説明

ポリ乳酸系発泡性粒子、発泡粒子およびその発泡成形体

【課題】発泡性、成形性に優れ、発泡成形体の高温高湿条件下における体積変化が少ないポリ乳酸系発泡性粒子、発泡粒子およびその発泡成形体を提供する。
【解決手段】乳酸モノマー異性体比率8%以上のポリ乳酸からなるポリ乳酸系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂からなるポリ乳酸系樹脂組成物を基材樹脂とするポリ乳酸系樹脂粒子に、発泡剤を含浸してなるポリ乳酸系発泡性粒子、および該発泡性粒子を型内発泡成形してなる発泡成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸系発泡性粒子、発泡粒子およびその発泡成形体に関する。具体的には、発泡性、成形性に優れ、かつ発泡成形体の高温高湿時における寸法安定性を改善したポリ乳酸系発泡性粒子、発泡粒子およびその発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
化石資源を原料とする発泡ポリスチレン、発泡ポリオレフィンの代替として、特許文献1において、ポリ乳酸を主たる原料とする発泡成形体が提案されている(特許文献1)。この発泡成形体は、非石油資源である澱粉を出発原料としており、近年の石油事情、環境保全の見地から見て非常に望ましいものであると言える。当該発泡成形体は、発泡ポリスチレンと同等の強度、緩衝性能、2次加工性を有しており、通常の梱包用緩衝材として十分使用できるものであった。しかしながら、特許文献1の発泡成形体は、高温高湿条件下では著しく体積変化し、海外輸出等の過酷な条件下では使用できないという欠点があった。
【0003】
ポリ乳酸系発泡成形体に耐熱性を付与する技術について、特許文献2ではポリ乳酸とスチレン系樹脂、架橋剤を均一に分散させることで50〜80℃での体積変化率を1%未満にできることが開示されている。しかし、特許文献2では、50〜80℃での高温下での条件について検討がなされたものであるが、高湿度条件下での体積変化率には触れられていない。一般的にポリ乳酸系発泡成形体は、湿度の影響により体積変化が大きくなるため、特許文献2記載の発泡成形体の高湿度下における体積変化については不明である。また、スチレン系樹脂のようなポリ乳酸と相溶性の低い樹脂とのブレンドの場合、発泡・型内成形が困難になる傾向にあるが、特許文献2では成形性に関する評価が記載されていない。
【0004】
一方、ポリ乳酸系樹脂にポリメチルメタクリレートを添加した樹脂組成物が耐熱性に優れた樹脂組成物であることが特許文献3に開示されている。該文献では、耐熱性の評価をガラス転移温度の向上を指標として行っており、また得られる成形体も非発泡の成形体のみである。当該樹脂を発泡成形体とした場合に、成形性はもとより、高温高湿度下での寸法安定性については記載も示唆もない。
【0005】
以上のように、成形性と高温高湿下での寸法安定性が両立したポリ乳酸系発泡成形体は得られていないのが実情である。
【特許文献1】国際公開第99/21915号パンフレット
【特許文献2】特開2006−183007号
【特許文献3】特開2005−171204号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、発泡性、成形性に優れ、且つ、発泡成形体としたときに高温高湿条件下における寸法安定性を有するポリ乳酸系発泡性粒子、発泡粒子およびその発泡成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上述の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリ乳酸系樹脂とスチレン系樹脂、アクリル系樹脂からなるポリ乳酸系樹脂組成物に発泡剤を含浸してなるポリ乳酸系発泡性粒子は発泡性と、表面伸びや内部融着といった成形性が良好で、かつ高温高湿条件(60℃×80%RH)下での体積変化率が著しく改善された発泡成形体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち本発明は、乳酸モノマー異性体比率8%以上のポリ乳酸からなるポリ乳酸系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂からなるポリ乳酸系樹脂組成物を基材樹脂とするポリ乳酸系樹脂粒子に、発泡剤を含浸してなるポリ乳酸系発泡性粒子に関する。
【0009】
好ましい態様としては、
(1)スチレン系樹脂が、ポリスチレンである、
(2)アクリル系樹脂が、ポリメタクリル酸メチルである、
(3)基材樹脂が、イソシアネート基に由来する尿素結合、ウレタン結合、アロファネート結合の少なくとも1種以上の結合でポリ乳酸系樹脂組成物の樹脂成分が架橋されていることを特徴とする、
