メッキ金属膜基板とその製造方法、及び半導体装置
【課題】一度の成膜で、所望の平面パターンと膜厚分布を有するメッキ金属膜を成膜することが可能なメッキ金属膜基板とその製造方法を提供する。
【解決手段】メッキ金属膜基板1は、基板上に少なくとも1層の給電金属膜20と少なくとも1層のメッキ金属膜30とを順次有し、少なくとも1層の給電金属膜20は、少なくとも1層のメッキ金属膜30の下地が相対的に高抵抗な高抵抗部20Hと、メッキ金属膜30の下地が相対的に低抵抗な低抵抗部20Lとを有するものである。
【解決手段】メッキ金属膜基板1は、基板上に少なくとも1層の給電金属膜20と少なくとも1層のメッキ金属膜30とを順次有し、少なくとも1層の給電金属膜20は、少なくとも1層のメッキ金属膜30の下地が相対的に高抵抗な高抵抗部20Hと、メッキ金属膜30の下地が相対的に低抵抗な低抵抗部20Lとを有するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッキ金属膜基板とその製造方法、及びこれを用いた半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4〜図6を参照して、従来の電界メッキ成膜方法について説明する。図4〜図6は断面図である。
【0003】
図4に示すように、従来一般的な電界メッキ成膜では、基板(図示せず)上に給電金属膜120を成膜した後、この上に、メッキ成長部に開口部151を有するレジスト150をパターン形成し、この基板をメッキ液に浸し、給電金属膜120に電圧を印加することで、レジスト150の開口部151内にメッキ金属部131からなる所定のパターンのメッキ金属膜130が成膜される。
【0004】
上記の方法では、メッキ金属部が複数ある場合、レジスト開口部の開口径によってその内部のメッキ成長速度が決まり、レジスト開口部の開口径が同一であれば、メッキ成長速度がほぼ同一となり、ほぼ同一膜厚のメッキ金属部が成長する。そのため、異なる膜厚の複数のメッキ金属部を成長したい場合には、メッキ金属部の膜厚毎に異なるパターンのレジストを形成して、それぞれ別工程でメッキ成膜を行う必要があるため、非効率的でリードタイムが長くなってしまう。
【0005】
特許文献1には、レジストに開口径の異なる複数の開口部を設けることで、一度のメッキ成膜で異なる膜厚の複数のメッキ金属部を有するメッキ金属膜を成膜する方法が開示されている(請求項5及び図4(A)〜(D))。
図5を参照して、特許文献1に記載の方法について説明する。図5は、特許文献1の図4(C)を簡略化したものである。
【0006】
特許文献1に記載の方法では、基板(図示せず)上に給電金属膜120を成膜し、開口径の異なる複数の開口部151、152を有するレジスト150をパターン形成し、この基板をメッキ液に浸し、給電金属膜120に電圧を印加することで、膜厚の異なるメッキ金属部131、132を有するメッキ金属膜130を成膜する。
レジスト150の開口部151〜152の開口径をD11〜D12とする。図示する例では、D11<D12である。
【0007】
特許文献1の方法では、開口径の相対的に小さい開口部151では新鮮なメッキ液が供給されにくいため、この内部に形成されるメッキ金属部131は相対的に薄く、開口径の相対的に大きい開口部152では新鮮なメッキ液が供給されやすいため、この内部にメッキ金属部132は相対的に厚く成長する(段落0011を参照)。メッキ金属部131〜132の膜厚をT11〜T12とすると、T11<T12となる。
【0008】
特許文献1の方法では、レジスト開口部の開口径によってその内部に成長するメッキ金属部の膜厚が決まる。そのため、配線等に使用される複数のメッキ金属部のパターン幅の大小関係が決まれば、それらの膜厚の大小関係が自ずと決まってしまう。そのため、複数のメッキ金属部のパターン幅と膜厚とを自由に設計することができない。
例えば、異なる開口径の複数のレジスト開口部には同一膜厚のメッキ金属部を成長することができない。同一開口径の複数のレジスト開口部に異なる膜厚のメッキ金属部を成長することができない。
【0009】
特許文献2には、相対的に開口径の大きい開口部を有する下層レジストの上に相対的に開口径の小さい開口部を有する上層レジストを積層することで、パターン幅が異なるが膜厚がほぼ同一の複数のメッキ金属部を有するメッキ金属膜を成膜することが可能な成膜方法が提案されている(請求項1及び図2)。
図6を参照して、特許文献2に記載の方法について説明する。図6は、特許文献2の図2を簡略化したものである。
【0010】
特許文献2に記載の方法では、基板(図示せず)上に給電金属膜120を成膜し、複数の開口部151〜153を有する下層レジスト150と開口部161〜163を有する上層レジスト160とを順次パターン形成し、この基板をメッキ液に浸し、給電金属膜120に電圧を印加することで、パターン幅及び/又は膜厚の異なる複数のメッキ金属部131〜133を有するメッキ金属膜130を成膜することができる。
【0011】
特許文献2では、メッキ液の入口となる上層レジスト160の開口部161〜163の開口径によって、その下に成長するメッキ金属部131〜133の成長速度と膜厚が決まるとされている。上層レジスト160の開口部161〜163の開口径とメッキ金属部131〜133の膜厚との関係とその理由は、特許文献1と同様である。
下層レジスト150の開口部151〜153の開口径をD11〜D13とし、上層レジスト160の開口部161〜163の開口径をD14〜D16とする。図示する例では、D11=D14=D15<D12=D13=D16である。メッキ金属部131〜133の膜厚をT11〜T13とすると、T11=T12<T13となる。
【0012】
特許文献2の方法では、異なるパターン幅で異なる膜厚のメッキ金属部を成長すること(メッキ金属部131とメッキ金属部133との関係を参照)、異なるパターン幅でほぼ同一膜厚のメッキ金属部を成長すること(メッキ金属部131とメッキ金属部132との関係を参照)、及び、同一パターン幅で異なる膜厚のメッキ金属部を成長すること(メッキ金属部132とメッキ金属部133との関係を参照)が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平10-64953号公報
【特許文献2】特開2003-218113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記のように、特許文献2に記載の方法では特許文献1に記載の方法に比較して、複数のメッキ金属部のパターン幅及び膜厚の設計自由度が高い。
しかしながら、特許文献2に記載の方法では異なるパターンの複数のレジストを積層する必要がある。特許文献2では、相対的に開口径の大きい開口部を有する下層レジストの上に相対的に開口径の小さい開口部を有する上層レジストを積層することで、メッキ液の入口径を狭めている。しかしながら、下層レジストの開口部上に上層レジストを形成することは実際には容易ではなく、できたとしても上層と下層のレジスト開口径の差を大きく取ることはできない。
【0015】
特許文献2では、あるメッキ成長部においては、上層レジストの開口径によって、その下に成長するメッキ金属膜の膜厚が決まることが前提となっている。しかしながら、メッキ液の入口径が同一でも基板側の開口部の径が異なれば、メッキ液の拡散速度の影響で、メッキ成長速度が変わり、形成されるメッキ金属部の膜厚が変わると考えられる。
したがって、各メッキ成長部におけるメッキ膜厚を精度良く制御するには、積層する複数のレジストのそれぞれの開口径と膜厚、及びメッキ液の拡散を考慮した3次元の流体力学シュミレーションが必要であり、計算が複雑である。換言すれば、特許文献2では膜厚制御を精度良く実施することが難しい。
以上の理由から、特許文献2に記載の方法は実用的なものとは言えない。
【0016】
加えて、一般に市販のメッキ装置及びメッキ液は、より均一な膜厚が得られるように開発されており、特許文献1,2のようにメッキ成長部によってレジスト開口径を変えるだけでは、複数のメッキ金属部の膜厚を大きく変えることは難しい。
