説明

ポリオルガノシロキサン及びそれを含む硬化性シリコーン組成物並びにその用途

【課題】高耐熱性、高屈折率、及び、高耐紫外線性を兼ね備えた硬化性シリコーン組成物及びその硬化物を提供すること
【解決手段】(A)下記平均単位式:
【化1】


{式中、Rはシクロアルキル基を表し、Rは芳香族基及びシクロアルキル基以外の一価有機基であって、一分子中少なくとも1個のRはエポキシ基含有一価有機基を表し、0<a≦3であり、x>0であり、y>0であり、且つ、x+y=1である}で表され、一分子中に少なくとも1個のエポキシ基含有有機基を含有する、ポリスチレン換算重量平均分子量が500以上のポリオルガノシロキサンを必須に含む硬化性シリコーン組成物及びその硬化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオルガノシロキサン及びそれを含む硬化性シリコーン組成物に関し、並びに、その用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紫外線を発光乃至通過させる光学素子等の光学用物品の分野では、その輝度又は光量の増大が顕著であるが、従来の光学用物品に使用されていたエポキシ樹脂系有機材料は耐紫外線性が低く、紫外線照射により容易に褐色に変色する。一方、ポリジメチルシロキサンを含む硬化性シリコーン組成物は、その硬化物が耐熱性で且つ耐紫外線性が高いことから、従来から、短波長光の光路材料として使用されている。そこで、紫外線を発光乃至通過させる光学用物品では、エポキシ樹脂系有機材料はポリジメチルシロキサン系の硬化性シリコーン組成物に代替されつつある。
【0003】
しかし、ポリジメチルシロキサン系硬化性シリコーン組成物及びその硬化物は、屈折率が1.41とエポキシ樹脂に比べて低く、当該硬化物を使用した光学用物品の輝度が低下する問題があった。そこで、ポリジメチル・ジフェニルシロキサン系又はポリメチルフェニルシロキサン系硬化性シリコーン組成物のようにフェニル基を導入して、屈折率をエポキシ樹脂系有機材料並に高めようとする動きがある。
【0004】
しかし、このようなフェニル基を含有する硬化性シリコーン組成物の耐紫外線性は、エポキシ樹脂系有機材料よりは優れるものの、ポリジメチルシロキサン系硬化性シリコーン組成物には及ばないものであった。例えば、特開平10−36511号公報では、シクロヘキシル基又はシクロペンチル基、さらにシラノール基及びフェニル基を含有するシロキサン単位からなる共重合体が記載されており、この共重体の硬化物も例示されている。しかし、フェニル基を必須とすることから、高屈折率を有するものの、耐紫外線性に問題があった。
【0005】
また、従来の硬化性シリコーン組成物は白金触媒を配合することで付加反応させ硬化することが一般的である(例えば、特開2000−17176号公報参照)が、このような組成物が紫外線照射を受けると、組成物中の白金触媒が紫外線又は加熱によって着色し、硬化物が褐色乃至は黄色になるおそれがあるという問題点があった。
【特許文献1】特開平10−36511号公報
【特許文献2】特開2000−17176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の従来技術の現状に鑑みて為されたものであり、特に光学用途に好適な、高耐熱性、高屈折率、及び、高耐紫外線性を兼ね備えた硬化性シリコーン組成物及びその硬化物を提供することをその目的とする。
【0007】
また、本発明は、紫外線照射又は加熱による変色の恐れのある白金触媒を使用しない硬化性シリコーン組成物を提供することをもその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、シクロアルキル基含有オルガノポリシロキサン及びその硬化物が高屈折率であり、かつ、高耐紫外線性であること、並びに、エポキシ基の架橋反応を用いることによって白金触媒の使用を避けることができることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明の一つの態様は、(A)下記平均単位式:
【化1】

{式中、
Rはシクロアルキル基を表し、
は芳香族基及びシクロアルキル基以外の一価有機基であって、一分子中少なくとも1個のRはエポキシ基含有一価有機基を表し、
0<a≦3であり、
x>0であり、
y>0であり、且つ、
x+y=1である}
で表され、一分子中に少なくとも1個のエポキシ基含有有機基を含有する、ポリスチレン換算重量平均分子量が500以上のポリオルガノシロキサンである。
【0010】
また、本発明の他の態様は、上記(A)ポリオルガノシロキサンと、(B)(A)成分の硬化剤を必須に含む硬化性シリコーン組成物である。前記硬化性シリコーン組成物は液状あるいはペースト状であることができる。
【0011】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、(C)下記平均単位式:
【化2】

{式中、
は芳香族基及びシクロアルキル基以外の一価有機基であって、一分子中少なくとも1個のRはエポキシ基含有一価有機基を表し、
0.1<b≦3である}
で表され、一分子中に少なくとも1個のエポキシ基含有有機基を含有するポリオルガノシロキサンを更に含むことが好ましい。
【0012】
前記(B)成分は、ケイ素結合アルコキシ化合物又はシラノール基含有化合物と有機アルミニウム系化合物との組合せであることが好ましい。
【0013】
本発明の硬化性シリコーン組成物は加熱により硬化させることが可能であり、特に、光学用物品に好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポリオルガノシロキサン及びそれを含む硬化性シリコーン組成物は、耐熱性、屈折率及び耐紫外線に優れており、特に光学用途に最適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明のポリオルガノシロキサンについて詳細に説明する。
【0016】
本発明の(A)ポリオルガノシロキサンは下記の平均単位式:
【化3】