前記記載のポリ乳酸系発泡性粒子に関する。
【0010】
本発明の第2は、前記記載のポリ乳酸系発泡性粒子を予備発泡してなる発泡粒子に関し、本発明の第3は、前記記載の発泡粒子を型内発泡成形してなる発泡成形体に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリ乳酸系発泡性粒子は、汎用の発泡ポリスチレン設備による発泡、成形性が良好で、かつ該発泡成形体は高温高湿条件下における寸法安定性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のポリ乳酸系発泡性粒子は、ポリ乳酸系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂からなるポリ乳酸系樹脂組成物を基材樹脂とするポリ乳酸系樹脂粒子に発泡剤を含浸させて得る。得られたポリ乳酸系発泡性粒子は予備発泡、型内発泡成形により発泡成形体とすることができる。以下に詳細を説明する。
【0013】
〔ポリ乳酸系樹脂組成物〕
ポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂からなる。ポリ乳酸系樹脂としては、特に限定されないが、結晶性の高い樹脂は発泡剤を含浸するときや、予備発泡をする際に結晶化し、発泡成形体を得るに至らないので、結晶性の低い樹脂を用いる。具体的には、ポリ乳酸系樹脂中の乳酸モノマーの異性体比率が8%以上、好ましくは10%以上のものを用いる。
【0014】
また、溶融粘度がJIS K7210(荷重2.16kg)に準拠したメルトインデックス値(MI)で1〜10g/10分の高分子量のポリ乳酸が好ましい。MI値がこの範囲にあれば、生産性に優れ、発泡倍率の高い発泡成形体を得やすい傾向にある。
【0015】
ポリ乳酸系樹脂は、一部モノマーが乳酸と交換可能なヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸、ジオールなどで置き換わっていてもよく、エポキシ化大豆油やエポキシ化亜麻仁油などで一部分岐架橋されていても良い。
【0016】
スチレン系樹脂としては、例えば、スチレン単量体のみから得られるスチレンポリマー、スチレン単量体およびスチレンと共重合可能な単量体またはその誘導体から得られるランダム、ブロックあるいはグラフト共重合体、後臭素化ポリスチレン、ゴム強化ポリスチレンなどの変性ポリスチレンなどが具体例として挙げられる。本発明で使用するスチレン系樹脂としては、特に、ポリスチレンが好ましい。
【0017】
スチレン系樹脂の使用量は、ポリ乳酸系樹脂組成物100重量部に対して、1重量部以上20重量部以下が好ましく、さらに好ましくは、5重量部以上15重量部以下、より好ましくは7重量部以上12重量部以下である。この添加量範囲であれば、ポリ乳酸系発泡性粒子を発泡成形体としたとき、とりわけ高温高湿条件下での寸法安定性の優れた発泡成形体が得られる。
【0018】
アクリル系樹脂としては、一般に炭素数1〜4のアルキル基を有するアクリル酸アルキル単位、或いは、メタクリル酸アルキル単位を主成分とするアクリル樹脂が挙げられる。また、炭素数1〜4のアルキル基を有するアクリル酸アルキル、或いは、メタクリル酸アルキルには、炭素数1〜4のアルキル基を有する他のアクリル酸アルキル、或いは、メタクリル酸アルキルやスチレンなどの芳香族ビニル化合物を共重合してもよい。上記のアルキル基を有するアクリル酸アルキル、或いは、メタクリル酸アルキルの例としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられる。本発明で使用するアクリル系樹脂としては、特にメタクリル酸メチルからなるポリメタクリル酸メチルが好ましい。
【0019】
アクリル酸系樹脂の使用量は、ポリ乳酸系樹脂組成物100重量部に対して1重量部以上40重量部以下が好ましく、より好ましくは5重量部以上30重量部以下が好ましく、さらに好ましくは、10重量部以上25重量部以下である。この添加量範囲であれば、特に、得られるポリ乳酸系発泡性粒子を発泡成形体とする際の表面伸びが良好で、内部融着が良好な成形性の優れたものになる。
【0020】
本発明においては、ポリ乳酸系樹脂組成物の樹脂成分が、架橋剤により発泡に適する粘度領域まで増粘された基材樹脂を用いることが好ましい。
【0021】
ポリ乳酸系樹脂組成物の樹脂成分を発泡に適する粘度領域まで増粘させるための架橋剤としては、ポリイソシアネート化合物、過酸化物、酸無水物、エポキシ化合物等、一般的な架橋剤を単独または複数選択して用いることができる。
【0022】
