説明

モータ駆動制御装置

【課題】故障検出又は回路保護を効率的に実現する。
【解決手段】本モータ駆動制御装置は、スイッチングを行って電源からモータへ電力供給を行うための第1の信号を出力するスイッチング素子と、スイッチング素子のスイッチングを制御するための第2の信号を出力する駆動制御回路と、第1の信号の論理レベルと第2の信号の論理レベルとに矛盾が存在するか判断し、矛盾が存在している場合にはエラー信号を出力する判断部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動アシスト自転車等の、電動補助力を活用した電動アシスト車は、人力を検出するセンサ(トルクセンサ等)を用い、その検出信号に応じて電動補助力を調整(アシスト制御)するような仕組みになっている。
【0003】
また、搭載する電池のエネルギーで、できるだけ長距離走行できるようにするために、ブレーキ時等の減速時に、モータを発電機として動作させ、エネルギー回収(回生)を行って、モータにより発電された電力により電池を充電するようにしている。
【0004】
例えば、従来一般的に電動アシスト自転車に用いられているモータ駆動制御装置は、図7に示すように、二次電池51、コンデンサ52、制御回路53、人力センサ54、ブレーキセンサ55、モータ56、三相ブリッジインバータ回路57を含む。
【0005】
日本では時速24kmの走行速度までがアシスト対象として認められているため、例えば二次電池51の標準電圧が24Vの場合、24Vの電圧印加時に時速24kmに対応する回転動作をする三相直流ブラシレスモータ56を用いている。
【0006】
モータ56はホール素子等の回転センサを有しており、回転センサからの信号は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含む制御回路53に供給される。
【0007】
制御回路53は、上記回転センサからの信号を受け取り、さらにペダルにかかる人力によるトルクを検出するトルクセンサ54からの信号と、ブレーキを作動させたか否かを検出するブレーキセンサ55からの信号を受け取り、これらの信号に応じて三相ブリッジインバータ回路57を動作させ、モータ56の回転数を制御する。
【0008】
三相ブリッジインバータ回路57は、駆動回路61と6個のFET(Field Effect Transistor)Q11乃至Q32とを含む周知の回路であり、モータ56のU,V、Wの各相に2個のFETが直列接続されている。そして、モータ56への供給電力を変更するため、駆動回路61により各FETQ11乃至Q32のスイッチングが制御され、二次電池51から印加される電池電圧の、モータ56への印加時間と非印加時間の比率が調整される。これによって、モータ出力(回転数、トルク)が制御される。
【0009】
このようなモータ駆動制御装置を有する電動アシスト自転車による走行では、走行開始時において搭乗者がペダルをこぎ始めると人力センサ54の検出値が増大し、走行速度が徐々に高まるとともに駆動回路によるモータ56への供給電力も徐々に増加して電動アシストが行われる。走行速度が電動アシスト対象となる最大速度の時速24kmまで、或いは、モータ56への供給電力が二次電池51によって供給可能な最大電力になるまで電動アシストが行われ、搭乗者による人力の供給は軽減される。また、ブレーキを作動させ、ブレーキセンサ55がオンになったとき、電動アシスト動作は停止され、モータ56への電力供給が停止される。このとき、モータ56が発電機となり、発電された電力によって二次電池51が充電されるとともに、走行に対する負荷となってブレーキ力が増大され、走行速度が低下する。
【0010】
上記のようなモータ駆動制御装置において故障検出や回路の保護を行う場合には、以下で述べるような問題がある。
【0011】
例えば、制御回路53から駆動回路61への指令は、基本的には出力するだけであり、その結果、モータ56が回転し、回転することによりホール信号の位相が順次切り替わって制御回路53に入力される。しかし、ホール信号自体は運転者の自走運転(モータ出力OFF)でも車輪回転に合わせて制御回路53に入力されるものであり、モータが駆動されているときに限るものではない。また、モータが駆動されているときに限定して指令内容と回転状態を比較したとしても、車輪の空転や車輪の路面への接地状態或いはブレーキ操作などの負荷状況によって回転数は変わってしまう。制御回路53は、上記のような負荷状態を把握するのは難しい。
【0012】
