説明

メチルトランスフェラーゼ(HMTASE)の部位特異的阻害剤及びその製剤方法

本発明は、ヒストンメチルトランスフェラーゼの部位特異的阻害剤としての構造式Iの化合物であって、R及びRが‐OCH又は‐OH、R及びRが‐OH又は‐OAcである化合物、R及びRが‐OCH、R及びRが‐OHである構造式Iaの化合物を単離する方法、R及びRが‐OCH、R及びRが‐OAcである構造式Ibの化合物を製剤する方法、R及びRが‐OH、R及びRが‐OHである構造式Icの化合物を製剤する方法、並びに、癌及び/又は疾患の状態を管理する薬剤の製造のための、構造式Iの化合物のそれを必要とする対象における使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は小分子調整因子の分野に関する。より詳しくは、本発明は、抗癌及び抗HIV治療学を発展させる鉛化合物としての機能を果たしうるヒストン変性エンザイムに関する。これらの分子はインビボのHMTaseの機能を調査にも役立ちうる。
本発明は、ヒストンメチルトランスフェラーゼの部位特異的阻害剤としての化合物及びその製剤方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真核性ゲノムは非常に動的なクロマチン構造に詰め込まれていて、その単位はヌクレオソームであり、146bpのDNAが巻き付いた4つの異なる核ヒストン8量体から構成されている。核ヒストンの尾部の翻訳後修飾、すなわち可逆性アセチル化、メチル化、リン酸化反応等は、細胞におけるDNAをテンプレートとした異なる減少において次々に重要な役割を果たす、クロマチンの動的構造機能組織に著しく寄与する。これらの組み換えのうち、ヒストンメチル化及びその細胞機能への最近の重点的な取り組みにより、興味深い広域スペクトルが得られている。HMTaseが重要な役割を果たす種々の疾患には、まず癌が挙げられ、続いて心疾患、ウイルス病原と、硬化症が挙げられる。

【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の主要な目的は、ヒストンメチルトランスフェラーゼの部位特異的阻害剤としての構造式Iの化合物を得ることである。
【0004】
本発明の他の主要な目的は、R及びRが‐OCH又は‐OH、R及びRが‐OH又は‐OAcである構造式Iの化合物を得ることである。
【0005】
本発明の他の目的は、アルギニンメチルトランスフェラーゼ、好ましくはCARM1の部位特異的阻害剤としての構造式Iの化合物を得ることである。
【0006】
本発明の更なる他の目的は、R及びRが‐OCH、R及びRが‐OHである構造式Iaの化合物を単離する方法を得ることである。
【0007】
本発明の更なる他の目的は、R及びRが‐OCH、R及びRが‐OAcである構造式Ibの化合物を製剤する方法を得ることである。
【0008】
本発明の更なる他の目的は、R及びRが‐OH、R及びRが‐OHである構造式Icの化合物を製剤する方法を得ることである。
【0009】
本発明の更なる他の目的は、(2,3,7,8‐テトラヒドロキシ[1] ベンゾピラノ (5,4,3(de)[1]ベンゾピラン5,10‐ジオン)のポリヒドロキシ誘導体を合成することである。
【0010】
本発明の更なる他の目的は、(2,3,7,8‐テトラヒドロキシ[1] ベンゾピラノ (5,4,3(de)[1]ベンゾピラン5,10‐ジオン)のより効率的かつ非毒性の誘導体を合成することである。
【0011】
本発明の更なる他の目的は、ヒストンメチルトランスフェラーゼの阻害剤である化合物を合成することである。
【0012】
本発明の更なる他の目的は、抗癌剤又は抗HIV剤として機能する化合物を開発することである。
【0013】
本発明の更なる他の目的は、細胞機能におけるRMTaseの役割を理解することである。

