説明

ポリ(エステルウレア)ポリマーおよび使用法

本発明は、血管ステントおよび代用骨のような硬組織代替インプラントの製造に有用である、高分子量の結晶性または半結晶性の生分解性および生体適合性のポリ(エステルウレア)(PEU)ポリマーを提供する。PEポリマーは、αアミノ酸を基にし、重縮合反応により製造される。PEポリマー組成物は、インサイチューでそのようなインプラントから放出される、ポリマー骨格に組込まれた治療的ジオールを含有し得る。鎮痛薬、抗生物質などのような生体活性物質が、ポリマーの生分解時にインプラントの周囲の組織へ放出されるように、ある特定のPEUポリマーへ共有結合されてもよい。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は概して、ポリマー組成物、特に植込み可能であるポリマーの医療用または外科用器具として有用な、生体吸収性結晶性ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
背景情報
周囲条件で安定であり、ならびに高い融点および軟化点を持つ生体吸収性ポリマーは、様々な医学的および薬学的応用について高く評価されている。ポリマー骨格に非毒性の天然のモノマーを組込んでいるポリマーも、そのような適用に好ましい。
【0003】
α-アミノ酸-ベースのポリマーの1つのクラスは、ポリ(エステルウレア)(PEU)であり、これはビス(α-アミノアシル)-α,ω-ジオール-ジエステルモノマーから調製される。モノマーは、1分子につき2個のエステル連結を有し、これらは非特異的(化学的)加水分解または特異的(酵素的)加水分解のいずれかを受ける。この種のモノマー(ビス(α-アミノアシル)-α,ω-ジオール-ジエステルの形のα-アミノ酸のジアミンモノマー)を生体吸収性の半-生理的PEUを調製するために使用する最初の試みは、1970年代後半に、S.J. Huangらにより成され(J. Appl. Polym. Sci, (1979) 23:429-437 (非特許文献1))、Mnが2000Daおよび融点が191〜199℃の範囲である、低分子量の粉末状ポリマーを得た。これらのPEUの様々な酵素による加水分解も、報告されている。
【0004】
更に遅れて、Yoneyamaらは、同じ経路による高分子量の半-生理的PEUの合成を報告した:遊離ビス(α-アミノアシル)-アルキレン-ジエステルの非生理的ジイソシアネートとの相互作用(Polym. Prepr. Jpn. (1994) 43:177 (非特許文献2))。場合によっては、粘度が最高0.7dL/gである高分子量PEUが得られた。
【0005】
Lipatovaらも、ビス(L-フェニルアラニル)-アルキレン-ジエステル、ジオールおよびジイソシアネートから半-生理的ポリ(エステルウレタン尿素)を合成した(Lipatova T.E. et al, Dokl. Akad. Nauk SSSR (1980) 251(2):368 (非特許文献3)、およびGladyr II, et al. Vysokomol. Soed. (1989) 31B(3):196 (非特許文献4))。しかし出発材料(例えば、α-ジアミノジエステル)の合成に関する情報は、提供されなかった。
【0006】
1997年に、Katsaravaら(Kartvelishvili T, et al. Macromol. Chem. Phys. (1997) 198:1921-1932 (非特許文献5))は、活性炭酸塩(例えば炭酸ジ-p-ニトロフェニル)がビス(α-アミノ酸)-α,ω-アルキレンジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩と相互反応されるプロセスである、活性重縮合を介した、ホモ-PEUの合成(ジイソシアネートを使用しない)の説明を発表した。この場合、低分子量ポリマーが得られた。これらのポリマーの低分子量は、分子内環化に起因し、ヒダントイン形成を生じ、その結果鎖の分断を生じる。ヒダントインは、殺生物剤として公知である。ヒダントイン環を含む生分解性PEUは、固有の抗菌活性を有することもある。
【0007】
しかし現在、最新の研究は、生分解性ポリマーシステムを研究することを目的としている。これらの薬物送達体は、しばしば加水分解プロセスを通じて、生物学的に許容される化合物へと分解し、それらに組込まれた薬剤を残す。この浸食プロセスは、バルク(例えば、マトリックスが均一に崩壊する、ポリ(無水物)の場合)またはポリマーの表面(そのため放出速度はポリマーの表面積に関係している)のいずれかで生じる。周知の脂肪族ポリエステルPLLAまたはPLGAの分解プロセスは、これらのポリマーの乳酸およびグリコール酸への分解に関連している。これらの酸は最終的には、クレブス回路により生体が容易に排泄することができる二酸化炭素および水へ還元される。
【0008】
疎水性α-アミノ酸、脂肪族α,ω-ジオール、および脂肪族(aliphatic)(脂肪族の(fatty))ジカルボン酸のような、非毒性ビルディングブロックからなる、通常のAA-BB型アミノ酸ベースの生体-アナログであるポリ(エステルアミド)(PEA)は、薬物放出および組織エンジニアリング適用のための生体材料として研究されている(G. Tsitlanadze et al. J. Biomater. Sci. Polymer Edn, (2004) 15:1-24 (非特許文献6))。PEAおよびPEURにおける制御された酵素分解および低速の非特異的加水分解の組合せは、これらのポリマーを薬物送達適用に関して魅力的にしている。特にPEAは、心臓血管系適用に関して有利な特性を伴い、血液および組織に適合可能であるように見える(K. DeFife et al. Transcatheter Cardiovascular Therapeutics-TCT 2004 Conference.ポスター発表、Washington DC. (2004) (非特許文献7))。
【0009】
ほとんどの薬物-溶出適用において、薬物は、ポリマーとの溶解または溶融により、物理的にマトリックス化される。薬物が側鎖基としてポリマーへ化学的に結合される別の方法も、報告されている。
【0010】
薬物または他の治療的物質が、生分解性ポリマーへ共有結合的に組込まれる場合、治療的ポリマーが形成される。そのような組成物は、治療的または緩和的生体活性を、望ましい力学的特性および物理的特性と組合せ、有用な治療的活性化合物へと分解する、合成ポリマーである。別の言い方をすると、これらの組成物は、薬物の活性を有するが、材料の物理的特性を有する。最近、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)が、ポリマー骨格へ組込まれている、新規治療的ポリエステル、ポリアミド、およびポリ(無水エステル)が報告されている(R.C. Schmeltzer et al. Biomacromolecules. (2005) 6(1):359-367 (非特許文献8))。このような組成物において、薬物放出は、ポリマー-薬物結合基の加水分解的切断または酵素的切断に直接左右される。「薬物としての骨格」を持つポリマーの利点の1つは、大量の薬物または治療的化合物を、その構造に組込むことができることである。
【0011】
当該技術分野におけるこれらの利点にもかかわらず、より良いポリマー組成物およびそのような組成物を含有する医療用インプラントが必要とされており、ここで治療的分子、例えば薬物および他の生体活性物質は、ポリマーへ共有結合されるか、またはポリマー骨格へ組込まれており、ならびに制御された速度での生体活性物質の放出は、ポリマー組成物の望ましい力学的特性および物理的特性と組合わせられる。
【0012】
【非特許文献1】J. Appl. Polym. Sci, (1979) 23:429-437
【非特許文献2】Polym. Prepr. Jpn. (1994) 43:177
【非特許文献3】Lipatova T.E. et al, Dokl. Akad. Nauk SSSR (1980) 251(2):368
【非特許文献4】Gladyr II, et al. Vysokomol. Soed. (1989) 31B(3):196
【非特許文献5】Kartvelishvili T, et al. Macromol. Chem. Phys. (1997) 198:1921-1932
【非特許文献6】G. Tsitlanadze et al. J. Biomater. Sci. Polymer Edn, (2004) 15:1-24
【非特許文献7】K. DeFife et al. Transcatheter Cardiovascular Therapeutics-TCT 2004 Conference.ポスター発表、Washington DC. (2004)
【非特許文献8】R.C. Schmeltzer et al. Biomacromolecules. (2005) 6(1):359-367
【発明の開示】
【0013】
発明の概要
本発明は、完全に合成性で、従って作製が容易である、高分子量の結晶性および半結晶性ポリマーを配合するために使用することができる、生分解性ポリ(エステルウレア)ポリマー(PEU)ファミリーの発見を基にしている。これらのPEUは、植込み可能である外科用器具として、ならびに様々な薬学的および生物学的活性物質のヒトおよび他の哺乳動物への送達のために、有用である。本発明のPEUは、ポリマー鎖内に体の酵素により加水分解的に切断可能なエステル基およびアミノ酸を含む非毒性の天然のモノマーを組込んでいる。本発明のPEUは、公知のポリ(エステルアミド)(PEA)およびポリ(エステルウレタン)(PEUR)とは対照的に、結晶性または半結晶性であり、ならびに力学的特性、化学的特性および生分解特性の利点を有する。例えば本発明のPEUは、高い力学的強度を特徴とし、ならびに本発明のポリマーの加水分解は、加水分解酵素のような、生理的条件下で存在する酵素により触媒され得る。
【0014】
従って1つの態様において、本発明は、一般構造式(I)または一般構造式(II)により記述される化学式を有する、PEUの少なくとも1種またはブレンドを含む生分解性ポリマーを提供する:


式中、mは、約0.1〜約0.9であり;pは、約0.9〜約0.1であり;nは、約10〜約150であり;R1は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ、(C2-C20)アルキレン、飽和もしくは不飽和の治療的ジオールの残基、または一般式(III)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式-断片であり:

;各R2は独立して、水素、(C1-C12)アルキル、または(C6-C10)アリールであり;個々のnまたはmモノマー中のR3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、または(C6-C10)アリール(C1-C6)アルキルであり;および、R4は独立して、(C2-C20)アルキル、または(C2-C20)アルケニルである。)。
【0015】
別の態様において、本発明は、一般構造式(I)および式(II)により記述される、本発明の結晶性または半結晶性PEUの少なくとも1種またはブレンドを含有するポリマー組成物を用いて製造された、生分解性外科用器具を提供し、ここで器具は植込み可能である。
【0016】
更に別の態様において、本発明は、一般構造式(I)により記述されるPEUポリマーを得るために、α-アミノ酸、p-トルエンスルホン酸一水和物;および、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレンジオール、飽和もしくは不飽和の治療的ジオール;または、一般式(III)により記述される1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式-断片から選択されたジオールの、重縮合反応により形成された、生体適合性で生分解性のPEUポリマーを提供する。
【0017】
更に別の態様において、本発明は、構造式(I)により記述される化学式を有するPEUを得るために、αアミノ酸、p-トルエンスルホン酸一水和物;および、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ、(C2-C20)アルキレンジオール、飽和もしくは不飽和の治療的ジオール;または、一般式(III)により記述される1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式-断片から選択された、ジオールを重縮合反応において反応させる工程による、生体適合性で生分解性のPEUポリマーの合成方法を提供する。
【0018】
発明の詳細な説明
本発明は、完全に合成性で、従って作製が容易である、結晶性および半結晶性ポリマーを配合するために使用することができる、高い力学的強度のポリ(エステルウレア)ポリマー(PEU)の発見を基にしている。これらのPEUは、植込み可能である外科用器具の製造において、ならびに一部の態様において、様々な治療的ジオールおよび生体活性物質のヒトおよび他の哺乳動物への送達に有用である。構造特性のために、本発明のPEUは生分解し、組込まれた治療的ジオールおよび生体活性物質を、制御された速度で放出する。
【0019】
従って1つの態様において、本発明は、一般構造式(I)または一般構造式(II)により記述される化学式を有するPEUの少なくとも1種またはブレンドを含む生分解性PEUポリマーを提供する:


