説明

ミシンの布押え装置

【課題】加工布の布厚が変化しても位置決めの微調整を容易に行うことができるミシンの布押え装置を提供すること。
【解決手段】ミシンは、足踏みペダルの踏み込み量をポテンショメータで検出する。制御装置は足踏みペダルの踏み込み量が作動領域であるかを判断する(S28)。足踏みペダルの踏み込み量が作動領域である場合、布押え部材は、押え高さに相当する累積パルス数の演算結果に基づいた高さになる(S30)。作業者は、足踏みペダルを作動領域まで踏み込むことで、踏み込み量に応じて布押え部材の高さを中間位置と布押え位置との間で微調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンの布押え装置に関し、特に加工布を押える布押え部材が、ペダルの操作量に応じて移動するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミシンは、布押え部材で加工布を押えた状態で、縫製作業を行う。布押え部材は、作業者が膝又は足により膝パッド又は足踏み式ペダルを操作することでアクチュエータが駆動して昇降動作を行う。作業者が膝パッド又は足踏み式ペダルを更に操作することで、ミシンは縫製を開始することができる。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のミシンは、布押え部材を布押え位置と、上昇位置と、中間位置との3箇所にわたって切換え可能な位置切換え機構を設けている。位置切換え機構は、足踏みペダルと、足踏みペダルの操作位置を検出する位置検出センサと、布押え部材を駆動するアクチュエータとを備えている。位置検出センサは、足踏みペダルの操作位置を検出する。位置切換え機構は、位置検出センサの検出結果に基づいて、アクチュエータを駆動して布押え部材を足踏みペダルの操作位置に対応する位置に切換える。布押え部材は、足踏みペダルの操作によって、足踏みペダルが中立位置のとき中間位置に切り換えられ、足踏みペダルが踏み込み位置のとき布押え位置に切り換えられ、足踏みペダルが踏み返し位置のとき上昇位置に切り換えられる。中間位置は、布押え位置と上昇位置との間に設定する。作業者は、加工布の位置決めの微調整を行うために布押え部材を中間位置に切換える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−286689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作業者が縫製を行う場合、加工布の種類を変更したり、加工布の重ね合わせの枚数が変化したりすると、加工布の布厚は変化する。特許文献1に記載のミシンでは、加工布の布厚が変化した場合、加工布と布押え部材との隙間が変化するため、加工布の位置決めは難しくなる。従って、作業者は加工布の布厚が変化する度に中間位置を設定しなおす必要があり、作業性が悪いという問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、加工布の布厚が変化しても位置決めの微調整を容易に行うことができるミシンの布押え装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明のミシンの布押え装置は、加工布を押える布押え部材と、前記布押え部材を駆動する駆動手段と、前記布押え部材の位置を、布押え位置と上昇位置との間で操作可能な操作手段と、前記操作手段の操作によって前記駆動手段を制御する駆動制御手段と、前記操作手段の操作量を検出する操作量検出手段とを備え、前記駆動制御手段は、前記操作量検出手段が前記操作手段の所定の操作量を検出した場合に、前記布押え部材を前記布押え位置と前記上昇位置との間の中間位置に移動するように制御するミシンの布押え装置において、前記駆動制御手段は、前記操作量検出手段が前記操作手段の前記所定以上の操作量を検出した場合に、前記布押え部材を前記中間位置と前記布押え位置との間で前記操作手段の操作量に応じて移動するように制御することを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明のミシンの布押え装置は、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記中間位置を設定可能な中間位置設定手段を更に備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明のミシンの布押え装置は、請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記駆動制御手段は、前記布押え部材を前記中間位置と前記布押え位置との間で前記操作手段の操作量に応じて移動させる場合に、前記操作手段の操作量の増加に応じて、前記操作手段の一定の操作量に対する前記布押え部材の移動量を大きくするように制御することを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明のミシンの布押え装置は、請求項2又は3に記載の発明の構成に加え、前記加工布の厚さである布厚位置を検知する布厚検知手段を更に備え、前記中間位置設定手段は、前記布厚検知手段が検知した前記布厚位置と前記上昇位置との間に前記中間位置を設定することを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明のミシンの布押え装置は、請求項4に記載の発明の構成に加え、前記駆動制御手段は、前記操作量検出手段が前記操作手段の前記所定以上の操作量を検出した場合に、前記布押え部材を前記中間位置と前記布厚位置との間で前記操作手段の操作量に応じて移動するように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1のミシンの布押え装置では、駆動制御手段は、操作量検出手段が所定の操作量を検出した場合に、布押え部材の高さを布押え位置と上昇位置との間の中間位置に移動するように制御する。駆動制御手段は、操作量検出手段が所定以上の操作量を検出した場合には、布押え部材の高さを中間位置と布押え位置との間で操作手段の操作量に応じて移動するように制御する。作業者は、操作手段の操作を所定以上行うことで、布押え部材の高さを中間位置と布押え位置との間で微調整することができる。作業者は、操作手段の操作のみで加工布の厚さに応じて布押え部材の高さを変えて位置決めをすることができる。従って、作業者は、加工布の位置決めを容易に行うことができる。
