説明

マイクロリソグラフィ投影露光装置用の照明光学系

【課題】マイクロリソグラフィ投影露光装置用の照明光学系を提供する。
【解決手段】マイクロリソグラフィ投影露光装置1用の照明光学系は、光源2、2’からの照明光3、3’で物体表面19を照明するのに用いられる。少なくとも二つの照明設定を照明光学系の瞳面12に設定するために、少なくとも二つの個々の光学モジュール28、29を用いる。光学モジュールの上流にある光路には、第1の光学モジュール28及び/又は第2の光学モジュール29に照明光3、3’を任意に送る分離要素9がある。二つの光学モジュール28、29の下流にある光路には、第1の光学モジュール28及び/又は第2の光学モジュール29を通過した照明光3、3’を照明領域に送る結合要素35がある。これにより、照明光学系と光源をも有する照明系とがもたらされ、異なる照明設定間の高速切り換えが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロリソグラフィ投影露光装置用の照明光学系に関する。さらに、本発明は、このような照明光学系を備えた照明系に関する。本発明はまた、このような照明系を備えたマイクロリソグラフィ投影露光装置にも関する。さらに、本発明は、マイクロリソグラフィによる微細構造素子の製造方法に関する。最後に、本発明は、このような方法を用いて製造した素子に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子およびその他の微細構造素子をマイクロリソグラフィにより製造するための投影露光装置の性能は、基本的に投影対物レンズの結像特性によって決まる。また、画質、プロセス制御の融通性、この装置を用いた達成可能なウエハスループット、その他の性能の特徴についてもすべて、大いに、投影対物レンズの上流の照明系の特性によって決まる。投影対物レンズは、主光源、例えばレーザからの光を極力高い効率で用意し、これにより照明系の照明領域で極力均一な強度分布を作る必要がある。例えば、結像する個々のパターン、つまり、マスクまたはレチクルの構造によって決まる照明を最適なものにするために、照明系で種々の照明モードを設定可能にする必要もある。リングフィールド照明、二重極照明、あるいは四重極照明のほか、異なる度合いのコヒーレンスを用いた従来の種々の照明設定には通常、設定選択肢がある。特に、浅い角度で照明するための特殊な照明設定を用いることができ、二つのビームの干渉により領域の深度を増大させ、分解能を高めている。
【0003】
マイクロリソグラフィの照明系は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10により知られている。
【0004】
二つの異なる照明設定でマスクを短く照明するための多重露光には、照明設定を高速に切り換えるのが望ましい。これについて、特に、かなりの数の移動可能な光学要素が異なる照明設定間の切り換えを行うために比較的長い距離を移動しなければならない場合、様々に調整可能な瞳形成素子を備えた従来の照明系により得られる可能性には限界がある。交換可能な瞳フィルタを用いる場合、光損失は避けられない。
【0005】
【特許文献1】EP 0747772 A
【特許文献2】US 6900943 B2
【特許文献3】US 6285442 B1
【特許文献4】US 4851882
【特許文献5】US 4947030
【特許文献6】US 6657787 B1
【特許文献7】WO 2005/027207 A1
【特許文献8】DE 19921795 A1
【特許文献9】US 2006/0055834 A1
【特許文献10】WO 2006/040184 A2
【特許文献11】DE 4124311
【特許文献12】WO 2005/069081 A2
【特許文献13】EP 1681710 A1
【特許文献14】WO 2005/116772 A1
【特許文献15】EP 1582894 A1
【特許文献16】US 4458994
【特許文献17】US 5453814
【特許文献18】US 2004/0262500 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一つの目的は、長くとも一秒の何分の一以内かでかつ光損失を実質的に生じさせることなく種々の照明設定間の高速切り換えを可能にするマイクロリソグラフィ投影露光装置用の照明系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本目的は、本発明に従い、請求項1に記載した特徴を有する照明光学系により達成される。
【0008】
本発明によれば、特定の照明設定を作るのに事前に調整した少なくとも二つの光学モジュールを用意すれば、光学モジュール内の光学構造間の時間のかかる切り換えを省くことができ、所望通りにこれらの間での切り換えが可能となることが見出された。この光学モジュール間の切り換えは、例えば、照明光路にミラーを一時的に導入することにより、または照明光の特性を変更することにより機械的に達成可能である。これにより、環境によっては、著しく異なる照明設定が比較的小さい切り換え労力で達成可能となる。これは、労力を要する投影作業に使用できる。結合要素として、特許文献7に開示されているように、レンズ、対物レンズ、またはミラーの形状をした結合用ビームスプリッタまたは結合光学要素が用いられる。本発明によれば、例えば、縦列させた分離要素および結合要素によって、二つを超える光学モジュール間の切り換えが可能となり、これにより二つを超える異なる照明設定間の切り換えが可能となる。
【0009】
請求項2に従って、それぞれ特定の照明設定を設定するために事前に調整した異なる光学モジュールの存在する光路間で分離用ビームスプリッタおよび結合用ビームスプリッタによる光学切り換えを行えば、二つの異なる照明設定間で切り換えるための光学要素の機械的移動を省くことができる。この場合、光路間の切り換えは、光特性を変更することにより起こる。これは、光偏光、光波長、光ビームの方向、あるいは光ビームの幾何学的位置関係でも可能である。特に、例えば縦列させた光特性変換器を用いることによって、二つを超える光特性間の切り換えも可能となる。このため、本発明による変形例の場合、二つを超える光学モジュール間の高速切り換えが可能となり、またこれをもとに二つを超える異なる照明設定間での高速切り換えが可能となる。
【0010】
請求項3による偏光状態の切り換えは、非常に高速に、例えばほんの数ナノ秒内に行うことができる。別の方法として、切り換える光特性として光波長を用いる場合、二色性のビームスプリッタを結合用ビームスプリッタおよび分離用ビームスプリッタとして用いる。切り換える光特性として照明光のビームの方向またはビームの幾何学的位置関係を用いる場合、反射ナイフエッジ装置(reflecting knife-edge arrangement)を結合用ビームスプリッタおよび分離用ビームスプリッタとして用いることができる。
【0011】
請求項4による偏光選択性のビームスプリッタによれば、ビームスプリッタへのエネルギー負荷および強度負荷を都合よく低下させる広い断面を有する照明光ビームが得られる。使用する照明光の波長によって、変形例で用いられる偏光キューブまたはビームスプリッタキューブをCaFまたは石英で作ることができる。別の方法としては、例えば、第1の偏光方向を有する光を通過させ、第2の偏光方向を有する光を反射する光学薄膜を形成したビームスプリッタ板も使用可能である。
【0012】
請求項5によるポッケルスセルは、他の適用において偏光状態を高速に切り換えるのに満足のゆくものであることを示した。別の方法としては、ビームの幾何学的位置関係を切り換えるのに適しているカーセルも使用可能である。ビーム方向を切り換えるための光特性変換器としては音響光学変調器が使用可能であり、このビーム方向はブラッグ反射によって変更される。
【0013】
請求項6〜8の種類の光特性変換器は、光学要素に分布させる光負荷を得るのに特によく適し、かつ共用の光源の光射出の時間特性によく適合させた光特性の切り換えを可能にする。
【0014】
請求項9〜12による偏光変換器は、光学要素を機械的に切り換えることにより光特性を切り換える光特性変換器の例である。この光学要素は、切り換えの前およびその後に、照明光が光学要素の同一の光学活性面を通過するように切り換え可能である。これは、例えば、単一のラムダ/2板(lambda/2 plate)が偏光変換器として用いられる際のケースである。光特性変換器の他の実施形態では、この機械的切り換えによって光学要素の種々の光学活性領域が用いられる。このような光特性変換器の制御費用は比較的安価である。
【0015】
例えば、請求項10の偏光変換器などの請求項13の第2の偏光光学要素は、照明光を抽出するのに偏光光ビームスプリッタを用いることを可能にしている。請求項13による偏光変換器の第1の偏光光学要素は、その動作位置において、第2の偏光光学要素と比較して異なって配向された光軸を有するラムダ/2板であってもよい。最も単純なケースでは、第1の偏光光学要素は、単に偏光変換器を通る自由な経路である。
【0016】
請求項14による分離要素の場合、二つの光学モジュール間の切り換えは、照明光の光線経路に一時的にミラーを挿入することにより得られる。この変形例は、比較的安価な制御を必要とするものである。
【0017】
請求項15による分離要素の例は、計測学および光学スキャナ技術で知られるものである。
【0018】
請求項16による分離要素は、比較的少ない移動質量で作ることができる。
【0019】
結合要素は、請求項15および請求項16の分離要素に従って設計できる。
【0020】
請求項17によれば、第1の照明設定および第2の照明設定は通例異なっている。しかし、適用によっては、第2の照明設定は第1の照明設定と全く同一であるかまたは所定の許容範囲内で第1の照明設定と類似していることもあるため、第1の照明設定はいずれの光特性においても第2の照明設定とそれ程異なってはいない。このような場合、照明設定間の切り換えは、照明光全体の個々の部分のみがこれらの光学モジュールに作用するため、第1の光学モジュールおよび第2の光学モジュールの構成要素にかかる光学負荷を低下させることになる。本願の条件の下では、照明設定が物体または照明領域に送られる照明光の偏光についてのみ異なる場合、照明設定もまた異なっている。このような偏光の違いは、照明光学系の瞳における局所点を通過する光の偏光の種類の違いであってもよい。この場合、瞳は照明光が通過する領域であり、その瞳面は今度は照明光学系の下流の対物レンズ、特に投影対物レンズの瞳面と光学的に共役している。別の方法として、あるいは追加して、偏光の違いは、瞳の種々の局所点を越えて、瞳座標系に対する偏光の種類の空間配向分布の違いであってもよい。用語「偏光の種類」または「偏光状態」は、本書では、直線偏光及び/又は円偏光およびこれらを組み合わせたいかなる形状のもの、例えば、楕円偏光、接線偏光及び/又は放射偏光をも表すものである。例えば、第1の照明設定では、瞳全面にわたって一定の第1の照明光の直線偏光状態によって物体領域全体を照明することが可能である。第2の照明設定は、この目的のために回転軸に対して一定の角度、例えば90°回転させた偏光を有する光を使用する。偏光分布は、この場合、上述の一定の角度で回転軸を中心に回転させる際に変化することはない。別の方法としては、第1の照明設定において第1の空間偏光分布を用いて、例えば、瞳全面にわたって同一の偏光を用いて瞳を照明し、第2の照明設定において照明光の第1の偏光方向を用いて瞳のある部分を照明し、照明光の別の偏光方向を用いて瞳の他の部分を照明することが可能である。この場合、偏光方向のみでなく瞳における偏光分布も変更される。本願の条件の下では、スカラー変数としてのこれらの強度分布及び/又はベクトル変数としてのこれらの偏光分布が瞳全面にわたって異なる場合、照明設定は異なっている。異なる偏光状態を、照明光のベクトルE場のベクトルに基づいて瞳のベクトル変数として表してもよい。瞳はこの場合、平面状でなくともよく、つまり、曲面を有していてもよい。このため、強度分布はスカラー変数として表され、偏光分布はこの曲面にわたるベクトル変数として表される。
