説明

ミリ波送受信システム及び反射板

【課題】設置が容易なミリ波送受信システムを実現する。
【解決手段】ミリ波の送受信を行うミリ波送受信システム100は、上記ミリ波を送信する送信装置1と、送信装置1が送信したミリ波を反射する反射板41と、反射板41が反射したミリ波を受信する受信装置2とを備え、反射板41は、ミリ波を反射する反射面43として金属板、金属シートまたは金属膜を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送波をミリ波帯で無線送受信するミリ波送受信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の無線通信システムとして、特許文献1のような室内無線通信システムや、特許文献2のような光空間伝送システムが開示されている。
【0003】
図12は、第1の従来例である特許文献1の室内無線通信システムの構成を表す概略図である。
【0004】
図12に示すように、天井付近の壁面に設置された親機810及び親機アンテナ820からの信号は、伝搬経路890のように天井面にほぼ一様に伝搬し、副反射鏡850で反射し、床面方向に、伝搬経路900を通って伝搬する。この信号は、天井面を指向するように設置された子機アンテナ840で受信され、子機830へ導かれる。この例では、反射鏡は水平面に対し約45度下方に傾きを持たせて設置される。
【0005】
また、図13は、第2の従来例である特許文献2の光空間伝送システムで用いられている反射鏡の構成を表す概略図である。
【0006】
図13に示すように、特許文献2の光空間伝送システムも、上記第1の従来例に示すように、反射鏡を使う構成である。第2の従来例での反射鏡は、図13に示すように、天井に固定される台座部310と、この台座部310から垂設された軸部320に回転自在に取り付けられた反射鏡330とから構成される。この反射鏡330は、光を全反射し、水平面内、垂直面内で回転自在に、軸部320に取り付けられている。
【特許文献1】特開平9−51293号公報(1997年2月18日公開)
【特許文献2】特開平5−206946号公報(1993年8月13日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の従来例の構成では、反射鏡が用いられるゆえに下記のような問題があった。(1)反射鏡は鏡であるためガラス等で構成され、そのため重量が重く、天井自体には取り付け困難である。(2)精度の高い角度調整が困難であり、望ましくは、2軸の回転機構が必要である。
【0008】
上記(1)に関し、近年、一戸建て、マンション含めて、石膏ボードやベニヤ等でつくられた天井が多い。これらの材質で構成された天井板自体は、強度が低く、鏡等の重量物を支えるには、骨組部分の板柱に、ネジで取り付ける等の工夫が必要である。そのため、取り付け場所が限定されたり、落下等には十分注意する必要があった。加えて、素人では取り付け困難で、業者等に工事を依頼する必要があった。
【0009】
上記(2)については、上記反射鏡では、重量が大きいこともあり、角度調整できるような回転機構の一例として、カメラの三脚等で使用されている回転球を使用した回転機構が、考えられる。しかしながら、この回転機構では角度1度レベルの回転精度が伴わないという問題がある。加えて、3次元での角度調整機能、例えば水平面内の角度と仰角との2軸の回転機能を用いる必要があった。このような作業は高所での作業ということもあり、精度の高い角度調整は非常に困難である。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、設置が容易なミリ波送受信システムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るミリ波送受信システムは、上記課題を解決するために、ミリ波の送受信を行うミリ波送受信システムにおいて、上記ミリ波を送信する送信装置と、上記送信装置が送信したミリ波を反射する反射板と、上記反射板が反射したミリ波を受信する受信装置とを備え、上記反射板は、上記ミリ波を反射する反射面として金属板、金属シートまたは金属膜を有することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る反射板は、ミリ波を送信する送信装置と、当該送信装置が送信したミリ波を反射する反射板と、当該反射板が反射したミリ波を受信する受信装置とを含むミリ波送受信システムに含まれる上記反射板であって、上記ミリ波を反射する反射面として金属板、金属箔、または金属膜を有していることを特徴とする。
【0013】
上記構成によると、上記送信装置から送信されたミリ波(マイクロ波に属する)は、上記反射板により反射される。そして、上記反射板により反射されたミリ波は、上記受信装置に受信される。ここで、上記反射板は、ミリ波を反射するので、上記反射板の反射面が金属板、金属箔又は金属膜であれば、十分に、ミリ波を反射することが可能である。このため、上記反射板を、鏡などからなる反射鏡で構成する必要がなく、反射板を軽量化することができる。
【0014】
上記反射面は、マイクロ波帯で反射係数の高いものであれば使用可能である。具体的には、一例として、反射係数が、1に近い導伝性(半導伝性)のシート/塗料/薄膜/薄板/テープであっても構わない。
【0015】
つまり、上記反射面を構成する金属板、金属シートまたは金属膜は、膜厚が薄くてもよく、例えば、厚さ0.5mm〜1mm程度のアルミ板で構成してもよい。さらに、反射板全体を金属で構成する必要はなく、例えば、厚さ数mmの発泡ポリスチレンシートや、厚さ1mm以下のポリプロピレンシート等に、アルミテープを張り付けることにより反射板として構成することも可能である。
【0016】
上記構成により、反射板を著しく軽量化(文房具の下敷き程度)とすることが可能となり、石膏ボードやベニヤ板等で構成された天井板に、ネジやテープ等で容易に取り付けることができる。このため、天井の負荷も小さく、落下したり天井がはげたりすることは、ほとんど無い。仮に落下したとしても、人が怪我をしたり、物が破損したりすることは無く、反射鏡を取り付けつける場合と比較して、取り付けやすさ・取り付け精度が向上しかつ安全性は著しく向上する。つまり上記構成によると、上記反射板は、反射鏡を用いていないので、小型軽量化でき、素人でも取り付けることができる。
【0017】
このように、上記構成によると、設置が容易なミリ波送受信システムを実現することができる。
【0018】
上記ミリ波送受信システムの上記反射板は、上記反射面を有する第1の面と、当該第1の面に対して傾斜して配される第2の面とを有することが好ましい。
【0019】
上記構成によると、上記第1の面と、上記第2の面とは傾斜して配されているので、上記反射板を天井に配置した場合、仰角方向の角度合わせは不要となり、水平方向の角度合わせのみで、反射板の調整が、著しく容易となる。
【0020】
さらに、上記構成によると、例えば、天井などに上記反射板を固定する場合、上記第2の面を固定すればよい。このように、上記反射板を固定するための第2の面を有するため、天井などの設置箇所との設置面積が広くなる。
【0021】
一例として、第2面は第1の面である反射板のサイズと同等寸法にすること、具体的には、第1の面の大きさは、約15cm角とし、第2の面も、15cm角とすることによって、天井に接する第2の面は、15cm×15cmの大きさとなる。そして、この面接触によって、ネジまたはテープ等によって、反射板を天井に取り付けることができる。このように安定した取り付けができ、第1の面と第2の面とが成す傾斜角(例えば45度)の精度の確保が容易で、取り付けたあとの経時変化も小さく安定した取り付けと、安定無線伝送路を確保することができる。
【0022】
設置方法として、上記反射板を固定する場合は、第1の面へのミリ波(電波)の入射方向が水平で正面方向となるように、水平方向のみ回転して、上記受信装置のミリ波の受信レベルまたは受信C/N比が最大となるように、上記反射板の回転角を調整し固定するだけで取り付け可能である。これまでの反射鏡のように2軸の回転機能は不要である。
【0023】
さらに、反射板自体も、厚さ数mmの発泡ポリスチレンシートや、厚さ1mm以下のポリプロピレンシート等で構成することができるので、加工性が良く、接着剤等で、上記第1の面及び第2の面を容易に構成することができる。
【0024】
また、厚さ0.3mm〜1mm程度のアルミ板等の金属板であれば、15cm×30cmのアルミ平板を、例えば45度に折曲げるだけで、第1の面及び第2の面を製作できる。さらに、上記アルミ板に、薄い紙やプラスチック製のシートによりデザイン等を施し、第1の面に接着しても構わない。ミリ波は、概ね本シートを透過し、アルミ板で反射する。このようなデザインにより、反射板の及ぼす部屋の景観の影響も少なくなる。
【0025】
なお、上記第1の面と、上記第2の面との傾斜角度は、約45度であることが好ましい。これにより、上記反射板の第2の面が水平となるように、反射板を例えば天井などに取り付けた場合に、反射板の水平方向の角度を調整したとしても、反射板が反射するミリ波の反射方向が鉛直下方から大きくずれることを抑制することができる。
【0026】
