関係に有利にはハロゲン、OH、NH、OR[式中、RはC〜C20−アルキルを表す]、NR[式中、RはH又はC〜C20−アルキルを表し、RはC〜C20−アルキルを表す]又は式V.a又はV.b
【0049】
【化8】

[式中、l、R12及びR13は各々基IV.a及びIV.bで定義したものを表す]の基を表す。
【0050】
特に有利な基R及びRは、ハロゲン、OH、NH、OR又はNR[式中、Rは、NH、ジメチルアミン、ジエチルアミン、OH、メトキシ又はエトキシから選択した基により置換されているC〜C10−アルキル、特にC〜C−アルキルを表し、RはHを表すか又はRと同じものを表す]又は式V.a又はV.bの基を表す。
【0051】
本発明によるポリイソブテンホスホン酸の塩も特に有利である。
【0052】
本発明によるポリイソブテンホスホン酸中のポリイソブテン基は有利には、数平均分子量100〜1000000、特に有利には100〜100000、特に200〜60000及び特別には200〜40000を有する。特定の分子量を有するポリイソブテン基の選択は、その都度の本発明によるポリイソブテンホスホン酸の使用媒体及び使用目的に合わせ、個々の場合に当業者により決められる。
【0053】
両親媒性物質は通常極性頭部基及び脂肪親和性尾部から成る。所定の頭部基(主として式Iの基に相応する)の場合に、化合物の脂肪親和性は主として頭部基(主としてポリイソブテン基に相応する)により決まる。これらの基の分子量は化合物のHLB値(Hydrophilic Lipophilic Balance)に相関し、従って表面変性用の詳細な使用に関する適性を決める。HLBは、界面活性物質の水溶性又は油溶性及びエマルジョンの安定性の尺度である。通常HLB値3〜8を有する物質はW/O型エマルジョン中に使用するために好適であり、HLB値8.5〜11を有するようなものはW/O型マイクロエマルジョン中に、HLB値7〜9を有するようなものは湿潤剤として、HLB値8〜18を有するようなものはO/Wエマルジョン中に、HLB値13〜15を有するようなものは洗浄剤として及びHLB12〜18を有するようなものは溶解助剤として使用するために好適である(Roempp Chemie−Lexikon、第9版、G.Thieme Verlag、1812頁及びその中に引用の文献参照)。本発明によるポリイソブテンホスホン酸の金属用腐蝕防止剤として又は塩基性表面、例えば石膏、セメント又は炭酸カルシウムの疎水化用の使用には、HLB値に対する厳格な要求はないので、この場合に数平均分子量500〜40000を有するポリイソブテン基が好適である。ポリイソブテンホスホン酸を洗浄剤又は分散剤として燃料−又は滑剤組成物中に使用すべきである場合には、狭いHLB範囲を守るべきであり、相応して数平均分子量100〜3000を有するポリイソブテン基が好適である。この分子量範囲は乳化剤として例えばW/O型エマルジョン、O/W型エマルジョン又はマイクロエマルジョン中に使用するために好適である。
【0054】
更に、所定の頭部基で尾部基の分子量は粘度と相関する。通常、重合同族体系内でポリマーのより高い分子量は、それが含有される溶液のより高い粘度を生じる(Roempp Chemie−Lexikon、第9版、G.Thime Verlag、4939頁及びその中に引用の文献参照)。相応して本発明によるポリイソブテンホスホン酸の使用媒体との容易な混合性又は加工性が所望される使用、従って例えば印刷分野で、滑剤組成物中で、プラスチック添加物として又は単分子層中で被覆材料を疎水性化するため、本発明によるポリイソブテンホスホン酸の特定の使用に際して、低い粘度が所望される使用のためには、更に低い分子量、特にM100〜10000、有利には100〜1000を有するポリイソブテン基を選択する。例えば、本発明によるポリイソブテンホスホン酸をエマルジョン、分散液中で又は塩基性無機材料、例えば石膏、セメント又は炭酸カルシウムの疎水化用の特定の使用で中程度の粘度が所望される場合には、特にM500〜60000、有利には>1000〜50000、例えば>1000〜10000を有するポリイソブテン基を選択する。使用媒体の高い粘度が所望される場合には、M2300〜1000000、有利には>10000〜100000を有するポリイソブテン基が好適である。好適及び有利なポリイソブテン基のその他の特徴に関しては下記態様を参照にされたい。
【0055】
本発明によるポリイソブテンホスホン酸は、有機ホスホン酸誘導体を製造するための公知技術の常用の方法により得られる。このような方法は、例えばHouben−Weyl、Methoden der organischen Chemie、第4版、第XII/1巻、338〜619頁(1963)及び第E2巻、300〜418頁(1982)に記載されている。これら及びその中に引用の文献は参考までに本発明に含む。
【0056】
本発明のもう一つの目的は、本発明によるポリイソブテンホスホン酸の製法であり、その際、(a)ポリイソブテンを五ハロゲン化燐と反応させ、(b1)工程(a)で得られた反応生成物をハロゲン捕集剤と反応させかつ(c1)工程(b1)で得られた反応生成物を場合により水、少なくとも1種のアルコール、少なくとも1種のチオール及び/又は少なくとも1種のアミンと反応させるか又は(b2)工程(a)で得られた反応生成物を水、少なくとも1種のアルコール、少なくとも1種のチオール及び/又は少なくとも1種のアミンと反応させる。
【0057】
工程(c1)又は(b2)の反応でチオールを使用しないのが有利である。
【0058】
有利な五ハロゲン化燐は、塩化燐(V)及び臭化燐(V)であり、その際塩化燐(V)が有利である。
【0059】
工程(a)で五ハロゲン化燐はそれ自体反応で使用することができる。しかし反応を比較的穏和な条件で行うべきである場合には、特に塩化燐(V)をその場で塩化燐(III)及び塩素から製造することができる。このために例えばポリイソブテン及び塩化燐(III)を前装入し、塩素ガスを導入するが、その際漸次塩化燐(V)が生成する。
【0060】
ポリイソブテンとしては、全ての慣用の市販のポリイソブテンを使用することができる。
【0061】
概念“ポリイソブテン”には本発明でオリゴマーのイソブテン、例えば二量体、三量体又は四量体のイソブテンが属す。
【0062】
本発明でポリイソブテンとはまた、有利には少なくとも60質量%、特に有利には少なくとも80質量%、更に有利には少なくとも90質量%及び特には少なくとも95質量%のイソブテンを共重合して含有する陽イオン重合により得られる全てのポリマーである。更にポリイソブテンは、イソブテンを陽イオン重合条件下で共重合可能であるその他のブテン異性体、例えば1−又は2−ブテン並びにその異なるオレフィン性不飽和モノマーを共重合して含有することができる。
【0063】
従って本発明による方法用の出発物質として好適であるポリイソブテン製造用のイソブテン原料としては、イソブテン自体並びにイソブテン含有のC−炭化水素流、例えばC−ラフィネート、イソブタン脱水素化からのC分、スチームクラッカーからのC分、FCCクラッカー(FCC:Fluid Catalyzed Cracking)が、その中に含有される1,3−ブタジエンが完全に除去されている限り、好適である。特に好適なC−炭化水素流は通常500ppmより少ない、有利には200ppmより少ないブタジエンを含有する。原料としてC分を使用する場合にはイソブテンとは異なる炭化水素が不活性溶剤の役割を引き受ける。
【0064】
共重合性モノマーとしては、ビニル芳香族、例えばスチレン及びα−メチルスチレン、C〜C−アルキルスチレン、例えば2−、3−及び4−メチルスチレン、並びに4−t−ブチルスチレン、C原子5〜10個を有するイソオルフィン、例えば2−メチルブテン−1、2−メチルペンテン−1、2−メチルヘキセン−1、2−エチルペンテン−1、2−エチルヘキセン−1及び2−プロピルヘプテン−1が挙げられる。コモノマーとしては更にシリル基を有するオレフィン、例えば1−トリメトキシシリルエテン、1−(トリメトキシシリル)プロパン、1−(トリメトキシシリル)−2−メチルプロペン−2、1−[トリ(メトキシエトキシ)シリル]エテン、1−[トリ(メトキシエトキシ)シリル]プロペン及び1−[トリ(メトキシエトキシ)シリル]−2−メチルプロペン−2が挙げられる。
【0065】
好適なポリイソブテンは、慣用の陽イオン又はリビング陽イオン重合により得られる全てのポリイソブテンである。しかし、低反応性ポリイソブテンとは末端に配置された二重結合の含量により異なる、いわゆる“反応性”ポリイソブテンが有利である。反応性ポリイソブテンは、ポリイソブテン巨大分子の全数に対して少なくとも50モル%の末端に配置された二重結合を有することによって、低反応性とは異なる。反応性ポリイソブテンは、ポリイソブテン巨大分子の全数に対して少なくとも60モル%及び特に有利には少なくとも80モル%の末端に配置された二重結合を有するのが有利である。末端に位置する二重結合は、ビニル二重結合[−CH=C(CH](β−オレフィン)並びにビニリデン二重結合[−CH−C(=CH)−CH](α−オレフィン)であってよい。有利な反応性ポリイソブテンは、ポリイソブテン巨大分子の全数に対して少なくとも60モル%、特に有利には少なくとも70モル%及び特には75モル%が末端に配置された二重結合がビニリデン二重結合(α−オレフィン)であるようなものである。しかし末端ビニル二重結合(β−オレフィン)を有するポリイソブテンも好適である。
【0066】
好適なポリイソブテンは例えばBASF−AGのGlissopal商標、例えばGlissopal550、Glissopal100及びGlissopal2300並びにBASF−AGのOppanol商標、例えばOppanolB10、B12、B15、B7及びBVである。
【0067】
好適なポリイソブテンの製法は、例えばDE−A2702604、EP−A145235、EP−A481297、EP−A671419、EP−A628575、EP−A807641及びWO99/31151から公知である。イソブテン又はイソブテン含有モノマー混合物からリビング陽イオン重合により製造されるポリイソブテンは、例えばUS4946899、US4327201、US5169914、EP−A206756、EP−A265053、WO02/48216及びJ.P.Kennedy、B.Ivan、“Designed Polymer by Carbocationic Macromolecular Engineering”、Oxford University Press、New York 1991に記載されている。これら及びポリイソブテンが記載されているその他の文書も参考までに全て本明細書に含まれる。
【0068】
重合法により得られるポリイソブテンの多分散性指数PDI(=M/M)は約1.05〜10である。リビング陽イオン重合からのポリマーは通常PDI1.05〜2.0を有する。本発明による方法で使用されるポリイソブテンの分子量分布は本発明によるポリイソブテン燐酸の分子量分布に直接影響する。本発明によるホスホン酸の使用目的に応じて、低い、中程度又は広い分子量分布を有するポリイソブテンを選択する。通常化合物又は基のPDI値は所定のMでその粘度と相関する。従って、使用媒体と容易な混合性又は加工性が所望され、従って低い粘度が要求される使用のためには、有利には≦3.0のPDIを有するポリイソブテン基を選択する。これに対して塗料の形の表面活性変性用には、屡々比較的高い粘度が所望され、従ってこの場合には1.5〜10の範囲のPDIを有するポリイソブテン基が有利である。狭い分子量分布(PDI約1.05〜約2.0)のポリイソブテン基を有するポリイソブテンホスホン酸誘導体は、例えば洗浄剤及び分散剤として動力燃料−及び滑剤組成物中に、添加物として印刷系、ポリマー又は単層中で疎水化用に使用するために好適である。中程度の分子量分布(PDI約1.6〜約2.5)を有するポリマーは、例えば特定のエマルジョン又は分散液中で使用するために並びに塩基性材料、例えば炭酸カルシウム(モルタルの形)、石膏又はセメントの疎水化用に使用するために好適であり、他方広い分子量分布(PDI約2.1〜約10)を有するポリマーは、腐蝕防止剤として並びに塩基性材料の疎水化用に使用するために好適である。
【0069】
ポリイソブテンと五ハロゲン化燐との反応は有利には好適な溶剤中で行う。好適な溶剤は、所定の反応条件下で不活性であり、その中に反応成分が少なくとも部分的に可溶性である中性溶剤である。これには、脂肪族炭化水素、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン及びシクロオクタン、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン及びキシレン、塩素化炭化水素、クロロメタン、塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジ−及びトリクロロエタン及びクロロベンゼン、エーテル、例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル及びt−ブチルメチルエーテル、環状エーテル、例えばテトラヒドロフラン及びジオキサン、ケトン、例えばアセトン及びエチルメチルケトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、CS及び塩化燐(III)並びにこれら溶剤の混合物が挙げられる。
【0070】
反応は有利には温度−20℃から溶剤の沸点までの温度で、有利には0〜100℃及び特には10〜80℃で行う。
【0071】
本発明による方法は、出発生成物としてハロゲン化燐(V)により容易に攻撃される末端ビニル−又はビニリデン−二重結合(α−オレフィン)を有するポリイソブテン用に好適である。しかし、比較的厳しい反応条件下では、β位に二重結合(β−オレフィン)を有するポリイソブテン又は飽和末端基を有するポリイソブテンの反応でももちろん可能である。
【0072】
ポリイソブテン及び五ハロゲン化燐が反応して、通常先ずポリイソブテンオルトホスホン酸テトラハロゲニドに成る。オルトホスホン酸テトラハロゲニドは通常加水分解に敏感であり、従ってその生成及び単離には費用がかさむ。
【0073】
従って本発明による方法の第1の有利な態様では、ポリイソブテン及び五ハロゲン化燐の反応の生成物を好適なハロゲン捕集剤と反応させる(工程b1)。
【0074】
ハロゲン捕集剤とは、本発明ではオルトホスホン酸テトラハロゲニドと反応して燐酸ジハロゲニド、即ちホスホン酸基I中でR及びRがハロゲンを表すような本発明によるポリイソブテンホスホン酸に成るような化合物のことである。
【0075】
有利なハロゲン捕集剤は、水、無機塩基、アルコール、カルボン酸、無水カルボン酸、ホスホン酸、五酸化燐及び二酸化硫黄である。
【0076】
ハロゲン捕集剤として水を使用する場合には、これを有利には、オルトホスホン酸テトラハロゲニドのホスホン酸ジハロゲニドへの反応に関する化学量論的量で使用し、反応をホスホン酸ジハロゲニドの段階で止めるために、反応を可能な限り低い温度かつ可能な限り短い時間で行う。反応温度は、有利には約0〜10℃である。特に有利には氷水を使用する。反応時間は特にバッチの大きさに左右され、当業者は個々の場合に判断すべきである。これに対して比較的長い反応時間によって、特に同じ加熱下では、反応生成物として遊離ポリイソブテンホスホン酸(R、R=OH)が生じる場合が多い。
【0077】
ハロゲン捕集剤としてアルコールを使用する場合には、これを有利には、オルトホスホン酸テトラハロゲニドのホスホン酸ジハロゲニドへの反応に関する有利な化学量論的量で使用する。この場合にも反応を有利には低い温度、即ち−20〜40℃、特に有利には−10℃から室温の範囲の温度でかつ比較的短い反応時間で行う。これに対して比較的長い反応時間は、特にアルコールの過剰な使用かつ/又は同じ時間の加熱で、ポリイソブテンホスホン酸モノハロゲニド−モノエステル(R=ハロゲン;R=OR、R≠H)である又はポリイソブテンホスホン酸ジエステル(R、R=OR、R≠H)を生じる場合が多い。
【0078】
好適なアルコールは、炭素原子1〜10個及びヒドロキシ基1〜4個を有するようなもの、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ノナノール、デカノール及びその位置異性体、更にエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールである。更に式VI
【0079】
【化9】

