説明

ポリベンゾオキサゾールに熱変換するポリヒドロキシアミドに基づくスクリーン印刷可能な封入剤

【課題】組成物、およびこうした組成物の保護被膜、特に電子装置の保護被膜への使用を提供すること。
【解決手段】本発明は、複合封入剤で覆われプリント配線板に埋め込まれた箔上焼成セラミックコンデンサに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物に関し、かつ保護被膜へのこうした組成物の使用に関する。一実施形態では、この組成物は、電子装置構造体、特に埋め込まれた箔上焼成セラミックコンデンサをプリント基板処理薬品への暴露から保護するために、および環境保全のために使用される。
【背景技術】
【0002】
電子回路には、抵抗器、コンデンサ、およびインダクタなどの受動的電子部品が必要である。最近の傾向は、受動的電子部品が有機プリント回路基板(PCB)へ埋め込まれるか統合されることである。プリント回路基板にコンデンサを埋め込む方式により、回路サイズの縮小および回路性能改善が可能になる。しかし、埋め込まれたコンデンサは、高収率および高性能などの他の要求事項と共に高い信頼度要求事項を満たさなければならない。信頼度要求事項を満たすには加速寿命試験に合格することが必要である。こうした加速寿命試験の1つは、埋め込まれたコンデンサを含む回路を、5ボルトのバイアス下、相対湿度85%、85℃に1000時間暴露することである。絶縁抵抗が著しく低下した場合は故障と見なされる。
【0003】
プリント回路基板に埋め込まれた高静電容量セラミックコンデンサは、減結合用途に特に有用である。高静電容量セラミックコンデンサは「箔上焼成」技術によって形成することができる。箔上焼成コンデンサは、Feltenの特許文献1に開示されている厚膜プロセス、またはBorlandらの特許文献2に開示されている薄膜プロセスで形成することができる(特許文献1および2参照)。
【0004】
厚膜箔上焼成セラミックコンデンサは、金属箔基材上に厚膜コンデンサ誘電体材料層を堆積し、その後この厚膜コンデンサ誘電体層上に最上部銅電極材料を堆積し、引き続き銅厚膜焼成条件下、例えば窒素雰囲気中、ピーク時間10分間、900〜950℃で、焼成することにより形成される。
【0005】
コンデンサ誘電体材料は、減結合に適した小さな高静電容量コンデンサの製造を可能にするために、焼成後に高誘電率(K)を有するべきである。高K厚膜コンデンサ誘電体は、高誘電率粉体(「機能相」)をガラス粉と混合し、この混合物を厚膜スクリーン印刷媒体へ分散させることにより形成される。
【0006】
この厚膜誘電体材料の焼成中に、誘電体材料のガラス成分は、ピーク焼成温度に到達する前に軟化流動し、融合し、機能相を封入し、最終的にモノリシックセラミック/銅電極膜を形成する。
【0007】
次いで、箔上焼成コンデンサを含む箔を、コンデンサ部品面を下向きにしてプリプレグ誘電体層に積層して内層を形成し、金属箔をエッチングしてコンデンサの箔電極および任意の関連する回路を形成することができる。次いで、箔上焼成コンデンサを含む内層を、慣用の配線板印刷法によって多層プリント配線板に組み込むことができる。
【0008】
焼成されたセラミックコンデンサ層は若干の孔隙を含むおそれがあり、粗末な取り扱いにより曲げ力を受けた場合、若干の微細な亀裂が発生するおそれがある。こうした孔隙および微細な亀裂があると、湿気がセラミック構造体に浸透するおそれがあり、加速寿命試験でバイアスおよび温度に暴露された場合、絶縁抵抗の低下および故障をもたらすおそれがある。
【0009】
また、プリント回路基板の製造工程では、箔上焼成コンデンサを含む箔は、苛性剥離フォトレジスト薬品および褐色または黒色酸化物処理に暴露されるおそれがある。この処理は、プリプレグへの銅箔の接着性を改善するためにしばしば使用される。この処理は、高温で苛性溶液および酸溶液へ銅箔を多数回暴露することから成る。これらの薬品は、コンデンサ誘電体のガラスおよびドーパントを攻撃し部分的に溶解するおそれがある。こうした損傷により、多くの場合、誘電体上にイオン性の表面付着物が付着し、コンデンサが湿気に暴露された場合、絶縁抵抗の低下をもたらす。こうした劣化もまた、コンデンサの加速寿命試験を損なう。
【0010】
また、いったん埋め込まれた後、この封入コンデンサが、下流の処理ステップ中、例えばはんだリフローサイクルまたはオーバーモールド焼付サイクルに関連した熱変化において、その完全性を維持することが重要である。構造物の任意の様々な接合部分または層自体の内部で発生する剥離および/または亀裂は、このアセンブリ内部へ湿気が浸透する道を提供することにより、埋め込まれたコンデンサの完全性を損なうおそれがある。
【0011】
これらの問題を解決するアプローチが必要とされている。埋め込まれた受動部品を改善する様々なアプローチが試みられた。埋め込まれた抵抗器を補強するために使用される封入剤組成物の一例は、Feltenの特許文献3に見出すことができる(特許文献3参照)。有機封入剤のための結晶性ポリイミド前駆体のアプローチが記載されている(特許文献4参照)。他のポリイミド系封入剤が特許文献5および6に記載されている(特許文献5,6参照)。ポリノルボルネンおよびポリアリレートを用いた有機封入剤へのアプローチがある(特許文献7参照)。
【0012】
エポキシ材料が封入剤として記載されている。K.I.Papathomasは特許文献8において、半導体チップの封入において使用可能な封入剤の製造に使用される組成物を記載している。エポキシ樹脂に加えてフェノール樹脂を使用した他の参考文献がある(特許文献9、10参照)。
【0013】
