説明

マッサージ機能付き椅子

【課題】マッサージ効果を与えない状態とすることもでき、また、所望の際にはマッサージ効果を与えることのできるマッサージ機能付き椅子を提供する。
【解決手段】座部1と、背中を当接させる面状部材4を有する背もたれ部2と、面状部材4の後方において施療子10を当該面状部材4との間で隙間gが形成されるように取り付けている支持部材3とを備えている。背もたれ部2にもたれた着座状態で、背もたれ部2の背枠部材5が後方へ倒れることにより、面状部材4が支持部材3の施療子10に接近する。これにより前記隙間gが無くなって面状部材4と施療子10とが接触している状態になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、着座する利用者に対してマッサージ効果を与えるための施療子を備えているマッサージ機能付き椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、背もたれ部に玉形状やローラなどの施療子(押圧子)が設けられて、座部に着座した利用者がその背もたれ部にもたれることにより、施療子が利用者の背中に当接してマッサージ効果を与えることのできるマッサージ機能付きの椅子が知られている。このような椅子として知られているものに、例えば、特許文献1、特許文献2、及び、特許文献3のようなものがある。
特許文献1に記載されているものは、背もたれ部に被せることができる柔軟な包被体を有しており、この包被体に中空突部が設けられて、中空突部に金属や樹脂などによる球体が嵌め込まれている。このような球体を有する包被体が背もたれ部に被せられることによって、背もたれ部から施療子としての突部(球体)が突出した椅子となる。
特許文献2に記載されているものは、背もたれ部にローラが設けられており、背もたれ部からローラが突出した状態とされている。
特許文献3に記載されているものは、背もたれ部の表面側に押圧球が設けられており、背もたれ部の表面において、押圧球は他の平滑な部分よりも隆起するように設けられている。
【0003】
【特許文献1】実開昭57−2040号公報
【特許文献1】実開昭58−147521号公報
【特許文献1】実開平1−119636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜3に記載されている従来のマッサージ機能付きの椅子は、玉やローラなどの施療子が背もたれ部の表面から突出した状態とされており、利用者が背もたれ部にもたれることで背中に施療子を当接させ、マッサージ効果を与えることができる。しかし、マッサージ効果を期待しない通常の着座状態でこの椅子を使用したい場合であっても、利用者の背中には施療子が当接し、利用者に違和感を与えてしまうという問題点を有している。さらに、通常の着座状態でこの椅子に長時間座っていると、施療子が背中に当たったままの状態であるために、逆に不快感を与えてしまうおそれがある。つまり、従来のものは、マッサージを欲する際に座るものであり、マッサージ専用の椅子として構成されている。
また、玉やローラなどの施療子が、背もたれ部において露出して回転する構造である場合、髪の毛がこの施療子に巻き込まれる(引っ掛かる)おそれがある。
【0005】
この発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、マッサージ効果を与えない状態とすることもでき、また、所望の際にはマッサージ効果を与えることのできるマッサージ機能付き椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するためのこの発明のマッサージ機能付き椅子は、座部と、上半身の背面側を当接させる面状部材を有する背もたれ部と、前記面状部材の後方において施療子を取り付けている支持部材とを備え、前記面状部材を押圧することにより当該面状部材が前記支持部材に接近可能として設けられていることにより、上半身の背面が前記面状部材に当接した着座状態において、前記施療子が上半身の背面を押圧しない非マッサージ状態と、前記施療子が上半身の背面を押圧するマッサージ状態とに変化可能とされていることを特徴としている。
