説明

ポリオキサゾリドン樹脂

エポキシオキサゾリドン組成物を提供する(a)ジビニルアレーンジオキシドと(b)過剰のポリイソシアネートとの反応生成物を含むエポキシオキサゾリドン(当該組成物は、カルボニル化合物の合計に対して40%を超えるオキサゾリドン選択率を有する)、エポキシオキサゾリドンの製造方法、並びに(i)ジビニルアレーンジオキシド、例えばジビニルベンゼンジオキシド(DVBDO)などとポリイソシアネートから誘導されたエポキシオキサゾリドンと、(ii)少なくとも1種の硬化剤、及び/又は(iii)触媒を含む硬化性エポキシ樹脂組成物。上記エポキシ樹脂組成物から製造された硬化製品は熱的に安定であり、改善された特性、例えば周知のエポキシ樹脂から製造された周知の硬化製品と比べてより低い粘度及び高い耐熱性を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオキサゾリドン樹脂に関し、より詳細には、ジビニルアレーンジオキシドとポリイソシアネートから誘導されたエポキシ末端オキサゾリドン樹脂、及びかかるエポキシ末端オキサゾリドン樹脂から誘導されたポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
背景及び関連技術の説明
エポキシ末端オキサゾリドン樹脂は当該技術分野で知られており、コーティング、積層体及び他の用途に有用な前駆体であることが知られている。例えば、米国特許第5,112,932号明細書には、従来のエポキシ樹脂をポリイソシアネートと反応させることによるエポキシ末端オキサゾリドンの製造方法が開示されている。
米国特許第5,112,932号明細書には、エポキシ樹脂とポリイソシアネートから製造されたエポキシオキサゾリドン樹脂が記載されているが、エポキシオキサゾリドン樹脂の前駆体としてのジビニルアレーンジオキシドの使用は教示されていない。
Braun, Dietrich; Weinert, Johann; Angewandte Makromolekulare Chemie (1979), 78, 1-19には、ジエポキシドとジイソシアネートからのポリオキサゾリドンの製造について記載されているが、エポキシ官能性ポリマーの製造は記載されていない。
Braun, Dietrich; Weinert, Johann; Liebigs Annalen der Chemie (1979), (2), 200-9には、モノ−及びジエポキシドとモノイソシアネートからのモノ−及びビス−オキサゾリドンの製造について記載されているが、ポリイソシアネートを使用せず、エポキシ官能性ポリマーを製造するものでない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,112,932号明細書
【特許文献2】Braun, Dietrich; Weinert, Johann; Angewandte Makromolekulare Chemie (1979), 78, 1-19
【特許文献3】Braun, Dietrich; Weinert, Johann; Liebigs Annalen der Chemie (1979), (2), 200-9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術のエポキシ末端オキサゾリドン樹脂の使用で遭遇する1つの問題は、それらのガラス転移温度(T)と比べてそれらの溶融粘度が比較的高いことに関する。例えば、ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー(The Dow Chemical Company)製のD.E.R.(登録商標)6508エポキシ−オキサゾリドン樹脂は、固体アグロメレーション又は焼結を防止するのに十分に高い約45℃のTを有し、その溶融粘度が500Pa・s(例えばコーティング及び複合材料などの多くのエポキシ熱硬化性材料用途に好適な溶融粘度)に等しくなるのに必要な温度は約191℃である。かかる高い加工温度は、エネルギー集約的であり、熱硬化性配合物において早期架橋をもたらすことがある。
【0005】
もう1つの問題は、オキサゾリドンへの選択率が低い(例えば、約40%未満)ジビニルアレーンジオキシドから誘導されたエポキシオキサゾリドン樹脂の製造のための先行技術の方法の使用で遭遇する。副反応は、所望のオキサゾリドンに加えて、かなりの量のイソシアヌレート(イソシアネート三量化から)又はカルバマート(エポキシドをベースとするアルコールとイソシアネートの反応から)、あるいはそれらの両方を生成することがある。イソシアヌレートの存在は粘度を増加させ、早期ゲル化(その製造又は硬化の間)をもたらす。カルバマートの存在は、誘導された熱硬化物の熱安定性を減少させる。これらの副反応は、一般的に、オキサゾリドン選択率を約40%未満に減少させる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、産業界では知られていない末端エポキシド基を有するジビニルアレーンジオキシドから誘導されたエポキシ官能性オキサゾリドン樹脂を提供する。これらの新規な樹脂は、溶融粘度が約500Pa・s未満である温度(T500)とガラス転移温度(T)(両方の温度は°K単位で測定)の比が約1.5未満であり、高いオキサゾリドン選択率(例えば、約40%を超える)を有し、硬化剤(curing agents)及び/又は触媒により反応させてエポキシ樹脂硬化物を形成することができる。
【0007】
一実施態様において、本発明は、ジビニルアレーンジオキシドから製造された新規なエポキシ末端オキサゾリドン樹脂、及びそれから誘導されるエポキシ熱硬化物を提供する。本発明のエポキシ末端オキサゾリドン樹脂は、有利には約1.5未満のT500/Tと、約40%を超えるオキサゾリドン選択率を有する。
【0008】
本発明の別の実施形態は、(a)ジビニルアレーンジオキシド、例えばジビニルベンゼンジオキシド(DVBDO)と、(b)ポリイソシアネート、例えば4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)との反応生成物を含むエポキシオキサゾリドン樹脂に関し、エポキシオキサゾリドン樹脂組成物を提供する。
【0009】
さらに別の実施態様において、当該組成物は、T500とTの比が約1.5未満であり、当該組成物は、全カルボニル含有生成物(イソシアヌレート及びカルバマート副生成物を含む)に対して選択率約40%でオキサゾリドンを含む。
【0010】
本発明の新規のエポキシ官能性オキサゾリドン樹脂は末端エポキシド基を有し、当該末端エポキシド基は、硬化剤及び/又は触媒による熱硬化物を形成するそれらの反応を可能にする。ジビニルアレーンジオキシドから誘導される本発明の新規なエポキシ官能性オキサゾリドンは、都合よいことに、高い耐熱性又は良好な耐熱性と低い粘度を有する樹脂をもたらす。これらのエポキシ官能性オキサゾリドン樹脂を架橋することによって、得られる熱硬化物は高い耐熱性及び/又は良好な可撓性を有する。
