説明

マイケルソン干渉計におけるフリンジのコントラストを測定するための装置及び方法並びに同装置を有する検眼システム

【課題】異なった位相状態におけるインターフェログラムの同時確保を可能にし、潜在的に不安定であってもインターフェログラムの振幅と位相の測定をすることができる、マイケルソン干渉計におけるフリンジのコントラストを測定する装置を提供することを課題とする。
【解決手段】全視域でマイケルソン干渉計におけるフリンジのコントラストを測定するための装置であって、二つの垂直入射偏光を二つの異なった出現方向へ偏向させるための偏向手段を有し、この偏向手段を単一の偏光子の代わりとして前記干渉計中に配置した。また、OCTトモグラフィシステムにおいて用いられるマイケルソン干渉計に適用される装置であって、変調技術又は同期検出方法を用いることなく干渉コントラストを得るための手段を有している。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全視域モード(full−field mode)で作動するマイケルソン干渉計におけるフリンジのコントラストを測定する装置に関するものである。また、本発明は、そのような装置を有する検眼システム及び同装置において実施される方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
全視域マイケルソン干渉計は、とりわけ、サンプルによって反射される光と参照アームから出る光との間で生ずる干渉からサンプルの表面分布と反射率を抽出することを可能にする従来のマイケルソンセットアップから派生した干渉技術である。全視域マイケルソン干渉計を時間的に低コヒーレンスである光源と共に用いる場合には、この技術は、透明で放散能力が弱い媒体においてトモグラフィック能力を有している。これは、全視域光学コヒーレンストモグラフィ(OCT)と呼ばれている。図1は、従来の典型的な全視域干渉法によるOCTトモグラフィシステムの構造を示した図である。
【0003】
可能な限り複屈折である一方で、サンプルから反射する光を最大量集光する要請のある媒体の研究のために、全視域OCTが偏向された偏光中で頻繁に用いられている。この場合に、マイケルソン干渉計の二つのアームが垂直な偏光で作動する。干渉は、45°検光子を用いて共通軸上への投射された後にのみ出力アーム上に生ずる。
【0004】
低振幅の干渉を検出するために今まで必要であった干渉変調は、参照アームの可動ミラーを移動させることにより、または、干渉計の出力アーム上の偏光の一つの光路を、例えば、45°検光子の前に配置された光弾性変調器を用いて変調させることにより行われている。通常の信号/ノイズ条件の比率下でのインターフェログラム振幅測定は、同期検出技術と組み合わされた干渉光路の差を変調させるための技術を考慮する必要性に屡々至らしめる。
【0005】
得られるインターフェログラム(interferogram)の位相状態は、パラシチック反射のために、または、用いられたラジエーションのコヒーレンス長よりも大きなパスディファレンス(path difference)を持った反射のために、出力信号のインコーヒレントコンビネーションから生ずる測定された信号の可能な限り可変な連続成分を取り除くことができるように時間的に変調される。
【0006】
全システムの機械的安定性、即ち、干渉安定性が、高い変調周波数を強いる場合には、検出ネットワーク、殆どの場合には、全視域におけるCCDセンサが、適切に作動することができないという事態が起こる。一般に、これは、変調/検出周波数を制限し、それ故フリンジを観察するというシステムの能力を制限すする要因となる。
【0007】
マイケルソン干渉計の分析の最中に、インターフェログラムの振幅及び位相を不明瞭な点がなく抽出するためには、異なった位相状態での少なくとも三回のインターフェログラム測定が必要である。実践的な理由のため、殆どの場合に、波長の四分の一だけ分離されたシーケンスディファレンシズ(sequence differences)のための四回の独自の測定が採られている。それ故、干渉のシステムが安定していると看做すことができる特性時に四回の測定は実施されなければならない。この要件は、同期検出の実施をより困難にさせてしまう。
【0008】
インターフェログラムの時間的安定性が不完全な場合、又は、検出シーケンスによって所望の周波数を達成することができない場合には、測定は難しく、又は、現実に不可能である。
【0009】
マイケルソン干渉計からの出力に、入射偏光方向の45度偏光子が普通に用いられ、その方向は、干渉計の二つのアームからの視域が投射される方向である。そして、干渉は、明確になる。この投射中に、入ってくるエネルギーの半分が失われ、干渉計の性能を低下させてしまう。
【0010】
本発明の目的は、異なった位相状態におけるインターフェログラムの同時確保を可能にし、潜在的に不安定であってもインターフェログラムの振幅と位相の測定をすることができる、マイケルソン干渉計におけるフリンジのコントラストを測定する装置を提供することにより、上述の欠点を除去することにある。本発明は、偏光された光中での全視域インターフェログラムに適用される。
【0011】
この目的は、二つの垂直な入射偏光を二つの異なった出現方向へ偏向させるための手段を有するコントラスト測定装置によって達成され、この偏向手段は、単一の偏光子の代わりとして、干渉計内に配置される。
【0012】
失われた光は、偏光子の方向に対して垂直な方向への視野の投影である。然し、この方向上で、干渉を観察することもできる。単一の偏光子をウォラストンプリズムによって取り替えることにより、二つの出力を、同時に用いられる二つの垂直偏光子の出力として用いることを可能にする。こうして、入射する光の全てが用いられる。
【0013】
偏向手段はウォラストンプリズムの形態で提供するのが有益であり、その軸は、アームの偏光に対して45度で配向されている。このプリズムは、直線状に偏光されるラジエーションを角分離させるために普通に用いられる市販の装置である。分離の角度は、ウォラストンプリズムの特性であり、広い範囲から選択することができる。
【0014】
こうして、全視域マイケルソン干渉計の出力にウォラストンプリズムを設置すると、異なった位相状態で複数の同時インターフェログラムを作ることが可能になる。それは、特に簡単で耐久性のある干渉計から出るラジエーションから振幅及び位相データを抽出する。本発明による装置は、干渉スケールで機械的に不安定なサンプルについての全視域OCTによるトモグラフィの場合に特にうまく適用される。
【0015】
マイケルソン干渉計をOCTトモグラフィシステム中に設けた場合には、データの干渉コントラストの抽出が実施され、同期検出法に関連する変調技術を用いてこのコントラストの非常に低い値が得られる。λ/2又はλ/4だけ適切に相違しているパスディファレンスについて場合に応じて得られる二つ〜四つの測定値がこうして測定される。これらの測定値は、同じ変調原理によって異なったデータに関して得られる。これらの測定値のコヒーレンスを確実にすることは、(所望の変調を含まない)一定のパスディフレンスの不変性を確実にする能力を付与する。λ=780nmで、例えば、λ/4内にパスディファレンスを確実にするための100Hzのサンプリング周波数については、V=100λ/4=2μm/secより小さいパスディファレンスの変化量を課することによって表現される。そのような拘束は、生体内の如何なる測定をも殆ど不可能にさせる。
【0016】
本発明の第二の目的は、パスディファレンスの可変性に係るこの問題を解消することにある。この目的は、ウォラストンプリズムを用いることにより達成することができ、それにより、厳密に同時に存し且つ位相対立にある少なくとも二つの測定値を得ることを可能にさせる。実際に、第一のプロジェクションが次の量に帰着すると(但し、φは二つのチャネルの間の移相である)、

