説明

メッキ基板のエッチング装置

【課題】第1に、銅箔の厚みが均一化され、もって平均化されたエッチングが実現されて、例えば回路幅の過不足・バラツキ・誤差・不良等が解消され、高密度,微細,精細な回路が形成されると共に、第2に、しかもこれが簡単容易に実現され、コスト面やスペース面にも優れた、メッキ基板のエッチング装置を提案する。
【解決手段】このエッチング装置3は、回路基板の製造工程で使用され、水平搬送されるメッキされた基板材Aに対し、エッチング液を噴射してエッチングする。そして、基板材Aの前後端部Fおよび左右端部Gを、集中的にエッチングするエリア13が、エッチング装置3の上流側に付設されている。このエリア13は、左右の幅方向Kに配設された複数本のスプレー管14,15と、スプレー管14,15に取付けられ、基板材Aの前後端部Fや左右端部Gにエッチング液を噴射するスプレーノズルと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッキ基板のエッチング装置に関する。すなわち、回路基板の製造工程において使用され、コンベヤにて水平搬送されるメッキされた基板材に対し、エッチング液を噴射してエッチングする、エッチング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
《技術的背景》
電子機器,IT関連機器の高性能化,高機能化,小型軽量化に伴い、その基幹をなすプリント配線基板等の回路基板も、高精度化,ファイン化,極薄化,多様化が進み、形成される回路の高密度化,微細化,精細化が著しい。
そして、このような回路基板の製造工程では、銅張り積層板たる基板材の外表面に、感光性のレジストを膜状に塗布又は張り付けてから、→回路のネガフィルムを当てて、露光した後、→回路形成部分以外のレジストを、現象により溶解除去し、→回路形成部分以外の銅箔を、エッチングにより溶解除去してから、→回路形成部分のレジストを、剥膜除去することにより、→基板材の外表面に、銅箔にて回路が形成され、→もって、回路基板が製造されている。
【0003】
《従来技術》
図8は、この種従来例のエッチング装置を示し、(1)図は、その1例の平面説明図、(2)図は、他の例の平面説明図である。
回路基板の製造工程で使用されるこの種のエッチング装置1では、コンベヤにて水平搬送される基板材Aに対し、スプレー管2に取付けられたスプレーノズルからエッチング液Bを噴射して(図8では図示を省略)、エッチングが行われ、もって回路が形成される。
そして、このエッチング装置1に供給される基板材Aは、図2の(4)図の正(側)断面図にも示したように、絶縁層(コア材)Cの外表面に銅箔Dが張り付けられた銅張り積層板よりなるが、更に、銅メッキEされているものも多い。
そして、このようにメッキEが施された基板材Aについては、メッキEの厚み誤差により、メッキEを含む銅箔Dの肉厚が、図4の(4)図,(5)図に示したように、その前後端部Fおよび左右端部Gつまり外周部で厚く、中央部Hで薄くなる傾向がある。
すなわち、基板材Aについて全体的に均一にメッキEを施すことは、現状では困難視されており、メッキEのバラツキ発生は不可避な状況にあり、メッキEを含む銅箔Dの肉厚の誤差は、5%〜15%程度にも達している。
【0004】
その対策として、従来のエッチング装置1では、前後の搬送方向Jに沿って配設された複数本のスプレー管2のうち、左右両側のスプレー管2に供給されるエッチング液Bの圧力を高く設定し、もって、そのスプレーノズルからエッチング液Bを、より高い噴射圧で噴射するようになっていた。
つまり、基板材Aの銅箔Dの肉厚が薄い中央部Hに対して噴射されるエッチング液Bの噴射圧より、銅箔Dの肉厚が厚い左右端部Gに対して噴射されるエッチング液Bの噴射圧を、より高く設定し、もって、銅箔Dのエッチングの平均化が図られていた。
なお、図8の(1)図に示した従来例のエッチング装置1は、いわゆるオシレーション方式よりなり、その各スプレー管2が、左右の幅方向Kに向け若干傾斜して配設されると共に、左右の幅方向Kに首振り揺動される。これに対し、図8の(2)図に示した従来例のエッチング装置1は、いわゆる横移動方式よりなり、そのスプレー管2が、左右の幅方向Kに若干水平往復動される。
【0005】
《先行技術文献情報》
このような従来例としては、例えば、次の特許文献1に示されたものが、挙げられる。
【特許文献1】特開2000−212774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような従来例のエッチング装置1にあっては、次の問題が指摘されていた。
《第1の問題点》
第1に、基板材Aの前後端部Fの銅箔Dの肉厚は、依然としてメッキEにより厚いままであり、もって基板材Aについて、エッチングが平均的に行われなくなり、高密度,微細,精細な回路が形成困難となる、という問題が指摘されていた。
すなわち、この種従来例のエッチング装置1では、前述したように、左右両側のスプレー管2のスプレーノズルのエッチング液Bの噴射圧を、より高く設定したことにより、基板材Aの左右端部Gのエッチング量が増大し、もって左右端部Gと中央部H間では、銅箔Dの肉厚そしてエッチングがほぼ均一化,平均化される。
しかしながら、前後端部Fの銅箔Dの肉厚は、依然として厚いままであり、これが原因となって、エッチングが平均化されず不均一となる。例えば、前後端部Fの銅箔Dの厚い箇所がエッチング不足となって、形成される回路幅が過大となり、これをカバーすべくエッチング量を増大させると、他の箇所がエッチング過多となって、形成される回路幅が過少となる。
そして、このように銅箔Dの平均的エッチングが阻害されるので、銅箔Dにて形成される回路について、回路幅の過不足・バラツキ・誤差・不良が発生し、回路の高密度化,微細化,精細化の障害となり、生産性・歩留まり・品質の低下が指摘されていた。
【0007】
《第2の問題点》
第2に、そこでこの種従来例のエッチング装置1では、コンベヤの途中に方向転換機構を組み込み、もって途中で基板材Aを90度回転させることも、行われていた(前述した特許文献1を参照)。
そして、この種のエッチング装置1では、基板材Aについて、回転前まで前後端部Fとして、銅箔Dの肉厚が厚いままであった箇所を、回転後は左右端部Gとして、高い噴射圧のエッチング液Bを噴射して、エッチング量を増大せしめる。もって基板材Aについて、左右端部G,前後端部F,中央部Hを通し、全体的に銅箔Dの肉厚そしてエッチングを均一化,平均化して、前述した第1の問題点を解消せんとすることも試みられていた。
しかしながら、この種のエッチング装置1については,途中に、回転可能かつ上下動可能なターンテーブル等を備えた方向転換機構を組み込むので、コストアップが著しいと共に、装置が長大化し設置スペースを取る、という問題が指摘されていた。
又、エッチング装置1自体も、高圧の左右端部G用のものを含め各スプレー管2を、首振り揺動させたり横移動させるオシレーション方式や横移動方式よりなり、この面からも、コスト面に問題が指摘されていた。