で表される。
【0017】
上記の平均単位式中、
Rはシクロアルキル基を表し、
は芳香族基及びシクロアルキル基以外の一価有機基を表し(但し、一分子中少なくとも1個のRはエポキシ基含有一価有機基を表す)、
0<a≦3であり、
xは0を越える数であり、
yは0を越える数であり、且つ、
xとyの合計は1である。
【0018】
シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられるが、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基が好ましく、シクロヘキシル基が特に好ましい。
【0019】
一価有機基としては、例えば、水素、或いは、
ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などのアルケニル基;
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;および
クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基;等の置換もしくは非置換の一価炭化水素基が挙げられる。好ましい一価有機基は一価炭化水素基であり、アルキル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0020】
上記エポキシ基含有一価有機基としては、エポキシ基を含む一価の任意の炭化水素基が好適であり、具体的には、グリシドキシエチル基、グリシドキシプロピル基、グリシドキシブチル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル基、3,4−エポキシノルボルネニルエチル基、2−(3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシル)−2−メチルエチル基等が例示できる。これらのエポキシ基含有有機基は1分子内に1個以上存在すればよく、また、2個以上存在してもよい。
【0021】
上記xは0.2〜0.9であることが好ましく、0.4〜0.9がより好ましい。また、上記yは0.1〜0.8であることが好ましく、0.1〜0.6がより好ましい。但し、xとyの合計は1である。
【0022】
(A)ポリオルガノシロキサンのポリスチレン換算重量平均分子量は500以上であり、800〜80000の範囲であることが好ましく、1000〜20000の範囲がより好ましい。
【0023】
(A)ポリオルガノシロキサンは、一種類のシリコーンレジンから構成されていてもよく、また、二種類以上のシリコーンレジンからなる混合物でもよい。 (A)ポリオルガノシロキサンの25℃における性状は、液状、ペースト状もしくは固体状のいずれであってもよい。固体状の場合には、有機溶剤を用いることにより、他の成分と均一に混合することができる。なお、後述する本発明の硬化性シリコーン組成物を製造しやすいことから、液体またはペースト状であることが好ましい。
【0024】
好ましい(A) ポリオルガノシロキサンとしては、具体的には、下記式で示されるシリコーンレジンが挙げられる。
(RSiO3/2)[(CH3)2SiO2/2][XCH3SiO2/2]
(RSiO3/2)[(CH3)2SiO2/2][YCH3SiO2/2]
(RSiO3/2)[XCH3SiO2/2]
(RSiO3/2)[YCH3SiO2/2]
(RSiO3/2)(CH3SiO3/2)[XCH3SiO2/2]
(RSiO3/2)(CH3SiO3/2)[YCH3SiO2/2]
{上記式中、
Rはシクロヘキシル基を表し、
Xはグリシドキシプロピル基を表し、
Yは3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基を表し、
x>0であり、
z>0であり、
w>0であり、
且つz+w=y(yは上記のとおりである)であり、x+w+z=1である}
【0025】
(A)ポリオルガノシロキサンを調製する方法としては、例えば、
シクロヘキシルトリメトキシシラン等のシクロアルキルトリアルコキシシランとγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2,3−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有アルコキシシランとの脱アルコール縮合反応が挙げられる。
【0026】
また、他の方法としては、シクロヘキシルトリクロロシラン等のシクロアルキルトリハロシラン又はシクロヘキシルトリメトキシシラン等のシクロアルキルトリアルコキシシランを、ジメチルクロロシラン等のSiH基を含有するシラン類の存在下で共加水分解および縮合反応させる等して調製したSiH基含有ポリオルガノシロキサンを脂肪族不飽和基及びエポキシ基を含有する有機基を有する化合物とヒドロシリル化反応させる方法が挙げられる。
【0027】
なお、このようにして調製されたシリコーン中のシラノール基を分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサンと塩基性の重合触媒の存在下で再平衡重合する方法;RSiO3/2単位(R:シクロアルキル基)からなるシリコーンレジンと環状メチルビニルシロキサンとを塩基性の重合触媒の存在下で再平衡重合する方法;RSiO3/2単位(R:シクロアルキル基)からなるシリコーンレジンと環状メチルビニルシロキサンと環状ジメチルシロキサンとを酸性もしくは塩基性の重合触媒の存在下で再平衡重合する方法なども例示される。
【0028】
(A)ポリオルガノシロキサンには、その製造方法に由来するアルコキシ基やシラノール基が一部残留していてもよい。
【0029】
(A)ポリオルガノシロキサンは、高い屈折率を有し、また、紫外線照射又は長期加熱による変色がないことから、光学用材料として有用である。
【0030】
次に、本発明の硬化性シリコーン組成物について説明する。
【0031】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、前記した(A)ポリオルガノシロキサンと(B)その硬化剤からなる。本組成物の(B)硬化剤は、エポキシ基と反応する化合物(エポキシ反応性化合物)から必須になるものであれば特に制限されないが、エポキシ反応性化合物と触媒との組合せが好ましい。任意に硬化促進剤を更に組み合わせることも可能である。
【0032】
エポキシ反応性化合物としては、例えば、
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランもしくはβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のケイ素結合アルコキシ基含有化合物;
下記一般式:
【化4】