第二のプロジェクションは次の量に帰着する。

それは次のように表現することもできる。

【0017】
従って、λ/2だけ分離された二つのパスディファレンスを持った干渉システムの二つの実施例を同時に得られる。
【0018】
マイケルソン干渉計において遭遇する別の問題は、変調による四つの測定値の有効性に関する。実際に、四つの測定値を得ることは、パスディファレンスの可変性の理由で、変調により二つの測定値を得ることよりも、更に問題がある。
【0019】
四つの測定値の有効性の問題は、単一の非偏光分離プレートを用いることによりビームを二つの部分に分離させることにより解消される。発生された二つのビームの一方においては、干渉計の二つのアームからの偏光の間にλ/4の付加的な遅延が課せられる。四分の一波長板がこの遅延を課することができる。こうして処理された二つのビームは、ウォラストンプリズムを出発する時に次のような強度を持った四つのビームとなるように、小さな角度を持って一緒にウォラストンプリズムに再導入される。

【0020】
そのインターフェログラムは、一貫していなければならない。即ち、(0,n/2,n,3n/2)が課せられる移相は、視野内で一定していなければならない。
【0021】
この目的のため、ウォラストンプリズムは、瞳孔平面内に用いられる。こうして、視野の全てのポイントでプリズムの同じ部分が見られ、視野における一定の移相の固定状態を保証する。
【0022】
上記した数式(IV)は、偏光の方向の角度が厳密に45度に等しい場合にのみ有効であることが銘記されるべきである。この目的を達成するために、ウォラストンプリズムの前に二分の一波長板を配置する。この二分の一波長板は、ウォラストンプリズム自体の軸に対する四つの入射ビームの偏光を、任意であるが一緒に配向させることができる。こうして、ウォラストンプリズムは、入射偏光をディテクターに対して正確に整合させるという前提なしに、例えば、ディテクターのラインに平行な分離の方向に従って、ディテクターに対して正確に整合させられる。二分の一波長板は、ウォラストンプリズムのセットアップアップストリームとセットアップダウンストリームとの間でインターフェース任務を実施する。
【0023】
所望の変調周波数は、一般にかなり高く、それは、相当に短い暴露(exposure)と読み取り時間を課する。イメージレートと暴露時間のこの問題は、ディテクターの速度の必要性を除去する測定の同時性によって解消される。適切な場合には、ディテクターの統合なしに、照明を、例えば、フラッシュで手短に行うこと、又は、その読み取りを手短に又は瞬時に行うことにより、暴露を手短に行うことを可能にさせる。
【0024】
本発明の別の側面に依れば、生体内トモグラフィによる検眼システムが得られる。このシステムは、
全視域OCTセットアップをプロデュースするマイケルソン干渉計と、
前記干渉計と検査される眼との間に配置されて、眼からの波面と眼に達する波面の補正をプロデュースする適応光学系と、
前記干渉計のダウンストリームに配置されて、同期変調又は検出を行うことなく、OCT原理に従って干渉測定を実施することを可能にする検出手段と、
全視域マイケルソン干渉計におけるフリンジのコントラストを測定するための装置を有し、
前記測定装置が、二つの垂直入射偏光を二つの異なった出現方向へ偏向させるための手段を有している。
【0025】
本発明によるこの検査システムは、照準装置を含んでいてもよく、その照準装置は、プログラム可能な形状と軌道を有する少なくとも一つの移動ターゲットを有し、この少なくとも一つのターゲットは、適切なスクリーン上に表示され、検査中に両眼によって見ることができる。
【0026】
本発明の他の利点及び特徴については、限定的ではない実施例の詳細な説明及び添付図面を参照することにより明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
先ず、本発明による装置において用いられる二位相の測定の原理について図2を用いて説明する。
(又はa)を、マイケルソン干渉計の参照(又は、測定)アームから生ずる電界の振幅とした場合に、ウォラストンプリズムの軸の一つ上のプロジェクションは次の振幅を有する。

他方、ウォラストンプリズムの他方の軸上のプロジェクションは次の振幅を有する。

【0028】
二つのプロジェクションは、ウォラストンプリズムの特性角によって角分離される。チャンバーの対物レンズによって焦点合わせされて、それらは、視野の二つの並列した干渉イメージを生じさせ、そこにおいて、エネルギーは次のように表現される。

即ち、

と、

尚、φは、二つのラジエーションa,aの間の移相である。
【0029】
第二の等式は、次のように書くことができる。

【0030】
こうして、位相対立にあるインターフェログラムの二つの状態に相当する二つのイメージが同時に確保される。干渉情報のフリージング(freezing)を確実にするべく、暴露(サンプルの照射)の持続期間は、検出制限内で任意に短くすることができる。それにも拘わらず、二つの測定の同時性、即ち、nの移相は問題にならない。この移相は作図によって数学的に得ることができ、総合的にアクロマチックであることが銘記されるべきである。
【0031】
実際は、量aは、パスディファレンスがあまり小さくない場合にaに干渉しない振幅a20のラジエーションと、それ自身が干渉しない用いられる光源のコヒーレンス長よりも小さいパスディファレンスで反射する振幅a2*のラジエーションとの重ね合わせとして看做さなければならない。従って、次の通りとなる。

