説明

マスク検査装置、有機EL装置の製造装置、マスク検査方法、有機EL装置の製造方法

【課題】成膜用マスクの所望の品質特性を検出可能であって、効率的にマスク検査が可能
なマスク検査装置、これを備えた有機EL装置の製造装置、これを用いたマスク検査方法
および有機EL装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】本適用例のマスク検査装置150は、帯状に光を射出する光源153と、帯
状の光により成膜用マスクとしての蒸着マスク50の表面を所定の方向に走査するように
、光源153と蒸着マスク50とを相対移動させる走査機構としての搬送機構115と、
走査に伴って蒸着マスク50の表面から反射した光を受光する受光部156と、受光部1
56の受光信号を画像に合成する画像処理部と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の機能層を基板上において選択的に成膜する際に用いる成膜用マスクの
マスク検査装置、有機EL装置の製造装置、マスク検査方法、有機EL装置の製造方法に
関する。
【背景技術】
【0002】
上記成膜用マスクの検査装置としては、支持台の所定位置に配置された蒸着マスクを照
明する赤外線光源と、赤外線光源により照明された蒸着マスクからの反射光に基づき、蒸
着マスク表面の異物の有無を検知する検知部とを備えた蒸着マスクの検査装置が知られて
いる(特許文献1)。
【0003】
上記検査装置の実施形態において、検知部は、赤外線光源によって照明された蒸着マス
クを撮像する撮像部と、撮像部によって撮像された蒸着マスクの画像に対して所定の画像
処理を施す画像処理部などから構成されている。撮像部は赤外線を選択的に感知するもの
が用いられ、蒸着マスクの表面は赤外線を反射するのに対して、異物は赤外線を吸収して
画像上では暗く映ることを利用しているので、異物の検出率が向上するとしている。
さらには、より異物の検出率を上げる方法として、赤外線が異なる方向から蒸着マスク
の表面に照射されるように複数の赤外線光源を配置して、蒸着マスクの表面の凹凸による
陰影を低減する方法が開示されている。
【0004】
また、上記検査装置を用いた検査方法としては、照明された蒸着マスクを所定の繰り返
し単位で部分的に撮像し、撮像された繰り返し単位の画像を比較することにより異物の有
無とその位置とを検知するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−102003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記検査装置では、撮像部の分解能により検知可能な異物の大きさが左
右されるので、より微細な異物を検出しようとする場合には、撮像単位の面積を小さくし
て撮像する必要がある。すなわち、蒸着マスクを繰り返し撮像する回数が増えてしまい、
異物の検査により多くの時間が掛かるという課題がある。
また、異物の付着以外にも蒸着マスクの表面の凹凸や変形などの寸法精度が成膜に影響
するおそれがあり、寸法精度に関する品質も確保しなければならないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の
形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例のマスク検査装置は、成膜パターンに対応した開口部を有する成
膜用マスクのマスク検査装置であって、帯状に光を射出する光源と、前記帯状の光により
前記成膜用マスクの表面を所定の方向に走査するように、前記光源と前記成膜用マスクと
を相対移動させる走査機構と、前記走査に伴って前記成膜用マスクの表面から反射した光
を受光する受光部と、前記受光部の受光信号を画像に合成する画像処理部と、を備えたこ
とを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、光源から例えばスポット状の光を照射して成膜用マスクの表面を走
査する構成に比べて、帯状の光を射出する光源を用いるので、成膜用マスクの表面を少な
くとも1回走査することにより、検査対象の表面の画像を入手することができる。得られ
た画像から例えば異物の付着や変形などのマスク不良を検出することができる。すなわち
、効率的にマスク不良を検出可能なマスク検査装置を提供することができる。
【0010】
[適用例2]上記適用例のマスク検査装置において、前記画像処理部は、前記成膜用マ
スクの設計上の画像と前記受光信号に基づいて合成された画像とを重ね合わせる画像処理
を行うことを特徴とする。
この構成によれば、受光部の受光信号により合成された成膜用マスクの画像において、
例えば開口部が設計上の寸法に対して合致しているか、異常がないか容易に確認すること
ができる。すなわち、成膜用マスクの寸法精度に関するマスク不良を検出可能なマスク検
査装置を提供できる。
【0011】
[適用例3]上記適用例のマスク検査装置において、前記光源が白色光を射出すること
を特徴とする。
この構成によれば、光源が白色光を射出するため、有色の単色光を射出する場合に比べ
て、成膜用マスクの表面に付着した異物や汚れなどのマスク不良を特定し易い。
【0012】
[適用例4]上記適用例のマスク検査装置において、前記成膜用マスクの表面に透明基
板を重ねて配置する配置機構を有し、前記光源は前記透明基板に向けて特定の発光波長域
を有する単色光を射出し、前記画像処理部は、前記透明基板と前記成膜用マスクとの間に
生ずる前記単色光の干渉縞の画像を合成するとしてもよい。
この構成によれば、成膜用マスクに透明基板を重ね、透明基板と成膜用マスクとの間に
生ずる単色光の干渉縞の画像を確認することにより、相互の密着度合いが判明する。すな
わち、成膜用マスクが局部的に変形していたり、全体的に反っていたりするマスク不良を
干渉縞の状態から検出することができる。
【0013】
[適用例5]上記適用例のマスク検査装置において、前記光源は白色光と前記特定の発
光波長域を有する単色光とを切り替えて射出することが好ましい。
この構成によれば、白色光で走査して異物や汚れなどのマスク不良を検出し、単色光で
走査して変形や反りなどのマスク不良を検出することができる。すなわち、1台の装置で
より多くのマスク不良特性を検出可能なマスク検査装置を提供できる。
【0014】
[適用例6]上記適用例のマスク検査装置において、前記走査に伴って前記成膜用マス
クの表面から反射した光を前記受光部に対して集光する集光部をさらに備えることが好ま
しい。
光源から射出される帯状の光の長さ(幅)は、成膜用マスクを1回で走査可能な長さで
あることが効率的であることは言うまでもない。この構成によれば、集光部によって成膜
用マスクの表面から反射した光が受光部に集光されるので、帯状の光の長さに対応した受
光部を用意する必要がない。言い換えれば、受光部の分解能に応じて集光部を設ければよ
いので、受光部の選定や配置など装置設計上の制約事項を減らすことができる。
【0015】
[適用例7]本適用例の有機EL装置の製造装置は、膜形成領域に対応した開口部を有
する成膜用マスクと被成膜基板とを重ね合わせて前記被成膜基板の前記膜形成領域に有機
EL素子を構成する機能層を成膜する有機EL装置の製造装置であって、膜形成材料を蒸
発させる蒸発源を有し、前記蒸発源に対向するように前記成膜用マスクが重ね合わされた
前記被成膜基板を保持して成膜がされる少なくとも1つの第1チャンバーと、前記第1チ
ャンバーに連通した第2チャンバーと、上記適用例のマスク検査装置とを備え、前記第2
チャンバー内に、前記マスク検査装置のうち少なくとも前記光源と、前記走査機構と、前
記受光部とが設けられていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、わざわざ製造装置の外に成膜用マスクを持ち出さなくても、第2チ
ャンバー内において成膜用マスクを検査することができ、効率的かつ歩留まりよく有機E
L装置を製造可能な有機EL装置の製造装置を提供することができる。
【0017】
[適用例8]上記適用例の有機EL装置の製造装置において、前記第1チャンバーが複
数連結して配置され、前記第2チャンバーは、上流側の前記第1チャンバーと下流側の前