【0021】
請求項18による照明光学系は、偏光状態、つまり、例えば偏光の種類(直線、円)及び/又は偏光方向及び/又は空間偏光分布についてのみ異なる照明設定を有しており、偏光状態を、切り換わる結像の要件、特に結像する構造の幾何学的位置関係から課される要件に適合させることができる。
【0022】
請求項19による光学遅延要素により、結合要素の後の光路において、第2の光学モジュールによって導光される照明光に対して第1の光学モジュールによって導光される照明光の時間的な同期化を定めることが可能となる。これは、特にパルス光源の場合、光学要素での一パルスあたりのエネルギーの蓄積を低下させるために、結合要素から光学要素への光量を時間的に均一にするのに用いることができる。これは特に、結合要素の後に照明方向または投影ビーム方向に配置された投影露光装置の光学要素、例えば、コンデンサ、REMA(レチクル/マスキング)対物レンズ、レチクルまたはマスク、投影対物レンズの光学要素、液浸層、フォトレジスト、ウエハおよびウエハステージなどに当てはまる。光学遅延要素は、第1の光学モジュールの光路または第2の光学モジュールの光路に作られた光学遅延線である。光学遅延は、光学遅延要素によって調整可能であることが好ましく、これは、例えば、照明光が数回導光されているのが好ましい経路に沿って移動可能な直線摺動テーブルと、この直線摺動テーブルに固く接続されたミラー、特に逆反射ミラーとによって実現できる。別の方法として、また比較的短い遅延経路を設定するためには特に、光学遅延要素は所定の光路を有する光学的に透明なかつ光学的に高めの密度の媒質として構成されてもよい。光学遅延を同質の経路の拡大に基づいて行う光学遅延要素と光学遅延を光学的に濃度の高い媒質の光路に基づいて行う光学遅延要素との組み合わせも利用可能である。
【0023】
本発明の別の目的は、レチクルおよび分離用ビームスプリッタの下流にある光学要素へのピーク負荷を低下させるこのような照明光学系の照明系を提案することである。
【0024】
本目的は、本発明に従い、請求項20に説明した特徴を有する照明系により達成される。
【0025】
照明光パルス中に光特性を切り換えることにより、このパルスは、二つの光パルス成分に分割され、その後異なる照明設定に整形される。これは、構成要素への照明光負荷、特に、構成要素への局部負荷を有利に低下させる。光パルス源としてレーザを選択した場合は、照明光パルス中に光特性を切り換えることにより、半数のレーザ繰返し数、二倍のパルスエネルギー、二倍のパルス幅で動作することが可能となる。単一のパルスエネルギーは、この場合、各パルス電力のパルス幅での積分である。このようなレーザは、大幅に高い費用を要する繰返し数の多いレーザよりも、マイクロリソグラフィ投影露光装置において簡単に利用でき、あるいは開発でき、組み込むことができる。
【0026】
請求項21による照明系は、光源からの光パルスがすべて同一の光学モジュールを通るものではないため、光学モジュールに当たる平均光出力を低下させるものである。同期が適切であるとすれば、請求項14〜16による分離要素を、請求項18による光特性変換器の代わりに用いることができる。この場合、例えば、分離要素は各第2の光パルスを通過させ、これらの間の光パルスを分離要素のミラー要素によって他の光学モジュールに向けて反射する。光特性変換器は、例えば、二つの連続した光パルス間で光特性が切り換わるように構成される。
【0027】
請求項22による照明系は、個々の光源に課される要件を低減する。少なくとも二つの光源によって発生した照明光は結合光学デバイスによって結合して照明光ビームとなり、この光ビームが照明領域を照明する。結合用ビームスプリッタまたは分離用ビームスプリッタと同種のビームスプリッタは結合を得るのに用いることができるが、これは必須ではない。別の方法としては、例えば、光源から発せられた少なくとも二つの照明光ビームを結合ミラーまたは結合レンズによって結合することも可能である。
【0028】
請求項23による照明系はコンパクトである。
【0029】
請求項24による制御系は、あらかじめ設定した種々の照明設定を用いて照明領域の照明の均衡の取れた調整を可能にするものである。これらの構成要素は、時間に均衡の取れた照明により、つまり、初めは第1の照明設定を、次に少なくとも一つの他の照明設定を用いた連続照明によって作られ、あるいは強度に均衡の取れた照明により、つまり、あらかじめ設定した強度分布を有する複数の照明設定を用いた照明領域の並行照明によって作られる。主制御系は、光学モジュール間の切り換えを行うために必要であれば、制御するために信号によって結合要素に接続することもできる。
【0030】
請求項25による制御系は、照明系の構成要素への信号リンクを介して相当する照明設定についての情報を獲得でき、例えば、レチクルマスキング系またはスキャン速度によって光学モジュールの調整に働きかけることによりあらかじめ設定した特定の照明設定を指定し、追加の適合を行う。
【0031】
本発明の別の目的は、本発明の照明光学素子および本発明の照明系を備えたマイクロリソグラフィ投影露光装置を提供することであり、これを用いて実施可能なマイクロリソグラフィ製造方法およびこれにより製造できる素子を提案することである。
【0032】
本目的は、本発明に従い、請求項26によるマイクロリソグラフィ投影露光装置、請求項27による製造方法、請求項28による素子によって達成される。
【0033】
これらの項目の利点は、照明光学系および照明系について上に説明した利点の結果である。
【0034】
最後に、本発明の別の目的は、上で考察した利益を役立てるために現存する照明光学系および現存する照明系で改善可能なマイクロリソグラフィ投影露光装置用の補助モジュールを提供することである。
【0035】
本目的は、本発明に従い、請求項29で説明した特徴を有する補助モジュールによって達成される。
【0036】
この補助モジュールの利点は、照明光学系および照明系について上に説明した利点と同等のものである。
【0037】
補助モジュール、つまり、補助光学モジュールの個々の要素、少なくとも一つの分離要素、少なくとも一つの結合要素、追加して設けたいかなる光特性変換器、追加して設けたいかなる主制御系も、本発明の照明光学系および本発明の照明系について上にすでに説明したように設計し発展させることができる。補助モジュールによって設けられた別の照明設定は、第1の光学モジュールの照明設定と異なっていてよい。特定の適用では、別の照明設定はこの場合も、いずれの光特性についても所定の許容範囲内で第1の光学モジュールの照明設定に相当するものである。このため、請求項1または17による照明光学系について上に述べたことが相応に適用される。
【0038】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を以下に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
図1はマイクロリソグラフィ投影露光装置1を示しており、これは半導体素子およびその他の微細構造素子の製造に使用可能であり、真空紫外領域(VUV)の光を用いて1マイクロメートルの何分の一かの分解能を実現するものである。193nmの有効波長を有するArFエキシマレーザを光源2として用い、このうち直線偏光ビーム3が投影露光装置1の照明系5の光軸4と同軸上にある。他のUV光源、例えば、157nmの有効波長を有するFレーザ、248nmの有効波長を有するArFレーザ、368nmまたは436nmの有効波長を有する水銀蒸気ランプ、157nmを下回る波長を有する光源も可能である。
【0040】
光源2から射出された光は初め、図1の投影面と垂直に偏光されている(s偏光)。これは図1に光ビーム3に各点6によって示してある。光源1からのこの直線偏光は初め、例えば、特許文献11によるミラー構成として形成可能な、コヒーレンスを低下させかつビームの断面積を増大させるのに用いられるビーム拡大器7に入射する。ビーム拡大器7の後、光ビーム3は光特性変換器の一例であるポッケルスセル8を通過する。ポッケルスセル8に電圧が印加されない限り、光ビーム3はポッケルスセル8を去る際s偏光されたままである。光ビーム3はその後、分離要素の一例であり、CaFまたは石英で作られた偏光キューブとして形成された分離用ビームスプリッタ9を通過する。分離用ビームスプリッタ9はs偏光ビーム3を光軸4の方向に通過させ、このビームは第1の回折光学要素(DOE)10を通過する。第1のDOE10はビーム整形要素として使用され、これよりも下流の光線経路に配置された第1のレンズ群11の入射面内に位置している。
【0041】
第1のレンズ群11は、ズーム系11aおよびこれに続くアキシコン構成11bを含む。ズーム系11aは二重のテレセントリック(telecentric)であり、ズーム系11aの一入射面と一射出面との間であらかじめ設定した倍率の光学結像が実現するようにスカラーズームとして設計されている。ズーム系11aはまた、例えば、三次のフーリエ変換がズーム系11aの入射面と射出面との間で行われるように焦点距離ズーム機能を有することも可能である。ズーム系11aの後に設定される照明光分布には、アキシコン素子の対向する円錐状のアキシコン面間に有限距離が設定されていれば相互に同軸上で変位可能なアキシコン構成のアキシコン素子によって径方向再分布(radial redistribution)が行われる。この差がゼロまで低下した場合、アキシコン構成11bは基本的に平面平行板として機能し、ズーム系11aによって作り出された照明の局所分布に実質的に影響を及ぼさない。ズーム系11aおよびアキシコン構成11bの光学要素間の軸方向の間隔は、不図示のアクチュエータによって調整可能である。
【0042】
第1のレンズ群11は、レンズ群11の下流に位置する照明系5の瞳形成面12において光源2からの照明光に対して範囲を定めた局部的な二次元の照明強度分布を設定するのに用いられる瞳形成要素、いわゆる照明瞳または照明設定の一部である。
【0043】
照明系5の瞳面である瞳形成面12は、第1のレンズ群11の射出面と同一の空間を占めている。さらに、光学ラスタ要素13が射出面12のすぐ隣りに位置している。これよりも下流に位置する結合光学要素14は、照明光を、調整可能な視野絞りとして用いられるレチクルマスキング系(REMA)16が位置する中間領域面15に送る。光学ラスタ要素13は、回折光学要素または屈折光学要素の二次元配置乃至配列を有し、数種類の機能を有している。一方、入射する照明光は、次の結合光学要素14を通過して領域面15の領域に入った後に矩形の照明領域を照明するように、光学ラスタ要素13によって整形される。矩形の照射パターンを有する光学ラスタ要素13は領域規定要素(FDE)とも呼ばれ、エタンデュ(etendue)の主成分を発生させ、マスク面17と共役する領域面15での所望の領域の大きさおよび形状に適合させる。光学ラスタ要素13は、領域面15を所望通りに照明するために、二次元領域に配置された個々のプリズムが定められた特定の角度を局部的に導入するプリズムアレイとして設計可能である。結合光学要素14によって行われるフーリエ変換により、光学ラスタ要素13の射出口におけるそれぞれの特定の角度が領域面15内の位置に相当することになり、光学ラスタ要素13の位置、つまり、光軸4に対するその位置が、領域面15での照明角度を決めることになる。光学ラスタ要素13の各光学要素から発せられるビームは、領域面15で重ね合わせられる。マイクロシリンダレンズおよび拡散スクリーンを有する多段ハニカムコンデンサとしてFDE13を構成することも可能である。FDE13およびその各光学要素を適切に構成することにより、領域面15内の矩形領域を実質的に均一に照明することが確実に可能となる。このため、FDE13は、領域の照明を均一化するための領域整形均質化要素としても用いられるため、別個の光混合要素、例えば、多重内部反射によって働く積分ロッドまたはハニカムコンデンサが不要となる。これにより、この領域での光学構成が特に軸上でコンパクトになる。