【0008】
《本発明について》
本発明に係るメッキ基板のエッチング装置は、このような実情に鑑み、上記従来例の課題を解決すべく、発明者の鋭意研究努力の結果なされたものである。
そして本発明は、第1に、銅箔の厚みが均一化され、もって平均化されたエッチングが実現されると共に、第2に、しかもこれが簡単容易に、コスト面やスペース面にも優れて実現される、メッキ基板のエッチング装置を提案することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
《請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、次のとおりである。まず請求項1に
ついては、次のとおり。
請求項1のメッキ基板のエッチング装置は、回路基板の製造工程にて使用され、コンベヤにより水平搬送されるメッキされた基板材に対し、エッチング液を噴射してエッチングする。そして、該基板材の前後端部および左右端部を、集中的にエッチングするエリアが付設されていること、を特徴とする。
請求項2については、次のとおり。請求項2のメッキ基板のエッチング装置では、請求項1において、供給された該基板材は、銅メッキされており、メッキの厚み誤差により外表面のメッキを含む銅箔の肉厚が、前後端部および左右端部つまり外周部で厚く、中央部で薄くなっている。そして、該エリアでの集中的エッチングにより、該銅箔の肉厚が補正され、前後端部,左右端部,中央部にわたり均一化されること、を特徴とする。
請求項3については、次のとおり。請求項3のメッキ基板のエッチング装置では、請求項2において、該エリアは、該エッチング装置の上流側に追加付設されており、前後の搬送方向と直交する左右の幅方向に配設された複数本のスプレー管と、該スプレー管に取付けられ該基板材にエッチング液を噴射するスプレーノズルと、を備えている。そして、該スプレー管そしてスプレーノズルは、該基板材の前後端部用のものと左右端部用のものとからなること、を特徴とする。
【0010】
請求項4については、次のとおり。請求項4のメッキ基板のエッチング装置では、請求項3において、前後端部用の該スプレー管のスプレーノズルは、該スプレー管に所定ピッチ間隔で全体的に多数取付けられている。そして該スプレーノズルは、センサーにて検出された該基板材の位置情報やサイズ情報に基づき、エッチング液の噴射がタイミング制御され、もって該基板材の前後端部の通過時においてのみ、該前後端部に対し限定的にエッチング液を噴射すべく制御されること、を特徴とする。
請求項5については、次のとおり。請求項5のメッキ基板のエッチング装置では、請求項3において、前後端部用の該スプレー管のスプレーノズルは、該スプレー管に所定ピッチ間隔で全体的に多数取付けられている。そして該スプレーノズルは、センサーにて検出された該基板材の位置情報やサイズ情報に基づき、エッチング液の噴射がタイミング制御され、もって該基板材の前後端部の通過時においては、該前後端部に対しエッチング液をより高い噴射圧で噴射すべく制御されること、を特徴とする。
請求項6については、次のとおり。請求項6のメッキ基板のエッチング装置では、請求項3において、左右端部用の該スプレー管のスプレーノズルは、該スプレー管の左右位置のみに少数取付けられ、もって該基板材の左右端部に対向している。そして該スプレーノズルは、該基板材の左右端部に対してのみ、限定的にエッチング液を噴射すべく制御されること、を特徴とする。
請求項7については、次のとおり。請求項7のメッキ基板のエッチング装置では、請求項3において、左右端部用の該スプレー管のスプレーノズルは、該スプレー管に所定ピッチ間隔で全体的に多数取付けられている。そして、該スプレーノズルは、該基板材の左右端部に対向するものが、エッチング液をより高い噴射圧で噴射し、該基板材の中央部に対向するものが、エッチング液をより低い噴射圧で噴射すべく制御されること、を特徴とする。
【0011】
請求項8については、次のとおり。請求項8のメッキ基板のエッチング装置では、請求項4,5,6,又は7において、該スプレー管には、それぞれ専用のポンプを介してエッチング液が圧送される。そして該ポンプは、上記制御が行われると共に、更に、該基板材の前後端部や左右端部についての幅寸法情報や銅箔肉厚寸法情報に基づき、エッチング液の噴射圧を高低調整すべく制御されること、を特徴とする。
請求項9については、次のとおり。請求項9のメッキ基板のエッチング装置では、請求項4,5,6,又は7において、該スプレー管には、それぞれ専用の電磁弁を介してエッチング液が圧送される。そして該電磁弁を利用して、上記制御が行われると共に、更に、該基板材の前後端部や左右端部についての幅寸法情報や銅箔肉厚寸法情報に基づき、エッチング液の噴射圧を高低調整すべく制御されること、を特徴とする。
請求項10については、次のとおり。請求項10のメッキ基板のエッチング装置では、請求項4,5,6,又は7において、該スプレーノズルは、左右の幅方向に向けられると共に、斜めに傾斜した噴射角度で該スプレー管に取付けられている。
かつ、該スプレーノズルから噴射されたエッチング液が、該基板材を前後の搬送方向に流れることを阻止して、左右の幅方向にのみ流れるように規制する規制ローラーが、該スプレー管そしてスプレーノズルに対向する領域の前後に、対をなして配設され、もって搬送される該基板材に圧接していること、を特徴とする。
【0012】
《作用等》
本発明のメッキ基板のエッチング装置は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)エッチング装置では、搬送される基板材にエッチング液が噴射される。
(2)そして、供給される基板材は銅メッキされており、メッキの厚み誤差により、外表面のメッキを含む銅箔の肉厚が、前後端部および左右端部で厚く中央部で薄くなっている。
(3)そこで、このエッチング装置には、基板材の前後端部および左右端部を、集中的にエッチングするエリアが付設されており、同エリアは、前後端部用のものと左右端部用のものとからなり、それぞれ、左右の幅方向に配設された複数本のスプレー管と、スプレー管に取付けられエッチング液を噴射するスプレーノズルと、を備えている。
【0013】
(4)まず、同エリアの前後端部用のスプレーノズルは、スプレー管に全体的に取付けられており、センサーにて検出された基板材の位置情報やサイズ情報に基づき、エッチング液の噴射がタイミング制御される。そして、基板材の前後端部の通過時において、エッチング液を噴射するか、又はエッチング液をより高い噴射圧で噴射すべく制御される。 (5)次に、同エリアの左右端部用のスプレーノズルは、スプレー管の左右位置のみに取付けられ、もって基板材の左右端部にエッチング液を噴射するか、又は、スプレー管に全体的に取付けられ、基板材の左右端部に対向するものがエッチング液をより高い噴射圧で噴射すべく制御される。
