説明

ポリカーボネート成形組成物

本発明は、A)ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、またはそれらの混合物、成分AとBとの合計に対して、10〜100重量部、好ましくは80〜100重量部、特に好ましくは85〜100重量部、特に100重量部;B)エマルジョン重合法によって製造されるグラフトポリマー、バルク重合法によって製造されるグラフトポリマー、ゴムフリーのビニルホモポリマー、およびゴムフリーのビニルコポリマーを包含する群の少なくとも一つから選択されるポリマー、成分AとBとの合計に対して、0〜90重量部、好ましくは0〜20重量部、特に好ましくは0〜15重量部、特に0重量部;C)タルク、好ましくはAl含量1.0wt.%未満のタルク、特に平均粒径d50 2μm未満のタルク、全組成物に対して、7〜30wt.%、好ましくは7〜22wt.%、特に好ましくは7〜15wt.%、最も特に好ましくは7〜12wt.%;D)ブレンステッド酸、全組成物に対して、0.01〜1wt.%、好ましくは0.01〜0.5wt.%、特に好ましくは0.02〜0.4wt.%;E)少なくとも一種類のポリマー添加剤、0〜20wt.%、好ましくは0〜5wt.%、特に好ましくは0.2〜4wt.%、を含むタルク強化ポリカーボネート組成物であって;芳香族または部分的に芳香族のポリエステルを含まず;全組成物中の成分AとBとのwt.%の合計が100wt.%から成分CとDとEとのwt.%の合計を差し引いた差で計算され;かつ全体の組成が全ての成分A+B+C+D+Eのwt.%の合計が100wt.%であると理解される、タルク強化ポリカーボネート組成物に関する。既知の先行技術と比較すると、本発明によるタルク強化ポリカーボネート組成物は、改良された延性、耐熱変形性並びに配合および加工(成形)中の熱安定性を有する。本発明は、更に、成形物品および二成分構造部品の製造へのこの組成物の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先行技術と比較して配合および加工(成形)中の改良された延性、耐熱性および熱安定性を有するタルク強化ポリカーボネート組成物、並びに成形物品の製造へのそれらの使用に関する。本発明は、更に、二成分射出成形法であって、第一成分としての透明または半透明ポリカーボネート成形組成物を第二成分としての熱安定性の高いタルク強化ポリカーボネート組成物と共に完全にまたは部分的にバックインジェクション成形(back−injection mold)して第二成分の第一成分への安定材料結合を生じる二成分射出成形法で製造される、低歪み、寸法安定性、低応力かつ延性の成形部品も提供する。
【背景技術】
【0002】
EP−A 0391413は、低い熱膨張係数、高い低温延性および良好な熱安定性を特徴とする、耐衝撃性改良ポリカーボネート組成物を開示している。開示された組成物は、ポリカーボネート40〜80wt.%および板状粒子ジオメトリーを有する鉱物充填剤、例えば特別なタイプのタルク、4〜18wt.%を含む。添加剤としての酸の使用はこの出願では開示されていない。
【0003】
EP−A 0452788は、機械的特性が良好であり、かつ、表面光沢が低い成形部品の製造用のタルク充填耐衝撃性改良ポリカーボネート組成物であって、ポリカーボネート10〜80重量部、ABS90〜20重量部および平均粒度1.5〜20μmのタルク、ポリカーボネートとABSとの合計に対して、2〜25重量部を含むポリカーボネート組成物を開示している。添加剤としての酸の使用は、この出願には開示されていない。
【0004】
WO 98/51737は、改良された熱安定性、低温靱性、寸法安定性および溶融流動性を有する鉱物充填耐衝撃性改良ポリカーボネート組成物であって、ポリカーボネート65〜85重量部、ABS10〜50重量部および平均最大粒径0.1〜30μmの粒状鉱物充填剤(例えばタルク)1〜15重量部を含むポリカーボネート組成物を開示している。添加剤としての酸の使用は、この出願には開示されていない。
【0005】
WO−A 99/28386は、ポリカーボネート、ガラス転移温度10℃未満のエラストマーベースのグラフトポリマー、コポリマー、充填剤(例えばタルク)および低分子量のハロゲンフリーの酸を含む組成物であって、少なくとも一種類の芳香族または部分的に芳香族のポリエステル、またはそれらの混合物を含むことを特徴とする組成物を開示している。これらの組成物は、改良された機械的特性(例えば、破断点伸び)および改良された溶融流動性を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ポリカーボネート組成物であって、改良された延性、耐熱性並びにこの成形組成物の配合と加工(成形)の両方において改良された熱安定性を有するポリカーボネート組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
意外なことに、
A) ポリカーボネート、ポリエステルカーボネートまたはそれらの混合物、成分AとBとの合計に対して、10〜100重量部、好ましくは80〜100重量部、特に好ましくは85〜100重量部、特別には100重量部、
B) エマルジョン重合法において製造されるグラフトポリマー、バルク重合法において製造されるグラフトポリマー、ゴムフリーのビニルホモポリマーおよびゴムフリーのビニルコポリマーからなる群の少なくとも一つから選択されるポリマー、成分AとBとの合計に対して、0〜90重量部、好ましくは0〜20重量部、特に好ましくは0〜15重量部、特別には0重量部、
C) タルク、好ましくはAl含量1.0wt.%未満のタルク、特に平均粒径d50が2μm未満のタルク、全組成物に対して、7〜30wt.%、好ましくは7〜22wt.%、特に好ましくは7〜15wt.%、最も特別には7〜12wt.%、
D) ブレンステッド酸、全組成物に対して、0.01〜1wt.%、好ましくは0.01〜0.5wt.%、特に好ましくは0.02〜0.4wt.%
E) 少なくとも一種類のポリマー添加剤、0〜20wt.%、好ましくは0〜5wt.%、特に好ましくは0.2〜4wt.%
を含む組成物であって、
芳香族または部分的に芳香族のポリエステルを含まず、
全組成物中の成分AとBとのwt.%の合計は、成分CとDとEとのwt.%の合計を100wt.%から差し引いた差で計算され、
全体の組成が全成分A+B+C+D+Eのwt.%の合計が100wt.%であると理解される
組成物が、本発明による目的を達成することがわかった。
【0008】
本発明の好ましい態様の更なる目的は、タルク充填ポリカーボネート組成物の加工時に射出成形法において製造される成形物品の表面に加工スジが起こる傾向を避けることである。
【0009】
意外なことに、この更なる目的が、上記本発明による組成物が成分Dとして
