説明

ミシン

【課題】押え足を上下動させる押え足上下動機構を利用して、目飛びの発生を防止する。
【解決手段】押え足上下動機構の駆動を制御する制御手段は、針棒の揺動位置(ステップS2)と、剣先と上糸ループが出合うタイミングにおける針棒の上下位置(ステップS3)とに調時して、押え足を所定高さまで上昇させて(ステップS4)、上糸ループの大きさを変更する。押え足を上昇させる高さを調整することで、剣先が上糸ループを確実捕捉できるように、当該上糸ループの大きさを最適にすることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押え足を上下動させる押え足上下動機構を備えたミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、押え足によって加工布を押圧する圧力を、ミシンの回転数に応じて自動的に可変する装置が記載されている。そして、押え足による圧力を、ミシンの回転数の上昇に応じて高くするように制御することで、ミシンの回転数の上昇に伴って大きくなる押え足のジャンピング(飛び跳ね現象)を防止し得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−19358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ミシンでは、針孔に上糸を挿通した縫針が加工布を突き刺し、その後、縫針が抜き出される過程で、縫針の針孔に上糸ループが形成される。上糸ループとは、針孔と加工布との間にある上糸によって形成される小さい糸輪のことである。そして、この上糸ループを釜の剣先が引っ掛けて捕捉することで、上糸ループに下糸が通され、これにより、加工布に上糸と下糸が交絡する縫い目が形成される。
【0005】
ところが、針棒を左右方向に揺動させる針棒揺動機構を備えたミシンでは、針棒の揺動位置、例えば、左基線位置(左針落ち位置)と右基線位置(右針落ち位置)とでは、釜の剣先と縫針とが出合うタイミングが異なる。ここで、出会いタイミングとは、ミシン正面から見て、剣先の先端が縫針と重なるタイミングのことをいう。このタイミングで剣先が上糸ループを捕捉するので、剣先と上糸ループが出会うタイミングと言ってもよい。通常、針棒が右基線位置にあるときの方が、左基線位置にあるときの方よりも出会いタイミングが早い。ここで、上糸ループの大きさは、加工布に刺さった縫針が上昇して剣先と出会うまでの縫針の上昇量によって定まる。従って、針棒の揺動位置によって形成される上糸ループの大きさが異なる。
【0006】
そのため、例えば、針棒の揺動位置によっては、上糸ループが大きくなりすぎて自重によって垂れ下がったり、又は倒れたりしてしまい、ループ形状を維持できなくなる場合がある。このような状態では、剣先が上糸ループを捕捉することができず、目飛びが発生する。つまり、縫い目が形成されない縫製不良が発生する。
【0007】
ここで、上糸ループの大きさは、上述のように、加工布に刺さった縫針が上昇して剣先と出会うまでの縫針の上昇量によって定まるが、このときには、加工布が上昇しないように押え足で押圧されていることが前提である。つまり、縫針と共に加工布が上昇してしまうと上糸ループは形成されない。そこで、本発明者は、このような点に着目し、縫針が上昇する際に、押え足が加工布を押圧しない状態にする、つまり、加工布が僅かに上昇できるようにすることで、上糸ループの大きさを調整することが可能であると考えた。そして、押え足を上下動させる押え足上下動機構を利用して、上糸ループの大きさを調整し、上記したような目飛びの発生を防止するミシンを開発した。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、押え足を上下動させる押え足上下動機構を利用して、目飛びの発生を防止するように構成したミシンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、請求項1記載の発明は、針孔を有する縫針を下端部に装着する針棒と、前記針棒を揺動させる針棒揺動機構と、前記針棒を上下動させる針棒上下動機構と、加工布を押圧する押え足と、前記押え足を上下動させる押え足上下動機構と、前記針孔に形成される上糸ループを捕捉するための剣先を有する釜であって、前記針棒の上下動と調時して回転する釜と、前記押え足上下動機構の駆動を制御する制御手段と、を備えたミシンにおいて、前記制御手段は、前記針棒の揺動位置と、前記剣先と前記上糸ループが出合うタイミングである前記針棒の上下位置とに調時して、前記押え足を所定高さまで上昇させることで前記上糸ループの大きさを変更するように前記押え足上下動機構を制御することを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記針棒上下動機構を駆動するための上軸と、前記上軸の回転位相を検出する回転位相検出手段とを備え、前記制御手段は、前記回転位相検出手段が検出した前記上軸の回転位相に応じて、前記押え足上下動機構を制御することを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、前記制御手段は、前記針棒の揺動位置が当該針棒の揺動可能範囲のうち所定の範囲内にあるときに、前記押え足上下動機構を制御することを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、前記針棒揺動機構は、第1揺動位置と第2揺動位置との間で前記針棒を揺動させるように構成され、前記剣先は、前記針棒が前記第1揺動位置における出合いタイミングとなる第1回転位置と、前記針棒が前記第2揺動位置における出合いタイミングとなる第2回転位置において、前記上糸ループを捕捉するように構成され、前記制御手段は、前記針棒が前記第1揺動位置であるときは、前記押え足を上昇させないことにより、当該押え足が前記加工布を押圧した状態を維持し、前記針棒が前記第2揺動位置であるときは、前記押え足を所定高さまで上昇させることにより、前記剣先が前記第2回転位置において捕捉する上糸ループの大きさを、前記第1回転位置において捕捉する上糸ループの大きさに近付けるように変更することを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、前記加工布の布厚を検出する布厚検出手段と、前記布厚検出手段により検出された布厚に応じて前記押え足を上昇させる高さを設定する設定手段とを備え、前記制御手段は、前記設定手段により設定された前記押え足の高さに基づいて、前記押え足上下動機構を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載のミシンによれば、針棒の揺動位置と、剣先と上糸ループが出合うタイミングである針棒の上下位置とに調時して、押え足を所定高さまで上昇させることで、上糸ループの大きさが変更される。そして、押え足を上昇させる高さを調整することで、剣先が上糸ループを確実に捕捉できるように、当該上糸ループの大きさを最適にすることが可能となる。これにより、押え足を上下動させる押え足上下動機構を利用して、目飛びの発生を防止することができる。
【0015】