ポリベンゾオキサゾールは、一般に、水分および気体に対する拡散係数が小さく、寸法安定性が高く、靭性が高く、Tgが高く、Citesが低から中であり、水の吸収量が少なく、接着性が良いので、封入剤としての有用性を有することができる。しかし、ポリベンゾオキサゾールを繊維に使用する研究において、問題が確認された。ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール繊維では、残余のリン酸を抽出するために使用されるモルホリン、ピリジン、トリメチルホスフェートなどの弱塩基および酸の加水分解反応と認められる問題があった(非特許文献1参照)。オキサゾール窒素を含む加水分解反応があり、これがオキサゾール環構造の分裂をもたらしたという証拠があった。
【0014】
可溶化ジアミン成分である2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6F−AP)に基づく、文献で可溶性であるとされているポリベンゾオキサゾールが、非特許文献2および3に開示されている(非特許文献2、3参照)。これらの文献は、高速の空軍用途を支援するために必要とされる、空気力学的加熱に耐性がある熱可塑性キャノピー材料の探索について記述している。確認されたPBOは、メタンスルホン酸、硫酸、クロロホルムまたはTHFなどの非スクリーン印刷溶媒に可溶であった。
【0015】
Halikらの特許文献11では、チップを電子パッケージへ接合する接着剤として使用するために、PBOに熱変換する可溶性ポリヒドロキシアミドが調製された(特許文献11参照)。水に無限に可溶の溶媒を使用して、この高分子溶液はウエハー上へスピンコートされた。スクリーン印刷用途については、挙げられたほとんどの溶媒の沸点は低すぎ、吸水率は高すぎる。より高い沸点を有する溶媒としてNMPおよびγ−ブチロラクトンが挙げられているが、これらはスクリーン乳剤およびスクィージーを侵し、水に無限に可溶である。したがって、これらの溶媒はスクリーン印刷に使用不可能である。
【0016】
M.Hasegawaらの特許文献12にはスルホン含有PBOが記述されており、このPBOは溶媒に対して高い溶解度を有する(特許文献12参照)。しかし、極性の高いスルホン官能基は、5ボルトのDCバイアスで、85℃、85%RHに1000時間に至るまで暴露されると、封入コンデンサ内に所望よりも高い吸湿をもたらすことが予想される。
【0017】
【特許文献1】米国特許第6,317,023号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0011857号明細書
【特許文献3】米国特許第6,860,000号明細書
【特許文献4】PCT米国特許出願第07/25297号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/0290379号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2007/0291440号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2007/0154105号明細書
【特許文献8】米国特許第7,192,997号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2007/0244267号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2007/0236859号明細書
【特許文献11】米国特許第7,064,176号明細書
【特許文献12】国際公開第2007/034716号パンフレット
【非特許文献1】P. J. Walsh et. al., The Journal of Applied Polymer Science, Vol. 102, 3819-3829 (2006)
【非特許文献2】L. R. Denny et. al., The 22nd International SAMPE Technical Conference, November 6-8, 1990
【非特許文献3】Houtz et. al., Polymer Preprints, 1994, 35 (1), 437-8
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、高温硬化後に保護被膜を形成し、プリント配線板に埋め込まれる、有機封入剤で覆われた箔上焼成セラミックコンデンサに関する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この封入剤は、2%以下の吸水率を有するポリヒドロキシアミド、任意選択で1種または複数種の電気絶縁フィラー、消泡剤、および着色剤、ならびに1種または複数種の有機溶媒からなる。ポリヒドロキシアミドは、ポリベンゾオキサゾール(PBO)前駆体であり、1種または複数種の慣用のスクリーン印刷溶媒に可溶であるように選ばれる。ポリヒドロキシアミドはまた、硬化後のPBOが、260℃を超える、好ましくは300℃を超える、十分に高いTgを有するように選ばれる。
【0020】
ポリヒドロキシアミド、任意選択で1種または複数種の電気絶縁フィラー、消泡剤、および着色剤、ならびに有機溶媒を含む組成物が開示される。この組成物は、約450℃以下の硬化および強化温度を有する。
【0021】
電子部品を覆うためのスクリーン印刷可能な封入剤組成物は、加熱によりポリベンゾオキサゾールを形成する少なくとも1種のポリヒドロキシアミドと有機溶媒とを含み、このポリヒドロキシアミドはスクリーン印刷溶媒に可溶である。
