マーク付きコンタクトレンズの製造方法およびマーク付きコンタクトレンズ
【課題】レーザー加工を利用してマークを付したコンタクトレンズの製造方法を提供する。特に、レーザー光での刻印に際して周囲に形成される突起を抑えて、装用感等への悪影響を防止することの出来る、コンタクトレンズの新規な製造方法を提供することを、目的とする。
【解決手段】金型24と樹脂型26とコンタクトレンズ10の何れかにおいて、目的とするマーク22に対応する刻印46をレーザー光で形成する主レーザー加工を施すと共に、かかる刻印46の外周縁部分に対して主レーザー加工よりも小さな刻印深さで補助レーザー加工を施すことにより、主レーザー加工に伴う刻印46の外周縁部分における突起58の高さを抑える。
【解決手段】金型24と樹脂型26とコンタクトレンズ10の何れかにおいて、目的とするマーク22に対応する刻印46をレーザー光で形成する主レーザー加工を施すと共に、かかる刻印46の外周縁部分に対して主レーザー加工よりも小さな刻印深さで補助レーザー加工を施すことにより、主レーザー加工に伴う刻印46の外周縁部分における突起58の高さを抑える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズに識別用のマークを付してなるマーク付きコンタクトレンズの製造方法やマーク付きコンタクトレンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンタクトレンズが左右の何れの目に装用されるか識別したり、レンズの製品番号やロット番号、表裏、方向性等の情報を表示する目的で、レンズ面に標識(マーク)を付すことがある。
【0003】
レンズ面にマーキングを施す手法としては、一般に、フライスや針等の機械的な工具を用いた切削加工をレンズ面に直接に施して刻印したり、或いはコンタクトレンズの成形に用いられる成形型の成形面に刻印したものをレンズ面に転写したりして、マークを付することが知られている。例えば、特許文献1(特開2002−082320号公報)や特許文献2(特開2000−199875号公報)、特許文献3(特開平07−186290号公報)、特許文献4(特開平08−194193号公報)等に示されているものが、それである。
【0004】
しかしながら、機械工具を用いた切削加工では、レンズ面や成形面等の加工面における応力集中に起因して、コンタクトレンズ乃至は成形型の強度が十分に確保され難いことに加え、工具の耐久性低下により、多数のレンズに同一のマークを付することが困難な場合があった。
【0005】
そこで、近年では、同特許文献1〜4にも示されているように、加工面にマークを付する有効な手段の一つとして、高密度の光エネルギの集中によるレーザー光を利用したレーザー加工の適用が検討されている。このような加工によれば、レーザー光を加工面に照射して表面を溶解乃至は蒸発させることにより、レーザー光の出力部材が加工面に触れることなく刻印することが出来て、強度が有利に確保され得る。しかも、レーザー光が所定のピッチ幅で照射されることに基づき刻印の底面が凹凸状に荒らされることを利用して、光の散乱によりマークの視認性が向上されることから、微細なマークの形成にも有利に適用される。
【0006】
ところが、上述のレーザー加工においては、光エネルギによる熱の影響により、刻印の外周縁部が盛り上がって、加工面から膨らみが突出せしめられることがあった。特に、微小なマークの形成において、目的とする視認性を確保しようと刻印の深さをある程度大きくする場合には、レーザー光の走査速度を落としたりピッチ幅を適宜に調節したりすることが多くなり、その結果、刻印に熱が集中して、外周縁部の膨らみが一層大きくなるおそれがあった。コンタクトレンズでは、かかる膨らみによってレンズ表面に現れる突起(突条を含む)が装用に際しての異物感や汚れの原因となるおそれがある。即ち、突起が大きくなると眼瞼や角膜等への接触圧が大きくなって異物感が大きくなると共に、突起の両側の窪み状の隅部等に汚れが溜まり易くなるおそれがある。
【0007】
【特許文献1】特開2002−082320号公報
【特許文献2】特開2000−199875号公報
【特許文献3】特開平07−186290号公報
【特許文献4】特開平08−194193号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、刻印の深さ寸法を確保しつつ、レーザー加工に伴う刻印の外周縁部の盛り上がりを抑えることが可能であり、それによって、刻印で付与されたマークの視認性と装用感とが何れも両立して有利に発揮され得る、マーク付きコンタクトレンズの新規な製造方法および新規な構造のマーク付きコンタクトレンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0010】
すなわち、本発明の特徴とするところは、金型によって成形した樹脂型を用いて凹状のレンズ内面と凸状のレンズ外面の少なくとも一方のレンズ面を成形すると共に、レンズ内面とレンズ外面の少なくとも一方にマークを付したマーク付きコンタクトレンズの製造方法であって、金型と樹脂型とコンタクトレンズの何れかにおいて、目的とするマークに対応する位置にレーザー光を照射して刻印する主レーザー加工を施すと共に、刻印の外周縁部分に対して主レーザー加工よりも小さな刻印深さで補助レーザー加工を施すことにより、主レーザー加工に伴う刻印の外周縁部分における突起の高さを抑えることにある。
【0011】
このような本発明に係る製造方法によれば、刻印のための主レーザー加工に伴って発生する刻印周りの突起の高さを、補助レーザー加工で抑えることが出来る。それ故、主レーザー加工による刻印の深さを確保して良好なマークの視認性を実現することが出来ると共に、マーク周囲における突起の高さを抑えて、突起に起因するコンタクトレンズの装用時における異物感や汚れ等の問題を回避することが可能となるのである。
【0012】
また、本発明方法において、樹脂型成形用の金型とコンタクトレンズの何れかに対して主レーザー加工と補助レーザー加工を施すことにより、コンタクトレンズの内面又は外面に対して凹状のマークを形成することが出来る。なお、樹脂型成形用金型とコンタクトレンズの何れか一方に対して、主レーザー加工と補助レーザー加工の何れか一方を施すと共に、それら樹脂型成形用金型とコンタクトレンズの他方に対して、主レーザー加工と補助レーザー加工の他方を施すことも可能である。
【0013】
一方、本発明方法において、樹脂型に対して主レーザー加工と補助レーザー加工を施すことにより、コンタクトレンズの内面又は外面に対して凸状のマークを形成することが出来る。レンズ面におけるマークを凹状に形成した場合だけでなく、凸状に形成した場合にも、その周囲において、主レーザ加工に伴う突起が転写された凹状の窪みが形成されていると、そこに汚れが溜まり易いという問題や、凹状の窪みの分だけ凹凸領域が大きくなって装用感にも悪影響が及ぼされるおそれがあるが、本発明方法に従う補助レーザー加工を施すことにより、そのような問題を軽減乃至は解消することが出来るのである。
【0014】
なお、本発明において、主レーザー加工や補助レーザー加工に使用するレーザー光としては、レンズや金型、樹脂型等の加工に適した各種のレーザー光が採用可能であり、例えばYAGレーザーや炭酸ガスレーザー、エキシマーレーザー、半導体レーザー等が挙げられる他、望ましくは、YAG第4高調波レーザーが採用される。
【0015】
このYAGを媒質とした第4高調波(波長266nm)によるレーザー加工においては、当該レーザーが加工性の高い深紫外線レーザーとされていることから、目的の形状や大きさの刻印が有利に実現され得るのであり、しかも他のレーザーに比して熱加工よりもアブレーション加工の割合が高いことに基づき、レンズや金型、樹脂型等の被加工物に対する熱影響が小さくされて、熱エネルギに起因する刻印周りの突起高さの増大が一層有利に抑えられる。なお、第4高調波のレーザー加工では、YAG以外にYV04やYLFを媒質としたレーザーも採用可能である。
【0016】
また、本発明に係るマーク付きコンタクトレンズの製造方法においては、主レーザー加工を施した後に、補助レーザー加工を施しても良い。この方法に従えば、主レーザー加工に伴う刻印を形成したあとに、かかる主レーザー加工に起因して発生した、問題となる突起を目標物としてそこに補助レーザー加工を施すことができる。
【0017】
或いは、本発明に係るマーク付きコンタクトレンズの製造方法においては、主レーザー加工を施す前に、補助レーザー加工を施しても良い。この方法に従えば、主レーザー加工に伴う刻印の際に、刻印周りにおける突起そのものの発生を抑えることが出来る。また、主レーザー加工を行う際に、予め施した補助レーザー加工の跡を目安とすることも可能である。なお、補助レーザー加工を施した後に主レーザー加工を施して刻印を行い、更に、必要に応じて補助レーザー加工を施すことも可能である。
【0018】
また、本発明に係るマーク付きコンタクトレンズの製造方法では、主レーザー加工による刻印の幅寸法に比して、補助レーザー加工による幅寸法が小さくなるようにすることが望ましい。これにより、主レーザー加工に比して補助レーザー加工の影響が大きくなり過ぎて、補助レーザー加工による膨らみや突起の発生が問題となることを防止することができる。
【0019】
また、本発明に係るマーク付きコンタクトレンズの製造方法では、主レーザー加工に使用するレーザー光と、補助レーザー加工に使用するレーザー光とを、出力とQsw周波数と走査速度と照射角度と走査回数と波長の少なくとも一つにおいて互いに異ならせる方法が、好適に採用される。これにより、主レーザー加工によって十分な視認性を与える深さや幅の刻印を施しつつ、補助レーザー加工においては、主レーザー加工によって問題となる突起の発生を抑えるのに有効な程度以上に悪影響が及ぼされることを回避するなどのコントロールが可能となる。また、主レーザー光および補助レーザー光として、同じ種類のレーザー光を採用し、出力とQsw周波数と走査速度と照射角度と走査回数と波長の少なくとも一つを異ならせて調節することにより、主レーザー加工と補助レーザー加工を、同一のレーザー加工装置において、被加工物も取り外すことなく、続けて加工を行うことが可能となる。
【0020】
また、本発明に係るマーク付きコンタクトレンズの製造方法においては、少なくとも補助レーザー加工に使用するレーザー光として、加工スポット径が20μm以下のものを採用することが望ましい。このような方法によれば、問題となる突起が小さくても、突起に対してレーザー光を効率的に且つ精度良く照射することが出来る。しかも、レンズにおける突起以外の部分にレーザー光を照射することが抑えられることから、レーザー光によってレンズの目的としない箇所に凹所が形成されたり、レーザー光の熱エネルギの集中に起因して加工部位(照射部分)の外周縁部分に新たな突起が形成されたりすることが抑えられる。
【0021】
さらに、マーク付きコンタクトレンズに関する本発明の特徴とするところは、レンズ内面とレンズ外面の少なくとも一方のレンズ面において、直接にレーザー光を照射して刻印されることにより、或いは該レンズ面の成形に際して用いられる成形型の成形面にレーザー光を照射して刻印したものを転写されることにより、マークが付されたマーク付きコンタクトレンズであって、マークの外周縁部には、レーザー光の照射による前記刻印よりも小さな深さをもってマークの縁に沿って延びる線状の加工面が形成されているマーク付きコンタクトレンズにある。
【0022】
このような本発明に従う構造とされたマーク付きコンタクトレンズにおいては、刻印よりも小さな深さの加工面がマークの外周縁部に形成されていることによって、マークの視認性が確保されつつ、レーザー光の照射に伴うマークの外周縁部の突起の高さが抑えられて、レンズの装用時における異物感や汚れ等の問題が有利に解消され得る。
【0023】
なお、本構造に係る成形型には、樹脂型や金型、その他表面にレーザー加工を施すことが可能であり且つレンズ表面の形成に関与する型が含まれる。また、レーザー加工が施される面は、レンズ面(レンズの表面)であっても良いし、レンズを成形するのに用いられる成形型としてのレンズを成形する樹脂型や樹脂型を成形するための金型の表面であっても良い。このことは、上述の製造方法に関する本発明の説明より明らかであるから、重複した記載を省略する。
【0024】
