説明

モータ制御用半導体装置

【課題】モータ制御用半導体装置に対するコンタクト用ピンからの影響を低減する
【解決手段】ホール素子102からの出力のオフセット電圧を取り除くオフセットキャンセル回路104に含まれるオシレータ回路12と、オフセットキャンセル回路104からの出力信号を受けて、当該出力信号と基準信号とを比較して比較信号を生成して出力するコンパレータ回路106と、モータを駆動するための駆動信号を生成して出力する出力回路110と、モータの制御に関係しないテスト回路112と、を有し、オシレータ回路12の回路パターン上、コンパレータ回路106の回路パターン上、及び、テスト回路112の回路パターン上のいずれか1つに重なるようにパルス幅変調信号の入出力パッドP1を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホール素子の出力に基づいてモータの駆動制御を行うモータ制御用半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ等の撮像装置の手振れ補正処理や携帯電話のバイブレーション処理において、レンズ等の光学素子や振動素子の位置を検出するためにホール素子を用いて位置検出を行い、ホール素子の出力に基づいてモータを駆動して手振れ補正処理やバイブレーション機能を実現させるモータ制御用半導体装置が用いられている。
【0003】
モータ制御用半導体装置100は、図5の回路レイアウト図に示すように、ホール素子102、オフセットキャンセル回路104、コンパレータ回路106、出力制御回路108及び出力回路110を含んで構成される。また、図5に示すように、モータ制御には直接関係しないが、モータ制御用半導体装置100の動作・特性を確認するためのテスト回路112を含んでもよい。
【0004】
ここで、オフセットキャンセル回路104は、図6に示すように、ホール素子102に接続された増幅素子を含むオシレータ回路12及び平均化回路14を含み、ホール素子102の出力電圧に含まれるオフセット成分をキャンセルするために設けられる。ここで、ホール素子102は、抵抗R1〜R4を接続した等価回路で表している。
【0005】
オシレータ回路12は、モータ制御用半導体装置100内部で使用される発振信号を発生させる回路を含む。また、オシレータ回路12は、オペアンプ12a,12bを含んで構成される。オペアンプ12aは、非反転入力端子(+)に入力される電圧を増幅して出力する。オペアンプ12bは、非反転入力端子(+)に入力される電圧を増幅して出力する。
【0006】
平均化回路14は、スイッチング素子S9〜S19、コンデンサC1〜C4、オペアンプ14a及び基準電圧発生回路14bを含んで構成される。スイッチング素子S9〜S19は、オペアンプ12a,12bの出力端子、コンデンサC1〜C4の端子、オペアンプ14aの入力端子のいずれかを相互に接続する。
【0007】
スイッチング素子S1をオン及びスイッチング素子S6をオフすることによって抵抗R1,R2の接続点Aに電源電圧Vccを印加し、スイッチング素子S2をオン及びスイッチング素子S8をオフすることによって抵抗R3,R4の接続点Cを接地する。また、スイッチング素子S7をオン及びスイッチング素子S4をオフすることによって抵抗R1,R4の接続点Dをオペアンプ12bの非反転入力端子(+)に接続し、スイッチング素子S5をオン及びスイッチング素子S3をオフすることによって抵抗R2,R3の接続点Bをオペアンプ12aの非反転入力端子(+)に接続する。また、スイッチング素子S9〜S19のうちスイッチング素子S13,S14をオンし、その他をオフすることによって、オペアンプ12aの出力をコンデンサC1の正端子,オペアンプ12bの出力をコンデンサC1の負端子に接続し、オペアンプ12a,12bの出力電圧によってコンデンサC1を充電する状態とする。
【0008】
次に、スイッチング素子S6をオン及びスイッチング素子S1をオフすることによって抵抗R1,R2の接続点Aをオペアンプ12aの非反転入力端子(+)に接続し、スイッチング素子S8をオン及びスイッチング素子S2をオフすることによって抵抗R3,R4の接続点Cをオペアンプ12bの非反転入力端子(+)に接続する。また、スイッチング素子S4をオン及びスイッチング素子S7をオフすることによって抵抗R1,R4の接続点Dを接地し、スイッチング素子S3をオン及びスイッチング素子S5をオフすることによって抵抗R2,R3の接続点Bに電源電圧Vccを印加する。また、スイッチング素子S9〜S19のうちスイッチング素子S15,S16をオンし、その他をオフすることによって、オペアンプ12aの出力をコンデンサC2の負端子,オペアンプ12bの出力をコンデンサC2の正端子に接続し、オペアンプ12a,12bの出力電圧によってコンデンサC2を充電する状態とする。