【0022】
前記ポリヒドロキシアミドは、以下の式:
【0023】
【化1】

【0024】
(式中、
Xは、以下の構造:
【0025】
【化2】

【0026】
の1つまたは2つ以上、およびより少ない量の以下の構造:
【0027】
【化3】

【0028】
である)で表されるポリヒドロキシアミドを含むことができる。
【0029】
ポリベンゾオキサゾール封入剤組成物は上述の組成物を硬化することにより形成することができる。このポリベンゾオキサゾール封入剤組成物は、埋め込まれた箔上焼成セラミックコンデンサ上に塗布され、30%以下の濃度を有する硫酸または水酸化ナトリウムに浸漬された場合、この封入剤組成物はこのコンデンサを保護する。このポリベンゾオキサゾール封入剤組成物の吸水率は好ましくは2%以下であり、より好ましくは1%以下である。ポリベンゾオキサゾール封入剤組成物は、典型的には450℃以下の温度で硬化させる。好ましくは、ポリベンゾオキサゾール封入剤組成物はコンデンサに接着し、コンデンサへの封入剤の接着力は2ポンドフォース/インチ(lb force/inch)より大きい。
【0030】
さらに開示されているのは、箔上焼成セラミックコンデンサをポリベンゾオキサゾール封入剤で封入する方法であって、有機溶媒に溶解したポリヒドロキシアミドの組成物を提供するステップと、箔上焼成コンデンサ上にこの組成物をスクリーン印刷するステップと、この組成物を加熱してこの組成物を硬化し、ポリベンゾオキサゾール封入剤をコンデンサ上に形成するステップとを含む方法である。このポリヒドロキシアミドは、好ましくは2%以下の吸水率と260℃を超えるTgとを有する。この組成物は、典型的には約450℃以下の温度で硬化させる。また、この組成物は、さらに1種または複数種の電気絶縁フィラー、消泡剤、着色剤、または追加の有機溶媒を含んでもよい。好ましいポリベンゾオキサゾール封入剤は、2%以下の吸水率を有する。
【0031】
上述の組成物は、封入剤として箔上焼成セラミックコンデンサなどの電子部品に使用することができ、好ましくは、コンデンサとプリプレグとを含む、コンデンサがプリント配線板に埋め込まれた、箔上焼成セラミックコンデンサに使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明をさらに定義し記述するために、本明細書においては、以下の定義を使用する。
本明細書に使用され、特許請求の範囲に記載される「1つの」(「a」)という用語は、「少なくとも1つの」あるいは「1つまたは複数の」の概念を含むものである。
【0033】
本発明は、スクリーン印刷およびポリベンゾオキサゾール封入剤の形成を可能にし、したがって優れた封入剤と優れた特性を有する埋め込まれたコンデンサを可能にする、予想外の新規な優れた封入剤組成物を提供する。
【0034】
ポリベンゾオキサゾールを厚膜調合物に組み込んで利用することはほとんど未開拓であり、それは可溶性のポリヒドロキシアミド中間生成物を使用するアプローチについても同じである。ポリヒドロキシアミド中間生成物は、熱で再配列したポリベンゾオキサゾールよりも、スクリーン印刷溶媒への溶解性が高い。封入剤用途で特に興味のあることは、可溶化CF3官能基を有するジアミンモノマーの使用である。
【0035】
本発明は、(1)1種または複数種のポリヒドロキシアミドから選択されるポリベンゾオキサゾール前駆体と、(2)有機溶媒とを含む厚膜封入剤組成物を提供する。
【0036】
ポリヒドロキシアミド封入剤を塗布し、熱で硬化させ、プリント配線板内に埋め込まれた箔上焼成セラミックコンデンサが開示される。封入剤の塗布および加工は、プリント配線板および集積回路(IC)のパッケージ工程と適合するように設計されている。さらに、この封入剤は、構造体へ埋め込む前および埋め込んだ後、水分やプリント配線板製作用薬品から箔上焼成コンデンサを保護し、かつコンデンサ要素と有機成分の相対的な熱膨張係数の局所的な差によって生じる機械的応力を層間剥離することなく吸収する。箔上焼成セラミックコンデンサへ前記複合封入剤を塗布すると、プリント配線基板の内部に埋め込まれたコンデンサは、5ボルトのDCバイアス下、85℃、相対湿度85%で行われる1000時間の加速寿命テストに合格することができる。
【0037】
開示される封入剤組成物は、十分な温度への加熱(または、マイクロ波、レーザーを含む他の加工手段)によりポリベンゾオキサゾールを生じる可溶性ポリヒドロキシアミドまたはポリヒドロキシアミド混合物と、有機溶媒と、任意選択で無機電気絶縁フィラー、消泡剤、および着色染料の1つまたは複数とを含む。吸水量は、当分野の技術者に知られている方法である、ASTM D−570で測定する。
【0038】
出願人は、最も安定したポリマーマトリックスは、吸湿量が2%以下、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1%以下の低吸湿ポリベンゾオキサゾールを使用することでも得られることを確認した。吸水率1%以下の組成物に使用されたポリベンゾオキサゾールは、好ましい保護特性を有する強化された材料を形成しやすい。
【0039】
ポリヒドロキシアミド
一般に、本発明のポリヒドロキシアミド成分は、以下の一般式:
【0040】
【化4】

【0041】
で表すことができる。
式中、Xは以下の構造:
【0042】
【化5】

【0043】
の1つまたは2つ以上であり、
かつ、上記の構造と、より少ない量の以下の構造:
【0044】
【化6】

【0045】
との混合物である。
【0046】
本発明のポリベンゾオキサゾールは、その相当するポリヒドロキシアミド前駆体がスクリーン印刷溶媒に可溶であるように選ばれる。
