説明

ムスカリン性受容体アンタゴニストとして有用なビフェニル化合物

本発明は、式Iの化合物を提供し、ここでa、b、c、d、n、R、R、R、R、R、WおよびAは、本明細書中で定義される通りである。式Iの化合物は、ムスカリン性受容体アンタゴニストである。本発明はまた、そのような化合物を含む薬学的組成物、そのような化合物を調製するためのプロセスおよび中間体、および肺障害を処置するためにそのような化合物を使用する方法を提供する。本発明は、ムスカリン性受容体アゴニスト活性または抗コリン作用性活性を有する新規のビフェニル化合物を提供する。本発明の化合物は、とりわけ吸入によって投与された場合に強い効力を有し、全身性の副作用が少なく、長期間作用すると考えられる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、ムスカリン性受容体アンタゴニストであるかまたは抗コリン作用性活性を有する新規ビフェニル化合物に関する。本発明はまた、このビフェニル化合物を含む薬学的組成物、このビフェニル化合物を調製するためのプロセスおよび中間体、および肺障害を処置するためにこのビフェニル化合物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(従来技術)
肺障害または呼吸器障害、例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)およびぜんそくは、世界中で何百万人もの人々がかかる病気であり、この障害は罹患率および死亡率の主要因である。
【0003】
ムスカリン性受容体アンタゴニストは気管支保護効果があることが知られており、そのため、この化合物は呼吸器障害(例えばCOPDおよびぜんそく)を処置するのに有用である。ムスカリン性受容体アンタゴニストは、このような障害を処置するのに使用される場合、典型的には吸入によって投与される。しかし、吸入によって投与されたとしても、顕著な量のムスカリン性受容体アンタゴニストが体循環で吸収されてしまい、全身性の副作用(例えば、口の乾き、散瞳および心血管系副作用)を生じることがよくある。
【0004】
さらに、吸入されたムスカリン性受容体アンタゴニストの多くは比較的作用持続時間が短く、1日に数回投与することが必要である。このような1日に複数回投与する方法は不便であるだけではなく、頻繁な投薬スケジュールが必要であるということに対する患者のコンプライアンスのなさに起因して、処置が不十分になるという顕著なリスクが生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、新規ムスカリン性受容体アンタゴニストが必要とされている。特に、吸入によって投与された場合に強い効力を有し、全身性の副作用が少ない新規ムスカリン性受容体アンタゴニストが必要とされている。さらに、長期間作用して1日に1回または1週間に1回の投与でよい吸入用ムスカリン性受容体アンタゴニストが必要とされている。このような化合物は、副作用(例えば口の渇きおよび便秘)を減らすかまたは排除しつつ、肺障害(例えば、COPDおよびぜんそく)の処置に特に有用であると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、ムスカリン性受容体アゴニスト活性または抗コリン作用性活性を有する新規のビフェニル化合物を提供する。本発明の化合物は、とりわけ吸入によって投与された場合に強い効力を有し、全身性の副作用が少なく、長期間作用すると考えられる。
【0007】
本発明の1つの局面は、式I:
【0008】
【化16】

の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体に関し、
ここで、aは0、または1−5の整数であり;
各Rは、独立して、(1−4C)アルキル、(2−4C)アルケニル、(2−4C)アルキニル、(3−6C)シクロアルキル、シアノ、ハロ、−OR1a、−C(O)OR1b、−SR1c、−S(O)R1d、−S(O)1e、−NR1f1g、−NR1hS(O)1i、−および−NR1jC(O)R1kから選択され;ここでR1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R1f、R1g、R1h、R1i、R1j、およびR1kのそれぞれは、独立して、水素、(1−4C)アルキルまたはフェニル(1−4C)アルキルであり;
bは0、または1−4の整数であり;
各Rは、独立して、(1−4C)アルキル、(2−4C)アルケニル、(2−4C)アルキニル、(3−6C)シクロアルキル、シアノ、ハロ、−OR2a、−C(O)OR2b、−SR2c、−S(O)R2d、−S(O)2e、−NR2f2g、−NR2hS(O)2i、および−NR2jC(O)R2kから選択され;ここでR2a、R2b、R2c、R2d、R2e、R2f、R2g、R2h、R2i、R2j、およびR2kのそれぞれは、独立して、水素、(1−4C)アルキルまたはフェニル(1−4C)アルキルであり;
Wは、OまたはNWを表し、ここでWは水素または(1−4C)アルキルであり;
cは0、または1−5の整数であり;
各Rは、独立して(1−4C)アルキルをあらわすか、または2つのR基が結合して、(1−3C)アルキレン、(2−3C)アルケニレンまたはオキシラン−2,3−ジイルを形成し;
Aは、
【0009】
【化17】

【0010】
【化18】

から選択され、
ここでmは0または1であり;rは2、3または4であり;sは0、1または2であり;tは0、1または2であり;Rは、水素、(1−4C)アルキル、および(3−4C)シクロアルキルから選択され;そしてArは、酸素、窒素および硫黄から独立して選択される1または2個のヘテロ原子を含むフェニレン基または(3−5C)ヘテロアリーレン基を表し;ここで、該フェニレンまたはヘテロアリーレン基は、(Rで置換されており、qは0、または1−4の整数であり、各Rは、独立して、ハロ、ヒドロキシ、(1−4C)アルキルおよび(1−4C)アルコキシから選択され;
nは0、または1−3の整数であり;
dは0、または1−4の整数であり;
各Rは、独立して、フルオロまたは(1−4C)アルキルを表し;
は、独立して、水素、−OH、−(1−4C)アルキレンOH、−NR7a7b、−C(O)NR7c7d、および−CHC(O)NR7c7dから選択され、ここでR7a、R7b、およびR7cは、独立して、水素、(1−4C)アルキル、ヒドロキシ、(1−4C)アルコキシ、(1−4C)アルキレンOR7e、(3−6C)シクロアルキル、ヒドロキシで必要に応じて置換されたフェニル、および(1−4C)アルキレンC(O)NR7f7gから選択され;そしてRは、ヒドロキシ、(1−4C)アルコキシ、(1−4C)アルキレンOR7h、(3−6C)シクロアルキル、ヒドロキシで必要に応じて置換されたフェニル、および(1−4C)アルキレンC(O)NR7i7jから選択され;ここで該(3−6C)シクロアルキルは、非置換であるか、または1もしくは2個の(1−6C)アルキルもしくは−NR7k7l基で置換されており、そしてR7e、R7f、R7g、R7h、R7i、R7j、R7k、およびR7lのそれぞれは、独立して、水素または(1−4C)アルキルであるか;あるいはR7cはR7dと一緒になって、3−7員の、必要に応じてヒドロキシルで置換された環を形成し;
ここでR、R1a−1k、R、R2a−2k、R、R、R、およびR7a−lにおける各アルキルおよびアルコキシ基は、必要に応じて、1−5個のフルオロ置換基で置換されている。
【0011】
本発明の別の局面は、薬学的に受容可能なキャリアと、治療有効量の式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体とを含む薬学的組成物に関する。本発明のなお別の局面は、式Iの化合物を、1種以上の他の治療剤と組み合わせて含む組成物に関する。従って、1つの実施形態において、本発明は、(a)薬学的に受容可能なキャリアと、治療有効量の式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体とを含む組成物、ならびに(b)コルチコステロイドのような、ステロイド性抗炎症剤;β2アドレナリン作用性受容体アゴニスト;ホスホジエステラーゼ−4インヒビター;またはそれらの組み合わせから選択される治療有効量の薬剤、を含む組成物に関し、ここで式Iの化合物とこの薬剤とは、一緒に処方されるか、または別個に処方される。この薬剤が別個に処方される場合、薬学的に受容可能なキャリアが含まれ得る。
【0012】
本発明の化合物は、ムスカリン性受容体アンタゴニスト活性を有する。従って、式Iの化合物は、慢性閉塞性肺疾患および喘息のような肺障害を処置するために有用であることが期待される。
【0013】
本発明のなお別の局面は、肺障害を処置するための方法に関し、この方法は、患者に、治療有効量の式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体を投与する工程を包含する。
【0014】
本発明のなお別の局面は、患者において気管支拡張を生じさせる方法に関し、この方法は、この患者に、治療有効量の式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体を投与する工程を包含する。1つの実施形態において、この化合物は、吸入によって投与される。
【0015】
本発明はまた、慢性閉塞性肺疾患または喘息を処置する方法に関し、この方法は、患者に、治療有効量の式Iの化合物、またはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体を投与する工程を包含する。
【0016】
本発明の別の局面は、哺乳動物においてムスカリン性受容体と拮抗するための方法に関し、この方法は、この哺乳動物に、治療有効量の式Iの化合物を投与する工程を包含する。
【0017】
本発明の化合物はムスカリン性受容体アンタゴニスト活性を有するため、そのような化合物はまた、研究ツールとしても有用である。従って、本発明の別の局面は、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体を、生体系またはサンプルを研究するための研究ツールとして使用する方法、またはムスカリン性受容体アンタゴニスト活性を有する新規化合物を発見するための方法に関する。
【0018】
本発明はまた、式Iの化合物、ならびにその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物および立体異性体を調製するために有用なプロセスおよび新規中間体に関する。従って、本発明の別の局面は、式Iの化合物を調製するプロセスに関し、このプロセスは、以下:
(a) 式IIの化合物と、式IIIの化合物とを反応させる工程;あるいは
(b)式IVaの化合物と、式Va’またはVa’’の化合物とをカップリングさせる工程、または式IVbの化合物と、式Vb’もしくは式Vb’’の化合物とをカップリングさせる工程;あるいは
(c)式VIの化合物と、式VIIの化合物とを反応させる工程;あるいは
(d)式IIの化合物と、式VIIIの化合物とを、還元剤の存在下で反応させる工程;あるいは
(e)式IXの化合物と、式VIIの化合物とを、還元剤の存在下で反応させる工程、
を包含する。次いで、必要に応じて、任意の保護基を除去して、式Iの化合物を提供し;ここで式I−IXの化合物が本明細書中で定義されている。
【0019】
1つの実施形態において、上記プロセスはさらに、式Iの化合物の薬学的に受容可能な塩を形成する工程を包含する。他の実施形態において、本発明は、本明細書中に記載される他のプロセス、および本明細書中に記載されるプロセスのいずれかによって調製された産物に関する。
【0020】
本発明はまた、医薬として使用するための、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体に関する。
【0021】
加えて、本発明は、医薬の製造のための、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体の使用に関し;特に、肺障害の処置のため、または哺乳動物においてムスカリン性受容体と拮抗するための医薬の製造のためである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(発明の詳細な説明)
本発明は、式Iの新規ビフェニル化合物およびこれらの薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体に関する。これらの化合物は、1つ以上の不斉中心を含有していてもよく、そのため、本発明は、他に言及されない限り、ラセミ混合物;純粋な立体異性体(すなわち、エナンチオマーまたはジアステレオマー);いずれかの立体異性体が主成分の混合物などに関する。特定の立体異性体が本明細書に示されているかまたは記載されている場合、当業者は、他に言及されない限り、他の異性体が存在することによって組成物全体の所望な有用性が失われない限り、少量の他の立体異性体が本発明の組成物中に存在してもよいことを理解する。
【0023】
式Iの化合物は、いくつかの塩基性基(例えばアミノ基)も含有し、そのために、式Iの化合物は、遊離塩基または種々の塩形態で存在することができる。このようなあらゆる塩形態は、本発明の範囲内に含まれる。
【0024】
さらに、式Iの化合物の溶媒和物またはその塩は、本発明の範囲内に含まれる。さらに、適用可能な場合、他に言及されない限り、本発明の化合物のあらゆるシス−トランス異性体またはE/Z異性体(幾何異性体)、互変異性体形態および位置異性体形態が本発明の範囲内に含まれる。
【0025】
式Iの化合物およびその合成に使用される化合物は、同位体標識された化合物、すなわち、1つ以上の原子で天然に最も多く存在する原子とは異なる原子量を有する原子を豊富に含む化合物を含んでもよい。式Iの化合物に組み込まれてもよい同位体の例としては、限定されないが、H、H、13C、14C、15N、18Oおよび17Oが挙げられる。
【0026】
本明細書で使用される本発明の化合物の命名法は本明細書の実施例に示されている。この命名法は、市販のAutoNomソフトウェア(MDL,San Leandro,California)を用いて誘導されている。例えば、WがOである式Iの化合物は、典型的にはビフェニル−2−イルカルバミン酸のエステル誘導体として命名されている。
【0027】
(代表的な実施形態)
以下の置換基および値は、本発明の種々の態様および実施形態の代表的な例を与えるためのものである。これらの代表値は、この態様および実施形態をさらに定義し、説明するためのものであり、本発明の他の実施形態を排除するものでもなければ、本発明の範囲を限定するものでもない。この観点で、特定的に示されない限り、特定の値または置換基が好ましいという表現は本発明の他の値または置換基をいかなる様式でも排除することを目的とするものではない。
【0028】
a値は、0、1、2、3、4または5であり;特に、0、1または2であり、なおより特には、0または1である。b値は、0、1、2、3または4であり;特に、0、1または2であり、そしてなおより特には、0または1である。1つの実施形態において、aは0である。別の実施形態において、bは0である。なお別の実施形態において、aおよびbの両方が0である。
【0029】
存在する場合、各Rは、それが結合しているフェニル環の2位、3位、4位、5位または6位に存在し得る。各Rは、独立して、(1−4C)アルキル、(2−4C)アルケニル、(2−4C)アルキニル、(3−6C)シクロアルキル、シアノ、ハロ、−OR1a、−C(O)OR1b、−SR1c、−S(O)R1d、−S(O)1e、−NR1f1g、−NR1hS(O)1i、および−NR1jC(O)R1kから選択され、その例としては、メチル、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヒドロキシ、メトキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノなどが挙げられる。Rの具体的なものは、フルオロまたはクロロである。
【0030】
存在する場合、各Rは、それが結合しているフェニル環の3位、4位、5位または6位に存在し得る(窒素原子に結合しているフェニレン環の炭素原子を1位とする)。各Rは、(1−4C)アルキル、(2−4C)アルケニル、(2−4C)アルキニル、(3−6C)シクロアルキル、シアノ、ハロ、−OR2a、−C(O)OR2b、−SR2c、−S(O)R2d、−S(O)2e、−NR2f2g、−NR2hS(O)2i、および−NR2jC(O)R2kから独立して選択され、例としては、メチル、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヒドロキシ、メトキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノなどが挙げられる。Rの具体的なものは、フルオロまたはクロロである。
【0031】
およびRで使用される各R1aー1kおよびR2a−2k基は、それぞれ独立して、水素、(1−4C)アルキルまたはフェニル(1−4C)アルキルであり、例としては、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチルまたはベンジルが挙げられる。一実施形態では、これらの基は、独立して、水素または(1−3C)アルキルである。別の実施形態では、これらの基は、独立して、水素、メチルまたはエチルである。さらに、R、R1a−1k、RおよびR2a−2k中の各アルキル基およびアルコキシ基は、それぞれ1個〜5個のフルオロ置換基で必要に応じて置換される。
【0032】
WはOまたはNWであり得る。一般的に、WがOをあらわす化合物は、特にムスカリン性受容体と高い親和性を示すことがわかっている。従って、本発明の特定の実施形態では、WはOをあらわす。
【0033】
WがNWである場合、Wは水素または(1−4C)アルキルであり、例としては、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチルおよびtert−ブチルが挙げられる。一実施形態では、Wは水素または(1−3C)アルキルである。別の実施形態では、Wは、水素、メチルまたはエチルであり、特に水素またはメチルである。なお別の実施形態では、Wは水素である。
【0034】
c値は0、1、2、3、4または5であり;特に0、1または2であり、より具体的には0または1である。一実施形態では、cは0である。別の実施形態では、cは2である。
【0035】
一実施形態では、各Rは、ピペリジン環の3位、4位または5位にある(ピペリジン環の窒素原子を1位とする)。特定の実施形態では、Rはピペリジン環の4位にある。別の実施形態では、Rはピペリジン環の1位、すなわちピペリジン環の窒素原子上にあり、四級アミン塩を形成する。各Rは、独立して(1−4C)アルキルをあらわすか、または2つのR基が結合して、(1−3C)アルキレン、(2−3C)アルケニレンまたはオキシラン−2,3−ジイルを形成する。一実施形態では、各Rは、独立して、(1−4C)アルキル、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチルおよびtert−ブチルである。さらに、R中の各アルキル基は、1個〜5個のフルオロ置換基で必要に応じて置換される。一実施形態では、各Rは、独立して、(1−3C)アルキルであり、別の実施形態では、各Rは、独立して、メチルまたはエチルである。
【0036】
なお別の実施形態では、2個のR基が結合して(1−3C)アルキレンまたは(2−3C)アルケニレン基を形成する。例えば、ピペリジン環の2位および6位の2個のR基が結合して、エチレン架橋を形成することができる(すなわち、ピペリジン環とR基とが、8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン環を形成する)か;またはピペリジン環の1位および4位の2個のR基が結合して、エチレン架橋を形成することができる(すなわち、ピペリジン環とR基とが、1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン環を形成する)。この実施形態では、本明細書に定義されるような他のR基もまた、存在してもよい。
【0037】
さらに別の実施形態では、2個のR基が結合して、オキシラン−2,3−ジイル基を形成する。例えば、ピペリジン環の2位および6位の2個のR基が結合して3−オキサトリシクロ[3.3.1.02,4]ノナン環を形成することができる。この実施形態では、本明細書に定義されるような他のR基もまた、存在してもよい。
【0038】
Aは、
【0039】
【化19】

