説明

モータ内蔵ローラ

【課題】グリス切れを起こすことがなく、且つ回転に際してグリスが過度に負荷とならないモータ内蔵ローラを提供することを目的とする。
【解決手段】モータ内蔵ローラ1は、従来技術と同様にローラ本体2にモータ3と減速機5が内蔵されたものであり、減速機5の第一段目の遊星歯車列中にグリス収納部60が設けられている。グリス収納部60は、連動歯車(腕部材)22に設けられており、第1遊星歯車21同士の間に位置している。グリス収納部60内にはグリス87と共に慣性部材88が収納されており、連動歯車(腕部材)22が回転すると、グリス収納部60abcdの内部の慣性部材88が揺り動かされ、各小孔69からグリス87が漏出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラ本体内にモータと減速機が内蔵されてローラ本体が自転するモータ内蔵ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ローラコンベアの駆動ローラやベルトコンベアの駆動プーリ、あるいは巻き上げ装置の主要部品として、ローラ本体内にモータ部と減速機が内蔵されたモータ内蔵ローラが広く知られている(特許文献1)。
モータ内蔵ローラは、モータと減速機がローラ本体内に内蔵されているのでこれらの設置場所を必要とせず、省スペースの効果があるばかりでなく、コンベア等の構成も極めて単純なものとなり、コンベア等の組み立て上も好ましいものである。
【0003】
ところで減速機は歯車や軸受けを有するものであり、接触して相対運動する部材を多く持つものであるから、部材間の摩擦を軽減させるために潤滑が必要である。しかしモータ内蔵ローラは、独立して回転させることができる点に利点があり、オイルポンプ等によって外部から強制給油する潤滑方法は前記した利点を損なうこととなるので採用することができない。
そこでモータ内蔵ローラでは、内部の減速機をグリスによって潤滑している。
すなわち従来技術のモータ内蔵ローラは、減速機の歯車等に予めグリスを塗布しておき、そのグリスのみによって歯車等の摩擦を逓減させるものであった。
【特許文献1】実開昭59−40220号公報他
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術のモータ内蔵ローラは、歯車等に塗布したグリスのみによって潤滑するものであるから、長期間に渡ってモータ内蔵ローラを使用するとグリス切れを起こすことがあった。
一方、グリス切れを恐れてモータ内蔵ローラ内に大量にグリスを入れると、グリスの粘性が回転負荷となり、消費電力が増大したり、回転が不安定になってしまうという問題点があった。
またモータ内蔵ローラ内に大量にグリスを入れたとしても、歯車が回転したり、公転する際にグリスが飛散し、肝心の歯面の油膜が消失してしまい、歯車等を傷つけてしまう懸念があった。
【0005】
本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、長期に渡って使用してもグリス切れを起こすことがなく、且つ回転に際してグリスが過度に負荷とならないモータ内蔵ローラを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、筒状のローラ本体にモータと減速機とが内蔵され、前記減速機は遊星歯車列を備え、遊星歯車列は、太陽歯車と遊星歯車と軌道用内歯車とを有し、軌道用内歯車は太陽歯車の外側に位置し、遊星歯車は太陽歯車及び軌道用内歯車の双方と係合して太陽歯車の回りを公転するモータ内蔵ローラにおいて、前記減速機内にグリス収納部があり、グリス収納部はローラ本体内で公転または回転し、グリス収納部内にはグリスが充填され、グリス収納部の一部に孔が設けられていて当該孔から内部のグリスが排出されることを特徴とするモータ内蔵ローラである。
【0007】
本発明のモータ内蔵ローラには、遊星歯車列を備えた減速機が内蔵されている。従って本発明のモータ内蔵ローラは、モータが回転すると、この回転力が減速機で減速されてローラ本体に伝動され、ローラ本体が回転する。
また本発明のモータ内蔵ローラでは、グリスが充填されたグリス収納部があり、グリス収納部はローラ本体内で公転または回転する。そのため本発明のモータ内蔵ローラでは、公転または回転の遠心力や振動によってグリス収納部に設けられた孔からグリスが徐々に漏出し、歯車等のグリス切れを防止する。
【0008】