[RからR10、R12、k、l及びmは式IVで定義したものを表す]のポリエーテルポリオールが好適である。有利には、R及びRはHを、R及びR10はH又はC〜C−アルキル、特にH又はメチル及び特にはHを表す。k及びmは有利には1〜3の数及び特には1を表す。lは有利には1〜300、特に有利には1〜40、特には1〜10、特別には1〜4の数を表す。特に有利なポリエーテルポリオールは、ジ−、トリ−、テトラ−及びペンタエチレングリコール(m、k=1、l=1〜4、RからR10並びにR12=H)並びにそのモノメチル−又はモノエチルエーテル(R12=メチル又はエチル)、更に反復単位1000個までを有する高級ポリエチレングリコール又はそのモノメチル−又はエチルエーテルである。このための例は、BASF−AGのPluronic−、Pluriol−又はLutensol−商標である。
【0080】
オルトホスホン酸テトラハロゲニドとカルボン酸又は無水カルボン酸の反応によって通常は先ずホスホン酸ジハロゲニドの段階までしか進まない。しかしジハロゲニドを更に低級脂肪酸、例えばC〜C10−カルボン酸と反応させて、遊離ホスホン酸にすることができる。これに対して無水カルボン酸との反応は通常ホスホン酸ジハロゲニドの段階に留まる。
【0081】
好適なカルボン酸は、炭素原子1〜10個を有するモノ−及びジカルボン酸、例えば蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、バレリアン酸、カプロン酸、エナント酸、カプリール酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、蓚酸、マロン酸及び琥珀酸である。好適な無水カルボン酸は、前記カルボン酸の無水物、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸及び無水琥珀酸であり、その際無水酢酸が有利である。
【0082】
オルトホスホン酸テトラハロゲニドと、二酸化硫黄、五酸化燐及びポリイソブテン基に関してポリイソブテンオルトホスホン酸テトラハロゲニドに相応するポリイソブテンホスホン酸から選択したハロゲン捕集剤との反応により、ハロゲン化チオニル(二酸化硫黄から)、オキシハロゲン化燐(五酸化燐から)又はハロゲン化水素(オルトホスホン酸テトラハロゲニドとホスホン酸との間のハロゲン交換で)の同時生成下で、主としてホスホン酸ジハロゲニドだけが生じる。特に相応する塩化物、即ち塩化チオニル、オキシ塩化燐及び塩化水素はそれらの生成経過中で混合物から例えば蒸留により除去することができ、それによって反応平衡に有利な影響を与えることができる。
【0083】
ポリイソブテンオルトホスホン酸テトラハロゲニドとハロゲン捕集剤の反応は有利には、ホスホン酸ジハロゲニドの段階まで行う。相応して有利なハロゲン捕集剤は、無水カルボン酸、特に無水酢酸、二酸化硫黄、五酸化燐及びポリイソブテン基に関してはポリイソブテンオルトホスホン酸テトラハロゲニドに相応してポリイソブテンホスホン酸である。これらのハロゲン捕集剤を使用する場合には、ハロゲン捕集剤から生成される生成物、即ちカルボン酸ハロゲン化物、ハロゲン化チオニル、オキシハロゲン化燐又はハロゲン化水素を反応経過中に連続的に例えば蒸留により除去し、反応平衡に有利な影響を与えることが有利である。特に二酸化硫黄又は無水カルボン酸、特に二酸化硫黄又は無水酢酸を使用する。
【0084】
ハロゲン捕集剤として無水カルボン酸、二酸化硫黄又は五酸化燐を使用する場合には、オルトホスホン酸テトラハロゲニド対ハロゲン捕集剤のモル比は有利には1:1〜1:10、特に有利には1:1〜1:5、特には1:1〜1:3である。
【0085】
ハロゲン捕集剤としてポリイソブテン基に関してポリイソブテンオルトホスホン酸テトラハロゲニドに相応してポリイソブテンホスホン酸を使用する場合には、オルトホスホン酸テトラハロゲニド対ハロゲン捕集剤のモル比は有利には1:1〜1:10、特に有利には1:1〜1:5、特には1:1〜1:2である。
【0086】
前記ハロゲン捕集剤は混合物で使用することもできる。
【0087】
ポリイソブテンオルトホスホン酸テトラハロゲニドをハロゲン捕集剤と反応させるために、ポリイソブテンと五ハロゲン化燐との反応からの反応混合物に、有利には生じたオルトホスホン酸テトラハロゲニドを精製又は単離せずに、ハロゲン捕集剤を加えるが、その際添加は連続的にか又は少量宛行うことができる。連続的添加が有利である。ハロゲン捕集剤の添加及びその反応は、オルトホスホン酸テトラハロゲニドの製造と同じ温度で行うが、その際添加−/反応温度はその都度のハロゲン捕集剤に左右される。従って、反応をホスホン酸ジハロゲニドの段階で止めるべきである場合には、添加及び水又はアルコールとの反応は、有利には低い温度で、水の場合には約0〜10℃の温度範囲で、アルコールの場合には有利には−20〜40℃の温度範囲で行う。無水カルボン酸、二酸化硫黄、五酸化燐又は相応するポリイソブテンホスホン酸を使用する場合は、比較的高い添加−及び/又は反応温度、例えば0℃から使用される溶剤の沸点までの範囲、有利には室温から溶剤の沸点まで、特に有利には室温から100℃まで、特別には室温から80℃までの温度を選択してもよい。
【0088】
引き続き反応混合物を常法により後処理することができる。従って、例えば過剰のハロゲン捕集剤又は反応経過中にまだ除去されてない反応生成物、同じく場合により使用した溶剤を蒸留又は抽出により除去することができる。生成したポリイソブテンホスホン酸ジハロゲニド又は場合により生じたこれとは異なるホスホン酸誘導体を例えば浸漬、抽出又は濾過及び場合により例えば硫酸ナトリウム又は硫酸マグネシウムを用いる乾燥により精製する。
【0089】
ハロゲン捕集剤との反応により得られるポリイソブテンオルトホスホン酸テトラハロゲニドの反応生成物、特にホスホン酸ジハロゲニド、しかし場合により生成したホスホン酸モノアルキルエステルモノハロゲニド、ホスホン酸ジアルキルエステル又は遊離ホスホン酸を、引き続き場合により水、少なくとも1種のアルコール、少なくとも1種のチオール及び/又は少なくとも1種のアミンと反応させることによって更に誘導する(工程(c1))。
【0090】
ポリイソブテンホスホン酸ジハロゲニドとアルコールとの反応により、反応成分のモル比及び反応条件に応じて異なる生成物が得られる。従って、ホスホン酸ジハロゲニドとアルコールとの反応により、その際生じるハロゲン化水素を同時に除去することなしに、ホスホン酸モノエステルが得られることが多い。これに対してホスホン酸ジハロゲニドをアルコラートと反応させるか又はアルコールを第三アミンの存在で使用する場合には、特にアルコール又はアルコラートを過剰に使用する場合には、相応するホスホン酸−モノハロゲニド−モノエステルが得られることが多い。ホスホン酸ジハロゲニドを過剰のアルコールと使用し、同時にその際遊離するハロゲン化水素を除去するか又はこれを好適な酸捕集剤と結合させると、通常相応するホスホン酸ジエステルが生成する。
【0091】
混合したホスホン酸ジエステル、即ち異なるアルコールのジエステルを生成すべきである場合には、有利には先ず第1のアルコールとの反応によりホスホン酸モノエステル又はホスホン酸モノハロゲニド−モノエステルを製造し、これを第2のアルコールとの二次反応で反応させてジエステルにする。第1のアルコールを用いて製造したジエステルの第2のアルコールとの反応による部分エステル化も可能である。
【0092】
好適なアルコールは、ハロゲン捕集剤として列挙したアルコール、更に炭素原子11〜20個及びヒドロキシ基1〜4個、有利には1〜2個及び特にヒドロキシ基1個を有するアルコールである。このための例は、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール及びエイコシルアルコール並びにその位置異性体である。有利なアルコールに関してハロゲン捕集剤で行った記載はここでも該当するが、その際式VI.aのポリエーテルポリオールが特に有利である。式中、R及びRがHを表し、R及びR10がH又はC〜C−アルキル、特にH又はメチル及び特にHを表し、k及びmが1〜3の数、特に1を表し、lが1〜300の数、特に有利には1〜40、特には1〜10及び特別には1〜4を表し、R12がH、メチル又はエチル及び特にメチルを表すポリエーテルポリオールが有利である。
【0093】
更に炭素原子2〜20個、アミノ基1〜3個及びヒドロキシ基1〜3個を有するアミノアルコールが好適である。有利にはアミノアルコールはヒドロキシ基及びアミノ基を有することができる。その際第三アミノ基が有利である。好適なアミノアルコールの例は、2−アミノエタノール、2−N,N−ジメチル−及び2−N,N−ジエチルアミノエタノール、3−アミノプロパノール、3−N,N−ジメチル−及び3−N,N−ジエチルアミノプロパノール及びその高級同族体である。
【0094】
メルカプトアルコール、特にチオ基がエーテル化されて存在するようなものも好適である。好適なメルカプトアルコールの例は、2−メルカプトエタノール、2−(メチルメルカプト)−エタノール、2−(エチルメルカプト)−エタノール、3−メルカプト−1−プロパノール、3−メルカプト−2−プロパノール、3−(メチルメルカプト)−1−プロパノール、3−(メチルメルカプト)−2−プロパノール、3−エチル−メルカプト)−1−プロパノール、3−(エチルメルカプト)−2−プロパノール、ビス−(2−ヒドロキシエチル)−スルフィド等である。しかし有利にはメルカプトアルコールを使用しない。
【0095】
更に芳香族ヒドロキシ化合物、例えば場合により置換されたフェノール、ナフトール又はベンジルアルコールが好適である。好適な置換された芳香族アルコールは、ハロゲン、C〜C−アルキル及びC〜C−アルコキシから選択した置換基1〜3個を有するようなものである。
【0096】
アルコールの代わりに相応するアルコラートを使用することもできる。好適なアルコラートは相応するアルカリ金属−、アルカリ土類金属−、重金属−及アンモニウムアルコラートであり、その際、アルカリ金属アルコラート、特にナトリウム−又はカリウムアルコラート並びにアンモニウムアルコラートが有利である。
【0097】
好適な第三アミンは脂肪族アミン、例えばトリエチルアミン、トリプロピルアミン又はエチルジイソプロピルアミン、芳香族アミン、例えばN,N−ジメチルアニリン及び複素環式アミン、例えばピロール、ピリジン、2,6−ジメチルピリジン、2,6−t−ブチルピリジン、キノリン、DBU及びDBNである。
【0098】
好適な酸捕集剤は、特に前記した第三アミン、更に第二アミン、例えばジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、N−メチルアニリン及びピペリジン並びに無機塩基、例えばアルカリ−及びアルカリ土類水酸化物、アルカリ水素炭酸塩及びアルカリ炭酸塩である。純粋なモノエステル、モノエステルモノハロゲニド又はジエステルを得るべきである場合には、酸捕集剤として第二アミンを使用しないのが有利である。それはこれが所定の反応条件下でホスホン酸誘導体、特にホスホン酸ジハロゲニド、ホスホン酸モノエステルモノハロゲニド又はホスホン酸モノエステルと反応して例えばホスホン酸モノエステルモノアミド及びその他の反応生成物になる恐れがあるからである。
【0099】
反応は有利には好適な溶剤中で行う。中性溶剤、例えば脂肪族炭化水素、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン又はシクロオクタン、塩素化脂肪族炭化水素、例えば塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジ−又はトリクロルエタン、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン又はクロロベンゼン、エーテル、例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル又はt−ブチルメチルエーテル、環状エーテル、例えばテトラヒドロフラン又はジオキサン、ケトン、例えばアセトン又はメチルエチルケトン、カルボン酸誘導体、例えば酢酸エチル、酢酸メチル又はN,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド又はこれら溶剤の混合物が好適である。有利な溶剤は脂肪族炭化水素、特にヘキサン、塩素化脂肪族炭化水素、特に塩化メチレン及びクロロホルム、芳香族炭化水素、特にトルエン及び環状エーテル、特にテトラヒドロフラン並びにその混合物である。しかし、所定の反応条件下で液体であり、反応終了後に除去することができる限り、アルコール自体も溶剤として好適である。このようなアルコールと前記溶剤との混合物も好適である。
【0100】
ホスホン酸ジハロゲニドとアルコールとの反応は有利には−10℃から反応混合物の沸点までの温度、特に有利には−10℃〜30℃の温度で行う。
【0101】
ホスホン酸ジハロゲニド対使用されるアルコールのモル比は、モノエステル、ジエステル又は混合ジエステルを製造すべきであるか否かによる。モノエステル又は混合ジエステルを製造すべきである場合には、ジハロゲニド及びアルコールを有利には1:0.8〜1.5、特に有利には1:0.8〜1.2及び特には約1:1のモル比で使用する。同じアルコールのジエステルを製造すべきである場合には、ジハロゲニド対アルコールのモル比は有利には1:1.8〜3、特に有利には1:1.8〜2.5、特別には約1:2である。
【0102】
ホスホン酸ジハロゲニドとアルコールの反応は、例えばジハロゲニド及び場合により第三アミン又はそれとは異なる酸捕集剤を溶剤中に前装入し、引き続きアルコールを加えるようにして行う。反応終了後、反応混合物を常法により、場合によりこれらの反応生成物の濾過後に、例えば溶剤、場合により過剰のアルコール及び/又は酸捕集剤の蒸留又は抽出による除去によって後処理する。
【0103】
ホスホン酸ジハロゲニドは、例えばジハロゲニドを先ずアルコールと前記したようにして反応させてホスホン酸モノエステルモノハロゲニドにするか又は場合により更にホスホン酸モノエステルにし、モノエステルハロゲニド又はモノエステルをアミンと反応させるか又はこれとは反対にジハロゲニドを先ずアミンと前記したようにして反応させてホスホン酸モノアミドモノハロゲニドにするか又は場合により更に反応させてホスホン酸モノアミドにし、引き続き反応生成物をアルコールと反応させてホスホン酸モノエステルモノアミドにすることによって、更にアルコール及びアミンと反応させてホスホン酸モノエステルモノアミドにすることができる。代わりに、ジハロゲニドをアルコール及びアミンから成る混合物と反応させることもできる。好適及び有利なアルコール、アミン、反応成分比及び反応条件は既に記載したものを、前記及びアミンに関しては下記を参照にされたい。
【0104】
同様に、ホスホン酸ジハロゲニドをアルコール及びチオールと反応させて、混合ホスホン酸−(O,S)−ジエステルに変えることができる。好適及び有利なチオールに関しては下記を参照にされたい。しかし有利にはチオールは使用しない。
【0105】
ポリイソブテンホスホン酸ジハロゲニドを2当量の第二アミン又は第一芳香族アンモニウム塩の塩酸塩と反応させることにより、通常相応するポリイソブテンホスホン酸−モノハロゲニド−モノアミドが得られる。これに対して4当量の第二アミンとの反応によって、通常相応するホスホン酸ジアミドが生じる。第一アミン又はアンモニアの使用によって、ホスホン酸イミドも生成することが多いが、通常イミド生成はアミン又はアンモニアを過剰に使用することによって阻止することができる。混合アミド、即ち異なるアミンのアミドは例えばポリイソブテンホスホン酸ジハロゲニドを先ず第一のアミンと反応させて相応するポリイソブテンホスホン酸−モノハロゲニド−モノアミドにし、これを引き続き第二のアミンと反応させて混合ジアミドにすることによって得られる。
【0106】
好適な第一アミンは炭素原子1〜20個を有するモノ−並びにポリアミンである。第一アミンは、式中基R、R又はRの2個がHであるアミンNRである。
【0107】
好適な第一モノアミンの例は、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ノナデシルアミン、エイコシルアミン並びにシクロオクチルアミン及びシクロデシルアミンである。
【0108】
ヒドロキシ−又はアルコキシ−置換アミン、例えば2−ヒドロキシエチルアミン、2−メトキシエチルアミン、2−エトキシエチルアミン、3−ヒドロキシプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン等も好適である。
【0109】
有利な第一モノアミンは、エチルアミン、ブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン及び2−ヒドロキシエチルアミンである。
【0110】
第一芳香族アミン、例えばアニリンも好適である。
【0111】
好適な第一ポリアミンは式VI.b
【0112】
【化10】