D1) 熱的に安定であり、かつ、本発明による組成物の配合および加工の条件(すなわち、温度200℃〜320℃、好ましくは240℃〜320℃、特に好ましくは240℃〜300℃)のもとで蒸発しないか、または
D2) 配合の熱条件(すなわち、温度200℃〜320℃、好ましくは240℃〜320℃、特に好ましくは240℃〜300℃)のもとで分解し、但し、成分D2.1)の酸の場合、二つのタイプの分解生成物、すなわち、一方は、熱的に安定であり、更に、配合の条件のもとで揮発性でない分解生成物、および、他方は、沸点150℃未満の分解生成物、が形成され、成分D2.2)の酸の場合、沸点150℃未満の分解生成物のみを形成し、従って、組成物の真空脱ガスを伴う配合工程において除去される
少なくとも一種類の酸
を含む場合に、上記本発明による組成物によって達成されることがわかった。
【0010】
この好ましい態様は、下位クレームの目的である。
【0011】
成分A
本発明による好適な成分Aの芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートは文献で知られているかまたは文献で知られている方法によって製造されうる(芳香族ポリカーボネートの製造に関しては、例えば、Schnell,“Chemistry and Physics of Polycarbonates”,Interscience Publishers,1964年、および更にDE−AS 1495626、DE−A 2232877、DE−A 2703376、DE−A 2714544、DE−A 3000610、DE−A 3832396参照。芳香族ポリエステルカーボネートの製造に関しては、例えばDE−A 3077934参照。)。
【0012】
芳香族ポリカーボネートの製造は、例えば、ジフェノールを、炭酸ハロゲン化物、好ましくはホスゲン、および/または芳香族ジカルボン酸二ハロゲン化物、好ましくはベンゼンジカルボン酸二ハロゲン化物と、界面重合法によって、要すれば連鎖停止剤、例えばモノフェノール、を使用して、要すれば三官能性以上の分枝剤、例えばトリフェノールもしくはテトラフェノール、を使用して、反応させることによって行われる。ジフェノールを例えばジフェニルカーボネートと反応させることによる溶融重合法による芳香族ポリカーボネートの製造もまた可能である。
【0013】
芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートの製造に関するジフェノールは、好ましくは式(I)
【化1】

(式中、
A は、単結合、C〜C−アルキレン、C〜C−アルキリデン、C〜C−シクロアルキリデン、−O−、−SO−、−CO−、−S−、−SO−、C〜C12−アリーレンであって、任意にヘテロ原子を含んでいてもよい別の芳香環が縮合していてもよいもの、
または式(II)もしくは(III)
【化2】

の基であり、
B は、それぞれ、C〜C12−アルキル、好ましくは塩化メチル、ハロゲン、好ましくは塩素および/または臭素であり、
x は、それぞれ互いに独立して0、1または2であり、
p は、1または0であり、かつ
およびR は、各Xに関して個々に選択可能であり、互いに独立して、水素またはC〜C−アルキル、好ましくは水素、メチルまたはエチルであり、
は、炭素であり、かつ
m は、4〜7の整数、好ましくは4または5であり、
但し、少なくとも一つの原子Xにおいて、RとRは同時にアルキルである。)
のジフェノールである。
【0014】
好ましいジフェノールは、ヒドロキノン、レソルシノール、ジヒドロキシジフェノール、ビス−(ヒドロキシフェニル)−C〜C−アルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−C〜C−シクロアルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−エーテル、ビス−(ヒドロキシフェニル)−スルホキシド、ビス−(ヒドロキシフェニル)−ケトン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−スルホンおよびα,α−ビス−(ヒドロキシフェニル)−ジイソプロピルベンゼン、並びにそれらの核臭素化および/または核塩素化誘導体である。
【0015】
特に好ましいジフェノールは、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン並びにそれらの二臭素化および四臭素化または塩素化誘導体、例えば2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンまたは2,2−ビス−(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、である。2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビスフェノールA)が特に好ましい。
【0016】
ジフェノールは、単独で使用されても任意の混合物で使用されてもよい。ジフェノールは文献で知られているかまたは文献で知られている方法によって得られうる。
【0017】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートの製造に関して、好適な連鎖停止剤は、例えば、フェノール、p−クロロフェノール、p−tert.−ブチルフェノールまたは2,4,6−トリブロモフェノール、および更に長鎖アルキルフェノール、例えば4−[2−(2,4,4−トリメチルペンチル)]−フェノール、DE−A 2842005に記載の4−(1,3−テトラメチルブチル)−フェノールまたはアルキル置換基中に全部で8〜20個の炭素原子を有するモノアルキルフェノールもしくはジアルキルフェノール、例えば3,5−ジ−tert.−ブチルフェノール、p−iso−オクチルフェノール、p−tert.−オクチルフェノール、p−ドデシルフェノール、および2−(3,5−ジメチルヘプチル)−フェノールおよび4−(3,5−ジメチルヘプチル)−フェノールである。使用される連鎖停止剤の量は、それぞれ使用されるジフェノールのモルの合計に対して、一般的に0.5mol%〜10mol%である。
【0018】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートの平均重量平均分子量(M、例えばGPC、超遠心分離法または散乱光測定によって測定される。)は、10,000〜200,000g/mol、好ましくは15,000〜80,000g/mol、特に好ましくは24,000〜32,000g/molである。
【0019】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートは、既知の方法で、特に好ましくは三官能性以上の化合物、例えば三以上のフェノール性基を有する化合物、用いられるジフェノールの合計に対して、0.05〜2.0mol%、の組み込みによって分枝されうる。
