説明

マクロライド系抗生物質による神経変性の予防

本開示は、神経変性を予防するため、また神経変性に伴って生じる疾患と症状を治療または予防するために、マクロライド系抗生物質を使用することを記載する。特定の作用機序に限定されないが、一つの実施形態では、マクロライド系抗生物質は、リソソームおよび/またはミトコンドリアの機能障害に起因する神経変性を抑制する。本開示は、任意のマクロライド系抗生物質およびその医薬的に許容できる誘導体の使用を意図するものである。特定の実施形態では、マクロライド系抗生物質は、バフィロマイシンA1、バフィロマイシンB1、コンカナマイシンを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経変性と、神経変性によって特徴付けられる疾患と症状の治療および/または予防のための方法に関する。該方法は、神経変性によって特徴付けられる疾患または症状に苦しむ対象を治療するために、および/またはそうした疾患または症状が、罹患する危険が高い対象に起こるのを予防するために使用されてもよい。本発明はまた、該方法において有用な医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
神経変性(neurodegeneration)は、一般的に使われる用語であり、その意味は広く理解されていると考えられる。しかし、神経変性の厳密な定義を明確に表すのは難しい。神経変性(neurodegeneration)は、多数の大辞典でも 定義は不完全であることが多い。語源的には、この用語は神経細胞(すなわちニューロン)を示す接頭辞「neuro−」と、組織または臓器の場合には構造または機能を失う過程を表す「degeneration」からなり、この過程は治療に応じて可逆的である。
【0003】
実際には、神経変性疾患や症状は、特異的な機能解剖系の特異的な一部のニューロンに発症する、多様な臨床的、病理学的発現を伴う幅広いグループの神経疾患を意味する。これらの疾患は若年期に認められるか(若年性疾患)、あるいは晩年期に認められることがあり(加齢関連性疾患)、発症の理由は不明であり、病状の進行は確実である。神経変性疾患または症状を、例えばアルツハイマー病またはパーキンソン病を発症する、最も一貫した危険因子は加齢である。
【0004】
過去100年間で、産業国における65歳以上の人口の増加率は、人口全体の増加率をはるかに上回った。故に、次世代では老年者の人口が二倍になり、これに伴いある種の神経変性疾患または症状に苦しむ人々の人口も比例して増加することが予想される。これらの、身体障害を引き起こす病気に関わる患者、介護者、社会に対する、心理的、身体的、経済的な負担が増加していることから、この予想は、医療社会で高まりつつある懸念の焦点にある。いくつかの承認薬が、現在までにいくつかの神経変性疾患や症状の病状を部分的に改善してきたとはいえ、それらを慢性的に使用すると、患者を衰弱させる副作用を起こすことが多く、変性過程の進行を阻止するものがないという事実は、問題をさらに深刻化させている。これに合わせて、神経変性の原因や機構に関する我々の知識の限界が、効果的な予防療法または保護療法の開発を妨げてきた。従って、神経変性の疾患や症状の治療のための新たな化合物のための技術や、そのような化合物を用いた治療方法が必要となる。更に、神経変性疾患の治療および/または予防に適した化合物の同定方法も必要となってくる。
【発明の開示】
【0005】
本発明は、神経変性によって特徴付けられる疾患と症状の治療および/または予防における、マクロライド系抗生物質の使用を開示する。本発明はまた、そのようなマクロライド系抗生物質を用いる治療および/または予防の方法を開示する。更に、本発明は、そのような方法において有用な医薬組成物を開示する。本発明はまた、神経変性疾患や症状を治療および/または予防するのに有効である可能性がある他の化合物を同定するための方法を提供する。
【0006】
本発明は、神経変性を抑制するための、マクロライド系抗生物質の使用に関する。多くの病態が神経変性によって特徴付けられ、若年性の、また加齢関連性疾患および症状の両方を含む。観察される神経変性の分子基盤は、特定の病態によって異なる。
【0007】
最近の証拠は、神経変性病態において、リソソーム経路とオートファジー(例えば、自家融解ストレスがあるが限定されない)を関連させる。リソソーム経路は、細胞の健全性を保つために必要な基本的な細胞の構成要素を供給するために、細胞成分をリサイクルするように働く、細胞器官の動的システムを含む。リソソーム経路の一要素はオートファジーである。オートファジーは、栄養不足、または細胞ストレスの他の症状によって引き起こされる、厳重に統制された過程である。オートファゴソームと呼ばれる、細胞質領域が二重膜の空胞で囲まれた場合に、オートファジーが始まる。オートファゴソームは単一膜ファゴリソームに成長し、最終的に酸性になり、エンドソームまたはリソソームと融合した後タンパク質分解酵素を獲得して分解過程を完了する。細胞の大きさ、リモデリング、形態の変化を支援するために、正常の細胞の発達の過程において、オートファジーを含むリソソーム経路は活性である。さらに、そのような系は、損傷された細胞成分を除去するために、監視システムとして働くことがある。しかし、正常なリソソーム経路またはオートファジーにおける混乱が、細胞死または細胞の異常機能をもたらす、活性のデスシグナルを生み出すことができる。
【0008】
正常なオートファジーの乱れは、自家融解ストレスにつながることがあり、これは形態学上は自食胞の蓄積によって、また生化学的には自食胞の外膜に特異的に関連するタンパク質である、LC3−IIのレベルの上昇によって定義される。さらに、リソソームの分解経路の機能障害(in vitroモデルとして、CGNのクロロキン処理によって、本発明で例示する)は、自食胞を増加させる、ある種の自家融解ストレスを誘発する。自家融解ストレスは、その後アポトーシス経路を介して細胞死につながる可能性がある(例えば限定されないがカスパーゼ−3活性などの、プロテアーゼ活性の増加によって測定されるように)だけでなく、自家融解ストレスの結果として、アポトーシスと同時に、あるいは無関係に起こることが示されている、その他の種類の機構を介して細胞死につながることがある。
【0009】
最近の報告のいくつかで、多くの神経系の疾患と症状におけるリソソーム系と自家融解ストレスの機能障害が説明されている。リソソーム系の能力の低下は、限定されないが、タンパク質や複合糖質成分など、細胞物質の異常な沈着につながる。時間がたつと、細胞物質の異常沈着は、そのような疾患と症状に特有の発生学的異常、最終的には神経変性をもたらす。さらに、上述のように、リソソーム系の能力の低下と自家融解ストレスの増加は細胞死をもたらすことがある。
【0010】
これらの発生学的異常が、多くの若年性の発症や加齢関連疾患の病態や症状に認められる、限定されないが、リソソーム蓄積症(LSD)、テイ・サックス病、若年性神経セロイドリポフスチン症、ニーマン・ピック病、サンドホフ病、サンフィリッポ症候群B型、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、パーキンソン病、ハンチントン病、FTDP−17、レヴィー小体型認知症などの神経変性や他の症状の根底にあると考えられる。
【0011】
限定されないがバフィロマイシンA1などの、ある種のマクロライド系抗生物質は、1nMより高い濃度において、液胞のATPaseを阻害することが報告されている。液胞のATPaseの阻害によって、酸性の小胞や細胞小器官は中性になる。酸性の小胞と細胞小器官の中性化は、オートファゴソームとリソソームの融合を妨げ、リソソーム系の正常な機能を混乱させる。リソソーム系のこの乱れにより、限定されないが、オートファゴソームなどのそのような系に関わる中間体の蓄積がもたらされ、自家融解ストレスと、その後の神経変性につながることがある。
【0012】
本発明はモデル系を用いて液胞のATPaseと酸性の小胞の中性化への影響とは無関係な、マクロライド系抗生物質の新規な神経保護効果を説明する。リソソームの分解経路の機能障害は、本発明ではCGNのクロロキン処理によって例示される。CGNのクロロキン処理は、リソソーム経路の機能障害を誘発し、自食胞の増加につながるある種の自家融解ストレスを誘発し、これは細胞の生存率の低下、カスパーゼ−3活性の上昇(アポトーシス活性のマーカー)、LC3−IIプロセシング(自家融解ストレスのマーカー)の増加をもたらす。本発明は、神経変性を予防するため、そして神経変性を伴う疾患や症状を治療または予防するための、マクロライド系抗生物質の使用を説明する。特定の作用機序に限定されないが、一つの実施形態では、マクロライド系抗生物質はリソソーム障害および/または自家融解ストレスによって起こる神経変性を抑制する。本発明はマクロライド系抗生物質とその誘導体の使用を意図するものである。特定の実施形態では、マクロライド系抗生物質はバフィロマイシンA1、バフィロマイシンB1、コンカナマイシン、それらの誘導体を含む。さらなる特定の実施形態では、マクロライド系抗生物質はバフィロマイシンA1、またはその誘導体である。
【0013】
定義
本書で使用する単語「予防」、「予防する」、「予防している」、「抑制」、「抑制する」、「抑制している」は、疾患または症状の、徴候、様相、特徴が発症する前に、そのような徴候、様相、または特徴を予防する、または軽減するために開始される一連の動作(例えば化合物または医薬組成物を投与する工程)を意味する。そのような予防する、抑制することが必ずしも完全である必要はない。
【0014】
本書で用いる「治療」、「治療する」、「治療している」は、疾患または症状の、徴候、様相、特徴の発症後に、そのような徴候、様相、または特徴を取り除く、または軽減するために開始される一連の動作を意味する(例えば化合物または医薬組成物を投与する工程)。そのような治療することが必ずしも完全である必要はない。
【0015】
本書で使用する用語「治療を必要とする」は、患者が治療を必要とする、あるいは治療が有益であるだろうという、介護者の判断を意味する。この判断は、介護者の専門領域の範疇にあり、本発明の方法または化合物によって治療可能な疾患または症状の結果として、患者が病気であり、または病気になるであろうという知識を含む多様な要素に基づいて判断される。
【0016】
本書で使用する用語「予防を必要とする」は、患者が予防を必要とする、あるいは予防が有益であるだろうという、介護者の判断を意味する。この判断は、介護者の専門領域の範疇にあり、本発明の方法または化合物によって予防可能な疾患または症状の結果として、患者が病気になるであろう、または病気になる可能性があるという知識を含む多様な要素に基づいて判断される。