このような構成によれば、施療子が上半身の背面を押圧しない非マッサージ状態では、上半身の背面が面状部材に当接した着座状態であっても、マッサージ効果を与えない。つまり、通常の背もたれ付きの椅子として機能する。そして、施療子が上半身の背面を押圧するマッサージ状態では、施療者に対してマッサージ効果を与えることができる。
【0007】
または、この発明のマッサージ機能付き椅子は、座部と、上半身の背面側を当接させる面状部材を有する背もたれ部と、前記面状部材の後方において施療子を当該面状部材との間で隙間が形成されるように取り付けている支持部材とを備え、前記面状部材と前記支持部材とが接近可能とされて設けられていることにより、前記隙間が維持される第一状態と、前記隙間が無くなって前記面状部材と前記施療子とが接触している第二状態とに変化可能とされていることを特徴としている。
このような構成によれば、施療子と面状部材との間に隙間が維持されている第一状態では、施療子が上半身の背面側(例えば背中)を押圧しない。つまり、マッサージ効果を与えない通常の背もたれ付きの椅子として機能する。そして、面状部材と施療子とが接触している第二状態では、施療子が面状部材を介して背中を押圧することができ、施療者に対してマッサージ効果を与えることができる。
【0008】
また、これらの椅子において、前記背もたれ部は前記面状部材を取り付けている背枠部材を有し、この背枠部材と前記支持部材とは相対的な位置変化が可能とされて設けられていることによって、前記面状部材が前記支持部材に接近可能とされているのが好ましい。
この構成によれば、背枠部材と支持部材とを相互が接近する方向に位置変化させることにより、背枠部材に取り付けられている面状部材と支持部材に取り付けられている施療子とが接触できる。これにより、施療子は面状部材を介して背中を押圧することができる。
なお、この施療子によりマッサージ効果を得るために、例えば面状部材を弾性変形可能な(伸縮可能な)材質として、面状部材にもたれて当該面状部材を弾性的に変形させて、面状部材と施療子との隙間を無くし、施療子によって背中を押圧させるようにしてもよいが、さらにこの構成のように、例えば背枠部材を支持部材に対して位置変化可能に設けて、背もたれ部にもたれることによって背枠部材を面状部材とともに支持部材側へ接近させれば、施療子によって背中をより強く押圧させることができる。
【0009】
さらに、この場合において、前記背枠部材と前記支持部材との相対的な位置変化を規制する拘束状態と相対的な位置変化を自由にさせる自由状態とを切り換える切換手段を備えているのが好ましい。これによれば、前記自由状態として背枠部材と支持部材とを接近させれば、施療子によって背中を押圧させることができる。また、切換手段により拘束状態とすれば、背枠部材と支持部材とが接近する方向に移動するのを規制し、施療子が背中に当接するのを防ぐことができる。
【0010】
また、前記面状部材が上半身の背面に押圧されることによって、前記背もたれ部が起立状態から後方へ倒れることを許容する第1後傾部と、前記支持部材が起立状態から後方へ倒れることを許容する第2後傾部とを備えているのが好ましい。
この構成によれば、背もたれ部にもたれて背もたれ部と支持部材とを共に後方へ倒れさせ、面状部材と施療子とが接触しているマッサージ状態にさせることで、利用者の上半身の体重を利用して施療子によって背中を押圧させることができる。
【0011】
また、この場合において、前記背もたれ部と前記支持部材の少なくとも一方を起立状態に維持させるロック機構を備えているのが好ましい。これにより、背もたれ部、支持部材が後方へ大きく倒れた状態とならないようにすることができ、背もたれ部が起立状態にある通常の着座姿勢が得られる椅子とできる。
【0012】
また、前記第2後傾部は、後方へ倒れた状態にある前記支持部材を起立状態に復帰させる方向の弾性力を、当該支持部材に付与する弾性部材を有しているのが好ましい。これにより、弾性部材によって支持部材を起立状態に復帰させることができる。つまり、利用者は背もたれ部にもたれて上半身が後方へ倒れた姿勢から、支持部材に押されて、上半身が起立状態となる通常の着座姿勢に楽に戻ることができる。
【0013】