【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ヒストンメチルトランスフェラーゼの部位特異的阻害剤としての構造式Iの化合物であって、R及びRが‐OCH又は‐OH、R及びRが‐OH又は‐OAcである化合物、R及びRが‐OCH、R及びRが‐OHである構造式Iaの化合物を単離する方法、(a)乾燥及び粉砕の手法でザクロの皮を得る工程、(b)粉砕された皮を攪拌した後、沈殿物をろ過して半固体状の抽出物としてのろ液を収集する工程、(c)カラムに半固体状の抽出物を入れて、粗生成物を適切な溶媒系により溶出する工程、及び(d)粗生成物を精製して、構造式Iaの化合物を含む留分を得る工程を有する方法、R及びRが‐OCH、R及びRが‐OAcである構造式Ibの化合物を製剤する方法、(a)構造式Iaの化合物、無水酢酸及び硫酸を含む反応混合物を攪拌する工程、(b)反応混合物の温度を上昇させて反応質量が得られるまで攪拌を続ける工程、(c)反応質量をろ過し、沈殿物を洗浄して残留物を得る工程、及び(d)残留物を乾燥及び加水分解して構造式Ibの化合物を含む沈殿物を得る工程を有する方法、R及びRが‐OH、R及びRが‐OHである構造式Icの化合物を製剤する方法、(a)構造式Iaの化合物及び水酸化カリウムのメタノール溶液の反応混合物を還流させる工程、(b)還流反応混合物を冷却して反応質量を得て、有機生成物を得るために酸性化させる工程、及び(c)ジクロロメタンにより有機生成物を抽出して構造式Icの化合物を得る工程を有する方法、並びに、それを必要とする対象における癌及び/又は疾患の状態を管理する薬剤の製造のための構造式Iの化合物の使用に関する。
【0015】
【化1】

【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1a】図1aは、ヒストン変性エンザイムにおけるLTK20の効果(フィルタ結合アッセイ)である。
【図1b】図1bは、ヒストン変性エンザイムにおけるLTK20の効果(透視撮影法)である。
【図2】図2は、LTK20によるヒストンH3の結合等温線である。
【図3a】図3aは、CARM1媒介メチル化の選択的阻害である。
【図3b】図3bは、CARM1媒介メチル化の選択的阻害である。
【図3c】図3cは、LTK20処理されたHeLa細胞の免疫蛍光分析である。
【図3d】図3dは、LTK20処理されたHeLa細胞の免疫蛍光分析である。
【図4】図4は、p21抗体によるイムノブロット解析である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、ヒストンメチルトランスフェラーゼの部位特異的阻害剤としての構造式Iの化合物であって、R及びRが‐OCH又は‐OH、R及びRが‐OH又は‐OAcである化合物に関する。
【0018】
【化2】

【0019】
本発明の他の実施形態では、前記化合物はザクロから単離される。
【0020】
本発明の更に他の実施形態では、前記ヒストンメチルトランスフェラーゼはアルギニンメチルトランスフェラーゼ、好ましくはCARM1である。
【0021】
また、本発明は、R及びRが‐OCH、R及びRが‐OHである構造式Iaの化合物を単離する方法であって、(a)乾燥及び粉砕の手法でザクロの皮を得る工程、(b)粉砕された皮を攪拌した後、沈殿物をろ過して半固体状の抽出物としてのろ液を収集する工程、(c)カラムに半固体状の抽出物を入れて、粗生成物を適切な溶媒系により溶出する工程、及び(d)粗生成物を精製して、構造式Iaの化合物を含む留分を得る工程を有する方法に関する。
【0022】
【化3】

【0023】
本発明の更に他の実施形態では、前記溶媒系はメタノール:水系である。
【0024】
また、本発明は、R及びRが‐OCH、R及びRが‐OAcである構造式Ibの化合物を製剤する方法であって、(a)構造式Iaの化合物、無水酢酸及び硫酸を含む反応混合物を攪拌する工程、(b)反応混合物の温度を上昇させて反応質量が得られるまで攪拌を続ける工程、(c)反応質量をろ過し、沈殿物を洗浄して残留物を得る工程、及び(d)残留物を乾燥及び加水分解して構造式Ibの化合物を含む沈殿物を得る工程を有する方法に関する。
【0025】
【化4】