【0017】
本書で使用する「個人」、「対象」または「患者」は、哺乳類を含む動物、例えばマウス、ラット、その他のげっ歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、または霊長類、及びヒトである。この単語は、オスまたはメスまたは両方を特定するか、あるいはオスであるかメスであるかを除外することもある。
【0018】
本書で使用する用語「治療上有効な量」は、疾患または徴候、様相、または特徴に対して、検出可能な効能を発揮できる、単独での、あるいは医薬組成物の一部としての化合物の量を意味する。そのような効果が必ずしも完全である必要はない。
【0019】
本書で使用する用語「マクロライド系抗生物質」は、限定されないがデオキシ糖などの一つ以上の置換基が結合するラクトン環(マクロライド環と称される)を含む化合物を意味する。マクロライド系抗生物質には、plecomacrolide系抗生物質が含まれる。plecomacrolide系抗生物質の例には、バフィロマイシンA1、バフィロマイシンB1、コンカナマイシンが含まれるが、これに限定されない。
【0020】
本書で使用する用語「神経変性」は、神経構造または機能が障害される症状であり、その障害は、本願に記載されるように、マクロライド系抗生物質によって少なくとも部分的に回復するまたは予防される可能性がある。
【0021】
用語「医薬的に許容できる誘導体」は、受容者に投与した際に、開示されるマクロライド系抗生物質、または代謝産物またはその残分を(直接または間接的に)提供できる本発明のマクロライド系抗生物質の医薬的に許容できる塩、エステル、エステルの塩、溶媒和物またはその他の誘導体を意味する。特に好ましい誘導体は、そのようなマクロライド系抗生物質が患者に投与された際に、開示されるマクロライド系抗生物質の生体への利用率を高め(例えば、経口投与された化合物がより容易に血液に吸収されるようにすることにより)、マクロライド系抗生物質の、任意の生物学的組織への輸送を高め、注射による投与が可能になるように溶解度を高め、代謝を変化させ、または排出速度を変化させるものである。一つの実施形態では、誘導体はプロドラッグである。マクロライド系抗生物質のプロドラッグ形式の例は、米国特許第6,809,080号において記載されている形式である。
【0022】
用語「医薬的に許容できる塩」には、特に断りが無い限り、本発明のマクロライド系抗生物質に存在する酸性基または塩基性基の塩が含まれる。
【0023】
治療と予防の方法
本発明は、神経変性を抑制および/または予防するための、マクロライド系抗生物質の使用を説明する。本発明は、そのような治療および/または予防を必要とする対象に神経変性によって特徴付けられる疾患または症状を治療および/または予防するための方法を提供する。本発明はまた、そのような治療および/または予防を必要とする対象にそれらの病因において神経変性過程に依存する疾患または症状を治療および/または予防するための方法を提供する。
【0024】
一つの実施形態では、本発明は、そのような治療を必要とする対象に神経変性によって特徴付けられる疾患または症状、またはそれらの病因において神経変性過程に依存する疾患または症状の治療を提供する。そのような疾患または症状には、リソソーム蓄積症(LSD)、テイ・サックス病、若年性神経セロイドリポフスチン症、ニーマン・ピック病、サンドホフ病、サンフィリッポ症候群B型、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、パーキンソン病、ハンチントン病、FTDP−17、レヴィー小体型認知症が含まれるがこれに限定されない。特定の実施形態では、疾患または症状は、リソソーム障害および/または自家融解ストレスによって特徴付けられる。
【0025】
治療方法には、そのような治療を必要とする対象を識別すること、前記対象において、少なくとも一つのマクロライド系抗生物質、またはその医薬的に許容できる誘導体の投与を含む、治療法を開始することを含む。マクロライド系抗生物質は、plecomacrolide系抗生物質であってもよい。特定の実施形態では、マクロライド系抗生物質はバフィロマイシンA1、バフィロマイシンB1、コンカナマイシンまたはそれらの組み合わせである。特定の実施形態では、マクロライド系抗生物質は、治療上有効な量で投与される。そのようなマクロライド系抗生物質の投与は、疾患または症状を治療することになる。神経変性の治療には、少なくとも部分的にの神経細胞死の抑制、異常な神経病態(例えば神経の変性があるが限定はされない)の抑制、リソソーム障害によって生じるデスシグナルおよび/または自家融解ストレスによって生じるデスシグナルの抑制が含まれてもよい。上述のとおり、開示される治療法において、治療がかならずしも完全である必要はない。一つの実施形態では、治療なしで観察される神経変性と比べて、神経変性は少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%以上抑制される。
【0026】
別な実施形態では、本発明は、そのような治療を必要とする対象に神経変性および/または神経変性によって特徴付けられる、またはそれらの病因において神経変性過程に依存する疾患または症状の予防法を提供する。そのような疾患または症状には、リソソーム蓄積症(LSD)、テイ・サックス病、若年性神経セロイドリポフスチン症、ニーマン・ピック病、サンドホフ病、サンフィリッポ症候群B型、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、パーキンソン病、ハンチントン病、FTDP−17、レヴィー小体型認知症が含まれるがこれに限定されない。特定の実施形態では、疾患または症状はリソソーム障害および/または自家融解ストレスによって特徴付けられる。
【0027】
予防方法は、そのような予防を必要とする対象を識別し、前記対象において、少なくとも一つのマクロライド系抗生物質、またはその医薬的に許容できる誘導体の投与を含む、予防療法を開始することを含む。マクロライド系抗生物質は、plecomacrolide系抗生物質であってもよい。特定の実施形態では、マクロライド系抗生物質はバフィロマイシンA1、バフィロマイシンB1またはコンカナマイシンである。特定の実施形態では、マクロライド系抗生物質は、治療上有効な量で投与される。結果として、そのようなマクロライド系抗生物質の投与は疾患または症状を予防する。神経変性の治療には、少なくとも部分的にの神経細胞死の抑制、異常な神経病態(例えば神経の変性があるが限定されない)の抑制、リソソーム障害によって生じるデスシグナルおよび/または自家融解ストレスによって生じるデスシグナルの抑制が含まれてもよい。上述のとおり、開示される予防方法において、予防がかならずしも完全である必要はない。一つの実施形態では、予防なしで観察される神経変性と比べて、神経変性は少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%以上抑制される。
【0028】
本書に記載のごとく、マクロライド系抗生物質は神経変性を緩和することが示される。一つの実施形態では、神経変性は、少なくとも部分的にリソソーム障害または自家融解ストレスによって誘起される。例えば、本発明は、特定の濃度のplecomacrolide系抗生物質、バフィロマイシンA1が、CGN内のクロロキンによって生じる神経変性を抑制することを示す(細胞死、カスパーゼ−3活性、LC3プロセシングによって検査した)。上述のとおり、クロロキンはリソソーム経路の機能障害やある種の自家融解ストレスを誘起し、これは自食胞の増加につながり、リソソーム障害と自家融解ストレスのモデル系として使用できる。代替的な作用機序に限定されることなく、マクロライド系抗生物質は、リソソーム障害および/または自家融解ストレスによって生み出されるデスシグナルをブロックするかもしれず、結果として正常な細胞機能を回復させる。
【0029】
さらに、クロロキンやフルオロキノロン類(例えば、モキシフロキサシン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、ノルフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、スパルフロキサシンがあるが限定されない)は、小胞の酸性化を妨げ、ミトコンドリア膜の潜在能力を崩壊させ、これがアポトーシスおよび/または細胞死をもたらすことが示されている。例えばクロロキンなどの薬が、疾患と症状、例えばマラリア、関節リウマチ、自己免疫疾患を治療するために使用される が、神経障害や視神経の機能障害などを含むがこれに限定されない、副作用の原因により、これがそれらの有効性を制限することが報告されている。フルオロキノロン類は、骨、関節感染、皮膚感染、尿路感染、前立腺の炎症、重篤な耳感染、気管支炎、肺炎、結核、ある種の性行為感染症(STD)、エイズ患者に発症するある種の感染症を治療するために使用される。そのような薬がリソソームとオートファジー系に影響を与えるのを防ぐことで(例えば、神経細胞死の抑制、異常な神経病態の抑制、リソソーム障害によって生じるデスシグナルおよび/または自家融解ストレスによって生じるデスシグナルの抑制によって)、有益な効果を損なうことなく、そのような薬の副作用は軽減されるかもしれない。
【0030】
従って、本発明はまた、リソソームのまたはオートファジー経路に少なくとも部分的に影響を与える薬の有害な影響を、治療上有効な量の少なくとも一つのマクロライド系抗生物質、またはその医薬的に許容できる誘導体を、そのような薬と併用して投与することで緩和する、または予防するための治療方法を提供する。本発明のマクロライド系抗生物質は、有益な効果をもたらすが、リソソームまたはオートファジー経路に有害な影響も与えるどのような薬と一緒に使用してもよい。治療は、少なくとも部分的に、神経細胞死の抑制、異常な神経病態の抑制(例えば、神経の変性があるが限定されない)、リソソーム障害によって生じるデスシグナルおよび/または自家融解ストレスによって生じるデスシグナルの抑制を含んでもよい。
【0031】
本書で説明する治療するおよび/または予防する方法はまた、上述のマクロライド系抗生物質と併用して一つ以上の追加の治療薬をさらに投与することを含んでもよい。
【0032】
同定する方法
さらに、神経変性によって特徴付けられる、またはそれらの病因において神経変性過程に依存する疾患または症状を治療および/または予防する化合物を同定するために、本発明を使用してもよい。故に、同定された化合物は、上述の治療および/または予防方法において有用なことがある。そのような化合物は、小分子の医薬品、ペプチド、生物学的製剤、様々な非コードRNA、アンチセンス分子、抗体であってもよい。