式中、mは、約0.1〜約0.9であり;pは、約0.9〜約0.1であり;nは、約10〜約150であり;R1は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ、(C2-C20)アルキレン、飽和もしくは不飽和の治療的ジオールの残基、または一般式(III)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式-断片であり:

;各R2は独立して、水素、(C1-C12)アルキル、または(C6-C10)アリールであり;個々のnまたはmモノマー中のR3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、または(C6-C10)アリール(C1-C6)アルキルであり;および、R4は独立して、(C2-C20)アルキル、または(C2-C20)アルケニルである。
【0020】
1つの態様において、R4は独立して、(C3-C6)アルキルまたは(C3-C6)アルケニル、例えば、-(CH2)4-である。
【0021】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式-断片は、1,4:3,6-ジアンヒドロソルビトール(DAS)のように、D-グルシトール、D-マンニトール、およびL-イジトールなどの糖アルコールに由来することができる。1つの代替物のPEUポリマーにおいて、少なくとも1つのR1は、飽和もしくは不飽和の治療的ジオールの残基、またはDASのような、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式-断片である。更に別の代替物のPEUポリマーにおいて、少なくとも1つのR1は、DASのような、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片である。
【0022】
構造式(IおよびII)のPEUポリマーを説明するために本明細書において使用される用語「アミノ酸」および「α-アミノ酸」は、アミノ基、カルボキシル基、および本明細書において定義されたR3基のようなR基を含む化学化合物を意味する。本明細書において使用される用語「生物のα-アミノ酸」は、合成において使用されるアミノ酸が、フェニルアラニン、ロイシン、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、メチオニン、またはそれらの混合物から選択されることを意味する。コポリマーの製作において使用される追加の生物のアミノ酸は、リシンおよびオルニチンを含むが、ポリマー骨格において非指向性に(adirectionally)(すなわち、非生物学的配向に)配向され、その結果、そのアミノ酸のカルボキシル基は、ペプチド結合へ組込まれずに懸垂している。追加の非指向性アミノ酸は、本明細書に説明されるようにR4基を変えることにより、本発明の組成物へ組込むことができる。
【0023】
1つの代替物において、本発明のPEUポリマーの製作において使用されるα-アミノ酸の少なくとも1種は、生物のα-アミノ酸である。例えば、R3がCH2Phである場合、合成において使用される生物のα-アミノ酸は、L-フェニルアラニンである。R3がCH2-CH(CH3)2である代替物において、このポリマーは、生物のα-アミノ酸であるL-ロイシンを含有する。本明細書に説明されるようにモノマー内のR3を変えることにより、その他の生物のα-アミノ酸、例えばグリシン(R3がHである場合)、アラニン(R3がCH3である場合)、バリン(R3がCH(CH3)2である場合)、イソロイシン(R3がCH(CH3)-CH2-CH3である場合)、フェニルアラニン(R3がCH2-C6H5である場合)、またはメチオニン(R3が-(CH2)2SCH3である場合)、およびそれらの混合物も使用することができる。本発明のPEUポリマーの製作において使用される追加の生物のアミノ酸は、リシンおよびオルニチンを含むが、非指向性(すなわち、非生物学的配向)にポリマー骨格内で配向され、その結果、そのアミノ酸のカルボキシル基(これはH以外のR2により置換されてよい)は、ペプチド結合に組込まれずに懸垂している。追加の非指向性アミノ酸は、本明細書に説明されるように、R4基を変えることにより、本発明の組成物へ組込むことができる。
【0024】
更に別の代替の態様において、本発明のPEUポリマーの作製に使用されるポリマー内に含まれる様々なα-アミノ酸は全て、本明細書に説明されるように、生物のα-アミノ酸である。
【0025】
より更なる態様において、R3の少なくとも1つは更に、-(CH2)3-であってもよく、ここでR3は環化し、構造式(XIV)により記述される化学構造を形成する。

