説明

ポンプ装置の制御方法

【課題】容積ポンプの開閉バルブの閉動作を速やかに行わせると同時にその、閉鎖時の衝撃音を抑制し雑音を低減するようにしたポンプ装置の制御方法を提供すること
【解決手段】駆動コイル26に駆動電流Idを通電して駆動部Mを駆動し、第1及び第2のポンプ室30a,30bの容積を変化させて流体の導入と吐出を繰り返す容積ポンプを有するポンプ装置10において、この駆動コイル26に通電される駆動電流Idを、バルブの閉動作が開始された後閉鎖される直前において所定時間Δt、中間値I2で一定に維持させるようにし、これによりこのバルブの閉鎖直前の閉鎖速度を低下させて、バルブの閉鎖が緩やかに行われるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポンプ装置の制御方法に関し、さらに詳しくは、電磁駆動による駆動部の変位によってポンプ室内への流体の吸引とポンプ室からの流体の吐出動作とが繰り返される電磁式容積型ポンプを有するポンプ装置において、その流体の吸引流路や吐出流路に設けられる特にパッシブ型逆止弁の開閉動作の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばパーソナルコンピュータやサーバー等の電子機器に備えられた半導体集積回路素子、特にCPU(Central Processing Unit)等の冷却に、液体の冷媒を用いた液冷式の冷却システムなどが提案されており、このような冷却システムには、例えば特許文献1に示されるような小型でも高い圧力で液体を排出することができる容積型ポンプが好適に用いられる。
【0003】
例えば、特許文献2に記載のポンプ装置は、駆動マグネットである可動体がシリンダの軸線方向に摺動可能に配置され、シリンダの外周側には駆動コイルが配置されて、この駆動コイルに流す駆動電流の量や向きによってポンプ装置を制御するというものである。このポンプ装置においては逆止弁が、弁体が最も開いた位置で弁体と弁座との最小隙間部位の流路断面積が、最小径の流路断面積となるように形成されている。これにより、弁体と弁座との隙間を小さくして流体が逆流する時を短くし、流体による衝撃作用を緩和したり、あるいは、可動体である駆動マグネットが反転移動させる際の、駆動電圧または駆動電流を調節してその移動推進力を小さくすることにより流体による衝撃作用を緩和することにより騒音の抑制が図られている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−25546号公報
【特許文献2】特開2005−315093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2のポンプ装置のように、弁体と弁座との隙間を小さくしたり、弁体に係る推進力を小さくしたりすれば、騒音の抑制は図られるかもしれないが、弁が開設される状態での流体の流量が弁の流路が狭小であるために小さくなり、弁の開閉動作における応答性が悪くなるという問題がある。
【0006】
また、特許文献2のポンプ装置においては、駆動マグネットが可動体としてシリンダ内を摺動するように構成されているため、可動体の質量が大きく、可動体にかかる慣性が大きくなってしまう。そのため、可動体に作用する推力を抑制して可動体の移動を制御しようとすると、駆動電流または駆動電圧または駆動電流を小さくする時間が長くなり、ポンプ装置の作動効率が悪くなってしまったり、弁の開閉動作が緩慢になり、ポンプ装置の応答性が悪くなるといった問題があった。したがってこのようにポンプ装置の作動効率や応答性等の性能を保ちつつ、静音化を図ることは困難であった。
【0007】
本発明の解決しようとする課題は、容積型ポンプのポンプ室と流体の流入口あるいは吐出口との間の通路に介設されるパッシブ型のバルブの開閉動作が迅速に行われることはもとより、バルブの閉鎖時の弁座との衝撃音などの雑音を低減するようにしたポンプ装置の制御方法を提供するもので、これによりこのような容積型ポンプ装置の作動性能の向上並びに騒音環境の改善を図らんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係るポンプ装置の制御方法は、請求項1に記載のように、流体を吸引する流入口と、前記流入口に連結され該流入口から吸引した流体を溜めておくための溜め部と、該溜め部に溜めた前記流体を吐出する吐出口と、前記溜め部の容積を変化させる容積ポンプとを有するポンプ装置の制御方法において、前記容積ポンプは駆動手段によって駆動され前記溜め部の容積を変化させる駆動部を有し、該駆動部には、前記駆動手段としての駆動コイルを有し、前記駆動コイルへ通電される駆動電流は、前記流入口および前記吐出口と前記溜め部との間に配設された前記流入口または前記吐出口と前記溜め部との流路を開閉するバルブが閉動作を開始した後の前記駆動コイルへ通電される駆動電流が、前半と後半とで異なるように通電されることにより前記バルブの閉動作が緩やかに行われることを要旨とするものである。
【0009】
ここで、前記駆動コイルへ通電される駆動電流は、請求項2に記載のように、後半において電流値を所定時間維持させることにより前半と後半とで異なるように通電され、前記バルブの閉動作が緩やかに行われることが望ましい。
【0010】