【0047】
ポリベンゾオキサゾールは、使用可能なスクリーン印刷溶媒への溶解性が低いため、厚膜ペーストへ容易に調合することができない。ポリベンゾオキサゾールに変換するポリヒドロキシアミド前駆体のいくつかはメタンスルホン酸、硫酸、クロロホルムおよびTHFに可溶であることが知られているが、長鎖アルコール、エーテルおよびアセテートなどの一群の伝統的なスクリーン印刷溶媒へのその溶解性は十分には調査されていない。さらに、これらのポリヒドロキシアミドを溶解することが知られている溶媒は許容できるスクリーン印刷溶媒でなく、したがって、一般には厚膜ペースト調合物のための有力候補とは見なされていなかった。
【0048】
本発明のポリヒドロキシアミドは、適切な二酸塩化物(あるいは適切な二酸塩化物の混合物)を1種または複数種の選択されたジアミンと反応させることにより調製される。二酸塩化物成分とジアミン成分とのモル比は、好ましくは0.9から1.1である。好ましくは、二酸塩化物またはジアミンのわずかなモル過剰、約1.01から1.02のモル比を使用することができる。無水安息香酸などの末端キャッピング剤を加えて、ポリヒドロキシアミドの鎖長を制御し、ポリベンゾオキサゾールにはアミンが終端となる末端基がないことを確実にすることができる。
【0049】
本発明の実施に有用な二酸塩化物は、塩化テレフタロイル、塩化イソフタロイル、4,4’−オキシビス(塩化ベンゾイル)、3,4’−オキシビス(塩化ベンゾイル)、2,2−ビス(4−塩化ベンゾイル)ヘキサフルオロプロパンおよび1,1,3−トリメチル−5−カルボキシ−3(p−カルボキシフェニル)インダンの二酸塩化物である。上記の二酸塩化物と共により低いモル比で併用した場合に有用な他の二酸塩化物は、2,2−ビス(4−塩化ベンゾイル)プロパン、ジフェン酸の二酸塩化物、ビフェニル−4,4’−二酸塩化物、および4,4’−メタン−ビス(塩化ベンゾイル)である。最適なヒドロキシジアミンは、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ)ヘキサフルオロ−プロパン(6F−AP)である。溶解性の低いヒドロキシジアミンである3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニルを6F−APと併用することができる。併用時の比率は、このポリヒドロキシアミドの、所望のスクリーン印刷溶媒に対する溶解性によって決まる。
【0050】
厚膜組成物は有機溶媒を含む。溶媒または溶媒混合物の選択は、ひとつにはこの組成物に使用されるポリヒドロキシアミドに左右される。選ばれる溶媒または溶媒混合物はいずれも、ポリベンゾオキサゾール前駆体を溶解しなければならない。封入剤ペーストは1時間以上にわたって周囲空気と接するおそれがあるので、溶媒は吸湿に対して高い親和性を持ってはならない。あまりにも多くの水が封入剤ペーストに吸収されると、ポリヒドロキシアミドは溶解性を失ってスクリーンまたはステンシルのブロッキングを引き起こすおそれがある。本発明の実施において有用であることが知られている溶媒としては、(i)ハンソンの極性溶解度パラメーターが約2から3であること、(ii)標準沸点が以下の温度:190、200、210、220、230、240および250℃の任意の2点間の(これら2点を含む)温度であること、の両方を有する有機液体が挙げられる。本発明の一実施形態では、有用な溶媒はDowanol(登録商標)PPHである。ポリヒドロキシアミドが可溶性を保ち、スクリーン印刷性能が悪影響を受けず、長期保管も悪影響を受けないなら、共溶媒を加えてもよい。一般的なスクリーン印刷溶媒の例としては、テルピネオール、テキサノール、DBE溶媒、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ジプロピレングリコールブチルエーテルおよびジブチルカルビトールが挙げられる。
【0051】
一般に、厚膜組成物は、混合し、次いで、三本ロールミルでブレンドする。典型的には、ペーストは、適切な分散に達するまで圧力のレベルを上げながら3回以上ロールミルにかける。ロールミル処理後、ペーストは、溶媒を添加することによって必要な印刷粘度に調合することができる。
【0052】
ペーストまたは液状組成物の硬化は、対流加熱、強制的な空気対流加熱、気相凝縮加熱、伝導加熱、赤外線加熱、誘導加熱または当分野の技術者に公知の他の技術を含む標準硬化方法のいずれか1つ以上によって行われる。これらのペーストは、約450℃を超えない温度で硬化することができる。可溶性の中間生成物をポリベンゾオキサゾール構造体に完全に変換するには、約350℃を超える高温が好ましい。
【0053】
本発明の組成物および比較例の試験で使用される手順を以下に記載する。
【0054】
絶縁抵抗
コンデンサの絶縁抵抗はヒューレットパッカード高抵抗メーターを使用して測定され、Gohmsで報告される。
【0055】
温度湿度バイアス(THB)試験
プリント配線板に埋め込まれたセラミックコンデンサのTHB試験では、環境チャンバー内にプリント配線板を置き、85℃、相対湿度85%および5ボルトのDCバイアスにコンデンサを1000時間暴露する。コンデンサの絶縁抵抗を定期的に監視する。絶縁抵抗50Meg−ohm未満のコンデンサは、コンデンサの故障と定義する。
【0056】
褐色酸化物試験
コンデンサは、Mac Dermid(Mac Dermid Incorporated of Waterbury Connecticut)褐色酸化物処理の以下の一連のステップに暴露される:
(1)40℃で4〜8%H2SO4溶液に60秒間浸漬、(2)室温でDI水に120秒間浸漬、(3)60℃でアミン5〜10%を含むNaOH3〜4%の溶液に240秒間浸漬、(4)室温でDI水に120秒間浸漬、(5)40℃で添加剤を含有する20ml/lのH22とH2SO4酸の溶液に120秒間浸漬、(6)化学薬品Mac Dermid Part A280mlをDI水1リットルで希釈した溶液と、化学薬品Mac Dermid Part B40mlをDI水1リットルで希釈した溶液との混合により作製された溶液に40℃で120秒間浸漬、および(7)室温で脱イオン水に480秒間浸漬。これらの暴露ステップの後、コンデンサの絶縁抵抗を測定する。
【0057】
この試験の後、コンデンサの絶縁抵抗を測定し、50Meg−Ohm未満のコンデンサが故障と定義された。
【0058】
封入剤フィルム吸湿試験
ASTM D570方法を使用して、ポリヒドロキシアミド溶液を1オンスの銅箔基板上に20ミルのドクターナイフで塗布する。未乾燥塗膜を、強制通風炉内にて190℃で約1時間乾燥して厚さ2ミルのポリヒドロキシアミドフィルムを得る。この試験方法によって規定された5ミル超の厚さを得るために、さらに2層を、乾燥したポリヒドロキシアミドフィルム上に塗布する。第2の塗布と第3の塗布の間に、強制通風炉内において190℃で30分間乾燥する。この3層の塗膜を、強制通風炉内にて190℃で1時間乾燥し、以下のプロフィルを用いて窒素雰囲気下、マルチゾーンベルト炉内で硬化させる。
第1パス:
パラメーター 設定
ベルト速度 5インチ/分
ゾーン1 150℃
ゾーン2 170℃
ゾーン3 210℃
ゾーン4 240℃
ゾーン5 270℃
ゾーン6 300℃
ゾーン7 330℃
ゾーン8 360℃
第2パス:
パラメーター 設定
ベルト速度 5インチ/分
ゾーン1 200℃
ゾーン2 230℃
ゾーン3 260℃
ゾーン4 290℃
ゾーン5 320℃
ゾーン6 350℃
ゾーン7 380℃
ゾーン8 410℃
【0059】
このように形成されたポリベンゾオキサゾールフィルムは、商業的に可能な酸エッチング技術を使用して、銅をエッチングすることにより銅基板から除去される。寸法1インチ×3インチの試料を自立型フィルムから切り出し、120℃で1時間乾燥する。このストリップの重量を測定し、脱イオン水に24時間浸漬する。吸水率を計算することができるように、試料をふき取って乾かし、重量を測定して、重量増加を求める。また、フィルム試料を、85/85チャンバーに48時間放置して、これらの条件下における試料の吸水量を測定した。
【0060】
以下の用語集には、使用した各成分の名称および略語のリストが含まれる:
CTE 熱膨張係数
DI水 脱イオン水
DMAC ジメチルアセトアミド
Dowanol PPH プロピレングリコールフェニルエーテル
6F−AP 2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−へ キサフルオロプロパン
Mw 重量平均分子量
Mn 数平均分子量
NMP N−メチル−2−ピロリジノン
PBO ポリベンゾオキサゾール
Tg ガラス転移温度
THF テトラヒドロフラン
THB 85℃、85%RH、およびDC5ボルトの温度、湿度、バ イアス
【実施例】
【0061】
(実施例1)
ポリヒドロキシアミド1の調製
機械撹拌機および窒素導入口を有する乾燥した3首丸底フラスコに、130.2グラムの無水DMACおよび12.410グラムの6F−APを加えた。この溶液を5℃に冷却し、10.002グラムの4,4’−オキシビス(塩化ベンゾイル)を加えた。反応温度は、この添加中20℃に上昇し、次いで、氷浴冷却で10℃に低下した。この溶液を室温まで上昇させ一晩撹拌した。ポリヒドロキシアミド生成物を、空気駆動ワーリングブレンダー内の脱イオン水中に析出させ、濾過して回収した。この固体生成物を、このブレンダーを使用してDI水で洗い、濾過した。これらの操作を繰り返した。この時点で濾液のpHは4であった。この固体を窒素真空炉内にて100℃で乾燥し、23.0グラムを得た。サイズ排除クロマトグラフィーによる分子量は、Mw118,100、Mn54,400であった。
【0062】
(実施例2)
ポリヒドロキシアミド2の調製
機械撹拌機および窒素導入口を有する乾燥した3首丸底フラスコに、158.86グラムの無水DMACおよび18.03グラムの6F−APを加えた。この溶液を10℃に冷却し、10.00グラムの塩化イソフタロイルを加えた。反応温度は、氷浴冷却下の添加中に11℃に上昇した。この溶液を室温まで上昇させ一晩撹拌した。ポリヒドロキシアミド生成物を、空気駆動ワーリングブレンダー内のDI水中に析出させ、濾過して回収した。この固体生成物を、このブレンダーを使用してDI水で洗い、濾過した。これらの操作を繰り返した。この時点で濾液のpHは5であった。この固体を窒素真空炉内にて110℃で乾燥し、25.59グラムを得た。サイズ排除クロマトグラフィーによる分子量は、Mw170,300、Mn51,700であった。
【0063】
(実施例3)
ポリヒドロキシアミド1ペーストの製造
実施例1のポリヒドロキシアミド20.45グラムを115.84グラムのDowanol PPHに溶かした溶液を、80℃で5時間機械撹拌して調製した。この透明な溶液を、10ミクロンのフィルターを通して加圧下に濾過した。ペーストのスクリーン印刷特性を改善するために、シロキサン系コーティング助剤(0.14g)を撹拌下ペーストに加えた。
【0064】
(実施例4)
封入されたセラミックコンデンサを含むセラミッククーポンの調製、封入剤の化学的安定性の分析