R3が-(CH2)3-である場合、ピロリジン-2-カルボン酸(プロリン)に類似しているα-イミノ酸が使用される。
【0026】
用語「アリール」は、少なくとも1個の環が芳香族である、約9〜10個の環原子を有する、フェニルラジカルまたはオルト-縮合した二環式炭素環式ラジカルを指すように、本明細書の構造式に関して使用される。ある態様において、1個または複数の環原子は、1個または複数のニトロ、シアノ、ハロ、トリフルオロメチル、またはトリフルオロメトキシにより置換することができる。アリールの例は、フェニル、ナフチル、およびニトロフェニルを含むが、これらに限定されるものではない。
【0027】
用語「アルケニレン」は、主鎖または側鎖内に少なくとも1個の不飽和結合を含む、二価の分枝したまたは分枝していない炭化水素鎖を意味するように、本明細書の構造式に関して使用される。
【0028】
本明細書において使用される用語「生体活性物質」は、ポリマー骨格に組込まれていない本明細書に開示された生体活性物質を意味する。1種または複数のそのような生体活性物質は、本発明のPEUポリマー組成物内に含まれてよい。本明細書において使用されるように生体活性物質に関して使用される用語「分散されている」は、生体活性物質が、例えば、組成物のPEUポリマー内の官能基へ、またはポリマー粒子の表面へ結合されているが、PEUポリマーの骨格には組込まれていないような、ポリマー内に分散、混合、溶解、均質化、および/または共有結合されている(「分散されている」)ことを意味する。骨格に組込まれた治療的ジオールをポリマー骨格に組込まれていない(それらの残基として)ものから識別するために、そのような分散されている治療的もしくは緩和的物質は本明細書において、「生体活性物質」と称され、ならびに以下に説明されるように、ポリマー複合体内に含まれるかまたはPEUポリマー組成物中に分散されてよい。そのような生体活性物質は、非限定的に、小型分子薬物、ペプチド、タンパク質、DNA、cDNA、RNA、糖、脂質、および細胞全体を含む。生体活性物質は、異なる治療目的および投与経路に対応するのに適した様々なサイズおよび構造を有する、ポリマー液滴、粒子、または外科用器具のような、ポリマー組成物中で投与される。
【0029】
本明細書において使用される「治療的ジオール」は、哺乳動物へ投与される場合に治療的または緩和的様式で、ヒトのような哺乳動物個体における生物学的プロセスに影響を及ぼす、合成的に生成されるか、または天然の(例えば内因性の)いずれかの、任意のジオール分子を意味する。そのような治療的ジオールの残基は、本発明のPEUポリマーの骨格内に含まれる。
【0030】
本明細書において使用される用語「治療的ジオールの残基」は、本明細書において説明されるような、治療的ジオールの部分を意味し、その部分は、ジオールの2個のヒドロキシル基を除外する。その「残基」を含む対応する治療的ジオールは、本明細書に記述されるPEUポリマーの合成において使用される。治療的ジオールの残基は、生分解によるポリマー骨格からの制御された様式での放出時に、インビボにおいて(またはpH、水性媒体などの同様の条件下で)、対応するジオールへ再構成される。本発明のPEUおよびそのようなポリマーを含有する外科用器具の生分解速度は、PEUポリマーの合成に使用されるポリマーのビルディングブロックの特性、およびそのポリマーが生分解に供される酵素含有溶液の特性のような因子により左右され、これらの特性は当該技術分野において公知であり、かつ本明細書において説明されている。
【0031】
本明細書において使用される用語「生体活性物質」は、ポリマー骨格に組込まれていない本明細書に開示されるような生体活性物質を意味し、およびポリマー骨格へ組込まれていない治療的ジオールは、本明細書において生体活性物質とも称される。1種または複数のそのような生体活性物質は、任意に本発明のPEUポリマー組成物中に含まれてもよい。
【0032】
生体活性物質に関して本明細書において使用される用語「分散されている」は、生体活性物質が、PEUポリマー組成物中の本発明のPEUポリマーに溶解、均質化もしくは混合されるか、および/または共有結合されること、例えば、組成物のポリマー中の官能基へ、またはポリマー粒子もしくは外科用器具の表面へ結合されているが、PEUポリマーの骨格へは組込まれていないことを意味する。
【0033】
本発明のPEUポリマーおよび組成物(例えば、そのようなポリマーを含む粒子または外科用器具)の説明に使用される用語「生分解性」は、ポリマーが、哺乳動物の体の通常の機能において無害かつ治療的である生成物へ分解されることを意味する。本発明のPEUは、生分解能を提供する、酵素的に加水分解可能な脂肪族エステル連結を有する結晶性ポリマーであり、典型的には大部分はアミノ基を末端とする鎖である。従って、骨格に天然の治療的ジオールの残基を含むPEUの場合、その分解生成物は、天然の治療的ジオールを含む。PEUポリマー組成物の分解生成物は、このポリマー中に分散されている任意の生体活性物質を含み得る。
【0034】
PEUポリマーおよび本発明のPEUポリマーを用いて作製された様々な組成物(例えば、粒子または器具)は、その表面で酵素作用により生分解する。プロテアーゼのような酵素溶液中または生理的条件下で、均一な浸食性の挙動が認められる(図6)。加えて本発明のPEUポリマーは、生理食塩水(PBS)媒体中で試験された場合に、加水分解を示さない。従って骨格に組込まれた治療的ジオールまたは分散されている生体活性物質の対象への放出は、長期間にわたるゼロ次速度過程に近似するスムーズレート(smooth rate)である。本発明のPEUポリマーは、例えば、ポリ(グリコール酸)もしくはポリ(乳酸)、またはそれらのコポリマーよりも、より長い貯蔵寿命をも有する。
【0035】
本発明の植込み可能の粒子および外科用器具において使用されるPEUポリマーは、選択された期間にわたり、組込まれた治療的ジオールまたは生体活性物質と周囲組織の連続的な接触をもたらすように、ポリマーの生分解速度を調整するよう設計することができる。例えば器具内のポリマーは、インプラントのサイズ、様々なアミノ酸残基により形成されたエステル連結の種類、および所定のポリマーの結晶化度(結晶性ポリマーは、半結晶性ポリマーまたは非晶質ポリマーよりもより遅く分解する)のような因子に依存して、約2週間〜約6年間から、より具体的には9週間〜2年間、または6ヶ月間〜1年間もしくはそれよりも長くから選択された期間にわたり分解すると考えられる。対象の内因性プロセスは、組込まれた治療的ジオールに加え、ポリマーに抱合された生体活性物質を放出するために、ポリマー骨格を生分解する。脆弱な治療的ジオールおよび任意の生体活性物質は、ポリマー植込み部位で局所的に、それらの半減期および残存性を増大させるために、よりゆっくりと生分解するポリマーにより保護されている。1つの態様において、PEUポリマーは結晶性であり、およびそれらで製造された外科用器具は、完全に生分解性である。
【0036】
本発明のPEUポリマー、およびそのようなポリマーを使用して製造された組成物、粒子、および器具を説明するために使用される用語「生体適合性」は、それらの生分解時に有害な分解生成物が生成されないことを意味する。本明細書において説明されているPEUポリマーは、プロテアーゼのような、生理的条件で一般的な酵素によりインビボにおいて分解され、最終的にアミノ酸、容易に代謝されたジオール、およびCO2、生体適合性化合物を生じる。従って本発明の半結晶性ポリマー組成物は、局所的または全身性のいずれかで、実質的に非炎症性である。加えて治療的ジオールの残基を組込む本明細書に開示されているポリマーは、酵素分解時に、再構成された治療的ジオール、および細胞を育成し得る必須アミノ酸を提供する。このポリマーの取込みは一般に安全であり:研究により、哺乳動物は、このポリマーの分解産物を代謝/クリアランスすることができることが示されている。従ってこれらのポリマーおよびそれらから製作された医療用インプラントは、対象に対し、インプラント部位および全身の両方で、実質的に非炎症性である。生体適合性は、本発明のPEUポリマー内のα-アミノ酸が全て生物のα-アミノ酸である場合に、最適化される。
【0037】
ポリマーの分解時にポリマー骨格から放出される治療的ジオールに加えて、ポリマー分子は、リンカーを介してそれらに抱合されたまたはポリマーへ共有結合された(すなわち、ポリマー骨格へ組込まれていない)生体活性物質を任意に有することができる。任意に、本発明のPEUのアミノ末端は、本明細書に説明されている有機酸、生体不活性の生物製剤(biologic)、他のポリマー、および生体活性物質を制約を伴わずに含むために、アセチル化されるか、または他の酸含有性生体適合性分子の抱合によりキャップ形成される。
【0038】
例えば、遊離カルボキシル基を持つポリマーは、容易にアミノ部分と反応し、これにより得られるアミド基を介してポリマーへペプチドを共有結合する。本明細書に説明されるように、生分解性ポリマーおよび望ましい生体活性物質は、この生体活性物質を生分解性ポリマーへ共有結合するために使用することができる、多くの相補的官能基を含んでよい。
【0039】
ヒトの治療に加え、本発明の植込み可能であるポリマー組成物およびそれらから製作される外科用器具は、ペット(例えば、ネコ、イヌ、ウサギおよびフェレット)、家畜(例えば、ブタ、ウマ、ラバ、乳牛および肉牛)および競走馬などの、様々な哺乳動物患畜の獣医学的治療における使用も意図されている。
【0040】
一般式においてα-アミノ酸を含むポリマーを作製する方法は、当該技術分野において周知である。例えば、式(I)または(II)のポリマーの態様に関して、α-アミノ酸は、ビス(α-アミノ酸)-α,ω-ジオール-ジエステルモノマーへ、例えば、α-アミノ酸のジオールHO-R1-OHによる縮合により転換される。結果的としてエステル結合が形成される。PEUポリマーの合成のために、炭酸の酸塩化物(ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン)は、ビス(α-アミノ酸)-アルキレンジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩との重縮合反応へと進行し、エステル結合および尿素結合の両方を有する最終ポリマーを得る。本発明において、少なくとも1種の治療的ジオールを、この重縮合プロトコールにおいて使用することができる。
【0041】
不飽和PEUは、R1に少なくとも1個の二重結合を含む、ビス(α-アミノ酸)-アルキレンジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩の界面溶液縮合により調製することができる。この目的に有用な不飽和ジオールは、例えば、2-ブテン-1,4-ジオールおよび1,18-オクタデセ-9-エン-ジオールを含む。不飽和モノマーは、アルカリ水溶液、例えば水酸化ナトリウム溶液中に反応前に溶解することができる。次にこの水溶液は、外側を冷却しながら、等モル量の単量体、二量体または三量体ホスゲンを含有する、例えばクロロホルムなどの有機溶媒相と、強く攪拌することができる。発熱反応が急激に進行し、(ほとんどの場合)有機溶媒中に溶解したままのポリマーを生じる。この有機相を、水で数回洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥、濾過、蒸発させた。収率約75%〜85%の不飽和PEUは、真空中、例えば約45℃で乾燥させることができる。
【0042】
p-トルエンスルホン酸の塩は、アミノ酸残基を含むポリマーの合成における使用に関して公知である。アリールスルホン酸塩は、遊離塩基の代わりに使用されるが、その理由はビス(α-アミノ酸)-アルキレン-ジエステルのアリールスルホン酸塩が、再結晶により容易に精製され、後処理を通じてアミノ基を非反応性のアンモニウムトシレートとするからである。界面重縮合反応において、求核アミノ基は、NaOH、NaHCO3、Na2CO3などの無機塩基の付加によるか、または稀にトリエチルアミンのような有機塩基中で、容易に露出され、そのためこのポリマー生成物は、高い収率で得られる。更にわずかに過剰なトリエチルアミンは、触媒として作用することもできる。
【0043】
例えば、構造式(I)のポリマーの合成に関して、懸垂したR3を伴うα-アミノ酸は、エステル化を通じ、例えば懸垂したR3を含むα-アミノ酸のジオールHO-R1-OHとの縮合により、ビス-α,ω-ジアミンへ転換される。結果的に、反応性α,ω-アミノ基を伴うジエステルモノマーが形成される。次にビス-α,ω-ジアミンが、カルボン酸の塩化物との重縮合反応へ進行し、エステル結合および尿素結合の両方を有する最終ポリマー(PEU)を得る。
【0044】
例えば、ビス(α-アミノ酸)ジエステルのジ-アリールスルホン酸塩(0.05mol)を、反応前に水70mL中の炭酸ナトリウム溶液13.25g(0.125mol)の溶液中に溶解し、激しく攪拌しながら、無水クロロホルム200mL中のホスゲン4.95g(0.05mol)の溶液に添加することができる。ポリ(エステルウレア)が、迅速に形成され、熱が発生する。この反応液を10分間勢いよく攪拌した後、クロロホルム相を蒸発させることができる。残存するポリマーを、水で数回洗浄し、真空乾燥することができる。
【0045】
ビス(α-アミノ酸)ジエステルのジ-アリールスルホン酸塩は、ベンゼンまたはトルエン中でα-アミノ酸、p-アリールスルホン酸(例えば、p-トルエンスルホン酸一水和物)、および飽和または不飽和のジオールを混合し、水の蒸発が停止するまで還流温度に加熱し、その後冷却することにより、調製することができる。この目的に有用な不飽和のジオールは、例えば、2-ブテン-1,3-ジオールおよび1,18-オクタデセ-9-エン-ジオールを含む。
【0046】
先に開示されている構造式(II)の高分子量生分解性ポリマーとして有用な不飽和ポリ(エステル-尿素)(UPEU)の合成を、ここで説明する。現在好ましい反応体は、リシンベンジルエステルのp-トルエンスルホン酸塩である。ベンジルエステル保護基は、官能性を付与するために除去されることが好ましいが、これは水素化分解によっては除去されてはならず、その理由は、水素化分解は所望の二重結合を飽和するからであり;むしろベンジルエステル基は、不飽和を保存する方法により、酸性基へ転換されなければならない。二重結合に存在するベンジル基を除去するために、トリフルオロ酢酸(CF3COOH)を使用することができる。あるいは、リシン反応体は、最終生成物において容易に除去され得るが不飽和は維持する、ベンジルとは異なる保護基により保護され、例えばリシン反応体は、t-ブチルにより保護することができ(すなわちこの反応体は、リシンのt-ブチルエステルであり得る)、生成物の酸による処理により不飽和を維持しながら、t-ブチルは、Hへ転換することができる。しかし、p-トルエンスルホン酸塩としてのt-ブチルエステルの合成はかなり問題がある。
【0047】
構造式(II)を有する不飽和化合物において、以下が保持される。アミノ置換されたアミノキシル(N-酸化物)ラジカルを持つ基、例えば4-アミノTEMPOは、カルボニルジイミダゾール、または好適なカルボジイミドを縮合剤として用い、結合することができる。本明細書に説明されるような生体活性物質などは、ポリマー組成物中の治療的ジオール残基は二重結合または三重結合を含まないことを条件として、任意に、二重結合官能性を介して、結合することができる。下記反応スキームにおいて示されるように、例えば、構造式(I)を有する本発明の高分子量半結晶性PEUは、クロロホルム/水システム中のビス-求電子性モノマーとしてホスゲンを使用することにより、界面で調製することができる:

L-リシンエステルを含みおよび構造式(II)を有するコポリ(エステルウレア)の合成は、同様のスキームで実行することができる:

例えばトルエン中のホスゲン(ClCOCl)(高毒性)の20%溶液(市販されている(Fluka Chemie, GMBH、Buchs、スイス))は、ジホスゲン(クロロギ酸トリクロロメチル)またはトリホスゲン(炭酸ビス(トリクロロメチル))のいずれかと置き換えることができる。より毒性の低いカルボニルジイミダゾールも、ホスゲン、ジホスゲン、またはトリホスゲンの代わりに、ビス-求電子性モノマーとして使用することができる。
【0048】
PEU合成の一般的手順
高分子量のPEUを得るために、モノマーの冷却溶液を使用する必要がある。例えば、水150mL中のビス(α-アミノ酸)-α,ω-アルキレンジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩の懸濁液に、無水炭酸ナトリウムを添加し、室温で約30分間攪拌し、約2〜0℃に冷却し、第一の溶液を形成する。平行して、クロロホルム中のホスゲンの第二の溶液を、約15〜10℃に冷却する。第一の溶液を、界面重縮合のための反応器に入れ、および第二の溶液を、一気に迅速に添加し、約15分間勢いよく攪拌する。その後クロロホルム相を分離し、無水Na2SO4上で乾燥し、濾過する。得られた溶液を更に使用するまで貯蔵することができる。
【0049】
製作された例示的PEUポリマーは全て、クロロホルム中の溶液として得られ、これらの溶液は貯蔵中は安定である。しかし一部のポリマー、例えば1-Phe-4などは、分離後はクロロホルム中で不溶性となり始める。この問題点を克服するために、ポリマーは、滑らかな疎水性表面上に注型(casting)し、クロロホルムを蒸発させ乾燥させることにより、クロロホルム溶液から分離することができる。得られたPEUには更なる精製は不要である。この手順で得られた例示的PEUの収量および特徴を、下記表1にまとめている。
【0050】
多孔質PEU調製の一般的手順
代用骨として有用な多孔質の骨様物質を得るために、1-L-Leu-4および1-L-Leu-6のようなL-LeuベースのPEUを、以下に説明される一般的手順を用い製造することができる。L-PheベースのPEUに適用される場合には、そのような手順は多孔質骨様物質の形成についてあまりうまくいかない。
【0051】
界面重縮合の直後に得られた、クロロホルム中のPEUの反応溶液または乳濁液(約100mL)を、ガラス製ビーカー、好ましくはPEUのビーカー壁への接着を低下させるためにジメチルジクロロシランにより疎水性に製造されたビーカー内で、約80℃〜85℃の水1,000mLへ攪拌しながら滴下する。ポリマー溶液は、水中で小さい液滴へわかれ、比較的激しくクロロホルムが蒸発する。クロロホルムが蒸発するにつれ、小さい液滴は、次第に緻密なタール状の塊にまとまり、これは粘着性のゴム状の生成物へ変換される。このゴム状の生成物を、ビーカーから取り出し、疎水性の円柱状ガラス製試験管に移し、これを約80℃で約24時間サーモスタットで制御した。次に試験管をサーモスタットから取り外し、室温に冷却し、破壊し、当該のポリマーを得た。得られた多孔質の棒を真空乾燥器に入れ、減圧下、約80℃で約24時間乾燥した。加えて、多孔質高分子物質を得るための当該技術分野において公知の手順はいずれも、使用することができる。
【0052】
前記手順により作製された高分子量多孔質PEUの特性は、表1にまとめた結果を生じた。
【0053】
(表1)式(I)のPEUポリマーの特性