また、前記駆動コイルへ通電される駆動電流が、請求項3に記載のように、前記バルブが閉動作を開始した前半における閉鎖速度に比べ閉鎖直前の閉鎖速度を低下させるように通電されることにより前記バルブの閉動作が緩やかに行われるようにすると良い。
【0011】
また、本発明に係る別のポンプ装置の制御方法は、請求項4に記載のように、流体を吸引する流入口と、前記流入口に連結され該流入口から吸引した流体を溜めておくための溜め部と、該溜め部に溜めた前記流体を吐出する吐出口と、前記溜め部の容積を変化させる容積ポンプとを有するポンプ装置の制御方法において、前記容積ポンプは駆動手段によって駆動され前記溜め部の容積を変化させる駆動部と該駆動部を駆動可能に支持する固定部とを有し、前記駆動部には、駆動マグネットおよび駆動コイルのどちらか一方を備え、前記固定部には、前記駆動マグネットおよび前記駆動コイルのどちらか他方を備え、前記駆動マグネットおよび前記駆動コイルの互いの磁気吸引力または磁気反発力によって前記駆動部が移動可能に構成され、前記駆動コイルへ通電される駆動電流は、前記流入口および前記吐出口と前記溜め部との間に配設された前記流入口または前記吐出口と前記溜め部との流路を開閉するバルブが閉動作を開始した後、後半において前記駆動コイルへ通電される駆動電流の電流値を所定時間維持させ、前半と異なるように通電させることにより前記バルブの閉動作を緩やかに行わせたことを要旨とするものである。
【0012】
また、本発明に係るさらに別のポンプ装置の制御方法は、請求項5に記載のように、流体を吸引する流入口と、前記流入口に連結され該流入口から吸引した流体を溜めておくための溜め部と、該溜め部に溜めた前記流体を吐出する吐出口と、前記溜め部の容積を変化させる容積ポンプとを有するポンプ装置の制御方法において、前記流入口および前記吐出口と前記溜め部との間に前記流入口または前記吐出口と前記溜め部との流路を開閉するとともに閉鎖方向に付勢されたバルブを有し、さらに、駆動手段によって駆動され前記溜め部の容積を変化させる前記容積ポンプの駆動部には、駆動マグネットおよび駆動コイルのどちらか一方を備え、該駆動部を駆動可能に支持する固定部には、前記駆動マグネットおよび前記駆動コイルのどちらか他方を備え、前記駆動マグネットおよび前記駆動コイルの互いの磁気吸引力または磁気反発力によって前記駆動部が移動可能に構成され、前記バルブが閉動作を開始した後の前記駆動コイルへ通電される駆動電流が、前半と後半とで異なるように通電されることにより前記バルブの閉動作が緩やかに行われることを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1記載に係るポンプ装置の制御方法によれば、駆動コイルへの駆動電流の通電により駆動部が駆動され、溜め部の容積が変化し、溜め部内の流体が吐出口より吐出されると共に流入口より溜め部に流体が吸引され、そのときに溜め部と流入口との間の流路に設けられるバルブと吐出口との間に設けられるバルブの開閉動作が行われるが、これらのバルブの開閉動作の際にこの駆動コイルに通電される駆動電流が、バルブが閉動作を開始した後の前半と後半とで異なるように通電されることで、バルブの閉動作が緩やかに行われるようにしたものであるから、バルブ閉鎖時の衝撃音が低減され、その衝撃音に伴う雑音が抑制することができる。
【0014】
また、駆動部側に駆動コイルを有していれば、駆動部側に駆動マグネットを配設した構造に比べて駆動部の質量を小さくすることができ、駆動部に係る慣性力を小さくすることができる。したがって、バルブの閉鎖時には、駆動コイルへの駆動電流を速やかに下げ、バルブの閉鎖直前でその駆動コイルへの駆動電流の低下を緩め、バルブがゆっくり閉じられるようにすることでバルブの開閉動作に伴う作動時間も短くて済み、ポンプ装置としての作動効率がよく応答性も確保されるものである。
【0015】
このとき請求項2に記載のように、駆動コイルへ通電される駆動電流の電流値をバルブの閉動作の後半においては所定時間維持させるようにすれば、その間に駆動コイルに作用する運動エネルギー(慣性エネルギー)が吸収され、バルブの閉鎖する勢いが失われることによりバルブの閉動作が緩やかに行われるものであり、バルブの閉動作に伴う衝撃音などの雑音の低減が効果的になされることとなる。
【0016】
また、請求項3に記載のように、バルブの閉動作を開始した前半における閉鎖速度に比べ、閉鎖直前の閉鎖速度を低下させるようにすると、バルブの閉動作に伴う作動時間が長くなることも無く、しかも、バルブの衝撃音も抑制されて雑音の発生が効果的に抑えることが可能となる。
【0017】
一方、本発明の請求項4記載に係るポンプ装置の制御方法によれば、容積ポンプの駆動コイルと駆動マグネットのどちらを駆動部とし、また固定部としても同様の効果が得られるもので、駆動コイルと駆動マグネットとの間の磁気吸引力または磁気反発力によって相対変位し、これに伴う溜め部の容積の変化によって流入口との間のバルブや吐出との間のバルブが開閉されて、流体が溜め部に吐出および吸引される。このバルブの開閉動作時に、バルブの閉動作の後半において、駆動コイルに通電される駆動電流の電流値が所定時間一定に維持されて、バルブの閉動作の前半と異なるように通電されることでバルブの閉動作が緩やかに行われるようにすることによってバルブの閉鎖時の衝撃音が低減され、その衝撃音に伴う雑音が抑制する事ができる。
【0018】
そしてこの場合にも、上記した請求項2および3に記載の実施態様並びに効果を共有する事ができるものである。