ポリイソシアネート化合物としては、芳香族、脂環族、脂肪族系のポリイソシアネート化合物が使用可能であり、芳香族ポリイソシアネートとしては、トリレン、ジフェニルメタン、ナフチレン、トリフェニルメタンを骨格とするポリイソシアネート化合物が挙げられる。また、脂環族ポリイソシアネートとしては、イソホロン、水酸化ジフェニルメタンを骨格とするポリイソシアネート化合物、脂肪族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレン、リジンを骨格とするポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0023】
過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)トリメチルシクロヘキサン、ビス(ブチルパーオキシ)シクロドデカン、ブチルビス(ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキサイド、ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキシン、ブチルパーオキシクメン等の有機化酸化物が挙げられる。
【0024】
エポキシ化合物としては、グリシジルメタクリレート−メチルメタクリレート共重合体、グリシジルメタクリレート−スチレン共重合体、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ヤシ脂肪酸グリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等の各種グリシジルエーテル及び各種グリシジルエステル等が挙げられる。
【0025】
酸無水物としては、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、エチレン−無水マレイン酸共重合体、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0026】
これら架橋剤のうち、混練時の架橋増粘によるトルクアップが少なく、混練後に水分の存在下で加熱することによって尿素結合、ウレタン結合、アロファネート結合などによる後増粘が可能であるポリイソシアネート化合物が好ましく用いられる。ポリイソシアネート化合物の中でも、汎用性、取り扱い性、耐候性等からトリレン、ジフェニルメタン骨格とするポリイソシアネート化合物、特にジフェニルメタンのポリイソシアネートが好ましく使用される。
【0027】
架橋剤の添加量は、任意に選定することが可能であるが、ポリ乳酸系樹脂組成物100重量部に対して0.1重量部以上6.0重量部以下であることが好ましく、更に好ましくは0.5重量部以上5.0重量部以下、より好ましくは1.0重量部以上4.0重量部以下である。添加量が0.1重量部以上6.0重量部以下の場合、ポリ乳酸系樹脂組成物の溶融粘度を発泡に適した領域まで上昇させることができる。
【0028】
なお、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物には、難燃剤、帯電防止剤、柔軟剤、顔料/染料のごとき着色剤、造核剤などを添加して、基材樹脂としてもよい。
【0029】
ポリ乳酸系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂からなるポリ乳酸系樹脂組成物を調製する方法としては、一般的な樹脂コンパウンドを調製するのに用いられる方法は何れも用いることができる。例えば、ポリ乳酸系樹脂とスチレン系樹脂、アクリル酸系樹脂、必要に応じてその他の添加物を所定の配合量でドライブレンドし、その後、二軸押出機内に導入し、必要に応じて架橋剤を加えて、該押出機により溶融混練し、ペレット又はビーズ状の樹脂粒子を得ることが出来る。
【0030】
〔ポリ乳酸系発泡性粒子〕
上記ポリ乳酸系樹脂粒子に発泡剤を含浸することでポリ乳酸系発泡性粒子を得ることができる。ポリ乳酸系樹脂粒子に発泡剤を含浸する方法としては、所望の発泡性が得られる発泡剤の存在下で十分な圧力がかかる条件さえそろっていれば特に限定されるものではない。水系、非水系のいずれでも含浸が可能である、水系で含浸を行う場合には、加水分解反応を受けやすいポリエステル系樹脂組成物であることを考慮し、加水分解を抑制する工夫や短時間で含浸を終了させることが好ましい。
【0031】
発泡剤としては、無機ガス、揮発性発泡剤、水等が挙げられる。具体的には、無機ガスとしては二酸化炭素、窒素等が挙げられ、揮発性発泡剤としては、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、塩化メチル、塩化メチレン、ジクロロジフルオロメタン等のハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル等のエーテル等が挙げられる。なお、発泡剤は上記のものを単独で用いるほか、これらを混合して用いることもできる。
