説明

ミリチャンネル冷却を有するヒートシンク

【課題】組立、分解、又は整備時に冷却剤がエレクトロニクス上に漏れるのを防ぎ、冷却向上のため熱拡散効果の利用を可能にする改良型ヒートシンクを提供する。
【解決手段】ヒートシンク50は、熱伝導性材料から形成された下方蓋12、上方蓋14、及び本体16を含む。本体は、下方及び上方蓋の間に配設されて封着され、冷却剤を導入するように構成された入口マニホルド30と、冷却剤を排出するように構成された出口マニホルド32とを画成する。入口及び出口マニホルドは交互配置されると共に、円形又は螺旋状配列で配設され、ミリチャンネル34が本体又は蓋に形成され、半径方向配列で配設され、冷却剤を入口マニホルドから導入すると共に、冷却剤を出口マニホルドに送給するように構成される。ミリチャンネル34と入口及び出口マニホルドは、電子素子パッケージの上側及び下側接触面の一方を冷却するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してパワーエレクトロニクスに関し、より詳細には、パワーエレクトロニクス用の先進的な冷却に関する。
【背景技術】
【0002】
中圧工業用駆動装置、石油・ガス用周波数変換器、トラクション駆動装置、フレキシブル交流送電(FACT)装置のような大容量電力変換器、並びに他の大容量電力変換装置、例えば整流器及びインバータは、一般的に液体冷却を有するプレスパック型パワー素子を含む。パワー素子の非限定的な例としては、集積化ゲート整流型サイリスタ(IGCT)、ダイオード、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、サイリスタ、及びゲートターンオフサイリスタ(GTO)が挙げられる。プレスパック素子は高電力用途において特に有利であり、プレスパックの利点としては、両面冷却と、障害時のプラズマ爆発がないこととが挙げられる。
【0003】
プレスパック素子を用いて大容量電力変換回路を構築するには、ヒートシンクとプレスパック素子とを挟み込んでスタックを形成するのが一般的である。最先端の電力変換器スタックは、一般的に大径の冷却チャンネルを有する従来の液冷ヒートシンクを利用する。用途によっては、各プレスパック素子と従来の液冷ヒートシンクの間にサーマルグリース層が設けられる。他の用途では、少なくとも幾つかの層が、それらの間のサーマルグリースなしで、単に圧力によって保持される。この構成は、大きな接触抵抗を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7569426B2号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、組立、分解、又は整備時に冷却剤がエレクトロニクス上に漏れるのを防ぐ改良型ヒートシンク設計を提供することが望ましい。更に、パワーエレクトロニクスの冷却向上のため、熱拡散効果の利用を可能にする改良型ヒートシンク設計を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様は、少なくとも1つの電子素子パッケージを冷却するためのヒートシンクにある。電子素子パッケージは、上側接触面及び下側接触面を含む。ヒートシンクは、少なくとも1種の熱伝導性材料から形成された下方蓋、上方蓋、及び本体を含む。本体は、下方及び上方蓋の間に配設されて封着され、冷却剤を導入するように構成された少なくとも1つの入口マニホルドと、冷却剤を排出するように構成された少なくとも1つの出口マニホルドとを画成する。入口及び出口マニホルドは交互配置されると共に、円形又は螺旋状配列で配設される。複数のミリチャンネルが本体に形成され、半径方向配列で配設され、冷却剤を入口マニホルドから導入すると共に、冷却剤を出口マニホルドに送給するように構成される。ミリチャンネルと入口及び出口マニホルドは、更に、電子素子パッケージの上側及び下側接触面の一方を冷却するように構成される。
【0007】