【0020】
ホモポリカーボネートとコポリカーボネートの両方が好適である。本発明による成分Aのコポリカーボネートの製造に関して、更に、ヒドロキシアリールオキシ末端基を有するポリジオルガノシロキサン、用いられるジフェノールの総量に対して、1〜25wt.%、好ましくは2.5〜25wt.%を使用してもよい。これらは既知(US 3419634)であり、文献で知られている方法によって製造されうる。ポリジオルガノシロキサン含有コポリカーボネートの製造は、DE−A 3334782に記述されている。
【0021】
好ましいポリカーボネートは、ビスフェノールAホモポリカーボネートに加えて、更にビスフェノールAと、好ましいかまたは特に好ましいと言及したジフェノール以外のジフェノール、特に2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、ジフェノールのモルの合計に対して15mol%以下と、のコポリカーボネートでもある。
【0022】
芳香族ポリエステルカーボネートの製造に関する芳香族ジカルボン酸二ハロゲン化物は、好ましくはイソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸およびナフタレン−2,6−ジカルボン酸の二酸二塩化物である。イソフタル酸の二酸二塩化物とテレフタル酸の二酸二塩化物との1:20〜20:1の比の混合物が特に好ましい。
【0023】
ポリエステルカーボネートの製造において、炭酸ハロゲン化物、好ましくはホスゲン、を更に二官能性酸誘導体として共使用してもよい。
【0024】
芳香族ポリエステルカーボネートの製造に好適な連鎖停止剤は、既に言及したモノフェノールを別にすれば、更にそれらのクロロ炭酸エステル並びに芳香族モノカルボン酸の酸塩化物であって、任意にC〜C22−アルキル基もしくはハロゲン原子によって置換されてもよいもの、並びに脂肪族C〜C22−モノカルボン酸塩化物である。
【0025】
連鎖停止剤の量は、フェノール性連鎖停止剤の場合、ジフェノールのモルに対して、モノカルボン酸塩化物連鎖停止剤の場合、ジカルボン酸二塩化物のモルに対して、それぞれ0.1〜10mol%である。
【0026】
芳香族ポリエステルカーボネートは、更に、組み込まれた形態の芳香族ヒドロキシカルボン酸も含みうる。
【0027】
芳香族ポリエステルカーボネートは、直線的に並びに既知の方法で分枝されうる(この関連で、DE−A 2940024およびDE−A 3007934参照。)。
【0028】
好適な分枝剤は、例えば三官能性以上のカルボン酸塩化物、例えばトリメシン酸三塩化物、シアヌル酸三塩化物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸四塩化物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸四塩化物もしくはピロメリット酸四塩化物、0.01〜1.0mol%(用いられるジカルボン酸二塩化物に対する。)または三官能性以上のフェノール、例えばフロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプト−2−エン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゼン、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、2,2−ビス[4,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]−プロパン、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)−フェノール、テトラ−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、2,6−ビス−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−プロパン、テトラ−(4−[4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル]−フェノキシ)−メタン、1,4−ビス−[4,4’−ジヒドロキシトリフェニル)メチル]−ベンゼン、0.01〜1.0mol%(用いられるジフェノールに対する。)である。フェノール性分枝剤はジフェノールと共に使用されてもよく、酸塩化物分枝剤は酸二塩化物と共に添加されてもよい。
【0029】
カーボネート構造単位の割合は、熱可塑性芳香族ポリエステルカーボネート中、任意に変わりうる。好ましくは、カーボネート基の割合は、全エステル基とカーボネート基の合計に対して100mol%以下、特に80mol%以下、特に好ましくは50mol%以下である。芳香族ポリエステルカーボネートのエステルの部分とカーボネートの部分は、重縮合物中にブロックの形態で存在してもランダムに分散してもよい。
【0030】
芳香族ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートの相対溶液粘度(ηrel)は、1.18〜1.4、好ましくは1.20〜1.32である(塩化メチレン100ml溶液中のポリカーボネートまたはポリエステルカーボネート0.5gの溶液において25℃において測定。)。
【0031】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートは、単独で使用されても任意の混合物において使用されてもよい。
【0032】
成分B
成分Bは、グラフトポリマーB.1またはゴムフリーの(コ)ポリマーB.2の群の少なくとも一つのメンバーから選択される。
【0033】
成分B.1は、
B.1.1 B.1.2上の少なくとも一種類のビニルモノマー、5〜95wt.%、好ましくは30〜90wt.%、
B.1.2 ガラス転移温度10℃未満、好ましくは0℃未満、特に好ましくは−20℃未満の一種類以上のグラフトベース、95〜5wt.%、好ましくは70〜10wt.%
のグラフトポリマー一種類以上を含む。
【0034】
グラフトベースB.1.2の平均粒度(d50値)は、一般的に、0.05〜10μm、好ましくは0.1〜5μm、特に好ましくは0.15〜2.0μmである。
【0035】
モノマーB.1.1は、好ましくは
B.1.1.1 ビニル芳香族化合物および/または核置換ビニル芳香族化合物(例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン)および/またはメタクリル酸−(C〜C)−アルキルエステル、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート)、50〜99重量部と、