また、前記施療子は、前記支持部材に位置変更可能とされて取り付けられているのが好ましい。これによれば、施療子の位置を調整することにより、施療子を接触させたい背中の部位の変更が可能となり、また、身長差によるツボの位置の違いに対応させることができる。
【0014】
また、前記施療子は前記支持部材において上端部を含む複数箇所に取り付けられており、上端部に設けられた前記施療子は前記支持部材に回動可能とされているのが好ましい。これによれば、上端部の施療子の角度を調整することにより、様々な身長の利用者に対して、当該施療子を首部から肩部に対応させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のマッサージ機能付き椅子によれば、施療子が背中を押圧しない状態にすることができ、利用者は楽な着座姿勢をとることができる。つまり、通常の椅子として使用できる。そして、面状部材と施療子とが接触しているマッサージ状態とすれば、施療子によって背中を押圧させることができ、マッサージ効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1はこの発明に係るマッサージ機能付き椅子の実施の一形態を示す斜視図であり、図2はその側面図を示している。この椅子は、利用者を着座させる座部1と、座部1の後部側に設けられている背もたれ部2と、座部1をその下方において支持している脚部12とを備えている。さらにこの椅子は、背もたれ部2にもたれた利用者に対してマッサージを施すことができる施療子(マッサージ具)10と、この施療子10を取り付けている支持部材3とを備えている。
【0017】
施療子10はローラ形状や玉形状のものなどがあり、複数個の施療子10が支持部材3に取り付けられている。施療子10は、背もたれ部2にもたれた利用者の上半身の背面側に対応する部分に設けられている。なお、上半身の背面は、座部1に座った状態にある利用者の腰部から首部までの範囲としており、また、施療子10はこの範囲のうち部分的(1部分乃至複数部分)に対応するように設けられたものであってよい。
【0018】
脚部12は、鉛直方向の支持シャフト13と、支持シャフト13の下部から水平方向放射状に伸びる複数本の脚アーム14を有している。脚アーム14の先端部には車輪14aが取り付けられている。支持シャフト13の上端には、座部1のベース部材15が取り付けられている。
【0019】
座部1は、前記ベース部材15と、ベース部材15に固定されている座部本体16とを備えている。座部本体16は座面を構成する布状部材17とこの布状部材17を取り付けている左右両側の座枠部材18とを有している。図2に示しているように、座枠部材18は前記ベース部材15の前部から前方へ延伸してからその上方でU字状に折り返されて後方へ延伸するように構成されている。そして、左右両側の座枠部材18の間に布状部材17が設けられている。座枠部材18は例えば金属製のパイプにより形成されている。布状部材17は弾力性(伸縮性)のある素材(布)から構成されており、特にメッシュ状の素材が好ましい。
【0020】
背もたれ部2は、座部1と連結されて当該座部1に支持されており、座部1に着座した利用者の上半身背面側を当接させる面状部材4と、この面状部材4を取り付けている背枠部材5を有している。背枠部材5は、例えば金属製のパイプにより形成されており、左右の側部部材5aと両側部部材5aを上部において連結している上部部材5bとを有している。図1に示している背枠部材5は、1本のパイプが曲げられることで高さ方向の両側部部材5aと横方向の上部部材5bとが一続きとして構成されている。そして、面状部材4は、この背枠部材5に三方から囲まれるように取り付けられている。面状部材4は座部1の布状部材17と同一のものとされており、弾力性(伸縮性)のある素材(布)から構成されている。さらに、この背枠部材5の側部部材5aは、その下端部において座部1の座枠部材18の後端部と連続するよう構成されている。また、背もたれ部2の面状部材4と座部1の布状部材17とを、1枚の部材により構成してもよい。
【0021】