本発明の別の態様は、電子素子パッケージを冷却するためのヒートシンクにある。ヒートシンクは、少なくとも1種の熱伝導性材料から形成された蓋及び本体を含む。本体は、蓋に封着され、冷却剤を導入するように構成された少なくとも1つの入口マニホルドと、冷却剤を排出するように構成された少なくとも1つの出口マニホルドとを画成する。入口及び出口マニホルドは交互配置されると共に、円形又は螺旋状配列で配設される。複数のミリチャンネルが本体又は蓋に形成され、半径方向配列で配設され、冷却剤を入口マニホルドから導入すると共に、冷却剤を出口マニホルドに送給するように構成される。ミリチャンネルと入口及び出口マニホルドは、更に、電子素子パッケージの上側及び下側接触面の一方を冷却するように構成される。
【0008】
本発明の更に別の態様は、少なくとも1つの電子素子パッケージを冷却するためのヒートシンクにある。ヒートシンクは、少なくとも1種の熱伝導性材料から形成された下方蓋、上方蓋、及び本体を含む。本体は、下方及び上方蓋の間に配設されて封着され、冷却剤を導入するように構成された少なくとも1つの入口マニホルドと、冷却剤を排出するように構成された少なくとも1つの出口マニホルドとを画成する。入口及び出口マニホルドは交互配置されると共に、円形又は螺旋状配列で配設される。複数のミリチャンネルが下方及び上方蓋の少なくとも一方に形成され、半径方向配列で配設され、冷却剤を入口マニホルドから導入すると共に、冷却剤を出口マニホルドに送給するように構成される。ミリチャンネルと入口及び出口マニホルドは、更に、電子素子パッケージの上側及び下側接触面の一方を冷却するように構成される。
【0009】
本発明のこれら及びその他の特徴、態様、及び利点は、図面を通して同様の符号が同様の部品を表す添付図面を参照して以下の詳細な説明を読むことによってより良く理解することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】上側及び下側ヒートシンクを有する電子素子パッケージを示す。
【図2】円形マニホルドを有するヒートシンク本体の斜視図である。
【図3】上方蓋に形成された半径方向ミリチャンネルを有する片面ヒートシンクの断面図である。
【図4】下方及び上方蓋に形成された半径方向ミリチャンネルを有する両面ヒートシンクの断面図である。
【図5】円形マニホルド及び本体に形成された半径方向ミリチャンネルを有するヒートシンク本体の上面図である。
【図6】半径方向チャンネルの数を増やしたヒートシンク設計を示す。
【図7】蓋に形成された半径方向チャンネルを有する両面ヒートシンクの逆モデルである。
【図8】本体に形成された半径方向チャンネルを有する両面ヒートシンクの逆モデルである。
【図9】本体に形成された半径方向ミリチャンネルを有する片面ヒートシンクの断面図である。
【図10】螺旋状マニホルドを有するヒートシンク本体の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1,2,5,6,8,及び10を参照して、少なくとも1つの電子素子パッケージ20を冷却するためのヒートシンク10を説明する。例えば図1に示すように、例示的な電子素子パッケージ20は、上側接触面22及び下側接触面24を有する。この構成では、ヒートシンク10は、少なくとも1種の熱伝導性材料から形成された下方蓋12(図9には示されていないが、図4に示すものと同様である)、上方蓋14(図9)、及び本体16(図9)を備える。熱伝導性材料は、銅、アルミニウム、ニッケル、モリブデン、チタン、銅合金、ニッケル合金、モリブデン合金、チタン合金、アルミニウム−炭化ケイ素(AlSiC)、アルミニウム−グラファイト、及び窒化ケイ素セラミックからなる群から選択される。特定の形態では、下方及び上方蓋12,14と本体16は、同じ熱伝導性材料から形成される。しかしながら、その他の構成では、異なる材料を使用してもよい。
【0012】
図4に示す形態と同様に、本体16が下方及び上方蓋12,14の間に配設されて封着される。蓋12,14は、本体16に溶接、ろう付け、又は拡散接合することができ、従来の溶接、ろう付け、又は拡散接合法を利用することができる。本体16は、冷却剤が導入されるように構成された複数の入口マニホルド30を画成する。冷却剤の非限定的な例としては、脱イオン水及びその他の非導電性の液体が挙げられる。更に、特定の実施形態では、冷却剤は導電性の液体であってもよい。本体16は、更に、冷却剤を排出するように構成された複数の出口マニホルド32を画成する。例えば図2に示すように、入口及び出口マニホルド30,32は交互配置(交互嵌合)され、円形配列(本明細書では軸方向とも呼ばれる)で配設される。本体16及び蓋12,14は、鋳造及び/又は機械加工することができる。例えば図10に示すように、入口及び出口マニホルド30,32は、螺旋状配列で配設してもよい。図10に示す例示的な螺旋状配列では、入口及び出口マニホルド(30,32)は螺旋状であり、同じように回転しているが180度位相がずれている。有利なことに、この螺旋状配列によって、マニホルドを形成するのに必要な機械の動きの回数が(例えば、図2に示す構成の22から図10に示す構成の2へと)めざましく減る。例えば、部品12,14,16を鋳造してから機械加工して、更に細かな特徴及び表面要件を規定することができる。