*一般PEU式(I) 1-L-Leu-4=R1=(CH2)4, R3=i-C4H9
1-L-Leu-6=R1=(CH2)6, R3=i-C4H9
1-L-Phe-6:=.R1=(CH2)6, R3=-CH2-C6H5
一般式(III) 1-L-Leu-DAS=R1=1,4:3,6-ジアンヒドロソルビトール, R3=i-C4H
a) 粘度の低下は、DMFにおいて25℃および濃度0.5g/dLで測定した。
b) GPC測定は、DMF(PMMA)において行った。
c) Tgは、DSC測定からの第二加熱曲線から得た(加熱率10℃/分)。
d) GPC測定は、DMAc(PS)において行った。
【0054】
従って更に別の態様において、本発明は、αアミノ酸、p-トルエンスルホン酸一水和物;ならびに、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレンジオール、飽和もしくは不飽和の治療的ジオール;または、一般式(III)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式-断片から選択されたジオールの重縮合反応により形成された、式(I)の生体適合性で生分解性のポリマーを提供する。

【0055】
例えば、α-アミノ酸はL-リシンであってもよく、およびジオールは飽和または不飽和の治療的ジオールであってもよい。1つの態様において、ジオールは、例えばD-グルシトール、D-マンニトール、およびL-イジトールのような、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式-断片である。構造式(II)の本発明のポリマー組成物の形成に関して、重縮合反応は、例えばL-リシンベンジルエステルのような、α-アミノ酸ベンジルエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩を更に含む。
【0056】
構造式(I)の生分解性PEUポリマーおよびコポリマーは、1個のモノマーにつき1個のアミノ酸を含んでよく、結晶性または半結晶性であり、約2000〜約300,000の範囲の重量平均分子量を有し、典型的には25℃で自動式Ubbelohde毛管粘度計により測定された、約0.15dL/g〜約3.5dL/gの範囲、例えば0.4dL/g〜2.5dL/gの範囲の低下した粘度を有する。
【0057】
構造式(II)の生分解性PEUポリマーは、1個のモノマーにつき最大2個のアミノ酸を含んでよく、半結晶性または結晶性であり、約2000〜約300,000の範囲の重量平均分子量を有し、典型的には25℃で自動式Ubbelohde毛管粘度計により決定された、約0.15dL/g〜約3.5dL/gの範囲、例えば0.4dL/g〜2.5dL/gの範囲の低下した粘度を有する。
【0058】
更に別の態様において、本発明は、α-アミノ酸、p-トルエンスルホン酸一水和物;および、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレンジオール、飽和もしくは不飽和の治療的ジオール;または、一般式(III)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式-断片から選択されたジオールの重縮合反応を含む、式(I)の生体適合性で生分解性のポリマーの合成方法を提供する。

