説明

メチオニン配合内服液剤

【課題】 メチオニンおよびビタミンB2類は様々な薬効が知られており、医薬品、医薬部外品、食品などに広く配合されている。しかし、メチオニンとビタミンB2類を液剤中に同時に配合すると、経時的にメチオニンに固有の不快臭を発生させることが知られている。そのため風味において満足できるものは得られなかった。
本発明は、メチオニンとビタミンB2類を同時配合した際に経時的に発生する不快臭を抑制し、メチオニンとビタミンB2類を同時に配合した内服液剤を提供することにある。
【解決手段】 メチオニン、ビタミンB2類および活性酸素発生抑制成分を含む内服液剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内服液剤において発生する不快臭が軽減された飲料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メチオニンおよびビタミンB2類は様々な薬効が知られており、医薬品、医薬部外品、食品などに広く配合されている。しかし、メチオニンとビタミンB2類を液剤中に同時に配合すると、経時的にメチオニンに固有の不快臭を発生させることが知られている。そのため風味において満足できるものは得られなかった。
【0003】
従来、メチオニン由来の不快な風味を改善する技術としては、不快な風味を有するチアミン誘導体を配合することによりお互いの不快風味で相殺して、風味を改善する技術(特許文献1)が開示されている。
【0004】
しかし、メチオニンとビタミンB2類を液剤中に同時配合した際に発生する不快臭を簡便に改善する技術は知られていない。
【0005】
【特許文献1】特開平10−287551
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、メチオニンとビタミンB2類を同時配合した際に経時的に発生する不快臭を抑制した内服液剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達するため鋭意研究を進めた結果、内服液剤にメチオニンとビタミンB2類を同時配合しても、特定の活性酸素発生抑制成分およびポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種を配合することにより不快臭の発生を抑制できることを見出し本発明を完成した。
【0008】
すなわち本発明はメチオニン、ビタミンB2類ならびに、活性酸素発生抑制成分およびポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種または2種を含む内服液剤である。
【0009】
本発明で用いるメチオニンは通常内服液剤に配合することができるものを配合でき、具体的にはL-メチオニン、DL-メチオニンなどをあげることができる。本発明において配合するメチオニンの配合量は、内服液剤全体の0.001〜0.4W/V%が好ましい。配合量が0.001W/V%未満であると発生する不快臭はそれほど強くなく、配合量が0.4W/V%を超えると本発明によっても不快臭の発生抑制効果が不十分な場合があるからである。
【0010】
本発明で用いるビタミンB2類は通常内服液剤に配合することができるものを配合でき、具体的にはリボフラビン、リン酸リボフラビン、酪酸リボフラビン、それらの塩などをあげることができる。本発明において配合することができるビタミンB2類の配合量は内服液剤全体の0.02W/V%〜0.4W/V%である。配合量が少ないと発生する不快臭はそれほど強くなく、配合量が多いと苦味が生じるからである。
【0011】
本発明で活性酸素発生抑制成分とは、液剤中で活性酸素の発生を抑制する効果を有する成分であり、活性酸素発生抑制効果を有する着色料、活性酸素発生抑制効果を有する生薬成分、多価フェノール、亜硫酸ナトリウムなどをあげることができる。
【0012】
ここで、本発明で用いる活性酸素発生抑制効果を有する着色料は、具体的には黄色5号、黄色4号、赤色2号、赤色102号、青色2号、βカロテンなどがあげられ、特に黄色5号が好ましい。着色料の配合量は液剤全体の0.01〜0.1W/V%が好ましい。
【0013】
本発明で活性酸素発生抑制効果を有する生薬成分の好ましいものとしてはエゾウコギ、オウセイ、クコシ、シャクヤク、チンピ、トシシ、ローヤルゼリー、ハゲキテン、センキュウおよびビャクジュツをあげることができ、特に好ましいものとしてカンゾウをあげることができる。生薬の配合量は原生薬換算で液剤全体の0.005〜2W/V%が好ましい。
【0014】