さらに、第1の面と第2の面との傾斜角を約45度で構成する場合、近年は、取り付け工具として、水平器・鉛直器に45度の傾斜器も付加され、格安で入手可能であり、水平器と45度傾斜器とを用いて、上記反射板を容易に取り付けることが可能である。
【0027】
上記ミリ波送受信システムの上記反射板は、上記第1の面と上記第2の面との間隔を一定に維持するスペーサを備えることが好ましい。上記構成により、上記反射板を、例えば天井に設置する場合、上記スペーサを設けた分だけ、上記第1の面が天井から離れて配されることになり、天井で反射されるミリ波が、上記受信装置で受信される確率は、非常に低くなる。従って、マルチパスフェージングの影響が小さくなり、良好な品質の受信特性を実現することができ、その結果、良好な受信品質、つまりより高いMER(Measurement Error Rate)やC/N(Carrier to Noise Ratio)特性を得ることができる。加えて、反射板の内側に手が入りやすくなり、設置作業やネジ止め作業が容易になるというメリットも生ずる。
【0028】
上記ミリ波送受信システムの上記送信装置は、上記ミリ波を送信するための指向性を有する送信アンテナを備え、上記受信装置は、上記反射板が反射したミリ波を受信するための指向性を有する受信アンテナを備えることが好ましい。
【0029】
上記構成により、上記送信装置は、上記送信アンテナが有する指向性の方向に、正確に上記ミリ波を送信することができる。また、上記受信装置は、上記受信アンテナが有する指向性の方向からのミリ波を、正確に受信することができる。
【0030】
上記ミリ波送受信システムの上記反射板が配置される面と、上記受信装置との距離をhとし、上記受信アンテナの半値幅をθとした場合、上記反射板の反射面の面積は、1/2波長の平方より大きく、√2・(2h・tanθ)・(2h・tanθ)より小さいことが好ましい。
【0031】
上記構成によると、距離hでの上記反射面の面積を、上記受信アンテナの照射面積(ミリ波の受信面積)以下としていることから、反射効率も確保することができ、反射板として、大きすぎることもなく、天井など、上記反射板を設置するための設置スペースを省スペース化することができ、部屋の美観への影響も小さくなる。
【0032】
ここで、天井における受信装置の受信アンテナの照射エリアは、縦が(2h・tanθ)であり、横が(2h・tanθ)となる。縦を45度傾けることによって、縦の長さは、√2・(2h・tanθ)となり、反射板の面積は、√2・(2h・tanθ)・(2h・tanθ)となる。また、上記反射面の最低の面積は、動作周波数の1/2波長の平方となり、これ以下の面積では、反射面として動作することは困難であり、反射板の面積としては、1/2波長の平方より充分大きいことが必要である。
【0033】
上記ミリ波送受信システムの上記送信アンテナの指向角は、上記受信アンテナの指向角以上であることが好ましい。上記構成によると、前述したように受信アンテナ側の指向角は、上記反射板の反射面の大きさとの関係から決めることができる。一方、送信アンテナ側の指向角を、受信アンテナ側以上に広い指向角とすることによって、反射板への全面照射を確実にすることとなり、送信装置、反射板、及び受信装置の3者の配置関係に余裕が出てくるため、設置等が容易になる。
【0034】
上記ミリ波送受信システムの上記反射面は、凹形状であることが好ましい。
【0035】
上記構成によると、上記反射面を凹面状にすることによって、反射面で反射するミリ波の反射方向が集束するため、受信装置へ集束したミリ波を送信できる。それゆえ、より感度の高いミリ波送受信システムを構築できる。具体的には、一例として、上記凹面状の反射板の焦点を床から45cm程度(TVラックの高さ)(天井から約2m)に設定することにより、受信装置の受信アンテナにミリ波を集束することができる。この結果、感度特性に優れた送受信システムを構築することができる。この場合、凹面の曲率の直径は4mとなり、なだらかな曲面となる。
【0036】
上記ミリ波送受信システムの上記受信装置は、回転軸を有する表示装置の表面かつ上記回転軸上に配置されていることが好ましい。
【0037】
上記構成によれば、回転軸を有する表示装置の表面かつ上記回転軸上に取り付けられているために、表示装置が水平面方向に回転する機構備えていたしても、つまり上記回転軸を中心に回転したとしても、上記反射板と、上記受信装置との相対的な位置関係が殆どズレることは無く、安定した受信が可能になる。
【0038】
上記ミリ波送受信システムの上記受信アンテナの指向方向は、鉛直方向であることが好ましい。上記構成によると、受信アンテナの前を人が横切ってもミリ波は遮断されることが無く、受信アンテナの近傍に什器などがあっても、上記什器によってミリ波が遮られることはなく、安定したミリ波の送受信が可能となる。
【0039】
上記ミリ波送受信システムの上記受信装置は、表示装置の表示画面に対する背面側に配置されていることが好ましい。上記構成によると、上記受信装置は表示装置の表示画面に対する背面側のラック等上または表示装置の表示画面に対する背面側の中央部等に設置されるため、表示装置の表示画面が配されている側からは目立つことがなく、すっきりとした景観を保つことが可能となる。
【0040】
上記ミリ波送受信システムの上記受信アンテナは、誘電体からなるレンズアンテナであることが好ましい。上記構成によると、受信装置を表示装置のラックの上に置くような設置の場合、レンズアンテナは半円球状であるので、受信アンテナ上に物を置いたりすることが困難となり、ミリ波が遮断される頻度を低減することができる。
【0041】
上記ミリ波送受信システムにおいて、上記送信装置は、放送用の無線信号を取得し、取得した無線信号を、無線信号を変調するための基準信号によって変調することにより変調信号を生成する変調手段を備え、上記変調手段が生成した変調信号と上記基準信号とをアップコンバートした送信信号を上記ミリ波に重畳して、上記送信アンテナから送信し、上記受信装置は、上記送信アンテナから送信された送信信号を上記受信アンテナで受信し、受信した送信信号を増幅する増幅手段と、上記増幅手段によって増幅された上記送信信号に含まれる基準信号に基づいて、上記変調信号をダウンコンバートすることにより上記変調信号を復調するダウンコンバート手段とを備えることが好ましい。
【0042】
上記構成によると、上記送信装置は、放送用の無線信号を取得すると、当該取得した無線信号を上記基準信号により変調した変調信号を、上記基準信号と共に、アップコンバートする。そして、当該アップコンバートしたものを送信信号として、上記送信アンテナからミリ波に重畳して、上記受信装置に対して送信する。
【0043】
すなわち、上記基準信号と、上記変調信号とが、指向性を有した上記送信アンテナからの送信信号(送信電波)として送信され、指向性を有した上記受信アンテナにて受信されるため、上記基準信号と上記変調信号との信号レベル(強度)の低下が小さく、かつ複数回の反射波も伴わない。このため、上記無線信号及び上記基準信号の位相の変化による信号成分のレベルの落ち込みは(広帯域にわたって)小さい。つまり、送信装置から、無線信号及び上記基準信号の信号レベルの低下を抑制して、受信装置に対して送信信号を送信することができる。
【0044】
そして、上記受信装置では、上記受信アンテナで受信した上記送信信号を、上記増幅手段により増幅し、上記ダウンコンバート手段により、上記増幅された送信信号の基準信号から、上記変調信号をダウンコンバートし、当該ダウンコンバートされた変調信号を復調することができる。これにより、上記変調信号は、上記送信装置が取得した上記無線信号と同等の信号が再現することができる。
【0045】
また、上記ダウンバート手段で、上記基準信号により上記変調信号をダウンコンバートをダウンコンバートすることにより、上記受信装置側では、局部発振器が不要となり、かつ、送信装置側のアップコンバートで用いた局部発振器等の周波数安定性や位相雑音は、受信装置側でのダウンコンバートによりキャンセルすることができる。これにより、ミリ波送受信システムの雑音特性、受信特性に優れた性能を発揮することができるのみならず、特に受信装置側は小型・低コスト性を実現することができる。
【0046】
上記ミリ波送受信システムにおいて、上記送信装置は、放送用の無線信号を取得し、取得した無線信号を、無線信号を変調するための基準信号によって変調することにより変調信号を生成する変調手段を備え、上記変調手段が生成した変調信号と上記基準信号とをアップコンバートした送信信号を上記ミリ波に重畳して、上記送信アンテナから送信し、上記受信装置は、上記送信アンテナから送信された送信信号を上記受信アンテナで受信し、受信した送信信号を増幅する増幅手段と、上記増幅手段によって増幅された送信信号をダウンコンバートする第1ダウンコンバート手段と、上記第1ダウンコンバート手段によってダウンコンバートされた送信信号に含まれる基準信号に基づいて、上記送信信号に含まれる変調信号をダウンコンバートすることにより、上記変調信号を復調する第2ダウンコンバート手段とを備えることが好ましい。
【0047】