【0044】
REMA対物レンズとも呼ばれる下流の結像対物レンズ18は、例えば2:1から1:5までの比率、図1に示す本実施形態では約1:1の比率で、REMA16を有する中間領域面15をマスク面17内のレチクルまたはその面19に結像する。中間領域面15(結像対物レンズ18の対物面に相当する)と、結像対物レンズ18の像平面(マスク面17と同一の空間を占めるとともに照明系の射出面に相当し、同時に下流の投影対物レンズ20の対物面に相当する)との間にちょうど1つの瞳面21があるように中間像なしで結像が行われる。後者は、照明系5の射出面17に対してフーリエ変換された面である。光軸4に対して45°傾斜して瞳面21とマスク面17との間に配置された偏向ミラー22により、数メートル長の比較的大きい照明系5を水平方向に取り付け、同時にレチクル19を水平に保つことが可能となる。
【0045】
光源2からの照明光を導光し、ここから、レチクル19に向けた照明光を形成するこれらの光学要素は、投影露光装置の照明系5の一部である。照明系5の下流にはレチクル19を保持し操作するための装置23があり、これは、レチクルのパターンが投影対物レンズ20の対物面17に落ち込み、この面内で、光軸4と垂直なスキャン方向にスキャン動作するためのスキャン駆動の補助を得て移動できるように作られている。
【0046】
投影対物レンズ20は縮小対物レンズとして用いられるものであり、フォトレジスト性の層またはフォトレジスト層で覆われ、かつ感光面が投影対物レンズ20の像平面25にあるウエハ24に、レチクル19の像を縮小比率、例えば、1:4または1:5の比率で形成する。屈折投影対物レンズ、反射屈折投影対物レンズ、あるいは反射光学投影対物レンズが可能である。この他の縮小比率、例えば、1:20または1:200までのさらに大きな縮小が可能である。
【0047】
露光する半導体ウエハ24はこれを保持し操作するための装置26によって固定されており、装置26はウエハ24をレチクル19と同時に光軸4と垂直に移動させるためにスキャナ駆動装置を含む。このような移動は、投影対物レンズ20の設計によって、相互に平行であってもよく平行でなくともよい。ウエハステージとも呼ばれる装置26とレチクルステージとも呼ばれる装置23とは、スキャンコントローラによって制御されるスキャナの構成要素の一部である。
【0048】
瞳形成面12は、次の下流の瞳面21および投影対物レンズ20の像側の瞳面と光学的に共役な位置に位置するかあるいはこの位置に近接して位置している。このように、投影対物レンズ20の瞳面27内の空間的かつ局所的な光分布は、照明系5の瞳形成面12内の空間的な光分布および局所分布によって決まる。各瞳面12、21、27間には、光線経路において、関連する瞳面に対してフーリエ変換された面である領域面がある。これは、瞳形成面12における照明強度の特定の局所分布が下流の領域面15の領域での照明光の特定の角度分布となり、これは次に、レチクル19に落ち込む照明光の特定の角度分布に相当することになる。第1のレンズ群11は、第1のDOE10とともに、第1の照明設定を照明瞳12に設定するための第1の光学要素28を形成している。
【0049】
照明系5の特別な一つの特徴は、単一のレチクル19に対する照明工程の間に、照明瞳12の非常に高速な変更乃至改変が可能であるという事実である。これにより、二重露光または他の多重露光が短い時間間隔で可能となる。
【0050】
瞳形成面12における照明設定の高速変更には、分離用ビームスプリッタ9の分離経路29aに位置する第2の光学モジュール29が用いられる。第2の光学モジュール29は、第2のDOE30と第2のレンズ群31とを含み、第2のレンズ群31は今度はズーム系31aとアキシコン構成31bとに分けられている。二つの光学モジュール28、29は、同様の構成を有している。しかし、ズーム系31a、アキシコン構成31b、第2のDOE30の個々の光学要素の光学効果およびレイアウトは第1の光学モジュール28と異なるため、第2の光学モジュール29を通過する光源2からの照明光は影響を受け、第1の光学モジュール28によって作られた第1の照明設定とは異なる第2の照明設定が瞳形成面12に作られる。
【0051】
分離経路29aを図1に破線によって示してある。分離経路29aでは、照明光は、図1に分離経路29aの光軸と垂直な二重矢印32によって示した、図1の投影面に対して平行な偏光方向(p偏光)に導光される。
【0052】
偏向ミラー33は、分離用ビームスプリッタ9と第2のDOE30との間に偏向ミラー22と同様に配置されている。第2のレンズ群31のアキシコン構成31bと、分離用ビームスプリッタ9のように偏光キューブとして構成された結合用ビームスプリッタ35との間には、別の偏向ミラー34が配置されている。結合用ビームスプリッタ35は、結合要素の一例である。結合用ビームスプリッタ35は、第1のレンズ面11のアキシコン構成11bと光学ラスタ要素13との間の光路に位置している。分離経路29aに導かれた照明光は、結合用ビームスプリッタの下流で光軸4に沿って正確に送られるように、結合用ビームスプリッタ35によって偏向される。
【0053】
照明設定の高速切り換えを得るため、ポッケルスセル8に典型的には5kVから10kVの高電圧が印加される。ポッケルスセル8に高電圧が印加された際、照明光の偏光は数ナノ秒でsからpに回転される。p偏光された照明光は、分離用ビームスプリッタ9の偏光子がp偏光用の反射器として機能するために、分離経路29aに抽出される。分離経路29aにおいて、照明光は、抽出されないs偏光された照明光に対するものとは異なる設定調整を受ける。第2の光学モジュール29を通過したp偏光された照明光は、偏向ミラー34により、偏光子がp偏光された光に対する反射器として作用する結合用ビームスプリッタ35を介して偏向された後、光軸4の方向に再び結合される。
【0054】
光源2は例えば、6kHzの繰返し数で、100nsまたは150nsの持続時間および15mJまたは30mJの単一パルスエネルギーを有するレーザパルスを発する。
【0055】
図2〜4は、ポッケルスセル8の高電圧切り換え時点tについての切り換え時間の種々の例を示したものである。図2〜4はいずれも、6kHzの繰返し数の逆数に相当するt=t−tの間隔で光源2から発せられる連続する単一の矩形パルスLを略図で示したものである。図2の切り換え時間の例において、ポッケルスセル8はそれぞれ2つのレーザパルスL間で切り換わる。図2の左側に示したレーザパルスLは、電圧の印加なしにポッケルスセルを通過するため、p偏光されたままである。続くレーザパルスLの偏光は、切り換え時点tが発生するために90°回転され、これにより分離経路29aを通過する。次のレーザパルス(図示せず)は、偏光に変化を来すことなくポッケルスセル8を通過する。このため、図2の切り換え時間の例の場合、それぞれの第2のレーザパルスは分離経路29aを通って送られる一方、他方のレーザパルスは分離されない。このため、レチクル19は、光学モジュール28、29の設定にそれぞれ相当する二つの異なる照明設定により交互に照明され、各照明設定のレーザパルスは3kHzの繰返し数を有する。レチクルおよび分離用ビームスプリッタ9の下流にある照明系の光学要素に入射する照射負荷は、単一のレーザパルスLのエネルギーおよびピーク強度によって決まる。
【0056】
図3の切り換え時間の例では、ポッケルスセル8は、単一のレーザパルスLがこれを通過している間に切り換わる。このため、単一のレーザパルスLはパルス成分L、Lに分割される。図3の例では、初めのレーザパルス成分Lの偏光は変化しないため、s偏光されたままである。対照的に、続くレーザパルス成分Lの偏光は、切り換え時点tの後ポッケルスセル8を通過するため回転し、抽出され、レーザパルス成分Lに異なる照明設定をもたらす。二つのレーザパルス成分L、Lは、分割されていないレーザパルスの約半分のパルス幅に相当するパルス幅、本実施形態では約50nsまたは75nsのパルス幅を有している。レーザパルス成分のエネルギーは、単一のレーザパルスの約半分のエネルギー、つまり、7.5mJまたは15mJである。図3の次のレーザパルスの初めのレーザパルス成分Lの偏光は回転するため、p偏光される。切り換え時点tではポッケルスセル8から電圧が取り除かれるため、次のレーザパルス成分Lの偏光はもはや影響を受けず、このためs偏光されたままである。このため、この第2のレーザパルスは分割される。光源2から続いて発せられるレーザパルスについて、不図示のレーザパルスの間、切り換えをこのように繰り返す。このため、図3の切り換え時間の例では、一方のレーザパルス成分は分離経路29a、つまり、光学モジュール29を通って送られ、他方のレーザパルス成分は他方の光学モジュール28を介して送られる。この切り換え時間の例では、レチクル19は、第1の照明設定により6kHzの有効繰返し数で照明され、第2の照明設定により同一の有効繰返し数6kHzで照明される。レーザパルス成分のパルスエネルギーが半量となるため、レチクルおよび分離用ビームスプリッタ9の下流の光学要素にかかるピーク負荷は、約2倍減少する。実用上、この減少係数は、光学モジュール28、29によって作られた二つの異なる照明設定が、概して、瞳の異なる領域に異なる偏光特性をもって突き当たるため、さらに大きくなる。
【0057】
図4の切り換え時間の例では、ポッケルスセル8は各レーザパルスLに対して三回切り換わる。図4の左側に示した初めのレーザパルスLの場合、初めに高電圧がポッケルスセルに印加されるが、この電圧はその後オフに切り換わり、再び印加される。このため、図4に示した左側のレーザパルスは、s偏光の初めのレーザパルス成分Lと、次のp偏光のレーザパルス成分Lと、また別の次のs偏光のレーザパルス成分Lと、最後のp偏光のレーザパルス成分Lとに分割される。図4の右側に示したレーザパルスLの場合、図4の右側に示したレーザパルスLの間にポッケルスセル8が初めに切り換わった際、高電圧が初めにオフに切り換わるため、これらの状態はまさに逆になる。このため、図4に示した右手のレーザパルスLは、初めのp偏光されたレーザパルス成分Lと、次のs偏光されたレーザパルス成分Lと、次のp偏光されたレーザパルス成分Lと、最後のs偏光されたレーザパルス成分Lとを有する。図4の切り換え時間の例では、照明光は、両方の照明設定に対して12kHzの有効繰返し数でレチクル19に突き当たる。図4の切り換え時間の例では、光パルス成分L、Lは、約25nsまたは37.5nsのパルス幅および約3.75mJまたは7.5mJのパルスエネルギーを有する。単一の光パルスは、一光パルスLの間にポッケルスセル8が三回切り換わることによって四等分されるため、分離用ビームスプリッタ9の下流にあるレチクル19および光学要素にかかるピーク負荷が約4倍だけ減少する。
【0058】
偏光状態によるが、光学材料の耐用年数は、最大照度Hのみでなくレーザパルスのパルス数Nおよびパルス幅Tによっても決まる。これについて、当業者に周知の種々の理論モデルを展開させた。これらのモデルの一つは、偏光複屈折モデルであり、これによれば光学材料の負荷限界が積H×Nによって決まる。いわゆる圧縮モデル(compaction model)またはマイクロチャネルモデルによれば、負荷限界は積H×N/Tによって決まる。
【0059】
簡略な比較分析により、一レーザパルスの間にポッケルスセル8により一回のみ切り換えることによる二重露光には、半数の繰返し数(パルス数N/2)、二倍のパルスレーザ出力(2H)、二倍のパルス幅(2T)を有するレーザ2を用いることが可能であることが示されている。半数の繰返し数および二倍の出力を有するこのようなレーザは、現在のリソグラフィレーザの性能を高めることを可能にする一つの方法であり、簡単に実施することができる。光特性変換器8を用いると、以前は12kHzレーザを用いることでしか可能でなかったマイクロリソグラフィの適用に、6kHzレーザを用いることが可能となる。レーザ光源に課される構成上の要件が相応して緩和される。
【0060】
照明光の偏光に影響を与えるために、ポッケルスセル8以外の偏光切換光特性変換器、例えば、カーセルを用いることができる。