(6)そして、スプレー管には、それぞれ専用のポンプ又は電磁弁を介して、エッチング液が圧送される。もって、このポンプにより又はこの電磁弁を利用して、上記制御が行われると共に、更に、基板材の前後端部や左右端部の幅寸法情報や銅箔肉厚寸法情報に基づき、エッチング液の噴射圧が高低制御される。
(7)更に、同エリアのスプレーノズルは、左右に向けられ斜めに傾斜してスプレー管に取付けられている。又、搬送される基板材について、スプレーノズル等に対向する領域の前後には、規制ローラーが対をなして配設,圧接されている。
そこでエッチング液は、左右に傾斜した噴射角度で噴射されると共に、規制ローラーにて規制され、もって基板材を左右方向にのみ流れるので、この面からも平均化されたエッチングが実現される。
【0014】
(8)さて、供給された基板材は、前述したように銅箔の肉厚が、前後端部および左右端部で厚くなっている。そこで、上述したように付設されたエリアにおいて、この前後端部および左右端部が集中的にエッチングされて、銅箔の肉厚が均一に補正され、もって基板材のエッチングが平均化されるようになる。
(9)しかも、このようなエッチングの平均化は、エッチング装置に、スプレーノズル付のスプレー管が配設された同エリアを追加付設しただけで、簡単な構成により容易に実現される。
(10)さてそこで、本発明のメッキ基板のエッチング装置は、次の第1,第2の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0015】
《第1の効果》
第1に、銅箔の厚みが均一化され、もって平均化されたエッチングが実現されて、高密度,微細,精細な回路が形成されるようになる。
すなわち、本発明のメッキ基板のエッチング装置では、基板材の前後端部,左右端部,中央部の銅箔の肉厚が均一化され、もって平均化されたエッチングが実現される。
そこで、前述したこの種従来例のエッチング装置のように、エッチング不足やエッチング過多の箇所は発生せず、回路幅の過不足・バラツキ・誤差・不良が解消されて、高密化,微細化,精細化された回路を製造可能となる。もって、生産性・歩留まり・品質が向上する。
【0016】
《第2の効果》
第2に、しかもこれは、簡単な構成により容易に実現され、コスト面やスペース面にも優れている。
すなわち、本発明のメッキ基板のエッチング装置は、スプレーノズル付のスプレー管を備えたエリアを追加付設して、ポンプや電磁弁で制御する方式を採用してなり、簡単な構成により上述した第1の点が容易に実現される。
前述したこの種従来例のエッチング装置のように、エッチングの平均化のため、途中に方向転換機構を組み込んだり、オシレーション方式や横移動方式等を採用する必要もない。もってコスト面に優れると共に、装置が長大化することもなくスペース面にも優れている。
このように、この種従来例に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
《図面について》
以下、本発明に係るメッキ基板のエッチング装置を、図面に示した、発明を実施するための最良の形態に基づいて、詳細に説明する。図1,図2,図3は、本発明を実施するための最良の形態の説明に供する。
そして、図1の(1)図は、その1例の平面説明図、(2)図は、他の例の平面説明図である。
図2の(1)図は、前後端部用のスプレー管(上側に配設されたもの)の1例の正面図、(2)図は、前後端部用のスプレー管(上側に配設されたもの)の他の例の正面図、(3)図は、左右端部用のスプレー管(上側に配設されたもの)の1例の正面図である。図2の(4)図は、集中エッチング前の基板材の正(側)断面図、(5)図は、同基板材の平面説明図であり、(6)図は、集中エッチング後の基板材の正(側)断面図、(7)図は、同基板材の平面説明図である。
図3の(1)図は、制御用のブロック図、(2)図は、メッキ装置の正面説明図、(3)図は、その要部拡大図である。
図4,図5,図6は、エッチング装置本体の正面説明図,平面説明図,側面説明図である。図7は、エッチング装置本体等の各要部を示し、(1)図は、正断面図、(2)図は、別の正断面図、(3)図は、側面図、(4)図は、平面図である。図9は、回路基板(基板材)の模式化した平面説明図である。
【0018】
《回路基板Lについて》
本発明のエッチング装置3は、回路基板Lの製造工程で使用される。そこでまず、図9を参照して、回路基板Lの概略について説明しておく。
回路基板Lは、AV機器,パソコン,携帯電話,デジカメ,その他各種の電子機器,IT関連機器において、その基幹をなす電気的接続用に用いられており、半導体部品間を接続するための回路Mパターンを、絶縁層の外表面や内部に形成してなる。
そして回路基板Lは、片面基板と両面基板とに分けられる他、多層基板(含、最近のビルドアップ法のもの)、その他各種のものがあり、又、硬質のリジット系基板とフィルム状のフレキシブル系基板とにも、分けられる。フレキシブル系基板の絶縁層は、ポリイミド製フィルム、その他の樹脂製フィルムよりなる。
又、このような回路基板Lの一環として、IC,LSI素子,受動部品,駆動部品,コンデンサー等々の半導体部品が、回路Mと一体的に組み込まれたモジュール基板(半導体一体型のパッケージ基板)や、ガラスベースに回路Mと共に半導体部品が埋め込まれたガラス基板、つまりプラズマディスプレイPDP用のガラス基板や液晶LCD用のガラス基板、更にはCSP,PBGA等も出現している。本明細書において回路基板Lとは、従来よりのプリント配線基板の外、このようなものも広く包含する。
【0019】
そして回路基板Lは、電子機器,IT関連機器の高性能化,高機能化,小型軽量化に伴い、高精度化,ファイン化,そして極薄化,柔軟化,フレキシブル化,更には多層化,多様化等が進み、外表面(表面や裏面の一方又は双方)に形成される回路M、更には内部に形成される回路Mの高密度化,微細化,精細化が著しい。
回路基板L例えばプリント配線基板は、製造に際しての1枚の縦横のカットサイズが、例えば500mm×400mm程度よりなる。肉厚は、絶縁層(コア材)C部分が、従来の1.6mmから1.0mm〜60μm程度、昨今では50μmから10μm前後まで、極薄化されている。回路M部分(銅箔D部分)の肉厚も、70μm〜35μm、昨今では12μm〜3μm前後まで、極薄化されている。
多層基板の場合でも、全体の肉厚が1.0mm〜0.4mm程度まで、極薄化されつつある。回路M幅や回路M間スペースも、30μm〜15μm程度、昨今では10μm前後まで微細化傾向にある。
回路基板Lは、概略このようになっている。
【0020】
《回路基板Lの製造方法の1例について》
次に、本発明のエッチング装置3が使用される、回路基板Lの製造方法について、図9,図2の(4)図,(6)図等を参照して説明する。まず、第1例の製造方法について述べる。この製造方法において、回路基板L例えばプリント配線基板は、次のステップを辿って製造される。