上記構成によると、上記送信装置は、放送用の無線信号を取得すると、当該取得した無線信号を上記基準信号により変調した変調信号を、上記基準信号と共に、アップコンバートする。そして、当該アップコンバートしたものを送信信号として、上記送信アンテナからミリ波に重畳して、上記受信装置に対して送信する。
【0048】
すなわち、上記基準信号と、上記変調信号とが、指向性を有した上記送信アンテナからの送信信号(送信電波)として送信され、指向性を有した上記受信アンテナにて受信されるため、上記基準信号と上記変調信号との信号レベル(強度)の低下が小さく、かつ複数回の反射波も伴わない。このため、上記無線信号及び上記基準信号の位相の変化による信号成分のレベルの落ち込みは(広帯域にわたって)小さい。つまり、送信装置から、無線信号及び上記基準信号の信号レベルの低下を抑制して、受信装置に対して送信信号を送信することができる。
【0049】
そして、受信装置では、上記受信アンテナで受信した上記送信信号を、上記増幅手段により増幅し、上記第1ダウンコンバート手段によりダウンコンバートすることにより、一旦、中間周波数帯に変換される。
【0050】
このため、上記送信信号(多重波信号)に対する中心周波数の比帯域幅は大きくなる。従って、中間周波数帯の上記送信信号から、通常のマイクロ波平面回路等のフィル手段で基準信号の成分のみを通過させることができる。
【0051】
そして、上記増幅手段によって上記基準信号を増幅することで、疑似的な局部発振信号とみなすことができる。このため、上記疑似的な局部発振信号を用いて、上記第2ダウンコンバート手段により、再度、ダウンコンバートすることができる。その結果、上記受信装置側で、上記送信装置が取得した上記無線信号と同等の信号を復元(復調)することができる。
【0052】
上記構成では、送信装置の局部発振器及び受信装置の局部発振器ともに周波数変動や位相雑音が生ずるが、上記受信装置の中間周波数帯への上記送信信号のダウンコンバートにより、上記送信装置と上記受信装置との局部発振器の周波数安定性や位相雑音はキャンセルすることができ、受信感度を高くすることができる。また、送信信号に対して、送信装置側で厳密な基準信号のパワーコントロールを必要としないので、送信装置の製造コストの低減や、送信装置への入力レベルの許容範囲が広くなるというメリットが生ずる。
【0053】
上記ミリ波送受信システムにおいて、上記受信装置は、上記送信信号から受信した上記送信信号の一部を取得し、当該取得した送信信号の信号レベルを検出し、当該検出した信号レベルに応じた音量または音調を有する音を発する検知手段をさらに備えることが好ましい。
【0054】
ここで、上記送信装置、上記反射板、及び上記受信装置の設置取り付け作業の際、上記送信装置、上記反射板、及び上記受信装置の位置調整、方向調整が必要である。また、例えばテレビなどには、アンテナレベル表示機能などが付加されている場合があるが、送信装置や反射板の位置調整・方向調整時に、テレビの表示画面が必ず見えるとは限らない。
【0055】
そこで、上記構成により、上記検出手段によるブザー音の大小・または高低で送信信号の信号レベルを、ユーザに対して知らせることにより、上記送信装置の方向調整や、反射板の位置や方向の調整を容易に行うことができる。
【0056】
さらに、掃除等で上記送信装置、上記反射板、または上記受信装置がずれた場合でも、上記検出手段のブザー機能で、送信装置、反射板、受信装置が正常かどうかを確認することも可能となる。
【0057】
上記ミリ波送受信システムにおいて、上記送信装置は、複数の放送用信号を多重化して受信し、当該受信した放送用信号を上記送信アンテナから、上記ミリ波に重畳して送信信号として送信することが好ましい。
【0058】
上記構成によると、人の横切り等によるミリ波の遮断や什器等による電波の遮りの影響が少ない安定した送信装置を構成することが可能なので、上記送信装置が受信する複数の放送用信号(放送波信号)を正確に、表示装置や電子機器などに送信することができる。例えば、上記構成により、テレビの視聴とレコーダ等による録画とを同時に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0059】
以上のように、本発明に係るミリ波送受信システムは、ミリ波の送受信を行うミリ波送受信システムにおいて、上記ミリ波を送信する送信装置と、上記送信装置が送信したミリ波を反射する反射板と、上記反射板が反射したミリ波を受信する受信装置とを備え、上記反射板は、上記ミリ波を反射する反射面として金属板、金属シートまたは金属膜を有する構成である。
【0060】
また、本発明に係る反射板は、ミリ波を送信する送信装置と、当該送信装置が送信したミリ波を反射する反射板と、当該反射板が反射したミリ波を受信する受信装置とを含むミリ波送受信システムに含まれる上記反射板であって、上記ミリ波を反射する反射面として金属板、金属シートまたは金属膜を有している構成である。
【0061】
それゆえ、設置が容易なミリ波送受信システムを実現することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0063】
〔実施の形態1〕
(ミリ波送受信システム100の概略)
図1は、ミリ波送受信システム100の概略を表す構成例である。
【0064】
図1に示すように、ミリ波送受信システム100は、屋内に配置されており、ミリ波帯の電波(以下、ミリ波と称する)を送信する送信装置1と、送信装置1が送信した送信信号(ミリ波)を反射する反射板41と、反射板41が反射した送信信号(ミリ波)を受信する受信装置2とを備えている。
【0065】
本実施の形態では、ミリ波送受信システム100は、例えば、室内のリビングルームなどに配置されており、送信信号として、デジタル放送等の放送電波を60GHz帯にアップコンバートして伝送するミリ波映像多重伝送システムを一例として説明する。
【0066】
ミリ波送受信システム100は、送信装置1から送信されたミリ波帯の送信信号が、伝送経路82を通過し、鉛直下方向に上記送信信号を反射するように、反射面が天井89に対して約45度傾斜して配された反射板41によって、垂直方向に送信信号の角度が変えられ、伝送経路81を通過し、TV(テレビ)31の裏面で、TVラック(テレビ台)32上に設置された受信装置2に入射するものである。
【0067】
送信装置1は、天井89近傍の壁に配置され、屋内の放送アンテナ端子に接続されたレベル調整器・電源5と同軸ケーブル62で接続されている。レベル調整器・電源5は、屋内の放送アンテナ端子を介して、屋外に設けられた地上波放送受信アンテナや、衛星放送受信アンテナなどと接続されている。レベル調整器・電源5は、屋内の放送アンテナ端子から入力される信号を、送信装置1が必要なレベルまで適度に増幅し、さらに、送信装置1が必要とする15VのDC(直流電圧)も重畳し、同軸ケーブル62を介して、送信装置1に出力する。
【0068】
送信装置1は、屋内の天井89に近い高所に、例えば、固定金具などによって吊り下げられている。なお、送信装置1は、天井89を支持する壁に取り付けられていてもよい。送信装置1は、同軸ケーブル62を通ってレベル調整器・電源5から出力される信号を取得し、取得した信号を送信信号に変換し、伝送経路82を通して反射板41に出力する。
【0069】
反射板41は、伝送経路82の軌跡上であって、天井89に配置されている。反射板41は、送信装置1から送信される送信信号を反射するための反射面を有している。反射板41は、伝送経路82を通って送信されてきた送信装置1からの送信信号を、上記反射面により、伝送経路81を通して受信装置2に対して反射する。
【0070】
受信装置2は、例えばTV31(表示装置)の近傍や、TVラック32上などに配置され、反射板41から反射されてきた送信信号を受信し、当該受信した送信信号をTV31に出力する。
【0071】
(送信装置1)
次に、送信装置1の具体的な設置方法について説明する。
【0072】
送信装置1は、ミリ波を送信するための指向性を有する送信アンテナを備えている。
【0073】
送信装置1は、一例として、天井から約15cm程度離れた位置に設置され、ミリ波を送信する送信機のビーム出射方向(ミリ波の送信方向、伝送経路82)と、天井89とが略平行になるように取り付けられる。
【0074】
ここで、上記送信アンテナの指向角は、受信装置2が有する受信アンテナの指向角以上であることが好ましい。送信アンテナ側の指向角を、受信アンテナ側以上に広い指向角とすることによって、反射板41への全面照射を確実にすることとなり、送信装置1、反射板41、及び受信装置2の3者の配置関係に余裕が出てくるため、設置等が容易になるためである。なお、受信アンテナ側の指向角は、反射板41の反射面43の大きさとの関係から決めることができる。
【0075】
具体的には、送信装置1の送信アンテナの指向角は、一例として±15度とする。このため、送信装置1と、天井89との距離は、約5cm〜15cm程度が望ましく、これにより、天井89そのものからの反射の影響を大幅に軽減することができる。
【0076】
つまり、送信装置1が天井89に近接していると、送信装置1が送信したミリ波帯の送信信号のうち、一部が天井89で反射されることになり、天井89で反射されたミリ波帯の信号(天井での反射波)と、送信装置1から反射板41に直接送信されるミリ波帯の送信信号(直接波)との両方が、反射板41で反射され、当該反射された両者(天井での反射波及び直接波)を含む送信信号(マルチパス信号)が受信装置2に入力してしまう場合が発生する。