【0061】
偏光の代わりに、照明光の別の特性、例えば、光波長に、光特性変換器によって影響を与えることもできる。この場合、二色性のビームスプリッタ(dichroitic beam splitter)を分離用ビームスプリッタ9および結合用ビームスプリッタ35として用いる。
【0062】
光ビーム3のビームの幾何学的位置関係またはその方向は、二つの光学モジュール28、29間で切り換えるために適当な光特性変換器によって変更する光特性となりえるものである。カーセルまたは音響光学変調器を適当な光特性変換器として用いることができる。
【0063】
二つの光学モジュール28、29を用いた実施形態を以上に説明した。二つを超える数の光学モジュールを設け、これらのモジュール間で切り換えることも同様に可能である。例えば、照明光の偏光をあらかじめ設定した切り換え数で回転させ、抽出を行って別の分離負荷をもたらす図1に不図示の別のポッケルスセルを分離用ビームスプリッタ9とDOE10との間、または分離経路29aに設けることもできる。このように、二つを超える数の照明設定間の高速切り換えを得ることが可能である。
【0064】
ポッケルスセル8を光源2内に位置させ、光源2で発生させたレーザパルスを同種の数個の光パルス成分に切って成分L、Lとすることも可能である。これにより、特に、レーザコヒーレンスが低下するかまたはなくなることとなり、マスク面17での不要な干渉を防ぐことになる。
【0065】
図5は、本発明の照明系の別の実施形態を示すものである。図1〜4を参照して上にすでに説明した要素と同一の要素は同一の参照番号を有し、これについて再度個々には説明しない。図5の照明系は、図1〜4の実施形態を参照して上に説明した設計の変型例のいずれとでも組み合わせて実施できる。
【0066】
光源2に加え、図5の照明系5は、内部構造が光源2の内部構造と同一である別の光源36を有している。光源36の下流にビーム拡大器37があり、その構造はビーム拡大器7の構造と同一である。光源36からの光ビーム38は、光源2からの光ビーム3についてすでに説明したように、ビーム拡大器37によって拡大される。ビーム拡大器37の下流には別のポッケルスセル39がある。光ビーム38についても、他方の光源36から射出された後、初め、光ビーム38に点6で示したようにs偏光されている。ポッケルスセル39に電圧が印加されない限り、光ビーム38はポッケルスセル39を通過した後、s偏光されたままである。ポッケルスセル39の後、光ビーム38は第2の分離用ビームスプリッタ40に突き当たる。光ビームスプリッタ40はs偏光された光を通過させ、p偏光された光を図5の90°右側に反射する。偏光選択性の偏向要素41は、ビームスプリッタの順方向の第2の分離用ビームスプリッタ40の下流に位置している。偏向要素は、第2の分離用ビームスプリッタ40の方向から入射したs偏光された光に対するもので、図5の90°右側に反射し、またこれはp偏光された光を妨げることなく通過させるものである。
【0067】
図5の照明系5を用いると、二つの光源2、36からの光を二つの光学モジュール28、29の中に任意に送ることができる。
【0068】
二つのポッケルスセル8、39に電圧が印加されていない場合、二つの分離用ビームスプリッタ9、40からのs偏光された光ビーム3は妨げられることなく通過できるため、光源2は第1の光学モジュール28を照明する。二つのポッケルスセル8、39に電圧が印加されない限り、第2の分離用ビームスプリッタ40が光ビーム38のs偏光された光を妨げることなく通過させるため、第2の光源36は第2の光学モジュール29を照明し、このs偏光された光は偏向要素41によって偏向されて第2の光学モジュール29の中に入る。
【0069】
第1のポッケルスセル8に電圧が印加されているが第2のポッケルスセル39には印加されていない場合、二つの光源2、36は第2の光学モジュール29を照明する。第1の光源2からのたった今p偏光された光は、上述したように分離用ビームスプリッタ9から抽出されて分離経路29aに入り、偏向ミラー33により偏向された後、偏向要素41を妨げられることなく通過するため、第2の光学モジュール29に入ることができる。第2の光源36からの光ビーム38の光路は変わらないままである。
【0070】
第1のポッケルスセル8にではなく第2のポッケルスセル39に電圧が印加されている場合、二つの光源2、36は第1の光学モジュール28を照明する。第1の光源2からのs偏光は二つの分離用ビームスプリッタ9、40を妨げられることなく通過し、第1の光学モジュール28に入射する。第2のポッケルスセルによってp偏光に回転された第2の光源36からの光ビーム38の光は第2の分離用ビームスプリッタ40によって90°反射され、第1の光学モジュール28に入射する。
【0071】
なお、二つの光源2、36からの光が光学モジュール28、29のうち一つにまとまって突き当たった際、光学モジュール28または29をまとまって通過した二つの光源2、36からの光は二つの異なる偏光状態を有している。
【0072】
また、第1の光学モジュール28を通過したp偏光された光は図5の結合用ビームスプリッタ35によって光路42に沿って上方に反射されるが、ここから別の適切な結合要素によって光軸4の方向に戻されなければならない。第2の光学モジュール29を通って送られ、偏向されることなく結合用ビームスプリッタ35を光路42の方向に通過するs偏光された光にも、同じことが当てはまる。
【0073】
二つのポッケルスセル8、39に電圧が印加されている場合、光源2からの光が第2の光学モジュール29を通過し、光源36からの光が第1の光学モジュール28を通過する。図6、7は、第1の光源2からの光パルスLの強度Iおよび第2の光源36からの光パルスL’の強度Iのあり得る特性を時間関数として示すものである。二つの光源2、36は相互に同期しているため、二つの光パルスLの合間に光パルスL’が発生する。このため、二つの光パルスL、L’は、第2の分離用ビームスプリッタ40および偏向要素41に同時に突き当たることはない。また、結合用ビームスプリッタ35を過ぎて、レーザパルスL、L’が照明系5の下流にある光学要素またはレチクル19およびウエハ24に同時に突き当たることはない。図2〜4を参照して上に説明したように、レーザパルスL、L’は、光学偏光手段および適当な切り換え時間によって二つ以上のレーザパルス成分L、LおよびL’、L’に分割できる。これにより、図2〜4を参照してすでに上に説明したように、光学要素にかかる照明光負荷が低下する。
【0074】
図6、7によるパルス波長を有する二つのパルス光源を、照明系の単一のポッケルスセルの上流で組み合わせることも可能である。これを実現するために、例えば、ビーム拡大器7の上流にある第2の光源2からの光3を、光軸4に対して45°傾斜した孔あきミラー2aの補助を得て、光ビーム3の光路に送ることができる。光源2’、光ビーム3’、孔あきミラー2aは図1に破線で示されている。光ビーム3’もs偏光されている。光源2’からの光ビーム3’は、孔あきミラー2aの中心孔の領域では実質的にエネルギーを運ばないモードを有していることが理想である。光源2からの光ビーム3は孔あきミラー2aの孔を通過する。ビーム拡大器7はその後、結合した光ビーム3、3’によって照明される。ポッケルスセル8はその後、光ビーム3、3’の偏光状態に影響を与えるために共通ポッケルスセルとして用いられる。
【0075】
図8、9は、二つの光源2、36の光パルスL、L’が時間的に重なる状況において、図5の照明系5の個々の要素にかかる照明光負荷を低下させる別の方法を示したものである。図8は、光源2からの光パルスLの強度Iを示すものである。図9は、光源36からの光パルスL’の強度Iを示すものである。ポッケルスセル8は、第1のレーザパルスLがt=ts0に達する前に電源を断たれている。このため、レーザパルス成分Lは、第1の光学モジュール28を通過する。第2のポッケルスセル39もまた、第1のポッケルスセル8と同期してt=ts0で電源を断たれている。切り換え時点ts0は第2の光源36のレーザパルスL’の中央に一致しているため、次の光パルス成分L’はその後第2の光学モジュール29を通過する。切り換え時点ts0に続く、二つのレーザパルスL、L’が重なる、レーザパルスLの立ち上がりとレーザパルスL’の立ち下がりとの間の期間TDでは、二つのレーザパルスL、L’は別々に光学モジュール28、29を通過するため、二つのレーザパルスL、L’による同時負荷がない。次の切り換え時点ts1では、二つのポッケルスセル8、39に電圧が同期して印加される。切換時点ts1は、光源2のレーザパルスLの中心と一致する。このため、次のレーザパルス成分Lは第2の光学モジュール29を通過する。対照的に、このレーザパルス成分Lと重なる第2の光源36の次のレーザパルスL’のレーザパルス成分L’は、第1の光学モジュール28を通過する。
【0076】
次のレーザパルスL’の中央の切り換え時点ts2では、切り換え時点ts0を参照して説明したプロセスを繰り返す。切り換え時点tの周波数は、一方の光源のレーザパルスL、L’が二等分され、他方の光源の二つのレーザパルスL’、Lが切り換わることにより、各光源2、36のレーザパルスの周波数の二倍になる。この回路により、二つの光源2、36からの光が単一の光学モジュール28または29を通過することが確実になくなり、これに応じて、光学モジュール28、29の個々の光学要素への負荷が低下する。
【0077】
図10は、照明系5の別の設計を示すものである。図1〜9を参照してすでに上に説明した構成要素と同一の構成要素は同一の参照番号を有しており、これらについて再度個々には説明しない。図10の変形例は、第2の光源36からの光を抽出する方法を除いては、図5の変形例と同等のものである。図10の変形例では、光源2の光ビーム3をすでに抽出した分離用ビームスプリッタ9を、第2の光源36の光ビーム38を抽出するのに用いる。
【0078】
分離用ビームスプリッタ9は、初めに光源2のs偏光された光を、次に光源36のs偏光された光を妨げることなく通過させるため、光源2からのs偏光された光が第1の光学モジュール28に突き当たり、第2の光源36からのs偏光された光が第2の光学モジュール29に突き当たる。分離用ビームスプリッタ9は光源2、36のp偏光された光をそれぞれ90°反射し、第2の光源36からのp偏光が第1の光学モジュール28に突き当たり、第1の光源2からのp偏光が第2の光学モジュール29に突き当たる。
【0079】
結合に関しては、図10の変形例は図5の変形例に相当する。
【0080】
ポッケルスセル8、39の切り換え時間に関しては、図6〜9を参照して上に説明した切り換え時間の例をここでも用いることができる。
【0081】
光学モジュール28、29間で光路を切り換えるための光特性の切り換えは、ポッケルスセル8、39が用いられる場合、数ナノ秒以内で行われる。使用する光特性変換器によって、10ナノ秒以内、100ナノ秒以内、1マイクロ秒以内、あるいは1秒以内でも切り換えを行うことができる。
【0082】
特に、ポッケルスセル8、39の切り換えは、固定周波数で周期的なものにすることができる。この周波数は、例えば約1kHzである。このほか、1Hzから10kHzまでの周波数も可能である。
【0083】
光特性を切り換えることにより、特に、瞳面12の照明設定を行った後の一レーザパルスあたりの最大レーザ出力を、同一の位置で計測した同一の設定を有する従来の照明系を用いたものよりも少なくとも25%確実に低くできる。
【0084】
本発明の設計の場合、光学モジュールを一つのみ用いた従来の照明系の場合よりも、照明系の特定の位置の最大強度を最大25%低くできる。
【0085】
結合用ビームスプリッタ35の代わりに、二つの光路を結合した光学系を、例えば、レンズ、対物レンズ、屈折ミラー、あるいは複数のこのようなミラーの形で設けることも可能である。このような光学的に結合した系の一例が、特許文献7に記載されている。
【0086】