記第1チャンバーとに連通して使用済みの前記成膜用マスクを下流側から上流側に搬送す
る搬送経路であるとしてもよい。
この構成によれば、所謂インラインの有機EL装置の製造装置において、繰り返し成膜
用マスクを使用する場合にも、効率的にマスク検査を行うことができる。
【0018】
[適用例9]本適用例のマスク検査方法は、成膜パターンに対応した開口部を有する成
膜用マスクのマスク検査方法であって、光源から射出された帯状の光により前記成膜用マ
スクの表面を所定の方向に走査する走査工程と、前記走査に伴って前記成膜用マスクの表
面から反射した光を受光部により受光して、前記受光部の受光信号により合成された画像
に基づいてマスク不良を検出する検出工程と、を備えたことを特徴とする。
【0019】
この方法によれば、走査工程では、帯状の光を射出して成膜用マスクの表面を走査する
ので、光源から例えばスポット状の光を照射して走査する場合に比べて、検査対象の表面
の画像を容易に入手することができる。検出工程では、得られた画像から例えば異物の付
着や変形などのマスク不良を検出することができる。すなわち、効率的にマスク不良を検
出可能なマスク検査方法を提供することができる。
【0020】
[適用例10]上記適用例のマスク検査方法において、前記検出工程は、前記成膜用マ
スクの設計上の画像と前記受光信号に基づいて合成された画像とを比較して、前記マスク
不良としての寸法不良を検出することを特徴とする。
この方法によれば、受光部の受光信号により合成された成膜用マスクの画像における開
口部が設計上の寸法に対して合致しているか、異常がないか容易に確認することができる
。すなわち、成膜用マスクの寸法精度に関するマスク不良を検出可能なマスク検査方法を
提供できる。
【0021】
[適用例11]上記適用例のマスク検査方法において、前記走査工程は、前記光源から
白色光を射出し、前記検出工程は、前記マスク不良として所定の大きさ以上の異物や汚れ
の付着を検出することを特徴とする。
この方法によれば、光源が白色光を射出するため、有色の単色光を射出する場合に比べ
て、成膜用マスクの表面に付着した異物や汚れなどのマスク不良を的確に特定することが
できる。
【0022】
[適用例12]上記適用例のマスク検査方法において、前記検出工程は、前記成膜用マ
スクの前記開口部に付着する前記異物を検出するとしてもよい。
この方法によれば、開口部においては光源から射出された光が透過するため、受光部の
受光信号により得られた画像では開口部が暗くなる。よって、開口部に異物が付着してい
る場合は、異物が成膜用マスクの表面に付着している場合に比べて、高いコントラスト比
で異物を検出可能である。言い換えれば、成膜用マスクとして成膜に必要な開口部の異物
による目詰まりを精度よく検出することができる。
【0023】
[適用例13]上記適用例のマスク検査方法において、前記成膜用マスクの表面に透明
基板を重ねて配置する配置工程を備え、前記走査工程は前記光源から前記透明基板に向け
て特定の発光波長域を有する単色光を射出し、前記検出工程は、前記受光部の受光信号に
基づいて合成された前記透明基板と前記成膜用マスクとの間に生ずる前記単色光の干渉縞
の画像に基づいて、前記マスク不良としての変形不良を検出することを特徴とする。
この方法によれば、単色光の干渉縞の発生状態は、成膜用マスクと透明基板との密着状
態を反映するので、成膜用マスクにおける変形不良を容易に検出することができる。
【0024】
[適用例14]上記適用例のマスク検査方法において、前記検出工程は、前記単色光の
干渉縞の画像において、所定の方向における前記干渉縞の粗密状態から前記成膜用マスク
の反りを検出するとしてもよい。
成膜用マスクは被成膜基板と重ねることにより用いられるため、一般的に被成膜基板に
重ね合わされる側の表面が平坦であることが求められる。一方で、例えば成膜を行うと膜
形成材料自体が成膜用マスクに付着して、成膜用マスクの自重が増加し反りが生ずること
がある。反りが生ずると成膜への影響が懸念される。この方法によれば、成膜用マスクの
反りを精度よく検出することができる。
【0025】
[適用例15]本適用例の他のマスク検査方法は、成膜パターンに対応した開口部を有
する成膜用マスクのマスク検査方法であって、光源から射出された帯状の白色光により前
記成膜用マスクの表面を所定の方向に走査する第1走査工程と、前記第1走査工程に伴っ
て前記成膜用マスクの表面から反射した前記白色光を受光部により受光して、前記受光部
の受光信号により合成された画像に基づいて、少なくとも所定の大きさ以上の異物の付着
を検出する第1検出工程と、前記成膜用マスクの表面に透明基板を重ねて配置する配置工
程と、前記光源から前記透明基板に向けて特定の発光波長域を有する単色光を射出し、前
記成膜用マスクの表面を所定の方向に走査する第2走査工程と、前記第2走査工程に伴っ
て前記成膜用マスクの表面から反射した前記単色光を前記受光部により受光して、前記受
光部の受光信号に基づいて合成された前記透明基板と前記成膜用マスクとの間に生ずる前
記単色光の干渉縞の画像に基づいて前記成膜用マスクの変形不良を検出する第2検出工程
と、を備えたことを特徴とする。
【0026】
この方法によれば、第1検出工程では、成膜用マスクの表面に対する少なくとも異物や
汚れの付着を検出し、第2検出工程では、成膜用マスクの変形不良を検出することができ
る。
【0027】
[適用例16]本適用例の有機EL装置の製造方法は、膜形成領域に対応した開口部を
有する成膜用マスクと被成膜基板とを重ね合わせて前記被成膜基板の前記膜形成領域に有
機EL素子を構成する機能層を成膜する成膜工程を有する有機EL装置の製造方法であっ
て、上記適用例のマスク検査方法を用い、前記成膜工程の前後のうち少なくとも一方にお
いて、前記成膜用マスクを検査するマスク検査工程を備えたことを特徴とする。
この方法によれば、マスク不良を確実に検出して、不具合のない成膜用マスクを用いる
ことが可能となり、歩留まりよく有機EL装置を製造可能な有機EL装置の製造方法を提
供することができる。
【0028】
[適用例17]上記適用例の有機EL装置の製造方法によれば、前記成膜工程は、第1
チャンバー内において膜形成材料を蒸発させることにより前記被成膜基板の前記膜形成領
域に前記機能層を形成し、前記マスク検査工程は、前記第1チャンバーに連通する第2チ
ャンバー内において、減圧下で行われることが好ましい。
この方法によれば、第1チャンバーからわざわざ大気中に成膜用マスクを持ち出さなく
ても、第1チャンバーに連通する第2チャンバー内において成膜用マスクを検査すること
ができ、効率的かつ歩留まりよく有機EL装置を製造可能な有機EL装置の製造方法を提
供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】有機EL装置の構成を示す概略正面図。
【図2】有機EL装置の構造を示す要部断面図。
【図3】有機EL素子の構成を示す模式図。
【図4】有機EL装置の製造装置の構成を模式的に示した上面図。
【図5】有機蒸着部の搬送方向に沿った内部構造を示す概略側面図。
【図6】(a)〜(d)はマスク組込室におけるマスク組み込み動作を示す概略図。
【図7】(a)は蒸着マスクの構成を示す概略平面図、(b)および(c)は開口部の形状の例を示す概略平面図。
【図8】マスク検査装置の構造を示す概略図。
【図9】集光部の構成を説明する概略斜視図。
【図10】マスク検査装置の電気的および機械的な構成を示すブロック図。
【図11】有機EL装置の製造方法を示すフローチャート。
【図12】(a)〜(g)は有機EL装置の製造方法を示す概略断面図。
【図13】マスク検査方法を示すフローチャート。
【図14】異物や汚れなどのマスク検査方法を示す概略図。
【図15】マスク検査方法における干渉縞の発生を説明する概略図。
【図16】部分的な変形のマスク検査方法を示す概略図。
【図17】全体的な反りのマスク検査方法を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を具体化した実施形態について、電気光学装置である有機EL(エレクト
ロルミネセンス)装置の製造装置および製造方法を例にして図面に従って説明する。なお