配合する生薬は、エキスの形態での配合が好ましい。エキスの製造は通常の方法、例えば、抽出溶媒を用いて、適当な温度(低温又は加熱)にて、生薬原料から抽出する方法などにより行う。抽出溶媒は生薬に応じて適当に選択できるが、好ましくは、水、親水性溶媒(特にエタノール)およびこれらの混合溶媒が用いられる。本発明のエキスとは、液状抽出物をそのまま使用できるほか、水などで希釈したもの、液状抽出物の濃縮物、液状抽出物の乾固物としても使用できる。すなわち、本発明のエキスには、乾燥エキス、軟エキス、流エキス、チンキなどいずれのものも包含される。
【0015】
本発明に用いる多価フェノール化合物は、同一分子内に2個以上のフェノール性水酸基を持つ化合物を意味し、具体的には没食子酸、その酸の誘導体、例えば没食子酸メチル、エチル、プロピル、ブチルエステル及び没食子酸のナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩,クロロゲン酸、エラグ酸、タンニン酸、タンニン(例えばプロアントシアニジン、ガロタンニン、エラグタンニン)、フラボノイド類(例えばフラボン、フラボノール、フラバノン、フラバノノール、イソフラボン、アントシアニン、フラバノール(カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート等))、カルコン、オーロンが挙げられる。特に飲料組成物全体の風味の面から、没食子酸及びその誘導体が好ましい。多価フェノール化合物は一種又は二種以上を任意に組み合わせて用いることができ、好ましい配合量は0.1〜0.001W/V%である。
【0016】
本発明に用いる多価フェノール化合物は、合成品だけでなく、植物抽出物、果汁等およびそれらの由来物として添加してもよい。具体的には緑茶ポリフェノール、赤ワインポリフェノール、リンゴポリフェノール、ブドウ種子ポリフェノール、ブドウ葉ポリフェノール、ウーロン茶ポリフェノール、シソポリフェノール、ソバポリフェノール、カカオポリフェノール、コーヒーポリフェノール、甜茶ポリフェノール、シソ抽出物、カカオ抽出物、ソバ抽出物、柑橘果皮抽出物、ブルーベリー抽出物、緑茶抽出物、コーヒー抽出物、リンゴ抽出物、月見草抽出物、ウーロン茶抽出物、ブドウ種子抽出物、ブドウ葉抽出物、ユーカリ抽出物、グァバ抽出物、甜茶抽出物、ライチ種子抽出物、クランベリー抽出物、大豆イソフラボンなどが挙げられる。特に飲料組成物全体の風味の面から、緑茶ポリフェノール、リンゴポリフェノール、緑茶抽出物、リンゴ抽出物が好ましい。
【0017】
本発明では、好ましいポリグリセリン脂肪酸エステルとしてデカグリセリンモノステアリン酸エステルおよびデカグリセリンモノミリスチン酸エステルをあげることができる。
【0018】
本発明の内服液剤は、不快臭の改善効果の点からpH2〜6の範囲が好ましく、pH2.5〜5がさらに好ましい。pH調整は、可食性の酸をpH調整剤として用いることができる。pH調整剤としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、乳酸、コハク酸、アスコルビン酸、酢酸などの有機酸およびそれらの塩類、塩酸、リン酸などの無機酸およびそれらの塩類などがあげられる。これらのpH調整剤は一種又は二種以上使用できる。
【0019】
また、本発明の飲料には、ビタミンB2類以外のビタミン及びその塩類、メチオニン以外のアミノ酸およびその塩類、その他の生薬類、甘味剤、保存剤、矯味剤、着色剤など内服液剤一般に使用される成分を配合することができる。
【0020】
本発明にかかわる飲料組成物は、常法により調製でき、その方法は特に制限はされないが、通常、各成分を規定量以下の精製水にて混合し、規定量に容量調整し、必要に応じて濾過、滅菌処理をすることにより得られる。なお、脂溶性ビタミンを含むときは、通常用いられる界面活性剤又は可溶化剤により乳化又は可溶化してもよく、また分散剤を用いて懸濁させても良い。
【0021】
本発明の内服液剤は、例えば健康飲料、栄養補給飲料などの各種飲料、ドリンク剤、シロップ剤などの医薬品や医薬部外品の内服液剤に適用できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によって、メチオニンとビタミンB2類を同時配合すると経時的に増加する不快臭を抑制することがわかった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、実施例および試験例により本発明の効果を詳細に説明する。
【実施例】
【0024】
メチオニン30mg、リン酸リボフラビンナトリウム5mgおよび表1記載の各成分を配合し、リン酸でpH3.0に調製して全量を精製水で50mLに調節して液剤を得た(生薬の配合では沈殿が生じるため、沈殿防止のためにHCO60とPVP(界面活性剤)を配合した)。
【0025】
【表1】

【0026】
比較例1
メチオニン30mg、リン酸リボフラビンナトリウム5mgおよび赤色3号50mgの各成分を配合し、リン酸でpH3.0に調製して全量を精製水で50mLに調節して液剤を得た。
【0027】
比較例2