【0077】
送信装置1が送信した送信信号のうち、天井89で反射された反射波は、天井89での反射によって、直接波と比較して、位相が180度反転してしまう。そのため、反射板41に入射される送信信号の入射角度は大きく変わらなくても、位相は一様ではなく、大きく異なってしまう。従って、反射板41によって反射された送信信号によって、受信装置2で受信される電波は、マルチパスフェージングの影響を受けてしまい、受信品質MER(Measurement Error Rate)やC/N(Carrier to Noise Ratio)が低下する要因となってしまう。
【0078】
このように、送信装置1を天井89から5cm〜15cm離すことにより、所望する信号でない、すなわちノイズとなるマルチパス信号は、反射板41から別の角度に反射され、受信装置2では受信されないことから、マルチパス信号を抑圧することができる。
【0079】
(反射板41)
次に、図2(a)(b)、図3(a)(b)を用い、反射板41の具体的な構成、及び設置方法について説明する。
【0080】
図2(a)は、反射板41の天井89への取り付けの一例を表す説明図であり、図2(b)は、反射板41の構成を表す概略図である。図3(a)は、反射板の反射面を金属箔または金属膜で構成する場合の反射板を表す断面図であり、図3(b)は、反射板の反射面を金属板で構成する場合の反射板を表す断面図である。
【0081】
図2(a)に示すように、反射板41は、反射面43を有する第1の面47と、第1の面47に対して傾斜して配される第2の面46とを有する。そして、第2の面46が天井89に固定されることにより、反射板41は、天井89に設置される。
【0082】
さらに、図2(b)に示すように、第1の面47と、第2の面46とが成す角度を固定するための直角2等辺三角形の支持板48を用いてもよい。
【0083】
第1の面47及び第2の面46に対して、垂直となるように支持板48を配置することにより、第1の面47と第2の面46とが成す角度の精度の確保が容易で、反射板41を天井89に取り付けたあとの経時変化も小さく安定した取り付けと、安定した無線伝送路を確保することができる。
【0084】
また、反射板41は、図3(a)の反射板41aのように、第1の面47と、第2の面46とを発泡ポリスチレンシートや、ポリプロピレンシート等を用いて、接着剤等で接着し、反射面43にアルミテープを貼り付けることにより、形成してもよい。
【0085】
第1の面47と、第2の面46とは例えば、厚さ数mmの発泡ポリスチレンシートや、厚さ1mm以下のポリプロピレンシートを接着剤などで接着することにより、容易に構成できる。そして、第1の面47にアルミテープを貼り付けることにより、反射面43が構成される。また、第1の面47の裏面側(反射面43が配される側と反対側)には、導電性シート42が設けられている。そして、第2の面46をテープやネジ44などで天井89に固定するだけで、反射板41aを天井89に取り付けることが可能である。
【0086】
また、第1の面47と、第2の面46とがなす角度は、約45度であることが好ましい。これにより、反射板41の第2の面46が水平となるように、反射板41を例えば天井89などに取り付けた場合に、反射板41の水平方向の角度を調整したとしても、反射板41が反射するミリ波の反射方向が鉛直下方から大きくずれることを抑制することができる。
【0087】
さらに、反射板41は、図3(b)の反射板41bのように、第1の面47と、第2の面46とを、例えばアルミ板などの1枚の金属板を折り曲げて構成してもよい。厚さ0.3mm〜1mm程度のアルミ板等の金属板であれば、15cm×30cmのアルミ平板を、2つ折りの15cm×15cmに、例えば45度に折曲げるだけで反射板41bを構成できる。さらに、アルミ板で構成される反射板41bに、薄い紙やプラスチック製のシートにより、デザイン等を施し、第1の面47に接着しても構わない。ミリ波は、概ね上記シートを透過し、アルミ板で反射する。このようなデザインにより、反射板41の及ぼす部屋の景観の影響も少なくなること、またはインテリアとしても活用することもできる。
【0088】
また、反射板41(41a、41b)は、送信信号の伝送経路82の伝送方向に対して、第2の面46が平行であり、第1の面47が伝送経路82を遮るように設置される。
【0089】
上述したように、第1の面47と、第2の面46とは傾斜して接続されているので、反射板41の水平方向のみ回転して、受信装置2で受信される送信信号の信号レベル、または受信C/Nが最大となるように、反射板41の回転角を調整し、テープやネジ44等で固定するだけで取り付け可能である。ここで、通常、送信信号の信号レベルまたは、受信C/Nの評価機能は、アンテナレベルとして、デジタル放送対応のTVの中に内蔵されている。この機能を利用して、反射板41の回転角を調整を行うことができる。
【0090】
このように、反射板41によると、従来の反射鏡のように2軸の回転機能は不要であり、難しい回転角の調整をする必要がなくなる。
【0091】
(受信装置2)
次に、図4(a)(b)を用い、受信装置2の設置方法について説明する。
【0092】
図4(a)は、受信装置2をTVラック32上に設置した状態を表す図であり、図4(b)は、受信装置2をTV31の表面に配置した状態を表す図である。
【0093】
図4(a)に示すように、受信装置2は、TV31の表示画面(不図示)に対する背面側に配置されており、TVラック32の水平面上に設置される。ここで、反射板41の位置は、受信装置2の鉛直線上に、反射板41の第1の面47の略中心部がくることが好ましい。
【0094】
また、受信装置2は、図4(b)に示すように、TV31の台33に対して垂直に配される支持軸34上に配置されていてもよい。
【0095】
TV31が、例えば、中小型の液晶TVである場合、鉛直方向に延びる支持軸34を回転軸としてTV31の表示画面が回転することによる表示画面の首振り機能を有する。一般的な中小型の液晶TVの場合、支持34は、液晶TV自体の水平軸方向に略±20度程度、回転することが可能である。このため、受信装置2を、TV31の表面かつTV31の回転軸である支持軸34上に設置することで、TV31の表示画面を回転しても、受信装置2と、反射板41との相対的な位置関係は、ずれることがない。
【0096】
なお、首振り機能のない(回転軸を有さない)大型薄型TVでは、TVの表示画面に対する背面側で、反射板41の見通し確保ができる場所であれば、どこでも構わない。また、旧来のブラウン管TVであれば、ブラウン管TVの上部は幾分スペースがあるため、ブラウン管TV上部に設置することができる(図示なし)。
【0097】
さらに、図4(a)(b)に示すように、受信装置2の受信アンテナ14は、誘電体からなるレンズアンテナであることが好ましい。
【0098】
受信装置2をTV31のTVラック32の上に置くような設置の場合、レンズアンテナは半円球状であるので、受信アンテナ14上に物を置いたりすることが困難となり、ミリ波が遮断される頻度を低減することができる。
【0099】
(反射面の面積)
次に、反射板41の反射面43の面積について説明する。
【0100】
反射板41が配置される面を天井89とした場合、受信装置2との距離(高さ)をhとし、受信アンテナ14の半値幅をθとした場合、反射板41の反射面43の面積は、1/2 波長の平方より大きく√2・(2h・tanθ)・(2h・tanθ)より小さいことが好ましい。
【0101】
反射板41では、高さ(距離)hでの受信アンテナ14の照射面積以下としている、すなわち、送信信号の受信面積以下としていることから、反射効率も確保することができ、かつ、反射板41として、大きすぎることもなく、天井89のスペースを省スペース化することができ、部屋の美観の影響も小さくなる。
【0102】
ここで、天井89における受信装置2の受信アンテナ14の照射エリアは、縦が(2h・tanθ)であり、横が(2h・tanθ)となる。縦を45度傾けることによって、縦の長さは、√2・(2h・tanθ)となり、反射板の面積は、√2・(2h・tanθ)・(2h・tanθ)となる。一例として、h=2m、θ=3度とすると、反射板41の望ましい設置エリアは、約21cm×30cmとなる。
【0103】
しかしながら、21cm×30cmの反射板41を天井89に取り付けるには幾分大きすぎであり、実験的には15cm×15cmで良好な特性を得ることができる。これは反射板41の反射面43での反射が全反射(反射係数1)とすると、15cm×15cmの場合は、21cm×30cmの場合の約36%であり、受信エネルギーは約1/3となり又、dB表示では、−4.8dBの減衰となり、これらの値は通常通信回線設計からは十分余力がある為である。
【0104】
なお、反射面43の最低の面積は、動作周波数の1/2波長の平方となり、これ以下の面積では、反射面として動作することは困難であり、反射板43の面積としては、1/2波長の平方より充分大きいことが必要である。
【0105】
(ミリ波送受信システム100の詳細構成例1)
次に、図5を用い、送信装置1、受信装置2の構成例について説明する。
