説明

メタロセン化合物

【課題】エチレン又は炭素数4〜20のα−オレフィンとプロピレンのバランスの取れた反応性を呈するα−オレフィン重合用メタロセン系触媒の提供。
【解決手段】ジクロロ{ジメチルシリレン(2−インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウムで代表されるメタロセン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタロセン化合物に関し、詳しくは、メタロセン化合物、それを含む触媒成分、それを含むオレフィン重合用触媒及びそれを使用するα−オレフィンの重合方法に係かる。該オレフィン重合用触媒は、エチレン又は炭素数4〜20のα−オレフィンとプロピレンとのバランスの取れた反応性を有し、より高いエチレン又は該α−オレフィン含量を有するα−オレフィン共重合体を生成する。そのような有用なメタロセン触媒を形成し得る新規なメタロセン化合物に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂材料は、成形性や各種の物性及び経済性や環境問題適応性などを主として、非常に多くの優れた性能を有しているので、産業用資材として汎用され重用されている。産業分野におけるその重要性のために、さらなる性能の改良が多面的に常に求められており、例えば、柔軟性と耐衝撃性の向上のために、プロピレン単独重合体にエチレン−プロピレンラバーなどのエラストマーを添加する方法や、プロピレンの単独重合後に引き続いてプロピレンとエチレン又は炭素数4〜20のα−オレフィンを共重合させる多段重合によって、いわゆるブロック共重合体を製造する方法などが実施されている。
【0003】
かかるポリプロピレン系樹脂材料は、工業的には主として、チーグラー系触媒及びメタロセン系触媒により製造されているが、解決されるべき問題点をなお多く内包している。例えば、チーグラー系触媒の存在下で重合して得られたプロピレン系ブロック共重合体は、触媒の性質上から、低分子量成分(オリゴマー成分など)が必ず生成し、この低分子量成分は、加工時の発煙や異臭の発生原因となるばかりか、加工後でも臭気などの悪影響や、べたつきによるブロッキング性の悪化など、様々な問題を派生している。
【0004】
これに対して、従来のチーグラー系触媒とは異なるメタロセン系触媒を用いて、プロピレンを重合して高いアイソタクチック性ポリプロピレンが得られることが以前からよく知られており、また、多段重合により、いわゆるブロック共重合体を製造し(例えば、特許文献1を参照)、更に、剛性と耐衝撃性の良好なプロピレン−エチレンブロック共重合体を製造することなども開示されている(例えば、特許文献2,3を参照)。
【0005】
メタロセン系触媒は、チーグラー系触媒に比して、概して重合活性が高く、狭い分子量分布と共重合体組成分布の均一性を有する重合体を生成できる特徴を有しているが、合成が煩雑なメタロセン化合物や有機アルミニウムオキシ化合物(MAO)の使用による経済性の問題をはじめとして、重合活性や重合体の分子量及び立体規則性などを更に高め向上させる必要性など、多くの改良すべき課題をなお内在している。
【0006】
しかして、メタロセン系触媒においては、多面的な観点から多岐にわたる改良研究が続けられており、例えば、プロピレン−エチレンブロック共重合体の剛性を向上させるために、高い融点を有するポリプロピレンを与えるメタロセン化合物が開示されているが(例えば、特許文献4,5を参照)、これらのメタロセン化合物からなる触媒を用いて、プロピレンとエチレン又は炭素数4〜20のα−オレフィンの共重合を行うと、エチレン又は炭素数4〜20のα−オレフィンの反応性が、プロピレンの反応性に比較して相対的に低いことが問題となっている。つまり、所望のエチレン又は炭素数4〜20のα−オレフィンの含量を有する共重合体を得るためには、共重合体中の含量から大きく異なるモノマー比のガスを供給して重合することが必要となり、製造上問題があり、更に極端な場合には、所望の含量を有する共重合体が製造できないこともある。エチレン分圧を上げれば一部の問題は解決できるが、かかる操作は煩雑であるだけではなく、工業的に用いられるプラントの装置上の制約から、ある一定以上にエチレン分圧を上げられない等の理由により工業的に制約があり有利ではない。
【0007】
このような問題に対して、例えば、用いるメタロセン化合物を変えることで、プロピレンの反応性とエチレン又は炭素数4〜20のα−オレフィンの反応性を変化できることが提示されているが(例えば、特許文献6及び非特許文献1を参照)、双方の反応性をバランス良く満たすメタロセン化合物はこれまで知られておらず、特に、プロピレンとエチレン又は炭素数4〜20のα−オレフィンの共重合を気相で行う場合には、上記の反応性をバランスよく満たすメタロセン化合物は未だ知られていない。
【0008】
また、例えば、プロピレン−エチレンブロック共重合体において高い耐衝撃性を発現するためには、より低いガラス転移温度を示すことが必要であり、これを満足するにはプロピレンとエチレン又は炭素数4〜20のα−オレフィンの共重合のそれぞれの含量は特定の範囲を満たすことが好ましい(例えば、非特許文献2を参照)。そのため、製造上触媒の性能としては、プロピレンの反応性とエチレン又は炭素数4〜20のα−オレフィンの反応性はバランスのとれた、それぞれある一定の範囲内にあることが必要となる。
【0009】
ところで、本発明と類似したメタロセン化合物を開示する文献があり、例えば、特許文献7,8にはインデニル基の1位とヒドロアズレニル基の1位とで架橋した擬C2対称のメタロセン化合物が開示されている。しかしながら、本発明のメタロセン化合物とは架橋位置が異なる。また、特許文献9にはインデニル基の1位とインデニル基の2位とで架橋したメタロセン化合物が開示されている。しかしながら、ヒドロアズレニル基は示されておらず、架橋位置が僅かに相違することにより、プロピレンとエチレン又は炭素数4〜20のα−オレフィンとの反応性が大きく相違することについても記載は見られない。また、特許文献10には、概念的には本発明のメタロセン化合物をも包含するような広範な記述が見られるが、本願請求項にかかるメタロセン化合物は明示的に記載されておらず、ましてや実際に合成され確認された実施例としての記載は全く見当たらない。
【0010】
【特許文献1】特開平4−337308号公報
【特許文献2】特開平11−228648号公報
【特許文献3】特開平11−240929号公報
【特許文献4】特開平11−240909号公報
【特許文献5】特開2000−95791号公報
【特許文献6】WO2004−87775号パンフレット
【非特許文献1】Journal of the American Chemical Society 2001年、 123巻、 9555頁
【非特許文献2】Polymer 2001年、 42巻、 9611頁
【特許文献7】特開2003−292700号公報
【特許文献8】特開2004−155739号公報
【特許文献9】特開2001−64322号公報
【特許文献10】特開平11−292934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
先に概述した背景技術を鑑みれば、多くの産業分野において汎用され重用されているポリプロピレン系樹脂材料を、工業的に製造するために重要で必須であるメタロセン系重合触媒は、なお多くの問題点を内在しており、その内の重要な問題のひとつとして、プロピレンとエチレン又は炭素数4〜20のα−オレフィンの共重合を行う際に、エチレン又は炭素数4〜20のα−オレフィンの反応性がプロピレンの反応性とバランスがとれないという課題がある。本発明は、かかる課題を解決して、エチレン又は炭素数4〜20のα−オレフィンとプロピレンのバランスの取れた反応性を呈するα−オレフィン重合用メタロセン系触媒を開発することを目指すものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、かかる本発明の課題を解決すべく、メタロセン系重合触媒におけるメタロセン化合物の配位子構造について、その基本骨格に起因するメタロセン化合物の有する対称性、触媒活性点でのポリマー形成のメカニズムや、メタロセン化合物の置換基の立体効果やそれによる生成ポリマーの配位モノマーへの影響などの観点からの経験則を考慮しながら、エチレン又は炭素数4〜20のα−オレフィンの反応性とプロピレンの反応性とのバランス向上の手法を求めて、多面的に考察し実験的な探索を行った。
【0013】
その過程において、ある特定の立体的な構造を有するメタロセン化合物を形成した場合に、エチレン又は炭素数4〜20のα−オレフィンとプロピレンのバランスの取れた反応性を呈する触媒機能が顕現される事実を認識することができ、モデル化合物の勘案や実験的な実証などの結果において、触媒成分として非常に有用な新しいメタロセン化合物を見出して、本発明を創作するに至った。
【0014】
即ち、本発明の要旨とするところは、下記の一般式(I)で表されるメタロセン化合物に存する。
【化3】

【0015】
(式中、R1,R2、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基を表し、R1,R2のいずれか1つは、水素原子である。R3は、炭素数3〜6の飽和または不飽和の二価の炭化水素基を表し、R4は、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基又はケイ素含有炭化水素基を表し、nは、0又はR3の炭素数の2倍以下の整数を表し、nが2以上の場合、R4同士が任意の位置で結合して環構造を形成していてもよい。R7は、炭素数6以上の、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基又はケイ素含有炭化水素基を表し、R8,R9,R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基を表す。Qは、架橋基を表し、X及びYは、それぞれ独立して、Mとσ結合を形成する配位子を表し、Mは、周期表第4〜6族の遷移金属を表す。)
【0016】
また、本発明の他の要旨とするところは、下記の一般式(II)で表されるメタロセン化合物に存する。
【化4】