【0009】
このようにホール素子102に流す電流の方向を変えるように電圧を印加する2つのモードを切り替え、ホール素子102の4端子について2方向(90°)のホール電圧V1及びV2でコンデンサC1及びC2をそれぞれ充電する。充電電圧V1は、第1モードにおけるホール電圧Vhallにオフセット電圧Voffが加算された値となる。すなわち、充電電圧V1=Vhall+Voffである。ホール素子102に流れる電流を90°変化させると、ホール素子102のオフセット電圧Voffは逆方向に発生するので、充電電圧V2は、第2モードにおけるホール電圧Vhallからオフセット電圧Voffを減算した値となる。すなわち、充電電圧V2=Vhall−Voffである。
【0010】
出力状態では、スイッチング素子S13〜S16はオフして、オペアンプ12a,12bとコンデンサC1及びC2とは遮断する。また、スイッチング素子S11,S12,S19をオンし、スイッチング素子S18をオフすることによって、コンデンサC4を介してコンデンサC1及びC2の正端子を共通にオペアンプ14aの入力端子の一端に接続する。また、スイッチング素子S9,S10をオンすることによって、コンデンサC1及びC2の負端子を共通にオペアンプ14aの入力端子の他端に接続する。オペアンプ14aの他端は、基準電圧発生回路14bによって発生させたVrefとされる。コンデンサC3の電荷消去用のスイッチング素子S17もオフ状態とする。
【0011】
このような出力状態とすることによって、コンデンサC1及びC2が並列に接続され、コンデンサC1及びC2に蓄えられていた電荷がコンデンサC1〜C4に再分配されて充電電圧V1及びV2が平均化される。これにより、ホール素子102の出力電圧のオフセット値Voffがキャンセルされて出力電圧Voutとして出力される。
【0012】
コンパレータ回路106は、オフセットキャンセル回路104からの出力信号を基準電圧と比較し、比較結果を出力制御回路108へ出力する。出力制御回路108は、コンパレータ回路106からの比較結果を受けて、比較結果に応じてモータを駆動するための制御信号を生成して出力する。例えば、出力制御回路108は、コンパレータ回路106からの比較結果が一定回数以上連続して基準値より大きい場合にモータを所定回転角だけ回転させる制御信号を出力する。出力回路110は、出力制御回路108から制御信号を透けて、その制御信号に応じたモータの駆動信号を発生させる。出力回路110は、出力制御回路108から制御信号を受けて、実際にモータを駆動するための駆動信号を生成して出力する。モータは、出力回路110から駆動信号を受けて駆動される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、オフセットキャンセル回路104は、図6に示したように、キャパシタ要素が少ないオシレータ回路12の部分と、キャパシタ要素を多数含む平均化回路14の部分と、を備える。
【0014】
一方、モータ制御用半導体装置100は、半導体基板上にモノリシックに形成され、ウェハレベルパッケージ(WLP:Wafer Level Package)として構成されることがある。ウェハレベルパッケージ(WLP)では、半導体基板上に電子回路並びに絶縁層及び配線層を形成し、半導体基板上に形成された回路に対する入出力を行うために半田ボール等のコンタクト用ピンを半導体基板上に配置する。これにより、ボンドワイヤやインタポーザの接続なしにモータ制御用半導体装置100をプリント基板等に実装することを可能にする。
【0015】
このようなウェハレベルパッケージ(WLP)を適用した場合、図7のピン配置図に示すように、半導体基板20上に形成されたホール素子102、オフセットキャンセル回路104、コンパレータ回路106、出力制御回路108、出力回路110及びテスト回路112上に入出力用のピンP1〜P6が配置される。ピンP1〜P6は、それぞれパルス幅変調信号(PWM)用、出力信号(VOUT1)用、出力信号(VOUT2)用、接地(GND)用、モータ制御用半導体装置100のモード設定信号用、及び電源電圧(Vcc)用である。
【0016】