B.1.1.2 ビニルシアニド(不飽和ニトリル、例えばアクリロニトリルおよびメタクリロニトリル)および/または(メタ)アクリル酸−(C〜C)−アルキルエステル、例えばメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、および/または不飽和カルボン酸の誘導体(例えば無水物およびイミド;例えば無水マレイン酸およびN−フェニルマレイミド)、1〜50重量部と
の混合物である。
【0036】
好ましいモノマーB.1.1.1は、モノマースチレン、α−メチルスチレンおよびメチルメタクリレートの少なくとも一つから選択され、好ましいモノマーB.1.1.2は、モノマーアクリロニトリル、無水マレイン酸およびメチルメタクリレートの少なくとも一つから選択される。特に好ましいモノマーは、B.1.1.1スチレンおよびB.1.1.2アクリロニトリルである。
【0037】
グラフトポリマーB.1.に関して、好適なグラフトベースB.1.2は、例えばジエンゴム、EP(D)Mゴム、すなわちエチレン/プロピレンおよび要すればジエンベースのゴム、アクリレート、ポリウレタン、シリコーン、クロロプレンおよびエチレン/ビニルアセテートゴム、および更にシリコーン/アクリレートコンポジットゴムである。
【0038】
好ましいグラフトベースB.1.2は、ジエンゴム、例えばブタジエンおよびイソプレンベース、またはジエンゴムの混合物またはジエンゴムもしくはそれらの混合物と別の共重合性モノマー(例えばB.1.1.1およびB.1.1.2による。)とのコポリマーであり、但し、成分B.2のガラス転移温度は10℃未満、好ましくは0℃未満、特に好ましくは−20℃未満である。純粋なポリブタジエンゴムが特に好ましい。
【0039】
特に好ましいポリマーB.1は、例えばABSポリマー(エマルジョン、バルクおよび懸濁ABSポリマー)である(これらは例えばDE−OS 2035390(=US−PS 3644574)またはDE−OS 2248242(=GB−PS 1409275)およびUllmanns,Enzyklopaedie der Technischen Chemie,第19巻(1980年),280頁以降に記述されている。)。
【0040】
グラフトポリマーB.1は、フリーラジカル重合によって、例えばエマルジョン、懸濁、溶液またはバルク重合によって、好ましくはエマルジョンまたはバルク重合によって、特に好ましくはエマルジョン重合によって、製造される。
【0041】
エマルジョン重合によって製造されるグラフトポリマー中のグラフトベースB.1.2のゲル部分は、少なくとも30wt.%、好ましくは少なくとも40wt.%である(トルエン中で測定。)。
【0042】
バルク重合によって製造されるグラフトポリマーB.1のゲル部分は、好ましくは10〜50wt.%、特に15〜40wt.%である(アセトン中で測定。)。
【0043】
US−P 4937285に記載の有機ヒドロペルオキシドとアスコルビン酸とからなる開始剤システムを用いるレドックス開始によって製造されるABSポリマーポリマーもまた特に好適なグラフトゴムである。
【0044】
グラフト反応においてグラフトモノマーは、既知であるように、グラフトベース上に必ずしも完全にグラフトしないので、本発明によるグラフトポリマーB.1は、グラフトベースの存在下におけるグラフトモノマーの(共)重合によって得られるポリマーとワークアップにおいて生じるポリマーとを含むとも理解される。従って、これらの生成物は、更に、フリーの(すなわち、ゴムに化学的に結合していない)グラフトモノマーの(コ)ポリマーも含みうる。
【0045】
バルク重合法によって製造されたグラフトポリマーB.1の場合、フリーの(すなわち、ゴムに結合していない)(コ)ポリマーの重量平均分子量Mは、50,000〜250,000g/mol、特に60,000〜180,000g/mol、特に好ましくは70,000〜130,000g/molである。
【0046】
B.1.2による好適なアクリレートゴムは、好ましくは、アクリル酸アルキルエステルと、要すれば別の重合性エチレン性不飽和モノマー、B.1.2に対して40wt.%以下と、のポリマーである。好ましい重合性アクリル酸エステルとしては、C〜C−アルキルエステル、例えばメチル、エチル、ブチル、n−オクチルおよび2−エチルヘキシルエステル;ハロゲン化アルキルエステル、好ましくはハロゲン−C〜C−アルキルエステル、例えばクロロエチルアクリレート、並びにこれらのモノマーの混合物が挙げられる。
【0047】
架橋のために、一つよりも多くの重合性二重結合を有するモノマーが共重合されうる。架橋モノマーの好ましい例は、C原子3〜8個を有する不飽和モノカルボン酸と、C原子3〜12個を有する不飽和一価アルコール、またはOH基2〜4個とC原子2〜20個とを有する飽和ポリオールと、のエステル、例えばエチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート;多価不飽和複素環化合物、例えばトリビニルシアヌレートおよびトリアリルシアヌレート;多官能性ビニル化合物、例えばジビニルベンゼンおよびトリビニルベンゼン;および更にトリアリルホスフェートおよびジアリルフタレートである。好ましい架橋モノマーは、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジアリルフタレートおよび少なくとも三つのエチレン性不飽和基を含む複素環化合物である。特に好ましい架橋モノマーは、環状モノマートリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、トリアリルベンゼンである。架橋モノマーの量は、グラフトベースB.1.2に対して、好ましくは0.02〜5wt.%、特に0.05〜2wt.%である。少なくとも三つのエチレン性不飽和基を有する環状架橋モノマーの場合、量をグラフトベースB.1.2の1wt.%未満に限定することが有利である。
【0048】
アクリル酸エステル以外の任意にグラフトベースB.1.2の製造に使用されうる好ましい「別の」重合性エチレン性不飽和モノマーとしては、例えばアクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリルアミド、ビニル−C〜C−アルキルエーテル、メチルメタクリレートおよびブタジエンが挙げられる。グラフトベースB.2として好ましいアクリレートゴムは、ゲル含量が少なくとも60wt.%のエマルジョンポリマーである。
【0049】
B.1.2による別の好適なグラフトベースは、グラフト活性部位を有するシリコーンゴム、例えばDE−OS 3704657、DE−OS 3704655、DE−OS 3631540およびDE−OS 3631539に記述されているもの、である。
