説明

ポリイミドベルトおよびその製造方法

【課題】製造が簡便で、かつ十分な強度を有するポリイミドベルトおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】テトラカルボン酸成分とジアミン成分とからなるポリイミドを含むポリイミドベルトであって、ジアミン成分が一般式(A)および(B)で表される芳香族ジアミン化合物メタ体からなる1種類またはそれ以上のジアミンメタ体を含むことを特徴とするポリイミドベルト。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリイミドベルト、特にポリイミドシームレスベルト、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モノクロ/カラー機の複写機、ファクシミリ、およびプリンター等の電子写真式画像形成装置において感光体や中間転写体、ならびに定着装置の定着ベルト等には、薄肉の樹脂ベルトがよく用いられる。そのような樹脂ベルトは変形が可能なため、装置の小径化に有用である。樹脂ベルトに継ぎ目(シーム)があると、出力画像に継ぎ目に起因する欠陥が生じるので、継ぎ目がないシームレスベルトが特に好ましい。樹脂ベルトを構成する樹脂としては、耐熱性の観点からポリイミドが好適に使用されている。
【0003】
ポリイミドは有機溶媒に対して溶解困難なため、ポリイミドベルトは従来よりポリイミド前駆体であるポリアミック酸を用いて製造される。例えば、ポリイミドベルトはポリアミック酸溶液を金型表面に塗布し、塗膜を加熱して乾燥およびイミド化反応を行い、得られたポリイミド皮膜を脱型する方法によって製造される。
【0004】
しかしながら、ポリイミド前駆体を用いたポリイミドベルトの製造方法においては、イミド化反応を行うため、製造が煩雑であった。またイミド化反応は温度・時間条件の制御が複雑であり、高温での長時間焼成を必要とするため、成膜安定性や高い寸法精度を確保することが困難であった。
【0005】
そこで可溶性ポリイミドを用いたポリイミドベルトの製造方法が提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、そのような方法では十分な強度を有するポリイミドベルトを製造することが困難であった。
【特許文献1】特開2005−215028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、製造が簡便で、かつ十分な強度を有するポリイミドベルトおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
テトラカルボン酸成分とジアミン成分とからなるポリイミドを含むポリイミドベルトであって、
ジアミン成分が一般式(A)および一般式(B)で表される芳香族ジアミン化合物メタ体からなる群から選択される1種類またはそれ以上のジアミンメタ体を含むことを特徴とするポリイミドベルト;
【化1】

(一般式(A)中、Rは炭素数1〜10のアルキル基である;n1は1〜4の整数である);
【化2】

(一般式(B)中、RおよびRはそれぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル基である;n2およびn3はそれぞれ独立して0〜4の整数である;Xは2価の有機基である;n4は1〜10の整数である)に関する。
【0008】
本発明はまた、
ポリイミド溶液を金型表面に塗布して塗膜を形成し、塗膜に含まれる溶媒を除去することを特徴とするポリイミドベルトの製造方法であって、
ポリイミドがテトラカルボン酸成分とジアミン成分とからなり、該ジアミン成分が上記した一般式(A)および一般式(B)で表される芳香族ジアミン化合物メタ体からなる群から選択される1種類またはそれ以上のジアミンメタ体を含むポリイミドベルトの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリイミドベルトを構成するポリイミドは有機溶媒に可溶性を示すので、製造が簡便である。詳しくはそのようなポリイミドは溶液の形態でベルトの製造に直接的に使用できるので、ベルトの製造方法において、ポリアミック酸のイミド化反応を行う必要がない。そのため、当該方法では、イミド化のための反応温度よりも低い温度で、溶媒を除去するのみで皮膜化が可能である。その結果、本発明のポリイミドベルトは、イミド化反応の不均一さによるポリイミドベルトの特性ムラを抑えることができる(成膜安定性の向上)。また、作業時間の短縮によって生産効率が向上する。さらに、均一な特性を持ったベルトが得られるため、膜品質の安定化を向上することができる(寸法精度の向上)。しかも、本発明のポリイミドベルトは強度に十分に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のポリイミドベルトを構成するポリイミドはテトラカルボン酸成分とジアミン成分との反応により得られたものであり、ジアミン成分として特定の芳香族ジアミンを使用したものである。
【0011】