(式中、
、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、前記一価有機基を表し;
mは1〜30の整数を表す)
で表されるシラノール基含有化合物;並びに
酸無水物、または、カルボン酸、アミン、フェノール、アルコール、メルカプト等の活性水素含有化合物が挙げられる。エポキシ反応性化合物は1種のみを使用してもよく、あるいは、2種以上を混合して使用することもできる。
【0033】
触媒としては、例えば、アルキル基、非置換または置換フェニル基等のアリール基、ハロアルキル基、アルコキシル基、非置換または置換フェノキシ基等のアリールオキシ基、アシルオキシ基、β−ジケトナト基、o-カルボニルフェノラト基等の群から選択された有機基を結合してなる有機金属化合物が例示される。好ましい有機金属化合物としては、有機アルミニウム化合物および有機ジルコニウム化合物が例示される。
【0034】
上記有機基中、アルキル基としてはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が例示され、非置換または置換フェニル基としてはフェニル基、p-メトキシフェニル基、o-メトキシフェニル基、p-エトキシフェニル基が例示され、ハロアルキル基としてはクロルメチル基、クロルエチル基、クロルプロピル基が例示され、アルコキシル基としてはメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基が例示され、非置換または置換フェノキシ基としてはフェノキシ基、o-メチルフェノキシ基、o-メトキシフェノキシ基、o-ニトロフェノキシ基、2,6-ジメチルフェノキシ基が例示され、アシルオキシ基としてはアセタト基、プロピオナト基、イソプロピオナト基、ブチラト基、ステアラト基、エチルアセトアセタト基、プロピルアセトアセタト基、ブチルアセトアセタト基、ジエチルマラト基、ジピバロイルメタナト基が例示され、β−ジケトナト基としてはアセチルアセトナト基、トリフルオロアセチルアセトナト基、ヘキサフルオロアセチルアセトナト基、
【化5】

(上記の式は配位する前の化合物)が例示され、o-カルボニルフェノラト基としてはサリチルアルデヒダト基が例示される。
【0035】
有機アルミニウム化合物としてはトリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、トリ(p-メチルフェノキシ)アルミニウム、イソプロポキシジエトキシアルミニウム、トリブトキシアルミニウム、トリアセトキシアルミニウム、トリステアラトアルミニウム、トリブチラトアルミニウム、トリプロピオナトアルミニウム、トリイソプロピオナトアルミニウム、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、トリス(トリフルオロアセチルアセトナト)アルミニウム、トリス(サリチルアルデヒダト)アルミニウム、トリス(ペンタフルオロアセチルアセトナト)アルミニウム、トリス(エチルアセタト)アルミニウム、エチルアセタトジイソプロポキシアルミニウム、トリス(ジエチルマロラト)アルミニウム、トリス(プロピルアセトアセタト)アルミニウム、トリス(ブチルアセトアセタト)アルミニウム、トリス(イソプロピルアセトアセタト)アルミニウム、トリス(ジピバロイルメタナト)アルミニウム、ジアセチルアセトナトジピバロイルメタナトアルミニウム、エチルアセトアセタトジイソプロポキシアルミニウム、
【化6】

が例示される。
【0036】
有機ジルコニウム化合物としてはトリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムが例示される。中でも、反応性の高さや入手の容易さから有機アルミニウム化合物が好ましく、特に、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートが好ましい。触媒は1種のみを使用してもよく、あるいは、2種以上を混合して使用することもできる。
【0037】
硬化促進剤としては、例えば、
トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等の第三級アミン化合物;
トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフイン・トリフェニルボレート、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレート等の有機リン化合物;
2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール型化合物;
ホウ素錯化合物;
有機アンモニウム塩;
有機スルホニウム塩;
有機過酸化物;並びに
これらの反応物等が挙げられる。硬化促進剤は1種のみを使用してもよく、あるいは、2種以上を混合して使用することもできる。
【0038】
紫外線照射又は加熱による変質乃至着色の回避の点では、ケイ素結合アルコキシ化合物又はシラノール基含有化合物と有機アルミニウム化合物との組み合わせが好ましい。
【0039】
(A)ポリオルガノシロキサンに対する(B)硬化剤の量はシリコーン組成物全体が硬化するのに十分な量であれば特に限定されるものではない。(B)成分がケイ素結合アルコキシ基含有化合物又はシラノール基含有化合物と有機アルミニウム化合物との組み合わせからなる場合は、(B)成分は触媒量で十分である。この場合、(A)成分100重量部に対し、(B)成分1〜100重量部の比が好ましく、1〜10重量部の比がより好ましく、1〜5重量部が特に好ましい。一方、(B)成分が活性水素含有化合物の場合は、(A)成分と同量近くの配合が必要である。この場合、典型的には、(A)成分100重量部に対し、(B)成分50〜250重量部が使用され、より典型的には100〜200重量部が使用される。
【0040】
本発明の(A)ポリオルガノシロキサンと(B)その硬化剤からなる硬化性シリコーン組成物は、室温もしくは加熱により硬化が進行するが、迅速に硬化させるためには加熱することが好ましい。この加熱温度としては、50〜200℃の範囲内が好ましい。
【0041】
本発明の硬化性シリコーン組成物の硬化物は、紫外線照射によって変色することが無く、また、長期加熱による変色も無いことから、光学用物品の光透過部等の材料として有用である。
【0042】
本発明の硬化性シリコーン組成物には、下記平均単位式:
【化7】

