説明

マイカ材料中の微細孔の処理

約15から300の間の分子量を有するシランを得、前記シランをマイカ紙(20)に添加することを含んでなる、マイカ紙(20)内の微細孔(24)の処理方法。次いで、前記シランを、前記マイカ紙内の前記微細孔の内部表面と反応させる。この後、前記マイカ紙を樹脂で含浸し、前記樹脂は、前記マイカ紙内の前記微細孔(24)の内部表面と前記シランを介して結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、Smithらにより2005年6月14日に出願された米国特許出願第11/152,983号、「樹脂に導入された高熱伝導性材料」の一部継続出願であり、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明の分野は、樹脂の導入を改善するためのマイカ中の微細孔の処理並びに加工及び樹脂硬化後の微小空隙の縮小に関する。
【背景技術】
【0003】
いかなる形態の電気器具を使用する場合であれ、導体を電気的に絶縁することが必要である。寸法の絶え間ない縮小並びに全ての電気及び電子系の簡素化の推進に伴い、対応して、より良好で且つよりコンパクトな絶縁体及び絶縁系を見出すことが、必要となっている。
【0004】
表面に容易に接着させることができる強靭で柔軟な電気絶縁材料であるという実用的な利点を有するので、様々なエポキシ樹脂材料が、電気絶縁系で広範囲に使用されてきた。マイカフレーク及びガラス繊維等の慣用の電気絶縁材料を、これらのエポキシ樹脂で表面被覆し結合させると、高い機械的強度、耐化学薬品性及び電気絶縁性を備えた複合材料を製造することができる。多くの場合に、エポキシ樹脂が、慣用のワニスに取って代わっているが、それにも拘らず、このような材料は、一部の高圧電気装置で引き続き使用されている。
【0005】
良好な電気絶縁体である材料は、その本性により、本来的に良好な熱絶縁体であるが、このことは、望ましくない。特に空冷電気器具及び構成要素での熱絶縁挙動は、構成要素の、更には器具全体の、効率及び耐久性を低下させる。最大の電気絶縁性及び最小の熱絶縁性を有する電気絶縁系を製造することが望ましい。
【0006】
電気絶縁は、往々にして、それ自体が様々な層を有する絶縁テープの形態で現れる。界面で繊維層に結合している紙層が、これらのタイプのテープに共通していて、その際、両方の層が、樹脂で含浸されていることが多い。好ましいタイプの絶縁材料は、マイカテープである。マイカテープの改善には、特許文献1に教示されている触媒添加マイカテープが包含される。マイカテープを導体の周囲に巻き付けると、極めて良好な電気絶縁性を得ることができる。この例を、図1に示す。そこでは、複数回方向転換する導体14を含んでなるコイル13が図示されており、導体14は、そこに図示されている例では、ベークライト処理されたコイルに組み立てられている。ターン絶縁体15は、繊維材料、例えばガラス又は熱処理されているガラス及びダクロン、から調製されている。コイルのための接地絶縁は、1つ又は複数の層の複合マイカテープ16をベークライト処理されたコイル14の周りに巻き付けることによりもたらされる。このような複合テープは、例えばガラス繊維布又はポリエチレングリコールテレフタレートマットでできた、柔軟なバッキングシート18と組み合わされた小さなマイカフレークの紙又はフェルトであってよく、ここで、マイカ20の層が、液体樹脂結合剤によりそれに結合されている。通常、複数層の複合テープ16を、電圧要求に応じてコイルの周りに巻き付ける。強靱な繊維材料、例えばガラス繊維、でできた外側テープ21をコイルに巻きつけてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,103,882号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
通常、複数層のマイカテープ16が、コイルの周りに巻き付けられるが、高圧コイルでは、16層以上が、通常、使用される。次いで、樹脂がテープ層に含浸される。樹脂は、また、絶縁テープとは独立に、絶縁体としても使用することができる。残念ながら、この量の絶縁体は、熱放散の複雑さを更に増すだけである。
【0009】
高圧電気器具で使用される際に、マイカは、エポキシ等の含浸樹脂に対する濡れ及び接着性に乏しいので、微小空隙が樹脂硬化及び界面層間剥離の間に生じることがある。マイカ紙内の深部に位置するので、マイカ内の微細孔は、樹脂の濡れ及び接着が特に乏しい。主な絶縁体は、フレーク又はプレート小片の形態のマイカであり、次いでこれは、砕片又は紙で使用される。絶縁体を曲げ、続いて加工する間、マイカテープは、十分な機械的強度を有するが、濡れに乏しい。
【0010】
濡れ性が乏しいので、含浸樹脂と樹脂内の充填材とを、マイカのこれらの微細孔エリアに浸透させ接着させることが困難である。含浸樹脂及び充填材のこの濡れの乏しさにより、構造中に空隙が生じることがあり、これは、熱伝導性を低減させ、その結果、マイカ絶縁体における熱伝導性を低下させる。加えて、この濡れの乏しさにより、微小空隙が形成し、次いでこれは、絶縁体構造内で、高電圧下で、部分的な放電をもたらす。これにより、劣悪な電圧耐久性が劣り、従って、電気器具の使用寿命を縮める。
【0011】
必要なことは、マイカ微細孔の内部表面に樹脂を接着させるためのより良好な技術及び手法である。先行技術には他の問題も存在するが、その一部は、更に読み進めば明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記を考慮して、本発明に一致する方法及び装置は、特に、マイカに添加された樹脂がマイカに結合して、樹脂で満たされていないままの微細孔の数を著しく低減するように、マイカ紙内の微細孔の処理を容易にする。この方法には、微細孔を、低分子量シラン、これは溶液でも蒸気形態であってよいのだが、で処理することが包含される。加えて、シランは、適合する表面官能性を有するナノ粒子充填材を引き付けることもできる。マイカを圧縮し、フレーク小片表面が隣接して、それらの間へのシランの浸透を許さなくなることにより、微細孔のためのシラン処理の選択性を強化することができる。