【0032】
実際に変調される量は、IhとIvとの差から得られる。

【0033】
これは、同期検出によって得られるが、φとφ+nで、半分の調査時間が各測定に向けられなければならないような、測定の時間的二分法(temporal dichotomy)のコストで得られる量と同じ量である。
【0034】
同時性に加えて、この方法は、45°で起こりうる二つのプロジェクションが処理されるという事実においてその起源を有する測光利点を提供する。全ての役に立つエネルギーが用いられる。然し、量Imは、aを既知量と看做すことにより、aをφから分離させない。振幅と位相のコサインとの間には依然として曖昧さがある。
【0035】
図4に示された、本発明による装置の第二の構成においては、測定は、四つの位相に従って実施される。半反射板を用いると、エネルギーの50%がウォラストンプリズムの前でサンプルされる。依然として垂直に偏光される二つのアームからのラジエーションが見られる偏向されたビーム上に、四分の一波長板が設けられ、そこにおいては、軸が二つの入射偏光と整合する。従って、二つのアーム間にn/2の付加的な移相が課せられる。
【0036】
それは、そのビームを同じウォラストンプリズムに注入するのに十分であるが、出力で角分離される四つのビームを得るために、ウォラストンプリズムの特性角と等しく選択することのできる、偏向されないビームに対する小さな角度を持っている。実践的な理由のために、全ての偏光の配向を実施する機能を有する二分の一波長板を組立体の前に配置してもよい。
【0037】
四つのビームにおける視野の振幅は、次の通りである。

尚、a[n/2]は、n/2だけ位相がシフトされたラジエーションaの振幅を表わしている。
【0038】
四つの測定された強度は、これら四つの振幅に相当する。

又は、再び、

【0039】
今度は、インターフェログラムの四つの異なった位相状態に相当する、視野の四つの同時干渉イメージが実際に存在し、それから、一般的な方法で二つの量が得られる。