また、上記のコンタクトレンズに関する本発明においては、例えば、レンズ面においてマークが凹状に形成されていると共に、凹状の外周縁部においてレーザー光の照射に起因する周囲突起が形成されており、この周囲突起の先端部分に対して凹状の断面で延びる加工面が形成されている構成が、好適に採用され得る。このような構成を採用することにより、装用時における眼瞼や角膜へのマークの刺激等が一層有利に軽減され得るコンタクトレンズが提供可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について説明する。先ず、図1には、本発明の一実施形態としてのコンタクトレンズ10が示されている。コンタクトレンズ10は、全体として薄肉の略球殻形状を有しており、眼球の角膜の表面に重ね合わせられて装用されるようになっている。なお、装用は、人体に装着して使用されることをいう。
【0026】
より詳細には、本実施形態に係るコンタクトレンズ10は、ソフトコンタクトレンズやハードコンタクトレンズ、ディスポーザブルタイプのコンタクトレンズ等の各種のコンタクトレンズに対して適用可能である。また、コンタクトレンズ10には、光透過性等の光学的特性を備えた各種の重合性モノマーからなる樹脂材料が採用され、具体的に例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)やポリメチルメタクリレート(PMMA)、酢酸酪酸セルロース(CAB)、シリコーン共重合体、フルオロシリコーンアクリレート、フルオロカーボン重合体、シリコーンゴム等が挙げられる。
【0027】
コンタクトレンズ10は、レンズ中心軸が光軸とされており、該中心軸回りの回転対称形状とされている。レンズ外面が、凸状のレンズ前面で構成されていると共に、レンズ内面が、凹状のレンズ後面で構成されている。コンタクトレンズ10の中央部分には、レンズ前後面にそれぞれ円形状の前面光学部12と後面光学部14が形成されている。
【0028】
後面光学部14は、装着される角膜の表面に対して装用状態下で略相似形となるように、レンズ中心軸上でレンズ後方に曲率中心が設定されて、適当な曲率半径をもった凹形の縦断面形状を有するベースカーブ面を構成している。ベースカーブ面の縦断面形状には、角膜の形状やその他の装用条件或いは要求される光学特性等を考慮して、例えば曲率半径が一定であったり、曲率半径が周方向で変化したりする等の各種の略球状の湾曲凹面形状が採用される。
【0029】
一方、前面光学部12は、上述の如く設定されたベースカーブ面と協働して目的とするレンズ度数等の光学特性を与える湾曲凸面形状を有している。
【0030】
これら前面光学部12および後面光学部14によって、視力矯正のための適当なレンズ度数等の光学特性が与えられた光学部(optical zone)が形成されている。なお、光学部は、装用者の眼に対する光学的効果が期待される領域であって、その外周縁部、換言すると後述する周辺部(peripheral zone)との境界は、一般にレンズ前面およびレンズ後面においてそれぞれ縦断面上での曲率の変化点としてとらえることが出来るが、例えば、光学部のレンズ面が半径方向で漸変するような縦断面形状で設計される場合や、境界が径方向に所定幅をもって形成されてレンズ前後面間で光学部と周辺部を滑らかに繋ぐ接続領域等によって形成される場合等において、レンズ前後面における光学部と周辺部の境界は、形状的に線(line)として必ずしも明確である必要はない。
【0031】
コンタクトレンズ10の光学部の周りを囲む外周部分には、周辺部と端部(edge zone)16が形成されている。端部16は、コンタクトレンズ10の最外周縁部において円環形状を有していると共に、レンズ縦断面において、略半円形状の外周端面から内方に延び出した面取り状のレンズ前後面を備えている。更に、端部16のレンズ前後面が、前後面周辺部18,20に接続されている。
【0032】
前面周辺部18と後面周辺部20は、それぞれ、レンズ中心軸を中心として所定の径方向幅寸法をもって周方向に連続して延びる円環形状とされており、レンズ10の前後面光学部12,14と端部16の間に跨って設けられて、前後面周辺部18,20の内周縁部分が、前後面光学部12,14に接続されている。即ち、前面周辺部18と後面周辺部20が協働して、レンズ10の光学部の外周側に位置せしめられる周辺部を構成している。
【0033】
前面周辺部18の所定の箇所には、マーク22が付されている。マーク22は、レンズ10の前後面や付された部分の位置、レンズ10が左眼用乃至は右眼用の何れであるか等を識別するために付されるものであって、その形状や大きさ、意匠等は特に限定されるものでない。例えば、本実施形態に係るマーク22は、レンズ10の前面に開口する凹溝によって適当な文字又はマークが形成されている。
【0034】
次に、かくの如きマーク22を付したコンタクトレンズ10の製造方法の一具体例と、それによって製造されたコンタクトレンズ10におけるマーク22の詳細形状について説明を加える。
【0035】
先ず、金型としての雌型成形用金型24と雄型成形用金型(図示せず)を準備する。これら雌雄型の成形用金型は、目的とするコンタクトレンズ10をモールド成形(重合)により得るための樹脂型としてのレンズ成形用雌型26とレンズ成形用雄型28(図3,4参照。)を、それぞれ独立して公知の樹脂成形法により製造するものである。特に、成形用金型には、後述の如きレーザー加工に適当なブリハードン鋼等が好適に採用されるが、その他任意の金属材が採用可能である。また、レンズ成形用の雌型26および雄型28に用いられる熱可塑性樹脂材料としては、例えばポリプロピレンやポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、塩化ビニル、ナイロン、ポリアセタール、フッ素樹脂等が、何れも採用可能である。
【0036】
雌型成形用金型24は、図2にも示されているように、中央部分に凹状球形の樹脂型成形面30を備えた第一の金型32と、中央部分に凸状球形の樹脂型成形面34を備えた第二の金型36を含んで構成されている。特に、第二の金型36の凸状の樹脂型成形面34は、コンタクトレンズ10の略球状凸面形状とされたレンズ前面に対応した形状を呈している。
【0037】
そして、図示しない型締装置によって第一及び第二の金型32,36を軸方向で型閉じして、両金型32,36の型合わせ面間に成形キャビティ38を形成する。この成形キャビティ38に対して、例えば図示しない射出装置等によって熱可塑性樹脂材料をスプルやランナ40を通じて射出充填して冷却固化した後に、樹脂材料からなる成形品を両金型32,36の型開きにより取り出す。これにより、レンズ成形用雌型26(図3参照)を得る。レンズ成形用雌型26の凹状球形のレンズ成形面42が、第二の金型36の凸状の樹脂型成形面34により形成されることで、コンタクトレンズ10のレンズ前面に対応した形状とされている。
【0038】
一方、雄型成形用金型は、雌型成形用金型24と同様に、第一及び第二の金型から構成されており、それら両金型の型合わせ面間に、レンズ成形用雄型28(図4参照)に対応した成形キャビティを形成するものであって、雌型成形用金型24と同様な操作により、かかる雄型成形用金型でレンズ成形用雄型28を成形するものである。このように雄型成形用金型の構造は雌型成形用金型24と実質的に同じであることから、ここでは雄型成形用金型の図示を省略する。而して、熱可塑性樹脂材料と雄型成形用金型を用いて、レンズ成形用雌型26と同様な樹脂成形法により、レンズ成形用雄型28を得る。レンズ成形用雄型28の凸状球形のレンズ成形面44が、第二の金型36の凸状の樹脂型成形面34で形成されることで、コンタクトレンズ10のレンズ後面に対応した形状とされている。
【0039】
特に本実施形態では、雌型成形用金型24の第二の金型36の樹脂型成形面34において、コンタクトレンズ10のマーク22に対応する位置に主レーザー加工を施すことによって刻印46が形成されている。即ち、第二の金型36の樹脂型成形面34には、コンタクトレンズ10の前面周辺部18におけるマーク形成位置に対応する部分に対して、レーザー光を照射して、かかる樹脂型成形面34の表層部分を溶融等することにより、目的とするマーク22に対応した形状の刻印46を設ける。かかるレーザー光には、微細な加工を良好な制御性と安定性をもって行い、且つ第二の金型36の樹脂型成形面34に対する熱影響を少なくすることを目的として、YAGレーザーの第4高調波が好適に使用される。
【0040】
これにより、雌型成形用金型24を用いてレンズ成形用雌型26を樹脂成形する際に、雌型成形用金型24の樹脂型成形面34に形成された刻印46がレンズ成形用雌型26のレンズ成形面42に転写される。その結果、レンズ成形用雌型26のレンズ成形面42には、コンタクトレンズ10において目的とするマーク22の形成位置に対応する部分に、マーク22に対応した凸形状のマーク用凸部48が形成されることとなる。
【0041】
次に、このようにしてマーク用凸部48が形成されたレンズ成形用雌型26と、雄型成形用金型を用いて樹脂成形することによって得られたレンズ成形用雄型28を用いて、目的とするコンタクトレンズ10をモールド成形する。
【0042】
それには、先ず、図3に示されているように、レンズ成形用雌型26を鉛直上方に向けて開口するように支持せしめて、その凹状のレンズ成形面42によって形成された受け皿状の領域に、注入管50を通じて、コンタクトレンズ10の材料となる重合性モノマー52を入れる。この重合性モノマー52には、ソフトコンタクトレンズやハードコンタクトレンズ等の原料となる各種の液状のモノマー組成物が適宜に採用される。例えば、ラジカル重合可能な化合物の一種又は二種以上が配合されてなるものの他、マクロマーやプレポリマから構成されるもの等が用いられても良い。また、そのような化合物には、必要に応じて、適当な架橋剤や増感剤、熱重合開始剤、光重合開始剤等が配合される。
【0043】
次いで、図4に示されているように、レンズ成形用雌型26の鉛直上方からレンズ成形用雄型28を軸方向(図4中、上下)に重ね合わせて嵌め入れることにより型合わせして、重合性モノマー52が充填されて密閉された成形キャビティ54を形成する。その後、両型26,28の型合わせ状態を保持して、重合性モノマー52の重合処理を行う。なお、重合処理は、採用する重合性モノマー52に応じて、光重合や熱重合などが適宜に採用される。
【0044】
重合性モノマー52の重合の後、レンズ成形用雌型26とレンズ成形用雄型28を型開きして、重合処理された成形品からなるコンタクトレンズ10を脱型することにより、目的とするコンタクトレンズ10を得る。なお、コンタクトレンズ10の脱型は、例えば、型開きによってレンズ成形用雄型28のレンズ成形面44に付着せしめたコンタクトレンズ10を、該レンズ成形用雄型28の筒状部を軸直角方向に押し潰してレンズ成形面44を湾曲変形させることで、該レンズ成形面44から剥離させることによって、或いは適当な薬品を使用して剥離させることによって、行うことができる。
【0045】
このようにして重合成形されて脱型されたコンタクトレンズ10においては、雌型成形用金型24の樹脂型成形面34に形成された刻印46が、レンズ成形用雌型26のレンズ成形面42に転写され、更にそれがコンタクトレンズ10の前面に転写されることによって、コンタクトレンズ10の周辺部の目的とする位置に、刻印46に対応した形状を有する凹状のマーク22が形成されるのである。
【0046】
ところで、上述の主レーザー加工を雌型成形用金型24に施して刻印46を形成するに際しては、コンタクトレンズ10に転写されたマーク22の視認性を確保し、特に多少の磨耗等があっても良好な視認性を確保するためにも、刻印46の深さ寸法:d1をある程度大きく設定することが要求される。なお、刻印46の深さ寸法:d1は、コンタクトレンズ10の光学的特性や厚さ寸法、材質、刻印46の幅寸法等を考慮して、視認性を確保し得る程度に適宜に設定されるのものであり、特に限定されるものでないが、一般に、d1=1〜50μmとされることが望ましい。蓋し、1μmよりも小さいと視認性が確保され難くなる一方、50μmよりも大きいと、レンズ10の強度低下が問題となるおそれがあるからである。
【0047】
さらに、雌型成形用金型24には、刻印46の形成部分において、上記主レーザー加工に加えて補助レーザー加工が施されている。この補助レーザー加工は、雌型成形用金型24に主レーザー加工を施した後、或いは主レーザー加工を施す前に、主レーザー加工に伴う刻印46の外周縁部分に対してレーザー光を照射することによって行われる。
【0048】