市販の96%アルミナ基板上のコンデンサを封入剤組成物によって覆い、選択された薬品に対する封入剤の抵抗を測定する試験媒体として使用した。この試験媒体は、図1(a)から(g)に摸式図的に示した以下の方法で調製された。
【0065】
図1(a)に示すように、電極材料(本件特許出願人から入手可能なEP320)をアルミナ基板上にスクリーン印刷して電極パターン120を形成した。図1(b)に示すように、電極の面積は0.3インチ×0.3インチであり、後の段階で電極への接続を可能にするために、突出した「フィンガー」を含んでいた。この電極パターンは、120℃で10分間乾燥し、銅厚膜窒素雰囲気焼成条件下930℃で焼成した。
【0066】
図1(c)に示すように、誘電材料(本件特許出願人から入手可能なEP310)を電極上にスクリーン印刷して誘電体層130を形成した。誘電体層の面積はおよそ0.33インチ×0.33インチであり、突出したフィンガーを除いて電極の全体を覆っていた。第1の誘電体層は120℃で10分間乾燥した。次いで、第2の誘電体層を塗布し、同じ条件で乾燥した。この誘電体パターンの平面図を図1(d)に示す。
【0067】
図1(e)に示すように、銅ペーストEP320を第2の誘電体層上に印刷して電極パターン140を形成した。この電極は0.3インチ×0.3インチであったが、アルミナ基板上に伸びた突出したフィンガーを含んでいた。この銅ペーストを120℃で10分間乾燥した。
【0068】
次いで、第1の誘電体層、第2の誘電体層および銅ペースト電極を、銅厚膜焼成条件下930℃で共焼成した。
【0069】
実施例4のために、図1(f)に示したパターンを使用して、180メッシュスクリーンを通して、2つのフィンガーを除くコンデンサ電極および誘電体の全体の上に実施例3の封入剤組成物をスクリーン印刷して、0.4インチ×0.4インチの封入剤層150を形成した。封入剤層は120℃で10分間乾燥した。別の封入剤層を、実施例3で調製された調合物を使用し、180メッシュスクリーンを通して直接第1の封入剤層上に印刷し、120℃で10分間乾燥した。最終的なスタックの側面図を図1(g)に示す。次いで、封入剤を、190℃で30分間強制通風炉内で窒素下に焼成した。次いで、このクーポンを、以下のプロフィルを使用して、窒素雰囲気下でマルチゾーンベルト炉内にて硬化した。
第1パス:
パラメーター 設定
ベルト速度 5インチ/分
ゾーン1 150℃
ゾーン2 170℃
ゾーン3 210℃
ゾーン4 240℃
ゾーン5 270℃
ゾーン6 300℃
ゾーン7 330℃
ゾーン8 360℃
第2パス:
パラメーター 設定
ベルト速度 5インチ/分
ゾーン1 200℃
ゾーン2 230℃
ゾーン3 260℃
ゾーン4 290℃
ゾーン5 320℃
ゾーン6 350℃
ゾーン7 380℃
ゾーン8 410℃
封入剤の最終硬化厚さはおよそ10ミクロンであった。
【0070】
封入の後、コンデンサの平均静電容量は42.3nF、平均損失係数は1.6%、平均絶縁抵抗は3.1Gohmであった。次いで、クーポンに上記の褐色酸化物試験を行った。この処理の後、平均静電容量、損失係数および絶縁抵抗は、それぞれ、42.7nf、1.7%、および1.8Gohmであった。未封入クーポンは酸および塩基の暴露に耐えなかった。次いで、コンデンサに5VのDCバイアスをかけ、85/85炉に100時間置いた後、静電容量、損失係数および絶縁抵抗を再び測定した。平均値は、それぞれ、41.7nf、1.8%、および1.1Gohmであった。
【0071】
(実施例5)
封入された箔上焼成コンデンサの調製、接着強度および剥離性を測定するためのプリプレグおよびコアとの積層
下記のプロセスを使用して、試験構造体として使用するために箔上焼成コンデンサを製造した。図2(a)に示すように、箔へのプレプリントとして銅ペーストEP320(本件特許出願人から入手可能)を塗布することにより1オンスの銅箔210を前処理してパターン215を形成し、銅厚膜焼成条件下930℃で焼成した。各プレプリントパターンは、およそ1.67cm×1.67cmであった。このプレプリントの平面図を図2(b)に示す。
【0072】
図2(c)に示すように、前処理された箔のプレプリント上に誘電材料(本件特許出願人から入手可能なEP310)をスクリーン印刷してパターン220を形成した。誘電体層の面積は1.22cm×1.22cmであり、プレプリントのパターン内にあった。この第1の誘電体層を120℃で10分間乾燥した。次いで、第2の誘電体層を塗布し、同じ条件を用いて乾燥した。
【0073】
図2(d)に示すように、銅ペーストEP320を第2の誘電体層上に、この誘電体の領域内に印刷して電極パターン230を形成し、120℃で10分間乾燥した。電極の面積は0.9cm×0.9cmであった。
【0074】
次いで、第1の誘電体層、第2の誘電体層および銅ペースト電極を、銅厚膜焼成条件下930℃で共焼成した。
【0075】
図2(e)に示すようなパターンを使用して、実施例3に記載の封入剤組成物を、180メッシュスクリーンを通してコンデンサ上に印刷して封入剤層240を形成した。この封入剤を120℃で10分間乾燥した。次いで、第2の封入剤層を、180メッシュスクリーンを用いて、実施例3で調製されたペーストを使用して、第1層上に直接印刷した。次いで、この2層構造体を120℃で10分間焼成した後、窒素下190℃で30分間硬化して、強化された2層複合封入剤を得た。
【0076】
次いで、この箔を、以下のプロフィルを使用して、窒素雰囲気下でマルチゾーンベルト炉内にて硬化した。
パラメーター 設定
ベルト速度 5インチ/分
ゾーン1 150℃
ゾーン2 170℃