【0013】
本明細書で用いられている「円形配列」及び「軸方向配列」という句は、半径方向通路を接続する曲線的及び直線的な「円形」通路を包含するように理解されたい。図5及び9に示す構成では、複数のミリチャンネル34が本体16に形成される。更に、はっきりと示されていないが、ミリチャンネル34は、圧力降下の更なる低減につながる半径方向チャンネルの数を最大にするために、本体16及び蓋12,14の一方又は両方に形成してもよい。例えば図5及び9に示すように、ミリチャンネル34は、半径方向配列で配設され、冷却剤を入口マニホルド30から導入すると共に、冷却剤を出口マニホルド32に送給するように構成される。ミリチャンネル34と入口及び出口マニホルド32,34は、更に、図1に概略的に示すように、電子素子パッケージ20の上側及び下側接触面22,24の一方を冷却するように構成される。
【0014】
これらの内部流れ構造は、冷却剤を入口チャンバ36から取り入れて、均一な温度性能のために冷却表面全体にわたってそれを分配する。冷却剤は、円形マニホルド30を通過した後、半径方向ミリチャンネル34を通って別の組の円形マニホルド32まで、更に半径方向ミリチャンネル34を戻って出口チャンバ38まで移動する。マニホルド及びミリチャンネルは、機械加工されるか、又は基材に鋳造される。この構成では、流路(マニホルド及びミリチャンネル)は、蓋12,14によって密封される。有利なことに、蓋を用いてヒートシンクを密封したことにより、冷却チャンネルが冷却されている素子の磁極面を超えて延在することができる。このことは、熱拡散効果の利用を可能にし、分解及び整備時の冷却剤の漏れの防止に役立つ。
【0015】
特定の実施形態では、マニホルド30,32は、ミリチャンネル34よりも比較的大きな幅を有する。1つの非限定的な例において、ミリチャンネルの幅は約0.5mm〜約2.0mmの範囲であり、ミリチャンネルの深さは、約0.5mm〜約2mmの範囲であった。特に、チャンネルの断面積は、半導体上の圧力均一を確実にするように決定することができる。半導体上の圧力分布をより均一にすることによって、半導体の性能が損なわれなくなる。
【0016】
更に、ミリチャンネル34及びマニホルド30,32は、丸形、円形、台形、三角形、及び正方形/長方形断面を含むがこれに限定されるものではない様々な断面形状を有し得ることに留意されたい。通路形状は、適用及び製造上の制約に基づいて選択され、適用可能な製造法のみならず冷却剤流量に影響を及ぼす。有利なことに、ヒートシンク10にミリチャンネル34を組み込むことによって、半導体素子20から冷却剤への熱伝導表面積が大幅に増加する。
【0017】
更に、特定の実施形態では、入口及び出口マニホルド30,32の少なくとも一方は可変深さを有してもよい。例えば、入口マニホルド30の深さは、入口分配チャンバ36における最大値と、出口チャンバ38における最小値を有してもよい。同様に、出口マニホルド32の深さは、入口分配チャンバ36における最小値と、出口チャンバ38における最大値を有してもよい。有利なことに、このテーパ構成により、冷却回路全体にわたってより均一な流動分布が得られる。
【0018】
図6は、圧力降下の低減を促進し、それに対応して冷却効率を向上させるために半径方向チャンネルの数を増やした設計を示す。より詳細には、図6に示す例示的な構成では、半径方向ミリチャンネル34の数は、本体16の中心付近の半径方向ミリチャンネル34の数よりも本体16の外周付近で多くなる。この構成によって、一定の空間及び機械加工上の制約の下でも、追加の半径方向チャンネルを加えることができるようになる。
【0019】