、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小し
て表示している。
【0031】
<有機EL装置>
まず、本実施形態における有機EL装置について、図1〜図3を参照して説明する。図
1は有機EL装置の構成を示す概略正面図、図2は有機EL装置の構造を示す要部断面図
、図3は有機EL素子の構成を示す模式図である。
【0032】
図1および図2に示すように、有機EL装置10は、それぞれの表示画素7に対応して
有機EL素子12(図2参照)が設けられた素子基板1と、複数の有機EL素子12を封
着する封着層35(図2参照)を介して素子基板1を封止する封止基板2とを備えている

【0033】
素子基板1は、有機EL素子12を駆動する駆動素子を備えた回路部11(図2参照)
を有している。そして、表示領域6において赤(R)、緑(G)、青(B)のうち同一の
発光色が得られる表示画素7が、同一方向に配列する所謂ストライプ方式の構成となって
いる。なお、表示画素7は、実際には非常に微細なものであり、図示の都合上拡大してい
る。
【0034】
素子基板1は、封止基板2よりも一回り大きく、額縁状に張り出した部分には、駆動素
子であるTFT(Thin Film Transistor)素子8(図2参照)を駆動する2つの走査線
駆動回路部3と1つのデータ線駆動回路部4が設けられている。素子基板1の端子部1a
には、これらの駆動回路部3,4と外部駆動回路とを接続するためのフレキシブルな中継
基板5が実装されている。
【0035】
図2に示すように、有機EL装置10において、有機EL素子12は、第1電極(ある
いは画素電極)としての陽極31と、陽極31を区画する隔壁部33と、陽極31上に積
層形成された有機膜からなる発光層を含む機能層32とを有している。また、機能層32
を介して陽極31と対向するように形成された第2電極(あるいは共通電極)としての陰
極34を有している。
【0036】
隔壁部33は、フェノールまたはポリイミドなどの絶縁性を有する感光性樹脂からなり
、表示画素7を構成する陽極31の周囲を一部覆って、複数の陽極31をそれぞれ区画す
るように設けられている。
【0037】
陽極31は、素子基板1上に形成されたTFT素子8の3端子のうちの1つに接続して
おり、例えば、透明電極材料であるITO(Indium Tin Oxide)を厚さ100nm程度
に成膜した電極である。なお、図示省略したが、陽極31の下層(平坦化層28側)に、
絶縁層を介してAlからなる反射層が設けられている。当該反射層は、機能層32におけ
る発光を封止基板2側に反射するものである。また、当該反射層はAlに限定されず、発
光を反射する機能(反射面)を有していればよい。例えば、絶縁性の有機材料あるいは無
機材料を用いて凹凸を有する反射面を形成する方法、陽極31自体を反射機能を有する導
電材料で構成し、表面層にITO膜を形成する方法などが挙げられる。
【0038】
陰極34は、同じく、ITOなどの透明電極材料により形成されている。
【0039】
封止基板2は、透明なガラス等からなる基板を用いている。有機EL素子12に面する
側には、表示画素7の配置に対応した赤(R)、緑(G)、青(B)、3色のフィルター
エレメント36R,36G,36Bとこれを区画する遮光部37が設けられている。
【0040】
有機EL装置10は、いわゆるトップエミッション型の構造となっており、陽極31と
陰極34との間に駆動電流を流して機能層32で発光した白色光を上記反射層で反射させ
、フィルターエレメント36R,36G,36Bを介して封止基板2側から取り出す構成
となっている。トップエミッション型の構造であるため、素子基板1は、透明基板および
不透明基板のいずれも用いることができる。不透明基板としては、例えば、アルミナ等の
セラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したも
のの他に、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0041】
素子基板1には、有機EL素子12を駆動する回路部11が設けられている。すなわち
、素子基板1の表面にはSiO2を主体とする下地保護層21が下地として形成され、そ
の上にはシリコン層22が形成されている。このシリコン層22の表面には、SiO2
よび/またはSiNを主体とするゲート絶縁層23が形成されている。
【0042】
また、シリコン層22のうち、ゲート絶縁層23を挟んでゲート電極26と重なる領域
がチャネル領域22aとされている。なお、このゲート電極26は、図示しない走査線の
一部である。一方、シリコン層22を覆い、ゲート電極26を形成したゲート絶縁層23
の表面には、SiO2を主体とする第1層間絶縁層27が形成されている。
【0043】
また、シリコン層22のうち、チャネル領域22aのソース側には、低濃度ソース領域
および高濃度ソース領域22cが設けられる一方、チャネル領域22aのドレイン側には
低濃度ドレイン領域および高濃度ドレイン領域22bが設けられて、いわゆるLDD(Li
ght Doped Drain)構造となっている。これらのうち、高濃度ソース領域22cは、ゲ
ート絶縁層23と第1層間絶縁層27とにわたって開孔するコンタクトホール25aを介
して、ソース電極25に接続されている。このソース電極25は、電源線(図示せず)の
一部として構成されている。一方、高濃度ドレイン領域22bは、ゲート絶縁層23と第
1層間絶縁層27とにわたって開孔するコンタクトホール24aを介して、ソース電極2
5と同一層からなるドレイン電極24に接続されている。
【0044】
ソース電極25およびドレイン電極24が形成された第1層間絶縁層27の上層には、
例えばアクリル系の樹脂成分を主体とする平坦化層28が形成されている。この平坦化層
28は、アクリル系やポリイミド系等の、耐熱性絶縁性樹脂などによって形成されたもの
で、TFT素子8やソース電極25、ドレイン電極24などによる表面の凹凸をなくすた
めに形成された公知のものである。
【0045】
そして、陽極31が、この平坦化層28の表面上に形成されると共に、該平坦化層28
に設けられたコンタクトホール28aを介してドレイン電極24に接続されている。すな
わち、陽極31は、ドレイン電極24を介して、シリコン層22の高濃度ドレイン領域2
2bに接続されている。陰極34は、GNDに接続されている。したがって、スイッチン
グ素子としてのTFT素子8により、上記電源線から陽極31に供給され陰極34との間
で流れる駆動電流を制御する。これにより、回路部11は、所望の有機EL素子12を発
光させカラー表示を可能としている。
【0046】
なお、有機EL素子12を駆動する回路部11の構成は、これに限定されるものではな
い。
【0047】
図3に示すように、有機EL素子12は、陽極31と陰極34とに挟まれた機能層32
を有する。機能層32は、例えば、正孔輸送層(HTL)32h、各色の発光層32LR
,32LB,32LG、電子輸送層(ETL)32eと呼ばれる複数の薄膜層からなり、
素子基板1上の陽極31側からこの順で積層されている。
【0048】
正孔輸送層(HTL)32hとしては、例えば、トリフェニルアミン誘導体(TPD)
、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン
誘導体等が挙げられる。
【0049】
発光層32LR,32LB,32LGの形成材料としては、蛍光あるいは燐光を発光す
ることが可能な公知の発光材料が用いられる。例えば、発光層32LRを形成する材料と
しては、Alq3(トリス(8−ヒドロキシキノリノール)アルミニウム)をホストとし
てアシストドーパントであるルブレンと赤色ドーパントであるDCM2(ジアノメチレン
ピラン誘導体)とを含む発光材料が挙げられる。発光層32LBを形成する材料としては
、BH215をホストとして青色ドーパントであるBD102を含む発光材料が挙げられ
る。発光層32LGを形成する材料としては、BH215をホストとして緑色ドーパント
であるGD206を含む発光材料が挙げられる。本構成は、いわゆる「ドーパント法」に
基づく3色の発光層を備え、白色発光を可能としている。ホストであるBH215、ドー