また、モータの駆動状態をモータから出力されるホール信号ではなく、実際にモータに流れる電流によって判断することも一案である。しかし、その電流量も同じように負荷状況で変わってしまうため、一義的なものではない。
【0013】
また、故障を検出したい場合、自律的に異常を通知するような能動的なデバイスと違って受動的なデバイスの場合は、入力指令に対する出力結果を制御回路53が判断するしかないが、モータ56側から見ると、入力(モータ駆動指令)に対する出力が一義的でなく、簡単には故障判断ができない。
【0014】
故障診断を行うための従来の装置は、制御回路から駆動回路に出力される電流指令値とモータに流れる電流値を検出する電流センサで実際に検出した電流値とが一致するようフィードバックする制御回路を含む。この装置においては、電流センサが異常になった場合に制御が破綻するため、その電流センサの故障を診断する。
【0015】
しかし、このような従来の装置では、駆動輪を回転させることなく電流センサ出力特性を幅広くチェックするため、実際に10A、20Aといった電流値を検査のために流すことになる。このように電流を流せば当然回路で損失が発生し、効率的に好ましくない。
【0016】
また、このような従来の装置では、電流値を絶対的なものとしてフィードバックする手法が根底にあるので、非効率的であっても厳密な電流センサ診断が必要になるとともに、3相モータであるため複数の電流センサを必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特許第2623419号公報
【特許文献2】特開2003−276672号公報
【特許文献3】特許第3317096号公報
【特許文献4】特開2005−80352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って、本発明の目的は、一側面においては、故障検出又は回路保護を効率的に実現するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の態様に係るモータ駆動制御装置は、(A)スイッチングを行って電源からモータへ電力供給を行うための第1の信号を出力するスイッチング素子と、(B)スイッチング素子のスイッチングを制御するための第2の信号を出力する駆動制御回路と、(C)第1の信号の論理レベルと第2の信号の論理レベルとに矛盾が存在するか判断し、矛盾が存在している場合にはエラー信号を出力する判断部とを有する。
【0020】
このようにすれば簡易な構成で効率よくエラー発生を検出できるようになる。なお、第1の信号及び第2の信号を単純に比較するのではなく、第1の信号又は当該第1の信号に関連する1又は複数の信号、第2の信号又は当該第2の信号に関連する1又は複数の信号から、第1の信号及び第2の信号に論理的に整合性がとれない部分が発生していないかを判断するようにしても良い。また、第2の信号の論理レベルが、第1の信号の論理レベルにより特定される基準値と異なる場合にエラー信号を出力するようにしても良い。
【0021】
また、上で述べた判断部が、第1の信号に対する第2の信号の信号遅延発生部分と電力供給のためのスイッチングを行っていない部分とを除外して判断を行うようにしても良い。正常時にも齟齬が発生する部分についてはマスクするものである。マスクについては、第2の信号を基に生成するようにしても良い。
【0022】
なお、上で述べたモータが、複数相のブラシレス直流モータである場合もある。この場合、上記スイッチング素子は、複数相の各相につき設けられ、各相につき第1の信号を出力し、上記駆動制御回路は、複数相の各相につき第2の信号を出力する場合もある。この場合、上で述べた判断部が、複数相の各相のいずれかについて、第1の信号の論理レベルと第2の信号の論理レベルとに矛盾が存在するか判断するようにしても良い。いずれかの相にエラーが発生していても問題だからである。
【0023】
さらに、上で述べた判断部は、第1の信号の論理レベルと第2の信号の論理レベルとに矛盾が、所定時間以上継続する場合に、エラー信号を出力するようにしても良い。このようにすれば一時的なノイズなどに対処することができるようになる。
【0024】
また、本発明の第2の態様に係るモータ駆動制御装置は、(A)指示電圧に応じて駆動制御回路から出力される信号に応じて行われるスイッチングで電源からモータへ電力供給を行うための第1の信号を平滑化して第2の信号を出力する平滑回路と、(B)指示電圧を駆動制御回路に出力し、第2の信号の電圧値と指示電圧との差が所定の許容範囲外であれば故障発生を判定する制御部とを有する。