【0026】
本発明の更に他の実施形態では、前記温度はおよそ摂氏100度から徐々に上昇する。
【0027】
本発明の更に他の実施形態では、前記沈殿物から洗浄により未反応無水酢酸が除去される。
【0028】
本発明の更に他の実施形態では、前記沈殿物は有機溶媒、好ましくはアセトンにより洗浄される。
【0029】
本発明の更に他の実施形態では、前記残留物はピリジン水により加水分解される。
【0030】
また、本発明は、R及びRが‐OH、R及びRが‐OHである構造式Icの化合物を製剤する方法であって、(a)構造式Iaの化合物及び水酸化カリウムのメタノール溶液の反応混合物を還流させる工程、(b)還流反応混合物を冷却して反応質量を得て、有機生成物を得るために酸性化させる工程、及び(c)ジクロロメタンにより有機生成物を抽出して構造式Icの化合物を得る工程を有する方法に関する。
【0031】
【化5】

【0032】
また、本発明は、それを必要とする対象における癌及び/又は病状を管理する薬剤の製造のための構造式Iの化合物の使用に関する。
【0033】
本発明の更に他の実施形態では、前記化合物はヒストンメチルトランスフェラーゼの阻害剤である。
【0034】
本発明の更に他の実施形態では、前記ヒストンメチルトランスフェラーゼはアルギニンメチルトランスフェラーゼ、好ましくはCARM1である。
【0035】
本発明の更に他の実施形態では、前記化合物の阻害作用の性質は非競合的である。
【0036】
本発明の更に他の実施形態では、前記化合物は生来、抗増殖性かつ抗血管新生のものである。
【0037】
本発明の更に他の実施形態では、前記化合物は、p53応答性遺伝子の転写活性を調整する。
【0038】
本発明の更に他の実施形態では、前記対象は人間を含む動物である。
【0039】
図1aは、ヒストン変性エンザイムにおけるLTK20の効果(フィルタ結合アッセイ)である。LTK20のフィルタ結合アッセイは、ヒストン アセチルトランスフェラーゼ p300、PCAF及びヒストン メチルトランスフェラーゼ CARM1,G9aにより実行された。レーン1はヒストンのみ、レーン2はエンザイム制御、レーン3はDMSO制御、レーン4〜5は増加する濃度中のLTK20である。LTK20はCARM1活性を阻害するが、他のエンザイムには機能しない。
【0040】
図1bは、ヒストン変性エンザイムにおけるLTK20の効果(透視撮影法)である。LTK20のゲルアッセイは、ヒストン アセチルトランスフェラーゼ p300、PCAF及びヒストン メチルトランスフェラーゼ CARM1,G9aにより実行された。レーン1はヒストンのみ、レーン2はエンザイム制御、レーン3はDMSO制御、レーン4〜5は増加する濃度中のLTK20である。LTK20はCARM1活性を阻害するが、他のエンザイムには機能しない。
【0041】
図2は、LTK20によるヒストンH3の結合等温線である。等温線熱量滴定は、タンパク質ヒストンH3及び阻害剤であるリガンドLTK20により実行された。結合等温線は、2つの連続的結合部位モデルに適合する。
【0042】
図3a及び3bは、CARM1媒介メチル化の選択的阻害である。ヒストンH3のアルギニンメチル化の部位特異的阻害は、インビトロ及びインビボの双方において、LTK20の存在下で観察された。H3R17及びH3R26は共にヒストンH3のCARM1メチル化部位である。他の部位がメチル化されたのに対し、H3R17のメチル化は阻害剤LTK20の存在下で阻害された。
【0043】
図3c及び3dは、LTK20処理されたHeLa細胞の免疫蛍光分析である。
【0044】
図4は、p21抗体によるイムノブロット解析である。UVが照射されたU2OS細胞が阻害剤により又は阻害剤を用いずに処理された。p21に対する抗体により溶解物が精査された。p21レベルは、DMSO制御と比較して、LTK20の存在下で増加した。
【0045】
本発明は、(2,3,7,8‐テトラヒドロキシ[1] ベンゾピラノ (5,4,3(de)[1]ベンゾピラン5,10‐ジオン)化合物のポリヒドロキシ誘導体に関する。
【0046】
また、本発明は、(2,3,7,8‐テトラヒドロキシ[1] ベンゾピラノ (5,4,3(de)[1]ベンゾピラン5,10‐ジオン)化合物のポリヒドロキシ誘導体の製剤方法に関する。
【0047】
更に、本発明は、それを必要とする対象において、癌、心臓肥大、エイズ(AIDS)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)を含む群から選択される病状を治療する方法であって、医薬的に有効な量の(2,3,7,8‐テトラヒドロキシ[1] ベンゾピラノ (5,4,3(de)[1]ベンゾピラン5,10‐ジオン)化合物のポリヒドロキシ誘導体を投与する工程を含む方法に関する。