【0011】
本発明の別の実施態様は、(i)上記のエポキシ官能性オキサゾリドン樹脂と(ii)少なくとも1種の硬化剤とを含む硬化性エポキシ樹脂組成物に関する。
【0012】
本発明のさらなる実施態様は、上記のエポキシ官能性オキサゾリドン樹脂及び硬化性エポキシ樹脂組成物の製造方法に関する。
【0013】
本発明の別の実施態様は、同様のTでかなり低い硬化前配合物粘度又は同様の硬化前配合物粘度で高いTを有する上記硬化性エポキシ樹脂組成物から誘導された熱硬化物に関する。
【0014】
一実施態様において、得られた硬化可能な熱硬化性配合物を様々な用途、例えばコーティング、接着剤、複合材料、積層体、電子機器などで使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
その最も広い範囲において、本発明は、(a)ジビニルアレーンジオキシド、例えばジビニルベンゼンジオキシド(DVBDO)と(b)ポリイソシアネート、例えば4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)との反応生成物を含むエポキシ官能性オキサゾリドン樹脂を包含し、エポキシ官能性オキサゾリドン樹脂を提供する。得られたエポキシ官能性オキサゾリドン樹脂を、硬化性エポキシ樹脂組成物又は配合物を形成するために使用できる。得られた硬化性エポキシ樹脂組成物又は配合物は、当該技術分野でよく知られている1又は2種以上の任意の添加剤を含んでもよい。
【0016】
ジビニルアレーンジオキシドとポリイソシアネートの反応生成物を含むエポキシオキサゾリドン組成物は、都合良いことに、良好な特性のバランスがとれた新規な樹脂を提供する。例えば、先行技術のエポキシオキサゾリドン樹脂と比べて、上記樹脂は、同様な粘度でより高い耐熱性を示すか、より低い粘度で良好な耐熱性を示す。これらの新規なエポキシオキサゾリドン樹脂を硬化させることによって、より高い耐熱性及び同様な硬化前配合物粘度を有するか、又は良好な耐熱性及びより低い硬化前配合物粘度を有する熱硬化物がもたらされる。本発明のエポキシオキサゾリドン樹脂は、コーティング、積層体、複合材料、及び接着剤として使用される熱硬化性材料の製造に適する。
【0017】
本発明において、ジビニルアレーンジオキシド、例えばDVBDOは、ジビニルアレーンと過酸化水素とを反応させて本発明のエポキシ樹脂組成物において有用なジビニルアレーンジオキシドをもたらすことにより製造できる。かかる製造されたジビニルアレーンジオキシドを使用して本発明のエポキシオキサゾリドンを製造することができる。
【0018】
本発明において有用なジビニルアレーンジオキシド、特にジビニルベンゼン、例えばジビニルベンゼンジオキシド(DVBDO)から誘導されたものは、比較的低い液体粘度を有するが、従来のエポキシ樹脂よりも高い耐熱性及び剛性をその誘導された熱硬化物に付与するジエポキシド類である。ジビニルアレーンジオキシド中のエポキシド基は先行技術のエポキシオキサゾリドン樹脂を製造するのに使用された従来のグリシジルエーテルの場合と比べて反応性がかなり低い。
【0019】
本発明において有用なジビニルアレーンジオキシドは、例えば、任意の環位置に2つのビニル基を有する任意の置換又は非置換アレーン核を含んでよい。ジビニルアレーンジオキシドのアレーン部分は、ベンゼン、置換ベンゼン、(置換)環付加(ring-annulated)ベンゼン又は同族的に結合した(置換)ベンゼン、又はそれらの混合物から成ることができる。ジビニルアレーンジオキシドのジビニルベンゼン部分は、オルト(ortho)、メタ(meta)又はパラ(para)異性体又はそれらの任意の混合物であることができる。さらなる置換基は、H耐性基、例えば飽和アルキル、アリール、ハロゲン、ニトロ、イソシアネート、又はRO−(Rは飽和アルキル又はアリールであることができる)などから成ることができる。環付加ベンゼンは、ナフタレン、テトラヒドロナフタレンなどから成ることができる。同族的に結合した(置換)ベンゼンは、ビフェニル、ジフェニルエーテルなどから成ることができる。
【0020】
一実施態様において、本発明において使用されるジビニルアレーンジオキシドは、例えば、本願と同日にMarks他により出願された米国特許出願番号第61/141,457号(代理人事件番号第67459号)(引用により本明細書に援用する)に記載されている方法によって製造することができる。
【0021】
本発明の組成物を製造するために使用されるジビニルアレーンジオキシドは、下記一般化学構造I〜IVにより一般的に例示することができる:
【0022】
【化1】

【0023】
本発明のジビニルアレーンジオキシドコモノマーについての上記構造I、II、III及びIVにおいて、各R、R、R及びRは、独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール若しくはアラルキル基、又はH耐性基、例えばハロゲン、ニトロ、イソシアネート若しくはRO基(式中、Rはアルキル、アリール又はアラルキルであることができる)などであることができ、xは0〜4の整数であることができ、yは2以上の整数であることができ、x+yは6以下の整数であることができ、zは0〜6の整数であることができ、z+yは8以下の整数であることができ、Arはアレーンフラグメント、例えば1,3−フェニレン基などである。
【0024】
本発明において有用なジビニルアレーンジオキシド成分としては、例えば、ジビニルベンゼンジオキシド、ジビニルナフタレンジオキシド、ジビニルビフェニルジオキシド、ジビニルジフェニルエーテルジオキシド、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0025】
下記構造Vは、本発明において有用なDVBDOの好ましい化学構造の一実施態様を例示する:
【0026】
【化2】

【0027】
下記構造VIは、本発明において有用なDVBDOの好ましい化学構造の別の実施態様を例示する:
【0028】
【化3】

【0029】
DVBDOが当該技術分野で知られている方法により製造される場合、オルト、メタ及びパラの3つの可能な異性体のうちの1つを得ることが可能である。そのため、本発明は、上記構造のうちの任意の1つにより例示されるDVBDOを個別に又はその混合物として含む。上記構造V及びVIは、それぞれ、DVBDOのメタ(1,3−DVBDO)及びパラ異性体を示す。オルト異性体は少なく、通常、DVBDOは、たいてい、メタ(構造V)異性体とパラ(構造VI)異性体を一般的に約9:1〜約1:9の範囲内の比で生じる。本発明は、好ましくは、一実施態様として、約6:1〜約1:6の範囲内の比で構造Vと構造VIを含み、別の実施態様において、構造Vと構造VIの比は約4:1〜約1:4又は約2:1〜約1:2であることができる。
