説明

ヤヌスキナーゼの阻害剤として有用な三環系ヘテロアリール化合物

本発明は、タンパク質キナーゼの、特にJAKファミリーキナーゼの阻害剤として有用な化合物に関する。本発明は、前記化合物を含む薬学的に許容される組成物、および種々の疾患、状態または障害の治療において該組成物を使用する方法も提供する。一つの実施形態において、本発明は、増殖性障害、心障害、神経変性障害、自己免疫障害、臓器移植に関連する状態、炎症性障害、免疫媒介性障害または骨障害から選択される、患者における疾患、状態または障害を治療する、またはその重症度を軽減する方法であって、治療有効用量の本発明の化合物またはその医薬組成物を患者に投与するステップを含む方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は、ヤヌスキナーゼ(JAK)の阻害剤として有用な化合物に関する。本発明は、本発明の化合物を含む薬学的に許容される組成物、および種々の障害の治療においてこれらの組成物を使用する方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ヤヌスキナーゼ(JAK)は、サイトカインシグナル伝達において重要な役割を果たすチロシンキナーゼのファミリーである。該ファミリーは、JAK−1、JAK−2、JAK−3およびTYK−2からなり、キナーゼのこのファミリーの下流の基質は、シグナル伝達および転写活性化剤(STAT)タンパク質を含む。JAK/STATシグナル伝達は、アレルギーおよび喘息;移植拒絶反応、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症および多発性硬化症等の自己免疫疾患等、多数の異常な免疫反応の媒介、ならびに、固形悪性腫瘍および白血病およびリンパ腫等の血液悪性腫瘍に関与している。JAK−2は、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、慢性特発性骨髄線維症、骨髄線維症を伴う骨髄様化生、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病、慢性好酸球性白血病、好酸球増多症候群および全身性肥満細胞症を含む骨髄増殖性障害にも関与している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、JAKファミリーキナーゼと結合し、それによってJAK/STATシグナル伝達を加減する化合物を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
本発明の化合物および薬学的に許容されるその組成物は、タンパク質キナーゼ、特にJAKファミリーキナーゼの阻害剤として有効であることが分かっている。したがって、本発明は、式
【0005】
【化1】

を有する化合物、または薬学的に許容されるその塩またはプロドラッグ[式中、R、R、R、R、R、R、R、R、W、X、XおよびXは、以下で定義される通りである]を特色とする。
【0006】
本発明は、本発明の化合物と、薬学的に許容される担体、アジュバントまたはビヒクルとを含む、医薬組成物も提供する。加えて、本発明は、増殖性障害、心障害、神経変性障害、自己免疫障害、臓器移植に関連する状態、炎症性障害、免疫媒介性障害または骨障害から選択される、患者における疾患、状態または障害を治療する、またはその重症度を軽減する方法であって、治療有効用量の本発明の化合物またはその医薬組成物を患者に投与するステップを含む方法も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(発明の詳細な説明)
定義および一般的な専門用語
本明細書において使用する場合、別段の定めがない限り、下記の定義が当てはまるものとする。本発明の目的のために、化学元素は、Periodic Table of the Elements、CAS版、およびHandbook of Chemistry and Physics、第75版、1994年に従って特定される。また、有機化学の一般原理は、「Organic Chemistry」、Thomas Sorrell、University Science Books、Sausalito、1999年、および「March’s Advanced Organic Chemistry」、第5版、Smith, M.B.およびMarch, J.(編)、John Wiley & Sons、New York、2001年において記述されており、これらの全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0008】
本明細書において記述する場合、本発明の化合物は、概して上記に例示したようなもの、または本発明の特定の分類、サブ分類および種によって例証されるようなもの等、1個または複数の置換基で場合によって置換されていてもよい。「場合によって置換されている」という語句は、「置換されているか、または置換されていない」という語句と同義で使用されることが理解される。一般に、「置換されている」という語句は、「場合によって」という語句が先行するか否かにかかわらず、所与の構造における1個または複数の水素ラジカルの、既定の置換基の非水素ラジカルによる置き換えを指す。別段の定めがない限り、場合によって置換されている基は、該基の各置換可能な位置に置換基を有し得る。所与の構造中の1つを超える位置を、既定の群から選択される1個を超える置換基で置換することが可能な場合、該置換基は、各位置において同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0009】
本明細書において記述する場合、「場合によって置換されている」という用語が一覧に先行するとき、前記用語は、その一覧中の後に続く置換可能な基すべてについて言及している。例えば、Xが、ハロゲン、場合によって置換されているC1〜3アルキルまたはフェニルである場合、Xは、場合によって置換されているアルキルまたは場合によって置換されているフェニルのいずれであってもよい。同様に、「場合によって置換されている」という用語が一覧の後にあるとき、前記用語は、別段の定めがない限り、先行する一覧中の置換可能な基のすべてについても言及している。例えば、Xが、ハロゲン、C1〜3アルキルまたはフェニルであり、XはJで場合によって置換されている場合、C1〜3アルキルおよびフェニルはいずれもJで場合によって置換されていてよい。当業者には明らかなように、H、ハロゲン、NO、CN、NH、OHまたはOCF等の基は、置換可能な基ではないため、含まれないと考えられる。置換基ラジカルまたは構造が、「場合によって置換されている」と特定または定義されていない場合、その置換基ラジカルまたは構造は置換されていない。
【0010】
本発明によって想定される置換基の組合せは、安定な、または化学的に実現可能な化合物の形成をもたらすものが好ましい。「安定な」という用語は、本明細書において使用する場合、本明細書において開示される目的のうちの1つまたは複数のための、それらの産生、検出、好ましくはそれらの回収、精製および使用を可能にする条件にさらされたときに、実質的に変性しない化合物を指す。いくつかの実施形態において、安定な化合物または化学的に実現可能な化合物は、水分またはその他の化学反応性の高い条件の不在下において、少なくとも1週間、40℃以下の温度に保ったときに、実質的に変性しないものである。
【0011】
「脂肪族」または「脂肪族基」という用語は、本明細書において使用する場合、完全に飽和した、または1つもしくは複数の不飽和の単位を含有する、直鎖(すなわち、非分岐鎖)または分岐鎖の、置換または非置換炭化水素鎖を意味する。別段の規定がない限り、脂肪族基は、1〜20個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、脂肪族基は、1〜10個の炭素原子を含有する。その他の実施形態において、脂肪族基は、1〜8個の炭素原子を含有する。また他の実施形態において、脂肪族基は、1〜6個の炭素原子を含有し、さらに他の実施形態において、脂肪族基は、1〜4個の炭素原子を含有する。適切な脂肪族基は、直鎖または分岐鎖の、置換または非置換アルキル、アルケニルまたはアルキニル基を含むがこれらに限定されない。脂肪族基のさらなる例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソブチル、ビニルおよびsec−ブチルを含む。「アルキル」という用語および「アルキ(alk−)」という接頭辞は、本明細書において使用する場合、直鎖および分岐飽和炭素鎖の両方を包括する。「アルキレン」という用語は、本明細書において使用する場合、2個の水素原子の除去によって直鎖または分岐鎖の飽和炭化水素から誘導される飽和二価炭化水素基を表し、メチレン、エチレン、イソプロピレン等によって例証される。「アルケニル」という用語は、本明細書において使用する場合、1つまたは複数の炭素−炭素二重結合を含有する一価直鎖または分岐鎖炭化水素基を表す。「アルキニル」という用語は、本明細書において使用する場合、1つまたは複数の炭素−炭素三重結合を含有する一価直鎖または分岐鎖炭化水素基を表す。
【0012】
「脂環族」(または「炭素環」)という用語は、完全に飽和した、または1つもしくは複数の不飽和の単位を含有するが、残りの分子との単一の結合点を有する芳香族ではなく、前記二環系中のあらゆる個々の環が3〜7個の員を有する単環式C〜C炭化水素または二環式C〜C12炭化水素を指す。適切な脂環族基は、シクロアルキル、シクロアルケニルおよびシクロアルキニルを含むがこれらに限定されない。脂肪族基のさらなる例は、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチルおよびシクロヘプテニルを含む。
【0013】
「複素環」、「ヘテロシクリル」、「複素脂環式」または「複素環式」という用語は、本明細書において使用する場合、1個または複数の環員が独立に選択されたヘテロ原子であり、完全に飽和した、または1つもしくは複数の不飽和の単位を含有するが、残りの分子との単一の結合点を有する芳香族ではない、単環式、二環式または三環系を指す。いくつかの実施形態において、「複素環」、「ヘテロシクリル」、「複素脂環式」または「複素環式」基は、1個または複数の環員が、酸素、硫黄、窒素またはリンから独立に選択されたヘテロ原子であり、系中の各環が、3〜8個の環員を含有する、3〜14個の環員を有する。
【0014】
複素環の例は、下記の単環:2−テトラヒドロフラニル、3−テトラヒドロフラニル、2−テトラヒドロチオフェニル、3−テトラヒドロチオフェニル、2−モルホリノ、3−モルホリノ、4−モルホリノ、2−チオモルホリノ、3−チオモルホリノ、4−チオモルホリノ、1−ピロリジニル、2−ピロリジニル、3−ピロリジニル、1−テトラヒドロピペラジニル、2−テトラヒドロピペラジニル、3−テトラヒドロピペラジニル、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、1−ピラゾリニル、3−ピラゾリニル、4−ピラゾリニル、5−ピラゾリニル、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−ピペリジニル、2−チアゾリジニル、3−チアゾリジニル、4−チアゾリジニル、1−イミダゾリジニル、2−イミダゾリジニル、4−イミダゾリジニル、5−イミダゾリジニル;ならびに下記の二環:3−1H−ベンズイミダゾール−2−オン、3−(1−アルキル)−ベンズイミダゾール−2−オン、インドリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ベンゾチオラン、ベンゾジチアンおよび1,3−ジヒドロ−イミダゾール−2−オンを含むがこれらに限定されない。
【0015】
「ヘテロ原子」という用語は、窒素、硫黄もしくはリンのあらゆる酸化形態、あらゆる塩基性窒素の四級化形態、または複素環の置換可能な窒素、例えば、N(3,4−ジヒドロ−2H−ピロリル中のもの等)、NH(ピロリジニル中のもの等)またはNR(N−置換ピロリジニル中のもの等)を含む、酸素、硫黄、窒素、リンまたはケイ素のうちの1つまたは複数を意味する。
【0016】
「不飽和」という用語は、本明細書において使用する場合、部分が1つまたは複数の不飽和の単位を有することを意味する。
【0017】
「アルコキシ」または「チオアルキル」という用語は、本明細書において使用する場合、既に定義した通り、酸素(「アルコキシ」)または硫黄(「チオアルキル」)原子を介して主炭素鎖と結合した、アルキル基を指す。
【0018】
「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」および「ハロアルコキシ」という用語は、アルキル、アルケニルまたはアルコキシを意味し、事例によっては1個または複数のハロゲン原子で置換されていてよい。「ハロゲン」という用語は、F、Cl、BrまたはIを意味する。
【0019】
単独で、または「アラルキル」、「アラルコキシ」、もしくは「アリールオキシアルキル」内等でより大きい部分の一部として使用される「アリール」という用語は、合計6〜14個の環員を有する単環式、二環式、および三環式炭素環系を指し、該系中の少なくとも1つの環は芳香族であり、該系中の各環は3〜7個の環員を含有し、残りの分子との単一の結合点を有する。「アリール」という用語は、「アリール環」という用語と同義で使用され得る。アリール環の例は、フェニル、ナフチル、およびアントラセンを含み得る。
【0020】
単独で、または「ヘテロアラルキル」もしくは「ヘテロアリールアルコキシ」内等でより大きい部分の一部として使用される「ヘテロアリール」という用語は、合計5〜14個の環員を有する単環式、二環式、および三環式環系を指し、該系中の少なくとも1つの環は芳香族であり、該系中の少なくとも1つの環は1個または複数のヘテロ原子を含有し、該系中の各環は3〜7個の環員を含有し、残りの分子との単一の結合点を有する。「ヘテロアリール」という用語は、「ヘテロアリール環」という用語または「複素芳香族」という用語と同義で使用され得る。
【0021】
ヘテロアリール環のさらなる例は、下記の単環:2−フラニル、3−フラニル、N−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、N−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、ピリダジニル(例えば、3−ピリダジニル)、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、テトラゾリル(例えば、5−テトラゾリル)、トリアゾリル(例えば、2−トリアゾリルおよび5−トリアゾリル)、2−チエニル、3−チエニル、ピラゾリル(例えば、2−ピラゾリル)、イソチアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,3−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、ピラジニル、1,3,5−トリアジニル、ならびに下記の二環:ベンズイミダゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、インドリル(例えば、2−インドリル)、プリニル、キノリニル(例えば、2−キノリニル、3−キノリニル、4−キノリニル)、およびイソキノリニル(例えば、1−イソキノリニル、3−イソキノリニル、または4−イソキノリニル)を含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、アリール(アラルキル、アラルコキシ、アリールオキシアルキル等を含む)またはヘテロアリール(ヘテロアラルキルおよびヘテロアリールアルコキシ等を含む)基は、1個または複数の置換基を含有し得る。アリールまたはヘテロアリール基の不飽和炭素原子上の適切な置換基は、以下;ハロゲン;−R;−OR;−SR;1,2−メチレンジオキシ;1,2−エチレンジオキシ;Rで場合によって置換されているフェニル(Ph);Rで場合によって置換されている−O(Ph);Rで場合によって置換されている−(CH1−2(Ph);Rで場合によって置換されている−CH=CH(Ph);−NO;−CN;−N(R°);−NR°C(O)R°;−NR°C(S)R°;−NR°C(O)N(R°);−NR°C(S)N(R°);−NR°C(O)OR°;−NR°NR°C(O)R°;−NR°NR°C(O)N(R°);−NR°NR°C(O)OR°;−C(O)C(O)R°;−C(O)CHC(O)R°;−C(O)OR°;−C(O)R°;−C(S)R°;−C(O)N(R°);−C(S)N(R°);−B(OR°);−OC(O)N(R°);−OC(O)R°;−C(O)N(OR°)R°;−C(NOR°)R°;−S(O)R°;−S(O)R°;−S(O)N(R°);−S(O)R°;−−NR°S(O)N(R°);−NR°S(O)R°;−N(OR°)R°;−C(=NH)−N(R°);−(CH0〜2NHC(O)R°;−L−R°;−L−N(R°);−L−SR°;−L−OR°;−L−(C3〜10脂環族)、−L−(C6〜10−アリール)、−L−(5〜10員ヘテロアリール)、−L−(5〜10員ヘテロシクリル)、オキソ、C1〜4ハロアルキル、C1〜4ハロアルキル、−L−NO、−L−CN,−L−OH,−L−CFから選択されるか、あるいは、同じ炭素上または異なる炭素上の二つの置換基は、それらが結合している炭素または介在炭素と一緒になって5〜7員の飽和、不飽和、または部分飽和環を形成し、ここで、Lは、3個までのメチレン単位が、−NH−、−NR°−、−O−、−S−、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)CO−、−C(O)−、−C(O)NH−、−C(O)NR°−、−C(=N−CN)、−NHCO−、−NR°CO−、−NHC(O)O−、−NR°C(O)O−、−S(O)NH−、−S(O)NR°−、−NHS(O)−、−NR°S(O)−、−NHC(O)NH−、−NR°C(O)NH−、−NHC(O)NR°−、−NR°C(O)NR°、−OC(O)NH−、−OC(O)NR°−、−NHS(O)NH−、−NR°S(O)NH−、−NHS(O)NR°−、−NR°S(O)NR°−、−S(O)−、または−S(O)−で置換される、C1〜4アルキレン基であり、そしてそれぞれ独立したRは、水素、場合によって置換されているC1〜6脂肪族、置換されていない5〜6員のヘテロアリールもしくは複素環式環、フェニル、−O(Ph)、または−CH(Ph)から選択されるか、あるいは同じ置換基または異なる置換基上の2個の独立したRが、各R基が結合した原子とともに、5〜8員のヘテロシクリル、アリール、もしくはヘテロアリール環、または3〜8員のシクロアルキル環を形成し、前記ヘテロアリールまたはヘテロシクリル環は、窒素、酸素、または硫黄から独立に選択される1〜3個のヘテロ原子を有する。Rの脂肪族基上の任意選択の置換基は、−NH、−NH(C1〜4脂肪族)、−N(C1−4脂肪族)、ハロゲン、C1−4脂肪族、−OH、−O(C1−4脂肪族)、−NO、−CN、−C(O)OH、−C(O)O(C1−4脂肪族)、−O(ハロC1−4脂肪族)、またはハロC1−4脂肪族から選択され、前述のR(のC1〜4脂肪族基のそれぞれは、置換されていない。
【0023】
いくつかの実施形態において、脂肪族もしくはヘテロ脂肪族基、または非芳香族複素環式環は、1個または複数の置換基を含有し得る。脂肪族もしくはヘテロ脂肪族基の、または非芳香族複素環式環の飽和炭素上の適切な置換基は、アリールまたはヘテロアリール基の不飽和炭素に関して上記で列挙したものから選択され、さらに下記:=O、=S、=NNHR、=NN(R、=NNHC(O)R、=NNHC(O)O(アルキル)、=NNHS(O)(アルキル)、または=NRを含み、各Rは、水素または場合によって置換されているC1〜6脂肪族から独立に選択される。Rの脂肪族基上の任意選択の置換基は、NH、NH(C1〜4脂肪族)、N(C1〜4脂肪族)、ハロゲン、C1〜4脂肪族、OH、O(C1〜4脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C1〜4脂肪族)、O(ハロC1〜4脂肪族)、またはハロ(C1〜4脂肪族)から選択され、前述のRのC1〜4脂肪族基のそれぞれは、置換されていない。
【0024】
いくつかの実施形態において、非芳香族複素環式環の窒素上の任意選択の置換基は、−R、−N(R、−C(O)R、−CO、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−SO、−SON(R、−C(=S)N(R、−C(=NH)−N(R、または−NRSOを含み、Rは、水素、場合によって置換されているC1〜6脂肪族、場合によって置換されているフェニル、場合によって置換されている−O(Ph)、場合によって置換されている−CH(Ph)、場合によって置換されている−(CH1−2(Ph)、場合によって置換されている−CH=CH(Ph)、または、酸素、窒素、もしくは硫黄から独立に選択される1〜4個のヘテロ原子を有する置換されていない5〜6員のヘテロアリールもしくは複素環式環であるか、あるいは同じ置換基または異なる置換基上の2個の独立したRが、各R基が結合した原子とともに、5〜8員のヘテロシクリル、アリール、もしくはヘテロアリール環、または3〜8員のシクロアルキル環を形成し、前記ヘテロアリールまたはヘテロシクリル環は、窒素、酸素、または硫黄から独立に選択される1〜3個のヘテロ原子を有する。Rの脂肪族基またはフェニル環上の任意選択の置換基は、−NH、−NH(C1〜4脂肪族)、−N(C1〜4脂肪族)、ハロゲン、C1−4脂肪族、−OH、−O(C1−4脂肪族)、−NO、−CN、−C(O)OH、−C(O)O(C1〜4脂肪族)、−O(ハロC1〜4脂肪族)、または(C1〜4脂肪族)から選択され、Rの前述のC1〜4脂肪族基のそれぞれは、置換されていない。
【0025】
上記で詳述したように、いくつかの実施形態において、2個の独立したR(またはR、または本明細書において同様に定義されるその他任意の変数)は、各変数が結合した原子とともに、5〜8員のヘテロシクリル、アリール、もしくはヘテロアリール環、または3〜8員のシクロアルキル環を形成することができる。2個の独立したR(またはR、または本明細書において同様に定義されるその他任意の変数)が、各変数が結合した原子と一緒になったときに形成される例示的な環は、下記を含むがこれらに限定されない:a)同じ原子に結合し、その原子とともに、環を形成する2個の独立したR(またはR、または本明細書において同様に定義されるその他任意の変数)であって、例えばRのいずれもが、窒素原子とともに、ピペリジン−1−イル、ピペラジン−1−イル、またはモルホリン−4−イル基を形成するN(Rを形成する;ならびに、b)異なる原子に結合し、それらの原子の両方とともに、環を形成する2個の独立したR(またはR、または本明細書において同様に定義されるその他任意の変数)であって、例えばフェニル基が2個のORで置換されている場合
【0026】
【化2】