【0033】
そのような化合物を同定するための方法またはアッセイは、リソソームのまたはオートファジー系が少なくとも部分的に機能が障害されている、または障害されるように誘導することができ、細胞株またはモデル系を提供し、前記細胞またはモデルを候補化合物とインキュベートすること、前記化合物の存在下と、前記化合物が存在しない状態で、前記モデル系の特性を決定すること、前記化合物の存在によって前記特性が高められるか、あるいは低減させられるかどうかを決定することを含む。そのような特性は、当業者に現在知られている分析技術を用いて測定可能なものならどのような特性であってもよい。特性の例には、プロテアーゼ活性(例えばカスパーゼ活性、特にカスパーゼ−3活性があるが限定されない)、アポトーシスの生物学的マーカー(例えばカスパーゼ−3があるが限定されない)の活性、またはオートファジー(例えばLC3プロセシングがあるが限定されない)、細胞の生存率、小胞の酸性化、または本書で説明される、または当業者に既知のその他のマーカーまたは検査が含まれるがこれに限定されない。化合物は、本書で説明するように、前記特性を高めるまたは低減させることがある。
【0034】
医薬組成物
本書で説明する方法で使用するための、上述のマクロライド系抗生物質は、単独で、または当業者に既知の方法で製剤される医薬組成物として投与されてもよい。化合物と医薬品組成を調製するための方法の特定の例は本書で説明され、また限定的な例として見なされるべきではない。さらに、化合物または医薬組成物は、当業者に既知のとおり対象に投与されてもよく、診療の提供者によって決定されてもよい。特定の投与形式が本書で提供されるが、限定的な例とみなされるべきではない。さらに、化合物または医薬組成物を、本書で説明する方法で他の薬剤と一緒に投与してもよい。そのような他の薬剤は、例えば変性の制限または開示される化合物の不活性化によって、または開示される化合物の吸収または活性を高めることによって、開示される化合物の活性を高める薬剤であってもよい。
【0035】
説明される化合物と医薬組成物は、開示される化合物を有効成分として含む、医薬製剤、例えばエアロゾル、固形、半固形、または液体の形態で用いることができる。さらに、医薬組成物を適切な医薬的に許容できる担体との混合物で用いてもよい。そのような医薬的に許容できる担体には、薬物の応用に適する、有機または無機担体、賦形剤または希釈剤が含まれるがこれに限定されない。有効成分を、錠剤、丸薬、カプセル、吸入剤、坐薬、溶液、エマルジョン、懸濁液、エアロゾル、使用に適したその他の形態にするために、例えば通常の毒性のない医薬的に許容できる担体、賦形剤、または希釈剤と混合してもよい。医薬組成物で使用するための医薬的に許容できる担体は製剤分野でよく知られており、例えばRemington:The Science and Practice of Pharmacy Pharmaceutical Sciences、Lippincott Williams and Wilkins(A.R.Gennaro editor、20th edition)で説明されている。そのような原料は、使用される用量や濃度では受容対象に対して毒性を持たず、これには水、タルク、アカシアガム、ゼラチン、三ケイ酸マグネシウム、ケラチン、コロイド状シリカ、尿素、緩衝液、例えばリン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、その他の有機酸塩の緩衝液、酸化防止剤、例えばアスコルビン酸、低分子量(約10残基未満)ペプチド、例えばポリアルギニン、タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン、親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリジノン、アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、またはアルギニン、単糖類、二糖類、セルロースまたはその誘導体、乳糖、マンニトール、グルコース、マンノース、デキストリン、ジャガイモでんぷんまたはコーンスターチまたはでんぷん糊を含むその他の炭水化物、キレート剤、例えばEDTA、糖アルコール、例えばマンニトールまたはソルビトール、対イオン例えばナトリウム、および/または非イオン性界面活性剤、例えばTween、プルロニック、またはポリエチレングリコールが含まれるがこれに限定されない。さらに、医薬組成物は助剤を含んでもよく、これには例えば味質改善剤、安定剤、増粘剤、着色料、香料が含まれるが限定されない。
【0036】
望ましい程度の純度を持つ本発明の化合物を、生理学的に許容される担体、賦形剤、安定剤、助剤などと医薬分野で知られるように混合することにより、医薬組成物を保存用または投与用に調製してもよい。そのような医薬組成物は、叙放性製剤または持続放出性製剤として提供されてもよい。
【0037】
医薬組成物は固形の剤型、例えばカプセル、錠剤、パウダー、または液体の剤型、例えばエリキシル剤、シロップ、懸濁液で経口投与されてもよい。また、医薬組成物は滅菌済みの液体の剤型で非経口で投与されてもよい。さらに、医薬組成物は固形、液体、またはエアロゾルの形態で経粘膜的に、またはパッチ作用または軟膏で経皮的に、非経口で投与されてもよい。様々な種類の経粘膜投与には、気道粘膜投与、鼻粘膜投与、口腔粘膜(例えば舌下や頬粘膜)投与、直腸経粘膜的投与が含まれる。
【0038】
固体組成、例えば限定されないが錠剤またはカプセルなどを調製するために、均一性の高い組成を作る目的で、適切な医薬的に許容できる担体、例えば伝統的な錠剤化材料(乳糖、スクロース、マンニトール、コーンスターチ、ジャガイモでんぷん、アルギン酸、微結晶性セルロース、アカシア、ゼラチン、ゴム、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ソルビトール、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、第二リン酸カルシウム、その他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、湿潤剤、保存料、着香料、薬理学的に適合する担体)、希釈剤(水、生理食塩水または緩衝液が含まれるが限定されない)と医薬組成物を混合してもよい。均一性の高い組成は、等しく効果的な単位の投薬形態、例えば錠剤、丸薬、カプセルに容易に細分できるように、成分(本書で説明される化合物と医薬的に許容できる担体)が組成中で均一に分散していることを意味する。説明される固体の組成物は、持続性作用の利点をもたらす投薬形態を提供するために、コーティングされるか、または別の方法で混合されてもよい。例えば、錠剤または丸薬は内部投薬成分と外部投薬成分を含むことができ、後者は前者のまわりを包む形態である。二つの成分を、胃の中で分解抵抗性に働き、内部成分が原型のまま胃を通過できるように、あるいは放出を遅らせるようにする腸溶性レイヤーで分けることができる。そのような腸溶性レイヤーまたはコーティングに様々な原料を使用でき、そのような原料は、多くのポリマー酸や、ポリマー酸と、セラック、セチルアルコール、酢酸セルロースとしてのそのような原料の混合物を含む。活性のある化合物は、伝統的な坐薬の基剤、例えばカカオバターまたはその他のグリセリドなどを含む、坐薬またはかん腸などの直腸用の組成物として調製されてもよい。固体の組成物はまた、界面活性剤、潤滑剤、不活性充填剤、例えば乳糖、スクロース、リン酸カルシウム、コーンスターチなどを含むカプセル、例えば硬ゼラチンカプセルまたは軟ゼラチンカプセルを含んでもよい。
【0039】
経鼻投与、肺内投与、または吸入のその他の方式による投与については、医薬組成物を溶液または懸濁液の形態でポンプ式スプレー容器から、適切な高圧ガス(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、窒素、プロパン、炭酸ガス、またはその他の適切なガス)を用いて、または加圧容器または噴霧器からエアロゾルスプレー方式として、または乾燥粉末として投与してもよい。エアロゾルまたは乾燥粉末形式の場合、定量を投与するために、バルブを使うことで投与される化合物の量(投与量)を決定してもよい。
【0040】
液体の形態を経口で、非経口で、または経粘膜的に投与されてもよい。液体での投与に適切な形態には、水溶液、適切に香り付けされたシロップ、水性または油性懸濁液、および食用油、例えば綿実油、ごま油、ココナッツ油、またはピーナッツ油とともにエリキシル剤や類似の医薬的賦形剤を用いて、香り付けしたエマルジョンが含まれる。水性懸濁液のための、適切な分散剤または懸濁化剤には、合成天然ゴム、例えばトラガカント、アカシア、アルギン酸塩、デキストラン、カルボキシルメチル・セルロース・ナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、またはゼラチンが含まれる。そのような液体製剤を、医薬的に許容できる添加剤、例えば懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、メチルセルロースまたは食用硬化脂)、乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア)、非水性賦形剤(例えば、アーモンド脂、油性エステルまたはエチルアルコール)、保存料(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチルまたはp−ヒドロキシ安息香酸プロピルまたはソルビン酸)、人工および天然色素および/または甘味料を用いて、伝統的な手段を用いて調製してもよい。液体製剤は、希釈剤、例えば水とアルコール、例えばエタノール、ベンジル・アルコール、プロピレン・グリコール、グリセリン、医薬的に許容できる界面活性剤、懸濁化剤、または乳化剤を添加した、または添加しないポリエチレンアルコールを含んでもよい。頬粘膜または舌下投与については、組成物は伝統的な方式で調製される錠剤またはトローチ剤の形態であってもよい。薬用キャンディーの形態は、香料、通常はスクロースやアカシアまたはトラガカントに有効成分を含むことができ、トローチ剤は、例えばゼラチンやグリセリン不活性基剤に有効成分を含み、あるいは、有効成分に加えて、担体を含むスクロースやアカシア、エマルジョン、ゲルが当分野で知られている。
【0041】
開示される化合物(単体または医薬組成物のどちらか)を非経口的投与用に調製してもよい。非経口投与には、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、皮内投与、くも膜下腔投与、関節内投与、心臓内投与、球後投与、インプラント、例えば持続放出性インプラントを用いた投与が含まれるがこれに限定されない。