【0025】
このようにすれば簡易な構成で効率よく故障発生を判定できるようになる。
【0026】
なお、上で述べたモータが、複数相のブラシレス直流モータである場合もある。この場合、上で述べたモータが、各相につき回転位相に応じたパルス信号を出力し、上で述べた第1の信号が、複数相の各相につき出力され、上で述べた平滑回路が、複数相の各相につき設けられる場合もある。この場合、上で述べた制御部が、各パルス信号から設定される所定のタイミングで、対応する相の第2の信号の電圧値と指示電圧との差を判定するようにしても良い。平滑化により生成される第2の信号の電圧値が安定した時点で判定できるようになる。
【0027】
さらに、上で述べた制御部が、いずれかの相についての上記差が前記許容範囲外であれば故障発生と判定するようにしても良い。いずれかの相に故障が発生していても問題だからである。
【0028】
また、上で述べた第2の信号の電圧値と上記指示電圧との差が所定の許容範囲外である状態が所定時間以上となった場合に故障発生を判定するようにしても良い。確実に故障発生を確認できるようになる。
【0029】
なお、以下で述べる実施の形態は一例であって、上記構成を実現するための実装は複数存在しており、そのいずれもが本発明に包含される。
【発明の効果】
【0030】
故障検出又は回路保護を効率的に実現することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、電動アシスト自転車の外観図である。
【図2】図2は、モータ駆動装置の構成例を示す図である。
【図3】図3は、モータ駆動と故障検出を説明するためのタイミングチャートを示す図である。
【図4】図4は、ロジック回路の動作を示すタイミングチャートを示す図である。
【図5】図5は、ロジック回路の動作を示すタイミングチャートを示す図である。
【図6】図6は、平滑電圧の取得タイミングを説明するための図である。
【図7】図7は、従来技術を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1に、本発明の一実施の形態に係る電動アシスト自転車の外観を示す。この電動アシスト自転車1はクランク軸と後輪がチェーンを介して連結されている一般的な後輪駆動型のものである。モータ駆動装置は、二次電池101と、モータ駆動制御部102と、人力センサ103と、ブレーキセンサ104と、操作パネル105と、モータ106とを有する。
【0033】
二次電池101は、例えば供給最大電圧(満充電時の電圧)が24Vのリチウム二次電池であるが、他種の二次電池であっても良い。
【0034】
モータ駆動制御部102は、前輪の上部に固定された筐体内に収容されている。モータ駆動制御部102の詳細については後に述べる。
【0035】
人力センサ103は、クランク軸に設けられており、搭乗者によるペダルの踏力を検出して、この検出信号をモータ駆動制御部102に出力する。
【0036】
ブレーキセンサ104は、例えば磁石と周知のリードスイッチとから構成されている。磁石は、ブレーキレバーを固定するとともにブレーキワイヤーが送通される筐体内において、ブレーキレバーに連結されたブレーキワイヤーに固定され、ブレーキレバーが握られたときにリードスイッチをオン状態にするようになっている。また、リードスイッチは例えばモータ駆動制御部102のための筐体内に固定されている。リードスイッチの導通信号はモータ駆動制御部102に出力される。
【0037】
操作パネル105は、ハンドル中央部に固定されており、操作パネルから設定されたアシスト指示がモータ駆動制御部102に出力される。
【0038】
モータ106は、周知の三相ブラシレス直流モータであり、電動アシスト自転車1の前輪に装着され、前輪を回転させるとともに前輪の回転に応じてローターが回転するようにローターが前輪に連結されている。さらに、モータ106はホール素子等の回転センサを備えてローターの回転位相に応じたホール信号をモータ駆動制御部102に出力する。
【0039】
図2に、本実施の形態に係るモータ駆動装置の電気系回路を示す。モータ駆動制御部102は、制御部300と、三相ブリッジインバータ回路400と、3つの分圧回路500A乃至500Cと、3つの平滑回路600A乃至600Cと、ロジック回路700とを含む。
【0040】