【0059】
この目的に関して好ましいα-アミノ酸はL-リシンであるが、本明細書に開示されている任意の他のアミノ酸を使用することができる。このポリマーに治療的特性を提供するために、ジオールは、本明細書に説明されるような、飽和または不飽和の治療的ジオールから選択することができる。あるいはジオールは、例えばD-グルシトール、D-マンニトール、またはL-イジトールのような、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式-断片から選択することができる。式(II)のポリマーの生成に関して、そのように生成された反応生成物は、更にαアミノ酸ベンジルエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩との重縮合反応に供される。1つの態様において、αアミノ酸ベンジルエステルは、L-リシンベンジルエステルであるが、本明細書に開示されている任意の他のアミノ酸を使用することができる。
【0060】
本発明のPEUポリマーは、様々な分子量で製作することができ、望ましい用途に適切な分子量は、ポリマービルディングブロックの賢明な選択およびポリマーに含まれる単位数の選択により、当業者により容易に決定される。従って、例えば好適な分子量は、約5,000〜約300,000、例えば約5,000〜約250,000、または約75,000〜約200,000、または約100,000〜約150,000のオーダーである。
【0061】
本明細書における分子量および多分散性は、ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される。より具体的には、数平均および重量平均分子量(MnおよびMw)は、例えば、高速液体クロマトグラフィーポンプ、Waters 486 UV検出器およびWaters 2410示差屈折率検出器を装備したモデル510ゲル浸透クロマトグラフィー(Water Associates, Inc., Milford, MA)を用いて決定される。N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)またはN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)中の0.1%LiClの溶液が、溶離液(1.0mL/分)として使用される。狭い分子量分布を有するポリスチレン(PS)またはポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)標準が、キャリブレーションに使用される。
【0062】
ポリマーのガラス転移温度(Tg)および融点(Tm)は、例えば、Mettler Toledo DSC 822e(Mettler Toledo Inc. Columbus, OH)示差走査熱量測定計を使用する示差走査熱量測定(DSC)によるような、当該技術分野において公知の任意の手段を用い決定することができる。測定に関して、本明細書において明らかにされた試料は、アルミニウム製パンの上に配置された。測定は、窒素流れ下で、走査速度10℃/分で実行された。PEUの元素分析は、Numega Labs, San Diego, CAにおいて行った。
【0063】
一般構造式(II)のポリマーは、生体活性物質のポリマーへの簡易(facile)共有結合を可能にする官能性を持つ。例えば、カルボキシル基を持つポリマーは、アミノ部分と容易に反応し、これにより、得られるアミド基を介しペプチドをポリマーへ共有的に結合することができる。本明細書に開示されるように、生分解性ポリマーおよびペプチドは、ペプチドの生分解性ポリマーへの共有結合に使用することができる、多くの相補的官能基を含むことができる。しかし、本発明の一般構造式(I)のポリマーは、生体活性物質のポリマーへの共有結合には適していない。
【0064】
本発明の構造式(II)のPEUは、PEU骨格上にビルトイン官能基を有し、およびこれらのビルトイン官能基は、他の化学物質と反応することができ、そのようなポリマーの官能性を更に拡大する、追加の官能基の組込みをもたらす。従って本発明の方法において使用されるそのようなポリマーは、先に修飾する必要なく、生体活性物質との反応が容易である。
【0065】
従って少なくとも1種の生体活性物質は任意に、多種多様な好適な官能基を介して、構造式(II)の生分解性ポリマーへ共有結合することができる。例えば生分解性ポリマーがアミノ酸を含む場合、アミノ酸のカルボキシル基は、ヒドロキシ、アミノ、チオなどの、生体活性物質上の相補的部分と反応するように使用することができる。例えば「March's Advanced Organic Chemistry, Reactions, Mechanisms, and Structure」第5版(2001);および、「Comprehensive Organic Transformations」第2版、Larock (1999)に、多種多様な好適な試薬および反応条件が開示されている。
【0066】
別の態様において、生体活性物質は、アミド、エステル、エーテル、アミノ、ケトン、チオエーテル、スルフィニル、スルホニル、ジスルフィド連結を介して、構造(II)のポリマーのいずれかに連結することができる。 このような連結は、当該技術分野において公知の合成手順を用い、好適に官能基化された出発材料から形成することができる。
【0067】
例えば1つの態様において、生体活性物質は、ポリマーのカルボキシル基(例えばCOOH)を介して、ポリマーへ連結することができる。特に、構造(II)の化合物(式中、R2=H)は、ペプチドのアミノ官能基またはヒドロキシル官能基と反応し、各々、アミド連結またはカルボン酸エステル連結により結合されたペプチドを有する、生分解性ポリマーを提供することができる。別の態様において、ポリマーのカルボキシル基は、ハロゲン化アシル、アシル無水物、「混合」無水物、または活性エステルへ転移することができる。別の態様において、ポリマー分子の遊離-NH2末端領域を、ペプチドが、ポリマーの側鎖カルボキシル基を介してのみ結合し、ポリマーの遊離端には結合しないことを確実にするために、アシル化することができる。例えば、本明細書に開示された本発明の結晶性組成物は、N-末端遊離アミノ基が無水RCOOCOR(式中、R=(C1-C24)アルキル)によりアシル化されているPEU(式I)から調製することができる。
【0068】
あるいは生体活性物質は、本明細書に説明されるリンカー分子を介して、PEUポリマーへ結合することができる。実際、生分解性ポリマーの表面疎水性を改善するため、生分解性ポリマーの酵素活性化への到達可能性を改善するため、および生分解性ポリマーの放出プロファイルを改善するために、リンカーを利用し、生体活性物質を生分解性ポリマーへ間接的に結合することができる。ある態様において、リンカー化合物は、分子量(Mw)約44〜約10,000、好ましくは44〜2000を有するポリ(エチレングリコール);セリンおよびβ、γ、またはδアミノ酸などの、アミノ酸;1〜100個の反復単位を伴うポリペプチド;および、任意の他の適当な低分子量ポリマーを含む。このリンカーは典型的には、約5Åから最大約200Å、ポリマーから生体活性物質を隔てる。
【0069】
より更なる態様において、リンカーは、式W-A-Q(式中、Aは、(C1-C24)アルキル、(C2-C24)アルケニル、(C2-C24)アルキニル、(C3-C8)シクロアルキル、または(C6-C10)アリールであり、ならびにWおよびQは、各々独立して-N(R)C(=O)-、-C(=O)N(R)-、-OC(=O)-、-C(=O)O、-O-、-S-、-S(O)、-S(O)2、-S-S-、-N(R)-、-C(=O)-であり、ここでRは独立してHまたは(C1-C6)アルキルである)の二価ラジカルである。
【0070】
前記リンカーを説明するために使用される用語「アルキル」は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ヘキシルなどを含む、直鎖または分枝鎖の炭化水素基を意味する。
【0071】
前記リンカーを説明するために使用される「アルケニル」は、1個または複数の炭素-炭素二重結合を有する、直鎖または分枝鎖の炭化水素基を意味する。
【0072】
前記リンカーを説明するために使用される「アルキニル」は、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を有する、直鎖または分枝鎖の炭化水素基を意味する。
【0073】
前記リンカーを説明するために使用される「アリール」は、6個〜最大14個の範囲の炭素原子を有する、芳香族基を意味する。
【0074】
ある特定の態様において、リンカーは、約2個〜最大約25個のアミノ酸を有するポリペプチドであってよい。使用のために企図される好適なペプチドは、ホモ-ポリ(アミノ酸):ポリ-L-リシン、ポリ-L-グルタミン酸、ポリ-L-アスパラギン酸、ポリ-L-ヒスチジン、ポリ-L-オルニチン、ポリ-L-トレオニン、ポリ-L-チロシン、ポリ-L-ロイシン、ポリ-L-リシン-L-フェニルアラニン、ポリ-L-アルギニン、ポリ-L-リシン-L-チロシンなどを含む。
【0075】
リンカーは、最初にポリマーまたは生体活性物質へ結合することができる。合成の間に、リンカーは、当業者に周知の様々な保護基を用い、保護されていない形または保護されている形のいずれかであることができる。保護されているリンカーの場合、リンカーの保護されていない末端は、最初にポリマーまたは生体活性物質へ結合することができる。次に保護基は、Pd/H2水素化分解、穏やかな酸または塩基による加水分解、または当該技術分野において公知のいずれか他の通常の脱保護法を用いて脱保護することができる。脱保護されたリンカーは次に、生体活性物質へ結合することができる。
【0076】
ポリマー/生体活性物質の連結
1つの態様において、本明細書に開示されている、および植込み可能である外科用器具の製造において使用されるような、生分解性の高分子量ポリマー組成物は、ポリマーへ直接連結された少なくとも1つの生体活性物質を有することができる。このポリマーの残基は、1つまたは複数の生体活性物質の残基へ連結することができる。例えばポリマーの1つの残基は、生体活性物質の1つの残基へ直接連結することができ、このポリマーおよび生体活性物質は各々、1個の開放原子価(open valence)を有する。あるいは、複数の生体活性物質、または生体活性物質の混合物が、ポリマーへ直接連結され得る。しかし各生体活性物質の残基は、ポリマーの対応する残基へ連結され得るので、1つまたは複数の生体活性物質の残基の数は、ポリマーの残基上の開放原子価の数を超えることはできない。
【0077】
本明細書において使用される「ポリマーの残基」は、1個または複数の開放原子価を有する構造(IまたはII)のポリマーのラジカルを意味する。ラジカルが生体活性物質の残基へ結合された場合に、生体活性が実質的に保持されるという条件で、ポリマーの任意の合成的に実現可能な原子または官能基(例えば、ポリマー骨格または懸垂した基上の)を取り除き、開放原子価を提供することができる。加えて、ラジカルが生体活性物質の残基へ結合された場合に、生体活性は実質的に保持されるという条件で、任意の合成的に実現可能な官能基(例えばカルボキシル)が、ポリマー上(例えば、ポリマー骨格または懸垂した基上)に作出され、開放原子価を提供することができる。望ましい連結を基に、当業者は、当該技術分野において公知の手順を使用し本発明のポリマーに由来することができる適宜官能基化された出発材料を選択することができる。
【0078】
例えば、生体活性物質の残基は、アミド(例えば、-N(R)C(=O)-または-C(=O)N(R)-)、エステル(例えば、-OC(=O)-または-C(=O)O-)、エーテル(例えば、-O-)、アミノ(例えば、-N(R)-)、ケトン(例えば、-C(=O)-)、チオエーテル(例えば、-S-)、スルフィニル(例えば、-S(O)-)、スルホニル(例えば、-S(O)2-)、ジスルフィド(例えば、-S-S-)、または直接(例えば、C-C結合)連結を介して、構造式(II)および(III)の化合物の残基へ連結することができ、ここで各Rは独立してHまたは(C1-C6)アルキルである。このような連結は、好適に官能基化された出発材料から、当該技術分野において公知の合成手順を用い形成することができる。望ましい連結を基に、当業者は、構造式(II)の化合物の残基に由来する、および当該技術分野において公知の手順を使用する生体活性物質の所定の残基に由来することができる、好適に官能性の出発材料を選択することができる。生体活性物質の残基は、構造式(II)の化合物の残基上の任意の合成が実現可能な位置に連結することができる。加えて本発明は、構造式(II)の化合物に直接連結された生体活性物質の複数の残基を有する化合物も提供する。
