ミリ波イメージングシステムとその撮像方法
【課題】ミリ波透視スキャナの撮像幅が狭く、隠蔽された検知対象物の形状を特定することが困難である場合に、撮像領域を拡大して視認性を向上させることができるミリ波イメージングシステムを提供する。
【解決手段】本発明は、特定の形状の光学反射板20を被測定物16の表面に長手y方向がスキャナ2の移動x方向と直交する向きにして貼り付け、スキャナ2に光学検出器30を設け、被測定物表面の光学反射板を含む線分xiに沿ってスキャナを移動させることによりビーム強度スキャン測定と光学検出器による光学強度スキャン測定とを同時に行い、スキャナの走査移動距離dを算出すると共に、光学強度スキャン測定にて光学反射板の直交方向の幅wを求め、関数関係y=f(w)に基づき直交方向の幅wより長手方向の位置yを算出し、y位置のx方向のスキャン画像を得るミリ波イメージングシステムである。
【解決手段】本発明は、特定の形状の光学反射板20を被測定物16の表面に長手y方向がスキャナ2の移動x方向と直交する向きにして貼り付け、スキャナ2に光学検出器30を設け、被測定物表面の光学反射板を含む線分xiに沿ってスキャナを移動させることによりビーム強度スキャン測定と光学検出器による光学強度スキャン測定とを同時に行い、スキャナの走査移動距離dを算出すると共に、光学強度スキャン測定にて光学反射板の直交方向の幅wを求め、関数関係y=f(w)に基づき直交方向の幅wより長手方向の位置yを算出し、y位置のx方向のスキャン画像を得るミリ波イメージングシステムである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミリ波を利用し、隠蔽物を通して透視を行うミリ波イメージングシステムとその撮像方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、ミリ波透視スキャナの撮像幅が狭く検知対象物の形状を特定することが困難である場合に、光学反射板による位置合わせを行いながらスキャンを繰り返すことで撮像領域を拡大するミリ波イメージングシステムとその撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波を利用する透視スキャナを用いる検査ニーズは世の中に数多く存在する。一例として、戦後の高度成長期に建設された高速道路などの老朽化したコンクリート構造物や近年の施工不良マンションなどの耐久性検査を挙げる。
【0003】
コンクリート構造物の耐久性を検査する際の最重要項目の一つは、コンクリート表面のひび割れ検査である。ひび割れは、地震等によって構造物に応力が加わるとコンクリートが破断して生じる。コンクリートの表面でひび割れが発生すると、そこから雨水等が入り込み、内部の鉄筋に到達すると腐食が始まり、鉄筋の強度が落ちて構造物の耐久性低下を引き起こす。このような構造物の耐久性低下を未然に防ぐには、表面ひび割れの早期発見と補修の実施が重要となる。補修が必要となるひび割れの程度を示すには、コンクリート表面に現れたひび割れの「幅」を指標として用いる場合が多い。鉄筋への到達と直接的に関わる「深さ」も重要な指標であるが、ひび割れ幅から深さをある程度予測できるため、表面のひび割れ幅を用いて補修実施の要否を判断するのが一般的となっている。
【0004】
構造物の耐久性に関する許容ひび割れ幅に関しては、各国の提案基準によって若干のばらつきがある。おおよそ、乾燥空気中であれば幅0.3〜0.4mm、湿空中であればそれ以下の値を許容ひび割れ幅と規定しているものが多く、幅が0.2mm以上に達したひび割れについては、充填材や被覆による補修、あるいは鋼製アンカー等による補強を実施する対象としている(非特許文献1)。
【0005】
現在のひび割れ診断は目視による検査が主流であるが、実際の構造物の壁には塗装や壁紙装飾あるいは補修材などの隠蔽物によって被覆されている場合がしばしばあり、常に目視検査が行えるとは限らない。
【0006】
従来技術としてX線を使う検査方法も考えられるが、X線は送受信センサを対向に配置して透視像を得るため、測定構造物の裏側に回り込めない状況では使用困難であることや、安全面に関わる問題も出てくる。
【0007】
また、ひび割れ発生の要因はコンクリートの材料・施工・環境・構造・外力などの条件又はその組み合わせによって多岐に渡るため、ひび割れの現れる場所と時期を予測したり制御したりすることは不可能に近い。したがって、ひび割れ点検作業は構造物の広域に渡って行うことが望ましいが、超音波のように探触子を当てて探る方法では作業時間が掛かるため、実施上の課題を抱えている。
【0008】
以上のように、既存の技術によって被覆されたコンクリート表面のひび割れを迅速に検査することは困難であった。が、近年になり、ミリ波ビームを媒体とした透視技術が開発されてきた(特許文献1、特許文献2)。ミリ波とは周波数が30〜300GHz、波長が1〜10mmの電磁波であり、隠蔽物である壁紙や塗装等の被覆を透過し易く、かつ、コンクリート内部には入り難いため、コンクリート表面のみを検査するのに適している。コンクリート表面に斜めからミリ波を当てると、ひび割れがない平坦な部分では、反射波が一方向へ集中し、ひび割れがある部分では、ひび割れのエッジにおいて反射波が四方八方へ散乱する。そのゆえに、ビーム発生器とビーム受信器とを対向配置すると、表面における反射ビーム強度の違いによってひび割れ部分を検知できる。現在のところ、特許文献1および特許文献2に記載のミリ波イメージング技術は、使用困難で安全上問題のあるX線を用いずに被覆物によって隠蔽されたコンクリート表面のひび割れ検知を可能とする唯一の手段であるが、以下に述べる改良課題を抱えている。
【0009】
上述のミリ波イメージング技術では、撮像素子を1次元状に配置した数センチメートル程度の撮像幅を有するスキャナを現場作業者がコンクリート表面を転がし、画像モニタに映し出された透視像を見てひび割れの有無を判断する。この場合、撮像素子の1次元配置方向は、スキャナの移動方向と直交している。
【0010】
しかしながら、波長が数ミリメートルのミリ波によって得られた透視像は検知対象となるサブミリメートル幅のひび割れを明瞭に映し出す解像度を有していないためピンボケしており、さらに、検知対象となるひび割れの他にコンクリート表層内部の骨材・細骨材・気泡等もノイズとして映るため、数センチメートル程度の撮像幅ではひび割れを特定するのに十分な視認性を得られず、現場作業者がひび割れを見落とすことが危惧される。
【0011】
この課題を解決するには、撮像素子の数を増やして撮像幅を拡大することが考えられるが、画素数を増やすとスキャナ本体のサイズが大きくなって現場における作業性と可搬性が低下し、また、装置が高価になるという新たな問題点が生ずることになる。
【0012】
この「画素数と撮像幅」というジレンマは、ひび割れを検知対象としたミリ波スキャナのみならず、検知対象物が撮像幅に対して小さいという状況下において、他用途の透視スキャナにおいても共通した問題となっている。
【0013】
以上のような理由から、撮像幅の狭いミリ波透視スキャナで検知対象物を特定する技術の開発が要望されてはいるが、これまでのところ、そのような技術は実現できていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2007−121230号公報
【特許文献2】特開2007−121214号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】「コンクリートのひび割れ調査、補修・補強指針」、274〜279頁、社団法人日本コンクリート工学協会編著、2003年出版。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記従来の技術的課題に鑑みてなされたものであり、ミリ波透視スキャナの撮像幅が狭く、隠蔽された検知対象物の形状を特定することが困難である場合に、撮像領域を拡大して視認性を向上させることができるミリ波イメージングシステム及びその撮像方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の特徴は、スキャナのビーム発生器より被測定物表面にミリ波ビームを照射し、前記ビームの内、前記被測定物表面から反射又は散乱される成分を前記スキャナのビーム検出器で測定しつつ、前記スキャナに前記被測定物表面を移動させることにより、前記ビームの反射強度又は散乱強度のスキャナ移動方向依存性を収集するスキャナを用いたミリ波イメージングシステムの撮像方法において、平面状の光学反射板であって、長手方向の位置とこれに直交する直交方向の幅とが一対一に対応する関数関係を持つ形状の光学反射板を前記被測定物表面に、前記長手方向が前記スキャナの移動方向と直交する向きにして貼り付け、前記スキャナに光学検出器を設け、前記被測定物表面の前記光学反射板を含む線分に沿って、前記スキャナを移動させることにより、前記ビームの反射強度又は散乱強度の測定によるビーム強度スキャン測定と、前記光学検出器による光学強度スキャン測定とを同時に行い、前記光学強度スキャン測定により得られた光学強度スキャン測定像について、前記光学反射板の反射強度に相当する光学強度の開始点又は終了点からのスキャナの移動距離をもって、前記光学強度スキャン測定時ならびに前記ビーム強度スキャン測定時における前記スキャナの前記光学反射板からの進行方向に沿った移動距離を算出し、前記スキャンにより得られた光学強度スキャン測定像について、前記光学反射板の反射強度に相当する光学強度の始点から終点までのスキャナの移動距離をもって、該スキャン時における前記光学反射板上の直交方向の通過距離とし、前記通過距離を前記直交方向の幅とし、前記長手方向の位置とこれに直交する直交方向の幅とが一対一に対応する関数関係に基づき、前記直交方向の幅より前記長手方向の位置を算出し、前記算出した長手方向の位置を、前記スキャナによるスキャン位置とするミリ波イメージングシステムの撮像方法である。
【0018】
上記発明のミリ波イメージングシステムの撮像方法においては、前記線分に沿って行う前記ビーム強度スキャン測定、ならびに、前記光学強度スキャン測定、前記スキャナの前記光学反射板からの進行方向に沿った距離の算出、ならびに、前記スキャナの進行方向に対し直角である前記長手方向の位置の算出については、異なる複数の線分に対して行い、前記ビーム強度スキャン測定位置として、前記スキャナの前記光学反射板からの進行方向に沿った距離、ならびに、前記スキャナの進行方向に対し直角である前記長手方向の位置を与え、前記スキャナの前記ビーム強度スキャン測定位置と前記ビーム強度測定結果とを対応付けて画像モニタ上に表示するものとすることができる。
【0019】
また、上記発明のミリ波イメージングシステムの撮像方法においては、前記被測定物表面に、前記光学反射板を2枚貼り付け、前記スキャン時における第1の光学反射板の通過距離と第2の光学反射板の通過距離と光学反射板間の通過距離とを算出し、前記算出結果の1つ又は複数を元に、前記スキャナの移動方向の第1の光学反射板に対する角度を算出し、前記ビーム強度スキャン測定位置として、前記スキャナの前記光学反射板からの進行方向に沿った距離の算出、ならびに、前記スキャナの進行方向に対し直角である長手方向の位置を、前記角度を元に前記光学反射板との相対的な位置関係が分かるように補正し、前記スキャナの前記ビーム強度スキャン測定位置と、前記ビーム強度測定結果とを対応付けて画像モニタ上に表示するものとすることができる。
【0020】
さらに、上記発明のミリ波イメージングシステムの撮像方法においては、前記平面状の光学反射板は、幾何学的特性である形状、光学的特性である反射率、又は色の1つあるいは複数を組み合わせ、前記直交方向の幅を表記するものとすることができる。
【0021】
