説明

ポリ第4級有機ケイ素化合物を含有する組成物

本発明は、(A)式−[R2(SiR2O)b−SiR2−R2−N+12n−・nX-(I)[式中、基および指数は請求項1に記載されているものを表す]の単位を少なくとも1つ有する有機ケイ素化合物、(B)(B1)水、(B2)成分(A)とは異なるオルガノシロキサン、または(B3)1より大のデバイ(20℃)の電気双極子モーメントを有する極性有機溶剤の群から選択される少なくとも1つの溶剤、場合により(C)界面活性剤および場合により(D)その他の物質を含有する組成物、該組成物の製造方法および表面を抗菌処理するための該組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ第4級有機ケイ素化合物を含有する組成物、その製造および表面を抗菌処理するためのその使用に関する。
【0002】
数多くの産業分野で、表面および物品を持続的に抗菌処理することに対して高い要求が存在する。このために従来は有利に有機もしくは無機の化学薬品、該薬品の溶液または混合物が使用されてきた。これらは殺菌剤として程度の差はあるものの、たしかに著しい抗菌作用を有するが、しかしその作用は極めて非特異的であり、かつ持続的ではない。さらに、使用される物質の多くは純粋な形ではしばしばそれ自体が毒性であるか、またはそのライフサイクルの過程で健康上懸念される分解生成物を形成する。
【0003】
従来使用されている殺生剤のもう1つの根本的な問題は、効果的であるためにある程度の水溶性を有していなくてはならないことであり、従って殺生剤による処理はしばしば極めて限定された時間で有効であるにすぎない。しかしまたこのことは、作用物質を適用した後で、該成分はたいてい、適用箇所に残留せずに、時間の経過において程度の差はあるものの、制御されることなく環境に放出され、かつここで場合により蓄積し、このことによって長期的な問題につながることも意味している。従って最近は、抗菌作用を有する基をポリマーマトリックスに固定することが目標とされている。このような抗菌作用を有するポリマーもしくはこれらの組成物は、活性成分の移行性が著しく低減していることに基づいて環境に対して持続的に相容性であるのみでなく、理想的な場合には、高等生物にとって非毒性であり、かつ持続性は永続的であるべきである。
【0004】
第4級窒素中心を有するトリアルコキシシラン化合物の組成物の良好な抗菌効果は、すでに1970年代の前半から公知であり、かつ文献に十分に記載されている。この多様に使用される化合物群の大きな欠点は、そのイオン特性に基づいて固体であることである。固体の取り扱いおよび計量は通常、液体の場合よりも高価であるので、多くのユーザーは溶液もしくは液状の組成物からの適用を好む。しかし使用される溶剤、たとえば短鎖のアルコール、種々のグリコールエーテル、酢酸エチル、メチルエチルケトンまたは弱い極性の炭化水素、たとえばTHFおよびトルエンの多くは、高い蒸気圧ならびに低い沸点および引火点を有しており、このことは一方では、加工装置において大きな安全技術的問題につながり、他方では、健康および環境の時代に即していない負荷につながる。過去において代替的に水を適用することが提案された。しかし調査の結果、水性媒体中でトリアルコキシシラン基が加水分解され、かつ実質的に縮合に不安定なトリヒドロキシシリル基として存在することが判明した(US6,469,120B1)。従って第4級窒素中心を有するトリアルコキシシランの水溶液は、慎重かつ高価な安定化を必要とし、高度に希釈した場合にのみ長期的に貯蔵安定性であり、かつ狭いpH範囲で使用することができるにすぎない。さらに、これは処理した材料に、抗菌性を付与する以外に、その他のシリコーンに典型的な添加効果を付与することはない。
【0005】
第4級窒素基を有するオルガノポリシロキサンは、すでに以前から文献により公知である。その組成物は、たとえばテキスタイル処理剤として(WO03/066708A1)、化粧品の成分として(WO01/41719A1、WO41720A1、WO41721A1)、洗剤組成物のための添加剤として(EP1199350B1)ならびに家庭用クリーナーとして(EP1133545B1)幅広く使用されている。第4級アンモニウム基を有するポリシロキサンの抗菌効果およびその組成物についての報告は、これまで極めて少なく、その際、全ての場合において、見せかけの殺菌特性は単に、極めて小数の細菌に対する抗菌作用に由来するにすぎないというデータの正確な研究が存在している。従って多数の異なった微生物、たとえば菌類、細菌類、酵母および藻類に対して幅広く真の抗菌効果を有する第4級アンモニウム基を有するポリシロキサンの組成物が所望される。
【0006】
Sauvet等は、J.Polym. Science、パートA:Polymer Chemistry、2003年、41、第2939〜2948頁の比較可能な研究において、3−(トリアルキルアンモニウムプロピル)−側基を有する両親媒性シロキサンブロックコポリマーおよびシロキサンランダムコポリマーを記載している。該ポリマーはたしかに大腸菌(E.coli)および黄色ブドウ球菌(S.aureus)に対して良好な殺菌特性を示し、その際、該化合物の活性は、全分子にわたる第4級窒素中心の分布とは無関係であるように思われる。しかしその他の細菌株ならびに菌類、酵母類および藻類に対する作用は記載されていない。
【0007】
J.Appl.Polym.Science 2000、75、第1005〜1012頁(Sauvet等)において調査された、3−(n−オクチルジメチルアンモニウム)プロピル−側基を有するポリジメチルシロキサンに関しても同様のことが該当する。ここでもその効果はもっぱらいくつかの選択された菌株(E.coli、A.hydrophila、P.aeruginosa)に限定されている。さらに重要なことは、すでに前記の文献の開示においてと同様に、もっぱらポリマーの殺菌特性に関して記載されているのみであり、開示されている化合物またはその組成物が達成するであろうシリコーンに典型的な何らかの添加の効果については記載されていないことである。
【0008】
US6,384,254B1は、第4級窒素基を有するポリシロキサンならびに繊維または繊維製品を抗菌処理するための該ポリシロキサンの組成物を開示している。記載されている組成物により、シリコーンに典型的な柔軟な手触りと組み合わされた抗菌特性を繊維およびテキスタイルに付与することができる。さらにこの処理は、何回かの洗浄サイクルにわたって一定の耐久性を有する。さらに、抗菌効果に関する試験は単に、唯一の細菌株としての黄色ブドウ球菌に関するのみである。
【0009】
さらに抗菌作用を有する全ての前記のオルガノポリシロキサンはもっぱら側位に第4級アンモニウム基を有する化合物のみである。しかし当業者には、第4級アンモニウム側基を有するオルガノポリシロキサンは高い潜在的毒性を有しうることが公知である。過去には調査により、このような系の高い毒性は特に、2つの第4級アンモニウム単位の間隔により影響を受けることが判明している。前記の第4級アンモニウム基を有する抗菌活性のオルガノポリシロキサンは、毒物学的に懸念のある類似の特性プロフィールを疑いなく排除することはできない。とりわけその合成はランダムに進行する縮合反応および平衡反応により行われ、その過程で常に側位の第4級アンモニウム基の不利な間隔は生じうる。当業者に同様に公知であるように、最後の末端の毒物学的に懸念のない挙動は、2つの第4級アンモニウム基の定義された、同一に維持される間隔に基づいてα,ω−末端の系においてのみ保証されうる。
【0010】
本発明の対象は、
(A)式
−[R2(SiR2O)b−SiR2−R2−N+12n−・nX- (I)
[式中、
Rは、同じであるか、または異なっていてもよく、かつ1〜18個の炭素原子を有し、酸素原子により中断されていてもよく、置換されていてもよい一価の炭化水素基を表し、
1は、同じであるか、または異なっていてもよく、かつ1〜18個の炭素原子を有し、置換されていてもよい一価の炭化水素基を表すか、または橋かけアルキレン基の成分であってもよく、
2は、少なくとも2個の炭素原子を有し、少なくとも1個のヒドロキシル基を有するか、かつ/または1個もしくは複数個の酸素原子により中断されているか、かつ/または酸素を介してケイ素に結合している二価の炭化水素基を表し、
-は、有機もしくは無機のアニオンを表し、
bは、少なくとも1の整数であり、かつ
nは、少なくとも1の整数である]の単位を少なくとも1つ有する有機ケイ素化合物、
(B)次の群から選択される少なくとも1つの溶剤:
(B1)水、
(B2)成分(A)とは異なるオルガノシロキサン、または
(B3)1より大のデバイ(20℃)の電気双極子モーメントを有する極性有機溶剤、
場合により
(C)界面活性剤
および場合により
(D)その他の物質
を含有する組成物である。
【0011】
有機ケイ素化合物(A)の種類に応じて、本発明による組成物は溶液としても、または分散液の形でも、たとえばマイクロエマルションもしくはマクロエマルションの形で存在していてよい。
【0012】
この場合、本発明による組成物は、そのつど本発明による組成物の全質量に対して、有機ケイ素化合物(A)を、有利に10-5〜99質量%、有利には0.01〜90質量%、特に有利には0.01〜50質量%の量で含有している。
【0013】
本発明により使用される有機ケイ素化合物(A)は、式(I)の単位を少なくとも1つ有する任意の有機ケイ素化合物であってよく、これは純粋なシロキサン、つまり≡Si−O−Si≡構造であっても、シルカルバン(Silcarbane)、つまり≡Si−R′−Si≡構造であってもよく、ここでR′は、場合により置換されているか、かつ/またはヘテロ原子により中断されている二価の炭化水素基であり、または任意の有機ケイ素基を有するコポリマーであってよい。
【0014】
基Rのための例は、アルキル基、たとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソ−プロピル基、1−n−ブチル基、2−n−ブチル基、イソ−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソ−ペンチル基、ネオ−ペンチル基、t−ペンチル基;ヘキシル基、たとえばn−ヘキシル基;ヘプチル基、たとえばn−ヘプチル基;オクチル基、たとえばn−オクチル基およびイソ−オクチル基、たとえば2,2,4−トリメチルペンチル基;ノニル基、たとえばn−ノニル基;デシル基、たとえばn−デシル基;ドデシル基、たとえばn−ドデシル基;オクタデシル基、たとえばn−オクタデシル基;シクロアルキル基、たとえばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基およびメチルシクロヘキシル基;アルケニル基、たとえばビニル基、1−プロペニル基および2−プロペニル基;アリール基、たとえばフェニル基、ナフチル基、アントリル基およびフェナントリル基;アルカリール基、たとえばo−、m−、p−トリル基;キシリル基およびエチルフェニル基;およびアラルキル基、たとえばベンジル基、α−フェニルエチル基およびβ−フェニルエチル基である。
【0015】
置換された基Rの例は、メトキシエチル基、エトキシエチル基および(2−エトキシ)エトキシエチル基である。
【0016】
有利には、基Rは1〜12個の炭素原子を有する炭化水素基であり、これはハロゲン原子、アミノ基、エーテル基、エステル基、エポキシ基、メルカプト基、シアノ基または(ポリ)グリコール基により置換されており、その際、後者はオキシエチレン単位および/またはオキシプロピレン単位から構成されており、特に有利には1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、特にメチル基である。
【0017】
基R1の例は、基Rに関して記載した例である。
【0018】
有利には基R1は、1〜18個の炭素原子を有する炭化水素基であり、特に有利には1〜8個の炭素原子を有するアルキル基およびベンジル基である。基R1は、しかしまたこれらの基から誘導される二価の基であってもよく、従ってたとえば2つの基R1が窒素原子と共に1つの環を形成する。基R1が置換された炭化水素基である場合、置換基としてヒドロキシル基が有利である。
【0019】
アニオンX-の例は有機アニオン、たとえばカルボキシレートイオン、エノラートイオンおよびスルホナートイオン、ならびに無機アニオン、たとえばハロゲン化物イオン、たとえばフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオンおよびヨウ化物イオンおよび硫酸イオンである。
【0020】
有利にはアニオンX-は、カルボキシレートイオンおよびハロゲン化物イオンであり、特に有利には塩化物イオンおよび酢酸イオンである。
【0021】
基R2の例は、ヒドロキシル基により置換されているか、かつ/または酸素原子により1回もしくは複数回中断されているか、かつ/または酸素を介してケイ素に結合している二価の、線状、環式または分枝鎖状の、飽和または不飽和の炭化水素基であり、たとえば基
【化1】