【0013】
請求項2のミシンの布押え装置では、請求項1に記載の発明の効果に加え、中間位置を設定可能な中間位置設定手段を設けたので、加工する布の厚さに応じた中間位置を設定して位置決めを容易に行うことができる。中間位置を高く設定すると、加工布の重ね合わせ枚数が変化した場合に、作業者は中間位置の再設定をする必要がない。作業者は、操作手段の操作のみで布押え部材の高さを調整することができる。従って、作業者は、加工布の位置決めを更に容易に行うことができる。
【0014】
請求項3のミシンの布押え装置では、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、駆動制御手段は、操作手段の操作量の増加に応じて、操作手段の一定の操作量に対する布押え部材の移動量を大きくするように制御する。布押え部材は、操作手段の操作量の増加に伴って下降量が増加するので中間位置に近い位置で更に微調節することができる。従って、作業者は、加工布の位置決めをより容易に行うことができる。
【0015】
請求項4のミシンの布押え装置では、請求項2又は3に記載の発明の効果に加え、加工布の厚さである布厚位置を検知する布厚検知手段を設け、布厚検知手段が検知した布厚位置と上昇位置との間に中間位置を設定する。布押え装置は、布厚検知手段の検知結果に基づいて容易に中間位置を設定することができるので、加工布の位置決めを更に容易に行うことができる。
【0016】
請求項5のミシンの布押え装置では、請求項4に記載の発明の効果に加え、駆動制御手段は、操作量検出手段が操作手段の所定以上の操作量を検出した場合に、布押え部材を中間位置と布厚位置との間で操作手段の操作量に応じて移動するように制御する。布押え装置は、作業者の操作手段の操作量に対して、布押え部材の移動量を少なくすることができる。従って、作業者は布押え部材の高さの微調整を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係るミシンの側面図である。
【図2】ミシンの後方からの斜視図である。
【図3】ミシンの内部構造の側面図である。
【図4】ミシンの制御系のブロック図である。
【図5】操作パネルの正面図である。
【図6】検出電圧換算値テーブルの設定データを示す図表である。
【図7】押え高さパルス数テーブルの設定データを示す図表である。
【図8】ミシンの全体の処理のフローチャートである。
【図9】(A)〜(B)は、足踏みペダルの踏み込み量と布押え部材の高さ位置とを対応させた説明図及び表である。
【図10】中間位置設定制御処理のフローチャートである。
【図11】変形例に係るミシンの制御系のブロック図である。
【図12】変形例に係る足踏みペダルの踏み込み量と布押え部材の高さ位置とを対応させた説明図である。
【図13】変形例に係る足踏みペダルの踏み込み量と布押え部材の高さ位置とを対応させた説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態であるミシン1について、図面を参照して説明する。以下の説明では、図1の紙面左方、右方、表面、背面を、それぞれミシン1の前方、後方、右方、左方とする。作業者は、ミシン1の前方に向かって作業を行う。
【0019】
図1に示すミシン1は、足踏みペダル57の踏み込み量に応じた任意の高さ位置に布押え部材24を昇降する。ミシン1は、足踏みペダル57の踏み込み操作に連動して縫製を開始できる。
【0020】
図1を参照してミシン1の構造について説明する。ミシン1は、ベッド部2と、脚柱部5と、アーム部6とを備える。ミシン1は、テーブル8上に設けてある。脚柱部5は、ベッド部2の後端部から上方に延びている。アーム部6は、脚柱部5の上端部からベッド部2と対向するように前方へ延びる。脚柱部5及びアーム部6は、ミシンモータ9(図2参照)を備えている。ミシンモータ9は、針棒10を上下駆動する。針棒10は、アーム部6の前方に備えてある。針棒10は、その下端に縫針11を設けている。ミシン1は、ミシンモータ9の駆動力を、主軸(図示省略)を介して針棒10に伝達する駆動力伝達機構を設けている。駆動力伝達機構は公知の技術であるため、詳細な説明は省略する。
【0021】
ベッド部2は、ベッド本体部3と、シリンダベッド部4とからなる。シリンダベッド部4は、ベッド本体部3から前方に延びる。ベッド部2は、布送り機構(図示省略)と、垂直半回転釜14と、下軸15とを備えている。布送り機構は、後述する布押え装置20と、針板12及び送り台13と、布受け板16とを前後方向(Y方向)及び左右方向(X方向)に移動する。送り台13は、ベッド部2の上面に設ける。布受け板16は、その後端部を送り台13に連結する。垂直半回転釜14は、縫針11の上下動と協働して縫目を形成する。下軸15は、ミシンモータ9の回転駆動力を垂直半回転釜14に伝達する。
【0022】