{式中、
は芳香族基及びシクロアルキル基以外の一価有機基であって、一分子中少なくとも1個のRはエポキシ基含有一価有機基を表し、
0<b≦3である}
で表され、一分子中に少なくとも1個のエポキシ基含有有機基を含有する(C)ポリオルガノシロキサンを更に配合することができる。
【0043】
上記一価有機基としては、例えば、
水素;または
ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペテニル基、ヘキセニル基などのアルケニル基;
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;および
クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基;等の置換もしくは非置換の一価炭化水素基が挙げられる。好ましい一価有機基は一価炭化水素基であり、アルキル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0044】
上記エポキシ基含有一価有機基としては、エポキシ基を含む一価の任意の炭化水素基が好適であり、具体的には、グリシドキシエチル基、グリシドキシプロピル基、グリシドキシブチル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル基、3,4−エポキシノルボルネニルエチル基、2−(3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシル)−2−メチルエチル基等が例示できる。これらのエポキシ基含有有機基は1分子内に1個以上存在すればよく、また、2個以上存在してもよい。
【0045】
(C)ポリオルガノシロキサンは、線状、環状又は分岐状のいずれの構造であってもよい。また、その物理形態は、常温で固体又は液体のいずれであってもよく、その分子量や粘度に制限はない。しかし、(A)成分へ分散性の点から、液体であることが好ましく、さらに、25℃で1〜10万mmPa・sの粘度を有することが好ましい。特に好ましい(C)成分としては、ビス−グリシドキシプロピルテトラメチルジシロキサンが挙げられる。
【0046】
(C)成分が低粘度化合物である場合には、本発明の硬化性シリコーン組成物を低粘度化して当該硬化性シリコーン組成物の取り扱いを容易とすることができる。
【0047】
(C)成分の配合量は特に限定されるものではないが、好ましくは、(A)成分100重量部に対して0.01〜100重量部であり、さらに好ましくは、0.5〜50重量部である。
【0048】
本発明の硬化性シリコーン組成物には必要に応じて無機フィラーを添加してもよい。無機フィラーを添加することにより、組成物の過剰な流動化を防止し、また、硬化物の高強度化を図ることもできる。
【0049】
無機フィラーとしては硬化性シリコーン組成物及びその硬化物の光学特性を低下させない微粒子状のものが好ましく、例えば、(超)微粒子状のアルミナ、水酸化アルミニウム、溶融シリカ、結晶性シリカ、無定型シリカ、疎水性シリカ、タルク、硫酸バリウム等を挙げることができる。
【0050】
無機フィラーは本発明の硬化性シリコーン組成物にそのまま添加してもよく、或いは、アルコキシシラン、アシロキシシラン、ハロゲン化シラン等の加水分解性シランモノマー又はオリゴマーと、チタン、アルミニウム等の金属のアルコキシド、アシロキシド、ハロゲン化物等とを、本発明の硬化性シリコーン組成物に添加して、組成物中で反応させて無機フィラーをインシツ(in situ)で生成させてもよい。
【0051】
無機フィラーの添加量は特に限定されるものではないが、組成物の全質量に基づき1〜50重量%が好ましく、1〜30重量%がより好ましく、1〜10重量%がより好ましい。無機フィラーは1種のみを使用してもよく、あるいは、2種以上を混合して使用することもできる。
【0052】
また、本発明の硬化性シリコーン組成物の特性を改質する目的で、種々の熱硬化性樹脂を添加することもできる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、シアナート樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂等が例示されるがこれに限定されるものではない。これらのうち、透明性が高く接着性等の実用特性に優れるという観点から、透明エポキシ樹脂が好ましい。
【0053】
透明エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、2,2’−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカーボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−5,5−スピロ−(3,4−エポキシシクロヘキサン)−1,3−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビスグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート等のエポキシ樹脂をヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、水素化メチルナジック酸無水物等の脂肪族酸無水物で硬化させたものが挙げられる。
【0054】
熱硬化性樹脂の添加量は特に限定されるものではないが、組成物の全質量に基づき1〜50重量%が好ましく、1〜30重量%がより好ましく、1〜10重量%がより好ましい。熱硬化性樹脂は1種のみを使用してもよく、あるいは、2種以上を混合して使用することもできる。
【0055】
本発明の硬化性シリコーン組成物には、接着性向上のために、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等のカップリング剤を配合してもよい。シランカップリング剤としては、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有アルコキシシラン;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有アルコキシシランが例示される。また、チタネートカップリング剤としては、i−プロポキシチタントリ(i−イソステアレート)が例示される。
【0056】
カップリング剤の添加量は特に限定されるものではないが、組成物の全質量に基づき1〜50重量%が好ましく、1〜30重量%がより好ましく、1〜10重量%がより好ましい。カップリング剤は1種のみを使用してもよく、あるいは、2種以上を混合して使用することもできる。
【0057】
更に、本発明の硬化性シリコーン組成物には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤等の有機溶剤を配合することができる。
【0058】
有機溶剤の添加量は特に限定されるものではないが、組成物の全質量に基づき1〜50重量%が好ましく、1〜30重量%がより好ましく、1〜10重量%がより好ましい。有機溶剤は1種のみを使用してもよく、あるいは、2種以上を混合して使用することもできる。
【0059】
この他に、本発明の硬化性シリコーン組成物には種々の添加剤を本発明の目的および効果を損なわない範囲において添加することができる。添加剤としては例えば、発光素子からの光を吸収してより長波長の蛍光を出す、セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体等の蛍光体;特定の波長を吸収するブルーイング剤等の着色剤;酸化チタン、酸化アルミニウム、シリカ又は石英ガラス等の酸化ケイ素、タルク、炭酸カルシウム、メラミン樹脂、CTUグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のような各種無機あるいは有機光拡散材;ガラス、アルミノシリケート等の金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化ボロン等の金属窒化物等の放熱材;その他に、老化防止剤、ラジカル禁止剤、紫外線吸収剤、接着性改良剤、難燃剤、界面活性剤、保存安定改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤等を挙げることができる。
【0060】
これらの添加剤の添加量は特に限定されるものではないが、組成物の全質量に基づき1〜50重量%が好ましく、1〜30重量%がより好ましく、1〜10重量%がより好ましい。各添加剤は1種類のみを使用してもよく、あるいは、2種類以上を組み合わせて添加してもよい。2種類以上を添加する場合は、各添加剤の量は同一としてもよく、また、異ならせてもよい。
【0061】
本発明の硬化性シリコーン組成物は上記の(A)成分、(B)成分、さらには(C)成分、および、その他の任意成分を均一に混合することにより調製される。調製方法は特に限定されず、例えば、(A)成分と(B)成分を混合し調製を完了する方法、(A)成分と(B)成分との混合物に(C)成分を混合して調製を完了する方法、(A)成分と(B)成分と(C)成分を同時に混合して調製を完了する方法、(A)成分と (C)成分を予備混合した後、(B)成分を混合する方法、(A)成分及び(B)成分にその他の任意成分をそれぞれ配合した後に両者を混合する方法が例示される。(A)成分及び(B)成分、あるいはさらに(C)成分またはその他の任意成分を混合する混合装置は、特に限定されるものではなく、(A)成分または(B)成分の液状、固体状、粉状等の種々の形態により混合装置は適宜選択される。具体的には、一軸または二軸の連続混合機、二本ロール、ロスミキサー、ホバートミキサー、デンタルミキサー、プラネタリミキサー、ニーダーミキサーが混合装置として例示される。
【0062】
本発明の硬化性シリコーン組成物及びその硬化物は、可視光(589nm)における屈折率(25℃)が1.5以上、及び/又は、可視光(420nm)における光透過率(25℃)が80%以上であることが好ましい。これは、屈折率が1.5未満、及び/又は、光透過率が80%未満であるような硬化性シリコーン組成物及びその硬化物はそれにより被覆された光学用物品に十分な信頼性を付与することができなくなるおそれがあるからである。
【0063】
屈折率は、例えば、アッベ式屈折率計により測定することができる。この際、アッベ式屈折率計における光源の波長を変えることにより任意の波長における屈折率を測定することができる。また、光透過率は、例えば、光路長1.0mmの硬化物を分光光度計により測定することにより求めることができる。
【0064】
本発明の硬化性シリコーン組成物の硬化物はエラストマー状、特には、ゲル状、柔軟なゴム状あるいは樹脂状である。したがって、本発明の硬化性シリコーン組成物は、電気・電子製品用の接着剤、ポッティング剤、保護コーティング剤、アンダーフィル剤として使用することができ、特に、可視光における光透過率が高いことから、光学用途に使用される半導体素子の接着剤、ポッティング剤、封止剤、保護コーティング剤、アンダーフィル剤として好適である。
【0065】
特に、本発明の硬化性シリコーン組成物は、光透過性が高いので光学用物品へ好適に使用することができる。ここで光学用物品とは光を透過させる透過部を有する任意の物品を指し、本発明の硬化性シリコーン組成物及びその硬化物は当該光透過部への適用に好適である。ここで、光とは、可視光、赤外線、紫外線、X線等の電磁波を指す。本発明の硬化性シリコーン組成物又はその硬化物の適用形態としては、接着剤、封止剤、コーティング剤、フィルム、シート、レンズ等の形態が挙げられる。
【0066】
光学用物品の種類は、特に限定されるものではないが、例えば、下記のようなものが挙げられる。
(1)液晶ディスプレイ用の基板、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、偏光子保護フィルム、液晶用フィルム;
(2)プラズマディスプレイ用の基板、反射防止フィルム、光学補正フィルム、ハウジング材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料;
(3)発光ダイオード表示装置用の基板、発光ダイオード、発光ダイオード以外の発光素子、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料;
(4)プラズマアドレス液晶(PALC)ディスプレイ用の基板、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、偏光子保護フィルム;
(5)有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ用の基板、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料;
(6)フィールドエミッションディスプレイ(FED)用の基板、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料;
(7)VD(ビデオディスク)、CD/CD−ROM、CD−R/RW、DVD−R/DVD−RAM、MO/MD、PD(相変化ディスク)、光カード用のディスク基板、ピックアップレンズ、保護フィルム;
(8)スチールカメラのレンズ、ファインダプリズム、ターゲットプリズム、ファインダーカバー、受光センサー
(9)ビデオカメラの撮影レンズ、CCD素子、ファインダー;
(10)プロジェクションテレビの投射レンズ、保護フィルム;
(11)光センシング機器のレンズ、フィルム;
(12)光通信システム用の光スイッチ、レンズ、導波路;
(13)光受動部品、光回路部品用のレンズ、導波路;
(14)各種発光素子、光増幅素子、光演算素子;
(15)光電子集積回路(OEIC)用基板、ファイバー材料;
(16)光ファイバーのコア又はクラッド、コネクター、フェルール;
(17)工業用の光学センサー類、表示・標識類;
(18)半導体集積回路、LSI、超LSI材料用のマイクロリソグラフィー用のレジスト材料;
(19)自動車・輸送機用のランプリフレクタ、スイッチ部分、ヘッドランプ、電装部品、各種内外装品、ガラス代替品;
(20)建築分野用、内装・加工用材料、電気カバー、シート、ガラス中間膜、ガラス代替品、太陽電池;
(21)農業ハウス被覆用フィルム;
【0067】
特に、本発明の硬化性シリコーン組成物及びその硬化物は、発光ダイオード(LED)、フォトカプラー、CCD等の光学用物品に好適である。
【実施例】
【0068】
以下、本発明を実施例により説明する。
【0069】
実施例中、硬化性シリコーン組成物および硬化物の粘度、平均分子量、屈折率、耐熱性、耐紫外線性、及び、光透過率は以下に示す方法により測定したものである。
【0070】
[粘度]
E型粘度計(TOKIMEC社製、DIGITAL VISTOMETER DV-U-EII型)を用いて室温(25℃)及び回転数2.5の条件で測定した。
【0071】
[平均分子量]
THFを溶媒としてGPCで測定した、ポリスチレン換算した重量平均分子量を示す。
【0072】
[屈折率]
25℃における屈折率をアッベ式屈折率計を用いて測定した。なお、測定用光源として、可視光(589nm)放射光源を用いた。
【0073】
[耐熱性]
180℃の熱風式循環オーブン中に2時間放置した後の着色度合いを目視で観察した。
【0074】
[耐紫外線性]
10ccのガラス製サンプルビン(直径15mm。高さ45mm)に(A)成分あるいは硬化性シリコーン組成物の5gを導入して試料とした。紫外線照射装置(ウシオ電機社製、UVC−253)の高圧水銀ランプ(ULV−4000−O/N、ランプ入力120W/cm)から17cmの距離を置き、サンプルビンの上側から試料に、5時間照射した。照射後の試料の着色度合いを目視で観察した。硬化性シリコーン組成物の硬化物の耐紫外線性を評価する場合は紫外線照射前に硬化性シリコーン組成物を硬化させて上記照射・観察を行った。
【0075】
[光透過率]
試料厚み(光路長)を1.0mmとして、(A)成分あるいは硬化性シリコーン組成物の25℃における光透過率を可視光(波長420nm)における光透過率を測定した。硬化性シリコーン組成物の硬化物の光透過率を評価する場合は硬化性シリコーン組成物を硬化させてから上記測定を行った。
【0076】
[実施例1]
温度計とDean−Stark管と還流冷却管を取り付けた500mlのフラスコに、シクロヘキシルトリメトキシシランを98.0gと3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン10.3gとジメチルジメトキシシラン10.9gとトルエン80gと水酸化カリウム0.13gを投入した。次に、この系に水30.8gを加えた後、加熱しながら生成したメタノールと水を留去した。水の留出がなくなってから、この系を冷却し、この系にさらにトルエンと水20.0gを加えた。次いで、この系を加熱しながら生成したメタノールと水を留去した。更に水20gを加え生成したメタノールと水を留去し後に、6時間加熱還流した。冷却後、この系に酢酸0.20gを投入して中和処理した。次いで、これにトルエン加え、更に80mlの水で3回水洗した。得られたトルエン溶液を、Dean−Stark管を取り付けた500mlのフラスコに投入し、共沸脱水した。不純物を濾過し、濾液を減圧下で加熱することによりトルエンを留去して無色透明固体78gを得た。
【0077】
この無色透明固体は、平均分子量:2930、軟化点=約70℃、エポキシ当量:2030、平均単位式:
【化8】