前記支持部材3は、座部1が有しているベース部材15の後部から後方へ延伸しながら上方へ連続している1本の金属性のパイプ部材から構成された柱部材であり、背もたれ部2の面状部材4の中央部に対応する位置に設けられている。そして、支持部材3の長手方向(高さ方向)に沿って施療子10が上下左右に複数個取り付けられている。
【0022】
この椅子の左右両側には肘掛け部20が設けられており、肘掛け部20は前後方向を長手方向としている部材により構成され、その後部において支持部材3の高さ方向途中部と固定されている。さらに肘掛け部20の下部には当該肘掛け部20を支持している高さ方向の支持柱部材21が取り付けられており、支持柱部材21の下部は座部1のベース部材15に固定されている。この肘掛け部20と支持柱部材21とにより、ベース部材15に対して支持部材3を拘束することができ、支持部材3は後方へ倒れにくくされているが、背もたれ部2の背枠部材5は肘掛け部20などの影響を受けることがなく(拘束されることなく)後方へ倒れることができる状態とされている。
【0023】
この椅子は、ベース部材15に、座部1、座部1を介して背もたれ部2、支持部材3、肘掛け部20用の支持柱部材21が取り付けられている。これにより、これら背もたれ部2などに作用する荷重を、脚部12と固定されているベース部材15に伝達させることができ、安定した椅子が得られる。
【0024】
この椅子において、背もたれ部2に負荷が作用していない状態、つまり、利用者が背もたれ部2にもたれていない状態では、図2に示しているように側面視において背もたれ部2の背枠部材5と支持部材3とは、支持部材3の長手方向に沿って相互が均一な間隔を有する形状とされている。つまり、背枠部材5と支持部材3の側面視における形状は、背もたれ部2及び支持部材3よりも所定寸法だけ後方の仮想点(仮想水平線)を中心とした(ほぼ)円弧形状とされている。そして、その仮想点を中心とした背枠部材5の半径が支持部材3の半径よりも大きくされている。
さらに、背もたれ部2と支持部材3との間において、支持部材3は施療子10を、面状部材4の後方において当該面状部材4の背面との間で隙間gが形成されるように取り付けている。
【0025】
そして、この施療子10によりマッサージ効果を得るために、面状部材4と支持部材3とが接近可能とされて設けられている。これにより、背中が面状部材4に当接した着座状態において、面状部材4と施療子10との間における隙間gが維持されている状態(第一状態)であって、当該施療子10が背中を押圧しない非マッサージ状態(図2)と、この隙間gが無くなって面状部材4と施療子10とが接触している状態(第二状態)であって、当該施療子10が上半身の背面を押圧するマッサージ状態(図3)とに変化可能となる。
なお、背もたれ部2において、弾力性のある面状部材4は所定の張力をもって背枠部材5に張設されている。従って、背枠部材5と支持部材3との相対位置関係を変えずに、前記隙間gを無くすためには、面状部材4に生じている前記張力に抗する所定の押圧力を当該面状部材4に与えることが必要となる。つまり、背枠部材5と支持部材3との相対位置関係を変えずにマッサージ効果を得るためには、後に説明するが、背もたれ部2を支持部材3と共に後方へ倒した状態にすることによって、面状部材4に上半身の体重による大きな押圧力を作用させ、当該面状部材4を弾性的に変形させることが必要となる。これにより、面状部材4と施療子10との隙間gを無くし、施療子10によって背中を押圧させることができる。
【0026】
また、この施療子10によってマッサージ効果をより一層効果的に得るために、図2と図3に示しているように、背もたれ部2の背枠部材5は支持部材3に対して、背枠部材5が(その下部において)弾性変形することによって位置変化が可能となるように設けられている。そして、背枠部材5が後方側へ位置変化することにより、背枠部材5に取り付けられている面状部材4が、支持部材3に取り付けられている施療子10に接近し、相互が接触する。
従って、利用者が背もたれ部2の面状部材4にもたれると、背枠部材5が弾性変形して背枠部材5全体が後方へ倒れる方向へ移動する。これにより、背枠部材5に取り付けられている面状部材4が施療子10に当接して、施療子10が面状部材4を介して背中を押圧することができる。
【0027】