【0017】
一方、本来は均一な膜厚なメッキ金属膜を成膜したいにもかかわらず、膜厚の面内ばらつきが生じてしまう場合がある。
【0018】
特許文献1の技術を逆に考えれば、本来均一な膜厚なメッキ金属膜を成膜したい場合でも、レジスト開口部の開口径が変われば、その内部に成長するメッキ金属部の膜厚が異なってしまうことになる。したがって、特許文献1の方法では、異なるパターン幅で同一膜厚の複数のメッキ金属部を有するメッキ金属膜を成膜することができない。
【0019】
その他にも、一般に半導体ウェーハにメッキ成膜を行う場合、給電金属膜に電圧を供給する給電部(電圧印加電極)は半導体ウェーハの外周部に設けられることが多い。この場合、メッキ金属膜の膜厚の分布は、給電部に近い外周部側が厚く、中央部側が薄くなる傾向にある。この膜厚分布は半導体ウェーハの径が大きい程、顕著となる。かかる膜厚の面内ばらつきを解消するために、従来は給電金属膜の抵抗を小さくして、給電金属膜全面に良好に電圧が印加されるように工夫している。そのため、給電金属膜としてAu等の高価な低抵抗金属を使用しており、高コストになっている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明のメッキ金属膜基板は、
基板上に少なくとも1層の給電金属膜と少なくとも1層のメッキ金属膜とを順次有するメッキ金属膜基板であって、
前記少なくとも1層の給電金属膜は、前記少なくとも1層のメッキ金属膜の下地が相対的に高抵抗な高抵抗部と、前記メッキ金属膜の下地が相対的に低抵抗な低抵抗部とを有するものである。
【0021】
本発明のメッキ金属膜基板の製造方法は、
基板上に少なくとも1層の給電金属膜を形成する工程(A)と、
前記少なくとも1層の給電金属膜上に、少なくとも1層のメッキ金属膜を形成する工程(C)とを有するメッキ金属膜基板の製造方法であって、
工程(A)において、前記メッキ金属膜の下地が相対的に高抵抗な高抵抗部と、前記メッキ金属膜の下地が相対的に低抵抗な低抵抗部とを有する少なくとも1層の給電金属膜を形成するものである。
【0022】
本発明の半導体装置は、上記の本発明のメッキ金属膜基板を用いたものである。
【0023】
本発明のメッキ金属膜基板及びその製造方法では、給電金属膜におけるメッキ金属膜の下地の面内抵抗分布を自由に設計することができるので、これによってメッキ金属膜の膜厚をそれぞれの面内位置によって制御することができる。
本発明のメッキ金属膜基板及びその製造方法では、上記の面内抵抗分布、及びメッキ成膜にあたって必要に応じて形成されるレジストパターンとによって、一度の成膜で、所望の平面パターンと膜厚分布を有するメッキ金属膜を成膜することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、一度の成膜で、所望の平面パターンと膜厚分布を有するメッキ金属膜を成膜することが可能なメッキ金属膜基板とその製造方法、及びこれを用いた半導体装置を提供することができる。
本明細書において、「所望の膜厚分布を有するメッキ金属膜」には、基板面内ほぼ均一な膜厚を有するメッキ金属膜、及び、基板面内位置によって異なる膜厚を有するメッキ金属膜が含まれるものとする。
「所望の平面パターンを有するメッキ金属膜」には、所定のパターンで形成されたメッキ金属膜、及び、パターン形成されていないベタ膜のメッキ金属膜が含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態のメッキ金属膜基板の断面図である。
【図2A】図1のメッキ金属膜基板の製造工程図である。
【図2B】図1のメッキ金属膜基板の製造工程図である。
【図2C】図1のメッキ金属膜基板の製造工程図である。
【図2D】図1のメッキ金属膜基板の製造工程図である。
【図2E】図1のメッキ金属膜基板の製造工程図である。
【図3A】第2実施形態のメッキ金属膜基板の断面図である。
【図3B】図3Aのメッキ金属膜基板における給電金属膜のパターンを示す平面図である。
【図4】従来一般的なメッキ成膜方法を説明するための断面図である。
【図5】特許文献1に記載の方法を説明するための断面図である。
【図6】特許文献2に記載の方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
「第1実施形態」
図面を参照して、本発明に係る第1実施形態のメッキ金属膜基板及びその製造方法について説明する。
図1はメッキ金属膜基板の断面図であり、図2A〜図2Eは製造工程図である。図面上は適宜実際のものとは異ならせて簡略化してある。
【0027】
本実施形態のメッキ金属膜基板1は、基板(図示せず)上に、絶縁膜10と、積層構造の給電金属膜20と、単層構造のメッキ金属膜30とが順次形成されたものである。
【0028】
本実施形態では、給電金属膜20は、パターン形成されていない相対的に高抵抗な高抵抗給電金属膜21と、その上にパターン形成された相対的に低抵抗な低抵抗給電金属膜22との積層膜である。
メッキ金属膜30は、上記給電金属膜20上に、パターン幅及び/又は膜厚の異なる複数のメッキ金属部31〜33を有している。
メッキ金属膜30は、組成の異なる積層膜でもよい。
図示する例では、メッキ金属部31〜33のパターン幅W1〜W3と膜厚T1〜T3は、下記の関係を有している。
W1=W2=W3、T1<T2<T3
本実施形態において、「同一幅」には、製造上のばらつきは含まれるものとする。
【0029】
低抵抗給電金属膜22は、メッキ金属部31、32の直下に形成されておらず、メッキ金属部33の直下に形成されている。その結果、給電金属膜20は、メッキ金属膜30の下地が高抵抗給電金属膜21が露出した相対的に高抵抗な高抵抗部20Hと、メッキ金属膜30の下地が低抵抗給電金属膜22が露出した相対的に低抵抗な低抵抗部20Lとを有している。メッキ金属部31、32は高抵抗部20H上に形成され、メッキ金属部33は低抵抗部20L上に形成されている。
【0030】
本実施形態において、メッキ金属部31〜33はいずれもパターン幅は同一であるが、低抵抗給電金属膜22(低抵抗部20L)上に形成されたメッキ金属部33、高抵抗給電金属膜21(高抵抗部20H)上に形成され、かつ低抵抗給電金属膜22(低抵抗部20L)から比較的近いメッキ金属部32、高抵抗給電金属膜21(高抵抗部20H)上に形成され、かつ低抵抗給電金属膜22(低抵抗部20L)から比較的遠いメッキ金属部31の順に、メッキ金属部の膜厚が小さくなっている。
【0031】
本実施形態のメッキ金属基板の製造方法では、一度の成膜で、所望の平面パターンと膜厚分布を有するメッキ金属膜30を成膜することができる。
従来一般的な電界メッキ成膜方法では、メッキ金属部のパターン幅が同一であれば同一膜厚となるのに対して、本実施形態では、給電金属膜20においてメッキ金属膜30の下地に基板面内抵抗分布を設けることで、後述するように、一度の成膜で、同一パターン幅でも異なる膜厚のメッキ金属部31〜33を成長させることが可能である。
【0032】
以下図2A〜図2Eを参照して、本実施形態のメッキ金属膜基板1の製造方法の一例について説明する。
【0033】
<工程(A)>
はじめに図2Aに示すように、シリコン酸化膜等の絶縁膜10を形成したシリコン基板等の基板(図示せず)上に高抵抗給電金属膜21を形成する。
本実施形態では、パターン形成されていないベタ膜の高抵抗給電金属膜21を成膜する(工程(A1−X))。
高抵抗給電金属膜21の材料は相対的に高抵抗な導電材料であれば特に制限されず、Ti等が好ましい。
高抵抗給電金属膜21の成膜方法は特に制限なく、蒸着法及びスパッタ法等の気相成膜法等が挙げられる。
高抵抗給電金属膜21の膜厚は特に制限されず、ピンホールがないように安定成膜でき、良好な導電性が得られる範囲が好ましく、例えば500Å程度あれば充分である。
【0034】
次に、低抵抗給電金属膜22を形成する(工程(A2))。
本実施形態では、高抵抗給電金属膜21上にパターン形成された低抵抗給電金属膜22を形成する(工程(A2−X))。