【0050】
グラフトベースB.1.2およびグラフトポリマーB.1のゲル含量は、25℃において好適な溶媒中でこれらの溶媒に不溶性の部分として決定される(M.Hoffman,H.Kroemer,R.Kuhn,Polymeranalytik I and II,Georg Thieme−Verlag,シュトゥットガルト 1977年)。
【0051】
平均粒度d50は、その上下にそれぞれ50wt.%の粒子が存在する直径であり、超遠心測定によって決定されうる(W.Scholtan,H.Lange,Kolloid,Z.and Z.Polymere 250(1972年),782〜1796頁)。ゴムフリーのビニル(コ)ポリマーB.2は、ビニル芳香族化合物、ビニルシアニド(不飽和ニトリル)、(メタ)アクリル酸−(C〜C)−アルキルエステル、不飽和カルボン酸、並びに不飽和カルボン酸の誘導体(例えば無水物およびイミド)を包含する群からの少なくとも一種類のモノマーのゴムフリーのホモポリマーおよび/またはコポリマーである。
【0052】
(コ)ポリマーB.2であって、
B.2.1 ビニル芳香族化合物(例えばスチレン、α−メチルスチレン)、核置換ビニル芳香族化合物(例えばp−メチルスチレン、p−クロロスチレン)および(メタ)アクリル酸−(C〜C)−アルキルエステル(例えばメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、tert.−ブチルアクリレート)を包含する群から選択される少なくとも一種類のモノマー、(コ)ポリマーB.2に対して、50〜99wt.%と、
B.2.2 ビニルシアニド(例えば不飽和ニトリル、例えばアクリロニトリルおよびメタクリロニトリル)、(メタ)アクリル酸−(C〜C)−アルキルエステル(例えばメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、tert.−ブチルアクリレート)、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の誘導体(例えば無水マレイン酸およびN−フェニルマレイミド)を包含する群から選択される少なくとも一種類のモノマー、(コ)ポリマーB.2に対して、1〜50wt.%と
の(コ)ポリマーB.2が特に好適である。
【0053】
これらの(コ)ポリマーB.2は、樹脂様、熱可塑性かつゴムフリーである。スチレンとアクリロニトリルとのコポリマーが特に好ましい。
【0054】
そのような(コ)ポリマーB.2は、既知であり、フリーラジカル重合によって、特にエマルジョン、懸濁、溶液またはバルク重合によって、製造されうる。これらの(コ)ポリマーの平均分子量M(重量平均分子量、GPC、光散乱または沈降法によって決定される。)は、好ましくは、15,000〜250,000である。
【0055】
成分Bとして、純粋なグラフトポリマーB.1もしくは数種類のB.1によるグラフトポリマーの混合物、純粋な(コ)ポリマーB.2もしくは数種類のB.2による(コ)ポリマーの混合物、または少なくとも一種類のグラフトポリマーB.1と少なくとも一種類の(コ)ポリマーB.2との混合物が使用されうる。数種類のグラフトポリマーの混合物、数種類の(コ)ポリマーの混合物または少なくとも一種類のグラフトポリマーと少なくとも一種類の(コ)ポリマーとの混合物を使用する場合、これらは、本発明による組成物の製造において、別々に用いられてもプレコンパウンドの形態で用いられてもよい。
【0056】
好ましい態様において、純粋なグラフトポリマーB.1または数種類のB.1によるグラフトポリマーの混合物または少なくとも一種類のグラフトポリマーB.1と少なくとも一種類の(コ)ポリマーB.2との混合物が成分Bとして使用されうる。
【0057】
特に好ましい態様において、エマルジョン重合によって製造されるABSグラフトポリマーまたはバルク重合によって製造されるABSグラフトポリマー、またはエマルジョン重合によって製造されるグラフトポリマーとSANコポリマーとの混合物が成分Bとして使用される。
【0058】
成分C
天然由来のタルクまたは合成的に製造されるタルクが成分Cとして使用される。
【0059】
純粋なタルクは化学組成が3MgO・4SiO・HOであり、従って、MgO含量31.9wt.%、SiO含量63.4wt.%かつ化学結合水含量4.8wt.%である。純粋なタルクは層構造を有するケイ酸塩である。
【0060】
天然由来のタルク材料は、一般的に、上記理想組成を有さない。なぜなら、天然由来のタルク材料は、マグネシウムの別の元素による部分交換によって、ケイ素の例えばアルミニウムによる部分交換によって、かつ/または他の鉱物、例えばドロマイト、マグネサイトおよびクロライト、との相互成長(intergrowth)によって汚染されているからである。
【0061】
特に高純度のタルクが成分Cとして好ましく使用される。これらは、MgO含量28〜35wt.%、好ましくは30〜33wt.%、特に好ましくは30.5〜32wt.%かつSiO含量55〜65wt.%、好ましくは58〜64wt.%、特に好ましくは60〜62.5wt.%を特徴とする。特に好ましいタイプのタルクは、更に、Al含量5wt.%未満、特に好ましくは1wt.%未満、特別には0.7wt.%未満を特徴とする。
【0062】
平均粒度d50が10μm未満、好ましくは5μm未満、特に好ましくは2μm未満、最も特に好ましくは1.5μm以下の、細かく粉砕されたタイプの形態のタルクを使用することが有利である。
【0063】
タルクは、ポリマーとのより良好な相溶性を確実にするために、表面処理、例えばシラン化、されうる。成形組成物の加工および製造に関しては、圧縮タルク(compacted talcum)を使用することが有利である。
【0064】
成分D
原則として全てのタイプのブレンステッド酸有機もしくは無機化合物またはそれらの混合物が成分Dとして使用されうる。
【0065】
成分Dによる好ましい有機酸は、脂肪族または芳香族の、任意に多官能性であってもよいカルボン酸、スルホン酸およびホスホン酸を包含する群の少なくとも一種類から選択される。脂肪族または芳香族ジカルボン酸およびヒドロキシ官能性ジカルボン酸が特に好ましい。
【0066】
好ましい態様において、安息香酸、クエン酸、シュウ酸、フマル酸、マンデル酸、酒石酸、テレフタル酸、イソフタル酸、p−トルエンスルホン酸からなる群から選択される少なくとも一種類の化合物が成分Dとして使用される。
【0067】
好ましい無機酸は、オルト−およびメタ−リン酸およびこれらの酸の酸性塩、並びにホウ酸である。
【0068】
