説明

ポリウレタンフォーム成形用型およびそれを用いたポリウレタンフォーム成形方法

【課題】従来のポリウレタンフォーム成形用型およびそれを用いたポリウレタンフォーム成形方法においては、ポリウレタンフォーム内部のボイド,ピンホール等の欠陥の低減が不十分であった。
【解決手段】注入口,ミキシング部を有するランナー部,ゲート部,キャビティ部を有し、ランナー部は実質的に原料が滞留しない構造であることを特徴とするポリウレタンフォーム成形用型およびそれを用いたポリウレタンフォーム成形方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリウレタンフォーム成形用型およびそれを用いたポリウレタンフォーム成形方法に関するものである。さらには、得られるポリウレタンフォームのボイド、ピンホール等の欠陥を低減可能なポリウレタンフォーム成形用型およびそれを用いたポリウレタンフォーム成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂の成形方法としては押出成形,射出成形,圧縮成形,積層成形,吹込成形,反応成形,注型等の各種方法があり、これらの成形方法は樹脂の種類,用途等によって適宜選択され使用されている。これらの成形方法の中でも、主にポリウレタンの成形において用いられている成形法の1つとして反応射出成形(RIM成形)がある。RIM成形とは2種類以上の高反応性を有する低粘度樹脂原料を、加圧下にミキシングヘッド内で衝突混合させると同時に成形用型内に注入し、成形用型内で樹脂原料を硬化させて樹脂成形品を得る方法である。また、成形用型は原料混合液の注入口,ランナー部,ゲート部,キャビティ部を有し、ランナー部には樹脂原料の混合性を高めるためミキシング部(アフターミキサー)が設けられていることが一般的である(例えば、非特許文献1,2)。RIM成形は複雑な形状の大型成形品の成形に適している点や、設備費が他の成形法と比較して安価である点から広く用いられており、特にポリウレタンフォームの成形において広く用いられている。
【0003】
ポリウレタンフォームの成形方法としては、イソシアネートを主成分とする原料とポリオールを主成分とする原料をRIM成形機により混合した後、原料混合液を成形用型内に注入,硬化する方法が一般的であり、発泡方法としては、(1)あらかじめ加熱により気化する液体,固体(例えば、フロン,メチレンジクロライド,ペンタン,アゾ系等各種有機系発泡剤)を原料中に混合し、反応時の発熱により発生した気体で発泡する方法、(2)ポリオール成分とする原料中に加えられた水とイソシアネート成分との反応で発生する炭酸ガスにより発泡する方法等が公知である。また、発泡剤の低減,原料注入時の流動性向上,低密度化,気泡径の制御等の目的で、ポリオール成分に気体を混合,溶解させるガスローディング法やメカニカルフロス法も、単独または前述の製造方法と組み合わされて一般的に行われている(例えば、特許文献1)。
【0004】
ポリウレタンフォームを例えば生活用品や玩具等、その表面が露出し一般消費者の目に触れる用途に使用する場合、ポリウレタンフォーム表面にはボイド,ピンホール等の欠陥がないことが求められるが、RIM成形においては成形用型のランナー部で、反応に伴い原料混合液の粘度が急激に上昇するため、ランナー部等で原料混合液中に混入した空気等の残留ガスが抜けにくく、得られるポリウレタンフォームにボイド,ピンホール等の欠陥が発生しやすいことが問題であった。また、中でもガスローディング法やメカニカルフロス法で製造したポリウレタンフォームには、残留ガス以外に発泡ガスの関与も伴うため、ボイド,ピンホール等の欠陥が特に発生しやすいことが問題であった。そのため、成形方法について種々の検討がなされており、特に、金型にあるガス排出孔の孔の位置、数、大きさが大きなポイントであると認識されている。これは原料を金型内に注入後、発泡しつつ充填して行く過程での残留ガスや余分の発泡ガスの金型外への排出性向上が目的である(例えば、特許文献2)。しかしながら、この方法ではポリウレタンフォーム表面のボイド,ピンホール等の欠陥を低減させることが可能ではあるが、ポリウレタンフォーム内部のボイド,ピンホール等の欠陥はポリウレタンフォーム表面ほど低減することができないため、例えばウェットスーツ等の衣料用途や電子部品,研磨用部材等、厚い成形体を薄くスライスして使用する用途においては、製品表面にボイド,ピンホール等の欠陥が残り表面品位が不良となるため不適であった。また、半導体基板や光学部材、磁気ヘッド,ハードディスク等の電子材料等の研磨に使用される研磨パッドのような研磨用部材に使用する場合においては、表面品位の不良だけでなく、研磨後の製品に傷が入る等、研磨特性の悪化も懸念されるため不適であった。すなわち、従来のポリウレタンフォーム成形用型およびそれを用いたポリウレタンフォーム成形方法においては、得られるポリウレタンフォーム内部のボイド,ピンホール等の欠陥の低減が不十分であった。