図11は、図1と同様の図で、一方では第1の光学モジュール28により、他方では第2の光学モジュール29により、照明領域の均衡の取れた照明を行うためのもので、例えば、光学モジュール28、29を介して設定可能な二つの照明設定を用いてレチクル19に特定の二重露光を行うために、マイクロリソグラフィ投影露光装置1を発展させたものを示す。図1〜10の投影露光装置1を参照してすでに上に説明した構成要素と同一の図11の投影露光装置1の構成要素は同一の参照番号を有しており、これらについて再度個々には説明しない。
【0087】
図11の投影露光装置1は、均衡の取れた照明を特定するために、コンピュータ43の形の主制御系を有している。コンピュータ43は、信号ケーブル44によって制御モジュール45に接続されている。制御モジュール45は、信号により、信号ケーブル46によって光源2に接続され、信号ケーブル47によって光源2’に接続され、信号ケーブル48によってポッケルスセル8に接続される。コンピュータ43は、信号ケーブル49、50によってズーム系11a、31aに接続されている。コンピュータ43は、信号ケーブル51、52によってアキシコン構成11b、31bに接続されている。コンピュータ43は、信号ケーブル53によってREMA16に接続されている。コンピュータ43は、信号ケーブル54によってウエハステージ26に接続され、信号ケーブル55によってレチクルステージ23に接続されている。コンピュータ43は、表示装置56およびキーボード57を有している。
【0088】
コンピュータ43はポッケルスセル8の切り換え時点tsを特定する。コンピュータ43の補助により期間中の切り換え時点を選択することにより強度を指定でき、この強度により、二つの光学モジュール28、29によって実施可能な二つの照明設定のうちのいずれかを用いてレチクル19が照明される。ポッケルスセル8の切り換え時点は、図2〜8について上に説明したように、切り換え時点がレーザパルス中に正しい位相関係で起こるように、光源2、2’のトリガーパルスと同期させることができる。
【0089】
切り換え時点tは、光学モジュール28、29にあらかじめ設定された特定の照明設定に応じて指定される。コンピュータ43は、あらかじめ設定した特定の照明設定についての情報を信号ケーブル49〜52を通じて受け取る。コンピュータ43は、ズーム系11a、31a用の適当な変位駆動装置およびアキシコン構成11b、31b用の適当な変位駆動装置を対応する信号ケーブルを通じて制御することにより、所定の照明設定を積極的に設定することもできる。
【0090】
切り換え時点tはまた、特定のスキャン工程に応じても特定される。コンピュータ43は、信号ケーブル53〜55を介してREMA16およびステージ23、26からこれに関する情報を受け取る。特定された値によって、コンピュータ43は、信号ケーブル53〜55を介して適当なドライブを制御することにより、REMA16およびステージ23、26の動作位置を積極的に変更することもできる。このように、コンピュータ43は、投影露光装置1の特定の動作状況に応じて、二つの光学モジュール28、29のそれぞれがレチクル19の照明領域を照明するのに十分な光を確実に与えることができる。コンピュータ43は、強度曲線(図2〜4および図7〜9を参照のこと)を組み合わせることにより、適切な乃至関連する光の寄与を決定する。投影露光に不要となる過剰な光はいずれも、第2のポッケルスセルおよび下流の偏光子を用いることにより露光経路から外れて結合される。
【0091】
また、光学モジュール28、29によって実現できる照明設定を用いて照明領域の均衡の取れた照明を特定するために必要であれば、主制御系43を信号によって分離要素9及び/又は結合要素35に接続することができる。
【0092】
主制御系43は、第1の光学モジュール28および第2の光学モジュール29によって、レチクル19の照明領域の時間に均衡の取れた照明を可能にする。別の方法としてまたはこれに追加して、主制御系43を、第1の光学モジュール28および第2の光学モジュール29によって強度に均衡の取れた照明領域の照明を行うのに用いることもできる。例えば、第1の光学モジュール28により全強度の30%で、第2の光学モジュール29により全強度の70%で、照明領域を照明することが可能である。これは、これらのパーセンテージが所定の期間切り換わらないように静的に行うことができる。別の方法として、これらの割合を動的に変更させることも可能である。これを実現するため、例えば、1nsの時間基準(time-base)を有する鋸波形によってポッケルスセル8を駆動できる。これを実現するため、ポッケルスセル8の制御回路は少なくとも一つの高電圧発生機を有する。二つの高電圧間の高速切り換えが求められる場合、ポッケルスセル8の制御回路は二つの高電圧発生機を有する。ナノ秒の時間尺度での高電圧の切り換えに、例えば、ミリ秒の時間尺度での高電圧切り換えを追加することができるため、レーザパルス幅と比較すると、光学モジュール28、29によって特定可能な照明設定間でのゆっくりとした切り換えが可能となる。
【0093】
図12は、図1と同様の図で、投影露光装置1の別の変形例を示すものである。図1〜11を参照してすでに上に説明した構成要素と同一の構成要素は同一の参照番号を有しており、これについて再度個々には説明しない。
【0094】
図1、5、10、11の投影露光装置とは対照的に、図12の投影露光装置1は、光学モジュール28、29につながる光路にそれぞれ位置し、かつこれによりこれらに直接割り当てられた瞳形成面58、59を有している。瞳形成面58は、第1の光学モジュール28のアキシコン構成11bのすぐ下流にある。瞳形成面59は、第2の光学モジュール29のアキシコン構成31bのすぐ下流に、つまり、分離経路29aに位置している。
【0095】
図12の実施形態では、瞳形成面58、59は、図12において、瞳形成面12の代わりとなる。別の方法として、瞳形成面58、59を瞳形成面12と光学的に共役させることも可能である。
【0096】
図1の投影露光装置1におけるラスタ要素13に相当する個々のラスタ要素を、瞳形成面58、59に割り当てることができる。
【0097】
図12の照明系5の実施形態の場合、従来の技術、例えば、特許文献7で原理的に知られているように、瞳形成、つまり、照明設定の設定を光学モジュール28、29において適当な光学要素を用いて行うことができる。
【0098】
光学モジュール28、29において使用可能な瞳設定に影響を与える他の要素については、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、及び、特許文献7に記載がある。
【0099】
図13は、投影露光装置1の照明系5の別の実施形態を示すものである。図1〜12を参照してすでに上に説明した構成要素と同一の構成要素は同一の参照番号を有しており、これについて再度個々には説明しない。
【0100】
図1〜12の照明系5とは対照的に、図13の照明系5の場合、光学モジュール28、29間での分離を行うための機構は、光路を変更するために継続して使用される光特性に影響を与えることに基づいたものではなく、照明光の経路に直に影響を与えるものである。これを実現するため、分離要素60はミラー要素の形で設けられている。分離要素60は、例えば図1の実施形態における分離用ビームスプリッタ9の位置に位置しており、図13の投影面にある軸61の周りを回転可能である。この回転移動は、回転駆動装置62によって駆動される。回転駆動装置62は、信号ケーブル64によって同期モジュール63に接続されている。分離要素60はディスク状ミラーマウント65を有しており、その一部を図13、14に示してある。多数のミラー67はそれぞれ、ミラーマウント65の外周壁66にわたって取り付けられており、この壁から突き出ている。
【0101】
図14に表したものは実際の尺度ではない。実際には、多数の個々のミラー67、例えば、数百個あるこのような個々のミラーがミラーマウント65に存在する。
【0102】
二つの隣接した個々のミラー67間の円周方向の間隙は個々のミラー67の円周方向の長さと等しい。個々のミラー67はいずれも同一の円周方向の長さを有している。
【0103】
ミラーマウント65が回転すると、照明光がミラー67の一つによって反射されるか、あるいは個々のミラー67間を通過して変化を来さない。反射された照明光は分離経路29a、つまり、第2の光学モジュール29に突き当たる。通過した照明光は、第1の光学モジュール28に突き当たる。
【0104】
図13の実施形態の場合、結合要素68は、図1の実施形態における結合用ビームスプリッタ35の位置に位置しており、結合要素68は分離要素60とまさに同一の構造を有している。図13では、結合要素68は単に概略でのみ示してある。制御モジュール63によって制御される結合要素68は、分離要素60が照明光を通過させた際には常に結合要素68も照明光を通過させて変化させないように、分離要素60と同期して駆動される。対照的に、分離要素60がミラー67の一つによって照明光を反射した際、この抽出された照明光は、分離経路29aを通過した後、結合要素68の相当する個々のミラーによって反射され、これにより、レチクル19に向かう近くの共通の照明光線経路に送られる。
【0105】
分離要素60の回転速度および結合要素68の回転速度は、光源2、2’からのパルスシーケンスと同期している。
【0106】
分離要素60および結合要素68の隣接した個々のミラー67間の間隙の円周方向の長さに対する個々のミラー67の円周方向の長さのアスペクト比により、一方では第1の光学モジュール28により、他方では第2の光学モジュール29により、照明の割合を特定することができる。このようなアスペクト比については、ミラーマウント65の外周壁66上の個々のミラー67の構成および配置によって、例えば、1:10から10:1に定めることができる。
【0107】
図15は、分離要素60の別の実施形態を示すものであり、これは結合要素68としてもこの形状で使用可能である。分離要素60は、ストリップ状のミラーフォイル69の形状となっている。ミラーフォイル69は個々のミラー70に分割され、これらの間には照明光を通過させることができる透明の間隙71が存在している。ミラーフォイル69は、図13の実施形態の個々のミラー67の位置で、投影面に対して垂直に照明光3の光線経路を通って移動するように、相当する誘導ローラ上を移動する無限のループである。照明光が個々のミラー70の一つによって反射される限り、この照明光は分離要素60によって分離経路29aの中に反射され、結合要素68によってレチクル19に向かう共通の光線経路に送られる。照明光は透明な間隙71によって影響を受けないため、分離要素60の場合には、通過して第1の光学モジュール28に到達し、結合要素68の場合は通過してレチクル19に到達する。
【0108】
図14の分離要素60および結合要素68に関連してアスペクト比について上に示した説明は、制御モジュール63によって駆動されるミラーフォイル69の制御、個々のミラー70の長さと間隙71の長さとのアスペクト比にも当てはまる。
【0109】
図16は、分離要素60の代わりに用いることのできる偏光変換器72を示すものである。偏光変換器72は、図1の照明系5のポッケルスセル8の位置に取り付けられている。偏光変換器72は、光源2と分離用ビームスプリッタ9との間の光ビーム3と平行に伸びる回転軸76の周りを回転可能に駆動される。偏光変換器72は、制御モジュール63によって同期した適当な回転駆動装置によって回転軸76の周りを回転可能に駆動される。偏光変換器72は、計八個の回転式レセプタクル74を備えた回転式支持体73を有している。さらに大幅に多い数のレセプタクル74も可能である。各第2のレセプタクル74には円周方向にラムダ/2板75が取り付けられている。他の四個のレセプタクル74には何も取り付けられていない。このため、計四つのラムダ/2板75の光軸は、ラムダ/2板75のうち一つが照明光の光線経路にあるとき、照明光の偏光がラムダ/2板を通る際に90°回転するように作られている。このため、偏光変換器72は、高電圧が印加された際のポッケルスセル8と同一の機能を有している。