、これら2個のRは、それらが結合した酸素原子とともに、縮合6員酸素含有環
【0027】
【化3】

を形成する。2個の独立したR(またはR、または本明細書において同様に定義されるその他任意の変数)が、各変数が結合した原子と一緒になったときには、その他多種多様な環が形成でき、上記で詳述した例は限定を意図するものではないことが十分に理解される。
【0028】
いくつかの実施形態において、アルキルまたは脂肪族鎖は、別の原子または基で場合によって遮断されていることがある。これは、アルキルまたは脂肪族鎖のメチレン単位が、前記その他の原子または基と場合によって交換されていることを意味する。そのような原子または基の例としては、−NR−、−O−、−S−、−CO−、−OC(O)−、−C(O)CO−、−C(O)−、−C(O)NR−、−C(=N−CN)、−NRCO−、−NRC(O)O−、−SONR−、−NRSO−、−NRC(O)NR−、−OC(O)NR−、−NRSONR−、−SO−、または−SO−[式中、Rは本明細書において定義される通りである]を含む場合があるがこれらに限定されない。別段の規定がない限り、任意選択の置き換えは、化学的に安定な化合物を形成する。鎖内および鎖の片端の両方で、すなわち、結合点および/または末端の両方で、任意選択の遮断が発生し得る。2つの任意選択の置き換えは、化学的に安定な化合物をもたらす限り、鎖内で互いに隣接していてもよい。別段の規定がない限り、末端において置き換えまたは遮断が発生する場合、置き換え原子は、末端においてHと結合される。例えば、−CHCHCHが−O−で場合によって遮断されている場合、結果として生じる化合物は、−OCHCH、−CHOCH、または−CHCHOHとなる場合がある。
【0029】
本明細書において記述するように、置換基から引き抜かれた多環系内の1個の環の中心との結合(以下に示す)は、多環系内の環のいずれかにある任意の置換可能な位置における置換基の置換を表す。例えば、図aは、図bに示す位置のいずれかにおいて考えられる置換を表す。
【0030】
【化4】

これは、任意選択の環系と縮合された多環系(点線で表されるであろう)にも当てはまる。例えば、図cにおいて、Xは、環Aおよび環B両方のための任意選択の置換基である。
【0031】
【化5】

しかしながら、多環系内の2つの環が、各環の中心から引き抜かれた異なる置換基をそれぞれ有する場合、別段の規定がない限り、各置換基は、それが結合された環上での置換のみを表す。例えば、図dにおいて、Yは、環Aのみのための任意選択の置換基であり、Xは、環Bのみのための任意選択の置換基である。
【0032】
【化6】

別段の記述がない限り、本明細書で描写されている構造は、その構造のすべての異性体(例えば、鏡像異性体、ジアステレオマー、および幾何学的(または立体配座))形態、例えば、各不斉中心、(Z)および(E)二重結合異性体、ならびに(Z)および(E)立体配座異性体についてのRおよびS配置を含むことも意図される。したがって、本化合物の、単一の立体化学異性体、ならびに、鏡像異性体、ジアステレオマー、および幾何学的(または立体配座)混合物は、本発明の範囲内である。
【0033】
「保護基」という用語は、本明細書において使用する場合、合成手順中の望ましくない反応に対して、例えば、アルコール、アミン、カルボキシル、カルボニル等の官能基を保護するように意図されている基を表す。一般に使用される保護基は、GreeneおよびWuts、Protective Groups In Organic Synthesis、第3版、(John Wiley & Sons、New York、1999年)において開示されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。窒素保護基の例は、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ピバロイル、t−ブチルアセチル、2−クロロアセチル、2−ブロモアセチル、トリフルオロアセチル、トリクロロアセチル、フタリル、o−ニトロフェノキシアセチル、α−クロロブチリル、ベンゾイル、4−クロロベンゾイル、4−ブロモベンゾイル、4−ニトロベンゾイルおよびキラル補助基(アラニン、ロイシン、フェニルアラニン等の保護されているまたは保護されていないD、LまたはD,L−アミノ酸等)等の、アシル、アロイルまたはカルバミル基;ベンゼンスルホニル、p−トルエンスルホニル等のスルホニル基;ベンジルオキシカルボニル、p−クロロベンジルオキシカルボニル、p−メトキシベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、2−ニトロベンジルオキシカルボニル、p−ブロモベンジルオキシカルボニル、3,4−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、3,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、2,4−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、2−ニトロ−4,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、3,4,5−トリメトキシベンジルオキシカルボニル、1−(p−ビフェニリル)−1−メチルエトキシカルボニル、α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル、ベンズヒドリルオキシカルボニル、t−ブチルオキシカルボニル、ジイソプロピルメトキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、エトキシカルボニル、メトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、2,2,2,−トリクロロエトキシカルボニル、フェノキシカルボニル、4−ニトロフェノキシカルボニル、フルオレニル−9−メトキシカルボニル、シクロペンチルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、フェニルチオカルボニル等のカルバメート形成基、ベンジル、トリフェニルメチル、ベンジルオキシメチル等のアリールアルキル基、ならびにトリメチルシリル等のシリル基を含む。好ましいN−保護基は、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、ピバロイル、t−ブチルアセチル、アラニル、フェニルスルホニル、ベンジル、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)およびベンジルオキシカルボニル(Cbz)である。
【0034】
「プロドラッグ」という用語は、本明細書において使用する場合、インビボで本発明の化合物に変換される化合物を表す。そのような変換は、例えば、血液中における加水分解または血液もしくは組織中におけるプロドラッグ形態から親形態への酵素変換の影響を受ける場合がある。本発明の化合物のプロドラッグは、例えば、エステルであってよい。本発明においてプロドラッグとして利用できるエステルは、フェニルエステル、脂肪族(C1〜24)エステル、アシルオキシメチルエステル、カーボネート、カルバメートおよびアミノ酸エステルである。例えば、OH基を含有する本発明の化合物は、そのプロドラッグ形態におけるこの位置でアシル化することができる。その他のプロドラッグ形態は、例えば、親化合物上のOH基のホスホン酸化(phosphonation)によって生じるリン酸塩等のリン酸塩を含む。プロドラッグについての徹底的な議論は、T. HiguchiおよびV. Stella、Pro−drugs as Novel Delivery Systems、A.C.S. Symposium Seriesの第14巻、Edward B. Roche(編)、Bioreversible Carriers in Drug Design、American Pharmaceutical Association and Pergamon Press、1987年、ならびにJudkinsら、Synthetic Communications、26巻、23号、4351〜4367頁、1996年において提供されており、これらのそれぞれは参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
別段の記述がない限り、本発明の化合物の互変異性型はすべて、本発明の範囲内である。また、別段の記述がない限り、本明細書で描写されている構造は、1個または複数の同位体濃縮された原子の存在のみが異なる化合物を含むことも意図される。例えば、重水素もしくは三重水素による水素の置き換え、または13C−もしくは14C−濃縮炭素による炭素の置き換えを除いて本構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。そのような化合物は、例えば、生物学的アッセイにおける分析ツールまたはプローブとして有用である。
【0036】
本発明の化合物の説明
一態様において、本発明は、式
【0037】
【化7】