請求項2に記載の発明は、筒状のローラ本体にモータと減速機とが内蔵され、前記減速機は遊星歯車列を備え、遊星歯車列は、太陽歯車と遊星歯車と軌道用内歯車とを有し、軌道用内歯車は太陽歯車の外側に位置し、遊星歯車は太陽歯車及び軌道用内歯車の双方と係合して太陽歯車の回りを公転するモータ内蔵ローラにおいて、前記減速機内にグリス収納部があり、グリス収納部は遊星歯車又は軌道用内歯車と共に公転または回転し、グリス収納部内にはグリスが充填され、グリス収納部の一部に孔が設けられていて内部のグリスが排出されることを特徴とするモータ内蔵ローラである。
【0009】
本発明のモータ内蔵ローラにおいても、グリスが充填されたグリス収納部が内蔵されており、グリス収納部はローラ本体内で公転または回転してグリスを漏出させる。そのため歯車等がグリス切れを起こす懸念が少ない。
【0010】
請求項3に記載の発明は、グリス収納部内には慣性部材が内蔵され、慣性力によって慣性部材がグリス収納部内で動くことを特徴とする請求項1又は2に記載のモータ内蔵ローラである。
【0011】
本発明のモータ内蔵ローラでは、グリス収納部内に慣性部材があり、グリス収納部の中で慣性部材が動くので、グリス収納部内のグリスに動きが生じる。そのためグリス収納部に設けられた孔からグリスが出やすい。
【0012】
請求項4に記載の発明は、グリス収容部は、遊星歯車同士の間に配され、遊星歯車と共に太陽歯車の回りを公転することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のモータ内蔵ローラである。
【0013】
遊星歯車列は、太陽歯車と遊星歯車と軌道用内歯車とを持ち、遊星歯車は太陽歯車及び軌道用内歯車の双方と係合して太陽歯車の回りを公転する。そのため遊星歯車同士の間には比較的広い空間がある。そこで本発明では、グリス収容部を遊星歯車同士の間に設けた。ただし前記した様に遊星歯車は公転するものであるから、遊星歯車同士の間の空間は遊星歯車の公転に伴って移動する。そのため本発明では、グリス収容部を遊星歯車と共に公転させることとした。
【0014】
請求項5に記載の発明は、遊星歯車を回転可能に支持すると共に遊星歯車同士を連結して公転させる腕部材を有し、グリス収納部は腕部材の周囲を環状に取り巻いていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のモータ内蔵ローラである。
【0015】
遊星歯車列では、遊星歯車同士の間隔を保つための腕部材が必須である。腕部材は、歯車ではないので軌道用内歯車と係合する必要はない。したがって腕部材の外周側は、機構上係合する部材はなく、空所を形成し得る。そこで本発明では、腕部材の周囲にグリス収納部を設けた。
【0016】
また軌道用内歯車にグリス収容部を取り付けてもよい。そしてグリス収容部を軌道用内歯車と共に回転させる(請求項6)。
【発明の効果】
【0017】
本発明のモータ内蔵ローラでは、使用中にグリス収納部からグリスが漏出し、歯車等のグリス不足を補う。そのため本発明のモータ内蔵ローラは、長期に渡って使用してもグリス切れが起きにくく、長寿命である。またグリスの粘性による負荷の増加が少ないので消費電力が低い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下さらに、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の具体的実施形態のモータ内蔵ローラの断面図である。図2は、図1のモータ内蔵ローラの機構図である。
【0019】
本実施形態のモータ内蔵ローラ1は、減速機5の中にグリス収納部60が設けられている点に特徴があるが、特徴部分の説明に先立って、公知のモータ内蔵ローラと共通する部分の構成を簡単に説明する。
【0020】
本実施形態のモータ内蔵ローラ1は、従来技術と同様にローラ本体2にモータ3と減速機5が内蔵されたものであり、ローラ本体2の内部は図2の様に大きくモータ部Aと減速機部Bに分かれている。
ここでローラ本体2は両端が開口した金属製の筒体である。そしてローラ本体2の両端には閉塞部材6,7が取り付けられており、ローラ本体2の両端は閉塞部材6,7によって塞がれている。
【0021】
ローラ本体2の両端からは、固定軸10,11が突出している。固定軸10,11の内、図面右側の固定軸11は、単なる棒状の部材であり、図面右側の閉塞部材7に対して2連の軸受け12によって回転可能に取り付けられている。すなわち固定軸11は棒状であり、閉塞部材7に片持ち状に取り付けられ、且つ閉塞部材7に対して回転可能である。固定軸11は、単に閉塞部材7から外側に突出するものに過ぎず、ローラ本体2の内側には延びていない。
【0022】