それは、二乗の総和によって位相を除去することを可能にする。

この場合に、IとI2*は、マイケルソン干渉計の参照アームの長さによって選択された深部において、参照アームとサンプルとによってリターンされる強さである。ImとImの割合から、tg(φ)をI2*とは無関係に得ることができる。
【0040】
ウォラストンプリズムを用いることが、異なった位相状態でのインターフェログラムの同時測定を可能にする場合には、これら測定は、それにも拘わらず、ディテクタ又は異なったCCDセンサからのピクセルで行われる。従って、差分Im,Imの算出、即ち、それらの二乗の総和における偏りを取り除くために、各ピクセルの個々の感度と偏りについての注意深い較正を行わなければならない。
【0041】
茲で、干渉コントラスト測定装置を組み込んだ、本発明による生体内トモグラフィシステムの一実施例について、図5を参照して説明する。このシステムは、マイケルソンタイプの全視域干渉計を有し、この干渉計は、眼を照らしてその反射光を集光するために設けられた測定アームと、網膜組織の深部を診査することの可能な移動ミラーを照らすために設けられた参照アームとを有している。
【0042】
干渉計は、二つのアームにおいて直線且つ垂直に偏光された光と共に用いられる。光源Sは、短い時間的コヒーレンス長(例えば、12μm)を持ったダイオードで、そのスペクトルは、780nmに集中させられる。それは、原理的には、媒質の屈折率によって分割されるコヒーレンス長の半分に等しい軸解像度を生体内トモグラフィに付与する。
【0043】
光源Sは、パルスが発生させられたものであってもよい。この場合には、それは、イメージのショットと適応修正とに同期させられる。ビームは、眼の視野内の1度に相当する視野絞り(網膜上の300μm)と、見開いた眼の7mmの開きに相当する瞳孔絞りとによって限定される。
【0044】
入力偏光子Pは、干渉計の二つのアームに注入されるフラックスを最適にバランスさせる。
【0045】
二つのアームは、ガウス(Gauss)と呼ばれる、アフォーカル構造を有していて、一方で、瞳孔の結合を可能にすると共に、他方で、絞りが角膜反射の大部分を阻止する視野の中間像の具体化を可能にする。四分の一波長板は、眼によって戻される唯一の光の偏光回転と移動ミラーとによって、本発明による生体内トモグラフィシステムにおけるパラシチック反射の効果的な濾光を可能にする。
【0046】
瞳孔の同じ結合と視野の同じ結合で二つのアームにおける光路の同等性を維持させるために、参照アームは、測定アームと類似しているが、静的光学素子を持っている。
【0047】
茲で、本発明による生体内トモグラフィシステムの検出路について説明する。出力アーム上の二つのビームは、依然として垂直に偏光され、そのビームが共通の方向へ投射された場合にのみ、それらビームは干渉する。ウォラストン ダブリュ プリズムは、二つの垂直な解析方向へ二つの射出光を同時に投射する機能を有している。その光の強度の同時測定は、対立する二つの干渉状態での干渉後に、単一の二次元ディテクター上で、同時変調又は同時検出することなく、行うことができる。四分の一波長板を付け加えることにより、ビームの分割後に、二つの追加の測定値を確保することができ、こうして、フリンジの振幅と位相の間の何らかの不明確性を取り除くことができる。検出路に対する入力側における二分の一波長板は、入射する偏光を適切に配向させることができる。
【0048】
ウォラストンプリズムは、瞳孔平面内に置かれ、それ故、マイケルソン干渉計のセパレータキューブと共役される。ウォラストンプリズムのセパレーション角度は、観察される視野の関数として選択される。最終対物レンズの焦点距離が、四つのイメージのサンプリング間隔を決定する。
【0049】
ディテクターは、毎秒、30画像以上の画像レートを持ったCCD型のディテクターである。このディテクターは、四つの測定値の抽出,フリンジの振幅の校正及び計算等の画像のディジタル処理が実施される専用コンピュータ(図示せず)と連係する。
【0050】
波面の適応補正は、干渉計のアップストリーム、即ち、測定アームにおいて実施される。光源Sの各ポイントは、収差の補正されたそれの像を網膜上に映し出し、リターンイメージも補正される。こうして、フリンジの振幅は最大になる。
【0051】
適応光学系サブアセンブリは、可変形状ミラーMDを含んでいる。波面の測定は、可変形状ミラーMDを介して網膜上に像が映し出される輝点のリターンビームに関してシャックハルトマン型の検光子SHによって実施される。解析波長は、820nmである。照明は連続して、時間的インコーヒレントスーパールミネッセンスダイオードSLDによって実施される。検光子のディメンショニング(dimensioning)は、測光感度と波面サンプリングの間の最適化に相当する。可変形状ミラーMDの制御リフレッシュメント周波数は、150Hzに達する。専用コンピュータ(図示せず)は、適応光学ループを管理する。然しながら、その制御は、干渉計の測定中にミラーの形状を固定させるために、同期させられる。