(式中、R:シクロヘキシル、E:グリシドキシプロピル、R”:HあるいはCH
で示されるシクロヘキシル基と3−グリシドキプロピル基とを含有したシリコーンレジンであることが確認された。
【0078】
実施例1で得られたシリコーンレジンの屈折率、耐熱性、耐紫外線性及び紫外線照射前後の光透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0079】
[実施例2]
温度計とDean−Stark管と還流冷却管を取り付けた500mlのフラスコに、シクロヘキシルトリメトキシシランを77.1gとオクタメチルテトラシクロシロキサン11.2gと水6.8gとトリフルオロメタンスルホンサン0.06gを入れ、加熱しながら生成したメタノールを除去した。次にトルエン78gと水酸化カリウム0.17gと3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン22.2gと水34.4gを加えた後、加熱しながら生成したメタノールと水を留去した。水の留出がなくなってから、この系を冷却し、この系にさらにトルエンと水20.0gを加えた。次いで、この系を加熱しながら生成したメタノールと水を留去し、更に、6時間加熱還流した。冷却後、この系に酢酸0.23gを投入して中和処理した。次いで、これにトルエン加え、更に80mlの水で3回水洗した。得られたトルエン溶液を、Dean−Stark管を取り付けた500mlのフラスコに投入し、共沸脱水した。不純物を濾過し、濾液を減圧下で加熱することによりトルエンを留去して無色粘稠ペースト73gを得た。
【0080】
この無色粘稠ペーストは、平均分子量:4940、エポキシ当量:1310、平均単位式:
【化9】