−(CH22O−、−(CH23O−、−(CH23OCH2−、−(CH23OCH2−CH(OH)−CH2−および−(CH23OCH2−CH[−CH2(OH)]−の基であり、ここで、Meはメチル基を表す。
【0022】
有利には基R2は−(CH23OCH2−、−(CH23OCH2−CH(OH)−CH2−および−(CH23OCH2−CH[−CH2(OH)]−である。
【0023】
有利にはbは1〜5000、特に有利には2〜500の整数である。
【0024】
有利にはnは1〜100、特に有利には1〜75、とりわけ2〜50の整数である。
【0025】
有利には本発明により使用される有機ケイ素化合物(A)は、一般式
1a−[R2(SiR2O)b−SiR2−R2−N+12n−D2a・nX- (II)
[式中、
1は、同じであるか、または異なっていてもよく、かつ水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン化物基、エポキシ官能性の基、基−NR*2または一価の有機基を表し、その際、R*は、同じであるか、または異なっていてもよく、かつ水素原子を表すか、または場合により置換されている一価の炭化水素基を表し、かつ基−NR*2は、アンモニウム塩として存在していてもよく、かつ
2は、式
−R2−(SiR2O)b−SiR2−R2−D1 (III)
の基であり、かつ
aは、0または1であり、
R、R1、R2、X-、bおよびnは、これらに関して上記で記載したものと同じものを表す]の化合物である。
【0026】
1が有機基である例は、アルキル基およびアルコキシ基であり、ハロゲン化物基である例は、−Clおよび−Brであり、エポキシ官能基である例は、基
【化2】

、窒素を含有する有機基、たとえばアミン、硫黄を含有する有機基、たとえばスルホネート基、および炭素に付加された有機アニオンまたは無機アニオン、たとえばカルボキシレートおよびハロゲン化炭化水素基である。基−NR*2の1例は−N(CH32−基である。
【0027】
有利には基D1は水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン化物基、アルキル基、アルコキシ基、エポキシ官能性の基、カルボキシレート基、エノラート基またはR*が上記のものを表す−NR*2−基であり、等に有利には水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ハロゲン化物基、基
【化3】

アセテート基またはプロピオネート基ならびに基−NR*2である。
【0028】
基R*の例は、水素原子および基Rに関して上記で記載した例である。
【0029】
有利には基R*は、水素原子であるか、または1〜18個の炭素原子を有する炭化水素基、有利には1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、特に有利にはメチル基およびベンジル基である。基R*は、しかしまた、これらの基から誘導される二価の基であってもよく、たとえば2つの基R*は、窒素原子と共に環を形成する。基R*が置換された炭化水素基である場合、置換基としてヒドロキシ基が有利である。
【0030】
本発明により使用される式(II)の有機ケイ素化合物(A)は、環式化合物であってもよい、つまりaが0であってもよく、またはaがそのつど1である線状の化合物であってもよい。
【0031】
有利にはaは1である。
【0032】
特に有利には本発明により使用される有機ケイ素化合物(A)は、aが1であり、R2が−(CH23OCH2−、−(CH23OCH2−CH(OH)−CH2−または−(CH23OCH2−CH[−CH2(OH)]−およびD1が−Cl、−N(CH32、−N[(CH32H]+−Cl-または
【化4】