【0079】
ポリマー分子に連結することができる生体活性物質の数は、典型的にはポリマーの分子量に左右される。例えば構造式(I)の化合物(式中、nは約5〜約150、好ましくは約5〜約70、最大約150である)に関して、生体活性物質(すなわちその残基)は、ポリマー(すなわちその残基)へ、生体活性物質のポリマー末端基との反応により、直接連結することができる。不飽和ポリマーにおいて、ペプチド抗原は、ポリマーの二重(または三重)結合と反応することもできる。
【0080】
生体活性物質のポリマーからの放出速度に典型的に影響を及ぼす因子は、ポリマーの性質および量、ポリマー/生体活性物質の連結の種類、ならびにその配合物中に存在する追加物質の性質および量である。
【0081】
本発明の方法において使用される組成物は、「有効量」の関心対象の治療的ジオールまたは生体活性物質の残基を任意に含む。すなわち、症状を予防、軽減または根絶するために対象に十分な免疫学的反応を引き起こす量が、組成物中に含まれると考えられる。正確な量は、因子の中でも、とりわけ、治療される対象;治療される対象の年齢および全身の状態;対象の免疫系の抗体を合成する能力;望ましい治療的または緩和的治療の程度;治療される状態の重症度;および、組成物中に含まれる特定の治療的ジオールまたは生体活性物質またはその作用様式に応じて変動すると考えられる。適切な有効量は、当業者により容易に決定され得る。従って「有効量」は、ルーチンの試験を通じ決定され得る比較的広い範囲に収まると考えられる。例えば本発明の目的に関して、有効な用量は典型的には、1回の投与量につき送達される治療的ジオールまたは生体活性物質が約1μg〜約100mg、例えば約5μg〜約1mg、または約10μg〜約500μgの範囲である。
【0082】
治療的ジオール
本発明のポリマー組成物へ導入するための治療的ジオールモノマーのビス(α-アミノ酸)ジエステルを調製するために使用することができる好適な治療的ジオールは、天然の治療的ジオール、例えば再狭窄および腫瘍増殖を防止する際に有用である天然および内因性のホルモンである17-β-エストラジオール(Yang, N.N., et al. Identification of an estrogen response element activated by metabolites of 17-β-estradiol and raloxifene、Science (1996) 273:1222-1225;Parangi, S., et al., Inhibition of angiogenesis and breast cancer in mice by the microtubule inhibitors 2-methoxyestradiol and taxol、Cancer Res. (1997) 57:81-86;および、Fotsis, T., et al., The endogenous oestrogen metabolite 2-methoxyoestradiol inhibits angiogenesis and suppresses tumor growth、Nature (1994) 368:237-239)を含む。そのような内因性の治療的ジオール分子の安全性プロファイルは、シロリムスのような、同様の有用性を有する合成分子および/または非内因性分子のものよりも優れていると考えられる。
【0083】
例えば、混合型ヒドロキシル(第二級およびフェノール性)を含む活性ステロイドホルモン17-β-エストラジオールなどの治療的ジオールは、ステント本体などのような、外科用インプラントを作製するために使用されるPEUポリマーの骨格へ組込むことができる。PEUポリマーステントが、例えば経皮的冠動脈形成術(PTCA)後の患者へ植込まれる場合、インビボにおいてステントから放出される17-β-エストラジオールは、患者における植込み後再狭窄を防ぐことを補助することができる。しかし17-β-エストラジオールは、本発明に従いPEUの骨格に組込むことができる治療的特性を持つジオールの一つの例に過ぎない。1つの局面において、第一級、第二級またはフェノール性のヒドロキシルを含む、任意の生体活性ステロイドジオールを、この目的に使用することができる。本発明における使用のために生体活性ステロイドジオールから生成することができる多くのステロイドエステルは、欧州特許出願第0127 829号A2に開示されている。
【0084】
本発明の組成物において使用される式(II)のPEUポリマーの多用性のために、ポリマー骨格に組込まれた治療的ジオールの量は、ポリマーのビルディングブロックの比率を変動することにより、制御することができる。例えば、PEUの組成に応じて、最大54%w/wの17β-エストラジオールの負荷を実現することができる。
【0085】
テストステロンまたはコレステロールをベースにした、合成ステロイドベースのジオール、例えば4-アンドロステン-3,17ジオール(4-アンドロステンジオール)、5-アンドロステン-3,17ジオール(5-アンドロステンジオール)、19-ノル5-アンドロステン-3,17ジオール(19-ノルアンドロステンジオール)などは、PEUポリマーの骨格および本発明に従いそのようなポリマーを用いて製造された外科用器具への組込みに適している。本発明の治療的ポリマー組成物の調製に使用するのに適している更なる治療的ジオール化合物は、例えば、アミカシン;アンホテリシンB;アピサイクリン;アプラマイシン;アルベカシン;アジダムフェニコール(azidamfenicol);バムベルマイシン;ブチロシン;カルボマイシン;セフピラミド;クロラムフェニコール;クロルテトラサイクリン;クリンダマイシン;クロモサイクリン;デメクロサイクリン;ジアチモスルホン;ジベカシン、ジヒドロストレプトマイシン;ジリスロマイシン;ドキシサイクリン;エリスロマイシン;ホルティミシン;ゲンタマイシン;グルコスルホン、ソラスルホン;グアメサイクリン(guamecycline);イセパマイシン;ジョサマイシン;カナマイシン;ロイコマイシン;リンコマイシン;ルセンソマイシン;リメサイクリン;メクロサイクリン;メタサイクリン;ミクロノマイシン;ミデカマイシン;ミノサイクリン;ムピロシン;ナタマイシン;ネオマイシン;ネチルマイシン;オレアンドマイシン;オキシテトラサイクリン;パロモマイシン;ピパサイクリン(pipacycline);ポドフィリン酸2-エチルヒドラジン;プリマイシン;リボスタマイシン;リファミド;リファンピン;ラファマイシンSV;リファペンチン;リファキシミン;リストセチン;ロキタマイシン;ロリテトラサイクリン;ラサラマイシン(rasaramycin);ロキシスロマイシン;サンサイクリン(sancycline);シソマイシン;スペクチノマイシン;スピラマイシン;ストレプトマイシン;テイコプラニン;テトラサイクリン;チアンフェニコール;チオストレプトン(theiostrepton);トブラマイシン;トロスペクトマイシン(trospectomycin);ツベラクチノマイシン;バンコマイシン;カンジシジン;クロルフェネシン;デルモスタチン;フィリピン;ファンギクロミン;ミッシング(missing);カナマイシン;ロイコマイシン;リンコマイシン;イブセンソマイシン(Ivcensomycin);リメサイクリン;メクロサイクリン;メタサイクリン;ミクロノマイシン;ミデカマイシン;ミノサイクリン;ムピロシン;ナタマイシン;ネオマイシン;ネチルマイシン;オレアンドマイシン;オキシテトラサイクリン;パラモマイシン;ピパサイクリン(pipacycline);ポドフィリン酸2-エチルヒドラジン;プリシン;リボスタミジン;リファミド;リファンピン;リファマイシンSV;リファペンチン;リファキシミン;リストセチン;ロキタマイシン;ロリテトラサイクリン;ロサラマイシン;ロキシスロマイシン;サンサイクリン(sancycline);シソミシン;スペクチノマイシン;スピラマイシン;ストレプトン;オトブラマイシン(otbramycin);トロスペクトマイシン(trospectomycin);ツベラクチノマイシン;バンコマイシン;カンジシジン;クロルフェネシン;デルモスタチン;フィリピン;ファンギクロミン;メパルチシン(meparticin);ミスタチン;オリゴマイシン;エリマイシン(erimycin)A;ツベルシジン;6-アザウリジン;アクラシノマイシン;アンシタビン;アントラマイシン;アザシタジン;ブレオマイシン;カルビシン;カルジノフィリンA;クロロゾトシン;クロモミシン(chromomcin);ドキシフルリジン;エノシタビン;エピルビシン;ゲムシタビン;マンノムスチン;メノガリル;アトルバシ(atorvasi)プラバスタチン;クラリスロマイシン;ロイプロリン;パクリタキセル;ミトブロニトール;ミトラクトール;モピダモール;ノガラマイシン;オリボマイシン;ペプロマイシン;ピラルビシン;プレドニムスチン;ピューロマイシン;ラニムスチン;ツベルシジン;ビネシン(vinesine);ゾルビシン;クメタロール;ジクマロール;ビスクマセタートエチル;エチリジンジクマロール;イロプロスト;タプロステン;チオクロマロール;アミプリロース;ロムルチド;シロリムス(ラパマイシン);タクロリムス;サリチルアルコール;ブロモサリゲニン;ジタゾール;フェプラジノール;ゲンチジン酸;グルカメタシン;オルサラジン;S-アデノシルメチオニン;アジトロマイシン;サルメテロール;ブデソニド;アルブテロール(albuteal);インジナビル;フルバスタチン;ストレプトゾシン;ドキソルビシン;ダウノルビシン;プリカマイシン;イダルビシン;ペントスタチン;メトキサントロン;シタラビン;リン酸フルダラビン;フロキシウリジン;クラドリン(cladriine);カペシタビン;ドセタキセル;エトポシド;トポテカン;ビンブラスチン;テニポシドなどを含む。治療的ジオールは、飽和または不飽和のいずれかのジオールであるように選択することができる。
【0086】
別の態様において、本発明は、構造式(I)または(II)の本発明のPEUポリマーを、単独で、またはポリ(エステルアミド)PEAまたはポリ(エステルウレタン)PEURなどの別の生分解性ポリマーと一緒にのいずれかで含む外科用器具を提供する。本発明のPEUポリマーの物理特性、例えばそれらの高い分子量、高い力学的強度および耐圧強度、硬化時の低い溶融粘度および結晶化度などは、それらを特に硬組織の代用器具の形成に適したものとしている。更に、植込まれた外科用器具の生分解時の、治療的ジオールおよび生体活性物質(例えば、構造式(II)を有するポリマー)の、周囲の組織への放出は、そこに外科用器具が植込まれた硬組織欠損部位での治癒を助ける。本発明のポリマー組成物は、代用骨および血管ステントの形成に特に適している。本発明のPEUポリマー組成物は、外科用器具に必要な力学的強度を提供するために液体の時点で外科用器具の型枠へ注ぐことにより、溶液から加工処理することができる。この型枠およびその中のポリマーは、約200℃を上回る加熱は、分子内環化から生じるヒダントインの形成に起因した、PEUの分解を生じるため、200℃未満の温度に加熱される。得られるポリマーの力学的強度は、表2に例により示されている。
【0087】
例示的に合成されたPEUの引張強度が測定され、結果は表2にまとめられている。引張強度測定は、ダンベル型PEUフィルム(4×1.6cm)を使用して得らえ、これは平均厚さ0.125mmでクロロホルム溶液から注型され、Nexygen FMソフトウェア(Amtek, ラルゴ, FL)を用いるPCと一体化された引張強度測定器(Chatillon TDC200)上での引張試験に、クロスヘッド速度60mm/分で供した。本明細書において例示される例は、以下の力学的特性を有すると予想することができる:
1. 約30℃〜約90℃の範囲の、例えば約35℃〜約65℃の範囲の、ガラス転移温度;
2. 平均厚さ約1.6cmのポリマーフィルムは、引張降伏応力約20Mpa〜約150Mpa、例えば約25Mpa〜約60Mpaを有する;
3. 平均厚さ約1.6cmのポリマーフィルムは、伸び率約10%〜約200%、例えば約50%〜約150%を有する;および
4. 平均厚さ約1.6cmのポリマーフィルムは、約500MPa〜約2000MPaの範囲のヤング率を有する。
【0088】
下記表2は、例示的PEUの特性をまとめている。
【0089】
(表2)