メチオニン30mg、リン酸リボフラビンナトリウム5mgおよびカルミン色素1.8mgを配合し、リン酸でpH3.0に調製して全量を精製水で50mLに調節して液剤を得た
【0028】
試験例1
実施例1〜5の液剤、比較例1、2について、不快臭の程度を4人のパネラーによる官能試験により評価した。評価は臭いが、1:非常に弱い、2:比較的弱い、3:やや弱い、4:どちらでもない、5:やや強い、6:比較的強い、7:非常に強い、の7段階で評価し、各パネラーの平均値で評価した結果を図1に示した。
【0029】
図から明らかなように本願発明の組成物は有意に臭いを抑制した。
【0030】
試験例2
50mLあたりメチオニン30mg、リン酸リボフラビンナトリウム5mg配合し、リン酸でpH3.0に調製したものをコントロールとし、実施例6〜8の処方について匂いの評価を4人のパネラーによる官能試験(ビジュアルアナログスケール法)によって評価した。結果はコントロールを100としたときの臭いの強さで図2に示した。
【0031】
図から明らかなように本願発明の組成物は有意に臭いを抑制した。
【0032】
試験例3
実施例10〜22で製造した液剤について匂いの評価を3人のパネラーによる官能試験(ビジュアルアナログスケール法)によって評価した。
【0033】
50mLあたりメチオニン30mg、リン酸リボフラビンナトリウム5mg配合し、リン酸でpH3.0に調製したものをコントロール(比較例3)とし、コントロールの値を基準としたときの臭いの抑制率を図3に示した。
【0034】
図から明らかなように本願発明の組成物は有意に臭いを抑制した。
【0035】
試験例4
試験例1により有効性が認められた黄色5号について、その濃度を変更して匂いの評価を5人のパネラーにより、試験例1と同様に匂いの評価を行った。
【0036】
黄色5号を0.01%〜0.1%まで動かした処方の結果を図4に示した。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によりメチオニンとビタミンB2を同時に配合しても不快臭がしない内服液剤を得ることができたので医薬品、食品、健康飲料、特定保健用食品などに使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】各実施例および比較例の匂いを判定した結果であり、縦軸に点数、横軸に試料名を示した。
【図2】各実施例の匂いを判定した結果であり、縦軸にコントロールを100とした際の匂い、横軸に試料名を示した。
【図3】各実施例および比較例の匂いを判定した結果であり、縦軸に試料名、横軸に比較例4を0とした場合の匂いの強さを示した。
【図4】各試料の匂いを判定した結果であり、縦軸に点数、横軸に試料名を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチオニン、ビタミンB2類、ならびに活性酸素発生抑制成分およびポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種または2種を含む内服液剤。
【請求項2】
活性酸素発生抑制成分が活性酸素発生抑制効果を有する着色料である請求項1記載の内服液剤。
【請求項3】
活性酸素発生抑制効果を有する着色料が黄色5号、黄色4号、赤色2号、赤色102号、青色2号、βカロテンから選ばれる一種または二種以上である請求項2記載の内服液剤。
【請求項4】
活性酸素発生抑制成分が活性酸素発生抑制効果を有する生薬成分である請求項1記載の内服液剤。
【請求項5】
活性酸素発生抑制効果を有する生薬成分が、エゾウコギ、オウセイ、クコシ、シャクヤク、チンピ、トシシ、ローヤルゼリー、ハゲキテン、センキュウおよびビャクジュツから選ばれる一種または二種以上である請求項4記載の内服液剤。
【請求項6】
活性酸素発生抑制成分が亜硫酸ナトリウムである請求項1記載の内服液剤。
【請求項7】
活性酸素発生抑制成分が多価フェノールである請求項1記載の内服液剤。
【請求項8】
多価フェノールが没食子酸、没食子酸誘導体、緑茶ポリフェノール、緑茶抽出物、酵素処理ルチン、リンゴポリフェノールおよびリンゴ抽出物から選ばれる一種または二種以上である請求項7記載の内服液剤。
【請求項9】
ポリグリセンリン脂肪酸エステルがデカグリセリンモノステアリン酸エステルまたはデカグリセリンモノミリスチン酸エステルである請求項1記載の内服液剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−111566(P2006−111566A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−300219(P2004−300219)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【Fターム(参考)】