を有する化合物を特色とし、
式中、
Wは、−N(R)−、−C(X)N(R)−または−N(R)C(X)−であり、
Xは、O、S、[水素、水素]または[水素、R]であり、
はNまたはC−RX2であり、ここで、RX2は、水素、ハロゲン、−CN、−NO、−ORX2B、−OC(O)RX2B、−OC(O)ORX2B、−OC(O)NRX2AX2B、−OC(S)RX2B、−SRX2B、−SC(O)RX2B、−SC(S)RX2B、−C(O)ORX2B、−C(O)NRX2AX2B、−C(S)NRX2AX2B、−NRX2AX2B、−S(O)RX2B、−S(O)X2B、−S(O)NRX2AX2B、C1〜4ハロ脂肪族、場合によって置換されているC3〜8脂環族、C1〜6脂肪族であり、
はNまたはC−RB4であり、XはNまたはC−RB5であり、XはNまたはC−RB6であり、XはNまたはC−RB7であり、ここで、X、X、XおよびXのうちの場合によって最大2個はNであり、RB4、RB5、RB6およびRB7のそれぞれは、独立に、水素、ハロゲン、−CN、−NO、−OR、−OC(O)R、−OC(O)OR、−OC(O)NRR’、−OC(S)R、−SR、−SC(O)R、−SC(S)R、−C(O)OR、−C(O)NRR’、−C(S)NRR’、−NRR’、−S(O)R、−S(O)R、−S(O)NRR’、場合によって置換されているC1〜4ハロ脂肪族、C1〜6脂肪族、C3〜8脂環族、C6〜10アリール、3〜8員の単環式ヘテロシクリル、8〜12員の二環式ヘテロシクリルまたは5〜8員の単環式ヘテロアリール、8〜12員の二環式ヘテロアリールであり、
およびRのそれぞれは、独立に、水素、場合によって置換されているC1〜6脂肪族、C1〜4ハロ脂肪族、C3〜8脂環族、C6〜10アリール、3〜8員の単環式ヘテロシクリル、8〜12員の二環式ヘテロシクリル、5〜8員の単環式ヘテロアリール、8〜12員の二環式ヘテロアリールであるか、またはWがN(R)である場合、RおよびRならびに介在原子が一緒になってN=C結合を場合によって形成し、
は、水素、場合によって置換されているC1〜6脂肪族、C1〜4ハロ脂肪族、C3〜8脂環族、C6〜10アリール、3〜8員の単環式ヘテロシクリル、8〜12員の二環式ヘテロシクリル、5〜8員の単環式ヘテロアリールまたは8〜12員の二環式ヘテロアリールであり、
X2Aは、水素、場合によって置換されているC1〜6脂肪族、C3〜8脂環族、C6〜10アリール、3〜8員の単環式ヘテロシクリル、8〜12員の二環式ヘテロシクリル、5〜8員の単環式ヘテロアリール、8〜12員の二環式ヘテロアリール、−C(O)R、−C(O)NRR’、−C(O)OR、−S(O)R、−S(O)Rまたは−S(O)NRR’であり、
R、R’およびRX2Bのそれぞれは、独立に、水素、場合によって置換されているC1〜6脂肪族、C3〜8脂環族、C6〜10アリール、3〜8員の単環式ヘテロシクリル、8〜12員の二環式ヘテロシクリル、5〜8員の単環式ヘテロアリールまたは8〜12員の二環式ヘテロアリールであり、
前記ヘテロシクリルおよびヘテロアリール環のそれぞれは、酸素、硫黄または窒素から独立に選択される1〜4個のヘテロ原子を含有し、
前記アリールおよびヘテロアリール基のそれぞれの1個または複数の炭素原子上にある任意選択の置換基は、ハロゲン;−R;−OR;−SR;1,2−メチレンジオキシ;1,2−エチレンジオキシ;Rで場合によって置換されているフェニル;Rで場合によって置換されている−O(Ph);Rで場合によって置換されている−(CH1〜2(Ph);Rで場合によって置換されている−CH=CH(Ph);−NO;−CN;−N(R;−NRC(O)R;−NRC(S)R;−NRC(O)N(R;−NRC(S)N(R;−NRC(O)OR;−NRNRC(O)R;−NRNRC(O)N(R;−NRNRC(O)OR;−C(O)C(O)R;−C(O)CHC(O)R;−C(O)OR;−C(O)R;−C(S)R;−C(O)N(R;−C(S)N(R;−B(OR、−OC(O)N(R;−OC(O)R;−C(O)N(OR)R;−C(=NOR)R;−S(O);−S(O)OR;−S(O)N(R;−S(O)R;−NRS(O)N(R;−NRS(O);−N(OR)R;−C(=NH)−N(R;または−(CH0〜2NHC(O)R;−L−R;−L−N(R;−L−SR;−L−OR;−L−(C3〜10脂環族)、−L−(C6〜10アリール)、−L−(5〜10員のヘテロアリール)、−L−(5〜10員のヘテロシクリル)、オキソ、C1〜4ハロアルコキシ、C1〜4ハロアルキル、−L−NO、−L−CN、−L−OH、−L−CFであるか、あるいは、同じ炭素または異なる炭素上の2個の置換基が、それらが結合した炭素または介在炭素と一緒になって、5〜7員の飽和、不飽和または部分飽和環を形成し、ここで、Lは、最大3個のメチレン単位が、−NH−、−NR−、−O−、−S−、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)C(O)−、−C(O)−、−C(O)NH−、−C(O)NR−、−C(=N−CN)−、−NHC(O)−、−NRC(O)−、−NHC(O)O−、−NRC(O)O−、−S(O)NH−、−S(O)NR−、−NHS(O)−、−NRS(O)−、−NHC(O)NH−、−NRC(O)NH−、−NHC(O)NR−、−NRC(O)NR、−OC(O)NH−、−OC(O)NR−、−NHS(O)NH−、−NRS(O)NH−、−NHS(O)NR−、−NRS(O)NR−、−S(O)−または−S(O)−によって置き換えられているC1〜6アルキレン基であり、Rの各出現は、水素、場合によって置換されているC1〜6脂肪族、非置換5〜6員のヘテロアリールもしくは複素環、フェニルまたは−CH(Ph)から独立に選択されるか、あるいは、同じ置換基または異なる置換基上の2個の独立したRの出現が、各R基が結合した原子と一緒になって、5〜8員のヘテロシクリル、アリールもしくはヘテロアリール環または3〜8員のシクロアルキル環を形成し、ここで、前記ヘテロアリールまたはヘテロシクリル環は、窒素、酸素または硫黄から独立に選択される1〜3個のヘテロ原子を有し、Rの脂肪族基上の任意選択の置換基は、−NH、−NH(C1〜4脂肪族)、−N(C1〜4脂肪族)、ハロゲン、C1〜4脂肪族、−OH、−O(C1〜4脂肪族)、−NO、−CN、−C(O)OH、C(O)O(C1〜4脂肪族)、O(ハロC1〜4脂肪族)またはハロC1〜4脂肪族から選択され、RのC1〜4脂肪族基のそれぞれは置換されておらず、
前記脂肪族、ハロ脂肪族、脂環族およびヘテロシクリル基のそれぞれの1個または複数の炭素原子上にある任意選択の置換基は、前記アリールおよびヘテロアリール基について定義された通りであり、=O、=S、=NNHR、=NN(R、=NNHC(O)R、=NNHC(O)O(アルキル)、=NNHS(O)(アルキル)または=NRを追加で含み、ここで、各Rは、水素または場合によって置換されているC1〜6脂肪族から独立に選択され、Rの前記脂肪族基上の任意選択の置換基は、−NH、−NH(C1〜4脂肪族)、−N(C1〜4脂肪族)、ハロゲン、C1〜4脂肪族、−OH、−O(C1〜4脂肪族)、−NO、−CN、−C(O)OH、−C(O)O(C1〜4脂肪族)、−O(ハロ−C1〜4脂肪族)およびハロ(C1〜4脂肪族)から選択され、Rの前述のC1〜4脂肪族基のそれぞれは置換されていない。
【0038】
一実施形態において、式I−aの化合物は、式
【0039】
【化8】

を有し、
式中、
H2、RH3、RH4、RH5およびRH6のそれぞれは、独立に、水素、ハロゲン、−CN、−NO、−OR、−B(OR)、−OC(O)R、−OC(O)OR、−OC(S)R、−SR、−SC(O)R、−SC(S)R、−C(O)OR、−C(O)NRR’、−C(S)NRR’、−NRR’、−S(O)R、−S(O)R、−S(O)NRR’、場合によって置換されているC1〜4ハロ脂肪族、C1〜6脂肪族、C3〜8脂環族、C6〜10アリール、3〜8員の単環式ヘテロシクリル、8〜12員の二環式ヘテロシクリルまたは5〜8員の単環式ヘテロアリール、8〜12員の二環式ヘテロアリールである。さらなる実施形態において、RH4は、−OR、−B(OR)、−OC(O)R、−OC(O)ORまたは−OC(S)Rであり、RB4、RB5およびRB6のそれぞれは水素であり、XはNまたはC−Hである。望ましくは、RH4は−OHである。別のさらなる実施形態において、RH3およびRH5の一方または両方はハロゲンである。さらに別の例において、RH3およびRH5の両方は、例えばフッ素等のハロゲンである。
【0040】
式I−aの化合物の別の実施形態において、Wは−N(R)−である。別の実施形態において、RまたはRのうちの少なくとも一方は水素ではない。さらなる実施形態において、Rは、場合によって置換されているC1〜6脂肪族、C3〜8脂環族、C6〜10アリール、3〜8員の単環式ヘテロシクリルまたは5〜8員の単環式ヘテロアリールである。さらにまた、Rは、場合によって置換されているC6〜10アリールまたは5〜8員の単環式ヘテロアリールである。
【0041】
式I−aの化合物または薬学的に許容されるその塩のさらに別の実施形態において、化合物は、式
【0042】
【化9】

を有し、
式中、
H2、RH3、RH4、RH5およびRH6のそれぞれは、独立に、水素、ハロゲン、−CN、−NO、−OR、−B(OR)、−OC(O)R、−OC(O)OR、−OC(S)R、−SR、−SC(O)R、−SC(S)R、−C(O)OR、−C(O)NRR’、−C(S)NRR’、−NRR’、−S(O)R、−S(O)R、−S(O)NRR’、場合によって置換されているC1〜4ハロ脂肪族、C1〜6脂肪族、C3〜8脂環族、C6〜10アリール、3〜8員の単環式ヘテロシクリル、8〜12員の二環式ヘテロシクリルまたは5〜8員の単環式ヘテロアリール、8〜12員の二環式ヘテロアリールである。
【0043】
式II−aの化合物のさらなる実施形態において、RH4は、−OR、−B(OR)、−OC(O)R、−OC(O)ORまたは−OC(S)Rであり、RB4、RB5およびRB6のそれぞれは水素であり、XはNまたはC−Hである。さらにまた、別の実施形態において、RH4は−OHである。
【0044】
別の実施形態において、式I−aの化合物は、式
【0045】
【化10】

を有する。式II−fまたはII−gの化合物のさらなる実施形態において、RB4、RB5、RB6およびRB7のそれぞれは水素である。
【0046】
本発明の化合物のいずれかの別の実施形態において、RB4、RB5およびRB6のそれぞれは水素であり、XはNまたはC−Hであり、XはNまたはC−Hであり、RH2、RH3、RH5およびRH6のそれぞれは、独立に、水素、ハロゲン、−CN、−NO、−OR、−B(OR)、−OC(O)R、−OC(O)OR、−C(O)OR、−C(O)NRR’、−C(S)NRR’、−NRR’、−S(O)R、−S(O)NRR’、場合によって置換されているC1〜4ハロ脂肪族、C1〜6脂肪族、C3〜8脂環族であり、ここで、RおよびR’のそれぞれは、独立に、水素または場合によって置換されているC1〜6脂肪族である。
【0047】
別の態様において、本発明は、表1に列挙されている化合物の群から選択される化合物を特色とする。
【0048】
JAK−2およびJAK−3阻害アッセイは、本明細書の別の箇所で記述されている通りに実施した。表1は、いくつかの例示的な化合物について酵素阻害データを提示し、ここで、「A」は0.25μM以下のKを表し、「B」は0.25μM超および2.5μM以下のKを表し、「C」は2.5μM超のK値を表す。
【0049】
【表1−1】

【0050】
【表1−2】

【0051】
【表1−3】

【0052】
【表1−4】

【0053】
【表1−5】

【0054】
【表1−6】

【0055】
【表1−7】

【0056】
【表1−8】

【0057】
【表1−9】

【0058】
【表1−10】

【0059】
【表1−11】

【0060】
【表1−12】

【0061】
【表1−13】

【0062】
【表1−14】

【0063】
【表1−15】

【0064】
【表1−16】

別の態様において、本発明は、式
【0065】
【化11】

を有する化合物の調製のための方法を特色とし、
式中、X、X、X、X、X、R、RおよびRは、式I−aの化合物について上記で定義された通りである。該方法は、下記ステップ:
(a)式
【0066】
【化12】

を有する化合物を、式
【0067】
【化13】

を有する化合物と反応させ、
[式中、Zは、Cl、Br、I、−OP(O)(OR’)、−OTsまたは−OTfであり、Mは、−B(OR’)、−SnR’、−SiR’、−ZnR’、−Mg−Hal、−Zn−Hal、−Cu−Hal、−ZrCpHalまたは−AlR’であり、ここで、各R’は、独立に、C1〜6脂肪族、C3〜8脂環族またはC6〜10アリールであり、Pは保護基である]式
【0068】
【化14】