補助レーザー加工は、好適には、加工スポット径が20μm以下のレーザー光を、主レーザー加工によって形成される刻印の外周縁部に対して、凹状の刻印46の開口周縁部の全周に亘って所定間隔(ピッチ)で照射することによって行われる。なお、補助レーザー加工に使用するレーザー光は、主レーザー加工と同様に、YAG第4高調波レーザーが好適であるが、その出力とQsw周波数と走査速度と照射角度と走査回数と波長の少なくとも一つにおいて主レーザー加工のレーザー光と異なるチューニングを施す。
【0049】
これにより、主レーザー加工よりも小さな深さと幅で補助レーザー加工による凹状部を形成する。而して、図6に示されているように、主レーザー加工によって刻印46の外周縁部分に発現される突起58に対応する位置に、補助レーザー加工による凹状部が形成されることとなる。その結果、主レーザー加工によって刻印46の開口周縁部分において全周に亘って形成される突起58において、補助レーザー加工により、その高さ寸法:h2を抑えることが出来ると共に、その全体ボリュームも抑えることが出来る。
【0050】
より具体的には、先に主レーザー加工を施した後に補助レーザー加工を施す場合には、先ず、主レーザー加工によって刻印46を形成することにより、刻印46の形成部分の溶融等に起因して刻印46の開口周縁部には、図5に示されているように、刻印46の開口方向に向かって基準面(成形面34)から突出する周囲突起としての突起58が、略全周に亘って発生する。そこで、補助レーザー加工を、この突起58の幅方向略中央の位置に向けて施すことにより、突起58の先端部分を溶融乃至は蒸発させる。この補助レーザー加工により、図6に示されているように、突起58の先端部分に対して深さ:d2の凹部60が形成されて、突起58の突出高さ:h2が、初期高さ:h1より小さくされる。更に、必要に応じて、突起58に対する補助レーザー加工を連続的乃至は断続的に続けることにより、図7に示されているように、突起58に対する凹部60の深さや幅を適当な大きさまで増大させることが出来る。その結果、深さ:d2の凹部60よりも大きな深さ:d3の凹部62が形成されて、突起58の高さをより小さく抑えることが可能となる。
【0051】
なお、補助レーザー加工は、主レーザー加工と同じ材質の対象物である雌型成形用金型24に加工を施すものであるから、主レーザーおよび補助レーザーとして同じレーザー光を採用することが望ましい。尤も、上述のとおり、補助レーザー加工は、主レーザー加工で刻印46を形成する際に刻印46の周囲に発生した突起58を小さくすることを目的とするものであるから、レーザー光における出力とQsw周波数と走査速度と照射角度と走査回数と波長の少なくとも一つを調節変更して、主レーザー加工による刻印46の深さよりも小さな深さの凹部62が形成されるようにする。
【0052】
上述の如き補助レーザー加工の目的から、一般に、主レーザー加工によって形成される刻印46の深さ:d1に比して、突起58の高さ:h1や補助レーザー加工によって形成される凹部60,62の深さ:d2,d3は小さくされる。また、主レーザー加工によって形成される刻印46の幅寸法:w1に比して、補助レーザー加工によって形成される凹部60,62の幅寸法:w2,w3は小さくされる。上述の説明からも明らかなように、本実施形態では、マーク22の外周縁部において、レーザー光の照射による刻印46よりも小さな深さ:d3でのレーザー加工により形成される加工面が、凹部60や凹部62を含んで構成されている。
【0053】
なお、補助レーザー加工は、突起58の先端部分(頂部)に一列状に形成しても良いし、或いは突起58の先端部分に対して千鳥状や複数列状等にパルス状レーザー光を照射することも可能である。また、補助レーザー加工は、刻印46の開口周縁部の全周に亘って形成する必要はなく、例えば、周上で突起58の突出高さが大きい部分にだけ補助レーザー加工を施すようにしても良い。
【0054】
また、図5〜7では、雌型成形用金型24(第二の金型36)の概略形状が示されており、刻印46の底面が略平坦に表されているが、一般に、レーザー光で目的とする幅寸法:w1および深さ寸法:d1の刻印46を形成するために、パルス状のレーザー光を所定の間隔で照射する。これにより、図8,9にも示されているように、刻印46の底面が凹凸形状とされる。この刻印46の凹凸形状が、レンズ成形用雌型26を介してコンタクトレンズ10に転写されることとなり、マーク22の凹底面が粗面状態とされることによって、マーク22の視認性の向上にも資することとなるのである。
【0055】
更にまた、補助レーザー加工によって突起58の先端部分に形成される加工面62も、主レーザー加工と同様に、一般に、パルス状のレーザー光を用いて形成されることから、凹凸形状とされるが、深さおよび幅寸法に関して補助レーザー加工による加工部位が主レーザー加工による加工部位に比して小さいことから、図9中において、加工面62における凹凸(粗面状態)を省略してある。
【0056】
上述の如き構造とされたコンタクトレンズ10においては、雌型成形用金型24での主レーザー加工による刻印46の形成に伴う突起58の高さが、補助レーザー加工による加工面(凹部62)の形成で抑えられることによって、刻印46の転写に基づきコンタクトレンズ10のマーク刻印56の外周縁部に突出せしめられる突起58の高さが抑えられる。これにより、該突起高さに起因するコンタクトレンズ10の装用時における異物感や汚れ等の問題が有利に解消され得る。
【0057】
すなわち、主レーザー加工に伴う突起58の高さが補助レーザー加工によって所望の寸法レベルに下げられることで、かかる突起58の高さに特別に配慮することなく、主レーザー加工による刻印46を所望の深さ寸法:d1に加工することが可能となる。それ故、金型24の刻印46により転写されるマーク刻印56の深さ寸法を所望の値に設定することができて、マーク22の視認性が好適に確保され得るのである。
【0058】
しかも、補助レーザー加工によって、刻印46の周囲に形成される突起58の先端形状が荒らされ、延いてはその転写で形成されるコンタクトレンズ10のマーク22の外周縁部の先端形状も荒らされることから、マーク22の輪郭(outline)の視認性をより一層向上させることが出来る。
【0059】
また、加工面となる凹部62を補助レーザー加工で形成する際に、加工スポット径が例えば20μm以下のレーザー光を採用していることから、雌型成形用金型24に与える熱影響を有利に抑えることが出来る。それ故、補助レーザー加工による加工面への影響が大きな問題となるようなこともない。
【0060】
更にまた、本実施形態では、主レーザー加工を雌型成形用金型24に施して刻印46を形成すると共に、金型24の刻印46の外周縁部分に形成された突起58に対して補助レーザー加工を施すことによって、刻印46をレンズ面に転写する前に、問題となる突起58の高さが抑えられる。それ故、マーク22が付されたコンタクトレンズ10を多数製造する場合においても、コンタクトレンズ10の一枚一枚に主レーザー加工や補助レーザー加工を施す手間が省かれて、コンタクトレンズ10の生産性が向上され得る。
【0061】
尤も、製造工程や製造設備等の制約や条件等によっては、主レーザー加工をコンタクトレンズ10に直接に施してマークを表す刻印を付した後に、レーザー光の熱エネルギの影響によりマークの外周縁部分に形成される突起に対して補助レーザー加工を施しても良い。或いは、主レーザー加工を雌型成形用金型24に施して刻印46を形成すると共に、外周縁部に突起58を有する刻印46をレンズ面に転写し、コンタクトレンズ10に形成された突起に対して補助レーザー加工を施すことも可能である。また、前記実施形態の如く主レーザー加工及び補助レーザー加工を雌型成形用金型24に施して、外周縁部分の突起高さが抑えられた刻印46を付すと共に、該刻印46をコンタクトレンズ10に転写してマーク22(マーク刻印56)を付した後に、マーク22の外周縁部分で突出高さが抑えられた突起に対して更に補助レーザー加工を施して、突起の高さを一層小さくしても良い。
【0062】
或いは、図3に示されているレンズ成形用雌型26のレンズ成形面42に対して、主レーザー加工を施して刻印を形成すると共に、この刻印の周囲に形成された突起に対して補助レーザー加工を施して突起の高さを抑えるようにしても良い。このようなレーザー加工によれば、前記実施形態においてレンズ成形用雌型26のレンズ成形面42に対して、雌型成形用金型24の刻印を転写して形成されていた凸形状のマーク用凸部48に代えて、反対に凹形状の刻印が形成されることとなる。そして、このレンズ成形用雌型26を用いて、図4に示されているように、目的とするコンタクトレンズを重合成形することにより、コンタクトレンズの前面において、刻印に対応する凸形状のマークを形成することが出来る。
【0063】
このように、コンタクトレンズの表面に凸形状のマークを形成する場合においても、本発明は有利に適用され得るのであり、それによって、凸形状のマークの外周縁部において周方向に縁取り状に延びる輪郭状突起を、小さく抑えることが可能となり、それによって、装用感の向上や汚れの付着軽減などといった、前記実施形態と同様な効果を得ることが出来るのである。なお、このようなコンタクトレンズにおける凸形状のマークの形成は、図3,4を参酌して、前記実施形態の説明から十分に理解できるものであり、当業者であれば容易に実施出来ることから、ここでは図示を割愛する。
【0064】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であり、かかる実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様で実施可能であり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【0065】
例えば、マーク22を表す刻印46や刻印46の外周縁部の突起58、該突起58に付される凹部60乃至は62等における形状や大きさ、数、位置、設けられる雌雄の成形用金型又はレンズ成形用樹脂型若しくはコンタクトレンズ10における前面と後面の別等は、何等、限定されるものでなく、例示の如きものに限定されない。
【0066】
具体的に、前記実施形態に係るコンタクトレンズ10の製造方法においては、主レーザー加工で雌型成形用金型24の樹脂型成形面34に刻印46を付した後に、刻印46の外周縁部に生ぜしめられた突起58に対して補助レーザー加工が施されるようになっていたが、図10〜12を参照しつつ以下に説明するように、反対に、先に補助レーザー加工を施すことも可能である。なお、図10〜12では、前記実施形態と実質的に同一の構造とされた部材および部位について、図中に前記実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。
【0067】
すなわち、図10にも示されているように、先ず、雌型成形用金型24の樹脂型成形面34における刻印46の外周縁部に対応する位置にレーザー光を照射して補助レーザー加工を施すことにより、凹部64を形成する。本具体例では、前記実施形態と同様な直線形状の刻印46を付すため、刻印46の幅方向両壁部の各上端部分や長手方向両端部の各上端部分に対応する位置に凹部64を形成する。なお、レーザー光により金型24を溶融等せしめて所定の深さ寸法:d4の凹部64を形成することに伴い、凹部64の外周縁部と内周縁部に、それぞれ突出高さ:h3の小突起66が形成されるが、補助レーザー加工によって及ぼされるエネルギーが主レーザー加工によるエネルギーに比して十分に小さいことから、これらの小突起66が大きな問題となることはない。
【0068】
次に、樹脂型成形面34における凹部64で囲まれた内側にレーザー光を照射して主レーザー加工を施すことにより、刻印46を付す。特に、図11に示されているように、刻印46の深さ寸法:d5や幅寸法を適当に調節することにより、刻印46の形成に伴って凹部64の内周縁部の小突起66を、溶融乃至は蒸発により消失させることも可能である。
【0069】
また、図12に示されているように、主レーザー加工によるレーザー光を刻印46の所定の箇所に続けて照射して、より大きな深さ寸法:d1の刻印46を付した場合においても、主レーザー加工による熱の影響で刻印46の外周縁部に形成される突起68の高さ寸法:h4が、そこに予め形成された、刻印46よりも小さな深さ寸法:d4の凹部64からなる加工面によって、突起68の高さが抑えられる。
【0070】
さらに、刻印やマークは、コンタクトレンズの前面やその成形面に代えて、或いは加えて、コンタクトレンズの後面やその成形面に形成することも可能である。
【実施例】
【0071】
本発明に従うコンタクトレンズの製造方法による技術的効果について確認するために行った試験を、以下に実施例として記載する。
【0072】