【0019】
さらに、本発明の請求項5記載に係るポンプ装置の制御方法も請求項4の場合と同様に、駆動コイルと駆動マグネットのどちらを駆動部とし、また固定部としても同様の効果が得られるもので、駆動コイルと駆動マグネットとの間の磁気吸引力または磁気反発力によって相対変位し、溜め部の容積の変化によって流入口との間のバルブや吐出との間バルブの開閉動作が行われるものであるが、溜め部と流入口及び吐出口との間の流路に介設されるバルブはその流路の閉鎖方向に付勢されている。そのため、前記駆動コイルへ通電される駆動電流が、前記バルブの閉動作の前半と後半とで異なるように通電されると、バルブの閉鎖動作の前半においては、駆動電流が急激に変化され、かつ弁体がバルブを閉鎖する方向に付勢されているため、バルブを素早く閉鎖することができる。一方、バルブの閉動作の後半においては、駆動電流の変化を前半と異ならせて、駆動電流を緩やかに変化させることにより、前記バルブの閉動作が緩やかに行われる。これにより、バルブの弁体が弁座に衝突する際の雑音の発生を抑えることができ、ポンプ装置の運転時の雑音を低減させることができる。
【0020】
そしてこの場合にも、上記した請求項2および3に記載の実施態様並びに効果を共有する事ができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係るポンプ装置の概略構成を示したもので、(a)は平面図、(b)は、A−A線断面矢示図、(c)は、B−B線断面矢示図である。また図2、図3は、そのポンプ装置の分解斜視図を示したものである。
【0023】
これらの図に示されるように、このポンプ装置10は、一方の面が開口した比較的奥行きの浅い筐形形状をなすケース本体12の開口外周縁に形成されるフランジ部14に蓋板16がビス18止めなどによって一体的に組み付けられている。
【0024】
そしてこのケース本体12内では、円盤状のインナーヨーク20を挟んで同径の一対の駆動マグネット(永久磁石)22a、22bが互いに同極どうしが向き合うように備えられ、そのインナーヨーク20及び駆動マグネット22a、22bの外周面の周りを囲むようにコイルボビン24に捲回された駆動コイル26がそのインナーヨーク20及び駆動マグネット22a、22bの外周面を摺動可能に配設されている。
【0025】
さらに、前記駆動マグネット22a、22bのインナーヨーク20に接していない側の端面を覆い、かつ、前記駆動マグネット22a、22bの外周面に対向して前記リング部材27の外周面を囲むようにアウターヨーク28が配設されている。したがってこの実施形態では駆動コイル26がコイルボビン24に巻回されたものが駆動部Mをなし、インナーヨーク20、駆動マグネット22a、22bおよびアウターヨーク28が固定部Sをなすものである。
【0026】
これによりケース本体12内の前記アウターヨーク28で囲われた前記駆動コイル26の摺動空間には、ケース本体12の内底面側に形成される第1のポンプ室30aと前記蓋板16側に形成される第2のポンプ室30bとに区画された流体の溜め部30が形成されている。
【0027】
そして前記ケース本体12の外壁面には、前記溜め部30の第1のポンプ室30a及び第2のポンプ室30bに流体を流入する流入管路32、及び溜め部30に流入した流体を吐出する吐出管路34とが設けられ、その流入管路32に設けられる流体の流入口32a及び吐出管路34に設けられる吐出口34aと前記溜め部30の第1のポンプ室30a及び第2のポンプ室30bとの間の流体流路には該流路を開閉する流入用バルブ36a,36b及び吐出用バルブ38a,38bがそれぞれ介設されている。
【0028】
すなわち、前記ケース本体12の内壁面とアウターヨーク28の外周面との間の空間領域に、前記流入口32a側の流体流路と吐出口34a側の流体流路とを仕切る仕切壁40、及び、流入口32a側の流体流路と吐口側34a側の流体流路をそれぞれ前記第1のポンプ室30a及び第2のポンプ室30bとの間で仕切る仕切壁42a,42b,44a,44bを備え、第1のポンプ室30aと第2のポンプ室30bとの間を流体が行き来しないように仕切る仕切壁部材46が介設される。
【0029】
そして、前記流入口32aと第1のポンプ室30a及び第2のポンプ室30bとを仕切る仕切壁42a,42bに開設される連通孔に前記流入用バルブ36a,36bが開閉自在に配設されると共に、前記流体の吐出口34aと第1のポンプ室30a及び第2のポンプ室30bとを仕切る仕切壁44a,44bに開設される連通孔には、前記吐出用バルブ38a,38bが開閉自在に配設されている。
【0030】
これらの流入用バルブ36a,36b及び吐出用バルブ38a,38bはいずれもパッシブ型の逆止弁により構成され、2つの部屋(バルブの上流側と下流側)の差圧を受けて開閉し、一方の弁が閉じる時には他方の弁が開き、また閉じる方の弁は弁座に衝突してその衝突音が騒音として一般には生じるものである。
【0031】
図4は流入用バルブ36a,36b及び吐出用バルブ38a,38bの概略構成を示したものである。これらのバルブは全て同一構成からなるもので1つのバルブについてのみ説明すると、これらのバルブはいずれも弁軸52の基部に互いに反対方向に弾力性あるアーム部54a,54bが延設され、該各アーム部54a,54bの先端部に前記仕切壁部材46の各弁座48a,48b,50a,50bの背面側(流体の流れ方向の上流側)に受止される受止部56a,56bが設けられる一方、前記弁軸52の先端部には各弁座48a,48b,50a,50bの表面側(流体の流れ方向の下流側)の開口縁に密着する半円弧形状の湾曲面を有する弁体58が該弁軸52より抜脱不能に装着されている。