パントであるBD102、GD206は、いずれも出光興産製の公知材料である。
【0050】
電子輸送層(ETL)32eの形成材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、
アントラキノジメタンおよびその誘導体、ベンゾキノンおよびその誘導体、ナフトキノン
およびその誘導体、アントラキノンおよびその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタ
ンおよびその誘導体、フルオレン誘導体、8−ヒドロキシキノリンおよびその誘導体の金
属錯体等が挙げられる。
【0051】
これらの正孔輸送層(HTL)32h、発光層32LR,32LB,32LG、電子輸
送層(ETL)32eの形成材料は所謂低分子系材料であり、真空蒸着法により成膜する
ことができる。
【0052】
このような有機EL素子12を有する素子基板1は、透明な熱硬化型エポキシ樹脂等を
封着部材として用いた封着層35を介して透明な封止基板2と隙間なくベタ封止されてい
る。
【0053】
有機EL装置10は、後述する本実施形態の有機EL装置の製造装置を用いて製造され
ており、発光層を含む機能層32が所望の膜厚に対して膜厚のばらつきが少なく、歩留ま
りよく成膜されている。それゆえに機能層32における発光特性が安定し、所望の輝度特
性が得られる。
【0054】
なお、有機EL装置10は、トップエミッション型に限定されず、陰極34を反射機能
を有する不透明なAl等の導電材料を用いて成膜し、有機EL素子12の発光を陰極34
で反射させて、素子基板1側から取り出すボトムエミッション型の構造としてもよい。
【0055】
<有機EL装置の製造装置>
次に、有機EL装置の製造装置について図4から図6を参照して説明する。図4は有機
EL装置の製造装置の構成を模式的に示した上面図、図5は有機蒸着部の搬送方向に沿っ
た内部構造を示す概略側面図、図6(a)〜(d)はマスク組込室におけるマスク組み込
み動作を示す概略図である。
【0056】
図4に示すように、本実施形態の有機EL装置10の製造装置100は、有機EL素子
12の陽極31と陽極31を区画する隔壁部33が形成された被成膜基板としての基板W
に前処理を施した後、有機膜、無機膜が蒸着される枚葉式の蒸着装置であって、それぞれ
前処理部132、有機蒸着部133、無機蒸着部134の3つのブロックから構成されて
いる。特に、有機蒸着部133では、成膜用マスクを用いて基板Wの膜形成領域に選択的
に有機膜を成膜する構成となっている。以下に各ブロックの詳細を説明する。
【0057】
前処理部132は、基板Wの搬送を行う基板搬送ロボット123aを内部に有する基板
搬送室128aを中心に、仕込室120、加熱室121、前処理室122から構成されて
いる。仕込室120は、表面の汚れや異物等を除去する洗浄(例えば、純水洗浄などの湿
式洗浄やUV照射などの乾式洗浄)を終えた基板Wが投入された後、真空ポンプを用いて
減圧される。以降の工程はすべて所定の減圧状態に保たれて基板Wの搬送が行われる。基
板Wは、減圧された仕込室120から基板搬送室128a内の基板搬送ロボット123a
のアームにより加熱室121に運ばれ、洗浄時などに付着した水分の除去を目的として加
熱処理が行われる。その後前処理室122に運ばれ、酸素プラズマによる表面処理(プラ
ズマ処理)が行われる。これは酸素プラズマによって陽極31のHOMOレベルを有機膜
のHOMOレベルに近づけることで、陽極31から注入される正孔に対する有機膜の障壁
を相対的に低くして、有機EL素子12の発光性能を高めるためである。前処理室122
での表面処理が終了した基板Wは基板搬送室128aを通って、有機蒸着部133に運ば
れる。
【0058】
有機蒸着部133は、マスク組込室124、インライン構造の有機蒸着室125、マス
ク解体室126、マスク還流室127により構成されている。マスク組込室124は前処
理部132の基板搬送室128aと連結されており、マスク解体室126は無機蒸着部1
34の基板搬送室128bと連結されている。
【0059】
図5に示すように、基板搬送室128aから運ばれてきた基板Wは、マスク組込室12
4に運ばれ、成膜用マスクとしての蒸着マスク50と重ねられる。蒸着マスク50は機能
層32の成膜パターンに対応した開口部50aを有する。蒸着マスク50と基板Wとを重
ねたときの密着性を向上させる目的で、基板Wの成膜面と反対側の表面に重りとしての機
能を兼ねて透明基板60が載置される。透明基板60の重り以外の機能については後述す
るマスク検査方法において説明する。
【0060】
図6(a)に示すように、蒸着マスク50と透明基板60とは、マスク組込室124の
上方でそれぞれ保持され、待機状態となっている。次に同図(b)に示すように、先に蒸
着マスク50が下降して、蒸着マスク50と透明基板60との間に基板Wが進入する。そ
して、基板Wが降下して蒸着マスク50と所定の位置で重ね合わされる。その後、同図(
c)に示すように、透明基板60が下降して基板Wの背面(成膜面と反対側の表面)に載
置される。透明基板60により基板Wが蒸着マスク50側に押圧され、基板Wと蒸着マス
ク50とが密着する。同図(d)に示すように、蒸着マスク50と重ね合わされた基板W
は、有機蒸着室125に送り込まれる。
【0061】
図5に示すように、有機蒸着部133は、有機蒸着室125と、有機蒸着室125に重
畳するように設けられたマスク還流室127と、マスク還流室127の内部に設けられた
マスク検査装置150とを有する。
【0062】
有機蒸着室125は、基板Wの搬送方向に連結された複数の第1チャンバーとしての蒸
着室125bを有する。各蒸着室125bは底部に蒸発源110を有すると共に、上記搬
送方向において隔壁125aにより仕切られている。また、蒸着マスク50と重ね合わさ
れた基板Wを各蒸発源110に対向させつつ、マスク解体室126に向けて所定の方向に
搬送する搬送機構113を備えている。
【0063】
複数の蒸着室125bは、それぞれ異なる膜形成材料を蒸発させる蒸発源110を有す
るものであって、基板Wは、複数の蒸着室125b上を搬送機構113によって運ばれる
間に、正孔輸送層(HTL)32h、R,B,Gの各発光層32LR,32LB,32L
G、電子輸送層(ETL)32eの5層の有機膜が順次蒸着され、機能層32が形成され
る。
【0064】
なお、蒸着室125bに設けられた蒸発源110は1つに限定されず、基板Wの大きさ
(より詳しくは搬送方向に直交する長さ)に応じて、所望の範囲の成膜を可能とすべく、
複数の蒸発源110を搬送方向と交差する方向に配列させてもよい。
【0065】
有機膜が順次蒸着された基板Wは、マスク解体室126に運ばれる。マスク解体室12
6では、蒸着マスク50と透明基板60との間に挟まれた基板Wが分離される。分離され
た基板Wは無機蒸着部134へ送り込まれる。
【0066】
マスク解体室126にて分離された蒸着マスク50および透明基板60は、再び重ね合
わされてマスク還流室127へ送り込まれる。
【0067】
マスク還流室127は、使用後の蒸着マスク50と透明基板60とを有機蒸着部133
の下流から上流へ回送する搬送機構115を備えた搬送経路である。また、上流側のマス
ク組込室124と下流側のマスク解体室126とに連通し、減圧状態に保たれている。す
なわち、マスク還流室127は、第1チャンバーとしての蒸着室125bに連通した第2
チャンバーである。
【0068】
使用後の蒸着マスク50は、マスク還流室127に設けられたマスク検査装置150の
下方を通過することによりマスク検査が行われ、不具合が検出された場合には、マスク組
込室124の背後に設けられた予備室124a(図4参照)に回収される。
予備室124aには、予備の蒸着マスク50が保管されており、不具合が検出された蒸
着マスク50と交換される。例えば、異物や汚れなどの不具合が生じた蒸着マスク50は
湿式あるいは乾式の洗浄を施すことによりクリーニングされ、繰り返し用いられる。
したがって、使用後に必ずマスク検査が行われ、常に不具合の無い蒸着マスク50を用
いて有機膜の成膜が行われる構成となっている。
【0069】
図4に示すように、無機蒸着部134は、基板搬送室128b、陰極34の蒸着を行う