ここで、図7に示すように、PWM信号用のピンP1をオフセットキャンセル回路104の平均化回路14の部分に重なるように配置すると、平均化回路14に多数含まれるキャパシタ要素がPWM信号の交流成分の影響を受け、平均化回路14が正確に動作しなくなるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の1つの態様は、ホール素子を含み、ホール素子からの出力に応じてモータの駆動制御を行うモータ制御用半導体装置であって、ホール素子からの出力のオフセット電圧を取り除くオフセットキャンセル回路に含まれるオシレータ回路と、オフセットキャンセル回路からの出力信号を受けて、当該出力信号と基準信号とを比較して比較信号を生成して出力するコンパレータ回路と、モータを駆動するための駆動信号を生成して出力する出力回路と、モータの制御に関係しないテスト回路と、を有し、オシレータ回路の回路パターン上、コンパレータ回路の回路パターン上、及び、テスト回路の回路パターン上のいずれか1つに重なるようにパルス幅変調信号の入出力パッドが形成されている、モータ制御用半導体装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、モータ制御用半導体装置に対するコンタクト用ピンからの影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態におけるモータ制御用半導体装置のピン配置を示すレイアウト図である。
【図2】本発明の実施の形態のモータ制御用半導体装置の構成を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるモータ制御用半導体装置のピン配置を示すレイアウト図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるモータ制御用半導体装置のピン配置を示すレイアウト図である。
【図5】モータ制御用半導体装置の回路配置を示すレイアウト図である。
【図6】オフセットキャンセル回路の構成を示す図である。
【図7】従来のモータ制御用半導体装置のピン配置を示すレイアウト図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の実施の形態におけるモータ制御用半導体装置200の回路及びピンの配置を示す図である。モータ制御用半導体装置200は、従来のモータ制御用半導体装置100と同様に、ホール素子102、オフセットキャンセル回路104、コンパレータ回路106、出力制御回路108及び出力回路110を含んで構成される。また、モータ制御には直接関係しないが、モータ制御用半導体装置200の動作・特性を確認するためのテスト回路112を含む。
【0021】
ホール素子102、オフセットキャンセル回路104、コンパレータ回路106、出力制御回路108、出力回路110及びテスト回路112の機能は従来のモータ制御用半導体装置100と同様であるので説明を省略する。
【0022】
本実施の形態におけるモータ制御用半導体装置200は、ウェハレベルパッケージ(WLP)として構成される。ウェハレベルパッケージ(WLP)は、図2の断面図に示すように、半導体集積回路22が形成された半導体基板20上に半田ボール等のコンタクト用ピンを形成した構成を有する。半導体基板20は、絶縁樹脂24で覆われ、絶縁樹脂24に開けられたコンタクトホールを介して半導体集積回路22に接続される配線26が形成される。配線26は、絶縁樹脂24上にコンタクト用ピンP1〜P6の位置まで延設される。さらに、封止樹脂28で配線26を覆い、コンタクト用ピンP1〜P6の位置に開けられたコンタクトホールを介して半田ボール等からなるコンタクト用ピンP1〜P6が配線26に電気的に接続するように形成される。
【0023】
本実施の形態におけるモータ制御用半導体装置200では、ピンP1〜P6のうち交流成分を含むパルス幅変調信号(PWM)用のピンP1が少なくともオフセットキャンセル回路104の回路パターン内ではオシレータ回路12の回路パターン上以外の領域に配置されないようにする。すなわち、PWM用のピンP1は、ホール素子102、オフセットキャンセル回路104のオシレータ回路12、コンパレータ回路106、出力制御回路108、出力回路110及びテスト回路112の回路パターンのいずれかに重なる位置に配置することが好適である。ここで、ホール素子102への影響を考慮するとホール素子102の回路パターン上にはPWM用のピンP1を配置することは避けることが好ましく、出力制御回路108及び出力回路110の近傍には出力信号(VOUT1,VOUT2)用のピンP2及びP3を配置することが好ましい。これらを踏まえて、PWM用のピンP1は、図1に示すように、オフセットキャンセル回路104に含まれるオシレータ回路12の回路パターン上、図3に示すように、コンパレータ回路106の回路パターン上、又は、図4に示すように、テスト回路112の回路パターン上に配置することがより好適である。特に、テスト回路112の回路パターン上に配置した場合には、仮にPWM信号の交流成分の影響があるにしても、テスト回路112自体が動作中に使用されないので、オフセットキャンセル回路104の平均化回路14が正確に動作しなくなる可能性をより確実に低減できる。なお、図1,3及び4において、PWM用のピンP1,出力信号(VOUT1,VOUT2)用のピンP2及びP3以外の配置は適宜入れ替えてもよい。