ジアミン成分は、上記した一般式(A)および一般式(B)で表される芳香族ジアミン化合物メタ体からなる群から選択される1種類またはそれ以上のジアミンメタ体を含む。これによって、ポリイミドの有機溶媒に対する可溶性を確保しながら、ポリイミドベルトの強度を十分に向上させることができる。ジアミン成分が当該ジアミンメタ体を含まない場合、ベルトの十分な強度と、ポリイミドの可溶性とを両立できない。一般式(A)のジアミンメタ体は、2個のアミノ基が共通して結合するベンゼン環において当該2個のアミノ基が互いにメタ位に結合している、という意味でメタ体と呼ぶものである。一般式(B)のジアミンメタ体は、最も左側のベンゼン環に着目したとき、アミノ基と、アミノ基含有基とが互いにメタ位に結合している、という意味でメタ体と呼ぶものである。以下、一般式(A)で表されるジアミンメタ体を「ジアミンA」、一般式(B)で表されるジアミンメタ体を「ジアミンB」と呼ぶものとする。
【0012】
前記した一般式(A)中、Rは炭素数1〜10、好ましくは1〜3、より好ましくは1のアルキル基である。アルキル基の具体例として、例えば、メチル基、エチル基、n−または2−プロピル基、n−、sec−またはtert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。アルキル基の炭素数が大きすぎると、可溶しやすくなるが、強度・耐熱性が低下するとともに、重合が不安定となってしまう。ジアミンAが2以上のRを有する場合、それらのRはそれぞれ独立して選択されてよい。
【0013】
n1は1〜4の整数であり、好ましくは1〜2の整数、より好ましくは1である。n1が0であると、強度が十分なベルトを得ることができない。
【0014】
好ましいジアミンAとして、例えば、一般式(a1)および一般式(a2)で表されるジアミンが挙げられる。以下、一般式(a1)で表されるジアミンを「ジアミンa1」、一般式(a2)で表されるジアミンを「ジアミンa2」と呼ぶものとする。
【0015】
【化3】

【0016】
一般式(a1)中、R11は上記Rと同様であり、好ましいR11は炭素数1〜3、より好ましくは1のアルキル基である。
【0017】
ジアミンa1の具体例として、例えば、2,4−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノエチルベンゼン、2,4−ジアミノプロピルベンゼン等が挙げられる。
【0018】
一般式(a2)中、R12は上記Rと同様であり、好ましいR12は炭素数1〜3、より好ましくは1のアルキル基である。
【0019】
ジアミンa2の具体例として、例えば、3,5−ジアミノトルエン、3,5−ジアミノエチルベンゼン、3,5−ジアミノプロピルベンゼン等が挙げられる。
【0020】
前記した一般式(B)中、RおよびRはそれぞれ独立して炭素数1〜10、好ましくは1〜3、特に1のアルキル基である。アルキル基の具体例として、Rの具体例と同様のものが挙げられる。アルキル基の炭素数が大きすぎると、可溶しやすくなるが、強度・耐熱性が低下するとともに、重合が不安定となってしまう。ジアミンBが2以上のRを有する場合、それらのRはそれぞれ独立して選択されてよい。ジアミンBが2以上のRを有する場合、それらのRはそれぞれ独立して選択されてよい。
【0021】
n2およびn3はそれぞれ独立して0〜4の整数であり、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0または1である。
【0022】
Xは2価の有機基であり、例えば、単結合(−)、−SO−、−O−、−CO−NH−、−CH−、−CF−、1,4−フェニレン基、−Si−、−C(CH−等が挙げられる。好ましいXは単結合(−)、−SO−、−O−、特に単結合(−)である。
【0023】
n4は1〜10の整数であり、好ましくは1〜3の整数、より好ましくは1である。
【0024】
好ましいジアミンBとして、例えば、一般式(b1)、一般式(b2)および一般式(b3)で表されるジアミンが挙げられる。以下、一般式(b1)で表されるジアミンを「ジアミンb1」、一般式(b2)で表されるジアミンを「ジアミンb2」、一般式(b3)で表されるジアミンを「ジアミンb3」と呼ぶものとする。
【0025】
【化4】

【0026】
一般式(b1)中、R21およびR22はそれぞれ独立して上記Rと同様であり、好ましいR21およびR22はそれぞれ独立して炭素数1〜3、より好ましくは1のアルキル基である。
n5およびn6はそれぞれ独立して上記n2およびn3と同様であり、好ましいn5およびn6はそれぞれ独立して0または1である。
【0027】
ジアミンb1の具体例として、例えば、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメチル−4,5’−ジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0028】
一般式(b2)中、R23およびR24はそれぞれ独立して上記Rと同様であり、好ましいR23およびR24はそれぞれ独立して炭素数1〜3、より好ましくは1のアルキル基である。
n7およびn8はそれぞれ独立して上記n2およびn3と同様であり、好ましいn7およびn8はそれぞれ独立して0または1である。
【0029】