【0032】
尚、これらのバルブは前記弁体58と、両端に受止部56が設けられたアーム部54a,54bを備える弁軸52とがそれぞれ別個に合成樹脂材料などにより形成されて、組み立てられて構成される。ここで、受止部56が設けられたアーム部54を備える弁軸52は、例えばシリコンゴムから形成され、アーム部54a,54bに弾力性が付与されている。また、前記弁体58も一応可撓性ある合成樹脂材料により成形されている。
【0033】
また、前記アウターヨーク28には、前記第1のポンプ室30aと前記流入口32aとを連通させる連通口60a、第2のポンプ室30bと該流入口32aとを連通させる切り欠き口60b、第1ポンプ室30aと前記吐出口34aとを連通させる連通口62a及び第2のポンプ室30bと該吐出口34aとを連通させる切り欠き口62bとが開設され、これにより前記流入口32aと第1のポンプ室30a及び第2のポンプ室30bとの流体流路、並びに前記吐出口34aと第1のポンプ室30a及び第2のポンプ室30bとの流体流路が確保されている。
【0034】
また、図2および図3に示すように、ケース本体12の外側面にはこのポンプ装置10を制御するためコントローラやメモリ等が内蔵されたマイコンおよびこのマイコンと連係して駆動コイル26に電力を供給するドライバ回路等が搭載されたコントロール基板64がネジ止め穴65,65にネジ止めする等によってケース本体12に取り付けられる。また、コントロール基板64に設けられる前記ドライバ回路の出力端子66a,66bは、図示しないが、可撓性のある電源供給部材等を介して、前記駆動コイル26の電線端末と接続されて、電磁式アクチュエータを駆動する電力が駆動コイル26に供給される。
【0035】
このように構成されたポンプ装置10では、駆動コイル26に一方向の電流を流すと、駆動コイル26には放射状の磁場に重直なローレンツ力が生じ、ピストン(この実施例では、駆動部M)を一方向へ変位させる。そのため各ポンプ室の容積は、一方は減少し、他方は増加する。そして容積の減少したポンプ室は圧力が増加し、吐出側の弁が開いて流体が流れ出すし、容積の増加したポンプ室は圧力が減少し、吸入側の弁が開いて流体が流れ込むこととなる。
【0036】
そして所定時間経過後、電流量を減少させると、ピストン(駆動部M)の変位量は減少されるので、一方のポンプ室から流体を吐出し、他方のポンプ室へ流体を吸引する圧力も小さくなる。この各ポンプ室の流体を吸引・吐出する圧力が、流入口32a側および吐出口34a側の流体の圧力よりも小さくなると、それまで開いていた側の弁は閉じる。そして駆動電流が0(ゼロ)に達した後に反転すると、反転する前に閉じていた側の弁が開き始める。
【0037】
これを、更に詳しく説明すると、例えば、図5(a)のニュートラルの状態から駆動コイル26に電流を流し、駆動コイル26を図5(b)のように矢示a方向に移動させると、第1ポンプ室30aの容積は減少し、第2のポンプ室30bの容積は増加する。そのため容積の減少した第1のポンプ室30aは圧力が増加し、この第1のポンプ室30aと流入口32aとの間の流体流路に設けられる流入用バルブ36aは閉じたままで、この第1のポンプ室30aと吐出口34aとの間の流体流路に設けられる吐出用バルブ38aが開かれ、第1のポンプ室30a内の流体が該吐出用バルブ38aを介して吐出口34aより流出され、他方、容積の増加した第2のポンプ室30bは圧力が減少し、この第2のポンプ室30bと吐出口34aとの間の流路に設けられる吐出用バルブ38bは閉じたままで、第2のポンプ室30bと流入口32aとの間の流路に設けられる流入用バルブ36bが開かれ、該流入用バルブ36bを介して流入口32aより流体が第2のポンプ室30b室内に流入される。
【0038】
所定の期間経過後、駆動コイル26への通電量が減少し始めると、第1のポンプ室30aから流体を吐出する圧力が減少し、第2のポンプ室30bへ流体を吸引する圧力も減少していく。そして、流入口32a側および吐出口34a側の流体圧力の方が大きくなると、第2のポンプ室30bの流入用バルブ36bは閉じ、第1のポンプ室30aの吐出用バルブ38aも閉じる。
【0039】
そして今度は駆動コイル26に逆向きの電流を流して駆動コイル26を図5(c)のように矢印bで示す方向に移動させると、今度は第2のポンプ室30bの容積が減少し、第1のポンプ室30aの容積は増加する。そのため容積の減少した第2のポンプ室30bは圧力が増加し、この第2のポンプ室30bと流入口32aとの間の流路に設けられる流入用バルブ36bは閉じたままで、この第2のポンプ室30bと吐出口34aとの間の流路に設けられる吐出用バルブ38bが開かれ、第2のポンプ室30b内の流体が該吐出用バルブ38bを介して吐出口34aより流出され、他方、容積の増加した第1のポンプ室30aは圧力が減少し、この第1のポンプ室30aと吐出口34aとの間の流路に設けられる吐出用バルブ34aは閉じたままで、この第1のポンプ室30aと流入口32aとの間の流路に設けられる流入用バルブ36aが開かれ、該流入用バルブ36aを介して流入口32aより流体が第1のポンプ室30a内に流入されることとなる。