を有する化合物を生じさせるステップと、
(b)保護基Pを除去し、式
【0069】
【化15】

を有する化合物を生じさせるステップと、
(c)酸性条件下、式V−aの化合物を、式
【0070】
【化16】

を有する化合物と反応させ、
式II−bの化合物を生じさせるステップと
を含む。
【0071】
一実施形態において、式II−bの化合物は、式
【0072】
【化17】

を有する。
【0073】
別の態様において、本発明は、式
【0074】
【化18】

を有する化合物の調製のための方法を特色とし、
式中、X、X、X、X、X、RおよびRは、式I−aの化合物について上記で定義された通りである。該方法は、下記ステップ:
(a)式
【0075】
【化19】

を有する化合物を、式
【0076】
【化20】

を有する化合物と反応させ、
[式中、Zは、Cl、Br、I、−OP(O)(OR’’)、−OTsまたは−OTfであり、Mは、−B(OR’’)、−SnR’’、−SiR’’、−ZnR’’、−Mg−Hal、−Zn−Hal、−CuHal、−ZrCpHalまたは−AlR’’であり、ここで、各R’’は、独立に、C1〜6脂肪族、C3〜8脂環族またはC6〜10アリールである]

【0077】
【化21】

を有する化合物を生じさせるステップと、
(b)前記式V−bの化合物を脱水条件にさらし、式
【0078】
【化22】

を有する中間体を生じさせるステップと、
(c)前記式II−cの中間体を還元剤と反応させ、前記式II−dを有する化合物を生じさせるステップと
を含む。
【0079】
一実施形態において、X、X、X、X、XのそれぞれはC−Hである。
【0080】
一例において、該方法は、式
【0081】
【化23】