請求項2記載のミシンによれば、請求項1記載の発明の効果に加え、針棒上下動機構を駆動するための上軸の回転位相に応じて、押え足上下動機構が制御されるので、押え足の上昇動作を、針棒の上下位置に一層正確に調時して行うことができる。従って、この押え足の上昇動作に応じて、一層精度良く上糸ループの大きさを変更することができ、目飛びの発生を一層防止することができる。
【0016】
請求項3記載のミシンによれば、請求項1または請求項2に記載の発明の効果に加え、針棒の揺動位置が当該針棒の揺動可能範囲のうち所定の範囲内にあるときに、押え足上下動機構が制御されるので、押え足の上昇動作を、針棒の揺動位置に一層正確に調時して行うことができる。従って、この押え足の上昇動作に応じて、一層精度良く上糸ループの大きさを変更することができ、目飛びの発生を一層防止することができる。
【0017】
請求項4記載のミシンによれば、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の発明の効果に加え、針棒が第1揺動位置であるときは、押え足が上昇せず、当該押え足が加工布を押圧した状態が維持される。一方、針棒が第2揺動位置であるときは、押え足が所定高さまで上昇し、これに伴い、剣先が第2回転位置において捕捉する上糸ループの大きさが、第1回転位置において捕捉する上糸ループの大きさに近付く。
【0018】
ここで、第1回転位置において剣先が捕捉する上糸ループの大きさが、当該剣先が捕捉し易い大きさとなるように調整しておけば、第2回転位置において剣先が捕捉する上糸ループの大きさも、第1回転位置において剣先が捕捉する上糸ループの大きさ、つまり、剣先が捕捉し易い大きさに近付く。これにより、針棒が第1揺動位置であるとき(剣先が第1回転位置であるとき)においても、第2揺動位置であるとき(剣先が第2回転位置であるとき)においても、剣先が上糸ループを捕捉し易くすることができ、押え足を上下動させる押え足上下動機構を利用して目飛びの発生を防止することを、一層確実に実現することができる。
【0019】
請求項5記載のミシンによれば、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の発明の効果に加え、加工布の布厚に応じて設定された押え足の高さに応じて、押え足上下動機構が制御されるので、押え足の上昇動作を、加工布の布厚も加味して行うことができる。従って、この押え足の上昇動作に応じて、一層精度良く上糸ループの大きさを変更することができ、目飛びの発生を一層防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態を示すものであり、ミシンの外観を示す斜視図
【図2】針板のうち貫通穴および角穴部分を示す平面図
【図3】ミシン内部の主要部の構成を透視して示す正面図
【図4】水平回転釜の平面図
【図5】下軸、水平回転釜およびその周辺部分を示す平面図
【図6】下軸、水平回転釜およびその周辺部分を示す正面図
【図7】針棒上下動機構の正面図
【図8】針棒が右基線位置の状態における針棒揺動機構の正面図
【図9】針棒が左基線位置の状態における針棒揺動機構の正面図
【図10】上軸の回転角度と針棒の上下位置との関係を示す図
【図11】一部を透視して示す針棒上下動機構の正面図
【図12】一部を透視して示す針棒上下動機構の左側面図
【図13】押え上げレバーが押え下げ位置である状態における針棒上下動機構の要部を示す正面図
【図14】押え上げレバーが押え上げ位置である状態における針棒上下動機構の要部を示す正面図
【図15】押え足が最上昇位置に上昇した状態における針棒上下動機構の要部を示す正面図
【図16】押え足が最下降位置に上昇した状態における針棒上下動機構の要部を示す正面図
【図17】ミシンの制御系の構成を示すブロック図
【図18】押え圧力制御の内容を示すフローチャート
【図19】上昇する縫針およびその周辺部分を示す図(その1)
【図20】上昇する縫針およびその周辺部分を示す図(その2)
【図21】上昇する縫針およびその周辺部分を示す図(その3)
【図22】上昇する縫針およびその周辺部分を示す図(その4)
【図23】上昇する縫針およびその周辺部分を示す図(その5)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、ミシンMは、ベッド部1と、ベッド部1の右側部分に立設された脚柱部2と、ベッド部1と対向するように脚柱部2の上部から左方へ延びるアーム部3とを有する。なお、ミシンMを操作するユーザが位置する側(後述する液晶ディスプレイ4や操作スイッチ類5などが設けられている側)を前方、その反対側を後方、脚柱部2が設けられている側を右方、その反対側(後述する頭部7側)を左方とする。
【0022】
脚柱部2の前面には、各種の操作画面や縫製情報を表示するための縦型の液晶ディスプレイ4が設けられている。アーム部3の前面の下部には、各種の操作スイッチ類5(縫製開始スイッチ5a、縫製終了スイッチ5b、自動糸掛準備スイッチ5c、押え足昇降スイッチ5d、自動糸掛開始スイッチ5eなど)が設けられている。
【0023】
アーム部3には、その上部側を開閉する開閉カバー6が取り付けられている。この開閉カバー6は、アーム部3の左右全長に亙って設けられ、アーム部3の上後端部に左右方向向きの軸回りに開閉可能に枢支されている。アーム部3の先端部には、頭部7が設けられている。頭部7の右側において、アーム部3の上部には糸収容凹部8が設けられ、その糸収容凹部8に糸立棒9が設けられている。糸立棒9に装着された糸供給源である糸駒10は、糸収容凹部8に左右横向き姿勢で収容される。この糸駒10から延びる上糸11は、糸調子器(図示せず)、糸取バネ(図示せず)、天秤28(図3参照)などの複数の糸掛部を経由して、針棒12(図3参照)の下端部に着脱可能(交換可能)に装着された縫針13に供給される。
【0024】
この縫針13は、その前面側(装着された状態でミシンMの前面側となる部分)に、当該縫針13の長手方向(上下方向)に沿う溝部13a(図19から図23参照)を有しており、この溝部13aの下端部に前後方向に貫通した針孔13b(図19から図23参照)を有する。糸駒10から延びる上糸11は、溝部13a側から針孔13bに挿通(糸通し)される。なお、針棒12(縫針13)の近傍には、上糸11を針孔13bに通すための糸通し装置(図示せず)などが設けられている。
【0025】
図3に示すように、針棒12は、頭部7内に設けられた針棒台14に支持されている。この針棒台14は、針棒12とほぼ平行に上下方向に伸長する形状をなし、針棒12の左側近傍に設けられている。この針棒台14は、その上端部が、軸方向が前後方向となる支軸14bによって、ミシン機枠に回動可能に支持されている。針棒台14は、上下に対向する一対のガイド部14aを有している。針棒台14は、これら一対のガイド部14aによって、針棒12を上下動可能に支持している。針棒台14が支軸14bを中心に左右方向に揺動すると、それに伴い針棒12も左右方向に揺動する。
【0026】