ゾーン3 210℃
ゾーン4 240℃
ゾーン5 270℃
ゾーン6 300℃
ゾーン7 330℃
ゾーン8 360℃
第2パス:
パラメーター 設定
ベルト速度 5インチ/分
ゾーン1 200℃
ゾーン2 230℃
ゾーン3 260℃
ゾーン4 290℃
ゾーン5 320℃
ゾーン6 350℃
ゾーン7 380℃
ゾーン8 410℃
【0077】
最終的な硬化した封入剤の厚さはおよそ10ミクロンであった。この構造体の平面図を図2(f)に示す。この箔の部品面を、375°F、400psiで90分間、1080BT樹脂プリプレグ250に積層して、図2(g)に示す構造体を形成した。IPC−TM−650の接着試験No.2.4.9を使用して、プリプレグの封入剤に対する接着力を試験した。接着力の結果を以下に示す。また、銅箔の代わりに、いくつかの箔を、1080BT樹脂プリプレグおよびBTコアに積層した。これらの試料に、構造体が熱サイクル中に剥離する傾向を判定するために、それぞれの暴露が2分間続く5回の連続的なはんだフロートを260℃で行った。目視検査を使用して剥離が生じたかどうか判定した。
【0078】
結果を以下に示す。
【0079】
【表1】

【0080】
故障モードは、封入剤界面ではなくコンデンサ構造体内に存在した。
【0081】
【表2】

【0082】
対照(封入剤なし)は、第1回目のはんだフロートに30秒で剥離した。
【0083】
(実施例6)
ポリヒドロキシアミド2ペーストの製造
実施例2のポリヒドロキシアミドはDowanol(登録商標)PPHで混濁溶液を形成した。この溶液は10ミクロンのフィルターを通して濾過した後も濁っていた。しかし、実施例4および5のように処理された場合、遜色のない結果が得られた。実施例2のポリヒドロキシアミドはNMPで透明な溶液を形成し、この溶液からは保護被膜が得られた。しかし、この溶媒はスクリーン乳剤およびスクィージーを攻撃するためスクリーン印刷用途には使用不可能である。このポリヒドロキシアミドは、DBE溶媒、テルピネオールまたはTexanolなどの他のいくつかのスクリーン印刷溶媒に不溶性であることが分かった。この封入剤は、ボンドフィルム酸化物処理で好結果をもたらし、IRはんだリフローでは剥離しなかった。
【0084】
(比較例1)
ポリヒドロキシアミドの調製および評価
機械撹拌機および窒素導入口を有する乾燥した3首丸底フラスコに、322.4グラムの無水DMACおよび18.029グラムの6F−APを加えた。この溶液を5℃に冷却し、10.090グラムの塩化テレフタロイルを加えた。反応温度は、氷浴冷却下の添加中に11℃に上昇した。この溶液を室温まで上昇させ一晩撹拌した。ポリヒドロキシアミド生成物を、空気駆動ワーリングブレンダー内のDI水中に析出させ、濾過して回収した。この固体生成物を、ブレンダーを使用してDI水で洗い、濾過した。これらの操作を繰り返した。この時点で濾液のpHは5であった。この固体を窒素真空炉内にて100℃で乾燥し、23.4グラムを得た。サイズ排除クロマトグラフィーによる分子量は、Mw91,400、Mn36,300であった。このポリヒドロキシアミドはDowanol(登録商標)PPHに溶解しなかったがNMPに溶解した。また、これから保護被膜が得られた。しかし、この溶媒はスクリーン乳剤およびスクィージーを攻撃するためスクリーン印刷用途には使用不可能である。本比較例は、このポリヒドロキシアミドが、Dowanol(登録商標)PPH、あるいはDBE溶媒、テルピネオール、またはTexanolなどの他のいくつかのスクリーン印刷溶媒に溶解しないことを示す。しかし、相当するPBOは、非スクリーン印刷溶媒であるメタンスルホン酸に溶解することが報告されている(非特許文献2、3参照)。
【0085】
(比較例2)
o−ジクロロベンゼン196グラム中の4、4’−オキシビス(安息香酸)12.9919グラムおよび6F−AP 18.3112グラムの溶液を撹拌しながら、ポリリン酸トリメチルシリルエステル(PPSE)120.25グラムを加えた。この混合物を135℃にゆっくり加熱し、この温度で24時間保持した。温度を165℃に上げこの温度で18時間保持した後室温まで冷却し、空気駆動ワーリングブレンダー内にて、3リットルのメタノールに生成物を析出させた。このポリマーを濾過して回収し、この固体を合計2リットルのメタノールに3回ブレンドし、毎回濾過して可溶性の不純物を除去した。さらに、33%水酸化アンモニウム水溶液で48時間ソックスレー抽出することによって、酸性不純物をポリマーから除去した。次いで、中性のすすぎ水が得られるまで、このポリマーをDI水で3回洗った。このポリマーを140℃の真空炉で18時間乾燥して、Mw151,000およびMn40,300を有する、23.4グラムの精製されたポリベンゾオキサゾール(PBO)製品を得た。実施例2および3で見られるように、このPBOのポリヒドロキシアミド前駆体はDowanol(登録商標)PPHに可溶であったが、PBOは溶解しなかった。PBOは、他のスクリーン印刷溶媒、DBE溶媒、Texanol、テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、またはカルビトールアセテートにも可溶ではなかった。PBOは、NMPに可溶であった。しかし、NMPがスクリーン乳剤およびスクィージーの両方を攻撃することが分かった上で、これをスクリーン印刷組成物として使用することを試みたが、多量の水分が親水性のNMP溶媒に吸収され、この吸湿したNMPへのPBOの可溶性は低下した。これにより、どんな有用な塗膜を得ることも非常に困難になり、その結果、スクリーン印刷作業を終了しなければならなかった。