【0017】
(式中、R1,R2、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基を表し、R1,R2のいずれか1つは、水素原子である。R3は、炭素数3〜6の飽和または不飽和の二価の炭化水素基を表し、R4は、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基又はケイ素含有炭化水素基を表し、mは、0〜4の整数を表し、mが2以上の場合、R4同士が任意の位置で結合して環構造を形成していてもよい。R7は、炭素数6以上の、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基又はケイ素含有炭化水素基を表し、R8,R9,R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基を表す。Qは、架橋基を表し、X及びYは、それぞれ独立して、Mとσ結合を形成する配位子を表し、Mは、周期表第4〜6族の遷移金属を表す。)
【0018】
また、本発明の他の要旨とするところは、前記のメタロセン化合物を含むことを特徴とする、オレフィン重合用触媒成分に存する。
【0019】
また、本発明の他の要旨とするところは、次の成分(A)及び(B)と任意に成分(C)を含むことを特徴とする、オレフィン重合用触媒に存する。
成分(A):前記メタロセン化合物
成分(B):有機アルミニウムオキシ化合物、成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物又はルイス酸からなる群より選ばれる化合物
成分(C):微粒子担体
【0020】
また、本発明の他の要旨とするところは、次の成分(A)及び(D)と任意に成分(E)を含むことを特徴とする、オレフィン重合用触媒に存する。
成分(A):前記メタロセン化合物
成分(D):イオン交換性層状化合物又は無機珪酸塩からなる群より選ばれる化合物
成分(E):有機アルミニウム化合物
【0021】
また、本発明の他の要旨とするところは、前記オレフィン重合用触媒を使用してα−オレフィンを重合することを特徴とする、α−オレフィンの重合方法に存する。
【0022】
また、本発明の他の要旨とするところは、前記オレフィン重合用触媒を使用してプロピレンと、エチレン又は炭素数4〜20のα−オレフィンとを共重合することを特徴とする、α−オレフィンの重合方法に存する。
【発明の効果】
【0023】
本発明においては、メタロセン化合物として、構造式が先の一般式(I)又は(II)で表される新規なメタロセン化合物を採用し、オレフィン重合用触媒成分として使用され、助触媒などと組み合わされてα−オレフィン重合用触媒を形成する。プロピレンと、エチレン又は炭素数4〜20のα−オレフィンとを共重合する際に、プロピレンと共重合モノマーとがバランスの取れた反応性を呈し、その結果、共重合体中の含量と実質的に異ならないモノマー比のガスを合理的に供給して重合することが実現される触媒機能が顕現される。
【0024】
その理由は、必ずしも明らかではないが、本発明における一般式(I)又は(II)で示されるメタロセン化合物は、シクロペンタジエニル環部分の3,4位に環構造を形成した構造を有すると共に、ヒドロアズレニル環の4−位に、分岐したアルキル基や芳香族環などの立体的に嵩高い置換基を有して、化学的かつ立体的及び電子環境的に特異な構造を有することを基本的な特徴としており、しかしてその理由は次の様に推定することができる。
【0025】
先の特許文献4などに代表的に示されるような、C2対称性(2回回転軸を有する対称性)を有するメタロセン化合物では、2つある配位場の立体的かつ電子的環境は同一である。この場合、メタロセン化合物の有する配位子構造によって決定される配位場の環境で、プロピレンとエチレン又は炭素数4〜20のα−オレフィンなどの共重合させるモノマーの反応性比は決定される。
【0026】
これに対して、本発明における一般式(I)又は(II)に示すようなC2対称性を有さないメタロセン化合物では、その低い対称性から2つある配位場の立体的かつ電子的環境は同一でない。この場合、プロピレンと共重合させるモノマーの反応性比はそれぞれの配位場で異なることとなる。このような配位場の環境では、例えば、一方の配位場ではプロピレンの反応が相対的に大きくなり、極端にはプロピレンのみが選択的に反応できるが、もう一方の配位場では、共重合させるモノマーの反応性が相対的に大きくなり、極端には共重合モノマーのみが選択的に反応できるものと推定される。
【0027】
このことは、メタロセン化合物における置換基を任意に変えることで、それぞれの配位場での反応性を自由に変化させることが可能であることを示している。この結果、触媒性能としてのプロピレンとエチレン又は炭素数4〜20のα−オレフィンなどの共重合させるモノマーの反応性比をバランスのとれた所望の範囲にすることが可能となると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以上においては、本発明における概略及び発明の基本的な構成及び特徴について記述したので、以下においては、本願の発明群全体を詳細に説明するために、発明を実施するための最良の形態を具体的に詳しく記述する。
【0029】
1.メタロセン化合物
(1)メタロセン化合物の構造
本発明のメタロセン化合物は、下記の一般式(I)で表される新規な遷移金属化合物である。
【化5】

【0030】
(式中、R1,R2、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基を表し、R1,R2のいずれか1つは、水素原子である。R3は、炭素数3〜6の飽和または不飽和の二価の炭化水素基を表し、R4は、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基又はケイ素含有炭化水素基を表し、nは、0又はR3の炭素数の2倍以下の整数を表し、nが2以上の場合、R4同士が任意の位置で結合して環構造を形成していてもよい。R7は、炭素数6以上の、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基又はケイ素含有炭化水素基を表し、R8,R9,R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基を表す。Qは、架橋基を表し、X及びYは、それぞれ独立して、Mとσ結合を形成する配位子を表し、Mは、周期表第4〜6族の遷移金属を表す。)
【0031】
(2)メタロセン化合物の特徴
本発明のメタロセン化合物の錯体配位子としての特徴は、化学的構造に基本的な特徴を有し、置換基としての立体的な配置に特異性を有すものであり、シクロペンタジエニル骨格上にさらに環構造を形成し、ヒドロアズレニル骨格上の4位に嵩高い置換基を配置せしめ特異で新規な構造を有している。更に、本発明のメタロセン化合物は、縮環シクロペンタジエニル骨格と、ヒドロアズレニル骨格とが、前者骨格の2位と後者骨格の1位において、結合基Qを介して結合している。従ってこのメタロセン化合物は相対位置の観点において、M,X及びYを含む平面に関して2つの異性体が存在する。即ち、通常、anti異性体と呼ばれる異性体(a)と、syn異性体と呼ばれる異性体(b)である。両異性体を比較するに、高分子量のα−オレフィン重合体の製造を行うためには、ポリマー鎖の成長方向及びモノマーの配位方向を規制する作用の観点から、上記の異性体(a)、つまり、M,X及びYを含む平面を挟んで対向する二個の配位子が当該平面に関して実体と鏡像の関係にない化合物を使用するのが好ましい。
【0032】
(3)メタロセン化合物の置換基
一般式(I)において、R1,R2,R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基である。これらが炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基である場合、炭素数としては1〜6が好ましい。水素原子も好ましい。更に好ましくは炭素数1〜3の基又は水素原子である。
【0033】
炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのアルキル基もしくはシクロアルキル基、ビニル基、プロペニル基、シクロヘキセニル基などのアルケニル基もしくはシクロアルケニル基の他、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、トリメチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、アセナフチル基、フェナントリル基、アントリル基などのアリール基が挙げられる。
【0034】
ケイ素含有炭化水素基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基などのトリアルキルシリル基、ビス(トリメチルシリル)メチル基などのアルキルシリルアルキル基などが好ましく挙げられる。
【0035】
ハロゲン化炭化水素基において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。そして、ハロゲン化炭化水素基としては、ハロゲン原子が例えばフッ素原子の場合、フッ素原子が上記の炭化水素基の任意の位置に置換した化合物が挙げられる。具体例としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、ヨードメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,1,1−テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタクロロエチル基、ペンタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、トリフルオロビニル基、2−,3−,4−置換の各フルオロフェニル基、2−,3−,4−置換の各クロロフェニル基、2−,3−,4−置換の各ブロモフェニル基、2,4−,2,5−,2,6−,3,5−置換の各ジフルオロフェニル基、2,4−,2,5−,2,6−,3,5−置換の各ジクロロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基、2,4,6−トリクロロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、ペンタクロロフェニル基などが挙げられる。
【0036】
これらの中では、R1及びR2としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1〜6のアルキル基、又は、フェニル基などの炭素数6〜12のアリール基が好ましい。但し、R1,R2のいずれか1つは、水素原子である。R5は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、R6は水素原子が好ましい。
【0037】
3は、炭素数3〜6の飽和または不飽和の二価の炭化水素基である。R3が結合するシクロペンタジエニル部分とR3から形成される、縮環シクロペンタジエニル構造の具体例は以下の部分構造(a)から(i)が挙げられるが、中でも(c),(e),(f)が好ましい。また、これらの部分構造(a)から(i)上には、R4が置換していてもよい。
【0038】
【化6】