図1に示すように、ベッド部1には、針棒12の下方に位置して、ほぼ矩形状をなす針板15が設けられている。図2にも示すように、この針板15は、縫針13が貫通可能な貫通穴15aと、送り歯(図示せず)が出没可能な複数(この場合、7つ)の角穴15bとを有している。なお、送り歯は、加工布W(図19から図23参照)を前方又は後方に送るものである。貫通穴15aは、後述するように左右方向に揺動する針棒12(縫針13)の揺動方向である左右方向に対応して、左右方向に横長な若干湾曲した形状をなしている。角穴15bは、それぞれ前後方向に長い直線状をなしており、貫通穴15aを囲むように設けられている。
【0027】
この針板15の下側には、送り歯と、送り歯を針板15(角穴15b)に対して上下動および前後動させる送り機構(図示せず)と、上糸11および下糸(図示せず)を切断するための糸切断機構(図示せず)などが設けられている。
【0028】
ミシンMは、さらに、針棒上下動機構16(図3参照)、天秤上下動機構17(図3参照)、針棒揺動機構18(図7から図9参照)、釜駆動機構19(図3参照)、押え足上下動機構20(図11から図16参照)などを備えている。以下、これら各機構の構成について順に説明する。
【0029】
[針棒上下動機構,天秤上下動機構]
まず、針棒上下動機構16および天秤上下動機構17の構成について図3を参照しながら説明する。針棒上下動機構16は、針棒12を上下に往復動させる機構である。天秤上下動機構17は、天秤28を針棒12の上下動に調時して上下に揺動させる機構である。これら針棒上下動機構16および天秤上下動機構17は、ミシンモータ21、タイミングベルト22、上軸23、クランク部材24を有した構成である。そして、針棒上下動機構16は、さらに、クランクロッド25および針棒抱き26を有している。天秤上下動機構17は、さらに、天秤アーム27を有している。
【0030】
ミシンモータ21は、この場合、脚柱部2の内部に設けられている。このミシンモータ21の出力軸(図示せず)の右端部には、プーリ29が固定されている。上軸23は、アーム部3の内部において、その軸方向が左右方向となる姿勢で配設され、支持部材(図示せず)によって回転可能に支持されている。上軸23の右方には、プーリ30が固定されている。タイミングベルト22は、プーリ29とプーリ30との間に掛け渡されている。なお、上軸23の右端部には、操作用プーリ31が、脚柱部2の右端部から右方(外方)へ突出するようにして固定されている。この操作用プーリ31は、ユーザが上軸23を手動で回動操作するためのものである。また、プーリ30よりも左側部分には、当該上軸23の回転角度(回転位相)を検出するための回転角度検出機構32が設けられている。この回転角度検出機構32は、回転位相検出手段に相当する。
【0031】
この回転角度検出機構32は、扇形状をなし遮蔽板として機能する複数(この場合、3つ)の回転シャッター32aと、複数の微細な放射状のスリットを有するエンコーダディスク32bと、これら回転シャッター32aおよびエンコーダディスク32bの回転を光学的に検出する複数(この場合、4つ)のフォトインタラプタからなる検出器32cとを備えている。回転シャッター32aおよびエンコーダディスク32bは、上軸23に固定され、当該上軸23と一体的に回転する。検出器32cは、ミシン機枠(図示せず)に固定されている。この回転角度検出機構32により検出した上軸23の回転角度(回転位相)に基づいて、針棒12の上下位置が判別される。
【0032】
クランク部材24は、上軸23の左端部に固定され、当該上軸23と一体的に回転する。このクランク部材24は、上軸23に対して偏心した偏心部を有する。このクランク部材24の偏心部には、クランクロッド25の上端部が、軸方向が左右方向となる回動軸を介して回動可能に連結されている。針棒抱き26は、針棒12のうち一対のガイド部14aの間に位置する部分に固定されている。針棒抱き26は、針棒12に固定された部分から右方に伸びる軸部(図示せず)を有する。この針棒抱き26の軸部には、クランクロッド25の下端部が連結されている。クランクロッド25の下端部は、針棒抱き26の軸部に回動可能に、且つ、針棒抱き26(針棒12)の左右方向への揺動を許容するように連結されている。
【0033】
天秤アーム27の基端部は、クランク部材24の偏心部に、クランクロッド25の上端部を挟んで固定されている。天秤アーム27の先端部には、左方に伸びる軸部(図示せず)を有する。天秤28の基端部が、その軸部を中心に回動可能に連結されている。天秤28は、そのほぼ中央部が、支持部材33の先端部に、軸方向が左右方向となる揺動軸を中心に揺動可能に支持されている。支持部材33の基端部は、ミシン機枠に揺動可能に支持されている。天秤28の先端部には、上糸を挿通する貫通孔(図示せず)が設けられている。
【0034】
このような構成により、ミシンモータ21がプーリ29、タイミングベルト22、プーリ30を介して上軸23を回転させると、クランク部材24およびクランクロッド25を介して、針棒抱き26に固定された針棒12が上下に往復動し、この針棒12の上下動に調時して天秤28が上下に揺動する。即ち、針棒上下動機構16は、クランク部材24およびクランクロッド25によって、上軸23の回転を針棒12の上下方向の往復動に変換する。天秤上下動機構17は、クランク部材24および天秤アーム27によって、上軸23の回転を天秤28の上下方向の揺動に変換する。なお、この場合、上軸23の回転と針棒12の上下動および天秤28の上下動とは、1対1で対応している。即ち、上軸23が1回転すると、針棒12が1回上下動(往復動)し、天秤28が1回上下動(揺動)する。
【0035】
[釜駆動機構]
次に、釜駆動機構19の構成について図3から図6を参照しながら説明する。釜駆動機構19は、下糸が巻かれたボビン(図示せず)を着脱自在に装着する水平回転釜34を、上軸23の回転に調時して回転させる機構である。水平回転釜34は、ベッド部1の内部において針板15の下側に設けられ、外釜35と内釜(図示せず)とを有する。内釜にボビンが収容される。図4に示すように、外釜35は、外釜本体36と、この外釜本体36に固着される鉛直方向下向きの釜軸部37と、この釜軸部37に挿入されて外釜本体36を回転可能に支持する釜軸(図示せず)とを有する。外釜本体36には、当該外釜本体36の周方向に沿って先細状に延びる剣先38が設けられている。この剣先38は、縫針13の針孔13bに形成される上糸ループ11a(図19から図23参照)を捕捉するためのものである。上糸ループとは、針孔13bと加工布Wとの間にある上糸11によって形成される小さい糸輪のことである。
【0036】
外釜本体36は、釜軸部37を介して釜駆動機構19に連結されている。図3に示すように、釜駆動機構19は、上軸23の回転角度検出機構32よりも左側部分に設けられたプーリ39、タイミングベルト40、下軸41、下軸41の右端部に設けられたプーリ42、この下軸41の左端部に装着された下軸ギヤ43(図5および図6参照)、釜軸部37に固定された釜ギヤ44(図5および図6参照)などを備えている。
【0037】
下軸41は、ベッド部1の内部において、軸方向が左右方向となる姿勢で配設され、支持部材45(図5および図6参照)によって回転可能に支持されている。タイミングベルト40は、上軸23に固定され当該上軸23と一体的に回転するプーリ39と、下軸41の右端部に固定され当該下軸41と一体的に回転するプーリ42との間に掛け渡されている。なお、タイミングベルト40には、その途中部に設けられたテンショナープーリ46によって、適度な張力が付与されるようになっている。