【0013】
本発明のこれらの形態及び利点は、他の目的と共に、特定の実施形態において、約15から300の間の分子量を有するシランを得、そのシランをマイカ紙に添加することからなる、マイカ紙内の微細孔を処理する方法により与えられる。次いで、シランをマイカ紙内の微細孔の内部表面と反応させる。その後、マイカ紙を樹脂で含浸し、樹脂がマイカ表面にシランを介して結合する。
【0014】
特定の実施形態では、シランを、溶媒によりマイカ紙に添加する。含浸に先立って、溶媒を実質的に乾燥させる。シランは、シラン(SiH4)、シラノール(SiH3OH)、メチルシラン(SiH3CH3)、ビニルシラン(SiH3CHCH2)、アミノシラン(SiH3NH2)、アルコキシシラン(SiH3OR)及びエポキシシランのうちの、1種又は複数である。又は、シランは、アミノメチルトリメチルシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルジメチルシラン及びアリルトリメチルシランのうちの、1種又は複数であってもよい。場合によっては、比較的小さなシランは、32〜90の分子量を有する。比較的大きなタイプのシランは、100〜300の分子量を有する。比較的大きなタイプのシランは、より小さなタイプ程には、マイカ紙内の接触マイカ表面の間に入らないことが多い。他の特定の実施形態では、複数のシラン分子量を使用する。
【0015】
ある実施形態では、樹脂は、樹脂の1〜60重量%を構成するナノ充填材を含有する。場合によっては、少なくとも一部のナノ充填材を表面処理して、それらが、下記で検討するように、シランと反応できるようにする。シランの添加に先立って、マイカ紙を圧縮してもよく、また、後で圧縮するのであれば、圧縮の間に、過剰のシラン溶液を除去してもよい。
【0016】
本発明の他の特定の実施形態は、マイカ紙内の微細孔の処理方法を提供し、この方法は、約15から300の間の分子量を有するシランを得、マイカ紙を圧縮し、次いで、シランをマイカ紙に添加することからなる。次いで、シランを、マイカ紙内の微細孔の内部表面と反応させ、マイカ紙を樹脂で含浸する。樹脂は、マイカ紙内の微細孔の内部表面に、シランを介して結合し、これにより、マイカ紙内の接触マイカフレーク小片の表面が、圧縮によるシランへの曝露を受けにくくなる。
【0017】
特定の実施形態では、マイカ紙の圧縮量は、マイカ紙の厚さの5〜30%である。マイカ紙を、樹脂の含浸のために、圧縮するが、樹脂を含浸するための圧縮量は、シランを添加するための圧縮量とほぼ同じである。場合によって、シランをマイカ紙に溶液で添加し、マイカ紙を、樹脂含浸に先立って、溶液から実質的に乾燥させる。また、32〜90の比較的低い分子量のシランを使用することができる。
【0018】
本発明の他の実施形態も、また、存在し、これは、詳細な説明を更に読むと、明らかになるであろう。
【0019】
本発明を、次の図面を参照して、例として、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】先行技術による、ステータコイルの周りに巻き付けられた絶縁テープの使用を示す図である。
【図2】シラン処理のために圧縮されるマイカテープ及びマイカ細孔の断面の様式図である。
【図3】本発明の充填樹脂を介して移動するフォノンを示す図である。
【図4】ステータコイルを介しての熱移動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、マイカ紙(マトリックス)内の相互に連結した微細孔をシランで処理し、これによって、後で含浸された樹脂がシランを介してマイカに結合することを可能にする系及び方法を提供する。シランは、低分子量であり、マイカに結合する少なくとも1個の官能基を含有する。次いで、含浸樹脂がシランに結合するが、更に、ナノ充填材等の充填材が樹脂中に存在してもよく、充填材自体も、表面官能性に応じて、シランに結合し得る。フレーク小片表面が他のマイカフレークにより封鎖されるようにマイカを圧縮することにより、シランとマイカとの結合を制御することができる。
【0022】
これまでのマイカ処理とは異なり、本発明は、マイクロフレーク小片を圧縮することにより、微細孔を目標とすることができる。これにより、マイカ紙内の微小空隙領域への樹脂の進入及び結合を改善して、熱伝導性及び電圧耐久性を向上させる。
【0023】
本発明は、マイカ内の微細孔をシランで、特に低分子量のシランで、処理する。シランは、より効果的なマイカへの結合をもたらし、空孔の内部表面を効果的に被覆する。これは、含浸樹脂の濡れ性を著しく改善し、効果的に接着性を強化する一方で、さもなければ形成しているであろう微小空隙を縮小し又は消滅させる。
【0024】
含浸樹脂は、高熱伝導性(HTC)複合体であってよい。HTC複合体は、充填材(即ち、ナノ充填材で、マイクロ及びメソサイズであってもよい。)と組み合わされた樹脂ホストネットワークを含有してなり、これは、2相有機−無機複合材料である。また、HTC材料は、分子アロイに基づく有機−無機連続相と有機−無機界面がデンドリマーコア−シェル構造とは非分離である分離有機デンドリマー複合体とから形成されている、有機−無機ハイブリッド材料により形成されていてもよい。確実に、構造要素の長さ規模を、熱移動を担うフォノン分布よりも短くするか同程度にすることによって、フォノン移動を強化し、フォノン散乱を低減する。
【0025】
2相有機−無機複合体は、無機マイクロ、メソ又はナノ粒子を線状又は架橋ポリマー(熱可塑性樹脂)及び熱硬化性樹脂に導入することにより形成することができる。ホストネットワークは、ポリマー及び他のタイプの樹脂を包含し、その定義は以下に示す。通常、ホストネットワークとして作用する樹脂は、粒子と相溶性であればいかなる樹脂であってもよく、必要であれば充填材の表面に導入された基と反応し得る。有機−無機ハイブリッドについて、ナノ粒子の寸法は、典型的には、ポリマーネットワークセグメント長さかそれ以下の水準を有する。例えば、1〜30nmである。無機粒子は、共有結合したハイブリッド有機−無機均質材料を形成する反応性表面を有していてもよい。粒子は、酸化物、窒化物、炭化物並びに酸化物、窒化物及び炭化物の化学量論的及び非化学量論的ハイブリッド混合物であってよく、更なる例は、以下に示す。