【特許文献1】特開平7−1493号公報
【特許文献2】特開平7−165084号公報
【非特許文献1】「プラスチック読本」プラスチック・エージ,1992年発行,276ページ
【非特許文献2】「ポリウレタンフォーム」高分子刊行会,2000年発行,48ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明者らは、原料,RIM成形装置,成形用型,成形条件等、ポリウレタンフォーム製造プロセス全般について鋭意検討を行った結果、成形用型内のランナー部に設けられているミキシング部に着目した。図1に従来のランナー部に設けられたミキシング部を示す。従来のランナー部に設けられたミキシング部には原料混合液が滞留する部位(図1斜線部)が存在する。これは、ランナー部で原料混合液中に混入した空気等の残留ガスをその部位に滞留させることでキャビティ内に流入しないようにすること、その部位に原料混合液を衝突させさらに混合性を高めること等が目的である。しかしながら本発明者らの検討により、ランナー部に設けられたミキシング部の原料混合液が滞留する部位を樹脂で埋めて成形したポリウレタンフォームはボイド,ピンホール等の欠陥が少ないことが確認できた。ランナー部に設けられたミキシング部に原料混合液が滞留する部位があると、原料混合液が滞留する部位に一度溜まった残留ガスが、該部位で合一して残留ガスの塊となった後に、原料注入の過程で再度押し出されキャビティ内に流入し、ボイド,ピンホール等の欠陥の原因となっているものと推察される。また、ランナー部に設けられたミキシング部の原料混合液が滞留する部位を樹脂で埋めて成形したポリウレタンフォームには混合性不良に伴う割れ,流れ模様等の欠陥がないこと、すなわちランナー部に設けられたミキシング部の原料混合液が滞留する部位を樹脂で埋めても樹脂原料の混合性低下がないことを確認し、本発明の完成に至った。
【0006】
すなわち本発明の目的は、得られるポリウレタンフォームのボイド、ピンホール等の欠陥を低減可能なポリウレタンフォーム成形用型およびそれを用いたポリウレタンフォーム成形方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決のために本発明は以下の構成からなる。
【0008】
「注入口,ミキシング部を有するランナー部,ゲート部,キャビティ部を有し、ランナー部は実質的に原料が滞留しない構造であることを特徴とするポリウレタンフォーム成形用型およびそれを用いたポリウレタンフォーム成形方法。」
【発明の効果】
【0009】
本発明により、得られるポリウレタンフォームのボイド、ピンホール等の欠陥を低減可能なポリウレタンフォーム成形用型およびそれを用いたポリウレタンフォーム成形方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のポリウレタンフォーム成形用型は得られるポリウレタンフォームのボイド、ピンホール等の欠陥を低減するために、注入口,ミキシング部を有するランナー部,ゲート部,キャビティ部を有し、ランナー部は実質的に原料が滞留しない構造であることが必須である。注入口は原料を成形用型内に注入するための口である。その構造,形状は特に限定されるものではないが、具体的には原料を混合,注入するためのミキシングヘッドを直接接続するために、ミキシングヘッド先端部と同様の形状を有すること,成形用型内からの原料漏れがなきようシール機能を有することが好ましい。ランナー部とは注入された原料の流路である。ランナー部に設けられたミキシング部とは注入された原料混合液を成形用型内ランナー部で再度衝突混合しようとするものであり、具体的には図1に示したような形状(わらじ型,ハープ型等に呼称される)が一般的である。