【0086】
(比較例3)
ポリスルホン
ポリスルホンを用いて作製された封入剤はIRはんだリフローで剥離し、極性の高いスルホン官能基のために、この封入剤は、良好なTHB結果を得るための助けにならない。封入剤としてポリスルホンを使用して、実施例4に記載の方法と同じ方法で試料を調製した。ビスフェノールAポリスルホンを濃度15%でDowanol(登録商標)PPHに溶解させ、スクリーン印刷可能なペーストを調製した。このペーストを、実施例4に記載の方法と同じ方法で印刷した。印刷された基板を窒素パージした対流炉内にて240℃で30分間加熱することにより、スクリーン印刷溶媒を蒸発させた。
【0087】
封入後、次いで、クーポンに上記の褐色酸化物試験を行った。この処理の後、平均静電容量、損失係数、および絶縁抵抗は、それぞれ、39.2nf、1.8%、および2.8Gohmであった。次いで、コンデンサに5VのDCバイアスをかけ、85/85炉に100時間置いた後、静電容量、損失係数および絶縁抵抗を再び測定した。平均値は、それぞれ、38.2nf、2.1%、および0.07Gohmであった。平均絶縁抵抗の低下は、ポリスルホンが、高湿条件下のバイアス試験の間、下層のコンデンサを十分に保護しなかったことを示す。同様に、特許文献12に記載のスルホン含有PBOは、THB耐性が低いと予想される。
【0088】
(比較例4)
XPI−2
低吸湿性の高性能可溶性ポリイミド、例えばEL−0676の実施例2〜4に記載のものは、良好な封入剤特性、特にIRはんだリフロー時の接着および良好な耐THB性の結果を有することが示されている。これらのポリイミドは、特に高pH溶液中の接触時間を調節すれば、選択された酸化物処理のプロセスに耐えることができる。しかし、浸漬時間が所望より長い場合は、この高pH酸化物処理のプロセスはポリイミドを攻撃することになろう。この結果、高性能ポリマーといえども、封入されたセラミックコンデンサの慣用の処理に必要な保護のすべてを提供することができないことは明白である。褐色酸化物試験における実施例4の改善された性能は、高性能ポリイミドの候補と比べてPBOの性能が優れていることを示すものである。このことは驚くべき結果であった。ポリイミドおよびPBOの両方は種々の薬品に対して良好な安定性を有すると考えられる。しかし、高pH処理が必要な場合は、PBO候補は予想外の利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】(a)から(g)は、複合封入剤組成物によって覆われ、選択された薬品に対する複合封入剤の耐性を測定する試験媒体として使用されるコンデンサを市販の96%アルミナ基板上に調製する方法を示す図である。
【図2】(a)から(e)は封入剤によって覆われたコンデンサを銅箔基板上に調製する方法を示し、(f)は構造体の平面図を示し、(g)は樹脂に対する積層後の構造体を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
120 電極パターン
130 誘電体層
140 電極パターン
150 封入剤層
210 銅箔
215 パターン
220 パターン
230 電極パターン
240 封入剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を覆うためのスクリーン印刷可能な封入剤組成物であって、加熱によりポリベンゾオキサゾールを形成する少なくとも1種のポリヒドロキシアミドと有機溶媒とを含み、前記ポリヒドロキシアミドはスクリーン印刷溶媒に可溶であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記ポリヒドロキシアミドは2%以下の吸水率と260℃を超えるTgとを有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリヒドロキシアミドは、以下の式:
【化1】

(式中、
Xは、以下の構造:
【化2】

の1つまたは2つ以上、およびより少ない量の以下の構造:
【化3】

である)
で表されるポリヒドロキシアミドを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の組成物を硬化することにより形成されるポリベンゾオキサゾール封入剤組成物であって、前記ポリベンゾオキサゾール封入剤組成物は埋め込まれた箔上焼成セラミックコンデンサ上に塗布され、30%以下の濃度を有する硫酸または水酸化ナトリウムに浸漬された場合、前記封入剤組成物は前記コンデンサを保護することを特徴とする組成物。
【請求項5】
箔上焼成セラミックコンデンサをポリベンゾオキサゾール封入剤で封入する方法であって、
有機溶媒に溶解したポリヒドロキシアミドの組成物を提供するステップと、
箔上焼成コンデンサ上に前記組成物をスクリーン印刷するステップと、
前記組成物を加熱して前記組成物を硬化し、ポリベンゾオキサゾール封入剤を前記コンデンサ上に形成するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
前記ポリヒドロキシアミドは2%以下の吸水率と260℃を超えるTgとを有することを特徴とする請求項5に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−60086(P2009−60086A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−185024(P2008−185024)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】