図示の構成では、本体16は、更に、冷却剤を入口マニホルド30に供給するように構成された入口分配チャンバ36と、冷却剤を出口マニホルド32から導入するように構成された出口チャンバ38と、冷却剤を入口チャンバ36に供給するように構成された入口プレナム40と、冷却剤を出口チャンバ38から導入するように構成された出口プレナム42とを画成する。図7は、各プレナム40,42に対するチャンバ36,38の垂直配列を示す逆モデルである。しかしながら、入口チャンバ36の端部のみが図7に示されている。
【0020】
図8に示す例示的な構成では、入口分配チャンバ36と入口プレナム40は直線状に配列され、出口チャンバ38と出口プレナム42は直線状に配列される。本明細書で用いられている「直線状」という語は、互いにプラスマイナス10度(±10°)の範囲内である、各プレナム40,42に対するチャンバ36,38の配向を包含するように理解されたい。図8は、各プレナム40,42に対するチャンバ36,38の直線状配列を示す逆モデルである。しかしながら、出口チャンバ38の端部のみが図8に示されている。
【0021】
図7に示す例示的な形態では、入口分配チャンバ36と入口プレナム40は垂直に配列され、出口チャンバ38と出口プレナム42は垂直に配列される。本明細書で用いられる「垂直」という語は、互いに90°±10°の範囲内である、各プレナム40,42に対するチャンバ36,38の配向を包含するように理解されたい。図7は、各プレナム40,42に対するチャンバ36,38の垂直配列を示す逆モデルである。有利なことに、冷却剤入口プレナム40及び出口プレナム42を同一面に配置することによって、流体接続が単純化される。例えば、この形態は、流体送給及び除去用に4つの孔を穿設する必要があり、そのうちの2つは後で接続される。
【0022】
特定の形態では、ヒートシンク10は、複数の電子素子パッケージ20を冷却するように構成される。図8は、例示的な両面ヒートシンク10の形態を示す。この構成では、入口及び出口マニホルド30,32と半径方向ミリチャンネル34の第1の組は本体16の第1の面2(図2に示す)に形成され、入口及び出口マニホルド30,32と半径方向ミリチャンネル34の第2の組は本体の第2の面4(図2に示す)に形成される。更に、はっきりと示されていないが、ミリチャンネル34は、圧力降下の更なる低減につながる半径方向チャンネルの数を最大にするために、本体16及び蓋12,14の両方に形成してもよい。図4の構成と同様に、図1に概略的に示すように、入口及び出口マニホルド30,32と半径方向ミリチャンネル34の第1の組は、冷却剤によって下方蓋12を介して1つの電子素子パッケージ20の上側接触面22(図1参照)を冷却するように構成され、入口及び出口マニホルド30,32及び半径方向ミリチャンネル34の第2の組は、冷却剤によって上方蓋14を介して別の電子素子パッケージ20の下側接触面24(図1参照)を冷却するように構成される。両面ヒートシンク50を図4に示す。しかしながら、図4に示す構成では、半径方向ミリチャンネル34が蓋12,14に形成されるのに対して、本構成では、半径方向ミリチャンネル34が本体16(及び選択的に蓋にも)形成される。
【0023】
図1に示す具体的な構成は単なる例示であり、具体的な用途に応じて、任意の数の電子素子パッケージ20、及び電子素子パッケージを冷却するための対応するヒートシンク10,50を所定のスタックに組み込んでもよいことを理解されたい。本発明の多くの利点の1つは、所望の数の素子パッケージを冷却するための柔軟性及びモジュール性である。
【0024】
更に、ヒートシンク10,50は、片面又は両面にすることができる。図3及び9を参照して、電子素子パッケージ20を冷却するための片面ヒートシンク形態10,50を説明する。ヒートシンク10,50は、少なくとも1種の熱伝導性材料から形成された蓋12,14と、少なくとも1種の熱伝導性材料から形成された本体16とを備える。本体16は蓋12,14に封着されており、蓋及び本体の構造は上述の通りである。本体16は、冷却剤を導入するように構成された複数の入口マニホルド30と、冷却剤を排出するように構成された複数の出口マニホルド32とを画成する。入口及び出口マニホルド30,32は交互配置(交互嵌合)され、円形配列で配設される。複数のミリチャンネル34が、本体16(例えば、図5及び9に示す)及び/又は蓋12,14(例えば、図3に示す)に形成される。上記のように、特定の構成では、ミリチャンネル34は、半径方向チャンネルの数を最大にするために、本体16及び蓋12,14の両方に形成してもよい。ミリチャンネル34は、半径方向配列で配設され、冷却剤を入口マニホルド30から導入すると共に、冷却剤を出口マニホルド32に送給するように構成される。ミリチャンネル34と入口及び出口マニホルド30,32は、更に、図1に概略的に示すように、電子素子パッケージ20の上側又は下側接触面22,24の一方を冷却するように構成される。