注入された原料混合液は一旦2つの流れに分けられ、中央部で再度1つの流れとなる際に衝突混合される。ランナー部の形状は特に限定されるものではないが、ランナー内に抵抗がなくスムーズな流れとするために、略円形もしくは略半円形で、左右対称とすることが好ましい。ゲート部とは原料混合液がキャビティ部に注入される湯口であり、原料混合液を整流する役割を有する部位である。形状は特に限定されるものではなく、フィルムゲート,ファンゲート,ダムゲート等、公知の形状を適宜使用することができる。キャビティ部とはポリウレタンフォーム成形用型内空間のことで製品となる部位である。その形状は得られるポリウレタンフォームの用途により適宜定められるべきものであり、特に限定されるものではない。「ランナー部は実質的に原料が滞留しない構造である」とは、図1の斜線部のように原料が滞留する部位が存在しない構造であること、すなわち原料が注入口からキャビティ部に向かって進行する際、原料が折り返して2度同じ部分を通らなければならない部位が存在しない構造であることをいう。具体的には図2のような構造であることをいう。ランナー部に原料が滞留する構造であると、得られるポリウレタンフォームにボイド,ピンホール等の欠陥が多発する傾向があるため好ましくない。
【0011】
本発明のポリウレタンフォーム成形用型は、注入された原料の漏れがなく、原料の硬化や発泡時の圧力に耐えうるものであれば構造,材質等は特に限定されるものではないが、ボイド,ピンホール等の欠陥が少なく、寸法安定性の良いポリウレタンフォームを得るために、構造としては空気抜き用孔,傾斜機構,型締め用プレス機構,温度調節機構を有することが好ましく、材質としては鉄,ニッケル,アルミニウム等の金属であることが好ましい。なお、空気抜き用孔の位置,数は特に限定されるものではないが、少なくともキャビティ部の先端部(原料の最終到達点)に存在することが、原料中に混入した残留ガス,発泡ガスを効率的に型外に除去でき、ボイド,ピンホール等の欠陥が少ないポリウレタンフォームが得られるため好ましい。
【0012】
本発明のポリウレタンフォーム成形用型のランナー部に存在するミキシング部は、左右対称となる少なくとも1つの面を有すること(図2参照)が好ましい。左右対称でない場合は原料混合物の流れが不均一となり、原料,残留ガス,発泡ガスの滞留箇所が生じることによるポリウレタンフォームのボイド,ピンホールの増加や原料混合性の低下等が懸念されるため好ましくない。(1)注入口からランナー部に存在するミキシング部直後までの間、ランナー部が左右対称となる少なくとも1つの面を有すること(図3参照)、(2)ランナー部に存在するミキシング部直前からゲート部を経てキャビティ部までの間、ランナー部およびゲート部が左右対称となる少なくとも1つの面を有すること(図4参照)がより好ましく、(3)注入口からランナー部,ゲート部を経てキャビティ部までの間、ランナー部およびゲート部が左右対称となる少なくとも1つの面を有すること(図5参照)がよりいっそう好ましい。
【0013】
本発明のポリウレタンフォーム成形用型は、注入口からランナー部,ゲート部を経てキャビティ部先端に至る原料混合液の流れる断面の最上部の高さが、連続的に高くなっていることが好ましい。高さが同じ箇所があっても構わない。高さを連続的に高くすることで原料中に混入した残留ガス,発泡ガスを効率的に型外に除去でき、ボイド,ピンホール等の欠陥が少ないポリウレタンフォームが得られるため好ましい。高さを連続的に高くする手段としては特に限定されるものではない。具体的には、ポリウレタンフォーム成形用型を傾斜する方法等が挙げられる。
【0014】
本発明のポリウレタンフォーム成形用型は押出成形,射出成形,反応成形等、公知のあらゆる成形方法に適用することが可能であるが、特にRIM成形に好ましく使用することができる。なお、RIM成形に使用されるRIM成形機とは(1)温度調節可能な原料タンク,(2)計量ポンプ,(3)ミキシングヘッド,(4)ミキシングヘッド用油圧ユニットの各機構からなる成形機をいう。
【0015】