を有する式II−dの化合物を提供する。
【0082】
別の例において、Rは水素であり、ステップ(c)は実施されないため、該方法は、式
【0083】
【化24】

を有する化合物を生じさせる。
【0084】
式II−fおよびII−gの化合物に関して、RB4、RB5、RB6およびRB7は、式I−aの化合物について定義された通りである。一実施形態において、XはC−Hであり、RB4、RB5、RB6およびRB7のそれぞれは水素である。
【0085】
本発明の化合物の組成物、配合および投与
本発明は、本発明の化合物と薬学的に許容される担体、アジュバントまたはビヒクルとを含む医薬組成物も提供する。一実施形態において、組成物は、化学療法剤もしくは抗増殖剤、抗炎症剤、免疫調節剤もしくは免疫抑制剤、神経栄養因子、循環器疾患を治療するための薬剤、破壊性骨障害を治療するための薬剤、肝疾患を治療するための薬剤、抗ウイルス剤、血液障害を治療するための薬剤、糖尿病を治療するための薬剤、または免疫不全障害を治療するための薬剤から選択される治療薬をさらに含む。望ましくは、治療薬は、免疫調節剤または免疫抑制剤である。
【0086】
本発明は、増殖性障害、心障害、神経変性障害、自己免疫障害、臓器移植に関連する状態、炎症性障害、免疫媒介性障害または骨障害から選択される、患者における疾患、状態または障害を治療する、またはその重症度を軽減するための、本発明の化合物またはその医薬組成物の使用も特色とする。該使用は、治療有効用量の本発明の化合物またはその医薬組成物を患者に投与するステップを含む。一実施形態において、該使用は、化学療法剤もしくは抗増殖剤、抗炎症剤、免疫調節剤もしくは免疫抑制剤、循環器疾患を治療するための薬剤、破壊性骨障害を治療するための薬剤、血液障害を治療するための薬剤、糖尿病を治療するための薬剤、または免疫不全障害を治療するための薬剤から選択される追加の治療薬であって、治療されている疾患に適している追加の治療薬を患者に投与するステップをさらに含み、追加の治療薬は、単一剤形配合物として本発明の化合物もしくは組成物と一緒に、または複合剤形配合物の一部として本発明の化合物もしくは組成物とは別個に、投与される。
【0087】
本発明の任意の治療方法の実施形態において、疾患、状態または障害は、アレルギー、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、糖尿病、変形性関節炎、関節リウマチ、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、AIDS関連認知症、筋萎縮性側索硬化症(AML)、多発性硬化症(MS)、統合失調症、心筋細胞肥大、血管周囲線維症、良性前立腺過形成、血管平滑筋細胞増殖、内皮機能不全、虚血/再かん流誘発損傷、卒中、脱毛症、癌、マリグノーマ(malignoma)、肝腫大、高血圧、循環器疾患、心肥大、嚢胞性線維症、再狭窄、乾癬、炎症、高血圧、狭心症、脳血管収縮、末梢循環障害、早産、早期陣痛、アテローム性動脈硬化症、血管痙攣、脳血管痙攣、冠攣縮、網膜症、神経突起伸長、緑内障、勃起機能不全(ED)、AIDS、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染、骨粗しょう症、クローン病、結腸炎またはレイノー病である。望ましくは、疾患、状態または障害は、アテローム性動脈硬化症、高血圧、多発性硬化症、勃起機能不全、虚血/再かん流誘発損傷、卒中、脳血管痙攣、冠攣縮、心臓肥大または緑内障である。最も望ましくは、疾患、障害または状態は、喘息または移植拒絶反応である。
【0088】
本発明は、生体試料におけるJAKキナーゼ活性を測定可能な程度に阻害する方法であって、生体試料を本発明の化合物またはその医薬組成物と接触させるステップを含む方法も特色とする。
【0089】
本発明の組成物中における化合物の量は、生体試料または患者における、例えばJAKファミリーキナーゼ等のタンパク質キナーゼを、測定可能な程度に阻害するような量である。「測定可能な程度に阻害する」という用語は、本明細書において使用する場合、本発明の化合物およびJAKキナーゼを含む試料と、前記化合物の不在下でそれぞれJAKキナーゼを含む同等の試料との間の、キナーゼ活性、特にJAKファミリー活性における測定可能な変化を意味する。
【0090】
「患者」という用語は、本明細書において使用する場合、動物、好ましくは哺乳類、最も好ましくはヒトを意味する。
【0091】
本発明の化合物のいくつかは、治療のための遊離形態で、または適切な場合、薬学的に許容されるその誘導体として存在し得ることも理解されるであろう。本発明によれば、薬学的に許容される誘導体は、薬学的に許容されるプロドラッグ、塩、エステル、そのようなエステルの塩、あるいは、必要とする患者への投与時に、本明細書において別途記述したような化合物、または代謝物もしくはその残留物を直接的または間接的に提供することができるその他任意の付加物または誘導体を含むがこれらに限定されない。
【0092】
本明細書において使用する場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、妥当な医学的判断の範囲内であって、過度の毒性、刺激、アレルギー反応等なく、ヒトおよび下等動物の組織と接触させて使用するのに適し、適度な利益対リスク比に相応する塩を指す。「薬学的に許容される塩」は、レシピエントへの投与時に、本発明の化合物または阻害活性代謝物もしくはその残留物を直接的または間接的に提供することができる任意の非毒性塩または本発明の化合物のエステルの塩を意味する。本明細書において使用する場合、「阻害活性代謝物またはその残留物」という用語は、代謝物またはその残留物もJAKファミリーキナーゼの阻害剤であることを意味する。
【0093】
薬学的に許容される塩は、当該技術分野において既知である。例えば、S. M. Bergeらは、参照することにより本明細書に組み込まれるJ. Pharmaceutical Sciences、1977年、66巻、1〜19頁において、薬学的に許容される塩について詳細に記述している。本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、適切な無機および有機の酸および塩基から誘導されるものを含む。薬学的に許容される非毒性酸付加塩の例として、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、および過塩素酸等の無機酸で、または、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、もしくはマロン酸等の有機酸で、または、イオン交換等、当該技術分野において使用されるその他の方法を使用して形成される、アミノ基の塩が挙げられる。その他の薬学的に許容される塩は、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩等を含む。適切な塩基から誘導される塩は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、およびN(C1〜4アルキル)塩を含む。本発明は、本明細書で開示されている化合物の、あらゆる塩基性窒素含有基の四級化も想定している。そのような四級化によって、水溶性もしくは油溶性、または分散性の生成物を得ることができる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等を含む。さらなる薬学的に許容される塩は、適切な場合、非毒性アンモニウム、四級アンモニウム、ならびに、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、下級アルキルスルホン酸塩、およびアリールスルホン酸塩等の対イオンを使用して形成されたアミンカチオンを含む。
【0094】
上述したように、本発明の薬学的に許容される組成物は、薬学的に許容される担体、アジュバント、または賦形剤をさらに含み、これらは、本明細書において使用する場合、望ましい特定の剤形に適するような、ありとあらゆる溶媒、希釈剤、またはその他の液体賦形剤、分散または懸濁補助剤、表面活性剤、等張剤、増粘または乳化剤、保存料、固体結合剤、潤滑剤等を含む。Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、E. W. Martin (Mack Publishing Co.、ペンシルバニア州イーストン、1980年)では、薬学的に許容される組成物を配合するときに使用される種々の担体およびその調製のための既知の技術を開示している。何らかの望ましくない生物学的効果を生じさせる、または、薬学的に許容される組成物のその他任意の成分と有害性の様式で相互作用する等によって、任意の従来の担体媒体が本発明の化合物と不適合でない限り、その使用は本発明の範囲内であると考えられる。
【0095】
薬学的に許容される担体としての役割を果たすことができる材料のいくつかの例は、イオン交換体;アルミナ;ステアリン酸アルミニウム;レシチン;ヒト血清アルブミン等の血清タンパク質;リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、またはソルビン酸カリウム等の緩衝物質;植物性飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物;水、塩、または、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩等の電解質;コロイド状シリカ;三ケイ酸マグネシウム;ポリビニルピロリドン;ポリアクリル酸塩;ロウ;ポリエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー;羊毛脂;ラクトース、グルコース、およびスクロース等の糖類;コーンスターチおよびバレイショデンプン等のデンプン類;セルロース、ならびにカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロース等のその誘導体;トラガカント末;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバターおよび坐剤ロウ等の補形剤;ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、および大豆油等の油類;プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール等のグリコール類;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル等のエステル類;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム等の緩衝剤;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張食塩水;リンガー溶液;エチルアルコール;およびリン酸緩衝液;ならびに、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム等のその他の非毒性の適合する潤滑剤を含むがこれらに限定されず、さらに、配合者の判断により、着色剤、解除剤、コーティング剤、甘味料、香味料、および着香剤、保存料、ならびに酸化防止剤が組成物中に存在してもよい。
【0096】
本発明の組成物は、経口で、非経口で、吸入噴霧によって、局所的に、直腸内に、経鼻で、口腔内に、経膣で、または埋め込まれたリザーバを介して、投与することができる。「非経口」という用語は、本明細書において使用する場合、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、眼内、肝内、病巣内、および頭蓋内の注射または注入技術を含む。好ましくは、組成物は、経口で、腹腔内に、または静脈内に投与される。本発明の組成物の無菌注射剤形態は、水性または油性懸濁液であってよい。これらの懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用する、当該技術分野において既知の技術によって配合され得る。無菌注射用製剤は、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液等、非毒性で非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の無菌注射用溶液または懸濁液であってもよい。用いられ得る許容される賦形剤および溶媒には、水、リンガー溶液、および生理食塩液がある。また、無菌固定油は、溶媒または懸濁媒体として従来から用いられている。
【0097】
この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含むあらゆる無刺激性固定油を用いることができる。オレイン酸等の脂肪酸およびそのグリセリド誘導体は、特にポリオキシエチル化された形の、オリーブ油またはヒマシ油等、天然の薬学的に許容される油と同様に、注射剤の調製において有用である。これらの油溶液または懸濁液は、カルボキシメチルセルロース、または、乳液および懸濁液を含む薬学的に許容される剤形の配合において一般に使用される同様の分散剤等、長鎖アルコール希釈剤または分散剤を含有する場合がある。ツイン(Tween)、スパン(Span)、および、薬学的に許容される固体、液体、もしくはその他の剤形の製造において一般に使用されるその他の乳化剤またはバイオアベイラビリティエンハンサー等、一般に使用されるその他の界面活性剤を、配合目的で使用してもよい。
【0098】
本発明の薬学的に許容される組成物は、カプセル剤、錠剤、水性懸濁液、または溶液を含むがこれらに限定されない任意の経口的に許容される剤形で経口投与され得る。経口使用するための錠剤の場合、一般に使用される担体は、ラクトースおよびコーンスターチを含む。一般に、ステアリン酸マグネシウム等の平滑剤も添加される。カプセル形態での経口投与に有用な希釈剤は、ラクトースおよび乾燥コーンスターチを含む。経口使用するために水性懸濁液が必要な場合、有効成分は乳化剤および懸濁化剤と組み合わせられる。必要に応じて、いくつかの甘味料、香味料、または着色剤が添加される場合もある。
【0099】
また、本発明の薬学的に許容される組成物は、直腸投与用の坐剤の形態で投与できる。これらは、室温では固体だが直腸温では液体となり、したがって直腸内で融解して薬物を放出する適切な非刺激性の補形剤と薬剤を混合することによって調製され得る。そのような材料としては、ココアバター、蜜ロウ、およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0100】
本発明の薬学的に許容される組成物は、特に、目、皮膚、または下部消化管の疾患を含む、治療標的が局所塗布によって容易に到達可能な領域または臓器を含む場合、局所的に投与することもできる。適切な局所製剤は、これらの領域または臓器のそれぞれについて容易に調製され得る。
【0101】
下部消化管への局所塗布は、直腸坐剤配合物(上記参照)または適切な浣腸配合物によって成立する。局所経皮パッチを使用してもよい。
【0102】
局所塗布のために、薬学的に許容される組成物は、1つまたは複数の担体中に懸濁または溶解された活性成分を含有する適切な軟膏中に配合される場合がある。本発明の化合物の局所投与のための担体は、鉱油、液体ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ロウ、および水を含むがこれらに限定されない。また、薬学的に許容される組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容される担体中に懸濁または溶解された活性成分を含有する適切なローションまたはクリーム中に配合される場合もある。適切な担体としては、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルロウ、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水を含むがこれらに限定されない。
【0103】
眼科使用のために、薬学的に許容される組成物は、例えば、等張性のpH調整した無菌食塩水もしくはその他の水溶液中の微粉懸濁液として、または、好ましくは、等張性のpH調整した無菌食塩水もしくはその他の水溶液中の溶液として、塩化ベンジルアルコニウム等の保存料とともに、またはそれなしで配合される場合がある。また、眼科使用のために、薬学的に許容される組成物は、ワセリン等の軟膏中に配合される場合もある。本発明の薬学的に許容される組成物は、鼻エアロゾルまたは吸入によって投与することもできる。そのような組成物は、医薬製剤の分野において既知の技術によって調製され、ベンジルアルコール、またはその他適切な保存料、バイオアベイラビリティを向上させるための吸収促進剤、フッ化炭素、および/またはその他従来の可溶化剤もしくは分散剤を用いて、食塩水中の溶液として調製することができる。
【0104】
最も好ましくは、本発明の薬学的に許容される組成物は、経口投与用に配合される。
【0105】
経口投与用の液体剤形は、薬学的に許容される乳液、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ剤、およびエリキシル剤を含むがこれらに限定されない。液体剤形は、活性化合物に加えて、例えば、水またはその他の溶媒、可溶化剤、ならびにエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル等の乳化剤、ならびにそれらの混合物等、当該技術分野において一般に使用される不活性希釈剤を含有し得る。経口組成物は、不活性希釈剤のほかに、湿潤剤、乳化剤、および懸濁化剤等のアジュバント、甘味料、香味料、ならびに着香剤も含む場合がある。
【0106】
注射用製剤、例えば無菌注射用の水性または油性懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用する既知の技術によって配合できる。無菌注射用製剤は、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液等、非毒性で非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の無菌注射用溶液、懸濁液、または乳液であってもよい。用いられ得る許容される賦形剤および溶媒には、水、リンガー溶液、U.S.P.、および生理食塩液がある。また、無菌固定油は、溶媒または懸濁媒体として従来から用いられている。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含むあらゆる無刺激性固定油を用いることができる。また、オレイン酸等の脂肪酸は、注射剤の調製において使用される。
【0107】
注射用配合物は、例えば、細菌保持フィルタを通すろ過によって、または、使用前に、滅菌水もしくはその他の無菌注射用媒体中に溶解もしくは分散され得る無菌の固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって、滅菌できる。
【0108】
本発明の化合物の効果を長引かせるためには、多くの場合、皮下または筋肉内注射からの化合物の吸収を遅らせることが望ましい。これは、難水溶性を有する結晶または非結晶材料の液体懸濁液を使用することによって実現され得る。その結果、化合物の吸収の速度はその溶解の速度に依存し、この速度は同様に、結晶サイズおよび結晶形態に依存する場合がある。あるいは、非経口投与された化合物形態の遅延吸収は、化合物を油状賦形剤中に溶解または懸濁することによって実現される。注射用デポー形態は、ポリラクチド−ポリグリコリド等の生分解性ポリマー中に化合物のマイクロカプセル化マトリクスを形成することによって作製される。化合物とポリマーとの比率および用いられる特定のポリマーの性質に応じて、化合物放出の速度を制御することができる。その他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)を含む。デポー注射用配合物は、生体組織に適合するリポソームまたはマイクロエマルション中に化合物を封入することによっても調製される。
【0109】
直腸または膣内投与用の組成物は、好ましくは、本発明の化合物を、常温では固体だが体温では液体となり、したがって直腸または膣腔内で融解して活性化合物を放出する、ココアバター、ポリエチレングリコール、または坐剤ロウ等の適切な非刺激性の補形剤または担体と混合することによって調製できる、坐剤である。
【0110】
経口投与用の固形剤形は、カプセル剤、錠剤、丸薬、粉末、および顆粒を含む。そのような固形剤形において、活性化合物は、少なくとも1つの、不活性で薬学的に許容される、クエン酸ナトリウムまたは第二リン酸カルシウム等の補形剤または担体、ならびに/あるいは、a)デンプン類、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸等の充填剤または増量剤、b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、およびアカシア等の結合剤、c)グリセロール等の保湿剤、d)寒天、炭酸カルシウム、バレイショまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム等の崩壊剤、e)パラフィン等の溶液遅延剤(solution retarding agents)、f)第四級アンモニウム化合物等の吸収加速剤、g)例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート等の湿潤剤、h)カオリンおよびベントナイト粘土等の吸収剤、ならびに、i)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物等の潤滑剤と混合される。カプセル剤、錠剤、および丸薬の場合、剤形は、緩衝剤を含む場合もある。
【0111】
同様の種類の固体組成物は、ラクトースまたは乳糖等の補形剤、および高分子量ポリエチレングリコール等を使用して、軟質および硬質充填ゼラチンカプセル内の充填剤として用いることもできる。錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、丸薬、および顆粒の固形剤形は、腸溶性コーティングおよび医薬製剤分野において既知であるその他のコーティング等のコーティングおよび外殻を伴って調製され得る。それらは、場合によって乳白剤を含有してもよく、消化管のある部分において、場合によって遅延様式で、有効成分のみを、またはそれを優先的に放出する組成物のものであってもよい。使用され得る包埋組成物(embedding compositions)の例は、ポリマー物質およびロウを含む。同様の種類の固体組成物は、ラクトースまたは乳糖等の補形剤、および高分子量ポリエチレングリコール等を使用して、軟質および硬質充填ゼラチンカプセル内の充填剤として用いることもできる。
【0112】
活性化合物は、上述したような補形剤を1つまたは複数有するマイクロカプセル形態であってもよい。錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、丸薬、および顆粒の固形剤形は、腸溶性コーティング、放出制御コーティング、および医薬製剤分野において既知であるその他のコーディング等のコーティングおよび外殻を伴って調製され得る。そのような固形剤形において、活性化合物は、スクロース、ラクトース、またはデンプン等の、少なくとも1つの不活性希釈剤と混和される場合がある。そのような剤形は、通常の慣行通り、不活性希釈剤以外のさらなる物質、例えば、錠剤化潤滑剤、ならびにステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロース等のその他の錠剤化補助剤も含み得る。カプセル剤、錠剤、および丸薬の場合、剤形は、緩衝剤を含む場合もある。それらは、場合によって乳白剤を含有してもよく、消化管のある部分において、場合によって遅延様式で、有効成分のみを、またはそれを優先的に放出する組成物のものであってもよい。使用され得る包埋組成物の例は、ポリマー物質およびロウを含む。
【0113】
本発明の化合物の局所または経皮投与用の剤形は、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、噴霧剤、吸入剤、またはパッチを含む。活性成分は、無菌条件下で、薬学的に許容される担体および必要とされる任意の保存料または緩衝剤と、要求され得るように混和される。眼科用配合物、点耳薬、および点眼薬も本発明の範囲内であると考えられる。また、本発明では、経皮パッチを使用することが、生体内への化合物の制御送達を提供するという付加的な利点を有すると考えている。そのような剤形は、適した媒体中に化合物を溶解または分注することによって作製できる。皮膚全体にわたる化合物のフラックスを増大させるために、吸収エンハンサーを使用してもよい。速度は、速度制御膜を提供すること、またはポリマーマトリクスもしくはゲル中に化合物を分散させることによって制御できる。
【0114】
本発明の化合物は、好ましくは、投与を簡単に、かつ用量を均一にするために、用量単位形態で配合される。「用量単位形態」という表現は、本明細書において使用する場合、患者を治療するのに適切な薬剤の物理的に不連続な単位を指す。しかしながら、本発明の化合物および組成物の1日の総使用量は、妥当な医学的判断の範囲内で、担当医によって決定されることが理解される。ある特定の患者または有機体に対する特異的に有効な用量レベルは、治療されている障害およびその障害の重症度;用いられている特定化合物の活性;用いられている特定組成物;患者の年齢、体重、全身の健康状態、性別、および食生活;用いられている特定化合物の、投与時間、投与経路、および排泄速度;治療の持続時間;用いられている特定化合物と組み合わせて、または同時に使用される薬物;ならびに、医療分野において既知である類似の要因を含む、多種多様な要因に依存することになる。
【0115】
単一剤形の組成物を生じさせるために担体材料と組み合わせることができる本発明の化合物の量は、治療されている宿主、特定の投与法に応じて変動することになる。好ましくは、組成物は、これらの組成物を受けている患者に、体重1kgにつき1日0.01〜100mgの用量の阻害剤を投与できるように配合されるべきである。
【0116】
治療または予防すべき特定の状態または疾患に応じて、その状態を治療または予防するために通常投与されるさらなる治療薬が、本発明の組成物中に存在する場合もある。本明細書において使用する場合、特定の疾患または状態を治療または予防するために通常投与されるさらなる治療薬は、「治療されている疾患または状態に適切である」として知られている。
【0117】
例えば、増殖性疾患および癌を治療するために、化学療法剤またはその他の抗増殖剤を本発明の化合物と組み合わせてもよい。既知の化学療法剤の例は、グリーベック(商標)、アドリアマイシン、デキサメタゾン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、フルオロウラシル、トポテカン、タキソール、インターフェロン、および白金誘導体を含むがこれらに限定されない。
【0118】
本発明の阻害剤と組み合わせられる場合もある薬剤のその他の例は、アリセプト(登録商標)およびエクセロン(登録商標)等、アルツハイマー病の治療剤;L−ドパ/カルビドパ、エンタカポン、ロピニロール(ropinrole)、プラミペキソール、ブロモクリプチン、ペルゴリド、トリヘキセフェンジル(trihexephendyl)、およびアマンタジン等、パーキンソン病の治療剤;βインターフェロン(例えば、アボネックス(登録商標)およびレビフ(登録商標))、コパクソン(登録商標)、およびミトキサントロン等、多発性硬化症(MS)を治療するための薬剤;アルブテロールおよびシングレア(登録商標)等、喘息の治療剤;ジプレキサ、リスパダール、セロクエル、およびハロペリドール等、統合失調症を治療するための薬剤;コルチコステロイド、TNF遮断薬、IL−1 RA、アザチオプリン、シクロホスファミド、およびスルファサラジン等の抗炎症剤;シクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル、インターフェロン、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、およびスルファサラジン等の免疫調節剤および免疫抑制剤;アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、MAO阻害剤、インターフェロン、抗痙攣剤、イオンチャネル遮断薬、リルゾール、および抗パーキンソン剤等の神経栄養因子;β遮断薬、ACE阻害剤、利尿薬、硝酸塩、カルシウムチャネル遮断薬、およびスタチン等、心血管疾患を治療するための薬剤;コルチコステロイド、コレスチラミン、インターフェロン、および抗ウイルス剤等、肝疾患を治療するための薬剤;コルチコステロイド、抗白血病剤、および成長因子等、血液疾患を治療するための薬剤;ならびに、γグロブリン等、免疫不全疾患を治療するための薬剤を含むがこれらに限定されない。
【0119】
本発明の組成物中に存在するさらなる治療薬の量は、唯一の活性薬剤としてその治療薬を含む組成物中に通常投与される量を超えることがない。好ましくは、本開示の組成物中のさらなる治療薬の量は、治療効果のある唯一の薬剤としてその薬剤を含む組成物中に通常存在する量の約50%〜100%の範囲となる。
【0120】
本発明の化合物および組成物の使用
本発明の化合物または組成物は、本発明の化合物または組成物を有効量で患者に投与することにより、増殖性障害、心障害、神経変性障害、精神病性障害、自己免疫障害、臓器移植に関連する状態、炎症性障害、免疫媒介性障害、ウイルス性疾患または骨障害から選択される、患者における疾患、状態または障害を治療する、またはその重症度を軽減するための単独療法として使用することができる。
【0121】
該治療法は、化学療法剤もしくは抗増殖剤、抗炎症剤、免疫調節剤もしくは免疫抑制剤、神経栄養因子、抗精神病剤、循環器疾患を治療するための薬剤、破壊性骨障害を治療するための薬剤、肝疾患を治療するための薬剤、抗ウイルス剤、血液障害を治療するための薬剤、糖尿病を治療するための薬剤、または免疫不全障害を治療するための薬剤から選択される追加の治療薬を患者に投与する追加のステップ(併用療法)をさらに含んでよく、ここで、追加の治療薬は、治療されている疾患に適しており、追加の治療薬は、単一剤形として本発明の化合物もしくは組成物と一緒に、または複合剤形の一部として該化合物もしくは組成物とは別個に、投与される。
【0122】
単独療法または併用療法によってそのように治療することができる疾患、状態または障害は、アレルギー、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、糖尿病、変形性関節炎、関節リウマチ、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、AIDS関連認知症、筋萎縮性側索硬化症(AML)、多発性硬化症(MS)、統合失調症、心筋細胞肥大、血管周囲線維症、良性前立腺過形成、血管平滑筋細胞増殖、内皮機能不全、虚血/再かん流誘発損傷、卒中、脱毛症、癌、マリグノーマ、肝腫大、高血圧、循環器疾患、心肥大、嚢胞性線維症、再狭窄、乾癬、炎症、高血圧、狭心症、脳血管収縮、末梢循環障害、早産、早期陣痛、アテローム性動脈硬化症、血管痙攣、脳血管痙攣、冠攣縮、網膜症、神経突起伸長、緑内障、勃起機能不全(ED)、AIDS、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染、骨粗しょう症、クローン病、結腸炎またはレイノー病を含む。
【0123】
いくつかの実施形態において、本発明は、癌を治療する、またはその重症度を軽減するための方法に関する。さらなる実施形態において、本発明は、脳(グリオーマ)、乳房、結腸、頭頸部、腎臓、肺、肝臓、黒色腫、卵巣、すい臓、前立腺、肉腫または甲状腺から選択される癌を治療する、またはその重症度を軽減するための方法に関する。またさらなる実施形態において、本発明は、すい臓、前立腺または卵巣癌を治療する、またはその重症度を軽減するための方法に関する。
【0124】
本発明は、生体試料におけるJAKキナーゼ活性を阻害する方法であって、生体試料を本発明の化合物または組成物と接触させるステップを含む方法を提供する。「生体試料」という用語は、本明細書において使用する場合、有機体の外部の試料を意味し、細胞培養またはその抽出物;哺乳類から得られた生検材料またはその抽出物;および、血液、唾液、尿、糞便、精液、涙液もしくはその他の体液またはその抽出物を含むがこれらに限定されない。生体試料におけるキナーゼ活性、特にJAKキナーゼ活性の阻害は、当業者に既知の多種多様な目的に有用である。そのような目的の例は、生物検体保管および生物学的アッセイを含むがこれらに限定されない。生体試料におけるJAKキナーゼ活性の阻害は、例えば輸血または臓器移植等の治療方法とは無関係である。
【0125】
本発明は、患者におけるJAKキナーゼ活性を阻害する方法であって、本発明の化合物または組成物を患者に投与するステップを含む方法も提供する。一実施形態において、本発明は、患者におけるJAK媒介性状態または疾患を治療する、またはその重症度を軽減する方法を含む。「JAK媒介性疾患」という用語は、本明細書において使用する場合、JAKファミリーキナーゼ、特にJAK−2またはJAK−3が役割を果たすことが知られている、あらゆる疾患またはその他の有害状態を意味する。そのような状態は、アレルギー性またはI型過敏反応等の免疫反応、喘息、移植拒絶反応、移植片対宿主疾患、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症および多発性硬化症等の自己免疫疾患、家族性筋萎縮性側索硬化症(FALS)等の神経変性障害、ならびに、固形悪性腫瘍および白血病およびリンパ腫等の血液悪性腫瘍を含むがこれらに限定されない。
【0126】
本発明の化合物または組成物を使用して、骨髄増殖性障害を治療することもできる。一実施形態において、骨髄増殖性障害は、真性赤血球増加症、本態性血小板血症または慢性特発性骨髄線維症である。別の実施形態において、骨髄増殖性障害は、骨髄線維症を伴う骨髄様化生、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病、慢性好酸球性白血病、好酸球増多症候群、全身性肥満細胞症、非定型CMLまたは若年性骨髄単球性白血病である。
【0127】
本発明のいくつかの実施形態において、化合物または薬学的に許容される組成物の「有効量」または「有効用量」は、前述の障害のうちの1つまたは複数を治療する、またはその重症度を軽減するために有効な量である。本発明の方法によれば、化合物および組成物は、障害または疾患を治療する、またはその重症度を軽減するために有用な任意の量および任意の投与経路を使用して投与することができる。正確な所要量は、被検体の種、年齢および全身状態、感染の重症度、特定の薬剤、その投与法等に応じて、被検体ごとに異なる。化合物または組成物は、上記で論じた通り、1種または複数の他の治療薬とともに投与してもよい。
【0128】
本発明の化合物またはその医薬組成物は、プロテーゼ、人工弁、血管グラフト、ステントおよびカテーテル等の埋め込み型医療機器をコーティングするために使用することもできる。例えば血管ステントは、再狭窄(損傷後に血管壁が再度狭くなること)を克服するために使用されてきた。しかしながら、ステントまたはその他の埋め込み型機器を使用している患者は、血栓形成または血小板活性化のリスクがある。これらの望ましくない効果は、本発明の化合物を含む薬学的に許容される組成物で機器をあらかじめコーティングすることにより、予防または緩和することができる。
【0129】
適切なコーティング、およびコーティングされた埋め込み型機器の一般的な調製については、米国特許第6,099,562号、第5,886,026号および第5,304,121号において記述されており、そのそれぞれの内容は、参照により本明細書に組み込まれる。コーティングは、一般に、ヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレン酢酸ビニルおよびそれらの混合物等の生体適合性ポリマー材料である。組成物に制御放出特性を供与するために場合によって、コーティングを、フルオロシリコーン、多糖類、ポリエチレングリコール、リン脂質またはそれらの組合せの適切なトップコートでさらに覆ってもよい。本発明の化合物でコーティングした埋め込み型機器は、本発明のもう1つの実施形態である。化合物を、ビーズ等の埋め込み型医療機器にコーティングして、または、ポリマーもしくはその他の分子と共配合して「薬物デポー」を提供することにより、薬物の水溶液の投与よりも長時間にわたって薬物を放出させることができる。
【0130】
本発明の化合物の調製
下記の定義は、本明細書において使用される用語および略語を記述している。
ATP アデノシン三リン酸
Boc t−ブトキシカルボニル
dba ジベンジリデンアセトン
DCM ジクロロメタン
DME 1,2−ジメトキシエタン
DMF ジメチルホルムアミド
dppf 1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン
DTT ジチオスレイトール
ESMS エレクトロスプレー質量分析
エーテル エチルエーテル
EtOAc 酢酸エチル
Glu グルタミン酸
HEPES 4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
LC−MS 液体クロマトグラフィー/質量分析
Me メチル
MeOH メタノール
NMP N−メチルピロリドン
o−tol オルト−トルイル
Ph フェニル
tBu 第三ブチル
Tf トリフルオロスルホニル
TFA トリフルオロ酢酸
Ts トルエンスルホニル。
【0131】
概して、本発明の化合物は、本明細書に記述されている、または当業者に既知の、類似化合物の調製のための方法によって調製することができる。下記の非限定的なスキームおよび実施例は、本発明をさらに例証するために提示される。
【0132】
一般的合成手順
スキーム1に示されている通り、離脱基Z(例えば、ハロゲン、ホスホネート、トシレートまたはトリフレート等)を含有する式IIIの化合物を、塩基および式IVの化合物[式中、Mは、−B(Oアルキル)または−B(OH)(鈴木反応);−Mg−Hal(熊田反応);−Zn−Hal(根岸反応);−Sn(アルキル)(スティル反応);−Si(アルキル)(檜山反応);−Cu−Hal;−ZrCpCl;または−AlMeであり、Pは窒素保護基である]の存在下、パラジウム触媒/リガンド系(例えば、Pd(PPh、Pd(PtBu、Pd[P(Me)(tBu)]、PdCl(PPh、PdCl(dppf)、Pd(dba)BINAPまたはPd(dba)P(o−tol)等)(FuおよびLittke、Angew. Chem. Int. Ed.、41巻、4176〜4211頁、2002年;Nicolaouら、Angew. Chem. Int. Ed.、44巻、4442〜4489頁、2005年;または、Hassenら、Chemical Reviews、102巻、5号、1359〜1469頁、2002年を参照)と反応させ、式Vの化合物[式中、X、X、X、X、XおよびRは、本明細書の別の箇所で示されている通りに定義できる]を生じさせる。
【0133】
【化25】