これに対して図面左側に図示した固定軸10は、ローラ本体2の内外を連通するものであり、ローラ本体2の内部側にも大きな体積を占める。すなわち固定軸10は、閉塞部材6に軸受け15を介して回転可能に取り付けられており、ローラ本体2の内外を連通する。固定軸10は、ローラ本体2の内部において拡径しており、その外周部に図2の様に内筒部材8が一体的に取り付けられている。
そして内筒部材8の内部には、図2の様にモータ3と減速機5が内蔵されている。
【0023】
モータ3は、公知のモータ内蔵ローラと同様に、固定子13と回転子14により構成される。ここで固定子13は鉄心に収められたコイルである。固定子13は、内筒部材8に内挿されて内筒部材8と一体的に取りつけられている。
一方回転子14は、内筒部材8の中心にあり、その一端は、軸受け16を介して図面左側の固定軸10に回転可能に支持されている。
【0024】
減速機5は、2段の遊星歯車列であり、図2の様に、第一太陽歯車20、第1遊星歯車21、第一軌道用内歯車61、連動歯車22、第2遊星歯車23、第二軌道用内歯車62、出力部材24によって構成されている。本実施形態では、連動歯車22が遊星歯車を公転させる腕部材と二段目の遊星歯車列における太陽歯車を兼ねている。
また連動歯車22に後記するグリス収納部60が設けられている。
第一太陽歯車20は、モータ3の回転子14(モータ3の出力軸59)に連結されており、第一及び第二軌道用内歯車61,62は、内筒部材8の内側に内挿されて固定されている。
【0025】
そして減速機5の出力部材24の回転が、ローラ本体2に伝動されてローラ本体2が回転する。
すなわち出力部材24が連結部材32に接続される。連結部材32はピン50を介してローラ本体2に取り付けられており、出力部材24の回転は、連結部材32及びピン50を経由してローラ本体2に伝わる。
【0026】
本実施形態のモータ内蔵ローラ1は、第一段目の連動歯車22の板状部材(腕部材)70であって、第1遊星歯車21側の面にグリス収納部60が設けられている点に特徴があり、以下、この点について説明する。
図3は、図1のモータ内蔵ローラで採用する減速機の一部とモータの一部を示す斜視図である。図4は、図3と同様に減速機の一部とモータの一部を示す斜視図であり、減速機の内部構造を図示するものである。図5は、減速機の一部の分解斜視図である。図6は、減速機の第一段目部分の断面図である。
【0027】
即ち本実施形態で採用する減速機5は、図2,3の様に2段の遊星歯車列65,66によって構成されている。より具体的には、第一太陽歯車20、第1遊星歯車21、第一軌道用内歯車61及び連動歯車22の一部によって第一段目の遊星歯車列65が構成され、連動歯車22の一部、第2遊星歯車23、第二軌道用内歯車62及び出力部材24によって第二段目の遊星歯車列66が構成されている。
また連動歯車22の板状部材(腕部材)70にグリス収納部60が設けられており、グリス収納部60は各第1遊星歯車21同士の間に位置している。
【0028】
第一段目の遊星歯車列65を構成する第一太陽歯車20は、図4,5に示す様な形状をしており、中心部に孔64が設けられている。
第1遊星歯車21は、本実施形態では、4個の歯車21abcdによって構成されている。各歯車には、いずれも中心孔が設けられている。
【0029】
連動歯車22は、円板状の板状部材(腕部材)70の一面に4個の軸部71abcd及び4個のグリス収納部60abcdが設けられ、他面側に第二太陽歯車75が一体的に形成されている。
【0030】
図7は、図3のA−A断面図である。図8は、連動歯車22の、グリス収納部60a及び軸部の構造を示す断面斜視図である。図9は、図8のA−A断面図である。
連動歯車22のグリス収納部60abcdと軸部71abcdは、いずれも板状部材70の同一の面にあり、グリス収納部60abcdと軸部71abcdは、互い違いであって且つ等間隔に配されている。
【0031】
グリス収納部60の形状は、図8に示す様に扇形をしている。グリス収納部60は、天面壁80、底壁81、及び4面の周壁82,83,84,85を有しており、内部が空洞状となっている。すなわちグリス収納部60は、その内部に空洞部87を持つ。
グリス収納部60の4面の周壁82,83,84,85の内、中心側に面する周壁84は、円弧面である。またこれに対向する周壁82についても円弧状をしている。周壁82の曲率半径は、先の周壁84のそれよりも大きい。他の壁面83,85は円弧状の周壁82,84同士を接続するものであり円弧状である。
【0032】
グリス収納部60の4面の周壁82,83,84,85には、それぞれ複数の小孔69が設けられている。