制御部300は、専用の回路にて実装されることもあれば、以下で述べる処理を実行させるためのプログラムと当該プログラムを実行するプロセッサとの組み合わせにて実装されることもあれば、専用の回路とプロセッサ及びプログラムとの組み合わせとにて実装されることもある。プロセッサ及びプログラムの組み合わせにて実装される場合には、不揮発性メモリにプログラムを保持しておき、プロセッサは、当該プログラムをRAM(Random Access Memory)に読み出して実行する。また、プログラムの実行に用いられる固定のデータについては、不揮発性メモリに格納されている。
【0041】
また、制御回路300は、操作パネル105からアシスト設定の情報が入力され且つ人力センサ103から出力される入力トルクに相当する信号が入力されると、当該アシスト設定の情報と人力センサ103からの入力トルクと二次電池101の電圧値等に基づいて、三相ブリッジインバータ回路400の駆動制御回路410に制御信号を出力する。そして、駆動制御回路410は、ドライブ回路420の各ドライブ素子421乃至423の駆動を制御することで、FETQ11乃至Q32のスイッチングを制御して、モータ106を駆動する。
【0042】
一方、ブレーキ操作が行われ、ブレーキセンサ104からブレーキ信号が制御部300に入力されると、制御部300は、ブレーキセンサ104からの入力信号に基づいて、三相ブリッジインバータ回路400によるモータ106への電力供給量を少なくするような制御信号を出力する。さらに、制御部300は、三相ブリッジインバータ回路400の出力電圧をモータ起電力以下に制御してモータ106から電力を回生することによりブレーキ制御力を得ることができるようにする。
【0043】
さらに、制御部300には、3つの分圧回路500A乃至500Cの出力電圧及びロジック回路700の出力信号並びにモータ106から出力されるホール信号(Hall-U,Hall-V,Hall-W)が入力され、これらの信号に基づいて故障検出処理を行う。故障検出処理に関しては後に詳細に説明する。
【0044】
三相ブリッジインバータ回路400は、駆動制御回路410と、ドライブ回路420と、FETQ11乃至Q32とを含むインバータ回路であり、相U,V,W毎に2個のFETが直列に接続されている。そして、駆動制御回路410とドライブ回路420の3つのドライブ素子421乃至423によって各FETQ11乃至Q32がスイッチングを行って、二次電池101から印加される電圧Vbatの、モータ106への印加時間と非印加時間の比率を、制御回路300からの制御信号に基づいて調整する。このようにしてモータ106への供給電力を変えることによりモータ106の回転数を制御する。これにより、各相U,V,Wに設けられたFETからモータ106の3相の電力供給端子のそれぞれに駆動電圧(Vu,Vv,Vw)が印加される。
【0045】
駆動制御回路410は、制御部300から指示電圧値の信号とモータ106からホール信号(Hall-U,Hall-V,Hall-W)が入力されると、この信号に応じてドライブ回路420の各ドライブ素子421乃至423に対して、U,V,W相に対応する3つの高周波PWM信号群(U-PWM,V-PWM,W-PWM)を出力する。また、駆動制御回路410は、高周波PWM信号(U-PWM,V-PWM,W-PWM)毎に、その高周波PWM信号の立ち上がりエッジと立ち下がりエッジにおいて所定時間幅のローレベルのマスクパルス信号(Um,Vm,Wm)を出力する。
【0046】
なお、マスクパルス信号(Um,Vm,Wm)のパルス幅には、本実施の形態では一例として、PWMキャリア周波数20kHzの周期50μ秒の5%である2.5μ秒が設定される。なお、本実施の形態においては、ホール信号(Hall-U,Hall-V,Hall-W)は、モータ1回転毎に4サイクルずつ出力されるためホール信号の周期の位相、すなわち電気角360°はモータの機械角の90°に相当する。
【0047】
U,V,W相に対応するドライブ素子421乃至423は、入力されたPWM信号(U-PWM,V-PWM,W-PWM)に基づいて、それぞれの相に対応するFETQ11乃至Q32をスイッチング動作させる信号を出力する。
【0048】
三相ブリッジインバータ回路400によるモータ駆動において、1周期を360°期間とした場合、120°の期間は、上相FETQ11,Q21,Q31と、下相FETQ12,Q22,Q32とが反転PWM(パルス変調)動作する。そして、次の60°の期間は上相下相共にオフになり、その次の120°の期間は、下相FETQ12,Q22,Q32がフルオン動作となり、次の60°の期間は上相下相共にオフとなる。このような動作が繰り返し行われる。なお、U,V,Wの三相はそれぞれ120°ずつ位相をずらしてこのような動作を行う。