特に好ましい態様において、熱的に安定であり、かつ、本発明による組成物の配合および加工の条件、すなわち、通常、300℃以下、好ましくは320℃以下、特に好ましくは350℃以下、のもとで揮発しない酸(成分D1)が成分Dとして使用される。好ましくは、成分D1)は、テレフタル酸または無機酸の酸性塩、例えばアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属リン酸水素塩および、更に、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属リン酸二水素塩、である。
【0069】
代わりの同様に好ましい態様において、配合の熱的条件(すなわち、200℃〜320℃、好ましくは240℃〜320℃、特に好ましくは240℃〜300℃)のもとで分解する酸(成分D2)が成分Dとして使用される。
成分D2.1)による酸の場合、二つのタイプの分解生成物が形成される。すなわち、一方は熱的に安定であり、かつ、配合の条件のもとで揮発しない生成物であり、他方は、沸点が150℃未満の生成物である。
成分D2.2)による酸の場合、もっぱら、沸点が150℃未満であり、従って、組成物の真空脱ガスを伴う配合工程において再度除去される分解生成物のみが形成される。
【0070】
好ましくは、成分D2.1)は、水、一酸化炭素および/または二酸化炭素を分離し、更なる分解生成物として、熱的に安定であり、かつ、配合の条件(すなわち、200℃〜320℃、好ましくは240℃〜320℃、特に好ましくは240℃〜300℃)のもとで揮発しない化合物を形成する酸であり、特に好ましくは、成分D2.1)は、オルト−リン酸、メタ−リン酸およびホウ酸からなる群からの少なくとも一種類の酸から選択される。
【0071】
好ましくは、成分D2.2)は、配合の条件(すなわち、200℃〜320℃、好ましくは240℃〜320℃、特に好ましくは240℃〜300℃)のもとで残留物を残さずに分解し、水、一酸化炭素および/または二酸化炭素を分離する酸であり、特に好ましくは成分D2.2)は、シュウ酸である。
【0072】
E)別の成分
本発明の組成物は、別の添加剤を成分Eとして含みうる。特に、常套のポリマー添加剤、例えば防炎加工剤(例えば、有機リン含有またはハロゲン含有化合物、特にビスフェノールAベースのオリゴホスフェート)、ドリップ防止剤(例えば、フッ素化ポリオレフィン、シリコーン並びにアラミド繊維を包含する物質クラスの化合物)、滑剤および離型剤、例えばペンタエリトリトールテトラステアレート、成核剤、帯電防止剤、安定剤、タルク以外の充填剤および強化物質(例えば、グラスファイバーまたはカーボンファイバー、マイカ、カオリン、CaCOおよびガラスチップ)、並びに染料および顔料(例えば、二酸化チタンまたは酸化鉄)が成分Eによる別の添加剤として好適である。
【0073】
本発明による組成物は、芳香族または部分的に芳香族のポリエステル(例えば、WO−A 99/28386に開示されている。)を含まない。芳香族または部分的に芳香族のポリエステルは、本発明との関連で、成分Aとして使用されるようなポリカーボネートでないと理解される。芳香族ポリエステルは、芳香族ジヒドロキシ化合物と芳香族ジカルボン酸または芳香族ヒドロキシカルボン酸とから誘導される。部分的に芳香族のポリエステルは、芳香族ジカルボン酸と一種類以上の異なる脂肪族ジヒドロキシ化合物とに基づくポリエステルである。
【0074】
成形組成物および成形物品の製造
本発明による熱可塑性成形組成物は、例えば、それぞれの構成成分を既知の方法で混合し、次に温度200℃〜320℃、好ましくは240℃〜300℃、特に好ましくは240℃〜300℃において、常套の装置、例えばインターナルニーダー(internal kneader)、押出機および二軸押出機、において溶融配合および溶融押出をすることによって製造されうる。
【0075】
個々の構成成分の混合は、既知の方法で、連続しても同時にでも、特に約20℃(室温)並びに高温において行われうる。
【0076】
好ましい態様において、本発明による組成物の製造は、成分A〜Dおよび要すれば別の成分Eを、温度200℃〜320℃、好ましくは240℃〜320℃、特に好ましくは240℃〜300℃、かつ、圧力500mbar以下、好ましくは200mbar以下、特に100mbar以下において、常套の配合ユニット、好ましくは二軸押出機の中で混合することによって行われる。
【0077】
本発明による組成物が成分D2)による少なくとも一種類の酸を含む場合、この組成物の好ましい製造方法は、成分A〜Eを常套の混合デバイスにおいて溶融し、温度240℃〜320℃において混合し、pAbs 500mbar以下の真空を適用することによってこれらの条件のもとで形成される成分D2)の揮発性分解生成物を溶融物から除去(真空脱ガス)することを特徴とする。
【0078】
従って、本発明は、更に、本発明による組成物の製造方法も提供する。
【0079】
本発明による成形組成物は、あらゆるタイプの成形物品の製造に使用されうる。これらは、例えば、射出成形、押出およびブロー成形によって製造されうる。加工の別の形態は、予め製造されたシートまたはフィルムからの熱形成による成形物品の製造である。
【0080】
そのような成形パーツの例は、フィルム、異形材、例えば屋内電気器具、例えばジューサー、コーヒーマシーン、ミキサー;事務機器、例えばモニター、フラットスクリーン、ノート型パソコン、プリンタ、コピー機、用の、あらゆるタイプのハウジングパーツ;建物および建設部門(屋内設備および外部適用)用のシート、チューブ、電気設備用ダクト、ウィンドウ、ドアおよび別の異形材並びに電気および電子パーツ、例えばスイッチ、プラグおよびソケット、および市販の実用車用の、特に自動車部門用の、構造パーツである。本発明による組成物は、更に、以下の成形物品または成形パーツ:鉄道車両、船舶、航空機、バスおよび別の乗物用の内部構造パーツ、車体パーツ、小型変圧器を含む電気装置のハウジング、情報処理および伝達装置用のハウジング、医療機器のハウジングおよびライニング、マッサージ機器および後者のハウジング、子供用乗物玩具、二次元壁体要素、安全装置用のハウジング、断熱輸送コンテナ、衛生器具および浴室器具用の成形パーツ、換気口用カバーグレーチング、および園芸用品置き場の製造にも好適である。
【0081】