【0030】
本発明の別の実施態様において、ジビニルアレーンジオキシドは、置換アレーンを含んでよい(例えば約20質量%未満)。置換アレーンの量及び構造は、ジビニルアレーンジオキシドへのジビニルアレーン前駆体の製造に使用される方法に依存する。例えば、ジエチルベンゼン(DEB)の脱水素化により製造されたジビニルベンゼンは、エチルビニルベンゼン(EVB)及びDEBを含むことがある。過酸化水素との反応によって、EVBは、エチルビニルベンゼンモノオキシド(EVBO)を生成し、一方、DEBは変化せずに残る。これらの化合物の存在は、ジビニルアレーンジオキシドのエポキシド当量を、純粋な化合物のエポキシド当量を超える値に増加させることができる。従って、本発明において、組成物のEVBO含量は、一般的に、40質量%未満、好ましくは20質量%未満、より好ましくは10質量%未満であることができる。
【0031】
一実施態様において、本発明において有用なジビニルアレーンジオキシド、例えば、ジビニルベンゼンジオキシド(DVBDO)は、低粘度液体エポキシ樹脂(LER)組成物を構成する。本発明のエポキシ樹脂組成物の製造方法において使用されるジビニルアレーンジオキシドの粘度は、一般的に、25℃で、約10mPa・s〜約100mPa・s、好ましくは約10mPa・s〜約50mPa・s、より好ましくは約10mPa・s〜約25mPa・sである。
【0032】
本発明において有用なジビニルアレーンジオキシドの有利な特性のうちの1つは、それらの熱安定性であり、その熱安定性によって、オリゴマー化又はホモ重合なしに中温(例えば約100℃〜約200℃)で数時間(例えば少なくとも2時間)以内の時間、配合物又は加工におけるそれらの使用が可能となる。配合又は加工中のオリゴマー化又はホモ重合は、粘度の実質的な増加又はゲル化(架橋)により分かる。本発明において有用なジビニルアレーンジオキシドは、中温で配合又は加工中にジビニルアレーンジオキシドが粘度の実質的な増加又はゲル化を経験しないほどの十分な熱安定性を有する。
【0033】
本発明において有用なジビニルアレーンジオキシドの別の有利な特性は、例えばその剛性である。ジビニルアレーンジオキシドの剛性は、Prediction of Polymer Properties, Dekker, New York, 1993に記載されているBiceranoの方法を使用して、側鎖を除くジオキシドの回転自由度の計算値に求められる。本発明において使用されるジビニルアレーンジオキシドの剛性は、一般的に、約6〜約10、好ましくは約6〜約9、より好ましくは約6〜約8の回転自由度に及ぶことができる。
【0034】
本発明のエポキシオキサゾリドン樹脂を製造するために使用されるジビニルアレーンジオキシドの濃度は、一般的に、イソシアネート当量とエポキシド当量の比γで1.0未満、好ましくは約0.99〜約0.01、より好ましくは約0.95〜約0.05、最も好ましくは約0.90〜約0.10に及ぶことができる。上記当量比の範囲内で、エポキシド基は常に過剰であり、得られる反応生成物はエポキシ官能性である。
【0035】
本発明において有用なポリイソシアネート(成分(b))は、当該技術分野で知られている任意の従来のポリイソシアネートであることができる。例えば、ポリイソシアネートとしては、脂肪族又は芳香族のポリイソシアネート、例えばトルエンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなど、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0036】
本発明の実施に有用なポリイソシアネート化合物は、例えば、下記一般式:
(O=C=N)−R’
(式中、R’は置換又は非置換脂肪族、芳香族又は複素環式多価基であり、mは約1超乃至約5未満、好ましくは約1.5〜約4、最も好ましくは約2〜約3の平均値を有する)により表すことができる。
【0037】
本発明において有用な好適なポリイソシアネートの例としては、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)及びその異性体、MDIの高官能性同族体(一般的に、「ポリマーMDI」として表される)、例えば、ISONATE(登録商標)125M又は50 O,P’(ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー(The Dow Chemical Company)の登録商標)及びPAPI 20、27、94、901又は580 N(ザ・ダウ・ケミカル・カンパニーから入手可能);トルエンジイソシアネート(TDI)、例えば2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、及びVORANATE T80(ザ・ダウ・ケミカル・カンパニーから入手可能);m−キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)並びにイソホロンジイソシアネート(IPDI)が挙げられる。任意の2種以上のポリイソシアネートの混合物も本発明の実施において使用することができる。本発明において有用な他の好適なポリイソシアネート化合物は米国特許第3,313,747号、第4,066,628号及び第4,742,146号明細書に記載されており、これらの全てを引用部により本明細書に援用する。
【0038】
本発明において有用な好ましいポリイソシアネート化合物は、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)及びその異性体、ポリマーMDI及びトルエンジイソシアネート(TDI)、並びにそれらの混合物である。本発明において有用な最も好ましいポリイソシアネート化合物は、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)、その異性体と、ポリマーMDI、TDI、及びそれらの混合物である。
【0039】
本発明において有用な他のポリイソシアネート化合物としては、水素化MDI及び液化されたMDIに基づくポリイソシアネート(例えば、ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー製のIsonate 143L)が挙げられる。モノイソシアネート、例えばフェニルイソシアネートを、ポリイソシアネート中に約50質量%まで含めることができる。
【0040】
本発明のエポキシオキサゾリドン樹脂を製造するために使用されるポリイソシアネートの濃度は、一般的に、イソシアネート当量とエポキシド当量の比γで1.0未満、好ましくは約0.99〜約0.01、より好ましくは約0.95〜約0.05、最も好ましくは約0.90〜約0.10に及ぶことができる。上記当量比の範囲内で、エポキシド基は常に過剰であり、得られる反応生成物はエポキシ官能性である。
【0041】