グリス収納部60の空洞部87にはグリス86が充填されている。またグリス収納部60の空洞部87内には慣性部材88が移動可能に装入されている。慣性部材88は錘であり、具体的には鋼球である。
【0033】
第一軌道用内歯車61は、外径形状が円筒形であり、一方の開口端近傍の内面に歯車77が形成されている。第一軌道用内歯車61の内面の一部には歯車は形成されていない。即ち第一軌道用内歯車61の内面の一部は平滑な円筒面部78となっている。
【0034】
本実施形態で採用する減速機5の第一段目の遊星歯車列65は、連動歯車22の板状部材(腕部材)70の一方の面に設けられた軸部71abcdに遊星歯車21が装着され、その4個の遊星歯車21の中心に第一太陽歯車20が配されたものである。
【0035】
そして第一太陽歯車20とその周囲の遊星歯車21は互いに嵌合し、各遊星歯車21は外側に設けられた第一軌道用内歯車61と係合している。
【0036】
グリス収納部60は、隣接する遊星歯車21に挟まれた位置であって、第一太陽歯車20と第一軌道用内歯車61とによって囲まれた空間に位置している。
すなわちグリス収納部60は、第一太陽歯車20と、二つの遊星歯車21と、第一軌道用内歯車61とによって囲まれた空間にある。そしてグリス収納部60は、前記した様に4面の周壁82,83,84,85はそれぞれ各歯車20,21,61に面している。すなわち中心側に面した小径の円弧状壁面84は、第一太陽歯車20に面している。大径の円弧状壁面82は、第一軌道用内歯車61に面している。円弧状の壁面83,85は、それぞれ遊星歯車21に面している。
【0037】
次に本実施形態のモータ内蔵ローラ1の機能について説明する。本実施形態のモータ内蔵ローラ1は、モータ3の回転子14が回転すると、減速機5の入力軸たる第一太陽歯車20が回転し、所定の減速比で減速されて減速機5の出力軸31が回転する。そして出力軸31の回転力は、連結部材32に伝動され、さらにローラ本体2に伝動され、ローラ本体2が固定軸10,11に対して回転する。
【0038】
本実施形態のモータ内蔵ローラ1は、起動中や起動・停止の前後にグリス収納部60abcdから各歯車20,21,61にグリスが供給される。すなわち本実施形態では、連動歯車(腕部材)22にグリス収納部60abcdが形成され、グリス収納部60abcdにはグリスが封入されている。そしてグリス収納部60abcdを構成する周面82,83,84,85には小孔69が設けられている。そのためモータ内蔵ローラ1を起動して連動歯車22が回転すると、連動歯車22の板状部材(腕部材)70と連動してグリス収納部60abcdが回転する。より正確に説明すれば、グリス収納部60abcdは、遊星歯車21と共に第一太陽歯車20の回りを公転する。
その結果、グリス収納部60abcdの内部のグリス86が揺り動かされ、各小孔69から漏出する。又、遠心力によりグリスが漏出する。
【0039】
特に本実施形態では、グリス収納部60abcdに慣性部材88が収納されており、モータ内蔵ローラ1は、起動中や起動・停止の前後に慣性部材88が動く。そのためグリス収納部60abcdのグリスが慣性部材88の動きによって押され、グリス86は小孔69に詰まることなく排出される。
ここで小孔69は、グリス収納部60abcdの周面82,83,84,85に設けられており、これら周面82,83,84,85は、それぞれ歯車20,21,61に面しているから、各小孔69から漏出するグリス86は、各歯車20,21,61に供給され、グリスの不足を補う。
【0040】
そのため本実施形態のモータ内蔵ローラ1では、使用中にグリス収納部60abcdからグリス86がすこしづつ排出され、各歯車20,21,61に供給される。したがって本実施形態のモータ内蔵ローラ1は、各歯車20,21,61がグリス切れを起こしにくい。
【0041】
以上説明した実施形態では、第一段目の遊星歯車列65にグリス収納部60abcdを設けたが、第二段目以降の遊星歯車列にも同様にグリス収納部を設けることが推奨される。図10は、減速機の変形例を示す斜視図であり、第二段目以降の遊星歯車列にも同様にグリス収納部を設けた例を示す。
前記した実施例に沿って説明すると、出力部材(腕部材)24にグリス収納部73を設け、グリス収納部73を第二軌道用内歯車62の間に配置して第二軌道用内歯車62と共に第二太陽歯車75の回りを公転させる。
【0042】
また上記した実施形態では、全ての各遊星歯車の間にグリス収納部60を設けたが、グリス収納部60の個数は任意であり、必ずしも全ての場所にグリス収納部60を設ける必要はない。例えば連動歯車22の4個の軸部71abcdの内、71aと71bの間にのみグリス収納部60を設けてもよい。
