説明

マイクロ揺動素子およびマイクロ揺動素子駆動方法

【課題】マイクロ揺動素子について、可動部における回転変位量の大きな回転動作を高い動作速度で実現すること。
【解決手段】本発明のマイクロ揺動素子X3は、可動部310と、フレーム320と、可動部310およびフレーム320を連結し、且つ、フレーム320に対する可動部310の回転動作における回転軸心A3を規定する、連結部330と、回転軸心A3から相対的に遠い箇所に回転動作の駆動力を発生させるための駆動機構340,350と、回転軸心A3に相対的に近い箇所に回転動作の駆動力を発生させるための駆動機構360,370とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転変位可能な可動部を有する例えばマイクロミラー素子などのマイクロ揺動素子およびその駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な技術分野において、マイクロマシニング技術により形成される微小構造を有する素子の応用化が図られている。例えば光通信技術の分野においては、光反射機能を有する微小なマイクロミラー素子が注目されている。
【0003】
光通信においては、光ファイバを媒体として光信号が伝送され、また、光信号の伝送経路を或るファイバから他のファイバへと切換えるべく、一般に、いわゆる光スイッチング装置が使用される。良好な光通信を達成するうえで光スイッチング装置に求められる特性としては、切換え動作における、大容量性、高速性、高信頼性などが挙げられる。これらの観点より、光スイッチング装置としては、マイクロマシニング技術により作製されるマイクロミラー素子を組み込んだものに対する期待が高まっている。マイクロミラー素子によると、光スイッチング装置における入力側の光伝送路と出力側の光伝送路との間で、光信号を電気信号に変換せずに光信号のままでスイッチング処理を行うことができ、上掲の特性を得るうえで好適だからである。
【0004】
マイクロミラー素子は、光を反射するためのミラー面を備え、当該ミラー面の揺動により光の反射方向を変化させることができる。ミラー面を揺動するうえで静電力を利用する静電駆動型のマイクロミラー素子が、多くの装置で採用されている。静電駆動型マイクロミラー素子は、いわゆる表面マイクロマシニング技術により製造されるマイクロミラー素子と、いわゆるバルクマイクロマシニング技術により製造されるマイクロミラー素子とに、大きく2つに類別することができる。
【0005】
表面マイクロマシニング技術では、基板上において、各構成部位に対応する材料薄膜を所望のパターンに加工し、このようなパターンを順次積層することにより、支持体、ミラー面および電極部など、素子を構成する各部位や、後に除去される犠牲層を形成する。一方、バルクマイクロマシニング技術では、材料基板自体をエッチングすることにより支持体やミラー部などを所望の形状に成形し、必要に応じてミラー面や電極を薄膜形成する。バルクマイクロマシニング技術については、例えば下記の特許文献1〜3に記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−190007号公報
【特許文献2】特開平10−270714号公報
【特許文献3】特開平2000−31502号公報
【0007】
マイクロミラー素子に要求される技術的事項の一つとして、光反射を担うミラー面の平面度が高いことが挙げられる。しかしながら、表面マイクロマシニング技術によると、最終的に形成されるミラー面が薄いためにミラー面が湾曲し易く、従って、広面積のミラー面において高い平面度を達成するのが困難である。これに対し、バルクマイクロマシニング技術によると、相対的に分厚い材料基板自体をエッチング技術により削り込んでミラー部を構成して当該ミラー部上にミラー面を設けるため、広面積のミラー面であっても、その剛性を確保することができる。その結果、充分に高い光学的平面度を有するミラー面を形成することが可能である。
【0008】
図43および図44は、バルクマイクロマシニング技術によって作製される従来の静電駆動型マイクロミラー素子X8を表す。図43は、マイクロミラー素子X8の分解斜視図であり、図44は、組み立てられた状態のマイクロミラー素子X8における図43の線XXXXIV−XXXXIVに沿った断面図である。
【0009】
マイクロミラー素子X8は、ミラー基板80とベース基板86とが積層する構造を有する。ミラー基板80は、ミラー部81と、フレーム82と、これらを連結する一対のトーションバー83とからなる。導電性を有するシリコン基板などの所定の材料基板に対して、その片面側からエッチングを施すことにより、ミラー基板80におけるミラー部81、フレーム82、および一対のトーションバー83の外郭形状を成形することができる。ミラー部81の表面には、ミラー面84が設けられている。ミラー部81の裏面には、一対の電極85a,85bが設けられている。一対のトーションバー83は、ミラー部81の後述の回転動作における軸心A8を規定する。ベース基板86には、ミラー部81の電極85aに対向する電極87a、および、電極85bに対向する電極87bが、設けられている。
【0010】
マイクロミラー素子X8においては、ミラー基板80のフレーム82に電位を付与すると、フレーム82と同一の導体材料により一体的に成形されている一対のトーションバー83およびミラー部81を介して、電極85aおよび電極85bに電位が伝達される。したがって、フレーム82に所定の電位を付与することにより、電極85a,85bを例えば正に帯電させることができる。この状態において、ベース基板86の電極87aを負に帯電させると、電極85aと電極87aの間に静電引力が発生し、ミラー部81は、一対のトーションバー83を捩りながら、図44に示すように矢印M8の方向に回転する。ミラー部81は、電極間の静電引力と各トーションバー83の捩り抵抗力の総和とが釣合う角度まで揺動し得る。これに代えて、ミラー部81の電極85a,85bを正に帯電させた状態で電極87bを負に帯電させると、電極85bと電極87bの間に静電引力が発生し、ミラー部81は、矢印M8とは反対の方向に回転する。以上のようなミラー部81の揺動駆動により、ミラー面84により反射される光の反射方向を切り換えることができる。
【0011】
マイクロミラー素子X8において、ミラー部81の回転変位について大角度を達成するためには、ミラー基板80とベース基板86の機械的接触を回避すべく、当該ミラー基板80とベース基板86の間隔を充分に確保する必要がある。しかしながら、電極85a,87a間や電極85b,87b間に生ずる静電力は、電極間距離が増大するほど低下する傾向にあるため、ミラー基板80とベース基板86の間隔を充分に確保したうえでミラー部81を適切に駆動するためには、各電極対間に対して印加すべき駆動電圧を相当程度にまで増大しなければならない。駆動電圧の増大は、素子の構成上、或は小電力化の観点から、好ましくない場合が多い。
【0012】
図45は、バルクマイクロマシニング技術によって作製される従来の他のマイクロミラー素子X9の一部省略斜視図である。マイクロミラー素子X9は、上面にミラー面94が設けられたミラー部91と、フレーム92(一部省略)と、これらを連結する一対のトーションバー93とを有する。ミラー部91には、その一対の端部に櫛歯電極91a,91bが形成されている。フレーム92には、櫛歯電極91a,91bに対応して、内方に延びる一対の櫛歯電極92a,92bが形成されている。一対のトーションバー93は、フレーム92に対するミラー部91の回転動作の軸心A9を規定している。
【0013】
このような構成のマイクロミラー素子X9においては、静電力を発生させるために近接して設けられた一組の櫛歯電極、例えば櫛歯電極91aおよび櫛歯電極92aは、電圧非印加時には、図46(a)に示すように、2段に分れた配向をとる。一方、所定電圧印加
時には、図46(b)に示すように、櫛歯電極91aが櫛歯電極92aに引き込まれ、これによりミラー部91が回転する。より具体的には、例えば、櫛歯電極91aを正に帯電させ、櫛歯電極92aを負に帯電させると、ミラー部91が、一対のトーションバー93を捩りながら軸心A9まわりに回転する。このようなミラー部91の揺動駆動により、ミラー部91上に設けられたミラー面94により反射される光の反射方向を切り換えることができる。櫛歯電極対によるこのような駆動に要求される駆動電圧は、上述のマイクロミラー素子X8における平板電極対による駆動に要求される駆動電圧よりも、低い傾向にあることが知られている。
【0014】
図47は、マイクロミラー素子X9の製造方法を表す。図47においては、図45に示すミラー部91の一部、フレーム92、トーションバー93、および一組の櫛歯電極91a,92aの一部の形成過程を、一の断面の変化として表す。当該一の断面は、加工が施される材料基板(ウエハ)における単一のマイクロスイッチング素子形成区画に含まれる複数の断面を、モデル化して連続断面として表したものである。
【0015】
マイクロミラー素子X9の製造方法においては、まず、図47(a)に示すようなウエハS9を用意する。ウエハS9は、いわゆるSOI(Silicon on Insulator)ウエハであり、シリコン層901と、シリコン層902と、これらの間の絶縁層903とからなる積層構造を有する。次に、図47(b)に示すように、シリコン層901に対して所定のマスクを介して異方性エッチング処理を行うことにより、シリコン層901において成形されるべき構造部(ミラー部91、フレーム92の一部、トーションバー93、櫛歯電極91a)を形成する。次に、図47(c)に示すように、シリコン層902に対して所定のマスクを介して異方性エッチング処理を行うことにより、シリコン層902において成形されるべき構造部(フレーム92の一部、櫛歯電極92a)を形成する。次に、図47(d)に示すように、絶縁層903に対して等方性エッチングを行うことにより、絶縁層903において露出する箇所を除去する。このようにして、ミラー部91、フレーム92、トーションバー93、および一組の櫛歯電極91a,92aが形成される。他組の櫛歯電極91b,92bも櫛歯電極91a,91bと同様にして形成される。
【0016】
マイクロミラー素子X9では、ミラー部91の回転動作に伴って櫛歯電極91a,91bが変位するため、櫛歯電極91a,91bは、ミラー部91の所望の傾斜角度に見合った充分な厚さを有する必要がある。そのため、マイクロミラー素子X9のミラー部91の回転変位について大角度を達成するためには、回転動作方向において櫛歯電極91a,91bを長く設計し、駆動電極のストローク(適切に駆動力を発生し得る限りにおいて許容される、回転動作方向における電極対の相対的な可動範囲)を充分な長さに確保する必要がある。長いストロークを確保するためには、上述の製造方法において、必要なストローク長に応じた分厚いシリコン層901,902を有する材料基板S9に対して加工を施す必要がある。しかしながら、各電極歯の幅が相当程度に小さい櫛歯電極91a,91bを、充分に分厚いシリコン層901,902に対してエッチング等の加工を施すことによって高精度に形成するのは、困難な傾向にある。
【0017】
加えて、マイクロミラー素子X9では、ミラー部91が櫛歯電極91a,91bと同一の厚さに形成されるので、回転動作方向において長い櫛歯電極91a,91bの形成は、分厚いミラー部91の形成を必然的に伴ってしまう。ミラー部91が分厚いほど、ミラー部91の質量、従ってそのイナーシャは、大きい。その結果、ミラー部91の回転動作について、所望される速さでの駆動を達成できない場合が生ずる。
【0018】
このように、従来のマイクロミラー素子X9においては、ミラー部91について、回転変位量の大きな回転動作を高い動作速度で実現するのに困難性を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、可動部における回転変位量の大きな回転動作を高い動作速度で実現するのに適したマイクロ揺動素子およびマイクロ揺動素子駆動方法を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の第1の側面によるとマイクロ揺動素子が提供される。このマイクロ揺動素子は、可動主部と、第1および第2フレームと、可動主部および第1フレームを連結し且つ当該第1フレームに対する当該可動主部の第1回転動作における第1回転軸心を規定する第1連結部と、第1および第2フレームを連結し且つ当該第2フレームに対する当該第1フレームおよび可動主部の第2回転動作における第2回転軸心を規定する第2連結部と、第1回転動作の駆動力を発生させるための第1駆動機構と、第2回転動作の駆動力を発生させるための第2駆動機構と、を備える。本素子では、第1回転軸心および第2回転軸心は直交していない。第1駆動機構は例えば一組の櫛歯電極よりなり、この場合、一方の櫛歯電極は可動主部に対して一体的に設けられており、他方の櫛歯電極は第1フレームに対して一体的に設けられている。また、第2駆動機構は例えば一組の櫛歯電極よりなり、この場合、一方の櫛歯電極は第1フレームに対して一体的に設けられており、他方の櫛歯電極は第2フレームに対して一体的に設けられている。
【0021】
このような構成のマイクロ揺動素子においては、可動主部の第1回転動作および第2回転動作には共通の変位成分が含まれる。すなわち、当該共通変位成分における総変位量は、第1回転動作に由来する変位量と、第2回転動作に由来する変位量との、和に相当する。したがって、共通変位成分については、第1および第2駆動機構の各ストロークが重畳的に寄与して長いストロークが確保されることとなる。例えば、第1回転軸心および第2回転軸心が一致する場合には、第1回転動作の変位成分と第2回転動作の変位成分とは全て一致し、可動主部の回転変位量の全てが第1回転動作の変位量と第2回転動作の変位量との和に相当し、その結果、可動主部の回転変位については、第1および第2駆動機構の各ストロークよりも実効的に長いストロークが確保される。2種類の駆動機構のストロークの重畳的寄与により実効的な長ストロークが確保されるので、例えば一組の櫛歯電極よりなる各駆動機構について比較的薄く(回転動作方向において比較的短く)形成することができる。そのため、駆動機構の厚さが反映された厚さで形成される傾向にある可動部(可動主部および第1フレーム)についても、比較的薄く形成することができる。薄い可動部ほど、軽量であり、高い動作速度を実現するのに好適である。このように、本発明の第1の側面のマイクロ揺動素子は、可動主部について回転変位量の大きな回転動作を高い動作速度で実現するのに適しているのである。
【0022】
本発明の第1の側面において、好ましくは、第1連結部は、可動主部に近接するほど幅太な空隙部を有する。これと共に、又は、これに代えて、第2連結部は、第1フレームに接近するほど幅太な空隙部を有していてもよい。このような構成は、所望の回転変位に例えば直交する不要な変位成分を低減するうえで、好適である。
【0023】
本発明の第2の側面によると他のマイクロ揺動素子が提供される。このマイクロ揺動素子は、可動部と、フレームと、可動部およびフレームを連結し且つ当該フレームに対する当該可動部の回転動作における回転軸心を規定する連結部と、回転軸心から相対的に遠い箇所にて回転動作の駆動力を発生させるための第1駆動機構と、回転軸心に相対的に近い箇所にて回転動作の駆動力を発生させるための第2駆動機構と、を備える。第1駆動機構は例えば一組の櫛歯電極よりなり、この場合、一方の櫛歯電極は可動部に対して一体的に設けられており、他方の櫛歯電極はフレームに対して一体的に設けられている。また、第2櫛歯電極も例えば一組の櫛歯電極よりなり、この場合、一方の櫛歯電極は可動部に対し
て一体的に設けられており、他方の櫛歯電極はフレームに対して一体的に設けられている。
【0024】
このような構成のマイクロ揺動素子においては、可動部の回転動作の駆動力としてより大きな回転トルクを発生させるうえでは、第1駆動機構は第2駆動機構より適しており、且つ、より長いストロークを確保するうえでは第2駆動機構は第1駆動機構より適している。本発明の第2の側面のマイクロ揺動素子では、2種類の駆動機構のこのような特長を有効に活用することにより、可動部について良好な回転動作を実現することができる。例えば、可動部の変位量が小角度範囲内にある場合には、主に第1駆動機構に頼って大きな回転トルクを発生させることができ、大角度範囲にある場合には、第2駆動機構の相対的に長いストロークにわたって当該第2駆動機構により所定の回転トルクを持続させることができる。大きな回転トルクの発生に適した駆動機構と大きなストロークを確保するのに適した駆動機構とを併せて具備する本マイクロ揺動素子においては、各駆動機構における各櫛歯電極を過度に厚くせずとも、実効的な長ストロークを確保することが可能である。したがって、本発明の第2の側面のマイクロ揺動素子は、可動部における回転変位量の大きな回転動作を高い動作速度で実現するのに適しているのである。
【0025】