ジアミンb2の具体例として、例えば、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,5’−ジアミノジフェニルエーテル等が挙げられる。
【0030】
一般式(b3)中、R25およびR26はそれぞれ独立して上記Rと同様であり、好ましいR25およびR26はそれぞれ独立して炭素数1〜3、より好ましくは1のアルキル基である。
n9およびn10はそれぞれ独立して上記n2およびn3と同様であり、好ましいn9およびn10はそれぞれ独立して0または1である。
【0031】
ジアミンb3の具体例として、例えば、3,3’−ジメチル−4,5’−ジアミノビフェニル、3,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。
【0032】
ジアミン成分は、ベルトの強度、耐熱性確保の観点から、少なくともジアミンAを含むことが好ましい。このときジアミン成分はジアミンBを含んでも、含まなくても良い。
【0033】
ジアミン成分として上記したジアミンメタ体以外に他のジアミン化合物を含んでも良い。他のジアミン化合物は、ポリイミドベルトの分野でポリイミドを構成するジアミン成分として使用されているものであれば特に制限されず、例えば、以下に示す化合物が使用可能である。1,4−ジアミノベンゼン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、9,9ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサンなど。他のジアミン化合物は、上記化合物の中でも、ポリイミドベルトの強度の観点から、ベンゼン環やナフタレン環等の芳香環を含有する芳香族ジアミン化合物を使用する事が好ましい。
【0034】
ジアミン成分に含まれる上記したジアミンメタ体の含有量は、本発明の目的が達成される限り特に制限されず、例えばジアミン成分全量に対して50重量%以上であり、ポリイミドベルトの強度と可溶性の両立の観点から好ましくは80〜100重量%、より好ましくは100重量%である。
【0035】
テトラカルボン酸成分は、ポリイミドベルトの分野でポリイミドを構成するテトラカルボン酸成分として使用されているものであれば特に制限されず、例えば、以下に示す化合物が使用可能である。ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタルサン酸二無水物、4,4’−ヘキサフルオロプロピリデンビスフタル酸二無水物、m−タ−フェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、p−タ−フェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物など。テトラカルボン酸成分は単独または2種以上組み合わせて用いることができる。テトラカルボン酸成分は、上記化合物の中でも、ポリイミドベルトの強度の観点から、ベンゼン環やナフタレン環等の芳香環を含有する芳香族テトラカルボン酸二無水物を使用する事が好ましい。
【0036】
テトラカルボン酸成分は、ベルトの強度と耐熱性の観点から、少なくともビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物を含むことが好ましい。より好ましくはビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物とピロメリット酸二無水物とを含む。
【0037】
テトラカルボン酸成分に含まれる芳香族テトラカルボン酸二無水物の含有量は、ポリイミドベルトの強度の観点から、テトラカルボン酸成分全量に対して50重量%以上であることが好ましく、より好ましくは90〜100重量%である。
【0038】
本発明のベルトを構成するポリイミドは上記したテトラカルボン酸成分およびジアミン成分を有機溶媒存在下で加熱・撹拌し、イミド化反応により重合させることにより得ることができる。
【0039】
テトラカルボン酸成分とジアミン成分との反応モル比率(テトラカルボン酸成分/ジアミン成分)は等量とし、ポリイミドベルトの強度の観点から、0.95〜1.05の範囲が好ましく、0.97〜1.03の範囲がより好ましい。
【0040】
反応溶液中の固形分濃度は5〜50重量%の範囲が好ましく、15〜25重量%の範囲で重合反応させる事がより好ましい。固形分濃度が5%未満では反応速度が遅く、ポリイミドベルトとしての必要な強度を得るまでに時間を要する。固形分濃度が50%を超えると、重合中のポリイミド溶液の粘度が増大し、全体を効率よく攪拌できず不均一な重合が起こるので、ポリイミドベルトとしての強度が不均一となる。
【0041】
重合温度は特に制限されるものではなく、例えば150〜190℃の範囲が好適である。
【0042】
有機溶媒は極性溶媒が使用される。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミ、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、ジオキソラン、ジオキサン、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、テトラヒドロフランなどが挙げられる。そのような有機極性溶媒を使用するので、ポリイミドを溶液の形態で得ることができる。