【0043】
また上記した実施形態では、遊星歯車同士の間にグリス収納部60を設けたが、軌道用内歯車61側にグリス収納部を設けてもよい。
軌道用内歯車61にグリス収納部を設ける構成は、特に軌道用内歯車61からローラ本体2に動力を伝達する機構を採用する場合に推奨される。
すなわち先に説明した実施形態では、ローラ本体2の中に内筒部材8があり、内筒部材8に減速機が内蔵されている。そして内筒部材8の外に設けられた連結部材32とローラ本体2とを接続して減速機の出力をローラ本体2に伝導している
そのため先に説明した実施形態では、軌道用内歯車61は回転しない。
これに対して軌道用内歯車をローラ本体に結合してローラ本体を回転させる構造も可能である。軌道用内歯車からローラ本体に動力を伝達する機構を採用する場合には、軌道用内歯車はローラ本体と共に回転する。
【0044】
以下、本発明の第二の実施形態として軌道用内歯車61側にグリス収納部を設けた構成について説明する。なお以下に説明する実施形態の構成部品の中で、先に説明した実施形態の構成部品と共通するものについては、同一の番号を付して詳細な説明を省略する。
図11は、本発明の第二の実施形態のモータ内蔵ローラで採用する減速機の一部とモータの一部を示す斜視図である。図12は、図11の減速機の第一段目部分の断面図である。
【0045】
本実施形態で採用する 減速機90についても2段構成の遊星歯車列であり、遊星歯車列91,66によって構成されている。遊星歯車列91,66を構成する歯車やこれらの係合状態は、先の実施形態と同一であり、第一太陽歯車20、第1遊星歯車21、第一軌道用内歯車92及び連動歯車22の一部によって第一段目の遊星歯車列91が構成され、連動歯車(腕部材)22の一部、第2遊星歯車23、第二軌道用内歯車62及び出力部材24によって第二段目の遊星歯車列66が構成されている。
そして本実施形態では、第一軌道用内歯車92と第二軌道用内歯車62との間にグリス収納部93が設けられている。
【0046】
第一段目の遊星歯車列91を構成する第一太陽歯車20及び第1遊星歯車21は、先の実施形態と同一である。
連動歯車22は、円板状の板状部材70の一面に4個の軸部71abcd及び4個のグリス収納部60abcdが設けられ、他面側に第二太陽歯車75が一体的に形成されている。
第一軌道用内歯車92は、外径形状が円筒形であり、一方の開口端近傍の内面に歯車77が形成されている。第一軌道用内歯車92に隣接してグリス収納部93が設けられている。
【0047】
図13は、図11に示すモータ内蔵ローラで採用するグリス収容部の斜視図である。図14は、図13のA−A断面図である。
グリス収納部93は、図13に示すようなドーナツ状であり、円筒状であって中央に大きな開口94が設けられている。またグリス収納部93は内部に空洞部95が形成されている。
すなわちグリス収納部93は、円形の外周面96と内周面97及び正面壁98と裏面壁99とによって囲まれた形状をしており、内部は環状の空洞部95となっている。
【0048】
また当該空洞部95には、グリス100と慣性部材101とが内蔵されている。
さらにグリス収納部93の内周面97には複数の小孔102が設けられている。
【0049】
グリス収納部93は、第一軌道用内歯車92と第二軌道用内歯車62との間にあり、第一軌道用内歯車92に対して一体的に固定されている。したがってグリス収納部93は、第一軌道用内歯車92と一体的に回転する。
またグリス収納部93は、先の実施形態の円筒面部78に相当する位置にあり、連動歯車22の、板状部材70を囲む位置にある。すなわちグリス収納部93の内周面97内に連動歯車22の、板状部材70がある。本実施形態では、連動歯車22の板状部材70は、遊星歯車21を回転可能に支持すると共に遊星歯車21同士を連結して公転させる腕部材として機能するので、グリス収納部93は腕部材の周囲を環状に取り巻いている。
【0050】
本実施形態では、第一軌道用内歯車92と第二軌道用内歯車62の間にグリス収納部93が形成され、グリス収納部93にはグリス100が封入されている。そしてグリス収納部93の内周面97には複数の小孔102が設けられている。そのためモータ内蔵ローラ1を起動して第一軌道用内歯車92が回転すると、これに連動してグリス収納部93が回転する。
その結果、グリス収納部93の内部のグリス100が揺り動かされ、各小孔102からグリス100が漏出する。
【0051】
本実施形態においてもグリス収納部93に慣性部材101が収納されており、モータ内蔵ローラ1は、起動中や起動・停止の前後に慣性部材101が動くので、グリス100が慣性部材101の動きによって押され、グリス100は小孔102に詰まることなく排出される。