本発明の第1および第2の側面において、好ましくは、第1駆動機構および第2駆動機構は、共通の制御下で作動可能に構成されている。この場合、第1駆動機構および第2駆動機構は、電気的に並列に接続されているのが好ましい。第1駆動機構および第2駆動機構は、或は、電気的に分離され、相互に独立した制御下で作動可能に構成されていてもよい。
【0026】
本発明の第3の側面によると他のマイクロ揺動素子が提供される。このマイクロ揺動素子は、可動部と、フレームと、可動部およびフレームを連結し且つ当該フレームに対する当該可動部の回転動作における回転軸心を規定する連結部と、回転軸心までの距離が連続的に変化する箇所にわたって回転動作の駆動力を発生させるための駆動機構と、を備える。駆動機構は例えば一組の櫛歯電極よりなり、この場合、一方の櫛歯電極は可動部に対して一体的に設けられており、他方の櫛歯電極はフレームに対して一体的に設けられている。
【0027】
このような構成のマイクロ揺動素子では、単一の駆動機構に、第2の側面における第1および第2駆動機構が包含されている。したがって、本発明の第3の側面によると、第2の側面に関して上述したのと同様の効果が奏される。加えて、第3の側面によると、単一駆動機構内にて発生される回転トルクは、所定の回転動作範囲にわたって連続的に緩やかに変化する傾向にある。このような特長は、可動部について良好な回転駆動を達成するうえで好適である。
【0028】
本発明の第4の側面によると他のマイクロ揺動素子が提供される。このマイクロ揺動素子は、可動部と、フレームと、可動部およびフレームを連結し且つ当該フレームに対する当該可動部の回転動作における回転軸心を規定する連結部と、回転動作の駆動力を発生させるための第1櫛歯電極および第2櫛歯電極を含む駆動機構と、を備える。第1櫛歯電極および/または第2櫛歯電極は、電気的に分離され且つ回転動作の方向に並列する第1導体部および第2導体部、を含む電極歯を有する。例えば、第1櫛歯電極は可動部に対して一体的に設けられており、第2櫛歯電極はフレームに対して一体的に設けられている。
【0029】
本素子において、第1櫛歯電極および/または第2櫛歯電極の第1導体部および第2導体部は、可動部の回転動作方向に並列している。このような構成は、当該櫛歯電極対について、大きな相対的可動範囲すなわち長いストロークを確保するうえで好適である。また、単一の櫛歯電極に含まれる第1導体部および第2導体部については、互いに電気的に分
離しているため、印加電圧を独立に制御することが可能である。このような第1および第2導体部を櫛歯電極対の少なくとも一方に有する本揺動素子は、可動部について回転変位量の大きな回転動作を高い動作速度で実現するのに適している。
【0030】
本発明の第5の側面によると他のマイクロ揺動素子が提供される。このマイクロ揺動素子は、可動部と、フレームと、可動部およびフレームを連結し且つ当該フレームに対する当該可動部の回転動作における回転軸心を規定する連結部と、回転動作の駆動力を発生させるための第1櫛歯電極および第2櫛歯電極を含む駆動機構と、を備える。第1櫛歯電極は、電気的に接続され且つ回転動作の方向に並列する第1導体部および第2導体部、を含む電極歯を有する。第2櫛歯電極は、非駆動時には第1導体部に対向し且つ第2導体部に対向しない第3導体部、を含む電極歯を有する。例えば、第2櫛歯電極は可動部に対して一体的に設けられており、第1櫛歯電極はフレームに対して一体的に設けられている。
【0031】
本素子においては、第2櫛歯電極の第3導体部との間で静電引力を生じ得る第1櫛歯電極の第1導体部および第2導体部は、可動部の回転動作方向に並列している。このような構成は、当該櫛歯電極対について、大きな相対的可動範囲すなわち長いストロークを確保するうえで好適である。また、第2櫛歯電極(第3導体部)がフレームに対して一体的に設けられており、且つ、第1櫛歯電極が可動部に対して一体的に設けられている場合、第2櫛歯電極(第3導体部)について比較的薄く(回転動作方向において比較的短く)形成することができるため、第2櫛歯電極(第3導体部)の厚さが反映された厚さで形成される傾向にある可動部についても、比較的薄く形成することができる。薄い可動部ほど、軽量であり、高い動作速度を実現するのに好適である。このような櫛歯電極対を有する本揺動素子は、可動部について回転変位量の大きな回転動作を高い動作速度で実現するのに適している。
【0032】
本発明の第5の側面において、好ましくは、第1導体部および第3導体部は、回転動作方向における長さが異なる。
【0033】
本発明の第1から第5の側面において、好ましくは、駆動機構を構成する一組の櫛歯電極の少なくとも一方は、基部と、当該基部から延出する電極歯とを有し、当該電極歯は、基部側の端部にかけて幅または厚さの漸増する部位を有する。或は、好ましくは、駆動機構を構成する一組の櫛歯電極の少なくとも一方は、基部と、当該基部から延出する電極歯とを有し、当該電極歯は、他方の櫛歯電極に接近するにつれて幅が漸増する部位を有する。
【0034】
本発明の第2から第5の側面において、好ましくは、連結部は、可動部に近接するほど幅太な空隙部を有する。このような構成は、所望の回転変位に例えば直交する不要な変位成分を低減するうえで好適である。
【0035】
本発明の第6の側面によるとマイクロ揺動素子駆動方法が提供される。本方法により駆動されるマイクロ揺動素子は、可動部と、フレームと、当該可動部およびフレームを連結して当該フレームに対する当該可動部の回転動作における回転軸心を規定する連結部と、回転動作の駆動力を発生させるための第1櫛歯電極および第2櫛歯電極と、を備える。第1櫛歯電極は、回転動作の方向に並列する第1導体部および第2導体部、を含む電極歯を有する。このような第1櫛歯電極は、例えばフレームに対して一体的に設けられている。第2櫛歯電極は、非駆動時には第1導体部に対向し且つ第2導体部に対向しない第3導体部、を含む電極歯を有する。このような第2櫛歯電極は、例えば可動部に対して一体的に設けられている。本方法は、第2導体部および第3導体部の間に静電引力を発生させることにより、可動部を第1方向に回転動作させるための第1工程と、第1工程の後に、第1導体部および第3導体部の間に静電引力を発生させることにより、可動部を第1方向とは
反対の第2方向に回転動作させるための第2工程と、を含む。
【0036】
本方法においては、第2櫛歯電極の第3導体部との間で静電引力を生じ得る第1櫛歯電極の第1導体部および第2導体部は、可動部の回転動作方向に並列している。したがって、本方法は、当該櫛歯電極対について、大きな相対的可動範囲すなわち長いストロークを確保するうえで好適である。また、本方法における第1および第2櫛歯電極においては、第1方向への回転動作のために駆動力が発生されるとともに、第1方向とは反対の第2方向への回転動作のためにも駆動力が発生される。一組の櫛歯電極において両方向への駆動力を生ずる本方法は、両方向への回転動作について高い動作速度を達成するうえで好適である。このように、本発明の第6の側面に係る駆動方法は、回転変位量の大きな回転動作を高い動作速度で実現するうえで好適である。加えて、本方法によると、本発明の例えば第4の側面に係るマイクロ揺動素子を適切に駆動することができる。
【0037】
本発明の第6の側面において、好ましくは、駆動対象のマイクロ揺動素子は、回転動作の駆動力を発生させるための第3櫛歯電極および第4櫛歯電極を更に備える。第3櫛歯電極は、回転動作の方向に並列する第4導体部および第5導体部、を含む電極歯を有する。このような第3櫛歯電極は、例えばフレームに対して一体的に設けられている。第3櫛歯電極および上述の第1櫛歯電極は、可動部の回転軸心について例えば対称的に配設されている。また、第4櫛歯電極は、非駆動時には第4導体部に対向し且つ第5導体部に対向しない第6導体部、を含む電極歯を有する。このような第4櫛歯電極は、例えば可動部に対して一体的に設けられている。第4櫛歯電極および上述の第2櫛歯電極は、可動部の回転軸心について例えば対称的に配設されている。マイクロ揺動素子がこのような構成を具備する場合において、第6の側面の駆動方法は、好ましくは、第2工程の後に、第5導体部および第6導体部の間に静電引力を発生させることにより、可動部を第2方向に回転動作させるための第3工程と、第3工程の後に、第4導体部および第6導体部の間に静電引力を発生させることにより、可動部を第1方向に回転動作させるための第4工程と、を更に含む。
【0038】
本発明の第6の側面において、好ましくは、第2工程では、第4導体部および第6導体部の間に静電引力を発生させる。好ましくは、第4工程では、第1導体部および第3導体部の間に静電引力を発生させる。また、好ましくは、第1、第2、第3、および第4工程は、各々、回転動作における4分の1周期に相当する期間行なわれる。
【0039】
本発明の第7の側面によると他のマイクロ揺動素子駆動方法が提供される。本方法により駆動されるマイクロ揺動素子は、可動部と、フレームと、当該可動部およびフレームを連結して当該フレームに対する当該可動部の回転動作における回転軸心を規定する連結部と、回転動作の駆動力を発生させるための第1櫛歯電極および第2櫛歯電極と、当該第1および第2櫛歯電極よりも回転軸心に近い箇所にて回転動作の駆動力を発生させるための第3櫛歯電極および第4櫛歯電極と、を備える。第1および第3櫛歯電極は、例えばフレームに対して一体的に設けられている。第2および第4櫛歯電極は、例えば可動部に対して一体的に設けられている。本方法は、第1櫛歯電極および第2櫛歯電極の間に静電引力を発生させるとともに第3櫛歯電極および第4櫛歯電極の間に静電引力を発生させることにより、可動部を第1方向に回転動作させるための第1工程と、第3櫛歯電極および第4櫛歯電極の間に、第1工程から引き続き静電引力を発生させることにより、可動部を第1方向に回転動作させるための第2工程と、を含む。
【0040】
本方法によると、本発明の第2の側面に係るマイクロ揺動素子を適切に駆動することができ、回転変位量の大きな回転動作を高い動作速度で実現することが可能である。
【0041】
本発明の第7の側面の駆動方法は、好ましくは、第2工程の後に、第1櫛歯電極および
第2櫛歯電極の間に静電引力を発生させることにより、可動部を第1方向とは反対の第2方向に回転動作させるための第3工程を更に含む。好ましくは、第1工程および第3工程は、併せて、回転動作における4分の1周期に相当する期間行なわれる。
【0042】
本発明の第7の側面において、好ましくは、駆動対象のマイクロ揺動素子は、回転動作の駆動力を発生させるための第5櫛歯電極および第6櫛歯電極と、当該第5および第6櫛歯電極よりも回転軸心に近い箇所にて回転動作の駆動力を発生させるための第7櫛歯電極および第8櫛歯電極と、を更に備える。第5および第7櫛歯電極は、例えばフレームに対して一体的に設けられている。第6および第8櫛歯電極は、例えば可動部に対して一体的に設けられている。また、第5櫛歯電極および上述の第1櫛歯電極、第6櫛歯電極および上述の第2櫛歯電極、第7櫛歯電極および上述の第3櫛歯電極、第8櫛歯電極および上述の第4櫛歯電極は、各々、可動部の回転軸心について例えば対称的に配設されている。マイクロ揺動素子がこのような構成を具備する場合において、第7の側面の駆動方法は、好ましくは、第3工程の後に、第5櫛歯電極および第6櫛歯電極の間に静電引力を発生させるとともに第7櫛歯電極および第8櫛歯電極の間に静電引力を発生させることにより、可動部を第2方向に回転動作させるための第4工程と、第7櫛歯電極および第8櫛歯電極の間に、第4工程から引き続き静電引力を発生させることにより、可動部を第2方向に回転動作させるための第5工程と、を更に含む。
【0043】
本発明の第7の側面の駆動方法は、好ましくは、第5工程の後に、第5櫛歯電極および第6櫛歯電極の間に静電引力を発生させることにより、可動部を第1方向に回転動作させるための第6工程を更に含む。好ましくは、第5工程および第6工程は、併せて、回転動作における4分の1周期に相当する期間行なわれる。
【0044】
本発明の第8の側面によると他のマイクロ揺動素子駆動方法が提供される。本方法により駆動されるマイクロ揺動素子は、可動部と、フレームと、当該可動部およびフレームを連結して当該フレームに対する当該可動部の回転動作における回転軸心を規定する連結部と、回転動作の駆動力を発生させるための第1櫛歯電極および第2櫛歯電極と、当該第1および第2櫛歯電極よりも回転軸心に近い箇所にて回転動作の駆動力を発生させるための第3櫛歯電極および第4櫛歯電極と、を備える。第1櫛歯電極は、回転動作の方向に並列する第1導体部および第2導体部、を含む電極歯を有する。第2櫛歯電極は、非駆動時には第1導体部に対向し且つ第2導体部に対向しない第3導体部、を含む電極歯を有する。第3櫛歯電極は、回転動作の方向に並列する第4導体部および第5導体部、を含む電極歯を有する。第4櫛歯電極は、非駆動時には第4導体部に対向し且つ第5導体部に対向しない第6導体部、を含む電極歯を有する。第1および第3櫛歯電極は、例えばフレームに対して一体的に設けられており、第2および第4櫛歯電極は、例えば可動部に対して一体的に設けられている。本方法は、第2導体部および第3導体部の間に静電引力を発生させるとともに第5導体部および第6導体部の間に静電引力を発生させることにより、可動部を第1方向に回転動作させるための第1工程と、第5導体部および第6導体部の間に、第1工程から引き続き静電引力を発生させることにより、可動部を第1方向に回転動作させるための第2工程と、を含む。
【0045】
このような構成は、上述の第6および第7の側面に係る構成を実質的に併有する。したがって、本発明の第8の側面によると、本発明の第2の側面に係るマイクロ揺動素子を駆動するに際し、可動部について回転変位量の大きな回転動作を高い動作速度で実現することが可能である。
【0046】
本発明の第8の側面の駆動方法は、第2工程の後に、第1導体部および第3導体部の間、第2導体部および第3導体部の間、並びに、第4導体部および第6導体部の間に静電引力を発生させることにより、可動部を第1方向とは反対の第2方向に回転動作させるため
の第3工程と、第1導体部および第3導体部、並びに、第4導体部および第6導体部の間に、第3工程から引き続き静電引力を発生させることにより、可動部を第2方向に回転動作させるための第4工程と、を更に含む。
【0047】
本発明の第8の側面において、好ましくは、駆動対象のマイクロ揺動素子は、回転動作の駆動力を発生させるための第5櫛歯電極および第6櫛歯電極と、当該第5および第6櫛歯電極よりも回転軸心に近い箇所にて回転動作の駆動力を発生させるための第7櫛歯電極および第8櫛歯電極と、を備える。第5櫛歯電極は、回転動作の方向に並列する第7導体部および第8導体部、を含む電極歯を有する。第6櫛歯電極は、非駆動時には第7導体部に対向し且つ第8導体部に対向しない第9導体部、を含む電極歯を有する。第7櫛歯電極は、回転動作の方向に並列する第10導体部および第11導体部、を含む電極歯を有する。第8櫛歯電極は、非駆動時には第10導体部に対向し且つ第11導体部に対向しない第12導体部、を含む電極歯を有する。第5および第7櫛歯電極は、例えばフレームに対して一体的に設けられており、第6および第8櫛歯電極は、例えば可動部に対して一体的に設けられている。また、第5櫛歯電極および上述の第1櫛歯電極、第6櫛歯電極および上述の第2櫛歯電極、第7櫛歯電極および上述の第3櫛歯電極、第8櫛歯電極および上述の第4櫛歯電極は、各々、可動部の回転軸心について例えば対称的に配設されている。マイクロ揺動素子がこのような構成を具備する場合において、第8の側面の駆動方法は、第4工程の後に、第8導体部および第9導体部の間に静電引力を発生させるとともに第11導体部および第12導体部の間に静電引力を発生させることにより、可動部を第2方向に回転動作させるための第5工程と、第11導体部および第12導体部の間に、第5工程から引き続き静電引力を発生させることにより、可動部を第2方向に回転動作させるための第6工程と、第6工程の後に、第7導体部および第9導体部の間、第8導体部および第9導体部の間、並びに、第10導体部および第12導体部の間に静電引力を発生させることにより、可動部を第1方向に回転動作させるための第7工程と、第7導体部および第9導体部、並びに、第10導体部および第12導体部の間に、第7工程から引き続き静電引力を発生させることにより、可動部を第1方向に回転動作させるための第8工程と、を更に含む。
【0048】
本発明の第8の側面において、好ましくは、第3工程および第4工程では、第7導体部および第9導体部の間、並びに、第10導体部および第12導体部の間に静電引力を発生させる。好ましくは、第7工程および第8工程では、第1導体部および第3導体部の間、並びに、第4導体部および第6導体部の間に静電引力を発生させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