前記実施形態に係るコンタクトレンズ10の製造に用いられる雌型成形用金型24(第二の金型36)と同等な材質の試料70を用意する。試料70の材質は、ニッケルメッキを施したSTAVAX(商標)である。
【0073】
この試料70の表面にレーザー光を照射して主レーザー加工を施すことにより、略直線の溝状の刻印を付す。主レーザー加工では、レーザー光としてYAG第4高調波レーザーを採用し、Qsw周波数を2.5KHz、出力を150mW、移動速度(走査速度)を10mm/s、スポット径を約20μmとした。レーザー光のドット間隔は走査速度をQsw周波数で割ることにより求められるため、Qsw周波数が一定の下、かかる走査速度を設定変更することでドット間隔が制御される。これにより、ドット間隔とレーザー光のスポット径との関係から、例えばドット間隔を狭くしてレーザー光の照射部位を重ねるようにしてレーザー加工を施すことにより、加工部位の深さを大きくしたり、レーザー光の照射部位のドット間隔を広くとって加工部位の深さを全体として小さくしたりする等の、深さの調整が好適に為される。本実施例では、レーザー光のスポット径が約20μmであり、Qsw周波数が2.5kHz、走査速度が10mm/sであるから、ドット間隔は約4μmとなり、互いに隣り合うレーザー光の照射部位が75%程度重なり合ったレーザー加工が施される。その結果得られた、試料70における刻印を付した箇所の拡大した縦断面を、比較例1として図13に示す。
【0074】
また、試料70の表面にレーザー光を照射して主レーザー加工を施すことにより、略直線の溝状の刻印を付した後、刻印を付した試料70における刻印の周囲(外周縁部)に対して、レーザー光を照射して補助レーザー加工を施した。補助レーザー加工では、レーザー光として主レーザー加工と同じYAG第4高調波レーザーを採用すると共に、走査速度のみを20mm/sに設定変更することでドット間隔を約8μmに制御し、互いに隣り合うレーザー光の照射部位を40%程度の重なり合いとした。これにより、補助レーザー加工は主レーザー加工に比べ照射部位の重なりを小さくすることで、加工部位の深さを全体として小さく調整した。その結果得られた、試料70における主レーザー加工および補助レーザー加工を施した箇所の拡大した縦断面を、実施例1として図14に示す。
【0075】
図13,14に示される結果からも、補助レーザー加工が施された実施例1においては、補助レーザー加工が施されていない比較例1に比して、試料70に急峻な形状の突起の形成が抑えられて、縦断面の様子が全体に亘ってなだらかとされていることが認められる。
【0076】
また、実施例1と同様なレーザー光の条件により、試料70の表面に対して主レーザー加工を施して直線状の刻印を付すと共に、この刻印の外周縁部に対して補助レーザー加工を施した。そして、刻印の幅方向左側(L)の周辺部の高さ寸法や幅方向右側(R)の周辺部の高さ寸法を測定した。その結果を、実施例2として表1に示す。更に、比較例1と同様なレーザー光の照射条件により、試料70の表面に主レーザー加工を施して直線状の刻印を付した後、刻印の幅方向左側(L)の周辺部の高さ寸法や幅方向右側(R)の周辺部の高さ寸法を測定した。その結果を、比較例2として表1に併せ示す。
【0077】
【表1】
【0078】
表1からも、補助レーザー加工を施した実施例2では、補助レーザー加工を施していない比較例2に比して、刻印の周辺部の高さが低くなることが明らかである。
【0079】
これら実施例1および2の結果に基づき、本発明のコンタクトレンズの製造方法に従えば、補助レーザー加工を施すことによって、主レーザー加工に伴う突起の高さが有利に抑えられるものと推考される。
【0080】
次に、本発明に係るマーク付きコンタクトレンズの製造方法に基づいて、目的とする視認性や装用感を備えたレンズを製造する際に必要な、幅方向の寸法が200μm程度の長手矩形状を有するマーク72の形成手順例を示す(図19参照。)。
【0081】
先ず、図15にも示されているように、目的とするマーク72の形成部位の中央に主レーザー加工を施し、マーク72の長手方向(図15中、上下)に直線状に延びる第一の主刻印74を形成する。特に、第一の主刻印74では、主レーザー加工を一方の端部から他方の端部に向かって施し、且つ他方の端部から一方の端部に向かって施すことで、一方の端部と他方の端部の間の形成部位を往復するように主レーザー加工を二回施す。
【0082】
次に、図16にも示されているように、第一の主刻印74の幅方向外方および長手方向外方に5μm乃至は10μmのピッチを隔てて、矩形枠状の第二の主刻印76を主レーザー加工により形成する。この第二の主刻印76では、矩形枠状の形成部位に主レーザー加工を二周(二回)施す。
【0083】
また、図17にも示されているように、第二の主刻印76の幅方向外方および長手方向外方に前述の第一の主刻印74と第二の主刻印76の間と同様なピッチを隔てて、矩形枠状の第三の主刻印78を主レーザー加工により形成する。第三の主刻印78では、矩形枠状の形成部位に主レーザー加工を一周(一回)施す。
【0084】
さらに、図18にも示されているように、第三の主刻印78の幅方向外方および長手方向外方に前述のピッチを隔てて、矩形枠状の第四の主刻印80を主レーザー加工により形成する。第四の主刻印80では、矩形枠状の形成部位に主レーザー加工を一周(一回)施す。また、第四の主刻印80の外周側に第四の主刻印80の形成と同様にして、次第に外形寸法が大きくなる第五乃至は第十二の主刻印82,84,86,88,90,92,94,96を主レーザー加工により形成し、マーク72において略目的の大きさの外形形状を構成する。
【0085】
これら略目的の大きさの外形形状を構成するマーク72を形成した後、再び、第一の主刻印74から第十二の主刻印96までの主レーザー加工を施す作業を、所望の回数繰り返す。その結果、マーク72の深さ寸法を目的の寸法に形成する。
【0086】
更にまた、図19にも示されているように、主レーザー加工の熱エネルギに起因して第十二の主刻印96の外周縁部に盛り上がるように形成された、図示しない突起に対して補助レーザー加工を施す。これにより、第十二の主刻印96の外周側に矩形枠状を呈する第一の補助刻印98を形成し、第十二の主刻印96の外周縁部の突起の高さを小さくする。特に、第一の補助刻印98では、矩形枠状の形成部位となる第十二の主刻印96の外周縁部の突起に補助レーザー加工を二周(二回)施す。
【0087】
また、第十二の主刻印96の縁部の突起に補助レーザー加工を二周施したことによる熱エネルギに起因して、第一の補助刻印98の外周縁部においても盛り上がるように形成された突起に対して、補助レーザー加工を一回施す。これにより、第一の補助刻印98の外周側において、一回の補助レーザー加工からなる矩形枠状の第二の補助刻印100を形成し、第一の補助刻印98の外周縁部の突起の高さを小さくする。
【0088】
本実施例に係るマーク72においては、目的の視認性が十分に得られることに加え、レンズの装用に際して悪影響を及ぼすおそれのある大きさの突起が、マーク72の外周縁部に見受けられないことが認められた。このことからも、第一の補助刻印98に加え第二の補助刻印100を施すことによって、前述の問題となる突起の高さが有効に抑えらて、優れた装用感が得られるものと考えられる。
【0089】
特に本実施例では、第一の主刻印74乃至は第二の補助刻印100を形成した箇所に再び同様な主レーザー加工や補助レーザー加工を施す作業を、所望の回数繰り返すことで、以下の作用効果が得られることが判明した。即ち、一走査あたりのレーザー照射エネルギーを比較的に小さく出来るため、加工部位への熱影響を小さく出来る。また、二回目の走査までの時間を加工部位の熱的な緩和時間よりも長くすれば、加工部位への熱影響をより小さく出来る。更に、一走査あたりの加工深さが浅くなるので、加工深さを走査回数により高度に制御することが出来る。更にまた、パルスあたりのエネルギーが小さいことに基づき、加工面の凹凸形状をより微細なものと出来ることから、例えば光の散乱具合を制御して、視認性の良好なマークを形成することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の一実施形態としてのコンタクトレンズの一部を切り欠いて示す斜視説明図。
【図2】同コンタクトレンズの製造に用いられる雌型成形用金型を示す縦断面説明図。
【図3】同コンタクトレンズの一製造工程を示す縦断面説明図。
【図4】同コンタクトレンズの別の製造工程を示す縦断面説明図。
【図5】同雌型成形用金型の一部を構成する第二の金型の一製造工程の要部を拡大して示す縦断面説明図。
【図6】同第二の金型の別の一製造工程の要部を拡大して示す縦断面説明図。
【図7】同第二の金型のまた別の一製造工程の要部を拡大して示す縦断面説明図。
【図8】図5における要部を切り出した拡大説明図である。
【図9】図7における要部を切り出した拡大説明図である。
【図10】本発明の別の一実施形態としてのコンタクトレンズの製造に用いられる雌型成形用金型の一製造工程の要部を拡大して示す縦断面説明図。
【図11】同雌型成形用金型の別の一製造工程の要部を拡大して示す縦断面説明図。
【図12】同雌型成形用金型のまた別の一製造工程の要部を拡大して示す縦断面説明図。
【図13】本発明の実施例に係る比較例1としてのコンタクトレンズの縦断面形状測定結果を示す測定図。
【図14】同実施例に係る実施例1としてのコンタクトレンズの縦断面形状測定結果を示す測定図。
【図15】同実施例においてマーク付きコンタクトレンズの製造方法に従いマークを形成する一工程をモデル的に示す平面説明図。
【図16】同マークを形成する別の一工程をモデル的に示す平面説明図。
【図17】同マークを形成するまた別の一工程をモデル的に示す平面説明図。
【図18】同マークを形成する更にまた別の一工程をモデル的に示す平面説明図。
【図19】同マークを形成するまた別の一工程をモデル適に示す平面説明図。
【符号の説明】
【0091】
10:コンタクトレンズ、12:前面光学部、18:前面周辺部、22:マーク、24:雌型成形用金型、26:レンズ成形用雌型、46:刻印、58:突起
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズに識別用のマークを付してなるマーク付きコンタクトレンズの製造方法やマーク付きコンタクトレンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンタクトレンズが左右の何れの目に装用されるか識別したり、レンズの製品番号やロット番号、表裏、方向性等の情報を表示する目的で、レンズ面に標識(マーク)を付すことがある。
【0003】
レンズ面にマーキングを施す手法としては、一般に、フライスや針等の機械的な工具を用いた切削加工をレンズ面に直接に施して刻印したり、或いはコンタクトレンズの成形に用いられる成形型の成形面に刻印したものをレンズ面に転写したりして、マークを付することが知られている。例えば、特許文献1(特開2002−082320号公報)や特許文献2(特開2000−199875号公報)、特許文献3(特開平07−186290号公報)、特許文献4(特開平08−194193号公報)等に示されているものが、それである。
【0004】
しかしながら、機械工具を用いた切削加工では、レンズ面や成形面等の加工面における応力集中に起因して、コンタクトレンズ乃至は成形型の強度が十分に確保され難いことに加え、工具の耐久性低下により、多数のレンズに同一のマークを付することが困難な場合があった。
【0005】
そこで、近年では、同特許文献1〜4にも示されているように、加工面にマークを付する有効な手段の一つとして、高密度の光エネルギの集中によるレーザー光を利用したレーザー加工の適用が検討されている。このような加工によれば、レーザー光を加工面に照射して表面を溶解乃至は蒸発させることにより、レーザー光の出力部材が加工面に触れることなく刻印することが出来て、強度が有利に確保され得る。しかも、レーザー光が所定のピッチ幅で照射されることに基づき刻印の底面が凹凸状に荒らされることを利用して、光の散乱によりマークの視認性が向上されることから、微細なマークの形成にも有利に適用される。
【0006】
ところが、上述のレーザー加工においては、光エネルギによる熱の影響により、刻印の外周縁部が盛り上がって、加工面から膨らみが突出せしめられることがあった。特に、微小なマークの形成において、目的とする視認性を確保しようと刻印の深さをある程度大きくする場合には、レーザー光の走査速度を落としたりピッチ幅を適宜に調節したりすることが多くなり、その結果、刻印に熱が集中して、外周縁部の膨らみが一層大きくなるおそれがあった。コンタクトレンズでは、かかる膨らみによってレンズ表面に現れる突起(突条を含む)が装用に際しての異物感や汚れの原因となるおそれがある。即ち、突起が大きくなると眼瞼や角膜等への接触圧が大きくなって異物感が大きくなると共に、突起の両側の窪み状の隅部等に汚れが溜まり易くなるおそれがある。