【0106】
図5は、ミリ波送受信システム100の詳細な構成を表す回路図である。
【0107】
図5に示すように、レベル調整器・電源5は、屋内の放送アンテナ端子を介して、屋外に配置されている地上波放送受信アンテナ10a、衛星放送波受信アンテナ10bと接続されている。そして、レベル調整器・電源5は、入力信号として、地上波放送受信アンテナ10aから地上波放送の信号fsa(放送用の無線信号)を取得し、また、衛星放送波受信アンテナ10bからは、衛星放送波の信号fsb(放送用の無線信号)を取得する。
【0108】
そして、レベル調整器・電源5は、信号fsa、信号fsbをそれぞれ、ブースターアンプ51、52で適当なレベルに増幅する。そして、レベル調整器・電源5は、当該増幅した信号fsa、信号fsbを合成し、一系列の信号fse(周波数:fse)として、同軸ケーブル62(図5には不図示)を介して、送信装置1に出力する。
【0109】
送信装置1は、レベル調整器・電源5から、入力信号として、一系列の信号fseが入力される。送信装置1に入力された信号fseは、増幅器203によってレベル調整され、当該レベル調整された信号fseは、周波数ミキサ201に出力される。
【0110】
また、基準信号源20から、基準信号71c(周波数:fLO1)が出力され、接続端子204bで分岐され、当該分岐された一方が周波数ミキサ201(変調手段、変調器)に入力される。
【0111】
そして、周波数ミキサ201で、増幅器203から出力された、上記レベル調整された信号fseは、接続端子204bから出力された基準信号71cと合成されることにより、中間周波数である無線信号71a(周波数:fIF1)としてアップコンバートされる。さらに、当該アップコンバートされた無線信号71a(変調信号)は、フィルタ202a、増幅器203を介して接続端子204aに入力される。
【0112】
また、接続端子204bで分岐された他方の基準信号71cは、可変減衰器95を介して、接続端子204aに入力される。
【0113】
これにより、接続端子204aで、無線信号71aと、基準信号71cとが合成され、中間周波数多重信号71d(周波数:fIF1、fLO1)が接続端子204aから出力され、送信変換器3aに出力される。
【0114】
ここで、接続端子204aから出力される中間周波数多重信号71dの信号と周波数との関係を整理すると以下のようになる。つまり、送信装置1に入力した信号fseは、接続端子204aからの出力として以下のように変換される。
【0115】
基準信号〔信号〕:fLO1〔周波数〕
無線信号〔信号〕:fLO1−fse=fIF1〔周波数〕
次に、送信変換器3a(アップコンバート手段、アップコンバータ)に入力された中間周波数多重信号71dは、周波数ミキサ301に入力されると共に、m次(m:2以上の整数)のマルチプライア7によって生成された局部発振信号71e(周波数:fLO2)も周波数ミキサ301に入力されることにより、アップコンバートされる。そして、アップコンバートされた中間周波数多重信号71dは、フィルタ302により、上側波帯のみが通過され、ミリ波パワーアンプ303によって増幅され、無線多重信号72として、送信アンテナ4によって、送信装置1から送信される。
【0116】
つまり、送信変換器3aは、周波数ミキサ201によって変調された無線信号71aと、基準信号71cとを含む中間周波数多重信号71dをアップコンバートし、無線多重信号72として、ミリ波に重畳して、送信アンテナ4から送信させる。
【0117】
ここで、送信アンテナ4から送信されるの無線多重信号72の信号と周波数との関係とを整理すると以下のようになる。つまり、送信変換器3aに入力された中間周波数多重信号71dは、送信変換器3aによって、以下のように変換される。
【0118】
基準信号〔信号〕:fLO2+fLO1=(2m+1)fLO1〔周波数〕
無線信号〔信号〕:fLO2+fIF1=fLO2+(fLO1−fse)
=(2m+1)fLO1−fse〔周波数〕
なお、本実施の形態では、m=5(2m+1=11)とする。
【0119】
このように、送信装置1に入力された信号fseは、結果的には、基準信号71cの周波数であるfLO1の(2m+1)倍、つまり11倍波の基準信号と、信号fseに対して(2m+1)倍、つまり11倍波でアップコンバートされた信号が無線多重信号72となり、送信アンテナ4で放射される。
【0120】
一方、受信装置2においては、送信装置1の指向性を有する送信アンテナ4から送信された無線多重信号72は、指向性を有する受信アンテナ14で無線多重信号73(送信信号)として受信される。
【0121】
そして、受信された無線多重信号73は、受信変換器11に入力される。
【0122】
受信変換器11に入力された無線多重信号73は、低雑音増幅器110(増幅手段)で増幅され、バンドパスフィルタ111でイメージ信号が抑圧され、さらに、2端子型ミキサ120(ダウンコンバート手段)で、無線多重信号73に含まれる基準信号〔(2m+1)fLO1〕により、無線信号〔(2m+1)fLO1−fse〕が、ダウンコンバートされ、出力として信号74aが出力される構成である。
【0123】
ここで、受信変換器11でのダウンコンバートの過程は、以下のように表現できる。つまり、受信変換器11に入力された無線多重信号73は、受信変換器11によって信号74aとして以下のように変換される。
【0124】
無線信号を、基準信号でダウンコンバート:
[(2m+1)fLO1‐fse]−[(2m+1)fLO1]
=fse
このように、受信変換器11から出力される信号74aとして、信号fseを得ることができる。
【0125】
つまり、ダウンコンバートされた信号74aは、送信装置1に入力された一系列の信号fseが復元(復調)され、該復元された信号fseには、送信装置1中の基準信号71c(fLO1)の周波数偏差、位相雑音特性には全く関係しない。
【0126】
そして、受信変換器11から出力された信号74aは、可変減衰器で適宜レベル調整され、フィルタを通過し、増幅器195で適当な出力レベルまで増幅され、接続端子196を介して、出力端子500より受信装置2から信号75(信号fse)として出力される。そして、信号75は、受信装置2と接続されているTV31や録画装置の電子機器などへと出力される。
【0127】
また、送信装置1、受信装置2は、地上波放送の信号fsa、及び、衛星放送波の信号fsbの信号レベル(強度)に応じた音量または音調を有する音を発するレベル検出器18(検知手段)を具備している。
【0128】
本実施の形態では、受信装置2にレベル検出器18を設ける場合について説明する。
【0129】
レベル検出器18のスイッチ19は、接続端子196と接続されている。そして、スイッチ19がオンの状態である場合、接続端子196を介して、出力端子500に出力する信号75の一部がスイッチ19に分岐される。スイッチ19に入力された信号75は、スイッチ19に、適宜接続された、フィルタ、増幅器等を介して、ブザー9に入力される。これにより、ブザー9は、信号75のレベルに応じた大きさでブザーを鳴らす。
【0130】
ミリ波送受信システム100の設置取り付けにおいて、送信装置1、反射板41、受信装置2の位置調整、方向調整が必要である。TV31には、アンテナレベル表示機能が付加されている場合があるが、当該機能だけでは、送信装置1や反射板41の位置調整・方向調整を行う際に、TV画面が必ず見えるとは限らず、位置調整・方向調整が適性であるかをリアルタイムで判断できない場合がある。
【0131】
そのため、受信装置2や送信装置1にレベル検出器18を設けることにより、レベル検出器18のブザー9の音の大小・または高低で受信信号の強度を知らせる機能により、送信装置1の方向調整や、反射板41の位置や方向の調整を行うことができる。
【0132】
なお、ブザー9の機能を使用しないときは、スイッチ19をオフ(OFF)にすればよい。掃除等で送信装置1、反射板41や受信装置2がずれた場合でも、本ブザー機能で、送信装置1、反射板41、受信装置2が正常かどうかを確認・メンテナンスすることも可能となる。
【0133】
(ミリ波送受信システム100の詳細構成例2)
次に、送信装置1及び受信装置2の別の回路例を示す。
【0134】
図6に、ミリ波送受信システム100の構成図を示す。
【0135】
送信装置1は、上述したミリ波送受信システム100の詳細構成例1と同様である。受信装置2bの構成のみが異なる。受信装置2bでは、受信アンテナ14から入力された無線多重信号73を一旦、局部発振器8の出力である局部発振信号73b(周波数fLO3)でダウンコンバートすることにより第2の中間周波数多重信号74bを生成する点と、第2のダウンコンバータとしての基準信号再生/周波数変換回路12(第2ダウンコンバート手段)とを備えている点とが受信装置2と異なる。
【0136】
受信変換器11bは、受信変換器11の2端子型ミキサ120に替えて、周波数ミキサ119(第1ダウンコンバート手段)がバンドパスフィルタ111と接続されており、さらに、周波数ミキサ119は、局部発振器8と接続されている。
【0137】