本発明による成形組成物は、特に、低歪み、かつ、低応力、寸法安定かつ延性の二成分構造パーツであって、第一成分としての透明または半透明ポリカーボネート成形組成物が第二成分としての本発明によるタルク強化耐衝撃性改良ポリカーボネート組成物と共に完全にまたは部分的にバックインジェクション成形されて第二成分の第一成分への安定材料結合を生じている二成分構造パーツの製造に好適である。これに関連して第一成分として使用される透明または半透明ポリカーボネート成形組成物は、好ましくは、成分Aによるポリカーボネート95〜100wt.%、特に好ましくは98〜100wt.%、および成分E0〜5wt.%、特に好ましくは0〜2wt.%を含む。これらの二成分構造パーツは、例えば、透明または半透明ポリカーボネート層と不透明耐衝撃性改良ポリカーボネート層とからなる二次元材料コンポジットであっても、本発明による耐衝撃性改良ポリカーボネート組成物を含む不透明枠で囲まれた透明または半透明表面からなる材料コンポジットあってもよい。そのような材料コンポジットは、例えば、ウィンドウおよびグレージング領域、照明ユニット、射出成形された不透明枠を有するポリカーボネートの光学レンズ、不透明枠を有する乗物ヘッドライトカバーディスク、浸透効果を達成するために高光沢層としての透明ポリカーボネートを有する二次元的にバックインジェクション成形された非透明装飾カバー(これに関連して、本発明による不透明耐衝撃性改良タルク強化ポリカーボネート組成物は透明ポリカーボネート組成物と共にバックインジェクション成形されている。)、自動車分野におけるダイヤフラム(例えば、外部ピラーライニング)、並びにポリカーボネートと不透明枠とのモニター/ディスプレーカバーにおいて使用されうる。
【0082】
上記二成分構造パーツは、好ましくは、第一成分が射出成形または射出圧縮成形法において第二成分と共にバックインジェクション成形されるプロセス(二成分射出成形法または二成分射出圧縮成形法)で製造される。
【実施例】
【0083】
成分A:
ビスフェノールAベースの、重量平均分子量Mが約28,000g/mol(GPCによって決定。)の直鎖ポリカーボネート。
【0084】
成分B−1:
アクリロニトリル24wt.%とスチレン76wt.%との混合物、ABSポリマーに対して82wt.%の、スチレン含量26wt.%のポリブタジエン−スチレンブロックコポリマーゴム、ABSポリマーに対して18wt.%の存在下におけるバルク重合によって製造されるABSポリマー。このABSポリマー中のフリーSANコポリマー部分の重量平均分子量Mは、80,000g/molである(THF中GBPによって測定。)。ABSポリマーのゲル含量は24wt.%である(アセトン中で測定。)。
【0085】
成分B−2:
スチレンとアクリロニトリルとの比が73:27のコポリマー44重量部が粒子状架橋ポリブタジエンゴム(平均粒度d50=0.3μm)56重量部上にグラフトしている、エマルジョン重合によって製造されるグラフトポリマー。
【0086】
成分B−3:
アクリロニトリル含量23wt.%かつ重量平均分子量約130,000g/molのSANコポリマー。
【0087】
成分C:
タルク:平均粒径d50約1.2μmかつAl含量0.4wt.%のLuzenac Naintsch(オーストリア、グラーツ)製のNaintsch(登録商標)A3c。
【0088】
成分D−1:無水クエン酸(ドイツ、デュースブルグのBrenntag製)
【0089】
成分D−2:テレフタル酸(スペインのInterquisa製)
【0090】
成分E−1:ペンタエリトリトールテトラステアレート
【0091】
成分E−2:Irganox(登録商標)B900(スイス、バーゼルのCiba製)
【0092】
成分E−3:Carbon Black Pearls 800(ベルギー、ルヴェンのCabot製)
【0093】
本発明による成形組成物の製造および試験
成分の混合を、Werner & Pfleiderer製のZSK−25二軸押出機において溶融温度260℃において50mbar(絶対)の減圧の適用のもとで行う。成形物品を溶融温度260℃かつ金型温度80℃においてArburg 270Eタイプ射出成形マシーンで製造する。
【0094】
溶融流量(MVR)をISO 1133に従って260℃においてプランジャー負荷5kgで決定する。グラニュールにおいて測定されるMVR増加は、配合中の組成物におけるポリカーボネートの分子量の低下を示し、従って、配合中の熱安定性の尺度である。
【0095】
300℃において15分間加熱してISO 1133に従って260℃においてプランジャー負荷5kgで測定されるMVRの変化(ΔMVR)は、組成物の熱加工安定性の尺度の役割を果たす。
【0096】
衝撃強さを、23℃においてISO 180−1Uに従って、サイズ80mm×10mm×4mmの試験片において測定する。10個の個々の測定から計算される平均値を記録する。評価「n.g.」は、個々の試験片測定の少なくとも50%が衝撃試験において破断しなかったことを意味する。
【0097】
耐熱性の尺度としてのビカーB/120を、ISO 306に従ってサイズ80mm×10mm×4mmの試験片においてプランジャー負荷50Nかつ加熱速度120℃で決定する。
【0098】
加工スジが生じる傾向を評価するために、280℃において滞留時間2.5分で射出成形によって製造されるサイズ60mm×40mm×2mmの試験シートを視覚的に評価する。
【0099】

【0100】

【0101】
表1から、少量のブレンステッド酸化合物のタルク充填耐衝撃性改良ポリカーボネート組成物への添加によって、意外な方法で、本発明によるPC:ABS比の範囲内の組成物の熱安定性が配合および加工において改良され、延性(衝撃強さ)および熱安定性(ビカーB120)が増加することがわかる。特に、熱安定性の高い高ポリカーボネート含量組成物並びにタルク充填非耐衝撃性改良(ABSフリー)ポリカーボネート組成物(実施例2、3、5、7、8および10)も、このような方法で製造されうる。特に、ポリカーボネート含量が高い組成物は、成分Dによるこれらの酸を添加しないと、配合中に既に、そして、次の成形処理において特に熱的に不安定であることが判明していることが経験からわかっている(比較例1、4、6および9)。特に、意外なことに、ブレンステッド酸0.3wt%によって、ポリカーボネート組成物の衝撃強さは、25%まで、場合によっては32%まで増加する。
【0102】
熱的に安定な酸、例えばテレフタル酸(成分D−2)の使用は、配合の熱条件のもとで分解する酸が使用されている類似の配合物と比較して、加工安定性の更なる改良をもたらす。このことは、射出成形における加工中のスジの形成の傾向の減少で表されている(それぞれ実施例2と3、7と8、12と13を比較。)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A) ポリカーボネート、ポリエステルカーボネートまたはそれらの混合物、成分AとBとの合計に対して10〜100重量部、
B) エマルジョン重合法で製造されたグラフトポリマー、バルク重合法で製造されたグラフトポリマー、ゴムフリーのビニルホモポリマーおよびゴムフリーのビニルコポリマーからなる群の少なくとも一つから選択されるポリマー、成分AとBとの合計に対して0〜90重量部、
C) タルク、全組成物に対して7〜30wt.%、
D) ブレンステッド酸、全組成物に対して0.01〜1wt.%、
E) 少なくとも一種類のポリマー添加剤、全組成物に対して0〜20wt.%