本発明の別の特徴は、スキャナであって、内蔵するビーム発生器より被測定物表面にミリ波ビームを照射し、前記ビームの内、前記被測定物表面から反射又は散乱される成分を内蔵するビーム検出器で測定しつつ、当該スキャナに前記被測定物表面を移動させることにより前記ビームの反射強度又は散乱強度のスキャナ移動方向依存性を収集するスキャナと、長手方向の位置とこれに直交する直交方向の幅とが一対一に対応する関数関係を持つ形状の平面状の光学反射板であって、前記被測定物表面に、前記長手方向が前記スキャナの移動方向と直交する向きにして貼り付けられた光学反射板と、前記スキャナに取り付けられ、当該スキャナの移動中に所定の向きに光学信号を発射し、前記光学反射板に反射して戻ってくる反射光学信号を受信し、光学反射強度を検出する光学検出器と、前記被測定物表面の前記光学反射板を含む線分に沿って前記スキャナを移動させるときに、前記ビームの反射強度又は散乱強度の測定によるビーム強度スキャン測定と、前記光学検出器による光学強度スキャン測定とを同時に行うビーム強度・光強度スキャン測定手段と、前記光学強度スキャン測定により得られた光学強度スキャン測定像について、前記光学反射板の反射強度に相当する光学強度の開始点又は終了点からのスキャナの移動距離をもって、前記光学強度スキャン測定時ならびに前記ビーム強度スキャン測定時における前記スキャナの前記光学反射板からの進行方向に沿った移動距離を算出する移動距離算出手段と、前記光学強度スキャン測定により得られた光学強度スキャン測定像について、前記光学反射板の反射強度に相当する光学強度の始点から終点までのスキャナの移動距離をもって、該スキャン時における前記光学反射板上の直交方向の通過距離を算出する直交方向距離算出手段と、前記通過距離を前記直交方向の幅とし、前記長手方向の位置とこれに直交する直交方向の幅とが一対一に対応する関数関係に基づき、前記直交方向の幅より前記長手方向の位置を算出し、前記算出した長手方向の位置を、前記スキャナによるスキャン位置とする長手方向位置算出手段とを備えたミリ波イメージングシステムである。
【0022】
上記発明のミリ波イメージングシステムにおいては、前記線分に沿って行う前記ビーム強度スキャン測定、前記光学強度スキャン測定、前記スキャナの前記光学反射板からの進行方向に沿った距離の算出、ならびに、前記スキャナの進行方向に対し直角である長手方向における位置の算出については、異なる複数の線分に対して行い、前記ビーム強度スキャン測定位置として、前記スキャナの前記光学反射板からの進行方向に沿った距離、ならびに、前記スキャナの進行方向に対し直角である直交方向における位置を与え、前記スキャナの前記ビーム強度スキャン測定位置と前記ビーム強度測定結果とを対応付けて画像モニタ上に表示する測定画像合成手段を備えたものとすることができる。
【0023】
また、上記発明のミリ波イメージングシステムにおいては、前記光学反射板は、前記被測定物表面に2枚貼り付けられ、前記移動距離算出手段は、前記スキャン時における第1の光学反射板の通過距離と第2の光学反射板の通過距離と前記光学反射板間の通過距離とを算出し、前記算出結果の1つ又は複数を元に、前記スキャナの移動方向の第1の光学反射板に対する角度を算出する角度算出手段と、前記ビーム強度スキャン測定位置として、該スキャナの前記第1の光学反射板からの進行方向に沿った距離の算出、ならびに、前記スキャナの進行方向に対し直角である長手方向における位置を、前記角度を元に前記第1の光学反射板との相対的な位置関係が分かるように補正する補正手段とを備え、前記測定画像合成手段は、前記スキャナの前記ビーム強度スキャン測定位置と、前記ビーム強度測定結果とを対応付けて画像モニタ上に表示するものとすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の透視ミリ波イメージングシステム及びその撮像方法によれば、ミリ波透視スキャナの撮像幅が狭く検知対象物の形状を特定することが困難である場合でも、光学反射板による位置合わせを行いながらスキャン回数を繰り返すことによって撮像領域を拡大し、隠蔽された検知対象物の形状を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1〜第3の各実施形態に係るミリ波イメージングシステムのブロック図。
【図2】図1のミリ波イメージングシステムにおけるスキャナのブロック図。
【図3】コンクリート表面とクラックにおけるミリ波の反射特性を示した説明図。
【図4】図2のスキャナにおける送信アンテナ、受信アンテナそれぞれのブロック図。
【図5】図2のスキャナにおける電磁波照射部と電磁波検知部のコンクリートに対する設置例を示す説明図。
【図6】第1、第2の実施形態における制御PCの機能構成を示すブロック図。
【図7】第1の実施形態のミリ波イメージングシステムのスキャン動作状態を示す概念図。
【図8】第1の実施形態のミリ波イメージングシステムにおける光学反射板とスキャン方向(直交方向)と長手方向を示す説明図。
【図9】第2の実施形態のミリ波イメージングシステムのスキャン動作状態を示す概念図。
【図10】第2の実施形態のミリ波イメージングシステムによるミリ波スキャンにより得られる領域拡大したスキャン画像の説明図。
【図11】第3の実施形態のミリ波イメージングシステムのスキャン動作状態を示す概念図。
【図12】第3の実施形態における制御PCの機能構成を示すブロック図。
【図13】第3の実施形態のミリ波イメージングシステムによる光学反射板、及び直交方向と長手方向とスキャン方向の角度との関係を示す説明図。
【図14A】第1、第2の実施形態における光学反射板に代えて使用する光学反射部材の説明図。
【図14B】第3の実施形態における光学反射板に代えて使用する光学反射部材の説明図。
【図15】本発明の実施例のミリ波イメージングシステムによる撮像結果の表示画像。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。尚、以下の説明において、共通する要素若しくは類似する要素については共通の又は類似する符号を用いて説明する。また、本発明において「ターゲット」とは、建物やトンネルなどの構造物に使用されるコンクリートなどを指し、ミリ波帯の電磁波(以下、「ミリ波」と称する。)とは、周波数が30GHzから300GHzの電磁波を指す。また、「媒質」とはアンテナとターゲットとの間に介在しミリ波を伝達可能な仲介物をさす。ミリ波は、可視光が透過する空気などの媒質だけでなく、人間が身にまとう衣類、住宅建材として使用される木材などの可視光では透過しない媒質も透過し、例えばターゲットであるコンクリートに対しては、周波数が100GHzの場合、10mm程度の深さまでコンクリートの表層を透過する。
【0027】
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態に係るミリ波イメージングシステム1の構成を示している。同図に示すように、ミリ波イメージングシステム1は、移動型でミリ波照射・検知を行うスキャナ2と、このスキャナ2の移動方向の前部に取り付けられた赤外線センサ、レーザ光センサのような光線照射・反射光検知を行う光学検出器30と、ロックインアンプ3と、制御、演算処理用のパーソナルコンピュータ(以下、「制御PC」と称する。)4と、ターゲット上の適宜の位置に貼り付けられた光学反射板20とで構成される。
【0028】
スキャナ2は、先願に係る公開公報である特許文献1に記載された構成のものと同様である。電磁波照射部5からミリ波をターゲットに照射し、ミリ波のターゲットに対する応答性を電磁波検知部6で測定する。測定された検知信号をロックインアンプ3へ伝送する。一方で、車輪付き筐体7がスキャンした距離を距離センサ8で検知し、検知された距離情報を制御PC4へ伝送する。
【0029】
ロックインアンプ3は、単一チャネルで入力される検知信号を位相感応検波し、ミリ波の反射強度を出力する。尚、所望ターゲット信号のS/N比が良好な場合は、ロックインアンプ3を用いずに、受信アンテナ13の出力を制御PC4に直接に送出する構成にすることができる。
【0030】
光学反射板20は光学反射性がある直角三角形の板材であり、ターゲット16上の適宜の位置、スキャンする領域の端部の位置にスキャナ2のスキャン方向に直角な方向、すなわち長手方向に長辺が沿うようにして貼り付けられている。この光学反射板20は三角形に限定されるものではなく、長手方向の位置yとこれに直交する直交方向の幅wとが一対一に対応する関数関係を持つ形状であればよい。しかしながら、長辺が短辺に対して長い細長い形状の三角形板を採用するのがシステム構成上は簡素化が図れて好ましい。
【0031】
光学検出器30は、所定強度の可視光を所定の方向に発射する発光部31と、ターゲット16に当たって反射してきた反射光を受光する受光部32と、発光部31の発光動作と受光部32の受光動作を制御し、受光部32の受光強度を検出して制御PC4へ出力する制御部33とを備えている。例えば、光学反射板20における位置の特定情報が厚みである場合には赤外変位計等を用いる。光学反射板20における位置の特定情報が色である場合にはCCDセンサ等を用いる。また、光学反射板20における位置の特定情報が反射率である場合にはレーダ等を用いる。この実施形態では、光学反射率を利用する。
【0032】
制御PC4は、ロックインアンプ3で位相感応検波された強度信号及び距離センサ8により検知された距離情報に基づいてターゲットの画像データを生成する。制御PC4は、これと同時に、光学検出器30により検知された光学強度信号及び距離センサ8により検知された距離情報に基づいて光学反射板20のスキャン該当位置での長手方向に直交する直交方向の幅wを検出し、また光学反射板20のスキャン線該当位置でのスキャン開始点x0を検出し、さらにスキャン該当位置の長手方向の位置yを算定する。制御PC4はさらに、検出したスキャン線の長手方向位置y、スキャン開始点x0とこのスキャン開始点x0から始めてスキャン線上の画像データをスキャン位置xと対応させて記憶すると共に、画像モニタに表示する演算処理を行う。
【0033】
次に、スキャナ2の具体的な構成について図2を用いて説明する。同図に示すように、スキャナ2は、電磁波照射部5と、電磁波検知部6と、距離センサ8とを車輪付き筐体7に備える。
【0034】
電磁波照射部5は、電磁波発生器9と、低周波信号器10と、変調器11と、送信アンテナ12で構成される。電磁波発生器9は、ミリ波を発生する。ここでは例えばGUNN発振器を使用し、60〜120GHzのミリ波を発生する。低周波信号器10は、外部のロックインアンプ3が位相感応検波可能な範囲の周波数信号を出力する。一方で、変調器11に周波数信号を出力する。ここでは例えばシンセサイザを使用する。変調器11は、低周波信号器10の出力信号を用いて電磁波発生器9の出力信号を変調する。ここでは例えば、PINスイッチを使用する。送信アンテナ12は、ミリ波をターゲットであるコンクリート16に放射する。ここでは例えばホーンアンテナを使用し、コンクリートにミリ波を拡散照射させる。
【0035】
電磁波検知部6は、受信アンテナ13と、検波器14と、スイッチ15で構成される。受信アンテナ13は、コンクリート16で反射したミリ波を受信する。ここで例えば平面スロットアンテナを使用する。検波器14は、例えば一列に16個配列されるものとし、受信アンテナ13により受信されたミリ波の反射強度を電気信号に変換する。ここで例えば検波器14には、各々が受信アンテナ13に接続されたショットキーダイオードを使用し、ミリ波の反射強度を検知する。スイッチ15は、各々の検波器14からの出力を順次切り換えて外部のロックインアンプ3へ出力する。ここではスイッチ15には400マイクロ秒以下の切り換え速度が可能な電子回路式のPINダイオードスイッチを使用する。これにより16個の検波器14の各々から出力された並列信号が単一入力式のロックインアンプ3に高速出力される。
【0036】