受信アンテナ14から受信変換器11bに入力される無線多重信号73は、低雑音増幅器110(増幅手段)で増幅され、バンドパスフィルタ111でイメージ信号が除去され、局部発振器8から出力される局部発振信号73b(周波数:fLO3)を用いて、周波数ミキサ119でダウンコンバートされる。そして、周波数ミキサ119から第2の中間周波数多重信号74bとして出力される。
【0138】
ここで、無線多重信号73から第2の中間周波数多重信号74bへのダウンコンバートの過程は下記のように表現できる。つまり、受信変換器11bに入力された無線多重信号73の基準信号及び無線信号は、受信変換器11bによって、以下のように変換される。
【0139】
基準信号のダウンコンバート:(2m+1)fLO1−fLO3
無線信号のダウンコンバート:(fLO2+fIF1)−fLO3
=fLO2−fLO3+(fLO1−fse)
=(2m+1)fLO1−fLO3−fse
次に、受信装置2bは、第2のダウンコンバータとしての基準信号再生/周波数変換回路12とを備えている。つまり、受信変換器11bから出力された第2の中間周波数多重信号74bは、基準信号再生/周波数変換回路12に入力される。
【0140】
そして、基準信号再生/周波数変換回路12に入力された第2の中間周波数多重信号74bは、一旦、フィルタ172を通過し、中間周波数増幅器159で増幅・レベル調整され、接続端子161によって2分配される。一方は、バンドパスフィルタ171、増幅器180により、基準信号が抽出・増幅されることにより、基準信号が再生される。この、増幅器180により再生された基準信号は、第2のダウンコンバートの局部発振周波数となる。つまり、第2のダウンコンバートを行うための疑似的な局部発振信号とみなすことができる。そして、上記再生された基準信号は、接続端子181を介して、周波数ミキサ201へと入力される。
【0141】
一方、接続端子161で2分配された、他方の信号は、数dB程度、可変減衰器164でレベル調整され、周波数ミキサ201で、上記再生された基準信号によりダウンコンバートされることにより、一系列の信号fseが復元(復調)される。そして、当該復元された一系列の信号fseは、周波数ミキサ201に適宜接続された、フィルタ175で適宜レベル調整され、増幅器195で適当な出力レベルまで増幅され、出力端子500より受信装置2bから信号75b(信号fse)として出力される。そして、信号75bは、受信装置2bと接続されているTV31や録画装置の電子機器などへと出力される。
【0142】
このように、上記中間周波数帯から、一系列の信号fseの周波数帯fseに周波数変換されて、送信装置1へ入力される信号が、受信装置2b側で一復元される。
【0143】
本周波数変換によって、送信装置1側へ入力される元信号である信号fseへの周波数変換過程は下記のように表現することができる。つまり、基準信号再生/周波数変換回路12に入力された第2の中間周波数多重信号74bは、基準信号再生/周波数変換回路12によって信号75bとして以下のように変換される。
【0144】
第2の中間周波数多重信号の元信号(信号fse)へのダウンコンバート:
[(2m+1)fLO1−fLO3]−[(2m+1)fLO1−fLO3−fse]
=fse
受信装置2と同様に、受信装置2bでダウンコンバートされた信号は、送信装置1に入力される一系列の信号fseが復元され、送信装置1中の基準信号である周波数fLO1の周波数偏差、位相雑音特性には全く関係しない。
【0145】
受信装置2bを用いることにより、受信装置2を用いる場合と比較して、(1)受信装置2b側で、中間周波数増幅器159で増幅され、(2)バンドパスフィルタ171・増幅器180で基準信号を再生し、(3)周波数ミキサ201でダウンコンバートする構成であるため、受信装置としての変換利得が高く、さらに、基準信号を再生増幅する構成のため、高い受信CN(キャリア対ノイズ)特性を得ることでき、伝送距離を長くすることができる。
【0146】
加えて、送信装置1側で厳密な基準信号のパワーコントロールを必要としないので、送信装置1の製造コストの低減や、送信装置1への入力レベルの許容範囲が広くなるというメリットが生ずる。
【0147】
さらに、接続端子181には、レベル検出器18が接続されている。バンドパスフィルタ171と増幅器180で再生される基準信号の一部が、接続端子181から分岐し、レベル検出器18のスイッチ19に入力される。これにより、基準信号のレベルに応じて、ブザー9によるブザー音の大小または高低で、送信装置1の方向調整や、反射板41の位置や方向の調整の適否を報知する機能を具備する。
【0148】
また、受信装置2bでは、送信装置1に放送波の入力信号が入力されなくても、送信装置1がオン(ON)である限り常時、送信装置1は、基準信号である周波数(2m+1)fLO1の信号を送信している。このため、この信号のみを局部発振器8からの出力である周波数fLO3の信号(局部発振信号73b)により、周波数ミキサ119でダウンコンバートし、抽出、レベル検出することで、送信装置1、反射板41、受信装置2bの伝送損失を検出し、送信装置1、反射板41、受信装置2bの位置と、水平面内角度とを調整し、さらに、無線伝送損失を最小にすることが可能となる。
【0149】
このように、受信装置2bでは、放送波が入力される前に、無線系の損失を最小にすることができるため効率よく無線系の設置を行うことができる。つまり、効率よく送信装置1、反射板41、及び受信装置2bの設置を行うことができる。
【0150】
〔実施の形態2〕
次に、図7、図8を用い、第2の実施形態について説明する。
【0151】
図7は、第2の実施の形態に係るミリ波送受信システム200の構成を表す概略図である。また、図8は、図7の反射板の構成を表す側面図である。
【0152】
実施の形態1と同様の部材については、同じ部材番号を付し、説明を省略する。
【0153】
第1の実施形態と異なる部分について説明する。第1の実施形態は、反射板41(反射板41a、反射板41b)の反射面43は、平面であるものとして説明したが、本実施の形態の反射板41cの反射面43cは凹面状である点で相違する。
【0154】
また、送信装置1は、例えば箪笥などの什器102の上面に、三脚101で固定されて配置されている。
【0155】
また、レベル調整器・電源5は、屋内の放送アンテナ端子と同軸ケーブル62で接続されており、什器102の上面であって、三脚101が設置されている同一面に配置されている。なお、レベル調整器・電源5と、送信装置1とも、同軸ケーブル62で接続されている。
【0156】
送信装置1は、実施の形態1と同様に、天井89からは15cm程度離して設置されている。なお、什器102は、箪笥のみならず、本棚なラック等であっても構わない。また、2m程度のポール(棒)を有したスタンド(スタンド照明等に使われるようなポールを有したスタンド)の先端に送信装置1が取り付けられても構わない、この場合は、同軸ケーブル62の配線をポールの中に隠せるというメリットや、取り付け作業が容易というメリットも生ずる(図示無し)。
【0157】
図8に示すように、反射板41cの反射面43cは、凹面状となっている。
【0158】
反射板41cの反射面43cを、凹面状にすることによって、反射したミリ波は、受信装置2にビームの方向(反射方向)が集束するため、より感度の高いミリ波送受信システム200を構築できる。具体的には、一例として、凹面状の焦点距離を、受信装置2までの距離、すなわちTVラック32の高さ45cm程度(天井89から約2m)に設定することにより、受信装置2の受信アンテナ14に、反射板41と比べて、ミリ波を集束することができる。この結果、感度特性に優れたミリ波送受信システム200を構築することができる。なお、この場合、反射面43cの凹面の曲率の直径は4mであり、凹面の焦点距離は2mと長く、なだらかな凹面鏡となる。
【0159】
〔実施の形態3〕
次に、図9、図10(a)(b)、図11(a)(b)を用い、第3の実施形態について、図1の第1の実施形態と比較し異なるところについて説明する。
【0160】
図9は、第3の実施の形態に係るミリ波送受信システム300の構成を表す概略図である。
【0161】
図10(a)は、図9の反射板の構成を表す側面図であり、図10(b)は、図9の反射板の構成の変形例を表す側面図である。
【0162】
実施の形態1、2と同様の部材については、同じ部材番号を付し、説明を省略する。
【0163】
実施の形態3は、実施の形態1、2と反射板の形状と個数が相違する。
【0164】
図9に示すように、レベル調整器・電源5は、屋内の放送アンテナ端子と接続されており、さらに、送信装置1は、レベル調整器・電源5と直接接続されている。そして、天井89には2箇所、反射板410(反射板410a、反射板410b)が設置されている。
【0165】
反射板410aは天井89面上であって、送信装置1の鉛直上方向に配置されており、反射板410bは、天井89面上であって、反射板410aが配置されている側と対向する側に配置されている。そして、受信装置2は、実施の形態1と同様に、反射板410bの鉛直下方向であって、例えばTV31の裏面側のTVラック32の水平面上に配置されている。
【0166】