布押え装置20について説明する。布押え装置20は、送り台13上に設けてある。布押え装置20は、押え腕21と、押え腕レバー23と、布押え部材24とを備える。押え腕21は、側面視にて湾曲状に形成してある。押え腕21は、その基端部(後端部)が送り台13の上面に固定してある。押え腕21は、その先端部に矩形枠状の布押え部材24を支持するための押え取付け部21aを備えている。押え腕21は、その前後方向中央部に、左右方向向きの支持軸22を固定している。押え腕21は、その左右両側に、前後方向に延びる押え腕レバー23をそれぞれ設けている。各押え腕レバー23は、前後方向の略中央部において支持軸22に回動可能に支持してある。
【0023】
押え取付け部21aは、布押え部材24の連結部(図示省略)を上下動可能に支持する。布押え部材24の連結部は左右2つの係合穴(図示省略)を有する。係合穴は押え腕レバー23の先端部を後方からそれぞれ挿通可能であり、布押え部材24と押え腕レバー23とを連結している。押え腕レバー23は、その後端部がバネガイド軸25の上端部に回動可能に連結している。バネ受け部材26は、バネガイド軸25の下端部を上下方向に摺動可能に支持する。圧縮コイルバネ27は、バネ受け部材26上のバネガイド軸25に装着している。
【0024】
圧縮コイルバネ27は、バネ力によって1対の押え腕レバー23を、支持軸22を中心に反時計回りに付勢する。押え腕レバー23は、押え腕21の押え取付け部21aを介して布押え部材24を針板12上面に押圧する。押え腕レバー23は、支持軸22よりも後側の左右両側に、押え作動板28をボルト29によりそれぞれ固定している。押え作動板28は、圧縮コイルバネ27のバネ力により、後述する上下動部材47の下端に設けた板47aに当接している。布押え部材24は、後述する布押えモータ32(図2参照)を駆動することにより上方に移動することができる。ミシン1の後方は、ミシンモータ9等をカバー部材30で覆っている。
【0025】
足踏みペダル57について説明する。足踏みペダル57は、床面に設けてあり、開閉板57aを有する。開閉板57aは、作業者が操作していない状態では圧縮バネ(図示省略)により開放位置に位置する。開閉板57aは、その一端部が連結ロッド56を介して回動レバー52の端部に連結している。開閉板57aは、その他端部を回動支点として回動可能である。
【0026】
支持軸51は、回動レバー52の基端部を回動可能に支持している。支持軸51は、テーブル8の下方のボックスBに固定している。回動レバー52は、引っ張りバネ53のバネ力により、常時反時計回りに付勢する。回動レバー52は、その上方に設けたストッパ54に当接することで、反時計回り方向への回動が規制してある。回動レバー52は、その基端部にポテンショメータ55の駆動軸を連結している。ポテンショメータ55の駆動軸は、回動レバー52と同期して回動する。
【0027】
作業者が足で開閉板57aを踏み込むと、開閉板57aは回動する。開閉板57aが回動することで連結ロッド56を介して回動レバー52は回動する。回動レバー52が回動することでポテンショメータ55の駆動軸は回動する。それ故、ポテンショメータ55は駆動軸の回動角度に応じた検出電圧値を後述する制御装置60に出力する。
【0028】
図2を参照して、布押えモータ32について説明する。布押えモータ32は、固定枠31の右側壁部31aに固定してある。布押えモータ32は、脚柱部5の後側を覆うように設けたカバー部材30(図1参照)の内部に設けてある。布押えモータ32は、その駆動軸に駆動ギヤ33を固定している。
【0029】
布押えモータ32は、その駆動軸にロータリエンコーダであるNエンコーダ32E(図4参照)を設けている。Nエンコーダ32Eは、布押えモータ32の実際の回転量を検出する。Nエンコーダ32Eは、布押えモータ32の駆動軸と共に回転可能に設けてある。Nエンコーダ32Eは、周方向に適当な間隔でスリットを形成したディスク(図示省略)と、発光部(図示省略)及び受光部(図示省略)を有する検出器(図示省略)とを備えている。
【0030】
Nエンコーダ32Eは、発光部で発光した光をディスクのスリットを通過して受光部で検出すると、高さ方向への移動に関するエンコーダ信号を後述する入出力インターフェース(I/O)61(図4参照)に出力する。エンコーダ信号に基づいて、制御装置60(図4参照)は、布押えモータ32の駆動軸の回転角度を検出する。
【0031】
本実施形態において、布押えモータ32はステッピングモータで構成している。布押えモータ32の分解能は、例えば800パルスである。Nエンコーダ32Eは、布押えモータ32の1回転で800個のエンコーダ信号を出力する。制御装置60は、Nエンコーダ32Eが出力するエンコーダ信号をフィードバック制御用として用い、布押えモータ32の位置を正確に把握することができる。
【0032】
固定枠31は、略U字状に形成し、脚柱部5のフレームに固定している。固定枠31は、上方が開放状態である。固定枠31は、右側壁部31aと左側壁部31bとにわたって左右方向に1本のカム支持軸34を回動可能に支持している。カム支持軸34は、駆動ギヤ33に噛合する従動ギヤ35と、後述する布押え動作のための布押えカム36とを設けてあり、それぞれ固定螺子(図示省略)で固定している。
【0033】
本実施形態では、従動ギヤ35と布押えカム36とは一体成形してあり、固定螺子でカム支持軸34に解除可能に固定している。
【0034】