図1〜図7は、本発明の第1の実施形態に係るマイクロミラー素子X1を表す。図1は、マイクロミラー素子X1の平面図であり、図2は、図1の線II−IIに沿った断面図である。また、図3〜図7は、各々、図1の線III−III、線IV−IV、線V−V、線VI−VI、および線VII−VIIに沿った断面図である。
【0050】
マイクロミラー素子X1は、ミラー部110と、内フレーム120と、外フレーム130と、一対の連結部140と、一対の連結部150と、各々2つの駆動機構160,170,180,190とを備える。また、マイクロミラー素子X1は、MEMS技術などのバルクマイクロマシニング技術により、いわゆるSOI(silicon on insulator)基板である材料基板に対して加工を施すことによって製造されたものである。当該材料基板は、例えば、第1および第2シリコン層ならびに当該シリコン層間の絶縁層よりなる積層構造を有し、各シリコン層は、不純物のドープにより所定の導電性が付与されている。図の明確化の観点より、図1においては、第1シリコン層に由来して絶縁層より紙面手前方向に突き出る部位(後述のミラー面111は除く)について、斜線ハッチングを付して表す。
【0051】
ミラー部110は、主に第1シリコン層において成形された部位であり、その表面に、光反射機能を有するミラー面111を有する。ミラー面111は、第1シリコン層上に成膜されたCr層およびその上のAr層よりなる積層構造を有する。このようなミラー部111は、本発明における可動主部を構成する。
【0052】
内フレーム120は、主に第1シリコン層において成形された部位であり、ミラー部110を囲む形態を有する。このような内フレーム120と上述のミラー部110とは、本発明における可動部を構成する。外フレーム130は、主に第1シリコン層から成形された部位であり、内フレーム120を囲む形態を有する。
【0053】
一対の連結部140は、第1シリコン層において成形された部位であり、各々2本のトーションバー141よりなる。各トーションバー141は、ミラー部110および内フレーム120に接続してこれらを連結している。各連結部140の2本のトーションバー141の間隔は、内フレーム120の側からミラー部110の側にかけて次第に広くなっている。このような一対の連結部140は、内フレーム120に対するミラー部110の回転動作の回転軸心A1を規定する。内フレーム120の側からミラー部110の側にかけて間隔が漸増する2本のトーションバー141よりなる連結部140は、ミラー部110の回転動作における不要な変位成分を防止するのに好適である。また、連結部140については、2本のトーションバー141を介して、内フレーム120からミラー部110に対して2つの異なる電位を付与できるように構成することが可能である。
【0054】
一対の連結部150は、第1シリコン層において成形された部位であり、各々2本のトーションバー151よりなる。各トーションバー151は、内フレーム120および外フレーム130に接続してこれらを連結している。各連結部150の2本のトーションバー151の間隔は、外フレーム130の側から内フレーム120の側にかけて次第に広くなっている。このような一対の連結部150が規定する、内フレーム120およびこれに伴うミラー部110の外フレーム130に対する回転動作の回転軸心は、回転軸心A1に一致する。すなわち、一対の連結部140および一対の連結部150は、各々の規定する回転軸心が一致するように配設されている。外フレーム130の側から内フレーム120の側にかけて間隔が漸増する2本のトーションバー151よりなる連結部150は、内フレーム120ないしミラー部110の回転動作における不要な変位成分を防止するのに好適である。また、連結部150においては、2本のトーションバー151を介して、外フレーム130から内フレーム120に対して2つの異なる電位を付与できるように構成することが可能である。
【0055】
2つの駆動機構160は、ミラー部110を介して対称的に配設されており、各々、櫛歯電極161および櫛歯電極165を有する。櫛歯電極161は、主に第1シリコン層に由来する部位であり、ミラー部110に固定された基部162、および、当該基部162から延出する複数の電極歯163を有する。櫛歯電極165は、主に第2シリコン層に由来する部位であり、内フレーム120に固定されて内方に延出する基部166、および、当該基部166から延出する複数の電極歯167を有する。櫛歯電極161,165は、本素子の非回転駆動時には、図2(a)および図3(a)に示すように、互いに異なる高さに位置する。また、櫛歯電極161,165は、回転駆動時において互いに当接しないよう、それらの電極歯163,167が位置ずれした態様で配されている。
【0056】
2つの駆動機構170は、ミラー部110を介して対称的に配設されており、各々、櫛歯電極171および櫛歯電極175を有する。櫛歯電極171は、主に第1シリコン層に由来する部位であり、ミラー部110に固定された基部172、および、当該基部172から延出する複数の電極歯173を有する。櫛歯電極175は、主に第2シリコン層に由来する部位であり、内フレーム120に固定されて内方に延出する基部176、および、
当該基部176から延出する複数の電極歯177を有する。櫛歯電極171,175は、本素子の非回転駆動時には、図2(a)および図4(a)に示すように、互いに異なる高さに位置する。また、櫛歯電極171,175は、回転駆動時において互いに当接しないよう、それらの電極歯173,177が位置ずれした態様で配されている。
【0057】
2つの駆動機構180は、ミラー部110および内フレーム120を介して対称的に配設されており、各々、櫛歯電極181および櫛歯電極185を有する。櫛歯電極181は、主に第1シリコン層に由来する部位であり、内フレーム120に固定されて外方に延出する基部182、および、当該基部182から延出する複数の電極歯183を有する。櫛歯電極185は、主に第2シリコン層に由来する部位であり、外フレーム130に固定されて内方に延出する基部186、および、当該基部186から延出する複数の電極歯187を有する。櫛歯電極181,185は、本素子の非回転駆動時には、図5(a)および図6(a)に示すように、互いに異なる高さに位置する。また、櫛歯電極181,185は、回転駆動時において互いに当接しないよう、それらの電極歯183,187が位置ずれした態様で配されている。
【0058】
2つの駆動機構190は、ミラー部110および内フレーム120を介して対称的に配設されており、各々、櫛歯電極191および櫛歯電極195を有する。櫛歯電極191は、主に第1シリコン層に由来する部位であり、内フレーム120に固定されて外方に延出する基部192、および、当該基部192から延出する複数の電極歯193を有する。櫛歯電極195は、主に第2シリコン層に由来する部位であり、外フレーム130に固定されて内方に延出する基部196、および、当該基部196から延出する複数の電極歯197を有する。櫛歯電極191,195は、本素子の非回転駆動時には、図5(a)および図7(a)に示すように、互いに異なる高さに位置する。また、櫛歯電極191,195は、回転駆動時において互いに当接しないよう、それらの電極歯193,197が位置ずれした態様で配されている。
【0059】
マイクロミラー素子X1は、上述のように、MEMS技術などのバルクマイクロマシニング技術により、多層構造を有する材料基板に加工を施すことによって製造されたものである。また、当該材料基板は、上述のように、本実施形態では第1および第2シリコン層およびこれらの間の絶縁層よりなる積層構造を有する。
【0060】
マイクロミラー素子X1の製造においては、具体的には、ミラー部110に対応する箇所を覆うエッチングマスク、内フレーム120に対応する箇所を覆うエッチングマスク、外フレーム130に対応する箇所を覆うエッチングマスク、一対の連結部140に対応する箇所を覆うエッチングマスク、一対の連結部150に対応する箇所を覆うエッチングマスク、および駆動機構160,170,180,190の各々に対応する個所を覆うエッチングマスクを、適宜用いたエッチング処理を所定のタイミングで材料基板に施すことにより、各シリコン層を加工する。エッチング手法としては、Deep RIE(Reactive Ion Etching)法によるドライエッチングや、KOHなどのウエットエッチングなどを利
用することができる。絶縁層における不要な部位は、適宜エッチング除去される。このようにして、第1および第2シリコン層ならびに絶縁層を有する材料基板において、マイクロミラー素子X1の各部位が、形成されることとなる。本発明では、マイクロミラー素子X1の製造に際して、他の積層構造を有する材料基板を採用してもよい。
【0061】
マイクロミラー素子X1においては、櫛歯電極161,165,171,175,181,185,191,195の各々に対して必要に応じて所定の電位を付与することにより、ミラー部110を回転軸心A1まわりに回転動作させることができる。
【0062】
駆動機構180の櫛歯電極181,185に所定の電位を付与することにより櫛歯電極
181,185間に所望の静電引力を発生させると、櫛歯電極181は櫛歯電極185に引きこまれ、両電極は、例えば図5(b)および図6(b)に示す配向をとる。これにより、内フレーム120およびこれに伴うミラー部110は、外フレーム130に対して回転軸心A1まわりに回転動作することとなる。当該回転動作における回転変位量は、付与電位を調整することにより、調節することができる。
【0063】
櫛歯電極181,185が図5(b)および図6(b)に示す配向をとる状態において、駆動機構160の櫛歯電極161,165に所定の電位を付与することにより櫛歯電極161,165間に所望の静電引力を発生させると、櫛歯電極161は櫛歯電極165に引きこまれ、両電極は例えば図2(b)および図3(b)に示す配向をとる。これにより、ミラー部110は、内フレーム120に対して回転軸心A1まわりに回転動作することとなる。当該回転動作における回転変位量は、付与電位を調整することにより、調節することができる。
【0064】
ミラー部110の総変位量は、上述の2種の回転変位における変位量の総和に相当する。回転軸心A1まわりの逆側へのミラー部110の回転動作については、駆動機構180に関して上述したのと同様に駆動機構190にて所望の静電引力を発生させるとともに、駆動機構160に関して上述したのと同様に駆動機構170にて所望の静電引力を発生させることにより、例えば図2(c)、図4(b)、図5(c)、および図7(b)に示すように、達成することができる。以上のようなミラー部110の揺動駆動により、ミラー部110上に設けられたミラー面111により反射される光の反射方向を適宜切り換えることができる。
【0065】
図8は、マイクロミラー素子X1の駆動態様の一例を表す。図8(a)は、駆動機構160の櫛歯電極165および駆動機構180の櫛歯電極185に印加される電圧の時間変化を表す。図8(b)は、駆動機構170の櫛歯電極175および駆動機構190の櫛歯電極195に印加される電圧の時間変化を表す。図8(a)のグラフおよび図8(b)のグラフの各々においては、横軸にて時間(t)を表し、縦軸にて印加電圧(v)を表す。本駆動態様においては、櫛歯電極161,171,181,191はグランド接続されている。また、図8(c)は、本駆動態様におけるミラー部110の回転角度の時間変化を表す。図8(c)のグラフでは、横軸にて時間(t)を表し、縦軸にて回転角度(θ)を表す。
【0066】
本駆動態様においては、まず、時間T0にて初期状態(ミラー部110の回転角度が0
°)にあるマイクロミラー素子X1の各櫛歯電極165,185に対し、時間T1にてミ
ラー部110の回転変位が最大回転角度θ1に至るように、時間T0〜時間T1の間、図8
(a)に示すように所定の電圧V1が印加される。時間T0〜時間T1の間、櫛歯電極16
1,165間および櫛歯電極181,185間には静電引力が生じてミラー部110の回転角度は第1方向に増大し続ける。時間T1では、駆動機構160は例えば図2(b)お
よび図3(b)に示す配向をとり、駆動機構180は例えば図5(b)および図6(b)に示す配向をとり、回転角度は図8(c)に示すようにθ1に至る。このとき、連結部1
40,150には所定の捩れ応力が生じている。
【0067】
次に、時間T1にて各櫛歯電極165,185に対する印加電圧が実質的に0Vとされ
る。この後、時間T1〜時間T2の間、連結部140,150の捩れ応力が復元力として作用して回転角度は減少し続ける。時間T2では、駆動機構160,170は図2(a)、
図3(a)および図4(a)に示す配向をとり、駆動機構180,190は図5(a)、図6(a)および図7(a)に示す配向をとり、回転角度は図8(c)に示すように0°に至る。
【0068】
次に、時間t3にてミラー部110の回転変位が最大回転角度θ2に至るように、時間T2〜時間T3の間、各櫛歯電極175,195に対して図8(b)に示すように所定の電圧V2が印加される。時間T2〜時間T3の間、櫛歯電極171,175間および櫛歯電極1
91,195間には静電引力が生じてミラー部110の回転角度は、第1方向とは反対の第2方向に増大し続ける。時間T3では、駆動機構170は例えば図2(c)および図4
(b)に示す配向をとり、駆動機構190は例えば図5(c)および図7(b)に示す配向をとり、回転角度は図8(c)に示すようにθ2に至る。このとき、連結部140,1
50には所定の捩れ応力が生じている。
【0069】
次に、時間T3にて各櫛歯電極175,195に対する印加電圧が実質的に0Vとされ
る。この後、時間T3〜時間T4の間、連結部140,150の捩れ応力が復元力として作用して回転角度は減少し続ける。時間T4では、駆動機構160,170は図2(a)、
図3(a)および図4(a)に示す配向をとり、駆動機構180,190は図5(a)、図6(a)および図7(a)に示す配向をとり、回転角度は図8(c)に示すように0°に至る。時間T0から時間T4にわたる以上のような一連の動作が、必要に応じて繰り返される。
【0070】
本駆動態様においては、好ましくは、電圧V1および電圧V2は同一であって回転角度θ1の絶対値は回転角度θ2の絶対値と同一である。また、時間T0〜時間T1の間、時間T1
〜時間T2の間、時間T2〜時間T3の間、および時間T3〜時間T4の間は、好ましくは、
同一の長さに設定されて、各々、ミラー部110の揺動動作の4分の1周期とされる。以上のようにして、マイクロミラー素子X1のミラー部110について周期的な回転動作を達成することができる。
【0071】
マイクロミラー素子X1においては、駆動機構180のストロークと駆動機構160のストロークとが、または、駆動機構190のストロークと駆動機構170のストロークとが、重畳的に寄与して長いストロークが確保される。2種類の駆動機構のストロークの重畳的寄与により実効的な長ストロークが確保されるので、例えば一組の櫛歯電極よりなる各駆動機構について比較的薄く(回転動作方向において比較的短く)形成することができる。そのため、駆動機構の厚さが反映された厚さで形成される傾向にある可動部(ミラー部110および内フレーム120)についても、比較的に薄く形成することができる。薄い可動部ほど、軽量であり、高い動作速度を実現するのに好適である。このように、マイクロミラー素子X1は、ミラー部110について、回転変位量の大きな回転動作を高い動作速度で実現するのに適している。
【0072】
マイクロミラー素子X1においては、駆動機構160と駆動機構180とを電気的に並列に配し、且つ、駆動機構170と駆動機構190とを電気的に並列に配することにより、回転駆動制御の簡素化を図ることができる。例えば、2つの駆動機構160の各櫛歯電極161と2つの駆動機構180の各櫛歯電極181とを電気的に並列に配し、且つ、2つの駆動機構160の各櫛歯電極165と2つの駆動機構180の各櫛歯電極185とを電気的に並列に配する場合、回転駆動時において、全ての櫛歯電極161,181には同時に同一の電位が付与されることとなり、且つ、全ての櫛歯電極165,185には同時に同一の電位が付与されることとなり、駆動機構160,180についての制御を共通化することができる。また、2つの駆動機構170の各櫛歯電極171と2つの駆動機構190の各櫛歯電極191とを電気的に並列に配し、且つ、2つの駆動機構170の各櫛歯電極175と2つの駆動機構190の各櫛歯電極195とを電気的に並列に配する場合、回転駆動時において、全ての櫛歯電極171,191には同時に同一の電位が付与されることとなり、且つ、全ての櫛歯電極175,195には同時に同一の電位が付与されることとなり、駆動機構170,190についての制御を共通化することができる。
【0073】