【0038】
このような構成により、ミシンモータ21が上軸23を回転させると、プーリ39、タイミングベルト40、プーリ42を介して、下軸41が回転する。この場合、上軸23と下軸41とは1対1で回転する。即ち、上軸23が1回転すると下軸41も1回転する。
【0039】
図5および図6に示すように、下軸ギヤ43は、ねじれ方向が右方向となるはすば歯車からなる。下軸ギヤ43は、下軸41に固定されて、下軸41と一体的に回転する。釜ギヤ44は、ねじれ方向が右方向となるはすば歯車からなる。釜ギヤ44は、釜軸部37に固定されて、釜軸部37と一体的に回転する。下軸ギヤ43と釜ギヤ44は、それぞれの軸方向が直交した状態で噛み合わされている。これにより、下軸41の回転が釜軸部37に伝達されるようになっている。
【0040】
ミシンモータ21が下軸41を回転させると、これに伴って、下軸ギヤ43が回転する。そして、この下軸ギヤ43に噛合する釜ギヤ44が回転し、外釜35が回転する。この場合、下軸41が1回転すると外釜35が2回転するように、下軸ギヤ43と釜ギヤ44のギヤ比が設定されている。
【0041】
このような構成により、釜駆動機構19は、外釜35を、下軸41の回転により平面視にて反時計回り方向(図4参照)に回転させる。上軸23と下軸41は1対1で同期して回転するので、針棒12の上下動と同期して外釜35が回転する。よって、外釜35が縫製中に反時計回りに回転されることに伴い、当該外釜35に形成された剣先38は、縫針13の針孔13bに形成される上糸11のループ11a(図19から図23参照)を捕捉する。
【0042】
[針棒揺動機構]
次に、針棒12を所定の揺動位置へ針振り動作(揺動動作)させる針棒揺動機構18の構成について図7から図9を参照して説明する。この針棒揺動機構18は、針棒12を布送り方向(ミシンMの前後方向)と直交する方向(ミシンMの左右方向)に揺動させるものである。図7から図9に示すように、針棒揺動機構18は、上記した針棒台14に加え、さらに、揺動レバー47、針棒揺動パルスモータ48、揺動カム49などを備えて構成されている。
【0043】
揺動レバー47は、針棒台14とほぼ平行に上下方向に伸長する形状をなしている。揺動レバー47は、上下方向のほぼ中央部が、ミシン機枠に設けられた前後方向に延びる枢支ピン50によって揺動可能に枢支されている。揺動レバー47の下端部47aは、針棒台14の下端部に固定されたカム体51に当接する。また、揺動レバー47の上端部47bには、前後方向に延びるピン52が固定されている。このピン52は、針棒台14を左右方向に揺動させるための揺動カム49のカム面49aに当接する。
【0044】
針棒台14は、コイルバネ(図示せず)によって、その下端部が左向き方向に付勢されている。これにより、揺動レバー47の下端部47aとカム体51とが当接した状態、および、ピン52と揺動カム49のカム面49aとが当接した状態が保持されるように構成されている。揺動カム49は、ミシン機枠に回転可能に支持されている。揺動カム49は、その外周部にギヤを有しており、ミシン機枠に固定された針棒揺動パルスモータ48の駆動ギヤ48aに噛合している。これにより、針棒揺動パルスモータ48は、揺動カム49を回転させる。揺動カム49のカム面49aには、回動軸心からの距離が大きい半径拡大カム面49bと、回動軸心から距離が小さい半径縮小カム面49cとが連続して設けられている。
【0045】
図8に示すように、針棒揺動パルスモータ48の回転によって揺動カム49が回転し、揺動カム49の回動軸心からの距離が大きい半径拡大カム面49bにピン52が接触した状態では、ピン52が半径拡大カム面49bによって左方向に押され、揺動レバー47の上端部47bが左方向に移動する。これに伴い、揺動レバー47が枢支ピン50を中心に回動(図8では反時計回り方向に回動)し、揺動レバー47の下端部47aが右方向に移動する。揺動レバー47の下端部47aが右方向に移動することによって、カム体51が右方向に押され、針棒台14がコイルバネの付勢力に抗して右方向に移動する。これにより、針棒揺動機構18は、針棒12を右方向(図2に示す右基線位置R側)に揺動させる。
【0046】
図9に示すように、針棒揺動パルスモータ48の回転によって揺動カム49が回転し、揺動カム49の回動軸心から距離が小さい半径縮小カム面49cにピン52が接触した状態では、針棒台14を左方向に付勢するコイルバネの付勢力を受けて、揺動レバー47の下端部47aがカム体51に押されて左方向に移動し、揺動レバー47の上端部47bが右方向に移動する。即ち、揺動レバー47が枢支ピン50を中心に回動(図9では時計回り方向に回動)する。揺動レバー47の下端部47aがコイルバネの付勢力を受けて左方向に移動することで、針棒台14が左方向に移動する。これにより、針棒揺動機構18は、針棒12を左方向(図2に示す左基線位置L側)に揺動させる。
【0047】
このように、針棒揺動機構18は、針棒揺動パルスモータ48の回転量(針棒揺動パルスモータ48の出力パルス数)に応じて、針棒12(縫針13)を、第1揺動位置である右基線位置R(図2参照)と、第2揺動位置である左基線位置L(図2参照)との間で揺動させる。この場合、左基線位置Lと右基線位置Rとの間隔T(針棒12の振り幅)は約9mmに設定されている。また、左基線位置Lと右基線位置Rとの中間の揺動位置として、中基線位置C(図2参照)が設定されている。
【0048】
針棒揺動機構18によって針棒12を左右方向に揺動させることにより、ミシンMは、例えばジグザグ模様の縫製が可能となる。なお、ミシンMは、中基線位置Cに針棒12を移動させて保持した状態で当該針棒12を上下動させることにより、直線模様を縫製することができる。また、ミシンMは、中基線位置Cのみならず、左基線位置L、或いは、右基線位置Rに針棒12を移動させて保持した状態で当該針棒12を上下動させることにより、直線模様を縫製することも可能である。
【0049】
次に、この針棒12の上下位置と、針棒12の揺動位置(この場合、右基線位置Rおよび左基線位置L)と、剣先38と縫針13が出合うタイミング、即ち、剣先38が上糸ループ11aを捕捉するタイミングとの関係について説明する。図10は、上軸23の回転角度(回転位相)と針棒12の上下位置との関係を示す図であり、所謂、針棒曲線を示す図である。
【0050】
図10に示すように、この場合、上軸23が1回転(360度回転)する間に針棒12が1回上下動する。ここで、針棒12が右基線位置Rである場合では、剣先38は、右側出合いタイミングRTで上糸11のループ11aと出合い、このときの外釜本体36の回転位置(第1回転位置に相当)において当該上糸ループ11aを捕捉する。この右側出合いタイミングRTにおける上軸23の回転角度は、約200度である。一方、針棒12が左基線位置Lである場合では、剣先38は、左側出合いタイミングLTで上糸11のループ11aと出合い、このときの外釜本体36の回転位置(第2回転位置に相当)において当該上糸ループ11aを捕捉する。この左側出合いタイミングLTにおける上軸23の回転角度は、約210度である。
【0051】