【0026】
無機粒子を表面処理して、ホストネットワークとの反応に関与しうる様々な表面官能基を導入する。表面官能基には、これらに限られないが、ヒドロキシ、カルボキシ、アミン、エポキシド、シラン又はビニルの各基が包含される。これらの基は、湿式化学法、非平衡プラズマ法、化学及び物理蒸着、スパッタイオンメッキ並びに電子及びイオンビーム蒸発法を始めとする様々な方法を使用して付加することができる。
【0027】
分離有機デンドリマーハイブリッドを、相互に又は樹脂マトリックスと、反応させて、単一の材料を形成することができる。デンドリマーの表面は、前記と同様の反応基を含有していてもよく、これにより、デンドリマー−デンドリマー又はデンドリマー−有機マトリックス反応を生じる。デンドリマーは、該当する反応基を含有する無機コア及び有機シェルを有する。また、デンドリマーは、一般的なゾル−ゲル化学に関係する反応と同様の無機反応に関与しうるヒドロキシル基又はシラン基等の反応基をも含有する無機シェルを備えた有機コアを有していてもよい。
【0028】
非分離有機−無機ハイブリッドの使用に関しては、連続分子アロイを形成するためにゾル−ゲル化学を使用することが可能である。水性及び非水性反応を伴うゾル−ゲル化学を使用することができる。有機−無機ハイブリッドを形成するための他の化合物には、ポリヘドラルオリゴマーシルセスキオキサン(POSS)、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)及びテトラブチルオルトチタネート(TBOT)並びに有機官能化無機化合物である関連モノマー及びオリゴマーハイブリッド化合物が包含される。POSSの例では、分子は、R−SiO1.5の構成ブロックの周りに構成されていて、ここで、R基は、他の有機化合物及びホストネットワークと相溶するか、及び/又は、反応するように選択される。ベース化合物を、ポリマーセグメント及びコイル構造のサイズと同程度のより大きな分子が得られるように組み合わせてもよい。POSSを使用して、有機−無機ハイブリッドを創造してもよく、既存のポリマー及びネットワークにグラフトさせて、熱伝導性を始めとする特性を制御してもよい。Aldrich(商標) Chemical Co.、Hybrid Plastics(商標) Inc.及びGelest(商標) Inc.等の供給者から、材料を得ることができる。
【0029】
上で検討したとおり、シランは、低分子量であり、液状溶媒により微細孔に運び込まれる。溶媒は、当分野で知られており、ケトン、エーテル並びにトルエン及びキシレン等の炭化水素を包含する。溶媒の混合物も、また、使用することができる。更に、より揮発性のシランを、蒸気方法により、気体状流体に分散させることもできる。これらの含浸方法により、マイカの著しい分散を引き起こすことなく、紙のように、マイカがどんな形態であっても、シランが挿入される。
【0030】
低分子量のシランは、約32〜300の範囲にあるのがよく、主に官能基又は側鎖により決定される。適切なシラン化合物の例には、単純なシラン(SiH4)、シラノール(SiH3OH)、メチルシラン(SiH3CH3)、ビニルシラン(SiH3CHCH2)、アミノシラン(SiH3NH2)、アルコキシシラン(SiH3OR)及びエポキシシランが含まれる。官能基には、アミノ、エポキシ、ビニル及びアリルが含まれる。やや大きな官能性シラン、まだ低分子量の分子であるのだが、の例には、アミノメチルトリメチルシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルジメチルシラン及びアリルトリメチルシランが包含される。
【0031】
樹脂を添加すると、生じる化学結合構造は、
マイカ−Si−R−樹脂
として、又は場合によって、ナノ充填材が適切に官能化されている場合には、
マイカ−Si−R−充填材
として一般化することができる。様々なタイプのシランを同様の処理に使用することができる。比較的低い極性のシランが、微細孔の処理には、より良好に機能するが、シランの重量が増えるにつれて、これは、重要でなくなる。
【0032】
充填材を表面官能化することができるが、充填材を表面官能化しなくても、微細孔では、樹脂中に存在する任意の充填材の濃度が高くなる。これは、低分子量シランでの微細孔の処理によって、含浸樹脂とマイカ細孔表面との結合が著しく増大するためである。これは、マイカ細孔ネットワーク中での充填材のより大きな滞留及び利用を確実にし、このことが、高い熱伝導性及び電圧耐久性を、マイカ紙及び接地壁絶縁体等の、任意の製品に与える。
【0033】
マイカフレーク小片全体ではなく微細孔を選択的に被覆するために、マイカを圧縮し、マイカ表面を他のマイカフレーク小片と接触させ、シランに露出表面を与えないようにする。シランで処理されるフレーク小片表面が余りに多すぎる場合には−表面全体を被覆する場合がそうであるのだが−紙、テープ及び他の製品は、工業的に必要とされる電圧耐久性を欠くであろう。この実施形態の多くの例では、マイカが既に紙及び/又はテープ形状である場合に、マイカを圧縮する。この圧縮は、また、埋没している微細孔をより接近しにくいものとするが、時間が経てば、まだシランの拡散がある。従って、シランの微細孔への最適な拡散は、圧縮の時間及び量の関数である。
【0034】
マイカの圧縮量は、マイカがどのような形状にあるかに依存する。典型的には、工業で使用されるマイカは、典型的に厚さ3〜6ミルの紙として存在し、往々にして、布で黒くされて、テープを形成している。この形態では、厚さを5〜30%圧縮して、露出マイカフレーク小片を接触させ、シラン処理に曝されないようにするが、一部の少量のシランは、圧縮された表面に達する。圧縮が大きいほど、シラン処理に曝される接触表面は少なくなるが、このことは、また、埋没した空孔にシランが達する時間をより長くする。標準的に、典型的な含浸樹脂は、未圧縮のテープ層に、含浸温度で、約30〜60秒で含浸しうる。