(式中、R:シクロヘキシル、E:グリシドキシプロピル、R”:HあるいはCH
で示されるシクロヘキシル基と3−グリシドキプロピル基とを含有したシリコーンレジンであることが確認された。
【0081】
実施例2で得られたシリコーンレジンの屈折率、耐熱性、耐紫外線性及び紫外線照射前後の光透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0082】
[実施例3]
温度計とDean−Stark管と還流冷却管を取り付けた500mlのフラスコに、シクロヘキシルトリメトキシシランを78.7gと3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン22.7gとジメチルジメトキシシラン18.5gとトルエン79gと水酸化カリウム0.16gを投入した。次に、この系に水30.1gを加えた後、加熱しながら生成したメタノールと水を留去した。水の留出がなくなってから、この系を冷却し、この系にさらにトルエンと水10.0gを加えた。次いで、この系を加熱しながら生成したメタノールと水を留去し、更に、6時間加熱還流した。冷却後、この系に酢酸0.24gを投入して中和処理した。次いで、これにトルエン加え、更に80mlの水で3回水洗した。得られたトルエン溶液を、Dean−Stark管を取り付けた500mlのフラスコに投入し、共沸脱水した。不純物を濾過し、濾液を減圧下で加熱することによりトルエンを留去して無色透明液体75gを得た。
【0083】
この無色透明液体は、平均分子量:2300、粘度:1.4万mPa・s、エポキシ当量:940、平均単位式:
【化10】