【0039】
4は、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基であり、その炭素数は通常1〜12、好ましくは1〜6である。nは、0またはR3の炭素数の2倍以下の整数を表す。そして、nが2以上の場合、R4同士が任意の位置で結合して環構造を形成していてもよい。炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基の具体例としては、R1,R2,R5及びR6で挙げた具体例と同様のものが挙げられ、これらの中では、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1〜6のアルキル基、又は、フェニル基などの炭素数6〜12のアリール基、トリメチルシリル基などのトリアルキルシリル基、2−,3−,4−置換の各クロロフェニル基などハロゲン化アリール基が好ましく挙げられる。
【0040】
また、R4同士が任意の位置で結合して環構造を形成した具体例としては、以下の部分構造(j)から(n)が挙げられる。
【0041】
【化7】

【0042】
7は、炭素数6以上の、好ましくは6〜12の炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基又はケイ素含有炭化水素基を表す。上記の炭化水素基の具体例としては、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、メシチル基、エチルフェニル基、ジエチルフェニル基、トリエチルフェニル基、i−プロピルフェニル基、ジi−プロピルフェニル基、トリi−プロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、ジn−ブチルフェニル基、トリn−ブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ジt−ブチルフェニル基、トリt−ブチルフェニル基、ビフェニリル基、p−テルフェニル基、m−テルフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基のアリール基などが挙げられる。
【0043】
上記のハロゲン化炭化水素置換基において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。そして、上記のハロゲン化炭化水素置換基は、ハロゲン原子が例えばフッ素原子の場合、フッ素原子が上記の炭化水素基の任意の位置に置換した化合物である。具体的には、フルオロジメチルフェニル基、(フルオロメチル)メチルフェニル基、エチルフルオロフェニル基、ジエチルフルオロフェニル基、トリエチルフルオロフェニル基、フルオロi−プロピルフェニル基、フルオロジi−プロピルフェニル基、(フルオロi−プロピル)i−プロピルフェニル基、フルオロトリi−プロピルフェニル基、n−ブチルフルオロフェニル基、ジn−ブチルフルオロフェニル基、(フルオロブチル)ブチルフェニル基、トリn−ブチルフルオロフェニル基、t−ブチルフルオロフェニル基、ジt−ブチルフルオロフェニル基、トリt−ブチルフルオロフェニル基、フルオロビフェニリル基、フルオロp−テルフェニル基、フルオロm−テルフェニル基、フルオロナフチル基、フルオロアントリル基、フルオロフェナントリル基などが挙げられる。
【0044】
上記の炭素数6以上のケイ素含有炭化水素置換基の具体例としては、トリメチルシリルフェニル基、トリエチルシリルフェニル基、イソプロピルジメチルシリルフェニル基、t−ブチルジメチルシリルフェニル基、フェニルジメチルシリルフェニル基などのシリル基置換アリール基などが挙げられる。
【0045】
8,R9,R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基である。R8,R9,R10及びR11 は、特に嵩高い基で無ければよく、水素原子、又は炭素数1〜6の炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基もしくはケイ素含有炭化水素基が好ましい。炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基などのアルキル基、ビニル基、プロペニル基、シクロヘキセニル基などのアルケニル基などが挙げられる。
【0046】
ハロゲン化炭化水素基は、ハロゲン原子が上記の炭化水素基の任意の位置に置換した化合物である。ハロゲンはフッ素、塩素又は臭素が好ましく、中でもフッ素又は塩素が好ましい。ハロゲン化炭化水素の具体例としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基などが挙げられる。
【0047】
ケイ素含有炭化水素基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t −ブチルジメチルシリル基などのトリアルキルシリル基、トリメチルシリルメチル基、トリエチルシリルメチル基などのトリアルキルシリルメチル基、ジメチルフェニルシリルメチル基、ジメチルトリルシリルメチル基などのジ( アルキル)( アリール) シリルメチル基などが挙げられる。これらの中でR8,R9,R10及びR11は、水素原子が特に好ましい。
【0048】
一般式(I)中において、Qは、二つのシクロペンタジエニル環を結合する架橋基である。Q は架橋基であって、その具体例としては、二価の炭化水素基、または置換基として炭化水素基を有していてもよい、シリレン基、オリゴシリレン基、もしくはゲルミレン基であって、好ましくは、炭素数1〜20 の二価の炭化水素基、または炭素数1〜20の炭化水素基を有していてもよいシリレン基、オリゴシリレン基、もしくはゲルミレン基の何れかである。上述のシリレン基、オリゴシリレン基またはゲルミレン基上に2個の炭化水素基が存在する場合は、それらが互いに結合して環構造を形成していてもよい。
【0049】
架橋基Qの具体例としては、メチレン基、ジメチルメチレン基、1 ,2−エチレン基、1 ,3− トリメチレン基、1 ,4−テトラメチレン基、1 ,2−シクロへキシレン基、1 ,4−シクロへキシレン基等のアルキレン基; ジフェニルメチレン等のアリールアルキレン基; シリレン基; ジメチルシリレン基、ジエチルシリレン基、ジ( n−プロピル)シリレン基、ジ( i−プロピル)シリレン等のアルキルシリレン基;ジフェニルシリレン基等のアリールシリレン基; テトラメチルジシリレン等のアルキルオリゴシリレン基; ゲルミレン基; 上記の2 価の炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基のケイ素をゲルマニウムに置換したアルキルゲルミレン基;アリールゲルミレン基などを挙げることが出来る。これらの中では、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基、または、炭素数1〜20の炭化水素基を有するゲルミレン基が好ましく、ジメチルメチレン基、1,2− エチレン基、ジメチルシリレン基、ジエチルシリレン基、ジメチルゲルミレン基、ジエチルゲルミレン基が特に好ましい。
【0050】
X,Yは、Mとσ結合を形成する配位子であり、特に限定されないが、好ましいX及びYは、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、又は炭素数1〜20の置換アミノ基若しくは窒素含有炭化水素基などが挙げられる。これらの中でも塩素原子、メチル基、i−ブチル基、フェニル基、ベンジル基、ジメチルアミノ基又はジエチルアミノ基が特に好ましい。
【0051】
Mは、周期表第4〜6族の遷移金属を示し、好ましくは、チタン、ジルコニウム、ハフニウムの4族の遷移金属、更に好ましくはジルコニウム又はハフニウムである。
【0052】
(4)メタロセン化合物の合成
本発明のメタロセン化合物は、置換基ないし結合の様式に関して任意の方法によって合成することができる。代表的な合成経路は次の反応式に示す通りである。例えば、R3が炭素数4で、シクロペンタジエニル部分との縮合環としてインデニル基を有する場合は以下のように合成できる。
【0053】
【化8】

【0054】
4基を有するブロモインデン(1)に対して、マグネシウムを用いてインデニル基の2位を選択的にグリニャール化し、ジクロロジメチルシランとの反応を行うと、クロロシリル化したインデニル誘導体(2)が得られる。一方、R5基を有するアズレン(3)に対して、R7基を有するリチウム試剤を反応させると、アズレニル部分の4位にR7基が付加した(4)が得られる。これをそのまま(2)と反応させると、架橋配位子(5)が得られ、引き続き公知の方法で、脱プロトン化した後、四塩化ジルコニウムなどとの反応で、目的とするメタロセン化合物(6)を合成することができる。なお、かかる合成経路に基づけば、本発明の他のメタロセン化合物も容易に合成できることは明らかである。
【0055】
(5)メタロセン化合物の具体例
本発明のメタロセン化合物の好ましい具体例を以下に示す。ハフニウムジクロリドを代表に選び、以下に示す構造式の化合物において、その名称を例示する。この構造式の化合物は、ジクロロ{ジメチルシリレン(2−インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウムと称する。また、ジメチルシリレン(2−インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)ハフニウムジクロライドとも称する。
【0056】
【化9】