駆動機構160,170により達成し得る内フレーム120に対するミラー部110の相対的な最大回転変位角度と、駆動機構180,190により達成し得る外フレーム130に対する内フレーム120の相対的な最大回転変位角度とが、等しく設定されている設計において、駆動機構160,180の制御を例えば上述のように共通化し且つ駆動機構170,190の制御を例えば上述のように共通化する場合、連結部140,150の捩りバネ定数を各々k1,k2とし、駆動機構160,170および駆動機構180,190により発生される回転トルクを各々T1,T2とすると、下記式(1)の条件を満たす場合に最も効率よくこれら駆動機構を制御することができる。一方、駆動機構160,170により達成し得る内フレーム120に対するミラー部110の相対的な最大回転変位角度と、駆動機構180,190により達成し得る外フレーム130に対する内フレーム120の相対的な最大回転変位角度との比が、1:aに設定されている設計において、駆動機構160,180の制御を例えば上述のように共通化し且つ駆動機構170,190の制御を例えば上述のように共通化する場合、連結部140,150の捩りバネ定数を各々k1,k2とし、駆動機構160,170および駆動機構180,190により発生される回転トルクを各々T1,T2とすると、下記式(2)の条件を満たす場合に最も効率よくこれら駆動機構を制御することができる。また、ミラー部110および内フレーム120のイナーシャを各々I1,I2とすると、マイクロミラー素子X1においては、k1/I1とk2
/(I1+I2)の値は一致しているのが望ましい。
【0074】
【数1】

【0075】
マイクロミラー素子X1においては、駆動機構160と駆動機構180とを電気的に分離して配し、且つ、駆動機構170と駆動機構190とを電気的に分離して配することにより、回転駆動制御の高精度化を図ることができる。このような構成によると、各駆動機構160,170,180,190ごとに発生させる駆動力ないし回転トルクを独立に調整することにより、回転軸心A1まわりの2種類の回転動作を独立に制御することができる。この場合においても、式(1)または式(2)で規定される条件を満たすのが好ましい。
【0076】
図9〜図15は、本発明の第2の実施形態に係るマイクロミラー素子X2を表す。図9は、マイクロミラー素子X2の平面図であり、図10は、図9の線X−Xに沿った断面図である。また、図11〜図15は、各々、図9の線XI−XI、線XII−XII、線XIII−XIII、線XIV−XIV、および線XV−XVに沿った断面図である。
【0077】
マイクロミラー素子X2は、ミラー部110と、内フレーム120と、外フレーム130と、一対の連結部140と、一対の連結部150と、各々2つの駆動機構260,270,280,290とを備える。マイクロミラーX2は、駆動機構160,170,180,190に代えて駆動機構260,270,280,290を具備する点において、マイクロミラー素子X1と異なる。また、マイクロミラー素子X2は、マイクロミラー素子X1と同様に、MEMS技術などのバルクマイクロマシニング技術により、SOI基板である材料基板に対して加工を施すことによって製造されたものである。当該材料基板は、例えば、第1および第2シリコン層ならびに当該シリコン層間の絶縁層よりなる積層構造を有し、各シリコン層は、不純物のドープにより所定の導電性が付与されている。図の明確化の観点より、図9においては、第1シリコン層に由来して絶縁層より紙面手前方向に突き出る部位(ミラー面111は除く)について、斜線ハッチングを付して表す。
【0078】
マイクロミラー素子X2の有する2つの駆動機構260は、ミラー部110を介して対称的に配設されており、各々、櫛歯電極261および櫛歯電極265を有する。櫛歯電極261は、主に第1シリコン層に由来する部位であり、ミラー部110に固定された基部262、および、当該基部262から延出する複数の電極歯263を有する。櫛歯電極265は、導体部265a、導体部265b、およびこれらを電気的に分離するための絶縁部265cからなる積層構造を有し、内フレーム120に固定されて内方に延出する基部266、および、当該基部266から延出する複数の電極歯267を有する。導体部265a,265bは、各々、第1および第2シリコン層に由来する部位である。櫛歯電極261と櫛歯電極265の導体部265bとは、本素子の非回転駆動時には、図10(a)および図11(a)に示すように、互いに異なる高さに位置する。また、櫛歯電極261,265は、互いに当接しないよう、それらの電極歯263,267が位置ずれした態様で配されている。
【0079】
2つの駆動機構270は、ミラー部110を介して対称的に配設されており、各々、櫛歯電極271および櫛歯電極275を有する。櫛歯電極271は、主に第1シリコン層に由来する部位であり、ミラー部110に固定された基部272、および、当該基部272から延出する複数の電極歯273を有する。櫛歯電極275は、導体部275a、導体部275b、およびこれらを電気的に分離するための絶縁部275cからなる積層構造を有し、内フレーム120に固定されて内方に延出する基部276、および、当該基部276から延出する複数の電極歯277を有する。導体部275a,275bは、各々、第1および第2シリコン層に由来する部位である。櫛歯電極271と櫛歯電極275の導体部275bとは、本素子の非回転駆動時には、図10(a)および図12(a)に示すように、互いに異なる高さに位置する。また、櫛歯電極271,275は、互いに当接しないよう、それらの電極歯273,277が位置ずれした態様で配されている。
【0080】
2つの駆動機構280は、ミラー部110および内フレーム120を介して対称的に配設されており、各々、櫛歯電極281および櫛歯電極285を有する。櫛歯電極281は、主に第1シリコン層に由来する部位であり、内フレーム120に固定された基部282、および、当該基部282から延出する複数の電極歯283を有する。櫛歯電極285は、導体部285a、導体部285b、およびこれらを電気的に分離するための絶縁部285cからなる積層構造を有し、外フレーム130に固定されて内方に延出する基部286、および、当該基部286から延出する複数の電極歯287を有する。導体部285a,285bは、各々、第1および第2シリコン層に由来する部位である。櫛歯電極281と櫛歯電極285の導体部285bとは、本素子の非回転駆動時には、図13(a)および図14(a)に示すように、互いに異なる高さに位置する。また、櫛歯電極281,285は、互いに当接しないよう、それらの電極歯283,287が位置ずれした態様で配されている。
【0081】
2つの駆動機構290は、ミラー部110および内フレーム120を介して対称的に配設されており、各々、櫛歯電極291および櫛歯電極295を有する。櫛歯電極291は、主に第1シリコン層に由来する部位であり、内フレーム120に固定された基部292、および、当該基部292から延出する複数の電極歯293を有する。櫛歯電極295は、導体部295a、導体部295b、およびこれらを電気的に分離するための絶縁部295cからなる積層構造を有し、外フレーム130に固定されて内方に延出する基部296、および、当該基部296から延出する複数の電極歯297を有する。導体部295a,295bは、各々、第1および第2シリコン層に由来する部位である。櫛歯電極291と櫛歯電極295の導体部295bとは、本素子の非回転駆動時には、図13(a)および図15(a)に示すように、互いに異なる高さに位置する。また、櫛歯電極291,295は、互いに当接しないよう、それらの電極歯293,297が位置ずれした態様で配されている。
【0082】
マイクロミラー素子X2においては、櫛歯電極261,271,281,291、櫛歯電極265の導体部265a,265b、櫛歯電極275の導体部275a,275b、櫛歯電極285の導体部285a,285b、および櫛歯電極295の導体部295a,295bの各々に対して必要に応じて所定の電位を付与することにより、ミラー部110を回転軸心A1まわりに回転動作させることができる。
【0083】
図16は、マイクロミラー素子X2の駆動態様の一例を表す。図16(a)は、駆動機構260の櫛歯電極265の導体部265bおよび駆動機構280の櫛歯電極285の導体部285bに印加される電圧の時間変化を表す。図16(b)は、駆動機構270の櫛歯電極275の導体部275bおよび駆動機構290の櫛歯電極295の導体部295bに印加される電圧の時間変化を表す。図16(c)は、駆動機構260の櫛歯電極265の導体部265a、駆動機構270の櫛歯電極275の導体部275a、駆動機構280の櫛歯電極285の導体部285a、および駆動機構290の櫛歯電極295の導体部295aに印加される電圧の時間変化を表す。図16(a)〜図16(c)のグラフの各々においては、横軸にて時間(t)を表し、縦軸にて印加電圧(v)を表す。本駆動態様においては、櫛歯電極261,271,281,291はグランド接続されている。また、図16(d)は、本駆動態様におけるミラー部110の回転角度の時間変化を表す。図16(d)のグラフでは、横軸にて時間(t)を表し、縦軸にて回転角度(θ)を表す。
【0084】
本駆動態様においては、まず、時間T0にて初期状態(ミラー部110の回転角度が0
°)にあるマイクロミラー素子X2の櫛歯電極265,285の導体部265b,285bに対し、時間t1にてミラー部110の回転変位が最大回転角度θ1に至るように、時間T0〜時間T1の間、図16(a)に示すように所定の電圧V1が印加される。時間T0〜時間T1の間、櫛歯電極261と導体部265bの間および櫛歯電極281と導体部285
bの間には静電引力が生じてミラー部110の回転角度は第1方向に増大し続ける。時間T1では、駆動機構260は例えば図10(b)および図11(b)に示す配向をとり、
駆動機構280は例えば図13(b)および図14(b)に示す配向をとり、回転角度は図16(d)に示すようにθ1に至る。このとき、連結部140,150には所定の捩れ
応力が生じている。
【0085】
次に、時間T1〜時間T2の間、各導体部265b,285bに対する印加電圧は実質的に0Vとされ、各導体部265a,275a,285a,295aに対して図16(b)に示すように所定の電圧V2が印加される。この間、連結部2140,150の捩れ応力
が復元力として作用するのに加え、櫛歯電極261と導体部265bの間、櫛歯電極271と導体部275bの間、櫛歯電極281と導体部285bの間、および櫛歯電極291と導体部295bの間には静電引力が生じ、ミラー部110の回転角度は減少し続ける。時間T2では、駆動機構260,270は図10(a)、図11(a)および図12(a
)に示す配向をとり、駆動機構280,290は図13(a)、図14(a)および図15(a)に示す配向をとり、回転角度は図16(d)に示すように0°に至る。
【0086】
次に、時間t3にてミラー部110の回転変位が最大回転角度θ2に至るように、時間T2〜時間T3の間、各導体部275b,295bに対して図16(b)に示すように所定の電圧V3が印加され、各導体部265a,275a、285a,295aに対する印加電
圧は実質的に0Vとされる。時間T2〜時間T3の間、櫛歯電極271と導体部275bの間および櫛歯電極291と導体部295bの間には静電引力が生じてミラー部110の回転角度は第1方向とは反対の第2方向に増大し続ける。時間T3では、駆動機構270は
例えば図10(c)および図12(b)に示す配向をとり、駆動機構290は例えば図13(c)および図15(b)に示す配向をとり、回転角度は図16(d)に示すようにθ2に至る。このとき、連結部140,150には所定の捩れ応力が生じている。
【0087】
次に、時間T3〜時間T4の間、各導体部275b,295bに対する印加電圧は実質的に0Vとされ、各導体部265a,275a,285a,295aに対して図16(c)に示すように所定の電圧V4が印加される。この間、連結部140,150の捩れ応力が
復元力として作用するのに加え、櫛歯電極261と導体部265bの間、櫛歯電極271と導体部275bの間、櫛歯電極281と導体部285bの間、および櫛歯電極291と導体部295bの間には静電引力が生じ、ミラー部110の回転角度は減少し続ける。時間T4では、駆動機構260,270は図10(a)、図11(a)および図12(a)
に示す配向をとり、駆動機構280,290は図13(a)、図14(a)および図15(a)に示す配向をとり、回転角度は図16(d)に示すように0°に至る。時間T0
ら時間T4にわたる以上のような一連の動作が、必要に応じて繰り返される。
【0088】
本駆動態様においては、好ましくは、電圧V1および電圧V3は同一であり、電圧V2
よび電圧V4は同一であり、回転角度θ1の絶対値は回転角度θ2の絶対値と同一である。
また、好ましくは、電圧V2,V4は電圧V1,V3より小さい。更に、好ましくは、時間T0〜時間T1の間、時間T1〜時間T2の間、時間T2〜時間T3の間、および時間T3〜時間
4の間は、好ましくは、同一の長さに設定されて、各々、ミラー部110の回転動作の
4分の1周期とされる。以上のようにして、マイクロミラー素子X2のミラー部110について周期的な回転動作を達成することができる。
【0089】
マイクロミラー素子X2においては、駆動機構280のストロークと駆動機構260のストロークとが、または、駆動機構290のストロークと駆動機構270のストロークとが、重畳的に寄与して長いストロークが確保される。2種類の駆動機構のストロークの重畳的寄与により実効的な長ストロークが確保されるので、例えば一組の櫛歯電極よりなる各駆動機構について比較的薄く(回転動作方向において比較的短く)形成することができる。そのため、駆動機構の厚さが反映された厚さで形成される傾向にある可動部(ミラー部110および内フレーム120)についても、比較的に薄く形成することができる。薄い可動部ほど、軽量であり、高い動作速度を実現するのに好適である。このように、マイクロミラー素子X2は、ミラー部110について、回転変位量の大きな回転動作を高い動作速度で実現するのに適している。
【0090】
マイクロミラー素子X2においては、駆動機構260と駆動機構280とを電気的に並列に配し、且つ、駆動機構270と駆動機構290とを電気的に並列に配することにより、回転駆動制御の簡素化を図ることができる。例えば、各櫛歯電極261と各櫛歯電極281とを電気的に並列に配し、各櫛歯電極265の導体部265aと各櫛歯電極285の導体部285aとを電気的に並列に配し、且つ、各櫛歯電極265の導体部265bと各櫛歯電極285の導体部285bとを電気的に並列に配する場合、回転駆動時において、全ての櫛歯電極261,281には同時に同一の電位が付与されることとなり、全ての導体部265a,285aには同時に同一の電位が付与されることとなり、全ての導体部265b,285bには同時に同一の電位が付与されることとなり、駆動機構260,280についての制御を共通化することができる。また、各櫛歯電極271と各櫛歯電極291とを電気的に並列に配し、各櫛歯電極275の導体部275aと各櫛歯電極295の導体部295aとを電気的に並列に配し、且つ、各櫛歯電極275の導体部275bと各櫛歯電極295の導体部295bとを電気的に並列に配する場合、回転駆動時において、全ての櫛歯電極271,291には同時に同一の電位が付与されることとなり、全ての導体部275a,295aには同時に同一の電位が付与されることとなり、全ての導体部275b,295bには同時に同一の電位が付与されることとなり、駆動機構270,290についての制御を共通化することができる。
【0091】
駆動機構260,270により達成し得る内フレーム120に対するミラー部110の
相対的な最大回転変位角度と、駆動機構280,290により達成し得る外フレーム130に対する内フレーム120の相対的な最大回転変位角度とが、等しく設定されている設計において、駆動機構260,280の制御を例えば上述のように共通化し且つ駆動機構270,290の制御を例えば上述のように共通化する場合、連結部140,150の捩りバネ定数を各々k1,k2とし、駆動機構260,270および駆動機構280,290により発生される回転トルクを各々T1,T2とすると、上記式(1)の条件を満たす場合に最も効率よくこれら駆動機構を制御することができる。一方、駆動機構260,270により達成し得る内フレーム120に対するミラー部110の相対的な最大回転変位角度と、駆動機構280,290により達成し得る外フレーム130に対する内フレーム120の相対的な最大回転変位角度との比が、1:aに設定されている設計において、駆動機構260,280の制御を例えば上述のように共通化し且つ駆動機構270,290の制御を例えば上述のように共通化する場合、連結部140,150の捩りバネ定数を各々k1,k2とし、駆動機構260,270および駆動機構280,290により発生される回転トルクを各々T1,T2とすると、上記式(2)の条件を満たす場合に最も効率よくこれら駆動機構を制御することができる。
【0092】
図17〜図24は、本発明の第3の実施形態に係るマイクロミラー素子X3を表す。図17は、マイクロミラー素子X3の平面図であり、図18〜図20は、図17の線XVIII