【0090】
生体活性物質
本発明の治療的ポリマー組成物で使用されるポリマー内で分散することが企図される生体活性物質は、抗増殖剤、ラパマイシンおよびそのアナログまたは誘導体のいずれか、パクリタキセルまたはそのタキセンアナログもしくは誘導体のいずれか、エベロリムス、シロリムス、タクロリムス、またはそのリムスと命名された薬物のファミリーのいずれか、およびスタチン類、例えばシムバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、プラバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチンなど、ゲルダナマイシン、例えば17AAG(17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン);エポチロンDおよび他のエポチロン、17-ジメチルアミノエチルアミノ-17-デメトキシ-ゲルダナマイシンおよび熱ショックタンパク質90(Hsp90)の他のポリケチドインヒビター、シロスタゾールなどを含む。
【0091】
本発明の治療的ポリマー組成物およびそれから製造された粒子中に分散するために好適な生体活性物質も、内皮細胞により内因性に生成される一酸化窒素のような、治療的な天然の創傷治癒物質の内因性生成を促進するものから選択することができる。あるいは分解時にポリマーから放出される生体活性物質は、内皮細胞による天然の創傷治癒プロセスの促進に直接作用してもよい。これらの生体活性物質は、一酸化窒素を供与、転移、もしくは放出するか、一酸化窒素の内因性レベルを上昇させるか、一酸化窒素の内因性合成を刺激するか、または一酸化窒素合成酵素の基質として役立つ任意の物質、または平滑筋細胞の増殖を阻害する任意の物質であり得る。このような物質は、例えば、アミノキシル、フロキサン、ニトロソチオール、硝酸塩およびアントシアニン;アデノシンのようなヌクレオシド、ならびにアデノシン二リン酸(ADP)およびアデノシン三リン酸(ATP)のようなヌクレオチド;神経伝達物質/神経修飾物質、例えばアセチルコリンおよび5-ヒドロキシトリプタミン(セロトニン/5-HT)など;ヒスタミンおよびカテコールアミン、例えばアドレナリンおよびノルアドレナリンなど;脂質分子、例えばスフィンゴシン-1-リン酸およびリゾホスファチジン酸など;アミノ酸、例えばアルギニンおよびリシンなど;ペプチド、例えばブラジキニン、サブスタンスPおよびカルシウム遺伝子-関連ペプチド(CGRP)など、ならびにタンパク質、例えばインスリン、血管内皮増殖因子(VEGF)、およびトロンビンなどを含む。
【0092】
様々な生体活性物質および生体活性物質のリガンドは、例えば、構造式(II)のポリマーを含有する粒子または器具の表面へ、共有結合され得る。生体活性物質、例えば標的化抗体、ポリペプチド(例えば抗原)および薬物は、ポリマーの表面に共有的に抱合され得る。加えて、抗体の結合のためのリガンドとしてのポリエチレングリコール(PEG)、またはポリマーの表面の結合部位をブロックする手段としてのポリペプチドもしくはホスファチジルコリン(PC)などのコーティング分子が、それらに表面-抱合され得る。
【0093】
例えば、細菌プロテインAのBドメインおよびプロテインGの機能的同等領域のような、小型タンパク質性モチーフは、抗体分子へFc領域により結合し、それにより捕獲することがわかっている。このようなタンパク質性モチーフは、本明細書に説明されるように、構造式(II)の本発明のポリマーへ、特にそのようなポリマーの表面へ、生体活性物質として結合され得る。このような分子は、例えば、標的化リガンドとして使用する抗体に結合するためのリガンドとして、または前駆細胞を保持するかもしくは血流から細胞を捕獲するために抗体を捕獲するためのリガンドとして作用すると考えられる。従って、プロテインAまたはプロテインGの機能性領域を用いポリマーへ結合され得る抗体型は、Fc領域を含むものである。この捕獲抗体は次に、ポリマー表面近傍で、始原細胞のような前駆細胞へ結合しこれを保持し、一方で、この前駆細胞は、様々な因子を分泌し、かつ構造式(II)の本発明のポリマーを用いて製造された器具が植込まれている対象の他の細胞と相互作用する。加えてブラジキニンのような1種または複数の生体活性物質は、前駆細胞を活性化することができる。
【0094】
加えて、構造式(II)の本発明のポリマーを用いて製造された外科用器具が植込まれた対象において、前駆細胞へ結合するかまたは血管内皮前駆細胞(PEC)を血流から捕獲するための生体活性物質は、公知の前駆細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体である。例えば内皮細胞の表面を修飾することが報告されている相補性決定部位(CD)は、CD31、CD34、CD102、CD105、CD106、CD109、CDw130、CD141、CD142、CD143、CD144、CDw145、CD146、CD147、およびCD166を含む。これらの細胞表面マーカーは、特異性が変動するものであり得、かつ特定の細胞/発生の種類/段階に関する特異性の程度は、多くの場合完全には特徴付けられていない。加えてそれに対して抗体が産生されるこれらの細胞マーカー分子は、特に同じ系列の細胞の上のCD、内皮細胞の場合単球上のCDと、部分的に重複すると考えられる(抗体認識に関して)。循環する内皮前駆細胞は、(骨髄)単球から成熟内皮細胞への発生経路にそったものである。CD106、CD142およびCD144は、何らかの特異性により成熟内皮細胞を特徴付けることが報告されている。CD34は、内皮前駆細胞について特異的であることが現在分かっており、従ってこれは、硬組織代替インプラントのような、本発明のポリマー粒子を用い製造された器具が、活性物質の局所送達のために植込まれる部位の血液から、内皮前駆細胞を捕獲するために現在好ましい。そのような抗体の例は、1本鎖抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体断片、Fab断片、IgA、IgG、IgM、IgD、IgEおよびヒト化抗体、ならびにそれらの活性断片を含む。
【0095】
下記の生体活性物質および小型分子薬物も、植込み可能である外科用器具の使用に関する、構造式(II)の本発明のPEUポリマーへの抱合に関して特に有効であると考えられる。そのような生体活性物質は、関心対象の疾患、もしくはそれらの症状の治療における、または細胞または組織培養物におけるそのような作用のインビトロ試験もしくはインビボに関してデザインされた実験における、好適な治療的または緩和的作用に関して選択されると考えられる。
【0096】
1つの態様において、好適な生体活性物質は、持続放出様式で与えられた場合に、創傷治癒を促進するか、またはこれに寄与する化合物の様々なクラスを含むが、これらに限定されるわけではない。このような生体活性物質は、ある種の前駆細胞を含む、創傷治癒細胞のためのリガンドを含む。そのような創傷治癒細胞は、例えば、周皮細胞および内皮細胞、更には炎症治癒細胞を含む。インビボにおいて代用骨などの外科用器具の部位にそのような細胞を動員するために、本発明の外科用器具および使用法において使用されるポリマー組成物は、特に「細胞接着分子」(CAM)に結合する抗体および小型分子リガンドのような、そのような細胞のためのリガンドを含むことができる。創傷治癒細胞のリガンドの例は、細胞間接着分子(ICAM)、例えばICAM-1(CD54抗原);ICAM-2(CD102抗原);ICAM-3(CD50抗原);ICAM-4(CD242抗原);および、ICAM-5;血管細胞接着分子(VCAM)、例えばVCAM-1(CD106抗原);神経細胞接着分子(NCAM)、例えばNCAM-1(CD56抗原);または、NCAM-2;血小板内皮細胞接着分子(PECAM)、例えばPECAM-1(CD31抗原);白血球-内皮細胞接着分子(ELAM)、例えばLECAM-1;または、LECAM-2(CD62E抗原)などへ特異的に結合するものを含む。
【0097】
別の局面において、好適な生体活性物質は、本発明の外科用器具において使用されるポリマーへ共有結合することができる高分子である、細胞外マトリックスタンパク質を含む。有用な細胞外マトリックスタンパク質の例は、例えば、通常タンパク質に連結されているグリコサミノグリカン(プロテオグリカン)、および線維性タンパク質(例えば、コラーゲン;エラスチン;フィブロネクチン、およびラミニン)を含む。細胞外タンパク質の生体模倣物も、使用することができる。これらは通常非ヒトであるが、生体適合性である糖タンパク質、例えばアルギン酸塩およびキチン誘導体である。そのような細胞外マトリックスタンパク質および/またはそれらの生体模倣物の特異的断片である創傷治癒ペプチドも、使用することができる。
【0098】
タンパク質性増殖因子は、本発明のPEUポリマー組成物およびそのようなポリマー組成物を用いて製造された外科用器具への結合に適した生体活性物質の別の範疇である。そのような生体活性物質は、当該技術分野において公知であるように、創傷治癒の促進、ならびに他の病態において有効であり、例えば、血小板由来増殖因子-BB(PDGF-BB)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、表皮増殖因子(EGF)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、チモシンB4;ならびに、様々な血管新生因子、例えば血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、腫瘍壊死因子-β(TNF-β)、およびインスリン-様増殖因子-1(IGF-I)である。これらのタンパク質性増殖因子の多くは、市販されているか、または当該技術分野において周知の技術を用い組換えにより作出することができる。
【0099】
VEGF、PDGF、FGF、NGFなどの増殖因子、ならびに進化および機能的に関連した生物製剤、ならびにトロンビンのような血管新生酵素も、本発明の生体活性物質として使用することができる。
【0100】
小型分子薬物は、本明細書に説明されている、本発明のポリマーへの共有結合に好適な生体活性物質の更に別の範疇である。そのような薬物は、例えば、抗菌薬および抗炎症薬、更には例えばビタミンAのようなある種の治癒プロモーター、および脂質過酸化反応の合成阻害剤を含む。
【0101】
様々な抗生物質は、本発明のポリマー組成物中の生体活性物質として共有的に抱合され、このポリマー組成物を使用し製造された外科用器具の植込み部位での感染症を予防または制御することにより、自然治癒の過程を間接的に促進することができる。好適な抗生物質は、アミノグリコシド系抗生物質またはキノロン系またはβ-ラクタム系、例としてセファロスポリン、例えばシプロフロキサシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、エリスロマイシン、バンコマイシン、オキサシリン、クロキサシリン、メチシリン、リンコマイシン、アンピシリン、およびコリスチンなどの、多くのクラスを含む。好適な抗生物質は、文献に説明されており、例えば、Adriamycin PFS/RDF(登録商標)(Pharmacia and Upjohn)、Blenoxane(登録商標)(Bristol-Myers Squibb Oncology/Immunology)、Cerubidine(登録商標)(Bedford)、Cosmegen(登録商標)(Merck)、DaunoXome(登録商標)(NeXstar)、Doxil(登録商標)(Sequus)、Doxorubicin Hydrochloride(登録商標)(Astra)、Idamycin(登録商標)PFS(Pharmacia and Upjohn)、Mithracin(登録商標)(Bayer)、Mitamycin(登録商標)(Bristol-Myers Squibb Oncology/Immunology)、Nipen(登録商標)(SuperGen)、Novantrone(登録商標)(Immunex)、およびRubex(登録商標)(Bristol-Myers Squibb Oncology/Immunology)を含む。1つの態様において、ペプチドは、糖ペプチドであることができる。「糖ペプチド」は、バンコマイシンのような、サッカライド基により置換されてもよい多環ペプチドコアにより特徴付けられる、オリゴペプチド(例えばヘプタペプチド)抗生物質を指す。
【0102】
この範疇の抗菌薬に含まれる糖ペプチドの例は、Raymond C. RaoおよびLouise W. Crandallの「Glycopeptides Classification, Occurrence, and Discovery」(「Bioactive agents and the Pharmaceutical Sciences」、63巻、Ramakrishnan Nagarajan編集、Marcal Dekker, Inc.出版)に見出すことができる。糖ペプチドの追加例は、米国特許第4,639,433号;第4,643,987号;第4,497,802号;第4,698,327号、第5,591,714号;第5,840,684号;および、第5,843,889号;欧州特許第0 802 199号;第0 801 075号;第0 667 353号;国際公開公報第97/28812号;第97/38702号;第98/52589号;第98/52592号;ならびに、J. Amer. Chem. Soc.(1996) 118:13107-13108;J. Amer. Chem. Soc. (1997) 119:12041-12047;および、J. Amer. Chem. Soc. (1994) 116:4573-4590に開示されている。代表的糖ペプチドは、A477、A35512、A40926、A41030、A42867、A47934、A80407、A82846、A83850、A84575、AB-65、アクタプラニン、アクチノイジン、アルダシン、アボパルシン、アズレオマイシン、バリマイシン、クロロオリエンテイン、クロロポリスポリン、デカプラニン(Decaplanin)、デメチルバンコマイシン、エレモマイシン、ガラカルジン(Galacardin)、ヘルベカルジン(Helvecardin)、イズペプチン、キブデリン(Kibdelin)、LL-AM374、マンノペプチン(Mannopeptin)、MM45289、MM47756、MM47761、MM49721、MM47766、MM55260、MM55266、MM55270、MM56597、MM56598、OA-7653、オレンデシン(Orenticin)、パルボジシン(Parvodicin)、リストセチン、リストマイシン、シンモシニン(Synmonicin)、テイコプラニン、UK-68597、UD-69542、UK-72051、バンコマイシンなどとして特定されたものを含む。本明細書において使用される用語「糖ペプチド」または「糖ペプチド抗生物質」は、その糖部分が存在しない、先に開示された糖ペプチドの一般的クラス、すなわち糖ペプチドのアグリコンシリーズを含むことも意図されている。例えば、バンコマイシン上のフェノールに付いた二糖部分の穏やかな加水分解による除去は、バンコマイシンアグリコンを与える。同じく、用語「糖ペプチド抗生物質」の範囲内に含まれるのは、先に開示された糖ペプチドの一般的クラスの合成誘導体であり、アルキル化されたおよびアシル化された誘導体を含む。加えて、この用語の範囲内には、更にバンコサミンに類似した様式で、追加のサッカライド残基が付いた糖ペプチド、特にアミノグリコシドがある。
【0103】
用語「脂質付加された糖ペプチド」は、特に脂質置換基を含むように合成により修飾された糖ペプチド抗生物質を意味する。本明細書において使用される用語「脂質置換基」は、5個またはそれよりも多い炭素原子、好ましくは10〜40個の炭素原子を含む、任意の置換基を意味する。脂質置換基は、ハロ、酸素、窒素、イオウ、およびリンから選択されたヘテロ原子を1〜6個任意に含んでよい。脂質付加された糖ペプチド抗生物質は、当該技術分野において周知である。例えば、米国特許第5,840,684号、第5,843,889号、第5,916,873号、第5,919,756号、第5,952,310号、第5,977,062号、第5,977,063号、欧州特許第667,353号、国際公開公報第98/52589号、第99/56760号、第00/04044号、第00/39156号を参照のこと。
【0104】
抗炎症性生体活性物質も、本発明のポリマー組成物および外科用器具における使用に有用である。インプラントの生体部位に応じて、そのような抗炎症性生体活性物質は、例えば鎮痛薬(例えばNSAIDSおよびサリチル酸塩)、ステロイド、抗リウマチ薬、消化薬、痛風用製剤、ホルモン(糖質コルチコイド)、鼻用製剤、眼用製剤、耳用製剤(例えば、抗生物質およびステロイドの組合せ)、呼吸器薬、および皮膚・粘膜薬を含む。Physicians's Desk Reference、2005年版を参照のこと。具体的には抗炎症薬は、(11?, 16I)-9-フルオロ-11,17,21-トリヒドロキシ-16-メチルプレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオンとして化学的にデザインされた、デキサメタゾンを含む。あるいは、抗炎症性生体活性物質は、ストレプトミセス・ヒグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)から単離されたトリエンマクロライド系抗生物質であるシロリムス(ラパマイシン)であるか、またはこれを含む。
【0105】
本発明の組成物、外科用器具および方法に含まれるポリペプチド生体活性物質は、「ペプチド模倣物」も含む。このようなペプチドアナログは、本明細書において「ペプチド模倣物」または「ペプチドミメチック」と称され、製薬産業において一般に使用され、これらは鋳型ペプチドのものに類似した特性を伴い(Fauchere, J. (1986) Adv. Bioactive agent Res., 15:29;Veber and Freidinger (1985) TINS, p.392;および、Evans et al. (1987);J. Med. Chem., 30:1229)、ならびに通常コンピュータによる分子モデリングの助けを借りて開発される。一般にペプチドミメチックは、パラダイムのポリペプチド(すなわち、生化学特性または薬学活性を有するポリペプチド)に構造的に類似しているが、当該技術分野において公知の方法により、--CH2NH--、--CH2S--、CH2-CH2--、--CH=CH--(シス形およびトランス形)、--COCH2--、--CH(OH)CH2--、および--CH2SO--、ならびに更に以下の参考文献に説明されているものからなる群より選択される連結により任意に置き換えられたペプチド連結を1個または複数有する:Spatola, A.F. 「Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides, and Proteins」、B. Weinstein編集, Marcel Dekker, New York, p.267(1983);Spatola, A.F., Vega Data (March 1983), 第1巻, 3号,「Peptide Backbone Modifications」(全般的総説);Morley, J.S., Trends. Pharm. Sci., (1980) pp.463-468(全般的総説);Hudson, D. et al., Int. J. Pept. Prot. Res., (1979) 14:177-185 (--CH2NH--, CH2CH2--);Spatola, A.F. et al., Life Sci, (1986) 38:1243-1249 (--CH2-S--);Harm, M. M., J. Chem. Soc. Perkin Trans I (1982) 307-314 (--CH=CH--、シス形およびトランス形);Almquist, R.G. et al., J. Med. Chem., (1980) 23:2533 (--COCH2--);Jennings-Whie, C. et al, Tetrahedron Lett., (1982) 23:2533 (--COCH2--);Szelke, M. et al., 欧州特許出願第45665号、(1982) CA: 97:39405 (1982) (--CH(OH)CH2--);Holladay, M. W. et al., Tetrahedron Lett, (1983) 24:4401-4404 (--C(OH)CH2--);および、Hruby, V.J., Life Sci., (1982) 31:189-199 (--CH2-S--)を含む。そのようなペプチド模倣物は、天然のポリペプチドの態様に勝る著しい利点を有し、これは例えば、より経済的な製造、より大きい化学安定性、増強された薬学的特性(半減期、吸収、効能、有効性など)、変更された特異性(例えば生物学的活性の広いスペクトル)、低下した抗原性などを含む。
【0106】
加えて、ペプチド内の1個または複数のアミノ酸の置換(例えばL-リシンのD-リシンとの置換)を使用し、より安定したペプチドおよび内因性ペプチドに対するペプチド抵抗性を作出することができる。あるいは、生分解性ポリマーへ共有結合された合成ポリペプチドは、インベルソペプチドと称される、D-アミノ酸から調製することもできる。ペプチドが未変性のペプチド配列の反対方向に組み立てられる場合、これはレトロペプチドと称される。一般に、D-アミノ酸から調製されたポリペプチドは、酵素による加水分解に対し非常に安定している。多くの場合、レトロ-インベルソポリペプチドまたは部分的レトロ-インベルソポリペプチドに関する保存された生物学的活性が報告されている(米国特許第6,261,569号B1、およびその中の参考文献;B. Fromme et al, Endocrinology (2003)144:3262-3269)。
【0107】
下記実施例は、本発明を例示することを意図し、限定することは意図しない。
【0108】
実施例1
モノマー合成
ビス-L-ロイシン-ヘキサン-1,6-ジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩の調製
求核モノマーとしてのジアミンのトシル酸塩の合成は、先に、例えば米国特許第6,503,538 B1号に開示されている。ビス-L-ロイシン-ヘキサン-1,6-ジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩(化合物1)は、先に公表された方法の変更により調製した。