【0043】
反応溶液にはイミド化促進剤および/または共沸溶媒をさらに添加することが好ましい。
イミド化促進剤として、例えば、ピリジン等が使用可能である。
【0044】
共沸溶媒として、例えば、キシレン、トルエン、メタノール、エタノール、ブタノールなどが使用可能である。共沸溶媒を添加することにより、重合時のイミド化により生成される水を除去できる。
【0045】
ポリイミドは有機溶媒に溶解された形態で得られるので、重合後の反応溶液をそのままポリイミドベルトの製造に使用することができる。
【0046】
本発明のポリイミドベルトを構成するポリイミドは、例えば、一般式(u1)または一般式(u2)で示される構成単位を有するものである。
【0047】
【化5】

【0048】
一般式(u1)で示される構成単位は前記ジアミンAとビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物とからなるものであり、当該式中、Rおよびn1は一般式(A)においてと同様である。
【0049】
【化6】

【0050】
一般式(u2)で示される構成単位は前記ジアミンBとビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物とからなるものであり、当該式中、R、R、n2、n3、n4およびXは一般式(B)においてと同様である。
【0051】
本発明のポリイミドベルトを構成するポリイミドの重量平均分子量(Mw)は、ガラス転移点が後述の範囲内になるような範囲であればよく、通常は30000以上、特に50000以上である。
重量平均分子量はGPC(ゲル浸透クロマトグラフ分析)によって測定可能である。
【0052】
ポリイミドのガラス転移温度は特に制限されるものではないが、通常は180℃以上であり、好ましくは180〜350℃である。特にベルトを電子写真式画像形成装置の定着ベルトとして使用する場合は、上記ガラス転移温度を有することが好ましい。
本明細書中、ガラス転移温度はTMA(熱機械分析装置)によって測定された値を用いている。
【0053】
本発明のポリイミドベルトは、本発明の目的が達成される限り、上記したポリイミドだけでなく、当該ポリイミド以外の他のポリイミド、ポリアミド、ポリエステル等の他のポリマーからなっていてよい。好ましいベルトは上記したポリイミドのみからなっている。
【0054】
本発明のポリイミドベルトは、上記したポリイミドの溶液を金型表面に塗布して塗膜を形成し、塗膜に含まれる溶媒を除去することによって製造できる。本発明のポリイミドベルトは継ぎ目があっても、またはなくてもよいが、電子写真式画像形成装置の樹脂ベルトとして使用されるときの画像品質の観点から、継ぎ目のないシームレスベルトであることが好ましい。
以下、特に好ましい態様として、ポリイミド製の環状シームレスベルトの製造方法について詳細に説明する。
【0055】
本発明の環状シームレスベルトの製造方法は、上記したポリイミドを使用することを特徴とし、通常は以下の工程を含むものである;
上記ポリイミドの溶液を金型の外周面または内周面に塗布し、塗膜を形成する塗布工程;
塗膜に含まれる溶媒を除去し、皮膜を形成する溶媒除去工程;および
皮膜を金型から剥離する脱型工程。
【0056】
(塗布工程)
本工程では、上記したポリイミドを有機溶媒に溶解させてポリイミド溶液を調製し、当該溶液を金型表面に塗布して、塗膜を形成する。
【0057】
ポリイミド溶液は重合反応後の反応溶液をそのまま使用してもよいし、前記した有機溶媒にポリイミドを溶解して調製してもよい。ポリイミド溶液中の固形分濃度は、所望のベルト厚み等に依存して決定され、通常は前記した反応溶液中の固形分濃度と同様の範囲内であってよい。
【0058】
得られるベルトに導電性を付与する場合には、ポリイミド溶液の中に導電性物質等の添加剤を分散させることができる。
導電性物質としては、例えば、カーボンブラック、カーボンブラックを造粒したカーボンビーズ、カーボンファイバー、グラファイト等の炭素系物質、銅、銀、アルミニウム等の金属又は合金、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、SnO2−In23複合酸化物等の導電性金属酸化物等が挙げられる。
【0059】
金型は円筒形状また円柱形状を有し、その外周面または内周面にポリイミド溶液が塗布される。ポリイミド溶液が金型外周面に塗布される場合、金型は中空体であってもよいし、または中実体であってもよい。ポリイミド溶液が金型内周面に塗布される場合、金型は中空体である。金型の構成材料としては特に制限されず、ベルトの製造時において加熱を行う場合は、当該加熱によっても変形が起こらないものが使用される。例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、鋼、ステンレス等の金属、アルミナ、炭化珪素等のセラミックス、およびポリイミド、ポリアミドイミド等の耐熱樹脂等が好ましく使用される。金型におけるポリイミド溶液塗布面には離型層が形成されていることが好ましい。離型層は特に制限されず、例えば、シリコーン樹脂やフッ素含有樹脂等を被覆したり、シリコーン系、フッ素系離型剤をコーティングすることによって形成される。