【0052】
レンズLA2を用いた、解析光路の焦点合わせに関する適切な検査によって、焦点合わせ距離を干渉計によって選択された層に適合させることができる。この構成は、最適なコントラストを或る濃さに維持させるために欠くことができない。
【0053】
可変形状ミラーMDは、システムの瞳及び眼の瞳孔と共役される。システムの視域は、システム入力視野絞りDCMによって限定される。それは、1度の値、即ち、眼のアイソプラネティズム(isoplanetism)視野の値よりも少ない値となるように選択され、それは、視野の中央におけるスポットからの波面測定だけの範囲における適応補正の有効性を保証する。更に、可変形状ミラーMDを回転させることにより、眼に到達するビームの角度を選択することができ、こうして、調べる網膜の部分を選択することができる。
【0054】
OCT測定は、光源のコヒーレンス長内で、マイケルソン干渉計の二つのアームの間の光路の一様性を確実にさせる。また、それは、この一様性に相当する深さでの最適な調整を実施する。通常通り、ビームの直径に制限があることから、何らかの再整理で与えられる非常に大きな被写界深度を眼に与える。
【0055】
システムを全開(一般に、F/3)で使用した場合には、被写界深度は迅速に減少、通常は、30μmに減少する。OCTのZスキャニングZによって、このインターバルからラピッドエグジット(rapid exit)を生じさせることができ、そのインターバルを上回ると、干渉コントラストが減少する。これは、純粋にぼかした映像(pure defocus)の収差効果と看做すことができる。
【0056】
この問題は、それ自体の焦点合わせを調整することのできる装置、例えば、機械的調整手段を波面検光子に設けることにより改善することができる。この焦点合わせを任意に変更させることにより、適応光学ループを介して、可変形状ミラーを付加的な曲率に適合させて、入力光源及びディテクターを網膜におけるより深い又はより浅いポイントと共役させる。この焦点合わせの制御は、OCTのZスキャニングと同期させるべきである。
【0057】
また、検光子を焦点の合っていないモードで運転させるために、検光子を制御することもできる。或る進歩した検光子、例えば、イマジン オプティク社(Imagine Optic)製のモデルは、実際に、良好な結果を持って、焦点の合っていないモードで運転することができる。
【0058】
検光子の現実の焦点ぼけに対する別の解決策としては、検光子の測定に関係なく、ミラー制御に純フォーカスターム(pure focus term)を付け加えることがある。この策略は、補償光学において一般に用いられている。シャックハルトマンタイプの検光子では、システムを任意に修正されたコントロールに集中させる「参照スロープ」と呼ばれているテーブルを修正しなければならない。
【0059】
被検者の視野に矯正レンズを付け加えること、それ故、眼の直前において、焦点や非点収差の如き幾何学収差が低くなることにより、可変形状ミラーMDの移動に関する条件を下げることができると共に、照準付けを向上させることを確実にする。最適補正のためには、固定レンズよりもむしろ伝送による適応補正システムを用いることができる。
【0060】
協働的な又は能動的な、本発明による照準システムは、アセンブリのアップストリームに取り付けられる。能動ターゲットパターンMAMを有するこの照準システムは、得られた照準軸から周期的にずれる輝点の像を被検者に与える。そして、患者は、この像の全ての移動に追従することを促される。その像が照準軸に戻る度に、及び調整可能な待ち時間(latency time)の後に、一連の干渉測定が実施される。視野の周期的な移動によって、患者が所望の軸に視線を向けている時に、患者から向上した注視能力を得ることが可能になる。振幅及び周波数は、被検者及び実施される測定に適合させることができる。便宜上、ターゲットパターンは、輝点が表示され移動される簡単なオフィスコンピュータを用いて作り出すことができる。能動ターゲットパターンMAM,適合光学素子,光源S及びイメージショットは、同期される。
【0061】
図5に示した実施例においては、本発明による生体内トモグラフィシステムは、横が1.2m未満であるという比較的コンパクトなものである。サイズ規制の重要な部分は、軸外しパラボラの焦点距離を幾分固定させる可変形状ミラーMDの直径に起因する。マイクロミラーを用いることは、システムの全ての寸法を明らかに小さくさせる。
【0062】
二つのビームに分割される検出システムは、ディスクリート部品で作られている。分離,フォールディング(folding)又はビームを遅延させる機能を兼ね備えた集積部品を製造し使用することができる。
【0063】