から選択される。
【0040】
m値は、0または1である。一実施形態では、mは0である。
【0041】
r値は、2、3または4である。一実施形態では、rは3である。
【0042】
s値は、0、1または2である。一実施形態では、sは0である。別の実施形態では、sは2である。
【0043】
t値は、0、1または2である。tについての特定の値は、1である。
【0044】
は、水素、(1−4C)アルキル、または(3−4C)シクロアルキルをあらわす。(1−4C)アルキルの例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチルおよびtert−ブチルが挙げられる。(3−4C)シクロアルキル基の例としては、シクロプロピルおよびシクロブチルが挙げられる。一実施形態において、Rは、水素または(1−3C)アルキルをあらわし、特に水素またはメチルをあらわす。
【0045】
Arは、フェニレン基、または酸素、窒素または硫黄から独立して選択される1個または2個のヘテロ原子を含有する(3−5C)ヘテロアリーレン基である。q値は0、1、2、3または4であり、特に0、1、2または3である。一実施形態では、qは0、1または2である。従って、フェニレンまたはヘテロアリーレン基は、非置換であっても(qは0である)、1〜4個のR置換基で置換されていてもよく、この置換基は、ハロ、ヒドロキシ、(1−4C)アルキルおよび(1−4C)アルコキシから独立して選択される。それに加えて、R中の各アルキル基およびアルコキシ基は、1〜5個のフルオロ置換基で必要に応じて置換されている。Arの結合点は、任意の可能な炭素環原子またはヘテロ環原子上にある。特定の実施形態では、Arは、メタ位またはパラ位で結合しているフェニレン基である。
【0046】
一実施形態では、Arはフェン−1,3−イレンまたはフェン−1,4−イレンであり、ここで、このフェニレン基は置換されていないか、または1個、2個または3個のR置換基で置換されている。代表的なR置換基としては、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチルおよびトリフルオロメトキシが挙げられる。この実施形態におけるAr基の特定の例としては、2−フルオロフェン−1,4−イレン、3−フルオロフェン−1,4−イレン、2−クロロフェン−1,4−イレン、3−クロロフェン−1,4−イレン、2−メチルフェン−1,4−イレン、3−メチルフェン−1,4−イレン、2−メトキシフェン−1,4−イレン、3−メトキシフェン−1,4−イレン、2−トリフルオロメトキシフェン−1,4−イレン、3−トリフルオロメトキシフェン−1,4−イレン、2,3−ジフルオロフェン−1,4−イレン、2,5−ジフルオロフェン−1,4−イレン、2,6−ジフルオロフェン−1,4−イレン、2,3−ジクロロフェン−1,4−イレン、2,5−ジクロロフェン−1,4−イレン、2,6−ジクロロフェン−1,4−イレン、2−クロロ−5−メトキシフェン−1,4−イレン、2−クロロ−6−メトキシフェン−1,4−イレン、2−クロロ−5−トリフルオロメトキシフェン−1,4−イレン、2−クロロ−6−トリフルオロメトキシフェン−1,4−イレン、および2,5−ジブロモフェン−1,4−イレンが挙げられる。
【0047】
別の実施形態では、Arは、酸素、窒素および硫黄から独立して選択される1個または2個のヘテロ原子を含有する(3−5C)ヘテロアリーレン基であり;ここで、このヘテロアリーレン基は置換されていないか、または1個または2個のR置換基で置換されている。代表的なヘテロアリーレン基としては、二価の種であるピロール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、フラン、チオフェン、ピラゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンが挙げられ、結合点は任意の可能な炭素環原子または窒素環原子上にある。このようなAr基のさらに具体的な例としては、2,5−フリレン、2,4−チエニレン、2,5−チエニレン、2,5−ピリジレン、2,6−ピリジレン、3,5−ピリジレンおよび2,5−ピロリレンが挙げられる。代表的なR置換基としては、フルオロ、クロロ、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチルおよびトリフルオロメトキシが挙げられる。置換Ar基の具体的な例としては、3−フルオロ−2,5−チエニレン、3−クロロ−2,5−チエニレン、3−メチル−2,5−チエニレン、3−メトキシ−2,5−チエニレン、および3−メトキシ−6−クロロ−2,5−ピリジレンが挙げられる。
【0048】
1つの特定の実施形態では、Arは、フェン−1,3−イレン、フェン−1,4−イレン、2,4−チエニレンまたは2,5−チエニレンをあらわし;ここで、このフェニレン基またはチエニレン基は、1個または2個のR置換基で必要に応じて置換されている。別の実施形態では、Arは、1個または2個のR置換基で必要に応じて置換されたフェン−1,4−イレンまたは2,4−チエニレンである。
【0049】
n値は、0、1、2または3である。特定のn値は、1または2である。一実施形態において、nは2である。
【0050】
d値は、0、1、2、3、または4である。特定のd値は、0、1または2である。一実施形態において、dは0である。
【0051】
各Rは、独立して、フルオロまたは(1−4C)アルキルをあらわし、この例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチルおよびtert−ブチルが挙げられる。さらに、Rにおける各アルキルおよびアルコキシ基は、必要に応じて、1個〜5個のフルオロ置換基で置換されている。一実施形態において、各Rは、独立して、フルオロまたは(1−3C)アルキルをあらわし、別の実施形態において、各Rは、独立して、フルオロ、メチル、エチルまたはトリフルオロメチルから選択される。
【0052】
は、水素、−OH、−(1−4C)アルキレンOH、−NR7a7b、−C(O)NR7c7d、および−CHC(O)NR7c7dから選択される。R7a、R7b、およびR7cは、独立して、水素、(1−4C)アルキル、ヒドロキシ、(1−4C)アルコキシ、(1−4C)アルキレンOR7e、(3−6C)シクロアルキル、必要に応じてヒドロキシで置換されたフェニル、および(1−4C)アルキレンC(O)NR7f7gから選択される。Rは、ヒドロキシ、(1−4C)アルコキシ、(1−4C)アルキレンOR7h、(3−6C)シクロアルキル、必要に応じてヒドロキシで置換されたフェニル、および(1−4C)アルキレンC(O)NR7i7jから選択される。この(3−6C)シクロアルキル基は、置換されていないか、または1個または2個の(1−6C)アルキルまたは−NR7k7l基で置換されており、ここでR7e、R7f、R7g、R7h、R7i、R7j、R7k、およびR7lの各々は、独立して、水素または(1−4C)アルキルである。さらに、R7a−lにおけるアルキルおよびアルコキシ基の各々は、必要に応じて、1個〜5個のフルオロ置換基で置換されている。一実施形態において、R7cは、R7dと一緒になって、必要に応じてヒドロキシルで置換された3−7員環を形成する。
【0053】
1つの特定の実施形態において、Rは水素である。別の実施形態において、RはOHである。一実施形態において、Rは、−CHOHおよび−(CHOHのような、−(1−4C)アルキレンOHである。別の実施形態において、Rは−C(O)NR7c7dであり、ここで例えば、R7cは水素であり、Rは:−(CHOHおよび−(CHOCHのような、(1−4C)アルキレンOR7h;シクロプロピルおよびシクロペンチルのような、(3−6C)シクロアルキル;ヒドロキシで必要に応じて置換されたフェニル;ならびに−(CH)C(O)NHのような(1−4C)アルキレンC(O)NR7i7jから選択される。別の特定の実施形態において、Rは−C(O)NR7c7dであり、R7cはR7dと一緒になって、5−6員環を形成し、この環は、必要に応じて、ピロリジン、ピペリジン、3−ヒドロキシピペリジン、および4−ヒドロキシピペリジンのようなヒドロキシルで置換されている。
【0054】
式Iにおいて注意されるように、Rは、環における任意の炭素原子に位置し得る。例えば、nが2である場合、Rは、オルト位にも、メタ位にも、パラ位にも位置することができる。一実施形態において、Rは、メタ位またはパラ位に位置し;そして特定の実施形態においては、Rはパラ位に位置する。
【0055】
目的の化合物の特定の群は、a、bおよびcが0である、式Iの化合物である。目的の化合物の別の群において、WはOをあらわす。目的の化合物の別の群は、mが0に等しい。目的の化合物の別の群は、Rが水素またはメチルである、式Iの化合物である。目的の化合物の別の群において、Aは:
【0056】
【化20】

であり、ここで、mは0であり;sは0または2であり;tは1であり;Rは水素またはメチルであり;そしてArは、qが0であるかまたはqが1であり、Rがハロである(Rで置換されたフェニレン基をあらわすか、または2,5−チエニレン、2,5−ピロリレン、および2,5−フリレンから選択される(3−5C)ヘテロアリーレン基をあらわす。目的の化合物の別の群において、Aは:
【0057】
【化21】

であり、ここで、mは0であり;rは3であり;そして、Rは、水素またはメチルである。目的の化合物の別の群は、nが1または2に等しい。目的の化合物の別の群は、dが0である。目的の化合物の別の群において、Rは、水素または−OHである。目的の化合物の別の群は、Rが−CHOHまたは−(CHOHのような−(1−4C)アルキレンOHである式Iの化合物である。目的の化合物の別の群において、Rが−C(O)NR7c7dであり、ここでR7cは水素であり、そしてRは、−(CHOHおよび−(CHOCHのような(1−4C)アルキレンOR7h、シクロプロピルおよびシクロペンチルのような(3−6C)シクロアルキル、必要に応じてヒドロキシで置換されたフェニル、ならびに−(CH)C(O)NHのような(1−4C)アルキレンC(O)NR7i7jから選択される。目的の化合物の別の群において、Rは−C(O)NR7c7dであり、ここでR7cはR7dと一緒になって、5−6員環を形成し、この環は、必要に応じて、ピロリジン、ピペリジン、3−ヒドロキシピペリジン、および4−ヒドロキシピペリジンのようなヒドロキシルで置換されている。上述のものの組み合わせもまた、目的のものである。例えば、目的の化合物の1つの群は、a、b、およびcは0であり;WはOをあらわし;mは0であり;Rは水素またはメチルであり;nは1または2であり;そしてdは0である、式Iの化合物である。
【0058】
目的の化合物の別の群は、式Iaのものであり:
【0059】
【化22】

ここで、d、n、R、R、およびAは、上で定義された通りである。
【0060】
目的の具体的な化合物としては:
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−[2−({4−[4−(2−ヒドロキシエチルカルバモイル)ピペリジン−1−イルメチル]ベンゾイル}メチルアミノ)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−[2−({4−[4−(2−メトキシエチルカルバモイル)ピペリジン−1−イルメチル]ベンゾイル}メチルアミノ)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−{[4−(4−シクロプロピルカルバモイルピペリジン−1−イルメチル)ベンゾイル]メチルアミノ}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−{[4−(4−シクロペンチルカルバモイルピペリジン−1−イルメチル)ベンゾイル]メチルアミノ}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−[2−({4−[4−(4−ヒドロキシベンジルカルバモイル)ピペリジン−1−イルメチル]ベンゾイル}メチルアミノ)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−{[4−(4−ベンジルカルバモイルピペリジン−1−イルメチル)ベンゾイル]メチルアミノ}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−[2−({4−[4−(カルバモイルメチルカルバモイル)ピペリジン−1−イルメチル]ベンゾイル}メチルアミノ)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−[2−({4−[4−(4−ヒドロキシピペリジン−1−カルボニル)ピペリジン−1−イルメチル]ベンゾイル}メチルアミノ)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−[2−({4−[4−(3−ヒドロキシピペリジン−1−カルボニル)ピペリジン−1−イルメチル]ベンゾイル}メチルアミノ)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−[2−(メチル−{4−[4−(ピロリジン−1−カルボニル)ピペリジン−1−イルメチル]ベンゾイル}アミノ)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−[2−(メチル−{4−[4−(ピペリジンe−1−カルボニル)ピペリジン−1−イルメチル]ベンゾイル}アミノ)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−{[4−(4−ヒドロキシメチルピペリジン−1−イルメチル)ベンゾイル]メチルアミノ}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−{[4−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル)ベンゾイル]メチルアミノ}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−{[2−フルオロ−4−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル)ベンゾイル]メチルアミノ}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−{2−[メチル−(5−ピロリジン−1−イルメチルチオフェン−2−カルボニル)アミノ]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−{[5−(4−ヒドロキシメチルピペリジン−1−イルメチル)チオフェン−2−カルボニル]メチルアミノ}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−{[5−(3−ヒドロキシピロリジン−1−イルメチル)チオフェン−2−カルボニル]メチルアミノ}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−{[5−(4−ヒドロキシメチルピペリジン−1−イルメチル)チオフェン−2−カルボニル]アミノ}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−{[5−(3−ヒドロキシピロリジン−1−イルメチル)チオフェン−2−カルボニル]アミノ}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−{[5−(4−ヒドロキシメチルピペリジン−1−イルメチル)−1H−ピロール−2−カルボニル]メチルアミノ}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−{2−[メチル−(5−ピロリジン−1−イルメチル−1H−ピロール−2−カルボニル)アミノ]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−{[5−(4−ヒドロキシメチルピペリジン−1−イルメチル)フラン−2−カルボニル]アミノ}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−{[5−(3−ヒドロキシピロリジン−1−イルメチル)フラン−2−カルボニル]アミノ}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−[2−({3−[4−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル)フェニル]プロピオニル}メチルアミノ)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−[2−({3−[4−(3−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル)フェニル]プロピオニル}メチルアミノ)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−{2−[3−(4−ピペリジン−1−イルメチルフェニル)プロピオニルアミノ]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−{3−[4−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル)フェニル]プロピオニルアミノ}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−{3−[4−(3−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル)フェニル]プロピオニルアミノ}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−{2−[メチル−(4−ピロリジン−1−イルメチル−ベンゾイル)アミノ]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−{5−[2−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン−1−イル]ペンチルカルバモイル}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−{2−[5−(3−ヒドロキシピペリジン−1−イル)ペンチルカルバモイル]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;および
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−{2−[5−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イル)ペンチルカルバモイル]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
またはこれらの薬学的に受容可能な塩または溶媒和物が挙げられる。
【0061】
(定義)
本発明の化合物、組成物、方法およびプロセスを記載する場合、以下の用語は他に言及されない限り以下に示す意味を有する。
【0062】
用語「アルキル」は、一価の飽和炭化水素基を意味し、直鎖であっても分枝であってもよい。他に定義されない限り、このアルキル基は典型的には1〜10個の炭素原子を含有する。代表的なアルキル基としては、一例として、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシルなどが挙げられる。
【0063】
用語「アルキレン」は、二価の飽和炭化水素基を意味し、直鎖であっても分枝であってもよい。他に定義されない限り、このアルキレン基は典型的には1〜10個の炭素原子を含有する。代表的なアルキレン基としては、一例として、メチレン、エタン−1,2−ジイル(「エチレン」)、プロパン−1,2−ジイル、プロパン−1,3−ジイル、ブタン−1,4−ジイル、ペンタン−1,5−ジイルなどが挙げられる。
【0064】
用語「アルコキシ」は、式(アルキル)−O−の一価の基を意味し、アルキルは上に定義されるとおりである。代表的なアルコキシ基としては、一例として、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、イソブトキシ、tert−ブトキシなどが挙げられる。
【0065】
用語「アルケニル」は、直鎖であっても分枝であってもよく、少なくとも1個の、典型的には1個、2個、または3個の炭素−炭素二重結合を有する一価の飽和炭化水素基を意味する。他に定義されない限り、このアルケニル基は典型的には2〜10個の炭素原子を含有する。代表的なアルケニル基としては、一例として、エテニル、n−プロペニル、イソプロペニル、n−ブタ−2−エニル、n−ヘキサ−3−エニルなどが挙げられる。用語「アルケニレン」は、二価のアルケニル基を意味する。
【0066】
用語「アルキニル」は、直鎖であっても分枝であってもよく、少なくとも1個の、典型的には1個、2個、または3個の炭素−炭素三重結合を有する一価の不飽和炭化水素基を意味する。他に定義されない限り、このアルキニル基は典型的には2〜10個の炭素原子を含有する。代表的なアルキニル基としては、一例として、エチニル、n−プロピニル、n−ブタ−2−イニル、n−ヘキサ−3−イニルなどが挙げられる。用語「アルキニレン」は、二価のアルキニル基を意味する。
【0067】
用語「アリール」は、単環(すなわちフェニル)または縮合環(すなわちナフタレン)を有する一価の芳香族炭化水素を意味する。他に定義されない限り、このアリール基は典型的には6〜10個の炭素原子を含有する。代表的なアリール基としては、一例として、フェニルおよびナフタレン−1−イル、ナフタレン−2−イルなどが挙げられる。用語「アリーレン」は、二価のアリール基を意味する。
【0068】
用語「アザシクロアルキル」は、1個の窒素原子を有する一価のヘテロ環式環、すなわち、1個の炭素原子が窒素原子に変わったシクロアルキルを意味する。他に定義されないかぎり、このアザシクロアルキル基は典型的には2〜9個の炭素原子を含有する。代表的なアザシクロアルキルの例は、ピロリジニルおよびピペリジニル基である。用語「アザシクロアルキレン」は、二価のアザシクロアルキル基を意味する。アザシクロアルキレン基の代表例は、ピロリジニレンおよびピペリジニレン基である。
【0069】
用語「シクロアルキル」は、一価の飽和炭素環式炭化水素基を意味する。他に定義されない限り、このシクロアルキル基は典型的には3〜10個の炭素原子を含有する。代表的なシクロアルキル基としては、一例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。用語「シクロアルキレン」は、二価のシクロアルキル基を意味する。
【0070】
用語「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを意味する。
【0071】
用語「ヘテロアリール」は、単環または2個の縮合環を有し、窒素、酸素および硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子(典型的には1〜3個のヘテロ原子)を環に含有する一価の芳香族基を意味する。他に定義されないかぎり、この基は典型的には5〜10個の炭素原子を含有する。代表的なヘテロアリール基としては、一例として、ピロール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、フラン、チオフェン、トリアゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、トリアジン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンズイミダゾール、ベンズチアゾール、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリンなどの一価の種が挙げられ、結合点は任意の可能な炭素環原子または窒素環原子上にある。用語「ヘテロアリーレン」は、二価のヘテロアリール基を意味する。
【0072】
用語「ヘテロシクリル」または「ヘテロ環」は、単環または複数の縮合環を有し、窒素、酸素および硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子(典型的には1〜3個のヘテロ原子)を環に含有する一価の飽和または不飽和(芳香族ではない)基を意味する。他に定義されない限り、この基は典型的には2〜9個の炭素原子を含有する。代表的なヘテロ環基としては、一例として、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピペリジン、1,4−ジオキサン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、3−ピロリンなどの一価の種が挙げられ、結合点は任意の可能な炭素環原子または窒素環原子上にある。用語「ヘテロシクレン」は、二価のヘテロシクリルまたはヘテロ環基を意味する。
【0073】
本明細書で使用される特定の用語に特定の数の炭素原子を入れようとする場合、炭素原子の数は用語の前に括弧書きで示される。例えば、用語「(1〜4C)アルキル」は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。
【0074】
用語「薬学的に受容可能な塩」は、患者(例えば哺乳動物)に投与するのに受容可能な塩(例えば、所与の投薬法で哺乳動物への安全性が受容可能なものである塩)を意味する。この塩は、薬学的に受容可能な無機塩基または有機塩基と、薬学的に受容可能な無機酸または有機酸とから誘導することができる。薬学的に受容可能な無機塩基から誘導される塩としては、アンモニウム塩、カルシウム塩、銅塩、第二鉄塩、第一鉄塩、リチウム塩、マグネシウム塩、マンガン(manganic)塩、マンガン(manganous)塩、カリウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩などが挙げられる。特に好ましいのはアンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩およびナトリウム塩である。薬学的に受容可能な有機塩基から誘導される塩としては、一級アミン、二級アミンおよび三級アミンの塩が挙げられ、アミンとしては、置換アミン、環状アミン、天然に存在するアミンなど、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン(piperazine)、ピペラジン(piperadine)、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどが挙げられる。薬学的に受容可能な酸から誘導される塩としては、酢酸塩、アスコルビン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、エタンスルホン酸塩、エジシル酸塩、フマル酸塩、ゲンチシン酸塩、グルコン酸塩、グルコロン酸塩、グルタミン酸塩、馬尿酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、粘液酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、パモン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、キシナホン酸塩(xinafoic)などが挙げられる。特に好ましいのは、クエン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、イセチオン酸塩、マレイン酸塩、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩、リン酸塩、硫酸塩および酒石酸塩である。
【0075】
用語「それらの塩」は、酸の水素がカチオン(例えば金属カチオンまたは有機カチオンなど)と交換されて形成される化合物を意味する。好ましくは、この塩は薬学的に受容可能な塩である。しかし、いくつかの塩(例えば、中間体化合物の塩)は患者に投与することを意図していないので、薬学的に受容可能な塩である必要はない。
【0076】
用語「溶媒和物」は、1つ以上の溶質(すなわち、式Iの化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩)と1つ以上の溶媒分子によって形成される複合体または凝集物を意味する。この溶媒和物は、典型的には、溶質および溶媒のモル比が実質的に固定した結晶性固体である。代表的な溶媒としては、一例として、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸などが挙げられる。溶媒が水である場合、形成される溶媒和物は水和物である。
【0077】
用語「またはそれらの薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体」が、塩、溶媒和物および立体異性体のあらゆる組み合わせ(例えば、式Iの化合物の立体異性体の薬学的に受容可能な塩の溶媒和物)を含むことが意図されると理解される。
【0078】
用語「治療有効量」は、処置が必要な患者に投与したときに患者を処置するのに十分な量を意味する。例えば、ムスカリン性受容体を拮抗するための治療有効量は、所望な拮抗効果を達成する量である。同様に、肺障害を処置するための治療有効量は、所望な治療結果を達成する量であり、この量は、以下に記載されるように、疾患を予防し、改善し、抑制するかまたは緩和させる量であってもよい。
【0079】
用語「処置する」または「処置」は、本明細書で使用される場合、患者(例えば哺乳動物、特にヒト)の疾患または医学状態(例えばCOPD)を処置することまたは処置を意味し、以下の内容を含む:
(a)疾患または医学状態が発症することを予防すること、すなわち、疾患または医学状態が発症するかまたは処置前の状態であるリスクがあると考えられる患者の予防的処置;
(b)疾患または医学状態を改善させること、すなわち、疾患または医学状態を有する患者においてその疾患または医学状態を除去すせるか、または退縮させること;
(c)疾患または医学状態を抑制すること、すなわち、この疾患または医学状態を有する患者においてその疾患または医学状態の進行を遅らせるかまたは進行をとめること;または
(d)疾患または医学状態を有する患者においてその疾患または医学状態の症状を緩和すること。
【0080】
用語「単位投薬形態」は、患者に投与するのに適した物理的に別個の単位を指す。すなわち、それぞれの単位は、所望の治療効果を得るように計算された所定量の本発明の化合物を単独でまたは1つ以上のさらなる単位と組み合わせて含有する。例えば、この単位投薬形態は、カプセル、錠剤、丸薬などであってもよい。
【0081】
用語「薬学的に受容可能な」は、生物学的またはその他の要因で望ましくない材料ではない物質を指す。例えば、用語「薬学的に受容可能なキャリア」は、組成物に組み込み可能で、所望ではない生物学的影響を与えたり、組成物の他の成分に悪影響を与えないで患者に投与される物質を指す。この薬学的に受容可能な物質は、典型的には、必要な毒性試験標準および製造試験標準を満たし、米国食品医薬品局によって適切な不活性成分であると同定されている物質を含む。
【0082】
用語「脱離基」は、置換反応(例えば求核置換反応)で別の官能基または原子と交換可能な官能基または原子を意味する。一例として、代表的な脱離基としては、クロロ、ブロモおよびヨード基;スルホン酸エステル基、例えば、メシレート、トシレート、ブロシレート、ノシレートなど;およびアシルオキシ基、例えば、アセトキシ、トリフルオロアセトキシなどが挙げられる。
【0083】
用語「それらの保護された誘導体」は、化合物の1つ以上の官能基を保護基またはブロッキング基で保護して望ましくない反応を防ぐようにした特定の化合物の誘導体を意味する。保護可能な官能基としては、一例として、カルボン酸基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボニル基などが挙げられる。カルボン酸の代表的な保護基としては、エステル(例えばp−メトキシベンジルエステル)、アミドおよびヒドラジド;アミノ基の保護基としては、カルバメート(例えばtert−ブトキシカルボニル)およびアミド;ヒドロキシル基の保護基としては、エーテルおよびエステル;チオール基の保護基としては、チオエーテルおよびチオエステル;カルボニル基の保護基としては、アセタールおよびケタールなどが挙げられる。この保護基は当業者に周知であり、例えば、T.W.Greene and G.M.Wuts,Protecting Groups in Organic Synthesis,Third Edition,Wiley,New York,1999および引用文献に記載されている。
【0084】
用語「アミノ保護基」は、アミノ基で望ましくない反応が起こるのを防ぐのに適した保護基を意味する。代表的なアミノ保護基としては、限定されないが、tert−ブトキシカルボニル(BOC)、トリチル(Tr)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、ホルミル、トリメチルシリル(TMS)、tert−ブチルジメチルシリル(TBS)などが挙げられる。
【0085】
用語「カルボキシ保護基」は、カルボキシ基で望ましくない反応が起こるのを防ぐのに適した保護基を意味する。代表的なカルボキシ保護基としては、限定されないが、エステル(例えば、メチル、エチル、tert−ブチル、ベンジル(Bn)、p−メトキシベンジル(PMB)、9−フルオレニルメチル(Fm)、トリメチルシリル(TMS)、tert−ブチルジメチルシリル(TBS)、ジフェニルメチル(ベンズヒドリル,DPM)などが挙げられる。
【0086】
用語「ヒドロキシル保護基」は、ヒドロキシル基で望ましくない反応が起こるのを防ぐのに適した保護基を意味する。代表的なヒドロキシル保護基としては、限定されないが、シリル基、例えば、トリ(1〜6C)アルキルシリル基、例えば、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、tert−ブチルジメチルシリル(TBS)など;エステル(アシル基)、例えば、(1〜6C)アルカノイル基、例えば、ホルミル、アセチルなど;アリールメチル基、例えば、ベンジル(Bn)、p−メトキシベンジル(PMB)、9−フルオレニルメチル(Fm)、ジフェニルメチル(ベンズヒドリル,DPM)などが挙げられる。さらに、2個のヒドロキシル基は、例えば、ケトン(例えばアセトン)と反応させることによってアルキリデン基(例えばプロパ−2−イリデン)として保護して形成することもできる。
【0087】
(一般的な合成手順)
本発明のビフェニル化合物は、以下の一般的な方法、実施例に記載の手順を用いるか、または当業者が容易に入手可能な他の方法、試薬および出発物質を用いて容易に入手可能な出発物質から調製することができる。本発明の特定の実施形態が本明細書に示されるかまたは記載されるが、本発明のあらゆる実施形態または態様で容易に調製可能であることを当業者は認識する。典型的または好ましいプロセス条件(すなわち、反応温度、時間、反応物のモル比、溶媒、圧力など)が与えられている場合、他に述べられていない限り、他のプロセス条件も使用可能であることが理解される。最適な反応条件は使用される特定の反応物または溶媒に依存して変わることがあるが、この条件は通常の最適化手順によって当業者は容易に決定することができる。
【0088】
さらに、当業者には明らかなように、特定の官能基が望ましくない反応を受けることを防ぐのに従来の保護基が必要であるか、または望ましいことがある。特定の官能基の適した保護基およびこのような官能基を保護し、脱保護するのに適した条件の選択は、当該技術分野で周知である。本明細書に記載の手順に説明されているもの以外の保護基も望ましい場合には使用してもよい。例えば、多くの保護基およびこの導入および除去は、T.W.Greene and G.M.Wuts,Protecting Groups in Organic Synthesis,Third Edition,Wiley,New York,1999および引用文献に記載されている。
【0089】
例として、式Iの化合物は、以下:
(a)式II:
【0090】
【化23】