小孔102は、減速機の中心側に向かって開口しており各歯車等のグリスの不足を補う。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の具体的実施形態のモータ内蔵ローラの断面図である。
【図2】図1のモータ内蔵ローラの機構図である。
【図3】図1のモータ内蔵ローラで採用する減速機の一部とモータの一部を示す斜視図である。
【図4】図3と同様に減速機の一部とモータの一部を示す斜視図であり、減速機の内部構造を図示するものである。
【図5】本発明の具体的実施形態のモータ内蔵ローラで採用する減速機の一部の分解斜視図である。
【図6】図5の減速機の第一段目部分の断面図である。
【図7】図3のA−A断面図である。
【図8】連動歯車の、グリス収納部及び軸部の構造を示す断面斜視図である。
【図9】図8のA−A断面図である。
【図10】減速機の変形例を示す斜視図であり、第二段目以降の遊星歯車列にも同様にグリス収納部を設けた例を示す。
【図11】本発明の第二の実施形態のモータ内蔵ローラで採用する減速機の一部とモータの一部を示す斜視図である。
【図12】図11の減速機の第一段目部分の断面図である。
【図13】図11に示すモータ内蔵ローラで採用するグリス収容部の斜視図である。
【図14】図13のA−A断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 モータ内蔵ローラ
2 ローラ本体
3 モータ
5,90 減速機
20 第一太陽歯車
21 遊星歯車(第1遊星歯車)
60,73,93 グリス収納部
61,92 第一軌道用内歯車
65,66,91 遊星歯車列
69,102 小孔
70 板状部材(腕部材)
86,100 グリス
87,95 空洞部
88,101 慣性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のローラ本体にモータと減速機とが内蔵され、前記減速機は遊星歯車列を備え、遊星歯車列は、太陽歯車と遊星歯車と軌道用内歯車とを有し、軌道用内歯車は太陽歯車の外側に位置し、遊星歯車は太陽歯車及び軌道用内歯車の双方と係合して太陽歯車の回りを公転するモータ内蔵ローラにおいて、前記減速機内にグリス収納部があり、グリス収納部はローラ本体内で公転または回転し、グリス収納部内にはグリスが充填され、グリス収納部の一部に孔が設けられていて当該孔から内部のグリスが排出されることを特徴とするモータ内蔵ローラ。
【請求項2】
筒状のローラ本体にモータと減速機とが内蔵され、前記減速機は遊星歯車列を備え、遊星歯車列は、太陽歯車と遊星歯車と軌道用内歯車とを有し、軌道用内歯車は太陽歯車の外側に位置し、遊星歯車は太陽歯車及び軌道用内歯車の双方と係合して太陽歯車の回りを公転するモータ内蔵ローラにおいて、前記減速機内にグリス収納部があり、グリス収納部は遊星歯車又は軌道用内歯車と共に公転または回転し、グリス収納部内にはグリスが充填され、グリス収納部の一部に孔が設けられていて内部のグリスが排出されることを特徴とするモータ内蔵ローラ。
【請求項3】
グリス収納部内には慣性部材が内蔵され、慣性力によって慣性部材がグリス収納部内で動くことを特徴とする請求項1又は2に記載のモータ内蔵ローラ。
【請求項4】
グリス収容部は、遊星歯車同士の間に配され、遊星歯車と共に太陽歯車の回りを公転することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のモータ内蔵ローラ。
【請求項5】
遊星歯車を回転可能に支持すると共に遊星歯車同士を連結して公転させる腕部材を有し、グリス収納部は腕部材の周囲を環状に取り巻いていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のモータ内蔵ローラ。
【請求項6】
グリス収容部は軌道用内歯車に取り付けられ、軌道用内歯車と共に回転することを特徴とする請求項1,2,3,5のいずれかに記載のモータ内蔵ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−18925(P2009−18925A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−184267(P2007−184267)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(592026819)伊東電機株式会社 (71)
【Fターム(参考)】