【0025】
図5及び9に示す例示的な形態では、ミリチャンネル34が本体16に形成される。より詳細には、入口及び出口マニホルド30,32と半径方向ミリチャンネル34は、本体16の第1の面2又は第2の面4の一方のみ(図9のケースでは第2の面4)に形成されて、図9の例で示すように、ヒートシンク10が片面ヒートシンク10となる。
【0026】
図3に示す例示的な形態では、ミリチャンネル34が蓋14に形成される。より詳細には、入口及び出口マニホルド30,32は、本体16の第1の面2又は第2の面4の一方のみ(図3のケースでは第2の面4)に形成され、この面4は蓋14に隣接しており、図3の例で示すように、ヒートシンク50が片面ヒートシンク50となる。
【0027】
図1〜9を参照して上述した例示的な実施形態では、上側接触面22及び下側接触面24は断面が円形であってもよく、本体16は円筒形(即ち、ディスク又はホッケーパック構成)であってもよい。しかしながら、限定されるものではないが、正方形及び長方形断面を含むその他の形状を利用してもよい。図1に示す例示的な構成では、電子素子パッケージ20はプレスパッケージ20である。本発明は特定の素子構造に限定されるものではないが、説明の便宜上、以下の例示的なプレスパッケージ形態を提示する。本例では、プレスパッケージ20は、ウェーハ23上に形成された少なくとも1つの半導体素子21と、熱膨張係数(CTE)がマッチした上側及び下側プレート25,27と、上側及び下側電極28,29とを備える。図1の例で示すように、ウェーハ23はCTEプレート25,27間に配設され、上側電極28は上側CTEプレート25上に配設され、下側CTEプレート27は下側電極29上に配設される。プレスパッケージの実施形態では、ウェーハ23、CTEプレート25,27、及び電極28,29の各々は円形断面を有してもよい。半導体素子の非限定的な例としては、IGCT、GTO、及びIGBTが挙げられる。本発明は、様々な半導体から製造される半導体素子に用途を見出しており、その非限定的な例としては、シリコン(Si)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、及びガリウムヒ素(GaAs)が挙げられる。プレスパッケージは、一般的に、例えば図1に示すように、絶縁(例えば、セラミック)ハウジング26を含む。図1は、ヒートシンク10,50をハウジング26の外側に延在するように示しているが、他の実施形態では、ヒートシンク10,50の本体16はハウジング26内に配設される。更に、電極28,29は、例えば電極28(及び29)の外周とハウジング26との間にコンプライアントシールを設けて、ハウジング26の境界を越えて垂直方向に延在してもよい。更に、電気的接続を可能にすると共に、冷却が必要とされる他の素子を配置するため、ヒートシンク10,50が(図示のように)ハウジングの外に延在してもよい。従って、本体16は、ハウジング26よりも大きな直径を有してもよい。
【0028】
図1,2,4,6及び7を参照して、別のヒートシンク形態を説明する。例えば図1に示すように、少なくとも1つの電子素子パッケージ20を冷却するためのヒートシンク50が提供される。図1に示すように、電子素子パッケージは、上側及び下側接触面22,24を有する。例えば図4に示すように、ヒートシンク50は、少なくとも1種の熱伝導性材料から形成された下方及び上方蓋12,14と本体16とを備える。本体及び蓋の例示的な材料は、上述の通りである。上記のように、本体及び蓋は、同じ又は異なる材料から形成することができる。例えば図4及び7に示すように、本体16は、例えば溶接、ろう付け、又は拡散接合によって下方及び上方蓋12,14の間に配設されて封着される。従って、流路(マニホルド及びミリチャンネル)は、蓋12,14によって密封され、熱拡散効果の利用を促進すると共に、分解及び整備時の冷却剤の漏れを防止する。