本発明のエポキシオキサゾリドン樹脂の製造において、必要に応じて、ジビニルアレーンジオキシド化合物とポリイソシアネート化合物との反応を促進するために少なくとも1種の反応触媒を使用してもよい。本発明において有用な触媒としては、例えば、ルイス酸、例えば塩化マグネシウム及び塩化ジルコニウムなど;イミダゾール類、例えば2−フェニルイミダゾールなど;第4級塩、例えばテトラブチルホスホニウムブロミド及びテトラエチルアンモニウムブロミド;オルガノアンチモンハロゲン化物、例えばトリフェニルアンチモンテトラヨージド及びトリフェニルアンチモンジブロミド;並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0042】
一実施態様において、本発明の実施に使用される好適な反応触媒としては、例えば、次のもの:第4級ホスホニウム及びアンモニウム塩並びにイミダゾール化合物のうちの1又は2種以上が挙げられる。
【0043】
好ましい一実施態様において、反応触媒は、例えば、第4級ホスホニウム及びアンモニウム塩、イミダゾール化合物、及びそれらの混合物が挙げられる。別の好ましい実施態様において、反応触媒はイミダゾール化合物である。特に、好ましい触媒はテトラブチルホスホニウムブロミド、2−フェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール及び4,4’−メチレン−ビス(2−エチル−5−メチルイミダゾール)、及びそれらの混合物である。
【0044】
反応触媒は、使用されるジビニルアレーンジオキシド化合物及びポリイソシアネート化合物の合計質量を基準として、約0.01〜約10質量%、好ましくは約0.05〜約5質量%、最も好ましくは約0.1〜約2質量%の量で一般的に使用される。
【0045】
ジビニルアレーンジオキシド化合物とポリイソシアネート化合物との反応を促進するために、本発明のエポキシオキサゾリドン樹脂を製造する際に任意の溶剤を使用してもよい。例えば、当該技術分野でよく知られている1又は2種以上の有機溶剤をエポキシオキサゾリドン樹脂組成物に加えることができる。例えば、芳香族化合物、例えばキシレンなど、ケトン、例えばメチルエチルケトン、及びエーテル、例えばジグリム、及びそれらの混合物を本発明において使用できる。
【0046】
本発明において使用される溶剤の濃度は、一般的に、0質量%〜約90質量%、好ましくは約0.01質量%〜約80質量%、より好ましくは約1質量%〜約70質量%、最も好ましくは約10質量%〜約60質量%に及ぶことができる。
【0047】
本発明のエポキシオキサゾリドンの製造は、反応器にジビニルアレーンジオキシド、ポリイソシアネート、触媒、及び必要に応じて溶剤を加え、次にこれらの成分を反応条件下で反応させてエポキシオキサゾリドンを生成させることにより達成される。これらの成分は、所望の反応度が達成されるまで加熱される。得られた生成物は、単離前又は単離中に冷却され、熱硬化性配合物において即座に使用可能である。
【0048】
エポキシオキサゾリドンを形成する反応条件は、一般的には約100℃〜約250℃の範囲内、好ましくは約125℃〜約225℃の範囲内、より好ましくは約150℃〜約200℃の範囲内の温度で反応を行うことを含む。反応の圧力は、約0.1バール(bar)〜約10バール、好ましくは約0.5バール〜約5バール、より好ましくは約0.9バール〜約1.1バールであることができる。
【0049】
本発明のエポキシオキサゾリドンを製造するための反応方法は回分式又は連続式であることができる。当該方法で使用される反応器は当業者に知られている任意の反応器及び補助装置であることができる。
【0050】
好ましい一実施態様において、ジビニルアレーンジオキシド及びポリイソシアネートの新規なエポキシオキサゾリドン組成物は低い粘度を有する。ここで、この粘度は、次の温度の比:T500/Tとして求められる。最初の温度T500は、組成物の溶融粘度が約500Pa・sであるときの温度である。第2の温度Tgは、組成物のガラス転移温度である。両温度T500及びTは°Kで測定される。比T500/Tは一般的に約1.5未満、好ましくは約1.45未満、より好ましくは約1.40未満、さらに好ましくは約1.35未満、最も好ましくは約1.3未満である。別の実施態様において、T500/Tは約1〜約1.5であることができる。本発明の新規なエポキシオキサゾリドン組成物から誘導された熱硬化物は、先行技術の類似のエポキシオキサゾリドンと比べて高い耐熱性を示す。
【0051】
本発明の方法により製造されるエポキシオキサゾリドンの粘度は、一般的に、150℃で、約0.1Pa・s〜約10,000Pa・s、好ましくは約1Pa・s〜約5,000Pa・s、より好ましくは約1Pa・s〜約3,000Pa・sである。
【0052】
本発明の方法により製造されるエポキシオキサゾリドンの数平均分子量(M)は、一般的に、約200〜約100,000、好ましくは約300〜約10,000、より好ましくは約500〜約5,000に及ぶ。
本発明のエポキシオキサゾリドンは、熱硬化性エポキシ樹脂配合物又は組成物におけるエポキシ成分として有用である。
【0053】
本発明の別の広い実施態様において、(i)上記のエポキシオキサゾリドン;(ii)硬化剤;(iii)必要に応じて、触媒;及び(iv)必要に応じて、成分(i)のエポキシオキサゾリドンとは異なる別のエポキシ樹脂、の混合物を含む硬化性エポキシ樹脂組成物を製造することができる。
硬化性エポキシ樹脂組成物の第1の成分(i)は上記のとおりのエポキシオキサゾリドンから構成される。
【0054】
本発明の硬化性エポキシ樹脂混合物において使用されるエポキシオキサゾリドンの濃度は、一般的に、約100質量%(wt%)〜約10wt%、好ましくは約99wt%〜約20wt%、より好ましくは約90wt%〜約30wt%に及ぶことができる。一般的に、使用されるエポキシオキサゾリドンの量は、硬化剤の官能基の量と比べて当量に基づいて化学量論的に釣り合いがとれる量又はそれを超える量で使用される。
【0055】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物に有用な硬化剤(成分(ii))は、硬化性エポキシ樹脂についての技術分野で知られている任意の従来の硬化剤を含んでもよい。熱硬化性組成物において有用な硬化剤(curing agent)(硬化剤(hardener)又は架橋剤とも呼ばれる)は、例えば、当該技術分野でよく知られている硬化剤、例えば酸無水物、カルボン酸、アミン化合物、フェノール系化合物、ポリオール、又はそれらの混合物から選択できるが、これらに限定されない。
【0056】