例えば図2B〜図2Cに示すように、高抵抗給電金属膜21上において低抵抗給電金属膜22の非形成領域にのみレジスト40をパターン形成し、基板全面に低抵抗給電金属膜22を成膜した後、リフトオフ法によりレジスト40及びその直上に形成された低抵抗給電金属膜22を部分除去することで、所望のパターンの低抵抗給電金属膜22を形成することができる。
【0035】
低抵抗給電金属膜22の材料は相対的に低抵抗な導電材料であれば特に制限されず、Au等が好ましい。
低抵抗給電金属膜22の成膜方法は特に制限なく、蒸着法及びスパッタ法等の気相成膜法等が挙げられる。
低抵抗給電金属膜22の膜厚は特に制限されず、ピンホールがないように安定成膜でき、良好な導電性が得られる範囲が好ましく、例えば1000〜2000Å程度あれば充分である。
低抵抗給電金属膜22のパターニング法については、上記のリフトオフ法に限らず、通常のフォトリソグラフィ法など公知の方法を用いることができる。
【0036】
以上のようにして、パターン形成されていないベタ膜の高抵抗給電金属膜21と、その上にパターン形成された低抵抗給電金属膜22との積層膜からなる給電金属膜20を形成することができる。
【0037】
<工程(B)>
次に図2Dに示すように、上記の給電金属膜20上にレジスト50をパターン形成する。
レジスト50のパターンは、メッキ金属膜30のメッキ金属部31〜33の形成領域に開口部51〜53を有するパターンとする。図示する例では、開口部51〜53の径をD1〜D3とすると、これらは開口径は同一である(D1=D2=D3)。
レジスト50の膜厚は、メッキ金属膜30の最高到達高さより大きいものとする。
【0038】
<工程(C)>
次に図2Dに示すように、上記のレジスト50をマスクとして給電金属膜20上に、メッキ金属膜30を成膜する。
メッキ金属膜30の成膜は、上記のレジスト50を形成した基板をメッキ液に浸し、低抵抗給電金属膜22に電圧を印加することで、実施できる。低抵抗給電金属膜22に電圧を印加することで、その下層の高抵抗給電金属膜21にも電圧が印加される。
【0039】
本実施形態では、給電金属膜20をパターン形成されていない高抵抗給電金属膜21とパターン形成された低抵抗給電金属膜22との積層膜としている。かかる構成では、給電金属膜20に電圧を供給する給電部(電圧印加電極)から各メッキ成長部(各レジスト開口部)までの電気抵抗をそれぞれ制御することができる。
【0040】
低抵抗給電金属膜22(低抵抗部20L)を下地とするメッキ金属部33は、給電部からの電気抵抗が相対的に小さく、より多くの電子供給があるため、相対的に厚くメッキ成長する。
メッキ金属部31、32はメッキ金属部33と異なり高抵抗給電金属膜21(高抵抗部20H)を下地としており、給電部からの電気抵抗が相対的に高く電子供給がより少なく、メッキ金属部33より相対的に薄くメッキ成長する。
メッキ金属部31とメッキ金属部32とはいずれも高抵抗給電金属膜21(高抵抗部20H)を下地としているが、メッキ金属部32はメッキ金属部31よりも低抵抗給電金属膜22(低抵抗部20L)により近いため、メッキ金属部32はメッキ金属部31よりも相対的に厚くメッキ成長する。
以上の結果、レジスト開口部51〜53の径が同一であっても、一度の成膜で異なる膜厚のメッキ金属部31〜33が成長する。メッキ金属部31〜33の膜厚をT1〜T3とすると、T1<T2<T3となる。
【0041】
本実施形態では、給電金属膜20をパターン形成されていない高抵抗給電金属膜21とその上に形成されたパターン形成された低抵抗給電金属膜22との積層構造としたが、これらは逆の構造、すなわち、パターン形成されていない低抵抗給電金属膜22とその上に形成されたパターン形成された高抵抗給電金属膜21との積層構造としてもよい。ただし、低抵抗給電金属の使用が少ない方が低コストであり、好ましい。高抵抗給電金属膜21と低抵抗給電金属膜22との両方をパターン膜としてもよい。
給電金属膜20は電気抵抗の異なる3層以上の積層構造でもよい。
積層する抵抗の異なる膜のパターンをそれぞれ自由に設計することで、給電金属膜20におけるメッキ金属膜30の下地の面内抵抗分布を自由に設計することができ、これによってメッキ金属膜30の膜厚成長をそれぞれの面内位置によって自由に制御することができる。
【0042】
給電金属膜20は高抵抗部20Hと低抵抗部20Lとを有する単層構造でもよい。例えば、低抵抗金属膜21の単層構造に対して、この表面を部分的に酸化させる等により、一部を高抵抗部20Hとすることができる。単層構造の場合も、3以上の抵抗の異なる部分を有する構成としてもよい。
【0043】
「発明が解決しようとする課題」の項で説明したように、特許文献1の方法では、レジスト開口部の開口径でその内部に成長するメッキ金属部の膜厚を制御しているので、本来均一な膜厚なメッキ金属膜を成膜したい場合でも、レジスト開口部の開口径が変われば、その内部に成長するメッキ金属部の膜厚が異なってしまう。これに対して、本実施形態では、給電金属膜20の面内抵抗分布でその内部に成長するメッキ金属部31〜33の膜厚を制御しているので、異なるパターン幅の複数のメッキ金属部31〜33を有するほぼ均一厚のメッキ金属膜30を成膜することが可能である。
【0044】
本実施形態では、レジスト50の開口部51〜53の径D1〜D3、及びメッキ金属部31〜33のパターン幅W1〜W3が同一の場合について説明した。
レジスト50の開口部51〜53の径D1〜D3をそれぞれ個別に設定することでメッキ金属部31〜33のパターン幅W1〜W3をそれぞれ個別に設定することができるので、メッキ金属膜30の平面パターンを自由に設計することができる。
ここで、「背景技術」の項で挙げた特許文献1に記載があるように、下地が同一条件であれば、レジスト開口部の径が大きくなる程、相対的に厚いメッキ金属部が成長する傾向にある。
したがって、本実施形態では、給電金属膜20におけるメッキ金属膜30の下地の面内抵抗分布と、レジスト50の開口パターンとを組み合わせることで、一度の成膜で、所望の平面パターンと膜厚分布を有するメッキ金属膜30を成膜することができる。
【0045】
本実施形態では、「背景技術」の項で挙げた特許文献2のように、異なるパターンの複数のレジストを積層する必要がない。
異なるパターンの複数のレジストを積層する特許文献2では、メッキ金属厚を精度良く予測するためには3次元の流体力学シュミレーションを必要とするが、本実施形態では、給電金属膜20の面内抵抗分布という2次元シュミレーションでメッキ金属膜厚を予測することができるため、計算が容易である。そのため、メッキ金属膜30の膜厚制御がしやすく、高精度な膜厚制御が可能である。
【0046】
一般に市販のメッキ装置及びメッキ液はより均一な膜厚になるように開発されており、従来技術では大きなメッキ厚の差を得ることは難しい。本実施形態では、メッキ金属膜厚は電子供給量で制御するため、より均一な膜厚になるように開発された従来のメッキ装置及びメッキ液を用いても、膜厚分布をより大きくすることが可能である。
【0047】
以上説明したように、本実施形態によれば、一度の成膜で、所望の平面パターンと膜厚分布を有するメッキ金属膜30を成膜することが可能なメッキ金属膜基板1とその製造方法を提供することができる。
【0048】
メッキ金属膜30は電極及び配線等の導電部として使用することができる。
本実施形態のメッキ金属膜基板1を用いて、メッキ金属膜30を電極及び配線等の導電部とする各種半導体装置等の各種デバイスを製造することができる。
【0049】
「第2実施形態」
図面を参照して、本発明に係る第2実施形態のメッキ金属膜基板及びその製造方法について説明する。
図3Aは本実施形態のメッキ金属膜基板の断面図である。
図3Bは本実施形態のメッキ金属膜基板における給電金属膜のパターンを示す平面図である。
図3Aは図3BのIIIA-IIIA断面に対応した断面図である。
本実施形態の基本構成は第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同一の構成要素については同一の参照符号を付して、説明は省略する。