【0049】
3つの分圧回路500A乃至500Cのそれぞれは、直列接続された2つの抵抗(R1及びR2)を含み、モータ106の電力供給端子に印加される3相の電圧(Vu,Vv,Vw)を、ロジック回路700が用いる低電圧に分圧して出力する。すなわち、分圧回路500Aの抵抗R1の一端は、モータ106のU相入力端子に接続されて、電圧Vuが入力され、抵抗R2の他端は接地されている。分圧回路500Bの抵抗R1の一端は、モータ106のV相入力端子に接続されて、電圧Vvが入力されており、抵抗R2の他端は接地されている。分圧回路500Cの抵抗R1の一端は、モータ106のW相入力端子に接続されて、電圧Vwが入力され、抵抗R2の他端は接地されている。これにより、分圧回路500AはU相の電圧Vuを分圧したフィードバック電圧(U-PWM-FB)を出力する。また、分圧回路500BはV相の電圧Vvを分圧したフィードバック電圧(V-PWM-FB)を出力する。分圧回路500CはW相の電圧Vwを分圧したフィードバック電圧(W-PWM-FB)を出力する。
【0050】
3つの平滑回路600A乃至600Cのそれぞれは、直列接続された抵抗R3とコンデンサC1とを含む。平滑回路600Aの抵抗R3の一端には、U相のフィードバック電圧(U-PWM-FB)が印加され、抵抗R3の他端はコンデンサC1を介して接地されている。平滑回路600Bの抵抗R3の一端には、V相のフィードバック電圧(V-PWM-FB)が印加され、抵抗R3の他端はコンデンサC1を介して接地されている。平滑回路600Cの抵抗R3の一端には、W相のフィードバック電圧(W-PWM-FB)が印加され、抵抗R3の他端はコンデンサC1を介して接地されている。これにより、平滑回路600Aの抵抗R3とコンデンサC1との接続点からU相の平滑電圧(U-PWM-Vol)は制御部300に出力される。また、平滑回路600Bの抵抗R3とコンデンサC1との接続点からV相の平滑電圧(V-PWM-Vol)が制御部300に出力される。平滑回路600Cの抵抗R3とコンデンサC1の接続点からW相の平滑電圧(W-PWM-Vol)が制御部300に出力される。
【0051】
ロジック回路700は、3つのExOR回路711乃至713と、3つのAND回路721乃至723と、1つのOR回路730によって構成されている。ExOR回路711の2つの入力端子の一方にはU相のPWM信号(U-PWM)が入力され、他方の入力端子にはU相のフィードバック電圧(U-PWM-FB)が入力されている。また、ExOR回路712の2つの入力端子の一方にはV相のPWM信号(V-PWM)が入力され、他方の入力端子にはV相のフィードバック電圧(V-PWM-FB)が入力されている。ExOR回路713の2つの入力端子の一方にはW相のPWM信号(W-PWM)が入力され、他方入力端子にはW相のフィードバック電圧(W-PWM-FB)が入力されている。
【0052】
AND回路721の2つの入力端子の一方にはU相のマスクパルス信号(Um)が入力され、他方の入力端子はExOR回路711の出力端子に接続されている。また、AND回路722の2つの入力端子の一方にはV相のマスクパルス信号(Vm)が入力され、他方の入力端子はExOR回路712の出力端子に接続されている。AND回路723の2つの入力端子の一方にはW相のマスクパルス信号(Wm)が入力され、他方の入力端子はExOR回路713の出力端子に接続されている。
【0053】
OR回路730の3つの入力端子は、3つのAND回路721乃至723の出力端子に接続されている。また、OR回路730の出力端子から出力されるエラー信号ERは制御部300に入力されている。
【0054】
次に、制御部300におけるモータ駆動と故障検出について図3乃至図6を参照して説明する。
【0055】
図3におけるホール信号(HU-In,HV-In,HW-In)は、モータ106のホール素子から出力されるホール信号(Hall-U,Hall-V,Hall-W)の位相を制御部300において調整した遅延後のホール信号である。なお、ホール信号1周期を電気角360°として、6つのフェーズに分けられる。本実施の形態においては、ホール信号の1周期を電気角360°とすると、ホール信号の1周期は機械角の90°(モータ106の1/4回転)となる。
【0056】