最初に、紙フェノール製,ガラスエポキシ製,ガラスクロス製,セラミックス製,又はポリイミド製,その他のフィルム状樹脂製の絶縁層(コア材)Cの外表面に、銅箔Dが熱プレス,圧延,電解等により張り付けられた、銅張り積層板たる基板材Aが準備される。
そして、このように準備された基板材Aについて、張り付けられた銅箔D表面を粗化する表面粗化処理(ソフトエッチング)が行われた後、短尺のワークサイズの各葉に切断される。表面粗化処理は、従来は、機械研磨によって行われていたが、最近は、表面粗化液の噴射によって行われることが多い。
そして多くの場合、スルホールN用の孔あけ加工が、レーザ等を使用して実施される。スルホールNは、基板材A(回路基板L)の外表面間の微細な貫通孔よりなり、1枚について、極小径のものが数百個以上形成され、その径は、0.5mm〜0.2mm程度以下のものが多くなっている。そしてスルホールNは、外表面の回路M(銅箔D)間や多層基板の回路M(銅箔D)間の導通接続用や、回路Mに実装される半導体部品の取り付け用として使用される。
なお最近は、孔あけ加工を要するスルホールNに代えて、小突起状・略円錐台状の接点たるバンプを形成し、もって多層基板等について、このバンプにより、スルホールNと同様の機能を実現する技術も開発されている。バンプは、回路Mに準じ、現像工程,エッチング工程,剥膜工程等の表面処理工程を辿って、製造される。
【0021】
さてしかる後、基板材Aの銅箔Dの外表面に、感光性のレジストが膜状に塗布又は張り付けられる。それから、回路Mのネガフィルムつまり予め回路M設計された回路M写真を当て、露光することにより、外表面のレジストは、露光されて硬化した回路M形成部分を残し、その他の不要部分が、アルカリ性の現像液の噴射により溶解除去される。
それから、このような基板材Aの銅箔Dは、レジストが硬化して被覆された回路M形成部分(保護膜部分)を残し、現像によりレジストが溶解除去されて露出した不要部分が、エッチング液B(塩化第二銅系,塩化第二鉄系,アルカリ系,その他の腐食液)の噴射により、溶解除去・エッチングされる。それから、残っていた回路M形成部分のレジストが、アルカリ性の剥離液の噴射により剥膜除去され、もって、残った回路M形成部分の銅箔Dにて、基板材Aの外表面に、所定導体パターンの回路Mが形成され、回路基板Lが製造される。
又、上述した現像工程,エッチング工程,剥膜工程には、それぞれ後処理用に又は剥膜工程の後にまとめて後処理用に、水洗液,中和剤液,その他の洗浄液を噴射する、洗浄工程が付設されている。この洗浄工程では、基板材Aの外表面(含むスルホールN内等)に付着していた現像液,エッチング液B,剥離液等の処理液が、洗浄,除去される。
更に、洗浄工程の後には、乾燥工程が付設されている。すなわち、洗浄工程で洗浄された基板材Aの外表面(含むスルホールN内等)には、水洗液その他の洗浄液や,それらの水分が付着しているので、酸化防止等のためこれらを除去すべく、事後直ちに乾燥工程において乾燥処理される。
第1例の製造方法は、このようなウェットプロセス法よりなる。第1例の製造方法は、このようになっている。
【0022】
《回路基板Lの製造方法の他の例について》
次に、第2例の製造方法について述べる。回路基板L例えばプリント配線基板の製造方法としては、上述した第1例のウェットプロセス法が代表的であるが、第2例のセミアディティブ法も多用されつつある。
セミアディティブ法では、まず、予めスルホールNが形成された基板材Aの外表面に、無電解銅メッキが施される。→それから、この無電解銅メッキに、感光性のレジストを膜状に塗布又は張り付けた後、→回路Mフィルムである回路M写真を当て、露光する。→そしてレジストは、露光されて硬化した部分を残し、他の部分つまり回路M形成部分が、現像液の噴射により溶解除去される。
しかる後、→回路M形成部分、つまり現像によりレジストが溶解除去されたメッキパターン部分、つまり無電解銅メッキが露出した部分に対し、電解銅メッキが施されて、→回路Mが形成される。→なお、残っていた硬化した回路M形成部分以外のレジストは、剥離液の噴射により剥膜除去され、→露出した無電解銅メッキが、エッチング液Bの噴射によりクイックエッチングされて、融解除去される。→なお、各工程の後処理用として、前述した所に準じ、洗浄工程や乾燥工程が付設される。
第2例のセミアディティブ法では、このようにして、電解銅メッキにて回路Mが形成され、もって回路基板Lが製造される。第2例の製造方法は、このようになっている。
ところで、プリント配線基板その他の回路基板Lの製造方法は、最近ますます多様化しつつあり、上述した第1例,第2例以外にも、各種方法が開発,使用されている。本発明は勿論、このような各種の製造方法にも適用される。
回路基板Lの製造方法は、このようになっている。
【0023】
《エッチング装置3の本体4について》
次に、図4,図5,図6,図7等を参照して、本発明の前提となるエッチング装置3の本体4について、説明する。
エッチング装置3は、前述した回路基板Lの製造工程中のエッチング工程にて使用され、水平搬送される基板材Aに対し、エッチング液Bを噴射してエッチング処理(薬液処理,表面処理)する。
そして、処理室であるチャンバー5内に、基板材Aを搬送方向Jに水平姿勢で搬送するコンベヤ6と、搬送される基板材Aにエッチング液Bを噴射するスプレーノズル7とを、備えている。
【0024】
まず、エッチング装置3のコンベヤ6について述べる。コンベヤ6は、基板材Aを上下から圧接して挟んで送る搬送ローラー8を備えており(図4,図6を参照)、搬送ローラー8は、スプレーゾーンPを除き、上下方向Pに上下対をなし接触回転すべく組み合わせて配設され、上下共に前後の搬送方向Jに向け多数列設されている。少なくとも下位の搬送ローラー8は、回転駆動される駆動ローラーよりなる。
又、図示例の搬送ローラー8はストレートローラーよりなり、上下共に3個置きに、その1個分に相当するスプレーゾーンPが形成されており(1個分の搬送ローラー8が欠如せしめられており)、上側のスプレーゾーンPと下側のスプレーゾーンPとは、対向位置せずに搬送方向Jにずれて位置している。
そして、スプレーゾーンPの前後の搬送ローラー8が、規制ローラー9としても兼用され機能している(図6,図7の(3)図,(4)図を参照)。
すなわち、スプレーノズル7から噴射されたエッチング液Bが、基板材Aを前後の搬送方向Jに流れて、乱流や液溜まりとなることを阻止し、もって左右の幅方向Kにのみ流れるように規制する規制ローラー9が、スプレーゾーンP(後述するスプレー管10やスプレーノズル7に対向する領域)の前後に、対をなして配設され、搬送される基板材Aに圧接している。
【0025】
次に、エッチング装置3のスプレーノズル7について述べる。スプレーノズル7は、スプレーゾーンPにおいて、搬送される基板材Aの上下に対向配設されており、エッチング液Bを噴射する。
スプレーノズル7としては、一般的なフルコーンノズルやスリットノズルが使用され、コンベヤ6の搬送ローラー8にて水平搬送される基板材Aの真上や真下に、それぞれ上下間隔を存すると共に、前後の搬送方向Jと左右の幅方向Kにわたって、所定ピッチ間隔を置きつつ多数配列されている。
