説明

ポリイミド被覆イメージファイバ

【課題】 被覆層に十分な遮光性を持ち、耐熱性に優れたポリイミド被覆イメージファイバの提供。
【解決手段】 画像伝送用のイメージファイバ上に、カーボン粒子を含まないポリイミドからなる被覆内層が設けられ、該被覆内層上に、カーボン粒子を含むポリイミドからなるカーボン入り被覆層が設けられたことを特徴とするポリイミド被覆イメージファイバ。画像伝送用のイメージファイバ上に、カーボン粒子を含まないポリイミドからなる被覆内層が設けられ、該被覆内層上に、カーボン粒子を含むポリイミドからなるカーボン入り被覆層が設けられ、該カーボン入り被覆層上に、カーボン粒子を含まないポリイミドからなる被覆外層が設けられたことを特徴とするポリイミド被覆イメージファイバ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの被覆材料としてポリイミドを用いたイメージファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
耐熱性に優れたポリイミド樹脂を被覆材として用いた光ファイバは公知である(例えば、特許文献1参照)。
光ファイバ上にポリイミド被覆層を形成するには、例えば、NMP等の溶剤にポリイミドあるいはその前駆体を溶解したワニス(以下、ポリイミドワニスと記す。)を用い、このポリイミドワニスを光ファイバ表面に塗布し、これを架橋炉内に導いて加熱し、ポリイミド樹脂を架橋硬化させることによってポリイミド被覆層を形成している。
【0003】
一方、イメージサークル内に多数の画素が配置されてなり、画像伝送に用いられるイメージファイバについては、ポリイミド樹脂を被覆材として用いた例は少なかった。
イメージファイバの場合、ファイバ横方向からの可視光の導光、いわゆる迷光が邪魔になる。この迷光を防ぐため、イメージファイバ上にカーボン粒子を混入した黒色樹脂からなる被覆層を形成することが望ましい。ポリイミド被覆層に十分な遮光性を持たせるためには、相応量のカーボン粒子をポリイミド被覆層中に均一に分散させなければならない。しかし、使用するカーボン粒子の粒径が大きいと、硬化前のポリイミドワニスにカーボン粒子を均一に分散させることが難しくなり、硬化後に得られたポリイミド被覆層内へのカーボン粒子の分散が不良になり、外観むらやブツ等が生じやすくなる。またクラスター化したカーボンがイメージファイバ表面を傷付けやすくなるため、イメージファイバの強度が劣化するという問題点があった。
【0004】
この問題点を解決するために、例えば、特許文献1が提案されている。
この特許文献1に開示されたイメージファイバは、イメージファイバの表面にポリイミドを被覆し、その外側にカーボンブラックを混入したシリコーン樹脂層を設けることにより、遮光性及びファイバ強度などの要求性能を満たすようにしている。
【特許文献1】特表2001−503365号公報
【特許文献2】特開平5−273445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された従来技術では、イメージファイバに十分な強度を持たせるためには、比較的厚いシリコーン樹脂層を持たせる必要があり、太径になる。これは、できる限り細径化することが望ましいイメージファイバにとって、大きな欠点となる。
また、折角ポリイミドを用いていながら、耐熱性がシリコーン樹脂層の耐熱性で制限されてしまい、耐熱性はせいぜい180℃程度が上限である。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされ、被覆層に十分な遮光性を持ち、耐熱性に優れたポリイミド被覆イメージファイバの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、画像伝送用のイメージファイバ上に、カーボン粒子を含まないポリイミドからなる被覆内層が設けられ、該被覆内層上に、カーボン粒子を含むポリイミドからなるカーボン入り被覆層が設けられたことを特徴とするポリイミド被覆イメージファイバを提供する。
【0008】