【0007】
【特許文献1】特開2002−082320号公報
【特許文献2】特開2000−199875号公報
【特許文献3】特開平07−186290号公報
【特許文献4】特開平08−194193号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、刻印の深さ寸法を確保しつつ、レーザー加工に伴う刻印の外周縁部の盛り上がりを抑えることが可能であり、それによって、刻印で付与されたマークの視認性と装用感とが何れも両立して有利に発揮され得る、マーク付きコンタクトレンズの新規な製造方法および新規な構造のマーク付きコンタクトレンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0010】
すなわち、本発明の特徴とするところは、金型によって成形した樹脂型を用いて凹状のレンズ内面と凸状のレンズ外面の少なくとも一方のレンズ面を成形すると共に、レンズ内面とレンズ外面の少なくとも一方にマークを付したマーク付きコンタクトレンズの製造方法であって、金型と樹脂型とコンタクトレンズの何れかにおいて、目的とするマークに対応する位置にレーザー光を照射して刻印する主レーザー加工を施すと共に、刻印の外周縁部分に対して主レーザー加工よりも小さな刻印深さで補助レーザー加工を施すことにより、主レーザー加工に伴う刻印の外周縁部分における突起の高さを抑えることにある。
【0011】
このような本発明に係る製造方法によれば、刻印のための主レーザー加工に伴って発生する刻印周りの突起の高さを、補助レーザー加工で抑えることが出来る。それ故、主レーザー加工による刻印の深さを確保して良好なマークの視認性を実現することが出来ると共に、マーク周囲における突起の高さを抑えて、突起に起因するコンタクトレンズの装用時における異物感や汚れ等の問題を回避することが可能となるのである。
【0012】
また、本発明方法において、樹脂型成形用の金型とコンタクトレンズの何れかに対して主レーザー加工と補助レーザー加工を施すことにより、コンタクトレンズの内面又は外面に対して凹状のマークを形成することが出来る。なお、樹脂型成形用金型とコンタクトレンズの何れか一方に対して、主レーザー加工と補助レーザー加工の何れか一方を施すと共に、それら樹脂型成形用金型とコンタクトレンズの他方に対して、主レーザー加工と補助レーザー加工の他方を施すことも可能である。
【0013】
一方、本発明方法において、樹脂型に対して主レーザー加工と補助レーザー加工を施すことにより、コンタクトレンズの内面又は外面に対して凸状のマークを形成することが出来る。レンズ面におけるマークを凹状に形成した場合だけでなく、凸状に形成した場合にも、その周囲において、主レーザ加工に伴う突起が転写された凹状の窪みが形成されていると、そこに汚れが溜まり易いという問題や、凹状の窪みの分だけ凹凸領域が大きくなって装用感にも悪影響が及ぼされるおそれがあるが、本発明方法に従う補助レーザー加工を施すことにより、そのような問題を軽減乃至は解消することが出来るのである。
【0014】
なお、本発明において、主レーザー加工や補助レーザー加工に使用するレーザー光としては、レンズや金型、樹脂型等の加工に適した各種のレーザー光が採用可能であり、例えばYAGレーザーや炭酸ガスレーザー、エキシマーレーザー、半導体レーザー等が挙げられる他、望ましくは、YAG第4高調波レーザーが採用される。
【0015】
このYAGを媒質とした第4高調波(波長266nm)によるレーザー加工においては、当該レーザーが加工性の高い深紫外線レーザーとされていることから、目的の形状や大きさの刻印が有利に実現され得るのであり、しかも他のレーザーに比して熱加工よりもアブレーション加工の割合が高いことに基づき、レンズや金型、樹脂型等の被加工物に対する熱影響が小さくされて、熱エネルギに起因する刻印周りの突起高さの増大が一層有利に抑えられる。なお、第4高調波のレーザー加工では、YAG以外にYV04やYLFを媒質としたレーザーも採用可能である。
【0016】
また、本発明に係るマーク付きコンタクトレンズの製造方法においては、主レーザー加工を施した後に、補助レーザー加工を施しても良い。この方法に従えば、主レーザー加工に伴う刻印を形成したあとに、かかる主レーザー加工に起因して発生した、問題となる突起を目標物としてそこに補助レーザー加工を施すことができる。
【0017】
或いは、本発明に係るマーク付きコンタクトレンズの製造方法においては、主レーザー加工を施す前に、補助レーザー加工を施しても良い。この方法に従えば、主レーザー加工に伴う刻印の際に、刻印周りにおける突起そのものの発生を抑えることが出来る。また、主レーザー加工を行う際に、予め施した補助レーザー加工の跡を目安とすることも可能である。なお、補助レーザー加工を施した後に主レーザー加工を施して刻印を行い、更に、必要に応じて補助レーザー加工を施すことも可能である。
【0018】
また、本発明に係るマーク付きコンタクトレンズの製造方法では、主レーザー加工による刻印の幅寸法に比して、補助レーザー加工による幅寸法が小さくなるようにすることが望ましい。これにより、主レーザー加工に比して補助レーザー加工の影響が大きくなり過ぎて、補助レーザー加工による膨らみや突起の発生が問題となることを防止することができる。
【0019】
また、本発明に係るマーク付きコンタクトレンズの製造方法では、主レーザー加工に使用するレーザー光と、補助レーザー加工に使用するレーザー光とを、出力とQsw周波数と走査速度と照射角度と走査回数と波長の少なくとも一つにおいて互いに異ならせる方法が、好適に採用される。これにより、主レーザー加工によって十分な視認性を与える深さや幅の刻印を施しつつ、補助レーザー加工においては、主レーザー加工によって問題となる突起の発生を抑えるのに有効な程度以上に悪影響が及ぼされることを回避するなどのコントロールが可能となる。また、主レーザー光および補助レーザー光として、同じ種類のレーザー光を採用し、出力とQsw周波数と走査速度と照射角度と走査回数と波長の少なくとも一つを異ならせて調節することにより、主レーザー加工と補助レーザー加工を、同一のレーザー加工装置において、被加工物も取り外すことなく、続けて加工を行うことが可能となる。
【0020】
また、本発明に係るマーク付きコンタクトレンズの製造方法においては、少なくとも補助レーザー加工に使用するレーザー光として、加工スポット径が20μm以下のものを採用することが望ましい。このような方法によれば、問題となる突起が小さくても、突起に対してレーザー光を効率的に且つ精度良く照射することが出来る。しかも、レンズにおける突起以外の部分にレーザー光を照射することが抑えられることから、レーザー光によってレンズの目的としない箇所に凹所が形成されたり、レーザー光の熱エネルギの集中に起因して加工部位(照射部分)の外周縁部分に新たな突起が形成されたりすることが抑えられる。
【0021】
さらに、マーク付きコンタクトレンズに関する本発明の特徴とするところは、レンズ内面とレンズ外面の少なくとも一方のレンズ面において、直接にレーザー光を照射して刻印されることにより、或いは該レンズ面の成形に際して用いられる成形型の成形面にレーザー光を照射して刻印したものを転写されることにより、マークが付されたマーク付きコンタクトレンズであって、マークの外周縁部には、レーザー光の照射による前記刻印よりも小さな深さをもってマークの縁に沿って延びる線状の加工面が形成されているマーク付きコンタクトレンズにある。
【0022】
このような本発明に従う構造とされたマーク付きコンタクトレンズにおいては、刻印よりも小さな深さの加工面がマークの外周縁部に形成されていることによって、マークの視認性が確保されつつ、レーザー光の照射に伴うマークの外周縁部の突起の高さが抑えられて、レンズの装用時における異物感や汚れ等の問題が有利に解消され得る。
【0023】
なお、本構造に係る成形型には、樹脂型や金型、その他表面にレーザー加工を施すことが可能であり且つレンズ表面の形成に関与する型が含まれる。また、レーザー加工が施される面は、レンズ面(レンズの表面)であっても良いし、レンズを成形するのに用いられる成形型としてのレンズを成形する樹脂型や樹脂型を成形するための金型の表面であっても良い。このことは、上述の製造方法に関する本発明の説明より明らかであるから、重複した記載を省略する。
【0024】
また、上記のコンタクトレンズに関する本発明においては、例えば、レンズ面においてマークが凹状に形成されていると共に、凹状の外周縁部においてレーザー光の照射に起因する周囲突起が形成されており、この周囲突起の先端部分に対して凹状の断面で延びる加工面が形成されている構成が、好適に採用され得る。このような構成を採用することにより、装用時における眼瞼や角膜へのマークの刺激等が一層有利に軽減され得るコンタクトレンズが提供可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について説明する。先ず、図1には、本発明の一実施形態としてのコンタクトレンズ10が示されている。コンタクトレンズ10は、全体として薄肉の略球殻形状を有しており、眼球の角膜の表面に重ね合わせられて装用されるようになっている。なお、装用は、人体に装着して使用されることをいう。
【0026】
より詳細には、本実施形態に係るコンタクトレンズ10は、ソフトコンタクトレンズやハードコンタクトレンズ、ディスポーザブルタイプのコンタクトレンズ等の各種のコンタクトレンズに対して適用可能である。また、コンタクトレンズ10には、光透過性等の光学的特性を備えた各種の重合性モノマーからなる樹脂材料が採用され、具体的に例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)やポリメチルメタクリレート(PMMA)、酢酸酪酸セルロース(CAB)、シリコーン共重合体、フルオロシリコーンアクリレート、フルオロカーボン重合体、シリコーンゴム等が挙げられる。
【0027】
コンタクトレンズ10は、レンズ中心軸が光軸とされており、該中心軸回りの回転対称形状とされている。レンズ外面が、凸状のレンズ前面で構成されていると共に、レンズ内面が、凹状のレンズ後面で構成されている。コンタクトレンズ10の中央部分には、レンズ前後面にそれぞれ円形状の前面光学部12と後面光学部14が形成されている。
【0028】
後面光学部14は、装着される角膜の表面に対して装用状態下で略相似形となるように、レンズ中心軸上でレンズ後方に曲率中心が設定されて、適当な曲率半径をもった凹形の縦断面形状を有するベースカーブ面を構成している。ベースカーブ面の縦断面形状には、角膜の形状やその他の装用条件或いは要求される光学特性等を考慮して、例えば曲率半径が一定であったり、曲率半径が周方向で変化したりする等の各種の略球状の湾曲凹面形状が採用される。
【0029】
一方、前面光学部12は、上述の如く設定されたベースカーブ面と協働して目的とするレンズ度数等の光学特性を与える湾曲凸面形状を有している。
【0030】
これら前面光学部12および後面光学部14によって、視力矯正のための適当なレンズ度数等の光学特性が与えられた光学部(optical zone)が形成されている。なお、光学部は、装用者の眼に対する光学的効果が期待される領域であって、その外周縁部、換言すると後述する周辺部(peripheral zone)との境界は、一般にレンズ前面およびレンズ後面においてそれぞれ縦断面上での曲率の変化点としてとらえることが出来るが、例えば、光学部のレンズ面が半径方向で漸変するような縦断面形状で設計される場合や、境界が径方向に所定幅をもって形成されてレンズ前後面間で光学部と周辺部を滑らかに繋ぐ接続領域等によって形成される場合等において、レンズ前後面における光学部と周辺部の境界は、形状的に線(line)として必ずしも明確である必要はない。
【0031】
コンタクトレンズ10の光学部の周りを囲む外周部分には、周辺部と端部(edge zone)16が形成されている。端部16は、コンタクトレンズ10の最外周縁部において円環形状を有していると共に、レンズ縦断面において、略半円形状の外周端面から内方に延び出した面取り状のレンズ前後面を備えている。更に、端部16のレンズ前後面が、前後面周辺部18,20に接続されている。
【0032】