図2及び図3に示すように、固定枠31は、その上端部に右側壁部31aと左側壁部31bとにわたって左右方向に支持軸40を固定している。支持軸40は、側面視L字状の第1押えレバー41を回動可能に支持している。第1押えレバー41は、駆動側レバー部41aと従動側レバー部41bとからなる。第1押えレバー41は、従動側レバー部41bに引っ張りコイルバネ49の一端を連結する。駆動側レバー部41aは、その下端に布押えカム36のカム面に前方から当接可能な押え用コロ42を連結している。従動側レバー部41bは、その上端に前後方向に延びる押え連竿43の後端部を連結している。押え連竿43は、その前端部を側面視L字状の第2押えレバー45の駆動側レバー部45aに連結している。引っ張りコイルバネ49は、その他端が脚柱部5のフレームに連結する。押え用コロ42は、引っ張りコイルバネ49のバネ力によって常に布押えカム36のカム面に当接する。
【0035】
第2押えレバー45は、アーム部6のフレームに固定した支持軸44に回動可能に支持してある。第2押えレバー45は、従動側レバー部45bにピン46を固定している。ピン46は、上下動部材47に前後方向に摺動可能な角コマ48に連結している。上下動部材47は、その下端に押え作動板28を押し下げる水平状の板47aを備えている。
【0036】
布押え部材24の上下動について説明する。布押えモータ32が正回転で駆動すると、押え用コロ42は布押えカム36のカム部を移動する。押え用コロ42が布押えカム36のカム部を移動すると、第1押えレバー41は時計回り(図3において)に回動する。第1押えレバー41が回動すると、押え連竿43は後方に移動する。第2押えレバー45は、押え連竿43が後方に移動することで反時計回り(図3において)に回動する。第2押えレバー45が回動すると、上下動部材47は下降して押え作動板28を押し下げる。従って、押え腕レバー23は、圧縮コイルバネ27のバネ力に抗して支持軸22を回動支点として時計回り(図3において)に回動する。押え腕レバー23の先端部に係合している布押え部材24は、押え腕レバー23の回動に伴って上昇する。
【0037】
布押えモータ32が逆回転で駆動する場合、第1押えレバー41及び第2押えレバー45はそれぞれ上述の場合とは逆方向に回動する。従って、上下動部材47は上昇して押え作動板28の押し下げを解除する。押え腕レバー23は、圧縮コイルバネ27のバネ力によって支持軸22を回動支点として反時計回り(図3において)に回動する。それ故、押え腕レバー23の先端部に係合している布押え部材24は、押え腕レバー23の回動に伴って下降する。
【0038】
図4のブロック図を参照して、ミシン1の制御系について説明する。制御装置60は、入出力インターフェース61と、CPU62と、ROM63と、RAM64及び不揮発性メモリ65等を含むコンピュータと、駆動回路68〜71等を有する。
【0039】
入出力インターフェース61は、操作パネル66と、各駆動回路68〜71と、各種のセンサ74,75等とを接続している。駆動回路68は、ミシンモータ9の為の回路である。駆動回路69は、布送り機構に設けたX方向駆動機構を介して送り台13をX方向に駆動するXモータ72の為の回路である。駆動回路70は、布送り機構に設けたY方向駆動機構を介して送り台13をY方向に駆動するYモータ73の為の回路である。駆動回路71は、布押えモータ32の為の駆動回路である。X方向原点センサ74は、X方向の原点設定のためにX方向駆動機構に設けている。Y方向原点センサ75は、Y方向の原点設定のためにY方向駆動機構に設けている。Xモータ72及びYモータ73は、それぞれの駆動軸にNエンコーダ32Eと同様に構成したロータリエンコーダであるXエンコーダ72EとYエンコーダ73Eとをそれぞれ付設している。
【0040】
ROM63は、各種の駆動機構を駆動制御するとともに、各種の模様の縫製制御プログラム、ミシン1の全体の処理の制御プログラム等を予め格納している。ROM63は、検出電圧換算値テーブルT1(図6参照)と、押え高さパルス数テーブルT2(図7参照)とを格納している。
【0041】
不揮発性メモリ65は、電気的に書換え可能である。不揮発性メモリ65は、布押え部材24の中間位置を記憶する。中間位置は、上昇位置と布押え位置との間に設定可能な位置である。RAM64は、縫製を実行する縫製データ、及びCPU62で演算処理した演算結果を収容する各種メモリ、ポインタ、カウンタ等を必要に応じて設ける。
【0042】
図5に示すように、操作パネル66は、リセットキー66a、布押え部材24の位置を任意に設定する高さ位置設定キー66b、各種のファンクションキー66c〜66f、設定する数値を増大させるアップキー66h、設定する数値を減少させるダウンキー66g、その他表示ランプ及び小型ディスプレイ等を設けている。
【0043】
図6を用いて、検出電圧換算値テーブルT1について説明する。
【0044】
検出電圧換算値テーブルT1は、ポテンショメータ55が出力する検出電圧値(V)と、検出電圧値に基づく換算値とを格納する。検出電圧換算値テーブルT1は、足踏みペダル57の中立領域と、該中立領域に続く作動領域と、該作動領域に続く押え領域と、該押え領域に続く縫製領域とに対応する。
【0045】
換算値は、検出電圧値をCPU62で処理可能にするため、検出電圧値に適当な係数を掛けて整数化した値である。本実施形態では、CPU62は換算値を8bit(0〜255)で扱う。中立領域は、換算値が「0〜152」の範囲内となる。作動領域は、換算値が「153〜190」の範囲内となる。押え領域は、換算値が「191〜203」の範囲内となる。縫製領域は、換算値が「204〜255」の範囲内となる。尚、第1境界は、中立領域から作動領域へと切り替わる箇所(換算値が153)を示している。第2境界は作動領域から押え領域へと切り替わる箇所(換算値が191)を示している。第3境界は押え領域から縫製領域へと切り替わる箇所(換算値が204)を示している。
【0046】
図7を用いて、押え高さパルス数テーブルT2について説明する。
【0047】