【0042】
医薬組成物を、単位用量または多重用量の密封容器、例えばアンプルやバイアル内に入れてもよく、滅菌済み液状賦形剤、例えば注射用蒸留水を使用直前に加えるだけでよい、フリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することができる。即席の注射溶液や懸濁液を、滅菌パウダー、顆粒、錠剤から調製することができる。注射可能な組成物用の、効果的な医薬的に許容できる担体の要件は、当業者に良く知られている。Pharmaceutics and Pharmacy Practice,J.B.Lippincott Co.,Philadelphia,Pa.,Banker and Chalmers,Eds.,238−250(1982)とASHP Handbook on Injectable Drugs,Toissel,4th ed.,622−630(1986)を参照されたい。
【0043】
医薬組成物は治療上有効な量で投与される。当然のことながら、治療上有効な量は既知の要素、例えば特定の化合物の薬力学的特性と、その投与方式と経路や、対象の年齢、健康状態、体重や、疾患の状態または症状の重篤度とステージや、併用治療の種類や、治療の頻度や、所望の効果に応じて変化する。投与される化合物の総量もまた、投与の経路、時期、頻度だけでなく、化合物の投与に付随する可能性がある副作用の有無、性質、程度や、所望の生理学的効果によって決定される。様々な症状または疾患、特に慢性症状または疾患は、多数の投与を伴う長期の治療を必要とする可能性があることを当業者は理解するであろう。
【0044】
結果
以下の結果において、使用された方法は、本発明の方法の項と、本書に引用される文献で規定された方法であった。
【0045】
クロロキンは神経細胞死を誘発する
神経細胞と神経変性へのクロロキンの影響を検討するため、小脳の顆粒神経細胞(CGN)を4日間培養し、5〜40μMクロロキンで、in vitroで24時間処理し、それらの生存率とカスパーゼ−3様活性度(アポトーシス細胞死に関連する酵素活性)を16〜24時間後に測定した(図1Aと1B)。クロロキンは、濃度依存性に生存率を低下させ(図1A)、カスパーゼ−3様活性を増加させ(図1B)、クロロキン濃度≧10μMで著明な効果が認められた。クロロキンは、20μMで生存率を24%まで、40μMで8%まで低下させた一方で(図1A)、20−40μMでは、6〜7倍のカスパーゼ−3様活性の増加が最大であった(図1B)。本書で説明する以下の全ての実験については、20μMの濃度のクロロキンを用いた。タンパク質合成の阻害物質である、シクロヘキシミドを用いた処理(0.1〜1mg/ml)はクロロキンが誘発する細胞死の規模を変化させず(データ示さず)、これはクロロキンの有害な効果は新規のタンパク質合成に依存しないことを示唆している。
【0046】
クロロキンによる、細胞死とカスパーゼ−3様活性の時間的誘導を検討するために、CGNにおいて経時変化の研究を行った(図1Cと1D)。これらの実験では、CGNをin vitroで4日間培養し、濃度20μMのクロロキン処理後、最大48時間まで測定を行った。クロロキン濃度20μMで、生存率は8時間後にわずかに低下し(93%)、続く40時間の間に著しく低下し続けた(図1C)。クロロキン濃度20μMで、カスパーゼ3−様活性は、クロロキンを用いた処理後8時間で著しく上昇し、16時間 (6倍の誘導)で最大となり、24〜48時間の間、高い数値を維持した(図1D)。CGN内の、切断されたまたは「活性の」カスパーゼ−3(CLカスパーゼ−3)の経時パターンをウエスタンブロットによる分析で確認した(図2Aと2B)、20μMのクロロキンを用いた処理の後、8時間まで低濃度で明らかであり、16時間後に最も強固であった。図2A〜2Eでは、CQはクロロキン処理を表し、CTLは対照を、NTは処理なしを表す。
【0047】
オートファゴソームに対するクロロキンの影響を検討するため、LC3のプロセシングをウエスタンブロットで評価した(図2Aと2C〜E)。CGNをin vitroで4日間培養し、20μMのクロロキン処理後最大48時間まで測定を行った。LC3は、細胞質型(LC3−I)からのプロセシングの際に、共有結合脂質化を介して、LC3−IIとしてオートファゴソームの内境界膜と外境界膜に挿入される微小管関連タンパクである9、10。18kDaのLC3−Iのレベルは、同じ時間で測定した対照サンプルのレベルと比べて、クロロキンを用いた処理後24〜48時間で低下したようであった(図2Aと2C)。オートファゴソームの膜に特異的なLC3の16kDa型10であるLC3−IIは、クロロキンに曝露した後4時間以内に上昇し、48時間、高いレベルを維持した(図2Aと2D)、これは対照サンプルにはほぼ認められなかった効果であった。LC3−IIのこの上昇もまた、細胞質のLC3−Iの割合に対する、オートファゴソーム結合LC3−IIの割合の上昇を反映していた(図2E)。オートファゴソーム結合LC3−IIの上昇は、CGN中のオートファゴソームの数を増加させることによってクロロキンがリソソーム経路を妨げ、正常なオートファジーを崩壊させることを示唆する(すなわち、自家融解ストレスを誘発する)。
【0048】
バフィロマイシンA1はクロロキン誘導性アポトーシスを減退させる
バフィロマイシンA1への曝露から24時間後に、CGNに対するバフィロマイシンA1の影響を評価した(図3Aと3B)。これらの実験では、CGNをin vitroで4日間培養し、バフィロマイシンA1の添加後24時間後に測定を行った。それ単独では、バフィロマイシンA1は濃度≦1nMでは生存率を低下させず、またはカスパーゼ−3様活性を誘導しなかったが、濃度≧10nMでは生存率を著しく低下させカスパーゼ−3様活性を上昇させた(図3Aと3B)。カスパーゼ−3の活性に対するバフィロマイシンA1の影響を確認するために、そしてLC3のプロセシングに対するその影響を検討するために、ウエスタンブロットによる分析を行った(図4)。切断カスパーゼ−3(CLカスパーゼ−3)の上昇は、10nMのバフィロマイシンA1を用いた処理においてのみ明らかだった(図3B、4Aと4B)。バフィロマイシンA1を用いた処理ではどの濃度でもLC3−Iのレベルは変化しなかったが、10nM バフィロマイシンA1はLC3−IIのレベルを劇的に上昇させ(図4Aと4C)、これはまた、LC3−II/LC3−Iの割合の増加を反映していた(図4D)。
【0049】
バフィロマイシンA1の影響も、中毒量のクロロキン(20μM)の存在下で評価した(図5)。これらの実験では、CGNをin vitroで4日間培養し、表示の濃度のバフィロマイシンA1とクロロキンの添加の24時間後に測定を行った。バフィロマイシンA1は、検査した全ての濃度でクロロキン誘導性の生存率の減少を著しく減退させ、減退度は1nMで最大であった(バフィロマイシンA1の使用で88%に対して、無しの場合は24%:図5A)。10〜100nMのバフィロマイシンA1は生存率のみを低下させたが(図3A)、これらの濃度はなお、クロロキンによって誘導される大幅な生存率の減少を減退させた(図5A)。クロロキン誘導性のカスパーゼ−3様活性の上昇は、0.3〜1nMのバフィロマイシンA1を同時に添加したときにのみ低下し、1nMで最大であった(3倍の減少:図5B)。バフィロマイシンB1とクロロキンもまた、上記の条件下の全ての1nMで、クロロキン誘導性(20μM)の生存率の減少を減退させた(データ示さず)。
【0050】
バフィロマイシンA1が古典的なアポトーシス誘導刺激の毒性に影響するかどうかを検討するために、CGN培養系でカスパーゼ−3様活性を著しく上昇させる濃度である(データ示さず)、0.1μMのスタウロスポリン(STS)でCGNを24時間処理した(図5C)。スタウロスポリンを用いた24時間の処理により、生存率は平均44%まで低下し、この効果は1nMバフィロマイシンA1との同時投与で変化しなかった。しかし、10nMバフィロマイシンA1を用いた処理により、スタウロスポリン処理CGNの生存率が20%までさらに低下した。
【0051】
バフィロマイシンA1のカスパーゼ−3の活性に対する影響を確認するため、そしてクロロキン(20μM)の存在下で、LC3のプロセシングに対するその影響を検討するために、ウエスタンブロットによる分析を行った(図6A〜D)。これらの実験では、CGNをin vitroで4日間培養し、表示の濃度のバフィロマイシンA1とクロロキンの添加の24時間後に測定を行った。切断カスパーゼ−3(CLカスパーゼ−3)のクロロキン誘導性の上昇は、≦1nMバフィロマイシンA1と同時に処理することにより減退された(図6Aと6B)。バフィロマイシンA1は、LC3−IIのクロロキン誘導性のレベルを減退させなかったが、LC3−Iのレベルを増加させたように思われ(図6C)、これは検査したバフィロマイシンA1の全ての濃度での、LC3−Iに対するLC3−IIの割合の減少を反映している(図6Aと6D)。
【0052】
クロロキン(20μM)および/またはバフィロマイシンA1を用いる処理の24時間後に、生存率マーカー、カルセインAMの存在下で、Lysotracker Red(LTR)を用いてインキュベートすることにより液胞の酸性化を測定した(図7)。これらの実験では、CGNをin vitroで4日間培養し、表示の濃度のバフィロマイシンA1とクロロキンの添加の24時間後に測定を行った。それ単独では、1nM バフィロマイシンA1はLTRの染色パターンを変化させず、対照細胞と比べて生存率を低下させることもなかった(図7Aと7B)。対照的に、10nMバフィロマイシンA1を用いた処理は、LTRによる液胞の酸性化の検出を妨げただけでなく、生存CGNの数も減少させ(図7C)、これはクロロキンの存在下での、または存在しない場合と同様の効果であった(図7Cと7F)。クロロキンを用いた処理は生存CGNの数を減少させた(図7D)。しかし、このクロロキンの24時間処理に耐えた、減少した一群のCGNでは、対照細胞に認められたものよりも強度が強いLTR染色を示した(図7D)。1nMバフィロマイシンA1とクロロキンを同時に添加すると、生存ニューロンの数が増加し、これはまたクロロキンまたはバフィロマイシンA1単独を用いた処理と比べ、LTR染色の強度の増強も同時に示した(図7E)。
【0053】