車輪付き筐体7は、スキャナ2をコンクリート16に沿ってスキャンする。ここではコンクリート16の表面に接するように車輪が備え付けられた筐体を使用し、コンクリート16表面に沿った移動スキャンを容易にしている。車輪付き筐体7のサイズは、例えば数十センチ四方程度の大きさのハンディ型とし、操作者が片手での操作を可能にしている。
【0037】
距離センサ8は、車輪付き筐体7によりスキャンされた移動距離を検知し、距離情報を外部の制御PC4へ伝送する。ここでは例えば、車輪付き筐体7の車輪の回転軸に備え付けられロータリーエンコーダにより車輪の移動量を検知し、距離センサ8内部のマイコンにより距離情報を計算し、制御PC4へ伝送する。
【0038】
次に、コンクリートで反射したミリ波の特性について図3を用いて説明する。同図は、コンクリート表面とクラックにおけるミリ波の反射特性を示した図である。コンクリート16の表面からの反射波のビームパターンを実線で、クラック17からの反射波のビームパターンを破線でそれぞれ模式的に示している。
【0039】
同図に示すように、コンクリート16の表面が平らかつ滑らかである場合、コンクリート16に対して垂直な垂直軸Kに対して角度θ1で入射したミリ波Winは、垂直軸Kに対して入射側の逆側に表面反射する。このとき入射角と反射角の法則により、垂直軸Kに対して角度θ1で表面反射するミリ波の強度が最大となる。
【0040】
一方で、ミリ波が10mm程度の深さのコンクリート表層を透過して入射した場合、コンクリート16の内部に浸透したミリ波は、ミリオーダーのクラックが有する凹凸構造により、様々な角度方向に散乱反射する。
【0041】
これにより、受信アンテナ13によりコンクリート16で反射したミリ波を受信し、コンクリート16で表面反射するミリ波Wcrtとコンクリート表層内部のクラック17で散乱反射するミリ波Wcrkの反射特性の違いから、クラック17を検出することができる。
【0042】
次に、送信アンテナと受信アンテナの構成及び設置方法について図4、5を用いて説明する。図4は、送信アンテナと受信アンテナの構成を概略的に示した図である。電磁波照射部5と電磁波検知部6においては、異なるアンテナを用いたバイスタティック系の電磁波送受信方式により、ミリ波の送受信を行うこととし、同図(a)に示すように電磁波照射部5における送信アンテナ12には主軸がB1で表されるホーンアンテナを使用し、同図(b)に示すように電磁波検知部6における受信アンテナ13には主軸がB2で表される平面スロットアンテナを使用する。
【0043】
図5は、電磁波照射部と電磁波検知部のコンクリートに対する設置例を示す。同図に示すように、コンクリート16の表面に垂直な垂直軸Kとしたとき、送信アンテナ12の主軸B1及び垂直軸Kのなす角度θ1と、受信アンテナ13の主軸B2及び垂直軸Kのなす角度θ2とが異なるように設置する。同図では、受信アンテナ13の主軸B2及び垂直軸Kのなす角度θ2が、θ1よりも角度φだけ大きい状態を示している。
【0044】
このように送信アンテナ12と受信アンテナ13を設置することで、受信アンテナ13の方向とコンクリート16で表面反射したミリ波成分の進行方向とが異なるので、表面反射したミリ波成分が受信アンテナ13に入るのが抑制され、所望信号であるコンクリート16表層内部のクラック17で散乱反射したミリ波成分のSN比が向上し、クラック17の検出精度が向上する。
【0045】
このような構成としたことで、スキャナ2の電磁波発生器9で発生したミリ波は、車輪付き筐体7底面の開口部からコンクリート16へ照射され、コンクリート16で反射した反射波が複数の受信アンテナ13で受信され、それぞれの受信アンテナ13に対応する検波器14によって検知される。検知された反射強度は、ダイオードの整流作用によって電圧値に変換され、ロックインアンプ3によりその強度が数値化され制御PC4の画面に表示される。このとき、コンクリート16で表面反射した反射波と、コンクリート表層内部のミリオーダーのクラック17で散乱反射した反射波の反射強度の違いから、クラック17を検知することができる。
【0046】
さらに、一列に幅lwの中にn個配列された検波器14の各々から並列出力された出力信号を、電子回路式の切り換えスイッチ15により順次切り換えることで、各検波器からの複数の並列信号が高速に出力され、一方向のスキャンでlw幅の画像データを生成することができる。
【0047】
これにより、操作者が手で車輪付き筐体7をコンクリートの表面に沿ってスキャンすると、距離センサ8によってスキャン移動距離情報が制御PC4に伝送される。一方で、制御PC4により、ロックインアンプ3で数値化されたスイッチ15からの出力信号の強度を、スキャン方向xのスキャナ2の移動距離に合わせて次々に描画することで、広範囲に渡ってコンクリート16表面のx方向に沿って一定幅lwの二次元画像をリアルタイムに得ることができる。
【0048】
スキャン線xの長手方向位置yを自動測定する手順について、図6の制御PC4の演算処理機能を処理機能ごとに分解して示した機能ブロック図、また図7、図8を用いて説明する。制御PC4は、距離センサ8からの距離信号を入力してデータ化する移動距離入力部41、光学検出器30からの光学強度信号を入力してデータ化する光学強度入力部402、ロックインアンプ3からのミリ波強度信号を入力してデータ化するミリ波強度入力部403、光学強度入力部402からの光学強度データと移動距離入力部401の出力するスキャン方向xの移動距離dを対応付けて順次記憶する移動距離・光学強度データ対応付け処理部404、ミリ波強度入力部403のミリ波強度データと同じくスキャン方向xの移動距離dと対応付けて順次記憶する移動距離・ミリ波強度データ対応付け処理部405を備えている。
【0049】
制御PC4は、また、移動距離・光学強度データ対応付け処理部404の処理データから光学反射板20のスキャン方向xの横断幅wとその横断の終了点x0(開始点であってもよい)とを検出する反射板幅検出部406、幅wを与える横断終了点x0の光学反射板長辺上の頂点(0,0)からの距離yを算出する関数y=f(w)を記憶し、この関数に前記検出幅wを当てはめることによって横断終了点x0の長手方向位置yを求める長手方向位置検出部407を備えている。
【0050】
制御PC4は、さらに、移動距離・ミリ波強度データ対応付け処理部405が1スキャンごとに処理する撮像幅lwの画像データを得るスキャン画像処理部408、スキャン画像処理部408の得たスキャン方向(x方向)の各スキャン点の画像データを、長手方向位置検出部407が求めたスキャン線の長手方向位置yと対応付けて画像記憶部410にストアする長手方向位置・スキャン画像対応付け処理部409、画像記憶部410の画像データを読み出して長手方向位置y上に撮像幅lw分でスキャン長さ分の領域の画像合成を行い、ターゲット16の二次元のミリ波イメージを得て画像モニタ412に表示させる画像合成部411を備えている。
【0051】
この実施形態のミリ波イメージングシステムでは、スキャナ2の送信アンテナ12で放射されたミリ波が、媒質を透過した後にターゲット16で反射し、受信アンテナ13及び検波器14により検知された反射波の強度を、ロックインアンプ3で数値化することで、コンクリート16で表面反射した反射波と、コンクリート16表層内部のミリオーダーのクラック17で散乱反射した反射波の反射強度の違いから、クラック17を検出する。さらに、車輪付き筐体7でコンクリート16の表面に沿ってスキャンすることで、距離センサ8により検知した距離情報に基づいて、スキャン線x方向の一定撮像幅lwのコンクリート16表面の二次元画像データを形成する。
【0052】
そして、このスキャナ2のスキャン時のスキャン線の長手方向の位置yは、次のようにして特定する。上述したように、光学反射板20は、ターゲットであるコンクリート16の上の適宜の位置、つまり、通常ターゲット16のスキャン対象領域の近くで、かつ、スキャンの邪魔にならない位置に貼り付ける。
【0053】
この光学反射板20は、長手方向の位置を一意に特定できることが特徴であり、例えば図8に示すような三角形状である。スキャナ2のスキャン方向をxとし、それに直交する長手方向をyとし、スキャンxiの長手方向位置yiとすれば、図8に示す横断幅wiが光学反射板20の長手方向の位置yiを一意に特定する情報となる。
【0054】
スキャナ2に設置した光学検出器30が光学反射板20上を通過するようにコンクリート16の表面のスキャンを行えば、光学検出器30が光学反射板20の位置で光学反射強度が強くなるので、この光学反射強度が強い部分の長さを光学反射板20の幅wとする。そして、この幅wの値から、スキャナ2のスキャン時のそのスキャン線の長手方向位置yをy=f(w)の関数式にて換算する。光学反射板20は、その長辺を長手方向yに一致させることにより、光学反射板20の検出終了点をスキャン方向の一つのスキャン基点(0,y)とする位置合わせも行う。
【0055】
いま、あるスキャン番号をxiとする。このスキャンxiにおいて、光学検出器30が検出した光学反射板20の横断幅wiであったとする。この場合、スキャンxiの長手方向の位置yiは、yi=f(wi)にて得る。そして、光学反射板20の検出終了点をこのスキャンxiの開始基点(di1,yi)=(0,yi)とする。すなわち、距離センサ8の検出するターゲット16に対するスキャン開始点とし、ここからスキャンxiが直交x方向に行われ、スキャナ2のスキャン方向に刻み増分Δdずつm点スキャンするとして、このΔdごとに距離センサ8の移動距離dijと(dij,yi)点におけるミリ波反射強度のデータ(pj1,pj2,…,pjn)とを対応づけてスキャンデータを得たとする。ここで、スキャン点は、di1(開始点),di2,…,dim(終了点)であり、各dij点のスキャンにおける(pj1,pj2,…,pjn)は、スキャナ2の撮像幅lwの中にn個の検出点があり、スキャン幅lwの中でn点ずつ同時にスキャンすることを意味している。
【0056】
これによって、画像モニタ412には、図15(a)に示すようなミリ波スキャン画像35が表示される。
【0057】
以上のように、この実施形態のミリ波イメージングシステム及びそれを用いた撮像方法によれば、ミリ波スキャン対象であるターゲット16に対して長手方向の正確な位置yiにおいて直交方向xにlw幅のミリ波スキャン画像35が得られる。
【0058】
[第2の実施形態]
図9は、本発明の第2の実施形態に係るミリ波イメージングシステムの全体構成を示し、図10は画像モニタ412の表示例を示している。この実施形態のシステム構成は第1の実施の形態と共通であり、図1、図2に示したものである。そして、スキャナ2によるミリ波スキャンは、スキャン幅lwずつy位置をずらせて繰り返し行う点、また、制御PC4内では、スキャン幅lwずつy位置をずらせて行った各スキャンxiでのミリ波反射強度データ(dij;pj1,pj2,…,pjn)を画像データ記憶部410にストアする点、そして、画像合成部411が、画像データ記憶部410にストアされているy位置をずらせて行った複数p回(x1〜xpのスキャン)のミリ波反射強度データを画像合成し、画像モニタ412に描画することでターゲット16の広いスキャン対象面の内部の2次元透視画像を得るようにした点が、第1の実施形態とは異なる。
【0059】
本発明のミリ波イメージングシステムの実施例にて得たモニタ画像を図15(b)に示している。撮像幅lwが1cmのミリ波スキャナ2を用いて、セラミックタイル下のコンクリートひび割れ(幅0.35mm)を9スキャン分撮像した。図15(a)に示すように、画素アレイの撮像幅lwが1cmであるとき、Aの位置に潜むひび割れの有無を画像から認識することは困難である。図15(b)は、撮像幅lwずつずらせたスキャン位置y1〜y9それぞれにおいて合計9スキャンx1〜x9を行い、9スキャン分の撮像画像を合成したものであり、ひび割れ形状を明瞭に認識できることが分かる。
【0060】
[第3の実施形態]