金属蒸着室129a,129b、基板搬送室128cから構成されている。有機蒸着部1
33での蒸着を終えた基板Wは、基板搬送室128bの基板搬送ロボット123bによっ
て、2つの金属蒸着室129a,129bのうちのいずれかに運ばれて陰極34が蒸着さ
れる。陰極34が蒸着された基板Wは基板搬送ロボット123bによって基板搬送室12
8cに運ばれ、封止工程を行う装置側に搬出される。金属蒸着室129a,129bは陰
極34の構成並びに有機蒸着室125における機能層32の成膜速度との調和を考慮して
、蒸発源の構成を決定すればよい。
【0070】
陰極34などの無機膜は有機膜に比べて蒸着時に膜形成材料を高温で加熱する必要があ
るため、蒸発源からの輻射熱の影響が有機膜の時よりも大きくなる。そのため陰極34な
どを蒸着する金属蒸着室129a,129bは、基板Wと蒸発源との距離を大きくとる必
要があり、有機膜が成膜されるインライン型の有機蒸着部133に比べてバッチ型の蒸着
装置が適している。
【0071】
無機蒸着部134における成膜の生産性が有機蒸着部133における成膜の生産性に対
して劣る場合には、例えば1つの金属蒸着室129aに複数の蒸発源を配置し、陰極34
の無機材料をそれぞれに充填して成膜する構成としてもよい。
また、陰極34としては、ITOとCa、Ba、Al等の金属やLiF等のフッ化物と
を組み合わせて用いるのが好ましい。特に機能層32に近い側に仕事関数が小さいCa、
Ba、LiFの膜を形成し、遠い側に仕事関数が大きいITOを形成するのが好ましい。
したがって、金属蒸着室129aと金属蒸着室129bとで成膜する薄膜の種類を変えて
もよいし、同一金属蒸着室内に前述したように複数の蒸発源を備え、それぞれに異なる膜
形成材料を充填して蒸着を行ってもよい。
【0072】
<成膜用マスク>
次に、成膜用マスクとしての蒸着マスク50について図7を参照して説明する。図7(
a)は蒸着マスクの構成を示す概略平面図、同図(b)および(c)は開口部の形状の例
を示す概略平面図である。
【0073】
図7(a)に示すように、蒸着マスク50は、基材51に対してマトリクス状に配置さ
れた複数のマスク領域52と、基材51の四隅に配置された4つのアライメントマーク5
3とを有している。1つのマスク領域52は、1つの有機EL装置10に対応するもので
あって、マスク領域52には、成膜パターンすなわち基板Wの膜形成領域に対応した開口
部50aが形成されている。すなわち、本実施形態の蒸着マスク50は、複数の素子基板
1が面付けされたマザー基板を基板Wとして機能層32を成膜するときに用いられるもの
である。
【0074】
蒸着マスク50に設けられた開口部50aは、例えば同図(b)に示すように、1つの
表示画素7(図1参照)に対応するように開口したものである。基板W(素子基板1)と
の重ね合わせ精度を考慮して膜形成領域よりもやや大きな開口面積を有している。また、
これに限らず、例えば同図(c)に示すように、同色の発光が得られる複数の表示画素7
からなる列に対応してスリット状に開口したものも有り得る。
【0075】
本実施形態では、メタルマスクを用いて蒸着マスク50を構成した。メタルマスクの材
料としては、Fe−36wt%Niの材料構成であるインバーなどを用いることができる
。その厚みはおよそ30〜50μm程度である。なお、蒸着マスク50はメタルマスクに
限定されず、高精度に開口部50aを形成可能なシリコン基板を用いたシリコンマスクで
もよい。
【0076】
このような蒸着マスク50は、額縁状のフレーム(図示省略)に歪まないように取り付
けられ、前述したように基板Wと重ね合わされて用いられる。したがって、基板Wとの密
着性を阻害する異物や汚れなどの付着はもちろんのこと、開口部50aの変形などの寸法
的な不具合も成膜に影響を与えるので、これらの不具合(マスク不良)をきちんと検出す
る必要がある。以降、これらの不具合(マスク不良)を検出可能なマスク検査装置150
について図8〜図10を参照して説明する。
【0077】
<マスク検査装置>
図8はマスク検査装置の構造を示す概略図、図9は集光部の構成を説明する概略斜視図
、図10はマスク検査装置の電気的および機械的な構成を示すブロック図である。
【0078】
図8に示すように、マスク検査装置150は、マスク還流室127において搬送機構1
15により搬送される蒸着マスク50に対して対向するように設けられた筐体151を有
する。
【0079】
筐体151の内部には、光源153と、複数(4つ)の反射鏡(以降、ミラーという)
154a,154b,154c,154dと、集光部155と、受光部156とが設けら
れている。
【0080】
光源153は、例えばLEDなど発光素子が一定の方向に配列したライン状のものであ
り、蒸着マスク50の搬送方向に交差(直交)する方向に帯状となった光が射出される。
射出された帯状の光が筐体151の底面151aに設けられた透明なガラス窓152を介
して蒸着マスク50の表面に届くように、ガラス窓152の縁部近傍に配置されている。
ガラス窓152を設けることにより筐体151内に異物などが入って、光学的な検出に不
具合が生ずることが防止されている。なお、ガラス窓152は必須でなく、ガラス窓15
2が設けられた部分を開口させてもよい。
また、帯状の光が拡散しないように光源153自体に光学レンズなどの集光手段を有し
ていてもよい。
光源153の背後にはガラス窓152に向かって開口した開口部157aを有する遮光
性のカバー157が設けられており、開口部157a以外に光が漏れないようになってい
る。
【0081】
帯状の光の長さ、すなわち蒸着マスク50の搬送方向に交差(直交)する方向の長さは
、同じ方向の蒸着マスク50の幅に相等するものである。したがって、蒸着マスク50の
有機蒸着部133の上流側への搬送(回送)に伴って、帯状の光により透明基板60を介
して蒸着マスク50の表面をほぼ全面に亘って走査することが可能となっている。
【0082】
本実施形態の光源153は、白色光と特定の波長特性を有する単色光とを切り替えて射
出させることができる。単色光の代表的な波長は例えば589nmであって、ほぼナトリ
ウムランプの発光色であるオレンジ色である。このように白色光と単色光とを射出可能な
構成としては、例えば、白色光の発光素子と単色光の発光素子とを組み合わせたり、発光
色(波長特性)が異なる複数の発光素子を組み合わせ、すべての発光素子を発光させて白
色光を射出させ、特定の発光素子を発光させて単色光を射出させる構成が挙げられる。
【0083】
蒸着マスク50の表面で反射した帯状の光(反射光)は、筐体151内部に設けられた
4つのミラー154a,154b,154c,154dによって集光部155に導かれ、
最終的に筐体151の側壁上部に設けられた受光部156に集光される。
【0084】
各ミラー154a,154b,154c,154dは、受光部156に反射光が確実に
集光されるように、それぞれ取付位置や角度を調整可能となっている。
【0085】
図9に示すように、集光部155は例えばシリンドリカルな光学レンズであって、入射
した帯状の光が受光部156に集光されるように、受光部156に向かって曲率Rで湾曲
している。
【0086】
受光部156は、例えばCCDなどの撮像素子や半導体光センサーなどの受光素子が所
定の方向に配列したラインセンサーであって、検出対象の寸法精度を考慮した所定の分解
能を有している。
【0087】
光源153から射出される帯状の光の長さに合わせた受光部156を設けることは、現
実的には困難であるため、集光部155を設けることにより、入射した帯状の光を受光部
156に集光させる。言い換えれば、光源153および受光部156の仕様に応じた集光
特性が得られるように集光部155の仕様を設定すればよい。これにより、受光部156
の選択や配置等の設計上の制約事項を減らすことが可能である。
【0088】
図10に示すように、マスク検査装置150は、光源153と、受光部156と、画像
処理部としてのPC(パーソナルコンピューター)160と、PC160に接続された表
示部161と、これらに接続して統括的な制御を行う制御部158とを有する。
制御部158は、走査機構としての搬送機構115や、蒸着マスク50に対して透明基