そしてエッチング液Bは、液槽11からポンプや配管12を介し、スプレー管10を経由して、各スプレーノズル7に圧送され、もって基板材Aに噴射される。そして、基板材Aの外表面を流れつつ表面処理した後、基板材Aの左右両サイドから流下されて、液槽11に回収され、事後も循環使用される。
【0026】
そして、図示例のスプレー管10は配管12から分岐された後、左右の幅方向Kに平行に沿うと共に、前後の搬送方向Jに向け一定ピッチで多数本配設されている(図5を参照)。そして、このような各スプレー管10に、スプレーノズル7が、幅方向Kに一定ピッチ間隔で全体的に多数取付けられている。
そこで、チャンバー5内全体において、スプレーノズル7は、前後,左右にそれぞれ一定ピッチ間隔を置きつつ、多数配設されていることになる。
又、スプレーノズル7は、左右の幅方向Kに向けられると共に、斜めに傾斜した噴射角度αでスプレー管10に取付けられている(図4,図7の(1)図,(2)図を参照)。そこで、スプレーノズル7から噴射されたエッチング液Bは、幅方向Kの左方向又は右方向に向け斜めに傾斜した噴射角度αで、基板材Aに対して噴射され、もって基板材Aの外表面を、左方向又は右方向に向け液溜まりや乱流のない規則的な流れを形成して、エッチングした後、左右両サイドから流下する。
そして、幅方向Kの左方向に向けてスプレー管10に取付けられたスプレーノズル7の列と、幅方向Kの右方向に向けてスプレー管10に取付けられたスプレーノズル7の列とが、前後の搬送方向Jに順次交互に配されている(図5を参照)。
エッチング装置3の本体4は、このようになっている。
【0027】
《集中エッチング用のエリア13について》
以下、図1,図2,図3等を参照して、本発明について説明する。このエッチング装置3には、基板材Aの前後端部Fおよび左右端部Gを、集中的にエッチングするエリア13が,上下にそれぞれ付設されている。
この上下のエリア13は、図示例ではエッチング装置3のチャンバー5内の上流側に、追加付設されている。そして、前後の搬送方向Jと90度直交する左右の幅方向Kに配設された複数本のスプレー管14,15と、スプレー管14,15に取付けられ基板材Aにエッチング液Bを噴射するスプレーノズル16,17と、を備えている。
そして、スプレー管14,15そしてスプレーノズル16,17は、基板材Aの前後端部F用のものと、左右端部G用のものとからなっている。
【0028】
このような集中エッチング用のエリア13の概要について、更に詳述する。まず、このエッチング装置3そしてエリア13に供給される基板材Aは、銅メッキEされている。
例えば、回路Mの形成前に、スルホールN内を層間接続用に導通処理しておく為、その他の理由により、銅張り積層板たる基板材Aの外表面(例えば表面と裏面の両方)、つまり銅箔Dの外表面が、全体的に銅メッキEされることが多い。
そして銅メッキEは、例えば、メッキ槽18に基板材Aをハンガー19で保持しつつ浸漬し、メッキ槽18側を陽極、基板材A側を陰極として通電することにより、実施される(図3の(2)図,(3)図を参照)。
その結果、基板材Aは、通電度が高い外周部(前後端部Fと左右端部G)が厚くメッキEされ、通電度が低くなる中央部Hが薄くメッキEされてしまう。基板材Aについて、全体的に均一にメッキEを施すことは、現状では困難視されており、メッキE厚みのバラツキ発生は、不可避な状況にある。
【0029】
そこで、回路基板Lの製造工程において、現像工程を経てエッチング工程のエッチング装置3に供給されたメッキ基板の基板材Aは、このようなメッキEの厚み誤差により、外表面(表面や裏面)のメッキEを含む銅箔Dの肉厚が、前後端部Fおよび左右端部Gつまり外周部で厚く、中央部Hで薄くなっている(図2の(4)図,(5)図を参照)。
供給される基板材Aについて、このようなメッキEを含む銅箔Dの肉厚の誤差は、前後端部Fや左右端部Gと中央部Hとでは、5%〜15%程度にも達している。
そこで、このエッチング装置3では、前述した本体4におけるエッチングに先立ち、エリア13において、基板材Aの外表面の前後端部Fや左右端部Gを、集中的にエッチングして、このような銅箔Dの肉厚を補正し、前後端部F,左右端部G,中央部Hにわたり均一化してから(図2の(6)図,(7)図を参照)、本体4におけるエッチングを実施する。
なおエリア13は、図示例ではエッチング装置3のチャンバー5内において、本体4の上流側に追加配設されているが、これによらず、下流側や途中の中間部に追加付設するようにしてもよい。
集中エッチング用のエリア13は、概略このようになっている。
【0030】
《前後端部F用のエリア13について》
次に、図1の(1)図,(2)図,図2の(1)図,(2)図,図3の(1)図等を参照して、このようなエリア13のうち、基板材Aの前後端部Fの集中エッチング用のエリア13部分について、説明する。
この前後端部用F用のエリア13のスプレー管14のスプレーノズル16は、上下のスプレー管14に所定ピッチ間隔で全体的に多数取付けられている。そして、センサー20にて検出された基板材Aの位置情報やサイズ情報に基づき、エッチング液Bの噴射がタイミング制御される。
もって、基板材Aの前後端部Fの通過時においてのみ、上下から前後端部Fのみに対し限定的・スポット的に、エッチング液Bを噴射すべく制御されるか、又は、基板材Aの前後端部Fの通過時においては、上下から前後端部Fに対しエッチング液Bを、より高い噴射圧で噴射すべく制御される。
【0031】
このような前後端部F用のエリア13のスプレー管14やスプレーノズル16について、更に詳述する。
図示例では、基板材Aの前端部と後端部つまり前後端部F用のスプレー管14が、左右の幅方向Kに2本平行に配設されている。図示例によらず、1本又は3本以上配設することも可能である。
そしてスプレーノズル16は、スプレー管14に所定ピッチ間隔で全体的に多数取付けられており、左右の幅方向Kに向けられると共に、斜めに傾斜した噴射角度αで、スプレー管14に取付けられている。更に図示例では、2本の内、1本のスプレー管14に取付けられたスプレーノズル16は、左方向に向けられ、他の1本に取付けられたスプレーノズル16は、右方向に向けられている(図2の(1)図,(2)図を参照、図7の(1)図,(2)図も参照)。スプレーノズル16の噴射角度αは、例えば1度〜30度程度の間で可変であり、適宜選択設定される。
なお、このスプレー管14やスプレーノズル16について、その他の構成や機能等は、エッチング装置3の本体4のスプレー管10やスプレーノズル7について前述した所に準じるので(例えば、図4,図5,図6,図7等を参照)、その説明は省略する。又、このエリア13におけるエッチング液B,コンベヤ6,搬送ローラー8,規制ローラー9,スプレーゾーンP等についても、本体4において前述した所に準じるので、その説明は省略する。
【0032】