反射板410(反射板410a、410b)は図10(a)(b)に示すように、第3の面400(スペーサ)が存在する。第3の面400は、第1の面47と、第2の面46との間に配置されており、両者の間隔を一定に維持するものである。第3の面400は、第2の面46とは直行して接続され、第1の面47とは、45度に交わるように接続されている構成である。つまり、第2の面46が天井89と平行になることから、第3の面400は、天井89と垂直に接する面となっている。このため、第2の面400により、反射板410の反射面43と、天井89との間には、ギャップ442が設けられることになる。
【0167】
第3の面400のサイズは、横約15cm程度で、縦5cm〜15cm程度であることが好ましい。第3の面400を設けることによって、45度に傾斜している第1の面47が天井89から約5cm〜15cm程度、天井89から下方へシフトする。
【0168】
つまり、第1の面47は、ギャップ442の分だけ天井89から下方へシフトする。これによって、天井89に沿って、ミリ波の伝送経路82も、同様に下方へシフトすることになる。このため、ミリ波にとって障害・散乱の影響となる蛍光灯(シーリングライト)129(図9参照)等の影響を低減することができる。
【0169】
天井89に取り付ける蛍光灯129の厚さは、ライトを覆うプラスチックのカバーを含めて、概ね10cm程度であり、蛍光灯129を取り付ける金具の部分は、概ね、厚さ5cm〜10cm弱程度である。
【0170】
送信装置1の送信アンテナ4は、指向性(ビーム幅)による広がりがあるため、実施形態1または実施形態2に示すような1段反射、つまり、送信装置1が天井89近くに設置されたときは、反射板41の45度傾斜面(反射面43)が天井89の直近にあっても、上記のような蛍光灯129よる電波の進路妨害の影響は比較的小さい。
【0171】
しかしながら、本実施形態のように2段の反射板410a、410bを用いる場合は、送信装置1からの送信信号を反射板410aが反射板410bに対して反射する場合、45度に傾斜した反射面43によって反射されるため、天井89に略平行な成分のみが、伝送経路82となる。
【0172】
従って、蛍光灯129の影響を受けやすく、実施形態1や2のような反射板41、41bでは、蛍光灯129に電波(ミリ波)がぶつかってしまい、遮断されたり散乱したりすることによって、伝送経路82は乱され、伝送状態が悪化してしまう。
【0173】
このため、反射板410のように、第3の面400を設けることによって、2段反射のみならず1段反射も含めて、蛍光灯129等により、送信信号の遮断・散乱の影響を軽減することができる。
【0174】
望ましくは、図10(a)に示すように、反射板410は、ポリスチレンやアクリル等のプラスチック系の材料で構成し、第1の面47のみに導電性シート42を形成することによって、不要の反射成分を軽減しうることができる。
【0175】
さらに、1段反射システムのような場合には、第3の面400は、透過面とすることができ、電波を反射成分と透過成分とに容易に分離することができる。反射板410を従属接続することもできる。また、反射板410は、図10(b)に示す反射板410cのように、1枚もののアルミ板を折り曲げて作成することもでき、より簡易に構成することができる。
【0176】
さらに、反射板410は、第3の面400を設けたことによって、反射板410の内側に手が入りやすくなり設置作業やネジ止め作業が容易になるというメリットも生ずる。
【0177】
加えて、第3の面400を設けることによって、天井89と反射板410の間に、略5cm〜15cm程度のギャップ442ができる。そのため、ミリ波が天井89で反射された該反射波が、直接、反射板410に再度反射されても、本来の伝送経路82の送信信号と、上記反射波との反射板410への入射角が異なってくる。そのため、反射板410によるそれぞれの反射波は、反射後の反射経路は、伝送経路81bとなり、本来の伝送経路81とは異なってくる。
【0178】
その結果、本来の伝送経路82を除く天井89等からの反射波が、受信装置2の受信アンテナ14で受信される確率は、非常に低くなる。従って、マルチパスフェージングの影響が小さくなり、良好な品質の受信特性を実現することができ、その結果、良好な受信品質、つまりより高いMER(Measurement Error Rate)やC/N(Carrier to Noise Ratio) 特性を得ることができる。
【0179】
(付記事項)
また、図11(a)(b)に示すように、第2の面46に支持柱421を設け、支持柱421によって、第2の面46と天井89とを接続してもよい。
【0180】
図11(a)は、反射板を支持柱を介して天井に設置する場合の側面図であり、図11(b)は、図11(a)の斜視図である。
【0181】
図11(a)(b)に示すように、実施形態1〜3と同様な反射板41、410に、支持柱421を第2の面46に設け、支持柱421によって、第2の面46と、天井89とを接続してもよい。これにより、反射板41、410と、天井89との間でギャップ442を略5cm〜15cm確保することができ、同様な結果が得られる。
【0182】
尚、実施形態1〜3で説明した反射板41、410は、天井89だけではなく、適宜、第2の面を側壁に取り付けて、鉛直下方向きの45度反射面を構成しても構わない。
【0183】
以上のように、上述したミリ波送受信システム100によれば、天井89周辺の反射板41の第1の面47と、第2の面46とは、すでに仰角方向に45度の傾きを有しているため、仰角方向の角度合わせは不要となり、水平方向の角度合わせのみとなり、反射板41の調整が著しく容易になる。
【0184】
加えて、反射板41は、厚さ0.5mm〜1mm程度のアルミ板で構成したり、厚さ数mmの発泡ポリスチレンシートや、厚さ1mm以下のポリプロピレンシート等に、アルミテープを張り付けることにより構成することが可能である。
【0185】
このような構成により、著しく軽量(文房具の下敷き程度)になり、石膏ボードやベニヤ板等で構成された天井89に、ネジやテープ等で容易に取り付けることができる。天井89の負荷も小さく、落下したり天井がはげたりすることは、ほとんど無い。
【0186】
また、仮に落下したとしても、人が怪我したり、物が破損したりすることは無く、反射鏡を取り付けつける場合に比較して、取り付けやすさ・取り付け精度が向上しかつ安全性は著しく向上するというメリットがある。加えて、送信装置1は、幾分高所の取り付けとなるが、天井89面の近くで、送信装置1自体も傾けることなく、送信装置1の上面と天井89とを略平行にして設置すれば良いことから、送信装置1の位置合わせは水平器・鉛直器等を用いて簡単に設置することができる。
【0187】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0188】
また、本発明のミリ波送受信システム100は以下のようにも表現できる。
【0189】
屋内の高所に取り付けられ、指向性アンテナを有するミリ波送信装置と、天井周辺の水平面から、仰角方向に鉛直下方向きの45度の角度を有する金属板または、金属シートを有した反射板と、天井上面方向を向いた指向性アンテナを有するミリ波受信装置を備えることを特徴するミリ波送受信システム。
【0190】
前記反射板は、少なくとも45度の角度をなす第1の面と第2の面から構成され、第2の面は天井面に設置され、第1の面が上記反射板であることを特徴とするミリ波送受信システム。
【0191】
前記反射板は、前記第2の面と直交し、反射板である第1の面と135度で交差する第3の面を有することを特徴とするミリ波送受信システム。
【0192】
前記反射板は、受信アンテナの半値幅θと受信装置から天井までの高さhとしたとき、反射板の面積は√2・(2h・tanθ)・(2h・tanθ)以下であることを特徴とするミリ波送受信システム。
【0193】
前記指向性アンテナは送信装置のアンテナの指向角は、受信装置のアンテナ指向角より、同じか、それよりも大きいことを特徴するミリ波送受信システム。
【0194】
前記反射板は、凹面板であることを特徴とする反射板、及び該反射板を用いたミリ波送受信システム。
【0195】
前記受信装置は、薄型TVの中央に取り付けられたことを特徴とするミリ波送受信システム。
【0196】
前記受信装置は、TV台や、ラックに該受信装置の指向性アンテナの指向方向が鉛直方向を向いて設置されることを特徴とするミリ波送受信システム。
【0197】
前記受信装置は、TVの裏側に設置されることを特徴とするミリ波送受信システム。
【0198】
前記に記載のミリ波信送受信システムにおいて、受信側のアンテナは誘電体によるレンズアンテナで構成されることを特徴とするミリ波送受信システム。
【0199】
前記に記載のミリ波送受信システムにおいて、基準信号と変調信号が、前記指向性アンテナからの送信電波として送信され、ミリ波受信アンテナにて受信され、ミリ波増幅器により増幅されたあと、2端子型のミキサ手段により、前記基準信号によって該変調信号をダウンコンバートし、受信信号を、前記放送信号を復元し、該復元した放送信号を受信端末に伝送することを特徴とするミリ波送受信システム。
【0200】