本発明におけるポリウレタンとは、ポリイソシアネートの重付加反応または重合反応に基づき合成される高分子をいう。ポリイソシアネートの対称として用いられる化合物は、含活性水素化合物、すなわち、二つ以上のヒドロキシ基、あるいはアミノ基含有化合物である。典型的には、ポリイソシアネートとポリオール等の含活性水素化合物との反応によって多数のウレタン結合を分子鎖中に有するポリマーを指すが、これに限定されるものではなく、ポリイソシアネートがポリマー形成反応に関与したものであればウレア結合等、ウレタン結合以外の結合を有するポリマーも本発明におけるポリウレタンに包含される。ポリイソシアネートとして、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート,トリジンジイソシアネート,キシリレンジイソシアネート,リジンジイソシアネート等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。含活性水素化合物としてはポリヒドロキシ基含有化合物であるポリオールが代表的であり、ポリエーテルポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、アルキレンオキサイド共重合ポリオール,エポキシ樹脂変性ポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、シリコーンポリオール等が挙げられる。また、その際、少なくとも一種の原料組成物中には硬化触媒(アミン系触媒,有機金属触媒等)、発泡剤(水,フロン,メチレンジクロライド,ペンタン,アゾ系等各種有機系発泡剤等)、整泡剤(シリコーン化合物、特に各種ポリエーテル変性シリコーン等)、鎖延長剤,架橋剤(多価アルコール類,多価アミン類)等が適宜加えられる。なお、発泡剤としては、環境への負荷が小さい点で水を使用することが好ましい。また、これら以外にも特性改良を目的として、潤滑剤,帯電防止剤,酸化防止剤,安定剤,研磨剤,有機および無機フィラー,染料,香料等の各種添加剤を添加することができる。また、本発明におけるポリウレタンフォームとは、上述した方法等によりポリウレタンを発泡させたものをいう。
【0016】
本発明で成形されるポリウレタンフォームはマットレス,寝具,家具,自動車・航空機用シート等のクッション材,インパネ,ハンドル等の自動車用部品,機械用部品,電子材料,研磨用部材,吸音材,断熱材,緩衝材,生活用品,衣料,玩具等のあらゆる用途に使用可能である。これらの中でも、成形体内部にボイド,ピンホール等の欠陥が少ないという特徴から、ウェットスーツ等の衣料用途や電子部品,研磨用部材等、厚い成形体を薄くスライスして使用する用途において好ましく使用することができる。また、その構造,特性上の特徴から、特に研磨用部材または研磨用部材の原材料として好ましく使用することができる。研磨用部材としてはシリコンウェーハ等の半導体基板や、レンズ等の光学部材、磁気ヘッド,ハードディスク等の電子材料等の研磨に使用される研磨パッド、被研磨物の研磨ヘッドへの保持に使用されるバッキングパッドが挙げられる。また、研磨パッドが研磨層とクッション層の二層構造である場合においては、研磨層,クッション層のいずれにも好適に使用可能である。また、研磨用部材として使用する際には、硬度の調整や親水性,疎水性付与等の特性改質のため、本発明のポリウレタンフォームを原材料とし、それに付加重合、重縮合、重付加、付加縮合、開環重合等の重合反応可能なモノマーを含浸させ、重合,硬化することも好ましい。具体的なモノマーとしてはビニル化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物等が挙げられる。なお、これらのモノマーは一種であっても二種以上を混合しても良い。
【0017】
本発明で成形されるポリウレタンフォームの気泡は、連続気泡,独立気泡のいずれであっても良いが、該ポリウレタンフォームを研磨パッドとして使用する場合は独立気泡であることが好ましい。連続気泡の場合は、研磨中に研磨スラリーが連続気泡を通じて研磨パッドの内部に浸透して固着することで、硬度,弾性率等の研磨パッド物性が経時的に変化して研磨安定性が悪化したり、被研磨物に傷が入ることが懸念される。
【0018】