図11は、本発明の第3の実施形態に係るミリ波イメージングシステムの全体構成を示している。この実施形態は、ターゲット16の表面に2つの光学反射板20A,20Bを貼り、スキャナ2の移動方向の光学反射板20A,20Bに対する角度θを自動算出することを特徴とする。これにより、スキャナ2の基点側の第1の光学反射板20Aからのスキャン方向に沿った移動距離、ならびに、スキャナ2のスキャン方向に対し直角である方向における位置について、より正確に補正を行うことが可能となる。
【0061】
この実施形態における制御PC4の処理機能は図12のようになる。すなわち、図6に示した第1、第2の実施形態における制御PC4の処理機能と共通する移動距離入力部41、光学強度入力部402、ミリ波強度入力部403、移動距離・光学強度データ対応付け処理部404、移動距離・ミリ波強度データ対応付け処理部405を備えている。
【0062】
制御PC4は、また、移動距離・光学強度データ対応付け処理部404の処理データから光学反射板20A,20Bそれぞれのスキャン線の通過距離r,r′、光学反射板20A,20B間の通過距離Rを算出する反射板幅検出部4060、スキャン線の長手y方向に対する角度θを算出するスキャン角度検出部4071、スキャンxiについて第1の光学反射板20Aの長辺上の頂点(0,0)からスキャン開始点までの距離yiを算出する長手方向位置検出部4072を備えている。
【0063】
制御PC4は、また、スキャン画像処理部408、スキャン画像処理部408の得た角度θのスキャン方向の画像データを、長手方向位置検出部4072が求めたスキャン基点の位置(0,yi)、スキャン番号xiと対応付けて画像記憶部410にストアする長手方向位置・スキャン画像対応付け処理部4090を備え、さらに、第2の実施形態と同様に画像記憶部410にストアされている画像データのθ傾いた状態での画像合成を行い、ターゲット16の二次元のミリ波イメージを得て画像モニタ412に表示させる画像合成部411を備えている。
【0064】
この実施形態のミリ波イメージングシステムを用いた撮像方法を図13を用いて説明する。ここでは、2つの直角二等辺三角形板を光学反射板20A,20Bとして用いている。第1の光学反射板20Aは、(x,y)座標がそれぞれ(0,0),(0,a),(a,a)に頂点を持つ直角二等辺三角形である。また、第2の光学反射板20Bは、(x,y)座標がそれぞれ(−A,0),(−A,a),(−A−a,a)に頂点を持つ直角二等辺三角形である。スキャナ2の光学検出器30が測定を行ったところ、第1の光学反射板20Aの通過距離がr、光学反射板20A,20B間の通過距離がR、第2の光学反射板20Bの通過距離がr′だったとする。この時、スキャナ2の移動方向のx軸からのずれは、θ=±arcsin(A/R)で表される。また、r<r′であるので、θ>0となることから、結果として、θ=arcsin(A/R)で与えられる。
【0065】
これにより、この実施形態のミリ波イメージングシステム及びそれを用いた撮像方法によれば、光学検出器30の軌跡をより正確に算出することができ、スキャナ2の位置座標(x,y)をより正確に表すことができ、この結果、ミリ波イメージングシステムの撮像が正確なものとなる。
【0066】
[他の実施形態]
図14Aは、本発明の第1、第2の実施形態のミリ波イメージングシステムで用いた光学反射板20に代えて使用する光学反射部材201を示している。図14Aの光学反射部材201は、光学反射部202を1箇所に設け、周辺を透明部203にした1枚の部材で構成したものである。図14Bは、本発明の第3の実施形態のミリ波イメージングシステムで用いた光学反射板20A,20Bに代えて使用する光学反射部材210を示している。図14Bの光学反射部材210は、光学反射部211A,211Bを2箇所に設け、周辺を透明部212にした1枚の部材で構成したものである。これらの光学反射部材200,210を利用しても上記第1〜第3の実施形態と同様の作用、効果が得られる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、本発明の実施形態に対して種々の変形や変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0068】
1…ミリ波イメージングシステム
2…スキャナ
4…制御PC
16…コンクリート(ターゲット)
17…クラック
20,20A,20B…光学反射板
30…光学検出器
401…移動距離入力部
402…光学強度入力部
403…ミリ波強度入力部
404…移動距離・光学強度データ対応付け処理部
405…移動距離・ミリ波強度データ対応付け処理部
406…反射板幅検出部
407…長手方向位置検出部
408…スキャン画像処理部
409…長手方向位置・スキャン画像対応付け処理部
410…画像記憶部
411…画像合成処理部
412…画像モニタ
4060…反射板幅検出部
4071…スキャン角度検出部
4072…長手方向位置検出部
4090…長手方向位置・スキャン画像対応付け処理部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミリ波を利用し、隠蔽物を通して透視を行うミリ波イメージングシステムとその撮像方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、ミリ波透視スキャナの撮像幅が狭く検知対象物の形状を特定することが困難である場合に、光学反射板による位置合わせを行いながらスキャンを繰り返すことで撮像領域を拡大するミリ波イメージングシステムとその撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波を利用する透視スキャナを用いる検査ニーズは世の中に数多く存在する。一例として、戦後の高度成長期に建設された高速道路などの老朽化したコンクリート構造物や近年の施工不良マンションなどの耐久性検査を挙げる。
【0003】
コンクリート構造物の耐久性を検査する際の最重要項目の一つは、コンクリート表面のひび割れ検査である。ひび割れは、地震等によって構造物に応力が加わるとコンクリートが破断して生じる。コンクリートの表面でひび割れが発生すると、そこから雨水等が入り込み、内部の鉄筋に到達すると腐食が始まり、鉄筋の強度が落ちて構造物の耐久性低下を引き起こす。このような構造物の耐久性低下を未然に防ぐには、表面ひび割れの早期発見と補修の実施が重要となる。補修が必要となるひび割れの程度を示すには、コンクリート表面に現れたひび割れの「幅」を指標として用いる場合が多い。鉄筋への到達と直接的に関わる「深さ」も重要な指標であるが、ひび割れ幅から深さをある程度予測できるため、表面のひび割れ幅を用いて補修実施の要否を判断するのが一般的となっている。
【0004】
構造物の耐久性に関する許容ひび割れ幅に関しては、各国の提案基準によって若干のばらつきがある。おおよそ、乾燥空気中であれば幅0.3〜0.4mm、湿空中であればそれ以下の値を許容ひび割れ幅と規定しているものが多く、幅が0.2mm以上に達したひび割れについては、充填材や被覆による補修、あるいは鋼製アンカー等による補強を実施する対象としている(非特許文献1)。
【0005】
現在のひび割れ診断は目視による検査が主流であるが、実際の構造物の壁には塗装や壁紙装飾あるいは補修材などの隠蔽物によって被覆されている場合がしばしばあり、常に目視検査が行えるとは限らない。
【0006】
従来技術としてX線を使う検査方法も考えられるが、X線は送受信センサを対向に配置して透視像を得るため、測定構造物の裏側に回り込めない状況では使用困難であることや、安全面に関わる問題も出てくる。
【0007】
また、ひび割れ発生の要因はコンクリートの材料・施工・環境・構造・外力などの条件又はその組み合わせによって多岐に渡るため、ひび割れの現れる場所と時期を予測したり制御したりすることは不可能に近い。したがって、ひび割れ点検作業は構造物の広域に渡って行うことが望ましいが、超音波のように探触子を当てて探る方法では作業時間が掛かるため、実施上の課題を抱えている。
【0008】
以上のように、既存の技術によって被覆されたコンクリート表面のひび割れを迅速に検査することは困難であった。が、近年になり、ミリ波ビームを媒体とした透視技術が開発されてきた(特許文献1、特許文献2)。ミリ波とは周波数が30〜300GHz、波長が1〜10mmの電磁波であり、隠蔽物である壁紙や塗装等の被覆を透過し易く、かつ、コンクリート内部には入り難いため、コンクリート表面のみを検査するのに適している。コンクリート表面に斜めからミリ波を当てると、ひび割れがない平坦な部分では、反射波が一方向へ集中し、ひび割れがある部分では、ひび割れのエッジにおいて反射波が四方八方へ散乱する。そのゆえに、ビーム発生器とビーム受信器とを対向配置すると、表面における反射ビーム強度の違いによってひび割れ部分を検知できる。現在のところ、特許文献1および特許文献2に記載のミリ波イメージング技術は、使用困難で安全上問題のあるX線を用いずに被覆物によって隠蔽されたコンクリート表面のひび割れ検知を可能とする唯一の手段であるが、以下に述べる改良課題を抱えている。
【0009】
上述のミリ波イメージング技術では、撮像素子を1次元状に配置した数センチメートル程度の撮像幅を有するスキャナを現場作業者がコンクリート表面を転がし、画像モニタに映し出された透視像を見てひび割れの有無を判断する。この場合、撮像素子の1次元配置方向は、スキャナの移動方向と直交している。
【0010】
しかしながら、波長が数ミリメートルのミリ波によって得られた透視像は検知対象となるサブミリメートル幅のひび割れを明瞭に映し出す解像度を有していないためピンボケしており、さらに、検知対象となるひび割れの他にコンクリート表層内部の骨材・細骨材・気泡等もノイズとして映るため、数センチメートル程度の撮像幅ではひび割れを特定するのに十分な視認性を得られず、現場作業者がひび割れを見落とすことが危惧される。
【0011】
この課題を解決するには、撮像素子の数を増やして撮像幅を拡大することが考えられるが、画素数を増やすとスキャナ本体のサイズが大きくなって現場における作業性と可搬性が低下し、また、装置が高価になるという新たな問題点が生ずることになる。
【0012】
この「画素数と撮像幅」というジレンマは、ひび割れを検知対象としたミリ波スキャナのみならず、検知対象物が撮像幅に対して小さいという状況下において、他用途の透視スキャナにおいても共通した問題となっている。
【0013】
以上のような理由から、撮像幅の狭いミリ波透視スキャナで検知対象物を特定する技術の開発が要望されてはいるが、これまでのところ、そのような技術は実現できていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2007−121230号公報