[式中RからR13並びにk及びmは式IVで定義したものであり、lは0〜1000の数である]のようなものである。
【0113】
及びRは有利にはHを表す。R及びR10は有利にはH又はC〜C−アルキル、特にはH又はメチル、更に特にはHを表す。R11は、有利にはHを表す。k及びmは有利には1〜3の数、特に1を表す。lは有利には0〜300、特に有利には0〜40、特には0〜10、特別には0〜4の数を表す。有利にはR12及びR13はHを表す。特に有利な第一ポリアミンはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン及びペンタエチレンヘキサアミン並びに3−N,N−ジメチルアミノプロピルアミン及び3−N,N−ジエチルアミノプロピルアミンである。
【0114】
好適な第二アミンは、炭素原子1〜20個を有するモノ−及びポリアミンである。第二アミンは、式中基R、R又はRの1個がHであるアミンNRである。
【0115】
好適な第二モノアミンは例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミンジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、ジノニルアミン及びジデシルアミン並びにN−メチルシクロヘキシルアミン、N−エチルシクロヘキシルアミン及びジシクロヘキシルアミン、更にピペリジン、ピペラジン及びモルフリンである。有利な第二モノアミンはジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン及びジ−(2−エチルヘキシル)−アミンである。
【0116】
ヒドロキシ−又はアルコキシ−置換アミン、例えばビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、ビス(2−メトキシエチル)アミン及びビス(2−エトキシエチル)アミンも好適である。
【0117】
第二芳香族アミン、例えばN−メチルアニリン又はジフェニルアミンも好適である。
【0118】
好適な第二ポリアミンは式
【0119】
【化11】

[式中、R14は式VII
【0120】
【化12】

(式中、RからR11並びにk及びmは式IVで定義したものであり、R12はH又はC〜C−アルキルを表し、R13はC〜C−アルキルを表し、lは0〜1000の数を表す)の基であり、R15はC〜C−アルキル又は式VIIの基を表す]のようなものである。
【0121】
及びRは有利にはHを表す。R及びR10は有利にはH又はC〜C−アルキル、特にH又はメチル、更に特にはHを表す。R11は、有利にはHを表す。k及びmは有利には1〜3の数、特に1を表す。lは有利には0〜300、特に有利には0〜40、特には0〜10、特別には0〜4の数を表す。有利にはR15は式VIIの基を表す。
【0122】
特に有利な第二アミンはジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン及びビス(3−N,N−ジメチルアミノプロピル)アミンである。
【0123】
本発明の方法で第一アミン、特に第一ポリアミンを使用するのが有利である。
【0124】
反応は有利には好適な溶剤中で行う。好適及び有利な溶剤は、アルコールを除いてホスホン酸ジハロゲニドとアルコールとの反応用に挙げた溶剤である。
【0125】
反応は有利には0℃から反応混合物の沸点までの温度、特に有利には0〜50℃で行う。
【0126】
ホスホン酸ジハロゲニド対アミンのモル比は、所望される反応生成物並びにアミンの種類に左右される。ホスホン酸−モノハロゲニド−モノアミドを製造すべきである場合には、ジハロゲニド対第二アミンのモル比は有利には1:1.6〜3、特に有利には1:1.6〜2.4及び特には約1:2である。ジハロゲニド対第一アミンのモル比は、有利には1:1.6〜3、特に有利には1:1.6〜2.4である。ジアミドを製造すべきである場合には、ジハロゲニド対第二アミンのモル比は有利には1:1.8〜6、特に1;1.8〜5及び更に特には約1:4である。ジハロゲニド対第一アミンのモル比は有利には1:1.8〜6、特に有利には1:1.8〜5である。
【0127】
ホスホン酸ジハロゲニドとアミンの反応は、例えばジハロゲニドを溶剤中に前装入し、混合物に引き続きアミンを添加するようにして行う。反応終了後、反応混合物を常法により、例えば溶剤及び場合により過剰のアミンの蒸留又は抽出による除去並びに生成したアンモニウム塩の濾過によって後処理する。
【0128】
ホスホン酸ジハロゲニドとアルコール及びアミンから成る混合物との反応では、通常相応するホスホン酸−モノエステル−モノアミドが得られる。
ポリイソブテンオルトホスホン酸ジハロゲニドとチオールとの酸捕集剤の存在における反応により、化学量論に応じてホスホン酸−モノハロゲニド−モノチオエステル又は相応するジチオエステルが得られる。
【0129】
好適なチオールは、炭素原子1〜20個を有するようなもの、例えばメチル−、エチル−、プロピル−、ブチル−、ペンチル−、ヘキシル−、ヘプチル−、オクチル−、ノニル−又はデシルチオール並びに比較的高い同族体及び位置異性体である。式VI.c
【0130】
【化13】