の化合物もしくはその塩と、式III:
【0091】
【化24】

の化合物(Lは、脱離基をあらわす)とを反応させる工程:または
(b)式IVa:
【0092】
【化25】

の化合物もしくはその反応性誘導体と、式Va’もしくはVa’’:
【0093】
【化26】

の化合物とをカップリングさせるか、または式IVb:
【0094】
【化27】

の化合物と、式Vb’もしくはVb’’:
【0095】
【化28】

の化合物もしくはそれらの反応性誘導体とをカップリングさせる工程;あるいは
(c)式VI:
【0096】
【化29】

の化合物(Lは脱離基をあらわす)と、式VII:
【0097】
【化30】

の化合物とを反応させる工程;あるいは
(d)式IIの化合物と、式VIII:
【0098】
【化31】

の化合物(ここで、「A」は1つ少ない(すなわち、mの代わりにm−1)炭素を有する)とを、還元剤の存在下で反応させる工程;あるいは
(e)式IX:
【0099】
【化32】

の化合物(ここで、「A」は1つ少ない(すなわち、rの代わりにr−1、tの代わりにt−1)炭素原子を有する)と、式VIIの化合物とを、還元剤の存在下で反応させる工程;と、
(f)存在し得る任意の保護基を除去し、式Iの化合物を提供する工程:および必要に応じて、その薬学的に受容可能な塩を形成する工程と、
を包含するプロセスによって調製され得る。
【0100】
一般的に、上述のプロセスにおいて出発物質のうちの1つの塩(例えば、酸付加塩)が使用される場合、その塩は、代表的には、反応プロセスの前、または反応プロセスの間に中和される。この中和反応は、代表的に、その塩と、酸付加塩の1モル等量当たり1モル等量の塩基とを接触させることによって達成される。
【0101】
プロセス(a)の式IIの化合物と式IIIの化合物との間の反応で、Lであらわされる脱離基は、例えば、ハロ基(例えば、クロロ、ブロモまたはヨード)、またはスルホン酸エステル基(例えばメシレートまたはトシレート)であり得る。この反応は、塩基(例えば、三級アミン、例えばジイソプロピルエチルアミン)存在下で簡便に行われる。簡便な溶媒としては、ニトリル、例えば、アセトニトリルが挙げられる。この反応は、0〜100℃の温度の範囲で簡便に行われる。
【0102】
式IIの化合物は、一般的に当該分野で公知であるか、または式X:
【0103】
【化33】

の化合物を脱保護することによって調製され得、
ここで、Pはベンジル基のようなアミノ保護基をあらわす。ベンジル基は、水素またはギ酸アンモニウムと、パラジウムのようなVIII族金属触媒とを使用して、還元によって簡便に除去される。WがNWをあらわす場合、水素添加反応は、Pearlman触媒(Pd(OH))を使用して、簡便に実施される。
【0104】
式Xの化合物は、式XI:
【0105】
【化34】

のイソシアネート化合物と、式XII:
【0106】
【化35】

の化合物とを反応させることによって、調製され得る。
【0107】
式IIIの化合物は、Lがヒドロキシル基をあらわす対応する化合物から出発し、例えば塩化チオニルのようなハロゲン化因子の反応によって、Lがクロロのようなハロをあらわす式IIIの化合物を得ることによって、調製され得る。Lがヒドロキシル基をあらわし、Aが式:
【0108】
【化36】

を有する式IIIの化合物は、例えば、式Va’またはVa’’の化合物と、γ−ブチロラクトンのような適切なラクトンとを反応させることによって調製され得る。Lがヒドロキシル基をあらわし、Aが式:
【0109】
【化37】

を有する式IIIの化合物は、例えば、式Vb’またはVb’’の化合物と、2−アミノエタノールまたは3−アミノプロパン−1−オールのような、適切なアミノ置換アルコールとを反応させることによって調製され得る。
【0110】
プロセス(b)において、式IVaの化合物またはその反応性誘導体が式Va’もしくはVa’’の化合物と反応されるか、または式IVbの化合物が式Vb’もしくは式Vb’’またはその反応性誘導体と反応される。化合物IVa、Vb’またはVb’’の「反応性誘導体」により、無水物またはカルボン酸ハロゲン化物(例えば、カルボン酸クロリド)を生成することによってカルボン酸を活性化することを意味している。または、カルボン酸を従来のカルボン酸/アミンカップリング試薬、例えば、カルボジイミド、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)などを用いて活性化することができる。この反応は、従来のアミド結合形成条件下で簡便に行われる。このプロセスは、−10〜100℃の温度範囲で簡便に行われる。
【0111】
式IVaの化合物は、式IIの化合物と、式XIIIa:
【0112】
【化38】

の化合物とを反応させることによって調製され得、
ここで、Lは、例えばクロロ、ブロモまたはヨードのようなハロ基、メシレートまたはトシレートのようなスルホン酸エステル基を含む脱離基をあらわし;Pは、水素原子または(1−4C)アルキル基のようなカルボキシル保護基をあらわす。必要な場合は、カルボキシル保護基Pは、例えば、水酸化リチウムを使用することによるような慣習的な条件下での加水分解によって、その後除去される。あるいは、mが0である場合は、式IVaの化合物は、IIとCH=CHC(O)OPとを反応させ、次いで必要な場合はカルボキシル保護基Pを除去することによって調製され得る。
【0113】
式IVbの化合物は、式IIの化合物と、式XIIIb:
【0114】
【化39】

の化合物(Pは、水素、またはベンジルのようなアミノ保護基)とを、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムの存在下で反応させ、次いで必要な場合には例えばパラジウムの存在下での水素添加によってアミノ保護基Pを除去することによって調製され得る。
【0115】
式Va’の化合物は、式VIIの化合物と、式XIVa:
【0116】
【化40】

の化合物(Pは水素、またはtert−ブトキシカルボニルのようなアミノ保護基をあらわし、Lは、例えばクロロ、ブロモもしくはヨードのようなハロ基、またはメシレートもしくはトシレートのようなスルホン酸エステル基を含む脱離基をあらわす)とを反応させ、その後、必要な場合には、アミノ保護基Pを除去することによって、調製され得る。化合物Va’’は、類似の様式で製造され得る。あるいは、そのような化合物は、プロセス(d)または(e)で記載されたもののような慣習的反応条件下において、式VIIの化合物を使用する、式XVa:
【0117】
【化41】

の還元的アミノ化によって調製され得る。
【0118】
式Vb’の化合物は、式VIIの化合物と、式XIVb:
【0119】
【化42】

の化合物(Pは水素、またはメチルもしくはエチルのようなカルボキシル保護基をあらわし、Lは脱離基をあらわす)とを反応させ、その後、必要な場合にはカルボニル保護基Pを除去することによって調製され得る。化合物Vb’’は、類似の様式で製造され得る。あるいは、そのような化合物は、式XVb:
【0120】
【化43】

の化合物と、式VIIの化合物との、プロセス(d)および(e)について記載されたもののような慣習的な反応条件下での還元的アミノ化によって調製され得る。
【0121】
プロセス(c)を参照して、Lであらわされる脱離基は、例えば、ハロ基(例えば、クロロ、ブロモまたはヨード)、またはスルホン酸エステル基(例えばメシレートまたはトシレート)であり得る。この反応は、塩基(例えば、三級アミン、例えばジイソプロピルエチルアミン)存在下で簡便に行われる。簡便な溶媒としては、ニトリル、例えば、アセトニトリルが挙げられる。この反応は、0〜100℃の温度範囲で簡便に行われる。式VIの化合物は、式IVaの化合物と、式XVIa’またはXVIa’’:
【0122】
【化44】

の化合物とを反応させることによって調製され得る。式VIの化合物はまた、式IVbの化合物と、式XVIb’もしくはXVIb’’:
【0123】
【化45】

またはそれらの反応性誘導体(例えば、酸塩化物または無水物)とを反応させることによって調製され得る。これらの反応は、例えば、本明細書中に記載されるプロセス(b)の方法に従って、簡便に実施される。式VIIの化合物は、一般的に公知であるか、または周知の合成法を使用して容易に利用可能な出発物質から調製され得る。
【0124】
プロセス(d)において、還元剤は、パラジウムのようなVIII族金属触媒の存在下での水素、または水素化ホウ素(トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムを含む)のような金属水素化還元剤であり得る。簡便な溶媒としては、メタノールのようなアルコールが挙げられる。この反応は、0℃〜100℃の範囲の温度において簡便に実施される。
【0125】
式VIIIの化合物は、式IIIに対応する化合物(Lはヒドロキシル基をあらわす)を酸化することによって調製され得る。そのような酸化反応は、ジイソプロピルエチルアミンのような第三級アミンの存在下で、例えばジメチルスルホキシド中の二酸化硫黄ピリジン錯体を使用して、実施され得る。
【0126】
プロセス(e)において、上記還元剤は、例えば、チタンテトライソプロポキシドのようなチタンテトラアルコキシドと必要に応じて組み合わせて使用される、パラジウムのようなVIII族金属触媒の存在下での水素、またはトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムのような水素化ホウ素ナトリウムを含む水素化金属還元剤であり得る。慣習的な溶媒としては、メタノールのようなアルコール、およびジクロロメタンのようなハロゲン化炭化水素が挙げられる。この反応は、この反応は、慣習的に、0℃〜100℃の範囲の温度において実施される。式IXの化合物は、IVaの化合物と、式XVIIa’またはXVIIa’’:
【0127】
【化46】