トルエン250mL中のL-ロイシン(0.132mol)、p-トルエンスルホン酸一水和物(0.132mol)、および1,6-ヘキサンジオール(0.06mol)を、Dean-Stark装置およびオーバーヘッドスターラーを装着したフラスコに入れた。不均一な反応混合物を、水4.3mL(0.24mol)が蒸発するまで、約12時間還流加熱した。次に反応混合物を、室温に冷却し、濾過し、アセトンで洗浄し、メタノール/トルエン2:1混合液から2回結晶化した。収率および融点は、公表されたデータと一致した(R. Katsarava et al. J. Polym. Sci., Part A: Polym. Chem. (1999) 37:391-407)。
【0109】
L-リシンベンジルエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩(L-Lys(OBn)の調製
L-リシンベンジルエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩(化合物2)は、米国特許第6,503,538 B1号に先に開示されたように、トルエン中のベンジルアルコール、トルエンスルホン酸一水和物、およびL-リシン一塩酸塩の、水の共沸除去を適用しながらの還流により、調製した。

【0110】
実施例2
PEU 1-L-Leu-6(ポリマーエントリー番号2、表1)の調製
水150mL中のビス(L-ロイシン)-1,6-ヘキサンジオール-ジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩6.89g(10mmol)の懸濁液へ、無水炭酸ナトリウム4,24g(40mmol)を添加し、室温で30分間攪拌し、2℃〜0℃に冷却した。平行して、クロロホルム35mL中のホスゲン0.9893g(10mmol)の溶液を、15℃〜10℃に冷却した。第一の溶液を、界面重縮合用反応器に入れ、第二の溶液を、一気に素早く添加し、15分間勢いよく攪拌した。その後クロロホルム相を分離し、無水Na2SO4上で乾燥し、濾過した。得られた溶液を蒸発させ、得られたポリマーを真空中45℃で乾燥した。収率は82%であった。1Hおよび13C NMRに関しては、図2および図3を参照のこと。C19H34N2O5の元素分析:計算値:C:61.60%, H:9.25%, N:7.56%;実測値:C:61.63%, H:8.90%, N:7.60。
【0111】
実施例3
PEU 1-L-Leu-DAS(ポリマー:エントリー番号5、表1)の調製

水40mL中のビス(L-ロイシン)-1,4:3,6-ジアンヒドロソルビトールジエステル5g(6.975mmole)および炭酸ナトリウム2.4gの冷却した溶液(氷浴)を調製した。この冷却した溶液へ、クロロホルム70mLを激しく攪拌しながら添加し、その後トルエン(Fluka)中の20%ホスゲン溶液3.7mLを導入した。ポリ(エステルウレア)が、発熱しながら迅速に形成された。この反応液を10分間攪拌した後、有機相を回転蒸発(rotoevaporate)させ、残存するポリマーを、濾過し、水で数回洗浄し、真空中で一晩乾燥した。生成物の収量は、1.6g(57%)であった。ポリマーの特性は、表1にまとめた。
【0112】
実施例4
本実施例は、PEUポリマー1-L-Leu-4(表1、エントリー番号1)の経時的分解速度を比較するために行った分解試験を説明する。直径4cmおよび各々400〜500mgの円形のPEUフィルムを、酵素(α-キモトリプシンまたはリパーゼ)4mgを含むpH7.4の0.2Mリン酸緩衝液または酵素-非含有緩衝液のいずれか10mlの入ったガラス製ビーカーに入れた。このガラス容器を、37℃で維持した。予め定められた時間(20、40、60、80、100および120分間)の後、フィルムを酵素溶液から取り出し、一定重量になるまで乾燥し、秤量した。その後フィルムを、酵素または純粋な緩衝液のいずれかの新鮮な溶液へ入れ、先に説明した全ての手順を繰り返した。反復回数は、図5および図6の実験ポイントの数に相当している。試料単位表面積あたりの重量の変化は、分解による試料の喪失を示し、これを算出し、生分解時間に対して図示した(図5および図6)。本試験の結果は、PEUポリマーは、表面分解プロファイルに相当する、ほぼゼロ次の分解プロファイルを有することを示している。
【0113】
全ての刊行物、特許、および特許文献は、個別に参照により組入れられているように、本明細書に参照により組入れられている。本発明は、様々な具体的かつ好ましい態様および技術を参照し説明されている。しかし、本発明の精神および範囲内である限りは、多くの変更および修飾を行うことができることは理解されなければならない。
【0114】
本発明は前記例を参照し説明されているが、本発明の精神および範囲内の修飾および変更が包含されることは理解されなければならない。従って本発明は、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】ポリ(エステルウレア)(PEU)1-L-Leu-4のFT-IRスペクトル(NaClプレート上フィルム)を示すグラフである。(表1、エントリー番号1)
【図2】ポリ(エステルウレア)1-Leu-6の1H NMR(500MHz, DMSO-d6)スペクトルを示すグラフである。(表1、エントリー番号2)
【図3】ポリ(エステルウレア)1-Leu-6の13C NMR (125MHz MHz, DMSO-d6)スペクトルを示すグラフである。(表1、エントリー番号2)
【図4】最初に加熱速度10℃/分で加熱する、ポリ(エステルウレア)1-Leu-6の示差走査熱量測定の記録を示すグラフである。(表1、エントリー番号2)
【図5】a)緩衝液中α-キモトリプシン溶液、b)緩衝液中リパーゼ溶液、c)純粋な緩衝液(0.2Mリン酸緩衝液、pH7.4)に供された、PEU 1-L-Leu-4(表1、エントリー番号1)のポリマーフィルムのインビトロ生分解を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式(I)または、一般構造式(II)により記述される化学式を有する、結晶性または半結晶性ポリ(エステルウレア)(PEU)ポリマー組成物:


式中、mは、約0.1〜約0.9であり;pは、約0.9〜約0.1であり;nは、約10〜約150であり;R1は独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ、(C2-C20)アルキレン、飽和もしくは不飽和の治療的ジオールの残基、または一般式(III)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール二環式-断片であり:

;各R2は独立して、水素、(C1-C12)アルキル、または(C6-C10)アリールであり;個々のnまたはmモノマー中のR3は独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、または(C6-C10)アリール(C1-C6)アルキルであり;および、R4は独立して、(C2-C20)アルキル、または(C2-C20)アルケニルである。
【請求項2】
R4が独立して、(C2-C20)アルキル、または(C2-C20)アルケニルである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
R4が独立して、(C3-C6)アルキル、または(C3-C6)である、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
R4が独立して、-(CH2)4-である、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
ポリマーが、構造式(II)の化学式を有し、かつR3がCH2Phである、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール(III)が、D-グルシトール、D-マンニトール、またはL-イジトールに由来する、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
R1が、飽和もしくは不飽和の治療的ジオールの残基、または一般式(III)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式-断片である、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
R1が、1,4:3,6-ジアンヒドロソルビトールの残基である、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
治療的ジオールが、17-β-エストラジオールである、請求項7記載の組成物。
【請求項10】
約2週間〜約9ヶ月の期間をかけて生分解する、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
構造式(II)のポリマーへ共有結合された少なくとも1つの生体活性物質を更に含む、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
ポリマー分子鎖1個につき約5分子〜約150分子の生体活性物質を含有する、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
引張測定により測定された場合、約20MPa〜約150MPaの範囲の引張破断強度を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定された場合、約10,000Da〜約300,000Daの範囲の分子量を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
植込み可能である、請求項1記載のポリマーを含む外科用器具。
【請求項16】
外科用器具が、完全に生分解性である、請求項15記載の器具。
【請求項17】
外科用器具が、代用骨である、請求項15記載の器具。
【請求項18】
植込み可能である外科用器具が、血管ステントである、請求項15記載の器具。
【請求項19】
硬組織代替インプラントである、請求項15記載の器具。
【請求項20】
代用骨である、請求項15記載の器具。
【請求項21】
約2週間〜約6年間の期間をかけて生分解する、請求項15記載の器具。
【請求項22】
R1の少なくとも1つが、治療的ジオールである、請求項15記載の器具であって、生分解し、治療的ジオールを放出する、器具。
【請求項23】
治療的ジオールが、17-β-エストラジオールである、請求項22記載の器具。
【請求項24】
ポリマーが、構造式(II)により記述される化学式を有し、組成物が、ポリマーに抱合された少なくとも1つの生体活性物質を更に含む、請求項15記載の器具。
【請求項25】
生体活性物質が、抗生物質である、請求項24記載の器具。
【請求項26】
生体活性物質が、鎮痛薬である、請求項24記載の器具。
【請求項27】
構造式(I)により記述される化学構造を有するポリマーを形成するための、
α-アミノ酸、
p-トルエンスルホン酸一水和物;および
(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレンジオール、飽和もしくは不飽和の治療的ジオール;または、一般式(III)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式-断片から選択された、ジオール
の重縮合反応から形成される、
生体適合性で生分解性のPEUポリマー。

【請求項28】
アミノ酸が、L-リシンである、請求項27記載のポリマー。
【請求項29】
ジオールが、飽和または不飽和の治療的ジオールである、請求項27記載のポリマー。
【請求項30】
ジオールが、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式-断片である、請求項27記載のポリマー。
【請求項31】
ジオールが、1,4:3,6-ジアンヒドロソルビトールの二環式-断片である、請求項30記載のポリマー。
【請求項32】
α-アミノ酸が、生物のα-アミノ酸である、請求項27記載のポリマー。
【請求項33】
構造式(I)により記述される化学式を有するポリマーを得るための、
α-アミノ酸、
p-トルエンスルホン酸一水和物;および
(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレンジオール、飽和もしくは不飽和の治療的ジオール;または、一般式(III)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式-断片から選択された、ジオール
の重縮合反応を含む、
生体適合性で生分解性のPEUポリマーの合成方法。

【請求項34】
アミノ酸が、L-リシンである、請求項33記載の方法。
【請求項35】
ジオールが、飽和または不飽和の治療的ジオールである、請求項33記載の方法。
【請求項36】
ジオールが、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式-断片である、請求項33記載の方法。
【請求項37】
ジオールが、1,4:3,6-ジアンヒドロソルビトールの二環式-断片である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
重縮合反応において、構造式(I)のポリマーを、α-アミノ酸ベンジルエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩と反応させ、構造式(II)により記述される化学式を有するポリマーを得る工程を更に含む、請求項33記載の方法。
【請求項39】
アミノ酸ベンジルエステルが、L-リシンベンジルエステルである、請求項38記載の方法。
【請求項40】
α-アミノ酸が、生物のα-アミノ酸である、請求項33記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−516757(P2009−516757A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536790(P2008−536790)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際出願番号】PCT/US2006/040825
【国際公開番号】WO2007/050415
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(507277424)メディバス エルエルシー (13)
【Fターム(参考)】