を含む組成物であって、
芳香族ポリエステルまたは部分的に芳香族のポリエステルを含まず、
全組成物中の成分AとBとのwt.%の合計は100wt.%から成分CとDとEとのwt.%の合計を差し引いた差で計算され、
全組成物が、全成分A+B+C+D+Eのwt.%の合計と理解される、
組成物。
【請求項2】
A) ポリカーボネート、ポリエステルカーボネートまたはそれらの混合物、成分AとBとの合計に対して80〜100重量部、および
B) エマルジョン重合法で製造されたグラフトポリマー、バルク重合法で製造されたグラフトポリマー、ゴムフリーのビニルホモポリマーおよびゴムフリーのビニルコポリマーからなる群の少なくとも一つから選択されるポリマー、成分AとBとの合計に対して0〜20重量部
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
A) ポリカーボネート、ポリエステルカーボネートまたはそれらの混合物、成分AとBとの合計に対して100重量部、および
B) 成分B、成分AとBとの合計に対して0重量部
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
成分CとしてAl含量1.0wt.%未満のタルクを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
成分Cとして平均粒径d50が2μm未満のタルクを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
成分Eとして、防炎加工剤、ドリップ防止剤、滑剤および離型剤、成核剤、帯電防止剤、安定剤、タルク以外の充填剤および強化物質、並びに染料および顔料からなる群から選択される少なくとも一つの成分を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
成分Dとして、脂肪族または芳香族カルボン酸、脂肪族または芳香族スルホン酸、脂肪族または芳香族ホスホン酸、ヒドロキシ−官能性ジカルボン酸、オルトリン酸、メタリン酸、ホウ酸、およびリン酸の酸塩からなる群から選択される少なくとも一種類の化合物を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
成分Dとして、安息香酸、クエン酸、シュウ酸、フマル酸、マンデル酸、酒石酸、テレフタル酸、イソフタル酸およびp−トルエンスルホン酸からなる群から選択される少なくとも一種類の化合物を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
成分Dとして、成分D1)の酸であって、熱的に安定であり、本発明による組成物の配合および加工の条件のもとで揮発しない酸を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
成分D1)が、テレフタル酸または無機酸の酸塩、例えばアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属リン酸水素塩およびアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属リン酸二水素塩、からなる群から選択される少なくとも一種類の酸である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
成分Dとして、配合の熱条件下のもとで分解する成分D2)の酸を含み、
成分D2.1)の酸の場合、二つのタイプの分解生成物が形成され、すなわち、一方が熱的に安定であり、かつ、配合条件のもとで揮発性でなく、他方は沸点が150℃未であり、
成分D2.2)の酸の場合、沸点150℃未満の分解生成物のみを形成する、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
成分D2)が、オルト−リン酸、メタ−リン酸、ホウ酸およびシュウ酸からなる群から選択される少なくとも一種類の酸である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
成分A〜Eを常套の混合デバイスの中で溶融し、該溶融物を温度240℃〜320℃において混合し、これらの条件のもとで形成される可能な成分Dの揮発性分解生成物をpAbs 500mbar以下の真空を適用することによって該溶融物から除去する、請求項11または12に記載の組成物の製造方法。
【請求項14】
成形物品の製造のための、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物を含む成形品。
【請求項16】
該成形物品が、フィルム、異形材、ハウジングパーツ、市販の実用車または自動車分野用の構造パーツ、鉄道車両、船舶、航空機、バスおよび別の乗物用の内部構造パーツ、車体パーツ、小型変圧器を含む電気装置のハウジング、情報処理および伝達装置用のハウジング、医療機器用のハウジングおよびライニング、子供用乗物玩具、二次元壁体要素、安全車用のハウジング、断熱輸送コンテナ、衛生器具および浴室器具用の成形パーツ、換気口用カバーグレーチング、並びに園芸用品置き場であることを特徴とする、請求項15に記載の成形物品。
【請求項17】
該成形物品が
(i) 第一成分としての透明または半透明ポリカーボネート成形組成物および
(ii) 第二成分としての請求項1〜12のいずれか一項に記載のポリカーボネート組成物
を含み、該第一成分が該第二成分に完全にまたは部分的に結合している、二成分構造部品であることを特徴とする、請求項15または16に記載の成形物品。
【請求項18】
該第一成分が射出成形または射出圧縮成形法で該第二成分と共にバックインジェクション成形されることを特徴とする、請求項17に記載の二成分構造部品の製造方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法によって得られる二成分構造部品。
【請求項20】
請求項17または19に記載の二成分構造部品を含むウィンドウ、グレージング、照明ユニット、光学レンズ、ヘッドライトカバーディスク、装飾カバー、乗物におけるダイヤフラム、モニターまたはディスプレーカバー。

【公表番号】特表2010−523742(P2010−523742A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501404(P2010−501404)
【出願日】平成20年3月22日(2008.3.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/002326
【国際公開番号】WO2008/122359
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】