−XVIIIに沿った断面図である。また、図21〜図24は、各々、図17の線XXI−XXI、
線XXII−XXII、線XXIII−XXIII、および線XXIV−XXIVに沿った断面図である。
【0093】
マイクロミラー素子X3は、ミラー部310と、フレーム320と、一対の連結部330と、各々2つの駆動機構340,350,360,370とを備える。また、マイクロミラー素子X3は、マイクロミラー素子X1と同様に、MEMS技術などのバルクマイクロマシニング技術により、SOI基板である所定の積層構造を有する材料基板に対して加工を施すことによって製造されたものである。当該材料基板は、例えば、第1および第2シリコン層ならびに当該シリコン層間の絶縁層よりなる積層構造を有し、各シリコン層は、不純物のドープにより所定の導電性が付与されている。図の明確化の観点より、図17においては、第1シリコン層に由来して絶縁層より紙面手前方向に突き出る部位(ミラー面311は除く)について、斜線ハッチングを付して表す。
【0094】
ミラー部310は、主に第1シリコン層において成形された部位であり、その表面には、光反射機能を有するミラー面311を有する。ミラー面311は、第1シリコン層上に成膜されたCr層およびその上のAr層よりなる積層構造を有する。このようなミラー部310は、本発明における可動部を構成する。フレーム320は、主に第1シリコン層において成形された部位であり、ミラー部310を囲む形態を有する。
【0095】
一対の連結部330は、第1シリコン層において成形された部位であり、各々2本のトーションバー331よりなる。各トーションバー331は、ミラー部310およびフレーム320に接続してこれらを連結している。各連結部330の2本のトーションバー331の間隔は、フレーム320の側からミラー部310の側にかけて次第に広くなっている。このような一対の連結部330は、フレーム320に対するミラー部310の回転動作の回転軸心A3を規定する。フレーム320の側からミラー部310の側にかけて間隔が漸増する2本のトーションバー331よりなる連結部330は、ミラー部310の回転動作における不要な変位成分を防止するのに好適である。また、連結部330については、2本のトーションバー331を介して、フレーム320からミラー部310に対して2つの異なる電位を付与できるように構成することが可能である。
【0096】
2つの駆動機構340は、ミラー部310を介して対称的に配設されており、各々、櫛歯電極341および櫛歯電極345を有する。櫛歯電極341は、主に第1シリコン層に
由来する部位であり、ミラー部310に固定された基部342、および、当該基部342から延出する複数の電極歯343を有する。櫛歯電極345は、主に第2シリコン層に由来する部位であり、フレーム320に固定されて内方に延出する基部346、および、当該基部346から延出する複数の電極歯347を有する。櫛歯電極341,345は、本素子の非回転駆動時には、図18および図21(a)に示すように、互いに異なる高さに位置する。また、櫛歯電極341,345は、回転駆動時において互いに当接しないよう、それらの電極歯343,347が位置ずれした態様で配されている。
【0097】
2つの駆動機構350は、ミラー部310を介して対称的に配設されており、各々、櫛歯電極351および櫛歯電極355を有する。櫛歯電極351は、主に第1シリコン層に由来する部位であり、ミラー部310に固定された基部352、および、当該基部352から延出する複数の電極歯353を有する。櫛歯電極355は、主に第2シリコン層に由来する部位であり、フレーム320に固定されて内方に延出する基部356、および、当該基部356から延出する複数の電極歯357を有する。櫛歯電極351,355は、本素子の非回転駆動時には、図18および図22(a)に示すように、互いに異なる高さに位置する。また、櫛歯電極351,355は、回転駆動時において互いに当接しないよう、それらの電極歯353,357が位置ずれした態様で配されている。
【0098】
2つの駆動機構360は、ミラー部310を介して対称的に配設されており、各々、櫛歯電極361および櫛歯電極365を有する。櫛歯電極361は、主に第1シリコン層に由来する部位であり、ミラー部310に固定された基部362、および、当該基部362から延出する複数の電極歯363を有する。櫛歯電極365は、主に第2シリコン層に由来する部位であり、フレーム320に固定されて内方に延出する基部366、および、当該基部366から延出する複数の電極歯367を有する。櫛歯電極361,365は、本素子の非回転駆動時には、図18および図23(a)に示すように、互いに異なる高さに位置する。また、櫛歯電極361,365は、回転駆動時において互いに当接しないよう、それらの電極歯363,367が位置ずれした態様で配されている。
【0099】
2つの駆動機構370は、ミラー部310を介して対称的に配設されており、各々、櫛歯電極371および櫛歯電極375を有する。櫛歯電極371は、主に第1シリコン層に由来する部位であり、ミラー部310に固定された基部372、および、当該基部372から延出する複数の電極歯373を有する。櫛歯電極375は、主に第2シリコン層に由来する部位であり、フレーム320に固定されて内方に延出する基部376、および、当該基部376から延出する複数の電極歯377を有する。櫛歯電極371,375は、本素子の非回転駆動時には、図18および図24(a)に示すように、互いに異なる高さに位置する。また、櫛歯電極371,375は、回転駆動時において互いに当接しないよう、それらの電極歯373,377が位置ずれした態様で配されている。
【0100】
マイクロミラー素子X3においては、櫛歯電極341,345,351,355,361,365,371,375の各々に対して必要に応じて所定の電位を付与することにより、ミラー部310を回転軸心A3まわりに回転動作させることができる。
【0101】
例えば、駆動機構340の櫛歯電極341,345に所定の電位を付与することにより櫛歯電極341,345間に所望の静電引力を発生させ、且つ、駆動機構360の櫛歯電極361,365に所定の電位を付与することにより櫛歯電極361,365間に所望の静電引力を発生させると、櫛歯電極341は櫛歯電極345に引きこまれ、且つ、櫛歯電極361は櫛歯電極365に引きこまれ、駆動機構340,360は、例えば図19(a
)、図21(b)、および図23(b)に示す配向をとる。これにより、ミラー部310は、フレーム320に対して回転軸心A3まわりに回転動作することとなる。当該回転動作における回転変位量は、付与電位を調整することにより、調節することができる。回転
軸心A3まわりの逆側へのミラー部310の回転駆動については、駆動機構340,360に関して上述したのと同様に駆動機構350,370にて所望の静電引力を発生させることにより、例えば図20(a)、図22(b)、および図24(b)に示すように達成することができる。このようなミラー部310の2方向への回転駆動により、ミラー部310上に設けられたミラー面311により反射される光の反射方向を適宜切り換えることができる。
【0102】
図25は、マイクロミラー素子X3の駆動態様の一例を表す。図25(a)は、駆動機構340の櫛歯電極345に印加される電圧の時間変化を表す。図25(b)は、駆動機構360の櫛歯電極365に印加される電圧の時間変化を表す。図25(c)は、駆動機構350の櫛歯電極355に印加される電圧の時間変化を表す。図25(d)は、駆動機構370の櫛歯電極375に印加される電圧の時間変化を表す。図25(a)〜25(d)のグラフの各々においては、横軸にて時間(t)を表し、縦軸にて印加電圧(v)を表す。本駆動態様においては、櫛歯電極341,351,361,371はグランド接続されている。また、図25(e)は、本駆動態様におけるミラー部310の回転角度の時間変化を表す。図25(e)のグラフでは、横軸にて時間(t)を表し、縦軸にて回転角度(θ)を表す。
【0103】
本駆動態様においては、まず、時間t0にて初期状態(回転角度が0°)にあるミラー
部310の回転変位が時間t2にて最大回転角度θ1に至るように、時間T0〜時間T1の間、櫛歯電極345に対して図25(a)に示すように所定の電圧V1が印加されるととも
に、時間T0〜時間T2の間、櫛歯電極365に対して図25(b)に示すように所定の電圧V2が印加される。時間T0〜時間T1の間、櫛歯電極341,345間および櫛歯電極
361,365間には静電引力が生じてミラー部310の回転角度は第1方向に増大し続け、時間T1では、駆動機構340,360は例えば図19(a)、図21(b)、およ
び図23(b)に示す配向をとる。第1方向とは反対の第2方向への駆動力(駆動トルク)が駆動機構340にて生じ得る回転変位(例えばθ1’)に至る以前である時間T1にて、櫛歯電極345に対する電圧印加は実質的に0Vとされる。そして、時間T1〜時間T2の間、櫛歯電極361,365間には引き続き静電引力が生じてミラー部310の回転角度は第1方向に増大し続ける。時間T2では、駆動機構340,360は例えば図19(
b)、図21(c)、および図23(c)に示す配向をとり、回転角度は図25(e)に示すようにθ1に至る。このとき、連結部330には所定の捩れ応力が生じている。
【0104】
次に、時間T2にて各櫛歯電極365に対する印加電圧が実質的に0Vとされる。この
後、時間T2〜時間T3の間、連結部330の捩れ応力が復元力として作用して回転角度は減少し続ける。時間T3では、回転角度は図25(e)に示すように0°に至る。
【0105】
次に、ミラー部310の回転変位が時間t5にて最大回転角度θ2に至るように、時間T3〜時間T4の間、櫛歯電極355に対して図25(c)に示すように所定の電圧V3が印
加されるとともに、時間T3〜時間T5の間、櫛歯電極375に対して図25(d)に示すように所定の電圧V4が印加される。時間T3〜時間T4の間、櫛歯電極351,355間
および櫛歯電極371,375間には静電引力が生じてミラー部310の回転角度は第2方向に増大し続け、時間T4では、駆動機構350,370は例えば図20(a)、図2
2(b)、および図24(b)に示す配向をとる。第2方向とは反対の第1方向への駆動力(駆動トルク)が駆動機構350にて生じ得る回転変位(例えばθ2’)に至る以前で
ある時間T4にて、櫛歯電極355に対する電圧印加は実質的に0Vとされる。そして、
時間T4〜時間T5の間、櫛歯電極371,375間には引き続き静電引力が生じてミラー部310の回転角度は第2方向に増大し続ける。時間T5では、駆動機構350,370
は例えば図20(b)、図22(c)および図24(c)に示す配向をとり、回転角度は図25(e)に示すようにθ2に至る。このとき、連結部330には所定の捩れ応力が生
じている。
【0106】
次に、時間T5にて各櫛歯電極375に対する印加電圧が実質的に0Vとされる。この
後、時間T5〜時間T6の間、連結部330の捩れ応力が復元力として作用して回転角度は減少し続ける。時間T6では、回転角度は図25(e)に示すように0°に至る。時間T0から時間T6にわたる以上のような一連の動作が、必要に応じて繰り返される。
【0107】
本駆動態様においては、好ましくは、電圧V1および電圧V3は同一であり且つ電圧V2
および電圧V4は同一であって、回転角度θ1の絶対値は回転角度θ2の絶対値と同一であ
る。また、時間T0〜時間T2の間、時間T2〜時間T3の間、時間T3〜時間T5の間、および時間T5〜時間T6の間は、好ましくは、同一の長さに設定されて、各々、ミラー部310の回転動作の4分の1周期とされる。以上のようにして、マイクロミラー素子X3のミラー部310について周期的な回転動作を達成することができる。
【0108】
図26は、マイクロミラー素子X3の駆動態様の他の例を表す。図26(a)は、駆動機構340の櫛歯電極345に印加される電圧の時間変化を表す。図26(b)は、駆動機構360の櫛歯電極365に印加される電圧の時間変化を表す。図26(c)は、駆動機構350の櫛歯電極355に印加される電圧の時間変化を表す。図26(d)は、駆動機構370の櫛歯電極375に印加される電圧の時間変化を表す。図26(a)〜26(d)のグラフの各々においては、横軸にて時間(t)を表し、縦軸にて印加電圧(v)を表す。本駆動態様においては、櫛歯電極341,351,361,371はグランド接続されている。また、図26(e)は、本駆動態様におけるミラー部310の回転角度の時間変化を表す。図26(e)のグラフでは、横軸にて時間(t)を表し、縦軸にて回転角度(θ)を表す。本駆動態様は、櫛歯電極345,355について更なる電圧印加期間が存在する点において、図25を参照して上述した駆動態様と異なる。
【0109】
本駆動態様では、図26(a)に示すように、時間T2〜時間T2'の間、櫛歯電極34
5に所定の電圧V5が印加される。この間、連結部330の捩れ応力が復元力として作用
するのに加え、櫛歯電極341,345間には第2方向への駆動力として静電引力が生じ、ミラー部310の回転角度は減少し続ける。時間T2'では、駆動機構340,360は例えば図19(a)、図21(b)、および図23(b)に示す配向をとる。第2方向とは反対の第1方向への駆動力(駆動トルク)が駆動機構340にて生じ得る回転変位(例えばθ1’)に至る以前である時間T2'にて、櫛歯電極345に対する電圧印加は実質的
に0Vとされる。
【0110】
また、本駆動態様では、図26(c)に示すように、時間T5〜時間T5'の間、櫛歯電
極355に所定の電圧V6が印加される。この間、連結部330の捩れ応力が復元力とし
て作用するのに加え、櫛歯電極351,355間には第1方向への駆動力として静電引力が生じ、ミラー部310の回転角度は減少し続ける。時間T5'では、駆動機構350,370は例えば図20(b)、図22(b)、および図24(b)に示す配向をとる。第1方向とは反対の第2方向への駆動力(駆動トルク)が駆動機構350にて生じ得る回転変位(例えばθ2’)に至る以前である時間T5'にて、櫛歯電極355に対する電圧印加は
実質的に0Vとされる。
【0111】
本駆動態様においては、好ましくは、電圧V1および電圧V5は同一であり、電圧V3
よび電圧V6は同一である。また、時間T0〜時間T1の間と時間T2〜時間T2'の間との和、並びに、時間T3〜時間T4の間と時間T5〜時間T5'の間との和は、各々、好ましくは
、ミラー部310の回転動作の4分の1周期とされる。以上のようにして、マイクロミラー素子X3のミラー部310について周期的な回転動作を達成することができる。
【0112】
マイクロミラー素子X3においては、ミラー部310の回転動作における回転軸心A3に対し、駆動機構340,350は相対的に遠くに配設され、駆動機構360,370は相対的に近くに配設されている。このような構成においては、駆動機構340,350は、大きな回転トルクを発生するうえで駆動機構360,370より適している。例えば、駆動機構340,350と駆動機構360,370の寸法設計が同一である場合、これらに同一の電圧を印加すると、駆動機構340,350では、回転軸心A3からの距離がより遠いために駆動機360,370よりも大きな回転トルクが発生する。また、駆動機構360,370は、大きなストロークを確保するうえで駆動機構340,350より適している。例えば、駆動機構340,350と駆動機構360,370の寸法設計が同一である場合、駆動機構360,370は、駆動機構340,350よりも、より大きな回転変位量(回転角度)にわたるストロークを有する。大きな回転トルクの発生に適した駆動機構340,350と大きなストロークを確保するのに適した駆動機構360,370とを併せて具備するマイクロミラー素子X3においては、各駆動機構における各櫛歯電極を過度に厚くせずとも、実効的な長ストロークを確保することが可能である。このようなマイクロミラー素子X3は、ミラー部310について、回転変位量の大きな回転動作を高い動作速度で実現するのに適している。
【0113】
このようなマイクロミラー素子X3においては、駆動機構340,350および駆動機構360,370の各々の特長を有効活用すべく、駆動機構340,350および駆動機構360,370を電気的に分離して各々に独立に制御するのが好ましい。例えば、ミラー部310の変位量が小角度範囲においては主に駆動機構340,350に頼って大きな回転トルクを発生させ、大角度範囲においては、駆動機構360,370の相対的に長いストロークにわたって当該駆動機構360,370により所定の回転トルクを持続させることができる。
【0114】
また、マイクロミラー素子X3においては、駆動機構360,370の各櫛歯電極の電場発生面積を所望の程度にまで大きくすることにより、当該駆動機構360,370により発生される回転トルクと、駆動機構340,350により発生される回転トルクとの差を小さく設定してもよい。或は、回転軸心A3から更に遠い箇所にて駆動力を発生するための駆動機構を複数種類追加してもよい。これらの構成を採用することにより、マイクロミラー素子X3における所定の特性を向上できる場合がある。