の化合物とを、あるいは式IVbの化合物と、式XVIIb’またはXVIIb’’:
【0128】
【化47】

の化合物とを、カルボン酸/アミノカップリング剤(例えば、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(EDC)および1−ヒドロキシヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(HOBT)など)の存在下で反応させることによって、調製され得る。
【0129】
当業者には明らかなように、(a)〜(e)の工程のいずれかによって調製された式Iの化合物をさらに誘導体化して、当該技術分野で周知の方法および試薬を用いて式Iの他の化合物を形成してもよい。一例として、式Iの化合物を臭素と反応させて、対応する式Iの化合物(Rは例えばブロモ基をあらわす)を得てもよい。さらに、Rが水素原子をあらわす式Iの化合物をアルキル化して、Rが(1−4C)アルキル基をあらわす対応する式Iの化合物を得てもよい。
【0130】
本発明の代表的な化合物またはその中間体を調製するための特定の反応条件および他の手順に関するさらなる詳細は、以下に記載の実施例に記載する。
【0131】
(薬学的組成物および処方物)
本発明のビフェニル化合物は、典型的には、薬学的組成物または処方物の形態で患者に投与される。この薬学的組成物は、任意の受容可能な投与経路で患者に投与されてもよい。投与経路としては、限定されないが、吸入、経口、経鼻、局所(経皮を含む)および非経口の投与形態が挙げられる。
【0132】
特定の投与形態に適した本発明の化合物の任意の形態(すなわち、遊離塩基、薬学的に受容可能な塩、溶媒和物など)が、本明細書で議論される薬学的組成物で使用可能であることが理解される。
【0133】
従って、本発明の一実施形態は、薬学的に受容可能なキャリアまたは腑形剤と治療有効量の式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体とを含む薬学的組成物に関する。薬学的組成物は、望ましい場合には他の治療薬剤および/または処方化剤を含有してもよい。
【0134】
本発明の薬学的組成物は、典型的には、治療有効量の本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体を活性薬剤として含有する。典型的には、この薬学的組成物は、約0.01〜約95重量%の活性薬剤を含有し、例えば、約0.01〜約30重量%、例えば、約0.01〜約10重量%の活性薬剤を含有する。
【0135】
任意の従来のキャリアまたは腑形剤を本発明の薬学的組成物に使用してもよい。特定のキャリアまたは腑形剤の選択、またはキャリアまたは腑形剤の組み合わせの選択は、特定の患者を処理するために使用される投与形態または医学状態または疾患状態の種類に依存する。この観点で、特定の投与形態のための適切な薬学的組成物の調製は、薬学的分野の技術常識の範囲内にある。さらに、この組成物の成分は、例えば、Sigma(P.O.Box 14508,St. Louis,MO 63178)から市販されている。さらに説明すると、従来の処方化技術は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, Lippincott Williams & White, Baltimore, Maryland (2000);およびH.C.Ansel et al.,Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 7th Edition, Lippincott Williams & White, Baltimore, Maryland (1999)に記載されている。
【0136】
薬学的に受容可能なキャリアとして役立つ物質の代表例としては、限定されないが、以下のものが挙げられる:糖、例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース;デンプン、例えば、コーンスターチおよびジャガイモデンプン;セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;粉末トラガカント;モルト;ゼラチン;タルク;腑形剤、例えば、ココアバターおよび坐剤用ワックス;油、例えばピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油;グリコール、例えば、プロピレングリコール;ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール;エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張性食塩水;Ringer溶液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;圧縮噴射ガス、例えば、クロロフルオロカーボンおよびヒドロフルオロカーボン;および薬学的組成物に使用される他の毒性のない適合性基質。
【0137】
本発明の薬学的組成物は、典型的には、本発明の化合物と薬学的に受容可能なキャリアおよび1つ以上の任意成分とを十分に混合またはブレンドすることによって調製される。必要な場合または望ましい場合には、得られた均一にブレンドされた混合物を従来の手順および装置を用いて、錠剤、カプセル、丸薬に成形するか、または小型缶、カートリッジ、ディスペンサーなどに入れることができる。
【0138】
一実施形態では、本発明の薬学的組成物は、吸入による投与に適している。吸入による投与に適した薬学的組成物は、典型的にはエアロゾルまたは粉末の形態である。この組成物は、一般的に、周知の送達デバイス、例えば、噴霧吸入器、定量吸入器(MDI)、乾燥粉末吸入器(DPI)または同様の送達デバイスを用いて投与される。
【0139】
本発明の特定の実施形態では、活性薬剤を含む薬学的組成物は、噴霧吸入器を用いて吸入によって投与される。この噴霧デバイスは、典型的には、高速の空気流を作り出し、活性薬剤を含む薬学的組成物を霧として噴霧し、患者の呼吸器に届ける。従って、噴霧吸入機器で用いるために処方化される場合、活性薬剤は、典型的には、適切なキャリアに溶解して溶液にする。または、活性薬剤を微粉化し、適切なキャリアを混合して呼吸可能な大きさの微粉末の懸濁物にする。この微粉化とは、約90%以上の粒子直径が約10μm未満の状態であると定義される。適切な噴霧デバイスは、例えば、PARI GmbH(Starnberg,German)から市販されている。他の噴霧デバイスとしては、Respimat(Boehringer Ingelheim)、および例えば、Lloydらに対する米国特許第6,123,068号およびWO 97/12687(Eicher et al.)に記載の物があげられる。これらの文献は、その内容全体が本明細書に参考として組み込まれる。
【0140】
噴霧吸入器に使用するための代表的な薬学的組成物は等張性水溶液を含み、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体を約0.05μg/mL〜約10mg/mL含む。
【0141】
本発明の別の特定の実施形態では、活性薬剤を含む薬学的組成物はDPIを用いた吸入によって投与される。このDPIは、典型的には、活性薬剤を流動性のよい粉末として投与し、吸気中に患者が作った空気流で分散する。流動性のよい粉末を作るために、活性薬剤は、典型的には、適切な腑形剤(例えばラクトースまたはデンプン)とともに処方化される。微粉化は、肺送達に適した結晶サイズまで小さくする一般的な方法である。粒子サイズを小さくする他の方法を使用してもよく、例えば、所望な粒子サイズが得られるような微細粉砕、裁断、破砕、粉砕、磨り潰し、篩い分け、磨砕、粉状化などが挙げられる。
【0142】
DPIに使用するための代表的な薬学的組成物は、約1μm〜約100μmの粒子サイズを有する乾燥ラクトースと、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体を微粉化した粒子とを含む。この乾燥粉末処方物は、例えば、ラクトースと活性薬剤とを混合し、これらの成分を乾燥ブレンドすることによって作製することができる。または、望ましい場合、活性薬剤を腑形剤なしで処方化することができる。この薬学的組成物は、典型的には乾燥粉末ディスペンサーに入れられるか、または乾燥粉末送達デバイスとともに使用するための吸入カートリッジまたはカプセルに入れられる。
【0143】
DPI送達デバイスの例としては、Diskhaler(GlaxoSmithKline,Research Triangle Park,NC;例えば、米国特許第5,035,237号を参照);Diskus(GlaxoSmithKline;例えば、米国特許第6,378,519を参照);Turbuhaler(AstraZeneca,Wilmington,DE(例えば、米国特許第4,524,769を参照);Rotahaler(GlaxoSmithKline;例えば、米国特許第4,353,365を参照)およびHandihaler(Boehringer Ingelheim)が挙げられる。適切なDPIデバイスのさらなる例は、米国特許第5,415,162号、同第5,239,993号および同第5,715,810号、ならびにこれらの引用文献である。上述の特許の開示内容は、その全体が本明細書に参考として援用される。
【0144】
本発明のさらに別の特定の実施形態では、活性薬剤を含む薬学的組成物は、MDIを用いた吸入によって投与され、圧縮噴霧ガスを用いて所定量の活性薬剤またはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体が放出される。従って、MDIを用いて投与される薬学的組成物は典型的には、液化噴射剤中に活性薬剤の溶液または懸濁物を含む。使用可能な任意の適切な液化噴射剤としては、クロロフルオロカーボン、例えば、CClF、およびハイドロフルオロアルカン(HFA)、例えば、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA134a)および1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−n−プロパン(HFA227)が挙げられる。クロロフルオロカーボンはオゾン層に影響を与える懸念があるため、HFAを含有する処方物が一般的には好ましい。HFA処方物のさらなる任意成分としては、共溶媒(例えばエタノールまたはペンタン)および界面活性剤(例えばソルビタントリオレエート、オレイン酸、レシチンおよびグリセリン)が挙げられる。例えば、米国特許第5,225,183号(Purewal et al.)、EP 0717987 A2(Minnesota Mining and Manufacturing Company)、およびWO 92/22286(Minnesota Mining and Manufacturing Company)を参照(これらの開示内容全体は本明細書に参考として援用される)。
【0145】
定量吸入器で使用するための代表的な薬学的組成物は、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体を約0.01〜約5重量%と;エタノールを約0〜約20重量%と;界面活性剤を約0〜約5重量%とを含み、残りの成分はHFA噴射剤である。
【0146】
そのような組成物は、典型的には、凍結または加圧したハイドロフルオロアルカンを、活性薬剤、エタノール(存在する場合)および界面活性剤(存在する場合)を含有する適切な容器に加えることによって調製される。懸濁物を調製するために、活性薬剤を微粉化し、噴射剤と混合する。この処方物を定量吸入デバイスの一部分を構成するエアロゾル缶に入れる。HFA噴射剤とともに用いるために特別に開発された定量吸入デバイスの例としては、米国特許第6,006,745号(Marecki)および同第6,143,277号(Ashurst et al)に記載されるものが挙げられる。または、懸濁処方物は、活性薬剤の微粉化粒子に界面活性剤のコーティングをスプレー乾燥させることによって調製することができる。例えば、WO99/53901(Glaxo Group Ltd.)およびWO00/61108(Glaxo Group Ltd.)。上記特許および刊行物の開示内容は、その全体が本明細書に参考として援用される。
【0147】
吸気可能な粒子を調製するプロセス、吸入投与に適した処方物およびデバイスのさらなる例は、米国特許第6,268,533号(Gao et al.)、同第5,983,956号(Trofast);同第5,874,063号(Briggner et al.);および同第6,221,398号(Jakupovic et al.);およびWO99/55319(Glaxo Group Ltd.)およびWO00/30614(AstraZeneca AB)を参照のこと(これらの開示内容全体は参考として本明細書に組み込まれる)。
【0148】
別の実施形態では、本発明の薬学的組成物は、経口投与に適している。経口投与に適した薬学的組成物は、カプセル、錠剤、丸薬、トローチ剤、カシェ剤、糖衣錠、粉末、顆粒;または水性液体または非水液体の溶液または懸濁物;または水中油または油中水の液体エマルション;またはエリキシルまたはシロップなどの形態であってもよく、それぞれの形態は、所定量の本発明の化合物を活性成分として含有する。薬学的組成物は、単位投薬形態で包装されてもよい。
【0149】
固体投薬形態(すなわち、カプセル、錠剤、丸薬など)で経口投与を目的とする場合、本発明の薬学的組成物は、典型的には、本発明の化合物を活性成分として含み、1つ以上の薬学的に受容可能なキャリア(例えばクエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム)をさらに含む。場合により、または、固体投薬形態は、以下のものを含んでもよい:フィラーまたは増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸;バインダー、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシア;保湿剤、例えばグリセロール;崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケート、および/、または炭酸ナトリウム;溶液緩染剤、例えばパラフィン;吸収促進剤、例えば四級アンモニウム化合物;湿潤剤、例えばセチルアルコールおよび/またはグリセロールモノステアレート;吸収剤、例えばカオリンおよび/またはベントナイトクレイ;滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、および/またはその混合物;着色剤;および緩衝剤。
【0150】
放出剤、湿潤剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および香料、防腐剤および酸化防止剤も本発明の薬学的組成物中に存在してもよい。薬学的に受容可能な酸化防止剤の例としては、以下のものが挙げられる:水溶性酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;油溶性酸化防止剤、例えば、アスコルビルパルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロールなど;および金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など。錠剤、カプセル、丸薬などのコーティング剤としては、腸溶性コーティングとして使用されるもの、例えば、セルロースアセテートフタレート(CAP)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸−メタクリル酸エステルコポリマー、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)などが挙げられる。
【0151】
所望される場合、本発明の薬学的組成物は、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたは他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはミクロスフィアを種々の比率で用いて、活性成分を遅延放出または制御放出するように処方化されてもよい。
【0152】
それに加えて、本発明の薬学的組成物は、乳白剤を場合により含有してもよく、活性成分を、胃腸管の特定部分にのみまたは胃腸管の特定部分に優先的に、場合により遅延様式で放出するように処方化されてもよい。使用可能な埋包組成物の例としては、ポリマー基質およびワックスが挙げられる。活性成分は、適切な場合、1つ以上の上述の腑形剤を含むマイクロカプセルの形態であってもよい。
【0153】
経口投与に適した液体投薬形態としては、一例として、薬学的に受容可能なエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁物、シロップおよびエリキシルが挙げられる。この液体投薬形態は、典型的には、活性成分と不活性希釈剤(例えば水または他の溶媒)、可溶化剤および乳化剤(例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール)、油(例えば、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタン脂肪酸エステル、およびこれらの混合物を含む。懸濁物は、活性成分に加えて、懸濁剤、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド(aluminium metahydroxide)、ベントナイト、寒天およびトラガカント、およびこれらの混合物を含有してもよい。
【0154】
本発明の化合物は、既知の経皮送達系および腑形剤を用いて経皮投与することができる。例えば、本発明の化合物は、透過促進剤、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノラウレート、アザシクロアルカン−2−オンなどと混合することができ、パッチまたは同様の送達系に組み込むことができる。望ましい場合には、さらなる腑形剤(ゲル化剤、乳化剤およびバッファーを含む)をこの経皮組成物に使用してもよい。
【0155】
本発明の化合物は、他の治療薬剤とともに投与することもできる。この組み合わせ治療は、本発明の化合物を1つ以上の第2の薬剤と組み合わせて、一緒に処方化する(例えば1個の処方物中に一緒に包装)か、または別個に処方化する(例えば別個の単位投薬形態として包装)かのいずれかで使用することを含む。同じ処方物または別個の単位投薬形態に複数の薬剤を処方化する方法は、当該技術分野で周知である。
【0156】
さらなる治療薬剤は、他の気管支拡張剤(例えば、PDE阻害剤、アデノシン2b調整剤およびβアドレナリン作用性受容体アゴニスト);抗炎症剤(例えば、ステロイド系抗炎症薬剤、例えばコルチコステロイド;非ステロイド系抗炎症薬剤(NSAID)およびPDE阻害剤);他のムスカリン性受容体アンタゴニスト(すなわち抗コリン作用性薬剤);抗炎症剤(例えば、グラム陽性抗生物質およびグラム陰性抗生物質または抗ウイルス剤);抗ヒスタミン剤;プロテアーゼ阻害剤;および求心性ブロッカー(afferent blocker)(例えば、Dアゴニストおよびニューロキニン調整剤)から選択することができる。
【0157】
本発明の1つの特定の実施形態は、(a)薬学的に受容可能なキャリアと治療有効量の式Iの化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体と;および(b)薬学的に受容可能なキャリアと、ステロイド系抗炎症薬剤(例えばコルチコステロイド);βアドレナリン作用性受容体アゴニスト;ホスホジエステラーゼ−4阻害剤;またはそれらの組み合わせから選択される治療有効量の薬剤とを含む組成物に関し、ここで、式Iの化合物および上記薬剤はともに処方化されるか、または別個に処方化される。別の実施形態では、(b)は薬学的に受容可能なキャリアおよび治療有効量のβアドレナリン作用性受容体アゴニストおよびステロイド系抗炎症薬剤である。第2の薬剤は、薬学的に受容可能な塩または溶媒和物の形態で使用することができ、適切な場合、光学的に純粋な立体異性体として使用することができる。
【0158】
本発明の化合物と組み合わせて使用可能な代表的なβアドレナリン作用性受容体アゴニストとしては、限定されないが、サルメテロール、サルブタモール、フォルモテロール、サルメファモール、フェノテロール、テルブタリン、アルブテロール、イソエタリン(isoetharine)、メタプロテレノール、ビトルテロール、ピルブテロール、レバルブテロールなどまたはその薬学的に受容可能な塩が挙げられる。使用可能な他のβアドレナリン作用性受容体アゴニストとしては、限定されないが、3−(4−{[6−({(2R)−2−ヒドロキシ−2−[4−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)−フェニル]エチル}アミノ)−ヘキシル]オキシ}ブチル)ベンゼンスルホンアミドおよび3−(−3−{[7−({(2R)−2−ヒドロキシ−2−[4−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)フェニル]エチル}−アミノ)ヘプチル]オキシ}プロピル)ベンゼンスルホンアミドおよびWO02/066422(Glaxo Group Ltd.)に記載の関連化合物;3−[3−(4−{[6−([(2R)−2−ヒドロキシ−2−[4−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)フェニル]エチル]アミノ)ヘキシル]オキシ}ブチル)−フェニル]イミダゾリジン−2,4−ジオンおよびWO02/070490(Glaxo Group Ltd.)に記載の関連化合物;3−(4−{[6−({(2R)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)ヘキシル]オキシ}ブチル)−ベンゼンスルホンアミド、3−(4−{[6−({(2S)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)ヘキシル]オキシ}ブチル)−ベンゼンスルホンアミド、3−(4−{[6−({(2R/S)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)ヘキシル]オキシ}ブチル)−ベンゼンスルホンアミド、N−(tert−ブチル)−3−(4−{[6−({(2R)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)ヘキシル]−オキシ}ブチル)ベンゼンスルホンアミド、N−(tert−ブチル)−3−(4−{[6−({(2S)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)−ヘキシル]オキシ}ブチル)−ベンゼンスルホンアミド、N−(tert−ブチル)−3−(4−{[6−({(2R/S)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)ヘキシル]−オキシ}ブチル)ベンゼンスルホンアミドおよびWO02/076933(Glaxo Group Ltd.)に記載の関連化合物;4−{(1R)−2−[(6−{2−[(2,6−ジクロロベンジル)オキシ]エトキシ}ヘキシル)アミノ]−1−ヒドロキシエチル}−2−(ヒドロキシメチル)フェノールおよびWO03/024439(Glaxo Group Ltd.)に記載の関連化合物;N−{2−[4−((R)−2−ヒドロキシ−2−フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}−(R)−2−ヒドロキシ−2−(3−ホルムアミド−4−ヒドロキシフェニル)エチルアミンおよび米国特許第6,576,793号(Moran et al.)に記載の関連化合物;N−{2−[4−(3−フェニル−4−メトキシフェニル)アミノフェニル]エチル}−(R)−2−ヒドロキシ−2−(8−ヒドロキシ−2(1H)−キノリノン−5−イル)エチルアミンおよび米国特許第6,653,323号(Moran et al.)に記載の関連化合物;およびこれらの薬学的に受容可能な塩が挙げられる。特定の実施形態では、β−アドレナリン作用性受容体アゴニストは、N−{2−[4−((R)−2−ヒドロキシ−2−フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}−(R)−2−ヒドロキシ−2−(3−ホルムアミド−4−ヒドロキシフェニル)エチルアミンの結晶性一塩酸塩である。使用される場合、β−アドレナリン作用性受容体アゴニストは、治療有効量で薬学的組成物中に存在する。典型的には、β−アドレナリン作用性受容体アゴニストは、投薬1回あたり約0.05μg〜約500μgが提供されるのに十分な量で存在する。上記特許および刊行物の開示内容全体は、本明細書に参考として組み込まれる。
【0159】
本発明の化合物と組み合わせて使用可能な代表的なステロイド系抗炎症薬剤としては、限定されないが、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、6α,9α−ジフルオロ−17α−[(2−フラニルカルボニル)オキシ]−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−チオカルボン酸 S−フルオロメチルエステル、6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17α−プロピオニルオキシ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−チオカルボン酸 S−(2−オキソ−テトラヒドロフラン−3S−イル)エステル、ベクロメタゾンエステル(例えば、17−プロピオン酸エステルまたは17,21−ジプロピオン酸エステル)、ブデソニド、フルニソリド、モメタゾンエステル(例えば、フランカルボン酸エステル)、トリアムシノロンアセトニド、ロフレポニド、シクレソニド、プロピオン酸ブチキソコルト(butixocort)、RPR−106541、ST−126など、またはこれらの薬学的に受容可能な塩が挙げられる。使用される場合、ステロイド系抗炎症薬剤は治療有効量でこの組成物中に存在する。典型的には、ステロイド系抗炎症薬剤は、投薬1回あたり約0.05μg〜約500μgが提供されるのに十分な量で存在する。
【0160】
例示的な組み合わせは、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体と、βアドレナリン作用性受容体アゴニストとしてサルメテロールおよびステロイド系抗炎症薬剤としてプロピオン酸フルチカゾンとがともに投与される組み合わせである。別の例示的な組み合わせは、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体と、βアドレナリン作用性受容体アゴニストとして塩N−{2−[4−((R)−2−ヒドロキシ−2−フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}−(R)−2−ヒドロキシ−2−(3−ホルムアミド−4−ヒドロキシフェニル)エチルアミンおよびステロイド系抗炎症薬剤として6α,9α−ジフルオロ−17α−[(2−フラニルカルボニル)オキシ]−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−チオカルボン酸 S−フルオロメチルエステルとがともに投与される組み合わせである。上述のように、これらの薬剤は、一緒に処方化されても別個に処方化されてもよい。
【0161】
他の適切な組み合わせとしては、例えば、他の抗炎症薬剤、例えば、NSAID(例えば、クロモグリク酸ナトリウム、ネドクロミルナトリウム、およびホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤、例えば、テオフィリン、PDE4阻害剤およびPDE3/PDE4阻害剤の混合物);ロイコトリエンアンタゴニスト(例えば、モンテロイカスト(monteleukast));ロイコトリエンの合成阻害剤;iNOS阻害剤;プロテアーゼ阻害剤、例えば、トリプターゼ阻害剤およびエラスターゼ阻害剤;β−2インテグリンアンタゴニストおよびアデノシン受容体アゴニストまたはアンタゴニスト(例えば、アデノシン2aアゴニスト);サイトカインアンタゴニスト(例えば、ケモカインアンタゴニスト、例えば、インターロイキン抗体(αIL抗体)、特に、αIL−4治療およびαIL−13治療、またはこれらの組み合わせ);またはサイトカインの合成阻害剤が挙げられる。
【0162】
本発明の化合物と組み合わせて使用可能な代表的なホスホジエステラーゼ−4(PDE4)阻害剤またはPDE3/PDE4阻害剤混合物としては、限定されないが、シス4−シアノ−4−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシフェニル)シクロヘキサン−1−カルボン酸、2−カルボメトキシ−4−シアノ−4−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン−1−オン;シス−[4−シアノ−4−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン−1−オール];シス−4−シアノ−4−[3−(シクロペンチルオキシ)−4−メトキシフェニル]シクロヘキサン−1−カルボン酸など、またはこれらの薬学的に受容可能な塩が挙げられる。他の代表的なPDE4阻害剤またはPDE4/PDE3阻害剤混合物としては、AWD−12−281(elbion);NCS−613(INSERM);D−4418(Chiroscience and Schering−Plough);CI−1018またはPD−168787(Pfizer);WO99/16766(Kyowa Hakko)に記載のベンゾジオキソール化合物;K−34(Kyowa Hakko);V−11294A(Napp);ロフルミラスト(Byk−Gulden);WO99/47505(Byk−Gulden)に記載のフタラジノン(pthalazinone)化合物;Pumafentrine(Byk−Gulden,現在はAltana);アロフィリン(arofylline)(Almirall−Prodesfarma);VM554/UM565(Vernalis);T−440(Tanabe Seiyaku);およびT2585(Tanabe Seiyaku)が挙げられる。
【0163】
本発明の化合物と組み合わせて使用可能な代表的なムスカリンアンタゴニスト(すなわち、抗コリン作用性薬剤)としては、限定されないが、アトロピン、硫酸アトロピン、アトロピンオキシド、硝酸メチルアトロピン、臭化水素酸ホマトロピン、臭化水素酸ヒヨスチアミン(d,l)、臭化水素酸スコポラミン、臭化イプラトロピウム、臭化オキシトロピウム、臭化チオトロピウム、メタンテリン、臭化プロパンテリン、臭化メチルアニソトロピン、臭化クリジニウム、コピロレート(copyrrolate)(Robinul)、ヨウ化イソプロパミド、臭化メペンゾラート、塩化トリジヘキセチル(Pathilone)、メチル硫酸ヘキソシクリウム、塩酸シクロペントレート、トロピカミド、塩酸トリヘキシフェニジル、ピレンゼピン、テレンゼピン、AF−DX116およびメトクタラミン(methoctramine)など、またはそれらの薬学的に受容可能な塩;またはこれらの化合物について塩、代替物、それらの薬学的に受容可能な塩に列挙されるものが挙げられる。
【0164】
本発明の化合物と組み合わせて使用可能な代表的な抗ヒスタミン剤(すなわち、H−受容体アンタゴニスト)としては、限定されないが、エタノールアミン、例えば、マレイン酸カルビノキサミン、フマル酸クレマスチン、塩酸ジフェニルヒドラミンおよびジメンヒドリナート;エチレンジアミン、例えば、マレイン酸ピリラミン、塩酸トリペレナミンおよびクエン酸トリペレナミン;アルキルアミン、例えば、クロルフェニラミンおよびアクリバスチン;ピペラジン、例えば、塩酸ヒドロキシジン、パモ酸ヒドロキシジン、塩酸シクリジン、乳酸シクリジン、塩酸メクリジンおよび塩酸セチリジン;ピペリジン、例えば、アステミゾール、塩酸レボカバスチン、ロラタジンまたはそのデスカルボエトキシアナログ、テルフェナジンおよび塩酸フェキソフェナジン;塩酸アゼラスチンなど、またはそれらの薬学的に受容可能な塩;またはこれらの化合物について塩、代替物、それらの薬学的に受容可能な塩に列挙されるものが挙げられる。
【0165】
他に言及されない限り、本発明の化合物と組み合わせて投与される他の治療薬剤について例示的な適切な投薬量は、約0.05μg/日〜約100mg/日の範囲内である。
【0166】
以下の処方例は、代表的な本発明の薬学的処方物および例示的な調製方法を説明する。1つ以上の第2の薬剤は、本発明の化合物(第1の活性薬剤)とともに場合により処方化することができる。または、第2の薬剤は、同時または順次のいずれかで、第1の活性薬剤と別個に、およびともに投与することができる。例えば、一実施形態では、1個の乾燥粉末処方物が本発明の化合物と1つ以上の第2の薬剤を両方含むように製造することができる。別の実施形態では、本発明の化合物を含有する処方物が製造され、第2の薬剤を含有する別個の処方物が製造される。この乾燥粉末処方物を別個のブリスターパックに入れ、1個のDPIデバイスで投与することができる。
【0167】
(吸入による投与のための例示的な乾燥粉末処方物)
本発明の化合物0.2mgを微粉化し、ラクトース25mgとブレンドする。このブレンドした混合物をゼラチン吸入カートリッジに充填する。このカートリッジの内容物を粉末吸入器を用いて投与する。
【0168】
(乾燥粉末吸入器による投与のための例示的な乾燥粉末処方物)
本発明の微粉化した化合物(活性薬剤) 対 ラクトースの比率を1:200にしたバルク処方物を有する乾燥粉末を調製する。この粉末を乾燥粉末吸入デバイスに入れる。この乾燥粉末吸入デバイスは、投薬1回あたり活性薬剤を約10μg〜約100μg送達することができる。
【0169】
(定量吸入器による投与のための例示的な処方物)
微粉化して平均粒子サイズが10μm未満の活性薬剤の粒子10gを脱イオン水200mLにレシチン0.2gを溶解した溶液に分散させることによって、本発明の化合物(活性薬剤)5wt%およびレシチン0.1wt%を含有する懸濁物を調製する。この懸濁物をスプレー乾燥し、得られた物質を微粉化して直径が1.5μm未満の粒子にする。この粒子を1,1,1,2−テトラフルオロエタンで加圧したカートリッジに入れる。
【0170】
または、微粉化して平均粒子サイズが10μm未満の活性薬剤の粒子5gを脱イオン水100mLにトレハロース0.5gおよびレシチン0.5gを溶解したコロイド溶液に分散させることによって、活性薬剤5wt%、レシチン0.5wt%およびトレハロース0.5wt%を含有する懸濁物を調製する。この懸濁物をスプレー乾燥し、得られた物質を微粉化して直径が1.5μm未満の粒子にする。この粒子を1,1,1,2−テトラフルオロエタンで加圧したカートリッジに入れる。
【0171】
(噴霧器による投与のための例示的な水性エアロゾル処方物)
本発明の化合物(活性薬剤)0.5mgをクエン酸で酸性にした0.9%塩化ナトリウム溶液1mLに溶解して、薬学的組成物を調製する。この混合物を攪拌し、活性薬剤が溶解するまで超音波にかける。NaOHをゆっくりと添加して溶液のpHを3〜8(代表的には約5)に調整する。
【0172】
(経口投与のための例示的な硬質ゼラチンカプセル)
以下の成分を十分にブレンドし、硬質ゼラチンカプセルに入れる。本発明の化合物250mg、ラクトース(スプレー乾燥品)200mg、およびステアリン酸マグネシウム10mg、カプセルあたり組成物全体で460mg。
【0173】
(経口投与のための例示的な懸濁処方物)
以下の成分を混合して、懸濁物10mLあたり活性成分100mgを含有する懸濁物を作製する。
【0174】
【化48】