【0048】
我々は腫瘍抑制機能に影響を及ぼすHMTaseの阻害剤についてレポートする。この阻害剤は、20μmのIC50でアルギニンメチルトランスフェラーゼ(RMTase)に非常に特効があったが、リジンメチルトランスフェラーゼG9aには最小の効果しかなかった。特に、ヒストンアセチルトランスフェラーゼp300及びPCAFには効果がなかった。この阻害剤は、100μmの濃度でインビボでも活性だった。我々の研究は、この阻害剤が、3つの既知のCARM1メチル化部位のうちの1つにより特効を有する可能性を示す。したがって、この阻害剤及びその誘導体は、多くの疾患のための重要な鉛化合物であることがわかる。なお、RMTase阻害剤は強力な抗増殖剤及び抗血管新生化合物である。更に、この化合物は癌細胞に対して毒性を有するが、通常の細胞には影響を及ぼさないことがわかっている。この化合物及びその誘導体は、細胞機能におけるRMTaseの役割を理解するための生物学的調査として有用である。特に、我々は、天然源から単離された化合物が化学合成品よりも効能があることを発見した。
【0049】
本発明は、以下の実施例によってより詳細に説明される。しかしながら、これらの実施例は発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0050】
実施例1:ザクロからの(2,3,7,8‐テトラヒドロキシ[1] ベンゾピラノ (5,4,3(de)[1]ベンゾピラン5,10‐ジオン)の精製
【0051】
ザクロは洗浄され、余分なものが取り除かれて、種及び果汁から皮が単離された。皮は日光で乾燥され、ミキサーで粉砕された。ザクロ皮粉(250グラム)は、磁気攪拌棒を備えた4ネック1リットルフラスコに入れられ、1リットルの水を加えた後24時間攪拌された。沈殿物はブフナー漏斗を用いてろ過され、収集されたろ過物は完全に蒸留されて半固体状の褐色の化合物が得られた。この半固体状の抽出物は10個に分けられた。2つは、溶剤系としての水:メタノールと共に、180〜200meshのシリカゲルカラムに加えられた。カラムは、シュガリー淡黄色溶出液の色が明らかになるまで、蒸留水により流出された。粗生成物は2:1 メタノール:水系により溶出された。このメタノール及び水は、回転蒸発により完全に蒸留された。
【0052】
セファデックスLH20による粗生成物の精製
セファデックスLH20カラムは、水:メタノール(8:2)系により予め平衡化された。粗生成物(3グラム)がカラムに加えられた。カラムはメタノールの量を増やすことにより溶出された。異なる留分が収集され、TLC上にスポットされた。同様の留分は結合された。5つの異なる留分が収集され、留分A,B,C,D,Eと名付けられた。留分Aは、ヒストンメチルトランスフェラーゼCARM1に対する阻害活性を有する分子として特徴づけられた。
【0053】
実施例2:(2,3,7,8‐テトラヒドロキシ[1] ベンゾピラノ (5,4,3(de)[1]ベンゾピラン5,10‐ジオン)の誘導体化
【0054】
(2,3,7,8‐テトラヒドロキシ[1] ベンゾピラノ (5,4,3(de)[1]ベンゾピラン5,10‐ジオン)が、磁気攪拌棒、オイルバス及びサーモポケットを備えた3ネックフラスコに入れられて、無水酢酸(3ml)が加えられ、硫酸が滴下された。反応混合物は10分攪拌され、温度は摂氏100度から徐々に上げられ、1時間攪拌された。反応質量は摂氏20〜25度まで冷却されて、ろ過された。沈殿物は10mlのアセトンで洗浄され、未反応無水酢酸が除去された。残留物は乾燥され、摂氏115度で一時的に加熱することにより2mlのピリジン‐水で加水分解された。反応混合物を冷却した後、沈殿物は収集され、500mlの水及び3mlのアセトンで洗浄されて乾燥させられた。これはR2‐OAcが得られる誘電体を与えた。
【0055】
(2,3,7,8‐テトラヒドロキシ[1] ベンゾピラノ (5,4,3(de)[1]ベンゾピラン5,10‐ジオン)(1グラム)が、磁気攪拌棒及びオイルバスを100mcネックフラスコに入れられて、水酸化物カリウムのメタノール溶液(5M)(20ml)を追加した。反応物は8〜10時間還流された。反応物は室温で冷却された。メタノールは完全に蒸留され、反応質量は2N HCI溶液で酸化された。有機生成物はジクロロメタンにより抽出され、完全に除去されて乾燥させられた。これは親化合物のR1‐OH誘導体を与えた。
【0056】
一般式:R1‐OCH(LTK20),‐OH(LTK54) R2‐OH(LTK20),OAc(LTK51)のとき、C1418R1R2
【化6】