【特許文献2】特開2007−121214号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】「コンクリートのひび割れ調査、補修・補強指針」、274〜279頁、社団法人日本コンクリート工学協会編著、2003年出版。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記従来の技術的課題に鑑みてなされたものであり、ミリ波透視スキャナの撮像幅が狭く、隠蔽された検知対象物の形状を特定することが困難である場合に、撮像領域を拡大して視認性を向上させることができるミリ波イメージングシステム及びその撮像方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の特徴は、スキャナのビーム発生器より被測定物表面にミリ波ビームを照射し、前記ビームの内、前記被測定物表面から反射又は散乱される成分を前記スキャナのビーム検出器で測定しつつ、前記スキャナに前記被測定物表面を移動させることにより、前記ビームの反射強度又は散乱強度のスキャナ移動方向依存性を収集するスキャナを用いたミリ波イメージングシステムの撮像方法において、平面状の光学反射板であって、長手方向の位置とこれに直交する直交方向の幅とが一対一に対応する関数関係を持つ形状の光学反射板を前記被測定物表面に、前記長手方向が前記スキャナの移動方向と直交する向きにして貼り付け、前記スキャナに光学検出器を設け、前記被測定物表面の前記光学反射板を含む線分に沿って、前記スキャナを移動させることにより、前記ビームの反射強度又は散乱強度の測定によるビーム強度スキャン測定と、前記光学検出器による光学強度スキャン測定とを同時に行い、前記光学強度スキャン測定により得られた光学強度スキャン測定像について、前記光学反射板の反射強度に相当する光学強度の開始点又は終了点からのスキャナの移動距離をもって、前記光学強度スキャン測定時ならびに前記ビーム強度スキャン測定時における前記スキャナの前記光学反射板からの進行方向に沿った移動距離を算出し、前記スキャンにより得られた光学強度スキャン測定像について、前記光学反射板の反射強度に相当する光学強度の始点から終点までのスキャナの移動距離をもって、該スキャン時における前記光学反射板上の直交方向の通過距離とし、前記通過距離を前記直交方向の幅とし、前記長手方向の位置とこれに直交する直交方向の幅とが一対一に対応する関数関係に基づき、前記直交方向の幅より前記長手方向の位置を算出し、前記算出した長手方向の位置を、前記スキャナによるスキャン位置とするミリ波イメージングシステムの撮像方法である。
【0018】
上記発明のミリ波イメージングシステムの撮像方法においては、前記線分に沿って行う前記ビーム強度スキャン測定、ならびに、前記光学強度スキャン測定、前記スキャナの前記光学反射板からの進行方向に沿った距離の算出、ならびに、前記スキャナの進行方向に対し直角である前記長手方向の位置の算出については、異なる複数の線分に対して行い、前記ビーム強度スキャン測定位置として、前記スキャナの前記光学反射板からの進行方向に沿った距離、ならびに、前記スキャナの進行方向に対し直角である前記長手方向の位置を与え、前記スキャナの前記ビーム強度スキャン測定位置と前記ビーム強度測定結果とを対応付けて画像モニタ上に表示するものとすることができる。
【0019】
また、上記発明のミリ波イメージングシステムの撮像方法においては、前記被測定物表面に、前記光学反射板を2枚貼り付け、前記スキャン時における第1の光学反射板の通過距離と第2の光学反射板の通過距離と光学反射板間の通過距離とを算出し、前記算出結果の1つ又は複数を元に、前記スキャナの移動方向の第1の光学反射板に対する角度を算出し、前記ビーム強度スキャン測定位置として、前記スキャナの前記光学反射板からの進行方向に沿った距離の算出、ならびに、前記スキャナの進行方向に対し直角である長手方向の位置を、前記角度を元に前記光学反射板との相対的な位置関係が分かるように補正し、前記スキャナの前記ビーム強度スキャン測定位置と、前記ビーム強度測定結果とを対応付けて画像モニタ上に表示するものとすることができる。
【0020】
さらに、上記発明のミリ波イメージングシステムの撮像方法においては、前記平面状の光学反射板は、幾何学的特性である形状、光学的特性である反射率、又は色の1つあるいは複数を組み合わせ、前記直交方向の幅を表記するものとすることができる。
【0021】
本発明の別の特徴は、スキャナであって、内蔵するビーム発生器より被測定物表面にミリ波ビームを照射し、前記ビームの内、前記被測定物表面から反射又は散乱される成分を内蔵するビーム検出器で測定しつつ、当該スキャナに前記被測定物表面を移動させることにより前記ビームの反射強度又は散乱強度のスキャナ移動方向依存性を収集するスキャナと、長手方向の位置とこれに直交する直交方向の幅とが一対一に対応する関数関係を持つ形状の平面状の光学反射板であって、前記被測定物表面に、前記長手方向が前記スキャナの移動方向と直交する向きにして貼り付けられた光学反射板と、前記スキャナに取り付けられ、当該スキャナの移動中に所定の向きに光学信号を発射し、前記光学反射板に反射して戻ってくる反射光学信号を受信し、光学反射強度を検出する光学検出器と、前記被測定物表面の前記光学反射板を含む線分に沿って前記スキャナを移動させるときに、前記ビームの反射強度又は散乱強度の測定によるビーム強度スキャン測定と、前記光学検出器による光学強度スキャン測定とを同時に行うビーム強度・光強度スキャン測定手段と、前記光学強度スキャン測定により得られた光学強度スキャン測定像について、前記光学反射板の反射強度に相当する光学強度の開始点又は終了点からのスキャナの移動距離をもって、前記光学強度スキャン測定時ならびに前記ビーム強度スキャン測定時における前記スキャナの前記光学反射板からの進行方向に沿った移動距離を算出する移動距離算出手段と、前記光学強度スキャン測定により得られた光学強度スキャン測定像について、前記光学反射板の反射強度に相当する光学強度の始点から終点までのスキャナの移動距離をもって、該スキャン時における前記光学反射板上の直交方向の通過距離を算出する直交方向距離算出手段と、前記通過距離を前記直交方向の幅とし、前記長手方向の位置とこれに直交する直交方向の幅とが一対一に対応する関数関係に基づき、前記直交方向の幅より前記長手方向の位置を算出し、前記算出した長手方向の位置を、前記スキャナによるスキャン位置とする長手方向位置算出手段とを備えたミリ波イメージングシステムである。
【0022】
上記発明のミリ波イメージングシステムにおいては、前記線分に沿って行う前記ビーム強度スキャン測定、前記光学強度スキャン測定、前記スキャナの前記光学反射板からの進行方向に沿った距離の算出、ならびに、前記スキャナの進行方向に対し直角である長手方向における位置の算出については、異なる複数の線分に対して行い、前記ビーム強度スキャン測定位置として、前記スキャナの前記光学反射板からの進行方向に沿った距離、ならびに、前記スキャナの進行方向に対し直角である直交方向における位置を与え、前記スキャナの前記ビーム強度スキャン測定位置と前記ビーム強度測定結果とを対応付けて画像モニタ上に表示する測定画像合成手段を備えたものとすることができる。
【0023】
また、上記発明のミリ波イメージングシステムにおいては、前記光学反射板は、前記被測定物表面に2枚貼り付けられ、前記移動距離算出手段は、前記スキャン時における第1の光学反射板の通過距離と第2の光学反射板の通過距離と前記光学反射板間の通過距離とを算出し、前記算出結果の1つ又は複数を元に、前記スキャナの移動方向の第1の光学反射板に対する角度を算出する角度算出手段と、前記ビーム強度スキャン測定位置として、該スキャナの前記第1の光学反射板からの進行方向に沿った距離の算出、ならびに、前記スキャナの進行方向に対し直角である長手方向における位置を、前記角度を元に前記第1の光学反射板との相対的な位置関係が分かるように補正する補正手段とを備え、前記測定画像合成手段は、前記スキャナの前記ビーム強度スキャン測定位置と、前記ビーム強度測定結果とを対応付けて画像モニタ上に表示するものとすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の透視ミリ波イメージングシステム及びその撮像方法によれば、ミリ波透視スキャナの撮像幅が狭く検知対象物の形状を特定することが困難である場合でも、光学反射板による位置合わせを行いながらスキャン回数を繰り返すことによって撮像領域を拡大し、隠蔽された検知対象物の形状を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1〜第3の各実施形態に係るミリ波イメージングシステムのブロック図。
【図2】図1のミリ波イメージングシステムにおけるスキャナのブロック図。
【図3】コンクリート表面とクラックにおけるミリ波の反射特性を示した説明図。
【図4】図2のスキャナにおける送信アンテナ、受信アンテナそれぞれのブロック図。
【図5】図2のスキャナにおける電磁波照射部と電磁波検知部のコンクリートに対する設置例を示す説明図。
【図6】第1、第2の実施形態における制御PCの機能構成を示すブロック図。
【図7】第1の実施形態のミリ波イメージングシステムのスキャン動作状態を示す概念図。
【図8】第1の実施形態のミリ波イメージングシステムにおける光学反射板とスキャン方向(直交方向)と長手方向を示す説明図。
【図9】第2の実施形態のミリ波イメージングシステムのスキャン動作状態を示す概念図。
【図10】第2の実施形態のミリ波イメージングシステムによるミリ波スキャンにより得られる領域拡大したスキャン画像の説明図。
【図11】第3の実施形態のミリ波イメージングシステムのスキャン動作状態を示す概念図。
【図12】第3の実施形態における制御PCの機能構成を示すブロック図。
【図13】第3の実施形態のミリ波イメージングシステムによる光学反射板、及び直交方向と長手方向とスキャン方向の角度との関係を示す説明図。
【図14A】第1、第2の実施形態における光学反射板に代えて使用する光学反射部材の説明図。
【図14B】第3の実施形態における光学反射板に代えて使用する光学反射部材の説明図。
【図15】本発明の実施例のミリ波イメージングシステムによる撮像結果の表示画像。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。尚、以下の説明において、共通する要素若しくは類似する要素については共通の又は類似する符号を用いて説明する。また、本発明において「ターゲット」とは、建物やトンネルなどの構造物に使用されるコンクリートなどを指し、ミリ波帯の電磁波(以下、「ミリ波」と称する。)とは、周波数が30GHzから300GHzの電磁波を指す。また、「媒質」とはアンテナとターゲットとの間に介在しミリ波を伝達可能な仲介物をさす。ミリ波は、可視光が透過する空気などの媒質だけでなく、人間が身にまとう衣類、住宅建材として使用される木材などの可視光では透過しない媒質も透過し、例えばターゲットであるコンクリートに対しては、周波数が100GHzの場合、10mm程度の深さまでコンクリートの表層を透過する。
【0027】
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態に係るミリ波イメージングシステム1の構成を示している。同図に示すように、ミリ波イメージングシステム1は、移動型でミリ波照射・検知を行うスキャナ2と、このスキャナ2の移動方向の前部に取り付けられた赤外線センサ、レーザ光センサのような光線照射・反射光検知を行う光学検出器30と、ロックインアンプ3と、制御、演算処理用のパーソナルコンピュータ(以下、「制御PC」と称する。)4と、ターゲット上の適宜の位置に貼り付けられた光学反射板20とで構成される。
【0028】
スキャナ2は、先願に係る公開公報である特許文献1に記載された構成のものと同様である。電磁波照射部5からミリ波をターゲットに照射し、ミリ波のターゲットに対する応答性を電磁波検知部6で測定する。測定された検知信号をロックインアンプ3へ伝送する。一方で、車輪付き筐体7がスキャンした距離を距離センサ8で検知し、検知された距離情報を制御PC4へ伝送する。
【0029】
ロックインアンプ3は、単一チャネルで入力される検知信号を位相感応検波し、ミリ波の反射強度を出力する。尚、所望ターゲット信号のS/N比が良好な場合は、ロックインアンプ3を用いずに、受信アンテナ13の出力を制御PC4に直接に送出する構成にすることができる。
【0030】
光学反射板20は光学反射性がある直角三角形の板材であり、ターゲット16上の適宜の位置、スキャンする領域の端部の位置にスキャナ2のスキャン方向に直角な方向、すなわち長手方向に長辺が沿うようにして貼り付けられている。この光学反射板20は三角形に限定されるものではなく、長手方向の位置yとこれに直交する直交方向の幅wとが一対一に対応する関数関係を持つ形状であればよい。しかしながら、長辺が短辺に対して長い細長い形状の三角形板を採用するのがシステム構成上は簡素化が図れて好ましい。