である式(II)の線状ポリマーである。
【0033】
本発明により使用される有機ケイ素化合物(A)は、
【化5】

【0034】
【化6】

【0035】
【化7】

であり、ここで、シクロヘキシル基に存在するCl−および−N(CH32−置換基は、相互に無関係に、−CH2CH2−基に対して4−位のみでなく、3−位に来ることもあり、かつポリマー化合物に関する数値範囲としての指数n′およびb′に関する記載は、極めて広い分子量分布で理解すべきであり、ならびに、US特許第6,730,766の第3欄、第58行目〜第4欄、第36行目に挙げられた例は、本発明の開示内容に含めるものとする。
【0036】
本発明により使用される有機ケイ素化合物(A)は、そのつど25℃で、有利に103〜108mPas、特に有利には104〜5×107mPasの粘度を有する。
【0037】
本発明により使用される有機ケイ素化合物(A)は、市販の製品であるか、もしくはたとえば相応するエポキシ官能性シランおよび/またはシロキサンと、ジアルキルアンモニウム塩、たとえばジメチルアンモニウムクロリドとの反応により、または相応するアミノ化合物と、アルキルハロゲン化物との反応により、公知の方法によって製造することができる。
【0038】
「溶剤」という名称は、本発明の意味では、全ての成分がこの溶剤中に溶解しなくてはならないことを意味するものではない。
【0039】
本発明により使用される溶剤(B)は、水(B1)であるか、または1より大(20℃)のデバイの電気双極子モーメントを有する極性の有機溶剤(B3)であり、特に有利には水、一価もしくは多価のアルコールである。
【0040】
溶剤(B1)として、任意の水を使用することができ、その際、溶剤(B1)は、水中に当然存在するその他の物質、たとえば無機物、細菌、微量元素、溶解したガス、浮遊粒子状物質等、または水を使用するために、もしくは特別な効果を達成するために一般に添加されうる物質を含有していてもよい。
【0041】
溶剤(B1)のための例は、天然の水、たとえば雨水、地下水、井戸水、河川水および海水、化学的な水、たとえば脱塩水、蒸留水または(複数回)再蒸留された水、医療用もしくは医薬用の目的のための水、たとえば精製水(Aqua purificata;Pharm.Eur.3)、脱塩水、蒸留水、2回蒸留水、注射用水または保存用水(Aqua conservata)、ドイツの飲料水基準による飲料水およびミネラルウォーターである。
【0042】
有利には溶剤(B1)は、ドイツの飲料水基準による飲料水、脱塩水、蒸留水および精製水(Aqua purificata)、特に有利には脱塩水、蒸留水および精製水(Aqua purificata)である。
【0043】
溶剤(B)として適切なオルガノシロキサンは、たとえばアルキル基を有する線状もしくは環式のオルガノポリシロキサンであり、これは場合によりアミノ基、ヒドロキシル基、ポリエーテル基またはカルボキシ基により置換されており、たとえば3〜8個のジオルガノシロキシ単位からなる環式シロキサン、たとえばオクタメチルテトラシクロシロキサン、−トリメチルシロキシ−、アルコキシジメチルシロキシ−またはヒドロキシジメチルシロキシ末端の、側位および/または末端位に−CH2−NH2、−(CH23−NH2または−(CH23−NH−(CH22−NH2基を有し、かつ0.5〜11.5のアミン価を有するアミノ官能性のポリシロキサンであり、ここで、アミン価は物質1gを中和するために必要とされる1−n−HClのmLの数値であり、たとえばMe3SiO−(SiMe2O)95−{SiMe[(CH23−NH−(CH22−NH2]O}5−SiMe3、側位および/または末端位の−(CH23−OHまたは−(CH23−O−(CH22−OH基を有し、かつ少なくとも3質量%のカルビノール基含有率を有するカルビノール官能性ポリシロキサン、たとえばMe3SiO−(SiMe2O)30−{SiMe[(CH23−OH]O}30−SiMe3、側位および/または末端位のポリエーテル基を有し、かつ少なくとも10質量%のポリエーテル含有率を有するポリエーテル官能性のポリシロキサン、たとえばMe3SiO−(SiMe2O)70−{SiMe[(CH23−O−(C24O)25−(C36O)25H]O}5−SiMe3または側位および/または末端位の−(CH22−COOH、−(CH210−COOHまたは−(CH22−CH(COOH)−CH2−COOH基を有し、かつ少なくとも3質量%のカルボキシ基含有率を有するカルボキシ官能性ポリシロキサン、たとえばMe3SiO−(SiMe2O)30−{SiMe−[(CH22−CH(COOH)−CH2−COOH]O}30−SiMe3である。
【0044】
本発明の範囲で、オルガノポリシロキサンという概念は、ポリマー、オリゴマーならびにダイマーのシロキサンを包含する。
【0045】
本発明により使用される溶剤(B)が、オルガノシロキサンである場合、3〜8個のジオルガノシロキシ単位からなる環式シロキサン、前記のアミノ官能性ポリシロキサン、ポリエーテル官能性シロキサンおよびカルボキシ官能性ポリシロキサンが有利であり、その際、3〜8個のジオルガノシロキシ単位からなる環式シロキサンは特に有利である。
【0046】
オルガノシロキサン(B2)は有利には20℃および900〜1100hPaの圧力でワックス状の固体であるシロキサンであるか、または0.5〜10000000mm2/s(25℃)で液状のシロキサンであり、その際、液状のシロキサンは特に有利である。
【0047】
シロキサン(B2)が、液状のシロキサンである場合、そのつど25℃で、0.5〜100000mm2/sの粘度を有するシロキサンが有利であり、0.5〜1000mm2/sの粘度を有するシロキサンが特に有利である。
【0048】
本発明により使用される極性の有機溶剤(B3)の例は、一価もしくは多価のアルコール、たとえばメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1,4−ブタンジオール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、1,5−ペンタンジオール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、1−デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルおよびジエチレングリコールモノブチルエーテル、脂肪族飽和ポリエーテル、たとえばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ−THFおよびこれらのコポリマー、モノメチルエーテル、モノエチルエーテルおよびモノブチルエーテルならびに脂肪族飽和ポリエーテルのモノアクリルエステル、線状もしくは環式エーテル、たとえばジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフランまたはジオキサン、線状もしくは環式ケトン、たとえばアセトンまたはジイソプロピルケトン、カルボン酸、たとえばギ酸、酢酸またはプロピオン酸、カルボン酸エステル、たとえば酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステルまたは酢酸ブチルエステル、線状もしくは環式のカーボネート、たとえば塩素化された炭化水素、たとえば塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンまたはクロロベンゼンのジメチルカーボネートまたはエチレンカーボネート、非プロトン性の極性溶剤、たとえばアセトニトリル、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロ−1,3−ジメチル−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPT)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホランまたはCO2、ならびに有機イオン液体、たとえば1,3−ジメチルイミダゾリウムメチルスルフェートまたは1−ブチル−4−メチルピリジニウムクロリドである。
【0049】
溶剤(B)として極性の有機溶剤(B3)を使用する場合、有利には成分(A)は本発明による組成物(組成物I)中で、成分(B)中に溶解して存在している。
【0050】
極性溶剤(B)として、水(B1)を使用する場合、これは本発明による組成物(組成物II)であり、特に使用される有機ケイ素化合物(A)の性質に応じて、有利には水溶液であるか、または水性分散液である。
【0051】
溶剤(B)として、極性オルガノシロキサン(B2)を使用する場合、本発明による組成物(組成物III)は、有利には、溶液または分散液であり、その際、後者の場合には有利にはシロキサン(B2)は、連続相である。
【0052】
溶剤(B)として無極性オルガノシロキサン(B2)を使用する場合、本発明による組成物(組成物IV)は、有利には分散液であり、その際、後者の場合には、有利にはシロキサン(B2)は連続相である。
【0053】
本発明による組成物は、そのつど、本発明による組成物の全質量に対して、溶剤(B)を有利に1〜99質量%、特に有利には10〜90質量%の量で含有している。
【0054】
本発明により場合により使用される界面活性剤(C)の例は、任意の界面活性剤、たとえば従来、分散液を製造するために使用されていた乳化剤である。この場合、成分(C)は、純粋な形で使用することも、水または有機溶剤中の成分(C)1種類または数種類の溶液として使用することもできる。
【0055】