本発明で成形されるポリウレタンフォームを研磨パッドとして使用する場合、その平均気泡直径は10〜60μmで、かつ直径400μm以上の気泡数が100cm当たり30個以下であることが好ましく、その密度は、0.5〜1.0g/cmであることが好ましく、そのC型硬度は、50〜90度であることがであることが好ましい。平均気泡直径が10μm未満である場合は研磨スラリーの保持性が低いため研磨速度が遅くなる傾向があり、平均気泡直径が60μmを超える場合は研磨パッドの圧縮変形が大きくなり、研磨精度や研磨安定性が不良になる傾向がある。直径400μm以上の気泡数が100cm当たり30個を超えると、表面品位が不良となり、被研磨物に傷が入りやすい傾向がある。平均気泡直径が20〜50μmで、かつ直径400μm以上の気泡数が100cm当たり20個以下であることがより好ましい。なお、平均気泡直径はポリウレタンフォームをスライスした0.4mm以上の断面を倍率200倍でSEM観察し、次に記録されたSEM写真の気泡径を画像処理装置で測定し、その平均値を取ることにより測定した値をいう。また、直径400μm以上の気泡数は、ポリウレタンフォームをスライスした900cm以上の断面を長さ計測可能な顕微鏡で観察しながらカウントし、100cm当たりの個数に換算することにより測定した値をいう。密度が0.5g/cm未満である場合は、研磨中の研磨パッドの圧縮変形が大きいため研磨精度が悪化しやすく、1.0g/cmを超える場合は、研磨中の研磨パッドの圧縮変形が小さく、被研磨物のうねりや凹凸に追随できないため研磨精度が悪化しやすい傾向がある。密度が0.60〜1.00g/cmであることがより好ましい。なお、密度は日本工業規格(JIS)K 7222記載の方法により測定した値をいう。C型硬度が50度未満である場合は、研磨中の研磨パッドの圧縮変形が大きいため研磨精度が悪化しやすく、90度を超える場合は、研磨中の研磨パッドの圧縮変形が小さく、被研磨物のうねりや凹凸に追随できないため研磨精度が悪化しやすい傾向がある。C型硬度が60〜90度の範囲であることがより好ましい。なお、C型硬度は“アスカーC型硬度計”(高分子計器(株)製)により測定した値をいう。
【0019】
本発明で成形されるポリウレタンフォームの成形方法はポリオールを主成分とする原料組成物に対し1〜50容量%の割合で気体を混合または溶解させた第1の原料組成物と、イソシアネートを主成分とする第2の原料組成物を、ミキシングヘッドに供給する工程、混合された原料組成物をミキシングヘッドから本発明のポリウレタンフォーム成形用型に注入する工程を有することが好ましい。ポリオールを主成分とする原料組成物中に、混合または溶解される気体は、気泡径の制御,原料注入時の流動性向上に作用する。混合または溶解される気体の量が1容量%を下回ると、気泡径の制御,原料注入時の流動性向上効果が小さくなるため、得られるポリウレタンフォームの気泡径が増大したり、密度が高くなる傾向があり、50容量%を超えると原料の特性上や装置の性能上、混合または溶解が困難となる傾向がある。ポリオールを主成分とする原料組成物に対し5〜40容量%の気体を混合または溶解することが、気泡径の制御,原料注入時の流動性向上効果を安定して得る上でより好ましい。気体の混合または溶解方法は特に限定されるものではない。原料組成物の入った原料タンクの背圧を溶解させる気体で加圧状態にし、原料組成物をミキサーで撹拌する方法が簡便であり好ましい。また、気体の混合または溶解量の測定と原料の撹拌速度を自動制御できる市販の装置(例えば、ポリマーエンジニアリング(株)製エアーローディングユニット“TA−200A−12”)を使用すれば、気体の混合または溶解量の調整が簡便に可能であるため好ましい。気体の種類は特に限定されるものではない。具体的には空気,窒素,アルゴン,ヘリウム,二酸化炭素等が挙げられる。これらの中でも、気体の混合または溶解量の制御が容易な点や得られるポリウレタンフォームの気泡の径が小さく,数が多いものが得られる点から、空気,窒素,アルゴンから選ばれる少なくとも一種の気体を使用することが好ましい。ポリオールを主成分とする原料組成物とイソシアネートを主成分とする原料組成物を別々の原料タンク内で気体の混合または溶解や温度調節をした後に、計量ポンプにより所定量をミキシングヘッドに供給し、混合すると同時にポリウレタンフォーム成形用型に注入、硬化することでポリウレタンフォームを得ることができる。
【0020】
本発明により、得られるポリウレタンフォームのボイド、ピンホール等の欠陥を低減可能なポリウレタンフォーム成形用型およびそれを用いたポリウレタンフォーム成形方法を提供することができる。
【実施例】
【0021】
以下、実施例によって、さらに本発明の詳細を説明する。なお、得られたポリウレタンフォームの各種評価は以下のようにして行った。
【0022】