また、モータ106のU相、V相、W相のそれぞれに、オープン時において逆起電力(Motor-U,Motor-V,Motor-W)が生じるように電流を流してモータ106を駆動するためには、スイッチング信号(U-HS,U-LS,V-HS,V-LS,W-HS,W-LS)を各FETQ11乃至Q32のゲートに出力する。ここで、スイッチング信号U−HSはU相のハイサイドFET(Q11)のゲート信号であり、スイッチング信号U−LSはU相のローサイドFET(Q12)のゲート信号である。また、スイッチング信号V−HSはV相のハイサイドFET(Q21)のゲート信号であり、スイッチング信号V−LSはV相のローサイドFET(Q22)のゲート信号であり、スイッチング信号W−HSはW相のハイサイドFET(Q31)のゲート信号であり、スイッチング信号W−LSはW相のローサイドFET(Q32)のゲート信号である。
【0057】
「PWM」及び「/PWM」は、制御部300の演算結果に応じたデューティー比でオン又はオフする期間を表しており、コンプリメンタリ型のブリッジ回路であるから「PWM」がオンであれば「/PWM」はオフとなり、「PWM」がオフであれば「/PWM」はオンとなる。ローサイドFET(Q12,Q22,Q32)の「On」の区間は、常にオンとなる。
【0058】
このようにU相のFET(Q11,Q12)は、フェーズ1及びフェーズ2で「PWM」及び「/PWM」のスイッチングを行い、U相のローサイドFET(Q12)は、フェーズ4及びフェーズ5でオンになる。また、V相のFET(Q21,Q22)は、フェーズ3及びフェーズ4で「PWM」及び「/PWM」のスイッチングを行い、V相のローサイドFET(Q22)は、フェーズ6及びフェーズ1でオンになる。さらに、W相のFET(Q31,Q32)は、フェーズ5及びフェーズ6で「PWM」及び「/PWM」のスイッチングを行い、W相のローサイドFET(Q32)は、フェーズ2及びフェーズ3でオンになる。
【0059】
このような信号を出力してデューティー比を適切に制御すれば、モータ106を所望のトルクで駆動できるようになる。
【0060】
なお、Vuは、モータ106のU相の入力端子に印加される電圧であり、U相の場合には、U−PWM及びU−Onに応じて、フェーズ1及び2においてPWM駆動される。また、Vuのフェーズ3及び6については、簡易的に斜めの線で表しているが、回転している磁石からモータコイルに発生する逆起電力(Motor-U逆起電力)及びコイルを介した他の相のPWM駆動波形の影響が現れる。U−PWM−FBは、U相についての分圧回路500Aの出力であり、Vuが抵抗分割により低電圧化された状態となる。
【0061】
また、制御部300はロジック回路700から出力されるエラー信号ERによって三相ブリッジインバータ回路400の故障を検出する。すなわち、ロジック回路700から出力されるエラー信号ERは、三相ブリッジインバータ回路400に故障が発生していないときは2値化ロジックレベルでローレベルとなり、故障が発生したときにエラー信号ERはハイレベルのパルス信号となる。本実施の形態では、PWM信号(U-PWM,V-PWM,W-PWM)とフィードバック電圧(U-PWM-FB,V-PWM-FB,W-PWM-FB)をロジックレベルで比較することにより故障判定を行っている。
【0062】
但し、U相のマスク信号Umは、タイミングずれによって生ずるパルスをマスクするためのPWM変化点マスクの部分と、ExOR回路711の出力が不定となる部分をマスクする通常のマスク部分とがある。
【0063】
より具体的に、図3及び図4に示すように、故障が発生していないときは、各相のPWM信号(U-PWM,V-PWM,W-PWM)とフィードバック電圧(U-PWM-FB,V-PWM-FB,W-PWM-FB)のロジックレベルはほぼ同じになる。ただし、フィードバック電圧(U-PWM-FB,V-PWM-FB,W-PWM-FB)にはPWM信号(U-PWM,V-PWM,W-PWM)に対して回路による遅延が生じる。このため、上記マスク信号Umにより、回路による遅延部分を除いた部分のPWM信号(U-PWM,V-PWM,W-PWM)とフィードバック電圧(U-PWM-FB,V-PWM-FB,W-PWM-FB)をロジックレベルで比較する。これにより、遅延部分を除いた部分のPWM信号(U-PWM,V-PWM,W-PWM)とフィードバック電圧(U-PWM-FB,V-PWM-FB,W-PWM-FB)のロジックレベルが異なるときに故障が発生したものと判定することができる。
【0064】