押え高さパルス数テーブルT2は、布押え部材24の位置(高さ0.0mmを基準とした高さ)と該位置に布押え部材24を駆動するのに必要な布押えモータ32の駆動パルス数(累積パルス数)とを対応付けた情報を格納する。布押え部材24の高さは、布押え部材24が針板12に当接する場合に、布押え位置(0.0mm)である。累積パルス数は、布押え部材24の高さが布押え位置(0.0mm)から、所望の高さの位置まで布押え部材24を移動するのに必要なパルス数である。累積パルス数は、布押え部材24の高さが布押え位置(0.0mm)の場合、0である。布押え部材24は、布押え位置と上昇位置との間を上下動する。上昇位置は、布押え部材24が針板12から最も離隔した位置であり、累積パルス数は、例えば200である。累積パルス数の増加に従って、布押え部材24は上昇する。
【0048】
図8のフローチャートを参照して、ミシン1の制御装置60が実行するミシン1の全体の処理について説明する。但し、図中の符号Si(i=10、12、14・・・)は各ステップである。
【0049】
作業者が電源をONすると、CPU62は、ポテンショメータ55が出力する検出電圧値を読み込み、その検出電圧値に対応する換算値を取得する(S10)。CPU62は、読み込んだ検出電圧値に対応する換算値が中立領域に属するか否かを判断する(S12)。換算値が中立領域に属さない場合(S12:No)、CPU62は処理をS10に移行する。換算値が中立領域に属する場合(S12:Yes)、CPU62は、電源をONにする際の布押え部材24の高さである布押え位置に対応する累積パルス数(例えば、0)を現在位置としてセットする(S14)。CPU62は、上昇位置に対応する累積パルス数(例えば、200)を目標位置としてセットする(S16)。
【0050】
CPU62は、現在位置と、S16でセットした目標位置とに差があるか否かを判断する(S18)。現在位置と、目標位置とに差がある場合(S18:Yes)、CPU62は、現在位置と目標位置との差分に相当するパルス数を駆動回路71に出力する。CPU62は、出力したパルス数の分布押えモータ32を駆動して布押え部材24を目標位置となる高さへ移動して(S20)、処理をS22に移行する。S20までの処理は、作業者が電源をONした場合の布押え部材24の位置の初期化に相当する。
【0051】
CPU62は、ポテンショメータ55が出力する検出電圧値に対応する換算値を取得する(S22)。CPU62は、取得した換算値に対応する累積パルス数を現在位置としてセットする。CPU62は、S22で取得した換算値が中立領域に属するか否か判断する(S24)。換算値が中立領域に属する場合(S24:Yes)、CPU62は、上昇位置に対応する累積パルス数を目標位置としてセットして(S26)、処理をS18に移行する。
【0052】
換算値が中立領域に属さない場合(S24:No)、CPU62は、換算値が第1境界以上である作動領域に属するか否か判断する(S28)。換算値が作動領域に属する場合(S28:Yes)、CPU62は、後述する演算によって押え高さに相当する累積パルス数を求め、その結果を目標位置としてセットして(S30)、処理をS18に移行する。
【0053】
換算値が作動領域に属さない場合(S28:No)、CPU62は、換算値が第2境界以上の押え領域に属するか否か判断する(S32)。換算値が押え領域に属する場合(S32:Yes)、CPU62は、布押え位置に対応する累積パルス数(例えば、0)を目標位置としてセットして(S34)、処理をS18に移行する。
【0054】
換算値が押え領域に属さない場合(S32:No)、即ち換算値が第3境界以上の縫製領域に属する場合、CPU62は、現在位置が、布押え位置でないか否かを判断する(S36)。現在位置が布押え位置でない場合(S36:Yes)、CPU62は、現在位置と布押え位置との差分に相当するパルス数を駆動回路71に出力する。CPU62は、出力したパルス数の分布押えモータ32を駆動して布押え部材24を布押え位置へ移動して(S38)、処理をS40に移行する。CPU62は、ミシンモータ9を駆動する起動指令を出力して、縫製動作を開始する(S40)。
【0055】
縫製動作の終了後、CPU62は、ポテンショメータ55が出力する検出電圧値に対応する換算値を取得する(S42)。CPU62は、取得した換算値が中立領域に属するか否かを判断する(S44)。換算値が中立領域に属さない場合(S44:No)、CPU62は処理をS42に移行する。換算値が中立領域に属する場合(S44:Yes)、CPU62は、上昇位置に対応する累積パルス数を目標位置としてセットする(S46)。CPU62は、処理をS18に移行して、S18以降の処理を繰り返す。
【0056】
図8のフローチャートに基づいたミシン1の全体の処理の動作及び作用について図9(A),(B)を参照して説明する。尚、以下の説明では、布押え部材24の高さは、上昇位置を高さ20.0mm、中間位置を高さ7.0mm、布押え位置を高さ0.0mmとする。布押え部材24は、電源OFF時に布押え位置となっている。
【0057】
まず、作業者が電源をONすると、ミシン1は布押え部材24を初期位置(上昇位置)に移動する。通常、作業者が電源をONする場合、足踏みペダル57の踏み込み操作は行わないため、ポテンショメータ55の検出電圧値は、0となる。それ故、S12において換算値は、中立領域であると判断し、S14において現在位置に0をセットする。次に、S16においては上昇位置に対応する累積パルス数(200)を目標位置にセットする。S18においては、目標位置と、現在位置とが異なると判断し、差分である200パルスを、駆動回路71を介して布押えモータ32に出力する(S20)。これにより、布押え部材24は、上昇位置に移動する。その後、足踏みペダル57の踏み込み操作を行わない場合、S22において取得する換算値は0であり、中立領域であるため目標位置として上昇位置に対応する累積パルス数(200)をセットして(S24でYes、S26)、S18に処理は移行する。S18においては、目標位置と現在位置が一致するため、前述したS22、S24、S26の処理を繰り返すことになる。以上により、電源をONした後、布押え部材24は、上昇位置に移動する。