そしてセンサー20は、位置センサーよりなり、基板材Aの先端と後端の通過を検出して、検出された基板材Aの位置情報やワークサイズ情報を、コントローラー21に送出する。
コントローラー21は、入力部22を利用して予め入力されていた基板材Aの前後端部Fの幅寸法情報(メッキE方式により種々変化するが、例えば前端部と後端部それぞれ20mm)や、銅箔Dの肉厚寸法情報(メッキE方式により種々変化するが、例えば5μm)をも勘案し、予め読込まれていたプログラムに基づき、駆動制御信号を、図1の(1)図の例では電磁弁24に対し、図1の(2)図の例ではインバーター23を介しポンプ25に送出する。
このような駆動制御信号に基づき、電磁弁24やポンプ25が駆動され、もって、基板材Aの前後端部F(前端部と後端部)が通過する時間的タイミングで、スプレーノズル7がエッチング液Bを、選択された高い噴射圧(0.02MPa〜0.3MPa、例えば
0.15MPa)や流量(例えば1L/min〜5L/min)で噴射する。
なお、前後端部Fが通過する間のみエッチング液Bを高い噴射圧で噴射するタイプの制御が代表的であるが、これによらず、前後端部Fが通過する間は高い噴射圧でエッチング液Bを噴射し、中央部Hが通過する間は低い噴射圧(例えば0.01MPa)でエッチング液Bを噴射するタイプの制御も可能である。
又、このような制御は、タイミング制御の部分を除き、例えば噴射圧に関しては、アニアルで段階切換えする方式も可能である。又、2本のスプレー管14のうち、2本共使用するか1本のみを選択使用するか等、使用本数の選択制御についても、同様である。
前後端部F用のエリア13は、このようになっている。
【0033】
《左右端部G用のエリア13について》
次に、図1の(1)図,(2)図,図2の(3)図,図3の(1)図等を参照して、エリア13のうち、基板材Aの左右端部Gの集中エッチング用のエリア13部分について、説明する。
この左右端部G用のエリア13のスプレー管15のスプレーノズル17は、図示例では、上下のスプレー管15の左右位置のみに少数取付けられ、もって基板材Aの左右端部Gに対向している。そして、基板材Aの左右端部Gに対してのみ、上下から限定的・スポット的にエッチング液Bを噴射すべく制御される。
又、このような図示例によらず、左右端部G用のスプレー管15のスプレーノズル17は、上下のスプレー管15に部分的ではなく所定ピッチ間隔で全体的に多数取付け、基板材Aの左右端部Gに対向するものが、上下からエッチング液Bをより高い噴射圧で噴射し、基板材Aの中央部Hに対向するものが、上下からエッチング液Bをより低い噴射圧で噴射すべく制御するようにしてもよい。
【0034】
このような左右端部G用のエリア13のスプレー管15やスプレーノズル17について、更に詳述する。まず図示例では、基板材Aの左端部と右端部つまり左右端部G用のスプレー管15が、左右の幅方向Kに2本平行に配設されている。図示例によらず、1本又は3本以上配設することも可能である。
そしてスプレーノズル17は、図示例では、スプレー管15の左右位置に2個ずつ取付けられており、左右の幅方向Kに向けられると共に、斜めに傾斜した噴射角度αで、スプレー管15に取付けられている(図2の(3)図を参照、図7の(1)図,(2)図も参照)。更に2本の内、1本のスプレー管15に取付けられたスプレーノズル17は、左方向に向けられ、他の1本のスプレー管15に取付けられたスプレーノズル17は、右方向に向けられている。
なお、このスプレー管15やスプレーノズル17について、その他の構成や機能等は、エッチング装置3の本体4のスプレー管10やスプレーノズル7、更には前後端部F用のスプレー管14やスプレーノズル16について、前述した所に準じるので、その説明は省略する。又、このエリア13におけるエッチング液B,コンベヤ6,搬送ローラー8,規制ローラー9,スプレーゾーンP等についても、同様である(例えば、図4,図5,図6,図7等を参照)。
【0035】
そしてコントローラー21には、基板材Aの左右端部Gの幅寸法情報や銅箔Dの肉厚寸法情報が、入力部22を利用して予め入力されており、予め読み込まれていたプログラムに基づき、駆動制御信号が電磁弁24又はインバーター23を介しポンプ25に送出され、スプレーノズル17が、選択された高い噴射圧でエッチング液Bを噴射する。
この制御内容については、前後端部F用のエリア13のスプレーノズル16やスプレー管14について、前述したところに準じるので説明は省略するが、この左右端部G用のエリア13の場合は、通常、タイミング制御は実施されず、エッチング液Bがスプレーノズル17から連続的に噴射される。
又、この左右端部G用のスプレーノズル17については、図示例のタイプによらず、スプレー管15の左右位置のみではなくスプレー管15に全体的に取付け、基板材Aの左右端部Gに対向位置するメインのスプレーノズル17の噴射圧を高く、中央部Hに対向位置するサブのスプレーノズル17の噴射圧を低く設定するタイプも可能である。
なお、図1の図示例では、このような左右端部G用のものが、前後端部F用のものより、エリア13の上流側に配されているが、逆の順序で配することも可能である。
左右端部G用のエリア13は、このようになっている。
【0036】
《ポンプ25や電磁弁24について》
ここで、図1の(1)図,(2)図や図3の(1)図を参照して、使用されているポンプ25や電磁弁24について、説明しておく。
まず、図1の(2)図に示した例では、スプレー管14,15には、それぞれ専用のポンプ25を介して、エッチング液Bが圧送される。そしてポンプ25は、インバーター23を介することにより、その吐出力の程度や,駆動オンオフ等がコントロールされ、もってスプレーノズル16,17からのエッチング液Bの噴射のタイミングや噴射圧等が制御される。
又、図1の(1)図に示した例では、スプレー管14,15には、それぞれ専用の電磁弁24を介して、エッチング液Bが圧送される。そして電磁弁24は、スプレー管14,15をバイパスさせる方式や、径を途中で変更する方式や、弁自体の開度を変更可能とする方式、等々によりコントロールされ、もってスプレーノズル16,17からのエッチング液Bの噴射のタイミングや噴射圧等が制御される。
ポンプ25や電磁弁24は、このようになっている。
【0037】
《作用等について》
本発明のエッチング装置3は、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
(1)回路基板Lの製造工程中、エッチング工程のエッチング装置3では、コンベヤ6にて水平搬送される基板材Aに対しエッチング液Bを噴射し、もって基板材Aの銅箔Dをエッチングする(図4,図5,図6を参照)。
【0038】
(2)ところで、このエッチング装置3に供給される基板材Aは、銅メッキEされており、メッキEの厚み誤差により、外表面(表面や裏面)のメッキEを含む銅箔Dの肉厚が、前後端部Fおよび左右端部Gつまり外周部で厚く、中央部Hで薄くなっている(図2の(4)図,(5)図を参照)。
【0039】