【0040】
図6は、このときの流入用バルブ36a,36b、あるいは吐出用バルブ38a,38bの開閉動作状態を示したものであるが、図6(a)に示すように流体が流れていない状態では弁体58が弁座48,50に密着し、その流路が閉塞されているが、図6(b)に示すように流体が流れると、流体の圧力により弁体58が弁座48,50より離間し、その流路が開かれ、逆に流体の圧力が弱まると弁体58が弁軸52のアーム部54a,54bの変形復元力によって元の位置に戻され流路が閉塞されるものである。
【0041】
このとき、例えば一般に行われるように、図6(b)の状態からから図6(a)に示す状態までバルブ36a,36bが勢いよく閉鎖すると、図6(b)でアーム部54a,54bが大きく変形しているため、その変形復元力は非常に大きく、弁体58が弁座48,50に勢いよく衝突して大きな雑音を発生させてしまう。
【0042】
一方、図6(b)の状態から、図6(c)に示すように、弁体58が弁座48,50に接触する直前の状態で、一旦流体の圧力変化が小さくなるようにすれば、アーム部54a,54bの変形復元力が弱まり、弁体58が弁座48,50に緩やかに接触し、バルブ閉鎖時の雑音が低減される。
【0043】
このようなバルブの閉動作を実現するために、本発明では、流入用バルブ36a,36bや吐出用バルブ38a,38bの開閉動作時に駆動コイル26に流れる電流を制御することによりこれらのバルブの開閉動作を制御するものである。
【0044】
図7は駆動コイル26に通電される駆動電流の通電量を示している。
【0045】
この駆動コイル26に通電される駆動電流Idの制御は以下のように行われる。すなわちポンプ装置10のケース本体12の外側に取り付けたれたコントロール基板64に搭載されたマイコンに内蔵されているメモリに駆動コイル26に通電される電流波形パターンが格納されており、マイコンに内蔵されたコントローラ回路は、この電流波形パターンに基づいてドライバ回路を制御し、ドライバ回路から駆動コイル26に必要電流が出力される。
【0046】
このポンプ装置10はPWM(Pulse Width Modulation)制御によりコントロールされており、前記ドライバ回路からはパルス電流が出力されるが、駆動コイル26には、そのリアクタンスによってドライバ回路から出力されるパルス波形の高周波成分が減衰され、連続するパルスの頂点が連なったような波形の駆動電流Idが流れることになる。
【0047】
そこで図7に戻って説明すると、駆動コイル26への通電量がゼロ(0)の状態から徐々に通電量を上げていくと、駆動電流波形は、プラス側にサインカーブで緩やかに立ち上がり、時間t1には所定の駆動電流値I1に達し、時間t2までの期間、電流値I1を維持する。このとき、ポンプ装置10の駆動コイル26からなる駆動部Mは、インナーヨーク20、駆動マグネット22a,22bからなる固定部Sによって発生される磁界と駆動コイル26に通電される駆動電流Idとにより発生する磁界の吸引力および反発力により、矢印F1で示す方向に移動する。すると第1のポンプ室30aの容積は大きくなり、第1のポンプ室30a内の流体圧力が低下して、流入口32aから流入する流体の圧力により、第1のポンプ室30a側の流入用バルブ36aが開き、第1のポンプ室30aに流体が流入する。
【0048】
その後、時間t2から駆動電流が下降し始め、T/2までの時間で駆動電流Idは0に達し、マイナス側に移る。この駆動電流Idが下降する際に、所定の駆動電流値I1から0になるまでの時間の前半と後半で駆動電流の変化を異ならせている。
【0049】
すなわち、駆動電流が下降し始めた前半は、駆動電流Idを略直線的に急激に減少させる。このt2からT/2までの時間では、ポンプ装置10の駆動部Mが、時間t2までの移動速度よりも減速した状態で矢印F1で示す方向に移動する。すると、第1のポンプ室30aの流体圧力と、流入口32a側の流体圧力の差が小さくなり、バルブを開く方向に作用する力が弱くなり、第1のポンプ室30a側の流入バルブが閉じ始める。
【0050】
そして、駆動電流Idの下降状態の後半では、所定の駆動電流I1と0との間の電流値I2において、駆動電流Idを所定の期間Δtだけ一定に維持させ、駆動電流Idの下降状態の前半と異なるように通電させる。この中間値I2が維持されているΔtの期間は、駆動部Mが矢印F1で示す方向に移動する速度が、駆動電流Idの下降状態の前半よりもさらに遅くなり、第1のポンプ室30aの容積の変化が小さくなり、バルブが閉まる勢いが弱くなって弁体にかかる運動エネルギーが減少されて、バルブの閉動作のスピードが非常に遅くなる。
【0051】
その後、駆動電流Idは、この中間値I2から0まで再び線形的に変化する。このとき、駆動部Mはケース本体12の内底部まで移動し切った状態になり、第1のポンプ室30aの流入用バルブ36aが閉鎖した状態となる。このようにして第1のポンプ室30aの流入用バルブ36aの弁体が弁座に着座する際は、バルブの閉動作の後半において、弁体を弁座に接近させる方向にかかる運動エネルギーが抑えられて、バルブの閉まる勢いが弱まっているので、弁体は緩やかに弁座に着座し、着座時の衝撃音が抑制される。
【0052】