【0110】
何も取り付けられていないレセプタクル74のうち一つが照明光を変化させずに通過させた場合、偏光変換器72は電源を断たれたポッケルスセルとして機能する。
【0111】
偏光変換器72の代わりとして、例えば、特許文献12に記載されているような回転可能な偏光切り換え板を用いることができる。
【0112】
照明光ビーム3の光線経路、例えば、図1の装置のポッケルスセル8の位置に配置され、ポッケルスセル8の代用になるラムダ/2板は、偏光変換器72の別の代用にもなり得る。ラムダ/2板を、これを通過する照明光ビーム3と平行な回転軸の周りで回転させることにより、照明光の偏光面を、ラムダ/2板が図1の実施形態のポッケルスセル8と同等の偏光切り換え効果を有するように、例えば90°回転させることができる。ラムダ/2板の光軸は、通例、板面内にある。ラムダ/2板の光軸を板面に対して他の配向とすることも可能である。例えば、特許文献8、特許文献9及び特許文献10に、ラムダ/2板と同種の偏光切り換え要素が記載されている。
【0113】
照明系が二つの光学モジュール28、29をすでに有しているものと仮定して、実施形態を上に説明した。本発明によれば、上に説明した実施形態の第1の光学モジュール28と同等の光学モジュールを備えた現存する投影露光装置を補助モジュールを用いて改良することも可能であり、これにより上述の実施形態のうち一つが作られる。組み込まれる補助モジュールには、第2の光学モジュール29のほか、分離要素9または分離要素60および結合要素35または結合要素68を含む。補助モジュールの設計によっては、光特性変換器、例えば、ポッケルスセル8または偏光変換器72を有することもできる。主制御系43は、補助モジュールの一部であってもよい。最後に、補助モジュールは、特に図1、5に関連して上述したような適当な結合光学系および分離光学系とともに別の光源2’または光源36を含んでもよい。
【0114】
瞳または瞳面12の好ましい異なる空間強度分布を有する二つの異なる照明設定を参照して実施形態を以上に説明した。リソグラフィの適用には瞳の空間偏光分布が重要であるため、用語「照明設定」は空間強度分布のみを表すものではなく、同義的に、瞳の空間偏光分布をも表すものとする。
【0115】
少なくとも二つの光学モジュール28、29を使用して、瞳面12の空間強度分布について単一の空間照明設定を調整することも可能であり、この照明設定は瞳面12のそれらの空間偏光分布についてのみ異なるものとなる。結像する構造によっては、第2の照明設定には、例えば、瞳面12の第1の照明設定の偏光分布に対して瞳面12で90°回転させた偏光分布をもたせることができる。このため、レチクル19が照明されるのに用いられる単一の強度照明設定に対して様々な偏光状態を照明中に実現できるように、例えば、コンピュータ43などの制御ユニットを用いて、二つの光学モジュール28、29の適切な動作によってこれらの均衡の取れた照明を制御することが可能である。
【0116】
例えば、製造工程が、現像施設の現像装置から微細構造素子を製造するための工場あるいはチップ工場の製造装置に移行することになっており、これらの異なる装置、特にマスク構造をウエハに結像するためのそれぞれの投影対物レンズがこれらの偏光転写特性について異なっている場合、これは有益である。このような場合、その現像が特定のチップ構造にとって最適であるとわかっている単一の強度照明設定に対して、二つの光学モジュールを用いることにより偏光特性を制御できると有益であり、これにより、これを用いて操作される製造装置も最適なチップ構造をウエハに結像する。単一の強度の照明設定での偏光特性の切り換えの別の適用が、スキャン工程におけるチップの照明の際にも得られ、ここでは、チップ全体を照明するために単一の強度の照明設定が選ばれるが、異なる偏光によりチップの異なる領域のチップ構造をさらに高いコントラストで結像できる。この場合、スキャン工程中に偏光特性を変更するのが得策である。また、少なくとも二つの光学モジュールによって作られた照明設定(強度照明設定)の空間強度分布も、スキャン工程中に変更可能である。
【0117】
偏光を引き起こす複屈折として知られるものから、単一の照明設定での偏光特性の切り換えについて別のアスペクトが得られる。これは、物質の偏光照射により、照明光が通過する物質内で時間とともに機械的複屈折が引き起こされるという事実に基づいた物質作用である。照明によって引き起こされた機械的複屈折を有するこのような物質領域は、この物質に欠陥領域を形成する。このような物質の作用を防ぐために、可能であれば、円偏光または非偏光を用いるか、またはそれが好ましい。このため、本発明により、偏光特性が単一の強度照明設定で変更可能となるため、少なくとも結合要素の後の光学要素について、偏光により引き起こされる複屈折を低減させることが可能となる。
【0118】
前述の実施形態に基づき、少なくとも二つの光学モジュール28、29を用いて、瞳面12にいかなる所望の偏光分布をも有するいかなる所望の照明設定をも作ることもできる。この場合、相当する偏光状態を有する照明設定間で、一光パルス中の複数の切り換えまで、高速に切り換えることも可能である。さらに、スキャン工程と同期させた照明設定のゆっくりとした切り換えが可能であり、同時に、例えばスキャン工程と時間的に相関関係をもたせてモジュール28、29内またはこれらのモジュールの後にビーム方向に作られた偏光に影響を与える適当な光学要素を用いて、例えば特許文献10に記載の偏光回転ユニットまたは例えば特許文献7に記載の回転可能なラムダ/2板などを用いて、少なくとも二つの光学モジュール28、29内で偏光分布を変更することができる。
【0119】
例えば、特許文献10に示されているような偏光に影響を与える光学要素により、二つのモジュール28、29内で偏光特性を非常に高速に切り換えることさえも可能である。このため、本発明は、結像の要件に適応させた強度照明設定及び/又はコントラストおよび分解能について最適にした結像用の投影露光装置の瞳面における空間偏光分布を用いて、例えばスキャン工程中に、ウエハの部分領域のチップ構造または異なるチップ構造の組み合わせを照明するのに融通性をもたらすものである。必要となる照明設定に課される種々の要件のために、以前は一枚のウエハ上では回避されるか、あるいは最大の集積密度によってのみその結像が可能であったチップ構造の組み合わせを本発明が可能にしたため、このことは、チップ製造業者のために、ウエハ上に異なるチップ構造を作る新しい可能性を明るみに出すことになる。
【0120】
上述の実施形態によれば、少なくとも二つの光学モジュール28、29を用いて、同一の空間偏光分布であってもこれとともに単一の強度照明設定を、つまり、所定の許容範囲内で類似している二つの照明設定を瞳面12に同じようにもたらすことが可能となる。これは、例えば、スキャン工程中に二つの異なる設定及び/又は異なる偏光状態を用いた二重露光がチップの特定の一部の領域には不適切であると思われる場合、その一部の領域に高いコントラストでチップ構造を結像するのに有益である。
【0121】
瞳面12において同一の照明設定および同一の空間偏光分布を用いて二つの光学モジュール28、29を動作させるほかの利点は、図3の切り換え時間の例に従って光パルス中で切り換える際の二つの光学モジュール28、29の光学要素にかかるピーク負荷、あるいは図2の切り換え時間の例に従って光パルス間で切り換える際の二つの光学モジュール28、29の光学要素にかかる常時負荷が、従来の照明系において同一の偏光分布を用いた同一の照明設定の操作、あるいは二つの光学モジュール28、29のうち一つのみにおける照明設定の操作と比較すると、低下しているということである。
【0122】
図18〜29は、関連のマスク構造を用いて瞳面12での異なる照明設定を組み合わせた例を示すものである。図18、19、22、23、26、27に示した例は、本発明により実現可能な照明設定から単に小さく選び取ったものである。
【0123】
用語「シグマインナー(インナーs)」、「シグマアウター(アウターs)」、「極線幅(polar width)」を特徴付けのために以下で用いる。この場合、インナーsについては、照明光強度の10%が瞳にある瞳半径として定義する。アウターsについては、この場合、照明光強度の90%が瞳にある瞳半径として定義する。極線幅については、瞳面で照明される構造の範囲を定める半径間の開口角であり、この開口角で強度がこの構造の最大強度の50%に低下したものとして定義する。
【0124】
図18は、35°の極線幅、0.8のインナーs、0.99のアウターsを有する、X方向の二重極照明の形状をした照明設定を示すものである。図19は、35°の極線幅、0.3のインナーs、0.5のアウターsを有するY方向の二重極照明の形状をした別の照明設定を示すものである。図18の照明設定は、この場合、モジュール28によって提供でき、図19の照明設定はモジュール29によって提供でき、あるいはこの逆も可能である。これらの照明設定を偏光して操作する場合、図18の照明設定をY方向に直線状に偏光させると有益である。図19の照明設定の偏光方向はこの場合、図18の照明設定とは対照的に、最大アウターsが0.5であるために依然適度な角度で光ビームがウエハに達するため、結像コントラストについて重大なものとはならない。
【0125】
図20、21は、光学モジュール28、29によって提供された図18、19の照明設定の二重露光または切り換えによりスキャン工程中に良好な結像特性で照明されて結像されるマスク構造を示すものである。図20のマスク構造は、Y方向の50nm幅の延びを有し、X方向において線の間に50nmの間隔を有する密集した垂直線の形状をしている。図21のマスク構造は、100nmを超える幅を有する水平線および垂直線の形状をしている。後者の場合、線が離れていると述べておく。図20および図21の構造の同時結像は、マスクの一方向に重要な構造が、及び、同時に同一方向またはこれに垂直な方向に重要でない構造が、照明によってウエハに転写される典型的な適用である。用語「重要」はこの場合、「投影対物レンズの分解能に重要」という意味で用い、一般に、結像する構造の小さい幅(low width)と同義語である。マスクに、図20、21の上述の密集した線及び離れた線を相互に隣接させて形成するかあるいは離して形成するかどうかにより、スキャン工程と相関関係にある、図18、19の照明設定の二重露光、切り換え、あるいは二重露光と切り換えとの組み合わせが図20、21のマスク構造を結像するのに最適であることが証明されると思われる。図18の照明設定は、図20のマスク構造に相当する、密集した線のみを有するマスクの高コントラスト結像に適しており、図19の照明設定は、図21のマスク構成に相当する、離れた線のみを有するマスクの高コントラスト結像に適している。
【0126】
図22は、0.8のインナーsおよび0.99のアウターsを有し、X方向とY方向との間の対角線に沿って35°の極線幅を有する極を有するクェーサー照明(quasar illumination)または四重極照明の形状をした照明設定を示すものである。図23は、0.3のアウターsを有する従来の照明の形状をした照明設定を示すものである。図22の照明設定は、この場合、モジュール28によって提供され、図23の照明設定はモジュール29によって提供され、あるいはこれと逆でもよい。これらの照明設定を偏光して操作する場合、図22の照明設定を光軸に対して接線方向に直線偏光すると有益である。図19の照明設定の偏光方向について上で説明したことが、図23の照明設定の偏光方向に相応に当てはまる。
【0127】