L‐Lingu及びTK‐Tapas Kunduに対する指定LYKストランドである。LTK20は親化合物(2,3,7,8‐テトラヒドロキシ[1] ベンゾピラノ (5,4,3(de)[1]ベンゾピラン5,10‐ジオン)であり、したがって、一般的構造によればR,R‐OCH及びR及びR‐OHが与えられる。
【0057】
実施例3:(2,3,7,8‐テトラヒドロキシ[1] ベンゾピラノ (5,4,3(de)[1]ベンゾピラン5,10‐ジオン)及びその誘電体のインビトロ特性
【0058】
―CARM1/G9a/p300/PCAFに対する(2,3,7,8‐テトラヒドロキシ[1] ベンゾピラノ (5,4,3(de)[1]ベンゾピラン5,10‐ジオン)のフィルタ結合
(2,3,7,8‐テトラヒドロキシ[1] ベンゾピラノ (5,4,3(de)[1]ベンゾピラン5,10‐ジオン)分子の阻害活性が、標準HATアッセイ及びHMTaseアッセイに従い、基質としてのHeLaコアヒストンを用いて、ヒストンアセチルトランスフェラーゼp300及びPCAF、リジンメチルトランスフェラーゼG9a、アルギニンメチルトランスフェラーゼCARM1について検査された。(2,3,7,8‐テトラヒドロキシ[1] ベンゾピラノ (5,4,3(de)[1]ベンゾピラン5,10‐ジオン)は、フィルタ結合(図1a)及びX線蛍光撮影(図1b)の双方により、20μMのIC50でアルギニンメチルトランスフェラーゼCARM1に対して効能を有することが確認された。
【0059】
―CARM1/G9aに対するLTK51及びLTK54(2,3,7,8‐テトラヒドロキシ[1] ベンゾピラノ (5,4,3(de)[1]ベンゾピラン5,10‐ジオン)フィルタ結合アッセイ
誘電体LTK51及びLTK54の阻害活性が、標準HMTaseアッセイに従って、基質としてのHeLaコアヒストンを用いて、リジンメチルトランスファーゼG9a及びアルギニンメチルトランスファーゼCARM1についてアッセイされた。R1‐OH及びR2‐OAcグループを含む誘導体は活性でないことがわかり、R1‐OCH及びR2‐OHグループは阻害活性に極めて重要であることが示された。
【0060】
実施例4:
阻害パターンの動態解析
阻害剤は、ヒストンH3を対象とするヒストンのCARM1媒介メチル化に効能を有するため、ヒストンH3は動態解析の基質として用いられた。初めに、阻害剤は、基質として組み換え型ヒストンを用いて確認された。CARM1メチル化反応は、ヒストンH3及びメチルグループドナーの濃度の増加を用いて実行され、トリチウム化したSAMがエンザイムの濃度を一定に保った。2つの異なる阻害剤濃度がアッセイされた。動態解析は、(2,3,7,8‐テトラヒドロキシ[1] ベンゾピラノ (5,4,3(de)[1]ベンゾピラン5,10‐ジオン)媒介CARM1メチル化阻害が非競合的であることを明らかにした。
【0061】
ITC実験による基質結合データ
阻害パターンが非競合的であることは、阻害モードがエンザイム‐基質複合体を介することを示し、阻害剤の結合は、基質(ヒストンH3)又はエンザイム(CARM1)のいずれかが細胞に取り込まれて阻害剤(2,3,7,8‐テトラヒドロキシ[1] ベンゾピラノ (5,4,3(de)[1]ベンゾピラン5,10‐ジオン)に対して滴定される、等温線熱量滴定によって特徴づけられている。データは、分子のエンザイムへの結合はなく、分子は2つの連続する結合部位において基質に結合することを明確に示している(図2)。