【0060】
塗布方法としては特に制限されず、環状シームレス成形体の製造分野で従来から使用されている方法が使用可能である。例えば、リングコート法、ブレードコート法、バーコート法、ロールコート法等が挙げられる。
【0061】
(溶媒除去工程)
本工程では、塗膜に含まれる溶媒を除去し、皮膜を形成する。
溶媒の除去は1段階で行ってもよいが、段階的に行うことが好ましい。例えば、自立できる程度に溶媒を除去する予備乾燥を行った後、ベルトとして使用可能な程度まで溶媒を除去する完全乾燥を行う。
【0062】
予備乾燥のための方法は特に制限されず、加熱する方法を採用しても、またはポリイミドに対しての貧溶媒あるいは水などに浸漬することで塗膜中から溶媒のみを溶出させる方法などを採用してもよい。
完全乾燥のための方法も特に制限されず、通常は加熱する方法を採用する。例えば、220〜250℃で10分間〜3時間の加熱乾燥を行なう事が好ましい。
【0063】
(脱型工程)
本工程では、ポリイミド皮膜を金型から剥離し、脱型する。
脱型方法は皮膜を剥離できれば特に制限されず、例えば、金型と皮膜との隙間に、加圧空気を注入することで、皮膜を膨張させて剥離する。加圧空気の圧力は、一般的な空気圧縮機で得られる数気圧程度でよい。
【0064】
剥離された皮膜が所定の幅を有している場合はそのままポリイミド環状シームレスベルトとして使用できる。皮膜が所定幅より大きい場合は、不要部分を切断して、ポリイミド環状シームレスベルトを得ることができる。皮膜が所定幅の整数倍の長さを有している場合は、所定幅に切断するだけで、そのまま使用可能なポリイミド環状シームレスベルトを複数個得ることができる。
【0065】
ベルトの厚みは脂塗膜の厚みを調整することによって制御可能で、例えば、20〜1000μm、特に30〜100μmとすることができる。
【0066】
ベルト表面には、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等の他のポリマーからなる樹脂層が形成されてもよい。その場合には、溶媒除去工程後であって、脱型工程前に、皮膜を外周面に有した金型に対して、所定のポリマーからなるチューブを被せ、加熱溶着処理を行った後、脱型工程を行うことが好ましい。
【実施例】
【0067】
<実施例1>
1000mlセパラブルフラスコ中に、2,4−ジアミノトルエン36.65g(0.30mol)とN−メチル−2−ピロリドン136.94gとを入れ、窒素雰囲気下、45℃〜50℃で攪拌しながら加熱し溶解させた。30分後、ピロメリット酸二無水物を32.72g(0.15mol)とN−メチル−2−ピロリドン50gの溶液を数回に分けて投入した。さらに86.94gのN−メチル−2−ピロリドンで容器に残ったピロメリット酸二無水物を洗い流し入れた。共沸溶媒としてキシレンを30.0g加え180℃まで温度を上げ1時間撹拌した。その後、60℃まで温度を下げてビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物44.13g(0.15mol)とN−メチル−2−ピロリドン50gの溶液を数回に分けて投入した。N−メチル−2−ピロリドン86.94gで容器に残ったビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物を洗い流し入れた。共沸溶媒としてキシレンを30.0g、イミド化促進剤としてピリジンを2.37g(0.03mol)を加え、再度180℃まで温度を上げ5時間撹拌した。さらに190℃で1時間掛けてキシレンを除去した。得られたポリイミド溶液は赤褐色で溶解性は良好であった。粘度はブルックフィールド社製DV−II+Proビスコメーターにて測定したところ63000mmPa・s(25℃)であった。得られたポリイミド溶液をフッ素系の離型剤を塗布したアルミパイプの内側にポリイミド溶液を流し入れバーにより均一にした後、回転させながら90℃で30分乾燥させた。さらに熱風乾燥炉中で段階的に昇温し最終的に250℃にて30分乾燥させ溶媒を除去させた。このポリイミドシームレスベルトをTMAによりガラス転移温度を測定したところ310℃であった。引張り強度110MPa、弾性率2200MPaであった。Mwは112000であった。
【0068】
<実施例2>