【0057】
ところで、本発明は、新規なメタロセン化合物を主要な構成としているので、基本的には多数の化合物の例示が必要であるが、明細書を簡潔簡明な記載とするために、その例示は煩雑な記載を避けて主要な代表例にとどめている。したがって、以下に列挙する化合物以外の化合物も、本願の特許請求の範囲に含まれる限り、全て包含される。例えば、以下の具体例において、ハフニウムの代わりにチタニウム或いはジルコニウム、シリレンの代わりにゲルミレン、4−フェニルの代わりに4−(1−ナフチル)など例示されているに等しいと理解されるべきものである。また、ジクロライドの代わりに他のX、Yを有する他の化合物も例示されているに等しい。即ち、一般式(I)のX及びY部分に相当する2つの塩素原子の一方又は両方が、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、フェニル基、ベンジル基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などに代わった化合物も例示することができる。なお、以下の例示においては、類似性の高い化合物を段落毎(1)〜(8)にまとめている。
【0058】
(1)ジクロロ{メチレン(2−インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(1)ジクロロ{ジメチルメチレン(2−インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(1)ジクロロ{エチレン(2−インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(1)ジクロロ{ジメチルシリレン(2−インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(1)ジクロロ{ジエチルシリレン(2−インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(1)ジクロロ{ジフェニルシリレン(2−インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(1)ジクロロ{ジメチルゲルミレン(2−インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
【0059】
(2)ジクロロ{ジメチルシリレン(2−インデニル)(2−エチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(2)ジクロロ{ジメチルシリレン(2−インデニル)(4−フェニル−2−n−プロピル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(2)ジクロロ{ジメチルシリレン(2−インデニル)(4−フェニル−2−i−プロピル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
【0060】
(3)ジクロロ{ジメチルシリレン(2−インデニル)(2−メチル−4−(1−ナフチル)−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(3)ジクロロ{ジメチルシリレン(2−インデニル)(2−メチル−4−(2−ナフチル)−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(3)ジクロロ{ジメチルシリレン(2−インデニル)(4−(4−フルオロフェニル)−2−メチル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(3)ジクロロ{ジメチルシリレン(2−インデニル)(4−(4−クロロフェニル)−2−メチル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(3)ジクロロ{ジメチルシリレン(2−インデニル)(2−メチル−4−(4−メチルフェニル)−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(3)ジクロロ{ジメチルシリレン(2−インデニル)(4−(4−t−ブチルフェニル)−2−メチル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(3)ジクロロ{ジメチルシリレン(2−インデニル)(2−メチル−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(3)ジクロロ{ジメチルシリレン(2−インデニル)(2−メチル−4−(4−トリメチルシリル−3−メチルフェニル)−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(3)ジクロロ{ジメチルシリレン(2−インデニル)(2−メチル−4−(4−トリメチルシリル−3−クロロフェニル)−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(3)ジクロロ{ジメチルシリレン(2−インデニル)(4−(4−ビフェニリル)−2−メチル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(3)ジクロロ{ジメチルシリレン(2−インデニル)(4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−2−メチル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(3)ジクロロ{ジメチルシリレン(2−インデニル)(4−(4−クロロ−1−ナフチル)−2−メチル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(3)ジクロロ{ジメチルシリレン(2−インデニル)(4−(4−クロロ−2−ナフチル)−2−メチル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
【0061】
(4)ジクロロ{ジメチルシリレン(1−メチル−2−インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(4)ジクロロ{ジメチルシリレン(4−メチル−2−インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(4)ジクロロ{ジメチルシリレン(5−メチル−2−インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(4)ジクロロ{ジメチルシリレン(4,7−ジメチル−2−インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(4)ジクロロ{ジメチルシリレン(5,6−ジメチル−2−インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(4)ジクロロ{ジメチルシリレン(2−ベンゾ[e]インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(4)ジクロロ{ジメチルシリレン(6,7−ジヒドロ−5H−2−インダセニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
【0062】
(5)ジクロロ{エチレン(4,5,6,7−テトラヒドロ−2−インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(5)ジクロロ{ジメチルシリレン(4,5,6,7−テトラヒドロ−2−インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(5)ジクロロ{ジメチルゲルミレン(4,5,6,7−テトラヒドロ−2−インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
【0063】
(6)ジクロロ{エチレン(4H−2−ペンタレニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(6)ジクロロ{ジメチルシリレン(4H−2−ペンタレニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(6)ジクロロ{ジメチルゲルミレン(4H−2−ペンタレニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(6)ジクロロ{エチレン(5,6−ジヒドロ−4H−2−ペンタレニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(6)ジクロロ{ジメチルシリレン(5,6−ジヒドロ−4H−2−ペンタレニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(6)ジクロロ{ジメチルゲルミレン(5,6−ジヒドロ−4H−2−ペンタレニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
【0064】
(7)ジクロロ{エチレン(4−メチル−4H−2−アズレニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(7)ジクロロ{ジメチルシリレン(4−メチル−4H−2−アズレニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(7)ジクロロ{ジメチルゲルミレン(4−メチル−4H−2−アズレニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(7)ジクロロ{ジメチルシリレン(4−iso−プロピル−4H−2−アズレニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(7)ジクロロ{ジメチルシリレン(4−フェニル−4H−2−アズレニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
【0065】
(8)ジクロロ{エチレン(4−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−4H−2−アズレニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(8)ジクロロ{ジメチルシリレン(4−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−4H−2−アズレニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
(8)ジクロロ{ジメチルゲルミレン(4−メチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−4H−2−アズレニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム
【0066】
ところで、一般に、オレフィン重合用触媒の技術分野では、触媒成分である遷移金属化合物の金属種によって、触媒作用が大きく影響を受けることが知られており、ある種の遷移金属触媒の金属種のみが異なる他の触媒が、同等の触媒作用を有することは理論的に保証されていない。しかし、メタロセン触媒成分として周期表第4族のジルコニウム、チタン及びハフニウムを用いた場合にはほぼ同等の触媒作用が示されることが実験によって確認されており、当業者にもよく知られた事項である(例えば、特開60−130604号公報、特開平4−100808号公報を参照)。したがって、本明細書における上記のメタロセン化合物の例示は、合理的なものであり、単なる羅列ではない。
【0067】
2.オレフィン重合用触媒
本発明のメタロセン化合物はオレフィン重合用触媒成分を形成し、該成分はオレフィン重合用触媒に用いることができ、例えば、該オレフィン重合用触媒成分を成分(A)として含む、次に説明するオレフィン重合用触媒として用いることが好ましい。
【0068】
(1)オレフィン重合用触媒(i)
オレフィン重合用触媒(i)は、成分(A)及び成分(B)からなる触媒である。ここに、「からなる」とはこれらの成分以外に他の成分を含む場合を排除する意図ではなく、例えば、さらに担体(C)や有機アルミニウム化合物を包含する系であってもよい。
【0069】
成分(B)の具体例としては、下記(B−1)〜(B−3)が挙げられる。
(B−1)有機アルミニウムオキシ化合物
(B−2)成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物又はルイス酸
(B−3)固体酸
【0070】
(B−1)有機アルミニウムオキシ化合物がメタロセン化合物を活性化できることは周知であり、そのような化合物としては、具体的には次の各一般式(III)〜(V)で表される化合物が挙げられる。
【0071】
【化10】