さらに背枠部材5と支持部材3との間には、背枠部材5と支持部材3との間隔を維持させることのできる切換手段6が設けられている。切換手段6は、例えば棒状又は枠形状に組まれた支持部材19とされており、支持部材19は、その一端部側が中心とされて支持部材3の上端部に回動可能に取り付けられ、他端部側が背枠部材5の一部に係合することができる係合部(図示せず)とされている。そして、図2に示しているように、支持部材3に取り付けられた支持部材19の係合部が背枠部材5の上部に係合することで、支持部材19が背枠部材5と支持部材3との間を支持することとなり、背枠部材5と支持部材3との相対的な位置変化を規制することができる(拘束状態)。そして、図3に示しているように、支持部材19と背枠部材5との係合を解くことにより、背枠部材5と支持部材3との相対的な位置変化(背枠部材5の後方への倒れ)を自由にさせることができる(自由状態)。なお、この切換手段6の位置は支持部材3の上部以外に他の部位であってもよい。
【0028】
この切換手段6により背枠部材5と支持部材3とを前記拘束状態とすれば、背もたれ部2の面状部材4と支持部材3の施療子10との間の隙間gを維持させることができる。これにより、利用者が背もたれ部2にもたれても背中は施療子10と接触しない状態、又は面状部材4が伸びて背中に施療子10が接触しても施療子10の存在を感じさせない程度(施療子10による違和感を与えない程度)、つまりマッサージ効果を与えないようにできる。一方、背枠部材5と支持部材3とを前記自由状態とすれば、背もたれ部2にもたれることによって、背枠部材5が弾性変形して後方へ倒れることができ、背中は面状部材4を介して施療子10によって強く押圧され、マッサージ効果を得ることができる。つまり、切換手段6によって拘束状態とすることによりマッサージ効果を与えない通常の椅子とすることができ、自由状態に切り換えることによりマッサージ効果を与えるマッサージ椅子とすることができる。これにより、この椅子を、日常において利用する家庭用の椅子や、長時間座ることのある事務用の椅子として利用できる。
【0029】
また、図3に示しているように、背枠部材5が弾性変形して後方へ倒れることにより背中に施療子10が当接し、さらに背中によって施療子10が押されて支持部材3が弾性変形して後方へ倒れるよう構成することができる。この場合、背枠部材5の後方への弾性変形量が、支持部材3の後方への弾性変形量よりも大きい状態にあるといえる。
【0030】
図4は本発明に係るマッサージ機能付き椅子の他の実施形態を示す背面図であり、図5と図6はその側面図である。この椅子は図2と図3に示した椅子の構成と同様であるが、この実施形態は、背もたれ部2の背枠部材5が起立状態から後方へ倒れることができるように背枠部材5を支持している第1後傾部8と、支持部材3が起立状態から後方へ倒れることができるように支持部材3を支持している第2後傾部9とを備えている。
【0031】
この第1後傾部8は一定の曲率半径で曲げられた第1のパイプ部材22を有しており、このパイプ部材22は上部後方から下部前方まで湾曲している形状とされ、その下部前方部が座枠部材18の後端部に固定されている。そして、背枠部材5の側部部材5aの下端部に、前記パイプ部材22と曲率半径が同一とされた第1の湾曲部24が形成されており、この湾曲部24がパイプ部材22内に挿入状となって進退移動することで、背枠部材5は起立状態から後方へ倒れた状態(図6)、又は、後方へ倒れた状態から起立状態(図5)になることができる。また、このパイプ部材22は座枠部材18と背枠部材5の側部部材5aとの連結部材とされているといえる。
【0032】
前記第2後傾部9は一定の曲率半径で曲げられた第2のパイプ部材23を有しており、このパイプ部材23は上部後方から下部前方まで湾曲している形状とされ、その下部前方部がベース部材15の後端部に固定されている。そして、支持部材3の下端部に、前記パイプ部材23と曲率半径が同一とされた第2の湾曲部25が形成されており、この湾曲部25がパイプ部材23内に挿入状となって進退移動することで、支持部材3は起立状態から後方へ倒れた状態(図6)、又は、後方へ倒れた状態から起立状態(図5)になることができる。またこのパイプ部材23はベース部材15と支持部材3との連結部材とされているといえる。