平均気泡直径は、走査型電子顕微鏡“SEM2400”(日立製作所(株)製)を使用し、ポリウレタンフォームをスライスした断面(面積0.4mm)を倍率200倍で観察した写真を画像処理装置で解析することにより、写真中に存在するすべての気泡径を計測し、その平均値を平均気泡直径とした。
【0023】
直径400μm以上の気泡数は、ポリウレタンフォームをスライスした断面(面積900cm)をレーザー顕微鏡“VK−8500”((株)キーエンス製)で観察しながら直径400μm以上の気泡個数をカウントし、100cm当たりの個数に換算することにより測定した。
【0024】
密度は、JIS K 7222記載の方法により測定した。
【0025】
C型硬度は、“アスカーC型硬度計”(高分子計器(株)製)により測定した。
【0026】
(実施例1)
発泡剤として水0.12重量%を添加したポリオール系原料組成物を調整し、窒素背圧4kg/cmで加圧したローディングタンク“TA−200A−12”(ポリマーエンジニアリング(株)製)内で液温を40℃に調整した後、ポリオール系原料組成物中への窒素溶解量が10.0容量%となるまで撹拌した。次にこのポリオール系原料組成物と、液温を40℃に調整したイソシアネート系原料組成物を、インデックス100の条件でRIM成形機により、吐出圧150kg/cmで衝突混合した後、70℃に調整し、キャビティ部先端部(図の上側)が最高点となるように、床面と金型キャビティ部最上面との間の角度を45度に傾斜させた、縦30cm,横30cm,厚さ1.5cm,ランナー部構造:図3の金型内に注入速度450g/secで1000gの原料組成物を注入し、10分間放置することで、ポリウレタンフォームを作製した。その後、該ポリウレタンフォームをバンドナイフ式スライサーで厚み1.5mm×10枚にスライスし、上から5枚目のポリウレタンフォームシートを評価した。該ポリウレタンフォームシートの平均気泡直径は37.1μm,直径400μm以上の気泡数は100cm当たり24個,密度は0.76g/cm,C型硬度は78度であった。
【0027】
(実施例2)
ランナー部構造:図4の金型としたこと以外は実施例1と同様にしてポリウレタンフォームおよびポリウレタンフォームシートを作製した。該ポリウレタンフォームシートの平均気泡直径は36.9μm,直径400μm以上の気泡数は100cm当たり18個,密度は0.76g/cm,C型硬度は78度であった。
【0028】
(実施例3)
ランナー部構造:図5の金型としたこと以外は実施例1と同様にしてポリウレタンフォームおよびポリウレタンフォームシートを作製した。該ポリウレタンフォームシートの平均気泡直径は37.3μm,直径400μm以上の気泡数は100cm当たり8個,密度は0.75g/cm,C型硬度は78度であった。
【0029】
(比較例1)
ランナー部構造:図6の金型としたこと以外は実施例1と同様にしてポリウレタンフォームおよびポリウレタンフォームシートを作製した。該ポリウレタンフォームシートの平均気泡直径は36.4μm,直径400μm以上の気泡数は100cm当たり78個,密度は0.77g/cm,C型硬度は78度であった。
【0030】
(比較例2)
ランナー部構造:図7の金型としたこと以外は実施例1と同様にしてポリウレタンフォームおよびポリウレタンフォームシートを作製した。該ポリウレタンフォームシートの平均気泡直径は37.1μm,直径400μm以上の気泡数は100cm当たり57個,密度は0.75g/cm,C型硬度は78度であった。
【0031】
(比較例3)
ランナー部構造:図8の金型としたこと以外は実施例1と同様にしてポリウレタンフォームおよびポリウレタンフォームシートを作製した。該ポリウレタンフォームシートの平均気泡直径は36.8μm,直径400μm以上の気泡数は100cm当たり44個,密度は0.76g/cm,C型硬度は78度であった。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明により、得られるポリウレタンフォームのボイド、ピンホール等の欠陥を低減可能なポリウレタンフォーム成形用型およびそれを用いたポリウレタンフォーム成形方法を提供することができる。本発明のポリウレタンフォーム成形用型はRIM成形に好ましく使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】ランナー部に設けられたミキシング部(従来)