前面周辺部18と後面周辺部20は、それぞれ、レンズ中心軸を中心として所定の径方向幅寸法をもって周方向に連続して延びる円環形状とされており、レンズ10の前後面光学部12,14と端部16の間に跨って設けられて、前後面周辺部18,20の内周縁部分が、前後面光学部12,14に接続されている。即ち、前面周辺部18と後面周辺部20が協働して、レンズ10の光学部の外周側に位置せしめられる周辺部を構成している。
【0033】
前面周辺部18の所定の箇所には、マーク22が付されている。マーク22は、レンズ10の前後面や付された部分の位置、レンズ10が左眼用乃至は右眼用の何れであるか等を識別するために付されるものであって、その形状や大きさ、意匠等は特に限定されるものでない。例えば、本実施形態に係るマーク22は、レンズ10の前面に開口する凹溝によって適当な文字又はマークが形成されている。
【0034】
次に、かくの如きマーク22を付したコンタクトレンズ10の製造方法の一具体例と、それによって製造されたコンタクトレンズ10におけるマーク22の詳細形状について説明を加える。
【0035】
先ず、金型としての雌型成形用金型24と雄型成形用金型(図示せず)を準備する。これら雌雄型の成形用金型は、目的とするコンタクトレンズ10をモールド成形(重合)により得るための樹脂型としてのレンズ成形用雌型26とレンズ成形用雄型28(図3,4参照。)を、それぞれ独立して公知の樹脂成形法により製造するものである。特に、成形用金型には、後述の如きレーザー加工に適当なブリハードン鋼等が好適に採用されるが、その他任意の金属材が採用可能である。また、レンズ成形用の雌型26および雄型28に用いられる熱可塑性樹脂材料としては、例えばポリプロピレンやポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、塩化ビニル、ナイロン、ポリアセタール、フッ素樹脂等が、何れも採用可能である。
【0036】
雌型成形用金型24は、図2にも示されているように、中央部分に凹状球形の樹脂型成形面30を備えた第一の金型32と、中央部分に凸状球形の樹脂型成形面34を備えた第二の金型36を含んで構成されている。特に、第二の金型36の凸状の樹脂型成形面34は、コンタクトレンズ10の略球状凸面形状とされたレンズ前面に対応した形状を呈している。
【0037】
そして、図示しない型締装置によって第一及び第二の金型32,36を軸方向で型閉じして、両金型32,36の型合わせ面間に成形キャビティ38を形成する。この成形キャビティ38に対して、例えば図示しない射出装置等によって熱可塑性樹脂材料をスプルやランナ40を通じて射出充填して冷却固化した後に、樹脂材料からなる成形品を両金型32,36の型開きにより取り出す。これにより、レンズ成形用雌型26(図3参照)を得る。レンズ成形用雌型26の凹状球形のレンズ成形面42が、第二の金型36の凸状の樹脂型成形面34により形成されることで、コンタクトレンズ10のレンズ前面に対応した形状とされている。
【0038】
一方、雄型成形用金型は、雌型成形用金型24と同様に、第一及び第二の金型から構成されており、それら両金型の型合わせ面間に、レンズ成形用雄型28(図4参照)に対応した成形キャビティを形成するものであって、雌型成形用金型24と同様な操作により、かかる雄型成形用金型でレンズ成形用雄型28を成形するものである。このように雄型成形用金型の構造は雌型成形用金型24と実質的に同じであることから、ここでは雄型成形用金型の図示を省略する。而して、熱可塑性樹脂材料と雄型成形用金型を用いて、レンズ成形用雌型26と同様な樹脂成形法により、レンズ成形用雄型28を得る。レンズ成形用雄型28の凸状球形のレンズ成形面44が、第二の金型36の凸状の樹脂型成形面34で形成されることで、コンタクトレンズ10のレンズ後面に対応した形状とされている。
【0039】
特に本実施形態では、雌型成形用金型24の第二の金型36の樹脂型成形面34において、コンタクトレンズ10のマーク22に対応する位置に主レーザー加工を施すことによって刻印46が形成されている。即ち、第二の金型36の樹脂型成形面34には、コンタクトレンズ10の前面周辺部18におけるマーク形成位置に対応する部分に対して、レーザー光を照射して、かかる樹脂型成形面34の表層部分を溶融等することにより、目的とするマーク22に対応した形状の刻印46を設ける。かかるレーザー光には、微細な加工を良好な制御性と安定性をもって行い、且つ第二の金型36の樹脂型成形面34に対する熱影響を少なくすることを目的として、YAGレーザーの第4高調波が好適に使用される。
【0040】
これにより、雌型成形用金型24を用いてレンズ成形用雌型26を樹脂成形する際に、雌型成形用金型24の樹脂型成形面34に形成された刻印46がレンズ成形用雌型26のレンズ成形面42に転写される。その結果、レンズ成形用雌型26のレンズ成形面42には、コンタクトレンズ10において目的とするマーク22の形成位置に対応する部分に、マーク22に対応した凸形状のマーク用凸部48が形成されることとなる。
【0041】
次に、このようにしてマーク用凸部48が形成されたレンズ成形用雌型26と、雄型成形用金型を用いて樹脂成形することによって得られたレンズ成形用雄型28を用いて、目的とするコンタクトレンズ10をモールド成形する。
【0042】
それには、先ず、図3に示されているように、レンズ成形用雌型26を鉛直上方に向けて開口するように支持せしめて、その凹状のレンズ成形面42によって形成された受け皿状の領域に、注入管50を通じて、コンタクトレンズ10の材料となる重合性モノマー52を入れる。この重合性モノマー52には、ソフトコンタクトレンズやハードコンタクトレンズ等の原料となる各種の液状のモノマー組成物が適宜に採用される。例えば、ラジカル重合可能な化合物の一種又は二種以上が配合されてなるものの他、マクロマーやプレポリマから構成されるもの等が用いられても良い。また、そのような化合物には、必要に応じて、適当な架橋剤や増感剤、熱重合開始剤、光重合開始剤等が配合される。
【0043】
次いで、図4に示されているように、レンズ成形用雌型26の鉛直上方からレンズ成形用雄型28を軸方向(図4中、上下)に重ね合わせて嵌め入れることにより型合わせして、重合性モノマー52が充填されて密閉された成形キャビティ54を形成する。その後、両型26,28の型合わせ状態を保持して、重合性モノマー52の重合処理を行う。なお、重合処理は、採用する重合性モノマー52に応じて、光重合や熱重合などが適宜に採用される。
【0044】
重合性モノマー52の重合の後、レンズ成形用雌型26とレンズ成形用雄型28を型開きして、重合処理された成形品からなるコンタクトレンズ10を脱型することにより、目的とするコンタクトレンズ10を得る。なお、コンタクトレンズ10の脱型は、例えば、型開きによってレンズ成形用雄型28のレンズ成形面44に付着せしめたコンタクトレンズ10を、該レンズ成形用雄型28の筒状部を軸直角方向に押し潰してレンズ成形面44を湾曲変形させることで、該レンズ成形面44から剥離させることによって、或いは適当な薬品を使用して剥離させることによって、行うことができる。
【0045】
このようにして重合成形されて脱型されたコンタクトレンズ10においては、雌型成形用金型24の樹脂型成形面34に形成された刻印46が、レンズ成形用雌型26のレンズ成形面42に転写され、更にそれがコンタクトレンズ10の前面に転写されることによって、コンタクトレンズ10の周辺部の目的とする位置に、刻印46に対応した形状を有する凹状のマーク22が形成されるのである。
【0046】
ところで、上述の主レーザー加工を雌型成形用金型24に施して刻印46を形成するに際しては、コンタクトレンズ10に転写されたマーク22の視認性を確保し、特に多少の磨耗等があっても良好な視認性を確保するためにも、刻印46の深さ寸法:d1をある程度大きく設定することが要求される。なお、刻印46の深さ寸法:d1は、コンタクトレンズ10の光学的特性や厚さ寸法、材質、刻印46の幅寸法等を考慮して、視認性を確保し得る程度に適宜に設定されるのものであり、特に限定されるものでないが、一般に、d1=1〜50μmとされることが望ましい。蓋し、1μmよりも小さいと視認性が確保され難くなる一方、50μmよりも大きいと、レンズ10の強度低下が問題となるおそれがあるからである。
【0047】
さらに、雌型成形用金型24には、刻印46の形成部分において、上記主レーザー加工に加えて補助レーザー加工が施されている。この補助レーザー加工は、雌型成形用金型24に主レーザー加工を施した後、或いは主レーザー加工を施す前に、主レーザー加工に伴う刻印46の外周縁部分に対してレーザー光を照射することによって行われる。
【0048】
補助レーザー加工は、好適には、加工スポット径が20μm以下のレーザー光を、主レーザー加工によって形成される刻印の外周縁部に対して、凹状の刻印46の開口周縁部の全周に亘って所定間隔(ピッチ)で照射することによって行われる。なお、補助レーザー加工に使用するレーザー光は、主レーザー加工と同様に、YAG第4高調波レーザーが好適であるが、その出力とQsw周波数と走査速度と照射角度と走査回数と波長の少なくとも一つにおいて主レーザー加工のレーザー光と異なるチューニングを施す。
【0049】
これにより、主レーザー加工よりも小さな深さと幅で補助レーザー加工による凹状部を形成する。而して、図6に示されているように、主レーザー加工によって刻印46の外周縁部分に発現される突起58に対応する位置に、補助レーザー加工による凹状部が形成されることとなる。その結果、主レーザー加工によって刻印46の開口周縁部分において全周に亘って形成される突起58において、補助レーザー加工により、その高さ寸法:h2を抑えることが出来ると共に、その全体ボリュームも抑えることが出来る。
【0050】
より具体的には、先に主レーザー加工を施した後に補助レーザー加工を施す場合には、先ず、主レーザー加工によって刻印46を形成することにより、刻印46の形成部分の溶融等に起因して刻印46の開口周縁部には、図5に示されているように、刻印46の開口方向に向かって基準面(成形面34)から突出する周囲突起としての突起58が、略全周に亘って発生する。そこで、補助レーザー加工を、この突起58の幅方向略中央の位置に向けて施すことにより、突起58の先端部分を溶融乃至は蒸発させる。この補助レーザー加工により、図6に示されているように、突起58の先端部分に対して深さ:d2の凹部60が形成されて、突起58の突出高さ:h2が、初期高さ:h1より小さくされる。更に、必要に応じて、突起58に対する補助レーザー加工を連続的乃至は断続的に続けることにより、図7に示されているように、突起58に対する凹部60の深さや幅を適当な大きさまで増大させることが出来る。その結果、深さ:d2の凹部60よりも大きな深さ:d3の凹部62が形成されて、突起58の高さをより小さく抑えることが可能となる。
【0051】
なお、補助レーザー加工は、主レーザー加工と同じ材質の対象物である雌型成形用金型24に加工を施すものであるから、主レーザーおよび補助レーザーとして同じレーザー光を採用することが望ましい。尤も、上述のとおり、補助レーザー加工は、主レーザー加工で刻印46を形成する際に刻印46の周囲に発生した突起58を小さくすることを目的とするものであるから、レーザー光における出力とQsw周波数と走査速度と照射角度と走査回数と波長の少なくとも一つを調節変更して、主レーザー加工による刻印46の深さよりも小さな深さの凹部62が形成されるようにする。
【0052】
上述の如き補助レーザー加工の目的から、一般に、主レーザー加工によって形成される刻印46の深さ:d1に比して、突起58の高さ:h1や補助レーザー加工によって形成される凹部60,62の深さ:d2,d3は小さくされる。また、主レーザー加工によって形成される刻印46の幅寸法:w1に比して、補助レーザー加工によって形成される凹部60,62の幅寸法:w2,w3は小さくされる。上述の説明からも明らかなように、本実施形態では、マーク22の外周縁部において、レーザー光の照射による刻印46よりも小さな深さ:d3でのレーザー加工により形成される加工面が、凹部60や凹部62を含んで構成されている。
【0053】
なお、補助レーザー加工は、突起58の先端部分(頂部)に一列状に形成しても良いし、或いは突起58の先端部分に対して千鳥状や複数列状等にパルス状レーザー光を照射することも可能である。また、補助レーザー加工は、刻印46の開口周縁部の全周に亘って形成する必要はなく、例えば、周上で突起58の突出高さが大きい部分にだけ補助レーザー加工を施すようにしても良い。