【0033】
なお、第1のパイプ部材22と背枠部材5の第1の湾曲部24とにおける中心点、及び、第2のパイプ部材23と支持部材3の第2の湾曲部25とにおける中心点は、同一の水平線(共通水平線H)上に存在している。これにより、背もたれ部2と支持部材3は前記共通水平線Hを中心として回動することができ、起立状態と後方倒れ状態との間を回動することとなる。これにより、背もたれ部2に利用者がもたれて上半身を後方へ倒すことにより、背枠部材5が後方へ倒れ、背中に施療子10が押されて支持部材3も後方へ倒れることができる。
【0034】
支持部材3には、背枠部材5の側部部材5aと連結させる棒状の連結部材26が設けられている。この連結部材26は支持部材3と背枠部材5とを連結させて両者の回動を一体的に行わせることができる。この連結部材26は支持部材3の高さ方向途中部から左右両側へそれぞれ伸びてかつ前方へ延伸して背枠部材5の側部部材5aに連結されている。なお、背枠部材5と支持部材3との間にこの連結部材26が介在しているが、連結部材26を弾性変形可能とすることにより、側面視において背枠部材5が支持部材3に対して接近する方向に移動することができる。さらに、背もたれ部2の面状部材4が弾性変形可能な(伸縮可能な)素材とされていることにより、面状部材4に利用者がもたれて背もたれ部2と支持部材3とが後方へ倒れた状態となり、面状部材4に大きな荷重(上半身の体重)が作用することによって当該面状部材4を弾性的に変形させることができ、面状部材4と施療子10との隙間gを無くし、施療子10によって背中を押圧させることができる。
【0035】
また、第2後傾部9の第2パイプ部材23内にはコイルバネからなる弾性部材11が設けられており、その一端部はパイプ部材23内に固定されており、他端部は支持部材3の第2湾曲部25の下端面に当接している。従って、支持部材3が後方へ倒れることにより、湾曲部25がパイプ部材23内をベース部材15側へ弾性部材11の弾性力に抗して前進することとなり、弾性部材11は圧縮される。支持部材3が後方へ倒れた状態(図6)になると、弾性部材11は、その復元する力によって、支持部材3を起立状態に復帰させることができる。そして、前記連結部材26により支持部材3と背枠部材5とを連結している場合は、弾性部材11によるこの支持部材3の復帰動作に伴って、背枠部材5が起立状態に復帰できる。これにより、利用者が背もたれ部2にもたれて後方へ倒れた状態から、背もたれ部2が起立した状態である通常の着座姿勢に楽に戻ることができる。さらに、この弾性部材11におけるバネ定数の大小を調整することにより、背もたれ部2を後方へ倒す際の抗力の強弱を変化させることもできる。
【0036】
支持部材3は第2後傾部9によって、背もたれ部2と共に後方へ倒れることができるようにされているが、この椅子は、支持部材3を起立状態に維持させるロック機構7を備えている。つまり、ロック機構7の切換操作により、背もたれ部2と支持部材3を後方へ倒すことができたり、起立状態に維持させたりできる。ロック機構7は、座部1のベース部材15に取り付けられており、座った状態で容易に操作を行うことができる。
ベース部材15に取り付けられているロック機構7は、肘掛け部材20用の支持柱部材21と、肘掛け部材20とを介して、この肘掛け部材20と固定されている支持部材3が後方へ倒れるのを規制することができるように構成されている。つまり、支持部材3は前記共通水平線Hを中心として回動するため、支持部材3に固定されている肘掛け部材20とこれに固定されている支持柱部材21についてもこの共通水平線H回りに回動することとなる。そこで、ロック機構7は、この支持柱部材21の下端部における回動を拘束することによって、支持部材3が回動するのを規制している。
【0037】
図5〜図7により具体的に説明すると、ロック機構7は、操作レバー27と、操作レバー27に応じて変位(回動)する係止部材28とを備えており、係止部材28が支持柱部材21の下端部に形成された当接部29に当接することで当該当接部29の回動を規制することができ、係止部材28と当接部29とが離間することで当該当接部29の回動を許容する。従って、ロック機構7の操作レバー27の切換操作により支持部材3を起立状態に拘束したり、後方へ倒れさせたりすることができる。これにより、背もたれ部2を起立状態に維持させたり、後方へ大きく倒れさせたりすることができる。