【0072】
上記の各一般式中において、Raは、水素原子又は炭化水素基、好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6の炭化水素基を示す。また、複数のRaは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、pは0〜40、好ましくは2〜30の整数を示す。一般式(III)及び(IV)で表される化合物は、アルミノキサンとも称される化合物であって、これらの中では、メチルアルミノキサン又はメチルイソブチルアルミノキサンが好ましい。上記のアルミノキサンは、各群内および各群間で複数種併用することも可能である。そして、上記のアルミノキサンは、公知の様々な条件下に調製することができる。
【0073】
上記一般式(V)で表される化合物は、一種類のトリアルキルアルミニウム又は二種類以上のトリアルキルアルミニウムと、一般式RbB(OH)2で表されるアルキルボロン酸との10:1〜1:1(モル比)の反応により得ることができる。一般式(V)中、Rbは、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の炭化水素基を示す。
【0074】
(B−2)の化合物は、成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物又はルイス酸であり、このようなイオン性化合物としては、カルボニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどの陽イオンと、トリフェニルホウ素、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ホウ素、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素などの有機ホウ素化合物との錯化物が挙げられる。また、上記のようなルイス酸としては、種々の有機ホウ素化合物、例えばトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素などが例示される。或いは、塩化アルミニウム、塩化マグネシウムなどの金属ハロゲン化合物が例示される。
【0075】
なお、上記のルイス酸のある種のものは、成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物として把握することもできる。上述した非配位性のホウ素化合物を用いたメタロセン触媒は、特開平3−234709号公報、特開平5−247128号公報などに例示されている。
【0076】
(B−3)の固体酸としては、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシアなどが挙げられる。
【0077】
本発明のオレフィン重合用触媒(i)において、任意に成分(C)として微粒子担体(C)を使用することができる。かかる微粒子担体は、無機又は有機の化合物から成り、通常5μm〜5mm、好ましくは10μm〜2mmの粒径を有する微粒子状のものである。
【0078】
無機担体としては、例えば、SiO2、Al23、MgO、ZrO、TiO2、B23、ZnOなどの酸化物、SiO2−MgO、SiO2−Al23、SiO2−TiO2、SiO2−Cr23、SiO2−Al23−MgOなどの複合酸化物などが挙げられる。有機担体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンなどの炭素数2〜14のα−オレフィンの(共)重合体、スチレン、ジビニルベンゼンなどの芳香族不飽和炭化水素の(共)重合体などから成る多孔質ポリマーの微粒子担体が挙げられる。これらの微粒子の比表面積は、通常20〜1,000m2/g、好ましくは50〜700m2/gであり、細孔容積は、通常0.1cm3/g以上、好ましくは0.3cm3/g以上、さらに好ましくは0.8cm3/g以上である。
【0079】
本発明のオレフィン重合用触媒(i)は、微粒子担体以外の任意成分として、例えば、水、メタノール、エタノール、ブタノールなどの活性水素含有化合物、エーテル、エステル、アミンなどの電子供与性化合物、ホウ酸フェニル、ジメチルメトキシアルミニウム、亜リン酸フェニル、或いはテトラエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランなどのアルコキシ含有化合物を含むことができる。また、上記以外の任意成分としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリ低級アルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリドなどのハロゲン含有アルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムヒドリドなどのアルキルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジメチルアルミニウムブトキシドなどのアルコキシ含有アルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムフェノキシドなどのアリールオキシ含有アルキルアルミニウムなどが挙げられる。
【0080】
本発明のオレフィン重合用触媒(i)において、有機アルミニウムオキシ化合物、成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物又はルイス酸は、成分(B)として、それぞれ単独使用される他、これらの3成分を適宜組み合わせて使用することができる。また、上記の低級アルキルアルミニウム、ハロゲン含有アルキルアルミニウム、アルキルアルミニウムヒドリド、アルコキシ含有アルキルアルミニウム、アリールオキシ含有アルキルアルミニウムの1種又は2種以上は、任意成分ではあるが、有機アルミニウムオキシ化合物、イオン性化合物又はルイス酸と併用してオレフィン重合用触媒(i)中に含有させるのが好ましい。
【0081】
本発明のオレフィン重合用触媒(i)は、重合槽の内外において、重合させるべきモノマーの存在下又は不存在下、上記の成分(A)及び(B)を接触させることにより調製することができる。すなわち、成分(A)及び(B)と必要に応じて成分(C)を重合槽に別々に導入してもよいし、成分(A)及び(B)を予め接触させた後に重合槽に導入してもよい。また、成分(A)及び(B)の混合物を成分(C)に含浸させた後に重合槽へ導入してもよい。上記の各成分の接触は、窒素などの不活性ガス中において、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレンなどの不活性炭化水素溶媒中で行ってもよい。接触温度は、−20℃から溶媒の沸点の範囲の温度、特に、室温から溶媒の沸点の範囲の温度が好ましい。この様にして調製された触媒は、調製後に洗浄せずに使用してもよく、また、洗浄した後に使用してもよい。さらには、調製後に必要に応じて新たに成分を組み合わせて使用してもよい。
【0082】
(2)オレフィン重合用触媒(ii)
オレフィン重合用触媒(ii)は、成分(A)及び成分(D)と、必要により使用する成分(E)からなる触媒である。「からなる」の趣旨はオレフィン重合用触媒(i)で述べたのと同様の意図である。
【0083】
成分(D)は、イオン交換性層状化合物又は無機珪酸塩からなる群より選ばれるものであり、成分(E)は有機アルミニウム化合物である。成分(D)のうち、イオン交換性層状化合物は粘土鉱物の大部分を占めるものであり、好ましくはイオン交換性層状珪酸塩である。
【0084】
イオン交換性層状珪酸塩(以下、単に「珪酸塩」と略記する場合がある。)は、イオン結合などによって構成される面が互いに結合力で平行に積み重なった結晶構造を有し、且つ、含有されるイオンが交換可能である珪酸塩化合物をいう。大部分の珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出されるため、イオン交換性層状珪酸塩以外の夾雑物(石英、クリストバライトなど)が含まれることが多いが、それらを含んでいてもよい。珪酸塩は各種公知のものが使用できる。具体的には、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)に記載されている次のような層状珪酸塩が代表例として挙げられる。
【0085】
2:1型鉱物類としては、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイトなどのスメクタイト族; バーミキュライトなどのバーミキュライト族;雲母、イライト、セリサイト、海緑石などの雲母族;パイロフィライト、タルクなどのパイロフィライト−タルク族;マグネシウム緑泥石などの緑泥石族などが挙げられる。一方、2:1リボン型鉱物類としては、セピオライト、パリゴルスカイトなどが挙げられる。
【0086】
本発明で原料として使用する珪酸塩は、上記の混合層を形成した層状珪酸塩であってもよい。本発明においては、主成分の珪酸塩が2:1型構造を有する珪酸塩であることが好ましく、スメクタイト族であることがさらに好ましく、モンモリロナイトが特に好ましい。本発明で使用する珪酸塩は、天然品又は工業原料として入手したものは、特に処理を行うことなくそのまま用いることができるが、化学処理を施すことが好ましい。具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理などが挙げられる。これらの処理を互いに組み合わせて用いてもよい。本発明において、これらの処理条件には特に制限はなく、公知の条件が使用できる。また、これらイオン交換性層状珪酸塩には、通常吸着水及び層間水が含まれるため、不活性ガス流通下で加熱脱水処理するなどして、水分を除去してから使用するのが好ましい。
【0087】
本発明のオレフィン重合用触媒(ii)において、任意成分(E)としての有機アルミニウム化合物の一例は、次の一般式で表される。
AlRa3-a
一般式中、Rは、炭素数1〜20の炭化水素基、Xは水素、ハロゲン、アルコキシ基又はシロキシ基を示し、aは0より大きく3以下の数を示す。一般式で表される有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシドなどのハロゲン又はアルコキシ含有アルキルアルミニウムが挙げられる。これらの中では、トリアルキルアルミニウムが好ましい。
【0088】
本発明のオレフィン重合用触媒(ii)においては、成分(E)として、上記の一般式で表される有機アルミニウム化合物以外にメチルアルミノキサンなどのアルミノキサン類なども使用できる。また、上記の有機アルミニウム化合物とアルミノキサン類とを併用することもできる。
【0089】
本発明のオレフィン重合用触媒(ii)は、オレフィン重合用触媒(i)の場合と同様の方法により調製することができる。この際、成分(A)及び成分(D)と任意成分(E)の接触方法は、特に限定されないが、次の様な方法を例示することができる。
(1)成分(A)と成分(D)とを接触させる方法
(2)成分(A)と成分(D)とを接触させた後に任意成分(E)を添加する方法
(3)成分(A)と任意成分(E)とを接触させた後に成分(D)を添加する方法
(4)成分(D)と任意成分(E)とを接触させた後に成分(A)を添加する方法
(5)各成分(A)、(D)、(E)を同時に接触させる。
【0090】
上記の接触操作は、触媒調製時だけでなく、オレフィンによる予備重合時又はオレフィンの重合時に行ってもよい。上記の各成分の接触の際もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの重合体、シリカ、アルミナなどの無機酸化物の固体を共存させるか、又は、接触させてもよい。また、上記の各成分の接触は、窒素などの不活性ガス中において、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレンなどの不活性炭化水素溶媒中で行ってもよい。接触は、−20℃から溶媒の沸点の間の温度で行い、特に室温から溶媒の沸点の間での温度で行うのが好ましい。
【0091】
(3)触媒成分の使用量その他
成分(A)と、成分(B)または成分(D)の使用量は、それぞれの組み合わせの中で最適な量比で用いられる。成分(B)が、有機アルミニウムオキシ化合物の場合は、Al/遷移金属のモル比は通常10以上100,000以下、さらに100以上20,000以下、特に100以上10,000以下の範囲が適する。一方、成分(B)としてイオン性化合物或いはルイス酸を用いた場合は、対遷移金属のモル比は0.1〜1,000、好ましくは0.5〜100、さらに好ましくは1〜50の範囲である。
【0092】
成分(B)として固体酸を用いる場合、或いは成分(D)としてイオン交換性層状化合物などを用いる場合は、成分(B)又は成分(D)1gにつき、メタロセン化合物0.001〜10mmol、好ましくは0.001〜1mmolの範囲である。これらの使用比率は、通常の割合例を示すものであって、触媒が発明の目的に沿うものとなっておれば、上に述べた使用比率の範囲によって、本発明が限定されることにはならないことは当然である。
【0093】
メタロセン化合物と助触媒からなるオレフィン重合用触媒を、本重合の触媒として使用する前に、必要に応じて、担体に担持させた後、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレンなどのオレフィンを予備的に少量重合する予備重合処理を施してもよい。予備重合方法は公知の方法が使用できる。
【0094】
3.オレフィン重合
(1)重合に使用するオレフィン
本発明のオレフィン重合用触媒により重合できるオレフィンとしては、基本的にα−オレフィンであり、プロピレン、1−ブテン、3−メチルブテン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1などが使用され、ビニルシクロアルカン、ブタジエンなどの共役ジエン、1,5−ヘキサジエンなどの非共役ジエン、スチレン或いはこれらの誘導体等も挙げられる。特に、プロピレンが好適に使用される。また、重合は単独重合の他にランダム共重合やブロック共重合にも好適に適用できる。共重合の際のコモノマーとしては、エチレン又は炭素数4〜20のα−オレフィンを挙げることができる。具体的には、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが挙げられる。
【0095】
(2)重合反応
重合反応は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、シクロヘキサンなどの不活性炭化水素や液化α−オレフィンなどの溶媒の存在下に、或いは実質的に溶媒や単量体の液相が存在しない状態で気相重合により行う方法が好ましい。気相重合は、例えば流動床、撹拌床、撹拌混合機を備えた撹拌流動床などの反応装置を用いて行うことができる。重合温度、重合圧力などの条件は特に限定されないが、重合温度は、一般に−50〜350℃、好ましくは0〜300℃であり、また、重合圧力は通常、常圧〜約2,000kgf/cm2、好ましくは常圧〜1,500kgf/cm2、さらに好ましくは常圧〜1,300kgf/cm2の範囲である。また、重合系内に分子量調節剤として水素を存在させてもよい。
【0096】
4.重合体の特性値の解析
本発明の触媒を用いて得られるプロピレン系ブロック共重合体中の共重合体成分(ゴム状成分であり、以下、「CP」と称す。)の含有量、CP中のα−オレフィン重合割合は、以下の方法により求める。なお、以下の例は、CP中のα−オレフィンとしてエチレンを用いた場合であるが、エチレン以外のα−オレフィンでも、以下の例に準じた方法を用いて求めるものとする。
【0097】
(1)使用する分析装置
(i)クロス分別装置
ダイヤインスツルメンツ社製CFC T−100
(ii)フーリエ変換型赤外線吸収スペクトル分析
FT−IR・パーキンエルマー社製 1760X
CFCの検出器として取り付けられていた波長固定型の赤外分光光度計を取り外して代わりにFT−IRを接続し、このFT−IRを検出器として使用する。CFCから溶出した溶液の出口からFT−IRまでの間のトランスファーラインは1mの長さとし、測定の間を通じて140℃に温度保持する。FT−IRに取り付けたフローセルは光路長1mm・光路幅5mmφのものを用い、測定の間を通じて140℃に温度保持する。
(iii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)
CFCの後段に、GPCカラム(昭和電工社製AD806MS)を3本直列に接続して使用する。CFC後段部分のGPCカラムは昭和電工社製AD806MSを3本直列に接続して使用する。
【0098】
(2)CFCの測定条件
(i)溶媒:オルトジクロルベンゼン(ODCB)
(ii)サンプル濃度:4mg/mL
(iii)注入量:0.4mL
(iv)結晶化:140℃から40℃まで約40分かけて降温する。
(v)分別方法:昇温溶出分別時の分別温度は40,100,140℃とし、全部で3つのフラクションに分別する。なお、40℃以下で溶出する成分(フラクション1)、40〜100℃で溶出する成分(フラクション2)、100〜140℃で溶出する成分(フラクション3)の溶出割合(単位:重量%)を各々W40、W100、W140と定義する。W40+W100+W140=100である。また、分別した各フラクションは、そのままFT−IR分析装置へ自動輸送される。
(vi)溶出時溶媒流速:1mL/分
【0099】
(3)FT−IRの測定条件
CFC後段のGPCから試料溶液の溶出が開始した後、以下の条件でFT−IR測定を行い、上述した各フラクション1〜3について、GPC−IRデータを採取する。
(i)検出器:MCT
(ii)分解能:8cm-1
(iii)測定間隔:0.2分(12秒)
(iv)一測定当たりの積算回数:15回
【0100】
(4)測定結果の後処理と解析
各温度で溶出した成分の溶出量と分子量分布は、FT−IRによって得られる2945cm-1の吸光度をクロマトグラムとして使用して求める。溶出量は各溶出成分の溶出量の合計が100%となるように規格化する。保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
【0101】
使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
【0102】
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.4mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算は森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いる。その際使用する粘度式([η]=K×Mα)には以下の数値を用いる。
(i)標準ポリスチレンを使用する較正曲線作成時
K=0.000138、α=0.70
(ii)プロピレン系ブロック共重合体のサンプル測定時
K=0.000103、α=0.78
各溶出成分のエチレン含有量分布(分子量軸に沿ったエチレン含有量の分布)は、GPC−IRによって得られる2956cm-1の吸光度と2927cm-1の吸光度との比を用い、ポリエチレンやポリプロピレン及び13C−NMR測定などによりエチレン含有量が既知となっているエチレン−プロピレン−ラバー(EPR)及びそれらの混合物を使用して予め作成しておいた検量線により、エチレン重合割合(モル%)に換算して求める。
【0103】
(5)CP含有量
本発明におけるプロピレン系ブロック共重合体のCP含有量は、下記式(I)で定義され、以下のような手順で求められる。
【0104】
CP含有量(重量%)=W40×A40/B40+W100×A100/B100・・・(I)
式(I)において、W40,W100は、上述した各フラクションでの溶出割合(単位:重量%)であり、A40,A100は、W40,W100に対応する各フラククションにおける実測定の平均エチレン含有量(単位:重量%)であり、B40,B100は、各フラクションに含まれるCPのエチレン含有量(単位:重量%)である。A40,A100,B40,B100の求め方は後述する。
【0105】
式(I)の意味は、以下の通りである。すなわち、式(I)右辺の第一項は、フラクション1(40℃に可溶な部分)に含まれるCPの量を算出する項である。フラクション1がCPのみを含み、PPを含まない場合には、W40がそのまま全体の中に占めるフラクション1由来のCP含有量に寄与するが、フラクション1にはCP由来の成分の他に少量のPP由来の成分(極端に分子量の低い成分及びアタクチックポリプロピレン)も含まれるため、その部分を補正する必要がある。そこでW40にA40/B40を乗ずることにより、フラクション1のうち、CP成分由来の量を算出する。例えば、フラクション1の平均エチレン含有量(A40)が30重量%であり、フラクション1に含まれるCPのエチレン含有量(B40)が40重量%である場合、フラクション1の30/40=3/4(即ち75重量%)はCP由来、1/4はPP由来ということになる。このように右辺第一項でA40/B40を乗ずる操作は、フラクション1の重量%(W40)からCPの寄与を算出することを意味する。
右辺第二項も同様であり、各々のフラクションについて、CPの寄与を算出して加え合わせたものがCP含有量となる。
【0106】
フラクション1〜3の平均エチレン含有量A40,A100,A140は、2945cm-1の吸光度のクロマトグラムにおける各データポイント毎の重量割合と各データポイント毎のエチレン含有量(2956cm-1の吸光度と2927cm-1の吸光度との比から得られる)の積の総和によって得られる。
【0107】
フラクション1の微分分子量分布曲線におけるピーク位置に相当するエチレン含有量をB40とする(単位は重量%である)。フラクション2については、ゴム部分が40℃ですべて溶出してしまうと考えられ、同様の定義で規定することができないので、本発明ではB100=100と定義する。B40,B100は各フラクションに含まれるCPのエチレン含有量であるが、この値を分析的に求めることは実質的には不可能である。その理由はフラクションに混在するPPとCPを完全に分離・分取する手段がないからである。種々のモデル試料を使用して検討を行った結果、B40はフラクション1の微分分子量分布曲線のピーク位置に相当するエチレン含有量を使用すると、材料物性の改良効果をうまく説明することができることがわかった。また、B100はエチレン連鎖由来の結晶性を持つこと、及びこれらのフラクションに含まれるCPの量がフラクション1に含まれるCPの量に比べて相対的に少ないことの2点の理由により、100と近似する方が実態にも近く、計算上も殆ど誤差を生じない。そこで、B100=100として解析を行うこととしている。従って、下記式(II)に従い、CP含有量を求めることができる。
【0108】
CP含有量(重量%)=W40×A40/B40+W100×A100/100・・・(II)
つまり、式(II)右辺の第一項であるW40×A40/B40は結晶性を持たないCP含有量(重量%)を示し、第二項であるW100×A100/100は結晶性を持つCP含有量(重量%)を示す。
【0109】
共重合体成分中のエチレン含量は、式(II)で求めた共重合体成分の含有量を用いて、下記の式(III)で求められる。
【0110】
共重合体成分中のエチレン含量(重量%)=(W40×A40+W100×A100+W140×A140)/[共重合体成分含有量(重量%)]・・・(III)
なお、上記3種類の分別温度を設定した意義は次の通りである。本発明のCFC分析においては、40℃とは結晶性を持たないポリマー(例えば、CPの大部分、若しくはプロピレン重合体成分(PP)の中でも極端に分子量の低い成分及びアタクチックな成分)のみを分別するのに必要十分な温度条件である意義を有する。100℃とは、40℃では不溶であるが100℃では可溶となる成分(例えばCP中、エチレン及び/又はプロピレンの連鎖に起因して結晶性を有する成分、及び結晶性の低いPP)のみを溶出させるのに必要十分な温度である。140℃とは、100℃では不溶であるが140℃では可溶となる成分(例えば、PP中特に結晶性の高い成分、及びCP中の極端に分子量が高くかつ極めて高いエチレン結晶性を有する成分)のみを溶出させ、かつ分析に使用するプロピレン系ブロック共重合体の全量を回収するのに必要十分な温度である。なお、W140にはCP成分は全く含まれないか、存在しても極めて少量であり実質的には無視できることからCP含有量やエチレン含量の計算からは排除する。
【0111】
(6)エチレン重合割合
CP中のエチレン含有量は、次式によって求める。
【0112】
CP中のエチレン含有量(重量%)=(W40×A40+W100×A100)/[CP]但し、[CP]は先に求めたCP含有量(重量%)である。
【0113】
ここで得られたCP中のエチレン含有量(重量%)の値から、エチレン及びプロピレンの分子量を使用して、最終的にモル%に換算する。
【実施例】
【0114】
以下、本発明をより具体的にかつ明確に説明するために、本発明を実施例及び比較例の対照において説明し、本発明の構成要件の合理性と有意性を実証するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の諸例において、触媒合成工程及び重合工程は、全て精製窒素雰囲気下で行い、溶媒は、MS−4A(モレキュラーシーブ)で脱水した後に精製窒素でバブリングして脱気して使用した。本発明における測定及び評価方法は、以下のとおりである。
(1)MFRの測定:
ポリマー6gに熱安定剤(BHT)のアセトン溶液(0.6重量%)6gを添加した。次いで、上記のポリマーを乾燥した後、メルトインデクサー(230℃)に充填し、2.16Kg荷重の条件下に5分間放置した。その後、ポリマーの押し出し量を測定し、10分間当たりの量に換算し、MFRの値とした(単位はg/10分)。
(2)クロス分別(CFCと略す)
先に詳述した方法による。
【0115】
[実施例1]
(1)メタロセン化合物
ジクロロ{ジメチルシリレン(2−インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウムの合成
2−ブロモインデン(4.0g,20.6mmol)のテトラヒドロフラン溶液(4mL)を、テトラヒドロフラン(4mL)中のマグネシウム(0.75g,30.9mmol)とジクロロジメチルシラン(5.0mL,41.2mmol)の混合物に反応温度が50℃を保つように滴下した。室温で3時間攪拌した後、溶媒を減圧下で除去し、得られた固体成分をヘキサン(30mLx2)で抽出した。溶媒を減圧下で除去すると、クロロ(2−インデニル)ジメチルシラン(3.5g,81%)が得られた。
【0116】
2−メチルアズレン(3.46g、16.6mmol)をヘキサン(30mL)に溶解し、フェニルリチウムのシクロヘキサン/ジエチルエーテル溶液(12.6mL、13.3mmol)を0℃で滴下した。滴下後室温まで昇温して1時間撹拌した。縣濁反応溶液を静沈後に上澄を除いた後、テトラヒドロフラン(10mL)とN−メチルイミダゾール(0.025mL)を加え、上記で得られたクロロ(2−インデニル)ジメチルシラン(3.46g,16.6mmol)のヘキサン溶液(10mL)を0℃で滴下した。滴下後室温で2時間撹拌した後、反応液に蒸留水を加え、ジエチルエーテルで抽出した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン)にて精製すると、(2−インデニル)ジメチル(2−メチル−4−フェニル−1,4−ジヒドロアズレニル)シラン(3.91g)が得られた。
【0117】
得られた配位子(3.91g)をジエチルエーテル(25mL)に溶解し、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(12.5mL、19.8mmol)を0℃で滴下した。室温で3時間撹拌した後、トルエン(125mL)を加え、−10℃に冷却し、四塩化ハフニウム(2.85g、8.9mmol)を添加した。ゆっくり昇温し室温で3時間撹拌した。得られた反応溶液を一度濃縮し、ジイソプロピルエーテル(30mL、20mL、60mL)で洗浄した。引き続きジイソプロピルエーテル(20mL)とトルエン(6mL)の混合溶媒、トルエン(30mL,20mL)で洗浄した。得られた固体成分から、ジクロロメタン(10mL)とトルエン(10mL)の混合溶媒で抽出すると、目的とするメタロセン化合物として、下記構造式のジクロロ{ジメチルシリレン(2−インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム(2.89g、51%)が得られた。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ0.91(s,3H,Si(CH32),0.96(s,3H,Si(CH32),2.22(s,3H,2−CH3),5.00(brd,1H,Azu−4−H),5.58(s,1H,Azu−3−H),5.85−6.30(m,5H),6.83(d,J=12Hz,1H,Azu−8−H),7.2−7.7(m,9H,arom)
【0118】
【化11】