【0031】
光学検出器30は、所定強度の可視光を所定の方向に発射する発光部31と、ターゲット16に当たって反射してきた反射光を受光する受光部32と、発光部31の発光動作と受光部32の受光動作を制御し、受光部32の受光強度を検出して制御PC4へ出力する制御部33とを備えている。例えば、光学反射板20における位置の特定情報が厚みである場合には赤外変位計等を用いる。光学反射板20における位置の特定情報が色である場合にはCCDセンサ等を用いる。また、光学反射板20における位置の特定情報が反射率である場合にはレーダ等を用いる。この実施形態では、光学反射率を利用する。
【0032】
制御PC4は、ロックインアンプ3で位相感応検波された強度信号及び距離センサ8により検知された距離情報に基づいてターゲットの画像データを生成する。制御PC4は、これと同時に、光学検出器30により検知された光学強度信号及び距離センサ8により検知された距離情報に基づいて光学反射板20のスキャン該当位置での長手方向に直交する直交方向の幅wを検出し、また光学反射板20のスキャン線該当位置でのスキャン開始点x0を検出し、さらにスキャン該当位置の長手方向の位置yを算定する。制御PC4はさらに、検出したスキャン線の長手方向位置y、スキャン開始点x0とこのスキャン開始点x0から始めてスキャン線上の画像データをスキャン位置xと対応させて記憶すると共に、画像モニタに表示する演算処理を行う。
【0033】
次に、スキャナ2の具体的な構成について図2を用いて説明する。同図に示すように、スキャナ2は、電磁波照射部5と、電磁波検知部6と、距離センサ8とを車輪付き筐体7に備える。
【0034】
電磁波照射部5は、電磁波発生器9と、低周波信号器10と、変調器11と、送信アンテナ12で構成される。電磁波発生器9は、ミリ波を発生する。ここでは例えばGUNN発振器を使用し、60〜120GHzのミリ波を発生する。低周波信号器10は、外部のロックインアンプ3が位相感応検波可能な範囲の周波数信号を出力する。一方で、変調器11に周波数信号を出力する。ここでは例えばシンセサイザを使用する。変調器11は、低周波信号器10の出力信号を用いて電磁波発生器9の出力信号を変調する。ここでは例えば、PINスイッチを使用する。送信アンテナ12は、ミリ波をターゲットであるコンクリート16に放射する。ここでは例えばホーンアンテナを使用し、コンクリートにミリ波を拡散照射させる。
【0035】
電磁波検知部6は、受信アンテナ13と、検波器14と、スイッチ15で構成される。受信アンテナ13は、コンクリート16で反射したミリ波を受信する。ここで例えば平面スロットアンテナを使用する。検波器14は、例えば一列に16個配列されるものとし、受信アンテナ13により受信されたミリ波の反射強度を電気信号に変換する。ここで例えば検波器14には、各々が受信アンテナ13に接続されたショットキーダイオードを使用し、ミリ波の反射強度を検知する。スイッチ15は、各々の検波器14からの出力を順次切り換えて外部のロックインアンプ3へ出力する。ここではスイッチ15には400マイクロ秒以下の切り換え速度が可能な電子回路式のPINダイオードスイッチを使用する。これにより16個の検波器14の各々から出力された並列信号が単一入力式のロックインアンプ3に高速出力される。
【0036】
車輪付き筐体7は、スキャナ2をコンクリート16に沿ってスキャンする。ここではコンクリート16の表面に接するように車輪が備え付けられた筐体を使用し、コンクリート16表面に沿った移動スキャンを容易にしている。車輪付き筐体7のサイズは、例えば数十センチ四方程度の大きさのハンディ型とし、操作者が片手での操作を可能にしている。
【0037】
距離センサ8は、車輪付き筐体7によりスキャンされた移動距離を検知し、距離情報を外部の制御PC4へ伝送する。ここでは例えば、車輪付き筐体7の車輪の回転軸に備え付けられロータリーエンコーダにより車輪の移動量を検知し、距離センサ8内部のマイコンにより距離情報を計算し、制御PC4へ伝送する。
【0038】
次に、コンクリートで反射したミリ波の特性について図3を用いて説明する。同図は、コンクリート表面とクラックにおけるミリ波の反射特性を示した図である。コンクリート16の表面からの反射波のビームパターンを実線で、クラック17からの反射波のビームパターンを破線でそれぞれ模式的に示している。
【0039】
同図に示すように、コンクリート16の表面が平らかつ滑らかである場合、コンクリート16に対して垂直な垂直軸Kに対して角度θ1で入射したミリ波Winは、垂直軸Kに対して入射側の逆側に表面反射する。このとき入射角と反射角の法則により、垂直軸Kに対して角度θ1で表面反射するミリ波の強度が最大となる。
【0040】
一方で、ミリ波が10mm程度の深さのコンクリート表層を透過して入射した場合、コンクリート16の内部に浸透したミリ波は、ミリオーダーのクラックが有する凹凸構造により、様々な角度方向に散乱反射する。
【0041】
これにより、受信アンテナ13によりコンクリート16で反射したミリ波を受信し、コンクリート16で表面反射するミリ波Wcrtとコンクリート表層内部のクラック17で散乱反射するミリ波Wcrkの反射特性の違いから、クラック17を検出することができる。
【0042】
次に、送信アンテナと受信アンテナの構成及び設置方法について図4、5を用いて説明する。図4は、送信アンテナと受信アンテナの構成を概略的に示した図である。電磁波照射部5と電磁波検知部6においては、異なるアンテナを用いたバイスタティック系の電磁波送受信方式により、ミリ波の送受信を行うこととし、同図(a)に示すように電磁波照射部5における送信アンテナ12には主軸がB1で表されるホーンアンテナを使用し、同図(b)に示すように電磁波検知部6における受信アンテナ13には主軸がB2で表される平面スロットアンテナを使用する。
【0043】
図5は、電磁波照射部と電磁波検知部のコンクリートに対する設置例を示す。同図に示すように、コンクリート16の表面に垂直な垂直軸Kとしたとき、送信アンテナ12の主軸B1及び垂直軸Kのなす角度θ1と、受信アンテナ13の主軸B2及び垂直軸Kのなす角度θ2とが異なるように設置する。同図では、受信アンテナ13の主軸B2及び垂直軸Kのなす角度θ2が、θ1よりも角度φだけ大きい状態を示している。
【0044】
このように送信アンテナ12と受信アンテナ13を設置することで、受信アンテナ13の方向とコンクリート16で表面反射したミリ波成分の進行方向とが異なるので、表面反射したミリ波成分が受信アンテナ13に入るのが抑制され、所望信号であるコンクリート16表層内部のクラック17で散乱反射したミリ波成分のSN比が向上し、クラック17の検出精度が向上する。
【0045】
このような構成としたことで、スキャナ2の電磁波発生器9で発生したミリ波は、車輪付き筐体7底面の開口部からコンクリート16へ照射され、コンクリート16で反射した反射波が複数の受信アンテナ13で受信され、それぞれの受信アンテナ13に対応する検波器14によって検知される。検知された反射強度は、ダイオードの整流作用によって電圧値に変換され、ロックインアンプ3によりその強度が数値化され制御PC4の画面に表示される。このとき、コンクリート16で表面反射した反射波と、コンクリート表層内部のミリオーダーのクラック17で散乱反射した反射波の反射強度の違いから、クラック17を検知することができる。
【0046】
さらに、一列に幅lwの中にn個配列された検波器14の各々から並列出力された出力信号を、電子回路式の切り換えスイッチ15により順次切り換えることで、各検波器からの複数の並列信号が高速に出力され、一方向のスキャンでlw幅の画像データを生成することができる。
【0047】
これにより、操作者が手で車輪付き筐体7をコンクリートの表面に沿ってスキャンすると、距離センサ8によってスキャン移動距離情報が制御PC4に伝送される。一方で、制御PC4により、ロックインアンプ3で数値化されたスイッチ15からの出力信号の強度を、スキャン方向xのスキャナ2の移動距離に合わせて次々に描画することで、広範囲に渡ってコンクリート16表面のx方向に沿って一定幅lwの二次元画像をリアルタイムに得ることができる。
【0048】
スキャン線xの長手方向位置yを自動測定する手順について、図6の制御PC4の演算処理機能を処理機能ごとに分解して示した機能ブロック図、また図7、図8を用いて説明する。制御PC4は、距離センサ8からの距離信号を入力してデータ化する移動距離入力部41、光学検出器30からの光学強度信号を入力してデータ化する光学強度入力部402、ロックインアンプ3からのミリ波強度信号を入力してデータ化するミリ波強度入力部403、光学強度入力部402からの光学強度データと移動距離入力部401の出力するスキャン方向xの移動距離dを対応付けて順次記憶する移動距離・光学強度データ対応付け処理部404、ミリ波強度入力部403のミリ波強度データと同じくスキャン方向xの移動距離dと対応付けて順次記憶する移動距離・ミリ波強度データ対応付け処理部405を備えている。
【0049】
制御PC4は、また、移動距離・光学強度データ対応付け処理部404の処理データから光学反射板20のスキャン方向xの横断幅wとその横断の終了点x0(開始点であってもよい)とを検出する反射板幅検出部406、幅wを与える横断終了点x0の光学反射板長辺上の頂点(0,0)からの距離yを算出する関数y=f(w)を記憶し、この関数に前記検出幅wを当てはめることによって横断終了点x0の長手方向位置yを求める長手方向位置検出部407を備えている。
【0050】
制御PC4は、さらに、移動距離・ミリ波強度データ対応付け処理部405が1スキャンごとに処理する撮像幅lwの画像データを得るスキャン画像処理部408、スキャン画像処理部408の得たスキャン方向(x方向)の各スキャン点の画像データを、長手方向位置検出部407が求めたスキャン線の長手方向位置yと対応付けて画像記憶部410にストアする長手方向位置・スキャン画像対応付け処理部409、画像記憶部410の画像データを読み出して長手方向位置y上に撮像幅lw分でスキャン長さ分の領域の画像合成を行い、ターゲット16の二次元のミリ波イメージを得て画像モニタ412に表示させる画像合成部411を備えている。
【0051】
この実施形態のミリ波イメージングシステムでは、スキャナ2の送信アンテナ12で放射されたミリ波が、媒質を透過した後にターゲット16で反射し、受信アンテナ13及び検波器14により検知された反射波の強度を、ロックインアンプ3で数値化することで、コンクリート16で表面反射した反射波と、コンクリート16表層内部のミリオーダーのクラック17で散乱反射した反射波の反射強度の違いから、クラック17を検出する。さらに、車輪付き筐体7でコンクリート16の表面に沿ってスキャンすることで、距離センサ8により検知した距離情報に基づいて、スキャン線x方向の一定撮像幅lwのコンクリート16表面の二次元画像データを形成する。
【0052】
そして、このスキャナ2のスキャン時のスキャン線の長手方向の位置yは、次のようにして特定する。上述したように、光学反射板20は、ターゲットであるコンクリート16の上の適宜の位置、つまり、通常ターゲット16のスキャン対象領域の近くで、かつ、スキャンの邪魔にならない位置に貼り付ける。
【0053】
この光学反射板20は、長手方向の位置を一意に特定できることが特徴であり、例えば図8に示すような三角形状である。スキャナ2のスキャン方向をxとし、それに直交する長手方向をyとし、スキャンxiの長手方向位置yiとすれば、図8に示す横断幅wiが光学反射板20の長手方向の位置yiを一意に特定する情報となる。
【0054】