【0054】
また、図5〜7では、雌型成形用金型24(第二の金型36)の概略形状が示されており、刻印46の底面が略平坦に表されているが、一般に、レーザー光で目的とする幅寸法:w1および深さ寸法:d1の刻印46を形成するために、パルス状のレーザー光を所定の間隔で照射する。これにより、図8,9にも示されているように、刻印46の底面が凹凸形状とされる。この刻印46の凹凸形状が、レンズ成形用雌型26を介してコンタクトレンズ10に転写されることとなり、マーク22の凹底面が粗面状態とされることによって、マーク22の視認性の向上にも資することとなるのである。
【0055】
更にまた、補助レーザー加工によって突起58の先端部分に形成される加工面62も、主レーザー加工と同様に、一般に、パルス状のレーザー光を用いて形成されることから、凹凸形状とされるが、深さおよび幅寸法に関して補助レーザー加工による加工部位が主レーザー加工による加工部位に比して小さいことから、図9中において、加工面62における凹凸(粗面状態)を省略してある。
【0056】
上述の如き構造とされたコンタクトレンズ10においては、雌型成形用金型24での主レーザー加工による刻印46の形成に伴う突起58の高さが、補助レーザー加工による加工面(凹部62)の形成で抑えられることによって、刻印46の転写に基づきコンタクトレンズ10のマーク刻印56の外周縁部に突出せしめられる突起58の高さが抑えられる。これにより、該突起高さに起因するコンタクトレンズ10の装用時における異物感や汚れ等の問題が有利に解消され得る。
【0057】
すなわち、主レーザー加工に伴う突起58の高さが補助レーザー加工によって所望の寸法レベルに下げられることで、かかる突起58の高さに特別に配慮することなく、主レーザー加工による刻印46を所望の深さ寸法:d1に加工することが可能となる。それ故、金型24の刻印46により転写されるマーク刻印56の深さ寸法を所望の値に設定することができて、マーク22の視認性が好適に確保され得るのである。
【0058】
しかも、補助レーザー加工によって、刻印46の周囲に形成される突起58の先端形状が荒らされ、延いてはその転写で形成されるコンタクトレンズ10のマーク22の外周縁部の先端形状も荒らされることから、マーク22の輪郭(outline)の視認性をより一層向上させることが出来る。
【0059】
また、加工面となる凹部62を補助レーザー加工で形成する際に、加工スポット径が例えば20μm以下のレーザー光を採用していることから、雌型成形用金型24に与える熱影響を有利に抑えることが出来る。それ故、補助レーザー加工による加工面への影響が大きな問題となるようなこともない。
【0060】
更にまた、本実施形態では、主レーザー加工を雌型成形用金型24に施して刻印46を形成すると共に、金型24の刻印46の外周縁部分に形成された突起58に対して補助レーザー加工を施すことによって、刻印46をレンズ面に転写する前に、問題となる突起58の高さが抑えられる。それ故、マーク22が付されたコンタクトレンズ10を多数製造する場合においても、コンタクトレンズ10の一枚一枚に主レーザー加工や補助レーザー加工を施す手間が省かれて、コンタクトレンズ10の生産性が向上され得る。
【0061】
尤も、製造工程や製造設備等の制約や条件等によっては、主レーザー加工をコンタクトレンズ10に直接に施してマークを表す刻印を付した後に、レーザー光の熱エネルギの影響によりマークの外周縁部分に形成される突起に対して補助レーザー加工を施しても良い。或いは、主レーザー加工を雌型成形用金型24に施して刻印46を形成すると共に、外周縁部に突起58を有する刻印46をレンズ面に転写し、コンタクトレンズ10に形成された突起に対して補助レーザー加工を施すことも可能である。また、前記実施形態の如く主レーザー加工及び補助レーザー加工を雌型成形用金型24に施して、外周縁部分の突起高さが抑えられた刻印46を付すと共に、該刻印46をコンタクトレンズ10に転写してマーク22(マーク刻印56)を付した後に、マーク22の外周縁部分で突出高さが抑えられた突起に対して更に補助レーザー加工を施して、突起の高さを一層小さくしても良い。
【0062】
或いは、図3に示されているレンズ成形用雌型26のレンズ成形面42に対して、主レーザー加工を施して刻印を形成すると共に、この刻印の周囲に形成された突起に対して補助レーザー加工を施して突起の高さを抑えるようにしても良い。このようなレーザー加工によれば、前記実施形態においてレンズ成形用雌型26のレンズ成形面42に対して、雌型成形用金型24の刻印を転写して形成されていた凸形状のマーク用凸部48に代えて、反対に凹形状の刻印が形成されることとなる。そして、このレンズ成形用雌型26を用いて、図4に示されているように、目的とするコンタクトレンズを重合成形することにより、コンタクトレンズの前面において、刻印に対応する凸形状のマークを形成することが出来る。
【0063】
このように、コンタクトレンズの表面に凸形状のマークを形成する場合においても、本発明は有利に適用され得るのであり、それによって、凸形状のマークの外周縁部において周方向に縁取り状に延びる輪郭状突起を、小さく抑えることが可能となり、それによって、装用感の向上や汚れの付着軽減などといった、前記実施形態と同様な効果を得ることが出来るのである。なお、このようなコンタクトレンズにおける凸形状のマークの形成は、図3,4を参酌して、前記実施形態の説明から十分に理解できるものであり、当業者であれば容易に実施出来ることから、ここでは図示を割愛する。
【0064】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であり、かかる実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様で実施可能であり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【0065】
例えば、マーク22を表す刻印46や刻印46の外周縁部の突起58、該突起58に付される凹部60乃至は62等における形状や大きさ、数、位置、設けられる雌雄の成形用金型又はレンズ成形用樹脂型若しくはコンタクトレンズ10における前面と後面の別等は、何等、限定されるものでなく、例示の如きものに限定されない。
【0066】
具体的に、前記実施形態に係るコンタクトレンズ10の製造方法においては、主レーザー加工で雌型成形用金型24の樹脂型成形面34に刻印46を付した後に、刻印46の外周縁部に生ぜしめられた突起58に対して補助レーザー加工が施されるようになっていたが、図10〜12を参照しつつ以下に説明するように、反対に、先に補助レーザー加工を施すことも可能である。なお、図10〜12では、前記実施形態と実質的に同一の構造とされた部材および部位について、図中に前記実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。
【0067】
すなわち、図10にも示されているように、先ず、雌型成形用金型24の樹脂型成形面34における刻印46の外周縁部に対応する位置にレーザー光を照射して補助レーザー加工を施すことにより、凹部64を形成する。本具体例では、前記実施形態と同様な直線形状の刻印46を付すため、刻印46の幅方向両壁部の各上端部分や長手方向両端部の各上端部分に対応する位置に凹部64を形成する。なお、レーザー光により金型24を溶融等せしめて所定の深さ寸法:d4の凹部64を形成することに伴い、凹部64の外周縁部と内周縁部に、それぞれ突出高さ:h3の小突起66が形成されるが、補助レーザー加工によって及ぼされるエネルギーが主レーザー加工によるエネルギーに比して十分に小さいことから、これらの小突起66が大きな問題となることはない。
【0068】
次に、樹脂型成形面34における凹部64で囲まれた内側にレーザー光を照射して主レーザー加工を施すことにより、刻印46を付す。特に、図11に示されているように、刻印46の深さ寸法:d5や幅寸法を適当に調節することにより、刻印46の形成に伴って凹部64の内周縁部の小突起66を、溶融乃至は蒸発により消失させることも可能である。
【0069】
また、図12に示されているように、主レーザー加工によるレーザー光を刻印46の所定の箇所に続けて照射して、より大きな深さ寸法:d1の刻印46を付した場合においても、主レーザー加工による熱の影響で刻印46の外周縁部に形成される突起68の高さ寸法:h4が、そこに予め形成された、刻印46よりも小さな深さ寸法:d4の凹部64からなる加工面によって、突起68の高さが抑えられる。
【0070】
さらに、刻印やマークは、コンタクトレンズの前面やその成形面に代えて、或いは加えて、コンタクトレンズの後面やその成形面に形成することも可能である。
【実施例】
【0071】
本発明に従うコンタクトレンズの製造方法による技術的効果について確認するために行った試験を、以下に実施例として記載する。
【0072】
前記実施形態に係るコンタクトレンズ10の製造に用いられる雌型成形用金型24(第二の金型36)と同等な材質の試料70を用意する。試料70の材質は、ニッケルメッキを施したSTAVAX(商標)である。
【0073】
この試料70の表面にレーザー光を照射して主レーザー加工を施すことにより、略直線の溝状の刻印を付す。主レーザー加工では、レーザー光としてYAG第4高調波レーザーを採用し、Qsw周波数を2.5KHz、出力を150mW、移動速度(走査速度)を10mm/s、スポット径を約20μmとした。レーザー光のドット間隔は走査速度をQsw周波数で割ることにより求められるため、Qsw周波数が一定の下、かかる走査速度を設定変更することでドット間隔が制御される。これにより、ドット間隔とレーザー光のスポット径との関係から、例えばドット間隔を狭くしてレーザー光の照射部位を重ねるようにしてレーザー加工を施すことにより、加工部位の深さを大きくしたり、レーザー光の照射部位のドット間隔を広くとって加工部位の深さを全体として小さくしたりする等の、深さの調整が好適に為される。本実施例では、レーザー光のスポット径が約20μmであり、Qsw周波数が2.5kHz、走査速度が10mm/sであるから、ドット間隔は約4μmとなり、互いに隣り合うレーザー光の照射部位が75%程度重なり合ったレーザー加工が施される。その結果得られた、試料70における刻印を付した箇所の拡大した縦断面を、比較例1として図13に示す。
【0074】
また、試料70の表面にレーザー光を照射して主レーザー加工を施すことにより、略直線の溝状の刻印を付した後、刻印を付した試料70における刻印の周囲(外周縁部)に対して、レーザー光を照射して補助レーザー加工を施した。補助レーザー加工では、レーザー光として主レーザー加工と同じYAG第4高調波レーザーを採用すると共に、走査速度のみを20mm/sに設定変更することでドット間隔を約8μmに制御し、互いに隣り合うレーザー光の照射部位を40%程度の重なり合いとした。これにより、補助レーザー加工は主レーザー加工に比べ照射部位の重なりを小さくすることで、加工部位の深さを全体として小さく調整した。その結果得られた、試料70における主レーザー加工および補助レーザー加工を施した箇所の拡大した縦断面を、実施例1として図14に示す。
【0075】
図13,14に示される結果からも、補助レーザー加工が施された実施例1においては、補助レーザー加工が施されていない比較例1に比して、試料70に急峻な形状の突起の形成が抑えられて、縦断面の様子が全体に亘ってなだらかとされていることが認められる。
【0076】
また、実施例1と同様なレーザー光の条件により、試料70の表面に対して主レーザー加工を施して直線状の刻印を付すと共に、この刻印の外周縁部に対して補助レーザー加工を施した。そして、刻印の幅方向左側(L)の周辺部の高さ寸法や幅方向右側(R)の周辺部の高さ寸法を測定した。その結果を、実施例2として表1に示す。更に、比較例1と同様なレーザー光の照射条件により、試料70の表面に主レーザー加工を施して直線状の刻印を付した後、刻印の幅方向左側(L)の周辺部の高さ寸法や幅方向右側(R)の周辺部の高さ寸法を測定した。その結果を、比較例2として表1に併せ示す。
【0077】
【表1】
【0078】
表1からも、補助レーザー加工を施した実施例2では、補助レーザー加工を施していない比較例2に比して、刻印の周辺部の高さが低くなることが明らかである。
【0079】
これら実施例1および2の結果に基づき、本発明のコンタクトレンズの製造方法に従えば、補助レーザー加工を施すことによって、主レーザー加工に伴う突起の高さが有利に抑えられるものと推考される。
【0080】