【0119】
(2)触媒調製
撹拌翼と還流装置を取り付けた5Lセパラブルフラスコに、純水(1,698g)を投入し、98%硫酸(501g)を滴下した。そこへ、さらに市販の造粒モンモリロナイト(水澤化学社製、ベンクレイSL、平均粒径:19.5μm)を300g添加後撹拌した。その後90℃で2時間反応させた。このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて、洗浄した。回収したケーキに硫酸リチウム1水和物(324g)の水(900mL)水溶液を加え90℃で2時間反応させた。このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて、pH>4まで洗浄した。回収したケーキを120℃で終夜乾燥した。その結果、275gの化学処理体を得た。
内容積1Lのフラスコに上記で得た化学処理モンモリロナイト10.0gを秤量し、ヘプタン(65mL)、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(35.4mL、25mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。その後、ヘプタンで残液率1/100まで洗浄し、最後にスラリー量を100mLに調製した。
【0120】
(3)プロピレンによる予備重合
上記で調製し、トリイソブチルアルミニウム処理したモンモリロナイトのヘプタンスラリーにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.85mL)を加えて10分間、室温で撹拌した。また、(1)で合成したジクロロ{ジメチルシリレン(2−インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム(300μmol)のトルエン(60mL)溶液を、上記の1Lフラスコに加えて室温で60分間撹拌した。
【0121】
次に、上記モンモリロナイトのヘプタンスラリーに、さらにヘプタン(340mL)を追加して内容積1Lの撹拌式オートクレーブに導入し、40℃でプロピレンを238.1mmol/hr(10g/hr)の一定速度で120分間にて供給した。プロピレン供給終了後、50℃に昇温して2時間そのまま維持し、その後残存ガスをパージして予備重合触媒スラリーをオートクレーブより回収した。回収した予備重合触媒スラリーを静置し、上澄み液を抜き出した。残った固体にトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(8.5mL、6.0mmol)を室温にて加え、室温で10分間撹拌した後、減圧乾燥して固体触媒を25.5g回収した。
予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は1.49であった。
【0122】
(4)ブロック重合
内容積3Lの撹拌式オ−トクレ−ブ内をプロピレンで充分置換した後に、トリイソブチルアルミニウム・n−ヘプタン溶液(2.76ml、2.02mmol)を加え、水素(90mL)、続いて液体プロピレン(750g)を導入し、65℃に昇温しその温度を維持した。上記(3)で調製した予備重合触媒をノルマルヘプタンにスラリー化し、触媒として(予備重合ポリマーの重量は除く)50mgを圧入し重合を開始した。槽内温度を65℃に維持し、触媒投入1時間経過後に、残モノマーのパージを行った。
【0123】
その後、プロピレンを0.9MPa、続いてエチレンを1.1MPa導入し、内温を80℃に昇温した。その後、予め調製しておいたプロピレンとエチレンの混合ガスを導入し、内圧が2.0MPaで重合中にモノマー組成比が変化しないように調整しながら、30分間重合反応を制御した。その結果、粒子性状の良い37gのプロピレン系ブロック重合体が得られた。
上記で得られたプロピレン系ブロック共重合体は、CFC−IRの結果から、ゴム含有量(CP含有量)は14重量%、ゴム(CP)中のエチレン含有量は51モル%であり、MFRは52(g/10分)であった。
【0124】
[実施例2]
(1)メタロセン化合物
ジクロロ{ジメチルシリレン(4,7−ジメチル−2−インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウムの合成
2−ブロモ−4,7−ジメチルインデン(4.0g,18.0mmol)のテトラヒドロフラン溶液(8mL)を、テトラヒドロフラン(4ml)中のマグネシウム(0.66g,27mmol)とジクロロジメチルシラン(4.4mL,36mmol)の混合物に反応温度が55℃を保つように滴下した。室温で2時間攪拌した後、溶媒を減圧下で除去し、得られた固体成分をヘキサン(30mLx2)で抽出した。溶媒を減圧下で除去すると、クロロジメチル(4,7−ジメチル−2−インデニル)シラン(3.25g,77%)が得られた。
2−メチルアズレン(1.56g、11.0mmol)をヘキサン(30mL)に溶解し、フェニルリチウムのシクロヘキサン/ジエチルエーテル溶液(11.2mL、11.7mmol)を0℃で滴下した。滴下後室温まで昇温して1時間撹拌した。縣濁反応溶液を静沈後に上澄を除いた後、テトラヒドロフラン(10mL)とN−メチルイミダゾール(0.025mL)を加え、0℃で上記で得られたクロロジメチル(4,7−ジメチル−2−インデニル)シラン(3.25g,13.8mmol)のヘキサン溶液(10mL)を滴下した。滴下後室温で2時間撹拌した後、反応液に蒸留水を加え、ジエチルエーテルで抽出した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン)にて精製すると、ジメチル(4,7−ジメチル−2−インデニル)(2−メチル−4−フェニル−1,4−ジヒドロアズレニル)シラン(3.46g)が得られた。
【0125】
得られた配位子(3.46g)をジエチルエーテル(25mL)に溶解し、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(10.5mL、16.5mmol)を0℃で滴下した。室温で2時間撹拌した後、トルエン(125mL)を加え、−10℃に冷却し、四塩化ハフニウム(2.63g、8.3mmol)を添加した。ゆっくり昇温し室温で一夜撹拌した。得られた反応溶液を1/2程度まで濃縮し、ヘキサン(10mL)で洗浄した。
引き続きエタノール(10mL)、引き続きヘキサン(5mL)で洗浄した。得られた固体成分を減圧下乾燥すると、目的とするメタロセン化合物として、下記構造式のジクロロ{ジメチルシリレン(4,7−ジメチル−2−インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウム(2.76g、50%)が得られた。
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ0.91(s,3H,Si(CH32),0.97(s,3H,Si(CH32),2.21(s,3H,2−CH3),2.45(s,3H,CH3),2.47(s,3H,CH3),5.00(brd,1H,Azu−4−H),5.60(s,1H,Azu−3−H),5.85−6.25(m,5H),6.83(d,J=12Hz,1H,Azu−8−H),6.65−6.97(m,2H,arom),7.20−7.35(m,5H,arom)
【0126】
【化12】