適切な非イオン性乳化剤(C)の例は、10〜22個の炭素原子を有する脂肪酸のソルビタンエステル、10〜22個の炭素原子を有し、かつ35質量%までのエチレンオキシド含有率を有する脂肪酸のポリオキシエチレンソルビタンエステル、たとえばソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノミリステート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレートまたはソルビタントリオレートのエチレンオキシド縮合物、芳香族環に6〜20個の炭素原子を有し、かつ95質量%までのエチレンオキシド含有率を有するフェノールのポリオキシエチレン誘導体、たとえばドデシルフェノール、ミリスチルフェノール、オクチルフェノールまたはステアリルフェノールのエチレンオキシド縮合物、8〜22個の炭素原子を有し、95質量%までのエチレンオキシド含有率を有する脂肪酸または脂肪アルコールのポリオキシエチレン縮合物、たとえばラウリルアルコール、ステアリルアルコールまたはイソトリデシルアルコールのエチレンオキシド縮合物、10〜22個の炭素原子を有し、かつ95質量%までのエチレンオキシドを有するグリセリンの脂肪酸モノエステルのエチレンオキシド縮合物;10〜22個の炭素原子を有する脂肪酸のモノ−もしくはジエタノールアミド、6〜20個の炭素原子を有する脂肪イミダゾリン、たとえばココイミダゾリン、セチルイミダゾリン、1−ヒドロキシエチル−2−ヘプタデセニルイミダゾリンまたはココスルホイミダゾリン、ポリビニルアルコールからポリビニルアセテートのケン化により製造可能なもの、ならびにリン酸エステルである。
【0056】
適切なアニオン性乳化剤(C)の例は、アルキル基中に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリールスルホネート、たとえばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムまたはドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、8〜22個の炭素原子を有する脂肪スルフェート、たとえばナトリウム−、カリウム−またはトリエタノールアンモニウムドデシルスルフェートもしくは−ステアリルスルフェート、10〜22個の炭素原子を有するアルキルスルホネート、たとえばドデシルスルホン酸ナトリウムまたはドデシルスルホン酸カリウムもしくはステアリルスルホン酸ナトリウムまたはステアリルスルホン酸カリウム、8〜22個の炭素原子を有する脂肪酸セッケン、たとえばトリメチルドデシルアンモニウムクロリド、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウムまたはミリスチン酸カリウム、ジアルキルスルホコハク酸のアルカリ金属塩、ならびに10〜22個の炭素原子を有し、かつ95パーセントまでのエチレンオキシドを有するカルボキシル化、エトキシル化アルコールのアルカリ金属塩である。
【0057】
カチオン性乳化剤(C)の例は、10〜22個の炭素原子を有する有機脂肪アンモニウム化合物であり、たとえばトリメチルステアリルアンモニウムメトスルフェート、および10〜22個の炭素原子を有する脂肪モルホリンオキシドである。
【0058】
両親媒性乳化剤(C)の例は、10〜22個の炭素原子を有する脂肪アミノベタインおよびアミドベタイン、たとえばデシルアミノベタイン、10〜22個の炭素原子を有する脂肪アミドスルホベタイン、たとえばココアミドスルホベタインまたはオレイルアミドベタイン、ならびに10〜22個の炭素原子を有する脂肪アミノオキシド、たとえばn−ココモルホリンオキシド、デシルジメチルアミンオキシドおよびココアミドジメチルアミンオキシドである。
【0059】
同様に乳化剤(C)として使用することができる無機固体の例は、高分散性ケイ酸またはベントナイトであり、たとえばこれらはUS特許第6,605,351またはDE19742759Aに記載されている。
【0060】
有利には本発明により使用される界面活性剤(C)は、非イオン性、カチオン性またはアニオン性の乳化剤であるか、または無機の固体乳化剤であり、その際、非イオン性もしくはアニオン性の乳化剤が特に有利である。
【0061】
本発明による組成物は、成分(A)が、完全に成分(B)中で溶解しない場合には、たとえば溶剤(B)として無極性シロキサン(B2)を使用する場合には、有利には成分(C)を含有する。他方、成分(C)の使用は、成分(A)自体が乳化剤の特性を有している場合には省略することができる。
【0062】
本発明による組成物が界面活性剤(C)を含有している場合、これはそのつど有機ケイ素化合物(A)100質量部に対して、有利には0.1〜60質量部、特に有利には1〜40質量部の量で使用する。
【0063】
さらに本発明による組成物は、別の物質(D)として、任意の助剤または充填材、たとえばpH値を調整するための添加剤、たとえば塩基性物質または無機酸、触媒、消泡剤、起泡安定剤、レオロジー調節剤、増粘剤、着色剤、顔料、不透明化剤、難燃剤、レドックス安定剤、酸化防止剤、光保護剤、熱安定化剤、香料、においを防止するか、またはにおいを低減する物質、天然物質、たとえば植物抽出物または果物抽出物、ならびに無機もしくは有機ポリマー、たとえば高分散性ケイ酸を含有していてよい。
【0064】
有利には本発明による組成物中で場合により使用される成分(D)は、触媒、pH値調節剤、着色剤、顔料、不透明化剤、難燃剤、レドックス安定剤、酸化防止剤、光保護剤、熱安定化剤、香料、においを防止するか、またはにおいを低減する物質、ならびに無機もしくは有機ポリマー、たとえば高分散性ケイ酸である。
【0065】
本発明による組成物がその他の物質(D)を含有する場合、これは、そのつど有機ケイ素化合物(A)100質量部に対して、有利には0.01〜100質量部、特に有利には1〜50質量部の量で使用する。
【0066】
本発明により使用される成分は、そのつどこのような成分1種類であっても、これらの成分2種類以上からなる混合物であってもよい。
【0067】
本発明による組成物は、有利に0.1〜90質量%、特に有利には1〜70質量%、特に1〜50質量%の固体含有率を有する。
【0068】
本発明の意味での固体含有率なる記載は、成分(A)および場合により(C)および場合により(D)の合計であると理解すべきである。
【0069】
本発明による組成物は、そのつど25℃で、有利に2〜12、特に有利には4〜10のpH値を有している。
【0070】
有利には本発明による組成物Iは、
(A)式(I)の単位を少なくとも1つ有する有機ケイ素化合物、
(B)1より大のデバイ(20℃)の電気双極子モーメントを有する極性有機溶剤および場合により
(D)その他の物質
を含有する組成物である。
【0071】
特に有利には本発明による組成物Iは、
(A)式(II)の有機ケイ素化合物、
(B)一価および多価のアルコールおよび場合により
(D)その他の物質
からなる組成物である。
【0072】
本発明による組成物Iは、そのつど25℃で有利に100000mm2/s、特に有利には1〜10000mm2/sの粘度を有する。
【0073】
有利には本発明による組成物IIは、
(A)式(I)の単位を少なくとも1つ有する有機ケイ素化合物、
(B)水、
場合により
(C)界面活性剤および
場合により
(D)その他の物質
を含有する組成物である。
【0074】
特に有利には本発明による組成物IIは、
(A)式(II)の有機ケイ素化合物、
(B)水、
場合により
(C)界面活性剤および
場合により
(D)その他の物質
からなる組成物である。
【0075】
本発明による組成物IIは、溶液である場合には、そのつど25℃で、有利に100000mm2/sまで、特に有利には1〜10000mm2/sまでの粘度を有する。
【0076】
本発明による組成物IIは、分散液である場合には、そのつど25℃で、有利に10000mm2/sまで、特に有利には1〜1000mm2/sまでの粘度を有する。
【0077】
有利には本発明による組成物IIIは、
(A)式(I)の単位を少なくとも1つ有する有機ケイ素化合物、
(B)極性シロキサン、
場合により
(C)界面活性剤および
場合により
(D)その他の物質
を含有する組成物である。
【0078】
特に有利には本発明による組成物IIIは、
(A)式(II)の有機ケイ素化合物、
(B)極性シロキサン、
場合により
(C)界面活性剤および
場合により
(D)その他の物質
からなる組成物である。
【0079】
本発明による組成物IIIは、溶液である場合には、そのつど25℃で、有利に0.5〜100000mm2/s、特に有利には1〜10000mm2/sの粘度を有する。
【0080】
本発明による組成物IIIは、分散液である場合には、そのつど25℃で、有利に10000mm2/s、特に有利には1〜2000mm2/sの粘度を有する。
【0081】
有利には本発明による組成物IVは、
(A)式(I)の単位を少なくとも1つ有する有機ケイ素化合物、
(B)無極性シロキサン
場合により
(C)界面活性剤および
場合により
(D)その他の物質
を含有する組成物である。
【0082】
特に有利には本発明による組成物IVは、
(A)式(II)の有機ケイ素化合物
(B)無極性シロキサン
(C)界面活性剤および
場合により
(D)その他の物質
からなる組成物である。
【0083】
本発明による組成物IVは、分散液である場合には、そのつど25℃で有利に10000mm2/s、特に有利には1〜1000mm2/sの粘度を有する。
【0084】