例えばアセテートまたはBoc基であってよい保護基Pを、必須の脱保護条件によって除去し、結果として生じる式V−aの化合物を、酸性条件下、式VIの化合物[式中、RおよびRは、本明細書の別の箇所で定義された通りである]と反応させ、式II−bの化合物を生じさせる。使用される酸は、例えば塩酸もしくは硫酸等の鉱酸;例えば酢酸もしくはトリフルオロ酢酸等の有機酸;または、例えば三フッ化ホウ素等のルイス酸であってよい。一般に、反応混合物を、場合によってマイクロ波放射下で加熱し、環化に影響を及ぼす。必要に応じて、大気中の酸素または別の酸化剤の存在下、場合によってマイクロ波照射下で、反応混合物をさらに加熱し、R、R、ならびにそれらの間にある炭素および窒素原子が炭素−窒素二重結合を形成している化合物を生じさせる。
【0134】
式II−bの化合物[式中、Rは水素である](例えば、式II−dの化合物)または式II−eの化合物の調製に有用な代替的手順を、スキーム2に示す。式IV−aの化合物の式IIIの化合物とのカップリングを、式IVの化合物の式IIIの化合物とのカップリングについて上述した通りに実施する。結果として生じた式V−bの化合物を脱水条件にさらし、式II−cの化合物[式中、X、X、X、X、X、RおよびRは、本明細書の別の箇所で示されている通りに定義できる]を生じさせる。この反応に適した試薬は、例えば、オキシ塩化リン、塩化チオニル、三臭化リン、五酸化リン、またはビシュラー・ナピエラルスキー様反応を生じさせるためのその他任意の適切な試薬を含む(例えば、Schmutzら、Helv. Chem. Acta、50巻、245頁、1967年またはWhaleyおよびGovindachari、Org. React.、6巻、74頁、1951年を参照)。一般に、反応混合物を加熱して環化に影響を及ぼす。その後、式II−cの化合物を還元し、式II−dの化合物を生じさせることができる。適切な還元剤は、例えば水素化ホウ素ナトリウム等のヒドリド還元剤を含む。Rを担持する炭素のキラリティーに影響を与えるために、キラルホウ化水素試薬(Chiral borohydride reagent)を使用してもよい。あるいは、Rが水素である場合、還元ステップは省略してよく、それにより、式II−eの化合物を生じさせる。
【0135】
【化26】

スキーム1中の式VIの化合物がα−ケトエステルであり、それを式V−aの化合物と反応させる場合、結果は、V−cの化合物[式中、Rは−C(O)ORである(Rは、本明細書の別の箇所で示されている通りに定義される)]となる。式V−cの化合物の7員環は、例えば水素化等の還元によって切開され、式VIIの化合物を得ることができる。エステルから式VIIIのカルボン酸への加水分解およびカルボン酸のアミンとの縮合による閉環は、式IXの化合物を産出する。そのような閉環は、例えば、1−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−ビス(ピロリジノ)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(BBC)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−ビス(テトラメチレン)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HAPyU)、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、1,3−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、(EDCI)O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(AOP)、1−ベンゾトリアゾールイルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、7−アゾベンゾトリアゾールイルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyABOP)および1−ベンゾトリアゾールイルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)を含む、当業者に既知の従来の縮合試薬を使用して実施することができる。Rが水素である場合、(トリフリック無水物(triflic anhydride)および塩基での処理によって)イミノトリフレートを形成し、スキーム1で上述したもの等の触媒されたメタル化反応においてこの中間体を使用することにより、式IXの化合物をさらに生成し、式I−aの化合物[式中、Wは−NHC(=X)−であり、ここでXは[水素、R]である]を生じさせることができる。
【0136】
【化27】

アミド結合が逆配向を有する式IXの化合物の異性体は、スキーム4に示されている通りに調製することができる。1H−ピロロ[2,3−b]ピリジンのメタル化、それに続く適切に置換されたイミンとの反応により、式Xの化合物[式中、Rは、例えば4−メトキシベンジルまたはトリフルオロメチルスルホニル等の適切なアミン保護基である]が形成される。場合によって、Rは式I−aの化合物について定義された通りであり、アミンは保護基PGで引き続き保護される。式Xの化合物を、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)または別の適切な酸化剤と反応させ、N−オキシド中間体を形成する。この中間体の、臭化テトラメチルアンモニウムおよびメチルスルホニル無水物との後続反応により、式XIの化合物を形成し、その後、適切なカルボン酸保護基PGで保護されたαカルボン酸を含有するフェニルボロン酸類似体でこれを処理し、式XIIの化合物を生じさせる。アリールおよびアルケニルボロン酸類似体の調製ならびに後続のカップリング反応におけるそれらの使用のための方法は、米国特許第6,939,985号および第6,559,310号ならびに米国特許出願公開第20040133028号において記述されている。カルボン酸およびアミン保護基両方の脱保護、それに続く、例えばスキーム3で上述したもの等のアミド結合形成により、式XIIIの化合物を形成する。Rが水素である場合、イミノトリフレートを形成し、スキーム1で上述したもの等の触媒されたメタル化反応においてこの中間体を使用することにより、式IXの化合物をさらに生成し、式I−aの化合物[式中、Wは−C(=X)NH−であり、ここでXは[水素、R]である]を生じさせることができる。
【0137】
【化28】

あるいは、スキーム5に示されている通り、式XIVの化合物を式XVの化合物とパラジウム触媒メタル化反応で反応させ、式XVIの化合物を生じさせることもできる。この中間体の、酸性条件下における、例えばR−CHO等のアルデヒドとの後続反応により、式XIIIの化合物が生じる。化合物126、127および129は、そのような様式で調製した。
【0138】
【化29】

【実施例】
【0139】
(実施例1)
化合物5の合成
スキーム6に示されている通り、4−ブロモ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン(1.01g)、2−アセトアミドフェニルボロン酸(1.63g)、Pd(PPh(0.345mg)および1M NaCO(8mL)をDME(20mL)中で混合し、95℃で終夜加熱した。反応物を冷却し、水(60mL)を添加した。ジクロロメタン(3×)による抽出および合わせた有機抽出物の濃縮により、N−(2−(1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−4−イル)フェニル)アセトアミド(化合物1001)を得て、これを濃塩酸(20mL)およびトルエン(1mL)で処理し、128℃で30分間加熱した。揮発物の蒸発により残留物を得て、これに飽和炭酸水素ナトリウムを添加した。結果として生じた混合物をジクロロメタン(3×)で抽出した。有機物の濃縮およびシリカゲルクロマトグラフィー(50〜80%EtOAc/ヘキサン)による残留物の精製により、2−(1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−4−イル)ベンゼンアミン(化合物1002、1.07g)を得た。メタノール(1mL)中の化合物1002(14mg)に、4N HCl−ジオキサン(0.05mL)およびベンズアルデヒド(16mg)を添加した。反応混合物に蓋をし、90℃で1時間加熱した。蒸発によってメタノールの約75%を除去し、続いてエチルエーテル(5mL)を添加した。結果として生じた固体をろ過し、エーテル(2×)で洗浄し、化合物5を塩酸塩(22.5mg)として得た。
【0140】
【化30】