Bcl−2ファミリーメンバーのこの過程における役割を評価するために、Bax欠損CGN(KOと表記)から培養物を調製した(図8A〜E)。これらの実験では、CGN(野生型、WTと表記、およびBax欠損、KOと表記)をin vitroで4日間培養し、表示の濃度のバフィロマイシンA1とクロロキンの添加の24時間後に測定を行った。BaxはプロアポトーシスのBcl−2ファミリーのメンバーであり、クロロキン誘導性の細胞死に影響を与え、リソソーム障害と自家融解ストレスに起因する細胞死に関与すると主張されてきた。Baxの標的欠損は、野生型(WT)と比較して24時間目に測定された、クロロキン誘導性(20μM)の、生存率における減少(図8A)と、カスパーゼ−3様活性の増加(図8B)を減退させたが、1nMバフィロマイシンA1によってもたらされた防御を上回ることはなかった(図8Aと8B)。反対に、Baxの欠損は、10nMバフィロマイシンA1を用いた24時間の処理によって誘導された、生存率の低下とカスパーゼ−3様活性の増加を妨げた(図8Cと8D)。Bax標的欠損のカスパーゼ−3活性への影響をウエスタンブロットで確認した(図8E)。さらに、ウエスタンブロットによる分析は、Baxの欠損がLC3−IIのクロロキン誘導性の症状を妨げなかったことを示した(図8E)。
【0054】
カルパインの作用によって、Baxを、21kDaの前駆体(p21)から18kDaのフラグメントへ(p18)切断することができる41。Baxのp18は、ミトコンドリアレベルでその細胞死作用を高めることが示されている。図8Fは、CGNにおいて、クロロキン(20μMで24時間)とバフィロマイシンA1(10nMで24時間)がp18 Baxの量を増加させたことを示す。p18 Baxレベルのこの増加は、1nMバフィロマイシンA1によって劇的に弱まった。これは、マクロライド系抗生物質が、アポトーシスとは別のメカニズムでp18 Baxを活性化するデスシグナル(例えばカルパイン活性の誘導があるが、これに限定されない)の減弱を介して、それらが持つ神経保護効果を少なくとも部分的に誘導する可能性があることを示唆する。Bid(別のBcl−2ファミリーメンバー)の切断はクロロキンによって増加せず、これはBidの活性化は、CGNにおけるクロロキン誘導性の効果に関与しないことを示唆する(データ示さず)。
【0055】
クロロキンがカスパーゼ−3の活性の劇的な上昇を誘導したため、このエフェクターであるカスパーゼの、クロロキン(20μMで24時間)が誘発する細胞死の経路における相対的な位置を検討するために、CGNの培養物をカスパーゼ−3欠損マウスから調製した。カスパーゼ−3様活性における著しい減弱が認められたが、カスパーゼ−3の不在は、生存率(図9A)におけるクロロキン誘導性の減少を妨げなかった(図9B)。他のカスパーゼ、例えばカスパーゼ−9がクロロキン誘導性の細胞死に重要であるかどうかを検討するため、野生型CGNを、広域スペクトルのカスパーゼ阻害剤である、BOC−アスパルチル(Ome)−フルオロメチルケトン(BAF)で処理した。この阻害剤を用いた処理では、クロロキン誘導性の細胞死(20μMで24時間)は弱まらなかった(図9C)が、カスパーゼ−3様活性のクロロキン誘導性上昇を著しく減退させた(図9D)。
【0056】
上記の結果は、例えばバフィロマイシンA1、バフィロマイシンB1、コンカナマイシンが含まれるが限定されない、マクロライド系抗生物質の投与が、神経細胞におけるクロロキン誘導性細胞死を、劇的かつ著しく減退させたことを示す。この効果は逆U字型の濃度依存性によって特徴付けられた。バフィロマイシンA1については、この効果は1nMの濃度で最大であった。さらに、1nMバフィロマイシンB1とコンカナマイシンも、神経細胞におけるクロロキン誘導性の細胞死を抑制した。この濃度のバフィロマイシンA1は液胞の酸性化を変化させず、またはオートファゴソームの形成を誘導しなかった。さらに、これらの濃度のマクロライド系抗生物質は、無細胞系における液胞のATPaseの抑制に、最小限の影響を与えることがこれまでに示されている21,22。しかし、10〜100nMのバフィロマイシンA1は、CGN生存率と細胞死経路の誘導を低下させるその能力にもかかわらず、低い濃度ほど強固ではないにしても、クロロキン誘導性の細胞死を抑制した。これは、≧10nMでの、内因性のアポトーシス経路のバフィロマイシンA1依存性の誘導によるものと思われる。≧10nMのバフィロマイシンA1の有無にかかわらず、クロロキン誘導性カスパーゼ−3様活性が最大であったことから、高濃度のバフィロマイシンA1が、クロロキン誘導性細胞死の明確な、カスパーゼ依存性の経路を妨げる可能性もある。従来は、様々な細胞培養モデルにおけるバフィロマイシンA1の効果は、一般的に≧10nMの濃度を用いて報告されてきた。19,20,27、28
【0057】
1nMのバフィロマイシンA1は、クロロキンによる傷害に耐えたCGNの数を増やしただけでなく、濃染した、LTR陽性の酸性の小胞の数も増やした。オートファゴソームの数の増加と同時に起こり、続いて起こるミトコンドリア膜の潜在能力の崩壊と、結果として起こるアポトーシスを示す細胞でのみ消失する20、LTR染色の一時的で強固な増加は、クロロキンを用いた処理でこれまでに説明されている19,20。本研究では、LTRの濃染を示すCGNは、24時間のクロロキンの傷害に耐え、ミトコンドリアの機能が損なわれていない細胞の集団に相当するかもしれない。
【0058】
LTR陽性の小胞は、成熟する間に酸性度が増加する、後期のオートファゴソームの集団に相当するかもしれない32、33。リソソームの機能を崩壊させることで、クロロキンは後期のオートファゴソームとの融合を妨げているのかもしれず、これは最終的に後期のオートファゴソームの蓄積をもたらす。一方で、10nMのバフィロマイシンA1を用いた処理は、クロロキンの有無にかかわらずLTR染色を完全に妨げた。液胞のATPaseを完全に阻害する濃度のバフィロマイシンA1は、融合を妨ることで初期のオートファゴソームの成熟を妨げるかもしれず、故にpHが高いためにLTRで検出できなくなるオートファゴソームの蓄積をもたらす。生化学的には、LC3−IIは初期と後期の両方のオートファゴソームで証明されており34、これはクロロキンと10nMのBafA1の両方が、LC3−IIレベルを上昇させながらも、LTRの染色パターンの差をもたらす理由を示すものである。
【0059】
バフィロマイシンA1に観察された濃度依存性の二相性は、Baxが無い場合のその効果によって注目される。クロロキン誘導性の細胞死が部分的にBax依存性であることを結果は明確に示すが、1nMのバフィロマイシンA1によってもたらされたクロロキンに対する防御の程度は、Baxの欠損によってもたらされるそれよりはるかに大きかった。バフィロマイシンA1が、カスパーゼ−3の活性を著しく減退させp18 Baxの形成を抑制することを考慮すると、バフィロマイシンA1の効果はBaxの上流に位置する可能性があり、また内因性のアポトーシス経路および/または古典的なアポトーシスに関連するだけでなく、細胞死をもたらす他の経路の活性化を妨げる可能性がある(図10)。Baxの欠損がクロロキン誘導性のカスパーゼ−3の活性化を実質的に妨げたことから、このバフィロマイシンA1の補助的な防御効果を、例えば重複する調節機能をBaxと共有する、Bakなどの分子の機能阻害に起因すると考えることはできない4,36。対照的に、Baxの欠損は10nMのバフィロマイシンA1によって起こるカスパーゼ−3様活性の誘導と生存率の低下を著しく弱め、これはクロロキンの効果と同じように、高濃度のバフィロマイシンA1によるオートファジーの抑制がBax依存性のアポトーシスを誘導することを示唆する。
【0060】
クロロキンはカスパーゼ−3の強固な活性化を誘導したが、カスパーゼ−3の標的欠損とカスパーゼの広範な薬理学的阻害ではクロロキン誘導性の細胞死を防げなかった。これまでに、培養した終脳のニューロンで同様の結果が得られており18、これはクロロキン誘導性神経細胞死の拘束点がカスパーゼ活性化の上流に位置することを示唆する。これらの所見は、一般的なカスパーゼ阻害剤を用いた処理で減退した、HeLa細胞のクロロキン誘導性の細胞死とは対照的である19
【0061】
本発明は、バフィロマイシンA1の機能における、新規の濃度依存性の二相性を明らかにする。マクロライド系抗生物質の濃度が≦1nMでは、マクロライド系抗生物質は細胞の生存率のクロロキン誘導性の低下を防ぐ。他の代替的な機構的説明に限定されないが、マクロライド系抗生物質(バフィロマイシンA1で説明するように)はリソソーム障害および/または自家融解ストレスに起因するデスシグナルを抑制する可能性がある。そのような抑制が、Baxとカスパーゼ−3活性化の上流に位置することをデータは示唆する。そのようなデスシグナルを阻害することで、正常な神経機能が回復され、細胞死が防がれるまたは少なくなる。これらの結果は、低濃度のマクロライド系抗生物質の神経保護薬としての役割を示唆する。従って、自家融解ストレスおよび/またはリソソーム障害によって誘導される神経変性を軽減することにより、マクロライド系抗生物質は神経細胞の生存率を維持し、神経細胞の機能を保護する。
【0062】
前述の説明は、本発明の化合物と方法を図示し説明する。さらに、本発明は化合物と方法の一部の実施形態を説明するにすぎないが、上述のとおり、本発明の他の様々な組み合わせ、変更、環境で使用することができ、上記の教えおよび/または関連技術の技術または知識にふさわしい、本書で表される発明概念の範囲内で変更または修正することができることを理解するべきである。上記、本書で開示される実施形態は、本発明を実施する上で知られており、最良の形態を説明すること、また当業者がそのような実施形態、またはその他の実施形態において、本発明の特定の応用または使用に必要とされる様々な修正とともに、本発明を利用できるようにすることを意図している。従って、説明は、本発明を本書で開示される形態に限定することを意図するものではない。本書に引用する全ての文献は、完全に本発明で説明するものとして、参照することにより組み込まれる。
【0063】
方法
試薬
特に記載のない限り、試薬はSigma(ミズーリ州セントルイス)から購入した。
【0064】
動物
C57BL/6Jマウスを全ての実験で使用した。Baxとカスパーゼ−3が欠損したマウスの作成はこれまでに説明されている37〜39。これまでに説明されているように、遺伝的な状態は、(マウスの)尾から抽出したDNAを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析によって決定された38,39。NIH Guide for the Care and Use of Laboratory Animalsのガイドラインに従ってマウスを飼育した。全ての動物プロトコールは、アラバマ大学バーミンガム校のInstitutional Animal Care and Use Committeeによって認可された。
【0065】
細胞培養