【0035】
図2は、相互にランダムに積み重ねられている多くの小さなマイカフレーク小片23からなるマイカ紙20の断面の横断面図を、示している。マイカフレークの不整合により、微細孔24が創られている。紙が部分圧縮26下にあるときに、これらの空孔表面が、シラン溶液で処理される。シラン処理のための目標空孔は、圧縮後に、直径約50nm以上である。大きさ50nm以上の空孔の少なくとも75%が、シランで処理されるのがよい。
【0036】
圧縮により、大きな空孔及び、フレーク小片層間の露出表面22のような、非常に小さな空孔の両方が、減少し又は消滅する。圧縮を解放すると、これらの空孔の多くが、その元の寸法に戻る。しかしながら、後で、加圧下に、マイカテープを樹脂で含浸すると、これらの比較的小さい空孔は、再び消滅する。特定の一実施形態では、シラン処理のために使用される圧縮量は、後の樹脂含浸のために使用される圧縮とほぼ等しい。テープをステータコイルにドライ適用する場合、GVPIでは、通常、コイルは大きな圧縮量は有さないが、気室により膨れ上がることがある。これらのテープは、1〜5%圧縮される。しかし、高電圧GVPIコイルでは、目標は5〜15%である。VPIでは、通常の圧縮は、約20%である。この機械的な圧縮は、含浸樹脂が及ぼす圧力ではないことに留意すべきである。
【0037】
圧縮下で樹脂を処理するための一方法は、マイカ紙を、圧縮後に、シラン溶液浴に載置することを伴う。もう一つの方法は、マイカ紙を圧縮し処理することができる多孔性ローラーを使用することである。多孔性ローラーは、孔を空けられていてもよく、工業用スポンジ等の多孔性材料で製造されていてもよい。また、複数の圧縮及び処理サイクルを行うことができる。
【0038】
処理後に、過剰のシラン溶液を流出させてもよく、及び/又は、可能であれば加熱下に、蒸発させてもよい。マイカは、それが乾燥するか、ほぼ乾燥するまで、圧縮下に維持するのがよい。空孔が処理されたら、樹脂でマイカを含浸することができる。
【0039】
シラン分子の寸法も、また、微細孔を処理する際の要素として使用することができる。上で議論した分子量範囲の300に近い比較的大きな分子は、比較的小さな分子ほどには容易に、接触マイカフレーク小片表面の間には入らない。しかしながら、比較的大きな分子は、比較的小さな分子ほどには容易に、微細孔に達する方法もない。従って、マイカを圧縮する能力と、微細孔を被覆することを所望するか又は接触フレーク小片表面を被覆しないことを所望するか、に応じて、より小さな又はより大きなシラン分子を使用することができる。例えば、マイカを圧縮する能力が良好である場合には、接触表面を曝すことの懸念が消え、より低分子量のシランを使用することができる。また、シランを接触表面の間に入れないことよりも、微細孔を被覆することをより望む場合には、低分子量のシランを使用することができる。この文脈において、より小さいとは、32〜300mW範囲の下限に近いシランを指し、より大きいとは、同じ範囲の上限に近いシランを指している。いずれのタイプも、なお、本発明の低分子量のシランである。
【0040】
特定の実施形態では、本発明は、約15から300の間の分子量を有するシランを得、そのシランをマイカ紙に添加することとからなる、マイカ紙内の微細孔を処理する方法を提供する。次いで、シランを、マイカ紙内の微細孔の内部表面と反応させる。この反応の後に、樹脂でマイカ紙を含浸し、シランを介して、樹脂は、マイカ紙内の微細孔の内部表面に結合する。
【0041】
特定の実施形態では、含浸の前に実質的に乾燥させた溶媒により、シランをマイカ紙に添加する。シランは、シラン(SiH4)、シラノール(SiH3OH)、メチルシラン(SiH3CH3)、ビニルシラン(SiH3CHCH2)、アミノシラン(SiH3NH2)、アルコキシシラン(SiH3OR)及びエポキシシランのうちの1種又は複数である。又は、シランは、アミノメチルトリメチルシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルジメチルシラン及びアリルトリメチルシランのうちの1種又は複数であってもよい。場合によっては、比較的小さなシランは、32〜90の分子量を有する。比較的大きなタイプのシランは、100〜300の分子量を有し、このことにより、このシランは、マイカ紙中の接触マイカ表面の間に多く入る傾向はなく、使用することができる。他の特定の実施形態では、複数のシラン分子量を使用する。
【0042】
或る実施形態では、樹脂は、ナノ充填材を含有する。ナノ充填材は、樹脂の1〜60重量%を構成する。場合によっては、少なくとも一部のナノ充填材が、シランと反応できるように、表面処理されていてもよい。シランを添加する前に、マイカ紙を圧縮することができる。
【0043】
他の特定の実施形態では、本発明は、約15から300の間の分子量を有するシランを得、マイカ紙を圧縮し、次いで、シランをマイカ紙に添加することからなる、マイカ紙内の微細孔を処理する方法を提供する。次いで、シランを、マイカ紙内の微細孔の内部表面と反応させ、マイカ紙を樹脂で含浸する。樹脂は、マイカ紙内の微細孔の内部表面に、シランを介して結合し、圧縮により、マイカ紙内の接触マイカフレーク小片表面は、シランに曝露されにくい。品質を最適化するために、圧縮は、硬化サイクル中、維持されるのがよい。
【0044】
特定の実施形態では、マイカ紙の圧縮量は、マイカ紙の厚さの5〜30%である。マイカ紙を、樹脂の含浸のために圧縮し、ここで、樹脂を含浸するための圧縮量は、シランを添加するための圧縮量とほぼ同じである。場合によって、シランをマイカ紙に溶液で加え、樹脂含浸に先立って、マイカ紙を溶液から実質的に乾燥させる。また、32〜90の比較的低い分子量のシランを使用することができる。
【0045】