スキャナ2に設置した光学検出器30が光学反射板20上を通過するようにコンクリート16の表面のスキャンを行えば、光学検出器30が光学反射板20の位置で光学反射強度が強くなるので、この光学反射強度が強い部分の長さを光学反射板20の幅wとする。そして、この幅wの値から、スキャナ2のスキャン時のそのスキャン線の長手方向位置yをy=f(w)の関数式にて換算する。光学反射板20は、その長辺を長手方向yに一致させることにより、光学反射板20の検出終了点をスキャン方向の一つのスキャン基点(0,y)とする位置合わせも行う。
【0055】
いま、あるスキャン番号をxiとする。このスキャンxiにおいて、光学検出器30が検出した光学反射板20の横断幅wiであったとする。この場合、スキャンxiの長手方向の位置yiは、yi=f(wi)にて得る。そして、光学反射板20の検出終了点をこのスキャンxiの開始基点(di1,yi)=(0,yi)とする。すなわち、距離センサ8の検出するターゲット16に対するスキャン開始点とし、ここからスキャンxiが直交x方向に行われ、スキャナ2のスキャン方向に刻み増分Δdずつm点スキャンするとして、このΔdごとに距離センサ8の移動距離dijと(dij,yi)点におけるミリ波反射強度のデータ(pj1,pj2,…,pjn)とを対応づけてスキャンデータを得たとする。ここで、スキャン点は、di1(開始点),di2,…,dim(終了点)であり、各dij点のスキャンにおける(pj1,pj2,…,pjn)は、スキャナ2の撮像幅lwの中にn個の検出点があり、スキャン幅lwの中でn点ずつ同時にスキャンすることを意味している。
【0056】
これによって、画像モニタ412には、図15(a)に示すようなミリ波スキャン画像35が表示される。
【0057】
以上のように、この実施形態のミリ波イメージングシステム及びそれを用いた撮像方法によれば、ミリ波スキャン対象であるターゲット16に対して長手方向の正確な位置yiにおいて直交方向xにlw幅のミリ波スキャン画像35が得られる。
【0058】
[第2の実施形態]
図9は、本発明の第2の実施形態に係るミリ波イメージングシステムの全体構成を示し、図10は画像モニタ412の表示例を示している。この実施形態のシステム構成は第1の実施の形態と共通であり、図1、図2に示したものである。そして、スキャナ2によるミリ波スキャンは、スキャン幅lwずつy位置をずらせて繰り返し行う点、また、制御PC4内では、スキャン幅lwずつy位置をずらせて行った各スキャンxiでのミリ波反射強度データ(dij;pj1,pj2,…,pjn)を画像データ記憶部410にストアする点、そして、画像合成部411が、画像データ記憶部410にストアされているy位置をずらせて行った複数p回(x1〜xpのスキャン)のミリ波反射強度データを画像合成し、画像モニタ412に描画することでターゲット16の広いスキャン対象面の内部の2次元透視画像を得るようにした点が、第1の実施形態とは異なる。
【0059】
本発明のミリ波イメージングシステムの実施例にて得たモニタ画像を図15(b)に示している。撮像幅lwが1cmのミリ波スキャナ2を用いて、セラミックタイル下のコンクリートひび割れ(幅0.35mm)を9スキャン分撮像した。図15(a)に示すように、画素アレイの撮像幅lwが1cmであるとき、Aの位置に潜むひび割れの有無を画像から認識することは困難である。図15(b)は、撮像幅lwずつずらせたスキャン位置y1〜y9それぞれにおいて合計9スキャンx1〜x9を行い、9スキャン分の撮像画像を合成したものであり、ひび割れ形状を明瞭に認識できることが分かる。
【0060】
[第3の実施形態]
図11は、本発明の第3の実施形態に係るミリ波イメージングシステムの全体構成を示している。この実施形態は、ターゲット16の表面に2つの光学反射板20A,20Bを貼り、スキャナ2の移動方向の光学反射板20A,20Bに対する角度θを自動算出することを特徴とする。これにより、スキャナ2の基点側の第1の光学反射板20Aからのスキャン方向に沿った移動距離、ならびに、スキャナ2のスキャン方向に対し直角である方向における位置について、より正確に補正を行うことが可能となる。
【0061】
この実施形態における制御PC4の処理機能は図12のようになる。すなわち、図6に示した第1、第2の実施形態における制御PC4の処理機能と共通する移動距離入力部41、光学強度入力部402、ミリ波強度入力部403、移動距離・光学強度データ対応付け処理部404、移動距離・ミリ波強度データ対応付け処理部405を備えている。
【0062】
制御PC4は、また、移動距離・光学強度データ対応付け処理部404の処理データから光学反射板20A,20Bそれぞれのスキャン線の通過距離r,r′、光学反射板20A,20B間の通過距離Rを算出する反射板幅検出部4060、スキャン線の長手y方向に対する角度θを算出するスキャン角度検出部4071、スキャンxiについて第1の光学反射板20Aの長辺上の頂点(0,0)からスキャン開始点までの距離yiを算出する長手方向位置検出部4072を備えている。
【0063】
制御PC4は、また、スキャン画像処理部408、スキャン画像処理部408の得た角度θのスキャン方向の画像データを、長手方向位置検出部4072が求めたスキャン基点の位置(0,yi)、スキャン番号xiと対応付けて画像記憶部410にストアする長手方向位置・スキャン画像対応付け処理部4090を備え、さらに、第2の実施形態と同様に画像記憶部410にストアされている画像データのθ傾いた状態での画像合成を行い、ターゲット16の二次元のミリ波イメージを得て画像モニタ412に表示させる画像合成部411を備えている。
【0064】
この実施形態のミリ波イメージングシステムを用いた撮像方法を図13を用いて説明する。ここでは、2つの直角二等辺三角形板を光学反射板20A,20Bとして用いている。第1の光学反射板20Aは、(x,y)座標がそれぞれ(0,0),(0,a),(a,a)に頂点を持つ直角二等辺三角形である。また、第2の光学反射板20Bは、(x,y)座標がそれぞれ(−A,0),(−A,a),(−A−a,a)に頂点を持つ直角二等辺三角形である。スキャナ2の光学検出器30が測定を行ったところ、第1の光学反射板20Aの通過距離がr、光学反射板20A,20B間の通過距離がR、第2の光学反射板20Bの通過距離がr′だったとする。この時、スキャナ2の移動方向のx軸からのずれは、θ=±arcsin(A/R)で表される。また、r<r′であるので、θ>0となることから、結果として、θ=arcsin(A/R)で与えられる。
【0065】
これにより、この実施形態のミリ波イメージングシステム及びそれを用いた撮像方法によれば、光学検出器30の軌跡をより正確に算出することができ、スキャナ2の位置座標(x,y)をより正確に表すことができ、この結果、ミリ波イメージングシステムの撮像が正確なものとなる。
【0066】
[他の実施形態]
図14Aは、本発明の第1、第2の実施形態のミリ波イメージングシステムで用いた光学反射板20に代えて使用する光学反射部材201を示している。図14Aの光学反射部材201は、光学反射部202を1箇所に設け、周辺を透明部203にした1枚の部材で構成したものである。図14Bは、本発明の第3の実施形態のミリ波イメージングシステムで用いた光学反射板20A,20Bに代えて使用する光学反射部材210を示している。図14Bの光学反射部材210は、光学反射部211A,211Bを2箇所に設け、周辺を透明部212にした1枚の部材で構成したものである。これらの光学反射部材200,210を利用しても上記第1〜第3の実施形態と同様の作用、効果が得られる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、本発明の実施形態に対して種々の変形や変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0068】
1…ミリ波イメージングシステム
2…スキャナ
4…制御PC
16…コンクリート(ターゲット)
17…クラック
20,20A,20B…光学反射板
30…光学検出器
401…移動距離入力部
402…光学強度入力部
403…ミリ波強度入力部
404…移動距離・光学強度データ対応付け処理部
405…移動距離・ミリ波強度データ対応付け処理部
406…反射板幅検出部
407…長手方向位置検出部
408…スキャン画像処理部
409…長手方向位置・スキャン画像対応付け処理部
410…画像記憶部
411…画像合成処理部
412…画像モニタ
4060…反射板幅検出部
4071…スキャン角度検出部
4072…長手方向位置検出部
4090…長手方向位置・スキャン画像対応付け処理部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキャナのビーム発生器より被測定物表面にミリ波ビームを照射し、前記ビームの内、前記被測定物表面から反射又は散乱される成分を前記スキャナのビーム検出器で測定しつつ、前記スキャナに前記被測定物表面を移動させることにより、前記ビームの反射強度又は散乱強度のスキャナ移動方向依存性を収集するスキャナを用いたミリ波イメージングシステムの撮像方法において、
平面状の光学反射板であって、長手方向の位置とこれに直交する直交方向の幅とが一対一に対応する関数関係を持つ形状の光学反射板を前記被測定物表面に、前記長手方向が前記スキャナの移動方向と直交する向きにして貼り付け、
前記スキャナに光学検出器を設け、
前記被測定物表面の前記光学反射板を含む線分に沿って、前記スキャナを移動させることにより、前記ビームの反射強度又は散乱強度の測定によるビーム強度スキャン測定と、前記光学検出器による光学強度スキャン測定とを同時に行い、
前記光学強度スキャン測定により得られた光学強度スキャン測定像について、前記光学反射板の反射強度に相当する光学強度の開始点又は終了点からのスキャナの移動距離をもって、前記光学強度スキャン測定時ならびに前記ビーム強度スキャン測定時における前記スキャナの前記光学反射板からの進行方向に沿った移動距離を算出し、
前記スキャンにより得られた光学強度スキャン測定像について、前記光学反射板の反射強度に相当する光学強度の始点から終点までのスキャナの移動距離をもって、該スキャン時における前記光学反射板上の直交方向の通過距離とし、
前記通過距離を前記直交方向の幅とし、前記長手方向の位置とこれに直交する直交方向の幅とが一対一に対応する関数関係に基づき、前記直交方向の幅より前記長手方向の位置を算出し、
前記算出した長手方向の位置を、前記スキャナによるスキャン位置とすることを特徴とするミリ波イメージングシステムの撮像方法。
【請求項2】
前記線分に沿って行う前記ビーム強度スキャン測定、ならびに、前記光学強度スキャン測定、前記スキャナの前記光学反射板からの進行方向に沿った距離の算出、ならびに、前記スキャナの進行方向に対し直角である前記長手方向の位置の算出については、異なる複数の線分に対して行い、
前記ビーム強度スキャン測定位置として、前記スキャナの前記光学反射板からの進行方向に沿った距離、ならびに、前記スキャナの進行方向に対し直角である前記長手方向の位置を与え、
前記スキャナの前記ビーム強度スキャン測定位置と前記ビーム強度測定結果とを対応付けて画像モニタ上に表示することを特徴とする請求項1に記載のミリ波イメージングシステムの撮像方法。
【請求項3】
前記被測定物表面に、前記光学反射板を2枚貼り付け、
前記スキャン時における第1の光学反射板の通過距離と第2の光学反射板の通過距離と光学反射板間の通過距離とを算出し、
前記算出結果の1つ又は複数を元に、前記スキャナの移動方向の第1の光学反射板に対する角度を算出し、
前記ビーム強度スキャン測定位置として、前記スキャナの前記光学反射板からの進行方向に沿った距離の算出、ならびに、前記スキャナの進行方向に対し直角である長手方向の位置を、前記角度を元に前記光学反射板との相対的な位置関係が分かるように補正し、
前記スキャナの前記ビーム強度スキャン測定位置と、前記ビーム強度測定結果とを対応付けて画像モニタ上に表示することを特徴とする請求項1又は2に記載のミリ波イメージングシステムの撮像方法。
【請求項4】