本発明による組成物を製造するために、そのつどの種類とは無関係に、全ての成分を原則として任意の順序で相互に混合することができる。混合は室温および周囲雰囲気の圧力で、つまり約900〜1100hPaで、任意の、および従来公知の方法により行うことができる。所望の場合には、混合をまた高めた温度で、たとえば30〜200℃の範囲の温度で行うことができる。
【0085】
当然のことながら、成分(A)は、本発明による組成物を製造する際に、現場で製造するか、または単離もしくはその後の後処理工程を行うことなく使用することができる。
【0086】
本発明による組成物が分散液である場合、エマルションもしくは分散液を製造するための任意の、従来公知の方法により該分散液を製造することができ、その際、有利にはまず成分(A)を成分(B)および場合により(C)と共に分散させ、かつ引き続き場合により使用される成分(D)を添加する。
【0087】
本発明による組成物は、容易に製造することができ、極めて高い貯蔵安定性を有し、ならびに黄変せず、かつ長期間にわたって殺生物作用を示す表面処理をもたらすという利点を有する。
【0088】
本発明による組成物はさらに、抗菌効果が高いという利点を有する。
【0089】
本発明による組成物はさらに、人にとって毒性でないという利点を有する。本発明により使用される有機ケイ素化合物(A)中でのシロキサン成分と第4級アンモニウム基の密度との適切な組み合わせにより、本発明による組成物はそれ自体としては低い濃度でも、良好な環境相容性および低い毒性の潜在性と共に高い抗菌作用を有する組成物として構成することができる。
【0090】
もう1つの利点は、本発明による組成物において使用される有機ケイ素化合物(A)は、ヒドロキシ基以外にさらに、抗菌作用を有するポリマーを有機もしくはケイ素ベースのポリマーに持続的に組み込むために考慮することができる種々の官能基(たとえばエポキシ基、アミノ基またはクロロアルキル基)を有していてもよいことである。
【0091】
本発明による組成物は、従来、有機ケイ素化合物の溶液または分散液のために使用されていた全ての目的のために使用することができる。本発明による組成物は、工業製品の抗菌処理が分散液、エマルションおよび混合物であり、特にシリコーンタイプの表面効果が達成されるべきである全ての適用分野のために適切である。
【0092】
本発明のもう1つの対象は、本発明による組成物を処理すべき表面上に施与することを特徴とする、表面の抗菌処理の方法である。
【0093】
本発明による施与は、従来公知の方法により行うことができ、たとえば従来、そのつどの支持体の表面の処理のために一般に適用されている方法により行うことができる。本発明による方法によれば、本発明による組成物により処理すべき表面は、処理のために十分な時間にわたって処理される。これはたとえば本発明による組成物を支持体上に施与、噴霧、刷毛塗り、ナイフ塗布、フーラード塗布、被覆または貼り付けることにより、または支持体を本発明による組成物中に浸漬することにより、または同時押出もしくはブレンドすることにより行うことができ、その際、全ての場合において、その後の工程を引き続き行うことができる。あるいは本発明による方法は、本発明による組成物自体によるのでなく、本発明による組成物を含有する組成物を使用して実施することもでき、これはたとえば家庭用クリーニング剤または毛髪洗浄用組成物の場合に該当しうる。
【0094】
本発明による方法により処理することができる適切な支持体は、あらゆる種類の硬質もしくは軟質表面である。これは有利には天然もしくは合成繊維、テキスタイル織布および編物、テキスタイル平面構造、ティッシュ・ペーパーおよび織布、紙、皮膚、毛髪、皮革、塗装された表面または金属、ガラス、セラミック、ガラスセラミック、エナメル、鉱物材料、木材、コルク、プラスチックからなる表面、ならびに合成および天然のエラストマーである。本発明による方法により処理される表面は特に有利には、テキスタイル、ティッシュ・ペーパー、皮膚、塗装された表面、金属表面、ガラス、セラミック、鉱物材料、木材、プラスチックおよびエラストマーである。
【0095】
本発明による方法は、表面の抗菌処理が問題となる全ての分野において、たとえば天候にさらされる表面において、家庭用品および食料品の分野における表面および物品において、たとえば床、カッヘル、タイル、窓、冷蔵庫または冷凍庫、オーブン、玩具、乳児および幼児用品、包装、導管、容器またはフィルター、看護分野の表面および物品(病人看護、集中看護、未熟児看護または老人看護)および臨床分野(病院、医療措置または手術のための空間、隔離施設)、医療用の物品または製品、たとえば創傷用被覆、チューブ、滅菌フィルターまたは移植材料、衛生分野における表面および物品、たとえばトイレ、歯ブラシ、シャワー室またはシャワーカーテン、医療用の適用、たとえば消毒剤としての使用、ならびに防汚分野において適用することができる。
【0096】
有利な表面効果と抗菌処理との幅広い組み合わせが問題となる、本発明による方法の適用分野の別の例は、建築、建築物の保護および皮革における適用(たとえばファサード、壁、継ぎ目材料または建築材料もしくは皮革を、疎水化と組み合わせて抗菌処理する)、テキスタイルおよびティッシュにおける適用(たとえば糸、繊維、テキスタイル、織布、紙などを、柔軟化、親水化、帯電防止特性および改善された直接性と組み合わせて抗菌処理する)、化粧品の適用、特にヘアケア分野およびスキンケア分野(たとえば抗菌作用と、改善された直接性、改善された手触りおよび毛髪の光沢、毛髪の帯電の低減、ブラッシング力の低減、枝毛、乾燥および構造を損なう環境による影響に対するケラチン繊維の一般的な保護、快適な肌触り、化粧品の粘着性の低減、顔料または充填材の凝集傾向の低減、ならびにたとえば化粧品の耐水性の改善につながりうる、疎水性であるが、しかし通気性のあるバリアの形成との組み合わせ)、ならびにポリッシングおよびホームケアの適用(たとえば光沢の強化と組み合わされた表面の抗菌処理、水の皮膜の乾燥時間の低減、直接性の改善および生成物の成形性)である。
【0097】
表面を処理するための本発明による方法は、有利に−100℃〜+300℃、特に有利には−30〜+200℃の温度および周囲雰囲気の圧力、つまり約900〜1100hPaで実施する。しかし所望の場合には、これより高いか、またはより低い圧力を適用することができる。
【0098】
本発明による方法は、あらゆる種類の表面を抗菌処理することができるという利点を有し、その際、抗菌特性は場合により持続的であってよい。これは有利には、極めて広い範囲で、かつ多数の微生物、たとえばグラム陽性菌およびグラム陰性菌、菌類、酵母類および藻類にわたって有効な真の殺生物作用である。さらに、この殺生物効果ならびに作用の限界は、本発明により使用される有機ケイ素化合物(A)のシロキサン単位を単に変更することによって適切に調整することができ、その際、活性成分は常にポリマーに結合しており、ひいては高等生物に関して低い生物学的利用能を有している。
【0099】
本発明による方法はさらに、多数の追加の、部分的に恒久的な表面効果につながるという利点を有するが、これは従来、複数の生成物を組み合わせることによって達成していたことである。たとえば処理した表面は、他に例のないやり方で抗菌特性以外に、その他の肯定的な特性、たとえば柔らかい触り心地、親水性、帯電防止特性、処理工程における直接性の改善、ブラッシング力の低減、表面乾燥の促進、光沢等を付与することができる。たとえば本発明による組成物もしくは本発明による方法は、セルロース含有編織布またはティッシュ織物を極めて良好に柔軟化し、同時に高い親水性および微生物に対する抵抗性を達成することができる。同様に、本発明による組成物もしくは本発明による方法によって、たとえばポリエステルベースの繊維および織布を同時に半恒久的に柔軟化し、親水性にし、抗菌性かつ帯電防止性にすることができる。
【0100】
さらに本発明による方法は、黄変せず、かつ長期間にわたって殺生物作用を示す表面処理が得られるという利点を有する。
【0101】
以下に記載する実施例では、全ての粘度の記載は温度25℃に対するものである。その他の記載がない限り、以下の例は周囲雰囲気の圧力、つまり約1000hPaおよび室温、つまり約23℃で、もしくは室温で成分を混合したときに付加的な加熱または冷却を行うことなく調整される温度で実施した。さらに、全ての部およびパーセントの記載は、その他の記載がない限り、質量に対するものである。
【0102】
実施例において、以下の略号を使用した:
乳化剤−A:イソトリデシルアルコール−ポリエチレンオキシド−エーテル、約10のエチレンオキシド単位、水中85%(ドイツ国在BASF AG社から商品名Lutensol(R) TO 109で市販)、
乳化剤−B:ラウリル硫酸アンモニウム、水中40%(ドイツ国在Cognis社から商品名Texapon(R) Aで市販)、
乳化剤−C:イソトリデシルアルコール−ポリエチレンオキシド−エーテル、約5のエチレンオキシド単位(ドイツ国在BASF AG社から商品名Lutensol(R) TO 5で市販)。
【0103】
抗菌作用に関する試験を以下のとおりに実施した:
抗菌作用に関する試験を、4つのグラム陽性菌ならびに3つのグラム陰性菌、6つの菌類および2つの酵母株ならびに1つの藻類の株を用いて実施した(第1表)。使用される全ての微生物は市販されている。必要とされる培地、栄養液および寒天プレートの製造もしくは微生物の培養は、微生物に関して標準的な手順により当業者に公知の方法で行った。使用される本発明による組成物は、試験の前にオートクレーブ中120℃で(30分間)滅菌し、外来の微生物による相互汚染を防止した。
【0104】
【表1】