波面の分析に関しては、可変形状ミラーMDのアップストリームに参照光源SLDを取り付けることにより、収差測定の最適化を可能にし、それ故、眼で具体化される参照イメージが、この場合に、適応補正から利点を得るように、収差測定の補正を可能にする。この最適化は、光源SLDが調整制御システムのアップストリームにあるようなどんな焦点合わせでも、真実である。偏光キューブCPA(図4)を利用すると、眼から来る光子の全てを用いることができるようになる。従って、波面の測定は良好な条件下で実施される。
【0064】
然しながら、参照光源SLDと光検子SHの入力との間では、非常に正確な横の光学共役が必要とされることが銘記されるべきである。この共役が不十分である場合には、適応光学ループによる補正の試みは、サーボ制御のディバージェンス(divergence)に帰着する。
【0065】
図5に示した本発明の変形例は、適応光学ループにおける不安定性のリスクを低減させることにより、システムの非常な簡素化を可能にしたものである。この変形例においては、参照光源SLDは、光路中の眼の近くに、特に、適応光学素子の後(外側)及び、例えば、ソレイユ・バビネ補償板CBCの如き複屈折コンペンセータの前、又は、眼の直前に配置されている。眼の底における最善のイメージスポットから利することがない場合には、システムは操作上の安定性から利点を得る。
【0066】
適応光学系において用いられる可変形状ミラーとしては、例えば、シラス社(CILAS company)製の31のエレメントを備えた50mm直径ミラーを用いることができる。然し、その装置の性能及び(又は)コンパクトの程度は、特にコンパクトの程度及び適応移動におけるより大きな走行のために、グルノーブル観測所の天文物理学研究所で開発された52のエレメントを備えた15mm直径の可変形状ミラーのようなより性能が高くよりコンパクトなモデルを用いることにより、改善することができる。
【0067】
図6に示した実施例においては、測定アームMPM1,MPM2のフォールディングリフレクタ(folding reflectors)及び参照アームMPR1,MPR2のフォールディングリフレクタは除かれている。測定アームの光路は、可変形状ミラーMDの片側に配置された二つのレンズLM1−1,LM1−2から成るダブレットと、可変形状ミラーの他側に配置された二つのレンズLM2−1,LM2−2から成る別のダブレットとを含んでいる。同様に、参照アームの光路は、参照ミラーMRの片側に配置された二つのレンズLR1−1,LR1−2から成るダブレットと、参照ミラーの他側に配置された二つのレンズLR2−1,LR2−2から成る別のダブレットとを含んでいる。
【0068】
ミラーよりもレンズを用いた方が、特に、このタイプのミラー、典型的には、軸外しパラボリックミラーのコストと光学収差のために、より安価で、より性能のよいものにすることができる。
【0069】
そのようなオン・アクシス・セットアップ(on axis set up)をより小さな可変形状ミラーと組合わせることにより、限定されたサイズを維持しつつ、性能がよく、構成が簡単且つ安価なシステムを確保することができる。
【0070】
図5に示したように、システムは、検査されるゾーンの簡単な撮像と共に干渉測定を行うことができる、例えば、検査されるゾーンの診査及び選択を容易にする、例えば、カメラIMGの如き従来の撮像手段を含んでいてもよい。
【0071】
測定アームの出力側(リターン路上)に直接に、従って、干渉計の偏光キューブCPRの直前に配置された第二の偏光キューブCNPIは、イメージをピント合わせするための手段LIをそれ自身が備えた撮像カメラIMGの方向へリターンビームを偏向させることができる。この光路上で、照準付けされた網膜ゾーンの直接像を観察することができる。特に、測定アームと、この付加的な光路は、視域が特に干渉コントラスト測定技術自体によって制限される干渉モードよりも広い観察視域を提供するよう配置することができる。
【0072】
コヒーレンス長が小さいため、出力光源Sはポリクロマティックタイプのスペクトルを有している。典型的なOCTセットアップにおいては、このスペクトルは一般に比較的狭く、例えば、約50ナノメータの幅を持っているが、必ずしも無視することができるものではない。
【0073】
このポリプロマティックスペクトルは、性能の低下を齎す。特に、オキュラー環境の分散特性のためにパスディファレンスの分散に帰着して、装置の軸解像度を低下させることにより性能の低下を齎す。これらの低下を回避又は制限するために、システムは参照アームに配置される補正手段を有していてもよい。
【0074】