【0032】
発泡剤の含浸量としては、発泡剤の種類や所望の発泡倍率により一概には定義できないが、例えば、発泡倍率30倍以上の発泡粒子を得るためには、発泡性粒子を構成する基材樹脂に対して、4重量%以上が好ましい。
【0033】
なお、発泡剤の含浸では、安定した含浸性、発泡性を得るために含浸助剤、分散剤等を使用しても良い。含浸助剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類に代表されるプロトン系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ノルマルプロピルアセテート等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等、等に代表される非プロトン系溶剤、などが挙げられるが、水系で含浸する場合はポリ乳酸の加水分解を助長しない、非プロトン系溶剤を用いることが好ましい。
【0034】
分散剤としては、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0035】
また、水系で含浸する場合は、樹脂中への水の浸透を抑制する目的で、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム等1価の金属塩、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム等の2価の金属塩、硫酸アルミニウム等の3価の金属塩等の水溶性塩類等を添加することが好ましい。
【0036】
〔発泡粒子〕
以上のようにして得られたポリ乳酸系発泡性粒子は、蒸気や熱風、高周波等によって予備発泡させ発泡粒子とすることができる。例えば発泡ポリスチレン用の予備発泡機を用いる方法が最も簡便である。
【0037】
〔発泡成形体〕
さらに前記発泡粒子は、発泡ポリスチレンや発泡ポリオレフィン等の成形で用いられる成形機を用いて型内発泡成形し、発泡成形体とすることができる。
【0038】
本発明の発泡成形体は種々の用途に使用することができる。例えば、精密機器、電化製品、電子機器、電子部品等の緩衝材、食品類、酒類、薬品類等の包装材、展示パネル、マネキン、デコレーション等の美粧材、食品、機械部品、電子部品等の通い箱、断熱材、建築材、玩具、アイスクリーム、冷凍食品等の保温材等に使用することができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。尚、評価は下記の方法で行った。
【0040】
(評価方法)
(1)メルトインデックス(MI)
JIS K7210に準拠した方法で測定した。(測定温度190℃、オリフィス径2mm、2.16kg荷重の条件)
【0041】
(2)発泡性粒子の含浸率
含浸率は含浸前後の樹脂粒子重量から以下の式で求められる。
含浸率(%)=100×(含浸後重量−含浸前重量)/含浸前重量
【0042】
(3)発泡粒子の発泡倍率の測定方法:
内容積2000cm3のポリエチレン製カップに発泡粒子を擦切り一杯量り取り、重量を測定し、カップ重量を差引いて発泡粒子の重量を求める。発泡粒子の重量と見かけ体積(2000cm3)から下記の式により求められる。
発泡倍率=見かけ体積(2000cm3)/発泡粒子の重量
【0043】
(4)成形性の評価方法:
型内成形機を用いて、型内発泡成形を行い、表面伸び、内部融着について以下の基準で目視にて評価した。
○:表面伸び、内部融着ともに良好
△:表面伸び、内部融着いずれか良好
×:表面伸び、内部融着ともに不良
【0044】
(5)高温高湿条件下での寸法安定性の評価方法:
各発泡成形体を100×100×20mmに切り出し、60℃×80%RHの条件にて24時間処理し、処理前後の縦、横、厚みの測定値からそれぞれの体積を算出し、処理前の成形体に対する体積変化の割合を算出した。
【0045】
(製造例1:ポリ乳酸の製造例)
市販のL−ラクチド、D−ラクチドそれぞれを酢酸エチルを用いて再結晶して精製した。精製したL−ラクチド、D−ラクチド及び触媒としてオクチル酸スズをスズとして10ppm添加し、表1の組成になるように攪拌機付きオートクレーブに仕込み、減圧脱気した後、窒素雰囲気下で各々の重合条件で開環重合した。反応終了後、オートクレーブよりポリマーを取り出し、メルトインデックス(MI)を測定、MIが3〜5g/10分のポリマーを得た。結果を表1に示した。尚、得られたポリマーは水分が1000ppm以下になるまで乾燥させた。
【0046】
(製造例2:ポリ乳酸系樹脂組成物の製造例)