板60を重ねたり取り除いたりする配置機構としてのマスク組込室124およびマスク解
体室126にも接続され、これらの機構と連動してマスク検査装置150の各部を制御可
能となっている。
PC160は、光源153から射出された帯状の光による走査に伴って得られる受光部
156の受光信号により、蒸着マスク50の表面の画像を合成する画像処理を行う。さら
には、予め蒸着マスク50の設計上の表面の画像を記憶部等に格納しておき、これを読み
込んで受光信号により合成された画像と重ね合わせる画像処理を行う。重ね合わせる際の
基準としては、蒸着マスク50に設けられたアライメントマーク53を用いる。これらの
画像処理が施された画像は、表示部161において表示され確認することができる。
【0089】
このようなマスク検査装置150を用いた蒸着マスク50のマスク検査方法について、
有機EL装置10の製造方法を例に説明する。
【0090】
<有機EL装置の製造方法>
図11は有機EL装置の製造方法を示すフローチャート、図12(a)〜(g)は有機
EL装置の製造方法を示す概略断面図である。
【0091】
図11に示すように、本実施形態の有機EL装置10の製造方法は、基板Wに表面処理
を施すプラズマ処理工程(ステップS1)と、正孔輸送層形成工程(ステップS2)と、
R,B,Gの発光色が得られる発光層32LR,32LB,32LGをそれぞれ成膜する
発光層形成工程(ステップS3〜ステップS5)と、電子輸送層形成工程(ステップS6
)と、陰極形成工程(ステップS7)と、マスク検査工程(ステップS8)とを備えてい
る。なお、以降、素子基板1における有機EL素子12の形成方法を説明するが、実際に
は、前述したとおりマザー基板である基板Wに対して有機EL素子12の各構成を形成す
るものである。
【0092】
図11のステップS1は、プラズマ処理工程である。ステップS1では、陽極31と隔
壁部33とが形成された素子基板1を上記実施形態の有機EL装置の製造装置100の前
処理部132(図4参照)に投入する。素子基板1は、加熱室121にて加熱処理されて
水分が除去され、図12(a)に示すように、前処理室122にて酸素を処理ガスとして
陽極31の表面をプラズマ処理する。そして、ステップS2へ進む。
【0093】
図11のステップS2は、正孔輸送層形成工程である。ステップS2では、プラズマ処
理された素子基板1をマスク組込室124に送る。そして、図12(b)に示すように、
蒸着マスク50の開口部50aと、隔壁部33によって区画された陽極31を有する膜形
成領域Eとが合致するように素子基板1と蒸着マスク50とを位置決めして密着させる。
なお、図12(b)では図示省略したが、透明基板60が素子基板1に重りとして重ねら
れ、素子基板1が蒸着マスク50に押圧された状態となっている(図5または図6参照)
。つまり、透明基板60と素子基板1(基板W)とを重ねる工程は配置工程である。そし
て、蒸着マスク50が成膜面に重ね合わされた素子基板1を有機蒸着室125へ送る。有
機蒸着室125では、搬送機構113によって素子基板1は搬送され、蒸発源110が配
置された最初の蒸着室125bを通過することにより、蒸発源110から正孔輸送層形成
材料が蒸発して、膜形成領域Eごとに正孔輸送層32hが成膜される。そして、ステップ
S3〜ステップS5へ順次進む。
【0094】
図11のステップS3〜ステップS5は、発光層形成工程である。ステップS3〜ステ
ップS5では、図12(c)〜(e)に示すように、蒸着マスク50と重ね合わされた素
子基板1は、搬送機構113により順次3つの蒸着室125bを通過し、各蒸着室125
bに設けられた蒸発源110から発光層形成材料が蒸発して、膜形成領域Eごとに発光層
32LR,32LB,32LGが順に成膜される。そして、ステップS6へ進む。
【0095】
図11のステップS6は、電子輸送層形成工程である。ステップS6では、図12(f
)に示すように、蒸着マスク50と重ね合わされた素子基板1は、最後の蒸着室125b
を通過することにより、蒸発源110から電子輸送層形成材料が蒸発して、膜形成領域E
ごとに電子輸送層32eが成膜される。
以上のステップS2〜ステップS6が機能層形成工程に相当する。機能層形成工程では
、素子基板1と蒸着マスク50とが隔壁部33を介して密着しているので、プラズマ処理
された陽極31や成膜後の各種有機膜の表面に蒸着マスク50が直接に触れない。したが
って、蒸着マスク50が陽極31や各種有機膜に直接接触することによる膜欠陥などの不
具合が回避されている。また、膜形成領域E以外に成膜されないので、所望の膜厚を有す
る機能層32が成膜される。そして、ステップS7へ進む。
【0096】
図11のステップS7は、陰極形成工程である。ステップS7では、機能層32が形成
された素子基板1を無機蒸着部134へ送る。無機蒸着部134では、前述したように、
2つの金属蒸着室129a,129bのいずれかに素子基板1が送られて、真空蒸着法に
より機能層32と隔壁部33とを覆うように陰極34が成膜される。陰極34はITOで
あり、膜厚は、100〜200nmである。これにより、陽極31と陰極34との間に機
能層32を有する有機EL素子12が形成される。そして、ステップS8へ進む。
【0097】
図11のステップS8は、マスク検査工程である。ステップS8では、使用後の蒸着マ
スク50に透明基板60が重ねられた状態で、マスク還流室127を搬送中にマスク検査
装置150の下方を通過させる。蒸着マスク50の搬送に伴って光源153から射出され
た帯状の光によって蒸着マスク50の表面を走査し、その反射光を受けた受光部156の
受光信号によりPC160は蒸着マスク50の表面の画像を合成する。合成された画像に
基づいて異物や汚れなど付着や、蒸着マスク50の変形などの寸法精度に関する不具合を
検出する。より具体的なマスク検査方法については後述する。
【0098】
一方で、有機EL素子12が形成された素子基板1は、封着層35を介して封止基板2
と接着され有機EL装置10が完成する(図2参照)。このようなベタ封止構造は、侵入
する水分や気体から有機EL素子12を保護して、所定の発光寿命が確保される。ステッ
プS7において、陰極34を形成した後に、ガスバリア性を有する透明なSiO2または
SiN、SiONあるいはこれらの混合物からなる膜をさらに積層してもよい。これによ
り、より長い発光寿命を実現することができる。
【0099】
以上に述べた有機EL装置10の製造方法によれば、上記マスク検査装置150を備え
た有機EL装置の製造装置100を用いて、機能層32が成膜される。したがって、使用
後の蒸着マスク50に不具合があるか否かが常に検出され、不具合のない蒸着マスク50
を再び用いて機能層32が成膜される。それゆえ、安定した発光特性を有する有機EL装
置10を歩留まりよく製造することができる。
【0100】
<マスク検査方法>
図13はマスク検査方法を示すフローチャート、図14〜図17はマスク検査方法を示
す概略図である。
【0101】
図13に示すように、本実施形態のマスク検査方法は、光源153から射出された帯状
の白色光により蒸着マスク50の表面を所定の方向に走査する第1走査工程(ステップS
11)と、第1走査工程に伴って蒸着マスク50の表面から反射した白色光を受光部15
6により受光して、受光部156の受光信号により合成された画像に基づいて、少なくと
も所定の大きさ以上の異物の付着を検出する第1検出工程(ステップS12)とを備えて
いる。また、光源153から特定の発光波長域を有する単色光を射出し、蒸着マスク50
の表面を所定の方向に走査する第2走査工程(ステップS13)と、第2走査工程に伴っ
て蒸着マスク50の表面から反射した単色光を受光部156により受光して、受光部15
6の受光信号に基づいて合成された透明基板60と蒸着マスク50との間に生ずる単色光
の干渉縞の画像に基づいて蒸着マスク50の変形不良を検出する第2検出工程(ステップ
S14)とを備えている。さらに、これらの第1および第2検出工程の結果に基づいて当
該蒸着マスク50を使用できるか否か判定する使用可否判定工程(ステップS15)を備
えている。
【0102】
図13の第1走査工程(ステップS11)では、図5に示すように、マスク還流室12