図24、25は、スキャン工程中に図22、23の照明設定の二重露光または切り換えによって提供されるマスク構造を示すものである。これらの構造は、例えば、65nmの幅を有する重要なコンタクトホール(図24)および重要でないコンタクトホール(図25)である。用語「重要」は、これについては、マスク上のコンタクトホールの高充填密度のことを表す。マスクに、上述の図24の重要なコンタクトホールおよび図25の重要でないコンタクトホールを相互に隣接して形成するかまたは離して形成するかによって、スキャン工程と相関関係にある、図22、23の照明設定の二重露光、切り換え、あるいは二重露光と切り換えとの組み合わせが図24、25のマスク構造を結像するのに最適であることが見出されると思われる。図22の照明設定は、図24のマスク構造に相当する重要なコンタクトホールのみを有するマスクを高いコントラストで結像するのに適しており、図23の照明設定は、図25のマスク構造に相当する重要でないコンタクトホールのみを有するマスクを高いコントラストで結像するのに最も適している。
【0128】
図26は、0.8のインナーsおよび0.99のアウターsでX方向の35°の極線幅を有する極を有するX−二重極照明の形状をした照明設定を示すものである。図27は、0.8のインナーsおよび0.99のアウターsでY方向の35°の極線幅を有する極を有するY−二重極照明の形状をした照明設定を示すものである。図26の照明設定は、この場合モジュール28によって提供され、図27の照明設定はモジュール29によって提供され、あるいはこれと逆であってもよい。これらの照明設定を偏光して操作する場合、図26の照明設定をY方向に直線偏光し、図27の照明設定をX方向に直線偏光すると有益である。
【0129】
図28、29は、二つのスキャン工程中に、図26、27の照明設定を用いて二重露光によって照明される同一のウエハに連続して結像される二つのマスクを示すものである。これらのマスクは、例えば50nmの幅と、例えば50nmの線状の間隔とを有する密集した水平構造(図28)および密集した垂直構造(図29)である。上記の例とは対照的に、図28、29の二つのマスクを結像するためには、照明する同一のウエハに、第1のステップでは図28のマスクおよび図26の照明設定を用いてスキャン工程が、第2のステップでは、図29のマスクおよび図27の照明設定を用いて第2のスキャン工程が実施される二重露光を実施する。これにより、異なるマスクによって二つの異なる照明が同一のウエハに実行される。このため、異なるマスクを用いたこの二重露光は、マスクを照明するのに用いる照明設定が単に切り換えられるだけの単一のマスクによる二重露光または切り換えとは異なるものである。この場合、二つの個々のマスクを、レチクル面またはマスク面に相互に隣り合わせて配置し、マスクまたはレチクルを保持し操作するための手段23によってスキャン方向に移動させることができる。この場合、二つの照明間でマスクを複雑に変更する必要がなく、継続して実施される二つのスキャン工程の代わりに単一のスキャン工程で照明する同一のウエハに、マスクを継続して転写することができる。投影露光装置の高いウエハスループットに責任を担う手段23のスキャンが高速であるために、一スキャン工程のマスクの転写中に二つのマスクの照明設定を高速に切り換える必要がある。原理上は、二つの個々のマスクを同一面に配置することは必須ではない。原理上、二つのマスクを種々の面に配置することもでき、投影露光装置は、光学要素の適切かつ任意の自動調整により種々の面に配置されたマスク間で切り換わる間に適応させられる。
【0130】
図18、19、22、23、26、27の上記の照明設定ではいずれも、1nsまでの切り換え時間での図18、19、22、23、26、27の本発明による二つの照明設定を用いたマスクの二重露光または多重露光、あるいは本発明の二つの設定の切り換えにより、二つの設定内で光強度の正確なモニタリングおよび最適化が可能となるため、図20、21、24、25、28、29のマスク構造を用いたスキャン工程中に、照明するウエハ上で最適な構造および構造幅が実現できる。この場合、それぞれ利用される二つの照明設定によって定められる内側および外側の最小照明角度または最大照明角度を変更するために、スキャン工程中に、二つの光学モジュール28、29の二つのズームアキシコン群11、31を長めの時間尺度で制御することも可能となる。
【0131】
光学モジュール28または光学モジュール29内でモジュールの光パルスを一部遅延させる光学要素80を使用すると(図17を参照)、同一の照明設定または異なる照明設定を用いて、また瞳面12における同一の偏光分布または異なる偏光分布を用いて少なくとも二つの光学モジュール28、29を操作する別の利点が、図3の切り換え時間の例に従った光パルス中の切り換え時に得られる。光学要素80は、例えば、対応させて折り返した光遅延ライン、少なくとも二つのミラー、あるいは光の伝播時間を延長させるものに相当するものからなる。図3の切り換え時間の例に従った光パルス中の切り換えにより、上述したように、12kHzの繰返し数の出力を有するレーザを、例えば6kHzの繰返し数を有するレーザから作り出すことができる。図17の光学要素80はこのため、例えば、照明するレチクル19に時間的に等間隔の光パルスが到達するように、一方のモジュール28からの一部の光パルスを他方のモジュールからの一部の光パルスに対して相互に時間的にずらすように、光の伝播時間について、光学モジュール29の照明光の一部の光パルスを、他方の光学モジュール28の照明光の他の一部の光パルスに対して一部遅延させる。この場合、光パルスL、Lは、これらが切り換え時点tsで隔てられる位置で隣接するレーザパルスLの間隔分、時間的に遅延されるため、切り換えによって発生させたレーザパルス成分L、Lはいずれも、結合要素の後、相互に同一の間隔を置いている。このため、例えば、6kHzレーザを分割して12kHzレーザを形成するだけでなく、例えば、分割された12kHzレーザの時間間隔あたりの光量を実際の12kHzレーザの時間間隔あたりの光量に実質的に相当するように制御することもできる。スキャン工程中にチップの部分領域のそれぞれに同一の光量を確実に送る必要があるため、これはパルス光源を用いたスキャン工程に重要である。上記のように、二つのモジュール28、29をつり合わせながら、つまり、これらの光量で期間内に異なる部分光パルスを用いて及び/又は強度を変えて動作させる場合、二つのモジュール28、29からレチクル19に到達する光パルスの時間的に非等間隔のパルスシーケンスが、光量に関して利益をもたらすことがある。
【0132】
二つの光学モジュール28、29内あるいはそれ以降の上記の偏光設定は、例えば、図18、19、22、23、26、あるいは27のように、各照明設定について瞳面12の空間偏光分布の調整について利益をもたらすだけのものではないことに留意が必要である。二つの光学モジュール28、29自身、次のレンズ系、レチクル19、投影対物レンズ20及び/又は照明するウエハ24のフォトレジスト層によって変更される一定の偏光状態を維持するのにも有益である。このため、偏光状態が偏光に影響を及ぼす光学要素からウエハ24への光路で切り換わっても、高いコントラストの結像にそれぞれ必要とされる偏光状態をウエハ24に送ることが可能である。この空間偏光分布の維持はまた、照明系5、投影対物レンズ20、レチクル19という光学要素の光学特性がゆっくりと切り換わることでこれらの光学要素が通過光の偏光状態を変更してしまう場合に、投影露光装置の動作中でのみ有益であることも示すものである。この種のゆっくりとした切り換わりは、例えば、熱ドリフトによって引き起こされる。
【0133】
ポッケルスセル8、39またはカーセルを用いて偏光を切り換えるための代替案として、ファラデー効果に基づいた光磁気切り換えも使用可能である。
【0134】
交換可能な光特性として光波長を用いた上述の切り換えまたは分離の代替案として、特許文献16に記載のラマンセルまたは特許文献17に記載のブラッグセルを使用してもよい。この目的のために光弾性変調器(PEM)などを使用することが、例えば、特許文献18に記載されている。
【0135】
上記の候補の切り換えまたは分離要素の代替案として、上記の選択肢の組み合わせ、特に、少なくとも一つの要素が電気光学または光磁気の原理に基づいて動作するような組み合わせを使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】第1の照明系を備えたマイクロリソグラフィ投影露光装置の概略全体図である。
【図2】図1の投影露光装置の光源からの二つの連続する光パルスの概略図であり、光特性変換器の第1の切り換え時間の例である。
【図3】図2と同様に表した切り換え時間の他の例である。
【図4】図2と同様に表した切り換え時間の他の例である。
【図5】照明系の別の実施形態を備えたマイクロリソグラフィ投影露光装置の図1と同様の概略全体図である。
【図6】図5による照明系を用いて図2と同様に表した切り換え時間の他の例である。
【図7】図5による照明系を用いて図2と同様に表した切り換え時間の他の例である。
【図8】図5による照明系を用いて図2と同様に表した切り換え時間の他の例である。
【図9】図5による照明系を用いて図2と同様に表した切り換え時間の他の例である。
【図10】照明系の別の実施形態を備えたマイクロリソグラフィ投影露光装置の図1と同様の概略全体図である。
【図11】図1のマイクロリソグラフィ投影露光装置と制御要素である。
【図12】照明系の別の実施形態を備えたマイクロリソグラフィ投影露光装置の図1と同様の概略全体図である。
【図13】照明系の別の実施形態を備えたマイクロリソグラフィ投影露光装置の図1と同様の概略全体図である。
【図14】図13の照明系において使用するための分離要素および結合要素の概略図である。
【図15】図13の照明系において使用するための分離要素および結合要素の別の実施形態の概略図である。
【図16】特に図1の照明系においてポッケルスセルの代わりに使用可能な偏光変換器の概略図である。
【図17】光学遅延要素を備えた照明系の別の実施形態を備えたマイクロリソグラフィ投影露光装置の図1と同様の概略全体図である。
【図18】実施形態のうち一つの照明系の光学モジュールを用いて照明系の瞳面上に調整した照明設定の平面図である。
【図19】光学モジュールのうち一つを用いて調整した照明設定の変形例の図18と同様の図である。
【図20】実施形態のうち一つの照明系を用いて結像され、太い縦線を有するマスク構造を大幅に拡大した図である。
【図21】分離された線を有するマスク構造の図20と同様の図である。
【図22】光学モジュールを用いて調整される別の照明設定の図18と同様の図である。
【図23】光学モジュールを用いて調整される別の照明設定の図18と同様の図である。
【図24】図22または23の照明設定を用いて照明したマスク構造の変形例の図20と同様の図である。
【図25】図22または23の照明設定を用いて照明したマスク構造の変形例の図20と同様の図である。
【図26】光学モジュールを用いて調整される別の照明設定の図18と同様の図である。
【図27】光学モジュールを用いて調整される別の照明設定の図18と同様の図である。
【図28】図26の照明設定を用いて照明されるマスク構造の変形例の図20と同様の図である。
【図29】図27の照明設定を用いて照明されるマスク構造の変形例の図20と同様の図である。
【符号の説明】
【0137】
1 マイクロリソグラフィ投影露光装置
2、2’、36 光源
2a 孔あきミラー
3、3’、38 照明光、光ビーム
4 光軸
5 照明系
6 点
7、37 ビーム拡大器
8、39 光特性変換器、ポッケルスセル
9、40 分離要素、分離用ビームスプリッタ
10 第1のDOE
11 第1のレンズ群
11a、31a ズーム系
11b、31b アキシコン構成
12 瞳面、瞳形成面
13 光学ラスタ要素
14 結合光学要素
15 領域面
16 レチクルマスキング系(REMA)
17 マスク面
18 結像対物レンズ
19 マスク、レチクル
20 投影対物レンズ
21 瞳面
22 偏向ミラー
23 レチクルステージ
24 基板、ウエハ
25 像平面
26 ウエハステージ
27 瞳面
28 第1の光学モジュール、第1の光学要素
29 第2の光学モジュール
29a 分離経路
30 第2のDOE
31 第2のレンズ群
32 二重矢印
33 偏向ミラー
34 偏向ミラー
35 結合要素、結合用ビームスプリッタ
41 偏光選択性の偏向要素
42 光路
43 主制御系、コンピュータ
44、46〜55、64 信号ケーブル