【0029】
例えば図2に示すように、本体16は、冷却剤を導入するように構成された複数の入口マニホルド30と、冷却剤を排出するように構成された複数の出口マニホルド32とを画成する。入口及び出口マニホルド30,32は交互配置(交互嵌合)され、円形配列で配設される。例えば図4及び7に示すように、ミリチャンネル34は、下方及び上方蓋12,14の少なくとも一方に形成される。図4及び7に示す特定の構成では、ミリチャンネル34は、下方及び上方蓋12,14の各々に形成される。ミリチャンネル34は半径方向配列で配設され、冷却剤を入口マニホルド30から導入すると共に、冷却剤を出口マニホルド32に送給するように構成される。ミリチャンネル34と入口及び出口マニホルド32,34は、更に、図1に概略的に示すように、電子素子パッケージ20の上側及び下側接触面22,24の一方を冷却するように構成される。有利なことに、蓋に半径方向チャンネルを配置することにより、電子素子パッケージ20の近くに冷却剤を配置することによって熱抵抗を低減する。
【0030】
マニホルド及びミリチャンネルの例示的な寸法及び断面は上述の通りである。更に、上記のように、入口及び出口マニホルド30,32の少なくとも一方は可変深さを有してもよい。有利なことに、そのようなテーパ構成により、冷却回路全体にわたってより均一な流動分布が得られる。
【0031】
図6に示す例示的な形態では、半径方向ミリチャンネル34の数は、蓋12,14の中心付近の半径方向ミリチャンネル34の数よりも蓋12,14の外周付近で多くなる。上記のように、図4に示す構成により、一定の空間及び機械加工上の制約の下でも、追加の半径方向チャンネルを加えることを可能にすることによって冷却の向上が得られる。
【0032】
例えば図4及び7に示すように、本体16は、更に、冷却剤を入口マニホルド30に供給するように構成された入口分配チャンバ36と、冷却剤を出口マニホルド32から導入するように構成された出口チャンバ38と、冷却剤を入口チャンバ36に供給するように構成された入口プレナム40と、冷却剤を出口チャンバ38から導入するように構成された出口プレナム42とを画成する。上記のように、図7は、各プレナム40,42に対するチャンバ36,38の垂直配列を示す逆モデルである。しかしながら、入口チャンバ36の端部のみが図7に示されている。図8に示す形態と同様に、入口分配チャンバ36と入口プレナム40は直線状に配列してもよく、出口チャンバ38と出口プレナム42は直線状に配列してもよい。その他の形態では、図7に示すように、入口分配チャンバ36と入口プレナム40は垂直に配列してもよく、出口チャンバ38と出口プレナム42は垂直に配列してもよい。
【0033】
特定の形態では、ヒートシンク50は、複数の電子素子パッケージ20を冷却するように構成される。図4及び7は、例示的な両面ヒートシンク50の形態を概略的に示す。この構成では、例えば図4に示すように、入口マニホルド及び出口マニホルド30,32の第1の組は本体16の第1の面2に形成され、ミリチャンネル34の第1の組は下方蓋12に形成される。同じく図4に示すように、入口マニホルド及び出口マニホルド30,32の第2の組は本体16の第2の面4に形成され、ミリチャンネル34の第2の組は上方蓋14に形成される。図1に概略的に示すように、入口及び出口マニホルド30,32とミリチャンネル34の第1の組は、冷却剤によって1つの電子素子パッケージ20の上側接触面22を冷却するように構成され、入口及び出口マニホルド30,32とミリチャンネル34の第2の組は、冷却剤によって別の電子素子パッケージ20の下側接触面24を冷却するように構成される。
【0034】
熱性能の向上によって高い信頼性とより広い動作マージンを提供することによって、ヒートシンク10,50は、石油及びガス液化天然ガス(LNG)及びパイプライン駆動装置、石油及びガス海底輸送供給及び駆動装置のような非常に高い信頼性が要求される用途に特に好ましい。更に、ヒートシンク10,50は、非限定的な例として圧延工場、製紙工場、及び鉄道輸送などの高出力用途が挙げられる様々な用途に利用することができる。
【0035】
有利なことに、気密シールを形成することによって、ヒートシンク10,50が、組立、分解、又は整備時に冷却剤がエレクトロニクス上に漏れるのを防ぐ。更に、ヒートシンク10,50により、電子素子パッケージ20の磁極面全体にわたって均一な方法での高性能な冷却が得られる。