7において搬送機構115により搬送される蒸着マスク50に対して、光源153から帯
状の白色光を射出する。マスク検査装置150の下方を1度通過させることにより、蒸着
マスク50の表面のほぼ全面を帯状の白色光で走査することができる。
【0103】
図13の第1検出工程(ステップS12)では、上記走査に伴って受光部156の受光
信号により合成された画像に基づいて、蒸着マスク50の不具合を検出する。図14に示
すように、白色光を蒸着マスク50に照射することにより、白色光の入射側の表面50b
に付着した異物71,73や汚れを検出可能である。また、白色光の入射側に対して反対
側の表面50cであっても、開口部50aに掛かって付着している異物72は検出可能で
ある。入射側の表面50bが基板Wと接触することから、主に表面50bに付着している
異物71,73や汚れが最も問題ではあるが、異物の付着状態は製造条件や製造環境によ
っても大きく左右される。それゆえ、受光部156の分解能によっては微細な異物や汚れ
まで検出することができるが、所定の大きさ以上の異物や汚れを検出するように制御する
ことが効率的である。
【0104】
また、膜形成領域Eに機能層32を歩留まりよく成膜する観点から、開口部50aに掛
かって付着する異物71,72のみを検出するとしてもよい。照射された白色光は開口部
50aを通過するので、画像処理部としてのPC160によって合成される蒸着マスク5
0の画像では開口部50aが暗くなる。一方、開口部50aに掛かって付着した異物71
,72からは反射光が得られるので、異物71,72の識別性は表面50bに付着した異
物73よりも高い。すなわち、開口部50aにおいて容易に異物71,72を検出できる

【0105】
また、PC160において、予め記憶部等に格納された蒸着マスク50の設計上の表面
50bの画像を読み込んで、受光信号により合成された画像と重ね合わせることにより、
例えば開口部50aの形状に異常があるか否かを検出することも可能である。すなわち、
蒸着マスク50における寸法精度に関する不具合も検出可能である。
【0106】
図13の第2走査工程(ステップS13)では、図15(a)に示すように、光源15
3から帯状の単色光を射出して蒸着マスク50の表面を走査する。先の第1走査工程(ス
テップS11)において少なくとも1度白色光により走査しているため、マスク検査装置
150の下方を再び通過するように蒸着マスク50を走査機構としての搬送機構115を
用いて相対移動させる。例えば、マスク還流室127において一旦、上流側に移動した蒸
着マスク50を下流側に移動させる間に上記走査を行ってもよいし、下流側に戻した後に
再び上流に向かって移動させる間に上記走査を行ってもよい。
【0107】
図13の第2検出工程(ステップS14)では、上記第2走査工程において透明基板6
0が重ね合わされた蒸着マスク50の表面50bに単色光が照射されるため、透明基板6
0と表面50bとの密着度合いにより、例えば図15(b)のように透明基板60と表面
50bとの間に単色光の複数の干渉縞が観察される。すなわち、PC160は該干渉縞を
伴う蒸着マスク50の画像を合成することができる。
この例では複数の干渉縞は同心の楕円形である。干渉縞の間隔は単色光の波長特性に依
存する。仮に透明基板60と蒸着マスク50の表面50bとの隙間がほぼ一定であれば、
干渉縞の間隔はほぼ一定となる。したがって、例えば蒸着マスク50において部分的な変
形が起きている場合、上記隙間が変動して、図16に示すように部分的に干渉縞の間隔が
狭くなったり、広がったりする干渉縞パターンの歪みが生ずる。蒸着マスク50の合成画
像に基づいて、このような干渉縞パターンの歪み、すなわち蒸着マスク50の部分的な変
形を検出する。表面50bに異物が付着して上記隙間が変動することもあるので、異物の
大きさを特定することも可能である。
【0108】
また、前述したように蒸着マスク50は有機EL装置の製造装置100において繰り返
し使用される。したがって、蒸発源110に対向する蒸着マスク50の表面50cには、
蒸発した膜形成材料が付着して成膜される。繰り返しの使用に伴って、成膜が重ねられる
と、蒸着マスク50の自重が増えたり、成膜された膜の応力の影響で、図17(a)に示
すように、蒸着マスク50そのものが反ることがある。その場合には、図17(b)に示
すように、検出された干渉縞のパターンにおいて、干渉縞の間隔が中央部と周辺部で異な
る。このような干渉縞の間隔の粗密状態に基づいて蒸着マスク50の全体的な反りを検出
する。例えば、蒸着マスク50の反り量と蒸着マスク50の長手方向または短手方向にお
ける干渉縞の本数とを予め求めておけば、該本数を計数することによって、所定の大きさ
以上に反った蒸着マスク50を検出することができる。
【0109】
図13の使用可否判定工程(ステップS15)では、第1検出工程(ステップS12)
および第2検出工程(ステップS14)における検出結果に基づいて、当該蒸着マスク5
0の使用可否を判定する。不具合(マスク不良)が無ければOKとして再使用される。不
具合(マスク不良)が検出されたときには、NGとして前述したように予備室124aに
排出(回収)される。
【0110】
上記マスク検査装置150を備えた有機EL装置の製造装置100および有機EL装置
10の製造方法によれば、大気中に蒸着マスク50を持ち出して検査することなく、有機
EL装置の製造装置100における使用状態(減圧下)で、蒸着マスク50の検査を行う
ことができる。したがって、蒸着マスク50の検査を行うために有機EL装置の製造装置
100を止める必要がなく、確実で効率的なマスク検査と、有機EL装置10の製造にお
ける高い歩留まりと生産性とを実現できる。
【0111】
また、上記マスク検査方法によれば、白色光と単色光とを照射する少なくとも2回の走
査により、蒸着マスク50に付着した所定の大きさ以上の異物や汚れ、特に開口部50a
の寸法精度、蒸着マスク50の部分的な変形や全体的な反りなどの複数の品質特性を検出
することができる。
【0112】
上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0113】
(変形例1)上記実施形態において、光源153から射出される光は、白色光および単
色光に限定されない。例えば、白色光または単色光としてもよい。すなわち、検出しよう
とする蒸着マスク50の品質特性に応じて使い分けることが考えられる。
【0114】
(変形例2)上記実施形態において、白色光により蒸着マスク50の表面を走査する際
には、透明基板60を蒸着マスク50に重ねなくてもよい。言い換えれば、マスク検査方
法において蒸着マスク50の表面50bに透明基板60を重ねて配置する配置工程は、単
色光で走査する前に行えばよい。
【0115】
(変形例3)上記実施形態において、帯状の光により蒸着マスク50の表面を走査する
走査工程は、第1走査工程と第2走査工程の2回に限定されない。繰り返し走査を行って
もよい。蒸着マスク50の不具合の検出精度を向上させることができる。
【0116】
(変形例4)上記実施形態において、有機EL装置の製造装置100に装備されるマス
ク検査装置150は、1台に限定されない。例えば、マスク還流室127において蒸着マ
スク50の搬送方向に2台のマスク検査装置150を設ける。一方の装置の光源153が
白色光を射出し、他方の装置の光源153が単色光を射出する構成としてもよい。蒸着マ
スク50を上流へ回送しつつ、連続的なマスク検査が可能となる。
【0117】
(変形例5)上記実施形態において、マスク還流室127内にマスク検査装置150を
固定して配置しなくてもよい。例えば、マスク検査装置150自体を蒸着マスク50に対
して移動させる構成としてもよい。蒸着マスク50の回送を止めずに、複数回の走査が可
能となる。言い換えれば、走査機構は、蒸着マスク50を搬送する搬送機構115に限定
されない。
【0118】
(変形例6)上記実施形態のマスク検査装置150が装備される有機EL装置の製造装
置100は、インライン型の有機蒸着部133を有するものに限定されない。例えば、バ
ッチ型の有機蒸着部であって、成膜を行う第1チャンバーの他に第1チャンバーに連通す
る第2チャンバーを設ける。当該第2チャンバー内にマスク検査装置150における少な