【0050】
本実施形態のメッキ金属膜基板2は、ディスク状の半導体ウェーハを基板とし(図示せず、図3Bの平面形状を参照)、この基板上に、絶縁膜10と、積層構造の給電金属膜20と、単層構造のメッキ金属膜30とが順次形成されたものである。
【0051】
本実施形態においても、給電金属膜20は、パターン形成されていない相対的に高抵抗な高抵抗給電金属膜21と、その上にパターン形成された相対的に低抵抗な低抵抗給電金属膜22との積層膜である。
その結果、本実施形態においても、給電金属膜20は、メッキ金属膜30の下地が高抵抗給電金属膜21が露出した相対的に高抵抗な高抵抗部20Hと、メッキ金属膜30の下地が低抵抗給電金属膜22が露出した相対的に低抵抗な低抵抗部20Lを有している。
【0052】
低抵抗給電金属膜22は平面視、基板の外周部と基板の中央部とを通るパターンで形成されている。本実施形態では、低抵抗給電金属膜22は、基板の外周部、基板の中央部、及び基板の外周部と基板の中央部とを接続する十字部に形成されている。
図中、低抵抗給電金属膜22において、基板の外周部に形成された部分に符号22E、基板の中央部に形成された部分に符号22C、基板の外周部と基板の中央部とを接続する十字部に形成された部分に符号22Xを付してある。
メッキ金属膜30は、基板面内全体にほぼ均一厚で形成されている。
メッキ金属膜30は、組成の異なる積層膜でもよい。
【0053】
以下、本実施形態のメッキ金属膜基板2の製造方法の一例について説明する。
<工程(A)>
はじめに、シリコン酸化膜等の絶縁膜10を形成した基板(本実施形態では半導体ウェーハ)上に高抵抗給電金属膜21を形成する。
本実施形態では、パターン形成されていない高抵抗給電金属膜21を成膜する(工程(A1−X))。
高抵抗給電金属膜21の材料、成膜方法、及び膜厚は特に制限されず、好適な条件は第1実施形態と同様である。
【0054】
次に、低抵抗給電金属膜22を形成する。
本実施形態では、高抵抗給電金属膜21上にパターン形成された低抵抗給電金属膜22を形成する(工程(A2−X))。
低抵抗給電金属膜22の材料、成膜方法、膜厚、及びパターニング法は特に制限されず、好適な条件は第1実施形態と同様である。
以上のようにして、パターン形成されていない高抵抗給電金属膜21と、その上にパターン形成された低抵抗給電金属膜22との積層膜からなる給電金属膜20を形成することができる。
【0055】
<工程(C)>
次に、上記の給電金属膜20上に、メッキ金属膜30を成膜する。
メッキ金属膜30の成膜は、上記の給電金属膜20を形成した基板をメッキ液に浸し、低抵抗給電金属膜22に電圧を印加することで、実施できる。低抵抗給電金属膜22に電圧を印加することで、その下層の高抵抗給電金属膜21にも電圧が印加される。
【0056】
本実施形態においても、給電金属膜20をパターン形成されていない高抵抗給電金属膜21とパターン形成された低抵抗給電金属膜22との積層膜としている。かかる構成では、給電金属膜20に電圧を供給する給電部(電圧印加電極)から各メッキ成長部までの電気抵抗をそれぞれ制御することができる。
【0057】
「発明が解決しようとする課題」において、従来半導体ウェーハにメッキ成膜を行う場合、メッキ金属膜の膜厚の分布は、給電部に近い外周部側が厚く中央部側が薄くなる傾向にあり、給電金属膜としてAu等の高価な低抵抗金属を使用していることを述べた。
【0058】
本実施形態では、低抵抗給電金属膜22は、基板の外周部、基板の中央部、及び基板の外周部と基板の中央部とを接続する十字部にのみパターン形成されている。
かかる構成では、Au等の高価な低抵抗金属を基板面内全体に使用することなく部分的な使用で、基板の外周部から基板の中央部に効果的に給電を行うことができ、結果として、基板面内全体に効果的に給電がなされる。そのため、図示するように、基板面内にほぼ均一厚のメッキ金属膜30を成長させることができる。
低抵抗給電金属膜22のパターンは、図示するパターンに限らない。
【0059】
本実施形態では、メッキ金属膜30はパターン形成されていない膜としたが、第1実施形態と同様、レジストを用いてパターン形成しても構わない。その場合でも、メッキ金属膜30の膜厚は基板面内ほぼ均一とすることができる。
【0060】
以上説明したように、一度の成膜で、所望の平面パターンと膜厚分布を有するメッキ金属膜を成膜することが可能な本発明のメッキ金属膜基板とその製造方法は、従来の電界メッキ成膜では、本来は均一な膜厚なメッキ金属膜を成膜したいにもかかわらず、膜厚の面内ばらつきが生じてしまう場合にも適用でき、給電金属膜の面内抵抗分布を制御することにより、基板面内ほぼ均一厚のメッキ金属膜を成膜することを可能とする。
【0061】
ベタ膜のメッキ金属膜30を公知のフォトリソグラフィ法等によりパターニングする、あるいはメッキ成膜時にレジストを用いてメッキ金属膜30をパターン成膜することで、メッキ金属膜30を電極及び配線等の導電部として使用することができる。
本実施形態のメッキ金属膜基板2を用いて、メッキ金属膜30を電極及び配線等の導電部とする半導体装置を製造することができる。
【0062】
「設計変更」
本発明は上記実施形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において適宜設計変更可能である。
【符号の説明】
【0063】
1、2 メッキ金属膜基板
10 絶縁膜
20 給電金属膜
20H 高抵抗部
20L 低抵抗部
21 高抵抗給電金属膜
22 低抵抗給電金属膜
30 メッキ金属膜
31〜33 メッキ金属部
40、50 レジスト
51〜53 開口部
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッキ金属膜基板とその製造方法、及びこれを用いた半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4〜図6を参照して、従来の電界メッキ成膜方法について説明する。図4〜図6は断面図である。
【0003】
図4に示すように、従来一般的な電界メッキ成膜では、基板(図示せず)上に給電金属膜120を成膜した後、この上に、メッキ成長部に開口部151を有するレジスト150をパターン形成し、この基板をメッキ液に浸し、給電金属膜120に電圧を印加することで、レジスト150の開口部151内にメッキ金属部131からなる所定のパターンのメッキ金属膜130が成膜される。
【0004】
上記の方法では、メッキ金属部が複数ある場合、レジスト開口部の開口径によってその内部のメッキ成長速度が決まり、レジスト開口部の開口径が同一であれば、メッキ成長速度がほぼ同一となり、ほぼ同一膜厚のメッキ金属部が成長する。そのため、異なる膜厚の複数のメッキ金属部を成長したい場合には、メッキ金属部の膜厚毎に異なるパターンのレジストを形成して、それぞれ別工程でメッキ成膜を行う必要があるため、非効率的でリードタイムが長くなってしまう。
【0005】
特許文献1には、レジストに開口径の異なる複数の開口部を設けることで、一度のメッキ成膜で異なる膜厚の複数のメッキ金属部を有するメッキ金属膜を成膜する方法が開示されている(請求項5及び図4(A)〜(D))。
図5を参照して、特許文献1に記載の方法について説明する。図5は、特許文献1の図4(C)を簡略化したものである。
【0006】
特許文献1に記載の方法では、基板(図示せず)上に給電金属膜120を成膜し、開口径の異なる複数の開口部151、152を有するレジスト150をパターン形成し、この基板をメッキ液に浸し、給電金属膜120に電圧を印加することで、膜厚の異なるメッキ金属部131、132を有するメッキ金属膜130を成膜する。
レジスト150の開口部151〜152の開口径をD11〜D12とする。図示する例では、D11<D12である。
【0007】
特許文献1の方法では、開口径の相対的に小さい開口部151では新鮮なメッキ液が供給されにくいため、この内部に形成されるメッキ金属部131は相対的に薄く、開口径の相対的に大きい開口部152では新鮮なメッキ液が供給されやすいため、この内部にメッキ金属部132は相対的に厚く成長する(段落0011を参照)。メッキ金属部131〜132の膜厚をT11〜T12とすると、T11<T12となる。