前記平面状の光学反射板は、幾何学的特性である形状、光学的特性である反射率、又は色の1つあるいは複数を組み合わせ、前記直交方向の幅を表記することを特徴とする請求項1又は3に記載のミリ波イメージングシステムの撮像方法。
【請求項5】
スキャナであって、内蔵するビーム発生器より被測定物表面にミリ波ビームを照射し、前記ビームの内、前記被測定物表面から反射又は散乱される成分を内蔵するビーム検出器で測定しつつ、当該スキャナに前記被測定物表面を移動させることにより前記ビームの反射強度又は散乱強度のスキャナ移動方向依存性を収集するスキャナと、
長手方向の位置とこれに直交する直交方向の幅とが一対一に対応する関数関係を持つ形状の平面状の光学反射板であって、前記被測定物表面に、前記長手方向が前記スキャナの移動方向と直交する向きにして貼り付けられた光学反射板と、
前記スキャナに取り付けられ、当該スキャナの移動中に所定の向きに光学信号を発射し、前記光学反射板に反射して戻ってくる反射光学信号を受信し、光学反射強度を検出する光学検出器と、
前記被測定物表面の前記光学反射板を含む線分に沿って前記スキャナを移動させるときに、前記ビームの反射強度又は散乱強度の測定によるビーム強度スキャン測定と、前記光学検出器による光学強度スキャン測定とを同時に行うビーム強度・光強度スキャン測定手段と、
前記光学強度スキャン測定により得られた光学強度スキャン測定像について、前記光学反射板の反射強度に相当する光学強度の開始点又は終了点からのスキャナの移動距離をもって、前記光学強度スキャン測定時ならびに前記ビーム強度スキャン測定時における前記スキャナの前記光学反射板からの進行方向に沿った移動距離を算出する移動距離算出手段と、
前記光学強度スキャン測定により得られた光学強度スキャン測定像について、前記光学反射板の反射強度に相当する光学強度の始点から終点までのスキャナの移動距離をもって、該スキャン時における前記光学反射板上の直交方向の通過距離を算出する直交方向距離算出手段と、
前記通過距離を前記直交方向の幅とし、前記長手方向の位置とこれに直交する直交方向の幅とが一対一に対応する関数関係に基づき、前記直交方向の幅より前記長手方向の位置を算出し、前記算出した長手方向の位置を、前記スキャナによるスキャン位置とする長手方向位置算出手段とを備えたことを特徴とするミリ波イメージングシステム。
【請求項6】
前記線分に沿って行う前記ビーム強度スキャン測定、前記光学強度スキャン測定、前記スキャナの前記光学反射板からの進行方向に沿った距離の算出、ならびに、前記スキャナの進行方向に対し直角である長手方向における位置の算出については、異なる複数の線分に対して行い、前記ビーム強度スキャン測定位置として、前記スキャナの前記光学反射板からの進行方向に沿った距離、ならびに、前記スキャナの進行方向に対し直角である直交方向における位置を与え、前記スキャナの前記ビーム強度スキャン測定位置と前記ビーム強度測定結果とを対応付けて画像モニタ上に表示する測定画像合成手段を備えたことを特徴とする請求項5に記載のミリ波イメージングシステム。
【請求項7】
前記光学反射板は、前記被測定物表面に2枚貼り付けられ、
前記移動距離算出手段は、前記スキャン時における第1の光学反射板の通過距離と第2の光学反射板の通過距離と前記光学反射板間の通過距離とを算出し、
前記算出結果の1つ又は複数を元に、前記スキャナの移動方向の第1の光学反射板に対する角度を算出する角度算出手段と、
前記ビーム強度スキャン測定位置として、該スキャナの前記第1の光学反射板からの進行方向に沿った距離の算出、ならびに、前記スキャナの進行方向に対し直角である長手方向における位置を、前記角度を元に前記第1の光学反射板との相対的な位置関係が分かるように補正する補正手段とを備え、
前記測定画像合成手段は、前記スキャナの前記ビーム強度スキャン測定位置と、前記ビーム強度測定結果とを対応付けて画像モニタ上に表示することを特徴とする請求項5又は6に記載のミリ波イメージングシステム。
【請求項1】
スキャナのビーム発生器より被測定物表面にミリ波ビームを照射し、前記ビームの内、前記被測定物表面から反射又は散乱される成分を前記スキャナのビーム検出器で測定しつつ、前記スキャナに前記被測定物表面を移動させることにより、前記ビームの反射強度又は散乱強度のスキャナ移動方向依存性を収集するスキャナを用いたミリ波イメージングシステムの撮像方法において、
平面状の光学反射板であって、長手方向の位置とこれに直交する直交方向の幅とが一対一に対応する関数関係を持つ形状の光学反射板を前記被測定物表面に、前記長手方向が前記スキャナの移動方向と直交する向きにして貼り付け、
前記スキャナに光学検出器を設け、
前記被測定物表面の前記光学反射板を含む線分に沿って、前記スキャナを移動させることにより、前記ビームの反射強度又は散乱強度の測定によるビーム強度スキャン測定と、前記光学検出器による光学強度スキャン測定とを同時に行い、
前記光学強度スキャン測定により得られた光学強度スキャン測定像について、前記光学反射板の反射強度に相当する光学強度の開始点又は終了点からのスキャナの移動距離をもって、前記光学強度スキャン測定時ならびに前記ビーム強度スキャン測定時における前記スキャナの前記光学反射板からの進行方向に沿った移動距離を算出し、
前記スキャンにより得られた光学強度スキャン測定像について、前記光学反射板の反射強度に相当する光学強度の始点から終点までのスキャナの移動距離をもって、該スキャン時における前記光学反射板上の直交方向の通過距離とし、
前記通過距離を前記直交方向の幅とし、前記長手方向の位置とこれに直交する直交方向の幅とが一対一に対応する関数関係に基づき、前記直交方向の幅より前記長手方向の位置を算出し、
前記算出した長手方向の位置を、前記スキャナによるスキャン位置とすることを特徴とするミリ波イメージングシステムの撮像方法。
【請求項2】
前記線分に沿って行う前記ビーム強度スキャン測定、ならびに、前記光学強度スキャン測定、前記スキャナの前記光学反射板からの進行方向に沿った距離の算出、ならびに、前記スキャナの進行方向に対し直角である前記長手方向の位置の算出については、異なる複数の線分に対して行い、
前記ビーム強度スキャン測定位置として、前記スキャナの前記光学反射板からの進行方向に沿った距離、ならびに、前記スキャナの進行方向に対し直角である前記長手方向の位置を与え、
前記スキャナの前記ビーム強度スキャン測定位置と前記ビーム強度測定結果とを対応付けて画像モニタ上に表示することを特徴とする請求項1に記載のミリ波イメージングシステムの撮像方法。
【請求項3】
前記被測定物表面に、前記光学反射板を2枚貼り付け、
前記スキャン時における第1の光学反射板の通過距離と第2の光学反射板の通過距離と光学反射板間の通過距離とを算出し、
前記算出結果の1つ又は複数を元に、前記スキャナの移動方向の第1の光学反射板に対する角度を算出し、
前記ビーム強度スキャン測定位置として、前記スキャナの前記光学反射板からの進行方向に沿った距離の算出、ならびに、前記スキャナの進行方向に対し直角である長手方向の位置を、前記角度を元に前記光学反射板との相対的な位置関係が分かるように補正し、
前記スキャナの前記ビーム強度スキャン測定位置と、前記ビーム強度測定結果とを対応付けて画像モニタ上に表示することを特徴とする請求項1又は2に記載のミリ波イメージングシステムの撮像方法。
【請求項4】
前記平面状の光学反射板は、幾何学的特性である形状、光学的特性である反射率、又は色の1つあるいは複数を組み合わせ、前記直交方向の幅を表記することを特徴とする請求項1又は3に記載のミリ波イメージングシステムの撮像方法。
【請求項5】
スキャナであって、内蔵するビーム発生器より被測定物表面にミリ波ビームを照射し、前記ビームの内、前記被測定物表面から反射又は散乱される成分を内蔵するビーム検出器で測定しつつ、当該スキャナに前記被測定物表面を移動させることにより前記ビームの反射強度又は散乱強度のスキャナ移動方向依存性を収集するスキャナと、
長手方向の位置とこれに直交する直交方向の幅とが一対一に対応する関数関係を持つ形状の平面状の光学反射板であって、前記被測定物表面に、前記長手方向が前記スキャナの移動方向と直交する向きにして貼り付けられた光学反射板と、
前記スキャナに取り付けられ、当該スキャナの移動中に所定の向きに光学信号を発射し、前記光学反射板に反射して戻ってくる反射光学信号を受信し、光学反射強度を検出する光学検出器と、
前記被測定物表面の前記光学反射板を含む線分に沿って前記スキャナを移動させるときに、前記ビームの反射強度又は散乱強度の測定によるビーム強度スキャン測定と、前記光学検出器による光学強度スキャン測定とを同時に行うビーム強度・光強度スキャン測定手段と、
前記光学強度スキャン測定により得られた光学強度スキャン測定像について、前記光学反射板の反射強度に相当する光学強度の開始点又は終了点からのスキャナの移動距離をもって、前記光学強度スキャン測定時ならびに前記ビーム強度スキャン測定時における前記スキャナの前記光学反射板からの進行方向に沿った移動距離を算出する移動距離算出手段と、
前記光学強度スキャン測定により得られた光学強度スキャン測定像について、前記光学反射板の反射強度に相当する光学強度の始点から終点までのスキャナの移動距離をもって、該スキャン時における前記光学反射板上の直交方向の通過距離を算出する直交方向距離算出手段と、
前記通過距離を前記直交方向の幅とし、前記長手方向の位置とこれに直交する直交方向の幅とが一対一に対応する関数関係に基づき、前記直交方向の幅より前記長手方向の位置を算出し、前記算出した長手方向の位置を、前記スキャナによるスキャン位置とする長手方向位置算出手段とを備えたことを特徴とするミリ波イメージングシステム。
【請求項6】
前記線分に沿って行う前記ビーム強度スキャン測定、前記光学強度スキャン測定、前記スキャナの前記光学反射板からの進行方向に沿った距離の算出、ならびに、前記スキャナの進行方向に対し直角である長手方向における位置の算出については、異なる複数の線分に対して行い、前記ビーム強度スキャン測定位置として、前記スキャナの前記光学反射板からの進行方向に沿った距離、ならびに、前記スキャナの進行方向に対し直角である直交方向における位置を与え、前記スキャナの前記ビーム強度スキャン測定位置と前記ビーム強度測定結果とを対応付けて画像モニタ上に表示する測定画像合成手段を備えたことを特徴とする請求項5に記載のミリ波イメージングシステム。
【請求項7】
前記光学反射板は、前記被測定物表面に2枚貼り付けられ、
前記移動距離算出手段は、前記スキャン時における第1の光学反射板の通過距離と第2の光学反射板の通過距離と前記光学反射板間の通過距離とを算出し、
前記算出結果の1つ又は複数を元に、前記スキャナの移動方向の第1の光学反射板に対する角度を算出する角度算出手段と、
前記ビーム強度スキャン測定位置として、該スキャナの前記第1の光学反射板からの進行方向に沿った距離の算出、ならびに、前記スキャナの進行方向に対し直角である長手方向における位置を、前記角度を元に前記第1の光学反射板との相対的な位置関係が分かるように補正する補正手段とを備え、
前記測定画像合成手段は、前記スキャナの前記ビーム強度スキャン測定位置と、前記ビーム強度測定結果とを対応付けて画像モニタ上に表示することを特徴とする請求項5又は6に記載のミリ波イメージングシステム。
【図6】
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【公開番号】特開2010−286308(P2010−286308A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139272(P2009−139272)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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