くとも光源153と、受光部156と、走査機構とを設ければよい。
したがって、マスク検査工程は、使用後の蒸着マスク50の検査を行うだけでなく、使
用前に行うとしてもよい。
【0119】
(変形例7)上記実施形態のマスク検査装置150が装備される製造装置100は、有
機EL装置の製造を対象とした蒸着装置に限定されない。例えば、液晶装置、PDP装置
などの各種表示装置の製造装置としての蒸着装置、スパッタ装置、イオンプレーティング
装置、CVD装置などに適用することができる。
【符号の説明】
【0120】
10…有機EL装置、12…有機EL素子、32…機能層、50…成膜用マスクとして
の蒸着マスク、50a…開口部、60…透明基板、71,72,73…異物、100…有
機EL装置の製造装置、110…蒸発源、115…走査機構としての搬送機構、124…
配置機構としてのマスク組込室、125b…第1チャンバーとしての蒸着室、126…配
置機構としてのマスク解体室、127…第2チャンバーとしてのマスク還流室、150…
マスク検査装置、153…光源、155…集光部、156…受光部、160…画像処理部
としてのパーソナルコンピューター、E…膜形成領域、W…被成膜基板としての基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜パターンに対応した開口部を有する成膜用マスクのマスク検査装置であって、
帯状に光を射出する光源と、
前記帯状の光により前記成膜用マスクの表面を所定の方向に走査するように、前記光源
と前記成膜用マスクとを相対移動させる走査機構と、
前記走査に伴って前記成膜用マスクの表面から反射した光を受光する受光部と、
前記受光部の受光信号を画像に合成する画像処理部と、
を備えたことを特徴とするマスク検査装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、前記成膜用マスクの設計上の画像と前記受光信号に基づいて合成さ
れた画像とを重ね合わせる画像処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のマスク検査
装置。
【請求項3】
前記光源が白色光を射出することを特徴とする請求項1または2に記載のマスク検査装
置。
【請求項4】
前記成膜用マスクの表面に透明基板を重ねて配置する配置機構を有し、
前記光源は前記透明基板に向けて特定の発光波長域を有する単色光を射出し、
前記画像処理部は、前記透明基板と前記成膜用マスクとの間に生ずる前記単色光の干渉
縞の画像を合成することを特徴とする請求項1または2に記載のマスク検査装置。
【請求項5】
前記光源は白色光と前記特定の発光波長域を有する単色光とを切り替えて射出すること
を特徴とする請求項4に記載のマスク検査装置。
【請求項6】
前記走査に伴って前記成膜用マスクの表面から反射した光を前記受光部に対して集光す
る集光部をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のマスク
検査装置。
【請求項7】
膜形成領域に対応した開口部を有する成膜用マスクと被成膜基板とを重ね合わせて前記
被成膜基板の前記膜形成領域に有機EL素子を構成する機能層を成膜する有機EL装置の
製造装置であって、
膜形成材料を蒸発させる蒸発源を有し、前記蒸発源に対向するように前記成膜用マスク
が重ね合わされた前記被成膜基板を保持して成膜がされる少なくとも1つの第1チャンバ
ーと、
前記第1チャンバーに連通した第2チャンバーと、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のマスク検査装置とを備え、
前記第2チャンバー内に、前記マスク検査装置のうち少なくとも前記光源と、前記走査
機構と、前記受光部とが設けられていることを特徴とする有機EL装置の製造装置。
【請求項8】
前記第1チャンバーが複数連結して配置され、
前記第2チャンバーは、上流側の前記第1チャンバーと下流側の前記第1チャンバーと
に連通して使用済みの前記成膜用マスクを下流側から上流側に搬送する搬送経路であるこ
とを特徴とする請求項7に記載の有機EL装置の製造装置。
【請求項9】
成膜パターンに対応した開口部を有する成膜用マスクのマスク検査方法であって、
光源から射出された帯状の光により前記成膜用マスクの表面を所定の方向に走査する走
査工程と、
前記走査に伴って前記成膜用マスクの表面から反射した光を受光部により受光して、前
記受光部の受光信号により合成された画像に基づいてマスク不良を検出する検出工程と、
を備えたことを特徴とするマスク検査方法。
【請求項10】
前記検出工程は、前記成膜用マスクの設計上の画像と前記受光信号に基づいて合成され
た画像とを比較して、前記マスク不良としての寸法不良を検出することを特徴とする請求
項9に記載のマスク検査方法。
【請求項11】
前記走査工程は、前記光源から白色光を射出し、
前記検出工程は、前記マスク不良として所定の大きさ以上の異物や汚れの付着を検出す
ることを特徴とする請求項9または10に記載のマスク検査方法。
【請求項12】
前記検出工程は、前記成膜用マスクの前記開口部に付着する前記異物を検出することを
特徴とする請求項11に記載のマスク検査方法。
【請求項13】
前記成膜用マスクの表面に透明基板を重ねて配置する配置工程を備え、
前記走査工程は前記光源から前記透明基板に向けて特定の発光波長域を有する単色光を
射出し、
前記検出工程は、前記受光部の受光信号に基づいて合成された前記透明基板と前記成膜
用マスクとの間に生ずる前記単色光の干渉縞の画像に基づいて、前記マスク不良としての
変形不良を検出することを特徴とする請求項9に記載のマスク検査方法。
【請求項14】
前記検出工程は、前記単色光の干渉縞の画像において、所定の方向における前記干渉縞
の粗密状態から前記成膜用マスクの反りを検出することを特徴とする請求項13に記載の
マスク検査方法。
【請求項15】
成膜パターンに対応した開口部を有する成膜用マスクのマスク検査方法であって、
光源から射出された帯状の白色光により前記成膜用マスクの表面を所定の方向に走査す
る第1走査工程と、
前記第1走査工程に伴って前記成膜用マスクの表面から反射した前記白色光を受光部に
より受光して、前記受光部の受光信号により合成された画像に基づいて、少なくとも所定
の大きさ以上の異物の付着を検出する第1検出工程と、
前記成膜用マスクの表面に透明基板を重ねて配置する配置工程と、
前記光源から前記透明基板に向けて特定の発光波長域を有する単色光を射出し、前記成
膜用マスクの表面を所定の方向に走査する第2走査工程と、
前記第2走査工程に伴って前記成膜用マスクの表面から反射した前記単色光を前記受光
部により受光して、前記受光部の受光信号に基づいて合成された前記透明基板と前記成膜
用マスクとの間に生ずる前記単色光の干渉縞の画像に基づいて前記成膜用マスクの変形不
良を検出する第2検出工程と、を備えたことを特徴とするマスク検査方法。
【請求項16】
膜形成領域に対応した開口部を有する成膜用マスクと被成膜基板とを重ね合わせて前記
被成膜基板の前記膜形成領域に有機EL素子を構成する機能層を成膜する成膜工程を有す
る有機EL装置の製造方法であって、
請求項9乃至15のいずれか一項に記載のマスク検査方法を用い、前記成膜工程の前後
のうち少なくとも一方において、前記成膜用マスクを検査するマスク検査工程を備えたこ
とを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項17】
前記成膜工程は、第1チャンバー内において膜形成材料を蒸発させることにより前記被
成膜基板の前記膜形成領域に前記機能層を形成し、
前記マスク検査工程は、前記第1チャンバーに連通する第2チャンバー内において、減
圧下で行われることを特徴とする請求項16に記載の有機EL装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−223669(P2010−223669A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69613(P2009−69613)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】