図3でも示すように、故障無しであれば、ExOR回路711の出力は、フェーズ1及び2ではパルスが発生しているが、マスク信号UmのPWM変化点マスク部分でマスクされるので、このパルスは除去されて、AND回路721の出力はローのままとなる。
【0065】
図4及び図5ではU−PWM信号が、PWMスイッチング領域に入っているホール周期の120°区間の波形だけを記載しているが、U−PWM信号がGndに固定されている120°区間もPWMがローレベルに固定されているだけで同様に比較動作が行われる。また残りの60°のOff領域2回の間は、図2の駆動制御回路410より出力されるU−ON信号をOff状態指令にすることにより、PWM駆動もGnd固定の駆動も行われていない期間つまりFET(Q11及びQ12)が共にOffとなっている。そのため、出力波形が不定となるため、上記マスク信号Umは駆動制御回路410により、強制的にマスク側つまりローレベルとされ、誤検出を避けるようになされる。なお、V相、W相においても上記同様である。これは、図3でも示されており、ExOR回路711の出力は、フェーズ3及び6では不定となるが、この部分はマスク信号Umで全体がマスクされるので、AND回路721の出力はローのままとなる。
【0066】
U,V,W相の何れかの相において故障が発生すると、故障が発生した相に対応するExOR回路711乃至713の出力にハイレベルのパルスが発生する。例えば、図5に示すように、三相ブリッジインバータ回路400のU相のFET(Q11,Q12)とモータ106との接続線が切れた場合、U相のフィードバック電圧(U-PWM-FB)はローレベルとなり、ExOR回路711の出力にハイレベルのパルスが発生するとともにAND回路721の出力にハイレベルのパルスが発生する。これによりOR回路730から出力されるエラー信号ERもハイレベルのパルス信号となる。
【0067】
したがって、OR回路730から出力されるエラー信号ERがハイレベルのパルス信号となったとき故障が発生したと判定することができる。なお、本実施の形態では、外部からノイズ等が混入したときの誤動作を防止するために、OR回路730から出力されるエラー信号ERがハイレベルのパルス信号となった状態が所定時間t1以上続いたときに故障が発生したと判定している。所定時間t1としてはPWM信号の周期を考慮して例えば0.2秒を設定している。
【0068】
図3でも、故障が発生している場合には、ExOR回路711の出力は、故障無しの場合と異なり、ハイの期間が発生するので、パルスの上部が繋がれた形で表現されている。同様に、AND回路721の出力についても、故障ありの場合には、ハイの期間が発生しているので、パルスの上部が繋がれて表現されている。
【0069】
さらに、制御部300には、3つの平滑回路600A乃至600Cから出力される平滑電圧(U-PWM-Vol,V-PWM-Vol,W-PWM-Vol)が入力されており、これらの平滑電圧(U-PWM-Vol,V-PWM-Vol,W-PWM-Vol)の値をデジタル値に変換し、このデジタル値で表された電圧値と駆動制御回路410に指示した電圧値とを比較して、これらの電圧値の差の絶対値が所定の許容値以上となったとき故障が発生したものと判定する。
【0070】
本実施形態では、許容範囲として例えば指示電圧値の±10%としている。なお、ここでも上で述べたように、外部からノイズ等が混入したときの誤動作を防止するために、上で述べた電圧値の差の絶対値が許容値以上となった状態が所定時間t2以上続いたときに故障が発生したと判定している。所定時間t2としては例えば0.2秒を設定している。
【0071】
また、制御部300が平滑電圧(U-PWM-Vol,V-PWM-Vol,W-PWM-Vol)の値を取得するタイミングは、図6に示すように、各相の電圧が安定した状態の時である。すなわち、具体的には、W相のホール信号(Hall-W)がハイレベルからローレベルに変化する立ち下がりエッジにおいてU相の平滑電圧(U-PWM-Vol)を取得し、U相のホール信号(Hall-U)がハイレベルからローレベルに変化する立ち下がりエッジにおいてV相の平滑電圧(V-PWM-Vol)を取得し、V相のホール信号(Hall-V)がハイレベルからローレベルに変化する立ち下がりエッジにおいてW相の平滑電圧(W-PWM-Vol)を取得する。
【0072】
以上述べたようなモータ駆動装置によれば、従来例のように回路に大きな電流を流すことなく且つ複数の電流センサを必要とすることなく、故障検出や回路の保護を容易に行うことができる。
【0073】