前述のとおり、フォノン散乱を低減するために、材料の構造形状を制御することが重要である。これは、更に、そのマトリックスが、高い熱伝導性を示し、粒子サイズ及び樹脂とのその界面特性がこの作用を持続するのに十分であることを保証し、また、フォノン散乱を低減するための長さ規模要件を満たすことが知られているナノ粒子を使用することにより、促進することができる。短周期性及び長周期性の両方を有する反応デンドリマー格子並びに液晶エポキシ及びポリブタジエン等のホスト樹脂から形成されうる梯子又は秩序化ネットワーク構造を始めとする、より高度な秩序化構造を選択することもまた、これには有利である。
【0046】
充填された樹脂は、回路基板及び絶縁テープ等の様々な工業において結合樹脂として使用することができる。特定の種類の絶縁テープは、発電機分野で使用されるマイカ−ガラステープである。これらのタイプのテープを伴った樹脂は、当分野で知られているとおり、結合樹脂として又は含浸樹脂として、使用することができる。テープを伴わない充填樹脂は、また、回転及び静的電気器具構成要素での電気絶縁用途を満たすために発電機で使用することもできる。
【0047】
電気的物品に適用する前又は後に、テープは、樹脂で含浸することができる。樹脂含浸技術には、下記で更に議論するVPI及びGVPIが包含される。VPIでは、テープを巻き、含浸させたら、これを圧縮する。所定の場所で、圧縮テープ中の樹脂を硬化させるが、これにより、HTC材料の位置が有効に固定される。一部の実施形態では、当業者には明らかなように、樹脂を2段階プロセスで硬化させる。しかしながら、充填されたHTC材料の最適な圧縮が、圧縮段階で完全に未硬化の樹脂には有利である。
【0048】
図3は、本発明の一実施形態を示している。樹脂マトリックス32に充填されたHTC材料30が、ここには図示されている。マトリックスを通して移動するフォノン34は、平均経路長さnを有し、これは、フォノン平均自由経路である。この経路長さは、樹脂マトリックスの正確な組成に応じて変動しうるが、一般に、エポキシ樹脂等の樹脂については、2から100nmであり、より典型的には、5〜50nmである。従って、充填されたHTC材料間の平均距離は平均して、この距離よりも短いのがよい。HTC材料間の距離は、テープの厚さ方向と横断方向とで変わりうるが、一般に、間隔を最適化することを必要とするのは、厚さ方向である。
【0049】
フォノン34が樹脂32を通って移動する際、これらは、埋め込まれたHTC材料30に沿って通過する傾向がある。これは、局所的なフォノンの流れを高める。何故なら、HTC原料は、10〜1,000W/mKの熱伝導性を有するが、これに対して樹脂が約0.1〜0.5W/mKであるからである。フォノンが、充填されたHTC材料に沿って通過する際、材料間の距離がn未満であると、フォノン36は、次のHTC材料に進み、従ってHTC材料は連続ネットワークを形成する。図3は、理想化された経路を図示している。実際には、フォノンが樹脂とHTC材料との間を通る際に、フォノン散乱が存在するが、材料間の距離が短いほど、散乱は少なく、HTC材料と樹脂との間のフォノン伝搬特性の調和がより良好となる。
【0050】
樹脂に充填されるHTC材料の量は、実際には、極めて少なくてよく、例えば、図3に示されているとおり、約10%であってよい。従って、充填されたHTC材料間の平均距離又は長さ規模は、nよりもやや高くてもよいが、しかしながら、大部分は、それでもn未満であり、従って本発明の実施形態に該当する。特定の実施形態では、次のHTC材料からの距離がn未満である材料の割合は、50%を超え、特定の実施形態では、75%を超える。特定の実施形態では、HTC材料の平均長さは、nよりも大きくて、更にフォノン移動を手助けする。
【0051】
nが短いほど、充填されるHTC材料の濃度は高く、逆に、粒子サイズが大きいほど、必要なHTC材料は少ない。特定の実施形態では、樹脂及び充填材の全体積に対して5〜60%の充填されたHTC材料が使用され、より特定の実施形態では、25〜40%である。樹脂がテープに含浸されると、樹脂は、テープ繊維と基材との間の空間を埋める。しかしながら、この時点でのテープ内のHTC分布は往々にして、最適化されておらず、HTC材料間の平均距離は、nより大きくてもよい。次いで、本発明の実施により、樹脂含浸テープを圧縮し、充填されたHTC材料間の距離を縮める。
【0052】
充填された樹脂でテープを含浸する場合、特に樹脂が30%以上充填材である場合には、テープの繊維又は粒子が、一部のHTC材料を封鎖するように作用する。しかしながら、テープを圧縮することにより、逆のことが起こり、より多くの充填材が、テープ内に捕捉され、HTC材料は、それ自体、全体構造の非可動部に結合する。HTC充填材は、相互に係止さえされる。所定の実施形態では、充填材は樹脂マトリックスと反応しないことが示唆されるが、しかしながら、一部の実施形態では、充填材は、事実、樹脂と共有結合を形成し、より均質なマトリックスを形成する。均質なマトリックスでは、充填材に結合した樹脂分子は、未結合の樹脂分子よりも、圧縮の間中、より良好に保持される。
【0053】
樹脂は、複数の工業で使用され、数多くの用途を有する。樹脂の様々な特性は、その用途だけでなく、共に使用される製品の品質及び効率に影響を及ぼす。例えば、樹脂が電気絶縁用途で使用される場合、その絶縁耐力の特性及び電圧耐久性は、高くなければならず、熱安定性及び熱耐久性も同様である。しかしながら、往々にしてこれらの目的とは逆に、樹脂は、通常、低い熱伝導性をも有する。本発明は、樹脂の様々な物理的特性と、それらが導入される絶縁系とを均衡させて、絶縁耐力、電圧耐久性、熱安定性及び熱耐久性、機械的強度及び粘弾性応答性等の主要な物理的特性を、十分に維持し、更には向上させながら、従来の電気絶縁材料よりも高い熱伝導性を有する系を製造する。熱的及び機械的循環作用によって引き起こされる応力の結果生じる層間剥離及び微小空隙形成は、低減し又は消滅する。本明細書で使用される場合、樹脂という用語は、変性エポキシ、ポリエステル、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエステルイミド、ポリエーテルイミド、ビスマレイミド、シリコーン、ポリシロキサン、ポリブタジエン、シアネートエステル、炭化水素等、並びに、これらの樹脂の均質なブレンドを始めとする、全ての樹脂及びエポキシ樹脂を指している。