(例示的な注射用処方物)
以下の成分をブレンドし、0.5N HClまたは0.5N NaOHを用いてpHを4±0.5に調整する。
【0175】
【化49】

(有用性)
本発明のビフェニル化合物はムスカリン性受容体アンタゴニストとして有用であると考えられ、そのために、この化合物は、ムスカリン性受容体によって媒介される医学状態、すなわち、ムスカリン性受容体アンタゴニストで処置することによって改善される医学状態を処置するのに有用であると考えられる。この医学状態としては、一例として、可逆性軌道閉塞と関連する障害または疾患を含む肺障害または疾患、例えば、慢性閉塞性肺疾患(例えば、慢性および喘息様気管支炎および肺気腫)、ぜんそく、肺線維症、アレルギー性鼻炎、鼻漏などが挙げられる。ムスカリン性受容体アンタゴニストで処置可能な他の医学状態は、尿生殖路障害、例えば、過活動膀胱または排尿筋過活動(detrusor hyperactivity)およびその症状;胃腸管障害、例えば、過敏性腸症候群、憩室疾患、アカラシア、胃腸運動亢進障害および下痢;不整脈、例えば、洞性徐脈;パーキンソン病;認識障害、例えばアルツハイマー病;月経困難症などが挙げられる。
【0176】
一実施形態では、本発明の化合物は、哺乳動物(ヒトおよびコンパニオンアニマル(例えばイヌ、ネコなど)を含む)の平滑筋障害を処置するのに有用である。この平滑筋障害としては、一例として、過活動膀胱、慢性閉塞性肺疾患および過敏性腸症候群が挙げられる。
【0177】
本発明の化合物が平滑筋障害またはムスカリン性受容体によって媒介される他の状態を処置するのに使用される場合、本発明の化合物は、1日に1回または1日に複数回、典型的には、経口、直腸内、非経口または吸入によって投与される。投薬1回あたり投与される活性薬剤の量または1日の投薬合計量は、典型的には、患者の担当医によって決定され、患者の状態の性質および重篤度、処置される状態、患者の年齢および全体的な健康度、患者の活性薬剤に対する耐性、投与経路などのような因子に依存する。
【0178】
典型的には、平滑筋障害またはムスカリン性受容体によって媒介される他の障害を処置するのに適した投薬量は、活性薬剤として約0.14μg/kg/日〜約7mg/kg/日であり、例えば、約0.15μg/kg/日〜約5mg/kg/日である。平均70kgのヒトでは、適した投薬量は、活性薬剤として1日あたり約10μg〜500mgである。
【0179】
特定の実施形態では、本発明の化合物は、哺乳動物(ヒトを含む)の肺障害または呼吸器障害(例えばCOPDまたはぜんそく)を処置するのに有用である。本発明の化合物がこの障害を処置するのに使用される場合、本発明の化合物は、典型的には1日に複数回、1日に1回、または1週間に1回、吸入によって投与される。一般的には、肺障害を処置するための投薬量は、約10μg/日〜約200μg/日である。本明細書で使用される場合、COPDは、慢性閉塞性気管支炎および肺気腫を含む(例えば、Barnes,Chronic Obstructive Pulmonary Disease,N Engl J Med 343:269−78 (2000)を参照)。
【0180】
本発明の化合物が肺障害を処置するのに使用される場合、本発明の化合物は、場合により他の治療薬剤、例えば、βアドレナリン作用性受容体アゴニスト;コルチコステロイド、非ステロイド系抗炎症薬剤、またはこれらの組み合わせと組み合わせて投与される。
【0181】
吸入によって投与される場合、本発明の化合物は、典型的には、気管支を拡張させる効果を有する。従って、本発明の一実施形態は、気管支を拡張させる量の本発明の化合物を患者に投与する工程を含む、患者の気管支を拡張させる方法に関する。一般的に、気管支を拡張させるための治療有効量は、約10μg/日〜200μg/日である。
【0182】
別の実施形態では、本発明の化合物は、過活動膀胱を処置するために使用される。過活動膀胱を処置するために使用される場合、本発明の化合物は、典型的には1日に1回または1日に複数回、好ましくは1日に1回、経口投与される。一実施形態では、過活動膀胱を処置するための投薬量は、約1.0mg/日〜約500mg/日である。
【0183】
なお別の実施形態では、本発明の化合物は、過敏性腸症候群を処置するために使用される。過敏性腸症候群を処置するために使用される場合、本発明の化合物は、典型的には1日に1回または1日に複数回、経口投与または直腸内投与される。一実施形態では、過敏性腸症候群を処置するための投薬量は、約1.0〜約500mg/日である。
【0184】
本発明の化合物はムスカリン性受容体アンタゴニストであるため、この化合物は、ムスカリン性受容体を有する生体系またはサンプルを観察または試験するための研究ツールとしても有用である。この生体系またはサンプルは、M、M、M、Mおよび/またはMムスカリン性受容体を含んでもよい。ムスカリン性受容体を有する任意の適した生体系またはサンプルがこの試験に使用されてもよく、試験はインビトロまたはインビボのいずれで行われてもよい。この試験に適した代表的な生体系またはサンプルとしては、限定されないが、細胞、細胞抽出物、血漿膜、組織サンプル、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ブタなど)などが挙げられる。
【0185】
この実施形態では、ムスカリン性受容体を含む生体系またはサンプルとムスカリン性受容体を拮抗する量の本発明の化合物とを接触させる。ムスカリン性受容体を拮抗する効果は、従来の手順および装置(例えば、放射性リガンド結合アッセイおよび機能アッセイ)を用いて決定される。この機能アッセイとしては、リガンドによって媒介される細胞内環状アデノシンモノフォスフェート(cAMP)の変化、リガンドによって媒介されるアデニリルシクラーゼ酵素(cAMPを合成する)の活性変化、受容体により触媒されるグアノシン5’−ジホスフェート(GDP)への[35S]GTPγSの交換を経るグアノシン5’−O−(γ−チオ)トリホスフェート([35S]GTPγS)の単離膜への組み込みのリガンドによって媒介される変化、リガンドによって媒介される細胞内遊離カルシウムイオンの変化(例えば、蛍光イメージングプレートリーダーまたはMolecular Devices,Inc.製のFLIPR(登録商標)を用いて測定)が挙げられる。本発明の化合物は、上に列挙した機能アッセイのいずれか、または同様の性質を有するアッセイでムスカリン性受容体の活性を拮抗するかまたは減少させる。ムスカリン性受容体を拮抗する量の本発明の化合物は、典型的には、約0.1〜100nMである。
【0186】
さらに、本発明の化合物は、ムスカリン性受容体アンタゴニスト活性を有する新規化合物を開発するための研究ツールとして使用することができる。この実施形態では、試験化合物または試験化合物群のムスカリン性受容体結合データ(例えば、インビトロ放射性リガンド交換アッセイで決定される)を本発明の化合物のムスカリン性受容体結合データと比較して、この試験化合物が本発明の化合物とほぼ同等または優れたムスカリン性受容体結合性を有するか否かを同定する。本発明のこの態様は、比較データの作成(適切なアッセイを用いて)および目的の試験化合物を同定するための試験データの分析の両方を別個の実施形態として含む。
【0187】
別の実施形態では、本発明の化合物は、生態系および哺乳動物(詳細には、例えば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ブタ、ヒトなど)のムスカリン性受容体を拮抗するために使用される。この実施形態では、治療有効量の式Iの化合物が哺乳動物に投与される。ムスカリン性受容体を拮抗する効果を従来の手順および装置(例は上述)を用いて決定する。
【0188】
特に、本発明の化合物は、Mムスカリン性受容体活性の強力な阻害剤であることがわかった。従って、特定の実施形態では、本発明は、例えば、インビトロ放射性リガンド交換アッセイによって決定される場合、M受容体サブタイプに対して10nM以下の阻害解離定数(K)を有する式Iの化合物に関する。一実施形態では、本発明の化合物は、M受容体サブタイプに対して5nM以下の値のKを有する。
【0189】
さらに、本発明の化合物は、所望な作用持続時間を有すると予想される。従って、別の特定の実施形態では、本発明は、約24時間以上の作用持続時間を有する式Iの化合物に関する。さらに、本発明の化合物は、他の既知のムスカリン性受容体アンタゴニスト(例えばチオトロピウム)が吸入で投与される場合と比較して、有効量投与で副作用(例えば、口の乾き)が少ないと予想される。
【0190】
これらおよび他の性質、および本化合物の有用性は、当業者に周知の種々のインビトロアッセイおよびインビボアッセイを用いて示すことができる。例えば、代表的なアッセイは、以下の実施例の章にさらに詳細に記載される。
【実施例】
【0191】
以下の調製例および実施例は、本発明の特定の実施形態を説明する。以下の省略形は、他に言及されたり、本明細書中で任意の他の省略形が使用されたり、標準的な意味で定義されたりしない限り、以下に示す意味を有する。
【0192】
AC アデニリルシクラーゼ
ACh アセチルコリン
ACN アセトニトリル
BSA ウシ血清アルブミン
cAMP 3’−5’環状アデノシンモノホスフェート
CHO チャイニーズハムスター卵巣
cM クローン化チンパンジーM受容体
DCM ジクロロメタン(すなわち塩化メチレン)
DIPEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMSO ジメチルスルホキシド
dPBS Dulbeccoホスフェート緩衝化食塩水
EDC 1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
EDTA エチレンジアミン四酢酸
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
FBS ウシ胎仔血清
FLIPR 蛍光イメージングプレートリーダー
HATU O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HBSS Hank緩衝化塩溶液
HEPES 4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸
hM クローン化ヒトM受容体
hM クローン化ヒトM受容体
hM クローン化ヒトM受容体
hM クローン化ヒトM受容体
hM クローン化ヒトM受容体
HOAc 酢酸
HOBT 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物
IPA イソプロパノール
MCh メチルコリン
MeOH メタノール
Na(OAc)BH トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
他に示されない限り、全物質(例えば試薬、出発物質および溶媒)は、商業的な供給業者(例えば、Sigma−Aldrich、Flukaなど)から購入し、精製することなく使用した。
【0193】
他に言及されない限り、HPLC分析は、3.5ミクロンの粒子サイズを有するZorbax Bonus RP 2.1×50mmカラム(Agilent)を取り付けたAgilent(Palo Alto,CA)Series 1100装置を用いて行った。214nmのUV吸収を用いて検出した。使用した移動相は以下のとおりである(体積%):A液はACN(2%)、水(98%)およびTFA(0.1%)であり、B液はACN(90%)、水(10%)およびTFA(0.1%)である。HPLC 10−70データは、0.5mL/分の流速で、B液を6分間で10〜70%まで変動させて得た(残りの%はA液である)。同様に、HPLC 5−35データおよびHPLC 10−90データは、B液を5分間で5〜35%まで変動させるか、またはB液を5分間で10〜90%まで変動させて得た。
【0194】
液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)データはApplied Biosystems(Foster City,CA) Model API−150EX装置を用いて得た。LCMS 10−90データは、移動相B液を5分間で10〜90%まで変動させて得た。
【0195】
小スケールの精製は、Applied Biosystems製のAPI−150EX Prep Workstationシステムを用いて行った。使用した移動相は以下のとおりである(体積%):A液は水および0.05%TFAであり、B液はACNおよび0.05%TFAである。アレイ(典型的には回収サンプルサイズが約3〜50mg)の場合、以下の条件を用いた:流速20mL/分;勾配15分および5ミクロン粒子の20mm×50mm Prism RPカラム(Thermo Hypersil−Keystone, Bellefonte, PA)。大スケールの精製(典型的には粗サンプルが100mgを超えるもの)については、以下の条件を用いた:流速60mL/分;勾配30分および10ミクロン粒子の41.4mm×250mm Microsorb BDSカラム(Varian, Palo Alto,CA)。
【0196】
(調製例1 ビフェニル−2−イルカルバミン酸ピペリジン−4−イルエステル)
ビフェニル−2−イソシアネート(97.5g、521mmol)および4−ヒドロキシ−N−ベンジルピペリジン(105g、549mmol)をあわせて70℃で12時間加熱した。反応混合物を50℃まで冷却し、EtOH(1L)を添加し、6M HCl(191mL)をゆっくりと添加した。得られた混合物を周囲温度まで冷却し、ギ酸アンモニウム(98.5g、1.56mol)を添加し、窒素ガスを溶液に通して激しく20分間バブリングさせた。次いで、活性炭担持型パラジウム(20g、乾燥重量で10wt%)を添加し、反応混合物を40℃で12時間加熱し、セライトパッドで濾過した。溶媒を減圧下で除去し、1M HCl(40mL)を粗残渣に添加した。混合物のpHを10N NaOHでpH12に調整した。水層をEtOAc(2×150mL)で抽出し、有機層を乾燥し(硫酸マグネシウム)、濾過し、減圧下で溶媒を除去して標題の中間体155gを得た(収率100%)。HPLC(10−70) R=2.52;m/z:[M+H] C1820についての計算値297.15;実測値297.3。
【0197】
(調製例2 N−ベンジル−N−メチルアミノアセトアルデヒド)
3口2LフラスコにN−ベンジル−N−メチルエタノールアミン(30.5g、0.182mol)、DCM(0.5L)、DIPEA(95mL、0.546mol)およびDMSO(41mL、0.728mol)を加えた。氷浴を用いてこの混合物を約−10℃まで冷却し、三酸化硫黄ピリジン錯体(87g、0.546mol)を5分間隔で4回にわけて添加した。反応物を−10℃で2時間攪拌した。水(0.5L)を添加して反応をクエンチした後、氷浴をはずした。水層を分離し、有機層を水(0.5L)およびブライン(0.5L)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、標題化合物を得て、これを精製せずに使用した。
【0198】
(調製例3 ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−[2−(ベンジルメチルアミノ)エチル]ピペリジン−4−イルエステル)
2LフラスコにDCM中のN−ベンジル−N−メチルアミノアセトアルデヒド(0.5L;調製例2で調製)を入れ、これにビフェニル−2−イルカルバミン酸ピペリジン−4−イルエステル(30g、0.101mol;調製例1で調製)を添加し、Na(OAc)BH(45g、0.202mol)を添加した。反応混合物を一晩攪拌し、激しく攪拌しながら1N塩酸(0.5L)を加えて反応をクエンチした。3層になっているのが観察され、水層を除去した。1N NaOH(0.5L)で洗浄した後、均一な有機層が得られた。この有機層を飽和溶液NaCl(0.5L)水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。残渣を最少量のイソプロパノールに溶解し、この溶液0℃まで冷却することによって固体を得ることによって精製し、この固体を集め、冷イソプロパノールで洗浄して、標題化合物42.6gを得た(収率95%)。MS m/z:[M+H] C2833についての計算値444.3;実測値444.6。R=3.51分(10−70ACN:HO、逆相HPLC)。
【0199】
(調製例3A ビフェニル−イルカルボン酸 1−[2−(ベンジルメチルアミノ)エチル]ピペリジン−4−イルエステル)
N−ベンジル−N−メチルエタノールアミンのメシル化によって標題化合物を調製し、ビフェニル−2−イルカルバミン酸ピペリジン−4−イルエステルを用いてアルキル化反応させた。
【0200】
500mLフラスコ(反応フラスコ)にN−ベンジル−N−メチルエタノールアミン(24.5mL)、DCM(120mL)、NaOH(80mL;30wt%)およびテトラブチルアンモニウムクロリドを入れた。低速で混合しつつ反応させ、混合物を−10℃まで冷却し(冷却浴)、滴下漏斗にDCM(30mL)および塩化メシル(15.85mL)を入れ、30分間一定速度で滴下した。滴下により発熱し、温度を−10℃で平衡にたもちつつ攪拌を15分間続けた。反応物を少なくとも10分間放置して、過剰な塩化メシルを完全に加水分解させた。
【0201】
250mLフラスコにビフェニル−2−イルカルバミン酸ピペリジン−4−イルエステル(26g、調製例1に記載されるように調製)およびDCM(125mL)を入れ、室温で15分間攪拌し、混合物を10℃まで短時間で冷却してスラリーを得た。次いで、スラリーを滴下漏斗で反応フラスコに入れた。冷却浴をはずし、反応混合物を5℃まで加温した。混合物を分液漏斗に移し、層を安定させ、水層を除去した。有機層を反応フラスコに移し、攪拌を再開し、混合物を室温にして、全3.5時間、反応をHPLCでモニタリングした。
【0202】
反応フラスコにNaOH(1M溶液;100mL)に入れ、攪拌し、層を安定させた。有機層を分離し、洗浄し(飽和NaCl溶液)、減圧下で体積を約半分に減らし、IPAで繰り返し洗浄した。固体を集め、風乾した(25.85g、純度98%)。母液をさらに処理して(体積を減少させ、IPAで洗浄し、冷却した)さらなる固体を得た。
【0203】
(調製例4 ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−メチルアミノエチル)ピペリジン−4−イルエステル)
Parr水素化フラスコに、ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−[2−(ベンジルメチルアミノ)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(40g、0.09mol、調製例3に記載されるように調製)およびEtOH(0.5L)を添加した。フラスコに窒素ガスを流し、活性炭担持型パラジウム(15g、乾燥重量で10wt%、37%wt/wt)を酢酸(20mL)とともに添加した。混合物をParr水素化装置に入れ、水素雰囲気下(約50psi)で3時間反応させた。混合物を濾過し、EtOHで洗浄した。ろ液を濃縮し、残渣を最少量のDCMに溶解した。酢酸イソプロピル(10体積部)をゆっくりと添加して固体を得て、これを集めて標題化合物22.0gを得た(収率70%)。MS m/z:[M+H] C2127についての計算値354.2;実測値354.3。R=2.96分(10−70 ACN:HO、逆相HPLC)。
【0204】
(調製例5 ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−{2−[(4−ホルミルベンゾイル)メチルアミノ]エチル}ピペリジン−4−イルエステル)
三口1Lフラスコに4−カルボキシベンズアルデヒド(4.77g、31.8mmol)、EDC(6.64g、34.7mmol)、HOBT(1.91g。31.8mmol)、およびDCM(200mL)を加えた。この混合物が均一になったときに、ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−メチルアミノエチル)ピペリジン−4−イルエステル(10g、31.8mmol;調製例4のように調製)のDCM(100mL)溶液を、ゆっくり加えた。この反応混合物を室温で16時間攪拌し、次いで、水(1×100mL)、1N HCl(5×60mL)1N NaOH(1×100mL)、ブライン(1×50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して、12.6gの表題化合物(収率92%;HPLCに基づく純度85%)。MS m/z:[M+H]C2931についての計算値486.2;実測値486.4。R=3.12分(10−70 ACN:HO、逆相HPLC)。
【0205】
(調製例6 1−[4−({2−[4−(ビフェニル−2−イルカルバモイルオキシ)ピペリジン−1−イル]エチル}メチルカルバモイル)ベンジル]ピペリジン−4−カルボン酸エチルエステル)
【0206】
【化50】