[式中、RからR12並びにk、l及びmは式IVで定義したものを表す]のポリチオエーテルポリチオールも好適である。
【0131】
及びRは有利にはHを表す。R及びR10は有利にはH又はC〜C−アルキル、特にH又はメチル、特別にはHを表す。k及びmは有利には1〜3の数、特に1を表す。lは有利には1〜300、特に有利には1〜40、特には1〜10、特別には1〜4の数を表す。好適なポリチオエーテルポリチオールは、ジチオール(R12=H)並びにそのモノチオール(R12=C〜C−アルキル)である。
【0132】
芳香族チオール、例えばチオフェノール自体並びに、ハロゲン、C〜C−アルキル及びC〜C−アルコキシから選択した置換基1〜3個を有するチオフェノールも好適である。
【0133】
更にx=1〜10を有するポリスルファイドHS−S−SHが好適である。
【0134】
反応は有利には好適な溶剤中で行う。好適及び有利な溶剤は、アルコールを除いてホスホン酸ジハロゲニドとアルコールとの反応で挙げた溶剤である。
【0135】
反応は有利には−20℃から反応混合物の沸点までの温度、特に有利には0〜50℃で行う。
【0136】
ホスホン酸ジハロゲニド対使用されるチオールのモル比は、モノ−、ジチオエステル又は混合ジチオエステルを製造すべきであるかによる。モノチオエステル又は混合チオエステルを製造すべきである場合には、ジハロゲニド対チオールを有利には1:0.8〜1.5、特に有利には1:0.8〜1.2及び特には約1:1のモル比で使用する。同じチオールのジチオエステルを製造すべきである場合には、ジハロゲニド対チオールのモル比は、有利には1:1.8〜3、特に有利には1:1.8〜2.5、特には約1:2である。
【0137】
チオール及びアルコールの同時反応により、相応するモノ−(O)−エステル−モノチオエステルが得られる。
【0138】
既に記載したように、ホスホン酸ジハロゲニドと水との反応により相応するホスホン酸が得られる。
【0139】
直接相応するオルトホスホン酸テトラハロゲニドからか又はホスホン酸ジハロゲニドから製造されるポリイソブテンホスホン酸を他方ではまた誘導体にすることができる。従って例えばこれをアルカリ金属−及びアンモニウム−水酸化物又は−炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩並びに重金属炭酸塩又は−酢酸塩を用いて誘導して、相応する塩にすることができる。重金属塩、例えば鉛−及び銀塩をアルカリ−又はアリールハロゲニドと反応させることによって相応するエステルにすることができる。ホスホン酸エステルは、相応するホスホン酸をジアゾアルカンと反応させることによっても得られる。更にホスホン酸エステルは、ホスホン酸又はその塩と硫酸ジメチルとの反応により得られる。
【0140】
更に、ホスホン酸ジハロゲニドは、ハロゲン交換によりその他のホスホン酸ジハロゲニドに変えることができる。例えば、ポリイソブテンホスホン酸ジクロリドを弗化アルカリ、弗化亜鉛、ナトリウムヘキサフルオロシリケート、弗化アンチモン(III)又は弗化水素と反応させることによって相応するホスホン酸二弗化物に変えることができる。異なるハロゲン原子を有する2種のホスホン酸ジハロゲニドを相互に反応させる場合には、例えば混合ホスホン酸ジハロゲニドが得られる。
【0141】
本発明による方法のもう一つの有利な態様では、ポリイソブテンと五ハロゲン化燐との反応で得られるオルトホスホン酸テトラハロゲニドを水、少なくとも1種のアルコール、少なくとも1種のアミン及び/又は少なくとも1種のチオールと反応させる(工程(b2))。
【0142】
その際、反応は有利には、反応をホスホン酸ジハロゲニドの段階で止めないで、ホスホン酸ジハロゲニドの前記誘導体生成物を直接生成するように、行う。
【0143】
好適及び有利なアルコール、アミン又はチオール、更に好適及び有利な溶剤及び酸捕集剤に関する前記記載はこの場合にも相応して当てはまる。前記誘導体反応又はオルトホスホン酸テトラハロゲニドとハロゲン捕集剤との反応に比して、この態様の反応は通常、大過剰の水、アルコール、アミン又はチオールを用いて行う。更に通常比較的厳しい反応条件、例えば比較的高い反応温度及び/又は比較的長い反応時間が必要である。
【0144】
しかし、オルトホスホン酸テトラハロゲニドを先ずハロゲン捕集剤と反応させる第一の態様(方法(b1)及び(c1))が特に有利である。
【0145】
本発明による方法並びにその他の方法により得られた本発明によるポリイソブテンホスホン酸誘導体を通常、様々に誘導することができる。従って、例えばホスホン酸をオキシハロゲン化燐又は五ハロゲン化燐と反応させて相応するホスホン酸ジハロゲニドにするが、これは前記したように更に誘導することができる。ホスホン酸モノエステル及びホスホン酸モノアミドもオキシハロゲン化燐又はホスホン酸ペンタハロゲニドと反応させることによってホスホン酸ハロゲニドにすることができ、これは同様に前記したようにして更に誘導することができる。ホスホン酸自体を更にアミンと反応させることによってホスホン酸モノ−又はジアミドにすることができる。ホスホン酸モノ−又はジアミドをアルコールと反応させることによってホスホン酸モノ−又は−ジエステルにすることができる。反対にホスホン酸ジエステルをアミンと反応させることによって相応するホスホン酸アミドにすることができる。
【0146】
オルトホスホン酸テトラハロゲニド、ホスホン酸ジハロゲニド及びホスホン酸自体の前記誘導体化は公知技術から自体公知である。従ってこれらは例えば、Houben−Weyl、Methoden der organischen Chemie第XII/1巻、338〜619頁(1963)及びE2巻、300〜418頁(1982)に記載されており、その内容及びその中に引用されている文献は全て参考までに本明細書に含む。
【0147】
本発明によるポリイソブテンホスホン酸は更にその他の方法を用いても得られる。従って、末端にアルキルハロゲニド基を有するポリイソブテンは、例えば三ハロゲン化燐及びハロゲン原子に関して相応する三ハロゲン化アルミニウムと反応させることによって、ポリイソブテンオルトホスホン酸テトラハロゲニドにすることができる。次いでこれを前記したようにして更に反応させることができる。この方法もHouben−Weyl、Methoden der organischen Chemie第XII/1巻、338〜619頁(1963)及びE2巻、300〜418頁(1982)に記載されており、その内容及びその中に引用されている文献は全て参考までに本明細書に含む。
【0148】
本発明によるもう一つの目的は、(a)ポリイソブテンを五ハロゲン化燐と反応させ、(b1)工程(a)で得られた反応生成物をハロゲン捕集剤と反応させかつ(c1)工程(b1)で得られた反応生成物を場合により水、少なくとも1種のアルコール、少なくとも1種のチオール及び/又は少なくとも1種のアミンを反応させるか又は(b2)工程(a)で得られた反応生成物を水、少なくとも1種のアルコール、少なくとも1種のチオール及び/又は少なくとも1種のアミンと反応させることによって得られるポリイソブテンホスホン酸−含有組成物である。
【0149】
好適なポリイソブテン、ハロゲン捕集剤、アルコール、アミン及びチオール並びに好適又は有利な方法の記載は、前記したものと同じものが該当する。
【0150】
有利には工程(c1)又は(b2)の反応でチオールは使用しない、即ち、本発明によるポリイソブテンホスホン酸含有組成物は有利にはポリイソブテンホスホン酸チオエーテル、即ち基I中でR又はRがSRを表すポリイソブテンホスホン酸を含有しない。表現“主として”は、本発明による組成物が最高でも1000ppm、特に有利には最高でも100ppm、特には最高でも50ppm及び特別には最高でも5ppmのポリイソブテンホスホン酸チオエステルを含有することを意味する。更に、本発明による組成物は有利には、基R及びRが原子団Sにより中断されているC〜C4000−アルキルを表すホスホン酸を含有しない。
【0151】
本発明によるポリイソブテンホスホン酸含有組成物は、出来る限り僅かな硫黄含量、例えば最高でも20モル%、有利には最高でも10モル%、特に有利には最高でも5モル%更に有利には最高でも1000ppm、なお更に有利には最高でも500ppm、特には最高でも10ppm及び特別には最高でも50ppm、更に特には50ppm及び極めて特には最高でも5ppmの硫黄含量を有するのが特に有利である。硫黄含量の記載は、本発明では元素の硫黄に関するものではなく、通常その硫黄含有化合物に関し、その硫黄含量を換算する。
【0152】
本発明によるポリイソブテンホスホン酸含有組成物は、前記ポリイソブテンホスホン酸の他に、場合により製法によって生じるその他の反応生成物を含有する。これには、例えばホスホン酸イミド、数回エステル化されたポリオールのエステル及びその他多数が含まれる。場合により複数の成分から成るこの組成物は、多くの用途に好適であり、費用のかかる精製は必要ない。
【0153】
更に本発明の目的は、硫黄最高でも1000ppm、有利には最高でも50ppm、特に有利には最高でも10ppm及び特には最高でも5ppmの硫黄含量を有する、少なくとも1種の本発明によるポリイソブテンホスホン酸及び少なくとも1種の担体を含有する組成物である。
【0154】
相応して本発明によるポリイソブテンホスホン酸は、式Iの基中、RもRもSRを表さず、更にRもRも原子団Sにより中断されているC〜C4000−アルキルを表さないようなものから選択する。
【0155】
好適な担体は、界面活性物質用に常用の不活性の固体又は液体の担体である。固体担体としては、例えば常用の大きな表面積活性物質、例えば活性炭、アルミナ、シリカゲル、珪藻土、滑石、カオリン、粘土又は珪酸塩が好適である。更にポリマー、例えばモノ−及びジオレフィンのポリマー、例えばポリエチレン及びポリプロピレン、芳香族物質のポリマー、例えばポリスチレン、ポリ−(p−メチルスチレン)及びポリ(α−メチルスチレン)及びこれらオレフィン及び芳香族物質のコポリマー並びに前記ホモ−及びコポリマーが好適である。更に、担体として混合物生成剤、例えば分散剤及び懸濁剤が好適である。液体担体としては通常の不活性溶剤、例えば本発明による方法で挙げた中性溶剤並びに下記で詳説する担体オイルが好適である。
【0156】
本発明による組成物は、組成物の全質量に対して0.01〜99質量%、特に有利には0.1〜99質量%の量のポリイソブテンホスホン酸を含有する。
【0157】
更に本発明の目的は、本発明によるポリイソブテンホスホン酸又は本発明によるポリイソブテンホスホン酸含有組成物の有機又は無機物質の表面変性用の使用である。本発明によるポリイソブテンホスホン酸又は各々ポリイソブテンホスホン酸含有組成物に関する前記記載はこの場合にも相応して当てはまる。好適なポリイソブテンホスホン酸の選択は、個々にその都度の使用目的及び使用媒体に応じて行い、当業者により個々の場合に決定することができる。
【0158】
本発明によるポリイソブテンホスホン酸又は本発明によるポリイソブテンホスホン酸含有組成物は、腐蝕防止剤、摩擦減少剤、乳化剤、分散剤、定着剤、湿潤剤、湿潤防止剤、揮発剤又は印刷インキ添加物として、更に特にプラスチック、例えば下記の本発明によるポリマー組成物で記載したポリマーの、可染性、印刷性、接着力又は衝撃強さを改良するために並びに揮発剤−又は印刷インキ添加物として印刷法で使用する。特に本発明によるポリイソブテンホスホン酸又は本発明によるポリイソブテンホスホン酸含有組成物を印刷インキ添加物として使用する場合には、着色剤組成物の流動学的特性、例えば粘度を改善するために役立つ。更に粘着性、粘着安定性、インキの吸収、被印刷体の吸水性及び/又は衝撃強さを改良すべきである。更に、その使用によって印刷された支持体の光学的特性、例えば光沢を改善するものである。
【0159】
本発明によるポリイソブテンホスホン酸又は本発明によるポリイソブテンホスホン酸含有の組成物を用いる表面変性に好適な有機材料は、例えばプラスチック、特に下記の本発明によるポリマー組成物に記載の特にプラスチックフィルムの形のポリマー、例えば紙又は厚紙の形のセルロース、天然又は合成繊維から成る織物、皮革、木、鉱油製品、例えば燃料、動力燃料又は滑剤及びこのような鉱油製品用の添加物、例えば滑性改良剤及び常温流れ改良剤である。好適な無機材料は、例えば無機顔料、金属、ガラス及び塩基性無機材料、例えばセメント、石膏又は炭酸カルシウムである。
【0160】
本発明で表面変性とは、本発明によるポリイソブテンホスホン酸誘導体又はポリイソブテンホスホン酸含有組成物を添加した媒体の表面特性を変えることである。その際、界面(相界面)とは、2種の混合不可能な相(気体−液体、気体−固体、液体−固体、液体−液体、固体−固体)を相互に分離する面である。これには、使用媒体の接着−、粘着−又は緊密作用、柔軟性、引掻−又は破壊強さ、湿潤性及び湿潤力、滑り特性、摩擦力、腐蝕性、可染性、印刷適性又は気体透過性が挙げられる。相応して本発明によるポリイソブテンホスホン酸又は本発明によるポリイソブテンホスホン酸含有組成物は、有利には腐蝕防止剤、摩擦減少剤、乳化剤、分散剤、定着剤、湿潤剤、湿潤防止剤、揮発剤又は印刷インキ添加物として使用する。特に洗浄剤、分散剤及び/又は腐蝕防止剤として、特に動力燃料−及び滑剤添加物中に又は動力燃料−及び滑剤組成物中に使用するのが有利である。この場合には、有利には式Iのホスホン酸基中でR及びRが相互に無関係にOR、SR又はNRを表すポリイソブテンホスホン酸を使用する。特に動力燃料組成物又はその添加物中に使用する場合には、特に有利には式Iのホスホン酸基中でR及びRが相互に無関係にOR又はNRを表すポリイソブテンホスホン酸を使用する。代わりに、この場合に有利には、できる限り僅かな硫黄含量を有するポリイソブテンホスホン酸含有組成物、例えば最高でも1000ppm、有利には最高でも500ppm、特に有利には最高でも100ppm、特には最高でも50ppm及び特別には最高でも5ppmの硫黄を有するようなものを使用する。これらのポリイソブテンホスホン酸の塩も好適である。本発明によるポリイソブテンホスホン酸又は本発明によるポリイソブテンホスホン酸含有組成物を、特に紙用の、印刷法の印刷インキ添加物として印刷法で又はプラスチック、例えばポリプロピレンの表面挙動、特に染色挙動の改善用に本発明により使用するのが有利である。
【0161】
更に本発明の目的は、少なくとも1種の本発明によるポリイソブテンホスホン酸又は本発明によるポリイソブテンホスホン酸含有組成物を含有する動力燃料−及び滑剤添加物である。ここでも有利なポリイソブテンホスホン酸は、ホスホン酸基I中でR及びRが相互に無関係にOR、SR又はNRを表すようなものである。特別な動力燃料添加物は、特に有利にはホスホン酸基I中でR及びRが相互に無関係にOR又はNRを表すポリイソブテンホスホン酸を含有する。有利なポリイソブテンホスホン酸含有組成物はこの場合に、できる限り僅かな硫黄含量を有するようなもの、例えば最高でも1000ppm、有利には最高でも500ppm、特に有利には最高でも100ppm、特には最高でも50ppm及び特別には最高でも5ppmの硫黄を有するようなものである。本発明によるポリイソブテンホスホン酸又はポリイソブテンホスホン酸含有組成物に関する前記記載はここでも当てはまる。
【0162】
更に本発明の目的は、主要量の炭化水素動力燃料又は滑剤及び各々前記で定義した本発明によるポリイソブテンホスホン酸又は本発明によるポリイソブテンホスホン酸含有組成物並びに場合により少なくとも1種のその他の添加物を含有する、動力燃料−及び滑剤組成物である。本発明によるポリイソブテンホスホン酸又はポリイソブテンホスホン酸含有組成物に関する前記記載はここでも当てはまる。
【0163】
概念“動力燃料”とは、本発明で本来の意味の動力燃料の他に燃料、例えば暖房用石油も意味する。本来の意味の動力燃料としては、全ての市販のオットー型及びディーゼル機関動力燃料を使用することができる。燃料としては全ての市販の暖房用石油を使用することができる。
【0164】