小脳顆粒神経細胞(CGN)を、これまでに説明されたように生後7日のマウスから単離した40。CGNをポリ−L−リジンコートのプレートに、1250細胞/mmの密度で接種した。生存率とカスパーゼ活性のアッセイに、48ウェルのプレートを使用し、ウエスタンブロットによる分析には100mmのディッシュを使用し、液胞の酸性化の分析には4ウェルのParadox chamberスライド(Agene)を使用した。
【0066】
CGN を4日目にin vitroで処理した。BafA1(最終濃度0.1〜100nM)、BOC−アスパルチル(Ome)−フルオロメチルケトン(最終濃度150μM:MP Biomedical、オハイオ州オーロラ)、またはシクロヘキシミド(最終濃度0.01〜1μg/ml)の存在下、または存在しない状態で、馴化培地を、クロロキン(最終濃度5−40μM)を含む、または含まない新鮮培地と取替えた。CGNの別の培養物も、BafA1(最終濃度1〜10nM)の存在下、または存在しない状態で、スタウロスポリン(0.1μM)で24時間処理した。
【0067】
生存率とカスパーゼ3様活性の測定
細胞の生存率(CalceinAM蛍光性物質変換アッセイ:Molecular Probes、オレゴン州ユージーンによる)とカスパーゼ〜3様活性(蛍光性物質DEVD切断アッセイによる)を、これまでに説明されているように行い40、処理なしの対照と比較して表した。
【0068】
LTRを用いたCGNの標識
4ウェルのpermanox chamber スライド中で発育したCGNから馴化培地を除去した。LTR(0.05μM:Molecular Probes、オレゴン州ユージーン)とカルセインAM(2.5μg/ml;Molecular Probes、オレゴン州ユージーン)をLocke緩衝液中で調製し、各ウェルに37℃、30分間加えた。このインキュベーション後、細胞をLocke緩衝液で洗浄し、封入した。落射蛍光機能を備えたCarl Zeiss Axioskop顕微鏡で画像を得た。
【0069】
ウエスタンブロット
Accutase(Innovative Cell Technologies、カリフォルニア州サンディエゴ)を用いて37℃で5分間インキュベーションすることにより、細胞をそれらの基質から剥離した。馴化培地をと細胞を遠心分離した(700×g、5分間、4℃)。上清を吸引し、1mlの氷冷PBSで再懸濁した後、再び遠心分離した(700xg、5分間、4℃)。得られたペレットを、25mM HEPES、5mM EDTA、5mM MgCl、1%SDS、1%Triton X−100、1mM PMSF、1%プロテアーゼ阻害剤混合液、1%ホスファターゼ阻害剤混合液(Sigma)を含む、lysisバッファー中に再懸濁した。DNAをせん断するために、細胞溶解物を超音波分解した後、遠心分離し(10,000rpm、10分間、4℃)、得られた上清を(細胞溶解物全体を取る)新しい試験管に移した。引き続き、BCAアッセイ(Pierce)でタンパク濃度を決定した。等量のタンパク質はSDS−PAGEで分離され、PVDFに転写された。転写された後、ブロットをおよそ37kDaで半分に切断した。タンパク質負荷を正常化する目的で、最初に、切断されたまたは活性なフラグメントに対する抗体(Cell Signaling)を用いて、低分子量のブロットを、活性なカスパーゼ−3を検出するために使用した、β−IIIチュブリンの検出のために、高分子量のブロットを使用した(Santa Cruz)。ブロットを室温で1時間ブロッキングし、RT(5%ミルク)、続いて一次抗体で一晩インキュベートした。0.1%Tween20を含む1×TBSでブロットを洗浄した後、二次抗体(ヤギ抗ウサギIgG、Biorad)で室温1時間インキュベートし、続いて洗浄した。Supersignal chemiluminescence(Pierce)を用いてシグナルを検出した。切断カスパーゼ−3を検出した後、Restore Western Blot stripping buffer(Pierce)を用いてボトムブロットを切り出し、上述の同じウエスタンブロットプロトコールを用いてウサギ抗−LC3(Uchiyamaラボより提供)でプローブした。ブロットをBiorad Quantity One(登録商標)ソフトウェアを用いて密度測定でスキャンした。
【0070】
統計
一元配置分散分析ANOVA(3つ以上の集団の場合)または両側、対応のないt検定(二つの集団の場合)のいずれかを用いて処理による有意な効果を分析した。処理による遺伝子型特異的な効果を、有意性について二元配置分散分析ANOVAで分析した。ボンフェローニ検定を用いて事後解析を行った。p<0.05を有意であると考えた。
【0071】
参考文献
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【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1A〜1Dは、クロロキンが細胞の生存率を低下させ、小脳の顆粒神経細胞(CGN)のカスパーゼ−3様活性を増加させることを示す。方法の項で説明するように、CGNを単離して、in vitroで4日間培養し、%対照(CTL)と分別カスパーゼ−3様活性度(アポトーシスのマーカー)(図1B)で表す生存率(図1A)を、方法の項で説明するようにクロロキン(5〜40μM)で処理後24時間後に測定した。生存率(図1C)とカスパーゼ−3様活性(図1D)も、方法の項で説明するように、20μM クロロキンで処理後最大48時間後まで測定した。少なくとも三回反復した、独立した三回の実験は、検査した各時間ポイントと濃度を表す。処理と時間の有意な効果を、一元配置分散分析とボンフェローニの事後検定で評価した。図1Aと1Bに関しては、p<0.05(はCTLと比較して、は5μMのクロロキンと比較して、は10μMのクロロキンと比較して、は20μMのクロロキンと比較して)である。図1Cと1Dに関しては、 p<0.05(0時間と比較して、8時間と比較して、16時間と比較して、は24時間と比較して)である。
【図2】図2A−2Eは、クロロキンがCGNにアポトーシスの生物学的マーカー(カスパーゼ−3)と自家融解ストレス(LC3−II)を引き起こすことを示す。方法の項で説明するように、CGNを単離して、in vitroで4日間培養した。代表的なウエスタンブロット(図2A)は、0時間の処理なしの(NT)サンプル、また4〜48時間の、対照(CTL)またはクロロキン(20μM、CQ)処理溶解産物での、切断カスパーゼ−3の定量とLC3の切り出しを示す。β−III−チュブリンのレベル、ならびにLC3−II/I(図2E)の比と比較して表した、切断カスパーゼ−3(アポトーシスのマーカー)(図2B)と、LC3−I(図2C)とLC3−II(自家融解ストレスのマーカー)(図2D)のレベルを評価するために、少なくとも3つの独立した実験を使用した。
【図3】図3Aと3Bは、バフィロマイシンA1が、濃度依存性にCGNの生存率を低下させ、カスパーゼ−3様活性を上昇させることを示す。方法の項で説明するように、CGNを単離し、in vitroで4日間培養した。生存率(図3A)とカスパーゼ−3様活性度(アポトーシスのマーカー)(図3B)を、バフィロマイシンA1(BafA1)(0〜100nM)の投与後、24時間後に測定した。少なくとも三回反復した、独立した三回の実験は、検査した各時間ポイントと濃度を表す。処理の有意な効果は、一元配置分散分析とボンフェローニの事後検定で評価した。p<0.05(は0、0.1と0.3nMのバフィロマイシンA1に比較しては10nMのバフィロマイシンA1に比較して)である。
【図4】図4A〜4Dは、CGNにおいて、バフィロマイシンA1が用量依存性にアポトーシスのマーカーと自家融解ストレスを調節することを示す。方法の項で説明するように、CGNを単離し、in vitroで4日間培養した。代表的なウエスタンブロット(図4A)は、対照細胞(CTL)での、溶解物における切断カスパーゼ−3の定量とLC3のプロセシング、また様々な濃度のバフィロマイシンA1(BafAl)の24時間の投与を示す。β−III−チュブリンのレベル、ならびにLC3−II/I(図4D)の比と比較して表した、切断カスパーゼ−3(アポトーシスのマーカー)(図4B)と、LC3−IとLC3−II(自家融解ストレスのマーカー)(図4C)のレベルを評価するために、少なくとも3つの独立した実験を使用した。
【図5】図5A〜5Cは、クロロキン誘導性だが、スタウロスポリン誘導性でない、CGNの生存率の減少とカスパーゼ−3様活性の上昇を、バフィロマイシンA1が濃度依存性に弱めることを示す。方法の項で説明するように、CGNを単離し、in vitroで4日間培養した。20μM クロロキン(CQ)とバフィロマイシンA1(BafA1)(0〜100nM)を同時に投与した後、生存率(図5A)とカスパーゼ−3様活性度(図5B)を24時間後に測定した。バフィロマイシンA1(BafA1)(0〜100nM)とスタウロスポリン(0.1μM)(STS)を同時に投与した後、24時間後に生存率(図5C)を測定した。バフィロマイシンA1は、クロロキン誘導性の生存率とカスパーゼ−3活性(アポトーシスのマーカー)の減少を弱めたが、スタウロスポリン処理後、24時間後の生存率の減少を防げなかった。独立した三回の実験は、検査した各濃度を表す。図5Aと5Bに関しては、バフィロマイシンA1の有意な効果(CQの存在下、あるいは存在しない場合で)は、一元配置分散分析とボンフェローニの事後検定で評価した。p<0.05(はCTLと比べて、 はCQと比べて、は0.1nMバフィロマイシンA1と比べて、は0.3nMバフィロマイシンA1と比べて、§は1nM バフィロマイシンA1と比べて)。図5Cに関しては、スタウロスポリン(バフィロマイシンA1の存在下、または存在しない場合)の有意な効果を二元配置分散分析で評価し、バフィロマイシンA1の濃度依存性の差を、一元配置分散分析とボンフェローニの事後検定で評価した。p<0.05(はスタウロスポリン存在下のバフィロマイシンA1の各濃度と比べて、は0および1nMのバフィロマイシンA1と比べて)、
【図6】図6A〜6Dは、CGNのクロロキン誘導性のカスパーゼ−3の切断とLC3−II/LC3−Iの比を、バフィロマイシンA1が用量依存性に弱めることを示す。方法の項で説明するように、CGNを単離し、in vitroで4日間培養した。20μMクロロキン(CQ)の存在下、または存在しない状態で、バフィロマイシンA1(BafA1)(0.3〜10nM)で24時間処理したサンプルでの、切断カスパーゼ−3と、LC3の切り出しを示す。β−III−チュブリンのレベル、ならびにLC3−Iに対するLC3−IIの比(図6D)と比較して表した、切断カスパーゼ−3(アポトーシスのマーカー)(図6B)と、LC3−IとLC3−II(自家融解ストレスのマーカー)(図6C)のレベルを評価するために、少なくとも3つの独立した実験を使用した。