200mLフラスコに、エチルイソニペコテート(ethylisonipecotate)(0.616mL、2.0mmol)、HOAc(0.227mL、4mmol)、硫酸ナトリウム(568mg、4mmol)およびイソプロパノール(25mL)を加えた。反応混合物を氷浴で0〜10℃に冷却し、ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−{2−[(4−ホルミルベンゾイル)メチルアミノ]エチル}ピペリジン−4−イルエステル(0.971g、2.0mmol;調製例5で記載されたように調製)のイソプロパノール溶液(25mL)をゆっくり加えた。この反応混合物を室温で2時間攪拌し、次いでNa(OAc)BH(1.34g、6.0mmol)を加え、この混合物を室温で16時間攪拌した。次いでこの反応混合物を、減圧下で約5mLの体積まで濃縮し、この混合物を1N HCl(20mL)でpH3まで酸性化した。得られた混合物を室温で1時間攪拌し、次いでDCM(3×25mL)で抽出した。次いで、水相を氷浴で0〜5℃まで冷却し、50%NaOH水溶液を加えて、その混合物のpHを10に調整した。次いで、この混合物を、酢酸イソプロピル(3×30mL)で抽出し、そして合わせた有機層を、水(100mL)、ブライン(2×50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して、90%の収率で表題化合物(1.12g、1.8mmol)を得た。
【0207】
(調製例7 1−[4−({2−[4−(ビフェニル−2−イルカルバモイルオキシ)ピペリジン−1−イル]エチル}メチルカルバモイル)ベンジル]ピペリジン−4−カルボン酸)
【0208】
【化51】

200mLフラスコに、1N NaOH(40mL)、MeOH(40mL)および1−[4−({2−[4−(ビフェニル−2−イルカルバモイルオキシ)ピペリジン−1−イル]エチル}メチルカルバモイル)ベンジル]ピペリジン−4−カルボン酸エチルエステル(1.12g、1.7mmol;調製例6に記載されたように調製)を加えた。この反応を、室温で16時間攪拌させた。次いで、反応混合物を減圧下で濃縮し、この混合物を、氷浴で0〜5℃で、1N HCl(40mL)で酸性化した。次いで、産物をDCM(2×50mL)で抽出した。合わせた有機層を、水(100mL)、ブライン(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して、75%の収率で表題化合物(0.80g、1.28mmol)を得た。表題化合物は、さらに精製せずに使用するのに十分純粋であった。
【0209】
(実施例1 ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−[2−({4−[4−(2−ヒドロキシエチルカルバモイル)ピペリジン−1−イルメチル]ベンゾイル}メチルアミノ)エチル]ピペリジン−4−イルエステル)
【0210】
【化52】

5mLのバイアルに、1−[4−({2−[4−(ビフェニル−2−イルカルバモイルオキシ)ピペリジン−1−イル]エチル}メチルカルバモイル)ベンジル]ピペリジン−4−カルボン酸(59.8mg、0.1mmol;調製例7に記載されたように調製)、EDC(22.9mg、0.12mmol)、HOBT(20.2mg、0.15mmol)、およびDCM(1mL)を加えた。この混合物が均一になったときに、エタノールアミン(7.2μL、0.12mmol)を加え、反応混合物を室温で16時間攪拌した。次に、反応混合物を減圧下で濃縮し、次いで、HOAc:HO(1.5mL)の1:1混合物中に溶解し、逆相シリカゲルで精製し(グラジエント溶出、10−50% ACN/HO)、15%の収率で表題化合物を得た(HPLCに基づく純度99%、13.2mg、0.015mmol)。MS m/z:[M+H]C3747についての計算値、642.37;実測値641.8。
【0211】
(実施例2)
【0212】
【化53】

実施例1に記載された手順に従い、そして適切な出発物質および試薬を置き換えて、以下の化合物を調製した。
【0213】
【化54】

(実施例3)
【0214】
【化55】

実施例1に記載される手順に従って、そして適切な出発物質および試薬を置き換えて、以下の化合物を調製した。
【0215】
【化56】

(実施例4)
【0216】
【化57】

実施例1に記載される手順に従って、そして適切な出発物質および試薬を置き換えて、以下の化合物を調製した。
【0217】
【化58】

(調製例8 2−フルオロ−4−ホルミル安息香酸)
4−シアノ−2−フルオロ安息香酸(2.5g、15.2mmol)のDCM(100mL)攪拌溶液を−78Cに冷却し、Hの発生に注意しながら、DIBAL(30mL、45.4mmol、トルエン中25%)を滴下した。これを−78℃で4時間攪拌した。この反応を、Hの発生に注意しながら、MeOH(10mL)の添加によってクエンチした。次いで、有機層を1N HCl(100mL)、水(100mL)、NaCl(飽和)(100mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、次いで濾過した。溶媒を減圧下で除去した。粗物質は、さらに精製せずに使用するのに十分純粋であった。表題化合物を、78%の収率(2.0g、11.9mmol)で得た。
【0218】
(実施例5 ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−{[2−フルオロ−4−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル)ベンゾイル]メチルアミノ}エチル)ピペリジン−4−イルエステル)
【0219】
【化59】

実施例1の手順を使用して、そして調製例5において、4−カルボキシベンズアルデヒドの代わりに、2−フルオロ−4−ホルミル安息香酸(調製例8に記載されたように調製)に置き換えて、表題化合物を調製した。 MS m/z:[M+H]C3441FNに対する計算値、589.32;実測値、589.2。
【0220】
(実施例6)
【0221】
【化60】

実施例1に記載された手順に従い、調製例5において4−カルボキシベンズアルデヒドの代わりに5−ホルミルチオフェン−2−カルボン酸に置き換え、そして適切な出発物質および試薬に置き換えて、以下の化合物を調製した。
【0222】
【化61】

(実施例7)
【0223】
【化62】

実施例1に記載された手順に従い、調製例5において4−カルボキシベンズアルデヒドの代わりに5−ホルミルピロール−2−カルボン酸に置き換え、そして適切な出発物質および試薬に置き換えて、以下の化合物を調製した。
【0224】
【化63】

(実施例8)
【0225】
【化64】

実施例1に記載された手順に従い、調製例5において4−カルボキシベンズアルデヒドの代わりに5−ホルミルフラン−2−カルボン酸に置き換え、そして適切な出発物質および試薬に置き換えて、以下の化合物を調製した。
【0226】
【化65】

(実施例9)
【0227】
【化67】

実施例1に記載された手順に従い、適切な出発物質および試薬に置き換えて、以下の化合物を調製した。
【0228】
【化68】

(実施例10 ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−{2−[メチル−(4−ピロリジン−1−イルメチル−ベンゾイル)アミノ]エチル}ピペリジン−4−イルエステル)
【0229】
【化69】

表題の化合物を、実施例1に記載された手順に従って、そして適切な出発物質および試薬に置き換えて調製した。MS m/z: [M+H] C3340に対する計算値,542.32;実績値,541.2。
【0230】
(調製例9 3−[4−(ビフェニル−2−イルカルバモイルオキシ)ピペリジン−1−イル]プロピオン酸メチルエステル)
メチル3−ブロモプロピオネート(553μL、5.07mmol)を、調製例1の産物1(1.00g、3.38mmol)およびDIPEA(1.76mL、10.1mmol)のACN(34mL)攪拌溶液に50℃で加え、反応混合物を50℃で一晩加熱した。次いで、溶媒を減圧下で除去し、残渣をDCM(30mL)に溶解した。得られた溶液を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10mL)で洗浄し、乾燥させ(硫酸マグネシウム)、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。粗残渣をカラムクロマトグラフィー(5−10% MeOH/DCM)によって精製し、905mgの表題中間体(収率70%)を得た。
【0231】
(調製例10 3−[4−(ビフェニル−2−イルカルバモイルオキシ)ピペリジン−1−イル]プロピオン酸)
3−[4−(ビフェニル−2−イルカルバモイルオキシ)ピペリジン−1−イル]プロピオン酸メチルエステル(902mg、2.37mmol;調製例9に記載されたように調製)および水酸化リチウム(171mg、7.11mmol)の50%THF:HO(24mL)攪拌溶液を、30℃で一晩加温し、次いで濃HClで酸性化し、凍結乾燥して、表題中間体(約収率100%,、LiClも含む)を得た。
【0232】
(調製例11 ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−[2−(5−オキソペンチルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル)
3−[4−(ビフェニル−2−イルカルバモイルオキシ)ピペリジン−1−イル]プロピオン酸(5g、13.5mmol;調製例10に記載されたように調製)、HATU(10.3g、27mmol)、5−アミノ−1−ペンタノール(1.67g、16.2mmol)およびDIPEA(7.04mL、40.5mmol)の100mL DCM中混合物を、室温で1時間攪拌した。次いで、反応混合物を、ブライン(100mL)、水(100mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をDCM(100mL)中に溶解し、氷/ブライン浴において−5℃まで冷却した。DIPEA(7.04mL、40.5mmol)およびDMSO(10mL)を溶液に加え、次いで三酸化硫黄ピリジン錯体(6.45g、40.5mmol)を加えた。反応混合物を0℃で2時間攪拌し、次いで水(100mL)およびブライン(2×100mL)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して、4.88gの表題中間体(収率80%)を半固体として得た。
【0233】
(実施例11)
【0234】
【化70】

ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−[2−(5−オキソペンチルカルバモイル)エチル]ピペリジン−4−イルエステル(45mg、0.1mmol;調製例11に記載されたように調製)を、1mLのMeOHに溶解した。この溶液に、2−ピペリジン−2−イルエタノール(0.1mmol)を室温で加えた。反応を室温で30分間攪拌し、その後、Na(OAc)BH(64mg、0.3mmol)で処理した。攪拌を、さらに1時間続けた。反応混合物を濃縮し、次いで1mLの1:1 HOAc/HO溶液に溶解し、逆相HPLCで精製した。化合物11−1を、ビス(トリフルオロ酢酸)塩として得た。
【0235】
化合物11−2および11−3を、この手順に従い、そして適切な出発物質および試薬に置き換えて調製した。
【0236】
【化71】