【0105】
抗菌作用を試験するために、該当する微生物の「マスタープレート」から、滅菌した白金耳(Impfoese)を用いて単コロニーまたは菌糸を取り出し、一文字の形(Strichform)で寒天プレート上に塗沫した。引き続きこれに対して垂直に、オートクレーブ処理した本発明による組成物を、接種痕と試験すべき組成物とが十文字の配置となるように少量乗せた。本発明による組成物によって覆われない接種痕の部分において明らかな成長が見られるまで、該プレートをそのつどの試験株にとって一般的な温度で培養した。微生物抑制の程度は、露出している部分と、接種痕の、本発明による組成物が存在する部分の下もしくはその部分に直接隣接する部分の成長における差から、目視で評価することができる。
【0106】
例1
ジメチルアンモニウムクロリド286.4gを水1000ml中に溶解し、1,3−ビス(3−グリシドキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン1200gを添加し、かつ該混合物を良好に攪拌しながら還流下で加熱した。反応混合物を105〜110℃で2時間攪拌し、その際、反応バッチは濁った無色から清澄な黄色に変化した。1H−NMR−分光分析による試験は式
【化8】

に相応する、平均して約18〜20の繰返単位を有するポリ第4級ポリシロキサンの形成を証明している。
【0107】
こうして得られた水溶液は、約60質量%の固体含有率を有しており、かつ890mm2/sの粘度を有していた(例1からの組成物)。
【0108】
こうして得られた例1からの組成物の抗菌作用を試験した。結果は第2表に記載されている。
【0109】
【表2】

【0110】
++微生物の成長を極めて強力に抑制、部分的に抑制帯域を有する
+強い抑制
+/−弱い抑制
−抑制しない。
【0111】
第2表から読み取ることができるように、例1からの組成物は強い抗菌特性を有しており、これは、抗菌性の抑制の有効性に関する以下の試験が示しているように、著しく希釈してもなお顕著である。
【0112】
抗菌性の抑制の有効性:
上記で製造した例1からの組成物にさらに水を添加することによって、第3表に記載されている固体含有率になるまで希釈した(例1からの希釈組成物)。引き続き、上記に記載したような抗菌活性に関する試験を行った。
【0113】
【表3】

【0114】
++微生物の成長を極めて強力に抑制、部分的に抑制帯域を有する
+強い抑制
+/−弱い抑制
−抑制しない。
【0115】
第3表から読み取ることができるように、例1からの希釈組成物は、低い濃度でも著しい抗菌活性を示す。グラム陽性菌の成長は、約0.2質量%の濃度から抑制され、グラム陰性菌および酵母に関しては作用限界が約0.5質量%であり、菌類の場合はこれに対して約1質量%であった。しかし選択された個別の事例および藻類では、微生物の成長はすでにはるかに低いオルガノポリシロキサン濃度で抑制された(B、F、G、H、J、OおよびP)。
【0116】
大腸菌(B)およびミクロコッカス・ルテウス(F)に対する例1からの組成物の最低抑制濃度(MIC)の測定は、当業者に公知の方法で古典的な液体培養試験で行った。培養液に例1からの本発明による組成物をそのつどの濃度で添加し、定義された数の、前培養に由来する微生物を接種し(OD600=0.01;OD600:600nmでの光学密度)および30℃もしくは37℃で24時間培養した。その後、そのつど溶液200μlを寒天プレート上に施与し、さらに24時間培養し、かつコロニーの数を数えた。比較対照として、例1からの組成物を添加しなかった培養液を用いた。試験溶液および比較溶液中での生細胞数と相関させることにより、そのつどの微生物に対する最低抑制濃度(MIC)を導き出した。例1からの組成に関して、絶対MICは大腸菌に関しては200質量ppmであり、かつM.luteusに関しては20質量ppmであった。
【0117】
例2〜4
シロキサンI)の製造:
水900ml中にジメチルアンモニウムクロリド125gを溶解し、ジメチルシロキシ単位と3−グリシドキシプロピルジメトキシシロキシ単位とからなり、エポキシ含有率2.4ミリモル/gおよび粘度13mm2/s(25℃)を有する線状シロキサン1200gを添加し、かつ該混合物を良好に攪拌しながら還流温度に加熱した。反応混合物を100〜110℃で5時間攪拌し、その際、反応バッチは濁った無色から、帯黄色に変化した。引き続き真空下に120℃で溶剤を除去した。反応生成物は、約1〜6×106mPa・sの粘度を有する黄色の高粘度の油状物であった。1H−NMR分光分析による試験により、式
【化9】