【0036】
本明細書では本発明の特定の特徴のみを図示及び説明してきたが、当業者は多くの修正及び変更を想到するであろう。従って、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神内にある全てのそのような修正及び変更を保護するように意図されていること理解されたい。
【符号の説明】
【0037】
2 ヒートシンク本体の第1の面
4 ヒートシンク本体の第2の面
10 本体に半径方向チャンネルを有するヒートシンク
12 下方蓋
14 上方蓋
16 本体
20 電子素子パッケージ
21 半導体素子
22 上側接触面
23 ウェーハ
24 下側接触面
25 CTEがマッチした上側プレート
26 ハウジング
27 CTEがマッチした下側プレート
28 上側電極
29 下側電極
30 入口マニホルド
32 出口マニホルド
34 半径方向ミリチャンネル
36 入口分配チャンバ
38 出口チャンバ
40 入口プレナム
42 出口プレナム
50 蓋に半径方向チャンネルを有するヒートシンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側接触面(22)及び下側接触面(24)を有する少なくとも1つの電子素子パッケージ(20)を冷却するためのヒートシンク(10)であって、前記ヒートシンクは、
少なくとも1種の熱伝導性材料から形成された下方蓋(12)と、
少なくとも1種の熱伝導性材料から形成された上方蓋(14)と、
少なくとも1種の熱伝導性材料から形成された本体(16)とを備えており、前記本体(16)は、前記下方及び上方蓋(12,14)の間に配設されて封着され、前記本体(16)は、
冷却剤を導入するように構成された少なくとも1つの入口マニホルド(30)と、
前記冷却剤を排出するように構成された少なくとも1つの出口マニホルド(32)であって、前記入口及び出口マニホルド(30,32)は交互配置されると共に、円形又は螺旋状配列で配設される前記少なくとも1つの出口マニホルド(32)とを画成する前記ヒートシンクにおいて、
複数のミリチャンネル(34)が前記本体(16)に形成され、前記ミリチャンネル(34)は、半径方向配列で配設され、前記冷却剤を前記入口マニホルド(30)から導入すると共に、前記冷却剤を前記出口マニホルド(32)に送給するように構成され、
前記ミリチャンネル(34)と入口及び出口マニホルド(32,34)は、更に、前記電子素子パッケージ(20)の前記上側及び下側接触面(22,24)の一方を冷却するように構成される、ヒートシンク(10)。
【請求項2】
前記熱伝導性材料は、銅、アルミニウム、ニッケル、モリブデン、チタン、銅合金、ニッケル合金、モリブデン合金、チタン合金、アルミニウム−炭化ケイ素(AlSiC)、アルミニウム−グラファイト、及び窒化ケイ素セラミックからなる群から選択され、前記ミリチャンネル(34)の断面と前記マニホルド(30,32)の断面は、丸形、円形、台形、三角形、及び長方形断面からなる群から選択され、前記入口及び出口マニホルド(30,32)は螺旋状配列で配設される、請求項1に記載のヒートシンク(10)。
【請求項3】
前記ミリチャンネル(34)はまた、前記下方及び上方蓋(12,14)の少なくとも一方に形成される、請求項1に記載のヒートシンク(10)。
【請求項4】
前記入口及び出口マニホルド(30,32)は、螺旋状配列で配設される、請求項1に記載のヒートシンク(10)。
【請求項5】
上側接触面(22)及び下側接触面(24)を有する電子素子パッケージ(20)を冷却するためのヒートシンク(10,50)であって、前記ヒートシンクは、
少なくとも1種の熱伝導性材料から形成された蓋(12,14)と、
少なくとも1種の熱伝導性材料から形成された本体(16)とを備えており、前記本体(16)は、前記蓋(12,14)に封着され、前記本体(16)は、
冷却剤を導入するように構成された少なくとも1つの入口マニホルド(30)と、
前記冷却剤を排出するように構成された少なくとも1つの出口マニホルド(32)であって、前記入口及び出口マニホルド(30,32)は交互配置されると共に、円形又は螺旋状配列で配設される前記少なくとも1つの出口マニホルド(32)とを画成する前記ヒートシンクにおいて、