なお、外釜本体36、つまり剣先38は、上軸23が1回転する間、つまり針棒12が1回上下動する間に2回転する。そのうち、1回目の回転では剣先38は上糸ループ11aを捕捉することなく空転し、この間に加工布Wの1針分の布送りが行われる。2回目の回転で剣先38は上糸ループ11aを捕捉する。
【0052】
[押え足上下動機構]
次に、押え足上下動機構20の構成について図11から図16を参照しながら説明する。押え足上下動機構20は、押え棒63の下端に装着された押え足53を上下方向に往復動(昇降)させるものである。図11および図12に示すように、押え足上下動機構20は、針棒12の後側に配設されている。この押え足上下動機構20は、押え棒63、押え足53、ラック形成部材54、止め輪55、押え足昇降パルスモータ56、駆動ギヤ56a、中間ギヤ57、ピニオン58、押え棒抱き59、押えバネ60、押え上げレバー61、ポテンショメータ62などを備えて構成されている。
【0053】
押え棒63は、ミシン機枠に昇降可能に支持されている。押え足53は、押え棒63の下端部分に着脱可能(交換可能)に装着されている。ラック形成部材54は、押え棒63の上端部分に昇降可能に設けられている。止め輪55は、押え棒63の上端に固定されている。押え足昇降パルスモータ56は、押え棒63を昇降させるために、ラック形成部材54のすぐ右側においてミシン機枠に固定されている。駆動ギヤ56aは、押え足昇降パルスモータ56の出力軸に固定され当該出力軸と一体的に回転するようになっている。中間ギヤ57は、駆動ギヤ56aに噛合しており、当該駆動ギヤ56aの回転に応じて回転する。ピニオン58は、中間ギヤ57に一体的に形成され、ラック形成部材54と噛合している。
【0054】
押え棒抱き59は、押え棒63の高さ方向(図では上下方向)の中段部に固定されている。押えバネ60は、押え棒63のうちラック形成部材54と押え棒抱き59との間の部分に設けられている。押え上げレバー61は、押え足昇降パルスモータ56による押え棒63の昇降動作とは独立して、押え棒63を昇降させる操作(ユーザによる手動操作)を可能とするものである。また、押え上げレバー61には、当該押え上げレバー61を正面視にて時計回り方向に付勢するコイルバネ(図示せず)が設けられている。ポテンショメータ62は、押え棒63のすぐ左側に設けられている。
【0055】
中間ギヤ57は、小径のピニオン58を一体的に有している。そのピニオン58は、ラック形成部材54に噛合している。ポテンショメータ62は、この場合、回転式ポテンショメータであり、その回転量に応じて変化する抵抗値に基づいて、押え棒63の昇降位置(上下位置)を検知する。ポテンショメータ62の回動軸から右方向に延びるレバー部62aは、例えばコイルバネ(図示せず)によって、押え棒抱き59の左方に突出する突出部59aの上面側に当接するように付勢されている。
【0056】
これにより、押え棒抱き59の昇降移動に応じてレバー部62aが回動し、このレバー部62aの回動角度に応じてポテンショメータ62の抵抗値が変化する。後述する制御装置65は、その抵抗値に応じた電圧に基づいて、押え棒63(押え足53)の上下位置を検出する。また、制御装置65は、押え足53が針板15の上面に当接する位置におけるポテンショメータ62の抵抗値を、加工布Wの布厚検出用の基準値として設定している。制御装置65は、この基準値とポテンショメータ62の抵抗値とを比較することにより、押え足53の高さ、即ち、加工布Wの布厚を検出する。
【0057】
押え上げレバー61の一端部は、ミシン機枠に固着された枢支ピン64に回動可能に支持されている。押え上げレバー61の他端部には、手動操作のための操作部61aが設けられている。その操作部61aが手動操作されることで、押え上げレバー61は、下方に回動した押え下げ位置(図13参照)と、上方に回動した押え上げ位置(図14参照)との間で回動可能となっている。この押え上げレバー61の回動に伴い、押え棒63が昇降移動すると共に、この押え棒63に装着された押え足53も昇降移動する。
【0058】
押え上げレバー61は、押え棒抱き59に一体的に設けられたカム従動子59bに当接するカム面61bを有する。図13に示す押え下げ位置においては、押え上げレバー61のボス面61cとカム従動子59bとの間に上下方向に僅かに隙間がある状態となる。この状態では、押え足53は、針板15に当接している。また、図14に示す押え上げ位置においては、押え上げレバー61のカム面61bとカム従動子59bが当接した状態となる。この状態では、押え棒63は、針板15から上昇した位置にある。このとき、押え足昇降パルスモータ56は、回転を停止した状態で励磁されているので、ラック形成部材54の上下位置は保持される。従って、押えバネ60は圧縮され、その弾性力によってカム従動子59bはカム面61bに押圧される。そのとき、その押圧力によって、押え上げレバー61が反時計回り方向に押圧されるので、押え上げレバー61は、その位置(押え上げ位置)に維持される。
【0059】
次に、押え足昇降パルスモータ56の駆動による押え棒63の昇降動作について、図15および図16を参照して説明する。
押え足昇降パルスモータ56が駆動されると、その駆動力が中間ギヤ57、ピニオン58に伝達されてラック形成部材54を昇降移動させる。図15に示すように、ラック形成部材54を上昇させたときには、そのラック形成部材54の上端面が押え棒63の上端に固定された止め輪55を上昇させる。そのため、押え足53も上昇する。なお、図15における押え足53の上昇位置は、図14における上昇位置(押え上げレバー61による上昇位置)よりも高い位置であり、この図15に示す上昇位置が最上昇位置である。
【0060】
次に、図15に示す最上昇位置から、押え足昇降パルスモータ56を駆動してラック形成部材54を下降させると、図16に示すように、ラック形成部材54の下端面に当接する押えバネ60が下方に押圧される。そのため、押え棒63に固定されている押え棒抱き59も下方に押圧され、押え足53は針板15に当接する最下降位置に押圧される。
【0061】
次に、押え足53を押え上げレバー61の手動操作によって昇降させる場合の動作について説明する。この動作は、押え上げレバー61を手動操作して押え足53を上昇位置にした状態(図14に示す状態)から、押え足昇降パルスモータ56を駆動して押え上げレバー61のカム面61bとカム従動子59bとの係合を解除させて、押え上げレバー61を押え下げ位置にした状態(図13に示す状態)にすると共に、押え足53も最下降位置に下降させる動作である。
【0062】
まず、図14における状態から、押え足昇降パルスモータ56を駆動して、ラック形成部材54を図15に示す最上昇位置に上昇させる。すると、カム従動子59bと押え上げレバー61のカム面61bとが離間するので、押え上げレバー61は、当該押え上げレバー61を時計回り方向に付勢するコイルバネにより、図13に示す押え下げ位置に回動する。その後、ラック形成部材54が下降し、これに伴い、押え足53も下降する。
【0063】