更に、オキュラー手段の分散特性は、波長で眼の焦点が変化することにより実証され、同様に、軸解像度を低下させる。この低下を回避又は制限するために、システムは、例えば、測定アームに配置される補正手段を有していてもよい。特に、この手段は、例えば、眼の直前に位置するコリメータLM2−2を、眼のクロマティズムと逆に選択されたクロマティズムを備えたダブレットと取り替えることにより、赤と青の間に約400μmに亘って出現する焦点クロマティズムを補正することができる。また、この手段は、例えば、検査される眼のサイズ又は特質に応じたサイズ又は検査される眼のサイズ又は特質に従ってコントロール可能なサイズを有する参照アームにウォータタンクを挿入することにより、クロマテック分散のための光路差を補正することができる。そのようなタンクは、人の眼の平均的な長さである24mmの大きさの寸法を有していてもよい。
【0075】
12μmコヒーレンス長光源で50ナノメータのスペクトルでは、補正手段を使用すると、軸解像度を約6μmから約4μmに変更させることにより軸解像度を向上させることができる。
【0076】
特に、軸解像度の点で性能を向上させるために、システムは、干渉計用の入力光源として、幅のより広いスペクトル、例えば、白色光を備えた多色照明を用いることができる。この場合には、これらの補正手段によって発揮される性能をかなり向上させることができる。
【0077】
本発明は、網膜の撮像又は角膜のトポグラフィ(topography)又は涙の測定のための装置を作るため又は補足するために特に用いることができる。
【0078】
勿論、本発明は、上述した特定の実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、これら実施例に種々の変更を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】従来の全視域OCTトモグラフィシステムの典型例を示した図である。
【図2】本発明による改良された装置に装備されるウォラストンプリズムの原理を説明するための図である。
【図3】本発明によるコントラスト改善装置の二つの位相における測定のための第一の構成を模式的に示した図である。
【図4】本発明によるコントラスト改善装置の四つの位相における測定のための第二の構成を模式的に示した図である。
【図5】本発明によるコントラスト改善装置を組み込んだ生体内トモグラフィシステムの実施例を模式的に示した図である。
【図6】本発明による生体内トモグラフィシステムの別の実施例を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全視域マイケルソン干渉計におけるフリンジのコントラストを測定するための装置であって、二つの垂直入射偏光を二つの異なった出現方向へ偏向させるための手段を有し、前記偏向手段が単一の偏光子の代わりとして前記干渉計中に配置されている、フリンジのコントラストを測定するための装置。
【請求項2】
前記偏向手段がウォラストンプリズム(W)を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
光学コヒーレンストモグラフィOCTシステム中に装備されたマイケルソン干渉計に適用される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
λ/2又はλ/4のパスディファレンスのための測定を実施するために配置されていることを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
厳密に同時で位相対立にある少なくとも二つの測定値を得るよう配置されていることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
四度の測定を実施するために配置され、ビームを二つに分離させるための分離手段と、発生させられた二つのビームの一方において、前記干渉計の二つのアームからの偏光間にλ/4の付加的な遅延を生じさせるための遅延手段と、前記偏向手段からの出力時に四つのビームが生ずるように、上記処理された二つのビームを一緒に前記偏向手段へ再導入させるための手段とを有していることを特徴とする、請求項3〜5の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記分離手段が単一の非偏光分離板を含んでいることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記遅延手段が四分の一波長板(QOP/M)を含んでいることを特徴とする、請求項6又は7に記載の装置。
【請求項9】
前記ウォラストンプリズム(W)が瞳孔平面内に配置されていることを特徴とする、請求項6〜8の何れか一項に記載の装置。
【請求項10】
ウォラストンプリズムの軸に対して、四つの入射ビームを任意に配向させるための配向手段を更に含んでいることを特徴とする、請求項6〜9の何れか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記配向手段がウォラストンプリズム(W)の前に配置された二分の一波長板を含んでいることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