【0008】
特許文献1の方法では、レジスト開口部の開口径によってその内部に成長するメッキ金属部の膜厚が決まる。そのため、配線等に使用される複数のメッキ金属部のパターン幅の大小関係が決まれば、それらの膜厚の大小関係が自ずと決まってしまう。そのため、複数のメッキ金属部のパターン幅と膜厚とを自由に設計することができない。
例えば、異なる開口径の複数のレジスト開口部には同一膜厚のメッキ金属部を成長することができない。同一開口径の複数のレジスト開口部に異なる膜厚のメッキ金属部を成長することができない。
【0009】
特許文献2には、相対的に開口径の大きい開口部を有する下層レジストの上に相対的に開口径の小さい開口部を有する上層レジストを積層することで、パターン幅が異なるが膜厚がほぼ同一の複数のメッキ金属部を有するメッキ金属膜を成膜することが可能な成膜方法が提案されている(請求項1及び図2)。
図6を参照して、特許文献2に記載の方法について説明する。図6は、特許文献2の図2を簡略化したものである。
【0010】
特許文献2に記載の方法では、基板(図示せず)上に給電金属膜120を成膜し、複数の開口部151〜153を有する下層レジスト150と開口部161〜163を有する上層レジスト160とを順次パターン形成し、この基板をメッキ液に浸し、給電金属膜120に電圧を印加することで、パターン幅及び/又は膜厚の異なる複数のメッキ金属部131〜133を有するメッキ金属膜130を成膜することができる。
【0011】
特許文献2では、メッキ液の入口となる上層レジスト160の開口部161〜163の開口径によって、その下に成長するメッキ金属部131〜133の成長速度と膜厚が決まるとされている。上層レジスト160の開口部161〜163の開口径とメッキ金属部131〜133の膜厚との関係とその理由は、特許文献1と同様である。
下層レジスト150の開口部151〜153の開口径をD11〜D13とし、上層レジスト160の開口部161〜163の開口径をD14〜D16とする。図示する例では、D11=D14=D15<D12=D13=D16である。メッキ金属部131〜133の膜厚をT11〜T13とすると、T11=T12<T13となる。
【0012】
特許文献2の方法では、異なるパターン幅で異なる膜厚のメッキ金属部を成長すること(メッキ金属部131とメッキ金属部133との関係を参照)、異なるパターン幅でほぼ同一膜厚のメッキ金属部を成長すること(メッキ金属部131とメッキ金属部132との関係を参照)、及び、同一パターン幅で異なる膜厚のメッキ金属部を成長すること(メッキ金属部132とメッキ金属部133との関係を参照)が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平10-64953号公報
【特許文献2】特開2003-218113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記のように、特許文献2に記載の方法では特許文献1に記載の方法に比較して、複数のメッキ金属部のパターン幅及び膜厚の設計自由度が高い。
しかしながら、特許文献2に記載の方法では異なるパターンの複数のレジストを積層する必要がある。特許文献2では、相対的に開口径の大きい開口部を有する下層レジストの上に相対的に開口径の小さい開口部を有する上層レジストを積層することで、メッキ液の入口径を狭めている。しかしながら、下層レジストの開口部上に上層レジストを形成することは実際には容易ではなく、できたとしても上層と下層のレジスト開口径の差を大きく取ることはできない。
【0015】
特許文献2では、あるメッキ成長部においては、上層レジストの開口径によって、その下に成長するメッキ金属膜の膜厚が決まることが前提となっている。しかしながら、メッキ液の入口径が同一でも基板側の開口部の径が異なれば、メッキ液の拡散速度の影響で、メッキ成長速度が変わり、形成されるメッキ金属部の膜厚が変わると考えられる。
したがって、各メッキ成長部におけるメッキ膜厚を精度良く制御するには、積層する複数のレジストのそれぞれの開口径と膜厚、及びメッキ液の拡散を考慮した3次元の流体力学シュミレーションが必要であり、計算が複雑である。換言すれば、特許文献2では膜厚制御を精度良く実施することが難しい。
以上の理由から、特許文献2に記載の方法は実用的なものとは言えない。
【0016】
加えて、一般に市販のメッキ装置及びメッキ液は、より均一な膜厚が得られるように開発されており、特許文献1,2のようにメッキ成長部によってレジスト開口径を変えるだけでは、複数のメッキ金属部の膜厚を大きく変えることは難しい。
【0017】
一方、本来は均一な膜厚なメッキ金属膜を成膜したいにもかかわらず、膜厚の面内ばらつきが生じてしまう場合がある。
【0018】
特許文献1の技術を逆に考えれば、本来均一な膜厚なメッキ金属膜を成膜したい場合でも、レジスト開口部の開口径が変われば、その内部に成長するメッキ金属部の膜厚が異なってしまうことになる。したがって、特許文献1の方法では、異なるパターン幅で同一膜厚の複数のメッキ金属部を有するメッキ金属膜を成膜することができない。
【0019】
その他にも、一般に半導体ウェーハにメッキ成膜を行う場合、給電金属膜に電圧を供給する給電部(電圧印加電極)は半導体ウェーハの外周部に設けられることが多い。この場合、メッキ金属膜の膜厚の分布は、給電部に近い外周部側が厚く、中央部側が薄くなる傾向にある。この膜厚分布は半導体ウェーハの径が大きい程、顕著となる。かかる膜厚の面内ばらつきを解消するために、従来は給電金属膜の抵抗を小さくして、給電金属膜全面に良好に電圧が印加されるように工夫している。そのため、給電金属膜としてAu等の高価な低抵抗金属を使用しており、高コストになっている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明のメッキ金属膜基板は、
基板上に少なくとも1層の給電金属膜と少なくとも1層のメッキ金属膜とを順次有するメッキ金属膜基板であって、
前記少なくとも1層の給電金属膜は、前記少なくとも1層のメッキ金属膜の下地が相対的に高抵抗な高抵抗部と、前記メッキ金属膜の下地が相対的に低抵抗な低抵抗部とを有するものである。
【0021】
本発明のメッキ金属膜基板の製造方法は、
基板上に少なくとも1層の給電金属膜を形成する工程(A)と、
前記少なくとも1層の給電金属膜上に、少なくとも1層のメッキ金属膜を形成する工程(C)とを有するメッキ金属膜基板の製造方法であって、
工程(A)において、前記メッキ金属膜の下地が相対的に高抵抗な高抵抗部と、前記メッキ金属膜の下地が相対的に低抵抗な低抵抗部とを有する少なくとも1層の給電金属膜を形成するものである。
【0022】
本発明の半導体装置は、上記の本発明のメッキ金属膜基板を用いたものである。
【0023】
本発明のメッキ金属膜基板及びその製造方法では、給電金属膜におけるメッキ金属膜の下地の面内抵抗分布を自由に設計することができるので、これによってメッキ金属膜の膜厚をそれぞれの面内位置によって制御することができる。
本発明のメッキ金属膜基板及びその製造方法では、上記の面内抵抗分布、及びメッキ成膜にあたって必要に応じて形成されるレジストパターンとによって、一度の成膜で、所望の平面パターンと膜厚分布を有するメッキ金属膜を成膜することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、一度の成膜で、所望の平面パターンと膜厚分布を有するメッキ金属膜を成膜することが可能なメッキ金属膜基板とその製造方法、及びこれを用いた半導体装置を提供することができる。
本明細書において、「所望の膜厚分布を有するメッキ金属膜」には、基板面内ほぼ均一な膜厚を有するメッキ金属膜、及び、基板面内位置によって異なる膜厚を有するメッキ金属膜が含まれるものとする。