【0115】
加えて、マイクロミラー素子X3においては、ミラー部310を高精度に回転駆動すべく、ミラー部310の回転変位量(回転角度)を検出するための手段を設けるのが好ましい。当該検出手段としては、例えば、ミラー部310の上面または下面での光反射を利用する光学的な手法、櫛歯電極やミラー部310の下面において静電容量値を計測する手法、或は、連結部330ないしトーションバー331の歪みをピエゾ抵抗などの歪みゲージを用いて計測する手法を、採用することができる。
【0116】
図27〜図34は、本発明の第4の実施形態に係るマイクロミラー素子X4を表す。図27は、マイクロミラー素子X4の平面図であり、図28〜図30は、図27の線XXVIII−XXVIIIに沿った断面図である。また、図31〜図34は、各々、図27の線XXXI−XXXI、線XXXII−XXXII、線XXXIII−XXXIII、および線XXXIV−XXXIVに沿った断面図である。
【0117】
マイクロミラー素子X4は、ミラー部310と、フレーム320と、一対の連結部330と、各々2つの駆動機構440,450,460,470とを備える。マイクロミラー素子X4は、駆動機構340,350,360,370に代えて駆動機構440,450,460,470を具備する点において、マイクロミラー素子X3と異なる。また、マイクロミラー素子X4は、マイクロミラー素子X1と同様に、MEMS技術などのバルクマイクロマシニング技術により、SOI基板である所定の積層構造を有する材料基板に対し
て加工を施すことによって製造されたものである。当該材料基板は、例えば、第1および第2シリコン層ならびに当該シリコン層間の絶縁層よりなる積層構造を有し、各シリコン層は、不純物のドープにより所定の導電性が付与されている。図の明確化の観点より、図27においては、第1シリコン層に由来して絶縁層より紙面手前方向に突き出る部位(ミラー面311は除く)について、斜線ハッチングを付して表す。
【0118】
マイクロミラー素子X4の有する2つの駆動機構440は、ミラー部310を介して対称的に配設されており、各々、櫛歯電極441および櫛歯電極445を有する。櫛歯電極441は、主に第1シリコン層に由来する部位であり、ミラー部310に固定された基部442、および、当該基部442から延出する複数の電極歯443を有する。櫛歯電極445は、導体部445a、導体部445b、およびこれらを電気的に分離するための絶縁部445cからなる積層構造を有し、フレーム320に固定されて内方に延出する基部446、および、当該基部446から延出する複数の電極歯447を有する。導体部445a,445bは、各々、第1および第2シリコン層に由来する部位である。櫛歯電極441と櫛歯電極445の導体部445bとは、本素子の非回転駆動時には、図28および図31(a)に示すように、互いに異なる高さに位置する。また、櫛歯電極441,445は、互いに当接しないよう、それらの電極歯443,447が位置ずれした態様で配されている。
【0119】
2つの駆動機構450は、ミラー部310を介して対称的に配設されており、各々、櫛歯電極451および櫛歯電極455を有する。櫛歯電極451は、主に第1シリコン層に由来する部位であり、ミラー部310に固定された基部452、および、当該基部452から延出する複数の電極歯453を有する。櫛歯電極455は、導体部455a、導体部455b、およびこれらを電気的に分離するための絶縁部455cからなる積層構造を有し、フレーム320に固定されて内方に延出する基部456、および、当該基部456から延出する複数の電極歯457を有する。導体部455a,455bは、各々、第1および第2シリコン層に由来する部位である。櫛歯電極451と櫛歯電極455の導体部455bとは、本素子の非回転駆動時には、図28および図32(a)に示すように、互いに異なる高さに位置する。また、櫛歯電極451,455は、互いに当接しないよう、それらの電極歯453,457が位置ずれした態様で配されている。
【0120】
2つの駆動機構460は、ミラー部310を介して対称的に配設されており、各々、櫛歯電極461および櫛歯電極465を有する。櫛歯電極461は、主に第1シリコン層に由来する部位であり、ミラー部310に固定された基部462、および、当該基部462から延出する複数の電極歯463を有する。櫛歯電極465は、導体部465a、導体部465b、およびこれらを電気的に分離するための絶縁部465cからなる積層構造を有し、フレーム320に固定されて内方に延出する基部466、および、当該基部466から延出する複数の電極歯467を有する。導体部465a,465bは、各々、第1および第2シリコン層に由来する部位である。櫛歯電極461と櫛歯電極465の導体部465bとは、本素子の非回転駆動時には、図28および図33(a)に示すように、互いに異なる高さに位置する。また、櫛歯電極461,465は、互いに当接しないよう、それらの電極歯463,467が位置ずれした態様で配されている。
【0121】
2つの駆動機構470は、ミラー部310を介して対称的に配設されており、各々、櫛歯電極471および櫛歯電極475を有する。櫛歯電極471は、主に第1シリコン層に由来する部位であり、フレーム320に固定された基部472、および、当該基部472から延出する複数の電極歯473を有する。櫛歯電極475は、導体部475a、導体部475b、およびこれらを電気的に分離するための絶縁部475cからなる積層構造を有し、フレーム320に固定されて内方に延出する基部476、および、当該基部476から延出する複数の電極歯477を有する。導体部475a,475bは、各々、第1およ
び第2シリコン層に由来する部位である。櫛歯電極471と櫛歯電極475の導体部475bとは、本素子の非回転駆動時には、図28および図34(a)に示すように、互いに異なる高さに位置する。また、櫛歯電極471,475は、互いに当接しないよう、それらの電極歯473,477が位置ずれした態様で配されている。
【0122】
マイクロミラー素子X4においては、櫛歯電極441,451,461,471、櫛歯電極445の導体部445a,445b、櫛歯電極455の導体部455a,455b、櫛歯電極465の導体部465a,465b、および櫛歯電極475の導体部475a,475bの各々に対して必要に応じて所定の電位を付与することにより、ミラー部310を回転軸心A3まわりに回転動作させることができる。
【0123】
図35は、マイクロミラー素子X4の駆動態様の一例を表す。図35(a)は、駆動機構440の櫛歯電極445の導体部445bに印加される電圧の時間変化を表す。図35(b)は、駆動機構460の櫛歯電極465の導体部465bに印加される電圧の時間変化を表す。図35(c)は、駆動機構450の櫛歯電極455の導体部455bに印加される電圧の時間変化を表す。図35(d)は、駆動機構470の櫛歯電極475の導体部475bに印加される電圧の時間変化を表す。図35(e)は、駆動機構440の櫛歯電極445の導体部445a、駆動機構450の櫛歯電極455の導体部455a、駆動機構460の櫛歯電極465の導体部465a、および駆動機構470の櫛歯電極475の導体部475aに印加される電圧の時間変化を表す。図35(a)〜35(e)のグラフの各々においては、横軸にて時間(t)を表し、縦軸にて印加電圧(v)を表す。本駆動態様においては、櫛歯電極441,451,461,471はグランド接続されている。また、図35(f)は、本駆動態様におけるミラー部310の回転角度の時間変化を表す。図35(f)のグラフでは、横軸にて時間(t)を表し、縦軸にて回転角度(θ)を表す。
【0124】
本駆動態様においては、まず、時間t0にて初期状態(回転角度が0°)にあるミラー
部310の回転変位が時間t2にて最大回転角度θ1に至るように、時間T0〜時間T1の間、導体部445bに対して図35(a)に示すように所定の電圧V1が印加されるととも
に、時間T0〜時間T2の間、導体部465bに対して図35(b)に示すように所定の電圧V2が印加される。時間T0〜時間T1の間、櫛歯電極441と導体部445bの間およ
び櫛歯電極461と導体部465bの間には静電引力が生じてミラー部310の回転角度は第1方向に増大し続け、時間T1では、駆動機構440,460は例えば図29(a)
、図31(b)、および図33(b)に示す配向をとる。第1方向とは反対の第2方向への駆動力(駆動トルク)が駆動機構440にて生じ得る回転変位(例えばθ1’)に至る
以前である時間T1にて、導体部445bに対する電圧印加は実質的に0Vとされる。そ
して、時間T1〜時間T2の間、櫛歯電極461と導体部465bの間には引き続き静電引力が生じてミラー部310の回転角度は第1方向に増大し続ける。時間T2では、駆動機
構440,460は例えば図29(b)、図31(c)、および図33(c)に示す配向をとり、回転角度は図35(f)に示すようにθ1に至る。このとき、連結部330には
所定の捩れ応力が生じている。
【0125】
次に、時間t4にて回転角度が0°に至るように、時間T2〜時間T3の間、導体部44
5bに対して所定の電圧V3が印加されるとともに、時間T2〜時間T4の間、図35(e
)に示すように、導体部445a,455a,465a,475aに対して所定の電圧V4が印加される。また、時間T2〜時間T4の間、導体部465bに対する印加電圧は実質
的に0Vとされる。時間T2〜時間T3の間、連結部330の捩れ応力が復元力として作用するのに加え、櫛歯電極441と櫛歯電極445(導体部445a,445b)には第2方向への駆動力として静電引力が生じ、且つ、櫛歯電極451と導体部455aの間、櫛歯電極461と導体部465aの間、および櫛歯電極471と導体部475aの間にも、
第2方向への駆動力として静電引力が生じ、ミラー部310の回転角度は減少し続ける。時間T3では、駆動機構440,460は例えば図29(a)、図31(b)および図3
3(b)に示す配向をとる。第2方向とは反対の第1方向への駆動力(駆動トルク)が駆動機構440にて生じ得る回転変位(例えばθ1’)に至る以前である時間T3にて、導体部445bに対する電圧印加は実質的に0Vとされる。そして、時間T3〜時間T4の間、櫛歯電極441と導体部445aの間、櫛歯電極451と導体部455aの間、櫛歯電極461と導体部465aの間、および櫛歯電極471と導体部475aの間には引き続き静電引力が生じてミラー部310の回転角度は減少し続ける。時間T4では、回転角度は
図35(f)に示すように0°に至る。
【0126】
次に、ミラー部310の回転変位が時間t6にて最大回転角度θ2に至るように、時間T4〜時間T5の間、導体部455bに対して図35(d)に示すように所定の電圧V5が印
加されるとともに、時間T4〜時間T6の間、導体部475bに対して図35(d)に示すように所定の電圧V6が印加される。時間T4〜時間T5の間、櫛歯電極451と導体部4
55bの間および櫛歯電極471と導体部475bの間には静電引力が生じてミラー部310の回転角度は第2方向に増大し続け、時間T5では、駆動機構450,470は例え
ば図30(a)、図32(b)、および図34(b)に示す配向をとる。第2方向とは反対の第1方向への駆動力(駆動トルク)が駆動機構450にて生じ得る回転変位(例えばθ2’)に至る以前である時間T5にて、導体部455bに対する電圧印加は実質的に0Vとされる。そして、時間T5〜時間T6の間、櫛歯電極471と導体部475bの間には引き続き静電引力が生じてミラー部310の回転角度は第2方向に増大し続ける。時間T6
では、駆動機構450,470は例えば図30(b)、図32(c)、および図34(c)に示す配向をとり、回転角度は図35(f)に示すようにθ2に至る。このとき、連結
部330には所定の捩れ応力が生じている。
【0127】
次に、時間t8にて回転角度が0°に至るように、時間T6〜時間T7の間、導体部45
5bに対して図35(c)に示すように所定の電圧V7が印加されるとともに、時間T6〜時間T8の間、図35(e)に示すように、導体部445a,455a,465a,47
5aに対して所定の電圧V8が印加される。また、時間T6〜時間T8の間、導体部475
bに対する印加電圧は実質的に0Vとされる。時間T6〜時間T7の間、連結部330の捩れ応力が復元力として作用するのに加え、櫛歯電極451と櫛歯電極455(導体部445a,445b)には第1方向への駆動力として静電引力が生じ、且つ、櫛歯電極441と導体部445aの間、櫛歯電極461と導体部465aの間、および櫛歯電極471と導体部475aの間にも、第1方向への駆動力として静電引力が生じ、ミラー部310の回転角度は減少し続ける。時間T7では、駆動機構450,470は例えば図30(a)
、図32(b)、および図34(b)に示す配向をとる。第1方向とは反対の第2方向への駆動力(駆動トルク)が駆動機構450にて生じ得る回転変位(例えばθ2’)に至る
以前である時間T7にて、導体部455bに対する電圧印加は実質的に0Vとされる。そ
して、時間T7〜時間T8の間、櫛歯電極441と導体部445aの間、櫛歯電極451と導体部455aの間、櫛歯電極461と導体部465aの間、および櫛歯電極471と導体部475aの間には引き続き静電引力が生じてミラー部310の回転角度は減少し続ける。時間T8では、回転角度は図35(f)に示すように0°に至る。時間T0から時間T8にわたる以上のような一連の動作が、必要に応じて繰り返される。
【0128】
本駆動態様においては、好ましくは、電圧V1および電圧V3は同一であり且つ電圧V5
および電圧V7は同一であって、回転角度θ1の絶対値は回転角度θ2の絶対値と同一であ
る。好ましくは、時間T0〜時間T2の間、時間T2〜時間T4の間、時間T4〜時間T6の間、および時間T6〜時間T8の間は、同一の長さに設定されて、各々、ミラー部310の回転動作の4分の1周期とされる。また、時間T0〜時間T1の間と時間T2〜時間T3の間との和、並びに、時間T4〜時間T5の間と時間T6〜時間T7の間との和は、各々、好ましく
は、ミラー部310の回転動作の4分の1周期とされる。以上のようにして、マイクロミラー素子X4のミラー部310について周期的な回転動作を達成することができる。
【0129】
マイクロミラー素子X4においては、ミラー部310の回転動作における回転軸心A3に対し、駆動機構440,450は相対的に遠くに配設され、駆動機構460,470は相対的に近くに配設されている。このような構成においては、駆動機構440,450は、駆動機構340,350に関して上述したのと同様に、大きな回転トルクを発生するうえで駆動機構460,470より適している。また、駆動機構460,470は、駆動機構360,370に関して上述したのと同様に、大きなストロークを確保するうえで駆動機構440,450より適している。大きな回転トルクの発生に適した駆動機構440,450と大きなストロークを確保するのに適した駆動機構460,470とを併せて具備するマイクロミラー素子X4においては、マイクロミラー素子X3に関して上述したのと同様に、各駆動機構における各櫛歯電極を過度に厚くせずとも、実効的な長ストロークを確保することが可能である。このようなマイクロミラー素子X4は、ミラー部310について、回転変位量の大きな回転動作を高い動作速度で実現するのに適している。
【0130】
また、マイクロミラー素子X4においては、マイクロミラー素子X3に関して上述したのと同様に、ミラー部310を高精度に回転駆動すべく、ミラー部310の回転変位量(回転角度)を検出するための手段を設けるのが好ましい。
【0131】
図36〜図40は、本発明の第5の実施形態に係るマイクロミラー素子X5を表す。図36は、マイクロミラー素子X5の平面図であり、図37は、図36の線XXXVII−XXXVIIに沿った断面図である。また、図38〜図40は、各々、図36の線XXXVIII−XXXVIII、線XXXIX−XXXIX、および線XXXX−XXXXに沿った断面図である。
【0132】
マイクロミラー素子X5は、ミラー部510と、フレーム520と、一対の連結部530と、各々2つの駆動機構540,550とを備える。また、マイクロミラー素子X5は、マイクロミラー素子X1と同様に、MEMS技術などのバルクマイクロマシニング技術により、SOI基板である所定の積層構造を有する材料基板に対して加工を施すことによって製造されたものである。当該材料基板は、例えば、第1および第2シリコン層ならびに当該シリコン層間の絶縁層よりなる積層構造を有し、各シリコン層は、不純物のドープにより所定の導電性が付与されている。図の明確化の観点より、図36においては、第1シリコン層に由来して絶縁層より手前に位置する部位(後述のミラー面511は除く)について、斜線ハッチングを付して表す。
【0133】
ミラー部510は、主に第1シリコン層において成形された部位であり、その表面には、光反射機能を有するミラー面511を有する。ミラー面511は、第1シリコン層上に成膜されたCr層およびその上のAr層よりなる積層構造を有する。このようなミラー部510は、本発明における可動部を構成する。フレーム520は、主に第1シリコン層において成形された部位であり、ミラー部510を囲む形態を有する。