(アッセイ1 放射性リガンド結合アッセイ)
(hM、hM、hMおよびhMムスカリン性受容体サブタイプを発現する細胞からの膜調製)
クローン化ヒトhM、hM、hMおよびhMムスカリン性受容体サブタイプをそれぞれ安定に発現するCHO細胞株を10%FBSおよび250μg/mLのGeneticinを加えたHAMのF−12からなる培地中でほぼコンフルーエンシーまで成長させた。この細胞を5%CO、37℃インキュベーター中で成長させ、dPBS中の2mM EDTAで浮き上がらせた。650×gで5分間遠心分離して細胞を集め、細胞ペレットを−80℃で凍結させて保存するか、または膜をすぐに調製した。膜調製について、細胞ペレットを溶解バッファーに再懸濁させ、Polytron PT−2100組織破壊器(Kinematica AG;20秒×2回破裂させる)で均質にした。粗膜を4℃で40,000×gで15分間遠心分離した。膜ペレットを再懸濁バッファーに再懸濁させ、Polytron組織破壊器で再び均質にした。膜懸濁物のタンパク質濃度をLowry,O.et al.,Journal of Biochemistry 193:265(1951)に記載の方法によって決定した。全膜を−80℃のアリコートで凍結保存するか、またはすぐに使用した。調製したhM受容体膜のアリコートをPerkin Elmerから直接購入し、使用するまで−80℃で保存した。
【0237】
(ムスカリン性受容体サブタイプhM、hM、hM、hMおよびhMの放射性リガンド結合アッセイ)
96ウェルマイクロタイタープレート中で全アッセイ量100μLで放射性リガンド結合アッセイを行った。hM、hM、hM、hMおよびhMムスカリン性受容体サブタイプのいずれかを安定に発現するCHO細胞膜を、以下の特定の標的タンパク質濃度(μg/ウェル)になるようにアッセイバッファーで希釈した:hM 10μg;hM 10〜15μg、hM 10〜20μg、hM 10〜20μg、およびhM 10〜12μg。Polytron組織破壊器で(10秒)膜を簡単に均質化した後、アッセイプレートに添加した。放射性リガンドのK値を決定する飽和結合試験をL−[N−メチル−H]スコポラミンメチルクロリド([H]−NMS)(TRK666、84.0Ci/mmol、Amersham Pharmacia Biotech、Buckinghamshire、England)を0.001nM〜20nMの濃度範囲で用いて行った。試験化合物のK値を決定するための交換アッセイを[H]−NMSを1nMの濃度で用いて11個の異なる試験化合物濃度で行った。試験化合物を希釈バッファーに400μMの濃度になるように希釈し、最終濃度が10pM〜100μMの範囲になるまで希釈バッファーで順次5倍希釈した。アッセイプレートへの添加順序および体積は以下のとおりであった:放射性リガンド25μL、希釈した試験化合物25μL、および膜50μL。アッセイプレートを37℃で60分間インキュベートした。1%BSAで前処理したGF/Bガラスファイバー濾過プレート(PerkinElmer Inc.,Wellesley,MA)で迅速に濾過して結合反応を終了させた。濾過プレートを洗浄バッファー(10mM HEPES)で3回洗浄して結合していない放射能活性を除去した。プレートを風乾し、Microscint−20液体シンチレーション液(PerkinElmer Inc.,Wellesley,MA)50μLを各ウェルに添加した。次いで、プレートをPerkinElmer Topcount液体シンチレーションカウンター(PerkinElmer Inc.,Wellesley,MA)で計測した。GraphPad Prism Softwareパッケージ(GraphPad Software,Inc.,San Diego,CA)を用いて一部位競合モデルを用いて非線形回帰分析で結合データを分析した。観察されたIC50値から試験化合物のK値を計算し、Cheng−Prusoff式(Cheng Y; Prusoff W. H. Biochemical Pharmacology 22(23):3099−108 (1973))を用いて放射性リガンドのK値を計算した。K値をpK値に変換し、幾何平均および95%信頼区間を決定した。この統計結果をK値に戻し、データを報告した。
【0238】
このアッセイでは、K値が低いほど、その試験化合物が試験された受容体に高い結合アフィニティーを有することを示す。このアッセイまたは類似のアッセイにおいて試験された本発明の例示的な化合物は、Mムスカリン性受容体サブタイプについて約10nM未満のK値を有することがわかっている。
【0239】
(アッセイ2 ムスカリン性受容体機能効力アッセイ)
(cAMP蓄積のアゴニストによって媒介される阻害の阻止)
このアッセイでは、試験化合物がhM受容体を発現するCHO−K1細胞でホルスコリンによって媒介されるcAMP蓄積のオキソトレモリン阻害を阻止する能力を測定することによって試験化合物の機能効力を決定する。125I−cAMP(NEN SMP004B,PerkinElmer Life Sciences Inc.,Boston, MA)を用いてFlashplate Adenylyl Cyclase Activation Assay Systemを製造業者の指示に従って用いて、放射性免疫アッセイ形態でcAMPアッセイを行う。
【0240】
細胞培養および膜調製の章で上に記載されるように、細胞をdPBSで1回洗い、Trypsin−EDTA溶液(0.05%トリプシン/0.53mM EDTA)で浮き上がらせた。dPBS 50mL中で650×gで5分間遠心分離して、分離した細胞を2回洗浄する。細胞ペレットをdPBS 10mLに再懸濁させ、細胞をCoulter Z1 Dual Particle Counter(Beckman Coulter,Fullerton,CA)で計測した。細胞を650×gで5分間再び遠心分離して、1.6×10〜2.8×10細胞/mLのアッセイ濃度になるように刺激バッファーに再懸濁させる。試験化合物を希釈バッファー(1mg/mL BSA(0.1%)を加えたdPBS)に400μMの濃度になるように最初に溶解し、最終モル濃度が100μM〜0.1nMの範囲になるまで希釈バッファーで順次希釈する。オキソトレモリンを類似の様式で希釈する。
【0241】
アデニリルシクラーゼ(AC)活性のオキソトレモリンによる阻害を測定するために、ホルスコリン25μL(dPBSで最終濃度25μMまで希釈)、希釈したオキソトレモリン25μL、および細胞50μLをアゴニストアッセイウェルに添加する。試験化合物がオキソトレモリンによって阻害されるAC活性を阻止する能力を測定するために、ホルスコリン25μLおよびオキソトレモリン(dPBSでそれぞれ最終濃度25μMおよび5μMまで希釈)、希釈した試験化合物25μL、および細胞50μLを残りのアッセイウェルに添加する。反応物を37℃で10分間インキュベートし、100μLの氷冷検出バッファーを添加することによって反応を停止させる。プレートを密閉し、室温で一晩インキュベートし、PerkinElmer TopCount液体シンチレーションカウンター(PerkinElmer Inc.,Wellesley,MA)で次の朝に計測する。各サンプルの計測結果およびcAMP標準に基づいて、製造業者のユーザーマニュアルに記載されるように産生したcAMPの量(pmol/ウェル)を計算する。GraphPad Prism Softwareパッケージ(GraphPad Software,Inc.,San Diego,CA)を用いて一部位競合モデルを用いて非線形回帰分析で結合データを分析する。オキソトレモリン濃度−応答曲線のEC50およびオキソトレモリンアッセイ濃度をそれぞれKおよび[L]として用いてCheng−Prusoff式を使用してKを計算する。K値をpK値に変換し、幾何平均および95%信頼区間を決定する。この統計結果をK値に戻し、データを報告する。
【0242】
このアッセイでは、K値が低いほど、その試験化合物が試験された受容体で高い機能活性を有することを示す。本発明の化合物は、このアッセイまたは類似のアッセイで試験される場合、hM受容体を発現するCHO−K1細胞でホルスコリンによって媒介されるcAMP蓄積のオキソトレモリン阻害を阻止する能力に関して約10nM未満のK値を有すると予想される。
【0243】
(アゴニストによって媒介される[35S]GTPγS結合の阻止)
第2の機能アッセイでは、試験化合物がhM受容体を発現するCHO−K1細胞でオキソトレモリンによって刺激される[35S]GTPγS結合を阻止する能力を測定することによって、試験化合物の機能効力を決定することができる。
【0244】
使用時に、凍結膜を解凍し、最終標的組織濃度が5〜10μgタンパク質/ウェルになるようにアッセイバッファーで希釈する。Polytron PT−2100組織破壊器で膜を均質にし、アッセイプレートに添加する。アゴニストオキソトレモリンによる[35S]GTPγS結合の刺激についてEC90値(最大応答の90%となるのに有効な濃度)を各実験で決定する。
【0245】
試験化合物がオキソトレモリンによって刺激される[35S]GTPγS結合を阻害する能力を決定するために、96ウェルの各ウェルに以下のものを添加する:[35S]GTPγS(0.4M)を含むアッセイバッファー25μL、オキソトレモリン(EC90)25μLおよびGDP(3μM)、希釈した試験化合物25μLおよびhM受容体を発現するCHO細胞膜25μL。アッセイプレートを37℃で60分間インキュベートする。PerkinElmer 96ウェル収集器を用いてアッセイプレートを1% BSAで前処理したGF/Bフィルターで濾過する。プレートを氷冷洗浄バッファーで3×3秒洗い、風乾または減圧乾燥する。Microscint−20シンチレーション液体(50μL)を各ウェルに添加し、各プレートを密閉し、トップカウンター(PerkinElmer)で放射能活性を計測する。GraphPad Prism Softwareパッケージ(GraphPad Software,Inc.,San Diego,CA)を用いて一部位競合モデルを用いて非線形回帰分析で結合データを分析する。オキソトレモリン濃度−応答曲線のEC50およびオキソトレモリンアッセイ濃度をそれぞれKおよび[L]として用いてCheng−Prusoff式を使用してKを計算する。
【0246】
このアッセイでは、K値が低いほど、その試験化合物が試験された受容体で高い機能活性を有することを示す。本発明の化合物は、このアッセイまたは類似のアッセイで試験される場合、hM受容体を発現するCHO−K1細胞でホルスコリンによって媒介されるオキソトレモリンによって刺激される[35S]GTPγS結合を阻止する能力に関して約10nM未満のK値を有すると予想される。
【0247】
(FLIPRアッセイを用いたアゴニストによって媒介されるカルシウム放出の阻止)
タンパク質にカップリングするムスカリン性受容体サブタイプ(M、MおよびM受容体)は、受容体にアゴニストが結合する際にホスホリパーゼC(PLC)経路を活性化する。結果として、活性化されたPLCは、ホスファチジルイノシトールジホスフェート(PIP)を加水分解してジアシルグリセロール(DAG)およびホスファチジル−1,4,5−トリホスフェート(IP)にし、細胞内貯蔵場所(すなわち、小胞体および筋小胞体)からカルシウムが放出される。FLIPR(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)アッセイは、細胞内のカルシウム増加を利用して、遊離カルシウムが結合すると蛍光を発するカルシウム感受性染料(Fluo−4AM、Molecular Probes,Eugene,OR)を用いる。この蛍光はFLIPRによってリアルタイムで測定され、ヒトMおよびMおよびチンパンジーM受容体でクローン化した細胞の単一層からの蛍光変化を検出する。アンタゴニストの効力は、アゴニストによって媒介される細胞内でのカルシウム増加を阻害する能力によって決定される。
【0248】
FLIPRカルシウム刺激アッセイでは、hM、hMおよびcM受容体を安定に発現するCHO細胞をアッセイ前日に96ウェルFLIPRプレートに接種する。接種した細胞をCellwash(MTX Labsystems,Inc.)でFLIPRバッファー(Hank緩衝化塩溶液(HBSS)中の10mM HEPES、pH7.4、2mM 塩化カルシウム、2.5mM プロベネシド、カルシウムおよびマグネシウムは含まない)を用いて2回洗浄して成長培地を除去し、FLIPRバッファー50μL/ウェルを残す。50μL/ウェルの4μM FLUO−4AM(2倍溶液を作製)とともに37℃で40分間、5%二酸化炭素中で細胞をインキュベートする。染料インキュベーション後、細胞をFLIPRバッファーで2回洗浄し、最終体積を50μL/ウェルにする。
【0249】
アンタゴニスト効力を決定するために、オキソトレモリンによる用量依存性の細胞内Ca2+放出の刺激を最初に決定し、その後にアンタゴニスト効力がEC90濃度でオキソトレモリン刺激に対して測定される。まず、細胞を化合物希釈バッファーを用いて20分間インキュベートし、その後にアゴニストを添加し、FLIPRを行う。オキソトレモリンのEC90値は、以下のFLIPR測定およびデータ変形の章で説明される方法に従って式EC=((F/100−F)^1/H)*EC50と組み合わせて与えられる。3×EC濃度のオキソトレモリンは、刺激プレート中で調製し、EC90濃度のオキソトレモリンをアンタゴニスト阻害アッセイプレートの各ウェルに添加する。
【0250】
FLIPRで使用されるパラメーターは以下のものである:露光長0.4秒、レーザー強度0.5ワット、励起波長488nm、および発光波長550nm。アゴニストを添加する10秒前の蛍光変化を測定することによってベースラインを決定する。アゴニスト刺激の後に、FLIPRによって1.5分間、0.5〜1秒ごとに連続して蛍光変化を測定して、最大蛍光変化点を探す。蛍光変化は、それぞれのウェルについて最大蛍光−ベースライン蛍光であらわされる。生データを薬物濃度の対数に対してGraphPad Prism(GraphPad Software,Inc.,San Diego,CA)を用いてシグモイド型用量応答のビルトインモデルを用いて非線形で分析する。Cheng−Prusoff式(Cheng & Prusoff,1973)に従ってKおよびオキソトレモリンEC90と同様にアンタゴニストK値をPrismによってオキソトレモリンEC50値を用いて決定する。
【0251】
このアッセイでは、K値が低いほど、その試験化合物が試験された受容体で高い機能活性を有することを示す。本発明の化合物は、このアッセイまたは類似のアッセイで試験される場合、hM受容体を安定に発現するCHO細胞でアゴニストによって媒介されるカルシウム放出を阻止する能力に関して約10nM未満のK値を有すると予想される。
【0252】
(アッセイ3 アセチルコリンによって誘発される気管支収縮のモルモットモデルの気管支保護の持続時間の決定)
このインビボアッセイを使用してムスカリン性受容体アンタゴニスト活性を示す試験化合物の気管支保護効果を評価する。250〜350g体重の6匹の雄モルモット群(Duncan−Hartley (HsdPoc:DH)Harlan,Madison,WI)をケージカードで個々を区別する。試験中、動物は餌および水を自由に摂取できる状態にある。
【0253】
全身露出投薬チャンバ(R&S Molds,San Carlos,CA)で 試験化合物を吸入によって10分間かけて投与する。エアロゾルが中央マニホルドから6個の個々のチャンバに同時に送達されるように投薬チャンバを整列させる。モルモットに試験化合物またはビヒクル(WFI)のエアロゾルを与える。これらのエアロゾルはLC Star Nebulizer Set(Model 22F51,PARI Respiratory Equipment,Inc.Midlothian,VA)を用いた水溶液から作られており、混合ガス(CO=5%、O=21%およびN=74%)を用いて圧力22psiで噴射される。この操作圧で噴霧器を通るガス流は、約3L/分である。発生したエアロゾルは加圧によってチャンバに運ばれる。エアロゾル化した溶液を送達する間、希釈空気は使用しない。10分間の噴霧中に溶液約1.8mLが噴霧される。この量は、充填された噴霧器の噴霧前と噴霧後の重量を比較することによって重量測定法で測定される。
【0254】
吸入によって投与された試験化合物の気管支保護効果を、投薬1.5時間後、24時間後、48時間後および72時間後に全身プレチスモグラフィーで評価する。肺の評価を開始する45分前に、各モルモットにケタミン(43.75mg/kg)、キシラジン(3.50mg/kg)およびアセプロマジン(1.05mg/kg)を筋肉内注射して麻酔する。手術部位の毛を剃り、70%アルコールで洗浄した後、首の腹部を2〜3cm正中線切開する。次いで、頚部静脈を分離し、生理食塩水を満たしたポリエチレンカテーテル(PE−50,Becton Dickinson,Sparks,MD)を通し、生理食塩水中のACh(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)を静脈に注入する。気管を解剖し、14Gテフロン(登録商標)管(#NE−014,Small Parts,Miami Lakes, FL)を通す。必要な場合、上述の麻酔薬混合物をさらに筋肉内注射して麻酔を維持する。麻酔の深さをモニタリングし、動物の挟んでいる足が反応したり、または呼吸速度が100呼吸/分を超えたら麻酔を調整する。
【0255】
挿管が終わったら、動物をプレチスモグラフ(#PLY3114,Buxco Electronics,Inc.,Sharon,CT)に置き、食道加圧カニューレ(PE−160,Becton Dickinson,Sparks,MD)を挿入して肺駆動圧(圧力)を測定する。テフロン(登録商標)製気管チューブをプレチスモグラフの開口部に取り付け、モルモットがチャンバの外から空気を吸えるようにする。チャンバを密閉する。加熱ランプを使用して体温を維持し、10mLのキャリブレーションシリンジ(#5520 Series,Hans Rudolph,Kansas City,MO)を用いてモルモットの肺を空気4mLで3回ふくらませ、下気道が崩壊しないように、動物が過呼吸にならないようにする。
【0256】
コンプライアンスのベースライン値が0.3〜0.9mL/cmHOの範囲内にあることを確認し、抵抗のベースラインが1秒あたり0.1〜0.199cmHO/mLの範囲内にあることを確認したら、肺の評価を開始する。Buxco肺測定コンピュータプログラムによって、肺の値を集め、導出することができる。このプログラムを開始して実験プロトコルを開始し、データを集める。呼吸時にプレチスモグラフ内で起こる時間経過にともなう体積変化をBuxco圧力トランスデューサで測定する。このシグナルを時間で積分して、呼吸ごとの流量測定値を計算する。このシグナルと、肺の駆動圧の変化とをSensym圧力トランスデューサ(#TRD4100)で集め、Buxco(MAX2270)プリアンプをデータ収集インターフェース(# SFT3400およびSFT3813)に接続する。他のすべての肺パラメーターを2つの入力から入れる。
【0257】
ベースライン値を5分間集め、その後、モルモットをAChでチャレンジする。ACh(0.1mg/mL)をシリンジポンプ(sp210iw, World Precision Instruments, Inc., Sarasota, FL)から以下の投薬量および実験開始からの時間で、1分間静脈吸入する:5分に1.9μg/分、10分に3.8μg/分、15分に7.5μg/分、20分に15.0μg/分、25分に30μg/分、および30分に60μg/分。抵抗またはコンプライアンスが各ACh投薬3分後にベースラインに戻らない場合、モルモットの肺を10mLキャリブレーションシリンジで空気4mLで3回ふくらませる。記録した肺パラメーターは、呼吸頻度(呼吸/分)、コンプライアンス(mL/cmHO)および肺抵抗(1秒あたりのcmHO/mL)を含む。肺機能の測定がこのプロトコルで35分に終了したら、モルモットをプレチスモグラフからはずし、二酸化炭素で窒息させて安楽死させる。データを以下の様式のうち1つまたは両方で評価する。
【0258】
(a)肺抵抗(R,1秒あたりのcmHO/mL)を「圧力変化」対「流量の変化」の比から計算する。RはACh(60μg/分、IH)に応答し、ビヒクルおよび試験化合物群で算出される。各前処置時間でのビヒクルで処置された動物の平均ACh応答を計算し、各前処置時間で、試験化合物の各投薬量でのAch応答の阻害率%を算出するために使用する。「R」についての阻害用量−応答曲線をGraphPad Prism,バージョン3.00(for Windows(登録商標))(GraphPad Software,San Diego, California)を用いて4つのパラメーター論理式にあてはめ、気管支保護ID50(ACh(60μg/分)での気管支収縮応答が50%阻害されるのに必要な用量)を概算する。使用する式は以下のとおりである:
【0259】
【化73】

式中、Xは用量の対数であり、Yは応答(AChの阻害がRの増加を誘発する割合%)である。YはMinで始まり、シグモイド形状でMaxまで漸近的に近づいていく。
【0260】
(b)PD量(肺抵抗のベースラインを2倍にするのに必要なAChまたはヒスタミンの量として定義)を流量から誘導される肺抵抗値から計算し、AChまたはヒスタミンのチャレンジを行っている間の圧力を以下の式を用いて計算する(American Thoracic SocietyのGuidelines for methacholine and exercise challenge testing −1999.Am J Respir Crit Care Med. 161:309−329 (2000)):に記載されるPC20値を計算するために使用する式から誘導される。
【0261】
【化74】