有利なポリイソブテンホスホン酸はここでも、R及びRが相互に無関係にOR、SR又はNRを表すようなものである。特別な動力燃料組成物は、特に有利にはホスホン酸基I中でR及びRが相互に無関係にOR又はNRを表すポリイソブテンホスホン酸を含有する。有利なポリイソブテンホスホン酸含有組成物はこの場合でも、できる限り僅かな硫黄含量を有するようなもの、例えば最高でも1000ppm、有利には最高でも500ppm、特に有利には最高でも100ppm、特には最高でも50ppm及び特別には最高でも5ppmの硫黄を有するようなものである。
【0165】
有利には本発明による動力燃料−及び滑剤組成物は、本発明によるポリイソブテンホスホン酸を5〜5000ppm、特に有利には10〜1000ppm及び特には20〜500ppmの量で含有する。
【0166】
最後に、本発明の目的は、本発明によるポリイソブテンホスホン酸又は本発明によるポリイソブテンホスホン酸含有組成物及び少なくとも1種の希釈剤並びに場合により少なくとも1種のその他の添加物を含有する、添加物濃縮物である。この場合でも、有利なポリイソブテンホスホン酸は、ホスホン酸基I中でR及びRが相互に無関係にOR、SR又はNRを表すようなものである。特別な動力燃料添加物濃縮物は、特に有利にはホスホン酸基I中でR及びRが相互に無関係にOR又はNRを表すポリイソブテンホスホン酸を含有する。有利なポリイソブテンホスホン酸含有組成物はこの場合でも、できる限り僅かな硫黄含量を有するようなもの、例えば最高でも1000ppm、有利には最高でも500ppm、特に有利には最高でも100ppm、特には最高でも50ppm及び特別には最高でも5ppmの硫黄を有するようなものである。本発明によるポリイソブテンホスホン酸又は本発明によるポリイソブテンホスホン酸含有組成物に関する前記記載はここでも当てはまる。ポリイソブテンホスホン酸は本発明による添加物混合物中に有利には濃縮物の質量に対して0.1〜80質量%、特に有利には10〜70質量%及び特に30〜60質量%の量で存在する。好適な希釈剤は、例えば脂肪族及び芳香族炭化水素、例えば溶剤ナフタである。本発明による添加物混合物を硫黄低含有のディーゼル機関−又はオットー動力燃料中に使用する場合には、添加物濃縮物中の希釈剤として低硫黄低含有炭化水素が有利である。
【0167】
本発明による動力燃料−及び滑剤組成物並びに添加物濃縮物は、ポリイソブテンホスホン酸の他に場合によりその他の通常の動力燃料−及び滑剤添加物、有利には下記の添加物を含有する:
本発明による動力−及び滑剤組成物並びに濃縮物中に使用される添加物の例としては、洗浄作用又は弁座摩耗防止作用を有するその他の添加物が挙げられ、その際これは、数平均分子量(M)85〜20000及び、(a)少なくとも1個の窒素原子が塩基性特性を有する、窒素原子6個までを有するモノ−又はポリアミノ基、(b)少なくとも1個の窒素原子が塩基性特性を有する、モノ−又はポリアミノ基と組み合わせたヒドロキシル基、(c)カルボキシル基又はそのアルカリ金属−又はアルカリ土類金属塩、(d)末端でヒドロキシル基、モノ−又はポリアミノ基により(その際少なくとも1個の窒素原子が塩基性特性を有する)又はカルバメート基で終わっている、ポリオキシ−C〜C−アルキレン原子団、(e)カルボン酸エステル基、(f)無水琥珀酸から誘導したヒドロキシ−及び/又はアミノ−及び/又はアミド−及び/又はイミド基を有する原子団及び(g)慣用のフェノール性ヒドロキシル基とアルデヒド及びモノ−又はポリアミンとのマンニッヒ反応により得られる原子団、基から選択した、少なくとも1個の極性原子団を有する疎水性炭化水素基少なくとも1個を有する。
【0168】
洗浄作用を有する前記添加成分の例としては下記のものが挙げられる:
モノ−又はポリアミノ基(a)含有添加物は、有利には、ポリプロペンをベースとするか又は高反応性(即ち主として末端二重結合を多くの場合にβ−及びγ−位に有する)又は慣用(即ち主として中央位に二重結合を有する)のポリブテン又はポリイソブテン(M=600〜5000を有する)をベースとする、ポリアルケンモノ−又はポリアルケンポリアミンである。20質量%までn−ブテン単位を含有することができるポリイソブテンからヒドロホルミル化及びアンモニア、モノアミン又はポリアミン、例えばジメチルアミノプロピルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン又はテトラエチレンペンタアミンを用いて還元アミン化により製造することができる、反応性ポリイソブテンをベースとするこのような添加物は、特にEP−A244616から公知である。添加物の製造で主として中央位二重結合(大抵はβ−及びγ−位に)を有するポリブテン又はポリイソブテンから出発する場合には、塩素化し、引き続きアミン化するか又は二重結合を空気又はオゾンで酸化することによってカルボニル−又はカルボキシル化合物にし、引き続き還元条件(水素添加)下でアミン化することによる製法が挙げられる。アミン化するためにこの場合にヒドロホルミル化された反応性ポリイソブテンの還元アミン化用に前記したものと同じアミンを使用することができる。ポリプロペンをベースとする相応する添加物は特にWO−A94/24231に記載されている。
【0169】
その他の有利なモノアミノ基(a)含有添加物は、特にWO−A97/03946に記載されているような、平均重合度P=5〜100を有するポリイソブテンの酸化窒素又は酸化窒素及び酸素から成る混合物との反応生成物の水素添加生成物である。
【0170】
その他の有利なモノアミノ基(a)含有添加物は、特にDE−A19620262に記載されているような、ポリイソブテンエポキシドからアミンとの反応及び引き続いての脱水及びアミノアルコールの還元により得られる化合物である。
【0171】
ヒドロキシル基をモノ−又はポリアミノ基と組み合わせて(b)含有する添加物は、特にEP−A476485に記載されているような、M=600〜5000を有する有利には主として末端二重結合を有するポリイソブテンから得られるポリイソブテンエポキシドのアンモニア、モノ−又はポリアミンとの反応生成物である。
【0172】
カルボキシル基又はそのアルカリ金属−又はアルカリ土類金属塩(c)を含有する添加物は有利には、そのカルボキシル基が全部又は部分的にアルカリ金属−又はアルカリ土類金属塩に変わっており、カルボキシル基の残りの基がアルコール又はアミンと反応している、全−モル質量500〜20000を有するC〜C40−オレフィンと無水マレイン酸とのコポリマーである。このような添加物は溶くにEP−A307815から公知である。このような添加物は、WO−A87/01126に記載されているように有利には通常の動力燃料洗浄剤、例えばポリ(イソ)ブテンアミン又はポリエーテルアミンと組み合わせて使用することができる。
【0173】
ポリオキシ−C〜C−アルキレン原子団(d)を含有する添加物は、有利にはポリエーテル又はポリエーテルアミンであり、これはC〜C60−アルカノール、C〜C30−アルカンジオール、モノ−又はジ−C〜C30−アルキルアミン、C〜C30−アルキルシクロヘキサノール又は又はC〜C30−アルキルフェノールとヒドロキシル基又はアミノ基当たり1〜30モルのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドとの反応により得られ、ポリエーテルアミンの場合には、引き続きアンモニア、モノアミン又はポリアミンを用いる還元性アミン化により得られる。このような生成物は特にEP−A310875、EP−A356725、EP−A700985及びUS−A4877416に記載されている。ポリエーテルの場合には、このような生成物は担体オイル特性も有する。この代表的例は、トリデカノール−又はイソトリデカノールブトキシレート、イソノニルフェノールブトキシレート並びにポリイソブテノールブトキシレート及び−プロポキシレート並びに相応するアンモニアとの反応物である。
【0174】
カルボン酸エステル基(e)を含有する添加物は有利には、特にDE−A3838918に記載されているような、モノ−、ジー又はトリカルボン酸の長鎖アルコール又はポリオールから成るエステル、特に100℃で最低粘度2mmを有するようなものである。モノ−、ジ−又はトリカルボン酸としては、脂肪族又は芳香族酸を使用することができ、エステルアルコール又はエステルポリオールとしては、特に例えばC原子6〜24個を有する長鎖のものである。エステルの代表例としては、イソ−オクタノール、イソ−ノナノール、イソデカノール及びイソ−トリデカノールのアジペート、フタレート、イソ−フタレート、テレフタレート及びトリメリテートである。このような生成物は担体オイル特性も満たす。
【0175】
ヒドロキシル−及び/又はアミノ−及び/又はアミド−及び/又はイミド基を有する琥珀酸から誘導される原子団(f)を含有する添加物は、有利には無水ポリイソブテニル琥珀酸の相応する誘導体であり、これはM=300〜5000を有する通常の又は反応性ポリイソブテンの無水マレイン酸との熱方法を用いるか又は塩素化ポリイソブテンを経由する反応により得られる。その際、脂肪族ポリアミン、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン又はテトラエチレンペンタアミンを用いる誘導体が特に有利である。このようなオットー型動力燃料添加物は特にUS−A4849572に記載されている。
【0176】
フェノールヒドロキシル基のアルデヒド及びモノ−又はポリアミンとの慣用のマンニッヒ反応により得られる原子団(g)を含有する添加物は、有利にはポリイソブテン置換フェノールとホルムアルデヒド及び第一モノ−又はポリアミン、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン又はジメチルアミノプロピルアミンの反応生成物である。このような“ポリイソブテン−マンニッヒ塩基”は特にEP−A831141に記載されており、これは参考までに本発明に含む。
【0177】
個々に記載の動力燃料添加物の正確な定義に関しては公知技術の前記記載を参照にされたい。
【0178】
溶剤又は希釈剤(添加物パック及び−濃縮物の製造で)としては、本発明による濃縮物で前記した希釈剤、例えば脂肪族及び芳香族炭化水素、例えば溶剤ナフタが挙げられる。
【0179】
本発明によるポリイソブテンホスホン酸と組み合わせることができるその他の常用の添加物成分は、例えば常用の腐蝕防止剤、例えば有機カルボン酸又は複素環式芳香族の塗膜形成性アンモニウム塩をベースとするもの、酸化防止剤又は安定剤、例えばアミン、例えばp−フェニレンジアミン、ジシクロヘキシルアミン又はその誘導体又はフェノール、例えば2,4−ジ−t−ブチルフェノール又は3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸をベースとするもの、解乳化剤、帯電防止剤、メタロセン、例えばフェロセン又はメチルシクロペンタジエニルマンガントリカルボニル、滑性改良剤(Lubricity−Additive)、例えば特定の脂肪酸、アルケニル琥珀酸エステル、ビス(ヒドロキシアルキル)脂肪アミン、ヒドロキシアセトアミド又はひまし油並びに染料(Marker)である。場合により動力燃料のpH値を下げるためにアミンも添加する。
【0180】
その他の常用の成分としては担体オイルも挙げられる。ここで例えば鉱物性担体オイル(ベースオイル)、特に粘度等級“Solvent Neutral(SN)500〜2000”、M=400〜1800を有するオレフィンポリマーをベースとする合成担体オイル、特にポリブテン−又はポリイソブテン(水素添加されているか又は水素添加されてない)ベースのもの、ポリアルファオレフィン又はポリインターナルオレフィンをベースとする合成担体オイル並びにアルコキシル化長鎖アルコール又はフェノールをベースとする合成担体オイルが挙げられる。同様に、その他の添加物としては、例えばDE−19916512.2に記載されているようなポリアルケンアルコール−ポリエーテルアミンが挙げられる。
【0181】
本発明のもう一つの目的は、ポリマー及び少なくとも1種の本発明によるポリイソブテンホスホン酸を含有するポリマー組成物である。好適及び有利なポリイソブテンホスホン酸に関する前記記載はここでも当てはまる。有利なポリマー組成物で、ポリイソブテンホスホン酸のホスホン酸基I中でR並びにRはOR及び特にはOHを表す。
【0182】
好適なポリマーは例えばモノ−及びジオレフィン及び芳香族物質のポリマー並びにこれらのモノマーのコポリマーである。
【0183】
モノ−又はジ−オレフィンの好適なポリマーは、例えばポリプロピレン、ポリイソブテン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチル−ペンテン−1、ポリイソプレン又はポリブタジエン並びにシクロオレフィン例えばシクロペンタン又はノルボルネンのポリマー;更にポリエチレン(場合により架橋していてよい)、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)、高密度高分子量ポリエチレン(HDPE−HMW)、高密度超高分子量ポリエチレン(HDPE−UHMW)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、低密度線状ポリエチレン(LLDPE)、低密度分枝状ポリエチレン(VLDPE)である。
【0184】
これらのポリマーの混合物、例えばポリプロピレンとポリイソブテン、ポリプロピレンとポリエチレンの混合物(例えばPP/HDPE、PP/HDPE)及び異なる種類のポリエチレンの混合物(例えばLDPE/HDPE)も好適である。
【0185】
更にモノ−及びジオレフィン相互のコポリマー、例えばエチレン−プロピレン−コポリマー、低密度線状ポリエチレン(LLDPE)及びこれと低密度ポリエチレン(LDPE)の混合物、プロピレン−ブテン−1−コポリマー、プロピレン−イソブテン−コポリマー、エチレン−ブテン−1−コポリマー、エチレン−ヘキセン−コポリマー、エチレン−メチルペンテン−コポリマー、エチレン−ヘプテン−コポリマー、エチレン−オクテン−コポリマー、プロピレン−ブタジエン−コポリマー、イソブテン−イソプレン−コポリマー並びにエチレンとプロピレン及びジエン、例えばヘキサジエン、ジシクロペンタジエン又はエチリデンノルボルネンとのターポリマー;更にこのようなコポリマー相互及び前記ポリマー、例えばポリプロピレン/エチレン−プロピレン−コポリマーが好適である。
【0186】
好適なポリ芳香族物質は例えばポリスチレン、ポリ−(p−メチルスチレン)及びポリ(α−メチルスチレン)である。
【0187】
スチレン又はα−メチルスチレンとジエンのコポリマー、例えばスチレン−ブタジエン;スチレン−コポリマー及びその他のポリマー、例えばジエン−ポリマー又はエチレン−プロピレン−ジエン−ターポリマーの高衝撃強い混合物;並びにスチレンのブロック−コポリマー、例えばスチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−イソプレン−スチレン、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン又はスチレン−エチレン/プロピレン−スチレンも好適である。
【0188】
更に、スチレン又はα−メチルスチレンのグラフトコポリマー、例えばポリブタジエン上スチレン又はポリブタジエン−スチレン−コポリマー上スチレンが好適である。
【0189】
最後に前記ホモ−及びコポリマーの二成分及び多成分混合物(ポリブレンド)が好適である。
【0190】
ポリオレフィン、特にポリエチレン及びポリプロピレン及び特にポリプロピレンが有利である。
【0191】
本発明によるポリマー組成物は、粒状−、線状−、平面状又は三次元構造として存在することができる。
【0192】
概念“粒状構造”には、有利には媒体中に分散可能であるか又は分散している粒度1nm〜10mmの粒子が含まれる。
【0193】
“線状構造”とは特に繊維、フィラメント、紡糸、糸等である。
【0194】
“平面状構造”は、特に織物、ニット、フェルト、フリース、不織布、フィルム及び相応する二次元構造である。フィルムが有利である。
【0195】
“三次元構造”は、特に通常異なる大きさの成形体である。
【0196】