【0134】
一対の連結部530は、第1シリコン層において成形された部位であり、各々2本のトーションバー531よりなる。各トーションバー531は、ミラー部510およびフレーム520に接続してこれらを連結している。各連結部530の2本のトーションバー531の間隔は、フレーム520の側からミラー部510の側にかけて次第に広くなっている。このような一対の連結部530は、フレーム520に対するミラー部510の回転動作の回転軸心A5を規定する。フレーム520の側からミラー部510の側にかけて間隔が漸増する2本のトーションバー531よりなる連結部530は、ミラー部510の回転動作における不要な変位成分を防止するのに好適である。また、連結部530については、2本のトーションバー531を介して、フレーム520からミラー部510に対して2つ
の異なる電位を付与できるように構成することが可能である。
【0135】
2つの駆動機構540は、ミラー部510を介して対称的に配設されており、各々、櫛歯電極541および櫛歯電極545を有する。櫛歯電極541は、主に第1シリコン層に由来する部位であり、ミラー部510に固定された基部542および複数の電極歯543を有する。基部541は、ミラー部510から遠ざかるにつれて回転軸心A5に近接するように延びている。このような基部541から、実質的に同一の長さの複数の電極歯543が回転軸心A5に直交する方向に延びている。一方、櫛歯電極545は、主に第2シリコン層に由来する部位であり、フレーム520に固定されて内方に延出する基部546および複数の電極歯547を有する。基部546は、ミラー部510に近付くにつれて回転軸心A5から遠ざかるように延びている。このような基部546から、実質的に同一の長さの複数の電極歯547が回転軸心A5に直交する方向に延びている。櫛歯電極541および櫛歯電極545は、本素子の非回転駆動時には、図37(a)、図38(a)、および図39(a)に示すように、互いに異なる高さに位置する。また、櫛歯電極541,545は、互いに当接しないよう、それらの電極歯543,547が位置ずれした態様で配されている。
【0136】
2つの駆動機構550は、ミラー部510を介して対称的に配設されており、各々、櫛歯電極551および櫛歯電極555を有する。櫛歯電極551は、主に第1シリコン層に由来する部位であり、ミラー部510に固定された基部552および複数の電極歯553を有する。基部551は、ミラー部510から遠ざかるにつれて回転軸心A5に近接するように延びている。このような基部551から、実質的に同一の長さの複数の電極歯553が回転軸心A5に直交する方向に延びている。一方、櫛歯電極555は、主に第2シリコン層に由来する部位であり、フレーム520に固定されて内方に延出する基部556および複数の電極歯557を有する。基部556は、ミラー部510に近付くにつれて回転軸心A5から遠ざかるように延びている。このような基部556から、実質的に同一の長さの複数の電極歯557が回転軸心A5に直交する方向に延びている。櫛歯電極551および櫛歯電極555は、本素子の非回転駆動時には、図37(a)、図38(a)、および図40(a)に示すように、互いに異なる高さに位置する。また、櫛歯電極551,555は、互いに当接しないよう、それらの電極歯553,557が位置ずれした態様で配されている。
【0137】
マイクロミラー素子X5においては、櫛歯電極541,545,551,555の各々に対して必要に応じて所定の電位を付与することにより、ミラー部510を回転軸心A5まわりに回転動作させることができる。
【0138】
例えば、駆動機構540の櫛歯電極541,545に所定の電位を付与することにより櫛歯電極541,545間に所望の静電引力を発生させると、櫛歯電極541は櫛歯電極545に引きこまれ、両電極は例えば図37(b)、図38(b)、および図39(b)に示す配向をとる。これにより、ミラー部510は、フレーム520に対して回転軸心A5まわりに回転動作することとなる。当該回転動作における回転変位量は、付与電位を調整することにより、調節することができる。回転軸心A5まわりの逆側へのミラー部510の回転駆動については、駆動機構540に関して上述したのと同様に駆動機構550にて所望の静電引力を発生させることにより達成することができる。このようなミラー部510の2方向への回転駆動により、ミラー部510上に設けられたミラー面511により反射される光の反射方向を適宜切り換えることができる。
【0139】
マイクロミラー素子X5では、駆動機構540において最も近くに対置する電極歯543,547によるストローク、および、駆動機構550において最も近くに対置する電極歯553,557によるストロークは、電極歯並列方向にわたって連続的に変化する。具
体的には、最も近くに対置する電極歯543,547によるストローク、および、最も近くに対置する電極歯553,557によるストロークは、ミラー部510の側からフレーム520の側にかけて次第に増大する。したがって、マイクロミラー素子X5においては、駆動機構540,550における櫛歯電極541,545,551,555を過度に厚くせずとも、実効的な長ストロークを確保することが可能である。このようなマイクロミラー素子X5は、ミラー部510について、回転変位量の大きな回転動作を高い動作速度で実現するのに適している。
【0140】
加えて、マイクロミラー素子X5では、駆動機構540において最も近くに対置する電極歯543,547間に発生する回転トルク、および、駆動機構550において最も近くに対置する電極歯553,557間に発生する回転トルクは、電極歯並列方向にわたって連続的に変化する。具体的には、最も近くに対置する電極歯543,547間に発生する回転トルク、および、最も近くに対置する電極歯553,557間に発生する回転トルクは、フレーム520の側からミラー部510の側にかけて次第に増大する。したがって、マイクロミラー素子X5では、ミラー部510の比較的広い回転動作範囲において急激なトルク変動が生ずるのを回避することができる。
【0141】
図41および図42は、マイクロミラー素子X1,X3,X5の各駆動機構を構成する櫛歯電極の変形例を表す。図41(a)〜図41(d)は、各変形例における電極歯の縦断面を表し、図42(a)および図42(b)は、各々、変形例の部分平面図である。
【0142】
図41(a)に示す変形例では、固定櫛歯電極が電極歯71を有し、可動櫛歯電極が電極歯71’を有する。電極歯71および電極歯71’は、素子の非駆動時において、櫛歯電極の厚み方向において部分的に重なる。ここで固定櫛歯電極とは、例えば、マイクロミラー素子X1においては櫛歯電極165,175,185,195に相当し、マイクロミラー素子X3においては櫛歯電極345,355,365,375に相当し、マイクロミラー素子X5においては櫛歯電極545,555に相当するものとする。一方、可動櫛歯電極とは、マイクロミラー素子X1においては櫛歯電極161,171,181,191に相当し、マイクロミラー素子X3においては櫛歯電極341,351,361,371に相当し、マイクロミラー素子X5においては櫛歯電極541,551に相当するものとする。後述の他の変形例についても同様である。本変形例では、電極歯71は、導体部71a,71bとこれらの間の絶縁部71cとからなる積層構造を有する。電極歯71において、導体部71a,71bは電気的に接続しておく。このような構成においては、非回転駆動時において電極歯71と電極歯71’とが既に部分的な重なりを有するので、0°前後の微小な回転角度範囲での回転トルクの急激な変化を低減することができる。
【0143】
図41(b)に示す変形例では、可動櫛歯電極が電極歯72を有し、固定櫛歯電極が電極歯72’を有する。電極歯72および電極歯72’は、素子の非駆動時において、櫛歯電極の厚み方向において部分的に重なる。電極歯72は、導体部72a,72bとこれらの間の絶縁部72cとからなる積層構造を有する。電極歯72において、導体部72a,72bは電気的に接続しておく。このような構成においては、非回転駆動時において電極歯72と電極歯72’とが既に部分的な重なりを有するので、0°前後の微小な回転角度範囲での回転トルクの急激な変化を低減することができる。
【0144】
図41(c)に示す変形例では、固定櫛歯電極が電極歯73を有し、可動櫛歯電極が電極歯73’を有する。電極歯73および電極歯73’は、素子の非駆動時において、櫛歯電極の厚み方向において部分的に重なる。両電極歯73,73’は、各々、一様な導体部よりなる。このような構成においては、非回転駆動時において電極歯73と電極歯73’とが既に部分的な重なりを有するので、0°前後の微小な回転角度範囲での回転トルクの急激な変化を低減することができる。
【0145】
図41(d)に示す変形例では、固定櫛歯電極が電極歯74を有し、可動櫛歯電極が電極歯74’を有する。非回転駆動時に下位に位置する電極歯74は、下方から上方にかけて次第に太くなるよう設計されており、非回転駆動時に上位に位置する電極歯74’は、上方から下方にかけて次第に太くなるよう設計されている。このような構成によると、0°前後での微小な回転角度範囲での回転トルクの急激な変化を低減したり、大角度における回転トルクを低減することにより、櫛歯電極が抜けた後(ストロークを逸脱した後)の容量変動を低減することができる。また、本構成によると、各電極歯の曲げ強度を向上することもできる。
【0146】
図42(a)に示す変形例では、最外電極歯75が他の電極歯よりも厚く設定されている。一組の櫛歯電極よりなる駆動機構における最外電極歯には、電圧印加時に駆動機構内方に向かって大きな曲げ静電力が作用するが、本構成によると、当該静電力により最外電極歯75が不当に曲げられるのを防止することができる。
【0147】
図42(b)に示す変形例では、基部76から延出する各電極歯77について、自由端から基端にかけて次第に太くなるよう設計されている。このような構成によると、電極歯77の曲げ強度を適切に向上することができる。
【0148】
以上のまとめとして、本発明の構成およびそのバリエーションを以下に付記として列挙する。
【0149】
(付記1)可動主部と、
第1フレームおよび第2フレームと、
前記可動主部および前記第1フレームを連結し、且つ、当該第1フレームに対する当該可動主部の第1回転動作における第1回転軸心を規定する、第1連結部と、
前記第1フレームおよび前記第2フレームを連結し、且つ、当該第2フレームに対する当該第1フレームおよび前記可動主部の第2回転動作における第2回転軸心を規定する、第2連結部と、
前記第1回転動作の駆動力を発生させるための第1駆動機構と、
前記第2回転動作の駆動力を発生させるための第2駆動機構と、を備え、
前記第1回転軸心および前記第2回転軸心は直交していない、マイクロ揺動素子。
(付記2)可動部と、
フレームと、
前記可動部および前記フレームを連結し、且つ、当該フレームに対する当該可動部の回転動作における回転軸心を規定する、連結部と、
前記回転軸心から相対的に遠い箇所に前記回転動作の駆動力を発生させるための第1駆動機構と、
前記回転軸心に相対的に近い箇所に前記回転動作の駆動力を発生させるための第2駆動機構と、を備える、マイクロ揺動素子。
(付記3)前記第1駆動機構および/または前記第2駆動機構は、一組の櫛歯電極を含む、付記1または2に記載のマイクロ揺動素子。
(付記4)前記第1駆動機構および前記第2駆動機構は、共通の制御下で作動可能に構成されている、付記1から3のいずれか1つに記載のマイクロ揺動素子。
(付記5)前記第1駆動機構および前記第2駆動機構は、電気的に並列に接続されている、付記4に記載のマイクロ揺動素子。
(付記6)前記第1駆動機構および前記第2駆動機構は、電気的に分離され、相互に独立した制御下で作動可能に構成されている、付記1から3のいずれか1つに記載のマイクロ揺動素子。
(付記7)可動部と、
フレームと、
前記可動部および前記フレームを連結し、且つ、当該フレームに対する当該可動部の回転動作における回転軸心を規定する、連結部と、
前記回転軸心までの距離が連続的に変化する箇所にわたって前記回転動作の駆動力を発生させるための駆動機構と、を備える、マイクロ揺動素子。
(付記8)可動部と、
フレームと、
前記可動部および前記フレームを連結し、且つ、当該フレームに対する当該可動部の回転動作における回転軸心を規定する連結部と、
前記回転動作の駆動力を発生させるための第1櫛歯電極および第2櫛歯電極を含む駆動機構と、を備え、
前記第1櫛歯電極および/または前記第2櫛歯電極は、電気的に分離された第1導体部および第2導体部ならびに当該第1および第2導体部の間の絶縁部が前記回転動作の方向に積層された構造を有する電極歯を備える、マイクロ揺動素子。
(付記9)可動部と、
フレームと、
前記可動部および前記フレームを連結し、且つ、当該フレームに対する当該可動部の回転動作における回転軸心を規定する連結部と、
前記回転動作の駆動力を発生させるための第1櫛歯電極および第2櫛歯電極を含む駆動機構と、を備え、
前記第1櫛歯電極は、電気的に接続された第1導体部および第2導体部ならびに当該第1および第2導体部の間の絶縁部が前記回転動作の方向に積層された構造を有する電極歯を備え、
前記第2櫛歯電極は、非駆動時には前記第1導体部に対向し且つ前記第2導体部に対向しない第3導体部からなる電極歯を備える、マイクロ揺動素子。
(付記10)第1導体部および第3導体部は、回転動作方向における長さが異なる、付記9に記載のマイクロ揺動素子。
(付記11)一組の櫛歯電極の少なくとも一方は、基部と、当該基部から延出する電極歯とを有し、当該電極歯は、基部側の端部にかけて幅または厚さの漸増する部位を有する、付記3および8から10のいずれか1つに記載のマイクロ揺動素子。
(付記12)一組の櫛歯電極の少なくとも一方は、基部と、当該基部から延出する電極歯とを有し、当該電極歯は、他方の櫛歯電極に接近するにつれて幅が漸増する部位を有する、付記3および8から11のいずれか1つに記載のマイクロ揺動素子。
(付記13)第1連結部は、可動主部に近接するほど幅太な空隙部を有し、これと共に又はこれに代えて、第2連結部は、第1フレームに接近するほど幅太な空隙部を有する、付記1に記載のマイクロ揺動素子。
(付記14)連結部は、可動部に近接するほど幅太な空隙部を有する、付記2および7から10のいずれか1つに記載のマイクロ揺動素子。
(付記15)可動部と、フレームと、当該可動部およびフレームを連結して当該フレームに対する当該可動部の回転動作における回転軸心を規定する連結部と、回転動作の駆動力を発生させるための第1櫛歯電極および第2櫛歯電極と、を備え、
第1櫛歯電極は、回転動作の方向に並列する第1導体部および第2導体部を含む電極歯を有し、
第2櫛歯電極は、非駆動時には第1導体部に対向し且つ第2導体部に対向しない第3導体部を含む電極歯を有する、マイクロ揺動素子を駆動するための方法であって、
第2導体部および第3導体部の間に静電引力を発生させることにより、可動部を第1方向に回転動作させるための第1工程と、
第1工程の後に、第1導体部および第3導体部の間に静電引力を発生させることにより、可動部を第1方向とは反対の第2方向に回転動作させるための第2工程と、を含む、マイクロ揺動素子駆動方法。
(付記16)マイクロ揺動素子は、回転動作の駆動力を発生させるための第3櫛歯電極および第4櫛歯電極を更に備え、
第3櫛歯電極は、回転動作の方向に並列する第4導体部および第5導体部を含む電極歯を有し、
第4櫛歯電極は、非駆動時には第4導体部に対向し且つ第5導体部に対向しない第6導体部を含む電極歯を有し、
第2工程の後に、第5導体部および第6導体部の間に静電引力を発生させることにより、可動部を第2方向に回転動作させるための第3工程と、
第3工程の後に、第4導体部および第6導体部の間に静電引力を発生させることにより、可動部を第1方向に回転動作させるための第4工程と、を更に含む、付記15に記載のマイクロ揺動素子駆動方法。
(付記17)第2工程では、第4導体部および第6導体部の間に静電引力を発生させる、付記16に記載のマイクロ揺動素子駆動方法。
(付記18)第4工程では、第1導体部および第3導体部の間に静電引力を発生させる、付記16または17に記載のマイクロ揺動素子駆動方法。
(付記19)第1、第2、第3、および第4工程は、各々、回転動作における4分の1周期に相当する期間行なわれる、付記16から18のいずれか1つに記載のマイクロ揺動素子駆動方法。
(付記20)可動部と、フレームと、当該可動部およびフレームを連結して当該フレームに対する当該可動部の回転動作における回転軸心を規定する連結部と、回転動作の駆動力を発生させるための第1櫛歯電極および第2櫛歯電極と、当該第1および第2櫛歯電極よりも回転軸心に近い箇所にて回転動作の駆動力を発生させるための第3櫛歯電極および第4櫛歯電極と、を備えるマイクロ揺動素子を駆動するための方法であって、