【図2】ランナー部に設けられたミキシング部(本発明)
【図3】注入口〜ランナー部〜ゲート部〜キャビティー部の一例(実施例1)
【図4】注入口〜ランナー部〜ゲート部〜キャビティー部の一例(実施例2)
【図5】注入口〜ランナー部〜ゲート部〜キャビティー部の一例(実施例3)
【図6】注入口〜ランナー部〜ゲート部〜キャビティー部の一例(比較例1)
【図7】注入口〜ランナー部〜ゲート部〜キャビティー部の一例(比較例2)
【図8】注入口〜ランナー部〜ゲート部〜キャビティー部の一例(比較例3)
【符号の説明】
【0034】
1 原料が滞留する部位
2 左右対称となる面
3 注入口
4 ランナー部
5 ゲート部
6 キャビティ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入口,ミキシング部を有するランナー部,ゲート部,キャビティ部を有し、ランナー部は実質的に原料が滞留しない構造であることを特徴とするポリウレタンフォーム成形用型。
【請求項2】
ランナー部に存在するミキシング部が左右対称となる少なくとも1つの面を有することを特徴とする、請求項1記載のポリウレタンフォーム成形用型。
【請求項3】
注入口からランナー部に存在するミキシング部直後までの間、ランナー部が左右対称となる少なくとも1つの面を有することを特徴とする、請求項1記載のポリウレタンフォーム成形用
【請求項4】
ランナー部に存在するミキシング部直前からゲート部を経てキャビティ部までの間、ランナー部およびゲート部が左右対称となる少なくとも1つの面を有することを特徴とする、請求項1記載のポリウレタンフォーム成形用型。
【請求項5】
注入口からランナー部,ゲート部を経てキャビティ部までの間、ランナー部およびゲート部が左右対称となる少なくとも1つの面を有することを特徴とする、請求項1記載のポリウレタンフォーム成形用型。
【請求項6】
注入口からランナー部,ゲート部を経てキャビティ部先端に至る高さが、連続的に高くなっていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のポリウレタンフォーム成形用型。
【請求項7】
反応射出成形(RIM成形)に使用されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のポリウレタンフォーム成形用型。
【請求項8】
ポリウレタンフォームの気泡が独立気泡であることを特徴とする、請求項8記載のポリウレタンフォーム成形用型。
【請求項9】
ポリウレタンフォームの平均気泡直径が10〜60μmで、かつ直径400μm以上の気泡数が100cm当たり30個以下であることを特徴とする、請求項8に記載のポリウレタンフォーム成形用型。
【請求項10】
ポリウレタンフォームの密度が0.5〜1.0g/cmであることを特徴とする、請求項8または9に記載のポリウレタンフォーム成形用型。
【請求項11】
ポリウレタンフォームのC型硬度が50〜90度であることを特徴とする、請求項8〜10のいずれかに記載のポリウレタンフォーム成形用型。
【請求項12】
ポリウレタンフォームが研磨用部材または研磨用部材の原材料として使用されることを特徴とする、請求項8〜11のいずれかに記載のポリウレタンフォーム成形用型。
【請求項13】
ポリオールを主成分とする原料組成物に対し1〜50容量%の割合で気体を混合または溶解させた第1の原料組成物と、イソシアネートを主成分とする第2の原料組成物を、ミキシングヘッドに供給する工程、混合された原料組成物をミキシングヘッドから請求項1〜12のいずれかに記載のポリウレタンフォーム成形用型に注入する工程を有することを特徴とする、ポリウレタンフォーム成形方法。
【請求項14】
気体が空気,窒素,アルゴンから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、請求項13記載のポリウレタンフォーム成形方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−224371(P2006−224371A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−39052(P2005−39052)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】