【0062】
ウエスタン分析により示される部位特異的阻害
インビトロCARM1メチル化反応は、阻害剤の存在下又は不存在下で実行され、ヒストンH13,R17及びR26の特定CARM1メチル化部位に対する抗体によって調査された。H3R17の部位特異的阻害が観察され、(2,3,7,8‐テトラヒドロキシ[1] ベンゾピラノ (5,4,3(de)[1]ベンゾピラン5,10‐ジオン)が新たな部位特異的阻害剤であることを示した(図3a)。
【0063】
実施例5:(2,3,7,8‐テトラヒドロキシ[1] ベンゾピラノ (5,4,3(de)[1]ベンゾピラン5,10‐ジオン)インビボ特性の細胞効果
【0064】
ウエスタン分析により示される部位特異的阻害
インビボ特性解析は、HeLa細胞を50μM濃度の分子で24時間処理することによって実行され、酸抽出ヒストンは、ヒストンH3,R17及びR26のCARM1メチル化部位に対する抗体を用いて調査された。H3R17の部位特異的阻害が観察され、(2,3,7,8‐テトラヒドロキシ[1] ベンゾピラノ (5,4,3(de)[1]ベンゾピラン5,10‐ジオン)は、インビボ環境においても新たな部位特異的阻害剤であることを示した(図3b)。
【0065】
免疫蛍光分析により示される部位特異的阻害
インビボ特性解析は、HeLa細胞を、50μM濃度の分子で24時間処理することによって実行され、細胞は、ヒストンH3,R17及びR26のCARM1メチル化部位に対する抗体を用いて調査され、抗ウサギ488蛍光標識抗体により視覚化された。H3R17の部位特異的阻害が観察され、(2,3,7,8‐テトラヒドロキシ[1] ベンゾピラノ (5,4,3(de)[1]ベンゾピラン5,10‐ジオン)は、インビボ環境においても新たな部位特異的阻害剤であることを示した(図3c及び3d)。
【0066】
実施例6:
ウエスタン分析によるU2OS細胞におけるp53及びp21タンパク質レベルの調整
CARM1媒介ヒストンメチル化は、p53反応遺伝子の転写活性を共同して増進することが知られているため、阻害剤の生理的効果はp53系の選択により特徴づけられる。(2,3,7,8‐テトラヒドロキシ[1] ベンゾピラノ (5,4,3(de)[1]ベンゾピラン5,10‐ジオン)の抗酸化特性により、発光酵素レポーターアッセイは機能しなかった。p53陽性細胞系であるU2OSがアッセイに使用され、50μM濃度の分子による24時間の処理において、p53レベルは変化した。したがって、p53反応遺伝子はアッセイされなければならないので、P21が選択された(アポトーシスはないので、アポトーシス遺伝子は選択されなかった)。UV照射細胞は(2,3,7,8‐テトラヒドロキシ[1] ベンゾピラノ (5,4,3(de)[1]ベンゾピラン5,10‐ジオン)により24時間処理され、溶解物がp21に対する抗体を用いて調べられた。処理されるp21レベルに増加がある(図4)。これはこの分子が腫瘍抑制遺伝子p53媒介転写活性に関与する可能性を明らかに示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒストンメチルトランスフェラーゼの部位特異的阻害剤としての下記の構造式Iの化合物であって、R及びRが‐OCH又は‐OH、R及びRが‐OH又は‐OAcである化合物。
【化1】