第1櫛歯電極および第2櫛歯電極の間に静電引力を発生させるとともに第3櫛歯電極および第4櫛歯電極の間に静電引力を発生させることにより、可動部を第1方向に回転動作させるための第1工程と、
第3櫛歯電極および第4櫛歯電極の間に、第1工程から引き続き静電引力を発生させることにより、可動部を第1方向に回転動作させるための第2工程と、を含むマイクロ揺動素子駆動方法。
(付記21)第2工程の後に、第1櫛歯電極および第2櫛歯電極の間に静電引力を発生させることにより、可動部を第1方向とは反対の第2方向に回転動作させるための第3工程を更に含む、付記20に記載のマイクロ揺動素子駆動方法。
(付記22)第1工程および第3工程は、併せて、回転動作における4分の1周期に相当する期間行なわれる、付記21に記載のマイクロ揺動素子駆動方法。
(付記23)マイクロ揺動素子は、回転動作の駆動力を発生させるための第5櫛歯電極および第6櫛歯電極と、当該第5および第6櫛歯電極よりも回転軸心に近い箇所にて回転動作の駆動力を発生させるための第7櫛歯電極および第8櫛歯電極と、を更に備え、
第3工程の後に、第5櫛歯電極および第6櫛歯電極の間に静電引力を発生させるとともに第7櫛歯電極および第8櫛歯電極の間に静電引力を発生させることにより、可動部を第2方向に回転動作させるための第4工程と、
第7櫛歯電極および第8櫛歯電極の間に、第4工程から引き続き静電引力を発生させることにより、可動部を第2方向に回転動作させるための第5工程と、を更に含む、付記20から22のいずれか1つに記載のマイクロ揺動素子駆動方法。
(付記24)第5工程の後に、第5櫛歯電極および第6櫛歯電極の間に静電引力を発生させることにより、可動部を第1方向に回転動作させるための第6工程を更に含む、付記23に記載のマイクロ揺動素子駆動方法。
(付記25)第5工程および第6工程は、併せて、回転動作における4分の1周期に相当する期間行なわれる、付記24に記載のマイクロ揺動素子駆動方法。
(付記26)可動部と、フレームと、当該可動部およびフレームを連結して当該フレームに対する当該可動部の回転動作における回転軸心を規定する連結部と、回転動作の駆動力
を発生させるための第1櫛歯電極および第2櫛歯電極と、当該第1および第2櫛歯電極よりも回転軸心に近い箇所にて回転動作の駆動力を発生させるための第3櫛歯電極および第4櫛歯電極と、を備え、
第1櫛歯電極は、回転動作の方向に並列する第1導体部および第2導体部を含む電極歯を有し、
第2櫛歯電極は、非駆動時には第1導体部に対向し且つ第2導体部に対向しない第3導体部を含む電極歯を有し、
第3櫛歯電極は、回転動作の方向に並列する第4導体部および第5導体部を含む電極歯を有し、
第4櫛歯電極は、非駆動時には第4導体部に対向し且つ第5導体部に対向しない第6導体部を含む電極歯を有する、マイクロ揺動素子を駆動するための方法であって、
第2導体部および第3導体部の間に静電引力を発生させるとともに第5導体部および第6導体部の間に静電引力を発生させることにより、可動部を第1方向に回転動作させるための第1工程と、
第5導体部および第6導体部の間に、第1工程から引き続き静電引力を発生させることにより、可動部を第1方向に回転動作させるための第2工程と、を含む、マイクロ揺動素子駆動方法。
(付記27)第2工程の後に、第1導体部および第3導体部の間、第2導体部および第3導体部の間、並びに、第4導体部および第6導体部の間に静電引力を発生させることにより、可動部を第1方向とは反対の第2方向に回転動作させるための第3工程と、
第1導体部および第3導体部、並びに、第4導体部および第6導体部の間に、第3工程から引き続き静電引力を発生させることにより、可動部を第2方向に回転動作させるための第4工程と、を更に含む、付記26に記載のマイクロ揺動素子駆動方法。
(付記28)マイクロ揺動素子は、回転動作の駆動力を発生させるための第5櫛歯電極および第6櫛歯電極と、当該第5および第6櫛歯電極よりも回転軸心に近い箇所にて回転動作の駆動力を発生させるための第7櫛歯電極および第8櫛歯電極と、
第5櫛歯電極は、回転動作の方向に並列する第7導体部および第8導体部を含む電極歯を有し、
第6櫛歯電極は、非駆動時には第7導体部に対向し且つ第8導体部に対向しない第9導体部を含む電極歯を有し、
第7櫛歯電極は、回転動作の方向に並列する第10導体部および第11導体部を含む電極歯を有し、
第8櫛歯電極は、非駆動時には第10導体部に対向し且つ第11導体部に対向しない第12導体部を含む電極歯を有し、
第4工程の後に、第8導体部および第9導体部の間に静電引力を発生させるとともに第11導体部および第12導体部の間に静電引力を発生させることにより、可動部を第2方向に回転動作させるための第5工程と、
第11導体部および第12導体部の間に、第5工程から引き続き静電引力を発生させることにより、可動部を第2方向に回転動作させるための第6工程と、
第6工程の後に、第7導体部および第9導体部の間、第8導体部および第9導体部の間、並びに、第10導体部および第12導体部の間に静電引力を発生させることにより、可動部を第1方向に回転動作させるための第7工程と、
第7導体部および第9導体部、並びに、第10導体部および第12導体部の間に、第7工程から引き続き静電引力を発生させることにより、可動部を第1方向に回転動作させるための第8工程と、を更に含む、付記27に記載のマイクロ揺動素子駆動方法。
(付記29)第3工程および第4工程では、第7導体部および第9導体部の間、並びに、第10導体部および第12導体部の間に静電引力を発生させる、付記28に記載のマイクロ揺動素子駆動方法。
(付記30)第7工程および第8工程では、第1導体部および第3導体部の間、並びに、第4導体部および第6導体部の間に静電引力を発生させる、付記28または29に記載の
マイクロ揺動素子駆動方法。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るマイクロミラー素子の平面図である。
【図2】図1の線II−IIに沿った断面図である。
【図3】図1の線III−IIIに沿った断面図である。
【図4】図1の線IV−IVに沿った断面図である。
【図5】図1の線V−Vに沿った断面図である。
【図6】図1の線VI−VIに沿った断面図である。
【図7】図1の線VII−VIIに沿った断面図である。
【図8】図1のマイクロミラー素子の駆動態様の一例を表す。
【図9】本発明の第2の実施形態に係るマイクロミラー素子の平面図である。
【図10】図9の線X−Xに沿った断面図である。
【図11】図9の線XI−XIに沿った断面図である。
【図12】図9の線XII−XIIに沿った断面図である。
【図13】図9の線XIII−XIIIに沿った断面図である。
【図14】図9の線XIV−XIVに沿った断面図である。
【図15】図9の線XV−XVに沿った断面図である。
【図16】図9のマイクロミラー素子の駆動態様の一例を表す。
【図17】本発明の第3の実施形態に係るマイクロミラー素子の平面図である。
【図18】図17の線XVIII−XVIIIに沿った断面図である。
【図19】図17のマイクロミラー素子の駆動時における線XVIII−XVIIIに沿った断面図である。
【図20】図17のマイクロミラー素子の駆動時における線XVIII−XVIIIに沿った他の断面図である。
【図21】図17の線XXI−XXIに沿った断面図である。
【図22】図17の線XXII−XXIIに沿った断面図である。
【図23】図17の線XXIII−XXIIIに沿った断面図である。
【図24】図17の線XXIV−XXIVに沿った断面図である。
【図25】図17のマイクロミラー素子の駆動態様の一例を表す。
【図26】図17のマイクロミラー素子の駆動態様の他の例を表す。
【図27】本発明の第4の実施形態に係るマイクロミラー素子の平面図である。
【図28】図27の線XXVIII−XVIIIに沿った断面図である。
【図29】図27のマイクロミラー素子の駆動時における線XXVIII−XXVIIIに沿った断面図である。
【図30】図27のマイクロミラー素子の駆動時における線XXVIII−XXVIIIに沿った他の断面図である。
【図31】図27の線XXXI−XXXIに沿った断面図である。
【図32】図27の線XXXII−XXXIIに沿った断面図である。
【図33】図27の線XXXIII−XXXIIIに沿った断面図である。
【図34】図27の線XXXIV−XXXIVに沿った断面図である。
【図35】図27のマイクロミラー素子の駆動態様の一例を表す。
【図36】本発明の第5の実施形態に係るマイクロミラー素子の平面図である。
【図37】図36の線XXXVII−XXXVIIに沿った断面図である。
【図38】図36の線XXXVIII−XXXVIIIに沿った断面図である。
【図39】図36の線XXXIX−XXXIXに沿った断面図である。
【図40】図36の線XXXX−XXXXに沿った断面図である。
【図41】櫛歯電極の変形例を表す。
【図42】櫛歯電極の他の変形例を表す。
【図43】従来のマイクロミラー素子の分解斜視図である。
【図44】組み立てられた状態における図43のマイクロミラー素子の線XXXXIV−XXXXIVに沿った断面図である。
【図45】従来の他のマイクロミラー素子の一部省略斜視図である。
【図46】一組の櫛歯電極の配向を表す。
【図47】図45に示すマイクロミラー素子の製造方法における一部の工程を表す。
【符号の説明】
【0151】
X1,X2,X3,X4,X5,X8,X9 マイクロミラー素子
110,310,510 ミラー部
120 内フレーム
130 外フレーム
320,520 フレーム
140,150,330,530 連結部
160,170,180,190, 駆動機構
161,165,171,175,181,185,191,195 櫛歯電極
260,270,280,290, 駆動機構
261,265,271,275,281,285,291,295 櫛歯電極
340,350,360,370, 駆動機構
341,345,351,355,361,365,371,375 櫛歯電極
540,550 駆動機構
541,545,551,555 櫛歯電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部と、
フレームと、
前記可動部および前記フレームを連結し、且つ、当該フレームに対する当該可動部の回転動作における回転軸心を規定する、連結部と、
前記回転軸心から相対的に遠い箇所に前記回転動作の駆動力を発生させるための第1駆動機構と、
前記回転軸心に相対的に近い箇所に前記回転動作の駆動力を発生させるための第2駆動機構と、を備える、マイクロ揺動素子。
【請求項2】
可動部と、
フレームと、
前記可動部および前記フレームを連結し、且つ、当該フレームに対する当該可動部の回転動作における回転軸心を規定する、連結部と、
前記回転軸心までの距離が連続的に変化する箇所にわたって前記回転動作の駆動力を発生させるための駆動機構と、を備える、マイクロ揺動素子。
【請求項3】
可動部と、
フレームと、
前記可動部および前記フレームを連結し、且つ、当該フレームに対する当該可動部の回転動作における回転軸心を規定する連結部と、
前記回転動作の駆動力を発生させるための第1櫛歯電極および第2櫛歯電極を含む駆動機構と、を備え、
前記第1櫛歯電極および/または前記第2櫛歯電極は、電気的に分離され且つ前記回転動作の方向に並列する第1導体部および第2導体部を含む電極歯を有する、マイクロ揺動素子。
【請求項4】
可動部と、
フレームと、
前記可動部および前記フレームを連結し、且つ、当該フレームに対する当該可動部の回転動作における回転軸心を規定する連結部と、
前記回転動作の駆動力を発生させるための第1櫛歯電極および第2櫛歯電極を含む駆動機構と、を備え、
前記第1櫛歯電極は、電気的に接続され且つ前記回転動作の方向に並列する第1導体部および第2導体部を含む電極歯を有し、
前記第2櫛歯電極は、非駆動時には前記第1導体部に対向し且つ前記第2導体部に対向しない第3導体部を含む電極歯を有する、マイクロ揺動素子。
【請求項5】
可動部と、フレームと、当該可動部およびフレームを連結して当該フレームに対する当該可動部の回転動作における回転軸心を規定する連結部と、前記回転動作の駆動力を発生させるための第1櫛歯電極および第2櫛歯電極と、を備え、
前記第1櫛歯電極は、前記回転動作の方向に並列する第1導体部および第2導体部を含む電極歯を有し、
前記第2櫛歯電極は、非駆動時には前記第1導体部に対向し且つ前記第2導体部に対向しない第3導体部を含む電極歯を有する、マイクロ揺動素子を駆動するための方法であって、
前記第2導体部および前記第3導体部の間に静電引力を発生させることにより、前記可動部を第1方向に回転動作させるための第1工程と、
前記第1工程の後に、前記第1導体部および前記第3導体部の間に静電引力を発生させることにより、前記可動部を前記第1方向とは反対の第2方向に回転動作させるための第2工程と、を含む、マイクロ揺動素子駆動方法。
【請求項6】
前記マイクロ揺動素子は、前記回転動作の駆動力を発生させるための第3櫛歯電極および第4櫛歯電極を更に備え、
前記第3櫛歯電極は、前記回転動作の方向に並列する第4導体部および第5導体部を含む電極歯を有し、
前記第4櫛歯電極は、非駆動時には前記第4導体部に対向し且つ前記第5導体部に対向しない第6導体部を含む電極歯を有し、
前記第2工程の後に、前記第5導体部および前記第6導体部の間に静電引力を発生させることにより、前記可動部を前記第2方向に回転動作させるための第3工程と、
前記第3工程の後に、前記第4導体部および前記第6導体部の間に静電引力を発生させることにより、前記可動部を前記第1方向に回転動作させるための第4工程と、を更に含む、請求項5に記載のマイクロ揺動素子駆動方法。
【請求項7】
可動部と、フレームと、当該可動部およびフレームを連結して当該フレームに対する当該可動部の回転動作における回転軸心を規定する連結部と、前記回転動作の駆動力を発生させるための第1櫛歯電極および第2櫛歯電極と、当該第1および第2櫛歯電極よりも前記回転軸心に近い箇所にて前記回転動作の駆動力を発生させるための第3櫛歯電極および第4櫛歯電極と、を備えるマイクロ揺動素子を駆動するための方法であって、
前記第1櫛歯電極および第2櫛歯電極の間に静電引力を発生させるとともに前記第3櫛歯電極および前記第4櫛歯電極の間に静電引力を発生させることにより、前記可動部を第1方向に回転動作させるための第1工程と、
前記第3櫛歯電極および前記第4櫛歯電極の間に、前記第1工程から引き続き静電引力を発生させることにより、前記可動部を前記第1方向に回転動作させるための第2工程と、を含むマイクロ揺動素子駆動方法。
【請求項8】
前記第2工程の後に、前記第1櫛歯電極および前記第2櫛歯電極の間に静電引力を発生させることにより、前記可動部を前記第1方向とは反対の第2方向に回転動作させるための第3工程を更に含む、請求項7に記載のマイクロ揺動素子駆動方法。
【請求項9】
可動部と、フレームと、当該可動部およびフレームを連結して当該フレームに対する当該可動部の回転動作における回転軸心を規定する連結部と、前記回転動作の駆動力を発生させるための第1櫛歯電極および第2櫛歯電極と、当該第1および第2櫛歯電極よりも前記回転軸心に近い箇所にて前記回転動作の駆動力を発生させるための第3櫛歯電極および第4櫛歯電極と、を備え、
前記第1櫛歯電極は、前記回転動作の方向に並列する第1導体部および第2導体部を含む電極歯を有し、
前記第2櫛歯電極は、非駆動時には前記第1導体部に対向し且つ前記第2導体部に対向
しない第3導体部を含む電極歯を有し、
前記第3櫛歯電極は、前記回転動作の方向に並列する第4導体部および第5導体部を含む電極歯を有し、
前記第4櫛歯電極は、非駆動時には前記第4導体部に対向し且つ前記第5導体部に対向しない第6導体部を含む電極歯を有する、マイクロ揺動素子を駆動するための方法であって、
前記第2導体部および前記第3導体部の間に静電引力を発生させるとともに前記第5導体部および前記第6導体部の間に静電引力を発生させることにより、前記可動部を第1方向に回転動作させるための第1工程と、
前記第5導体部および前記第6導体部の間に、前記第1工程から引き続き静電引力を発生させることにより、前記可動部を前記第1方向に回転動作させるための第2工程と、を含む、マイクロ揺動素子駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【公開番号】特開2008−262213(P2008−262213A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130692(P2008−130692)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【分割の表示】特願2004−1440(P2004−1440)の分割
【原出願日】平成16年1月6日(2004.1.6)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】