化合物1、6〜22、24〜43、45〜46、60、64〜80、86〜89、91、104〜108、110〜112、114および119〜124および128(化合物構造は表1を参照)は、アルデヒドを変動させ、化合物5の合成のためのものと同様の手順を使用することにより、化合物1002から調製した。
【0141】
化合物23は、還流6M HClで1時間、化合物8を処理することによって得た。
【0142】
化合物90は、10%Pd/C上での化合物89の水素化によって得た。
【0143】
化合物43の調製において、HPLC精製により、化合物44も得た。
【0144】
化合物93は、還流エタノール中のSnCl・2HOで4時間、化合物83を処理することによって得た。
【0145】
化合物58は、化合物1002の、90℃におけるメタノール/4M HCl−ジオキサン中の2−エトキシテトラヒドロピランとの反応によって得た。同じ成分を、マイクロ波中、120℃で20分間反応させると、化合物59が得られた。類似のマイクロ波手順において、2−エトキシテトラヒドロピランを2−エトキシテトラヒドロフランで置換し、化合物60を生じさせた。
【0146】
化合物63は、メタノール中の化合物46を90℃で3日間加熱することによって得た。
【0147】
(実施例2)
化合物102の合成
スキーム7に示されている通り、化合物1002(66mg)、4−ニトロフェニルグリオキシル酸(135mg)、4M HCl−ジオキサン(0.4mL)およびメタノール(4mL)を一緒に混合し、90℃で終夜加熱した。冷却、エーテルの添加、およびろ過後、化合物98が固体(106mg)として得られた。3mLのメタノール中の化合物98(64mg)に、SnCl・2HO(0.3g)を添加した。80℃で1時間加熱、それに続く冷却後、反応混合物をCelite(商標)に通してろ過し、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーによる精製後、化合物102を得た。
【0148】
【化31】

(実施例3)
化合物125の合成
スキーム8に示されている通り、化合物1002(58mg)、4−ヒドロキシフェニルグリオキシル酸(69mg)、4M HCl−ジオキサン(0.4mL)およびメタノール(4mL)を一緒に混合し、90℃で終夜加熱した。冷却、エーテルの添加、およびろ過後、化合物103(0.11g)が黄色固体として得られた。化合物103(24.4mg)、メタノール(2mL)および2滴の濃塩酸に、10%Pd/C(8mg)を添加した。結果として生じた懸濁液を、水素バルーン下、24時間撹拌した。Celite(商標)を通すろ過および真空蒸発により、化合物1003(25mg)を得た。化合物1003(20mg)を、6M塩酸中で6時間還流させた。真空蒸発により、中間体カルボン酸を得て、これをDMF(2mL)中に溶解し、続いて2−(7−アザ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)(40mg)およびジイソプロピルエチルアミン(DIEA、0.02mL)を添加した。結果として生じた混合物を40℃で終夜撹拌し、続いて水(20mL)およびTFA(0.1mL)を添加した。粗生成物を酢酸エチル(3×)で抽出し、NaSOで乾燥し、真空濃縮し、HPLCによって精製し、化合物125を得た。
【0149】
【化32】

(実施例4)
化合物3の合成
スキーム9に示されている通り、4−クロロ−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン(1.02g、mmol)、2−アセトアミドフェニルボロン酸(1.80g)、Pd(PPh(0.4g)および1M NaCO(8mL)をDME(20mL)中で混合し、95℃で終夜加熱した。反応物を冷却し、溶媒を真空下で除去し、続いて水(60mL)を添加した。ジクロロメタン(3×)による抽出および合わせた有機抽出物の濃縮により、シリカゲルクロマトグラフィー後、N−(2−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)フェニル)アセトアミド(化合物1004)を得て、その後、これを濃塩酸(20mL)およびトルエン(1mL)で処理した。結果として生じた混合物を128℃で30分間加熱した。揮発物を真空下で除去して固体を得て、これに飽和炭酸水素ナトリウムを添加した。5%MeOH/DCM(3×)による抽出および減圧濃縮により残留物を得て、これにエーテルを添加した。結果として生じた固体をろ過し、エーテル(2×)で洗浄し、2−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)ベンゼンアミン(化合物1005)を黄色固体(1.17g)として得た。
【0150】
化合物1005(10mg)、ベンズアルデヒド(20mg)、4M HCl−ジオキサン(0.1mL)およびメタノール(1mL)の混合物を95℃で加熱し、反応の進行をLC−MSによってモニターした。反応が完了したと判断すると、反応混合物を濃縮し、エーテルを添加した。化合物3をろ過除去し、HCl塩として得た。
【0151】
【化33】

化合物2、4、49〜50、55〜56、81〜85、115〜116および118(化合物構造は表1を参照)は、アルデヒドを変動させ、化合物3の合成のためのものと同様の手順を使用することにより、化合物1005から調製した。化合物116の精製中に、化合物117を副生成物として単離した。
【0152】
化合物92は、化合物1005(10.5mg)、4−ヒドロキシベンズアルデヒド(15mg)およびTFA(1mL)を、マイクロ波放射下、140℃で20分間反応させることによって調製した。真空下での溶媒の除去、それに続くHPLC精製により、粗生成物を単離した。
【0153】
(実施例5)
化合物48の合成
スキーム10に示されている通り、4−ブロモ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン(0.11g、mmol)、2,2−ジメチル−N−[3−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−ピリジン−2−イル]−プロピオンアミド(0.304g)、Pd(PPh(0.04mg)および1M NaCO(0.8mL)をDME(3mL)中で混合し、95℃で終夜加熱した。反応混合物を冷却し、水(20mL)を添加した。ジクロロメタン(3×)による抽出および合わせた有機抽出物の濃縮により、シリカゲルクロマトグラフィー(1:1酢酸エチル/ヘキサン)後、化合物1006を得て、その後、これを還流濃塩酸(10mL)で2日間処理した。液体を真空下で除去して固体を得て、これに飽和炭酸水素ナトリウムを添加した。ジクロロメタン(3×)による抽出および減圧濃縮により残留物を得て、これにエーテルを添加した。ろ過により化合物1007(48mg)を得た。
【0154】
化合物1007(10mg)、3−フルオロベンズアルデヒド(20mg)、4M HCl−ジオキサン(0.1mL)およびメタノール(1mL)の混合物を、マイクロ波放射下、160℃で40分間加熱した。反応混合物を真空濃縮し、エーテルを添加した。化合物48をろ過除去し、その後HPLCによって精製した。
【0155】
【化34】

化合物47、95および97(化合物構造は表1を参照)は、アルデヒドを変動させ、化合物48の合成のためのものと同様の手順を使用することにより、化合物758545から調製した。化合物97の精製中に、化合物96を副生成物として単離した。
【0156】
(実施例6)
化合物52の合成
スキーム11に示されている通り、mCPBA(4.75g)を、0℃の酢酸エチル(20mL)中の5−クロロ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン(3.00g)の溶液に添加した。反応混合物を室温で12時間撹拌し、溶媒を真空下で除去して残留物を残し、これに30%炭酸カリウム水溶液を添加した。10%MeOH/DCM(5×)による抽出および蒸発により、粗N−オキシドを得て、これを次の反応においてそのまま使用した。
【0157】
0℃のDMF(10mL)中のN−オキシドに、テトラメチルアンモニウムブロミド(1.00g)およびメチルスルホニル無水物(1.5g)を添加した。反応混合物を0℃で30分間撹拌し、2時間かけて室温にした。水(40mL)を添加し、続いてジクロロメタン(3×)で抽出し、合わせた有機物を真空濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(0〜40%EtOAc/DCM)により、4−ブロモ−5−クロロ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジンを得て、これを対応する3−ブロモおよび3,4−ジブロモ化合物で汚染した。
【0158】
1,4−ジオキサン(4mL)中の臭化物(0.128g)の混合物に、2−アセトアミドフェニルボロン酸(0.20g)、PdCldppf(0.04mg)およびリン酸カリウム(0.47g)を添加した。反応混合物を90℃で終夜加熱した。反応混合物を冷却し、水(20mL)を添加した。ジクロロメタン(3×)による抽出および合わせた有機抽出物の濃縮により、3−および4−領域異性体の混合物を得て、これをシリカゲルクロマトグラフィー(0〜100%EtOAc/ヘキサン)によって分離し、4−異性体(化合物1008、26mg)を純粋化合物として生じさせた。化合物1008を、濃塩酸中、50分間還流させた。反応混合物の真空濃縮により、化合物1009を得た。
【0159】
化合物1009(6mg)を、メタノールおよび4N HCl−ジオキサン(0.1mL)中の2,6−ジフルオロベンズアルデヒド(20mg)と混合した。結果として生じた溶液を95℃で加熱し、反応の進行をLC−MSによってモニターした。反応が完了したと判断すると、混合物を真空濃縮し、エーテルを添加した。化合物52をHCl塩として単離した。
【0160】
【化35】

化合物53および54(化合物構造は表1を参照)は、アルデヒドを変動させ、化合物52の合成のためのものと同様の手順を使用することにより、化合物1009から調製した。
【0161】
(実施例7)
化合物51の合成
スキーム12に示されている通り、ベンゼンおよびPOCl(0.2mL)中の化合物1010(19mg)の溶液を、90℃で2時間加熱した。追加のPOCl(0.2mL)を添加し、さらに2時間加熱を続けた。蒸発、飽和炭酸水素ナトリウムの添加、ジクロロメタン(3×)による抽出およびシリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc)により、化合物51(7.3mg)を得た。
【0162】
【化36】

解析評価
本発明の選択された化合物のスペクトルデータを表2に提示する。別段の定めがない限り、1H−NMRスペクトルは500MHzで取得した。
【0163】
【表2−1】

【0164】
【表2−2】

【0165】
【表2−3】

【0166】
【表2−4】

【0167】
【表2−5】

【0168】
【表2−6】

【0169】
【表2−7】

【0170】
【表2−8】

【0171】
【表2−9】

【0172】
【表2−10】

【0173】
【表2−11】

【0174】
【表2−12】

(実施例8)
JAK−3阻害アッセイ
以下に示すアッセイを使用して、JAKを阻害する能力について化合物をスクリーニングした。100mMのHEPES(pH7.4)、1mMのDTT、10mMのMgCl、25mMのNaClおよび0.01%のBSAを含有するキナーゼ緩衝液中で反応を行った。
【0175】
アッセイにおける基質濃度は、5μMのATP(200μCi/μmole ATP)および1μMのポリ(Glu)Tyrであった。25℃および1nMのJAK−3で反応を行った。
【0176】
96ウェルポリカーボネートプレートの各ウェルに、1.5μLの候補JAK−3阻害剤を、2μMのポリ(Glu)Tyrおよび10μMのATPを含有する50μLのキナーゼ緩衝液とともに添加した。その後、これを混合し、2nMのJAK−3酵素を含有する50μLのキナーゼ緩衝液を添加して、反応を開始させた。室温(25℃)で20分置いた後、やはり0.4mMのATPを含有する50μLの20%トリクロロ酢酸(TCA)によって反応を停止させた。その後、TomTek Cell Harvesterを使用して、各ウェルの内容物をすべて96ウェルガラス繊維フィルタプレートに移した。洗浄後、60μLのシンチレーション液を添加し、Perkin Elmer TopCountで33P取り込みを検出した。すべてのデータ点の平均バックグラウンド値を除去後、Prismソフトウェアを使用してデータを当てはめ、K値(app)を得た。
【0177】
(実施例9)
JAK−2阻害アッセイ
JAK−2アッセイは、JAK−2酵素を使用したこと、最終ポリ(Glu)Tyr濃度が15μMであったこと、および最終ATP濃度が12μMであったことを除き、実施例8で上述した通りに実施した。選択された結果を表1に提示する。
【0178】
本明細書において引用されているすべての刊行物および特許は、各個別の刊行物または特許が参照により組み込まれることを具体的かつ個々に示されているかの如く、参照により本明細書に組み込まれる。理解の明瞭さを目的に、例示および実施例として前述の発明を若干詳しく記述したが、当業者には、本発明の教示に照らして、添付の特許請求の範囲の趣旨または精神から逸脱することなく、本発明にいくつかの変更および修正が為され得ることが容易に明らかとなるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化37】

