説明

ポリイミドシート

【課題】ポリイミド粉体から作成した一般のポリイミドシートと同等の吸水率でありながら、ポリイミド粉体から作成したポリイミドシートでは成形できない大きさのポリイミドシートを提供する。
【解決手段】ポリイミドフィルムを複数枚積層して作成したポリイミドシートであって、該ポリイミドシートを1000時間水に浸漬させた後のシート片面の任意方向の寸法変化率が0.2%以下であることを特徴とするポリイミドシートであり、吸水率が1%以下、且つ体積が320cm以上であり、且つシートの少なくとも1面の面積が1600cm以上であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚のポリイミドフィルムを積層一体化してなるポリイミドシートに関する。さらに詳しくは、ポリイミド粉体から作成したポリイミドシートと同等の吸水率でありながら、ポリイミド粉体から作成したポリイミドシートでは成形できない大きさのポリイミドシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は優れた耐熱性と耐摩耗性を持つことから、機械・電機部品を始め幅広い用途で使用されている。
【0003】
従来のポリイミドシートは、ポリイミド粉末を成形することで製造されてきたが、この場合には、作成できるシートの大きさに限界があった。
【0004】
このため、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸やポリイミドフィルムを用いたポリイミドシートが考えられている。
【0005】
ポリアミック酸を使用する方法としては、ポリアミック酸溶液を支持体上に何度か重ねて積層する方法(例えば、特許文献1参照)が知られているが、この方法は本来異なった種類のポリアミック酸を層状に積層しようとするものではなく、また液膜の端部領域に外力を加えなければならないため、工程が煩雑化するという不都合があった。
【0006】
また、ポリイミドフィルムを積層してシート状に形成する方法(例えば、特許文献2参照)についても知られているが、この方法では異なるポリイミドフィルムを用いており、しかも同方法では接着剤の役割を持つポリイミドフィルムが必要となるため、大きさを任意に調整することはできるものの、実質的にはポリイミドシートと呼べるものではないばかりか、異なるポリイミドフィルムを使用しているため吸水率が大きく、一般的なポリイミド樹脂が使用される用途に適用するには不都合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−103148号公報
【特許文献2】特開2006−183040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、ポリイミド粉体から作成した一般のポリイミドシートと同等の吸水率でありながら、ポリイミド粉体から作成したポリイミドシートでは成形できない大きさのポリイミドシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため本発明によれば、ポリイミドフィルムを複数枚積層して作成したポリイミドシートであって、該ポリイミドシートを1000時間水に浸漬させた後のシート片面の任意方向の寸法変化率が0.2%以下であることを特徴とするポリイミドシートが提供される。
【0010】
なお、本発明のポリイミドシートにおいては、
吸水率が1%以下、且つ体積が320cm以上であり、且つシートの少なくとも1面の面積が1600cm以上であること、
吸水率が2%以下のポリイミドフィルムを複数枚積層してなること、
実質的に1種類のポリイミドフィルを複数枚積層してなること、
前記ポリイミドフィルムが、ジアミン成分としてパラフェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを主たる構成成分とすること、
前記ポリイミドフィルムが、酸二無水物成分としてピロメリット酸二無水物および3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を主たる構成成分とすること、
シート片面の任意方向の熱膨張係数が30ppm/℃以下であること、および
シート片面の任意方向の25℃雰囲気下における破断点ひずみが20%以上であること
が、いずれも好ましい条件として挙げられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ポリイミド粉体から作成したポリイミドシートと同等の吸水率でありながら、ポリイミド粉体から作成したポリイミドシートでは成形できない大きさのポリイミドシートを得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明のポリイミドシートについて具体的に説明する。
【0013】
本発明のポリイミドシートにおいて素材として用いるポリイミドフィルムの製造方法には特に限定はなく、一般的に知られている方法で製造されたポリイミドフィルムである。例えば、酸二無水物とジアミンを反応させたポリアミド酸溶液を流延またはフィルム状に押出し、乾燥、熱処理を行って、イミド化を進行させることにより、製膜するのが一般的である。
【0014】
この際、乾燥・熱処理は、流延またはフィルム状に押し出されたポリアミド酸溶液を、200〜600℃、好ましくは250〜550℃の高温雰囲気に維持した乾燥熱処理ゾーンを通過させることにより達成することができる。
【0015】