押え足53による加工布Wの押え位置(下降位置)については、加工布Wの布厚などに応じた位置を予め中間位置(最上昇位置と最下降位置との間の位置)としてRAM68に設定しておき、その設定値に基づいて押え足昇降パルスモータ56を駆動することにより、布厚に応じた押え位置とすることもできる。この場合、ポテンショメータ62によって検出された布厚に基づいて、押え足昇降パルスモータ56を駆動し、設定された押え位置に押え足53(押え棒63)が到達した時点で、押え足昇降パルスモータ56の駆動を停止させるように構成する。
【0064】
なお、押え足53による押え圧(加工布Wを押える圧力)は、当該押え足53の押え位置に応じて、さらに、当該押え足53によって押圧される加工布Wの布厚に応じて定まる。即ち、押え足53の押え位置が同じであっても、加工布Wの布厚が厚ければ、押え足53による押え圧は大きくなり、加工布Wの布厚が薄ければ、押え圧は小さくなる。つまり、押え足53による加工布Wの押え圧は、押え足53の押え位置が同じであっても加工布Wの布厚に応じて異なる場合がある。
【0065】
次に、ミシンMの制御系の構成について図17を参照しながら説明する。
ミシンMの動作全般を制御する制御装置65(制御手段に相当)は、CPU66とROM67とRAM68とを含むマイクロコンピュータと、入力インターフェース69と、出力インターフェース70とを有する。これらCPU66、ROM67、RAM68、入力インターフェース69、出力インターフェース70は、データバス65aによって相互に接続されている。入力インターフェース69には、各種の操作スイッチ類5、検出器32c、ポテンショメータ62などが電気的に接続されている。出力インターフェース70には、液晶ディスプレイ4、ミシンモータ21、針棒揺動パルスモータ48、押え足昇降パルスモータ56などが、それぞれ駆動回路71〜74を介して電気的に接続されている。
【0066】
ROM67には、ミシンMの動作を制御するための各種の制御プログラムが格納されている。この場合、制御装置65は、制御プログラムとして、縫製動作のための縫製制御プログラム、液晶ディスプレイ4に各種情報を表示させるための表示制御プログラム、ミシンモータ21、針棒揺動パルスモータ48、押え足昇降パルスモータ56などの駆動を制御するための駆動制御プログラムなどを格納している。
【0067】
上述の構成のミシンMの制御装置65は、縫製動作中に、針棒12の揺動位置と、剣先38と上糸ループ11aが出合うタイミングにおける針棒12の上下位置とに調時して、押え足53を所定高さまで上昇させることで、上糸ループ11aの大きさを変更するように構成されている。次に、この押え足53の上下動制御の内容について、図18に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0068】
制御装置65は、縫製動作中において(ステップS1にてYES)、針棒12の基線位置(揺動位置)が所定の閾値tよりも左側か否かを判断する。ここで、所定の閾値tは、図2に示すように、右基線位置Rから左方に7mmの位置、換言すれば、左基線位置Lから右方に2mmの位置とする。この場合、制御装置65は、針棒揺動機構18を駆動する針棒揺動パルスモータ48のパルス数(パルスのカウント値)と、縫針13の基線位置とを対応付けて記憶しており、縫製動作中に針棒揺動パルスモータ48に出力したパルス数に基づいて、針棒12の基線位置を判断する。
【0069】
制御装置65は、針棒12の基線位置が所定の閾値tよりも右側であると判断すると(ステップS2にてNO)、ステップS1に移行する。一方、制御装置65は、針棒12の基線位置が所定の閾値tよりも左側であると判断すると(ステップS2にてYES)、ステップS3に移行する。なお、このステップS2において、針棒12の基線位置と閾値tが一致する場合は、ステップS3に移行するが、ステップS1に移行するようにしてもよい。
【0070】
制御装置65は、ステップS3に移行すると、針棒12が上昇して加工布Wから抜けてから再び下降して加工布Wを突き刺すまでに行われる送り機構による布送りが終了したか否かを判断する。この場合、上軸23の回転角度が所定角度(例えば140度)を超えていれば、布送りは終了している。そのため、制御装置65は、上軸23の回転角度が所定角度(140度)を超えているか否かに基づいて、布送りが終了したか否かを判断する。
【0071】
制御装置65は、送り機構による布送りが終了したか否かを判断し続け(ステップS3にてNO)、布送りが終了したと判断すると、即ち、上軸23の回転角度が所定角度(140度)を超えたと判断すると(ステップS3にてYES)、ステップS4に移行する。
【0072】
制御装置65は、ステップS4に移行すると、上軸23の回転角度が所定角度(例えば針棒12の上下位置が最下点となる角度である180度)になるまでに、押え足53を所定高さまで上昇させる。なお、この所定高さの値については後述する。上軸23の回転角度が所定角度(180度)を超えると、針棒12が最下点から上昇し始め、これに伴い、針板15の下方において縫針13の針孔13bと加工布Wとの間にある上糸11によって上糸ループ11aが形成され始める。そのため、制御装置65は、針棒12が最下点から上昇し始めるまでに、押え足53を所定高さまで上昇させる。なお、制御装置65は、押え足53を上昇させる前における当該押え足53の高さ位置をRAM68に記憶するようになっている。
【0073】
次に、制御装置65は、ステップS5に移行して、上軸23の回転角度が所定角度(例えば210度)を超えたか否かを判断する。なお、210度は、上述したように、針棒12の揺動位置が左基線位置Lであるときに、剣先38が左側出合いタイミングLT(第2回転位置)において上糸ループ11aを捕捉する角度である。また、制御装置65は、上軸23の回転角度が所定角度(210度)を超えたか否かを判断することで、この上軸23の回転に調時する針棒12の上下位置が所定の位置(左側出合いタイミングLTに対応する針棒12の上下位置)に到達したか否かを判断する。制御装置65は、上軸23の回転角度が所定角度(210度)を超えたか否かを判定し続け(ステップS5にてNO)、上軸23の回転角度が所定角度(210度)を超えたと判断すると(ステップS5にてYES)、ステップS6に移行する。
【0074】
制御装置65は、ステップS6に移行すると、上軸23の回転角度が所定角度(例えば、縫針13が加工布Wから抜ける直前の角度である250度)になるまでに、押え足53を元の位置、即ち、ステップS4にて記憶した高さ位置、つまり、押え足53を上昇させる前の高さ位置まで下降させる。これにより、縫針13が加工布Wから完全に抜ける前に、押え足53が加工布Wを押圧した状態にする。
【0075】
制御装置65は、縫製動作中は、上記したステップS1〜ステップS6の処理を繰り返す。そして、縫製動作を終了すると(ステップS1にてNO)、制御装置65は、この押え足53の上下動制御を終了する。
【0076】
要するに、制御装置65は、針棒12が閾値tよりも左基線位置L側にある場合(ステップS2にてYES)には、加工布Wの布送りが終了した後(ステップS3にてYES)に、押え足53を所定高さまで上昇させる(ステップS4)。布送り終了後においては、押え足53によって加工布Wを押圧した状態を維持する必要がなく、上糸ループ11aの大きさの調整のために押え足53を上昇させても縫製動作に影響はないからである。そして、制御装置65は、針棒12の上下位置が最下点(上軸23の回転角度が180度)となるまでに、押え足53を所定高さまで上昇させる(ステップS4)。即ち、制御装置65は、針棒12が最下点から上昇し始めるまで、つまり、上糸ループ11aが形成され始めるまでに、押え足53を所定高さまで上昇させる。このように押え足53を上昇させることで、後述するように、形成される上糸ループ11aの大きさが変更される。