この樹脂の定義には、架橋剤、促進剤及び他の触媒等の添加剤並びに加工助剤が包含される。液晶熱硬化性樹脂(LCT)及び1,2ビニルポリブタジエン等の、或る種の樹脂は、低分子量特性と良好な架橋性とを兼備する。樹脂は、ヘテロ原子を有し又は有しない炭化水素等の有機マトリックス、シリケート及び/又はアルミノシリケート成分を含有する無機マトリックス並びに有機及び無機マトリックスの混合物から構成されていてよい。有機マトリックスの例には、必要な場合には無機粒子表面上に導入された反応基と反応しうる、ポリマー又は反応性熱硬化性樹脂が包含される。また、架橋剤を樹脂に加えて、最終架橋ネットワークの構造及びセグメント長さ分布を操作することができ、このことは、熱伝導性にプラスの作用を及ぼし得る。この熱伝導性向上は、また、触媒、促進剤及び他の加工助剤等の、他の樹脂添加剤による変性によっても得ることができる。液晶熱硬化性樹脂(LCT)及び1,2ビニルポリブタジエン等の或る種の樹脂は、低分子量特性と良好な架橋性とを兼備する。その下部構造の高いミクロ及びマクロの秩序化−これは、改善されたフォノン輸送の結果として熱伝導の向上をもたらすのだが−により、これらのタイプの樹脂は、熱をより良好に伝導する傾向がある。フォノンがより良好に移動するほど、熱はより良好に移動する。
【0054】
本発明の高熱伝導性充填材を樹脂と混合すると、これらは連続製品を形成する。場合によっては、共有結合が、充填材と樹脂との間に形成される。しかしながら、連続はやや主観的であり、観察者が使用する尺度に左右される。マクロ規模では、製品は連続しているが、ナノ規模では、充填材と樹脂ネットワークとの間には、まだ明確な界面が存在しうる。従って、樹脂と混合されている高熱伝導性充填材に言及する場合、マクロ規模では、連続的な有機−無機複合体が形成しているが、一方、ミクロ規模では、同じ混合物をハイブリッドと称することもできる。
【0055】
前述のとおり、充填された樹脂を、テープなしに発電機分野で使用して、回転及び静的電気器具構成要素における電気絶縁への適用を満たすことができる。発電機での高熱伝導性材料の使用は、多様である。ステータコイル内には、設計を最適化するために高い熱伝導性を有さなければならない接地壁以外の構成要素材料が存在する。熱除去を最大化するために、コイルに随伴する他の構成要素も同様である。ステーター設計の開発は、発電機効率を最大化するために、ローター設計を改善することを要求している。
【0056】
本明細書に記載の高熱伝導性技術をステーターにおいて適用することができる場所、構成要素及び材料の例には、鎖間絶縁、内部コロナ保護(ICP)系、外部コロナ保護(OCP)系、パッキン及びプレストレスドドライビングストリップ(PSDS−トップリップルスプリング)を包含する底部、中心部及び頂部充填材;側面充填材、ラミネート及び側面PSDS、コイルセンターセパレーター又はソード、コイル互換充填材、ステーターウェッジ、心線絶縁、ダイヤモンドスペーサー、ブレース又はブラケット、コイル端結合樹脂及び圧縮可能なギャップ充填材、コネクター絶縁、並行リング絶縁及び並行リングサポート構造が包含される。ローターでは、例には、セル又はスロットライナー、インターターン(interturn)絶縁、ターン及び接地絶縁、一体の場合には、エンドキャップ絶縁、ブロッキング、ラジアルピン及びリード並びにスロットトップパッカー又は「U」が包含される。
【0057】
明確にするために、ステータコイルを通る主熱流12及び放射状の追加的熱流11の横断面図を示す図4を参照する。この図により示されているステータコイルは、銅製スタンド5、転位ストランド6、底部、中心部及び頂部充填材4、接地壁絶縁7、中心セパレーター8、並びにその他の部材を包含する。
【0058】
上記の構成要素又は材料を、熟練した当業者ならば熟知している積層、押出、成形及び他のプロセスを包含する様々な手段により製造することができる。ステータコイルで使用される構造材料は、銅及び絶縁材である。銅は、通常、絶縁され、組み立てられ、ベークライト処理されたコイル又はスタックに変換されるストランドの形態を有している。ベークライト処理されたコイルを、接地壁絶縁で絶縁するが、それに随伴する電気応力制御層が存在する。ステータコイルの熱伝導性に影響する構成要素は、接地壁絶縁であるが、他の構成要素も、同様に改善されると有利である。例えば、ステータコイルの構造で使用される応力制御及び他の系は、典型的には、銅からステーター核までの絶縁厚さの10から20%を有してよい。場合によっては、熱及び電気伝導性を所望の値に合わせるために、材料を構造変化させることが提案される。
【0059】
更なる例では、内部応力制御層は、銅に直接又は抵抗を介して結合しているか、それから絶縁されていてよい、低伝導性層からなってよい。このような場合、低伝導性層を付加する前に、ベークライト処理されたコイル表面に絶縁層を付加することができる。結合の目的で又は空隙領域を充填して平滑化するために、絶縁テープ又はシートをベークライト処理されたコイルに適用することができる。次いで、必要な特性を有する材料の1つ又は複数の追加の層を、低伝導性層の後に付加することができる。これは、応力制御又は絶縁等の電気的目的であってよい。
【0060】
接地壁を付加した後に、低伝導性層をコイルの表面に付加して、コアとの良好な接続を保証し、部分的な放電及びバーバウンス(bar bounce)効果を回避する一方で、コアラミネーションの短絡を回避する。その上方に低伝導性層が付加されている絶縁層を有する用途も、また、特許文献に記載されている。従って、外部コロナ保護系は、低伝導性、絶縁及び部分絶縁層を包含してよい。
【0061】