【0058】
作業者が足踏みペダル57を踏み込んだまま電源をONすると、ポテンショメータ55の検出電圧値に対応する換算値が中立領域でない場合(S12でNo)、処理はS10に移行し、換算値が中立領域になるまで待つことになる。それ故、作業者が足踏みペダル57の踏み込みを中止しない限り、ミシン1は、縫製動作をすることはない。
【0059】
その後、作業者は、足踏みペダル57を踏み込まない状態で縫製する加工布を布受け板16上にセットする。作業者は、加工布の位置決めを行うため、位置決めを行いやすい高さまで布押え部材24を移動する。作業者は、布押え部材24の移動のために足踏みペダル57を踏み込み操作する。作業者が足踏みペダル57の踏み込み操作を行うと、S22において取得する換算値は増加する。ただし、換算値が0〜152の場合は、中立領域であるため布押え部材24は上昇位置のままである。
【0060】
作業者が足踏みペダル57を換算値が153である第1境界まで踏み込むと、作動領域であるため(S24でNo、S28でYes)、目標位置として中間位置に対応する累積パルス数(70)をセットして(S30)、S18に処理は移行する。S18においては、目標位置と現在位置が異なるため、その差分であるパルス数を、駆動回路71を介して布押えモータ32に出力する(S20)。これにより、布押え部材24は上昇位置から中間位置まで下降する。
【0061】
作業者が足踏みペダル57を第1境界からさらに踏み込むと、下記押え高さに相当する累積パルス数の演算結果に基づいて、布押え部材24は足踏みペダル57の踏み込み量に応じた高さになる(S30)。
【0062】
押え高さに相当する累積パルス数の演算について説明する。作動領域における累積パルス数は、換算値が第1境界のときの累積パルス数(70)と、換算値が第2境界のときの累積パルス数(0)との2点を通る直線で表すことができる。
【0063】
作動領域における1換算値あたりの累積パルス数の変化量は約2である。即ち、換算値が1増加すると累積パルス数は約2減少する。また、その他の中立領域、押え領域及び縫製領域では、累積パルス数の変化量は換算値に関係なく0である。従って、作業者が足踏みペダル57を踏み込み、換算値が0から153である第1境界に達すると、布押え部材24の高さは上昇位置から中間位置へと切り替わる。更に足踏みペダル57の踏み込み量が増大すると、換算値が153〜190である作動領域に属する場合、布押え部材24の高さは、第1境界からの踏み込み量に応じて(換算値の増加に応じて)中間位置から下降する。従って、作動領域においては、足踏みペダル57の踏み込み量と、布押え部材24の移動量とは比例する。
【0064】
作業者は、加工布の厚さに応じて足踏みペダル57の踏み込み量を調節して、布押え部材24の高さを調節する。作業者は、足踏みペダル57を踏み込んだ状態で、加工布を布受け板16上で位置決めする。
【0065】
図示を省略するが、作業者が足踏みペダル57の踏み込み操作を中止し、足踏みペダル57を踏み込み前の位置(換算値が中立領域)まで戻した場合、目標位置として上昇位置に対応する累積パルス数(200)をセットして(S24でYes、S26)、S18に処理は移行する。S18においては、目標位置と現在位置が異なるため、その差分であるパルス数を、駆動回路71を介して布押えモータ32に出力する(S20)。これにより、布押え部材24は上昇位置まで上昇する。
【0066】
作業者は、加工布の位置決めの後、縫製を開始するために足踏みペダル57をさらに踏み込む。作業者が足踏みペダル57を換算値が191である第2境界まで踏み込むと、押え領域であるため(S28でNo、S32でYes)、目標位置として布押え位置に対応する累積パルス数(0)をセットして(S34)、S18に処理は移行する。S18においては、目標位置と現在位置が異なるため、その差分であるパルス数を、駆動回路71を介して布押えモータ32に出力する(S20)。これにより、布押え部材24は布押え位置になる。
【0067】
作業者は、足踏みペダル57をさらに踏み込む。作業者が足踏みペダル57を第2境界からさらに踏み込むと、S22において取得する換算値は増加する。ただし、換算値が191〜203の場合は、押え領域であるため布押え部材24は布押え位置を保持する。
【0068】
作業者が足踏みペダル57を換算値が204である第3境界まで踏み込むと、縫製領域である(S32でNo)。縫製領域では、布押え部材24は布押え位置を保持する。S36において、現在位置が布押え位置でない場合は(S36でNo)、現在位置と布押え位置との差分であるパルス数を、駆動回路71を介して布押えモータ32に出力する(S38)。これにより、布押え部材24は、確実に布押え位置に移動する。CPU62は縫製開始を指令して、縫製処理を実行する(S40)。縫製開始に際して、布押え部材24は布押え位置を保持し、加工布に最適な押圧力を作用している。
【0069】
縫製処理の開始後、作業者は足踏みペダル57の踏み込み操作を中止することができる。縫製処理が終了して、S42において取得する換算値が中立領域であった場合には(S44:Yes)、上昇位置に対応する累積パルス数(200)を目標位置にセットして(S46)、処理をS18に移行する。S18においては、目標位置と、現在位置とが異なると判断し、差分である200パルスを、駆動回路71を介して布押えモータ32に出力する(S20)。これにより、布押え部材24は、上昇位置に移動する。布押え部材24が上昇位置に移動した後は、前述したS22以降の処理を繰り返すことになる。