【0077】
また、制御装置65は、剣先38が上糸ループ11aを捕捉した後(ステップS5にてYES)に、押え足53を元の位置まで下降させる(ステップS6)。剣先38が上糸ループ11aを捕捉した後においては、押え足53を上昇させることによる上糸ループ11aの大きさの調整は不要であり、さらに、縫針13が加工布Wから抜ける前に当該加工布Wを押え足53によって押圧した方が、縫針13が抜け易くなり好ましいからである。また、次の布送りに備えて、押え足53によって加工布Wを押圧した状態にする必要があるからである。
【0078】
次に、上記のステップS4における押え足53の上昇量と、その上昇量に応じて形成される上糸ループ11aの大きさとの関係について、図19から図23を参照して説明する。ここで、剣先38が上糸ループ11aを捕捉するためには、上糸ループ11aは縫針13の後側(図19から図23では右側)に形成される必要がある。このため、図示しない内釜には、縫針13の前側(図19から図23では左側)に上糸ループ11aが形成されるのを防止するガイド壁部が設けられている。
【0079】
図19は、押え足53の上昇量を0とした場合、すなわち、押え足53を上昇させずに、そのまま元の位置に維持した場合を示している。この場合、押え足53によって加工布Wが針板15の上面に押圧された状態が維持されることから、加工布Wが縫針13とともに上昇しない。そのため、針板15の下に残る上糸11の長さが長くなり、形成される上糸ループ11aが大きくなる。このような状態では、上糸ループ11aは、自重によって垂れ下がるように倒れてしまい、ループ形状を維持できなくなる。従って、剣先38が、上糸ループ11aを捕捉できない場合が生じる。
【0080】
これに対して、図20は押え足53の上昇量を例えば0.5mmとした場合を示し、図21は押え足53の上昇量を例えば0.75mmとした場合を示している。これらの場合、押え足53が上昇した分、加工布Wが縫針13に引っ張られるようにして上昇する。そのため、針板15の下に残る上糸11の長さが、押え足53を上昇させない場合よりも短くなり、その分、形成される上糸ループ11aが小さくなる。これにより、上糸ループ11aは、自重によって垂れ下がるように倒れることがなく、ループ形状を適切に維持できる。従って、剣先38が、上糸ループ11aを捕捉し易くなる。
【0081】
なお、図22は押え足53の上昇量を例えば1.0mmとした場合を示し、図23は押え足53の上昇量を例えば1.25mmとした場合を示している。これらの場合では、押え足53の上昇量が大き過ぎることから、針板15の下に残る上糸11の長さが短くなり過ぎてしまい、形成される上糸ループ11aが必要以上に小さくなる。従って、上糸ループ11aを捕捉できない場合が生じ得る。
ところで実際には、上糸11の種類や太さ、縫針13の太さ、加工布Wの材質等の組み合わせによって、押え足53の上昇量の最適値が異なる。この為、ミシンMには、実験的に求められた平均的な上昇量が、所定高さとして設定されている。また、ユーザが上昇量を適宜設定できるような構成にしてもよい。
【0082】
以上に説明したように本実施形態によれば、制御装置65は、針棒12の基線位置が所定の閾値tよりも左側か否か(ステップS2)と、上軸23の回転角度に基づいて取得された針棒12の上下位置(ステップS3)とに調時して、押え足53を所定高さまで上昇させて(ステップS4)、上糸ループ11aの大きさを変更する。ここで、押え足53を上昇させる高さを調整することで、剣先38が上糸ループ11aを確実に捕捉できるように、当該上糸ループ11aの大きさを最適にすることが可能となる。これにより、押え足53を上下動させる押え足上下動機構20を利用して、目飛びの発生を防止することができる。
【0083】
また、制御装置65は、針棒上下動機構16を駆動するための上軸23の回転角度(回転位相)を回転角度検出機構32によって検出し、検出した上軸23の回転角度に応じて、押え足上下動機構20を制御する。これにより、押え足53の上昇動作を、針棒12の上下位置に一層正確に調時して行うことができる。従って、この押え足53の上昇動作に応じて、一層精度良く上糸ループ11aの大きさを変更することができ、目飛びの発生を一層防止することができる。
【0084】
また、制御装置65は、針棒12の揺動位置が当該針棒12の揺動可能範囲である右基線位置Rと左基線位置Lとの間の範囲のうち、所定の範囲内、つまり、所定の閾値tよりも左側の範囲内にあるときに、押え足上下動機構20を制御する。即ち、制御装置65は、押え足53の上昇動作を、針棒12が左基線位置L側の範囲内にある場合、つまり、上糸ループ11aが大きくなり過ぎてしまうおそれがある場合にのみ行う。このように、制御装置65は、針棒12の揺動位置に一層正確に調時して押え足53の上下動作を行う。従って、このような正確な押え足53の上昇動作に応じて、一層精度良く上糸ループ11aの大きさを変更することができ、目飛びの発生を一層防止することができる。
【0085】
また、制御装置65は、針棒12が第1揺動位置である右基線位置Rに揺動しているとき(ステップS2にてNO)は、押え足53を上昇させず、当該押え足53が加工布Wを押圧した状態を維持する。一方、制御装置65は、針棒12が第2揺動位置である左基線位置Lに揺動しているとき(ステップS2にてYES)は、押え足53を所定高さまで上昇させる(ステップS4)。これに伴い、剣先38が第2回転位置(左側出合いタイミングLTにおいて剣先38が上糸ループ11aに出合う回転位置)において捕捉する上糸ループ11aの大きさが、第1回転位置(右側出合いタイミングRTにおいて剣先38が上糸ループ11aに出合う回転位置)において捕捉する上糸ループ11aの大きさに近付く。
【0086】
ここで、第1回転位置において剣先38が捕捉する上糸ループ11aの大きさが、当該剣先38が捕捉し易い大きさとなるように調整しておけば、第2回転位置において剣先38が捕捉する上糸ループ11aの大きさも、第1回転位置において剣先38が捕捉する上糸ループ11aの大きさ、つまり、剣先38が捕捉し易い大きさに近付く。これにより、針棒12が右基線位置Rであるとき(剣先38が第1回転位置であるとき)においても、針棒12が左基線位置Lであるとき(剣先38が第2回転位置であるとき)においても、剣先38が上糸ループ11aを捕捉し易くすることができ、押え足53を上下動させる押え足上下動機構20を利用して目飛びの発生を防止することを、一層確実に実現することができる。
【0087】
なお、本発明は、上述した一実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な拡張、変更が可能である。
【0088】