【0038】
なお、このように肘掛け部20の後部を支持部材3に固定することで、前記ロック機構7により支持部材3が後方へ倒れるのを規制することができる形態について説明したが、図示しないが、肘掛け部20の後部を背もたれ部2の背枠部材5に固定して、ロック機構7により背もたれ部2が倒れるのを規制することができるように構成してもよい。また、ロック機構7は座部1以外の部位に設けてもよい。
【0039】
施療子10の取り付け構造について説明すると、図4〜図6に示しているように、支持部材3にはブロック体30が取り付けられており、ブロック体30は支持部材3の長手方向に沿って移動可能でかつ任意の位置に固定される。つまり、ブロック体30は、例えば、本体部30aと、この本体部30aと支持部材3とを固定状態とさせる雄ネジ部材30bとを有している。この雄ネジ部材30bを本体部30aに挿通させて支持部材3に形成した雌ネジ孔(図示せず)に螺合させることで、本体部30aを支持部材3に固定することができる。そして、ブロック体30の本体部30aに、棒状の連結部材を介して施療子10が取り付けられている。これにより、施療子10は支持部材3の長手方向に沿って位置変更可能となる。さらに、施療子10(前記連結部材)はブロック体30に対して回動可能に取り付けられており、背中の形状や背中からの荷重の大小に追従できる。また、施療子10が面状部材4側に接近又は離間する方向に位置調整可能に取り付けられていてもよい。
【0040】
また、施療子10は支持部材3においてその上端部を含む複数箇所に取り付けられている。図4においては、上半身の背面側の左右両側部、上部、及び、下部に対応するよう4箇所に設けられており、さらにこれら各部において複数個(2個又は4個)の施療子10が設けられている。背中の左右両側部及び下部に対応する施療子10は、支持部材3の高さ方向途中部において前記ブロック体30により取り付けられているが、支持部材3の上端部に設けられた施療子10は、回動アーム部材31により回動可能に取り付けられている。そして、この上端部の施療子10は任意の角度で保持させることができる。
【0041】
このように、施療子10の位置を調整することができることにより、施療子10を接触させたい部位の変更が可能となり、また、身長差によるツボの位置の違いに対応させることができる。特に上端部の前記施療子10によれば、その角度を調整することにより、様々な身長の利用者に対して、当該施療子10を首部から肩部に対応させることができる。また、施療子10の位置調整は手動によるもの以外に電動によるものであってもよい。さらに図示しないが、施療子10を座部1においても取り付けてよい。
【0042】
また、本発明のマッサージ機能付き椅子は、図示する形態に限らずこの発明の範囲内において他の形態のものであっても良く、例えば、前記第1と第2の後傾部8,9を、図5と図6のようにパイプ部材22,23により構成する以外にも、弾性変形部とすることができる。つまり、背枠部材5と支持部材3とのそれぞれに弾性変形部を備えさせ、この弾性変形部を弾性変形させることによって後方へ倒れるように構成してもよい。つまり、図2と図3に示している椅子において、背枠部材5と支持部材3とをそれぞれ弾性変形させて両者を後方へ倒れさせている。なお、この場合、背枠部材5と支持部材3のそれぞれの全体を弾性変形部として全体的に弾性変形させてもよく、または、弾性変形部を一部(例えば下部のみ)としてもよい。
【0043】
また、本発明の椅子は、背もたれ部2の面状部材4と支持部材3とが相対的に接近可能とされていればよく、図示しないが、支持部材3が背もたれ部2(面状部材4)に対して接近可能となるように構成してもよい。つまり支持部材3の下部における水平部がベース部材15内を前後移動可能とされており、支持部材3が前方へ移動して施療子10と面状部材4とが接近、接触するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係るマッサージ機能付き椅子の実施の一形態を示す斜視図である。