ステーター末端領域で電気応力を制御するために、応力制御層を、コイル直線部の末端で、更にコイル端又は螺旋状領域に適用する。これは通常、炭化ケイ素充填テープ又はペイントからなり、1つ又は複数の層、場合によっては、階段層に適用される。これを、また、絶縁層又は相対的に抵抗性が高い層と併用することができる。この適用では、高熱伝導性材料は、系の熱伝導性を著しく強化する。高熱伝導性材料をいつ使用するかの選択は、機械設計並びに通常の絶縁材料及び接地壁の熱伝導性特性に左右される。
【0062】
末端領域では、圧密等の様々な機能のために、更に機械的ブレーシングを強化するために、ガラステープ及び収縮材料が、ある種のタイプの設計では使用される。更に、末端巻線領域の機械的ブレーシングは、樹脂、ダイヤモンドスペーサー、フェルト又はクロス等の適合する含浸可能な材料及びバッグ、ブラダー又はホース等の樹脂をその中に充填することができる材料の使用を必要とする。これらの構成要素及び材料では、高熱伝導性材料の使用は、系の熱伝導性を著しく向上させるであろう。高熱伝導性材料をどこで、いつ使用するかの選択は、機械設計及び通常の絶縁材料の熱伝導性特性に左右される。
【0063】
直接冷却ローターでは、冷却ガス又は媒体が、直接、銅に接触する。直接冷却には、2種の主な設計、半径方向冷却及び軸冷却が存在する。コイル端領域は、異なる冷却方法を有してもよい。半径方向冷却設計では、ガスは、サブスロット又は各スロットの底部の中空ターン部に沿って通る。次いで、密実銅ターン部で冷却スロットを介して半径方向に進み、スロットの頂部で排出される。軸冷却設計では、ターン部は、中空であり、断面は、通常、正方形又は長方形である。ガスは、中空導体の側壁の各末端スルーホールから入り、銅管の内部に沿って進み、ローター中心において銅のスルーホールを介して半径方向に排出される。
【0064】
これらの設計のローターのいずれでも、設計において高熱伝導性材料を使用することの効果は、重要である。確かに、間接冷却機械において、より重要であることがある。ローターコイルを典型的には、スロットセル又はアングルの形態の成形エポキシガラスラミネートによりアースから絶縁する。インターターン絶縁は、ラミネート又はガラスであってよい。本明細書に記載の方法を使用することにより、このような構成要素を高度に熱伝導性にすることができることは理解できるであろう。
【0065】
本発明の一実施形態は、高熱伝導性(HTC)材料を樹脂に加えて、樹脂の熱伝導性を改善する。一部の実施形態では、樹脂の他の物理的特性は、より高い熱伝導性と引き替えに低下するが、他の実施形態では、他の物理的特性の一部は、それほど影響されず、一部の特別な実施形態では、これらの他の特性が改善される。特定の実施形態では、HTC材料を、秩序化された下部構造を有するLCTエポキシ等の樹脂に添加する。これらのタイプの樹脂に添加すると、使用されるHTC材料の量を、秩序化下部構造を伴わない樹脂での使用に対して、低減することができる。
【0066】
樹脂に充填されるHTC材料は、樹脂と物理的及び/又は化学的に相互作用するか又は反応しうるように熱伝導性を改善するために添加しうる様々な物質とからなっている。一実施形態では、HTC材料は、デンドリマーであり、他の実施形態では、これらは、3から100又はそれ以上、より特定の範囲では10〜50のアスペクト比(平均縦寸法に対する平均横寸法の比)を有する高アスペクト比粒子を始めとする、定義された寸法又は形状を有するナノ又はミクロ無機充填材である。
【0067】
検討したとおり、ナノ充填材をそれ自体、表面官能化することができる。ナノ、メソ及びマイクロ無機充填材での表面処理により様々な表面官能基を導入すると、無機表面が有機マトリックスに関して相溶性となるか、ホスト有機マトリックスとの化学反応が可能になる。これらの表面官能基には、ホスト有機マトリックスとの化学反応に役立つであろうヒドロキシル、カルボキシル、アミン、エポキシド、シラン又はビニルの各基が包含されうる。これらの官能基を、湿式化学的方法、非平衡プラズマ法、化学蒸着及び物理蒸着、レーザービーム、スパッタイオンメッキ並びに電子及びイオンビーム蒸発法を使用して付加することができる。
【0068】
マイカ紙に含浸するための例示的タイプの樹脂の例は、Smithらによる米国特許出願第11/152,984号、「高熱伝導性充填材を備えた構造化樹脂系」に見ることができ、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0069】
エポキシ樹脂の改善が最近、液晶ポリマーを使用することによりなされた。エポキシ樹脂を液晶モノマーと混合するか又は液晶性メソゲンをDGEBA等のエポキシ樹脂分子に導入することにより、架橋して著しく改善された機械的特性を有する秩序化ネットワークを形成することができるポリマー又はモノマーを含有する液晶熱硬化(LCT)エポキシ樹脂を製造する。参照により本明細書に援用される米国特許第5,904,984号明細書参照。LCTの更なる利点は、これらがまた、標準的なポキシ樹脂を超える改善された熱伝導性を有し、更に、より低い熱膨張(CTE)係数値を有することである。
【0070】
LCTエポキシ樹脂をなおより魅力的にしているものは、それらがまた、標準的なエポキシ樹脂よりも熱をより良好に伝導し得ることである。参照により本明細書に援用される米国特許第6,261,481号明細書は、慣用のエポキシ樹脂の熱伝導性よりも高い熱伝導性を有するLCTエポキシ樹脂を製造し得ることを、教示している。例えば、標準的なビスフェノールAエポキシは、横(平面)及び厚さの両方向で、0.18から0.24ワット毎メートル毎ケルビン(W/mK)の熱伝導性値を有することが示されている。対照的に、LCTエポキシ樹脂は、実用的用途で使用したとき、横方向で0.4W/mK以下及び厚さ方向で0.9W/mKまでの熱伝導性値を有することが示されている。
【0071】
電気絶縁のために典型的に使用される標準的なマイカ(白雲母、フロゴパイト)に加えて、黒雲母マイカ、更に、カオリナイト、ハロイサイト、モンモリロナイト及びクロライト等の、数種の他のマイカ様アルミノケイ酸塩材料もまた存在する。モンモリロナイトは、その構造中に格子を有し、ここには、金属カチオン等のHTC材料、有機化合物並びにモノマー及びポリマーが容易に挿入することができ、高絶縁耐力複合体を生じる。