【請求項2】
前記化合物はザクロから単離される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記ヒストンメチルトランスフェラーゼはアルギニンメチルトランスフェラーゼ、好ましくはCARM1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
及びRが‐OCH、R及びRが‐OHである下記の構造式Iaの化合物を単離する方法であって、
(a)乾燥及び粉砕の手法でザクロの皮を得る工程と、
(b)粉砕された前記皮を攪拌した後、沈殿物をろ過して半固体状の抽出物としてのろ液を収集する工程と、
(c)カラムに前記半固体状の抽出物を入れて、粗生成物を適切な溶媒系により溶出する工程と、
(d)粗生成物を精製して、前記構造式Iaの化合物を含む留分を得る工程と、
を有する方法。
【化2】

【請求項5】
前記溶媒系はメタノール:水系である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
及びRが‐OCH、R及びRが‐OAcである下記の構造式Ibの化合物を製剤する方法であって、
(a)前記構造式Iaの化合物、無水酢酸及び硫酸を含む反応混合物を攪拌する工程と、
(b)前記反応混合物の温度を上昇させて反応質量が得られるまで攪拌を続ける工程と、
(c)前記反応質量をろ過し、沈殿物を洗浄して残留物を得る工程と、
(d)前記残留物を乾燥及び加水分解して前記構造式Ibの化合物を含む沈殿物を得る工程と、
を有する方法。
【化3】

【請求項7】
前記温度はおよそ摂氏100度から徐々に上昇させられる、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記沈殿物は洗浄されて未反応無水酢酸が除去される、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記沈殿物は有機溶媒、好ましくはアセトンにより洗浄される、請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記残留物はピリジン水により加水分解される、請求項6記載の方法。
【請求項11】
及びRが‐OH、R及びRが‐OHである下記の構造式Icの化合物を製剤する方法であって、
(a)前記構造式Iaの化合物及び水酸化カリウムのメタノール溶液の反応混合物を還流させる工程と、
(b)前記還流反応混合物を冷却して反応質量を得て、有機生成物を得るために酸性化させる工程と、
(c)ジクロロメタンにより前記有機生成物を抽出して前記構造式Icの化合物を得る工程と、
を有する方法。
【化4】

【請求項12】
癌及び/又は疾患の状態を管理する薬剤の製造のための、構造式Iの化合物のそれを必要とする対象における使用。
【請求項13】
前記化合物はヒストンメチルトランスフェラーゼの阻害剤である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記ヒストンメチルトランスフェラーゼはアルギニンメチルトランスフェラーゼ、好ましくはCARM1である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記化合物の阻害作用の性質は非競合的である、請求項12に記載の使用。
【請求項16】
前記化合物は生来、抗増殖性かつ抗血管新生のものである、請求項12に記載の使用。
【請求項17】
前記化合物は、p53応答性遺伝子の転写活性を調整する、請求項12に記載の使用。
【請求項18】
前記対象は人間を含む動物である、請求項12に記載の使用。
【請求項19】
添付の実施例及び図面を参照して実質的にここに記載される、構造式Iの化合物、構造式Iaの化合物を単離する方法、構造式Ib及びIcの化合物を製剤する方法。


【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−542626(P2009−542626A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517615(P2009−517615)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【国際出願番号】PCT/IN2007/000258
【国際公開番号】WO2008/001391
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(508377129)
【Fターム(参考)】