「所望の平面パターンを有するメッキ金属膜」には、所定のパターンで形成されたメッキ金属膜、及び、パターン形成されていないベタ膜のメッキ金属膜が含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態のメッキ金属膜基板の断面図である。
【図2A】図1のメッキ金属膜基板の製造工程図である。
【図2B】図1のメッキ金属膜基板の製造工程図である。
【図2C】図1のメッキ金属膜基板の製造工程図である。
【図2D】図1のメッキ金属膜基板の製造工程図である。
【図2E】図1のメッキ金属膜基板の製造工程図である。
【図3A】第2実施形態のメッキ金属膜基板の断面図である。
【図3B】図3Aのメッキ金属膜基板における給電金属膜のパターンを示す平面図である。
【図4】従来一般的なメッキ成膜方法を説明するための断面図である。
【図5】特許文献1に記載の方法を説明するための断面図である。
【図6】特許文献2に記載の方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
「第1実施形態」
図面を参照して、本発明に係る第1実施形態のメッキ金属膜基板及びその製造方法について説明する。
図1はメッキ金属膜基板の断面図であり、図2A〜図2Eは製造工程図である。図面上は適宜実際のものとは異ならせて簡略化してある。
【0027】
本実施形態のメッキ金属膜基板1は、基板(図示せず)上に、絶縁膜10と、積層構造の給電金属膜20と、単層構造のメッキ金属膜30とが順次形成されたものである。
【0028】
本実施形態では、給電金属膜20は、パターン形成されていない相対的に高抵抗な高抵抗給電金属膜21と、その上にパターン形成された相対的に低抵抗な低抵抗給電金属膜22との積層膜である。
メッキ金属膜30は、上記給電金属膜20上に、パターン幅及び/又は膜厚の異なる複数のメッキ金属部31〜33を有している。
メッキ金属膜30は、組成の異なる積層膜でもよい。
図示する例では、メッキ金属部31〜33のパターン幅W1〜W3と膜厚T1〜T3は、下記の関係を有している。
W1=W2=W3、T1<T2<T3
本実施形態において、「同一幅」には、製造上のばらつきは含まれるものとする。
【0029】
低抵抗給電金属膜22は、メッキ金属部31、32の直下に形成されておらず、メッキ金属部33の直下に形成されている。その結果、給電金属膜20は、メッキ金属膜30の下地が高抵抗給電金属膜21が露出した相対的に高抵抗な高抵抗部20Hと、メッキ金属膜30の下地が低抵抗給電金属膜22が露出した相対的に低抵抗な低抵抗部20Lとを有している。メッキ金属部31、32は高抵抗部20H上に形成され、メッキ金属部33は低抵抗部20L上に形成されている。
【0030】
本実施形態において、メッキ金属部31〜33はいずれもパターン幅は同一であるが、低抵抗給電金属膜22(低抵抗部20L)上に形成されたメッキ金属部33、高抵抗給電金属膜21(高抵抗部20H)上に形成され、かつ低抵抗給電金属膜22(低抵抗部20L)から比較的近いメッキ金属部32、高抵抗給電金属膜21(高抵抗部20H)上に形成され、かつ低抵抗給電金属膜22(低抵抗部20L)から比較的遠いメッキ金属部31の順に、メッキ金属部の膜厚が小さくなっている。
【0031】
本実施形態のメッキ金属基板の製造方法では、一度の成膜で、所望の平面パターンと膜厚分布を有するメッキ金属膜30を成膜することができる。
従来一般的な電界メッキ成膜方法では、メッキ金属部のパターン幅が同一であれば同一膜厚となるのに対して、本実施形態では、給電金属膜20においてメッキ金属膜30の下地に基板面内抵抗分布を設けることで、後述するように、一度の成膜で、同一パターン幅でも異なる膜厚のメッキ金属部31〜33を成長させることが可能である。
【0032】
以下図2A〜図2Eを参照して、本実施形態のメッキ金属膜基板1の製造方法の一例について説明する。
【0033】
<工程(A)>
はじめに図2Aに示すように、シリコン酸化膜等の絶縁膜10を形成したシリコン基板等の基板(図示せず)上に高抵抗給電金属膜21を形成する。
本実施形態では、パターン形成されていないベタ膜の高抵抗給電金属膜21を成膜する(工程(A1−X))。
高抵抗給電金属膜21の材料は相対的に高抵抗な導電材料であれば特に制限されず、Ti等が好ましい。
高抵抗給電金属膜21の成膜方法は特に制限なく、蒸着法及びスパッタ法等の気相成膜法等が挙げられる。
高抵抗給電金属膜21の膜厚は特に制限されず、ピンホールがないように安定成膜でき、良好な導電性が得られる範囲が好ましく、例えば500Å程度あれば充分である。
【0034】
次に、低抵抗給電金属膜22を形成する(工程(A2))。
本実施形態では、高抵抗給電金属膜21上にパターン形成された低抵抗給電金属膜22を形成する(工程(A2−X))。
例えば図2B〜図2Cに示すように、高抵抗給電金属膜21上において低抵抗給電金属膜22の非形成領域にのみレジスト40をパターン形成し、基板全面に低抵抗給電金属膜22を成膜した後、リフトオフ法によりレジスト40及びその直上に形成された低抵抗給電金属膜22を部分除去することで、所望のパターンの低抵抗給電金属膜22を形成することができる。
【0035】
低抵抗給電金属膜22の材料は相対的に低抵抗な導電材料であれば特に制限されず、Au等が好ましい。
低抵抗給電金属膜22の成膜方法は特に制限なく、蒸着法及びスパッタ法等の気相成膜法等が挙げられる。
低抵抗給電金属膜22の膜厚は特に制限されず、ピンホールがないように安定成膜でき、良好な導電性が得られる範囲が好ましく、例えば1000〜2000Å程度あれば充分である。
低抵抗給電金属膜22のパターニング法については、上記のリフトオフ法に限らず、通常のフォトリソグラフィ法など公知の方法を用いることができる。
【0036】
以上のようにして、パターン形成されていないベタ膜の高抵抗給電金属膜21と、その上にパターン形成された低抵抗給電金属膜22との積層膜からなる給電金属膜20を形成することができる。
【0037】
<工程(B)>
次に図2Dに示すように、上記の給電金属膜20上にレジスト50をパターン形成する。
レジスト50のパターンは、メッキ金属膜30のメッキ金属部31〜33の形成領域に開口部51〜53を有するパターンとする。図示する例では、開口部51〜53の径をD1〜D3とすると、これらは開口径は同一である(D1=D2=D3)。
レジスト50の膜厚は、メッキ金属膜30の最高到達高さより大きいものとする。
【0038】
<工程(C)>
次に図2Dに示すように、上記のレジスト50をマスクとして給電金属膜20上に、メッキ金属膜30を成膜する。
メッキ金属膜30の成膜は、上記のレジスト50を形成した基板をメッキ液に浸し、低抵抗給電金属膜22に電圧を印加することで、実施できる。低抵抗給電金属膜22に電圧を印加することで、その下層の高抵抗給電金属膜21にも電圧が印加される。
【0039】
本実施形態では、給電金属膜20をパターン形成されていない高抵抗給電金属膜21とパターン形成された低抵抗給電金属膜22との積層膜としている。かかる構成では、給電金属膜20に電圧を供給する給電部(電圧印加電極)から各メッキ成長部(各レジスト開口部)までの電気抵抗をそれぞれ制御することができる。
【0040】
低抵抗給電金属膜22(低抵抗部20L)を下地とするメッキ金属部33は、給電部からの電気抵抗が相対的に小さく、より多くの電子供給があるため、相対的に厚くメッキ成長する。
メッキ金属部31、32はメッキ金属部33と異なり高抵抗給電金属膜21(高抵抗部20H)を下地としており、給電部からの電気抵抗が相対的に高く電子供給がより少なく、メッキ金属部33より相対的に薄くメッキ成長する。
メッキ金属部31とメッキ金属部32とはいずれも高抵抗給電金属膜21(高抵抗部20H)を下地としているが、メッキ金属部32はメッキ金属部31よりも低抵抗給電金属膜22(低抵抗部20L)により近いため、メッキ金属部32はメッキ金属部31よりも相対的に厚くメッキ成長する。
以上の結果、レジスト開口部51〜53の径が同一であっても、一度の成膜で異なる膜厚のメッキ金属部31〜33が成長する。メッキ金属部31〜33の膜厚をT1〜T3とすると、T1<T2<T3となる。