式中、CはCに進むAChまたはヒスタミンの濃度であり、Cは肺抵抗(R)を少なくとも2倍に増加させるAChまたはヒスタミンの濃度であり、RはベースラインR値であり、RはC後のR値であり、RはC後のR値である。有効な投薬量は、ACh50mg/mL投薬に対する気管支収縮を肺抵抗ベースラインの2倍(PD2(50))までに制限する用量であると定義される。
【0262】
両側Student t検定を用いてデータの統計分析を行う。P値<0.05で有意であるとみなされる。一般的に、このアッセイでAChによって誘発される気管支収縮に対して投薬1.5時間後に約200μg/mL未満のPD2(50)を有する化合物が好ましい。本発明の化合物は、このアッセイまたは類似のアッセイで試験された場合、AChによって誘発される気管支収縮に対して投薬1.5時間後に約200μg/mL未満のPD2(50)を有すると予想される。
【0263】
(アッセイ4 吸入モルモット唾液分泌アッセイ)
200〜350g体重のモルモット(Charles River,Wilmington,MA)をインハウスモルモットコロニーに到着後少なくとも3日間順応させる。試験化合物またはビヒクルをパイ型投薬チャンバ(R&S Molds,San Carlos,CA)で吸入(IH)によって10分間投薬する。試験溶液を滅菌水に溶解し、投薬溶液5.0mLを満たした噴霧器を用いて送達する。モルモットを吸入チャンバに30分間拘束する。この時間中、モルモットは約110平方センチメートルの面積に制限される。この空間は動物が自由に向きを変え、位置を変え、身づくろいをするのに十分な大きさである。順応させて20分後、LS Star Nebulizer Set(Model 22F51,PARI Respiratory Equipment,Inc.Midlothian,VA)から22psiの圧力の空気によってエアロゾルを作製してモルモットに与える。噴霧が終わったら、モルモットを処置1.5時間後、6時間後、12時間後、24時間後、48時間後、または72時間後に評価する。
【0264】
各モルモットにケタミン(43.75mg/kg)、キシラジン(3.50mg/kg)およびアセプロマジン(1.05mg/kg)を0.88mL/kgの体積で筋肉内注射して麻酔する。加温した(37℃)毛布に動物の腹側が接するように置き、下向きの傾斜に頭が20°の角度になるように置く。4層の2×2インチゲージパッド(Nu−Gauze General−use sponges,Johnson and Johnson,Arlington,TX)をモルモットの口に挿入する。5分後、ムスカリンアゴニストピロカルピン(3.0mg/kg,SC)を投与し、ゲージパッドをすぐに取り出し、新しい計量済みのゲージパッドと交換する。唾液を10分間集め、この時点でゲージパッドを秤量し、記録した重量差から集めた唾液の量(mg)を決定する。ビヒクルおよび各用量の試験化合物を投与した動物について集めた唾液の平均量を計算する。ビヒクル群の平均が唾液100%であるとする。結果の平均値を用いて結果を計算する(n=3以上)。信頼区間(95%)を両側ANOVAを用いて時間点ごと、用量ごとに計算する。このモデルはRechterの「Estimation of anticholinergic drug effects in mice by antagonism against pilocarpine−induced salivation」Ata Pharmacol Toxicol 24:243−254 (1996)に記載される手順の改変である。
【0265】
各前処置時間でのビヒクルで処置された動物の唾液の平均重量を計算し、対応する前処置時間、各用量での唾液の阻害割合%を算出する。阻害用量−応答データをGraphPad Prism,バージョン3.00(for Windows(登録商標))(GraphPad Software,San Diego, California)を用いて4つのパラメーター論理式にあてはめ、抗唾液分泌促進薬ID50(ピロカルビンによって誘発される唾液分泌が50%阻害されるのに必要な用量)を概算する。使用する式は以下のとおりである:
【0266】
【化75】

式中、Xは用量の対数であり、Yは応答(唾液分泌の阻害割合%)である。YはMinで始まり、シグモイド形状でMaxまで漸近的に近づいていく。
【0267】
抗唾液分泌促進薬ID50 対 気管支保護ID50の比率を使用して試験化合物の見かけの肺選択性指数を算出する。一般的に、約5より大きい見掛けの肺選択性指数を有する化合物が好ましい。本発明の化合物は、このアッセイまたは類似のアッセイで試験された場合、約5より大きい見掛けの肺選択性指数を有すると予想される。
【0268】
(アッセイ5 意識のあるモルモットでのメタコリンで誘発される降圧応答)
200〜300g体重の健康な雄の成体Sprague−Dawleyモルモット(Harlan,Indianapolis,IN)をこの試験に使用する。イソフルランで麻酔し、動物に一般的な頚動脈および頚部カテーテル(PE−50管)を取り付ける。カテーテルを皮下の穴を利用して肩甲下に露出させる。すべての手術による切開部を4−0 Ethicon Silkで縫い合わせ、カテーテルをヘパリン(1000単位/mL)で保護する。それぞれの動物に手術後に生理食塩水(3mL、SC)およびブプレノルフィン(0.05mg/kg,IM)を投与する。それぞれの保持室に戻すまでは動物を加温パッドに戻しておく。
【0269】
手術の約18〜20時間後、動物の体重を測り、それぞれの動物の頚動脈カテーテルをトランスデューサに接続して動脈圧を記録する。動脈圧および心臓の脈拍をBiopac MP−100 Acquisition Systemを用いて記録する。動物を20分間順応させ、安定化させる。
【0270】
それぞれの動物に頚部静脈からMCh(0.3mg/kg,IV)を投与し、心臓血管の応答を10分間モニタリングする。動物を全身投薬チャンバに入れ、試験化合物またはビヒクル溶液を含有する噴霧器に接続する。呼吸可能な空気および5%二酸化炭素の混合ガスを用いて3L/分の流速でこの溶液を10分間噴霧する。この動物を全身チャンバから出し、それぞれのカゴに戻す。投薬1.5時間後および24時間後に、この動物に再びMCh(0.3mg/kg,IV)を投与し、血流応答を決定する。その後、この動物をナトリウムペントバルビタール(150mg/kg,IV)で安楽死させる。
【0271】
MChによって平均動脈圧(MAP)が減少し、心臓の脈拍が減少する(徐脈)。MAPのピークがベースラインよりも下にあること(低下応答)が各MCh投与時(IH投薬前および投薬後)に測定される。MCh応答に対する処置効果をコントロール低下応答の阻害率(平均±SEM)%であらわす。適切な試験の両側ANOVAを使用して処置時間および前処置時間の効果を試験する。MChに対する低下応答は、ビヒクルを吸入投薬した場合には1.5時間後および24時間後で相対的に変化しないと予想される。
【0272】
抗低下ID50 対気管支保護ID50の比率を使用して、試験化合物の見かけの肺選択性を算出する。一般的に、約5より大きい見掛けの肺選択性指数を有する化合物が好ましい。本発明の化合物は、このアッセイまたは類似のアッセイで測定された場合、約5より大きい見掛けの肺選択性指数を有すると予想される。
【0273】
本発明が特定の態様または実施形態を参照して記載されたが、本発明の精神および範囲を逸脱することなく種々の変更をほどこすことが可能であり、または交換することが可能であることが当業者には理解される。さらに、適用可能な特許の状態および規制で許される限り、本明細書に引用される特許および特許明細書は、まるで各文献が本明細書に参考として個々に組み込まれているかのように、その全体が本明細書に参考として組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体であって、
aは0、または1−5の整数であり;
各Rは、独立して、(1−4C)アルキル、(2−4C)アルケニル、(2−4C)アルキニル、(3−6C)シクロアルキル、シアノ、ハロ、−OR1a、−C(O)OR1b、−SR1c、−S(O)R1d、−S(O)1e、−NR1f1g、−NR1hS(O)1i、−および−NR1jC(O)R1kから選択され;ここでR1a、R1b、R1c、R1d、R1e、R1f、R1g、R1h、R1i、R1j、およびR1kのそれぞれは、独立して、水素、(1−4C)アルキルまたはフェニル(1−4C)アルキルであり;
bは0、または1−4の整数であり;
各Rは、独立して、(1−4C)アルキル、(2−4C)アルケニル、(2−4C)アルキニル、(3−6C)シクロアルキル、シアノ、ハロ、−OR2a、−C(O)OR2b、−SR2c、−S(O)R2d、−S(O)2e、−NR2f2g、−NR2hS(O)2i、および−NR2jC(O)R2kから選択され;ここでR2a、R2b、R2c、R2d、R2e、R2f、R2g、R2h、R2i、R2j、およびR2kのそれぞれは、独立して、水素、(1−4C)アルキルまたはフェニル(1−4C)アルキルであり;
Wは、OまたはNWを表し、ここでWは水素または(1−4C)アルキルであり;
cは0、または1−5の整数であり;
各Rは、独立して(1−4C)アルキルをあらわすか、または2つのR基が結合して、(1−3C)アルキレン、(2−3C)アルケニレンまたはオキシラン−2,3−ジイルを形成し;
Aは、
【化2】

から選択され、
ここでmは0または1であり;rは2、3または4であり;sは0、1または2であり;tは0、1または2であり;Rは、水素、(1−4C)アルキル、および(3−4C)シクロアルキルから選択され;そしてArは、酸素、窒素および硫黄から独立して選択される1または2個のヘテロ原子を含むフェニレン基または(3−5C)ヘテロアリーレン基を表し;ここで、該フェニレンまたはヘテロアリーレン基は、(Rで置換されており、qは0、または1−4の整数であり、各Rは、独立して、ハロ、ヒドロキシ、(1−4C)アルキルおよび(1−4C)アルコキシから選択され;
nは0、または1−3の整数であり;
dは0、または1−4の整数であり;
各Rは、独立して、フルオロまたは(1−4C)アルキルを表し;
は、独立して、水素、−OH、−(1−4C)アルキレンOH、−NR7a7b、−C(O)NR7c7d、および−CHC(O)NR7c7dから選択され、ここでR7a、R7b、およびR7cは、独立して、水素、(1−4C)アルキル、ヒドロキシ、(1−4C)アルコキシ、(1−4C)アルキレンOR7e、(3−6C)シクロアルキル、ヒドロキシで必要に応じて置換されたフェニル、および(1−4C)アルキレンC(O)NR7f7gから選択され;そしてRは、ヒドロキシ、(1−4C)アルコキシ、(1−4C)アルキレンOR7h、(3−6C)シクロアルキル、ヒドロキシで必要に応じて置換されたフェニル、および(1−4C)アルキレンC(O)NR7i7jから選択され;ここで該(3−6C)シクロアルキルは、非置換であるか、または1もしくは2個の(1−6C)アルキルもしくは−NR7k7l基で置換されており、そしてR7e、R7f、R7g、R7h、R7i、R7j、R7k、およびR7lのそれぞれは、独立して、水素または(1−4C)アルキルであるか;あるいはR7cはR7dと一緒になって、3−7員の、必要に応じてヒドロキシルで置換された環を形成し;
ここでR、R1a−1k、R、R2a−2k、R、R、R、およびR7a−lにおける各アルキルおよびアルコキシ基は、必要に応じて、1−5個のフルオロ置換基で置換されている;
化合物。
【請求項2】
a、bおよびcがそれぞれ0をあらわす、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
WがOをあらわす、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
mが0である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
が水素またはメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
Aが:
【化3】

であり、ここでmは0であり;sは0または2であり;tは1であり;Rは水素またはメチルであり;そしてArは(Rで置換されたフェニレン基をあらわし、ここでqは0であるかまたはqは1であり、そしてRはハロであるか、または2,5−チエニレン、2,5−ピロリレン、および2,5−フリレンから選択される(3−5C)ヘテロアリーレン基をあらわす、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
Aは
【化4】

であり、ここでmは0であり;rは3であり;そしてRは水素またはメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
nは1または2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
dは0である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
は水素である、請求項1−9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
は−OHである、請求項1−9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
は−CHOHまたは−(CHOHである、請求項1−9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
は−C(O)NR7c7dであり、ここでR7cは水素であり、そしてRは、−(CHOH、−(CHOCH、シクロプロピル、シクロペンチル、必要に応じてヒドロキシで置換されたフェニル、および−(CH)C(O)NHから選択される、請求項1−9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
は−C(O)NR7c7dであり、ここでR7cはR7dと一緒になって、ピロリジン、ピペリジン、3−ヒドロキシピペリジン、または4−ヒドロキシピペリジンを形成する、請求項1−9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
式:
【化5】

を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
請求項1に記載の化合物であって、以下:
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−[2−({4−[4−(2−ヒドロキシエチルカルバモイル)ピペリジン−1−イルメチル]ベンゾイル}メチルアミノ)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−[2−({4−[4−(2−メトキシエチルカルバモイル)ピペリジン−1−イルメチル]ベンゾイル}メチルアミノ)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−{[4−(4−シクロプロピルカルバモイルピペリジン−1−イルメチル)ベンゾイル]メチルアミノ}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−{[4−(4−シクロペンチルカルバモイルピペリジン−1−イルメチル)ベンゾイル]メチルアミノ}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−[2−({4−[4−(4−ヒドロキシベンジルカルバモイル)ピペリジン−1−イルメチル]ベンゾイル}メチルアミノ)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−{[4−(4−ベンジルカルバモイルピペリジン−1−イルメチル)ベンゾイル]メチルアミノ}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−[2−({4−[4−(カルバモイルメチルカルバモイル)ピペリジン−1−イルメチル]ベンゾイル}メチルアミノ)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−[2−({4−[4−(4−ヒドロキシピペリジン−1−カルボニル)ピペリジン−1−イルメチル]ベンゾイル}メチルアミノ)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−[2−({4−[4−(3−ヒドロキシピペリジン−1−カルボニル)ピペリジン−1−イルメチル]ベンゾイル}メチルアミノ)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−[2−(メチル−{4−[4−(ピロリジン−1−カルボニル)ピペリジン−1−イルメチル]ベンゾイル}アミノ)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−[2−(メチル−{4−[4−(ピペリジン−1−カルボニル)ピペリジン−1−イルメチル]ベンゾイル}アミノ)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−{[4−(4−ヒドロキシメチルピペリジン−1−イルメチル)ベンゾイル]メチルアミノ}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−{[4−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル)ベンゾイル]メチルアミノ}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−{[2−フルオロ−4−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル)ベンゾイル]メチルアミノ}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−{2−[メチル−(5−ピロリジン−1−イルメチルチオフェン−2−カルボニル)アミノ]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−{[5−(4−ヒドロキシメチルピペリジン−1−イルメチル)チオフェン−2−カルボニル]メチルアミノ}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−{[5−(3−ヒドロキシピロリジン−1−イルメチル)チオフェン−2−カルボニル]メチルアミノ}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−{[5−(4−ヒドロキシメチルピペリジン−1−イルメチル)チオフェン−2−カルボニル]アミノ}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−{[5−(3−ヒドロキシピロリジン−1−イルメチル)チオフェン−2−カルボニル]アミノ}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−{[5−(4−ヒドロキシメチルピペリジン−1−イルメチル)−1H−ピロール−2−カルボニル]メチルアミノ}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−{2−[メチル−(5−ピロリジン−1−イルメチル−1H−ピロール−2−カルボニル)アミノ]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−{[5−(4−ヒドロキシメチルピペリジン−1−イルメチル)フラン−2−カルボニル]アミノ}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−{[5−(3−ヒドロキシピロリジン−1−イルメチル)フラン−2−カルボニル]アミノ}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−[2−({3−[4−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル)フェニル]プロピオニル}メチルアミノ)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−[2−({3−[4−(3−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル)フェニル]プロピオニル}メチルアミノ)エチル]ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−{2−[3−(4−ピペリジン−1−イルメチルフェニル)プロピオニルアミノ]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−{3−[4−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル)フェニル]プロピオニルアミノ}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−{3−[4−(3−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル)フェニル]プロピオニルアミノ}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−{2−[メチル−(4−ピロリジン−1−イルメチル−ベンゾイル)アミノ]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−(2−{5−[2−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン−1−イル]ペンチルカルバモイル}エチル)ピペリジン−4−イルエステル;
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−{2−[5−(3−ヒドロキシピペリジン−1−イル)ペンチルカルバモイル]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;および
ビフェニル−2−イルカルバミン酸 1−{2−[5−(4−ヒドロキシピペリジン−1−イル)ペンチルカルバモイル]エチル}ピペリジン−4−イルエステル;
またはそれらの薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
薬学的に受容可能なキャリアと、治療有効量の請求項1−16のいずれか1項に記載の化合物とを含む、薬学的組成物。
【請求項18】
βアドレナリン作用性受容体アゴニスト、ステロイド性抗炎症剤、ホスホジエステラーゼ−4インヒビター、およびそれらの組み合わせから選択される薬剤の有効量をさらに含み、前記化合物と該薬剤とが一緒に、または別個に処方される、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
治療有効量のβアドレナリン作用性受容体アゴニストおよびステロイド性抗炎症剤を含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
請求項1−16のいずれか1項に記載の化合物を調製するためのプロセスであって、該プロセスは、以下:
(a)式II:
【化6】

の化合物またはその塩と、式III:
【化7】

の化合物(Lは脱離基をあらわす)とを反応させる工程;あるいは
(b)式IVa:
【化8】

の化合物もしくはその反応性誘導体と、式Va’もしくはVa’’
【化9】

の化合物とをカップリングさせる工程、または式IVb:
【化10】

の化合物と、式Vb’もしくはVb’’:
【化11】

の化合物もしくはその反応性誘導体とをカップリングさせる工程;あるいは
(c)式VI:
【化12】

の化合物(Lは脱離基をあらわす)と、式VII:
【化13】

の化合物とを反応させる工程;あるいは
(d)式IIの化合物と、式VIII:
【化14】

の化合物(「A」は、1つ少ない炭素(すなわち、mの代わりにm−1)を有する)とを、還元剤の存在下で反応させる工程;あるいは
(e)式IX:
【化15】

の化合物(「A」は1つ少ない炭素(すなわちrの代わりにr−1、tの代わりにt−1)を有する)と、式VIIの化合物とを、還元剤の存在下で反応させる工程;と
(f)存在し得る任意の保護基を除去し、式Iの化合物を提供する工程と、
を包含する、プロセス。
【請求項21】
前記プロセスが、さらに、式Iの化合物の薬学的に受容可能な塩を形成する工程を包含する、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
請求項20または21に記載のプロセスによって調製された、産物。
【請求項23】
ムスカリン性受容体を含む生物学的系またはサンプルの研究方法であって、
(a)該生物学的系またはサンプルと、請求項1−16のいずれか1項に記載の化合物とを接触させる工程;および
(b)該生物学的系またはサンプルにおいて、該化合物によって引き起こされる効果を決定する工程、
を包含する、方法。
【請求項24】
治療における使用のため、または医薬として使用するための、請求項1−16のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項25】
医薬の製造のための、請求項1−16のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項26】
前記医薬は、哺乳動物においてムスカリン性受容体と拮抗するためのものである、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記医薬は、肺障害の処置のためのものである、請求項25に記載の使用。
【請求項28】
前記医薬は、気管支拡張を生じさせるためのものである、請求項25に記載の使用。
【請求項29】
前記医薬は、慢性閉塞性肺疾患または喘息を処置するためのものである、請求項25に記載の使用。

【公表番号】特表2008−533028(P2008−533028A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500908(P2008−500908)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/008393
【国際公開番号】WO2006/099032
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(500154711)セラヴァンス, インコーポレーテッド (129)
【Fターム(参考)】