1000mlセパラブルフラスコ中に、2,4−ジアミノトルエン21.99g(0.18mol)とN−メチル−2−ピロリドン102.88gとを入れ、窒素雰囲気下、45℃〜50℃で攪拌しながら加熱し溶解させた。30分後、ピロメリット酸二無水物を19.63g(0.09mol)とN−メチル−2−ピロリドン50gの溶液を数回に分けて投入した。さらに53.21gのN−メチル−2−ピロリドンで容器に残ったピロメリット酸二無水物を洗い流し入れた。共沸溶媒としてキシレンを30.0g加え180℃まで温度を上げ1時間撹拌した。その後、60℃まで温度を下げてビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物52.96g(0.18mol)とN−メチル−2−ピロリドン60gの溶液を数回に分けて投入した。N−メチル−2−ピロリドン40gで容器に残ったビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物を洗い流し入れで30分攪拌した。さらに3,4’−ジアミノジフェニルエーテル18.02g(0.09mol)とN−メチル−2−ピロリドン50gの溶液を加え、N−メチル−2−ピロリドン55.76gで容器に残った3,4’−ジアミノジフェニルエーテルを洗い流し入れた。共沸溶媒としてキシレンを30.0g、イミド化促進剤としてピリジンを2.14g(0.027mol)を加え、再度180℃まで温度を上げ5時間攪拌した。さらに190℃で1時間掛けてキシレンを除去した。
得られたポリイミド溶液は赤褐色で溶解性は良好であった。粘度はブルックフィールド社製DV−II+Proビスコメーターにて測定したところ51000mmPa・s(25℃)であった。得られたポリイミド溶液をフッ素系の離型剤を塗布したアルミパイプの内側にポリイミド溶液を流し入れバーにより均一にした後、回転させながら90℃で30分乾燥させた。さらに熱風乾燥炉中で段階的に昇温し最終的に250℃にて30分乾燥させ溶媒を除去させた。このポリイミドシームレスベルトをTMAによりガラス転移温度を測定したところ290℃であった。引張り強度105MPa、弾性率2100MPaであった。Mwは105000であった。
【0069】
<実施例3>
1000mlセパラブルフラスコ中に、3,5−ジアミノトルエン36.65g(0.30mol)とN−メチル−2−ピロリドン136.94gとを入れ、窒素雰囲気下、45℃〜50℃で撹拌しながら加熱し溶解させた。30分後、ピロメリット酸二無水物を32.72g(0.15mol)とN−メチル−2−ピロリドン50gの溶液を数回に分けて投入した。さらに86.94gのN−メチル−2−ピロリドンで容器に残ったピロメリット酸二無水物を洗い流し入れた。共沸溶媒としてキシレンを30.0g加え180℃まで温度を上げ1時間撹拌した。その後、60度まで温度を下げてビフェニル−3,4,3’4’−テトラカルボン酸二無水物44.13g(0.15mol)とN−メチル−2−ピロリドン50gの溶液を数回に分けて投入した。N−メチル−2−ピロリドン86.94gで容器に残ったビフェニル−3,4,3’4’−テトラカルボン酸二無水物を洗い流し入れた。共沸溶媒としてキシレンを30.0g、イミド化促進剤としてピリジンを2.37g(0.03mol)を加え、再度180℃まで温度を上げ5時間撹拌した。さらに190℃で1時間掛けてキシレンを除去した。得られたポリイミド溶液は赤褐色で溶解性は良好であった。粘度はブルックフィールド社製DV−II+Proビスコメーターにて測定したところ72000mmPa・s(25℃)であった。得られたポリイミド溶液をフッ素系の離型剤を塗布したアルミパイプの内側にポリイミド溶液を流し入れバーにより均一にした後、回転させながら90℃で30分乾燥させた。さらに熱風乾燥炉中で段階的に昇温し最終的に250℃にて30分乾燥させ溶媒を除去させた。このポリイミドシームレスベルトをTMA(熱機械分析装置)によりガラス転移温度を測定したところ302℃であった。引張り強度107MPa、弾性率2100MPaであった。Mwは94000であった。
【0070】
<実施例4>
1000mlセパラブルフラスコ中に、2,4−ジアミノトルエン21.99g(0.18mol)とN−メチル−2−ピロリドン107.21gとを入れ、窒素雰囲気下、45℃〜50℃で撹拌しながら加熱し溶解させた。30分後、ピロメリット酸二無水物を19.63g(0.09mol)とN−メチル−2−ピロリドン50gの溶液を数回に分けて投入した。さらに77.21gのN−メチル−2−ピロリドンで容器に残ったピロメリット酸二無水物を洗い流し入れた。共沸溶媒としてキシレンを30.0g加え180℃まで温度を上げ1時間撹拌した。その後、60度まで温度を下げてビフェニル−3,4,3’4’−テトラカルボン酸二無水物52.96g(0.18mol)とN−メチル−2−ピロリドン60gの溶液を数回に分けて投入した。N−メチル−2−ピロリドン47.21gで容器に残ったビフェニル−3,4,3’4’−テトラカルボン酸二無水物を洗い流し入れて30分撹拌した。さらに3,4’−ジアミノジフェニルスルホン22.35g(0.09mol)とN−メチル−2−ピロリドン50gの溶液を加え、N−メチル−2−ピロリドン57.21gで容器に残った,4,4’−ジアミノジフェニルスルホンを洗い流し入れた。共沸溶媒としてキシレンを30.0g、イミド化促進剤としてピリジンを2.14g(0.027mol)を加え、再度180℃まで温度を上げ5時間撹拌した。さらに190℃で1時間掛けてキシレンを除去した。得られたポリイミド溶液は赤褐色で溶解性は良好であった。粘度はブルックフィールド社製DV−II+Proビスコメーターにて測定したところ63000mmPa・s(25℃)であった。得られたポリイミド溶液をフッ素系の離型剤を塗布したアルミパイプの内側にポリイミド溶液を流し入れバーにより均一にした後、回転させながら90℃で30分乾燥させた。さらに熱風乾燥炉中で段階的に昇温し最終的に250℃にて30分乾燥させ溶媒を除去させた。このポリイミドシームレスベルトをTMA(熱機械分析装置)によりガラス転移温度を測定したところ280℃であった。引張り強度120MPa、弾性率2300MPaであった。Mwは88000であった。