に相応する、平均して約30〜35の繰返単位を有するポリ第4級ポリシロキサンの形成が確認された。
【0118】
シロキサンII)の製造:
シロキサンI)の製造と同様に製造を実施し、その際、ジメチルアンモニウムクロリド76g、水160mlおよびジメチルシロキシ単位と3−グリシドキシプロピルジメチルシロキシ単位とからなり、エポキシ含有率1.6ミリモル/gおよび粘度20mm2/s(25℃)を有する線状シロキサン1100gを使用した。反応生成物は、粘度約0.5〜2.5×106mPa・sを有する黄色の高粘度の油状物である。1H−NMR分光分析による試験により、式
【化10】

に相応する、平均して約5〜15の繰返単位を有するポリ第4級ポリシロキサンの形成が判明した。
【0119】
シロキサンIII)の製造:
シロキサンI)の製造と同様に製造を実施し、その際、ジメチルアンモニウムクロリド22.2g、ジメチルシロキシ単位と3−グリシドキシプロピルジメチルシロキシ単位とからなり、エポキシ含有率1.6ミリモル/gおよび粘度80mm2/s(25℃)を有する線状シロキサン1000gならびに溶剤として水140mlおよびi−プロパノール350gを使用した。反応生成物は、約1〜3×106mPa・sの粘度を有する、ほぼ無色の高粘度の油状物である。1H−NMR分光分析による試験により、式
【化11】

に相応する、平均して約3〜5個の繰返単位を有するポリ第4級ポリシロキサンの形成が判明した。
【0120】
本発明による組成物を製造するために、第4表に記載されている成分を、たとえば「ウルトラ・ツラックス」のような乳化装置または溶解装置を用いて相互に混合し、かつ分散させた。こうして得られた第4級窒素基を有する高分子オルガノポリシロキサンの水性エマルションは、水でさらに希釈可能であり、かつ室温で6ヶ月以上安定していた。
【0121】
【表4】

【0122】
こうして得られた組成物の抗菌作用を試験した。結果は第2表にまとめられている。
【0123】
例5〜7
本発明による組成物を製造するために、第5表に記載されている成分を、以下の記載に従って相互に混合するか、もしくは反応させた。使用されるエポキシシランは、
a)ジメチルシロキシ単位と3−グリシドキシプロピルジメチルシロキシ単位とからなり、エポキシ含有率2.4ミリモル/gおよび粘度13mm2/sを有する線状ポリシロキサン、
b)ジメチルシロキシ単位と、3−グリシドキシプロピルジメチルシロキシ単位とからなり、エポキシ含有率1.6ミリモル/gおよび粘度20mm2/sを有する線状ポリシロキサン
c)ジメチルシロキシ単位と、3−グリシドキシプロピルジメチルシロキシ単位とからなり、エポキシ含有率0.5ミリモル/gおよび粘度80mm2/sを有する線状ポリシロキサン
であった。
【0124】
【表5】

【0125】
ジメチルアンモニウムクロリドと水とからなる溶液を、撹拌下にエポキシシラン、乳化剤ならびに場合により補助溶剤と共に混合し、かつ還流温度に加熱した。110℃で5時間攪拌し、その際、濁った出発混合物が清澄になり、粘度が容易に上昇した。引き続き、存在する場合には、i−プロパノールを真空下で除去し、かつ混合物を水により希釈することによって所望の固体含有率に調整した。こうして得られた、第4級窒素原子を有する高分子オルガノポリシロキサンの水性エマルションは水でさらに希釈することができ、かつ室温で3ヶ月以上安定していた。
【0126】
疎水性ポリエステル(PES)織布およびポリプロピレン(PP)フリースの帯電防止処理および親水化
未処理のウェブ製品(Webware)(ポリエステル(PES)織布100%、疎水性、ポリプロピレン(PP)フリース、疎水性)を使用し、これらを前処理のためにそのつど2回、シリコーン不含の粉末ヘビーデューティー洗剤(Pulvervollwaschmittel)を用いて95℃で洗浄した。
【0127】
処理のために、そのつど酢酸でpH4に調整した例5および6からの組成物に織布試料を浸漬し、2本ロールフーラード中で、60%(PES織布)もしくは85%(PPフリース)の処理液吸収率まで圧搾し、張設し、かつ110℃で3分間乾燥させた。引き続き、該製品を空調室中少なくとも12時間、23℃および空気湿度50%で調温調湿した。
【0128】
A)疎水性PES織布の帯電防止処理
処理したPES織布の静電特性の測定を、ELTEX社の電界測定装置Elektrofeldmeter EMF57を用いて行った。荷電電圧は、全ての試料において6.5kVであった。放電の開始からのそのつどのピーク値に対する50%もしくは90%の放電に関して放電時間を測定した。第6表から明らかであるように、例5および6からの組成物は、抗菌性のみでなく、さらに、ポリエステル織布に優れた帯電防止特性を付与することができる。
【0129】
【表6】

【0130】
B)疎水性ポリエステル(PES)織布およびポリプロピレン(PP)フリースの親水化:
親水性の測定は、当業者に公知の方法で、水滴吸収時間(織布上に施与した水滴が素材によって完全に吸収されるまでの時間)により行ったが、その際、該処理の耐洗浄性を試験するために、5回の洗浄サイクル(40℃でシリコーン不含の粉末ヘビーデューティー洗剤を用いて洗浄)後に測定を繰り返した。そのつど5回の測定を実施し、かつ平均値を算出した。
【0131】
従来技術による市販の繊維柔軟剤と比較して、例5からの組成物は、PES織布にも、PPフリースにも、優れた親水性を付与する(第7表を参照のこと)。PES織布の場合、該処理は、明らかな耐洗浄性さえも有する。PPフリースにおける耐洗浄性は、たしかに若干、劣った結果となっている。しかしPPフリース上でも、5回の洗浄後に顕著な親水性の残留を認識することができ、これは少なくとも標準的な繊維柔軟剤による親水性に匹敵するものである。
【0132】
【表7】