【図2】マッサージ機能付き椅子を示す側面図であり、非マッサージ状態を示している。
【図3】マッサージ機能付き椅子を示す側面図であり、マッサージ状態を示している。
【図4】マッサージ機能付き椅子の他の実施形態を示している背面図である。
【図5】図4のマッサージ機能付き椅子の側面図であり、非マッサージ状態を示している。
【図6】図4のマッサージ機能付き椅子の側面図であり、マッサージ状態を示している。
【図7】ロック機構を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1 座部
2 背もたれ部
3 支持部材
4 面状部材
5 背枠部材
6 切換手段
7 ロック機構
8 第1後傾部
9 第2後傾部
10 施療子
11 弾性部材
g 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部と、上半身の背面側を当接させる面状部材を有する背もたれ部と、前記面状部材の後方において施療子を取り付けている支持部材と、を備え、前記面状部材を押圧することにより当該面状部材が前記支持部材に接近可能として設けられていることにより、上半身の背面が前記面状部材に当接した着座状態において、前記施療子が上半身の背面を押圧しない非マッサージ状態と、前記施療子が上半身の背面を押圧するマッサージ状態とに変化可能とされていることを特徴とするマッサージ機能付き椅子。
【請求項2】
座部と、上半身の背面側を当接させる面状部材を有する背もたれ部と、前記面状部材の後方において施療子を当該面状部材との間で隙間が形成されるように取り付けている支持部材と、を備え、前記面状部材と前記支持部材とが接近可能とされて設けられていることにより、前記隙間が維持される第一状態と、前記隙間が無くなって前記面状部材と前記施療子とが接触している第二状態とに変化可能とされていることを特徴とするマッサージ機能付き椅子。
【請求項3】
前記背もたれ部は前記面状部材を取り付けている背枠部材を有し、この背枠部材と前記支持部材とは相対的な位置変化が可能とされて設けられていることによって、前記面状部材が前記支持部材に接近可能とされている請求項1又は2に記載のマッサージ機能付き椅子。
【請求項4】
前記背枠部材と前記支持部材との相対的な位置変化を規制する拘束状態と相対的な位置変化を自由にさせる自由状態とを切り換える切換手段を備えている請求項3に記載のマッサージ機能付き椅子。
【請求項5】
前記面状部材が上半身の背面に押圧されることによって、前記背もたれ部が起立状態から後方へ倒れることを許容する第1後傾部と、前記支持部材が起立状態から後方へ倒れることを許容する第2後傾部とを備えている請求項1〜4のいずれか一項に記載のマッサージ機能付き椅子。
【請求項6】
前記背もたれ部と前記支持部材の少なくとも一方を起立状態に維持させるロック機構を備えている請求項5に記載のマッサージ機能付き椅子。
【請求項7】
前記第2後傾部は、後方へ倒れた状態にある前記支持部材を起立状態に復帰させる方向の弾性力を、当該支持部材に付与する弾性部材を有している請求項5又は6に記載のマッサージ機能付き椅子。
【請求項8】
前記施療子は、前記支持部材に位置変更可能とされて取り付けられている請求項1〜7のいずれか一項に記載のマッサージ機能付き椅子。
【請求項9】
前記施療子は前記支持部材において上端部を含む複数箇所に取り付けられており、上端部に設けられた前記施療子は前記支持部材に回動可能とされている請求項1〜8のいずれか一項に記載のマッサージ機能付き椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−296960(P2006−296960A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−126856(P2005−126856)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(000112406)ファミリー株式会社 (175)
【Fターム(参考)】