前記に記載のミリ波送受信システムにおいて、基準信号と変調信号が、前記指向性アンテナからの送信電波として送信され、ミリ波受信アンテナにて受信され、ミリ波増幅器により増幅され、ミリ波ミキサと局部発振器によりダウンコンバートされたあと、ミキサ手段により、前記基準信号によって該変調信号をダウンコンバートし、受信信号を、前記放送信号を復元し、該復元した放送信号を受信端末に伝送することを特徴とするミリ波送受信システム。
【0201】
前記に記載のミリ波送受信システムにおいて、受信側出力信号の一部を取り出し、受信レベル検出を行い受信レベルに応じた大小音または高低音でブザーを鳴らす検知手段を具備したことを特徴とするミリ波送受信システム。
【0202】
前記に記載のミリ波送受信システムにおいて、送信装置の入力信号に、複数の放送波信号を多重化して、送信アンテナからの送信電波として送信することを特徴とするミリ波送受信システム。
【産業上の利用可能性】
【0203】
ミリ波を送受信するミリ波送受信システムに使用される反射板の反射面は、金属板又は金属シートまたは金属膜を有するので、反射板を軽量化することができ、ミリ波送受信システムの設置が容易となるので、特に、屋内で使用されるミリ波送受信システムに好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1】本発明の実施形態を示すものであり、実施の形態1のミリ波送受信システムの構成を示す概略図である。
【図2】(a)は、反射板の天井への取り付けの一例を表す説明図であり、(b)は、反射板の構成を表す概略図である。
【図3】(a)は、反射板の反射面を金属箔または金属膜で構成する場合の反射板を表す断面図であり、(b)は、反射板の反射面を金属板で構成する場合の反射板を表す断面図である。
【図4】(a)は、受信装置をTVラック上に設置した状態を表す図であり、(b)は、受信装置をTVの表面に配置した状態を表す図である。
【図5】本発明のミリ波送受信システムの第1の詳細な構成を表す回路図である。
【図6】本発明のミリ波送受信システムの第2の詳細な構成を表す回路図である。
【図7】本発明の実施形態を示すものであり、実施の形態2のミリ波送受信システムの構成を示す概略図である。
【図8】図7のミリ波送受信システムの反射板の構成を表す側面図である。
【図9】本発明の実施形態を示すものであり、実施の形態3のミリ波送受信システムの構成を表す概略図である。
【図10】(a)は、図9の反射板の構成を表す側面図であり、(b)は、図9の反射板の構成の変形例を表す側面図である。
【図11】(a)は、反射板を支持柱を介して天井に設置する場合の側面図であり、(b)は、(a)の斜視図である。
【図12】従来技術を示すものであり、第1の従来例の室内無線通信システムの構成を表す概略図である。
【図13】従来技術を示すものであり、第2の従来例の光空間伝送システムで用いられている反射鏡の構成を表す概略図である。
【符号の説明】
【0205】
1 送信装置
2、2b 受信装置
4 送信アンテナ
5 レベル調整器・電源
12 基準信号再生/周波数変換回路(第2ダウンコンバート手段)
14 受信アンテナ
18 レベル検出器(検知手段)
31 TV(表示装置)
32 TVラック
34 支持軸
41、41a、41b、41c 反射板
43、43c 反射面
89 天井
100、200、300 ミリ波送受信システム
110 低雑音増幅器(増幅手段)
120 2端子型ミキサ(ダウンコンバート手段)
201 周波数ミキサ(変調手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミリ波の送受信を行うミリ波送受信システムにおいて、
上記ミリ波を送信する送信装置と、
上記送信装置が送信したミリ波を反射する反射板と、
上記反射板が反射したミリ波を受信する受信装置とを備え、
上記反射板は、上記ミリ波を反射する反射面として金属板、金属シートまたは金属膜を有することを特徴とするミリ波送受信システム。
【請求項2】
上記反射板は、上記反射面を有する第1の面と、当該第1の面に対して傾斜して配される第2の面とを有することを特徴とする請求項1に記載のミリ波送受信システム。
【請求項3】
上記反射板は、上記第1の面と上記第2の面との間隔を一定に維持するスペーサを備えることを特徴とする請求項2に記載のミリ波送受信システム。
【請求項4】
上記送信装置は、上記ミリ波を送信するための指向性を有する送信アンテナを備え、
上記受信装置は、上記反射板が反射したミリ波を受信するための指向性を有する受信アンテナを備えることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のミリ波送受信システム。
【請求項5】
上記反射板が配置される面と、上記受信装置との距離をhとし、上記受信アンテナの半値幅をθとした場合、
上記反射板の反射面の面積は、1/2 波長の平方より大きく√2・(2h・tanθ)・(2h・tanθ)より小さいことを特徴とする請求項4に記載のミリ波送受信システム。
【請求項6】
上記送信アンテナの指向角は、上記受信アンテナの指向角以上であることを特徴とする請求項4又は5に記載のミリ波送受信システム。
【請求項7】
上記反射面は、凹形状であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のミリ波送受信システム。
【請求項8】
上記受信装置は、回転軸を有する表示装置の表面かつ上記回転軸上に配置されていることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のミリ波送受信システム。
【請求項9】
上記受信アンテナの指向方向は、鉛直方向であることを特徴とする請求項4〜6の何れか1項に記載のミリ波送受信システム。
【請求項10】
上記受信装置は、表示装置の表示画面に対する背面側に配置されていることを特徴とする請求項9に記載のミリ波送受信システム。
【請求項11】
上記受信アンテナは、誘電体からなるレンズアンテナであることを特徴とする請求項4〜6、9〜10の何れか1項に記載のミリ波送受信システム。
【請求項12】
上記送信装置は、
放送用の無線信号を取得し、取得した無線信号を、無線信号を変調するための基準信号によって変調することにより変調信号を生成する変調手段を備え、
上記変調手段が生成した変調信号と上記基準信号とをアップコンバートした送信信号を上記ミリ波に重畳して、上記送信アンテナから送信し、
上記受信装置は、
上記送信アンテナから送信された送信信号を上記受信アンテナで受信し、
受信した送信信号を増幅する増幅手段と、
上記増幅手段によって増幅された上記送信信号に含まれる基準信号に基づいて、上記変調信号をダウンコンバートすることにより上記変調信号を復調するダウンコンバート手段とを備えることを特徴とする請求項4〜6、9〜11の何れか1項に記載のミリ波送受信システム。
【請求項13】
上記送信装置は、
放送用の無線信号を取得し、取得した無線信号を、無線信号を変調するための基準信号によって変調することにより変調信号を生成する変調手段を備え、
上記変調手段が生成した変調信号と上記基準信号とをアップコンバートした送信信号を上記ミリ波に重畳して、上記送信アンテナから送信し、
上記受信装置は、
上記送信アンテナから送信された送信信号を上記受信アンテナで受信し、
受信した送信信号を増幅する増幅手段と、
上記増幅手段によって増幅された送信信号をダウンコンバートする第1ダウンコンバート手段と、
上記第1ダウンコンバート手段によってダウンコンバートされた送信信号に含まれる基準信号に基づいて、上記送信信号に含まれる変調信号をダウンコンバートすることにより、上記変調信号を復調する第2ダウンコンバート手段とを備えることを特徴とする請求項4〜6、9〜11の何れか1項に記載のミリ波送受信システム。
【請求項14】
上記受信装置は、上記送信信号から受信した上記送信信号の一部を取得し、当該取得した送信信号の信号レベルを検出し、当該検出した信号レベルに応じた音量または音調を有する音を発する検知手段をさらに備えることを特徴とする請求項12または13に記載のミリ波送受信システム。
【請求項15】
上記送信装置は、複数の放送用信号を多重化して受信し、当該受信した放送用信号を上記送信アンテナから、上記ミリ波に重畳して送信信号として送信することを特徴する請求項4〜6、12〜14の何れか1項に記載のミリ波送受信システム。
【請求項16】
ミリ波を送信する送信装置と、当該送信装置が送信したミリ波を反射する反射板と、当該反射板が反射したミリ波を受信する受信装置とを含むミリ波送受信システムに含まれる上記反射板であって、
上記ミリ波を反射する反射面として金属板、金属シートまたは金属膜を有していることを特徴とする反射板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−118845(P2010−118845A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289927(P2008−289927)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度総務省「電波資源拡大のための研究開発」のうち、「ミリ波帯無線装置の低コスト化の小型ワンチップモジュール化技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】