複数のミリチャンネル(34)が前記本体(16)又は前記蓋(12,14)に形成され、前記ミリチャンネル(34)は、半径方向配列で配設され、前記冷却剤を前記入口マニホルド(30)から導入すると共に、前記冷却剤を前記出口マニホルド(32)に送給するように構成され、
前記ミリチャンネル(34)と入口及び出口マニホルド(32,34)は、更に、前記電子素子パッケージ(20)の前記上側及び下側接触面(22,24)の一方を冷却するように構成される、ヒートシンク(10,50)。
【請求項6】
前記ミリチャンネル(34)は、前記本体(16)に形成され、前記本体(16)は、第1の面(2)及び第2の面(4)を有し、前記入口及び出口マニホルド(30,32)と半径方向ミリチャンネル(34)は、前記ヒートシンク(10)が片面ヒートシンク(10)となるように、前記蓋(12,14)に隣接する前記本体(16)の前記第1の面(2)又は第2の面(4)の一方のみに形成され、前記入口及び出口マニホルド(30,32)は、円形又は螺旋状配列で配設される、請求項5に記載のヒートシンク(10)。
【請求項7】
前記ミリチャンネル(34)はまた、前記蓋(12,14)に形成される、請求項6に記載のヒートシンク(10)。
【請求項8】
前記ミリチャンネル(34)は、前記蓋(12,14)に形成され、前記本体(16)は、第1の面(2)及び第2の面(4)を有し、前記入口及び出口マニホルド(30,32)は、前記ヒートシンク(50)が片面ヒートシンク(50)となるように、前記蓋(12,14)に隣接する前記本体(16)の前記第1の面(2)又は第2の面(4)の一方のみに形成され、前記入口及び出口マニホルド(30,32)は、円形又は螺旋状配列で配設される、請求項5に記載のヒートシンク(50)。
【請求項9】
上側接触面(22)及び下側接触面(24)を有する少なくとも1つの電子素子パッケージ(20)を冷却するためのヒートシンク(50)であって、前記ヒートシンクは、
少なくとも1種の熱伝導性材料から形成された下方蓋(12)と、
少なくとも1種の熱伝導性材料から形成された上方蓋(14)と、
少なくとも1種の熱伝導性材料から形成された本体(16)とを備えており、前記本体(16)は、前記下方及び上方蓋(12,14)の間に配設されて封着され、前記本体(16)は、
冷却剤を導入するように構成された少なくとも1つの入口マニホルド(30)と、
前記冷却剤を排出するように構成された少なくとも1つの出口マニホルド(32)であって、前記入口及び出口マニホルド(30,32)は交互配置されると共に、円形又は螺旋状配列で配設される前記少なくとも1つの出口マニホルド(32)とを画成する前記ヒートシンクにおいて、
複数のミリチャンネル(34)が前記下方及び上方蓋(12,14)の少なくとも一方に形成され、前記ミリチャンネル(34)は、半径方向配列で配設され、前記冷却剤を前記入口マニホルド(30)から導入すると共に、前記冷却剤を前記出口マニホルド(32)に送給するように構成され、
前記ミリチャンネル(34)と入口及び出口マニホルド(32,34)は、更に、前記電子素子パッケージ(20)の前記上側及び下側接触面(22,24)の一方を冷却するように構成される、ヒートシンク(50)。
【請求項10】
前記少なくとも1種の熱伝導性材料は、銅、アルミニウム、ニッケル、モリブデン、チタン、銅合金、ニッケル合金、モリブデン合金、チタン合金、アルミニウム−炭化ケイ素(AlSiC)、アルミニウム−グラファイト、及び窒化ケイ素セラミックからなる群から選択され、前記ミリチャンネル(34)の断面と前記マニホルド(30,32)の断面は、丸形、円形、台形、三角形、及び長方形断面からなる群から選択され、前記入口及び出口マニホルド(30,32)の少なくとも一方は可変深さを有し、前記入口及び出口マニホルド(30,32)は円形又は螺旋状配列で配設される、請求項9に記載のヒートシンク(50)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−15510(P2012−15510A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−141317(P2011−141317)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】