尚、T/2からTまでの間は、駆動コイル24に駆動電流Idが反対向きに通電されて、駆動部Mが矢印F1で示す方向の反対方向に移動する。そのため、第2のポンプ室30bの流入用バルブ36bが、上記した第1のポンプ室30aの流入用バルブ36aと同様に開閉される。このとき、第1のポンプ室30aの流入用バルブ36aは閉じたままである。また、図7に示した駆動電流Idの波形では、この駆動電流Idが下降状態の途中で一定に維持される電流値I2は、ピーク時の駆動電流値I1の約15%程度である。
【0053】
次に、ポンプ装置10の駆動コイル26に図7に示した駆動電流Idを通電したときのポンプ装置10の動作を、前述の流入用バルブ36a,36bの動作だけでなく吐出用バルブ38a,38bの動作も加えて、図8(a)〜(h)を参照して説明する。まず、時間t0では、駆動部Mは任意の位置、例えば図8(a),(b)に示すように固定部Sの一番上方に配置されており、第1および第2のポンプ室30a,32aに設けられた流入用バルブ36a,36bおよび吐出用バルブ38a,38bは全て閉じている。そして駆動電流Idが立ち上がり始めると、駆動部Mが矢印F1で示す方向に移動し始める。すると、第1のポンプ室30aの容積は増え始め、第1のポンプ室30a側の流体の圧力が低くなる。これにより、第1のポンプ室30aの吐出用バルブ38aは、第1のポンプ室30aから吐出口34a側への流体の逆流を防ぐように閉鎖されたままで、流入用バルブ36aは、弁体の弁部がアーム部による付勢に抗して弁座から離間する方向に移動して開き始め、流入口32aを介して流体が第1のポンプ室30aに導入され始める。
【0054】
一方、第2のポンプ室30bの容積は減り始め、第2ポンプ室30b側の流体の圧力が上昇するので、流入用バルブ36bは、第2のポンプ室30bから流入口32a側への流体の逆流を防ぐように閉鎖されたままで、第2ポンプ室30b側の吐出用バルブ38bが開きはじめ、第2のポンプ室30bに溜められていた流体が吐出口34aを介して吐出される。
【0055】
そして、駆動電流Idが電流値I1に達し、この電流値I1が維持され続ける間、駆動部Mは略等速度で矢印F1の示す方向に移動し続ける(図8(c),(d)参照)。そして、第1のポンプ室30aの流入用バルブ36aは開状態、吐出用バルブ38aは閉状態に保たれ、第2のポンプ室30bの流入用バルブ36bは閉状態、吐出用バルブ38bは開状態に保たれる。これにより、第1のポンプ室30aには流体が導入され、第2のポンプ室30bからは流体が吐出され続ける。そして、時間t2までの期間この電流値I1が維持されると、駆動電流Idは下降し始める。
【0056】
駆動電流Idが下降し始めると、駆動部Mが、矢印F1で示す方向に移動する速度が遅くなり始める。すると、第1のポンプ室30aの容積の増加が緩やかになり、第1のポンプ室30a側と流入口側の流体の圧力差が小さくなり、第1のポンプ室30aに流入する流体の勢いが弱くなる。一方、第2のポンプ室30b側の容積の減少も緩やかになり、第2のポンプ室32b側と吐出口34a側の流体の圧力差が小さくなり、第2のポンプ室30bから吐出される流体の勢いが弱くなる。これにより、第1のポンプ室30a側の流入用バルブ36aが閉じ始め、第2のポンプ室30bの吐出用バルブ38bも閉じ始める。尚、第1のポンプ室30a側の吐出用バルブ38aと第2のポンプ室30bの流入用バルブ36bは閉状態のままである。
【0057】
ここで、第1のポンプ室30aの流入用バルブ36aと第2のポンプ室30bの吐出用バルブ38bが閉鎖しきる直前に、駆動電流Idが、所定の中間値I2で所定の期間Δt維持されると、駆動部Mに作用する矢印F1で示す方向への移動速度が遅くなり、第1のポンプ室30aの容積の変化が小さくなる。すると、これらのバルブ36a,38bの閉じる速度がバルブの閉動作の前半よりも遅くなり、バルブが閉まる勢いが弱くなってバルブの弁体にかかる運動エネルギーが減少される。
【0058】
その後、駆動電流Idは、この中間値I2から0まで線形的に減少していく。すると、駆動部Mが矢印F1にさらに移動し、駆動マグネット22bの一番下の位置まで下がりきると、第1のポンプ室30aおよび第2のポンプ室30bの容積の変動が止まり、第1のポンプ室30aと流入口32a側の圧力差が小さくなり、第2のポンプ室30bと吐出口34a側の圧力差が小さくなるため、第1のポンプ室30aの流入用バルブ36aおよび第2のポンプ室30bの吐出用バルブ38bが閉鎖される。この、本実施形態にかかる制御方法のように、第1のポンプ室30aの流入用バルブ36aおよび第2のポンプ室30bの吐出用バルブ38bの閉動作の後半において、駆動電流Idを中間値I2で所定の期間Δt維持するように駆動コイル26に通電すると、弁部が弁座に衝突する際に、弁部が弁座に接近する方向の運動エネルギーが抑えられており、バルブを緩やかに閉鎖することができる。このように、弁部が弁座に着座する際の弁体の運動エネルギーを低く抑えるようにポンプ装置1を制御することにより、バルブが閉鎖する際の騒音を低減することができる。
【0059】