【図7】図7A〜7Fは、CGNの酸性の小胞の標識に対するクロロキンとバフィロマイシンA1の効果を示す。方法の項で説明するように、CGNを単離し、in vitroで4日間培養した。CGNを、(図7A)対照(CTL)、(図7B)1nMのバフィロマイシンA1(BafA1)、(図7C)10nMのバフィロマイシンA1(BafA1)、(図7D)20μMのクロロキン(CQ)、(図7E)20μMのクロロキン(CQ)+1nMのバフィロマイシンA1(BafA1)、(図7F) 20μMのクロロキン(CQ)+10nMのバフィロマイシンA1(BafA1)で24時間処理した後Lysotracker Redで酸性の小胞について、カルセインAMで生存率について標識した。各実験を3回反復し、結果は同様であった。スケールバー=100ミクロンである。
【図8】図8A〜8Fは、CGNにおけるバフィロマイシンA1の細胞保護効果がBax依存性であることを示す。方法の項で説明するように、CGNを単離し、in vitroで4日間培養した。対照(CTL)とクロロキン(CQ:20μM)処理の野生型(WT)とBax欠損(KO)CGNを、1nM(図8Aと8B)または10nM (図8Cと8D)バフィロマイシンA1(BafA1)の存在下で、生存率(図8Aと8C)とカスパーゼ−3様活性度(アポトーシスのマーカー)(図8Bと8D)について評価した。少なくとも3回反復した、少なくとも三回の独立した実験が、検査した各濃度と遺伝子型を表す。代表的なウエスタンブロット(図8E)は、対照薬またはクロロキン(CQ、20μM)処理後、24時間後のWTとKOの溶解物での、切断カスパーゼ−3とLC3の切り出しを示す。NTは処理なし、0時間である。代表的なウエスタンブロット(図8F)は、1nM(BafA1−低濃度)バフィロマイシンA1が、WTのCGN細胞における、表示された化合物での処理後24時間後の、クロロキン(CQ、20μM) 誘導性のp18Baxのレベルの上昇を抑制することを示す。図8Aと8Bに関しては、処理に対する遺伝子型の有意な効果を二元配置分散分析とボンフェローニの事後検定で評価し、有意な処理の効果を一元配置分散分析とボンフェローニの事後検定で評価した。p<0.05(はそれぞれのWTの処理ペアと比較して、は遺伝子型を適合させたCTLと比較して、は遺伝子型を適合させた、1nM バフィロマイシンA1を用いた処理と比較して、遺伝子型を適合させたCQを用いた処理と比較して)。図8Cと8Dに関しては、処理に対する遺伝子型の有意な効果を二元配置分散分析とボンフェローニの事後検定で評価し、有意な処理の効果を両側、対応のないt検定で評価した。p<0.05(はそれぞれのWT処理ペアと比べて、は遺伝子型を適合させたCTLと比べて)。
【図9】図9A〜9Dは、CGNにおいて、カスパーゼ−3の欠損と、カスパーゼの薬理学的阻害のどちらも、クロロキン誘導性の細胞死を防げないことを示す。方法の項で説明するように、CGNを単離し、in vitroで4日間培養した。細胞生存率(図9Aと9C)とカスパーゼ−3様活性度(アポトーシスのマーカー)(図9Bと9D)を、野生型(WT)およびカスパーゼ−3−欠損(KO)CGN(図9Aと9B)において、または広域スペクトルのカスパーゼ阻害剤BOC−アスパルチル(Ome)−フルオロメチルケトン(BAF、150μM:図9Cと9D)で同時に処理したCGNにおいて、クロロキン(CQ)または対照(CTL)で処理した後、24時間後に測定した。少なくとも三回反復した、少なくとも三回の独立した実験は、検査した各濃度と遺伝子型を表す。図9Aと9Bに関しては、両側、対応のないt検定で遺伝子型の有意な効果を評価した。p<0.05(はCTLと比べて)である。図9Cと9Dに関しては、処理の有意な効果を一元配置分散分析とボンフェローニの事後検定で評価した。p<0.05(はCTLと比べて、はCQと比べて)である。
【図10】図10は、神経細胞死に対する、バフィロマイシンA1の濃度依存性効果を示す、可能性のある提案モデルを示す。バフィロマイシンA1が、低濃度ではリソソーム障害または自家融解ストレスに起因する細胞デスシグナルを抑制することが仮定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経変性によって特徴付けられる疾患または症状の治療または予防を該治療または予防を必要とする対象において行う方法であって、少なくとも一つのマクロライド系抗生物質または、その医薬的に許容できる誘導体の治療上有効な量を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記治療上有効な量は1nM以下である、請求項1の方法。
【請求項3】
前記疾患または症状は、リソソーム蓄積症(LSD)、テイ・サックス病、若年性神経セロイドリポフスチン症、ニーマン・ピック病、サンドホフ病、サンフィリッポ症候群B型、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、パーキンソン病、ハンチントン病、FTDP−17、レヴィー小体型認知症で構成される群から選択される、請求項1の方法。
【請求項4】
前記マクロライド系抗生物質はplecomacrolide系抗生物質である、請求項1の方法。
【請求項5】
前記マクロライド系抗生物質は、バフィロマイシンA1、バフィロマイシンB1、コンカナマイシン、および前述のものの組み合わせからなる群から選択される、請求項1の方法。
【請求項6】
前記マクロライド系抗生物質はバフィロマイシンA1である、請求項1の方法。
【請求項7】
前記神経変性が、治療しない場合に観察される神経変性と比較して、少なくとも5%以上抑制される、請求項1の方法。
【請求項8】
前記医薬的に許容できる誘導体は、医薬的に許容できる塩、エステル、エステルの塩、溶媒和物、またはプロドラッグである、請求項1の方法。
【請求項9】
一つ以上の追加の治療薬を投与することをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項10】
前記治療は、神経細胞死、異常な神経病態、リソソーム障害によって生じるデスシグナルまたは自家融解ストレスによって生じるデスシグナルを、少なくとも部分的に抑制する、請求項1の方法。
【請求項11】
前記対象はヒトである、請求項1の方法。
【請求項12】
神経変性の予防を必要とする対象において、神経変性を少なくとも部分的に予防する方法であって、少なくとも一つのマクロライド系抗生物質またはその医薬的に許容できる誘導体の治療上有効な量を、前記対象に投与することを含む方法。
【請求項13】
前記治療上有効な量は1nM以下である、請求項12の方法。
【請求項14】
前記疾患または症状は、リソソーム蓄積症(LSD)、テイ・サックス病、若年性神経セロイドリポフスチン症、ニーマン・ピック病、サンドホフ病、サンフィリッポ症候群B型、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、パーキンソン病、ハンチントン病、FTDP−17、レヴィー小体型認知症からなる群から選択される、請求項12の方法。
【請求項15】
前記マクロライド系抗生物質はplecomacrolide系抗生物質である、請求項12の方法。
【請求項16】
前記マクロライド系抗生物質は、バフィロマイシンA1、バフィロマイシンB1、コンカナマイシン、および前述のものの組み合わせからなる群から選択される、請求項12の方法。
【請求項17】
前記マクロライド系抗生物質はバフィロマイシンA1である、請求項12の方法。
【請求項18】
前記神経変性が、治療しない場合に観察される神経変性と比較して、少なくとも5%以上抑制される、請求項12の方法。
【請求項19】
前記医薬的に許容できる誘導体は、医薬的に許容できる塩、エステル、エステルの塩、溶媒和物、またはプロドラッグである、請求項12の方法。
【請求項20】
一つ以上の追加の治療薬を投与することをさらに含む、請求項12の方法。
【請求項21】
前記治療は、神経細胞死、異常な神経病態、リソソーム障害によって生じるデスシグナルまたは自家融解ストレスによって生じるデスシグナルを、少なくとも部分的に抑制する、請求項12の方法。
【請求項22】
前記対象はヒトである、請求項12の方法。
【請求項23】
対象における症状を治療するが、前記対象におけるリソソーム経路に少なくとも部分的に有害な影響を及ぼす、薬の有害な影響を予防する方法であって、少なくとも一つのマクロライド系抗生物質、またはその医薬的に許容できる誘導体の治療上有効な量を、前記薬と併用して前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項24】
前記対象はヒトである、請求項23の方法。
【請求項25】
前記治療は、神経細胞死、異常な神経病態、リソソーム障害によって生じるデスシグナルまたは自家融解ストレスによって生じるデスシグナルを、少なくとも部分的に抑制する、請求項23の方法。
【請求項26】
前記マクロライド系抗生物質はplecomacrolide系抗生物質である、請求項23の方法。
【請求項27】
前記マクロライド系抗生物質は、バフィロマイシンA1、バフィロマイシンB1、コンカナマイシン、および前述のものの組み合わせからなる群から選択される、請求項23の方法。
【請求項28】
前記マクロライド系抗生物質はバフィロマイシンA1である、請求項23の方法。
【請求項29】
前記医薬的に許容できる誘導体は、医薬的に許容できる塩、エステル、エステルの塩、溶媒和物、またはプロドラッグである、請求項23の方法。
【請求項30】
前記薬はクロロキンであり、及び前記症状はマラリア、関節リウマチ、または自己免疫疾患である、請求項23の方法。
【請求項31】
前記マクロライド系抗生物質は、plecomacrolide系抗生物質である、請求項30の方法。
【請求項32】
前記マクロライド系抗生物質は、バフィロマイシンA1、バフィロマイシンB1、コンカナマイシン、および前述のものの組み合わせからなる群から選択される、請求項30の方法。
【請求項33】
前記マクロライド系抗生物質はバフィロマイシンA1である、請求項30の方法。
【請求項34】
前記医薬的に許容できる誘導体は、医薬的に許容できる塩、エステル、エステルの塩、溶媒和物、またはプロドラッグである、請求項30の方法。
【請求項35】
前記治療は、神経細胞死、異常な神経病態、リソソーム障害によって生じるデスシグナルまたは自家融解ストレスによって生じるデスシグナルを、少なくとも部分的に抑制する、請求項30の方法。
【請求項36】