【0070】
図10のフローチャートを参照して、中間位置設定制御処理について説明する。作業者は、操作パネル66により、布押え部材24の中間位置を予め任意に設定しておくことができる。尚、布押え部材24の中間位置の設定は必須の処理ではなく、固定しておいてもよい。
【0071】
作業者は、操作パネル66から高さ位置設定キー66bを操作する。作業者が高さ位置設定キー66bを操作すると、CPU62は、中間位置設定制御処理を開始する。
【0072】
不揮発性メモリ65が布押え部材24の中間位置を記憶している場合、CPU62は中間位置データを読み出す(S61)。CPU62は中間位置データに基づいて布押えモータ32を駆動する。布押えモータ32の駆動によって、布押え部材24は中間位置に移動する(S62)。
【0073】
作業者は、布押え部材24の高さが所望の位置でない場合、操作パネル66を操作して高さを調節する。布押え部材24の高さを高くする場合、作業者はアップキー66gを操作する。作業者がアップキー66gを操作した場合(S63:Yes、S64:Yes)、CPU62は中間位置を所定量(例えば、約1mmに相当する量)だけ増加して(S65)、増加分に応じて布押え部材24を上昇移動する(S66)。CPU62はS66の処理の後、処理をS63に移行する。
【0074】
一方、布押え部材24の高さを低くする場合、作業者はダウンキー66hを操作する。作業者がダウンキー66hを操作した場合(S63:Yes、S64:No、S67:Yes)、CPU62は中間位置を所定量(例えば、約1mmに相当する量)だけ減少して(S68)、減少分に応じて布押え部材24を下降移動する(S69)。CPU62はS69の処理の後、処理をS63に移行する。
【0075】
作業者が高さ位置設定キー66bを操作した場合(S63:Yes、S64:No、S67:No、S70:Yes)、CPU62は不揮発性メモリ65に記憶していた中間位置データを作業者が調節した高さに更新して(S71)、処理を終了する。作業者の操作が高さ位置設定キー66bでない場合(S70:No)、CPU62は作業者が操作したキーに対応する処理を行い(S72)、処理を再びS63に移行する。
【0076】
本実施形態における布押えモータ32は本発明の「布押え駆動手段」に相当する。足踏みペダル57は本発明の「操作手段」に相当する。ポテンショメータ55は本発明の「操作量検出手段」に相当する。S20,S38の処理を実行するCPU62は本発明の「駆動制御手段」に相当する。操作パネル66及び中間位置設定制御等は本発明の「中間位置設定手段」に相当する。
【0077】
以上説明したように、本実施形態のミシン1は、足踏みペダル57の踏み込み量をポテンショメータ55で検出する。作業者が足踏みペダル57をポテンショメータ55の検出電圧値に対応する換算値が中立領域から第1境界となる位置まで踏み込むと、布押え部材24は中間位置まで下降する。作業者が足踏みペダル57をさらに踏み込むと、押え高さに相当する累積パルス数の演算結果に基づいて、布押え部材24は足踏みペダル57の踏み込み量に応じた高さに位置する。作業者は、足踏みペダル57を換算値が第1境界となる位置より踏み込むことで、布押え部材24の高さを中間位置と布押え位置との間で微調整することができる。作業者は、足踏みペダル57の操作のみで加工布の厚さに応じて布押え部材24の高さを変えて位置決めをすることができる。従って、作業者は、加工布の位置決めを容易に行うことができる。
【0078】
ミシン1は、作業者が操作パネル66により、布押え部材24の中間位置を任意に設定しておくことができる中間位置設定制御を設けたので、加工する布の厚さに応じた中間位置を設定して位置決めを容易に行うことができる。中間位置を高く設定すると、加工布の重ね合わせ枚数が変化した場合に、作業者は中間位置の再設定をする必要がない。作業者は、足踏みペダル57の操作のみで布押え部材24の高さを調整することができる。従って、作業者は、加工布の位置決めを更に容易に行うことができる。
【0079】
本発明は上記実施形態に限定されることなく、さまざまな変更が可能である。例えば、上記実施形態における中間位置設定制御処理は、作業者が操作パネル66により、布押え部材24の中間位置を任意に設定した。変形例は、加工布の厚さを検知する布厚検知センサ76を設ける。図11に示すように、布厚検知センサ76は、制御装置160の入出力インターフェース(I/O)161に接続する。尚、制御装置160は、上述した実施形態とほぼ同様の構造を備えているので詳細な説明を省略する。
【0080】
CPU62は、布厚検知センサ76が検知した加工布の厚さに相当する累積パルス数と上昇位置に相当する累積パルス数とから、布押え部材24の中間位置を加工布の厚さに相当する位置と上昇位置との間に設定する。従って、作業者が操作パネル66により、布押え部材24の中間位置を任意設定することが不要になり、作業性を向上することができる。変形例における布厚検知センサ76は本発明の「布厚検知手段」に相当する。
【0081】
上記実施形態における布押え部材24は、足踏みペダル57の踏み込み量に比例した移動量であった。布押え部材24の移動量は、上記実施形態に限定しない。図12に示すように、作動領域における足踏みペダル57の踏み込み量の増加に応じて、足踏みペダル57の一定の操作量に対する布押え部材24の下降量を大きくするようにする。布押え部材24は、足踏みペダル57の踏み込み量の増加に伴って下降量が増加するので、作業者は中間位置に近い位置で更に細かい微調節することができる。従って、作業者は、加工布の位置決めをより容易に行うことができる。