【0071】
<実施例5>
1000mlセパラブルフラスコ中に、2,4−ジアミノトルエン21.99g(0.18mol)とN−メチル−2−ピロリドン103.97gとを入れ、窒素雰囲気下、45℃〜50℃で撹拌しながら加熱し溶解させた。30分後、ピロメリット酸二無水物を19.63g(0.09mol)とN−メチル−2−ピロリドン50gの溶液を数回に分けて投入した。さらに53.97gのN−メチル−2−ピロリドンで容器に残ったピロメリット酸二無水物を洗い流し入れた。共沸溶媒としてキシレンを30.0g加え180℃まで温度を上げ1時間撹拌した。その後、60度まで温度を下げてビフェニル−3,4,3’4’−テトラカルボン酸二無水物52.96g(0.18mol)とN−メチル−2−ピロリドン60gの溶液を数回に分けて投入した。N−メチル−2−ピロリドン43.97gで容器に残ったビフェニル−3,4,3’4’−テトラカルボン酸二無水物を洗い流し入れで30分撹拌した。さらに3,3’−ジメチル−4,5’−ジアミノビフェニル19.11g(0.09mol)とN−メチル−2−ピロリドン50gの溶液を加え、N−メチル−2−ピロリドン53.97gで容器に残った3,3’−ジメチル−4,5’−ジアミノビフェニルを洗い流し入れた。共沸溶媒としてキシレンを30.0g、イミド化促進剤としてピリジンを2.14g(0.027mol)を加え、再度180℃まで温度を上げ5時間撹拌した。さらに190℃で1時間掛けてキシレンを除去した。得られたポリイミド溶液は赤褐色で溶解性は良好であった。粘度はブルックフィールド社製DV−II+Proビスコメーターにて測定したところ122000mmPa・s(25℃)であった。得られたポリイミド溶液を固形分濃度14%に希釈した後、フッ素系の離型剤を塗布したアルミパイプの内側にポリイミド溶液を流し入れバーにより均一にした後、回転させながら90℃で30分乾燥させた。さらに熱風乾燥炉中で段階的に昇温し最終的に250℃にて30分乾燥させ溶媒を除去させた。このポリイミドシームレスベルトをTMA(熱機械分析装置)によりガラス転移温度を測定したところ298℃であった。引張り強度115MPa、弾性率3000MPaであった。Mwは97000であった。
【0072】
<比較例1>
1000mlセパラブルフラスコ中に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル36.04g(0.18mol)とN−メチル−2−ピロリドン102.88gとを入れ、窒素雰囲気下、45℃〜50℃で攪拌しながら加熱し溶解させた。30分後、ピロメリット酸二無水物を19.63g(0.09mol)とN−メチル−2−ピロリドン50gの溶液を数回に分けて投入した。さらに53.21gのN−メチル−2−ピロリドンで容器に残ったピロメリット酸二無水物を洗い流し入れた。共沸溶媒としてキシレンを30.0g加え180℃まで温度を上げ1時間撹拌した。その後、60℃まで温度を下げてビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物52.96g(0.18mol)とN−メチル−2−ピロリドン60gの溶液を数回に分けて投入した。N−メチル−2−ピロリドン40gで容器に残ったビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物を洗い流し入れで30分攪拌した。さらに1,4−ジアミノベンゼン9.73g(0.09mol)とN−メチル−2−ピロリドン50gの溶液を加え、N−メチル−2−ピロリドン55.76gで容器に残った1,4−ジアミノベンゼンを洗い流し入れた。共沸溶媒としてキシレンを30.0g、イミド化促進剤としてピリジンを2.14g(0.027mol)を加え、再度180℃まで温度を上げた。1時間程で反応溶液中に黄色いポリイミド固形物が析出し、可溶性ポリイミド溶液とはならなかった。
【0073】
<比較例2>
1000mlセパラブルフラスコ中に、1,3−ジアミノベンゼン32.44g(0.30mol)とN−メチル−2−ピロリドン131.32gとを入れ、窒素雰囲気下、45℃〜50℃で撹拌しながら加熱し溶解させた。30分後、ピロメリット酸二無水物を32.72g(0.15mol)とN−メチル−2−ピロリドン50gの溶液を数回に分けて投入した。さらに81.32gのN−メチル−2−ピロリドンで容器に残ったピロメリット酸二無水物を洗い流し入れた。共沸溶媒としてキシレンを30.0g加え180℃まで温度を上げ1時間撹拌した。その後、60度まで温度を下げてビフェニル−3,4,3’4’−テトラカルボン酸二無水物44.13g(0.15mol)とN−メチル−2−ピロリドン50gの溶液を数回に分けて投入した。N−メチル−2−ピロリドン81.32gで容器に残ったビフェニル−3,4,3’4’−テトラカルボン酸二無水物を洗い流し入れた。共沸溶媒としてキシレンを30.0g、イミド化促進剤としてピリジンを2.37g(0.03mol)を加え、再度180℃まで温度を上げた。1時間程で反応溶液中に黄色いポリイミド固形物が析出し、可溶性ポリイミド溶液とはならなかった。