【0041】
本実施形態では、給電金属膜20をパターン形成されていない高抵抗給電金属膜21とその上に形成されたパターン形成された低抵抗給電金属膜22との積層構造としたが、これらは逆の構造、すなわち、パターン形成されていない低抵抗給電金属膜22とその上に形成されたパターン形成された高抵抗給電金属膜21との積層構造としてもよい。ただし、低抵抗給電金属の使用が少ない方が低コストであり、好ましい。高抵抗給電金属膜21と低抵抗給電金属膜22との両方をパターン膜としてもよい。
給電金属膜20は電気抵抗の異なる3層以上の積層構造でもよい。
積層する抵抗の異なる膜のパターンをそれぞれ自由に設計することで、給電金属膜20におけるメッキ金属膜30の下地の面内抵抗分布を自由に設計することができ、これによってメッキ金属膜30の膜厚成長をそれぞれの面内位置によって自由に制御することができる。
【0042】
給電金属膜20は高抵抗部20Hと低抵抗部20Lとを有する単層構造でもよい。例えば、低抵抗金属膜21の単層構造に対して、この表面を部分的に酸化させる等により、一部を高抵抗部20Hとすることができる。単層構造の場合も、3以上の抵抗の異なる部分を有する構成としてもよい。
【0043】
「発明が解決しようとする課題」の項で説明したように、特許文献1の方法では、レジスト開口部の開口径でその内部に成長するメッキ金属部の膜厚を制御しているので、本来均一な膜厚なメッキ金属膜を成膜したい場合でも、レジスト開口部の開口径が変われば、その内部に成長するメッキ金属部の膜厚が異なってしまう。これに対して、本実施形態では、給電金属膜20の面内抵抗分布でその内部に成長するメッキ金属部31〜33の膜厚を制御しているので、異なるパターン幅の複数のメッキ金属部31〜33を有するほぼ均一厚のメッキ金属膜30を成膜することが可能である。
【0044】
本実施形態では、レジスト50の開口部51〜53の径D1〜D3、及びメッキ金属部31〜33のパターン幅W1〜W3が同一の場合について説明した。
レジスト50の開口部51〜53の径D1〜D3をそれぞれ個別に設定することでメッキ金属部31〜33のパターン幅W1〜W3をそれぞれ個別に設定することができるので、メッキ金属膜30の平面パターンを自由に設計することができる。
ここで、「背景技術」の項で挙げた特許文献1に記載があるように、下地が同一条件であれば、レジスト開口部の径が大きくなる程、相対的に厚いメッキ金属部が成長する傾向にある。
したがって、本実施形態では、給電金属膜20におけるメッキ金属膜30の下地の面内抵抗分布と、レジスト50の開口パターンとを組み合わせることで、一度の成膜で、所望の平面パターンと膜厚分布を有するメッキ金属膜30を成膜することができる。
【0045】
本実施形態では、「背景技術」の項で挙げた特許文献2のように、異なるパターンの複数のレジストを積層する必要がない。
異なるパターンの複数のレジストを積層する特許文献2では、メッキ金属厚を精度良く予測するためには3次元の流体力学シュミレーションを必要とするが、本実施形態では、給電金属膜20の面内抵抗分布という2次元シュミレーションでメッキ金属膜厚を予測することができるため、計算が容易である。そのため、メッキ金属膜30の膜厚制御がしやすく、高精度な膜厚制御が可能である。
【0046】
一般に市販のメッキ装置及びメッキ液はより均一な膜厚になるように開発されており、従来技術では大きなメッキ厚の差を得ることは難しい。本実施形態では、メッキ金属膜厚は電子供給量で制御するため、より均一な膜厚になるように開発された従来のメッキ装置及びメッキ液を用いても、膜厚分布をより大きくすることが可能である。
【0047】
以上説明したように、本実施形態によれば、一度の成膜で、所望の平面パターンと膜厚分布を有するメッキ金属膜30を成膜することが可能なメッキ金属膜基板1とその製造方法を提供することができる。
【0048】
メッキ金属膜30は電極及び配線等の導電部として使用することができる。
本実施形態のメッキ金属膜基板1を用いて、メッキ金属膜30を電極及び配線等の導電部とする各種半導体装置等の各種デバイスを製造することができる。
【0049】
「第2実施形態」
図面を参照して、本発明に係る第2実施形態のメッキ金属膜基板及びその製造方法について説明する。
図3Aは本実施形態のメッキ金属膜基板の断面図である。
図3Bは本実施形態のメッキ金属膜基板における給電金属膜のパターンを示す平面図である。
図3Aは図3BのIIIA-IIIA断面に対応した断面図である。
本実施形態の基本構成は第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同一の構成要素については同一の参照符号を付して、説明は省略する。
【0050】
本実施形態のメッキ金属膜基板2は、ディスク状の半導体ウェーハを基板とし(図示せず、図3Bの平面形状を参照)、この基板上に、絶縁膜10と、積層構造の給電金属膜20と、単層構造のメッキ金属膜30とが順次形成されたものである。
【0051】
本実施形態においても、給電金属膜20は、パターン形成されていない相対的に高抵抗な高抵抗給電金属膜21と、その上にパターン形成された相対的に低抵抗な低抵抗給電金属膜22との積層膜である。
その結果、本実施形態においても、給電金属膜20は、メッキ金属膜30の下地が高抵抗給電金属膜21が露出した相対的に高抵抗な高抵抗部20Hと、メッキ金属膜30の下地が低抵抗給電金属膜22が露出した相対的に低抵抗な低抵抗部20Lを有している。
【0052】
低抵抗給電金属膜22は平面視、基板の外周部と基板の中央部とを通るパターンで形成されている。本実施形態では、低抵抗給電金属膜22は、基板の外周部、基板の中央部、及び基板の外周部と基板の中央部とを接続する十字部に形成されている。
図中、低抵抗給電金属膜22において、基板の外周部に形成された部分に符号22E、基板の中央部に形成された部分に符号22C、基板の外周部と基板の中央部とを接続する十字部に形成された部分に符号22Xを付してある。
メッキ金属膜30は、基板面内全体にほぼ均一厚で形成されている。
メッキ金属膜30は、組成の異なる積層膜でもよい。
【0053】
以下、本実施形態のメッキ金属膜基板2の製造方法の一例について説明する。
<工程(A)>
はじめに、シリコン酸化膜等の絶縁膜10を形成した基板(本実施形態では半導体ウェーハ)上に高抵抗給電金属膜21を形成する。
本実施形態では、パターン形成されていない高抵抗給電金属膜21を成膜する(工程(A1−X))。
高抵抗給電金属膜21の材料、成膜方法、及び膜厚は特に制限されず、好適な条件は第1実施形態と同様である。
【0054】
次に、低抵抗給電金属膜22を形成する。
本実施形態では、高抵抗給電金属膜21上にパターン形成された低抵抗給電金属膜22を形成する(工程(A2−X))。
低抵抗給電金属膜22の材料、成膜方法、膜厚、及びパターニング法は特に制限されず、好適な条件は第1実施形態と同様である。
以上のようにして、パターン形成されていない高抵抗給電金属膜21と、その上にパターン形成された低抵抗給電金属膜22との積層膜からなる給電金属膜20を形成することができる。
【0055】
<工程(C)>
次に、上記の給電金属膜20上に、メッキ金属膜30を成膜する。
メッキ金属膜30の成膜は、上記の給電金属膜20を形成した基板をメッキ液に浸し、低抵抗給電金属膜22に電圧を印加することで、実施できる。低抵抗給電金属膜22に電圧を印加することで、その下層の高抵抗給電金属膜21にも電圧が印加される。
【0056】
本実施形態においても、給電金属膜20をパターン形成されていない高抵抗給電金属膜21とパターン形成された低抵抗給電金属膜22との積層膜としている。かかる構成では、給電金属膜20に電圧を供給する給電部(電圧印加電極)から各メッキ成長部までの電気抵抗をそれぞれ制御することができる。
【0057】
「発明が解決しようとする課題」において、従来半導体ウェーハにメッキ成膜を行う場合、メッキ金属膜の膜厚の分布は、給電部に近い外周部側が厚く中央部側が薄くなる傾向にあり、給電金属膜としてAu等の高価な低抵抗金属を使用していることを述べた。