本発明において有用な架橋剤の例としては、エポキシ樹脂に基づく組成物を硬化させるのに有用であることが知られている共反応性又は触媒作用のある硬化性物質のいずれも挙げられる。かかる共反応性硬化剤としては、例えば、ポリアミン、ポリアミド、ポリアミノアミド、ジシアンジアミド、ポリフェノール、ポリマーチオール、ポリカルボン酸及び酸無水物、並びにそれらの任意の組み合わせなどが挙げられる。好適な触媒作用のある硬化剤としては、第3級アミン、第4級アンモニウムハロゲン化物、ルイス酸、例えば三フッ化ホウ素など、及びそれらの任意の組み合わせなどが挙げられる。共反応性の硬化剤の他の具体例としては、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノール−Aノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンのフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジアミノジフェニルスルホン、スチレン−無水マレイン酸(SMA)コポリマー、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。従来の共反応性エポキシ硬化剤の中で、アミン類及びアミノ又はアミド含有樹脂並びにフェノール系化合物が好ましい。
【0057】
ジシアンジアミド(「dicy」)は、本発明において有用な硬化剤の1つの好ましい実施態様である。dicyは、その硬化特性を活性化するのに比較的高い温度を必要とするため、dicyは硬化遅延をもたらすという利点を有し、dicyをエポキシ樹脂に加え、室温(約25℃)で貯蔵することができる。
【0058】
硬化性エポキシ樹脂組成物において使用される硬化剤の量は、一般的に、約0wt%〜約90wt%、好ましくは約0.01wt%〜約80wt%、より好ましくは約1wt%〜約70wt%に及ぶ。一般的には、使用される硬化剤の量は、エポキシド基の量と比べて当量に基づいて化学量論的に釣り合いがとれる量又はそれ未満の量である。
【0059】
本発明のエポキシオキサゾリドンに基づく熱硬化物の耐熱性は、示差走査熱量測定法(DSC)を使用してガラス転移温度(T)により求めた場合に、一般的に、約50℃〜約300℃、好ましくは約75℃〜約275℃、より好ましくは約100℃〜約250℃に及ぶ。
【0060】
例えば、触媒、溶剤、他の樹脂、安定剤、充填剤、可塑剤、触媒失活剤、及びそれらの混合物などの様々な添加剤を必要に応じて本発明の組成物に加えることができる。
【0061】
一実施態様において、例えば、硬化性エポキシ樹脂組成物は、(i)上記のとおりのジビニルアレーンジオキシドとポリイソシアネートとのエポキシオキサゾリドン樹脂、(ii)少なくとも1種の硬化剤、(iii)必要に応じて、少なくとも1種の硬化剤、及び(iv)必要に応じて、成分(i)と異なる少なくとも1種の他のエポキシ樹脂、の反応混合物を含むことができる。
【0062】
本発明の硬化性組成物を製造する際に、少なくとも1種の硬化剤を必要に応じて使用してもよい。本発明において使用される触媒は、少なくとも1種のエポキシ樹脂の重合、例えばホモ重合に合わせて作られたものであってもよい。あるいは、本発明において使用される触媒は、少なくとも1種のエポキシ樹脂と少なくとも1種の硬化剤(使用される場合)との間の反応に合わせて作られたものであってもよい。
【0063】
本発明において有用な必要に応じて使用される硬化触媒(成分(iv))としては、当該技術分野でよく知られている触媒、例えばアミン部分、ホスフィン部分、複素環式窒素部分、アンモニウム部分、ホスホニウム部分、アルソニウム部分、スルホニウム部分及びそれらの任意の組み合わせを含む触媒化合物が挙げられる。本発明の触媒の幾つかの非限定的な例としては、例えば、エチルトリフェニルホスホニウム;ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド;引用により本明細書に援用する米国特許第4,925,901号明細書に記載されている複素環式窒素含有触媒;イミダゾール類;トリエチルアミン;及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0064】
本発明において有用な硬化触媒の選択は限定されず、エポキシ系に対して一般的に使用されている触媒を使用できる。また、触媒の添加は任意選択的であり、製造される系に依存する。触媒が使用される場合、触媒の好ましい例としては、第3級アミン、イミダゾール類、有機ホスフィン、及び酸塩が挙げられる。
【0065】
最も好ましい硬化触媒としては、第3級アミン及びイミダゾール類、例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、2−メチルイミダゾール、ベンジルジメチルアミン、2−フェニルイミダゾール、及びそれらの混合物などが挙げられる。
【0066】
本発明において使用される任意選択的な触媒の濃度は、一般的に0wt%〜約20wt%、好ましくは約0.01wt%〜約10wt%、より好ましくは約0.1wt%〜約5wt%、最も好ましくは約0.2wt%〜約2wt%に及ぶことができる。
【0067】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物混合物を製造する際に、上記のエポキシオキサゾリドンに加えて、混合物は、成分(i)のエポキシ樹脂と異なる少なくとも1種のエポキシ樹脂(成分(iv))を含んでもよい。エポキシ樹脂は、少なくとも1つのビシナルエポキシ基を含む化合物である。エポキシ樹脂は、飽和又は不飽和の、脂肪族、脂環式、芳香族又は複素環式であることができ、置換されていてもよい。エポキシ樹脂は、モノマーであってもポリマーであってもよい。本発明において有用なエポキシ樹脂は、当該技術分野で知られている任意のエポキシ樹脂から選択できる。本発明において有用なエポキシ樹脂の広範な列挙が、引用により本明細書に援用するLee, H.及びNeville, K., "Handbook of Epoxy Resins," McGraw-Hill Book Company, New York, 1967, Chapter 2, 第257-307頁に見られる。
【0068】
本発明の成分(iv)として本明細書に開示する実施態様において使用されるエポキシ樹脂は、様々なものであることができ、かかる樹脂としては、従来のエポキシ樹脂及び市販のエポキシ樹脂が挙げられ、単独で使用するか、又は2種以上を併用できる。本明細書に開示する組成物に対してエポキシ樹脂を選択する際に、最終生成物の特性だけ考慮されるべきでなく、樹脂組成物の加工に影響を及ぼしうる粘度や他の特性も考慮されるべきである。
【0069】
当業者に知られている特に適するエポキシ樹脂は、多官能性アルコール類、フェノール類、脂環式カルボン酸、芳香族アミン又はアミノフェノール類とエピクロロヒドリンとの反応生成物に基づく。幾つかの比限定的な実施態様として、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、及びパラ−アミノフェノール類のトリグリシジルエーテルが挙げられる。当業者に知られている他の好適なエポキシ樹脂としては、エピクロロヒドリンとo−クレゾールの反応生成物、及びフェノールノボラック樹脂が挙げられる。2種又は3種以上のエポキシ樹脂の混合物を使用することもできる。