また本発明は、画像伝送用のイメージファイバ上に、カーボン粒子を含まないポリイミドからなる被覆内層が設けられ、該被覆内層上に、カーボン粒子を含むポリイミドからなるカーボン入り被覆層が設けられ、該カーボン入り被覆層上に、カーボン粒子を含まないポリイミドからなる被覆外層が設けられたことを特徴とするポリイミド被覆イメージファイバを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリイミド被覆イメージファイバは、画像伝送用のイメージファイバ上に、カーボン粒子を含まないポリイミドからなる被覆内層が設けられ、該被覆内層上に、カーボン粒子を含むポリイミドからなるカーボン入り被覆層が設けられた構成としたので、混入するカーボン粒子の含有量、カーボン粒度にかかわらず、イメージファイバ強度を劣化させずに十分な遮光性及び耐熱性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明のポリイミド被覆イメージファイバの第1実施形態を示す断面図である。本実施形態のポリイミド被覆イメージファイバ1は、画像伝送用のイメージファイバ上に、カーボン粒子を含まないポリイミドからなる被覆内層4が設けられ、該被覆内層4上に、カーボン粒子を含むポリイミドからなるカーボン入り被覆層5が設けられた構成になっている。
【0011】
このイメージファイバは、石英ガラスからなり、多数の画素とそれらを囲む共通クラッドとからなるイメージサークル2と、該イメージサークル2を囲むジャケット管3とから構成されている。このイメージファイバの外径や画素数は特に限定されず、各種の外径や画素数のイメージファイバを用いることができる。
【0012】
前記被覆内層4は、カーボン粒子を含まないポリイミドからなっている。この被覆内層4は、外側に形成されるカーボン入り被覆層5に含まれるカーボン粒子がイメージファイバに直接接触するのを防いで、このカーボン粒子によってイメージファイバ表面が傷付けられることを防ぐために設けられている。被覆内層4の厚さは特に限定されないが、前記強度劣化を防止できるように数μm以上とすることが望ましい。
【0013】
イメージファイバ上に前記被覆内層4を形成する方法は、例えば、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)やN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)などの溶媒に溶かしたポリイミドワニスを紡糸したイメージファイバ上に塗布し、架橋炉を通して加熱架橋し、ポリイミドからなる被覆内層4を形成する方法が望ましい。
【0014】
前記カーボン入り被覆層5は、ポリイミドを主体とし、カーボン粒子(カーボンブラックなどとも称される)が均一に分散した黒色のポリイミド樹脂からなっている。このカーボン入り被覆層5に混入されるカーボン粒子の粒度は特に限定されず、例えば、各種の市販品の中から適宜選択して用いることができるが、樹脂中に均一に分散でき、カーボン入り被覆層5の外観や機械強度が良好に得られることから、粒度1μm以下のカーボン粒子が望ましい。また、カーボン粒子の濃度も限定されず、カーボン入り被覆層5が十分な遮光性を持つとともに、ポリイミド被覆層として十分な機械特性が得られるような範囲で混入される。このカーボン入り被覆層5の厚さは、側方から照射される光がイメージファイバ内に入る迷光を防ぐために十分な遮光性が得られるように設定される。
【0015】
なお、前記被覆内層4とカーボン入り被覆層5とは、その両者でイメージファイバを十分に保護できるような厚さがあればよいが、医療用途をはじめとして、一般にイメージファイバはできる限り細径化することが望ましいことから、これら被覆層のトータルの厚さは10μm〜30μmの範囲とすることが好ましい。
【0016】
このカーボン入り被覆層5は、カーボン粒子を混入したポリイミドワニスを前記被覆内層4上に塗布し、架橋炉を通して加熱架橋して形成することが望ましい。ここで用いるポリイミドワニスとしては、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)やN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)などの溶媒に溶かしたワニスに、硬化時のカーボン粒子含有量が1.5〜15質量%の範囲となるように粒径1μm以下のカーボン粒子を分散させたカーボン粒子入りのポリイミドワニス11が好適に用いられる。このポリイミドワニス11の固形分は10〜40質量%の範囲として良く、好ましくは30〜35質量%程度とされる。
【0017】
本実施形態のポリイミド被覆イメージファイバ1は、画像伝送用のイメージファイバ上に、カーボン粒子を含まないポリイミドからなる被覆内層4を設け、その被覆内層上にカーボン入り被覆層5を設けているので、カーボン粒子がイメージファイバ表面に直接接しておらず、カーボン粒子によってイメージファイバ表面が傷付けられることがなく、混入するカーボン粒子の含有量、カーボン粒度にかかわらず、イメージファイバ強度を劣化させずに十分な遮光性及び耐熱性を得ることができる。
【0018】