【0127】
(2)予備重合とブロック重合
上記で合成したジクロロ{ジメチルシリレン(4,7−ジメチル−2−インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウムを用いる以外は、実施例1の(2),(3)と同様にして、予備重合触媒を調製した。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は0.82であった。
引き続き、内容積3Lの撹拌式オ−トクレ−ブ内をプロピレンで充分置換した後に、トリイソブチルアルミニウム・n−ヘプタン溶液(2.76mL、2.02mmol)を加え、続いて液体プロピレン(750g)を導入し、65℃に昇温しその温度を維持した。上記(2)で調製した予備重合触媒をノルマルヘプタンにスラリー化し、触媒として(予備重合ポリマーの重量は除く)200mgを圧入し重合を開始した。槽内温度を75℃に維持し、触媒投入1時間経過後に、残モノマーのパージを行い、アルゴンにて槽内を5回置換した。撹拌を停止させ、テフロン管を槽内に差し込み、ポリプロピレンを少量抜き出した。90℃窒素気流下で30分間乾燥後に測定した結果、抜き出し量は2gであった
その後、プロピレンを0.8MPa、続いてエチレンを1.2MPa導入し、内温を80℃に昇温した。その後、予め調製しておいたプロピレンとエチレンの混合ガスを導入し、内圧が2.0MPaで重合中にモノマー組成比が変化しないように調整しながら、30分間重合反応を制御した。その結果、粒子性状の良い45gのプロピレン系ブロック重合体が得られた。
上記で得られたプロピレン系ブロック共重合体は、CFC−IRの結果から、ゴム含有量(CP含有量)は40重量%、ゴム(CP)中のエチレン含有量は42.5モル%、MFRは1600g/10分であった。
【0128】
[比較例1]
(1)メタロセン化合物
特開2000−95791号公報記載の方法で、下記の構造式を有するジクロロ{1,1´−ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4H−アズレニル)}ハフニウムを合成した。このメタロセン化合物は、2つのヒドロアズレニル基がそれぞれ1位において、架橋基であるジメチルシリレン基を介して結合した構造を有しており、本願請求項に含まれない比較例である。
(2)予備重合とブロック重合
ジクロロ{1,1´−ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4H−アズレニル)}ハフニウムを用いる以外は、実施例1の(2),(3)と同様にして、予備重合触媒を調製した。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は2.22であった。
【0129】
引き続き、実施例1の(4)と同様にして重合を行った結果、1段目重合終了時の抜き出しポリマーが28.3gと433gのプロピレン系ブロック重合体が得られた。得られたプロピレン系ブロック共重合体は、CFC−IRの結果から、ゴム含有量(CP含有量)は58.6重量%、ゴム(CP)中のエチレン含有量は25.8モル%、MFRは24g/10分であった。
【0130】
【化13】