【0070】
硬化性エポキシ樹脂組成物の製造のために本発明において有用なエポキシ樹脂は、市販の製品、例えば、市販の液体エポキシ樹脂(LER)及び市販の固体エポキシ樹脂(SER)などから選択することができる。例えば、ザ・ダウ・ケミカル・カンパニーから入手可能なD.E.R.331、D.E.R.332、D.E.R.334、D.E.R.580、D.E.N.431、D.E.N.438、D.E.R.736又はD.E.R.732を使用できる。本発明の1つの例示として、エポキシ樹脂成分(a)は、175〜185のエポキシド当量、9.5Pa・sの粘度及び1.16g/ccの密度を有する液体エポキシ樹脂、D.E.R.(登録商標)383(DGEBPA)であることができる。エポキシ樹脂成分として使用できる他の市販のエポキシ樹脂は、D.E.R.330、D.E.R.354又はD.E.R.332であることができる。本発明において有用な他のエポキシ樹脂としては、ザ・ダウ・ケミカル・カンパニーから市販されているSER、例えばDER 661〜669、好ましくはDER 664が挙げられる。本発明において有用な他のエポキシ樹脂としてはDER 542及び他の臭素化エポキシ樹脂が挙げられる。
【0071】
本発明において有用な他の好適なエポキシ樹脂は、例えば米国特許第3,018,262号、米国特許第7,163,973号、第6,887,574号、第6,632,893号、第6,242,083号、第7,037,958号、第6,572,971号、第6,153,719号及び第5,405,688号;PCT国際公開第2006/052727号;並びに米国特許出願公開第20060293172号、第20050171237号及び第2007/0221890号に開示されており、それらの開示はそれぞれ引用により本明細書に援用する。
【0072】
好ましい一実施態様において、本発明の組成物において有用なエポキシ樹脂は、任意の芳香族又は脂肪族のグリシジルエーテル又はグリシジルアミン、あるいは脂環式エポキシ樹脂を含む。
【0073】
別の好ましい実施態様において、本発明の組成物において有用なエポキシ樹脂は、ジビニルアレーンジオキシド、特にジビニルベンゼンジオキシドを含む。
【0074】
一般的に、本発明において使用されるエポキシ樹脂の選択は用途に依存する。しかし、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)及びその誘導体が特に好ましい。他のエポキシ樹脂は、ビスフェノールFエポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAエポキシ樹脂、及びそれらの組み合わせからなる群から選択できるが、これらに限定されない。
【0075】
少なくとも1種のエポキシ樹脂(成分(ii))は、エポキシ樹脂混合物組成物中に、一般的には、約1wt%〜約99wt%、好ましくは約10wt%〜約90wt%、より好ましくは約25wt%〜約75wt%の濃度で存在することができる。
【0076】
本発明のさらに別の実施態様において、当該技術分野でよく知られている1又は2種以上の任意選択的な有機溶剤を硬化性エポキシ樹脂組成物中に使用できる。例えば、芳香族化合物、例えばキシレンなど、ケトン、例えばメチルエチルケトンなど、及びアルコール、例えば1−メトキシ−2−プロパノール、及びそれらの混合物を本発明において使用できる。
【0077】
本発明において使用される任意選択的な溶剤の濃度は、一般的には、0wt%〜約90wt%、好ましくは約1wt%〜約80wt%、より好ましくは約10〜約65wt%、最も好ましくは約20wt%〜約50wt%である。
【0078】
本発明の硬化性又は熱硬化性組成物は、必要に応じて、1又は2種以上の添加剤(それらの意図する用途に有用なもの)を含んでよい。例えば、本発明の組成物において有用な任意選択的な添加剤としては、安定剤、界面活性剤、流れ調整剤、顔料又は染料、艶消し剤、脱ガス剤、難燃剤(例えば、無機難燃剤、ハロゲン系難燃剤、及び非ハロゲン系難燃剤、例えばリン含有材料)、強化剤、硬化開始剤、硬化抑制剤、湿潤剤、着色剤又は顔料、熱可塑性材料、加工助剤、紫外線(UV)遮断化合物、蛍光化合物、紫外線(UV)安定剤、不活性充填剤、繊維強化材、酸化防止剤、耐衝撃性改良剤、例えば熱可塑性粒子など、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。上記のリストは例示を目的とし、限定を目的とするものでない。当業者は、本発明の配合物に対して好ましい添加剤を最適化することができる。
【0079】
追加の添加剤の濃度は、全組成物の質量を基準にして、約0wt%〜約90wt%、好ましくは約0.01wt%〜約80wt%、より好ましくは約1wt%〜約65wt%、最も好ましくは約10wt%〜約50wt%である。
【0080】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物の製造は、次の成分:エポキシオキサゾリドン樹脂、硬化剤、必要に応じて触媒、必要に応じて別のエポキシ樹脂、及び必要に応じて不活性有機溶剤を容器内で混合し、次にこれらの成分を配合してエポキシ樹脂組成物にすることにより達成される。混合順序に重要度はない。すなわち、本発明の配合物又は組成物を構成する成分は、本発明の熱硬化性組成物をもたらすために、任意の順序で混合されてよい。上記の任意選択的な様々な配合剤、例えば充填剤を、混合中又は混合前に組成物に加えて組成物を形成してもよい。
【0081】
硬化性エポキシ樹脂組成物の成分は全て、典型的には、所望の用途のための低い粘度を有する有効なエポキシ樹脂組成物の製造を可能にする温度で混合又は分散される。全成分の混合中の温度は、一般的に、約0℃〜約100℃、好ましくは約20℃〜約50℃である。
【0082】
上記のジビニルアレーンジオキシドから製造された本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、当該技術分野で知られている組成物と比べて同じ粘度で高い耐熱性を有するか又は同じ耐熱性でより低い粘度を有する。
【0083】
本発明のエポキシオキサゾリドンに基づく熱硬化物の耐熱性は、示差走査熱量測定法(DSC)を使用してガラス転移温度(T)により求めた場合、一般的に、約50℃〜約300℃、好ましくは約75℃〜約275℃、より好ましくは約100℃〜約250℃である。
【0084】
本発明の硬化性エポキシ樹脂配合物又は組成物、従来の加工条件下で硬化でき、熱硬化物を形成する。得られる熱硬化物は、高い熱安定性を維持しつつ、優れた熱−機械的特性、例えば良好な靱性及び機械的強度を示す。
【0085】