前記薬はフルオロキノロン類であり、前記症状は治療した骨、関節感染、皮膚感染、尿路感染、前立腺の炎症、耳感染、気管支炎、肺炎、結核、性行為感染症(STD)、後天性免疫不全症候群患者を侵す感染症である、請求項23の方法。
【請求項37】
前記フルオロキノロン類は、モキシフロキサシン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、ノルフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、スパルフロキサシン、および前述のものの組み合わせからなる群から選択される、請求項36の方法。
【請求項38】
前記マクロライド系抗生物質はplecomacrolide系抗生物質である、請求項36の方法。
【請求項39】
前記マクロライド系抗生物質は、バフィロマイシンA1、バフィロマイシンB1、コンカナマイシン、および前述のものの組み合わせからなる群から選択される、請求項36の方法。
【請求項40】
前記マクロライド系抗生物質はバフィロマイシンA1である、請求項36の方法。
【請求項41】
前記医薬的に許容できる誘導体は、医薬的に許容できる塩、エステル、エステルの塩、溶媒和物、またはプロドラッグである、請求項36の方法。
【請求項42】
前記治療は、神経細胞死、異常な神経病態、リソソーム障害によって生じるデスシグナルまたは自家融解ストレスによって生じるデスシグナルを、少なくとも部分的に抑制する、請求項36の方法。
【請求項43】
対象における症状を治療するが、前記対象に自家融解ストレスを引き起こした薬の有害な影響を予防する方法であって、少なくとも一つのマクロライド系抗生物質、またはその医薬的に許容できる誘導体の治療上有効な量を、前記薬と併用して前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項44】
前記対象はヒトである、請求項43の方法。
【請求項45】
前記マクロライド系抗生物質はplecomacrolide系抗生物質である、請求項43の方法。
【請求項46】
前記マクロライド系抗生物質は、バフィロマイシンA1、バフィロマイシンB1、コンカナマイシン、および前述のものの組み合わせからなる群から選択される、請求項43の方法。
【請求項47】
前記マクロライド系抗生物質はバフィロマイシンA1である、請求項43の方法。
【請求項48】
前記医薬的に許容できる誘導体は、医薬的に許容できる塩、エステル、エステルの塩、溶媒和物、またはプロドラッグである、請求項43の方法。
【請求項49】
前記治療は、神経細胞死、異常な神経病態、リソソーム障害によって生じるデスシグナルまたは自家融解ストレスによって生じるデスシグナルを、少なくとも部分的に抑制する、請求項43の方法。
【請求項50】
前記薬はクロロキンであり、前記症状はマラリア、関節リウマチ、または自己免疫疾患である、請求項43の方法。
【請求項51】
前記マクロライド系抗生物質はplecomacrolide系抗生物質である、請求項50の方法。
【請求項52】
前記マクロライド系抗生物質は、バフィロマイシンA1、バフィロマイシンB1、コンカナマイシン、および前述のものの組み合わせからなる群から選択される、請求項50の方法。
【請求項53】
前記マクロライド系抗生物質はバフィロマイシンA1である、請求項50の方法。
【請求項54】
前記医薬的に許容できる誘導体は、医薬的に許容できる塩、エステル、エステルの塩、溶媒和物、またはプロドラッグである、請求項50の方法。
【請求項55】
前記治療は、神経細胞死、異常な神経病態、リソソーム障害によって生じるデスシグナルまたは自家融解ストレスによって生じるデスシグナルを、少なくとも部分的に抑制する、請求項50の方法。
【請求項56】
前記薬はフルオロキノロン類であり、前記症状は治療した骨、関節感染、皮膚感染、尿路感染、前立腺の炎症、耳感染、気管支炎、肺炎、結核、性行為感染症(STD)、後天性免疫不全症候群患者を侵す感染症である、請求項43の方法。
【請求項57】
前記フルオロキノロン類は、モキシフロキサシン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、ノルフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、スパルフロキサシン、および前述のものの組み合わせからなる群から選択される、請求項56の方法。
【請求項58】
前記マクロライド系抗生物質はplecomacrolide系抗生物質である、請求項56の方法。
【請求項59】
前記マクロライド系抗生物質は、バフィロマイシンA1、バフィロマイシンB1、コンカナマイシン、および前述のものの組み合わせからなる群から選択される、請求項56の方法。
【請求項60】
前記マクロライド系抗生物質はバフィロマイシンA1である、請求項56の方法。
【請求項61】
前記医薬的に許容できる誘導体は、医薬的に許容できる塩、エステル、エステルの塩、溶媒和物、またはプロドラッグである、請求項56の方法。
【請求項62】
前記治療は、神経細胞死、異常な神経病態、リソソーム障害によって生じるデスシグナルまたは自家融解ストレスによって生じるデスシグナルを、少なくとも部分的に抑制する、請求項56の方法。
【請求項63】
神経変性によって特徴付けられる疾患または症状の治療のための医薬組成物であって、少なくとも一つのマクロライド系抗生物質、またはその医薬的に許容できる誘導体の治療上有効な量を含む、前記医薬組成物。
【請求項64】
前記疾患または症状は、リソソーム蓄積症(LSD)、テイ・サックス病、若年性神経セロイドリポフスチン症、ニーマン・ピック病、サンドホフ病、サンフィリッポ症候群B型、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、パーキンソン病、ハンチントン病、FTDP−17、レヴィー小体型認知症からなる群から選択される、請求項63の医薬組成物。
【請求項65】
前記マクロライド系抗生物質はplecomacrolide系抗生物質である、請求項63の方法。
【請求項66】
前記マクロライド系抗生物質は、バフィロマイシンA1、バフィロマイシンB1、コンカナマイシン、および前述のものの組み合わせからなる群から選択される、請求項63の方法。
【請求項67】
前記マクロライド系抗生物質はバフィロマイシンA1である、請求項63の方法。
【請求項68】
前記医薬的に許容できる誘導体は、医薬的に許容できる塩、エステル、エステルの塩、溶媒和物、またはプロドラッグである、請求項63の方法。
【請求項69】
医薬的に許容できる担体をさらに含む、請求項63の方法。
【請求項70】
神経変性の予防のための医薬組成物であって、少なくとも一つのマクロライド系抗生物質、またはその医薬的に許容できる誘導体の治療上有効な量を含む、前記医薬組成物。
【請求項71】
前記マクロライド系抗生物質はplecomacrolide系抗生物質である、請求項70の方法。
【請求項72】
前記マクロライド系抗生物質は、バフィロマイシンA1、バフィロマイシンB1、コンカナマイシン、および前述のものの組み合わせからなる群から選択される、請求項70の方法。
【請求項73】
前記マクロライド系抗生物質はバフィロマイシンA1である、請求項70の方法。
【請求項74】
前記医薬的に許容できる誘導体は、医薬的に許容できる塩、エステル、エステルの塩、溶媒和物、またはプロドラッグである、請求項70の方法。
【請求項75】
医薬的に許容できる担体をさらに含む、請求項70の方法。
【請求項76】
神経変性を予防するために化合物を同定する方法であって、リソソーム系が少なくとも部分的に機能が損なわれているモデル系を提供すること、前記化合物を用いて前記モデル系をインキュベートすること、前記化合物の存在下および前記化合物の非存在下において神経変性を示す前記モデル系の特性を決定すること、及び前記特性が前記化合物の存在によって増加するかまたは減少するかを決定すること、を含む前記方法。
【請求項77】
前記特性はカスパーゼ−3活性、アポトーシスの生化学的マーカーまたは自家融解ストレスの生化学的マーカーのうちの少なくとも一つであり、また前記特性は前記化合物の存在によって減少する、請求項76の方法。
【請求項78】
前記アポトーシスの生化学的マーカーはカスパーゼ−3活性である、請求項77の方法。
【請求項79】
前記自己貪食ストレスの生化学的マーカーはLC3−IIまたはLC3−IIのLC3−Iに対する比である、請求項77の方法。
【請求項80】
前記特性は細胞の生存率または小胞の酸性化のうちの少なくとも一つであり、また前記特性は前記化合物の存在によって増加する、請求項76の方法。
【請求項81】
前記モデル系は株化細胞である、請求項76の方法。
【請求項82】
神経変性を治療または予防するために化合物を同定する方法であって、自己貪食ストレスの状態にあるモデル系を提供すること、前記化合物を用いて前記モデル系をインキュベートすること、前記化合物の存在下および前記化合物の非存在下において前記モデル系の特性を決定すること、前記化合物の存在下および非存在下において決定された前記特性を比較すること、を含む方法。
【請求項83】
前記特性はカスパーゼ−3活性、アポトーシスの生化学的マーカーまたは自己貪食ストレスの生化学的マーカーのうちの少なくとも一つであり、また前記特性は前記化合物の存在によって減少する、請求項82の方法。
【請求項84】
前記アポトーシスの生化学的マーカーはカスパーゼ−3活性である、請求項83の方法。
【請求項85】
前記自己貪食ストレスの生化学的マーカーはLC3−IIまたはLC3−IIのLC3−Iに対する比である、請求項83の方法。
【請求項86】
前記特性は細胞の生存率または小胞の酸性化のうちの少なくとも一つであり、また前記特性は前記化合物の存在によって増加する、請求項82の方法。
【請求項87】
前記モデル系は株化細胞である、請求項82の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−504743(P2009−504743A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527029(P2008−527029)
【出願日】平成18年8月14日(2006.8.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/031619
【国際公開番号】WO2007/022076
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(505320791)ザ・ユー・エイ・ビー・リサーチ・フアンデーシヨン (5)
【Fターム(参考)】