制御装置65は、ポテンショメータ62(布厚検出手段に相当)によって加工布Wの布厚を検出し、ポテンショメータ62によって検出された加工布Wの布厚に応じて押え足53を上昇させる高さを設定する設定手段として機能するように構成するとよい。そして、制御装置65は、針棒12の揺動位置、剣先38と上糸ループ11aが出合うタイミングにおける針棒12の上下位置、針棒上下動機構16を駆動するための上軸23の回転角度(回転位相)に加えて、さらに、加工布Wの布厚に応じて設定された押え足53の高さに基づいて、押え足上下動機構20を制御するように構成するとよい。これにより、押え足53の上昇動作を、加工布Wの布厚も加味して行うことができる。従って、この押え足の上昇動作に応じて、一層精度良く上糸ループの大きさを変更することができ、目飛びの発生を一層防止することができる。なお、布厚の検出は、縫製動作の最初に検出するようにしてもよいし、縫製動作を行いながら適宜検出するようにしてもよい。
【0089】
上述の実施形態では、針棒12が左基線位置Lにおける左側出合いタイミングLT(第2回転位置)において剣先38が捕捉する上糸ループ11aの大きさを、針棒12が右基線位置Rにおける右側出合いタイミングRT(第1回転位置)において剣先38が捕捉する上糸ループ11aの大きさに近付けるように調整する例を示した。本発明は、これに限られるものではなく、例えば、針棒12が左基線位置Lにおける上糸ループ11aの大きさを基準に、針棒12が右基線位置Rにおける上糸ループ11aの大きさを調整するようにしてもよい。また、中基線位置Cにおける上糸ループ11aの大きさを基準に、針棒12が左基線位置Lにおける上糸ループ11aの大きさ、および、針棒12が右基線位置Rにおける上糸ループ11aの大きさの双方を調整するようにしてもよい。また、左基線位置L、右基線位置R、中基線位置Cのそれぞれにおける上糸ループ11aの大きさを、それぞれ独立して調整するようにしてもよい。
【0090】
針棒12の揺動位置を判断するための閾値t(ステップS2参照)は、少なくとも中基線位置Cよりも左側であれば、適宜変更可能である。
また、針棒12の揺動位置の判断(ステップS2の判断)は、針棒12の針振り量(揺動量)を制御するための針振りデータと、加工布Wの送り量(送り歯の移動量)を制御するための送りデータとを含む縫製データのうち、制御装置65が、その時点で読み込んでいる針振りデータの値に基づいて判断するように構成してもよい。
ステップS4における押え足53の上昇量は、所望の上糸ループ11aの大きさに応じて、適宜変更して実施することができる。
【0091】
布送りの終了を判断するための上軸23の回転角度(ステップS3参照)は、送り歯による加工布Wの送り量(この場合、最大4〜5mm)に応じて変更可能である。なお、布送りが終了していれば、押え足53で加工布Wを押圧した状態を維持する必要がない。そのため、布送りが終わった直後(この場合、上軸23の回転角度が140度になる前の角度)から押え足53を上昇させるようにしてもよい。
【0092】
針棒12の揺動範囲(振り幅)は適宜変更可能である。この場合、針棒12の揺動範囲によっても上糸ループ11aの大きさが異なるようになる。そのため、制御装置65は、針棒12の揺動範囲にも応じて、押え足上下動機構20による押え足53の上昇高さを制御するように構成するとよい。
【0093】
制御装置65は、上軸23の回転速度に応じて、押え足上下動機構20による押え足53の上昇高さを制御するようにしてもよい。また、制御装置65は、上糸11の種類やミシンMを駆動するための各種パラメータに応じて、押え足上下動機構20による押え足53の上昇高さを制御するようにしてもよい。
釜駆動機構19が備える釜は、水平回転釜34に限られるものではなく、垂直回転釜でもよい。
【符号の説明】
【0094】
M ミシン
11a 上糸ループ
12 針棒
13 縫針
13b 針孔
16 針棒上下動機構
18 針棒揺動機構
20 押え足上下動機構
23 上軸
32 回転角度検出機構(回転位相検出手段)
34 水平回転釜(釜)
38 剣先
53 押え足
62 ポテンショメータ(布厚検出手段)
65 制御装置(制御手段、設定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
針孔を有する縫針を下端部に装着する針棒と、
前記針棒を揺動させる針棒揺動機構と、
前記針棒を上下動させる針棒上下動機構と、
加工布を押圧する押え足と、
前記押え足を上下動させる押え足上下動機構と、
前記針孔に形成される上糸ループを捕捉するための剣先を有する釜であって、前記針棒の上下動と調時して回転する釜と、
前記押え足上下動機構の駆動を制御する制御手段と、
を備えたミシンにおいて、
前記制御手段は、
前記針棒の揺動位置と、前記剣先と前記上糸ループが出合うタイミングである前記針棒の上下位置とに調時して、前記押え足を所定高さまで上昇させることで前記上糸ループの大きさを変更するように前記押え足上下動機構を制御することを特徴とするミシン。
【請求項2】
前記針棒上下動機構を駆動するための上軸と、
前記上軸の回転位相を検出する回転位相検出手段とを備え、
前記制御手段は、前記回転位相検出手段が検出した前記上軸の回転位相に応じて、前記押え足上下動機構を制御することを特徴とする請求項1記載のミシン。
【請求項3】
前記制御手段は、前記針棒の揺動位置が当該針棒の揺動可能範囲のうち所定の範囲内にあるときに、前記押え足上下動機構を制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のミシン。
【請求項4】
前記針棒揺動機構は、第1揺動位置と第2揺動位置との間で前記針棒を揺動させるように構成され、
前記剣先は、前記針棒が前記第1揺動位置における出合いタイミングとなる第1回転位置と、前記針棒が前記第2揺動位置における出合いタイミングとなる第2回転位置において、前記上糸ループを捕捉するように構成され、
前記制御手段は、
前記針棒が前記第1揺動位置であるときは、前記押え足を上昇させないことにより、当該押え足が前記加工布を押圧した状態を維持し、
前記針棒が前記第2揺動位置であるときは、前記押え足を所定高さまで上昇させることにより、前記剣先が前記第2回転位置において捕捉する上糸ループの大きさを、前記第1回転位置において捕捉する上糸ループの大きさに近付けるように変更することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載のミシン。
【請求項5】
前記加工布の布厚を検出する布厚検出手段と、
前記布厚検出手段により検出された布厚に応じて前記押え足を上昇させる高さを設定する設定手段とを備え、
前記制御手段は、前記設定手段により設定された前記押え足の高さに基づいて、前記押え足上下動機構を制御することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載のミシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−172801(P2011−172801A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40265(P2010−40265)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】