本発明の熱硬化製品を製造する方法は、重力キャスティング、真空キャスティング、自動圧力ゲル化(APG)、真空圧力ゲル化(VPG)、インフュージョン(infusion)、フィラメント巻き(filament winding)、レイアップインジェクション(lay up injection)、トランスファーモールディング、プリプレグ成形、浸漬、コーティング、吹付け、刷毛塗りなどにより実施できる。
【0086】
硬化反応条件としては、例えば、約0℃〜約300℃、好ましくは約20℃〜約250℃、より好ましくは約50℃〜約200℃の範囲内の温度のもとで反応を実施することが挙げられる。
【0087】
硬化反応は、例えば約0.01バール〜約1000バール、好ましくは約0.1バール〜約100バール、より好ましくは約0.5バール〜約10バールの圧力で実施できる。
【0088】
硬化性又は熱硬化性組成物の硬化は、例えば、当該組成物を硬化させるのに十分な所定の時間で実施することができる。例えば、硬化時間は、約1分間〜約24時間、好ましくは約10分間〜約12時間、より好ましくは約100分間〜約8時間の間で選択できる。
【0089】
本発明の硬化方法は、回分法又は連続法であることができる。当該方法で使用される反応器は、当業者によく知られている任意の反応器及び補助装置であることができる。
【0090】
本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させることにより製造される硬化した又は熱硬化した製品は、都合良いことに、加工性と熱−機械的特性(例えば硬化前配合物粘度、ガラス転移温度、モジュラス及び靱性)の改善されたバランスを示す。硬化した製品は、視覚的に透明又は半透明であることができる。従来のエポキシ樹脂だけを使用して製造された類似の熱硬化物と比べて、本発明のエポキシオキサゾリドンを使用して製造された熱硬化物はより高いT(5〜100%)及びより高い引張弾性率(5〜100%)を示す。
【0091】
は、使用される硬化剤及びエポキシ樹脂に依存する。1つの例として、本発明の硬化したエポキシオキサゾリドン樹脂のTは、その対応する従来の硬化したエポキシオキサゾリドン樹脂よりも約10%〜約100%高いことができる。一般的に、本発明の硬化したエポキシオキサゾリドン樹脂のTは約100℃〜約300℃であることができ、より好ましくは約140℃〜約250℃である。
【0092】
同様に、引張弾性率は、使用される硬化剤及びエポキシ樹脂に依存する。1つの例として、本発明の硬化したエポキシオキサゾリドン樹脂の引張弾性率はその対応する従来の硬化したエポキシオキサゾリドン樹脂よりも約10%〜約100%高いことができる。一般的に、本発明の硬化したエポキシオキサゾリドン樹脂の引張弾性率は約500MPa〜約5000MPaであることができ、より好ましくは約1000MPa〜約4000MPaである。
【0093】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ硬化性材料、又はコーティング、フィルム、接着剤、積層体、複合材料、電子機器などの形態の硬化製品の製造に有用である。
【0094】
本発明の1つの例として、一般的に、上記エポキシ樹脂組成物は、キャスティング(casting)、ポッティング(potting)、封入(encapsulation)、モールディング(molding)及びツーリング(tooling)に有用である。本発明は、電気キャスティング、ポッティング及び封入用途の全てのタイプに、モールディング及びプラスチックツーリングに、及びエポキシ系複合材料の部品の製造、特にキャスティング、ポッティング及び封入による大きなエポキシ系部品の製造に特に適する。得られる複合材料は、幾つかの用途、例えば電気キャスティング用途又は電子封入、キャスティング、モールディング、ポッティング、封入、射出、樹脂トランスファーモールディング、複合材料、コーティングなどで有用であることができる。
【実施例】
【0095】
以下の実施例及び比較例により本発明を詳しく説明するが、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきでない。
以下の例において、標準的な分析装置及び方法を使用した。例えば、ガラス転移温度(Tg)を10℃/分の温度掃引速度を使用して示差走査熱量測定法(DSC)により測定し、イソシアネート(2260cm-1)、オキサゾリドン(1750cm-1)、カルバマート(1725cm-1)及びイソシアヌレート(1710cm-1)のピーク高さについて吸光度モードでフーリエ変換赤外分光分析法(FTIR)を行い、粘度を、表示温度で10s-1の周波数で平行プレート固定治具を備えたARESレオメーターを使用して測定した。
【0096】
実施例1
熱電対、機械的攪拌機、加熱マントル及び加熱ランプを備えた250ml丸底フラスコに45gのDVBDO及び0.5gの2−フェニルイミダゾールを加えた。混合物を180℃に加熱し、混合物に5.2gのTDIを10分間かけて加えた。この時間中、反応温度は180〜187℃であった。180℃でさらに1分間後、反応を完了した。FTIRにより、イソシアネート転化率100%とオキサゾリドン選択率100%が示された。
【0097】
実施例2〜11及び比較例A〜E
1質量%の触媒を含むDVBDO中の10質量%のTDIを使用して触媒スクリーニング検討を行った。約3.5gのTDI/DVBDO/触媒混合物を試験管に入れ、攪拌により室温で均質化し、次に180℃のオイル浴に浸した。FTIR分析のために試料を定期的に採取した。TDIは、副反応(三量化及びカルバマート形成)しやすい。従来の第3級アミン、例えばジアザビシクロウンデセン(DBU)(例えばDER 332などのエポキシ樹脂を使用した場合に良好なオキサゾリドン選択率をもたらす触媒)は、DVBDOと使用した場合にゲル化をもたらした。他の触媒、例えば第2族及び第4族元素のハロゲン化物、トリオルガノアンチモンハロゲン化物、カルボン酸ビスマス、アンチモンハロゲン化物、第4級イモニウム塩及びイミダゾール類は有効であり、下記表Iに記載されている:
【0098】
【表1】

【0099】
反応物を全て反応開始時に組み合わせた実施例2〜11で使用した方法は、イソシアネートを反応混合物に徐々に加えた実施例1で使用した方法よりも低いオキサゾリドン選択率をもたらした。例えば、2−フェニルイミダゾールは、実施例1では100%のオキサゾリドン選択率をもたらし、実施例5では86%のオキサゾリドン選択率をもたらした。
【0100】
実施例12〜18及び比較例E
触媒としてBuPBrを使用し、表IIに示す量の試薬を使用して、実施例1に記載した手順を繰り返した。表IIにおいて、γは、イソシアネート基とエポキシド基の当量比である。比較例Fは、ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー製のD.E.R.(登録商標)6508エポキシ−オキサゾリドン樹脂の試料である。