*ポリエーテル官能性アミノシロキサンをベースとする親水性柔軟剤(Wacker−Chemie社(ドイツ国在)から商品名WETSOFT(R)で入手可)の水性エマルション。
【0133】
例8
例2〜4にその製造が記載されているシロキサンI 3.15gを、乳化剤−C 2.00gと良好に攪拌し、かつ脱塩水15gで、25.5質量%の固体含有率に調整した。清澄なマイクロエマルションが得られた。
【0134】
こうして得られた組成物は、アミノシロキサンベースの市販の、古典的な繊維柔軟剤と同様の優れた柔らかい手触りをタオル地に付与した。さらに、タオル地および木綿の織布上にも、ならびにCO/PES混紡織布上にも、優れた親水性が付与され、これは標準的な繊維柔軟剤により達成することがはるかに難しい程度のものであった。
【0135】
未処理の織布と比較して、製造された組成物によるテキスタイル織布の処理によって、アイロン掛けのしやすさは明らかに高まり、かつアイロン掛け時間は顕著に短縮される。
【0136】
生地の手入れのための適用
前処理のために、試験織布(タオル地のハンカチ、そのつど225g、木綿ブロードクロス(glatte Baumwollgewebe)、それぞれ20×160cm、50g、木綿/ポリエステル(CO/PES35/65)の混紡ブロードクロス、それぞれ15×100cm、45g)を、シリコーン不含の粉末ヘビーデューティー洗剤で2回、全洗浄工程において95℃で洗浄し、かつ引き続き、付加的にすすぎ工程で2回すすいだ。
【0137】
試験織布の処理は、水硬度3゜dHでのすすぎ工程において行った。このためにすすぎサイクルを1回、完全に実施し、その際、最後のすすぎ工程の開始前に、飲料水1.5L、酢酸(100%)20gならびに例8で製造されたものを直接、洗濯ドラムに添加した。適用技術的な試験の実施は、織布の乾燥および23℃および空気湿度60%での調温調湿後に一夜行った。
【0138】
A)タオル地の柔軟な触り心地:
柔軟な触り心地の評価は、10人の試験員により行い、この評価は0(=極めて硬質)〜3(=極めて柔軟)の触り心地の尺度に基づいてタオル地の柔らかさを評価した。これにより試料の触り心地の評価は、そのつど、この試料に該当する評点の平均値として算出した。
【0139】
B)タオル地、木綿織布およびCO/PES混紡織布の親水性:
親水性の測定は、当業者に公知の方法で水滴吸収時間により行った。
【0140】
C)CO/PES混紡織布のアイロン掛けのしやすさ(Easy Ironing):
アイロン掛けのしやすさ(easy ironing)の測定は、当業者に公知の方法で、長さ1mおよびその上に織布試料が張設される6゜の適切な傾斜面を滑り落ちるために熱いアイロンが必要とする時間である。
【0141】
D)木綿織布におけるアイロン掛け時間の短縮:
アイロン掛け時間は実質的に、織布のある箇所がアイロン掛けによりしわがなくなるために必要とされるアイロンの往復の数により決定される。未処理の木綿織布の場合、このためにアイロンを13回往復させる(100%)必要があり、処理した製品の場合は相応して少なかった。ここから算出された、アイロン掛け時間の短縮のパーセンテージが第8表に記載されている。
【0142】
【表8】

*Wacker−Chemie社(ドイツ国在)から得られるアミノ官能性ポリシロキサンの水性エマルション。
【0143】
例9
ティッシュ・ペーパーの柔軟化および親水化:
市販の被覆されていないトイレットペーパー(bath tissue)を使用した。例5、6および7に記載されている組成物をそのつど、ドクターブレードを用いてゴムマット上に施与し、かつここで特殊鋼ローラを用いたロール掛けにより、ティッシュ・ペーパー上に移し、その際、施与は両面に行った。空気中23℃および相対空気湿度60%で乾燥した後、その柔軟性に関して同様に作用物質を施与(シリコーンを施与)したティッシュ・ペーパーの評価を行った。手触りの評価は10人の試験員により実施し、紙試料あたり、0点(Aの柔軟な手触りは、Bのものに劣る)、0.5点(Aの柔軟な手触りは、Bのものに匹敵する)または1点(Aの柔軟な手触りは、Bのものよりも優れている)を与えることができた。手触りの評価の結果は、第9表に記載されている。
【0144】
【表9】

*Wacker−Chemei社(ドイツ国在)から商品名WETSOFT(R)CTAで入手可能なポリエーテル官能性アミノシロキサンをベースとする親水性柔軟剤の水性エマルション。
**ポリエーテル官能性ポリシロキサン(Wacker−Chemie社(ドイツ国在)から名称PULPSIL(R)950Sで入手可能)の35%の水溶液0.6部、およびアミノ官能性ポリシロキサン(Wacker−Chemie社(ドイツ国在)から名称WACKER(R)FINISH CT34Eで入手可能)の水性エマルション0.4部からなる水性混合物。
【0145】
ティッシュ・ペーパーの親水性に関して、本発明による組成物は、優れた作用レベルを有している。該組成物は従来技術による市販の標準的な製品よりも明らかに優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)式
−[R2(SiR2O)b−SiR2−R2−N+12n−・nX- (I)
[式中、
Rは、同じであるか、または異なっていてもよく、かつ1〜18個の炭素原子を有し、酸素原子により中断されていてもよく、置換されていてもよい一価の炭化水素基を表し、
1は、同じであるか、または異なっていてもよく、かつ1〜18個の炭素原子を有し、置換されていてもよい一価の炭化水素基を表すか、または橋かけアルキレン基の成分であってもよく、
2は、少なくとも2個の炭素原子を有し、少なくとも1個のヒドロキシル基を有するか、かつ/または1個もしくは複数個の酸素原子により中断されているか、かつ/または酸素を介してケイ素に結合している二価の炭化水素基を表し、
-は、有機もしくは無機のアニオンを表し、
bは、少なくとも1の整数であり、かつ
nは、少なくとも1の整数である]の単位を少なくとも1つ有する有機ケイ素化合物、
(B)次の群から選択される少なくとも1つの溶剤:
(B1)水、
(B2)成分(A)とは異なるオルガノシロキサン、または
(B3)1より大のデバイ(20℃)の電気双極子モーメントを有する極性有機溶剤、
場合により
(C)界面活性剤
および場合により
(D)その他の物質
を含有する組成物。
【請求項2】
有機ケイ素化合物(A)が、一般式
1a−[R2(SiR2O)b−SiR2−R2−N+12n−D2a・nX- (II)
[式中、
1は、同じであるか、または異なっていてもよく、かつ水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン化物基、エポキシ官能性の基、基−NR*2または一価の有機基を表し、その際、R*は、同じであるか、または異なっていてもよく、かつ水素原子を表すか、または置換されていてもよい一価の炭化水素基を表し、かつ基−NR*2は、アンモニウム塩として存在していてもよく、かつ
2は、式
−R2−(SiR2O)b−SiR2−R2−D1 (III)
の基であり、かつ
aは、0または1であり、
R、R1、R2、X-、bおよびnは、請求項1において記載したものと同じものを表す]の化合物であることを特徴とする、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
使用される溶剤(B)が、1より大のデバイ(20℃)の電気双極子モーメントを有する極性有機溶剤(B3)であることを特徴とする、請求項1または2記載の組成物(組成物I)。
【請求項4】
組成物Iが、
(A)式(I)の単位を少なくとも1つ有する有機ケイ素化合物、
(B)1より大のデバイ(20℃)の電気双極子モーメントを有する極性有機溶剤および
場合により
(D)その他の物質
を含有する組成物であることを特徴とする、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
使用される溶剤(B)が、水(B1)であることを特徴とする、請求項1または2記載の組成物(組成物II)。
【請求項6】
組成物IIが、
(A)式(I)の単位を少なくとも1つ有する有機ケイ素化合物、
(B)水
場合により
(C)界面活性剤および
場合により
(D)その他の物質
を含有する組成物であることを特徴とする、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
使用される溶剤(B)が、極性のオルガノシロキサン(B2)であることを特徴とする、請求項1または2記載の組成物。
【請求項8】
使用される溶剤(B)が、無極性オルガノシロキサン(B2)であることを特徴とする、請求項1または2記載の組成物。
【請求項9】
表面を抗菌処理する方法において、処理すべき表面上に、請求項1から8までのいずれか1項記載の組成物を施与することを特徴とする、表面を抗菌処理する方法。
【請求項10】
処理される表面が、天然繊維または人工繊維、テキスタイル織布および編物、テキスタイル平面構造物、ティッシュ・ペーパーおよび織布、紙、皮膚、毛髪、皮革の表面、塗装された表面または金属、ガラス、セラミック、ガラスセラミック、エナメル、鉱物材料、木材、コルク、プラスチックからなる表面ならびに人工および天然のエラストマーの表面であることを特徴とする、請求項9記載の方法。

【公表番号】特表2008−508375(P2008−508375A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522990(P2007−522990)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【国際出願番号】PCT/EP2005/007965
【国際公開番号】WO2006/013017
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】