【0074】
<比較例3>
1000mlセパラブルフラスコ中に、2,5−ジアミノトルエン36.65g(0.30mol)とN−メチル−2−ピロリドン136.95gとを入れ、窒素雰囲気下、45℃〜50℃で撹拌しながら加熱し溶解させた。30分後、ピロメリット酸二無水物を32.72g(0.15mol)とN−メチル−2−ピロリドン50gの溶液を数回に分けて投入した。さらに86.95gのN−メチル−2−ピロリドンで容器に残ったピロメリット酸二無水物を洗い流し入れた。共沸溶媒としてキシレンを30.0g加え180℃まで温度を上げ1時間撹拌した。その後、60度まで温度を下げてビフェニル−3,4,3’4’−テトラカルボン酸二無水物44.13g(0.15mol)とN−メチル−2−ピロリドン50gの溶液を数回に分けて投入した。N−メチル−2−ピロリドン86.95gで容器に残ったビフェニル−3,4,3’4’−テトラカルボン酸二無水物を洗い流し入れた。共沸溶媒としてキシレンを30.0g、イミド化促進剤としてピリジンを2.37g(0.03mol)を加え、再度180℃まで温度を上げた。30分程で反応溶液中に黄色いポリイミド固形物が析出し、可溶性ポリイミド溶液とはならなかった。
【0075】
(評価)
引張強度は80MPa以上、かつ弾性率1500MPa以上であれば、当該ベルトは十分な強度を有しており、実施例で製造した全てのベルトは十分な強度を有していた。引張強度は100MPa以上が好ましく、弾性率は2000MPa以上が好ましい。
実施例においてポリイミドは有機溶媒に対して可溶であるので、ベルトの製造が簡便であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のポリイミドベルトは、電子写真式画像形成装置の樹脂ベルト、例えば定着ベルト、中間転写ベルト、接触帯電ベルト等として有用であり、特に定着ベルトとして用いられることが好ましい。
【0077】
定着ベルトは定着装置に使用されるものである。
定着装置は、通常、
内部に配設された加熱源により加熱される加熱ローラ;
ベルト状に形成された定着ベルト;および
該定着ベルトの内部から定着ベルトを加熱ローラの表面に押圧して加熱ローラとの間にニップ部を形成する押圧部材を備え、
ニップ部における加熱ローラと定着ベルトとの間に、未定着トナーを担持した記録媒体を入射させることによりトナーの定着を行うものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸成分とジアミン成分とからなるポリイミドを含むポリイミドベルトであって、
ジアミン成分が一般式(A)および一般式(B)で表される芳香族ジアミン化合物メタ体からなる群から選択される1種類またはそれ以上のジアミンメタ体を含むことを特徴とするポリイミドベルト;
【化1】

(一般式(A)中、Rは炭素数1〜10のアルキル基である;n1は1〜4の整数である);
【化2】

(一般式(B)中、RおよびRはそれぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル基である;n2およびn3はそれぞれ独立して0〜4の整数である;Xは2価の有機基である;n4は1〜10の整数である)。
【請求項2】
テトラカルボン酸成分がビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物を含む請求項1に記載のポリイミドベルト。
【請求項3】
ポリイミドのガラス転移温度が180℃以上である請求項1または2に記載のポリイミドベルト。
【請求項4】
電子写真式画像形成装置の定着ベルトとして用いられることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミドベルト。
【請求項5】
ポリイミド溶液を金型表面に塗布して塗膜を形成し、塗膜に含まれる溶媒を除去することを特徴とするポリイミドベルトの製造方法であって、
ポリイミドがテトラカルボン酸成分とジアミン成分とからなり、該ジアミン成分が一般式(A)および一般式(B)で表される芳香族ジアミン化合物メタ体からなる群から選択される1種類またはそれ以上のジアミンメタ体を含むポリイミドベルトの製造方法;
【化3】

(一般式(A)中、Rは炭素数1〜10のアルキル基である;n1は1〜4の整数である);
【化4】

(一般式(B)中、RおよびRはそれぞれ独立して炭素数1〜10のアルキル基である;n2およびn3はそれぞれ独立して0〜4の整数である;Xは2価の有機基である;n4は1〜10の整数である)。

【公開番号】特開2009−120788(P2009−120788A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299517(P2007−299517)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【出願人】(507381569)有限会社フジミ技研 (1)
【Fターム(参考)】