製造例1で作製したポリ乳酸(以下、PLAとする)とポリスチレン(日本ポリスチレン製、685、以下、PSと称す)、ポリメタクリル酸メチル(旭化成製、デルペット60N、以下、PMMAと称す)を所定量ブレンドした後、PLA/PS/PMMAブレンド品とポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン(株)製、MR−200、以下、NCOと称す)を、二軸押出機(東芝機械製、TEM35B)を用いて、溶融混練し、水中カッターを用いて約1mmφのビーズ状樹脂粒子を得た。PLA/PS/PMMA配合比、NCO添加量を表2に示した。
【0047】
(製造例3:ポリ乳酸系発泡性粒子の製造例)
製造例2で得られたビーズ状樹脂粒子100重量部に対して、水100重量部、発泡剤として脱臭ブタン(n−ブタン/i−ブタン比=7/3)25重量部、含浸助剤として食塩10重量部、分散剤としてポリオキシエチレンオレイルエーテル0.3重量部を耐圧容器に仕込み、90℃で90分間保持した。十分に冷却後取出し、乾燥して、ポリ乳酸系発泡性粒子を得た。得られたポリ乳酸系発泡粒子の含浸率を評価し、表2に示した。
【0048】
(製造例4:発泡粒子の製造例)
製造例3で得られたポリ乳酸系発泡性粒子を予備発泡機(ダイセン工業製、DYHL−300)に約2kg投入し、90℃の蒸気に40〜60秒間保持した。得られた発泡粒子を風乾した後、篩を使用し融着粒子を分別した。該発泡粒子の発泡倍率を評価し、表2に示した。
【0049】
(製造例5:発泡成形体の製造例)
発泡成形機(ダイセン工業製、KR−57)に300×450×20mmの金型を設置し、製造例4に例示した発泡粒子を24時間以上熟成した後充填し、スチーム圧0.1MPaで10〜20秒処理し成形性を評価した。また、得られた発泡成形体の高温高湿条件下での寸法安定性を評価した。評価結果は表2の通りであった。
【0050】
(実施例1〜10、比較例1〜8)
製造例1でのポリ乳酸の種類、製造例2でのPLA/PS/PMMA配合比、NCO添加量を表2のように変えてポリ乳酸系樹脂組成物を得た。該ポリ乳酸系樹脂組成物を製造例3、4、5に例示した方法で発泡剤含浸、予備発泡、発泡成形を行った。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

表2の実施例1〜10と比較例1〜8から明らかなように、ポリ乳酸系樹脂にスチレン系樹脂とアクリル系樹脂からなるポリ乳酸系樹脂組成物を用いることで、発泡倍率45倍以上、成形性良好、高温高湿(60℃×80%RH)下での体積変化率の低い良好な発泡成形体が得られる。
【0053】
一方、ポリ乳酸系樹脂にスチレン系樹脂のみを添加した場合(比較例2〜4)は、発泡粒子にする際の発泡性は良好であるものの、スチレン系樹脂の添加量が増加するに従い型内成形が困難になった。また、ポリ乳酸系樹脂にアクリル系樹脂のみを添加した場合(比較例5、6)、発泡粒子にする際の発泡性や、成形性は比較的良好であったものの、体積変化率に表される高温高湿下における寸法安定性が不十分であり、特開2005−171204号公報に記載の非発泡の成形体とは全く異なる挙動を示した。
【産業上の利用可能性】
【0054】
ポリ乳酸系発泡成形体において、従来の汎用発泡ポリスチレン用設備での発泡・成形が可能で、かつ従来のポリ乳酸系発泡成形体では得られなかった高温高湿条件下での高い寸法安定性を有するため、家電緩衝材等の用途に好適に使用することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸モノマー異性体比率8%以上のポリ乳酸からなるポリ乳酸系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂からなるポリ乳酸系樹脂組成物を基材樹脂とするポリ乳酸系樹脂粒子に、発泡剤を含浸してなるポリ乳酸系発泡性粒子。
【請求項2】
スチレン系樹脂が、ポリスチレンである請求項1記載のポリ乳酸系発泡性粒子。
【請求項3】
アクリル系樹脂が、ポリメタクリル酸メチルである請求項1または2記載のポリ乳酸系発泡性粒子。
【請求項4】
基材樹脂が、イソシアネート基に由来する尿素結合、ウレタン結合、アロファネート結合の少なくとも1種以上の結合でポリ乳酸系樹脂組成物の樹脂成分が架橋されていることを特徴とする請求項1〜3何れか一項に記載のポリ乳酸系発泡性粒子。
【請求項5】
請求項1〜4何れか一項に記載のポリ乳酸系発泡性粒子を予備発泡してなる発泡粒子。
【請求項6】
請求項5記載の発泡粒子を型内発泡成形してなる発泡成形体。

【公開番号】特開2008−56869(P2008−56869A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238552(P2006−238552)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】