本発明によるポリマー組成物の有利な態様は、平面状構造、特にフィルム及び成形体である。特にフィルム、特にポリプロピレンフィルムが有利である。
【0197】
ポリイソブテンホスホン酸は、本発明によるポリマー組成物中にポリマー組成物の全質量に対して有利には0.01〜99質量%、特に有利には0.1〜99質量%の量で含有される。
【0198】
ポリマーにポリイソブテンホスホン酸を添加することは、既に粒状、線状、平面状又は三次元構造物として存在するポリマーをポリイソブテンホスホン酸の溶液で構造物の種類に応じた方法で、例えば洗浄、浸漬、噴霧、パディング(Bepflatschen)等の方法で処理することによって、行うことができる。しかしポリイソブテンホスホン酸をまだ所望の構造物の形では存在しないポリマーに添加し、その後初めて構造物を製造するのが有利である。例えばポリマーを固体として又は軟らかい形でポリイソブテンホスホン酸と混合し、引き続きなお常用の方法で、例えば押出成形によりフィルムに、例えば溶融紡糸法により繊維材料に加工する。
【0199】
本発明によるポリマー組成物は特に、本発明によるポリイソブテンホスホン酸を含有しない相応するポリマー組成物に比して実質的に改良された可染挙動を有する。
【0200】
更に、本発明の目的は、少なくとも1種の印刷インキ及び少なくとも1種の本発明によるポリイソブテンホスホン酸を含有する印刷インキ組成物である。好適及び有利なポリイソブテンホスホン酸に関する前記記載はこの場合にも当てはまる。特に有利な印刷インキ組成物では、ポリイソブテンホスホン酸のホスホン酸基I中でR及びRは基ORを表し、その際RはHを表さない。特にRは、式IVaの基を表し、その際lは1〜4の数を表す。
【0201】
印刷インキとは、印刷機で使用される固体、ペースト状又は液体状着色剤配合物である。好適な印刷インキは、使用される各印刷法及び被印刷体による。
【0202】
被印刷体は、吸収性であってもよいし、非吸収性であってもよく、一次元、例えば繊維形、二次元(面)又は三次元、例えば円筒形又は円錐形であってもよい。面状材料は、例えば紙、厚紙、皮革又はフィルム、例えばプラスチック−又は金属フィルムである。円筒形又は円錐形材料は、例えば中空体、例えば缶である。有利な材料は紙及びプラスチックフィルムである。好適なプラスチックは本発明によるポリマー組成物で挙げたポリマーである。
【0203】
本発明による印刷インキ組成物は全ての慣用の印刷法、従って凸版印刷、例えば活版印刷及びフレキソ印刷、平版印刷、例えばオフセット印刷、石版印刷及び写真凹版印刷、グラビア印刷、例えばドクターグラビア印刷及び鋼版印刷並びに多孔印刷(Durchdruck)、例えばスクリーン印刷、例えばスクリーン印刷、フレーム印刷(Rahmendruck)、フィルム印刷及び孔版印刷で使用することができる。有利には本発明による印刷インキ組成物をオフセット印刷で使用する。
【0204】
好適な着色剤は顔料並びに染料である。好適な顔料及び染料は各々の印刷法で常用の全ての着色剤である。
【0205】
本発明による印刷組成物は、通常各印刷法に常用の着色剤組成物及び本発明によるポリイソブテンホスホン酸を含有する。
【0206】
通常の着色剤組成物は、着色剤の他に通常、大抵は印刷ワニスと称される結合剤及び添加物、例えば乾燥剤、希釈剤、ワックス分散液及び場合により触媒又は放射乾燥用の開始剤を含有する。組成物は、印刷法、被印刷体及び外見、例えば光沢、不透明度、色相及び透明度及び物理的特性、例えば耐水性、耐脂性、耐溶剤性、耐研磨性及び積層性に関して印刷で求められる品質により詳細に選択する。
【0207】
従ってペースト状のオフセット−、活版−及びスクリーン印刷用に好適なワニスは、例えばスタンド油、フェノール−変性ロジン樹脂、鉱油、アマニ油及び/又はアルキル樹脂から成る(混合ワニス)か又は炭化水素−及びロジン樹脂、アスファルト及び環化ゴムから成る(鉱油ワニス)。フレキソ−、グラビア−及びスクリーン印刷インキ用に好適なワニスは、例えば結合剤としてコロジオン綿、ポリアミド樹脂、ケトン樹脂、ビニルポリマー、マレエート−、フェノール−、アミン−、アクリル−、ポリエステル−又はポリウレタン樹脂及び溶剤、例えばエタノール、エチルアセテート又は高沸点アルコール、エステル並びにグリセリンを有する樹脂−溶剤系である。
【0208】
着色剤組成物のポリイソブテンホスホン酸を用いる加工は、例えばこれら成分の緊密な混合により行う。反対に、着色剤組成物の個々の成分全てをポリイソブテンホスホン酸と一緒に混合して本発明による印刷インク組成物にすることもできる。しかし、着色剤組成物の個々の成分を先ずポリイソブテンホスホン酸と混合し、次いでこの混合物を残りの成分と混合することもできる。
【0209】
本発明によるポリイソブテンホスホン酸は、例えば有機物質、例えば繊維又はプラスチック又は無機材料、例えば石膏、セメント、炭酸カルシウム(例えばモルタルの形の)又は金属を疎水化するために、腐蝕防止剤、摩擦減少剤、乳化剤又は分散剤、定着剤、湿潤剤、湿潤防止剤、揮発剤又は印刷インキ添加物として並びに有機材料、特にプラスチックの可染性を改良するため及び被印刷体、特に紙の流動学的及び印刷技術特性を改良するために、優れた長時間貯蔵安定性及び表面変性有効性を有する。動力燃料−及び滑剤組成物中に使用するために特に低硫黄含有又は硫黄不含のポリイソブテンホスホン酸又はポリイソブテンホスホン酸含有組成物が有利である。
【0210】
次ぎに本発明を実施例につき詳説するが、本発明はこれに制限されるものではない。
実施例:
1.ポリイソブテンホスホン酸ジクロリドの製造
1.1.M=1000を有するポリイソブテンの相応するホスホン酸ジクロリドへの反応
内容500mlの四首フラスコ中にポリイソブテン(M=1000;PDI=1.65;α−オレフィン分85%)100g及びヘキサン100mlを室温で前装入し、50℃に加熱した。この溶液に同じ温度で五塩化燐41.65gを加え、更に2時間攪拌したが、その際塩化水素が生成し、粘度は連続的に増加した。引き続き反応混合物に同じ温度で無水酢酸21.01gを添加したが、その際粘度は再び減少した。更に30分間攪拌後、ヘキサン、生成した塩化アセチル及びオキシ塩化燐を回転蒸発器で温度100℃及び5ミリバールで除去した。相応するポリイソブテンホスホン酸ジクロリド106.9gが粘性帯黄色油状物として得られた。
IR(KBr上フィルム)[cm−1]:2951、2896、1609(C=C)、1472、1389、1366、1231、1227(P=O)、550(P−Cl)。
【0211】
遊離α−オレフィンの特徴である891cm−1の変動はなかった。
1.2.2,4,4,6,6−ペンタメチルヘプタト−1−エンホスホン酸ジクロリドの製造
内容500mlの四首フラスコ中に2,4,4,6,6−ペンタメチルヘプタト−1−エン(三量体のイソブテン)84g及びヘキサン200mlを室温で前装入し、五塩化燐208.2gを少量宛加えた。引き続き徐々に50℃に加熱したが、その際塩化水素が生成し、同時に粘度が増加した。2時間後、無水酢酸103.6gを50℃で滴加したが、その際粘度は再び減少した。更に15分間攪拌後、ヘキサン、生成した塩化アセチル及びオキシ塩化燐を回転蒸発器で70℃及び5ミリバールで除去した。2,4,4,6,6−ペンタメチルヘプタト−1−エンホスホン酸ジクロリド142gが粘性帯黄色油状物として得られた。
H−NMR(CDCl、400MHz):5.89(s、1H)、5.80(s、1H)、2.29(dd、J=1.2及び5.0Hz、3H)、2.23(d、J=2.9Hz、2H)、1.32(s、2H)、1.06(s、6H)、1.00(s、9H)。
s=一重項
d=二重項
dd=二重項の二重項
1.3.M=550を有するポリイソブテンの相応するホスホン酸ジクロリドへの反応
内容4lの四首フラスコ中で五塩化燐833gをヘキサン300ml中に懸濁させた。この懸濁液に攪拌及び冷却下で、即ちフラスコ内部の温度が室温を超えないようにして、ヘキサン400ml中のポリイソブテン(M=550;PDI=1.65;α−オレフィン分85%)の溶液を1時間以内に滴加した。引き続き、反応混合物を40℃に加熱し、更に30分間この温度で攪拌した。次いで反応混合物に同じ温度で無水酢酸408.5gを添加し、この温度で更に1時間攪拌した。引き続き、ヘキサン、生成した塩化アセチル及びオキシ塩化燐を回転蒸発器で温度100℃及び5ミリバールで除去した。相応するポリイソブテンホスホン酸ジクロリド1106.4gが粘性帯黄色油状物として得られた。
IR(KBr上フィルム)[cm−1]:2951、2896、1609(C=C)、1473、1389、1366、1231、1227(P=O)、550(P−Cl)。
【0212】
有利α−オレフィンの特徴である891cm−1での変動はなかった。
2.ポリイソブテンホスホン酸ジクロリドの誘導体化
2.1.ポリイソブテンホスホン酸の製造
内容1lの三首フラスコ中でテトラヒドロフラン(THF)200ml中の水72mlの溶液に0℃でTHF350ml中の例1.3からのポリイソブテンホスホン酸ジクロリド630gの溶液を45分間以内に滴加した。室温に解凍し、混合物を更に3時間攪拌した。引き続き溶剤を減圧下で完全に除去し、残分をトルエン250ml中に入れ、減圧下で40℃で共沸蒸留した。残分を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、フィルターケーキを洗浄し、濾液から50℃及び2ミリバールで完全に溶剤を除去した。相応するポリイソブテンホスホン酸589.3gが粘性帯黄色油状物として得られた。
IR(KBr上フィルム)[cm−1]:2952、2895、2328(P(O)−OH)、1629(C=C)、1473、1389、1366、1231、1181(P=O)。
【0213】
550cm−1でのP−Cl−変動はなかった。
2.2 トリエチレングリコールモノメチルエーテルのポリイソブテンホスホン酸モノエステルの製造
攪拌機、滴下漏斗及び還流冷却器を有する内容500mlの四首フラスコ中に、塩化メチレン100ml中の例1.3からのポリイソブテンホスホン酸ジクロリド133.4gを5℃で前装入し、塩化メチレン50ml中のトリエチレングリコールモノメチルエーテル32.8gから成る溶液を15分間以内に滴加した。反応混合物を室温に加温し、30℃で一夜攪拌した。引き続き溶剤を減圧下で除去し、残分をTHF100ml中に入れた。この混合物にTHF30ml中の水9mlの溶液を室温で添加し、混合物を2時間攪拌し、引き続き80℃及び2ミリバールで完全に濃縮した。相応するトリエチレングリコールモノメチルエーテルのポリイソブテンホスホン酸モノエステル145.6gが粘性褐色油状物として得られた。
IR(KBr上フィルム)[cm−1]:2951、2894、2320(P(O)−OH)、1625(C=C)、1471、1389、1366、1231、1201(P=O)、1139(P−O−アルキル)、1113(P−O−アルキル)。
【0214】
550cm−1でのP−Cl−変動はなかった。
2.3 トリエチレングリコールモノメチルエーテルのポリイソブテンホスホン酸ジエステルの製造
内容1lの四首フラスコ中に、トルエン150ml中のトリエチレングリコールモノメチルエーテル65.7g及び無水ピリジン31.6gを5℃で前装入し、トルエン100ml中の例1.3からのポリイソブテンホスホン酸ジクロリド133.4gから成る溶液を30分間以内に滴加した。反応混合物を室温に加温し、40℃で一夜攪拌した。次いで沈殿した塩化ピリジニウムを濾別し、溶剤を回転蒸発器で80℃及び2ミリバールで除去した。相応するトリエチレングリコールモノメチルエーテルのポリイソブテンホスホン酸ジエステル187.9gが粘性褐色油状物として得られた。
IR(KBr上フィルム)[cm−1]:2951、2894、1623(C=C)、1471、1389、1366、1233、1200(P=O)、1135(P−O−アルキル)、1111(P−O−アルキル)。
【0215】
550cm−1でのP−Cl−変動はなかった。
2.4 テトラエチレンペントアミンのポリイソブテンホスホン酸ジアミドの製造
内容2lの四首フラスコ中に、ヘキサン200ml中の新たに蒸留したテトラエチレンペンタアミン113.6mlを40℃で前装入し、ヘキサン300ml中の例1.3からのポリイソブテンホスホン酸ジクロリド200gを45分間以内に滴加した。引き続き、反応混合物を5時間還流加熱し、室温に冷却し、一夜更に攪拌した。引き続き溶剤を回転蒸発器で100℃及び2ミリバールで除去した。相応するテトラエチレンペンタアミンのポリイソブテンホスホン酸ジアミド330.1gが粘性黄色混濁油状物として得られた。
3.使用例
3.1,ポリプロピレンの可染性の改良
本発明によるポリイソブテンホスホン酸を添加したポリプロピレンのカチオン染料を用いて可染性を調べた。ポリプロピレンとしては、メタロセン触媒下で製造したホモプロピレンであるBasell社のMetocene(R)X50248を使用した。
【0216】
本発明によるポリイソブテンホスホン酸として、一方では例1.3からのポリイソブテンホスホン酸(A)及び他方ではGlissopal1000をベースとするポリイソブテンホスホン酸(B)を使用した(R、R=OH)。
【0217】
実験は二軸スクリュー押出機でケーシング温度180℃で200rpmで行った。ノズル出力は1×4mmであった。流量は5kg/時であり、その際ポリイソブテンホスホン酸A又はBを流量250g/時で添加した。添加ポンプは100〜200g/時で操作した。本発明によるポリイソブテンホスホン酸A又はB各々5質量%をポリプロピレン顆粒に添加した。
【0218】
押出後に得られた各顆粒を圧縮してプレートにした(約160×160×2mm;質量約46g;圧縮時間220℃で4分、各々50、100、150及び200バールで各1分)。更に添加しなかったポリプロピレン顆粒から相応する試料プレートを製造した。得られたプレートを用いて染色試験を行った。
【0219】
染料として、カチオン染料Basacryl Rot X−BL300%を使用した。染色するために試料プレートを脱塩及び緩衝した水中の1.1%染料の添加下でpH6で染液比1:50でAHIBA染色機中で20分以内に110℃から130℃に加熱し、この温度で2時間放置した。引き続き、80℃に冷却し、試料プレートを取り出し、冷水で洗浄し、100℃で乾燥させた。引き続き達成された色の深みを常法により評価した。下記の結果が得られた:
−非添加ポリプロピレン:実質的に染色なし:1/24RTT
−Aを添加したポリプロピレン:1/3RTT
−Bを添加したポリプロピレン:1/3RTT
RTT=標準深さ
3.2.本発明によるポリイソブテンホスホン酸のヒートセット−ロールオフセット−印刷法での使用
印刷機として“MAN Roland”RZK IIIを使用した。
【0220】
紙として名称Mega Gloss又はLWCを有するZander社の2種の異なる塗被プラスチック印刷紙を使用した。
【0221】
ポリイソブテンホスホン酸としてGlissopal550をベースとするポリイソブテンホスホン酸(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)ジエステルCをインキ組成物の全量に対して1質量%の量で使用した。
【0222】
流動学的変化、例えば粘着性及び粘度、更に吸収挙動(Wegschlagverhalten)、耐摩耗性及び着色した紙の光沢を調べた。更に本発明によるポリイソブテンホスホン酸の添加に際して印刷機の印刷技術特性が変化するか否かを調べた。
【0223】
試験インキとして、着色剤の他に通常の助剤、例えばワニスを含有するBASF−AGの名称Webking(R)3020 Magentaの常用の印刷インクを使用した。
【0224】
印刷した紙を乾燥させた後、粘度、粘着性、粘着−安定性、後吸収(Nachnahme)、吸水性及びデルタ トルク(凝集する前のインキの吸水性(ml)の尺度)を一方では本発明によるポリイソブテンホスホン酸エステルCを含有しない着色剤組成物を用いて印刷した紙及び他方では本発明により添加した着色剤組成物で印刷した紙で調べた。結果は第1表に記載する。
第1表
【0225】
【表1】