(3)そこで、このエッチング装置3には、基板材Aのこのような前後端部Fおよび左右端部Gを、集中的にエッチングするエリア13が、上下にそれぞれ付設されている(図1を参照)。
すなわち、このエリア13は、エッチング装置3本体4の上流側に追加付設されており、左右の幅方向Kに配設された上下それぞれ複数本のスプレー管14,15と、各スプレー管14,15に取付けられて基板材Aにエッチング液Bを噴射するスプレーノズル16,17と、を備えている。そして、このスプレー管14,15そしてスプレーノズル16,17は、基板材Aの前後端部F専用のものと、左右端部G専用のものとからなる。
【0040】
(4)まず、上下の同エリア13の前後端部F用のスプレー管14やスプレーノズル16については、次のとおり(図1の(1)図,(2)図,図2の(1)図,(2)図,図3の(1)図等を参照)。
すなわち、この前後端部F用のエリア13のスプレーノズル16は、そのスプレー管14に所定ピッチ間隔で全体的に多数取付けられており、センサー20にて検出された基板材Aの位置情報やサイズ情報に基づき、エッチング液Bの噴射がタイミング制御される。
そして、2つのタイプが可能である。すなわち、基板材Aの前後端部Fの通過時(前端部の通過時と後端部の通過時)においてのみ、前後端部Fに対し限定的・スポット的にエッチング液Bを噴射すべく制御されるタイプと、これによらず、基板材Aの前後端部Fの通過時においては、前後端部Fに対しエッチング液Bをより高い噴射圧で噴射し、中央部Hに対しより低い噴射圧で噴射すべく制御されるタイプとが、可能である。
【0041】
(5)次に、上下の同エリア13の左右端部G用のスプレー管15やスプレーノズル17については、次の2つのタイプが可能である(図1の(1)図,(2)図,図3の(1)図等を参照)。
すなわち第1のタイプでは、左右端部G用のスプレーノズル17は、そのスプレー管15の左右位置のみに少数取付けられて(図2の(3)図を参照)、基板材Aの左右端部Gに対向している。そして、基板材Aの左右端部Gに対してのみ、限定的・スポット的にエッチング液Bを噴射すべく制御される。
第2のタイプでは、左右端部G用のスプレーノズル17は、そのスプレー管15に所定ピッチ間隔で全体的に多数取付けられている。そしてその内、基板材Aの左右端部Gに対向するメインのスプレーノズル17が、エッチング液Bをより高い噴射圧で噴射し、基板材Aの中央部Hに対向するサブのスプレーノズル17が、エッチング液Bをより低い噴射圧で噴射すべく制御される。
【0042】
(6)又、上下の同エリア13の前後端部F用や左右端部G用のスプレー管14,15やスプレーノズル16,17のこのような制御は、ポンプ25による方式か電磁弁24を利用する方式にて、行われる。
まず、ポンプ25による方式の場合は(図1の(2)図を参照)、スプレー管14,15には、それぞれ専用のポンプ25を介してエッチング液Bが圧送される。そしてポンプ25により、上記制御が行われると共に、更に、基板材Aの前後端部Fや左右端部Gの幅寸法情報や銅箔肉厚寸法情報に基づき、エッチング液Bの噴射圧を高低調整すべく制御される。
又、電磁弁24を利用する方式の場合は(図1の(1)図を参照)、スプレー管14,15には、それぞれ専用の電磁弁24を介してエッチング液Bが圧送される。そして電磁弁24を利用して、上記制御が行われると共に、更に、基板材Aの前後端部Fや左右端部Gの幅寸法情報や銅箔肉厚寸法情報に基づき、エッチング液Bの噴射圧を高低調整すべく制御される。
【0043】
(7)そして、上下の同エリア13の前後端部F用や左右端部G用のこのようなスプレー管14,15のスプレーノズル16,17は、前後の搬送方向Jに直交する左右の幅方向Kに向けられると共に、斜めに傾斜した噴射角度αで、スプレー管14,15に取付けられている(図2の(1)図,(2)図,(3)図を参照、図7の(1)図,(2)図も参照)。
これと共に、搬送される基板材Aについて、スプレー管14,15そしてスプレーノズル16,17に対向する領域の前後には、規制ローラー9が、対をなして配設され圧接されている(図7の(3)図,(4)図も参照)。
そこでエッチング液Bは、スプレーノズル16,17から左右の幅方向Kに向け傾斜した噴射角度αで噴射され、もって基板材Aに噴射された後は、規制ローラー9にて規制されて、基板材Aを前後の搬送方向Jに流れることがなく、液溜まりが発生することもなく、左右の幅方向Kにのみ流れるようになる。もって、この面からも平均化されたエッチングが実現される。
【0044】
(8)さて、供給された基板材Aは、前述したようにメッキEの厚み誤差により、外表面のメッキEを含む銅箔Dの肉厚が、前後端部Fおよび左右端部Gで厚く、中央部Hで薄くなっている(図2の(4)図,(5)図を参照)。
そこで、前述したように、エッチング装置3本体4の上流側に上下のエリア13が追加付設されており、このエリア13の前後端部F用や左右端部G用のスプレー管14,15のスプレーノズル16,17から、エッチング液Bが噴射される。これにより、エッチング液Bがより多く噴射配分されて、基板材Aの前後端部Fおよび左右端部Gでのエッチング量が増大し、もって基板材Aの銅箔Dの肉厚が補正される。
基板材Aは、同エリア13での集中的エッチングにより、前後端部F,左右端部G,中央部Hにわたり、銅箔Dの肉厚が均一化され、もって、エッチング装置3本体4でのエッチングが、平均化されるようになる。
【0045】
(9)しかも、基板材Aのこのような銅箔Dの肉厚の均一化、そしてエッチングの平均化は、エッチング装置3の上流側に、基板材Aの前後端部Fおよび左右端部Gを集中的にエッチングするエリア13を、追加付設しただけで実現される。
そして、このエリア13には、スプレーノズル16,17が取付けられたスプレー管14,15が、複数本配設され、ポンプ25や電磁弁24にて制御される方式よりなる。
このように、このエッチング装置3では、エッチングの平均化が、簡単な構成により容易に実現される。
【0046】
(10)なお、基板材Aの左右端部Gのみについて観察した場合においても、前述した図8のこの種従来例のように、エッチング装置1全体においてその銅箔Dの肉厚を調整するよりも、本発明のように、本体4の上流側のエリア13において、集中的に一括して銅箔Dの肉厚を調整した方が、より確実である。つまり、中央部Hと左右端部Gの銅箔Dの肉厚を、より確実に均一化できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係るメッキ基板のエッチング装置について、発明を実施するための最良の形態の説明に供し、(1)図は、その1例の平面説明図、(2)図は、他の例の平面説明図である。
【図2】同発明を実施するための最良の形態の説明に供し、(1)図は、前後端部用のスプレー管(上側に配設されたもの)の1例の正面図、(2)図は、前後端部用のスプレー管(上側に配設されたもの)の他の例の正面図、(3)図は、左右端部用のスプレー管(上側に配設されたもの)の1例の正面図である。(4)図は、集中エッチング前の基板材の正(側)断面図、(5)図は、同基板材の平面説明図であり、(6)図は、集中エッチング後の基板材の正(側)断面図、(7)図は、同基板材の平面説明図である。