(式中、R:シクロヘキシル、E:グリシドキシプロピル、R”:HあるいはCH
で示されるシクロヘキシル基と3−グリシドキプロピル基とを含有したシリコーンレジンであることが確認された。
【0084】
実施例3で得られたシリコーンレジンの屈折率、耐熱性、耐紫外線性及び紫外線照射前後の光透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0085】
[実施例4]
温度計とDean−Stark管と還流冷却管を取り付けた500mlのフラスコに、シクロヘキシルトリメトキシシランを63.7gと3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン41.3gとジメチルジメトキシシラン33.7gとトルエン94gと水酸化カリウム0.19gを投入した。次に、この系に水67.4gを加えた後、加熱しながら生成したメタノールと水を留去した。水の留出がなくなってから、この系を冷却し、この系にさらにトルエンと水20.0gを加えた。次いで、この系を加熱しながら生成したメタノールと水を留去し、更に、6時間加熱還流した。冷却後、この系に酢酸0.29gを投入して中和処理した。次いで、これにトルエン加え、更に80mlの水で3回水洗した。得られたトルエン溶液を、Dean−Stark管を取り付けた500mlのフラスコに投入し、共沸脱水した。不純物を濾過し、濾液を減圧下で加熱することによりトルエンを留去して無色透明液体89gを得た。
【0086】
この無色透明液体は、平均分子量:3340、粘度:6.1万mPa・s、エポキシ当量:540、平均単位式:
【化11】

(式中、R:シクロヘキシル、E:グリシドキシプロピル、R”:HあるいはCH
で示されるシクロヘキシル基と3−グリシドキプロピル基とを含有したシリコーンレジンであることが確認された。
【0087】
実施例4で得られたシリコーンレジンの屈折率、耐熱性、耐紫外線性及び紫外線照射前後の光透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0088】
[比較例1]
温度計と還流冷却管を取り付けた2000mlのフラスコに、水250gとトルエン400gを投入し、氷浴で冷却しながらフェニルトリクロロシラン300gとトルエン200gの混合液を滴下した。滴下終了後、6時間加熱還流し、次いで、トルエン溶液を分離した。このトルエン溶液を水により洗液が中性になるまで繰り返し水洗した。その後、このトルエン溶液を減圧下で加熱することによりトルエンを留去して白色固体177.7gを得た。
【0089】
温度計とDean−Stark管と還流冷却管を取り付けた500mlのフラスコに、上記の白色固体116.0gと3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン20.2gとジメチルジメトキシシラン19.1gとトルエン150gと水酸化セシウム0.15gを投入した。次に、この系に水10.0gを加えた後、加熱しながら生成したメタノールと水を留去した。水の留出がなくなってから、この系を冷却し、この系にさらに水10.0gを加えた。次いで、この系を加熱しながら生成したメタノールと水を留去し、更に、6時間加熱還流した。冷却後、この系に酢酸0.08gを投入して中和処理した。次いで、これを80mlの水で3回水洗した。得られたトルエン溶液を、Dean−Stark管を取り付けた500mlのフラスコに投入し、共沸脱水した。不純物を濾過し、濾液を減圧下で加熱することによりトルエンを留去して無色透明固体140gを得た。
【0090】
この無色透明固体は、平均分子量=2600、軟化点=73℃、100℃での溶融粘度=54万mPa・s、160℃での溶融粘度=3200mPa・s、エポキシ当量=1620であり、29Si−核磁気共鳴スペクトル分析により、平均単位式:
【化12】

[PhSiO3/2]0.79[(CH)SiO2/20.14[R(CH)SiO2/20.07
(式中、Phはフェニル基、Rは3グリシドキシプロピル基)
で示されるフェニル基と3−グリシドキシプロピル基とを含有するシリコーンレジンであることが確認された。
【0091】
比較例1で得られたシリコーンレジンの屈折率、耐熱性、耐紫外線性及び紫外線照射前後の光透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0092】
[比較例2]
両末端ビニルジメチルシリル基封鎖したポリジメチルシロキサン(粘度400mPa・s)の屈折率、耐熱性、耐紫外線性及び紫外線照射前後の光透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0093】
[比較例3]
両末端ビニルジメチルシリル基封鎖したポリメチルフェニルシロキサン(粘度1000mPa・s)の屈折率、耐熱性、耐紫外線性及び紫外線照射前後の光透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0094】
【表1】