【0024】
このように、PWM用のピンP1を配置することによって、オフセットキャンセル回路104の平均化回路14に多数含まれるキャパシタ要素へのPWM信号の交流成分の影響が小さくなり、平均化回路14が正確に動作しなくなる可能性を低減することができる。特に、ホール素子102を取り囲むように、オフセットキャンセル回路104、コンパレータ回路106、出力回路110及びテスト回路112を配置すると共に、PWM用のピンP1をテスト回路112の回路パターン上に形成し、ピンP2〜P5をテスト回路112以外の回路パターン上に形成したことで、モータ制御用半導体装置200の大型化(大面積化)を抑制しつつ、平均化回路14へのPWM信号の影響を効果的に低減することができる。
【0025】
なお、上記実施の形態では、オフセットキャンセル回路104にオシレータ回路12の部分を含む構成としたが、オシレータ回路12はモータの駆動制御を行うために用いることが可能なため、オフセットキャンセル回路104以外の回路領域に設けてもよい。また、上記実施の形態では、PWM用のピンP1自体での例を示したが、PWM用のピンP1に接続される配線26(図2参照)を、オフセットキャンセル回路104に含まれるオシレータ回路12の回路パターン上、コンパレータ回路106の回路パターン上、又は、テスト回路112の回路パターン上に配置した場合にも、同様の理由で上記した効果を享受することができる。
【符号の説明】
【0026】
12 オシレータ回路、12a,12b オペアンプ、14 平均化回路、14a オペアンプ、14b 基準電圧発生回路、20 半導体基板、22 半導体集積回路、24 絶縁樹脂、26 配線、28 封止樹脂、100,200 モータ制御用半導体装置、102 ホール素子、104 オフセットキャンセル回路、106 コンパレータ回路、108 出力制御回路、110 出力回路、112 テスト回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホール素子を含み、前記ホール素子からの出力に応じてモータの駆動制御を行うモータ制御用半導体装置であって、
前記ホール素子からの出力のオフセット電圧を取り除くオフセットキャンセル回路に含まれるオシレータ回路と、前記オフセットキャンセル回路からの出力信号を受けて、当該出力信号と基準信号とを比較して比較信号を生成して出力するコンパレータ回路と、前記モータを駆動するための駆動信号を生成して出力する出力回路と、前記モータの制御に関係しないテスト回路と、を有し、
前記オシレータ回路の回路パターン上、前記コンパレータ回路の回路パターン上、及び、前記テスト回路の回路パターン上のいずれか1つに重なるようにパルス幅変調信号の入出力パッドが形成されていることを特徴とするモータ制御用半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ制御用半導体装置であって、
基板上に形成された前記ホール素子を取り囲むように、前記基板上に前記オフセットキャンセル回路、前記コンパレータ回路、前記出力回路、及び、前記テスト回路が配置され、
前記パルス幅変調信号の入出力パッドは、前記テスト回路の回路パターン上に形成され、
接地用のパッド、電源電圧用のパッド、モード設定信号用のパッド、及び、出力信号用のパッドは、前記テスト回路以外の回路パターン上に形成されていることを特徴とするモータ制御用半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のモータ制御用半導体装置であって、
前記ホール素子、前記オフセットキャンセル回路、前記コンパレータ回路及び前記テスト回路が形成された半導体ウェハ上に封止樹脂を介して前記パルス幅変調信号の入出力パッドを形成したウェハレベルパッケージが適用されていることを特徴とするモータ制御用半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−54339(P2012−54339A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194549(P2010−194549)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(311003743)オンセミコンダクター・トレーディング・リミテッド (166)
【Fターム(参考)】