なお、駆動電流が−側に反転したとき(例えばT/2からTまでの時間)は、駆動コイル26に逆向きの駆動電流Idが流れて、駆動部Mが矢印F1で示す方向とは逆方向に移動して、第1のポンプ室30aの容積が減少し、第2のポンプ室30bの容積が増加する。そして、第1のポンプ室30aの吐出用バルブ38aが開いて、第1のポンプ室30aに溜められた流体が吐出される。一方、第2のポンプ室30bでは流入用バルブ36bが開いて、流入口32a側から第2のポンプ室30bへ流体が導入される。このときの駆動電流Idの変化は、流れる方向が逆になっただけで、上述の場合と同じように変動し、それに伴う駆動部Mの移動および第1のポンプ室30aの吐出用バルブ38a、および、第2のポンプ室30bの流入用バルブ36bの動作も、上述の場合と同じように動作し、バルブが閉鎖する際に、弁部が弁座に衝突する運動エネルギーが抑えられており、バルブを緩やかに閉鎖することができる。
【0060】
そして、この一連の動作を繰り返すことで、本発明のポンプ装置10の第1のポンプ室30aおよび第2のポンプ室30bに、流体が流入および吐出される。このとき、バルブの弁体が弁座に衝止する際の衝突音が抑えられているので、ポンプ装置10の雑音が低減される。
【0061】
このように駆動電流Idを駆動コイル26に通電すれば、バルブの閉動作の前半においては、駆動部Mが勢いよく駆動され、また、弁体が弁軸のアーム部の付勢力によってバルブが閉まる方向に付勢されていることも相まって、勢いよくバルブを閉鎖させることができる。そして、バルブの閉動作の後半、特に弁体が弁座に衝止してバルブが閉鎖する直前において、所定の期間Δtだけ駆動電流が中間値I2で維持されて、バルブの閉鎖する勢いが弱められているため、バルブを緩やかに閉鎖することができる。このようにバルブの閉動作の前半では、バルブが素早く閉鎖され、後半では緩やかに閉鎖されるため、バルブの閉動作が素早く行われ、バルブの閉鎖時の雑音を低減して、ポンプ装置10の性能を向上させることができる。
【0062】
このような制御方法によれば、ポンプ装置10に備えられた流入用バルブ36a,36bおよび吐出用バルブ38a,38bの閉動作の際に、駆動コイル26に通電される駆動電流Idが、流入用バルブ36a,36bまたは吐出用バルブ38a,38bの閉動作の前半と後半とで異なるように通電されることで、流入用バルブ36a,36bおよび吐出用バルブ38a,38bの閉動作が緩やかに行われ、流入用バルブ36a,36bおよび吐出用バルブ38a,38bの閉鎖時の衝撃音が低減されて、その衝撃音に伴う雑音が抑制される。
【0063】
また、駆動部M側に駆動コイル26を有していれば、駆動部M側に駆動マグネットを配設した構造に比べて駆動部Mの質量を小さくすることができ、駆動部Mに係る慣性力を小さくすることができる。そのため、流入用バルブ36a,36bおよび吐出用バルブ38a,38bの閉鎖時には、これらのバルブの閉鎖直前でその駆動コイル26への駆動電流Idの低下を緩め、流入用バルブ36a,36bおよび吐出用バルブ38a,38bがゆっくり閉じられるようにすることができる。
【0064】
また、駆動コイル26へ通電される駆動電流Idの電流値をバルブの閉動作の後半においては所定時間Δt維持させて、その間に駆動コイル26に作用する運動エネルギー(慣性エネルギー)を減衰させ、流入用バルブ36a,36bおよび吐出用バルブ38a,38bの閉鎖する勢いを弱めることで、バルブの閉動作が緩やかに行われて、これに伴う衝撃音などの雑音の低減が効果的になされる。
【0065】
また、流入用バルブ36a,36bおよび吐出用バルブ38a,38bの閉動作を開始した前半における閉鎖速度に比べ、閉鎖直前の閉鎖速度を低下させることで、流入用バルブ36a,36bおよび吐出用バルブ38a,38bの閉動作に要する時間が長くなることも無く、しかも、バルブの閉鎖時の衝撃音も抑制されて雑音の発生が効果的に抑えられる。
【0066】
さらに、この流入用バルブ36a,36bおよび吐出用バルブ38a,38bの閉動作の後半において、駆動コイル26に通電される駆動電流Idの電流値が所定時間Δt、電流値I2で一定に維持されて、流入用バルブ36a,36bおよび吐出用バルブ38a,38bの閉動作の前半と異なるように通電されることで流入用バルブ36a,36bおよび吐出用バルブ38a,38bの閉動作が緩やかに行われるようにし、バルブの閉鎖時の衝撃音に伴う雑音を抑制する事ができる。
【0067】
さらに、流入用バルブ36a,36bおよび吐出用バルブ38a,38bが、これらバルブの弁軸52に設けられたアーム部54a,54bによって、その流路の閉鎖方向に付勢されているため、前記駆動コイル26へ通電される駆動電流Idが、流入用バルブ36a,36bおよび吐出用バルブ38a,38bの閉鎖動作の前半においては、駆動電流Idが急激に減少するように変化され、かつ弁体58がバルブを閉鎖する方向に付勢されているため、バルブを素早く閉鎖することができる。一方、流入用バルブ36a,36bおよび吐出用バルブ38a,38bの閉動作の後半においては、駆動電流Idの変化を前半とは異なり、緩やかに減少するようにすることにより、流入用バルブ36a,36bおよび吐出用バルブ38a,38bの閉動作が緩やかに行われる。これにより、バルブの弁体58が弁座48a,48b,50a,50bに衝突する際の雑音の発生を抑えることができ、ポンプ装置10の運転時の雑音を低減させることができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施できることはもちろんである。例えば、駆動マグネットを駆動部に、駆動コイルを固定部に備えたポンプ装置であってもよい。また、バルブの形状も、上記実施例に示したものに限られず、種々のバルブを適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施形態に係るポンプ装置の概略構成図で(a)はそのポンプ装置の平面図、(b)は、A−A線断面矢示図、(c)は、B−B線断面矢示図である。