【0082】
上記実施形態における布押え部材24は、上昇位置と布押え位置との間に、中間位置を1箇所有していた。中間位置の数は、上記実施形態に限定しない。図13に示すように、布押え部材24は、上昇位置と布押え位置との間に、中間位置H,Lを有する。中間位置Lは、上述した布厚検知センサ76が検知した加工布の厚さに相当する位置を設定する。図13では、中間位置Lは高さ5.0mmである。中間位置Hは、布厚検知センサ76が検知した加工布の厚さに相当する位置と上昇位置との間の高さに設定する。図13では、中間位置Hは高さ7.0mmである。
【0083】
上記変形例における布押え部材24の動作を説明する。作業者が足踏みペダル57を中立領域から第1境界まで踏み込むと、布押え部材24は中間位置Hまで下降する。作業者が足踏みペダル57を換算値が第1境界となる位置からさらに踏み込むと、布押え部材24は足踏みペダル57の踏み込み量に応じた高さに位置する。作業者が足踏みペダル57を換算値が第2境界となる位置の直前まで踏み込むと、布押え部材24は中間位置Lに位置する。作業者が足踏みペダル57を換算値が第2境界となる位置まで踏み込むと、布押え部材24は布押え位置に下降する。
【0084】
布押え装置20は、中間位置Lを加工布の厚さに相当する位置に設定することで、作業者の足踏みペダル57の踏み込み量に対して、布押え部材24の移動量を少なくできる。従って、加工布の厚さが比較的一定である場合に、中間位置Lを設定することで作業者は布押え部材24の高さの微調整を容易に行うことができる。
【0085】
上記実施形態における布押えモータ32は、ステッピングモータで構成した。布押えモータ32は、DCサーボモータ等、各種の電動モータを採用するようにしてもよい。
【0086】
上記実施形態では、布押え部材24は布押えモータ32を駆動することによって移動するようにした。布押え部材24は、アクチュエータ等で移動するようにしてもよい。
【0087】
上記実施形態では、押え高さに相当する累積パルス数は、1換算値あたりの累積パルス数の変化量を演算して求めた。押え高さに相当する累積パルス数は、予め換算値と累積パルス数とを対応付けたテーブルとしてROM63に格納しておいてもよい。
【0088】
足踏みペダル57に割り振られた中立領域、作動領域、押え領域及び縫製領域の大きさは、適用するミシンの機種や種類に応じて変更可能である。
【0089】
本発明の操作手段は、足踏みペダル57に限らず、作業者の膝で操作する膝ペダル等であってもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 ミシン
20 布押え装置
24 布押え部材
32 布押えモータ
55 ポテンショメータ
57 足踏みペダル
60,160 制御装置
61,161 入出力インターフェース(I/O)
62 CPU
63 ROM
64 RAM
65 不揮発性メモリ
66 操作パネル
76 布厚検知センサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工布を押える布押え部材と、
前記布押え部材を駆動する布押え駆動手段と、
前記布押え部材の位置を、布押え位置と上昇位置との間で操作可能な操作手段と、
前記操作手段の操作によって前記布押え駆動手段を制御する駆動制御手段と、
前記操作手段の操作量を検出する操作量検出手段とを備え、
前記駆動制御手段は、
前記操作量検出手段が前記操作手段の所定の操作量を検出した場合に、前記布押え部材を前記布押え位置と前記上昇位置との間の中間位置に移動するように制御するミシンの布押え装置において、
前記駆動制御手段は、
前記操作量検出手段が前記操作手段の前記所定以上の操作量を検出した場合に、前記布押え部材を前記中間位置と前記布押え位置との間で前記操作手段の操作量に応じて移動するように制御する
ことを特徴とするミシンの布押え装置。
【請求項2】
前記中間位置を設定可能な中間位置設定手段を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載のミシンの布押え装置。
【請求項3】
前記駆動制御手段は、
前記布押え部材を前記中間位置と前記布押え位置との間で前記操作手段の操作量に応じて移動させる場合に、
前記操作手段の操作量の増加に応じて、前記操作手段の一定の操作量に対する前記布押え部材の移動量を大きくするように制御する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のミシンの布押え装置。
【請求項4】
前記加工布の厚さである布厚位置を検知する布厚検知手段を更に備え、
前記中間位置設定手段は、前記布厚検知手段が検知した前記布厚位置と前記上昇位置との間に前記中間位置を設定することを特徴とする請求項2又は3に記載のミシンの布押え装置。
【請求項5】
前記駆動制御手段は、
前記操作量検出手段が前記操作手段の前記所定以上の操作量を検出した場合に、前記布押え部材を前記中間位置と前記布厚位置との間で前記操作手段の操作量に応じて移動するように制御する
ことを特徴とする請求項4に記載のミシンの布押え装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−152308(P2011−152308A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16355(P2010−16355)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】