【0226】
粘度、粘着性、粘着−安定性、吸水性及びデルタトルクは、当業者に公知の常法で測定した。理論粘度は35〜42Pasであった。理論粘着性は145〜175であった。
【0227】
第1表が示すように、本発明によるポリイソブテンホスホン酸エステルCを添加したインキを用いて印刷した紙は、インキの吸水性が比較的僅かであり、24時間後の粘度の増加は比較的僅かであった。
【0228】
更に印刷した紙の光沢を評価した。結果は第2表に記載する。
第2表
【0229】
【表2】

【0230】
密度及び光沢は当業者に公知である常用の方法で測定した。
【0231】
第2表が示すように、本発明によるポリイソブテンホスホン酸エステルCを含有するインクを用いて印刷した紙は、比較的僅かな密度にも拘わらず無添加インキに比較して著しい光沢上昇が見られた。
【0232】
更に本発明によるポリイソブテンホスホン酸エステルを添加したインキは非添加インキより有利な吸収挙動(Wegschlagverhalten)を有する。
【0233】
本発明により添加されたインクは更に印刷技術的欠点を有さなかった。
3.3.金属表面の疎水化(アルミニウム薄板)
ポリイソブテンホスホン酸の0.2%溶液を、蒸留水898質量部、Emulan(R)HE50(非イオン性乳化剤、BASF株式会社、Ludwighafen)100部及び例2.1からのポリイソブチルホスホン酸2部を混合することによって製造した。
【0234】
アルミニウム薄板をこの溶液中に17時間浸漬し、多量の水で濯いだ。比較として蒸留水900質量部中のEmulan(R)HE50 100部の溶液中に17時間浸漬した。
【0235】
板表面上の水滴は下記の接触角を示した。
本発明による:104°
比較: 65°
3.4.腐蝕防止:
3.3により製造した薄板に関して電気化学的基本量として絶縁破壊ポテンシャル(0.6モル/NaCl及び飽和Ca(OH)l中)、腐蝕電流及び分極抵抗を測定した。
【0236】
【表3】