次に、本発明に係るマーク付きコンタクトレンズの製造方法に基づいて、目的とする視認性や装用感を備えたレンズを製造する際に必要な、幅方向の寸法が200μm程度の長手矩形状を有するマーク72の形成手順例を示す(図19参照。)。
【0081】
先ず、図15にも示されているように、目的とするマーク72の形成部位の中央に主レーザー加工を施し、マーク72の長手方向(図15中、上下)に直線状に延びる第一の主刻印74を形成する。特に、第一の主刻印74では、主レーザー加工を一方の端部から他方の端部に向かって施し、且つ他方の端部から一方の端部に向かって施すことで、一方の端部と他方の端部の間の形成部位を往復するように主レーザー加工を二回施す。
【0082】
次に、図16にも示されているように、第一の主刻印74の幅方向外方および長手方向外方に5μm乃至は10μmのピッチを隔てて、矩形枠状の第二の主刻印76を主レーザー加工により形成する。この第二の主刻印76では、矩形枠状の形成部位に主レーザー加工を二周(二回)施す。
【0083】
また、図17にも示されているように、第二の主刻印76の幅方向外方および長手方向外方に前述の第一の主刻印74と第二の主刻印76の間と同様なピッチを隔てて、矩形枠状の第三の主刻印78を主レーザー加工により形成する。第三の主刻印78では、矩形枠状の形成部位に主レーザー加工を一周(一回)施す。
【0084】
さらに、図18にも示されているように、第三の主刻印78の幅方向外方および長手方向外方に前述のピッチを隔てて、矩形枠状の第四の主刻印80を主レーザー加工により形成する。第四の主刻印80では、矩形枠状の形成部位に主レーザー加工を一周(一回)施す。また、第四の主刻印80の外周側に第四の主刻印80の形成と同様にして、次第に外形寸法が大きくなる第五乃至は第十二の主刻印82,84,86,88,90,92,94,96を主レーザー加工により形成し、マーク72において略目的の大きさの外形形状を構成する。
【0085】
これら略目的の大きさの外形形状を構成するマーク72を形成した後、再び、第一の主刻印74から第十二の主刻印96までの主レーザー加工を施す作業を、所望の回数繰り返す。その結果、マーク72の深さ寸法を目的の寸法に形成する。
【0086】
更にまた、図19にも示されているように、主レーザー加工の熱エネルギに起因して第十二の主刻印96の外周縁部に盛り上がるように形成された、図示しない突起に対して補助レーザー加工を施す。これにより、第十二の主刻印96の外周側に矩形枠状を呈する第一の補助刻印98を形成し、第十二の主刻印96の外周縁部の突起の高さを小さくする。特に、第一の補助刻印98では、矩形枠状の形成部位となる第十二の主刻印96の外周縁部の突起に補助レーザー加工を二周(二回)施す。
【0087】
また、第十二の主刻印96の縁部の突起に補助レーザー加工を二周施したことによる熱エネルギに起因して、第一の補助刻印98の外周縁部においても盛り上がるように形成された突起に対して、補助レーザー加工を一回施す。これにより、第一の補助刻印98の外周側において、一回の補助レーザー加工からなる矩形枠状の第二の補助刻印100を形成し、第一の補助刻印98の外周縁部の突起の高さを小さくする。
【0088】
本実施例に係るマーク72においては、目的の視認性が十分に得られることに加え、レンズの装用に際して悪影響を及ぼすおそれのある大きさの突起が、マーク72の外周縁部に見受けられないことが認められた。このことからも、第一の補助刻印98に加え第二の補助刻印100を施すことによって、前述の問題となる突起の高さが有効に抑えらて、優れた装用感が得られるものと考えられる。
【0089】
特に本実施例では、第一の主刻印74乃至は第二の補助刻印100を形成した箇所に再び同様な主レーザー加工や補助レーザー加工を施す作業を、所望の回数繰り返すことで、以下の作用効果が得られることが判明した。即ち、一走査あたりのレーザー照射エネルギーを比較的に小さく出来るため、加工部位への熱影響を小さく出来る。また、二回目の走査までの時間を加工部位の熱的な緩和時間よりも長くすれば、加工部位への熱影響をより小さく出来る。更に、一走査あたりの加工深さが浅くなるので、加工深さを走査回数により高度に制御することが出来る。更にまた、パルスあたりのエネルギーが小さいことに基づき、加工面の凹凸形状をより微細なものと出来ることから、例えば光の散乱具合を制御して、視認性の良好なマークを形成することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の一実施形態としてのコンタクトレンズの一部を切り欠いて示す斜視説明図。
【図2】同コンタクトレンズの製造に用いられる雌型成形用金型を示す縦断面説明図。
【図3】同コンタクトレンズの一製造工程を示す縦断面説明図。
【図4】同コンタクトレンズの別の製造工程を示す縦断面説明図。
【図5】同雌型成形用金型の一部を構成する第二の金型の一製造工程の要部を拡大して示す縦断面説明図。
【図6】同第二の金型の別の一製造工程の要部を拡大して示す縦断面説明図。
【図7】同第二の金型のまた別の一製造工程の要部を拡大して示す縦断面説明図。
【図8】図5における要部を切り出した拡大説明図である。
【図9】図7における要部を切り出した拡大説明図である。
【図10】本発明の別の一実施形態としてのコンタクトレンズの製造に用いられる雌型成形用金型の一製造工程の要部を拡大して示す縦断面説明図。
【図11】同雌型成形用金型の別の一製造工程の要部を拡大して示す縦断面説明図。
【図12】同雌型成形用金型のまた別の一製造工程の要部を拡大して示す縦断面説明図。
【図13】本発明の実施例に係る比較例1としてのコンタクトレンズの縦断面形状測定結果を示す測定図。
【図14】同実施例に係る実施例1としてのコンタクトレンズの縦断面形状測定結果を示す測定図。
【図15】同実施例においてマーク付きコンタクトレンズの製造方法に従いマークを形成する一工程をモデル的に示す平面説明図。
【図16】同マークを形成する別の一工程をモデル的に示す平面説明図。
【図17】同マークを形成するまた別の一工程をモデル的に示す平面説明図。
【図18】同マークを形成する更にまた別の一工程をモデル的に示す平面説明図。
【図19】同マークを形成するまた別の一工程をモデル適に示す平面説明図。
【符号の説明】
【0091】
10:コンタクトレンズ、12:前面光学部、18:前面周辺部、22:マーク、24:雌型成形用金型、26:レンズ成形用雌型、46:刻印、58:突起
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型によって成形した樹脂型を用いて凹状のレンズ内面と凸状のレンズ外面の少なくとも一方のレンズ面を成形すると共に、該レンズ内面と該レンズ外面の少なくとも一方にマークを付したマーク付きコンタクトレンズの製造方法であって、
前記金型と前記樹脂型と前記コンタクトレンズの何れかにおいて、目的とする前記マークに対応する位置にレーザー光を照射して刻印する主レーザー加工を施すと共に、該刻印の外周縁部分に対して該主レーザー加工よりも小さな刻印深さで補助レーザー加工を施すことにより、該主レーザー加工に伴う該刻印の外周縁部分における突起の高さを抑えることを特徴とするマーク付きコンタクトレンズの製造方法。
【請求項2】
前記主レーザー加工を施した後に、前記補助レーザー加工を施す請求項1に記載のマーク付きコンタクトレンズの製造方法。
【請求項3】
前記主レーザー加工を施す前に、前記補助レーザー加工を施す請求項1に記載のマーク付きコンタクトレンズの製造方法。
【請求項4】
前記主レーザー加工による刻印の幅寸法に比して、前記補助レーザー加工による幅寸法が小さい請求項1乃至3の何れか一項に記載のマーク付きコンタクトレンズの製造方法。
【請求項5】
前記主レーザー加工に使用するレーザー光と、前記補助レーザー加工に使用するレーザー光とを、出力とQsw周波数と走査速度と照射角度と走査回数と波長の少なくとも一つにおいて互いに異ならせる請求項1乃至4の何れか一項に記載のマーク付きコンタクトレンズの製造方法。
【請求項6】
少なくとも前記補助レーザー加工に使用するレーザー光として、加工スポット径が20μm以下のものを採用する請求項1乃至5の何れか一項に記載のマーク付きコンタクトレンズの製造方法。
【請求項7】
レンズ内面とレンズ外面の少なくとも一方のレンズ面において、直接にレーザー光を照射して刻印されることにより、或いは該レンズ面の成形に際して用いられる成形型の成形面にレーザー光を照射して刻印したものを転写されることにより、マークが付されたマーク付きコンタクトレンズであって、
前記マークの外周縁部には、前記レーザー光の照射による前記刻印よりも小さな深さをもって該マークの縁に沿って延びる線状の加工面が形成されていることを特徴とするマーク付きコンタクトレンズ。
【請求項8】
前記レンズ面において前記マークが凹状に形成されていると共に、該凹状の外周縁部において前記レーザー光の照射に起因する周囲突起が形成されており、この周囲突起の先端部分に対して凹状の断面で延びる前記加工面が形成されている請求項7に記載のマーク付きコンタクトレンズ。
【請求項1】
金型によって成形した樹脂型を用いて凹状のレンズ内面と凸状のレンズ外面の少なくとも一方のレンズ面を成形すると共に、該レンズ内面と該レンズ外面の少なくとも一方にマークを付したマーク付きコンタクトレンズの製造方法であって、
前記金型と前記樹脂型と前記コンタクトレンズの何れかにおいて、目的とする前記マークに対応する位置にレーザー光を照射して刻印する主レーザー加工を施すと共に、該刻印の外周縁部分に対して該主レーザー加工よりも小さな刻印深さで補助レーザー加工を施すことにより、該主レーザー加工に伴う該刻印の外周縁部分における突起の高さを抑えることを特徴とするマーク付きコンタクトレンズの製造方法。
【請求項2】
前記主レーザー加工を施した後に、前記補助レーザー加工を施す請求項1に記載のマーク付きコンタクトレンズの製造方法。
【請求項3】
前記主レーザー加工を施す前に、前記補助レーザー加工を施す請求項1に記載のマーク付きコンタクトレンズの製造方法。
【請求項4】
前記主レーザー加工による刻印の幅寸法に比して、前記補助レーザー加工による幅寸法が小さい請求項1乃至3の何れか一項に記載のマーク付きコンタクトレンズの製造方法。
【請求項5】
前記主レーザー加工に使用するレーザー光と、前記補助レーザー加工に使用するレーザー光とを、出力とQsw周波数と走査速度と照射角度と走査回数と波長の少なくとも一つにおいて互いに異ならせる請求項1乃至4の何れか一項に記載のマーク付きコンタクトレンズの製造方法。
【請求項6】
少なくとも前記補助レーザー加工に使用するレーザー光として、加工スポット径が20μm以下のものを採用する請求項1乃至5の何れか一項に記載のマーク付きコンタクトレンズの製造方法。
【請求項7】
レンズ内面とレンズ外面の少なくとも一方のレンズ面において、直接にレーザー光を照射して刻印されることにより、或いは該レンズ面の成形に際して用いられる成形型の成形面にレーザー光を照射して刻印したものを転写されることにより、マークが付されたマーク付きコンタクトレンズであって、
前記マークの外周縁部には、前記レーザー光の照射による前記刻印よりも小さな深さをもって該マークの縁に沿って延びる線状の加工面が形成されていることを特徴とするマーク付きコンタクトレンズ。
【請求項8】
前記レンズ面において前記マークが凹状に形成されていると共に、該凹状の外周縁部において前記レーザー光の照射に起因する周囲突起が形成されており、この周囲突起の先端部分に対して凹状の断面で延びる前記加工面が形成されている請求項7に記載のマーク付きコンタクトレンズ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2008−191344(P2008−191344A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24851(P2007−24851)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000138082)株式会社メニコン (150)
【出願人】(000108627)タカノ株式会社 (250)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000138082)株式会社メニコン (150)
【出願人】(000108627)タカノ株式会社 (250)
【Fターム(参考)】
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