を有する化合物[式中、
Wは、−N(R)−、−C(X)N(R)−または−N(R)C(X)−であり、
Xは、O、S、[水素、水素]または[水素、R]であり、
はNまたはC−RX2であり、ここで、RX2は、水素、ハロゲン、−CN、−NO、−ORX2B、−OC(O)RX2B、−OC(O)ORX2B、−OC(O)NRX2AX2B、−OC(S)RX2B、−SRX2B、−SC(O)RX2B、−SC(S)RX2B、−C(O)ORX2B、−C(O)NRX2AX2B、−C(S)NRX2AX2B、−NRX2AX2B、−S(O)RX2B、−S(O)X2B、−S(O)NRX2AX2B、C1〜4ハロ脂肪族、場合によって置換されているC3〜8脂環族、C1〜6脂肪族であり、
はNまたはC−RB4であり、XはNまたはC−RB5であり、XはNまたはC−RB6であり、XはNまたはC−RB7であり、ここで、場合によってX、X、XおよびXのうちの最大2個はNであり、RB4、RB5、RB6およびRB7のそれぞれは、独立に、水素、ハロゲン、−CN、−NO、−OR、−OC(O)R、−OC(O)OR、−OC(O)NRR’、−OC(S)R、−SR、−SC(O)R、−SC(S)R、−C(O)OR、−C(O)NRR’、−C(S)NRR’、−NRR’、−S(O)R、−S(O)R、−S(O)NRR’、場合によって置換されているC1〜4ハロ脂肪族、C1〜6脂肪族、C3〜8脂環族、C6〜10アリール、3〜8員の単環式ヘテロシクリル、8〜12員の二環式ヘテロシクリルまたは5〜8員の単環式ヘテロアリール、8〜12員の二環式ヘテロアリールであり、
およびRのそれぞれは、独立に、水素、場合によって置換されているC1〜6脂肪族、C1〜4ハロ脂肪族、C3〜8脂環族、C6〜10アリール、3〜8員の単環式ヘテロシクリル、8〜12員の二環式ヘテロシクリル、5〜8員の単環式ヘテロアリール、8〜12員の二環式ヘテロアリールであるか、またはWがN(R)である場合、RおよびRならびに介在原子は一緒になってN=C結合を場合によって形成し、
は、水素、場合によって置換されているC1〜6脂肪族、C1〜4ハロ脂肪族、C3〜8脂環族、C6〜10アリール、3〜8員の単環式ヘテロシクリル、8〜12員の二環式ヘテロシクリル、5〜8員の単環式ヘテロアリールまたは8〜12員の二環式ヘテロアリールであり、
X2Aは、水素、場合によって置換されているC1〜6脂肪族、C3〜8脂環族、C6〜10アリール、3〜8員の単環式ヘテロシクリル、8〜12員の二環式ヘテロシクリル、5〜8員の単環式ヘテロアリール、8〜12員の二環式ヘテロアリール、−C(O)R、−C(O)NRR’、−C(O)OR、−S(O)R、−S(O)Rまたは−S(O)NRR’であり、
R、R’およびRX2Bのそれぞれは、独立に、水素、場合によって置換されているC1〜6脂肪族、C3〜8脂環族、C6〜10アリール、3〜8員の単環式ヘテロシクリル、8〜12員の二環式ヘテロシクリル、5〜8員の単環式ヘテロアリールまたは8〜12員の二環式ヘテロアリールであり、
該ヘテロシクリルおよびヘテロアリール環のそれぞれは、酸素、硫黄または窒素から独立に選択される1〜4個のヘテロ原子を含有し、
該アリールおよびヘテロアリール基のそれぞれの1個または複数の炭素原子上にある任意選択の置換基は、ハロゲン;−R;−OR;−SR;1,2−メチレンジオキシ;1,2−エチレンジオキシ;Rで場合によって置換されているフェニル;Rで場合によって置換されている−O(Ph);Rで場合によって置換されている−(CH1〜2(Ph);Rで場合によって置換されている−CH=CH(Ph);−NO;−CN;−N(R;−NRC(O)R;−NRC(S)R;−NRC(O)N(R;−NRC(S)N(R;−NRC(O)OR;−NRNRC(O)R;−NRNRC(O)N(R;−NRNRC(O)OR;−C(O)C(O)R;−C(O)CHC(O)R;−C(O)OR;−C(O)R;−C(S)R;−C(O)N(R;−C(S)N(R;−B(OR、−OC(O)N(R;−OC(O)R;−C(O)N(OR)R;−C(=NOR)R;−S(O);−S(O)OR;−S(O)N(R;−S(O)R;−NRS(O)N(R;−NRS(O);−N(OR)R;−C(=NH)−N(R;または−(CH0〜2NHC(O)R;−L−R;−L−N(R;−L−SR;−L−OR;−L−(C3〜10脂環族)、−L−(C6〜10アリール)、−L−(5〜10員のヘテロアリール)、−L−(5〜10員のヘテロシクリル)、オキソ、C1〜4ハロアルコキシ、C1〜4ハロアルキル、−L−NO、−L−CN、−L−OH、−L−CFであるか、あるいは、同じ炭素または異なる炭素上の2個の置換基が、それらが結合した炭素または介在炭素と一緒になって、5〜7員の飽和、不飽和または部分飽和環を形成し、ここで、Lは、最大3個のメチレン単位が、−NH−、−NR−、−O−、−S−、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(O)C(O)−、−C(O)−、−C(O)NH−、−C(O)NR−、−C(=N−CN)−、−NHC(O)−、−NRC(O)−、−NHC(O)O−、−NRC(O)O−、−S(O)NH−、−S(O)NR−、−NHS(O)−、−NRS(O)−、−NHC(O)NH−、−NRC(O)NH−、−NHC(O)NR−、−NRC(O)NR、−OC(O)NH−、−OC(O)NR−、−NHS(O)NH−、−NRS(O)NH−、−NHS(O)NR−、−NRS(O)NR−、−S(O)−または−S(O)−によって置換されているC1〜6アルキレン基であり、Rの各出現は、水素、場合によって置換されているC1〜6脂肪族、非置換5〜6員のヘテロアリールもしくは複素環、フェニルまたは−CH(Ph)から独立に選択されるか、あるいは、同じ置換基または異なる置換基上の2個の独立したRの出現が、各R基が結合した原子と一緒になって、5〜8員のヘテロシクリル、アリールもしくはヘテロアリール環または3〜8員のシクロアルキル環を形成し、ここで、該ヘテロアリールまたはヘテロシクリル環は、窒素、酸素または硫黄から独立に選択される1〜3個のヘテロ原子を有し、Rの脂肪族基上の任意選択の置換基は、−NH、−NH(C1〜4脂肪族)、−N(C1〜4脂肪族)、ハロゲン、C1〜4脂肪族、−OH、−O(C1〜4脂肪族)、−NO、−CN、−C(O)OH、C(O)O(C1〜4脂肪族)、O(ハロC1〜4脂肪族)またはハロC1〜4脂肪族から選択され、RのC1〜4脂肪族基のそれぞれは置換されておらず、
該脂肪族、ハロ脂肪族、脂環族およびヘテロシクリル基のそれぞれの1個または複数の炭素原子上にある任意選択の置換基は、該アリールおよびヘテロアリール基について定義された通りであり、=O、=S、=NNHR、=NN(R、=NNHC(O)R、=NNHC(O)O(アルキル)、=NNHS(O)(アルキル)または=NRを追加で含み、ここで、各Rは、水素または場合によって置換されているC1〜6脂肪族から独立に選択され、Rの該脂肪族基上の任意選択の置換基は、−NH、−NH(C1〜4脂肪族)、−N(C1〜4脂肪族)、ハロゲン、C1〜4脂肪族、−OH、−O(C1〜4脂肪族)、−NO、−CN、−C(O)OH、−C(O)O(C1〜4脂肪族)、−O(ハロ−C1〜4脂肪族)およびハロ(C1〜4脂肪族)から選択され、Rの前述のC1〜4脂肪族基のそれぞれは置換されていない]。
【請求項2】

【化38】

を有する請求項1に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩
[式中、
H2、RH3、RH4、RH5およびRH6のそれぞれは、独立に、水素、ハロゲン、−CN、−NO、−OR、−B(OR)、−OC(O)R、−OC(O)OR、−OC(S)R、−SR、−SC(O)R、−SC(S)R、−C(O)OR、−C(O)NRR’、−C(S)NRR’、−NRR’、−S(O)R、−S(O)R、−S(O)NRR’、場合によって置換されているC1〜4ハロ脂肪族、C1〜6脂肪族、C3〜8脂環族、C6〜10アリール、3〜8員の単環式ヘテロシクリル、8〜12員の二環式ヘテロシクリルまたは5〜8員の単環式ヘテロアリール、8〜12員の二環式ヘテロアリールであり、
RおよびR’のそれぞれは、独立に、水素、場合によって置換されているC1〜6脂肪族、C3〜8脂環族、C6〜10アリール、3〜8員の単環式ヘテロシクリル、8〜12員の二環式ヘテロシクリル、5〜8員の単環式ヘテロアリールまたは8〜12員の二環式ヘテロアリールである]。
【請求項3】
H4が、−OR、−B(OR)、−OC(O)R、−OC(O)ORまたは−OC(S)Rであり、RB4、RB5およびRB6のそれぞれが水素であり、XがNまたはC−Hである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
H4が−OHである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
Wが−N(R)−である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
またはRのうちの少なくとも一方は水素ではない、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
が、場合によって置換されているC1〜6脂肪族、C3〜8脂環族、C6〜10アリール、3〜8員の単環式ヘテロシクリルまたは5〜8員の単環式ヘテロアリールである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
が、場合によって置換されているC6〜10アリールまたは5〜8員の単環式ヘテロアリールである、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】

【化39】

を有する請求項8に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩
[式中、
は、水素、場合によって置換されているC1〜6脂肪族、C1〜4ハロ脂肪族、C3〜8脂環族、C6〜10アリール、3〜8員の単環式ヘテロシクリル、8〜12員の二環式ヘテロシクリル、5〜8員の単環式ヘテロアリール、8〜12員の二環式ヘテロアリールであり、
H2、RH3、RH4、RH5およびRH6のそれぞれは、独立に、水素、ハロゲン、−CN、−NO、−OR、−B(OR)、−OC(O)R、−OC(O)OR、−OC(S)R、−SR、−SC(O)R、−SC(S)R、−C(O)OR、−C(O)NRR’、−C(S)NRR’、−NRR’、−S(O)R、−S(O)R、−S(O)NRR’、場合によって置換されているC1〜4ハロ脂肪族、C1〜6脂肪族、C3〜8脂環族、C6〜10アリール、3〜8員の単環式ヘテロシクリル、8〜12員の二環式ヘテロシクリルまたは5〜8員の単環式ヘテロアリール、8〜12員の二環式ヘテロアリールであり、
RおよびR’のそれぞれは、独立に、水素、場合によって置換されているC1〜6脂肪族、C3〜8脂環族、C6〜10アリール、3〜8員の単環式ヘテロシクリル、8〜12員の二環式ヘテロシクリル、5〜8員の単環式ヘテロアリールまたは8〜12員の二環式ヘテロアリールである]。
【請求項10】
H4が、−OR、−B(OR)、−OC(O)R、−OC(O)ORまたは−OC(S)Rであり、RB4、RB5およびRB6のそれぞれが水素であり、XがNまたはC−Hである、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
H4が−OHである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】

【化40】

を有する、請求項8に記載の化合物、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項13】
B4、RB5、RB6およびRB7のそれぞれが水素である、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
B4、RB5およびRB6のそれぞれが水素であり、XがNまたはC−Hであり、XがNまたはC−Hであり、RH2、RH3、RH5およびRH6のそれぞれが、独立に、水素、ハロゲン、−CN、−NO、−OR、−B(OR)、−OC(O)R、−OC(O)OR、−C(O)OR、−C(O)NRR’、−C(S)NRR’、−NRR’、−S(O)R、−S(O)NRR’、場合によって置換されているC1〜4ハロ脂肪族、C1〜6脂肪族、C3〜8脂環族であり、ここで、RおよびR’のそれぞれは、独立に、水素または場合によって置換されているC1〜6脂肪族である、
請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
下記化合物の群
【化41−1】

【化41−2】

【化41−3】

【化41−4】

【化41−5】

【化41−6】

【化41−7】

【化41−8】

【化41−9】

【化41−10】

【化41−11】

から選択される化合物。
【請求項16】
請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物と、薬学的に許容される担体、アジュバントまたはビヒクルとを含む、医薬組成物。
【請求項17】
患者における疾患、状態または障害を治療するため、またはその重症度を軽減するための、請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物または請求項16に記載の組成物の使用であって、該疾患、状態または障害が、アレルギー、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、糖尿病、変形性関節炎、関節リウマチ、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、AIDS関連認知症、筋萎縮性側索硬化症(AML)、多発性硬化症(MS)、統合失調症、心筋細胞肥大、血管周囲線維症、良性前立腺過形成、血管平滑筋細胞増殖、内皮機能不全、虚血/再かん流誘発損傷、卒中、脱毛症、癌、マリグノーマ、肝腫大、高血圧、循環器疾患、心肥大、嚢胞性線維症、再狭窄、乾癬、炎症、高血圧、狭心症、脳血管収縮、末梢循環障害、早産、早期陣痛、アテローム性動脈硬化症、血管痙攣、脳血管痙攣、冠攣縮、網膜症、神経突起伸長、緑内障、勃起機能不全(ED)、AIDS、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染、骨粗しょう症、クローン病、結腸炎またはレイノー病である、使用。
【請求項18】
前記疾患、状態または障害が、アテローム性動脈硬化症、高血圧、多発性硬化症、勃起機能不全、虚血/再かん流誘発損傷、卒中、脳血管痙攣、冠攣縮、心臓肥大または緑内障である、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記疾患、状態または障害が喘息である、請求項17に記載の使用。
【請求項20】
前記疾患、状態または障害が移植拒絶反応または移植片対宿主疾患である、請求項17に記載の使用。
【請求項21】
生体試料におけるJAKキナーゼ活性を阻害する方法であって、該生体試料を、請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物または請求項16に記載の組成物と接触させるステップを含む、方法。
【請求項22】
前記JAKキナーゼがJAK−3である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記JAKキナーゼがJAK−2である、請求項21に記載の方法。

【公表番号】特表2010−508363(P2010−508363A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535437(P2009−535437)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2007/083134
【国際公開番号】WO2008/079521
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】