一般的に知られているイミド化の方法には、加熱することにより脱水をおこなう熱閉環法と触媒、脱水剤を使用して化学的に脱水をおこなう化学閉環法があるが、本発明に用いられるイミド化の方法は特に限定されない。ただ、線膨張係数を小さくすることから化学閉環法の方が好ましい。イミド化触媒としては、第三級アミン類が好ましく、具体例として、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ピリジン、イソキノリン、2−エチルピリジン、2−メチルピリジン、N−エチルモルフォリン、N−メチルモルフォリン、ジエチルシクロヘキシルアミン、N−ジメチルシクロヘキシルアミン、4−ベンゾイルピリジン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、2,4,6−コリジン、3,4−ルチジン、3,5−ルチジン、4−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−イソプロピルピリジン、N−ジメチルベンジルアミン、4−ベンジルピリジン、およびN−ジメチルドデシルアミンなどが挙げられる。また、脱水剤としては、有機カルボン酸無水物、N,N−ジアルキルカルボジイミド類、低級脂肪酸ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪酸ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪酸無水物、アリールホスホン酸ジハロゲン化物およびチオニルハロゲン化物が挙げられる。
【0016】
本発明で用いるポリイミドフィルムを構成する酸二無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−カルボキシフェニル)エーテル二無水物、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、デカヒドロ−ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,6,−ジクロロナフタレン−1,4,58−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられ、これらを単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0017】
これらの酸二無水物の中で好ましいものはピロメリット酸二無水物および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。好ましい形態としては、本発明で用いるポリイミドフィルムの全酸成分のうち、ピロメリット酸成分を0〜85mol%含有することが好ましく、さらに好ましくは10〜80mol%、さらに好ましくは20〜75mol%である。
【0018】
また、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸成分は0〜60mol%が好ましく、さらに好ましくは5〜50mol%、さらに好ましくは5〜40mol%である。
【0019】
本発明で用いるポリイミドフィルムを構成するジアミン成分としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、パラフェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、メタフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ベンチジン、4,4’−ジアミノジフェニルサルファイド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、2,6−ジアミノピリジン、ビス−(4−アミノフェニル)ジエチルシラン、ビス−(4−アミノフェニル)ジフェニルシラン、3,3’−ジクロロベンチジン、ビス−(4−アミノフェニル)エチルホスフィンオキサイド、ビス−(4−アミノフェニル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(4−アミノフェニル)−N−フェニルアミン、ビス−(4−アミノフェニル)−N−メチルアミン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,4’−ジメチル−3’,4−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシベンチジン、2,4−ビス(β−アミノ−t−ブチル)トルエン、ビス(p−β−アミノ−t−ブチル−フェニル)エーテル、p−ビス−(2−メチル−4−アミノ−ベンチル)ベンゼン、p−ビス−(1,1−ジメチル−5−アミノ−ベンチル)ベンゼン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3−ジアミノアダマンタン、3,37−ジアミノ−1,17−ジアダマンタン、3,3’−ジアミノ−1,1’−ジアダマンタン、ビス(p−アミノ−シクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ペプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノ−ドデカン、1,2−ビス−(3−アミノ−プロポキシ)エタン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、3−メトキシ−ヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、1,4−ジアミノ−シクロヘキサン、1,12−ジアミノ−オクタデカン、2,5−ジアミノ−1,3,4−オキサジアゾール、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、N−(3−アミノフェニル)−4−アミノベンズアミド、4−アミノフェニル−3−アミノベンゾエートなどが挙げられ、これらを単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0020】
これらのジアミンの中で好ましいものは4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよびパラフェニレンジアミンである。好ましい形態としては、本発明で用いるポリイミドフィルムの全ジアミン成分のうち、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを0〜95mol%含有することが好ましく、さらに好ましくは10〜90mol%、さらに好ましくは20〜85mol%である。