図3は、本発明のポリイミド被覆イメージファイバの第2実施形態を示す断面図である。本実施形態のポリイミド被覆イメージファイバ6は、画像伝送用のイメージファイバ上に、カーボン粒子を含まないポリイミドからなる被覆内層4が設けられ、該被覆内層4上に、カーボン粒子を含むポリイミドからなるカーボン入り被覆層5が設けられ、該カーボン入り被覆層5上に、カーボン粒子を含まないポリイミドからなる被覆外層7が設けられた構成になっている。前記イメージファイバ、被覆内層4及びカーボン入り被覆層5は、前述した第1実施例におけるそれらと同様に構成することができる。
【0019】
前記第1実施形態によるポリイミド被覆イメージファイバ1は、外層にカーボン入り被覆層5があるため、該被覆層のカーボン粒子の含有量が多い場合には、被覆表面が脆くなったり、溶剤等に接触した場合、溶出物が析出しやすくなる場合がある。それらの不具合を防ぐため、本実施形態のポリイミド被覆イメージファイバ6は、最外被覆層としてカーボン粒子を含まないポリイミドからなる被覆外層7を設けている。この被覆外層7の厚さは特に限定されず、少なくとも厚さ2〜3μmあればよいが、勿論、これより厚く形成することもできる。
【0020】
本実施形態のポリイミド被覆イメージファイバ6は、前記第1実施形態と同様の効果が得られ、さらに最外被覆層としてカーボン粒子を含まないポリイミドからなる被覆外層7を設けたことによって、カーボン入り被覆層5を保護することができるので、カーボン入り被覆層5中のカーボン含有量を高めることができる。
【実施例】
【0021】
ファイバ径200μm、画素数1600画素の石英ガラス製イメージファイバの外周に、ポリイミドからなる厚さ10μmの被覆内層4を形成し、その被覆内層4上に、カーボン粒子を2質量%の濃度で含むポリイミドからなる厚さ5μmのカーボン入り被覆層5を形成し、図1に示す構造のポリイミド被覆イメージファイバを製造した。
カーボン入り被覆層に混入するカーボン粒子の粒度を変え、カーボン粒度が異なる複数の供試ファイバを製造し、それぞれの供試ファイバの平均破断強度をJIS C 6821に記載された方法に準じて測定し、カーボン粒度と平均破断強度との関係を調べた。結果を図2に示す。
【0022】
図2に示す結果から、カーボン入り被覆層に混入するカーボン粒子の粒度を変えても、供試ファイバの平均破壊強度はあまり変化していないことがわかる。本実施例では、イメージファイバ上にカーボン粒子を含まないポリイミドからなる被覆内層4を設け、その被覆内層上にカーボン入り被覆層5を設けているので、カーボン粒子がイメージファイバ表面に直接接しておらず、カーボン粒子によってイメージファイバ表面が傷付けられることがなく、ポリイミド被覆イメージファイバの強度劣化が生じていないものと思われる。従って、本発明によれば、被覆に混入するカーボン粒子の粒度にかかわらず、高強度のイメージファイバを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のポリイミド被覆イメージファイバの第1実施形態を示す断面図である。
【図2】実施例で作製した供試ファイバの平均破断強度と被覆中のカーボン粒度の関係を示すグラフである。
【図3】本発明のポリイミド被覆イメージファイバの第2実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1,6…ポリイミド被覆イメージファイバ、2…イメージサークル、3…ジャケット管、4…被覆内層、5…カーボン入り被覆層、7…被覆外層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像伝送用のイメージファイバ上に、カーボン粒子を含まないポリイミドからなる被覆内層が設けられ、該被覆内層上に、カーボン粒子を含むポリイミドからなるカーボン入り被覆層が設けられたことを特徴とするポリイミド被覆イメージファイバ。
【請求項2】
画像伝送用のイメージファイバ上に、カーボン粒子を含まないポリイミドからなる被覆内層が設けられ、該被覆内層上に、カーボン粒子を含むポリイミドからなるカーボン入り被覆層が設けられ、該カーボン入り被覆層上に、カーボン粒子を含まないポリイミドからなる被覆外層が設けられたことを特徴とするポリイミド被覆イメージファイバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−3583(P2007−3583A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−180440(P2005−180440)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】