【0237】
値は本発明により処理した薄板で腐蝕の有意な減少を実証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I
【化1】

[式中、R及びRは相互に無関係にハロゲン、OR、SR又はNRを表し;R及びRは相互に無関係にH、O、S及びNR11から選択した原子団少なくとも1個により中断されているC〜C20−アルキル又はC〜C4000−アルキルを表し、その際、R及びRはそれが結合している窒素原子と一緒になって環を形成することもでき、R及びRは更にアリール、アラルキル又はシクロアルキルを表し;かつR11はR及びRで定義したものを表す]のホスホン酸基を有するポリイソブテンホスホン酸及びその塩。
【請求項2】
ポリイソブテンの鎖末端の少なくとも1個に存在する、式Iのホスホン酸基1個又は2個を有する、請求項1に記載のポリイソブテンホスホン酸。
【請求項3】
ポリイソブテン基が数平均分子量M100〜100000ダルトンを有する、請求項1又は2に記載のポリイソブテンホスホン酸。
【請求項4】
式中、R及びRが相互に無関係にハロゲン、OR又はNRを表し;R及びRが相互に無関係にH、O及びNR11から選択した原子団少なくとも1個により中断されているC〜C20−アルキル又はC〜C4000−アルキルを表し、その際、R及びRはそれが結合している窒素原子と一緒になって環を形成することもでき、R及びRは更にアリール、アラルキル又はシクロアルキルを表し;かつR11はR及びRで定義したものを表す、請求項1から3までのいずれか1項に記載のポリイソブテンホスホン酸及びその塩。
【請求項5】
請求項4に記載のポリイソブテンホスホン酸及び少なくとも1種の担体を含有する、最高でも1000ppmの硫黄含量を有する組成物。
【請求項6】
(a)ポリイソブテンを五ハロゲン化燐と反応させ、(b1)工程(a)で得られた反応生成物をハロゲン捕集剤と反応させかつ(c1)工程(b1)で得られた反応生成物を場合により水、少なくとも1種のアルコール、少なくとも1種のチオール及び/又は少なくとも1種のアミンと反応させるか又は(b2)工程(a)で得られた反応生成物を水、少なくとも1種のアルコール、少なくとも1種のチオール及び/又は少なくとも1種のアミンと反応させる、請求項1から3までのいずれか1項の定義によるポリイソブテンホスホン酸の製法。
【請求項7】
工程(c1)でも工程(b2)でもチオールを使用しない、請求項4の定義によるポリイソブテンホスホン酸を製造するための、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ハロゲン捕集剤を水、アルコール、カルボン酸、無水カルボン酸、ホスホン酸、五酸化燐及び二酸化硫黄から選択する、請求項6又は7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ポリイソブテンを五ハロゲン化燐及び場合によりハロゲン捕集剤と反応させ、引き続き場合により水、少なくとも1種のアルコール、少なくとも1種のチオール及び/又は少なくとも1種のアミンと反応させることによって得られる、ポリイソブテンホスホン酸含有組成物。
【請求項10】
請求項1から4までのいずれか1項の定義によるポリイソブテンホスホン酸又は請求項5又は9のいずれか1項によるポリイソブテンホスホン酸含有組成物の、有機又は無機材料の表面変性のための、腐蝕防止剤、摩擦減少剤、乳化剤、分散剤、定着剤、湿潤剤、湿潤防止剤、揮発剤又は印刷インキ添加物としての使用。
【請求項11】
及びRが相互に無関係にOR又はNRを表す、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
請求項1から4までのいずれか1項の定義によるポリイソブテンホスホン酸又は請求項5又は9のいずれか1項によるポリイソブテンホスホン酸含有組成物を含有する、動力燃料−及び滑剤添加物。
【請求項13】
主要量の炭化水素−動力燃料又は滑剤及び請求項1から4までのいずれか1項の定義によるポリイソブテンホスホン酸又は請求項5又は9のいずれか1項によるポリイソブテンホスホン酸含有組成物並びに少なくとも1種のその他の添加物を含有する、動力燃料−及び滑剤組成物。
【請求項14】
請求項1から4までのいずれか1項の定義によるポリイソブテンホスホン酸又は請求項5又は9のいずれか1項によるポリイソブテンホスホン酸含有組成物及び少なくとも1種の希釈剤並びに場合により少なくとも1種のその他の添加物を含有する、添加物濃縮物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I
【化1】

[式中、R及びRは相互に無関係にハロゲン、OR、SR又はNRを表し;R及びRは相互に無関係にH、O及びNR11から選択した原子団少なくとも1個により中断されているC〜C20−アルキル又はC〜C4000−アルキルを表し、その際、R及びRはそれが結合している窒素原子と一緒になって環を形成することもでき、R及びRは更にアリール、アラルキル又はシクロアルキルを表し;かつR11はR及びRで定義したものを表す]のホスホン酸基を有するポリイソブテンホスホン酸及びその塩を製造するに当たり、(a)ポリイソブテンを五ハロゲン化燐と反応させ、(b1)工程(a)で得られた反応生成物をハロゲン捕集剤と反応させかつ(c1)工程(b1)で得られた反応生成物を場合により水、少なくとも1種のアルコール、少なくとも1種のチオール及び/又は少なくとも1種のアミンと反応させるか又は(b2)工程(a)で得られた反応生成物を水、少なくとも1種のアルコール、少なくとも1種のチオール及び/又は少なくとも1種のアミンと反応させる、ポリイソブテンホスホン酸又はその塩の製法。
【請求項2】
工程(c1)でも工程(b2)でもチオールを使用しない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ハロゲン捕集剤を水、アルコール、カルボン酸、無水カルボン酸、ホスホン酸、五酸化燐及び二酸化硫黄から選択する、請求項1又は2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
ポリイソブテンホスホン酸が、式Iのホスホン酸基1個又は2個を有し、その際、これがポリイソブテンの鎖末端の少なくとも1個に存在している、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ポリイソブテン基が数平均分子量M100〜100000ダルトンを有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
(a)反応性ポリイソブテンを五ハロゲン化燐と反応させ、(b1)工程(a)で得られた反応生成物をハロゲン捕集剤と反応させかつ(c1)工程(b1)で得られた反応生成物を場合により水、少なくとも1種のアルコール及び/又は少なくとも1種のアミンと反応させるか又は(b2)工程(a)で得られた反応生成物を水、少なくとも1種のアルコール及び/又は少なくとも1種のアミンと反応させることによって得られる、ポリイソブテンホスホン酸含有組成物。
【請求項7】
一般式I
【化2】

[式中、R及びRは相互に無関係にハロゲン、OR又はNRを表し;R及びRは相互に無関係にH、O及びNR11から選択した原子団少なくとも1個により中断されているC〜C20−アルキル又はC〜C4000−アルキルを表し、その際、R及びRはそれが結合している窒素原子と一緒になって環を形成することもでき、R及びRは更にアリール、アラルキル又はシクロアルキルを表し;かつR11はR及びRで定義したものである]のホスホン酸基を有するポリイソブテンホスホン酸(その際、一般式Iのホスホン酸基は、炭素−炭素−二重結合の一部であるポリイソブテン基の炭素原子と結合している)又はその塩及び少なくとも1種の不活性固体又は液体担体を含有する、最高でも1000ppmの硫黄含量を有する組成物。
【請求項8】
一般式I
【化3】

[式中、基R及びRは相互に無関係にハロゲン、OH、NH、OR(式中、RはC〜C20−アルキルを表す)、NR(式中、RはH又はC〜C20−アルキルを表し、RはC〜C20−アルキルを表す)又は式V.a又はV.b
【化4】

(式中、R12及びR13は相互に無関係にH又はC〜C−アルキルを表し;かつlは1〜1000の数を表す)の基を表す]のホスホン酸基を有するポリイソブテンホスホン酸又はその塩及び少なくとも1種の不活性固体又は液体担体を含有する、最高でも1000ppmの硫黄含量を有する組成物。
【請求項9】
最高でも50ppmの硫黄含量を有する請求項7又は8に記載の組成物。
【請求項10】
ポリイソブテンホスホン酸が式Iのホスホン酸基1個又は2個を有し、その際これがポリイソブテンの鎖末端の少なくとも1個に存在している、請求項6から9までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
ポリイソブテン基が数平均分子量M100〜100000ダルトンを有する、請求項6から10までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項6から11までのいずれか1項に記載のポリイソブテンホスホン酸含有組成物の、有機又は無機材料の表面変性のための、腐蝕防止剤、摩擦減少剤、乳化剤、分散剤、定着剤、湿潤剤、湿潤防止剤、揮発剤又は印刷インキ添加物としての使用。
【請求項13】
印刷インキ添加物としての又はプラスチックの可染性、印刷性、接着力又は衝撃強さを改良するための請求項12に記載の使用。
【請求項14】
印刷インキ及び請求項1から11までのいずれか1項の定義によるポリイソブテンホスホン酸少なくとも1種又は請求項6から11までのいずれか1項の定義によるポリイソブテンホスホン酸含有組成物1種を含有する、印刷インキ組成物。
【請求項15】
ポリマー及び請求項1から11までのいずれか1項の定義によるポリイソブテンホスホン酸少なくとも1種又は請求項6から11までのいずれか1項の定義によるポリイソブテンホスホン酸含有組成物1種を含有する、ポリマー組成物。

【公表番号】特表2006−517241(P2006−517241A)
【公表日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−518664(P2005−518664)
【出願日】平成16年2月10日(2004.2.10)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001230
【国際公開番号】WO2004/072024
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】