【0021】
また、パラフェニレンジアミン成分は0〜60mol%が好ましく、さらに好ましくは5〜50mol%、さらに好ましくは5〜40mol%である。
【0022】
本発明に係るポリイミドフィルムは、無機粒子などの添加物を、前駆体であるポリアミック酸をポリイミドへ環化、脱溶媒する前であれば、いかなる工程においても添加することが可能である。
【0023】
この時の添加物の好ましい形態は、粒子径が1.5μm以下の無機粒子をフィルム樹脂重量あたり0.1〜0.9重量%の割合で添加することが好ましい。
【0024】
また、本発明で用いるポリイミドフィルムの厚さは特に規定しないが、ポリイミドフィルムの厚さが薄い場合は積層枚数が多くなるために空気泡が発生し、ポリイミドシートの収率が悪化する可能性あり、また厚い場合はポリイミドフィルム内で相分離がおこり十分な密着力が得られない可能性あるために、5〜200μmの厚さが好ましい。また、より好ましくは10〜50μmである。
【0025】
さらに、得られたポリイミドフィルムは別途、熱処理、またはコロナ放電処理やプラズマ放電処理等の表面処理法によって処理されていても良い。
【0026】
本発明では、上記のポリイミドフィルムを複数枚積層圧着して一体化し、一枚のシートにする。積層圧着手段は特に限定されないが、通常は同種のポリイミドフィルムを所望の枚数積層し、適宜の温度と圧力で圧着する。加圧には通常のプレス機を用いることができるが、積層したポリイミドフィルム間に空気層ができるのを防止できることから、真空プレス機を用いることが好ましい。
【0027】
本発明におけるポリイミドシートは、1000時間水に浸漬させた後の寸法変化率が0.2%以下であることを特徴とする。ポリイミド樹脂は一般的に直方体のポリイミド樹脂を切削加工して用途に用いる場合が多い。しかし、最近は切削加工技術の向上や最終用途の高密度化、小型化により、従来よりもピッチの狭い加工が求められている。このため、上記吸水特性を持つポリイミドシートとすることで、ファインピッチ化にも対応できるのである。また、高精細な切削に耐えられるだけの破断点ひずみが必要となる。さらに、これらの樹脂は高い温度領域で使用されることが多いため、同温度領域における精度を保つためには低い熱膨張率が必要となる。
【0028】
本発明のポリイミドシートは、吸水率が2%以下のポリイミドフィルムから成ることが好ましい。これは、吸水率が2%以下のポリイミドフィルムを用いた場合のポリイミドシートは、積層後に吸水率が低下するためである。この時の吸水率が低下する機構は明らかではないが、吸水率を低下させるために用いているポリイミドフィルムの構成成分、特に酸二無水物に寄与しているものと考えられる。
【0029】
本発明のポリイミドシートは、任意の面の熱膨張係数が30ppm/℃以下であることが好ましく、より好ましくは20ppm/℃以下である。
【0030】
さらに、本発明のポリイミドシートは、任意の面の25℃雰囲気下での破断点ひずみが20%以上であることが好ましく、より好ましくは30%以上である。
【0031】
かくしてなる本発明のポリイミドシートは、ポリイミド粉体から作成したポリイミドシートと同等の吸水率でありながら、ポリイミド粉体から作成したポリイミドシートでは成形できない大きさに形成することができることから、耐熱性、摺動性、寸法安定性が求められる電子部品用途などに有効に利用することができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し本発明はこれらの実施例のみによって限定されない。また、シートの各物性は以下の方法に従って測定した。
【0033】
[吸水率]
適量の水にフィルム、またはシートを24時間浸漬させ、水に浸漬させる前後での重量変化分より求めた。
【0034】
[寸法変化率]
長さ50mm、幅10mm、高さ3mmの試験片を作成し、適量の水にシートを任意の時間浸漬させ、浸漬前後での長さ方向の長さの変化分より求めた。
【0035】
[破断点ひずみ]
ASTM D1780に準じた。この時の引っ張り速度は1mm/minであり、試験片は試験部が長さ22.5mm、幅4.75mm、つかみ部の幅が115.88mm、試験部、つかみ部を合わせた全体の長さが60mmである。
【0036】
[熱膨張係数]
長さ5mm、幅5mm、高さ3mmの試験片を作成し、10℃/minの昇温速度で、室温〜500℃まで測定した。このときの50〜250℃平均膨張の値を熱膨張係数とした。
【0037】
(ポリイミドフィルム1の作成)
ケミカルスターラーを備えた300mlセパラブルフラスコ中に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル10.01g(0.05mol)、パラフェニレンジアミン5.40g(0.05mol)、N,N’−ジメチルアセトアミド153.89gを入れ、窒素雰囲気下、室温で撹拌した。60分撹拌後、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物14.71g(0.05mol)とピロメリット酸二無水物10.25g(0.047mol)を数回に分けて投入し、更に180分撹拌後、ピロメリット酸二無水物のN,N’−ジメチルアセトアミド溶液(溶液濃度6wt%)適量を30分かけて滴下し、更に60分攪拌してポリアミック酸溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を連続製膜装置を用い、ポリイミドに転化すると同時に乾燥固化し、ポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムをポリイミドフィルム1とする。ポリイミドフィルム1の平均厚みは40μmであった。
【0038】
(ポリイミドフィルム2の作成)