【0058】
本実施形態では、低抵抗給電金属膜22は、基板の外周部、基板の中央部、及び基板の外周部と基板の中央部とを接続する十字部にのみパターン形成されている。
かかる構成では、Au等の高価な低抵抗金属を基板面内全体に使用することなく部分的な使用で、基板の外周部から基板の中央部に効果的に給電を行うことができ、結果として、基板面内全体に効果的に給電がなされる。そのため、図示するように、基板面内にほぼ均一厚のメッキ金属膜30を成長させることができる。
低抵抗給電金属膜22のパターンは、図示するパターンに限らない。
【0059】
本実施形態では、メッキ金属膜30はパターン形成されていない膜としたが、第1実施形態と同様、レジストを用いてパターン形成しても構わない。その場合でも、メッキ金属膜30の膜厚は基板面内ほぼ均一とすることができる。
【0060】
以上説明したように、一度の成膜で、所望の平面パターンと膜厚分布を有するメッキ金属膜を成膜することが可能な本発明のメッキ金属膜基板とその製造方法は、従来の電界メッキ成膜では、本来は均一な膜厚なメッキ金属膜を成膜したいにもかかわらず、膜厚の面内ばらつきが生じてしまう場合にも適用でき、給電金属膜の面内抵抗分布を制御することにより、基板面内ほぼ均一厚のメッキ金属膜を成膜することを可能とする。
【0061】
ベタ膜のメッキ金属膜30を公知のフォトリソグラフィ法等によりパターニングする、あるいはメッキ成膜時にレジストを用いてメッキ金属膜30をパターン成膜することで、メッキ金属膜30を電極及び配線等の導電部として使用することができる。
本実施形態のメッキ金属膜基板2を用いて、メッキ金属膜30を電極及び配線等の導電部とする半導体装置を製造することができる。
【0062】
「設計変更」
本発明は上記実施形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において適宜設計変更可能である。
【符号の説明】
【0063】
1、2 メッキ金属膜基板
10 絶縁膜
20 給電金属膜
20H 高抵抗部
20L 低抵抗部
21 高抵抗給電金属膜
22 低抵抗給電金属膜
30 メッキ金属膜
31〜33 メッキ金属部
40、50 レジスト
51〜53 開口部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に少なくとも1層の給電金属膜と少なくとも1層のメッキ金属膜とを順次有するメッキ金属膜基板であって、
前記少なくとも1層の給電金属膜は、前記少なくとも1層のメッキ金属膜の下地が相対的に高抵抗な高抵抗部と、前記メッキ金属膜の下地が相対的に低抵抗な低抵抗部とを有するメッキ金属膜基板。
【請求項2】
前記少なくとも1層の給電金属膜は、相対的に高抵抗な高抵抗給電金属膜と、相対的に低抵抗な低抵抗給電金属膜とを含む請求項1に記載のメッキ金属膜基板。
【請求項3】
前記少なくとも1層の給電金属膜は、パターン形成されていない高抵抗給電金属膜と、その上にパターン形成された低抵抗給電金属膜との積層膜である請求項2に記載のメッキ金属膜基板。
【請求項4】
前記基板が半導体ウェーハであり、前記少なくとも1層の給電金属膜において、前記低抵抗部は、前記基板の外周部と前記基板の中央部とを通るパターンで部分形成された請求項1〜3のいずれかに記載のメッキ金属膜基板。
【請求項5】
前記メッキ金属膜がパターン形成された膜である請求項1〜4のいずれかに記載のメッキ金属膜基板。
【請求項6】
基板上に少なくとも1層の給電金属膜を形成する工程(A)と、
前記少なくとも1層の給電金属膜上に、少なくとも1層のメッキ金属膜を成膜する工程(C)とを有するメッキ金属膜基板の製造方法であって、
工程(A)において、前記メッキ金属膜の下地が相対的に高抵抗な高抵抗部と、前記メッキ金属膜の下地が相対的に低抵抗な低抵抗部とを有する少なくとも1層の給電金属膜を形成するメッキ金属膜基板の製造方法。
【請求項7】
工程(A)と工程(C)との間に、前記少なくとも1層の給電金属膜上にレジストをパターン形成する工程(B)を有し、
工程(C)において、前記レジストをマスクとして前記少なくとも1層のメッキ金属膜を成膜する請求項6に記載のメッキ金属膜基板の製造方法。
【請求項8】
工程(A)は、
相対的に高抵抗な高抵抗給電金属膜を形成する工程(A1)と、
相対的に低抵抗な低抵抗給電金属膜を形成する工程(A2)とを有する請求項6又は7に記載のメッキ金属膜基板の製造方法。
【請求項9】
工程(A)は、
パターン形成されていない相対的に高抵抗な高抵抗給電金属膜を形成する工程(A1−X)と、
前記高抵抗給電金属膜上に、パターン形成された相対的に低抵抗な低抵抗給電金属膜を形成する工程(A2−X)とを有する請求項8に記載のメッキ金属膜基板の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれかに記載のメッキ金属膜基板を用いた半導体装置。
【請求項1】
基板上に少なくとも1層の給電金属膜と少なくとも1層のメッキ金属膜とを順次有するメッキ金属膜基板であって、
前記少なくとも1層の給電金属膜は、前記少なくとも1層のメッキ金属膜の下地が相対的に高抵抗な高抵抗部と、前記メッキ金属膜の下地が相対的に低抵抗な低抵抗部とを有するメッキ金属膜基板。
【請求項2】
前記少なくとも1層の給電金属膜は、相対的に高抵抗な高抵抗給電金属膜と、相対的に低抵抗な低抵抗給電金属膜とを含む請求項1に記載のメッキ金属膜基板。
【請求項3】
前記少なくとも1層の給電金属膜は、パターン形成されていない高抵抗給電金属膜と、その上にパターン形成された低抵抗給電金属膜との積層膜である請求項2に記載のメッキ金属膜基板。
【請求項4】
前記基板が半導体ウェーハであり、前記少なくとも1層の給電金属膜において、前記低抵抗部は、前記基板の外周部と前記基板の中央部とを通るパターンで部分形成された請求項1〜3のいずれかに記載のメッキ金属膜基板。
【請求項5】
前記メッキ金属膜がパターン形成された膜である請求項1〜4のいずれかに記載のメッキ金属膜基板。
【請求項6】
基板上に少なくとも1層の給電金属膜を形成する工程(A)と、
前記少なくとも1層の給電金属膜上に、少なくとも1層のメッキ金属膜を成膜する工程(C)とを有するメッキ金属膜基板の製造方法であって、
工程(A)において、前記メッキ金属膜の下地が相対的に高抵抗な高抵抗部と、前記メッキ金属膜の下地が相対的に低抵抗な低抵抗部とを有する少なくとも1層の給電金属膜を形成するメッキ金属膜基板の製造方法。
【請求項7】
工程(A)と工程(C)との間に、前記少なくとも1層の給電金属膜上にレジストをパターン形成する工程(B)を有し、
工程(C)において、前記レジストをマスクとして前記少なくとも1層のメッキ金属膜を成膜する請求項6に記載のメッキ金属膜基板の製造方法。
【請求項8】
工程(A)は、
相対的に高抵抗な高抵抗給電金属膜を形成する工程(A1)と、
相対的に低抵抗な低抵抗給電金属膜を形成する工程(A2)とを有する請求項6又は7に記載のメッキ金属膜基板の製造方法。
【請求項9】
工程(A)は、
パターン形成されていない相対的に高抵抗な高抵抗給電金属膜を形成する工程(A1−X)と、
前記高抵抗給電金属膜上に、パターン形成された相対的に低抵抗な低抵抗給電金属膜を形成する工程(A2−X)とを有する請求項8に記載のメッキ金属膜基板の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれかに記載のメッキ金属膜基板を用いた半導体装置。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2012−119438(P2012−119438A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266876(P2010−266876)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
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