【0101】
【表2】

【0102】
実施例19〜20及び比較例G〜H
エポキシオキサゾリドン樹脂を、表示したエポキシ樹脂及びジイソシアネートをγ=0.5で使用してオキサゾリドン選択率100%で上記のように製造し、硬化させて3官能性フェノールノボラック硬化剤による転化を完了させた。Prediction of Polymer Properties, Dekker, New York, 1993に記載されているBiceranoの方法を使用してTを予測した。
【0103】
【表3】

【0104】
実施例21〜22
イソホロンジイソシアネート(IPDI)を使用し、表IVに示す量の試薬を使用して実施例1に記載の手順を繰り返した。表IVにおいて、γは、イソシアネート基とエポキシド基の当量比である。IPDIを180℃でDVBDOに滴下添加することにより反応を行った。実施例21において、触媒及び反応時間はそれぞれPhSbBr及び80分間であり、実施例22において、触媒及び反応時間はそれぞれZrCl及び195分間であった。
【0105】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ官能性オキサゾリドン樹脂組成物を提供する(a)ジビニルアレーンジオキシドと(b)ポリイソシアネートとの反応生成物を含むエポキシ官能性オキサゾリドン樹脂組成物。
【請求項2】
前記エポキシ官能性オキサゾリドン樹脂組成物が、当該エポキシ官能性オキサゾリドン樹脂組成物中のカルボニル基の全含有量に対して40%を超えるオキサゾリドン選択率を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が150℃で約0.1Pa・s〜約10,000Pa・sの粘度を有し、前記組成物はカルボニル化合物の合計に対して40%を超えるオキサゾリドン選択率を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ジビニルアレーンジオキシドが、1又は2以上置換されたジビニルベンゼンジオキシド、ジビニルナフタレンジオキシド、ジビニルビフェニルジオキシド、ジビニルジフェニルエーテルジオキシド、及びそれらの混合物を含む群から選ばれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ジビニルアレーンジオキシドがジビニルベンゼンジオキシドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ジビニルアレーンジオキシドの濃度が、イソシアネート当量とエポキシド当量の比γで1.0未満であり、及び/又は前記ポリイソシアネートの濃度がイソシアネート当量とエポキシド当量の比γで1.0未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリイソシアネートが、トルエンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、及びそれらの混合物を含む群から選ばれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
反応触媒を含み、当該反応触媒は、ルイス酸、イミダゾール類、第4級塩、オルガノアンチモンハロゲン化物、又はそれらの混合物を含む群から選ばれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ルイス酸が塩化マグネシウム又は塩化ジルコニウムを包含し、前記イミダゾール類が2−フェニルイミダゾールを包含し、前記第4級塩がテトラブチルホスホニウムブロミド又はテトラエチルアンモニウムブロミドを包含し、前記オルガノアンチモンハロゲン化物がトリフェニルアンチモンテトラヨージド若しくはトリフェニルアンチモンジブロミド又はそれらの混合物を包含する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
(i)請求項1に記載のエポキシ官能性オキサゾリドン樹脂組成物と(ii)少なくとも1種の硬化剤とを含む硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
前記エポキシ官能性オキサゾリドン樹脂組成物が、約1.5未満のT500:Tの比に基づく溶融粘度を有する、請求項10に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
前記エポキシオキサゾリドンの濃度が約1質量%〜約100質量%であり、前記硬化剤の濃度が約0.01質量%〜約90質量%である、請求項10に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
前記硬化剤が、酸無水物、カルボン酸、アミン化合物、フェノール系化合物、ポリオール、及びそれらの混合物を含む群から選ばれる、請求項10に記載の硬化性組成物。
【請求項14】
(a)ジビニルアレーンジオキシドと(b)ポリイソシアネートとを反応させてエポキシ官能性オキサゾリドン樹脂組成物を提供することを含む、エポキシ官能性オキサゾリドン樹脂組成物の製造方法。
【請求項15】
反応触媒を含み、当該反応触媒は、ルイス酸、イミダゾール類、第4級塩、オルガノアンチモンハロゲン化物、又はそれらの混合物を含む群から選ばれる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ルイス酸が塩化マグネシウム又は塩化ジルコニウムを包含し、前記イミダゾール類が2−フェニルイミダゾールを包含し、前記第4級塩がテトラブチルホスホニウムブロミド又はテトラエチルアンモニウムブロミドを包含し、前記オルガノアンチモンハロゲン化物がトリフェニルアンチモンテトラヨージド若しくはトリフェニルアンチモンジブロミド又はそれらの混合物を包含する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
(i)請求項1に記載のエポキシ官能性オキサゾリドン樹脂組成物と(ii)少なくとも1種の硬化剤とを混合することを含む、硬化性エポキシ樹脂組成物の製造方法。
【請求項18】
請求項10に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させることにより製造された硬化した熱硬化製品。

【公表番号】特表2013−510924(P2013−510924A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538829(P2012−538829)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/052767
【国際公開番号】WO2011/059633
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】