【0072】
絶縁紙は、本発明の処理マイカを使用することができる媒体の1つのタイプに過ぎない。多くの工業において、これから製造された多くの他の材料及び構成要素には、別のタイプのマイカを使用することができる。本発明の特定の実施形態を詳述したが、本開示の教示全体を考慮すれば、これらの詳細に対する様々な変化及び変更を展開することができることは、当業者には理解されるであろう。従って、開示されている特定の組合せは、例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではないことが意図されており、本発明は、添付の請求項並びにそのあらゆる均等物の全範囲であるべきである。
【符号の説明】
【0073】
20 マイカ紙
24 微細孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイカ紙内の微細孔の処理方法であって:
約15から300の間の分子量を有するシランを得;
前記シランを前記マイカ紙に加え;
前記シランを前記マイカ紙内の前記微細孔の内部表面と反応させ;
前記マイカ紙を樹脂で含浸することを含んでなり、
ここで、前記樹脂が、前記シランを介して、前記マイカ紙内の前記微細孔の前記内部表面と結合する方法。
【請求項2】
前記シランを溶媒により前記マイカ紙に添加する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
樹脂含浸に先立って前記溶媒を実質的に除去する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記シランが、シラン(SiH4)、シラノール(SiH3OH)、メチルシラン(SiH3CH3)、ビニルシラン(SiH3CHCH2)、アミノシラン(SiH3NH2)、アルコキシシラン(SiH3OR)及びエポキシシランのうちの少なくとも1種である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記シランが、アミノメチルトリメチルシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルジメチルシラン及びアリルトリメチルシランのうちの少なくとも1種である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記シランが32〜90の分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記シランが100〜300の間の分子量を有し、ここで、前記シランは、前記マイカ紙中の接触マイカ表面の間に入る傾向を有さないものである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
複数のシラン分子量を使用する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記樹脂がナノ充填材を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ナノ充填材が前記樹脂の1〜60重量%を構成する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ナノ充填材の少なくとも一部が、前記シランと反応し得るように、表面処理されている、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記マイカ紙が前記シランの添加に先立って圧縮される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記マイカ紙を圧縮している間に、過剰のシランを除去する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
マイカ紙内の微細孔の処理方法であって:
約15から300の間の分子量を有するシランを得;
前記マイカ紙を圧縮し;
前記シランを前記マイカ紙に加え;
前記シランを、前記マイカ紙内の前記微細孔の内部表面と反応させ;
前記マイカ紙に樹脂を含浸することを含んでなり、
ここで、前記樹脂が、前記シランを介して、前記マイカ紙内の前記微細孔の内部表面と結合し、
これにより、前記マイカ紙内の接触マイカフレーク小片表面が、圧縮による前記シランへの曝露を、受けにくくなる方法。
【請求項15】
前記マイカ紙の圧縮量が前記マイカの厚さの5〜30%である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記マイカ紙が前記樹脂含浸のために圧縮され、ここで、前記樹脂含浸のための圧縮量が前記シラン添加のための圧縮量とほぼ同じである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記シランを、溶液で、前記マイカ紙に添加する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記樹脂含浸に先立って、前記マイカ紙を前記溶液から実質的に乾燥させる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記シランが、32〜90の間の分子量を有する、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−518549(P2010−518549A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546399(P2009−546399)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【国際出願番号】PCT/US2008/000309
【国際公開番号】WO2008/091494
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(599078705)シーメンス エナジー インコーポレイテッド (57)
【Fターム(参考)】