【0131】
[比較例2]
(1)メタロセン化合物
特開2005−2158号記載の方法で、下記の構造式を有するジクロロ{ジメチルシリレン(2−メチル−1−ベンゾ[e]インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウムを合成した。このメタロセン化合物は、ヒドロアズレニル基とインデニル基がそれぞれ1位において、架橋基であるジメチルシリレン基を介して結合した構造を有しており、本願請求項に含まれない比較例である。
(2)予備重合とブロック重合
ジクロロ{ジメチルシリレン(2−メチル−1−ベンゾ[e]インデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−1−アズレニル)}ハフニウムを用いる以外は、実施例1の(2),(3)と同様にして、予備重合触媒を調製した。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は2.12であった。
【0132】
引き続き、実施例2の(2)と同様にして重合を行った結果、1段目重合終了時の抜き出しポリマーが17gと137gのプロピレン系ブロック重合体が得られた。得られたプロピレン系ブロック共重合体は、CFC−IRの結果から、ゴム含有量(CP含有量)は20重量%、ゴム(CP)中のエチレン含有量は24モル%で、MFRは13(g/10分)あった。
【0133】
【化14】

【0134】
[実施例と比較例の結果の考察]
以上の各実施例と比較例とを対照することにより、本発明では、比較例の場合よりも、同一ガス組成でより高いエチレン含有量の共重合体が得られていることが分かる。このことから、本発明おいて、一般式(I)或いは(II)で表される特定の構造を有する新規なメタロセン化合物、そしてそれからなる触媒を用いると、エチレン又は炭素数4〜20のα−オレフィンとプロピレンのバランスの取れた反応性を呈する触媒を提供できることが明らかにされている。
【0135】
本発明のメタロセン化合物を触媒に使用しない、各比較例においては、比較例1、比較例2ともに、所望のエチレン含量の共重合体が得られていない。エチレン分圧を増加することによりエチレン含量を増加させることはできるが、かかる操作は工業的に制約が大きく、またエチレン含量の増加にも制約がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I)で表されるメタロセン化合物。
【化1】

(式中、R1,R2、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基を表し、R1,R2のいずれか1つは、水素原子である。R3は、炭素数3〜6の飽和または不飽和の二価の炭化水素基を表し、R4は、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基又はケイ素含有炭化水素基を表し、nは、0又はR3の炭素数の2倍以下の整数を表し、nが2以上の場合、R4同士が任意の位置で結合して環構造を形成していてもよい。R7は、炭素数6以上の、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基又はケイ素含有炭化水素基を表し、R8,R9,R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基を表す。Qは、架橋基を表し、X及びYは、それぞれ独立して、Mとσ結合を形成する配位子を表し、Mは、周期表第4〜6族の遷移金属を表す。)
【請求項2】
下記の一般式(II)で表されるメタロセン化合物。
【化2】

(式中、R1,R2、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基を表し、R1,R2のいずれか1つは、水素原子である。R3は、炭素数3〜6の飽和または不飽和の二価の炭化水素基を表し、R4は、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基又はケイ素含有炭化水素基を表し、mは、0〜4の整数を表し、mが2以上の場合、R4同士が任意の位置で結合して環構造を形成していてもよい。R7は、炭素数6以上の、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基又はケイ素含有炭化水素基を表し、R8,R9,R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基を表す。Qは、架橋基を表し、X及びYは、それぞれ独立して、Mとσ結合を形成する配位子を表し、Mは、周期表第4〜6族の遷移金属を表す。)
【請求項3】
1,R2、R5及びR6が、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜6の炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基である請求項1又は2に記載のメタロセン化合物。
【請求項4】
4が、炭素数1〜12の炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基である請求項1〜3のいずれか1項に記載のメタロセン化合物。
【請求項5】
7が、炭素数6〜12の炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基又はケイ素含有炭化水素基である請求項1〜4のいずれか1項に記載のメタロセン化合物。
【請求項6】
8,R9,R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1〜6の炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基である請求項1〜5のいずれか1項に記載のメタロセン化合物。
【請求項7】
遷移金属Mが、チタン、ジルコニウム又はハフニウムである請求項1〜6のいずれか1項に記載のメタロセン化合物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載されたメタロセン化合物を含むことを特徴とする、オレフィン重合用触媒成分。
【請求項9】
次の成分(A)及び(B)と任意に成分(C)を含むことを特徴とする、オレフィン重合用触媒。
成分(A):請求項1〜7のいずれか1項に記載されたメタロセン化合物
成分(B):有機アルミニウムオキシ化合物、成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物又はルイス酸からなる群より選ばれる化合物
成分(C):微粒子担体
【請求項10】
次の成分(A)及び(D)と任意に成分(E)を含むことを特徴とする、オレフィン重合用触媒。
成分(A):請求項1〜7のいずれか1項に記載されたメタロセン化合物
成分(D):イオン交換性層状化合物又は無機珪酸塩からなる群より選ばれる化合物
成分(E):有機アルミニウム化合物
【請求項11】
請求項9又は10に記載されたオレフィン重合用触媒を使用してα−オレフィンを重合することを特徴とする、α−オレフィンの重合方法。
【請求項12】
請求項9又は10に記載されたオレフィン重合用触媒を使用してプロピレンと、エチレン又は炭素数4〜20のα−オレフィンとを共重合することを特徴とする、α−オレフィンの重合方法。

【公開番号】特開2007−320935(P2007−320935A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−155633(P2006−155633)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】