【図3】同発明を実施するための最良の形態の説明に供し、(1)図は、制御用のブロック図、(2)図は、メッキ装置の正面説明図、(3)図は、その要部拡大図である。
【図4】エッチング装置本体の正面説明図である。
【図5】エッチング装置本体の平面説明図である。
【図6】エッチング装置本体の側面説明図である。
【図7】エッチング装置本体等の各要部を示し、(1)図は、正断面図、(2)図は、別の正断面図、(3)図は、側面図、(4)図は、平面図である。
【図8】この種従来例のエッチング装置を示し、(1)図は、その1例の平面説明図、(2)図は、他の例の平面説明図である。
【図9】回路基板(基板材)の模式化した平面説明図である。
【符号の説明】
【0048】
1 エッチング装置(従来例)
2 スプレー管(従来例)
3 エッチング装置(本発明)
4 本体
5 チャンバー
6 コンベヤ
7 スプレーノズル
8 搬送ローラー
9 規制ローラー
10 スプレー管
11 液槽
12 配管
13 エリア
14 スプレー管(本発明)
15 スプレー管(本発明)
16 スプレーノズル(本発明)
17 スプレーノズル(本発明)
18 メッキ槽
19 ハンガー
20 センサー
21 コントローラー
22 入力部
23 インバーター
24 電磁弁
25 ポンプ
A 基板材
B エッチング液
C 絶縁層
D 銅箔
E メッキ
F 前後端部
G 左右端部
H 中央部
J 搬送方向
K 幅方向
L 回路基板
M 回路
N スルホール
P スプレーゾーン
Q 上下方向
α 噴射角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板の製造工程にて使用され、コンベヤにより水平搬送されるメッキされた基板材に対し、エッチング液を噴射してエッチングするエッチング装置において、
該基板材の前後端部および左右端部を、集中的にエッチングするエリアが付設されていること、を特徴とするメッキ基板のエッチング装置。
【請求項2】
請求項1に記載したメッキ基板のエッチング装置において、供給された該基板材は銅メッキされており、メッキの厚み誤差により、外表面のメッキを含む銅箔の肉厚が、前後端部および左右端部つまり外周部で厚く、中央部で薄くなっており、
該エリアでの集中的エッチングにより、該銅箔の肉厚が補正され、前後端部,左右端部,中央部にわたり均一化されること、を特徴とするメッキ基板のエッチング装置。
【請求項3】
請求項2に記載したメッキ基板のエッチング装置において、該エリアは、該エッチング装置の上流側に追加付設されており、前後の搬送方向と直交する左右の幅方向に配設された複数本のスプレー管と、該スプレー管に取付けられ該基板材にエッチング液を噴射するスプレーノズルと、を備えており、
該スプレー管そしてスプレーノズルは、該基板材の前後端部用のものと左右端部用のものとからなること、を特徴とするメッキ基板のエッチング装置。
【請求項4】
請求項3に記載したメッキ基板のエッチング装置において、前後端部用の該スプレー管のスプレーノズルは、該スプレー管に所定ピッチ間隔で全体的に多数取付けられており、 該スプレーノズルは、センサーにて検出された該基板材の位置情報やサイズ情報に基づき、エッチング液の噴射がタイミング制御され、もって該基板材の前後端部の通過時においてのみ、該前後端部に対し限定的にエッチング液を噴射すべく制御されること、を特徴とするメッキ基板のエッチング装置。
【請求項5】
請求項3に記載したメッキ基板のエッチング装置において、前後端部用の該スプレー管のスプレーノズルは、該スプレー管に所定ピッチ間隔で全体的に多数取付けられており、
該スプレーノズルは、センサーにて検出された該基板材の位置情報やサイズ情報に基づき、エッチング液の噴射がタイミング制御され、もって該基板材の前後端部の通過時においては、該前後端部に対しエッチング液をより高い噴射圧で噴射すべく制御されること、を特徴とするメッキ基板のエッチング装置。
【請求項6】
請求項3に記載したメッキ基板のエッチング装置において、左右端部用の該スプレー管のスプレーノズルは、該スプレー管の左右位置のみに少数取付けられ、もって該基板材の左右端部に対向しており、
該スプレーノズルは、該基板材の左右端部に対してのみ、限定的にエッチング液を噴射すべく制御されること、を特徴とするメッキ基板のエッチング装置。
【請求項7】
請求項3に記載したメッキ基板のエッチング装置において、左右端部用の該スプレー管のスプレーノズルは、該スプレー管に所定ピッチ間隔で全体的に多数取付けられており、 該スプレーノズルは、該基板材の左右端部に対向するものが、エッチング液をより高い噴射圧で噴射し、該基板材の中央部に対向するものが、エッチング液をより低い噴射圧で噴射すべく制御されること、を特徴とするメッキ基板のエッチング装置。
【請求項8】
請求項4,5,6,又は7に記載したメッキ基板のエッチング装置において、該スプレー管には、それぞれ専用のポンプを介してエッチング液が圧送され、
該ポンプは、上記制御が行われると共に、更に、該基板材の前後端部や左右端部についての幅寸法情報や銅箔肉厚寸法情報に基づき、エッチング液の噴射圧を高低調整すべく制御されること、を特徴とするメッキ基板のエッチング装置。
【請求項9】
請求項4,5,6,又は7に記載したメッキ基板のエッチング装置において、該スプレー管には、それぞれ専用の電磁弁を介してエッチング液が圧送され、
該電磁弁を利用して、上記制御が行われると共に、更に、該基板材の前後端部や左右端部についての幅寸法情報や銅箔肉厚寸法情報に基づき、エッチング液の噴射圧を高低調整すべく制御されること、を特徴とするメッキ基板のエッチング装置。
【請求項10】
請求項4,5,6,又は7に記載したメッキ基板のエッチング装置において、該スプレーノズルは、左右の幅方向に向けられると共に、斜めに傾斜した噴射角度で該スプレー管に取付けられており、
かつ、該スプレーノズルから噴射されたエッチング液が、該基板材を前後の搬送方向に流れることを阻止して、左右の幅方向にのみ流れるように規制する規制ローラーが、該スプレー管そしてスプレーノズルに対向する領域の前後に、対をなして配設され、もって搬送される該基板材に圧接していること、を特徴とするメッキ基板のエッチング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−332300(P2006−332300A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−153280(P2005−153280)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000220240)東京化工機株式会社 (22)
【Fターム(参考)】