なお、故障を検出した場合には、制御部300は、駆動制御回路410に対して、駆動を停止させる又は抑制させるような制御信号を出力するなど、エラー対応処理を実施する。さらにユーザに対して故障を通知しても良い。
【0074】
以上本発明の一実施の形態を説明したが、本発明はこれに限定されない。上で述べたような機能を他の方法にて実現しても良い。また、上でも述べたように、制御部300等は、専用の回路で実装しても良いし、ソフトウエアとプロセッサの組み合わせなどで実装するようにしても良い。
【0075】
また、上で述べたモータ106が、三相ブラシレス直流モータである場合の実施の形態を説明したが、三相以外の二相又は四相以上のブラシレス直流モータであってもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 電動アシスト自転車
101 二次電池
102 モータ駆動制御部
103 人力センサ
104 ブレーキセンサ
105 操作パネル
106 モータ
300 制御部
400 三相ブリッジインバータ回路
410 駆動制御回路
420 ドライブ回路
421乃至423 ドライブ素子
Q11乃至Q32 FET
500A乃至500C 分圧回路
600A乃至600C 平滑回路
711乃至730 ロジック回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチングを行って電源からモータへ電力供給を行うための第1の信号を出力するスイッチング素子と、
前記スイッチング素子のスイッチングを制御するための第2の信号を出力する駆動制御回路と、
前記第1の信号の論理レベルと前記第2の信号の論理レベルとに矛盾が存在するか判断し、矛盾が存在している場合にはエラー信号を出力する判断部と、
を有するモータ駆動制御装置。
【請求項2】
前記判断部が、
前記第1の信号に対する前記第2の信号の信号遅延発生部分と前記電力供給のためのスイッチングを行っていない部分とを除外して判断を行う
請求項1記載のモータ駆動制御装置。
【請求項3】
前記モータが、複数相のブラシレス直流モータであり、
前記スイッチング素子は、前記複数相の各相につき設けられ、各相につき前記第1の信号を出力し、
前記駆動制御回路は、前記複数相の各相につき前記第2の信号を出力し、
前記判断部が、
前記複数相の各相のいずれかについて、前記第1の信号の論理レベルと前記第2の信号の論理レベルとに矛盾が存在するか判断する
請求項1又は2記載のモータ駆動制御装置。
【請求項4】
前記判断部は、前記第1の信号の論理レベルと前記第2の信号の論理レベルとに矛盾が、所定時間以上継続する場合に、前記エラー信号を出力する
請求項1乃至3のいずれか1つ記載のモータ駆動制御装置。
【請求項5】
指示電圧に応じて駆動制御回路から出力される信号に応じて行われるスイッチングで電源からモータへ電力供給を行うための第1の信号を平滑化して第2の信号を出力する平滑回路と、
前記指示電圧を前記駆動制御回路に出力し、前記第2の信号の電圧値と前記指示電圧との差が所定の許容範囲外であれば故障発生を判定する制御部と、
を有するモータ駆動制御装置。
【請求項6】
前記モータが、複数相のブラシレス直流モータであり、
前記モータが、各相につき回転位相に応じたパルス信号を出力し、
前記第1の信号が、前記複数相の各相につき出力され、
前記平滑回路が、前記複数相の各相につき設けられ、
前記制御部が、各前記パルス信号から設定される所定のタイミングで、対応する相の前記第2の信号の電圧値と前記指示電圧との差を判定する
請求項5記載のモータ駆動制御装置。
【請求項7】
前記制御部が、いずれかの相についての前記差が前記許容範囲外であれば故障発生と判定する
請求項6記載のモータ駆動制御装置。
【請求項8】
前記第2の信号の電圧値と前記指示電圧との差が前記所定の許容範囲外である状態が所定時間以上となった場合に故障発生を判定する
請求項5乃至7のいずれか1つ記載のモータ駆動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−147658(P2012−147658A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−278041(P2011−278041)
【出願日】平成23年12月20日(2011.12.20)
【出願人】(399091511)マイクロスペース株式会社 (15)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】