【0095】
[実施例5]
(A)成分として実施例1で合成したシリコーンレジンを78.0重量部、(B)成分としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを3.3重量部とアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート1.7重量部、(C)成分としてビス−グリシドキシプロピルテトラメチルジシロキサンを17.0重量部混合して、硬化性シリコーン組成物を調製した。真空脱泡後、熱風循環式オーブンを用いて125℃で30分間、さらに150℃で1時間加熱して硬化した。高硬度な硬化物が得られた。
【0096】
実施例5で得られた硬化物の屈折率、耐熱性、耐紫外線性及び紫外線照射前後の光透過率を測定した。結果を表2に示す。
【0097】
[実施例6]
(A)成分として実施例3で合成したシリコーンレジンを89.6重量部、(B)成分として、構造式:
【化13】

の両末端シラノール基ポリオルガノシロキサンを8.5重量部とアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート2.0重量部、(C)成分としてビス−グリシドキシプロピルテトラメチルジシロキサンを17.0重量部混合して、硬化性シリコーン組成物を調製した。真空脱泡後、熱風循環式オーブンを用いて125℃で30分間、さらに150℃で1時間加熱して硬化した。高硬度な硬化物が得られた。
【0098】
実施例6で得られた硬化物の屈折率、耐熱性、耐紫外線性及び紫外線照射前後の光透過率を測定した。結果を表2に示す。
【0099】
[比較例4]
平均単位式が下記式:
【化14】

で表される分岐鎖状オルガノポリシロキサン(室温白色透明固体、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合ビニル基の含有率=17モル%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=50モル%、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量=1,600)を54.3重量部、平均単位式:
【化15】

で表される分岐鎖状オルガノポリシロキサン(ケイ素原子結合全基中のケイ素原子結合水素原子の含有率=22モル%、ケイ素原子結合全基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=33モル%、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量=1,100)を45.7重量部、
ジビニルテトラメチルジシロクサン-白金錯体(全組成物中に5ppmとなる量)、
テトラメチルテトラビニルシクロシロキサンを0.05重量部
混合して、硬化性シリコーン組成物を調製した。真空脱泡後、熱風循環式オーブンを用いて125℃で30分間、さらに150℃で1時間加熱して硬化した。高硬度な硬化物が得られた。
【0100】
比較例4で得られた硬化物の屈折率、耐熱性、耐紫外線性及び紫外線照射前後の光透過率を測定した。結果を表2に示す。
【0101】
[比較例5]
両末端ビニルジメチルシリル基封鎖したポリジメチルシロキサン(粘度400mPa・s)を97.3重量部、両末端トリメチルシリル基封鎖ポリメチルハイドロジェンシロキサン(粘度5mPa・s)を2.7重量部、ジビニルテトラメチルジシロクサン-白金錯体(全組成物中に5ppmとなる量)、テトラメチルテトラビニルシクロシロキサンを0.05重量部混合して、硬化性シリコーン組成物を調製した。真空脱泡後、熱風循環式オーブンを用いて125℃で30分間、さらに150℃で1時間加熱して硬化した。柔軟なゴム状硬化物が得られた。
【0102】
比較例5で得られた硬化物の屈折率、耐熱性、耐紫外線性及び紫外線照射前後の光透過率を測定した。結果を表2に示す。
【0103】
[比較例6]
両末端ビニルジメチルシリル基封鎖したポリメチルフェニルシロキサン(粘度1000mPa・s)を91重量部、平均単位式:
【化16】

のポリメチルハイドロジェンシロキサン(粘度25mPa・s)を9重量部、ジビニルテトラメチルジシロクサン-白金錯体(全組成物中に5ppmとなる量)、テトラメチルテトラビニルシクロシロキサンを0.05重量部混合して、硬化性シリコーン組成物を調製した。真空脱泡後、熱風循環式オーブンを用いて125℃で30分間、さらに150℃で1時間加熱して硬化した。柔軟なゴム状硬化物が得られた。
【0104】
比較例5で得られた硬化物の屈折率、耐熱性、耐紫外線性及び紫外線照射前後の光透過率を測定した。結果を表2に示す。
【0105】
【表2】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記平均単位式:
【化1】

{式中、
Rはシクロアルキル基を表し、
は芳香族基及びシクロアルキル基以外の一価有機基であって、一分子中少なくとも1個のRはエポキシ基含有一価有機基を表し、
0<a≦3であり、
x>0であり、
y>0であり、且つ、
x+y=1である}
で表され、一分子中に少なくとも1個のエポキシ基含有有機基を含有する、ポリスチレン換算重量平均分子量が500以上のポリオルガノシロキサン。
【請求項2】
請求項1記載の(A)ポリオルガノシロキサンと
(B)(A)成分の硬化剤
を含むことを特徴とする、硬化性シリコーン組成物。
【請求項3】
(C)下記平均単位式:
【化2】

{式中、
は芳香族基及びシクロアルキル基以外の一価有機基であって、一分子中少なくとも1個のRはエポキシ基含有一価有機基を表し、
0.1<b≦3である}
で表され、一分子中に少なくとも1個のエポキシ基含有有機基を含有するポリオルガノシロキサンを更に含む、請求項2記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項4】
前記(B)硬化剤が
ケイ素結合アルコキシ化合物又はシラノール基含有化合物と
有機アルミニウム系化合物と
の組合せであることを特徴とする、請求項2又は3記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項5】
液状あるいはペースト状であることを特徴とする、請求項2乃至4のいずれかに記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれかに記載の硬化性シリコーン組成物の硬化物。
【請求項7】
請求項6記載の硬化物を含む光学用物品。


【公開番号】特開2006−104293(P2006−104293A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−291549(P2004−291549)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】