45、63 制御モジュール
56 表示装置
57 キーボード
58、59 瞳面、瞳形成面
60 分離要素
61 軸
62 回転駆動装置
65 ミラーマウント
66 外周壁
67 ミラー要素
68 結合要素
69 ミラーフォイル
70 ミラー
71 間隙
72 偏光変換器
73 回転式支持体
74 偏光光学要素、レセプタクル
75 偏光光学要素、ラムダ/2板
76 回転軸
80 光学遅延要素
L、L’ 照明光パルス、レーザパルス
、L’ レーザパルス成分
、L’ レーザパルス成分
時間
時間
−t
切り替え時点
s0 切り替え時点
s1 切り替え時点
s2 切り替え時点
強度
強度


【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体表面(19)の特定した照明領域を少なくとも一つの光源(2、36)からの照明光(3、38)によって照明するためのマイクロリソグラフィ投影露光装置(1)用の照明光学系において、
−照明光学系の瞳面(12)に第1の照明設定を設定する第1の光学モジュール(28)と、
−前記第1の光学モジュール(28)とは別の、前記照明光学系の瞳面(12)に第2の照明設定を設定する少なくとも一つの第2の光学モジュール(29)と、
−二つの光学モジュール(28、29)の上流の光路に位置し、照明光(3、38)を前記第1の光学モジュール(28)及び/又は前記第2の光学モジュール(29)に任意に送る少なくとも一つの分離要素(9、40、60)と、
−二つの光学モジュール(28、29)から下流の光路に位置し、前記第1の光学モジュール(28)及び/又は前記第2の光学モジュール(29)を通過した照明光(3、38)を照明領域に送る少なくとも一つの結合要素(35、68)と、
を備えたマイクロリソグラフィ投影露光装置(1)用の照明光学系。
【請求項2】
前記分離要素が、第1の光特性を有する光を前記第1の光学モジュール(28)に送り、前記第1の光特性とは異なる第2の光特性を有する光を前記第2の光学モジュール(29)に送る分離用ビームスプリッタ(9、40)として設計され、
−前記結合要素が、前記二つの光学モジュール(28、29)のうち一つを通過した照明光(3、38)を照明領域に送る結合用ビームスプリッタ(35)として設計され、前記結合用ビームスプリッタ(35)は、結合用ビームスプリッタ(35)から下流の二つの光特性を有する光が一つの同一の光軸(4)に沿って進むように配置されており、
−切り換え可能な光特性変換器(8、39)が、前記分離用ビームスプリッタ(9、40)から上流の光路に位置し、光特性変換器(8、39)に入射した照明光(3、38)を切り換えによって第1の光特性及び/又は第2の光特性を有する光に変換することを特徴とする請求項1に記載の照明光学系。
【請求項3】
前記光特性が偏光状態であること、及び、前記光特性変換器(8、39)がこれに入射する照明光を切り換えによって第1の偏光状態または第2の偏光状態を有する光に変換し、前記分離用ビームスプリッタ(9、40)および前記結合用ビームスプリッタ(35)がそれぞれ偏光選択性のビームスプリッタとして設計されていることを特徴とする請求項2に記載の照明光学系。
【請求項4】
偏光キューブまたはビームスプリッタ板の群からの偏光選択性のビームスプリッタ(9、35、40)を特徴とする請求項3に記載の照明光学系。
【請求項5】
光特性変換器として用いられるポッケルスセル(8)を特徴とする請求項3または4に記載の照明光学系。
【請求項6】
光特性変換器(8、39)は、光特性の変換が1秒以内、好ましくは1ms以内、より好ましくは100ns以内、さらに好ましくは10ns以内で可能となるように設計されていることを特徴とする請求項5に記載の照明光学系。
【請求項7】
光特性変換器(8、39)は、光特性の周期的な変換が起こるように設計されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の照明光学系。
【請求項8】
光特性変換器(8、39)は、光特性の変換が1Hz超、好ましくは1kHz超、さらに好ましくは10kHz超の切り換え周波数で起こるように設計されていることを特徴とする請求項7に記載の照明光学系。
【請求項9】
−前記光特性変換器が少なくとも二つの動作位置の間で移動可能な偏光変換器(72)として設計されており、
−−前記照明光(3)が偏光変換器(72)の第1の動作位置でこれを通過して前記第1の光学モジュール(28)に送られ、
−−前記照明光(3)が偏光変換器(72)の第2の動作位置でこれを通過して前記第2の光学モジュール(29)に送られることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の照明光学系。
【請求項10】
前記偏光変換器が、照明光(3、38)のビーム軸の周りを回転可能なラムダ/2板として設計されていることを特徴とする請求項9に記載の照明光学系。
【請求項11】
−前記光特性変換器が、空間的に離れ、かつ異なって動作する少なくとも二つの偏光光学要素(74、75)を有する偏光変換器(72)として設計されており、
−前記偏光変換器(72)が少なくとも二つの動作位置の間を移動可能であり、
−−第1の動作位置では、前記照明光(3)が、前記偏光変換器(72)の第1の偏光光学要素(74)を通過して前記第1の光学モジュール(28)に送られ、
−−第2の動作位置では、前記照明光(3)が、前記偏光変換器(72)の第2の光学要素(75)を通過して前記第2の光学モジュール(29)に送られることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の照明光学系。
【請求項12】
−偏光変換器(72)が光学活性物質で作られた少なくとも一つの光学要素から成ること、及び/又は
−空間的に離れ、かつ異なって動作する少なくとも二つの前記偏光光学要素(74、75)が少なくとも特定の領域において相互に隣接するかまたは徐々に結合していること、
を特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記載の照明光学系。
【請求項13】
少なくとも一つのラムダ/2板が前記偏光変換器(72)の第2の偏光光学要素(75)として用いられることを特徴とする請求項11または12に記載の照明光学系。
【請求項14】
前記分離要素(60)が、少なくとも二つの動作位置の間で移動可能な少なくとも一つのミラー要素(67)を含み、少なくとも第1の動作位置で前記照明光(3)を前記第1の光学モジュール(28)に送り、少なくとも第2の動作位置で前記照明光(3)を前記第2の光学モジュール(29)に送るものであり、前記結合要素(68)が前記分離要素(60)と同期して移動可能なミラー要素として設計されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の照明光学系。
【請求項15】
前記分離要素(60)が、回転可能に駆動可能なミラーマウント(65)に位置する多数の個々のミラー(67)を有することを特徴とする請求項14に記載の照明光学系。
【請求項16】
前記分離要素(60)は、透明な間隙(71)が間にある個々のミラー(70)を有するストリップ状ミラーフォイル(69)として設計されていることを特徴とする請求項14に記載の照明光学系。
【請求項17】
前記第2の照明設定が前記第1の照明設定と異なるように、前記第1の光学モジュール(28)および前記第2の光学モジュール(29)が構成されていることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の照明光学系。
【請求項18】
前記第2の照明設定が、その偏光状態についてのみ前記第1の照明設定と異なっていることを特徴とする請求項17に記載の照明光学系。
【請求項19】
前記第2の光学モジュールを通って送られる前記照明光に対して前記第1の光学モジュールを通って送られる照明光を遅延させる光学遅延要素(80)を特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載の照明光学系。
【請求項20】
−パルス照明光(3)を発生させる少なくとも一つの光源(2)を備え、
−前記光特性変換器(8、39)が、一照明光パルス(L)中に光特性の少なくとも一回の変換が起こるように設計されている、
請求項2〜19のいずれか一項に記載の照明光学系を備えた照明系。
【請求項21】
−パルス照明光(3)を発生させる少なくとも一つの光源(2)を備え、
−前記光特性変換器(8、39)は、この光特性変換器(8、39)が前記光特性を変更するために二つの連続した光パルス間で作動するように設計されている、
請求項2〜19のいずれか一項に記載の照明光学系を備えた照明系。
【請求項22】
パルス照明光(3、38)を発生させる少なくとも二つの光源(2、36)を特徴とする請求項20または21に記載の照明系。
【請求項23】
前記二つの光源(2、36)が同一の分離用ビームスプリッタ(9)によって二つの光学モジュール(28、29)に送られていることを特徴とする請求項22に記載の照明系。
【請求項24】
信号によって前記分離要素(9、40、60)及び/又は前記光特性変換器(8、39)に接続され、特定された照明値によって、前記分離要素(9、40、60)及び/又は前記光特性変換器(8、39)を制御し、前記第1の光学モジュール(28)によって前記照明領域の均衡の取れた照明を得て、前記第2の光学モジュール(29)によって前記照明領域の均衡の取れた照明を得る主制御系(43)を特徴とする請求項1〜19のいずれか一項に記載の照明光学系を備えた照明系。
【請求項25】
前記主制御系(43)が、以下の群:
−前記少なくとも一つの光源(2、2’)と、
−前記二つの光学モジュール(28、29)と、
−レチクルマスキング系(16)と、
−レチクルステージ(23)と、
−ウエハステージ(26)と、からの少なくとも一つの要素と信号によってさらに接続されることを特徴とする請求項24に記載の照明系。
【請求項26】
請求項20〜25のいずれか一項に記載の照明系を備えたマイクロリソグラフィ投影露光装置。
【請求項27】
−少なくとも一部に感光性物質の層が塗布された基板(24)を設ける工程と、
−結像されるべき構造を含むマスク(19)を設ける工程と、
−請求項26に記載の投影露光装置(1)を設ける工程と、
−前記マスク(19)の少なくとも一部を前記投影露光装置(1)を用いて前記層の領域に投影する工程と、
を含む、微細構造素子のためのマイクロリソグラフィ製造方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法を用いて製造された微細構造素子。
【請求項29】
−照明光学系の第1の光学モジュール(28)に追加して用いられ、瞳面(12、59)に前記第1の光学モジュール(28)の照明設定と並んで別の照明設定を提供する光学モジュール(29)と、
−前記照明光(3)を前記第1の光学モジュール(28)または補助モジュール(29)のいずれかに送るように、二つの光学モジュール(28、29)から上流の光路に位置する少なくとも一つの分離要素(9、40、60)と、
−前記第1の光学モジュール(28)または前記補助モジュール(29)を通過した前記照明光(3)を前記照明領域に送るように、前記二つの光学モジュール(28、29)から下流の光路に位置する少なくとも一つの結合要素(35、68)とを備えたマイクロリソグラフィ投影露光装置のための照明系用の補助モジュール。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2008−60546(P2008−60546A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−184344(P2007−184344)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(503263355)カール・ツァイス・エスエムティー・アーゲー (435)
【Fターム(参考)】