ケミカルスターラーを備えた300mlセパラブルフラスコ中に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル15.02g(0.075mol)、パラフェニレンジアミン2.70g(0.025mol)、N,N’−ジメチルアセトアミド155.49gを入れ、窒素雰囲気下、室温で撹拌した。60分撹拌後、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物7.36g(0.025mol)とピロメリット酸二無水物15.70g(0.072mol)を数回に分けて投入し、更に180分撹拌後、ピロメリット酸二無水物のN,N’−ジメチルアセトアミド溶液(溶液濃度6wt%)適量を30分かけて滴下し、更に60分攪拌してポリアミック酸溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を連続製膜装置を用い、ポリイミドに転化すると同時に乾燥固化し、ポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムをポリイミドフィルム2とする。ポリイミドフィルム2の平均厚みは39μmであった。
【0039】
(ポリイミドフィルム3の作成)
ケミカルスターラーを備えた300mlセパラブルフラスコ中に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル20.02g(0.10mol)、N,N’−ジメチルアセトアミド157.09gを入れ、窒素雰囲気下、室温で撹拌した。60分撹拌後、ピロメリット酸二無水物21.16g(0.097mol)を数回に分けて投入し、更に120分撹拌後、ピロメリット酸二無水物のN,N’−ジメチルアセトアミド溶液(溶液濃度6wt%)適量を30分かけて滴下し、その後、平均粒子径0.30μm、粒子径0.15〜0.60μmの粒子が全粒子中87.2体積%のシリカのN,N’−ジメチルアセトアミドスラリーを上記ポリアミック酸1に樹脂重量あたり0.35重量%添加し、更に60分攪拌してポリアミック酸溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を連続製膜装置を用い、ポリイミドに転化すると同時に乾燥固化し、ポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムをポリイミドフィルム3とする。ポリイミドフィルム3の平均厚みは40μmであった。
【0040】
[実施例1、2]
得られたポリイミドフィルム1(実施例1),2(実施例2)を、それぞれ75枚積層し、真空プレス機を用いて350℃、10.2MPaで積層圧着することにより、ポリイミドシートを得た。積層条件、ポリイミドシートの寸法、吸水率を表1に示す。
【0041】
[比較例1]
得られたポリイミドフィルム3を75枚積層し、真空プレス機を用いて350℃、10.2MPaで積層圧着し、ポリイミドシートを得た。積層条件、ポリイミドシートの寸法、吸水率を表1に示す。
【0042】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のポリイミドシートは、ポリイミド粉体から作成したポリイミドシートと同等の吸水率でありながら、ポリイミド粉体から作成したポリイミドシートでは成形できない大きさに形成することができることから、耐熱性、摺動性、寸法安定性が求められる電子部品用途などに有効に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドフィルムを複数枚積層して作成したポリイミドシートであって、該ポリイミドシートを1000時間水に浸漬させた後のシート片面の任意方向の寸法変化率が0.2%以下であることを特徴とするポリイミドシート。
【請求項2】
吸水率が1%以下、且つ体積が320cm以上であり、且つシートの少なくとも1面の面積が1600cm以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミドシート。
【請求項3】
吸水率が2%以下のポリイミドフィルムを複数枚積層してなることを特徴とする請求項1または2に記載のポリイミドシート。
【請求項4】
実質的に1種類のポリイミドフィルを複数枚積層してなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリイミドシート。
【請求項5】
前記ポリイミドフィルムが、ジアミン成分としてパラフェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを主たる構成成分とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリイミドシート。
【請求項6】
前記ポリイミドフィルムが、酸二無水物成分としてピロメリット酸二無水物および3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を主たる構成成分とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリイミドシート。
【請求項7】
シート片面の任意方向の熱膨張係数が30ppm/℃以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリイミドシート。
【請求項8】
シート片面の任意方向の25℃雰囲気下における破断点ひずみが20%以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリイミドシート。

【公開番号】特開2011−167903(P2011−167903A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33168(P2010−33168)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000219266)東レ・デュポン株式会社 (288)
【Fターム(参考)】