全視域マイケルソン干渉計におけるフリンジのコントラストの測定方法であって、二つの垂直入射偏光をウォラストンプリズム(W)によって二つの異なった出発方向へ偏向させる工程を含んでいる、全視域マイケルソン干渉計におけるフリンジのコントラストの測定方法。
【請求項13】
光学コヒーレンストモグラフィOCTシステムにおいて用いられる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
λ/2又はλ/4だけ相違したパスディファレンスのための測定を行う工程を含んでいることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
厳密に同時に且つ位相反対で少なくとも二度の測定を実施する工程を含んでいることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
四度の測定を実施する工程と、ビームを二つに分離させる工程と、発生させられた二つのビームの一方において、前記干渉計の二つのアームからの偏光間にλ/4の付加的な遅延を生じさせる工程と、前記偏向手段からの出力時に四つのビームができるように、前記処理された二つのビームを前記偏向手段へ再導入させるための工程とを含んでいることを特徴とする、請求項13〜15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記四つの入射ビームの偏光をウォラストンプリズム(W)の軸に相対して、任意に配向させる工程を更に含んでいることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記四つのビームに関する前記測定を同時に実施することを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
測定アームにおいて、眼の焦点クロマティズムの効果を補正する工程を含んでいることを特徴とする、請求項1〜18の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
測定アームに、パスディファレンスの分散を補正するための手段を有していることを特徴とする、請求項1〜19の何れか一項に記載の方法。
【請求項21】
波面検光子をコントロールして、それを焦点外で作動させる工程を含んでいることを特徴とする、請求項1〜20の何れか一項に記載の方法。
【請求項22】
生体内トモグラフィによる検眼システムであって、
全視域OCTセットアップをプロデュースするマイケルソン干渉計と、
前記干渉計と検査される眼との間に配置されて、眼からの波面と眼に達する波面の補正をプロデュースする適応光学系と、
前記干渉計のダウンストリームに配置されて、同期変調又は検出を行うことなく、OCT原理に従って干渉測定を実施する検出手段と、
全視域マイケルソン干渉計におけるフリンジのコントラストを測定するための装置を有し、
前記測定装置が、二つの垂直入射偏光を二つの異なった出現方向へ偏向させるための手段を有している、生体内トモグラフィによる検眼システム。
【請求項23】
適切なスクリーン上に表示され、検査中に両眼によって見ることができる、プログラム可能な形状と軌道を有する少なくとも一つの移動ターゲットを含んでいる照準装置を有していることを特徴とする、請求項21に記載の検眼システム。
【請求項24】
参照ソース(SLD)が、適応光学系(MD)と検査される眼(OEX)との間の光路に挿入されていることを特徴とする、請求項21又は22に記載の検眼システム。
【請求項25】
測定アームに、眼の焦点クロマティズムの効果を補正するための手段を有していることを特徴とする、請求項21〜23の何れか一項に記載の検眼システム。
【請求項26】
測定アームに、パスディファレンスの分散を補正するための手段を有していることを特徴とする、請求項21〜24の何れか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−518998(P2007−518998A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550238(P2006−550238)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【国際出願番号】PCT/FR2005/000135
【国際公開番号】WO2005/080912
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(505074285)セントレ ナショナル デ ラ レチャーチェ シャーティフィック (15)
【出願人】(506250468)
【出願人】(506250745)マウナ キア テクノロジーズ (6)
【Fターム(参考)】