【図2】図1に示したポンプ装置の分解斜視図で斜め上方向から見た図である。
【図3】同じくポンプ装置の分解斜視図で、斜め下方向から見た図である。
【図4】このポンプ装置の流体流路に設けられる開閉バルブ(パッシブ型逆止弁)の構成を示した図である。
【図5】このポンプ装置の作動状態を説明するために示した図である。
【図6】このポンプ装置と作動状態における開閉バルブの作動説明図である。
【図7】本発明のポンプ装置の制御方法を説明するために駆動コイルに通電される駆動電流の波形パターンのタイミングチャートを示したものである。
【図8】この駆動コイルへの駆動電流の通電とバルブの開閉動作との関係を説明するために示した図である。
【符号の説明】
【0070】
10 ポンプ装置
20 インナーヨーク
22a,22b 駆動マグネット
26 駆動コイル
M 駆動部
S 固定部
28 アウターヨーク
30 溜め部
30a 第1のポンプ室
30b 第2のポンプ室
32a 流入口
34a 吐出口
36a,36b 流入用バルブ
38a、38b 吐出用バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を吸引する流入口と、前記流入口に連結され該流入口から吸引した流体を溜めておくための溜め部と、該溜め部に溜めた前記流体を吐出する吐出口と、前記溜め部の容積を変化させる容積ポンプとを有するポンプ装置の制御方法において、
前記容積ポンプは駆動手段によって駆動され前記溜め部の容積を変化させる駆動部を有し、該駆動部には、前記駆動手段としての駆動コイルを有し、
前記駆動コイルへ通電される駆動電流は、前記流入口および前記吐出口と前記溜め部との間に配設された前記流入口または前記吐出口と前記溜め部との流路を開閉するバルブが閉動作を開始した後の前記駆動コイルへ通電される駆動電流が、前半と後半とで異なるように通電されることにより前記バルブの閉動作が緩やかに行われることを特徴とするポンプ装置の制御方法。
【請求項2】
前記駆動コイルへ通電される駆動電流は、後半において電流値を所定時間維持させることにより前半と後半とで異なるように通電され、前記バルブの閉動作が緩やかに行われることを特徴とする請求項1記載に係るポンプ装置の制御方法。
【請求項3】
前記駆動コイルへ通電される駆動電流が、前記バルブが閉動作を開始した前半における閉鎖速度に比べ閉鎖直前の閉鎖速度を低下させるように通電されることにより前記バルブの閉動作が緩やかに行われることを特徴とする請求項1または2記載に係るポンプ装置の制御方法。
【請求項4】
流体を吸引する流入口と、前記流入口に連結され該流入口から吸引した流体を溜めておくための溜め部と、該溜め部に溜めた前記流体を吐出する吐出口と、前記溜め部の容積を変化させる容積ポンプとを有するポンプ装置の制御方法において、
前記容積ポンプは駆動手段によって駆動され前記溜め部の容積を変化させる駆動部と該駆動部を駆動可能に支持する固定部とを有し、
前記駆動部には、駆動マグネットおよび駆動コイルのどちらか一方を備え、前記固定部には、前記駆動マグネットおよび前記駆動コイルのどちらか他方を備え、前記駆動マグネットおよび前記駆動コイルの互いの磁気吸引力または磁気反発力によって前記駆動部が移動可能に構成され、
前記駆動コイルへ通電される駆動電流は、前記流入口および前記吐出口と前記溜め部との間に配設された前記流入口または前記吐出口と前記溜め部との流路を開閉するバルブが閉動作を開始した後、後半において前記駆動コイルへ通電される駆動電流の電流値を所定時間維持させ、前半と異なるように通電させることにより前記バルブの閉動作を緩やかに行わせたことを特徴とするポンプ装置の制御方法。
【請求項5】
流体を吸引する流入口と、前記流入口に連結され該流入口から吸引した流体を溜めておくための溜め部と、該溜め部に溜めた前記流体を吐出する吐出口と、前記溜め部の容積を変化させる容積ポンプとを有するポンプ装置の制御方法において、
前記流入口および前記吐出口と前記溜め部との間に前記流入口または前記吐出口と前記溜め部との流路を開閉するとともに閉鎖方向に付勢されたバルブを有し、
さらに、駆動手段によって駆動され前記溜め部の容積を変化させる前記容積ポンプの駆動部には、駆動マグネットおよび駆動コイルのどちらか一方を備え、該駆動部を駆動可能に支持する固定部には、前記駆動マグネットおよび前記駆動コイルのどちらか他方を備え、前記駆動マグネットおよび前記駆動コイルの互いの磁気吸引力または磁気反発力によって前記駆動部が移動可能に構成され、前記バルブが閉動作を開始した後の前記駆動コイルへ通電される駆動電流が、前半と後半とで異なるように通電されることにより前記バルブの閉動作が緩やかに行われることを特徴とするポンプ装置の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−14205(P2008−14205A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−185377(P2006−185377)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】